疾患関連タンパク質
【課題】網膜ジストロフィー、加齢関連斑点変性、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜症、迂曲状アトロフィー、先天性アモロシス、レフサム症候群、スタルガルド病、アッシャ症候群の初期診断、モニター、処置のための方法および組成物を開示する。
【解決手段】Rdcvf1というタンパク質、このタンパク質を認識する抗体、これらの症状を診断する方法。このタンパク質は、網膜ジストロフィーや年齢関連筋変性などの網膜ジストロフィー性患者において非患者に比して分別的に転写および発現される。
【解決手段】Rdcvf1というタンパク質、このタンパク質を認識する抗体、これらの症状を診断する方法。このタンパク質は、網膜ジストロフィーや年齢関連筋変性などの網膜ジストロフィー性患者において非患者に比して分別的に転写および発現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、網膜変性疾患の検出および処置のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、円錐体変性に対する保護をなすタンパク質、該タンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を認識する抗体、および網膜変性疾患を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
光受容体は、網膜ニューロンの特殊なサブセットであって、視覚に関与する。光受容体は、網膜の光感受性細胞である桿状体および円錐体よりなる。各桿状体および円錐体は、外側セグメントと呼ばれる、光伝導機構を有する特殊な線毛を精巧につくる。桿状体は特異的な光吸収性の視覚色素、ロドプシンを含有する。ヒトの円錐体には3クラスがあり、明白な視覚色素の発現によって特徴分けされる。すなわち、ブルー円錐体、グリーン円錐体、レッド円錐体の色素である。各タイプの視覚色素タンパク質は、相違する波長で最大限に光を吸収するように調律される。桿状体ロドプシンは暗所視覚(薄暗い光)を仲介し、一方、円錐体色素は光視覚(明るい光)に関与する。ブルー、グリーン、レッドの色素はまた、ヒトにおける色視覚の基礎を形成する。桿状体および円錐体中の視覚色素は、光に応答し、アウトプット細胞、桿状体2極ニューロンに強力に作用し、網膜神経節ニューロンに中継ぎされて、視覚皮質に視覚刺激をつくる。
【0003】
ヒトにおける多くの網膜疾患には、光受容体の進行性変性およびその後の死があり、これは必然的に盲目を導く。先天性網膜ジストロフィー(すなわち、網膜色素症)などによる光受容体変性、関連斑点変性などの斑点症または網膜剥離は、光受容体の外側セグメントの進行性アトロフィーおよび機能喪失を特徴とする。さらに、光受容体の死および光受容体機能の喪失は、網膜ジストロフィーの患者において第2級網膜ニューロン(桿状体2極細胞および水平細胞)の部分的遮断をもたらし、それによって、光受容体がつくる電気的シグナルの伝播の全体的効率を低下さす。光受容体変性に二次的な、二次的神経膠および色素上皮変化は、虚血および神経膠症となる脈管系変化をもたらす。細胞死から光受容体を救い得る、および/または機能障害性(アトロフィーまたはジストロフィー性)光受容体の機能を回復し得る栄養的因子は、このような症状の処置において有用な治療法を提供し得る。
【0004】
これらの症状の進行は2クラスの光受容体の連続的喪失を表す。最初は、遺伝的、環境的または原因不明の損傷の直接的結果として桿状体が失われて、夜盲および視野狭窄となり、必然的に全盲となる円錐体の喪失がおきる。このように、円錐体が主要な損傷部を発現しないので、円錐体が間接的に死ぬ。
【0005】
網膜ジストロフィーに関連する遺伝子のすべては同定されていない。このような遺伝子の同定は、この疾患の診断および効果的な治療法の同定を可能にするであろう。
【発明の概要】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、新規な遺伝子ファミリーである桿状体誘導の円錐体生存能因子(Rdcvf)に関する。第1態様において、本発明は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドを提供する。このポリペプチドまたはその断片は、網膜ジストロフィー患者の眼では網膜ジストロフィーのない個体の眼におけるよりも非常に低い程度にしか認めない。配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドの断片は、約5〜10アミノ酸、好ましくは約10〜約20アミノ酸、さらに好ましくは約20〜約100アミノ酸、最も好ましくは約20〜約50アミノ酸を含有するポリペプチドを含む。本発明のこの態様において、哺乳動物由来、特にマウスまたはヒト由来の新規ペプチドさらにその生物学的、診断的または治療的に有用な、その断片、変異体および誘導体、その断片の変異体および誘導体、ならびに上記のものの類似体を提供する。また、本発明範囲内において、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドに実質的に類似するポリペプチド、例えば、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列を提供する。
【0007】
第2態様において、本発明は、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。また、本発明範囲内において、核酸は、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を有する核酸に実質的に類似する核酸、例えば、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13のヌクレオチド配列を提供する。好ましい実施態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドをコードする単離核酸分子を提供する。例えば、配列番号1のヌクレオチド45−374、配列番号3のヌクレオチド26−676、配列番号5のヌクレオチド24−353、配列番号7のヌクレオチド48−686、配列番号9のヌクレオチド265−570、配列番号11のヌクレオチド300−770、配列番号13のヌクレオチド331−738を提供する。好ましい実施態様において、単離DNAは、配列番号1または配列番号3のDNAを含むベクター分子の形態をとる。
【0008】
本発明の第3態様はヒトでの網膜ジストロフィーの診断のための方法を含む。これは、哺乳動物、特にヒトの眼におけるRdcvf1またはRdcvf2コードDNAから転写されるmRNAの転写の低下を検出することを含む。転写の低下は、網膜ジストロフィーまたは病理的老化を有する疾患(ARMD)の診断となる。本発明のアッセイ態様についての他の実施態様は、哺乳動物、好ましくはヒトでの網膜ジストロフィーの診断のための方法を提供する。この方法では、網膜ジストロフィーの罹患が疑われるヒトの眼におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片の量を測定する。このポリペプチドまたはその断片の量が、網膜ジストロフィーに罹患していない者の眼におけるポリペプチドまたはその断片の量に比して低下していると、網膜ジストロフィーに罹患しているとの診断になる。
【0009】
他の態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の転写を調節するアンチセンス・ポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の転写を調節できる二本鎖RNAを提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、上記のポリペプチド、ポリペプチド断片、変異体および誘導体、その変異体および誘導体の断片ならびに上記のものの類似体を提供する。好ましい実施態様において、本発明のこの態様は、上記のRdcvf1ポリペプチドをつくる方法を提供する。この方法は、外因的に誘導されたRdcvf1またはRdcvf2コードポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを中に組み込んでいる宿主細胞を、その宿主におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドの発現に十分な条件で培養し、ついで発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0011】
本発明の他の態様は、上記のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、なかでも研究、生物学的、臨床上および医療的な目的に役立つ産物、組成物、プロセス、方法を提供する。
【0012】
ある追加的な好ましい態様において、本発明は、下記のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片を提供する。アミノ酸配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8のアミノ酸配列、すなわちRdcvf1、または配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列、すなわちRdcvf2である。この点についての特に好ましい態様において、抗体は、哺乳動物、好ましくはマウス、特に好ましくはヒトのRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはそれらの部分に選択的である。関連の態様において、提供される抗体およびその断片は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列の断片または部分に結合する。
【0013】
別の態様において、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子発現の変化、例えば、眼でのRDCVF1またはRDCVF2ポリペプチドの存在の低下により仲介されるか、またはこれらに関連する疾患を処置する方法を提供する。これには、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のRDCVF1またはRDCVF2タンパク質またはその断片もしくは部分の医療上有効な量を対象に投与する。また、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子発現の低下またはRDCVF1またはRDCVF2ポリペプチドの存在の低下に関連する疾患または状態を診断する方法を提供する。この方法は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその断片もしくは部分に結合する抗体をイムノアッセイで使用することを含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を含むポリペプチドを、培養基での成長の際に、つくり得るインビトロ増殖可能な細胞、特に脊椎動物の細胞を提供する。これらの細胞は、転写コントロールDNA配列、マウスまたはヒト以外のRdcvf1またはRdcvf2転写コントロール配列を含有し、転写コントロール配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を有するポリペプチドをコードするDNAの転写を制御する。
【0015】
関連する態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドをつくる方法を提供する。この方法は、外因的に誘導されたRdcvf1またはRdcvf2コードポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを中に組み込んでいる宿主細胞を、その宿主におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドの発現に十分な条件で培養し、それによって発現されたポリペプチドの産生をなし、ついで発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、患者からの体組織サンプル中のRdcvf1またはRdcvf2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたはその断片の異常な、例えば正常より低い発現を検出するアッセイ法、および検出に必要な成分を含有するキットを提供する。このキッドは、例えば、Rdcvf1またはRdcvf2、あるいは本発明のポリヌクレオチドにハイブリドするオリゴヌクレオチド・プローブに結合する抗体を含有する。好ましい実施態様において、該キットはキットの構成成分を使用する方法を詳記した説明書も含む。
【0017】
他の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体の処置に使用するためのRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドに関する。関連態様は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチド、またはRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体を、網膜ジストロフィーの処置のための薬剤の製造において、使用することである。
【0018】
他の態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチド、および選択的に、薬学的に許容される担体を含有する網膜保護剤を提供する。関連する態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチドを含む、網膜ジストロフィーの処置のための医薬組成物を提供する。他の関連態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチドの医療上有効な量、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
関連態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチドの医療上有効な量、および薬学的に許容される担体を、その必要とする対象に投与することを含む、網膜ジストロフィーの処置のための方法を提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2に結合し得るか、および/またはRdcvf1またはRdcvf2の活性を調節し得る分子、またはRdcvf1またはRdcvf2の転写または翻訳を調節する核酸配列に結合し得る分子を同定する方法に関する。方法自体は、米国特許 5,541,070; 5,567,317; 5,593,853; 5,670,326; 5,679,582; 5,856,083; 5,858,657; 5,866,341; 5,876,946; 5,989,814; 6,010,861; 6,020,141; 6,030,779; 6,043,024 (出典明示により本明細書の一部とする)に開示されている。かかる方法で同定される分子も本発明の範囲内にある。
【0021】
他の態様において、本発明は、本発明の核酸を、処置を必要とする対象の1以上の組織に導入する方法に関する。その結果、核酸によりコードされる1以上のタンパク質が組織内の細胞により発現または分泌される。
【0022】
他の態様において、本発明は、光受容体細胞がRdCVF1またはRdCVF2をともに培養されるような内移植用の光受容体細胞を提供する方法に関する。
【0023】
本発明の他の目的、特性、利点、態様は、以下の記載より当業者にとって明らかになるであろう。しかし、以下の記載および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様でもって、説明のためにのみ提示されるものである。開示の本発明の精神および範囲内で種々の改変および修飾は、当業者が以下の記載および本開示の他の部分を読むことで容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、発現クローニングからのマウスRdcvf1ヌクレオチド配列およびマウスRdCVF1アミノ酸配列。
【図2】図2は、マウスRdcvf1Lヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。
【図3】図3は、ヒトRdcvf1およびヒトRdcvf1アミノ酸配列。
【図4】図4は、ヒトRdcvf1Lヌクレオチド配列、およびヒトRdcvf1Lアミノ酸配列。
【図5】図5は、マウスRdcvf2ヌクレオチド配列、およびマウスRdcvf2アミノ酸配列。
【0025】
【図6】図6は、マウスRdcvf2Lヌクレオチド配列、およびマウスRdcvf2Lアミノ酸配列。
【図7】図7は、ヒトRdcvf2ヌクレオチド配列、およびヒトRdcvf2アミノ酸配列。
【図8】図8は、Rdcvfの短形態のアミノ酸整列(配列番号2、6、10、14)およびRdcvfの長形態のアミノ酸整列(配列番号4、8,12,14)。
【図9】図9は、GST−Rdcvf1のプライマー。
【図10】図10:RDCVF1/RDCVF2の複数整列。
【0026】
【図11】図11は、マウスとヒトのRDCVF2の比較。
【図12】図12は、マウスRdcvf2とESTクローンbe552141、bi517442、bg707818、bi603812の複数整列。
【図13】図13は、Rdcvf1とESTクローンbg299078、ai716631、bg294111、be108041,bg395078の複数整列。
【図14】図14は、Rdcvf1にマッチするように正されたEST配列bg299078。
【図15】図15は、Rdcvf1Lにマッチするように正されたEST配列bg294111。
【0027】
【図16】図16は、5週網膜C57BL/6@N5週(グリーン)およびC3H/HE@N(レッド)における桿状体アレスチン(A)およびRdCSF1(B)の発現についてのリアルタイムRT−PCR分析。
【図17】図17は、Rdcvf2が桿状体依存的に発現され、かつCNSの他の部分で発現されることを示すRT−PCR分析。
【図18】図18は、RdCVF1が桿状体依存的に発現されることを示すPCR分析。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本明細書に引用されるすべての特許出願、特許、文献は出典明示により本明細書の一部とする。
【0029】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、組換えDNA学などについての多くの通常の技術を使用する。これらの技術は周知であり、例えば、下記に説明されている:Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.): Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M.P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory); Methods in Enthymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds.,)。
【0030】
本明細書で用いる「分別的に発現される遺伝子」は、(a)本明細書に開示されるDNA(例えば、図1および配列番号1に示されるもの、または図2および配列番号3に示されるもの)の少なくとも1つを含有する遺伝子;(b)本明細書に開示されるDNAによりコードされるアミノ酸配列(例えば、図1および配列番号2に示されるもの、または図2および配列番号4に示されるもの)をコードするすべてのDNA配列;(c)本明細書に開示されるコード配列に実質的に類似のすべてのDNA配列を意味する。
【0031】
最も広い意味で、用語「実質的に類似」は、ヌクレオチド配列について使用するとき、言及のヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を意味する。なお、この対応する配列は、言及のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと同じ構造および機能を実質的に有するポリペプチドをコードし、例えば、ポリペプチドの機能に影響を及ぼさないアミノ酸の変化のみが生じているものである。望ましくは、実質的に類似のヌクレオチド配列は、言及ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする。実質的に類似のヌクレオチド配列と言及ヌクレオチド配列との同一性の比率は、望ましくは少なくとも90%であり、より好ましくは少なくとも95%であり、さらに好ましくは少なくとも99%である。配列比較は、Smith-Waterman 配列整列算法(参照、例えば、Waterman, M.S. Introduction to Computational Biology: Maps, sequences and genomes. Chapman & Hall. London 1995. ISBN o-412-99391-0 または http://www-hto.usc.edu/software/squaln/index.html)を用いて行う。この localS プログラム、version 1.16 を次のパラメーターと共に用いる:マッチ:1、ミスマッチ・ペナルティ:0.33、オープンギャップ・ペナルティ:2、伸長ギャップ・ペナルティ:2。言及ヌクレオチド配列に「実質的に類似」のヌクレオチド配列は、言及ヌクレオチド配列に、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、2X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、より望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、さらにより望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、より好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、65℃で洗うと、ハイブリドし、なお機能的に均等の遺伝子産物をコードする。
【0032】
本明細書で開示の分別的に発現される遺伝子は、眼組織で発現され、桿状体細胞で作られる。しかし、この産生は、網膜ジストロフィー、例えば、網膜色素症、加齢関連斑点変性、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜症、迂曲状アトロフィー、先天性アモロシス、レフサム症候群、スタルガルド病、アッシャ症候群に罹患している者において、網膜ジストロフィーに罹患していない者における対応の組織に比べて、減少量すなわち低いレベルでしかなされない。分別的に発現された遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAおよびかかるmRNAから翻訳されたタンパク質は、桿状体組織および/またはかかる組織の関連組織において、網膜ジストロフィーに罹患していない者の対応組織におけるのに比して、多くとも約半分の量でしか、好ましくは多くとも1/5で、より好ましくは多くとも1/10で、さらにより好ましくは多くとも1/100の量でしか、存在しない。このようなRdcvf1またはRdcvf2mRNAの転写低下を、本明細書で「転写低下」という。
【0033】
本明細書での「宿主」は、いかなる手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降法、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などにより細胞中に導入された異型DNAを含有する真核細胞および原核細胞を意味する。
【0034】
本明細書での「異型」は、「天然源と異なる」を意味し、すなわち非天然状態を表す。例えば、宿主細胞が他の生物体、特に別の種から誘導されるDNAまたは遺伝子で形質転換されると、この遺伝子を有する宿主細胞またはその子孫細胞に関して、この遺伝子は異型である。同様に、異型は、同じ元の細胞型から誘導されるか、またはその細胞型に挿入されたヌクレオチド配列であって、非天然状態、例えば、異なる複写数で存在するか、または異なる調節エレメントの制御下に存在するヌクレオチド配列を意味する。
【0035】
ベクター分子は、異型核酸を挿入し得、ついで適当な宿主細胞に導入できる核酸分子である。好ましくは、ベクターは、1以上の複製源、および組換えDNAを挿入できる1以上の部位を有する。ベクターは、ベクターを有する細胞を有さない細胞から選択できる便利な手段をしばしば有する。例えば、薬物耐性遺伝子をコードする。通常のベクターは、プラスミド、ウイルスゲノムおよび(主に酵母および細菌で)「人工的染色体」を含む。
【0036】
「プラスミド」は、本明細書では一般的に、当業者に周知の標準的命名法にしたがって、大文字および/または数字の前および/または後の小文字pで表す。本明細書に開示の出発プラスミドは、市販され入手可能なもの、非制限的に公に入手可能なもの、周知の通常の適用により入手可能なプラスミドから構築できるものである。本発明において使用できる多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは、当業者に周知であり、容易に利用可能である。さらに、当業者は、本発明での使用のために適した多くの他のプラスミドを構築できよう。本発明におけるこれらのプラスミドなどのベクターの性質、構築、使用は、本開示から当業者に非常に明白であろう。
【0037】
用語「単離された」は、材料がその元の環境(例えば、自然界に存在するものの場合、自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物中の自然界に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然界に共存する材料のあるものまたはすべてから分離される同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、後に自然系に導入されるとしても、単離される。該ポリヌクレオチドは、ベクターの部分であり得、および/または該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成の部分であり得、かかるベクターや組成物が自然環境の部分でないように単離される。
【0038】
本明細書のおける用語「転写コントロール配列」は、DNA配列が作動的に連結しているタンパク質コード核酸配列の転写を導入、抑制あるいは制御するDNA配列、例えば、イニシエーター配列、エンハンサー配列、プロモーター配列を意味する。
【0039】
本明細書のおける用語「Rdcvf1転写コントロール配列」または「Rdcvf2転写コントロール配列」は、哺乳動物Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子、好ましくはマウスまたはヒトゲノムのRdcvf2遺伝子に関連して通常みられるいかなる転写コントロール配列でもある。
【0040】
本明細書のおける用語「非ヒトの転写コントロール配列」は、ヒトゲノムにみられない転写コントロール配列である。
本明細書のおける用語「ポリペプチド」は、用語「ポリペプチド」または「タンパク質(複数)」と互変的に使用する。
【0041】
本明細書における用語、本発明のポリペプチドの「化学的誘導体」は、通常は分子の部分でない追加の化学的部分を含有する本発明のポリペプチドである。かかる部分は、分子の溶解、吸収、生物学的半減期などを改善し得る。あるいは、この部分は、分子の毒性を低下し、分子の望ましくない副作用などを消失または軽減し得る。このような作用を仲介し得る部分は、例えば、下記に開示されている。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1980)。
【0042】
本明細書のおける用語「ニューロ保護剤」は、ニューロン細胞の変性を防ぐか、変性から保護する化合物である。「網膜保護剤」は、網膜細胞の変性を防ぐか、変性から保護する化合物である。
【0043】
本発明は、核酸分子、好ましくは下記のようなDNA分子を含む。(1)配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離された分子、(2)配列番号1または配列番号3の単離されたDNAに、高ストリンジェント条件でハイブリドする核酸配列を含む単離された核酸配列、(3)上記の(1)または(2)にハイブリドする核酸配列。かかるハイブリダイゼーション条件は、上記のように、高ストリンジェントまたはより低い高ストリンジェントであり得る。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合、高ストリンジェント条件は、例えば、6X SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で、37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)、60℃(23塩基オリゴ)で洗うことを意味し得る。種々の組成の核酸についてのかかるストリンジェント条件の適当な範囲は、下記に記載されている。Krause and Aaronson (1991) Methods in Enzymology, 200:546-556 および Maniatis et al. (前出)。
【0044】
これらの核酸分子は、標的遺伝子アンチセンス分子として働き、例えば、標的遺伝子調節および/または標的遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセンス・プライマーとして有用である。さらに、かかる配列は、リボザイムの部分および/またはトリプル・ヘリックス配列として使用でき、標的遺伝子の調節に有用である。なおさらに、かかる分子は、RdCVF1またはRdCVF2疾患原因対立遺伝子の存在を検出し得る診断方法の構成要素として有用であり得る。
【0045】
本発明はまた下記を含む:(a)上記のコード配列(すなわち、センス)および/またはその相補体(すなわち、アンチセンス)を含有するベクター;(b)コード配列の発現を指令する調節エレメントに作動的に結合する上記のコード配列を含有する発現ベクター;(c)宿主細胞においてコード配列の発現を指令する調節エレメントに作動的に結合する上記のコード配列を含有する遺伝子操作された宿主細胞。本明細書での使用において、調節エレメントは、限定でないが、誘導性および非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーター、および発現を駆動または調節する当業者に既知の他のエレメントを含む。
【0046】
本発明は、本明細書に開示された核酸配列の断片を含む。完全長Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の断片を、cDNAライブラリーのハイブリダイゼーション・プローブとして使用し、完全長の遺伝子を単離し、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子に高い配列類似性および類似の生物学的活性をもつ他の遺伝子を単離し得る。この型のプローブは、好ましくは少なくとも約30塩基を有し、例えば、約30〜約50塩基、約50〜約100塩基、約100〜約200塩基または200塩基以上(例えば300塩基)を含有する。プローブを用いてまた、完全長の転写体に対応するcDNAクローン、および完全なRdcvf1またはRdcvf2遺伝子を含有し、調節およびプロモーター領域、エキソンならびにイントロンを含むゲノムクローンまたはクローンを同定できる。スクリーンの例は、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子のコード領域を既知のDNA配列の使用により単離し、図1〜8に開示の単離配列のオリゴヌクレオチドプローブまたはランダム・プライニングを合成することを含む。本発明の遺伝子配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを用いて、ヒトcDNA、ゲノムDNAのライブラリーをスクリーンし、プローブがライブラリーの個々のクローンのいずれにハイブリドするかを調べる。
【0047】
上記の遺伝子配列に加えて、かかる配列のオルトログ(orthologs)が他の種に存在し得ると、過剰な実験を伴わずに、当技術分野でよく知られる分子生物学の技術により、同定し、容易に単離できる。さらに、この遺伝子産物の1以上のドメインに広範な相同性を有するタンパク質をコードするゲノム中の他の遺伝子座に遺伝子が存在することがある。この遺伝子も類似の技法により同定できる。オルトログまたは相同の例を図8、10、11、12,13に示す。
【0048】
例えば、単離の発現された遺伝子配列を標識して使用し、所望の生物体から得られたmRNAで構築されたcDNAライブラリーをスクリーンできる。標識配列が誘導された生物体と異なる生物体からcDNAが誘導されたときは、ハイブリダイゼーション条件は低ストリンジェントである。あるいは、標識された断片を用いると所望の生物体から誘導されたゲノムライブラリーをスクリーンし得る。この場合も適当に低ストリンジェント条件を用いる。かかる低ストリンジェント条件は当業者によく知られており、ライブラリーおよび標識配列が誘導される具体的な生物体の系列発生に依存して変わり得るであろう。かかる条件についての指針として、例えば、上記引用の Sambrook et al を参照のこと。
【0049】
さらに未知の発現された遺伝子型の配列を、所望の遺伝子内のアミノ酸配列に基づいて設計された2つの変性オリゴヌクレオチド・プライマーのプールを用いるPCRによって、単離できる。反応のテンプレートは、相同体またはスプライシング変異体を発現することが知られているか、発現すると思われる、ヒトまたは非ヒトの細胞系または組織から調製されたmRNAの逆転写により得られるcDNAであり得る。
【0050】
PCR産物をサブクローンし配列決定して、増幅された配列が発現の遺伝子様核酸配列の配列を表すことを確認できる。ついで、PCR断片を用いて、種々の方法により完全長cDNAクローンを単離できる。例えば、増幅された断片を標識して用い、バクテリアファージcDNAライブラリーをスクリーンできる。あるいは、標識された断片を用いて、ゲノムライブラリーをスクリーンできる。
【0051】
PCR技法を用いて、完全長cDNA配列も単離できる。例えば、標準的な方法に従って、RNAを適当な細胞または組織源から単離できる。逆転写反応をRNAに、第1鎖合成のプライミングのため増幅断片の最5'末端に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、行い得る。ついで、得られたRNA/DNAハイブリドに、標準的なターミナル・トランスフェラーゼ反応を用いて、「テイルされた」グアニンを末端につけ、ハイブリドをRNAaseHで消化し、そして第2鎖合成をポリCプライマーで駆動できる。このように、増幅断片のcDNA配列上流を容易に単離できる。使用し得るクローニング法の総説については、例えば、Sambrook et al., 1989 前出を参照。
【0052】
同定された分別的に発現された遺伝子が正常または野生の遺伝子であると同定された場合、この遺伝子を用いて、その変異対立遺伝子を単離できる。このような単離は、遺伝的基礎を有することが知られるか予測されるプロセスまたは障害において好ましい。疾患症候群に関係する遺伝子型を有することが知られるか予測される個体から変異対立遺伝子を単離できる。変異対立遺伝子またはその産物を下記の診断アッセイ系に利用できる。
【0053】
変異遺伝子のcDNAを、例えば、当業者に周知のPT−PCRを用いて単離できる。この場合、変異遺伝子を有すると思われる個体で発現されることが知られるか予測される組織より単離のmRNAに、オリゴdTオリゴヌクレオチド(またはランダム・ヘキソマー)をハイブリダイズせしめ、そして新しい鎖をリバース・トランスクリプターゼで伸長して、第1cDNA鎖を合成できる。ついで、cDNAの第2鎖を、正常遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(または他の適当な手段)を用いて、合成する。これらの2プライマーを用い、産物をPCRで増幅し、適当なベクター中にクローン化し、当業者に周知の方法でDNA配列解析を行う。DNA配列を変異遺伝子と正常遺伝子で比較して、変異遺伝子産物の機能の喪失または変更を起こす変異を確かめ得る。
【0054】
あるいは、ゲノムまたはcDNAライブラリーを、変異対立遺伝子を有すると思われる個体で所望の遺伝子を発現することが知られるか予測される組織より、DNAまたはRNAを用いて、構築およびスクリーンできる。正常遺伝子またはその適当な断片を標識し、プローブとして用いて、ライブラリーにおける対応の変異対立遺伝子を同定できる。この遺伝子を含有するクローンを当技術分野で通常的に用いられる方法で精製し、上記の配列解析を行い得る。
【0055】
あるいは、発現ライブラリーを、変異対立遺伝子を有すると思われる個体で所望の遺伝子を発現することが知られるか予測される組織より、単離されるDNAまたは合成されるcDNAを用いて、構築できる。この方法において、推定の変異組織によりつくられる遺伝子産物を、発現せしめ、正常遺伝子産物に対する抗体と組合す標準的抗体スクリーニング法でスクリーンできる(スクリーニング法について、例えば、参照、Harlow, E. and Lane, eds., 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor)。変異が変化した機能を有する発現遺伝子産物をもたらした場合(例えば、ミスセンス変異の結果)、抗体のポリクローナルセットは変異遺伝子産物と交差反応するようである。この標識抗体との反応により検出されるライブラリークローンを精製し、上記の配列解析を行い得る。
【0056】
分別的に発現される遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13のヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質を含む。特に、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列であるか、それを含むポリペプチドおよびその断片である。
【0057】
さらに、発現される遺伝子産物は、機能的に均等の遺伝子産物を表すタンパク質を含む。この均等の遺伝子産物は、上記の分別的に発現される遺伝子配列によりコードされるアミノ酸配列の中で、アミノ酸残基の欠失、付加または置換を含有し得る。なお、これらの欠失等の変化は、サイレントの変化であり、従って機能的に均等の分別的に発現される遺伝子産物(多形性)をつくる。アミノ酸の置換は、関与残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性を基に、および他種に由来のアミノ酸との比較でなし得る。
【0058】
例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アニリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアニリン、トリプトファン、メチオニンがあり、極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンがあり、陽性電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、ヒスチジンがあり、陰性電荷(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸、グルタミン酸がある。
【0059】
本明細書のおける用語「機能的に均等」は、分別的に発現される遺伝子配列によりコードされる外因性の分別的に発現される遺伝子産物と実質的に類似のインビトロまたはインビボ活性を発揮し得るタンパク質またはポリペプチドを意味する。「機能的に均等」はまた、外因性の分別的に発現される遺伝子産物の対応する部分が反応するのと類似の態様で、他の細胞分子または細胞外分子と反応し得るタンパク質またはポリペプチドを意味する。例えば、「機能的に均等」のペプチドは、イムノアッセイにおいて、抗体が外因性タンパク質の対応ペプチド(すなわち、「機能的に均等」のペプチドを達成するように改変されたペプチドのアミノ酸配列)に、または外因性タンパク質自体に結合するのを減少せしめる。なお、抗体は外因性タンパク質の対応ペプチドに対して生じている。当モル濃度の機能的に均等のペプチドは対応ペプチドの上記結合を、少なくとも約5%、好ましくは約5%〜10%、さらに好ましくは約10%〜25%、よりさらに好ましくは約25%〜50%、最も好ましくは約40〜50%減少せしめる。
【0060】
分別的に発現される遺伝子産物は、当技術分野で周知の技術を用いる組換えDNA法によりつくり得る。分別的に発現される本発明のポリペプチドおよびペプチドを、分別的に発現される遺伝子配列をコードする核酸の発現により調製する方法を記載する。当業者に周知の方法を用いて、発現される遺伝子タンパク質コード配列および適当な転写/翻訳コントロールシグナルを含有する発現ベクターを構築できる。この方法には、例えば、インビトロ組換えDNA法、合成法、インビボ組換え/遺伝子組換え法がある。参照、例えば、Sambrook et al., 1989、前出および Ausuubel et al., 1989、前出。あるいは、発現遺伝子タンパク質配列をコードし得るRNAまたはcDNAを、例えば、シンセサイザーにより化学的に合成できる。例えば、"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait, M. J. ed., IRL Press, Oxford を参照(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0061】
多様な宿主−発現ベクター系を用いて、本発明の分別的に発現される遺伝子コード配列を発現できる。このような宿主−発現ベクター系は、所望のコード配列をつくり、精製し得るビヒクルを提示し、また、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされたときに、本発明の分別的に発現される遺伝子タンパク質をインシトゥで発現する細胞を提示する。これには、限定でないが、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えバクテリアファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E. coli、B. subtilis)などの微生物があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces, Pichia)があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、baculovirus)で感染された昆虫細胞系があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイクウイルス)で感染されるか、組換えプラスミド形質転換ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系があり、哺乳動物細胞のゲノムから誘導されるプロモーター(例えば、メタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物のウイルスから誘導されるプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシナウイルス7.5プロモーター、シトメガロウイルス前期遺伝子プロモーター)を含有する組換え発現構築体を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)がある。
【0062】
細胞に固有のRdcvf1またはRdcvf2遺伝子からの細胞によるRDCVF1またはRDCVF2の発現も行い得る。この発現方法の詳細は、米国特許5,641,670、5,733,761、5,968,502、5,994,127に記載されている(出典明示により本明細書の一部とする)。米国特許5,641,670、5,733,761、5,968,502、5,994,127の方法によりRDCVF1またはRDCVF2を発現するように誘発された細胞を、組織中のRDCVF1またはRDCVF2の局所濃度を増すために、生きている動物の所望の組織に植え込み得る。
【0063】
細菌系において、多くの発現ベクターを、分別的に発現される遺伝子タンパク質の発現についての使用意図にしたがって、好都合に選択できる。例えば、大量の該タンパク質をつくり、抗体の産生のために、ペプチド・ライブラリーをスクリーンするとき、例えば、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベル発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターには、限定でないが、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J, 2:1791)があり、このベクターでは分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列がlacZコード領域をもつフレーム内でベクター中に、融合タンパク質がつくられるように、個々に連結反応し得るものであり、さらにpINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264:5503-5509)などがある。PGEXベクターを用いても、外来タンパク質を融合タンパク質としてグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)で発現できる。一般的に、このような融合タンパク質は溶性であり、溶解細胞からグルタチオン−アセファガロース・ビードへの吸収および遊離グルタチオンの存在での溶出により容易に精製できる。PGEXベクターを設計して、クローン化標的遺伝子タンパク質がGTS部分からエンドペプチダーゼにより放出され得るように、トロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ開裂部位を導入する。
【0064】
プロモーター領域は、プロモーター領域を欠くレポーター転写ユニット、例えば、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(「cat」)またはルシフェラーゼ転写ユニット、候補プロモーター断片すなわちプロモーターを含有し得る断片を導入するための制限部位の下流を含むベクター用いる所望の遺伝子から選択できる。よく知られているように、catまたはルシフェラーゼ遺伝子の制限部位上流でプロモーター含有断片のベクター中への導入は、CATまたはルシフェラーゼ活性をつくりだす。この活性は標準的CATアッセイまたは発光測定により検出できる。この目的に適したベクターはよく知られており、容易に入手できる。この3ベクターはpKK232−8、−pCM7、pGL3(Promega, E1751, Genebank Ass. no. u47295)である。このように、本発明のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターは、よく知られ容易に入手できるプロモーターのみを含むだけでなく、レポーター遺伝子アッセイを用いる上記の技法で容易に得られるプロモーターも含む。
【0065】
本発明におけるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に適する既知の細菌性プロモーターには、E. coli lacI および lacZ プロモーター、T3およびT7プロモーター、T5 tac プロモーター、ラムダPR、PLプロモーター、trp プロモーターがある。この発現に適する既知の真核プロモーターには、CMC直接初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、Rous 肉腫ウイルス(RSV)などのレトロウイルスLTRプロモーター、マウスのメタロチオネイン−Iプロモーターなどのメタロチオネインプロモーターがある。
【0066】
昆虫系において、Autographa california 核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現するためのウイルスとして使用し得るいくつかの昆虫系のひとつである。このウイルスは Spodoptera frugiperda 細胞中で生長する。分別的に発現される遺伝子コード配列は、個々にウイルスの非必須領域(例えば、ポリヒドリン遺伝子)中にクローン化して、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。分別的に発現される遺伝子コード配列を成功裡に挿入すると、ポリヒドリン遺伝子の不活化および非閉の組換えウイルス(例えば、ポリヘドリン遺伝子によるコードのタンパク様膜を欠くウイルス)の産生が起きる。ついで、これらの組換えウイルスを用いて、挿入遺伝子が発現される Spodoptera frugiperda 細胞を感染せしめる(例えば、Smith et al., 1983, J. Virol. 46: 584; Smith, USP 4,215,051 を参照)。
【0067】
哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルスを基にする発現系を使用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、所望の分別的に発現される遺伝子コード配列をアデノウイルス転写/翻訳コントロール複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列に連結反応せしめ得る。このキメラ遺伝子をアデノウイルス・ゲノム中にインビボおよびインビトロ組換えにより挿入できる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE2)での挿入は、感染の宿主における分別的に発現される遺伝子タンパク質を発現し得る組換えウイルスもたらす(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3666-3669 参照)。特殊な開始シグナルも分別的に発現される遺伝子コード配列の効率的な翻訳に必要なことがある。このシグナルには、ATG開始コドンおよび近接の配列がある。完全な分別的に発現される遺伝子が、それ自体で開始コドンおよび近接の配列を含み、適当な発現ベクターに挿入された場合、追加の翻訳コントロールシグナルは必要でない。しかし、分別的に発現される遺伝子コード配列の部分のみが挿入された場合、ATG開始コドンをおそらく含む外因性の翻訳コントロールシグナルを用意しなければならない。さらに、開始コドンは、全挿入体の翻訳を確保するために、所望のコード配列のリーディングフレームをもつ相にあらねばならない。これらの外因性翻訳コントロールシグナル(Kozack 配列)および開始コドンは、天然または合成の種々の源に由来し得る。発現の効率は、適当な転写エンハンサー・エレメント、転写ターミネーターなどの挿入により向上できる(参照、Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544)。
【0068】
宿主細胞での発現のための適当なベクターおよびプロモーターの選択は、既知の方法であり、発現ベクターの構築、ベクターの宿主中への導入、および宿主での発現は、当技術分野で通常の技術である。
【0069】
一般的に、組換え発現ベクターは、複製源、下流構造配列の転写を指示する高度発現遺伝子由来のプロモーター、およびベクターへの曝露後にベクター含有細胞の単離を可能にする選択的マーカーを含む。
【0070】
加えて、挿入の配列の発現を調節し、または所望の特定の形態で遺伝子産物を改変やプロセシングを行う宿主細胞種を選び得る。タンパク質産物のこの改変(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、開裂)は、タンパク質機能にとって重要なことがある。異なる宿主細胞がタンパク質の翻訳後プロセシングおよび改変に特徴的および特異的なメカニズムをもつ。適当な細胞系および宿主系を選んで、発現された外来のタンパク質の正しい改変およびプロセシングを確保し得る。この目的のために、一次転写体の適当なプロセシング、グリコシル化、遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用し得る。この哺乳動物宿主細胞には、限定でないが、CHO、VERO,BHK,HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などがある。
【0071】
組換えタンパク質の長期間・高収量の産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、分別的に発現されるタンパク質を安定的に発現する細胞系を操作できる。複製のウイルス源を含有する発現ベクターを用いるよりも、適当な発現コントロールエレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択可能マーカーにより調節されたDNAで宿主細胞を形質転換できる。外来DNAの導入に続き、操作された細胞を1−2日、強化培地で成長せしめ、次いで選択培地に移し得る。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に抵抗性を付与し、プラスミドの染色体への安定的な組み込みのを可能にし、クローン化され、細胞系に伸長され得る焦点を細胞がつくるのを可能にする。この方法を適切に使用して、分別的に発現されるタンパク質を発現する細胞系を操作する。この操作された細胞系は、分別的に発現されるタンパク質の外因性活性に作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用である。これらの安定な細胞系は、直接的にまたは包膜して、細胞治療法として使用できる。
【0072】
多くの選択系を使用できる。それには、限定でないが、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン-グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc, Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22:817)がある。遺伝子を tk-、hgprt-または aprt- 細胞でそれぞれ使用できる。また、アンチメタボレート抵抗を dhfr、gtp、neo、hygro の選択基礎に使用できる。dhfr はメトトレキセートに抵抗を付与する(Wigler et al., 1980, Natl. Acad. Sci. USA 78:1527)。gtp はミコフェノール酸に抵抗を付与する(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072)。neo はアミノグリコシドG−418に抵抗を付与する(Colberre-Garapin et al., 1981, J. Mol. Biol. 150:1)。hygro はヒグロマイシンに抵抗を付与する(Santerre et al., 1984, Gene 30:147)。
【0073】
別の融合タンパク質系がヒト細胞系で発現された非変性融合タンパク質の精製を容易にする(Janknecht et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-8976)。この系において、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ酸末端タグに翻訳的に融合されるように、所望の遺伝子をワクシニア組換えプラスミド中にサブクローンする。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに入れ、ヒスチジン標識タンパク質をイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0074】
下記のようなアッセイ系で成分として使用するとき、分別的に発現されるタンパク質を直接的または間接的に標識し、分別的に発現されるタンパク質と試験物質とで形成された複合体の検出を容易にする。種々の標識系のいずれかを用いる。それには、限定でないが、125Iなどの放射性同位元素;基質に曝露されたときに検出可能な熱量測定シグナルまたは光を生み出す酵素標識系;蛍光標識がある。
【0075】
組換えDNA法を用いて、これらのアッセイ系用の分別的に発現されるタンパク質をつくる場合、標識化、免疫化および/または検出を容易にできる融合タンパク質を操作するのが好都合である。
【0076】
間接的標識化には、分別的に発現される遺伝子産物に特異的に結合する標識抗体などのタンパク質の使用がある。この抗体には、限定でないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリーによりつくられる断片がある。
【0077】
他の実施態様において、RDCVF1またはRDCVF2タンパク質、またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸を、遺伝子治療法で投与して、円錐体機能を促進する。遺伝子治療法とは、核酸を対象に投与することによりなされる治療を意味する。本発明のこの実施態様において、核酸は、円錐体機能を促進して治療効果を仲介する、そのコードされたタンパク質をつくる。
【0078】
当技術分野で利用可能な遺伝子治療のいかなる方法も本発明にしたがって使用できる。例示的な方法を下記する。
【0079】
好ましい態様において、治療物は、RDCVF1もしくはRDCVF2タンパク質またはその断片もしくはキメラタンパク質を適当な宿主中で発現する発現ベクターの部分であるRdcvf1またはRdcvf2核酸を含む。特に、この核酸は、Rdcvf1またはRdcvf2コード領域に作動し得るように連結されたプロモーター、誘導性または構成性で選択的に組織特異的な該プロモーターを有する。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2コード配列および他の所望の配列が、ゲノムの所望の部位で同族組換えを促進する領域で挟まれているような核酸分子を用いると、Rdcvf1またはRdcvf2核酸の染色体内発現を得る(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Natrure 342:435-438)。
【0080】
核酸の患者への配送は、核酸または核酸保持ベクターに患者が直接曝露されるように直接的であるか、または細胞がまずインビトロで核酸に形質転換され次いで患者に移植されるように間接的である。この2つの方法は、それぞれインビボ治療法または生体外治療法として知られている。
【0081】
具体的な実施態様において、核酸をインビボで直接投与し、核酸が発現され、コード産物をつくる。これは、当技術分野で知られている多数の方法のいずれでも行い得る。例えば、適当な核酸発現ベクターの部分として核酸を構築し、細胞内になるように投与することにより、欠損または弱毒化レトロウイルスなどのウイルス(アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス)を使用する感染により(例えば、USP 4,980,286 および前出の他の文献を参照)、裸のDNAの直接注入により、微粒子衝撃(例えば、遺伝子ガン;Biolistic, DuPont)、リピドまたは細胞表面受容体またはトランスフェクト剤でのコーティング、リポソームまたは微粒子またはマイクロカプセルへの封入の使用により、核に入ることが知られているペプチドとの結合での核酸の投与により、受容体仲介エンドサイトーシスの結合での核酸の投与による(例えば、参照、米国特許 5,166,320; 5,728,399; 5,874297; 6,030,954、これらのすべてを出典明示により本明細書の一部とする)(受容体を特異的に発現する細胞型を標的にするために使用できる)などである。別の実施態様において、リガンドがエンドソームを破壊する融合性ウイルス性ペプチドを含む核酸-リガンド複合体をつくり、核酸がリポソーム変性を回避するのを可能にできる。別の実施態様において、特異的な受容体を標的にして、細胞特異的取りこみおよび発現についてインビボで核酸を標的にできる(参照、例えば、PCT WO 92/06180; WO 92/22635; WO 92/20316; WO 93/14188; WO 93/20221)。あるいは、核酸を同族組換えにより細胞内に導入し、発現のための宿主細胞DNAにくみ込むことができる(参照、例えば、米国特許 5,413,923; 5,416,260; 5,574,205; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438)。
【0082】
具体的な実施態様で、Rdcvf1またはRdcvf2核酸を含有するウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスを使用できる(参照、例えば、米国特許 5,219,740; 5,604,090; 5,834,182)。このレトロウイルスを改変して、ウイルスゲノムの梱包および宿主細胞DNAへの統合に必要でないレトロウイルス配列を削除できる。遺伝子治療で使用されるRdcvf1またはRdcvf2核酸をベクターにクローン化する。このベクターは遺伝子の患者への配送を容易にする。
【0083】
アデノウイルスは遺伝子治療で使用できる別のベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸器上皮に配送するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは、自然的に呼吸器上皮に感染して、緩和な疾患を起こす。アデノウイルスによる配送系のための他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、筋肉である。アデノウイルスは非分割細胞を感染し得るという利点を有する。アデノウイルスによる遺伝子治療を行う方法は、例えば、米国特許 5,824,544; 5,868,040; 5,871,722; 5,880,102; 5,882,877; 5,885,808; 5,932,210; 5,981,225,5,994,106; 5,994,132; 5,994,134; 6,001,557; 6,033,8843(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0084】
アデノ関連ウイルス(AAV)も遺伝子治療に提案されている。アデノ関連ウイルスは、遺伝子を網膜に配送するための特に魅力的なビヒクルである。AAVを作り、使用する方法は、例えば、米国特許 5,173,414; 5,252,479; 5,552,311; 5,658,785; 5,763,416; 5,773,289; 5,843,742;5,869,040; 5,942,496; 5,948,675(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0085】
遺伝子治療の他の方法には、遺伝子を組織培養での細胞に移入することがあり、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクションまたはウイルス感染などの方法による。通常、移入の方法には、選択可能マーカーの細胞への移入がある。ついで、細胞を選択下に置き、移入された遺伝子を取り上げ発現さす細胞を単離する。この細胞を患者に直接または封入後に配送する。
【0086】
この実施態様において、得られる組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸を細胞中に導入する。この導入は、当技術分野で知られているいかなる方法でも行い得る。それには、限定でないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージ感染、細胞融合、染色体仲介遺伝子移入、マイクロ細胞仲介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などがある。外来遺伝子の細胞への導入について多くの技法が当技術分野で知られており、受容細胞の必要な発育的および生理的機能が破壊されない場合に、本発明で使用できる。この技法で核酸の細胞への安定的な移入をなし、核酸が細胞により発現されて、好ましくは、その子孫細胞により受け継がれ発現される。
【0087】
得られる組換え細胞を当技術分野で知られる種々の方法で患者に配送できる。好ましい実施態様において、上皮細胞を皮下注射などにより注入する。他の実施態様において、組換え皮膚細胞を皮膚移植片として患者に適用し得る。組換え血液細胞(例えば、造血桿細胞または先祖細胞)を好ましくは静脈投与する。使用する細胞の量は所望する作用や患者の状態などに依存し、当業者はそれを決定できる。
【0088】
核酸を遺伝子治療の目的のために導入できる細胞はいかなる所望の利用可能な細胞を含む。それには、限定でないが、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;種々の幹細胞または先祖細胞、特に骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られる造血幹細胞または先祖細胞がある。
好ましい実施態様において、遺伝子治療に使用される細胞は患者に自己由来である。
【0089】
組換え細胞を遺伝子治療に使用する実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2を細胞中に導入して、細胞またはその子孫細胞がそれを発現するようにし、ついで組換え細胞を治療作用のためにインビボ投与する。具体的な実施態様において、幹細胞または先祖細胞を使用する。インビトロで単離および保持できるいずれの幹および/または先祖細胞を本発明のこの実施態様において使用し得る。そのような幹細胞には、限定でないが、造血幹細胞(HSC)、皮膚や臓器内膜などの上皮組織の幹細胞、胚心筋細胞、肝幹細胞(参照、例えば、WO 94/08598)および神経幹細胞(Stemple and Anderson, 1992, Cell 71:973-985)がある。
【0090】
上皮幹細胞(ESC)や角化細胞は、既知の方法により皮膚や臓器内膜などの組織から得ることができる(Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)。皮膚などの層化された上皮細胞において、再生が胚層、基底板に近接の層内で有糸分裂により起きる。臓器内膜中の幹細胞がこの組織の迅速な再生速度を提供する。患者またはドナーの皮膚や臓器内膜から得られるESCまたは角化細胞を組織培養において生育できる(Pittelkow and Scott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。もしESCをドナーから準備すると、宿主の移植片に対する反応を抑制する方法(例えば、中程度の免疫抑制を促進するため、照射、薬剤または抗体の投与)を使用できる。網膜幹細胞(Tropepe et al., 2000, Science, 287:2032)。
【0091】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCのインビトロでの単離、増殖、保持を提供するいかなる技法も本発明の実施態様で使用できる。これを実施し得る技術は、(a)未来の宿主またはドナーから単離される骨髄細胞からのHSC培養物質の単離および確立、または(b)同種または異種の前に確立された長時間HSC培養物の使用を含む。非自己由来のHSCは、未来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法を併せて使用し得る。本発明のある実施態様において、ヒト骨髄細胞を針挿入により後腸骨稜から得ることができる(参照、例えば、Kodo et al., 1984, J. Clin. Invest. 73:1377-1384)。本発明の好ましい実施態様において、HSCを非常に富んだ、または実質的に純粋の形でつくり得る。この富化形態は、長時間培養の前、間、後に達成でき、当技術分野で知られている技法でなし得る。骨髄細胞の長時間培養の確立および保持に、例えば、修飾 Dexter 細胞培養法(Dexter et al., 1977, J. Cell Physiol. 91:335)または Witlock-Witte 培養法(Witlock and Witte, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:3608-3612)を使用できる。
【0092】
具体的な実施態様において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コード領域に作動し得るように連結された誘発プロモーターを含み、核酸の発現が転写の適当な誘発剤の存在あるいは不存在の調節により調節可能である。
【0093】
1以上の分別的に発現される遺伝子エピトープを特異的に認識し得る抗体の産生について本明細書で記載する。この抗体には、限定でないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')2抗体、Fab発現ライブラリーによりつくられる断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合断片がある。このような抗体を、例えば、生物サンプルにおける指紋、標的、遺伝子の検出に、または異常な標的遺伝子の活性の阻害法として使用できる。この抗体を疾患処置法の部分としておよび/または診断法の部分として使用する。この方法では、Rdcvf1またはRdcvf2の異常、またはレベルRdcvf1またはRdcvf2の異常形態の存在について患者で、当業者に周知の方法により水性体液および/または硝子体を採取する(例えば、Foster, RK, Abbott, RI., Gelender, H. (1980) Management of infectious endophthalmitis Ophthalmology 87, 313-319)。
【0094】
分別的に発現される遺伝子に対する抗体の産生のために、種々の宿主動物を、分別的に発現されたタンパク質またはその部分の注射により、またはDNA免疫化法により免疫できる。このような宿主動物には、限定でないが、ウサギ、マウス、ラット、さらに多数がある。種々のアジュバントを用いて、宿主の種類に応じて免疫応答を増大できる。それには、フロインドアジュバント(完全および不完全)、酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リソレシチンなどの界面活性剤、pluronic ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、かぎ穴カサガイ・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、BCG(Calmette-Guerin 菌)および Corynebacterium parvum などの有用なヒトアジュバントがある。
【0095】
ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物やその抗原機能誘導体などの抗原で免疫された動物の血清から誘導された抗体分子の異質性集団である。ポリクローナル抗体の産生には、上記のような宿主動物を、やはり上記のようなアジュバントで補われた分別的に発現される遺伝子産物の注射で免疫する。
【0096】
モノクローナル抗体は、特定の抗原に対する抗体の同族性集団であって、培養中での継続的細胞系による抗体分子の産生を提供するいかなる技法によっても得ることができる。この技法には、限定でないが、Kohler and Milstein のハイブリドーマ法 (1975, Nature 256:495-497; USP 4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、EBVハイブリドーマ法(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96) がある。これらの抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む免疫グロブリンおよびこれらのサブクラスで有り得る。本発明のmAbをつくるハイブリドーマはインビトロおよびインビボで培養し得る。インビボでの高力価のmAbの産生は、これを現在での好ましい産生法とする。
【0097】
加えて、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法を使用し得る(Morisson et al., 1984, Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314:452-454)。これは、適当な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子、併せて適当な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子のスプライシングによる。キメラ抗体は異なる部分が異なる動物種から誘導される分子である。この動物種は、ネズミmAbから誘導される可変または高度可変の領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する。
【0098】
あるいは、単鎖抗体の産生についての技法(米国特許 4,946,778; Bird, 1988, Science 242:423-426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Ward et al, 1989, Nature 334:544-546)を、分別的に発現される遺伝子-単鎖抗体をつくるのに適用できる。単鎖抗体の形成は、Fv領域の重鎖および軽鎖断片をアミノ酸橋で連結し、単鎖ポリペプチドをつくることによる。
【0099】
最も好ましくは、「ヒト化抗体」の産生に有用な技法を用いて、本明細書に開示されたようなポリペプチド、断片、誘導体、機能的均等物に対する抗体をつくる。その技法は、下記の米国特許に開示されている:米国特許 5,932,448; 5,693,762; 5,693,761; 5,585,089; 5,530,101; 5,910,771; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,789,650; 5,545,580; 5,661,016; 5,770,429(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0100】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知の方法でつくり得る。例えば、この断片には、限定でないが、抗体分子のペプシン消化によりつくられるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド橋の減少によりつくられるFab断片がある。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science, 246:1275-1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を行い得る。
容易な検出に特に好ましいのは、多くの変形を有するサンドイッチ法であってそのすべてを本発明に含める。
【0101】
例えば、典型的なフォワードアッセイにおいて、非標識抗体を固体基質上で免疫化し、試験サンプルを結合分子と接触せしめる。適当な時間でのインキュベーション後に、十分な時間で抗体-抗原バイナリー複合体が形成する。この時点で、検出可能なシグナルを誘発できるレポーター分子で標識された第2抗体を加え、インキュベートし、抗体-抗原-標識抗原の3体複合体の形成に十分な時間を与える。未反応材料を洗い出し、抗体の存在を、シグナルの観察により測定するか、既知量の抗原を含有する対照サンプルと比較して定量し得る。フォワードアッセイの変法には、サンプルと抗体の両方を同時に結合抗体に加える同時アッセイ、または標識抗体と試験サンプルとを最初に結合せしめ、インキュベートし、ついで非標識表面結合抗体に加える逆アッセイがある。これらの技法は当業者に周知であり、少しの変形の可能性も容易に明らかである。本明細書での「サンドイッチ法」は、基本的な2部位法についての変法を含む。本発明のイムノアッセイについて、唯一の限定的要素は、非標識および標識の抗体がRdCVF1またはRdCVF2特異的抗体であることである。
【0102】
この型のアッセイにおいて最も普通に使用されるレポーター分子は、いずれかの酵素、蛍光体または放射性核種を含有する分子である。酵素イムノアッセイの場合、酵素が第2抗体に、通常グルタルアルデヒドまたはペリオデートによってコンジュゲートしている。しかし、容易に分かるように、変形された種々の異なる連結反応が存在し、当業者に知られている。通常使用される酵素は、ホースラッジッシュ・ペルオキシダーゼ、グルコース・オキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどである。具体的な酵素とともに使用される基質は、対応する酵素による加水分解時の検出可能な色変化の産出について、一般的に選択する。例えば、リン酸 p‐ニトロフェニルがアルカリホスファターゼ・コンジュゲートでの使用に適しており、ペルオキシダーゼ・コンジュゲートには1,2‐フェニレンジアミンまたはトルイジンを通常使用する。蛍光源性基質も使用でき、これは、上記の色素形成基質よりも蛍光産物をつくる。適当な基質を含有する溶液を、抗体‐RdCVF1またはRdCVF2‐標識抗体の3体複合体に加える。基質が第2抗体と結合している酵素と反応し、定量的な視覚シグナルをもたらし、通常分光器でこれを定量すると、血清サンプル中に存在するRdcvf1またはRdcvf2の量を評価できる。
【0103】
あるいは、フルオレッセンやローダミンなどの蛍光化合物を抗体に、その結合能を変えないで、化学的にカップリングできる。特定波長の光の照射で活性化されたときに、蛍光色素‐標識抗体が光エネルギーを吸収し、分子内で励起状態をおこし、ついで特徴的な長い波長で光が照射する。照射は、光顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光法およびEIA法は、当技術分野でよく知られており、本発明に特に好ましい。しかし、放射性同位体などの他のレポーター分子、化学ルミネッセンスや生物ルミネッセンス分子も使用できる。当業者にとって、必要とする使用に適した方法を改変するのは容易であろう。
【0104】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドの診断試薬としての使用に関する。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドをコードする遺伝子の変異形の検出が、機能欠損に関連して、疾患の診断または疾患の疑いに加え、またはそれらを明確にする診断的手段を提供する。これは、遺伝子の過小発現、過剰発現、発現の空間的または時間的な変化から得られる。遺伝子に変異を持っている個体を種々の技法によりDNAレベルで検出できる。
【0105】
診断用の核酸は、血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料などの対象の細胞から取得できる。ゲノムDNAは、検出のために直接的に使用でき、あるいは解析の前にPCRなどの増幅法で酵素的に増幅できる。RNAまたはcDNAも同様に使用できる。削除および挿入を、増幅された産物を正常な遺伝子型と比較することによるサイズの変化で検出できる。点変異を、増幅DNAを標識ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることにより同定できる。好ましく対合された配列を、誤対合のデュープレックスとRNase消化または融点の変化により識別できる。DNAの相違も、DNA断片のゲル中における電気泳動の、変性剤のありまたはなしでの動態変化により、あるいは直接的なDNA配列決定により検出できる(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)。特定の部位での配列変化も、RNaseおよびS1保護などのヌクレアーゼ保護または化学的開裂法で明らかにし得る(参照、Cotton et al., Proc Natl Acad Sci USA (1985) 85:4397-4401)。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2あるいはその断片を含むオリゴヌクレオチド・プローブのアレイを構築して、遺伝子変異などの効率的なスクリーニングを行い得る。アレイ技法は、周知であり、一般的に適用可能であり、遺伝子発現、遺伝的連鎖、遺伝的可変性を含む分子遺伝学における多様な問題に取り組むのに使用できる(参照、例えば、M. Chee et al., Science, Vol 274, pp 610-613 (1996))。
【0106】
診断アッセイは、上記の方法によるRdcvf1またはRdcvf2遺伝子の変異の検出を介する疾患に対する感受性を診断または決定する方法を提供する。さらに、そのような疾患を、対象に由来するサンプルから異常なRdcvf1またはRdcvf2の発現を調べることを含む方法により診断できる。すなわち、発現はポリヌクレオチドの定量についての既知のいずれの方法でもRNAレベルで測定できる。例えば、PCRなどの核酸増幅法、RT-PCR、RNase保護法、ノーザンブロット法、他のハイブリダイゼーション法による。宿主に由来するサンプルにおいて本発明のポリペプチドなどのタンパク質のレベルを調べるのに使用できるアッセイは当業者に周知である。このアッセイには、放射性イムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエステンブロット法、ELISAアッセイがある。
【0107】
他の態様において、本発明は、下記を含む診断キットに関する:
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくはそのポリペプチドまたはその断片;
(d)本発明のポリペプチドに対する抗体、好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドに対する抗体。
【0108】
このようなキット中に、(a)、(b)、(c)または(d)が実質的な成分を含み得ることは、十分理解されるであろう。このキットは疾患または疾患に対する感受性を診断するのに使用し得る。特に、網膜色素症、加齢関連斑点変性、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜症、迂曲状萎縮、先天性アモロシス、レフサム症候群、スタルガルド病、アッシャ症候群の診断に使用し得る。本発明のヌクレオチド配列は、染色体局在にも価値がある。染色体位置は、ハイブリド細胞系のパネル(マウス-ハムスター)から調製されるDNAに対するPCRで得ることができる。ヒト遺伝子の染色体位置をマウス遺伝子の位置から類似性で推定できる(McCathy et al., 1997, Genome research, 7, 1153)。配列を、マウスまたはヒトの染色体を含む個々の染色体上の特定位置を特に標的とし、そしてそれとハイブリダイズできる。本発明の染色体関連配列のマッピングは、この配列の遺伝子関連疾患との相関における重要な最初の工程である。染色体が染色体位置に正確にマップされると、染色体上の配列の物理的位置が遺伝子マップデータに相関し得る。このようなデータは、例えば、Man の V. McMusick, Mendelian Inheritence(オンラインで Johns Hopkins University Welch Medical Library, RetNet より入手可能)にある。ついで、同じ染色体領域にマップされる遺伝子と疾患の関係は、連結反応分析(物理的に隣接する遺伝子の共伝達)により同定する。
【0109】
cDNAまたはゲノム配列における感染個体と非感染個体の相違も調べ得る。変異が感染個体のすべてまたはいくつかで認められ、正常の個体で認められないとき、変異は疾患の原因であり得る。
【0110】
本発明の追加の実施態様は、上記の治療作用のために、薬学的に許容される担体とともに医薬組成物を投与することに関する。この医薬組成物はRdcvf1またはRdcvf2、類似体またはアゴニストを含む。組成物は単独でまたは少なくとも1つの他の物質、例えば、無菌のバイオ適合性製薬担体で投与できる安定化化合物および水とともに投与し得る。これには、限定でないが、塩、緩衝塩、デキストローズがある。組成物は、患者に単独で、または他の物質、薬剤またはホルモンと併せて投与できる。
【0111】
本発明に含まれる医薬組成物は、種々の経路で投与できる(例えば、Transscleral delivery of bioreactive protein to the choroid and retina, Ambati et al., 2000, Investigative Ophthalmology and Visual Science, 41, 1186)。眼用の溶液、懸濁液、軟膏を含む局所眼製剤は、当業者によく知られている(参照、Remington's Pharmaceutical Science, 18th Edition, Chapter 86, pages 1581-1592, Mack Publishing Company, 1990)。他の投与形態も使用できる。それには、房室内注射(前眼房または後眼房への直接投与)、結膜下注射、眼球後部注射がある。このような投与形態に適した眼用製剤をつくる方法および手段は周知である。
【0112】
本明細書での「眼外の」は、眼表面および眼球と瞼の間の(外部の)箇所を意味する。眼外の領域の例には、瞼円蓋すなわち cul de sac、結膜表面、角膜表面がある。この位置はすべての眼組織の外であって、この領域にアクセスするのに侵襲的処置を要しない。眼外システムの例は、これらの領域に治療物質を運ぶのに使用し得る挿入物、「局所的に」用いられるドロップ、ゲルまたは軟膏を含む。眼外のデバイスは、患者自身でも一般的に容易に取り除くことができる。
【0113】
下記の特許は、眼外の領域に薬剤を投与するのに使用する眼外システムを開示している。Higuchi の米国特許 3,981,303; 3,986,510; 3,995,635 は、薬剤を含有するバイオ分解性眼挿入物を開示する。挿入物は、眼球の cul de sac、眼球と瞼の間の眼外の箇所での保持のために種々の形態でつくり得る。いくつかの通常のバイオ適合性ポリマーを、このデバイスの製造での使用に適したものとして開示する。このポリマーには、アルギン酸亜鉛、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルデヒド)、ポリ(グリコール酸)がある。特許は、薬剤の低い透過性を有し、薬剤を保持する空洞の室を有する膜被覆デバイスも記載している。
【0114】
Theeuwes の米国特許 4,217,898 は、薬剤配送の調節に使用される微穴貯蔵所を開示する。このデバイスは眼の cul de sac に眼外的に入れられる。所望のポリマー系には、ポリ(塩化ビニル)-コ-ポリ(酢酸ビニル)コポリマーがある。Kaufman の米国特許 4,865,846 および 4,882,150 は、結膜包に少なくとも1つのバイオ腐食性材料または軟膏担体を含有する眼用薬剤配送系を開示している。この特許は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ビニルアルコール)などのポリマー系および橋かけ結合コラーゲンを適当な配送系として開示している。
【0115】
網膜疾患または損傷の処置のためのRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物の上記使用において、局所的に適用される眼製剤が、治療薬剤の眼への浸透または移行を促進する物質を含むと好都合でもある。そのような物質は当技術分野で知られている。Ke の米国特許 5,221,696 は、角膜を経る眼製剤の透過を高める材料の使用を開示している。
【0116】
眼内系は、眼自体の組織層の内、間または周りのすべての組織区画における使用に適する系である。その位置は、結膜下(眼球に隣接する眼粘膜の下)、眼窩(眼球の後)、房室内(眼球室自体の中)を含む。眼外系と異なり、注射または移植からなる侵襲的処置が、これらの領域へのアクセスに必要である。
【0117】
下記の特許は、眼内デバイスを開示している。Wong の米国特許 4,853,224 は眼室への導入のためにマイクロ封入された薬剤を開示する。この系で使用されているポリマーは、ポリエステルおよびポリエーテルを含む。Lee の米国特許 4,863,457 は、治療物質の持続性放出のために眼内に外科的に入れられるバイオ分解性デバイスを開示する。このデバイスは、結膜下(眼球の粘膜)に外科的に埋め込まれるように設計されている。Krezancaki の米国特許 4,188,373 は、ヒト体温でゲル化する製薬ビヒクルを開示する。このビヒクルは、薬剤およびガムまたはセルロース誘導の合成誘導体の水性懸濁液である。Haslam の米国特許 4,474,751 および 4,474,752 は、室温で液体であり、体温でゲル化するポリマー-薬剤系を開示する。この系で使用される適当なポリマーは、ポリオキシエチレンおよびプロピレンを含む。Davis の米国特許 5,384,333 は、長時間薬剤放出を提供するバイオ分解性注射用薬剤配送ポリマーを開示する。薬剤組成物は、バイオ分解性ポリマー・マトリクス中の医薬活性物質からつくる。ポリマー・マトリクスは20℃〜37℃の温度で固体であり、38〜52℃の温度で流動化する。薬剤配送ポリマーは溶性または液体の薬剤処方の配送に限定されない。例えば、薬剤含有ミクロスフェアー、リポソーム、他の粒子結合薬剤を注射部位で安定にし、保持するために、マトリクスとしてポリマーを使用できる。
【0118】
眼内注射に特に適したビヒクルは無菌の蒸留水であって、その中にRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を無菌の等張液として製剤し、適当に保存する。他の眼用製剤においてRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を注射可能なミクロスフェアーやリポソームなどの物質とともに含め得る。この物質は、後にデポ注射として配送され得るタンパク質の緩和な持続的放出を提供する。RDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物の眼内導入のための他の適当な手段は、RDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を含有する埋め込み可能な薬剤配送デバイスである。
【0119】
本発明の眼科用製剤、特に局所製剤は、他の成分、例えば、眼用に許容される保存剤、張性剤、共溶媒、湿潤剤、錯生成剤、緩衝剤、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤を、当技術分野で知られるように含み得る。例えば、適当な張性向上剤には、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは、塩化ナトリウムまたはカリウム)、マニトール、ソルビトールなどがある。十分な張性向上剤は、眼中に徐々に注入される製剤が低張または実質的に等張になるように、好都合に加える。適当な保存剤には、限定でないが、塩化べンザルコニウム、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸がある。過酸化水素も保存剤として使用できる。適当な共溶媒には、限定でないが、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールがある。適当な錯生成剤には、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキシトリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキシトリンがある。適当な界面活性剤または湿潤剤には、限定でないが、ソルビタンエステル、ポリソルベート80などのポリソルベート、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポルなどがある。緩衝剤は、通常の緩衝剤であって、例えば、ホウ酸塩、クエン酸塩、ビカルボン酸塩、TrisHClなどである。
【0120】
製剤の成分は、投与の眼外または眼内の部位に適した濃度で存在する。例えば、緩衝剤を用いて、組成物のpHを生理的な値または僅かに低い値、典型的には約5〜8に保持する。追加の製剤成分は、眼外的に投与される治療剤の長時間眼存在をもたらす材料を、局所的接触を最大にし、吸収を促進するように、含み得る。適当な材料には、眼製剤の粘度を増加するポリマーまたはゲル形成材料がある。キトサンは、持続性放出液体眼科薬剤における眼科放出速度調節剤として特に適した材料である(参照、USP 5,422,116, Yen et al.,)。眼科剤の調節的放出についての本発明製剤の適用性は、当技術分野で知られる種々の方法、例えば、Journal of Controlled Release, 6:367-373, 1987 やその変法で決定できる。
【0121】
活性成分に加えて、この医薬組成物は、活性化合物を医薬として使用される製剤に製造するのを容易にする賦形剤や補助剤を含む適当な薬学的に許容される担体を含有し得る。製剤法および投与法のさらなる詳細については、最新版の Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa) を参照できる。
【0122】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適した容量で製剤し得る。担体によって医薬組成物を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液など、患者の摂取のために製剤できる。
【0123】
経口用の医薬組成物は、活性化合物を固体賦形剤と併用し、得られる混合物を選択的に粉砕し、適当な補助剤を加えた後に顆粒状の混合物とし、所望に応じて錠剤や糖衣錠の芯とする。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質の充填剤であって、例えば、ラクトース、スクロース、マニトール、ソルビトールなどの糖類;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモなどの植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムやトラカントゴムなどのガム類;ゼラチンやコラーゲンなどのタンパク質である。所望に応じて、崩壊剤または安定化剤を加え得る。例えば、橋かけ結合ポリビニルピロリドンゲル、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどの塩を加え得る。
【0124】
糖衣錠芯を適当な被膜物、例えば、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/またはニ酸化チタニウムも含み得る濃縮糖溶液、ラッカー溶液、適当な有機溶媒または溶媒混合物とともに使用し得る。染料や色素を錠剤または糖衣被膜に加えて、産物の同定および活性化合物の量、すなわち容量の特徴化などに用い得る。
【0125】
経口的に使用され得る医薬製剤は、ゼラチンからつくられる硬カプセル、およびゼラチンおよびグリセロールやソルビトールなどの被膜からつくられる軟密封カプセルを含む。硬カプセルは、活性成分を、ラクトースやデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクやステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、選択的に安定剤とともに含有し得る。軟カプセルにおいて、活性成分を、脂肪油、液体または液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体中に、安定剤とともにまたは安定剤なしで、溶解または懸濁せしめ得る。
【0126】
非経口投与に適する医薬製剤を、水性溶液、好ましくは生理的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液、リンゲル液などの生理的緩衝液中に製剤し得る。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ソルビトール、デキストランなどを含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁液を油性注射用懸濁液としても調製できる。適当な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルやトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、リポソームがある。非リピドポリカチオン性アミノポリマーも配送に使用できる。選択的に、懸濁液は、化合物の溶解性を増加し高濃度溶液の調製を可能にする適当な安定剤も含有し得る。
【0127】
局所または経鼻製剤については、透過すべきある種のバリアーに適する透過剤を製剤に使用し得る。そのような透過剤は当技術分野で知られている。
【0128】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られる方法で製造し得る。例えば、通常のように、混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、水簸、エムルジョン化、封入、捕捉、凍結乾燥などの方法である。
【0129】
医薬組成物は塩としても提供でき、多種の酸でつくり得る。酸には、限定でないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などがある。塩は対応する遊離塩基よりも、水性などのプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。別の態様において、好ましい製剤は、下記のいずれかまたはすべてを含有することのある凍結乾燥末であり得る:1−50mMヒスチジン、0.1−2%スクロース、2−7%マニトール。pH域4.5〜5.5で、使用前に混合する。
【0130】
医薬組成物を調製した後、適当な容器に入れ、表示の状態での処置のために標識する。Rdcvf1またはRdcvf2の投与に、この標識は、投与の量、回数、方法を含む。
本発明の医薬組成物は、意図する目的を達成するのに有効な量を含有する組成物を含む。有効な量の決定は当業者の能力の範囲内にある。
【0131】
いかなる化合物についても、治療的に有効な用量は、最初に、新形成性細胞などの細胞培養アッセイまたはマウス、ウサギ、イヌ、ブタなどの動物のモデルで予測できる。動物モデルを用いて、投与に適する濃度範囲および経路を決定できる。ついで、この情報を用いて、ヒトでの投与に有用な量と経路を決定できる。
【0132】
治療的に有効な用量は、活性成分、例えば、Rdcvf1またはRdcvf2、その断片、Rdcvf1に対する抗体、アゴニストの、症候または症状を軽減する量を意味する。治療的な効力および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法、例えばED50(全体の50%に有効な量)やLD50(全体の50%に対する致死量)で決定できる。毒性量と治療量との比率は治療係数であり、ED50/LD50として表示できる。大きい治療係数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータをヒトでの使用のため容量範囲の決定に用いる。この組成物に含まれる容量は、好ましくは毒性がないか、ほとんどなくて、ED50を含む範囲の濃度内にある。この容量は、使用される容量形態、患者の感受性、投与経路により変化する。
【0133】
具体的な用量は、処置を要する対象に関連する因子に照らして、医師が決定する。用量および投与を調整して、活性物質の十分な量を提供し、所望の作用を維持する。考慮される因子は、病状の重篤度、対象者の全身的健康状態、患者の年齢、体重、性、食事、投与の頻度、併用薬物、反応過敏性、治療に対する耐容性/応答性を含む。長時間作用医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクレアランス速度に応じて、3〜4日毎、毎週または2週毎に投与し得る。
【0134】
普通の投与量は、投与経路に応じて0.1〜100,000μg、全量約1gまでで変化し得る。特定の用量および配送経路についての指針は、当技術分野の文献に記載されており、医師に利用可能である。当業者は、タンパク質やその阻害剤と異なるヌクレオチドの種々の製剤を使用し得る。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配送は特定の細胞、状態、位置などに特異的であるタンパク質の経口投与に適する医薬製剤は、米国特許 5,008,114; 5,505,962; 5,641,515; 5,681,811; 5,700,486; 5,766,633; 5,792,451; 5,853,748; 5,972,387; 5,976,569; 6,051,561 に記載されている。
下記の実施例は、本発明を説明するものであって、その範囲を限定するものでない。
【実施例】
【0135】
1.発現クローニング
1)5週齢正常マウス網膜から全ARN精製
cDNAライブラリーを、5週齢のC57BL/@Nマウスの網膜から、Glissin et al., (1974), Biochemistry, 13, 2633-2637 に記載の方法に一般的に従って構築した。要約すると、動物を殺した後、眼を摘出し、0.1%ピロカルボン酸ジエチル(DEPC)補充のリン酸緩衝液中に入れた。神経網膜をすばやく分断した(網膜色素上皮をこの組織調製物で除去した)。各分断の後すぐに、組織を新鮮な6M塩化グアニジウム中で均質化した。10網膜を4ml滅菌管中の2.4mlGCに集め、組織を強力な均質化により1分間室温で完全に破壊した。
【0136】
5週齢正常マウス網膜からメッセンジャーRNA(mRNA)精製
mRNAをオリゴdT被膜小穴ビーズ(Oligotex, Qiagen) 上でストリンジェント条件で、Kuribayashi et al., (1988) Nucleic Acids Res. Symposium series, 19, 61-64 に従って単離した。簡単にいうと、100−150μg全マウス網膜RNAを15μlのオリゴdTビーズと複合緩衝液(10mMトリスpH7.5;0.3MのNaCl;0.1MのEDTA;0.5w/v%デュオデシル硫酸ナトリウム(SDS))中で混合し、6分間65℃で0.51ベッカーの水においてインキュベートし、ついで徐々に室温に約3-4時間冷やし、室温で遠心分離してアガロースビーズを回収した。ついで、0.4mlの(10mMトリスpH7.5;0.3MのNaCl;0.1MのEDTA;0.5w/v%SDS)中で10分間インキュベートして2回洗い、2工程で50μlの70℃加温RNaseなしの水で溶出し、10μl酢酸ナトリウムpH5.2および0.25mlエタノールで沈降せしめ、−75℃で12時間インキュベートした。mRNAを遠心分離(1時間15,000rpm、ついで2回70%エタノールで洗う)で採取し、20μlのRNaseなしの水に再懸濁した。mRNA濃度を260nmで測定し、rRNA汚染の不存在を上記の変性条件でゲル電気泳動で確認した。
【0137】
cDNA合成
cDNAを Okayama and Berg (1982), Mol Cell Biol., 2, 161-170 の方法に従って合成した。最初の鎖合成を2.5μgのNotIアダプター・オリゴヌクレオチド(5'TGTTACCAATCTGAAGTGGGAGCGGCCGACAA(T)183')で開始し、50単位の改変モロニイ・ネズミ白血病ウイルス(M−MLV)リバース・トランスクリプターゼ(Superscript II, Life Technology) で供給者の推薦条件で2時間インキュベートした。第2鎖合成のために、反応物を4時間14℃で4単位のRNaseHおよび100単位のDNAポリメラーゼとともにSS緩衝液(40mMトリスpH7.2;85mM塩化カリウム;4.4mM塩化マグネシウム;3mMのDTT;5μg/mlウシ血清アルブミン(BSA))中で最終量0.25mlにインキュベートした。EcoRIアダプター(5'-OH AATTCGGCACGAGG3'-OH/3'-OH GCCGTGCTCC5'-PO4)を、2重鎖cDNAの両端に14時間16℃で40単位のT4DNAリガーゼ(Promega, Madison, USA) を用い、全量20μlで供給者の推薦条件でインキュベートした。この反応の産物は、クローニング・ベクター中で方向つけされ得る5'のEcoRI半部位および3'のEcoRI半部位を有するdscDNAである。
【0138】
pcDNA3におけるdscDNAの連結反応
この連結反応を Maniatis T (1992), Molecular Cloning: 実験室マニュアル第2版に従って10μgのpcDNA3プラスミド(インビトロゲン)で行った。このプラスミドはEcoRIおよびNotI(Promega, Madison, USA) で供給者の推薦条件で切断して調製した。
【0139】
組換えクローンの増殖
組換えクローンの増殖を、Birnboim et al., (1979), Nucleic Acids Res., 7, 1513-1523 の方法に一般的にしたがって行った。簡単にいうと、100主要クローンのプールをつくるために、XL1 Gold (Strategene) 形質転換プロトコール(Strategene 提供)を下記のように少し改変した。生育培地でインキュベートした後、形質転換反応を20%(v/v)グリセロールおよび8%(v/v)ウマ血清アルブミン(HAS、Life Technology) で行った。HASおよびグリセロールは解凍後の死を防止する。滴定で、寒天プレート(100μg/mlアンピシリン)上に各形質転換反応物を置いて、100コロニーをもたらす量を計算した。バルク形質転換反応物を−80℃で貯蔵した。ライブラリー由来の組換えプラスミドをすぐに96まで精製した。100クローンの96プールを調製するために、100クローンに相当する計算量を寒天上に置き、20時間37℃で生育した。DNAを寒天プレートから剥がしたコロニーから直接精製した。23%グリセロールでの各培養基のストックを−80℃で保存した。DNAを Qiawell ultra (Qiagen) でその供給者の推薦するプロトコールに従い精製した。典型的に、10μgの精製プラスミドを得て、各調製物の濃度を吸光度260nmで測定した。100選択プールを10プールにサブ分割し、元のプールからのグリセロール・ストックの1/250.000稀釈50μlを寒天プレート上に100μg/mlアンピシリンで置いた。16時間37℃での生育の後、個々の160コロニーを16寒天プレート上で(プレートにつき10)複製し、16時間37℃で生育する。各プレートから10コロニーを採取し、液体培地(Luria Broth (LB)、100μg/mgアンピシリン)中で3時間37℃で生育した。30%グリセロールでのこれらの培養のストックを−80℃で保存した。プラスミドDNAを前のように調製した。10のサブプールを個々のクローンに分割するために、10のサブプールのグリセロール・ストックの1/250.000稀釈50μlを寒天プレート上に100μg/mlアンピシリンとともに置いた。16時間37℃での生育の後、個々の16コロニーを取り、16時間2mlLB100μg/mlアンピシリン中で生育した。30%グリセロールでのこれらの培養のストックを−80℃で保存した。プラスミドDNAを前のように調製した。
【0140】
Cos−1細胞での遷移トランスフェクション
Cos−1細胞での遷移トランスフェクションを、Chen and Okayama (1987) の方法で行った(High-efficiency transformation of mammalian cells by plasmid DNA, Mol Cell Biol., 7, 2745-2752)。
【0141】
若とり胚網膜の培養
プロトコールは Adler and Hatlee (1989, Science, 243, 391) による。若とり胚網膜(卵中6日)を解離し、単層培養基に入れた。分化シグナルのない培養条件で、円錐体が細胞の60−80%を占める。visinin (チキン円錐体マーカー、ジーンバンク・アクセス番号 M84729)に対するポリクローナル抗体をウサギ中でつくり、培養基中の円錐体の割合が60−80%であることを確認した。方法の容易さと速度に加えて、このモデルの簡単な環境(化学的定義培地、細胞と細胞との接触がない)が、この方法を円錐体の生存に関与する栄養因子を調べるのに非常に適したシステムにする。簡単にいうと、親のコントロール単離体からの胚の網膜を卵での6日間発育後に切開し、細胞を解離し、低い密度(105細胞/cm2)でプレートに置いた。10日間での細胞の生存度(60−80%)をLIVE/DEADアッセイ(Molecular probes, Eugene, USA)で調べた。このアッセイは生きている細胞と死んだ細胞を定量できる。生存細胞の数が、化学的定義培地での7日間培養の後に、最初の細胞数の8%に減少する。ライブラリー由来のクローン・プールでトランスフェクトされたCOS1細胞からの条件培地の存在で行い、生存細胞を7日後にインビトロで数える。
【0142】
チキン親(strain 657 red label)を実験室から25kmの孵化施設で本実験目的のための分離室に保有した。自然に得られる受精卵を毎週集め、孵化後に実験室に17℃(その生物的0)で保有した。毎日、5卵を24時間20℃ついで136時間37℃で加湿室において、卵の向きを時々反転させながらインキュベートする。培養日に、卵の表面をMucocit−Aで洗い、ついで壊し、チキン胚をPBSに移す。各胚の発育段階が第29であるのを Hamburger and Hamilton (1951, Essential Development biology, Stern and Holland Ed.) と視覚比較で確認する。2胚を選択し摘出して、眼をCO2独立培地(Life Technologies) に移した。網膜を切開し、リンゲル緩衝液に移し、2回洗った。網膜を小片に切断し、20分間37℃でトリプシン溶液(0.25w/v%)で処理した。10%不活性化FCS補充の培養基(M199, Life Technology)を加えて、反応を止める。細胞懸濁液を数分間25μlのDNAseI(1mg/ml, Sigma) で処理する。ついで細胞懸濁液を化学的定義培地でFCSの除去のために2回洗う。化学的定義培地は、CDCM、等量のDMEMおよびM199培地(Life Technologies)、AB補充物つき(5μg/mlインスリン; 5μg/mlTransferring;64nMプロゲステロン;0.1mMプトレシン;5ng/mlセレニウム;3mMタウリン;2.7μMシチジン 5'‐ジホスホエタノールアミン;5.2μMシチジン 5'‐ジホスホコリン;0.2μg/mlヒドロコルチゾン;30nM3,3'‐5‐トリヨード‐L‐チロニン;1mMピルビン酸ナトリウム)、0.3μMプロスタグランジンD2;0.1μg/mlリノール酸を含む。トリパンブルーで着色された細胞の濃度を Mallassez' 細胞で測定し、2プレート密度(2および4x105細胞/cm2)に対応する2濃度(5.6および1.12x105細胞/cm2)に持ってくる。
【0143】
Cos−1トランスフェクト細胞からの条件培地を氷解し、50μlを2つの96ウエル組織培養基で処理された黒プレート(Corning Coaster)に移す。このプレートは、100μg/mlポリ‐L‐リシン(Sigma) 溶液で計画にしたがい被覆されている。
【0144】
第1回スクリーニング
【表1】
【0145】
数字は100クローンのプール番号を、Cは空のベクター(pcDNA3)でトランスフェクトされたCos−1細胞からの条件培地を、Pはポジティブ対照(pcDNA‐マウスGDNFでトランスフェクトされた条件培地)を意味する。
【0146】
第2および第3回スクリーニング
【表2】
【0147】
x(第2回)およびy(第3回)はそれぞれ第1および第2回で選択されたプールの番号を表す。01から16は用いられたサブプールを表す。x(y)は16プールが分割された元のプールを表す。Cは第1回と同じである。Pは改変されて第2回でpCMVScript‐CNTF、第3回でpcDNA‐939.09.08 である。0はCDCM培地中の若とり円錐体細胞のみを表す。C57およびC3Hは、それぞれ5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nマウス網膜から「マウス網膜の体外移植組織からの条件培地の調製」に記載のように調製された網膜の体外移植組織からの条件培地である。
【0148】
2つの密度(2および4x105細胞/cm2)に対応する細胞懸濁液50μlを、実験誤差を最小にするため8チャネル動力化ピペット(Biohit) 付きの条件培地を充たした2つの96ウエルプレートのウエルに加えた。細胞を7日間37℃で50%CO2でインキュベートした。
【0149】
マウス網膜の体外移植組織からの条件培地の調製
第2および第3回スクリーニングは、Mohand-Said et al., (1998) から調整されたポジティブ対照を含む。5週齢マウスC57BL/6@NおよびC3H/He@Nを殺し、網膜を摘出した。2網膜を切開し、12ウエルプレートにおける1.5mlのCDCM中、24時間37℃で50%CO2でインキュベートした。条件培地を回収し、Vivaspin (Sartorius、切断点10kDa)で超ろ過により因子40で濃縮した。条件培地を液体窒素で凍らせ、使用の前−20℃でアリコートに保存した。使用の日に、条件培地を氷解し、CDCMに10倍に稀釈し、0.22μmフィルター(Acrodisk 13, Gelman Science)で滅菌ろ過した。
【0150】
機能アッセイ、生/死アッセイ
機能アッセイは、インビトロ7日間インキュベーション後に生きているチキン網膜細胞の数を基にする。生細胞と死細胞をそれぞれ染色する2種の蛍光源染料(カルセインAMとエチジウムダイマー)の使用を基にする生/死アッセイキット(Molecular probes, Eugene, USA) を使用した。生きている細胞は、基質(カルセインAM)を520nmで発光する蛍光産物に変換する代謝活性(ここではエステラーゼ活性)を起こす。死細胞の膜透過性が変えられて、635nmで発光するエチジウムダイマーによる核のDNA着色が可能になる。生細胞は485nmでの励起後に520nmで発光し、死細胞は520nmでの励起後に635nmで発光する。エピ蛍光顕微鏡を用いて、2つの型の蛍光細胞を別個に視覚できる。インビトロで7日後、細胞を30分間、室温で暗所で2.7μMカルセインAMおよび0,3mMエチジウムダイマーとともにインキュベートした。
【0151】
影像取得
簡単にいうと、影像取得は各ウエルの自動焦点化からなり、2種の蛍光における自動的な細胞計数に続き特殊なソフトウエアー、例えば、Metamorph (Universal Imaging Corporation, West Chester, USA)を用いて粗データを処理し、プレートの各ウエルについてのデジタル化像を得る。水銀エピ蛍光ランプの装着されたインバート顕微鏡(Nikon TE 200)を用いた。これは2励起フィルター485および520nm、2発光フィルター520および635nm、対象(x10)、コンピューター駆動電動 platine (Multicontrol 2000, Martzauzer and a CCD camera (Cohu))を有す。
【0152】
プレートと記録するために電動 platine 上に置き、焦点を手動で第1ウエルに合わせ、このプレーンを記録する(zオリジン)。死と生の像の閾値を第1ウエルからセットする。第1ウエルの中心を白光で調整する。それには、第1ウエルの底を像の底にコンピューター・モニター上で手動で整え、ついで第1ウエルの最右端を像の右にコンピューター・スクリーン上で整えて、2の位置を記録する。第1ウエルの中心を計算すると、プレートの各ウエルの中心位置がわかる。開発過程で、ウエルの端で細胞密度が僅かに高く、取得から端が出ていることに気がついた。結果を誤まらないために、各ウエルを完全に中心にすることが重要である。起動さすと、プレートの最初のスキャンが死細胞を記録する。死細胞密度は、これらの条件下であまり変らない。この適用は異なる焦点プランで像を取って自動焦点化し、最も輝く正しい焦点を選ぶ。このz位置が保存され、platine がx軸とy軸にプログラム化された運動を起こす。これは、ひとつの像で再構築されたときに、ウエルの2/3表面を表す全4像を取る。焦点プランからの像の集まりを対照のために保存する。platine が自動焦点化を行い、ウエルA1からA12、ついでB12からB1、C1からC12など...で始まるプレートの各ウエルについて4取得をもたらす。最後に、最後のウエル(H1)を過剰暴露するために、platine がプレートを外側に動かす。死細胞のスキャンに30分かかる。
【0153】
第2スキャン(生細胞)をフィルター交換後に行う。この第2スキャンで死スキャンからの各ウエルの記録されたz位置を用いる。死細胞と同様に各ウエルから4像を取る。第2スキャンの終了時(22分)に、死および生の再構築された像を、自動的に日付が記されたファイルに保存する。細胞数(死および生)が自動的に予めセットされた体形測定パラメーター(平均)で計数され、試験が正しいかどうかを調べるために、コンピューター・モニター上に表示される。生細胞の数が高すぎないかを毎日調べることが重要である。大き過ぎる密度で置かれると、チキン網膜細胞が、それ自体の生存因子をつくって多くの場合、より長く生存することを観察した。この作用の不存在で細胞をスクリーンした。第2プレートのスキャンの前に(プレートの細胞の2倍である同じ実験)、第1プレートからのlog ファイル名の後にaを加えた。各実験の像をCD-rom に保存した。250以上のCD-rom をつくった。
【0154】
細胞の計数およびプールの選択
細胞数(生および死)の計数にCD-rom に保存された各実験の像を使用した。1実験からのlog ファイルを最初にコンピューターに入れ、Metamorph ソフトウエアーで開いた。第1段階で、14ウエルC(空のベクターでトランスフェクトされたCos−1細胞からの条件培地)に対応する像を開いた。像の閾値を調整し、コマンド挿入の体型測定分析を用いて、これらの対照ウエルについて10から250の対象間の領域(各全領域についての生細胞の数)の分布を測定した。分布は Gaussin 曲線に従い、単離された細胞に対応する対象の最大数を有する。ついで、この標準値を、対象が実験的関数:SOC = 29/20.74 SV で2細胞(標準対象カット、SOC)として数えられる上記領域の値を計算する。個々のプレートのSOC値を用いて、プレートの生細胞の数を数える。この数をエクセル表に移す。
【0155】
第1回スクリーニングについて、フォールド相違(生細胞数の増加または減少)としての各プール対14対照ウエルの平均+標準偏差の値をプロットした。プレート内の位置相違から来る変化を是正するために、試験するプールの位置に対応する80ウエルと14ウエル対照との個々のフォールド相違の平均を、200独立プレートについて計算した。平均で、観測された相違は、位置相違にのみ原因しており、この係数で細胞数を補正した。選択されるプールをさらに厳密に識別するために、生細胞数を、フォールド相違対1.3を越えないで0.4を越えるすべての対照値としてプロットした。この方法において、すべてのプールが空のベクターに対応する14ウエルに対するフォールド相違であり、0.4〜1.3の間を作用なしと考え、対照として使用する。補正後、2プレートの対照に対するフォールド相違を倍加し、結果をフォールド相違の減少により選別した。誤りのプールをスクリーンするのを回避するために、リストの上部のプールを実験の20プール(両プレート)に対応するグラフならびに生細胞および死細胞の像を視覚検査でさらに調べた。
【0156】
第2回および第3回について、サブプールのためのプレートスクリーニングは追加の対照を含む。5週齢の網膜外植体から条件培地を調製した。C57BL/6@N由来の網膜外植体のポジティブ作用を記録し、他のものを除外する実験を選択した。結果を14対照ウエルに対するフォールド相違としてプロットし、対照の再計算をしなかった。2プレートの対照に対するフォールド相違を倍加し、結果を16サブプールについてフォールド相違の減少により選別した。
【0157】
単離されたcDNAの配列決定を、T7プライマー(5'GTAATACGACTCACTATAGGGC3')を用いて毛管シークエンサー(CEQ2000, Beckman Coulter)で行った。DNA配列をデータベースと Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) で比較した。
【0158】
Rdcvf2およびヒト同族体の同定
Rdcvf1(配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)およびBLASTを用いて、同族のネズミおよびヒトポリペプチドを同定した(図8)。マウスRdCVF2に対する同族性を有するESTクローン(ジーンバンク・アクセス番号:bc016199)を同定した。ジーンバンク・アクセス番号:be552141, bi517442, bg707818, bi603812, ai433287, be088414, bg297383, bg297304(参照、図12)。マウスRdcvf1(配列番号1)に対する同族性を有するESTクローンを同定した。ジーンバンク・アクセス番号:bg299078, ai716631, bg294111, be108041, bg395178(参照、図13)。
【0159】
Rdcvf1発現についてのリアルタイムPT−PCR分析
5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nならびに共通遺伝子C3H(+/+およびrd/rd)を、サイバーグリーンPCRキット(Roche)を有するライトサイクラー(Roche)でリアルタイムRT−PCRにより試験する。cDNAを、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド(pdN6, Amersham)、M−MLVリバーストランスクリプターゼ(superscript II, Life Technology)および1)で調製されたマウス網膜由来の全RNAを駆動させて、調製する。cDNAを、普遍的メッセンジャー・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を用いて正常にする。0.2μlの第1鎖cDNA合成(10ngの全RNAに等価)を2μMの配列番号24および配列番号25のオリゴヌクレオチドで3倍に下記のプログラムを用いて全量25μlで増幅する:30秒95℃および35サイクルの配列(1秒95℃、18秒55℃、10秒72℃)。解析によると(図16)、Rdcvf1発現がrd1マウス(C3H/He@N)で桿状体変性の後に減少する。リアルタイムRT−PCRで、Rdcvf1が光受容体により直接的に発現されることが分かる。これにはビブラトーム切断により網膜の外層から調製されたRNAを用いる。産物をアガロースゲル電気泳動で確認する。ポジティブ対照として、桿状体アレスチン(アクセス番号:M24086)の発現を同じ条件でプライマー(5'CTATTACGTCAAGCCTGTAGCC3’および5'CATCCTCATCTTTCTTCCCTTC3')でモニターする。Rdcvf1が円錐体保護因子であるとの確認を、適当な量のRdcvf1を5週齢のrd1マウス(C3H/He@N)の網膜外植体に加えることにより得る。適当な量については、いくつかの最初の滴定実験で分かる。7日後に適当な対照と比較すると、生存円錐体が増加する。
【0160】
Rdcvf2についてのPT−PCR分析
Rdcvf2発現のためのRT−PCRを、プライマーGCCAGCGTTTTCTGCCTTTTAC3'および5'AAGCCCTGCCTGCTCTAACATC3'を用いて実施した。解析によると、RdCVF2が桿状体依存的に発現され、Rdcvf2発現が網膜に限定されないで、他の神経細胞がRdcvf2を発現する(図17)。一方、Rdcvf1の発現は網膜細胞に限定されるようである。
【0161】
Rdcvf1またはRdcvf2の生/死アッセイ
COS−1細胞を、Rdcvf1またはRdcvf2を保持する適当な発現ベクターで誘発プロモーターの調整下にトランスフェクトする。対照細胞を空のベクターでトランスフェクトする。細胞を、Rdcvf1またはRdcvf2の誘発に適当な時間、細胞をインキュベートする。Rdcvf1またはRdcvf2でトランスフェクトされたCOS−1細胞からの条件培地とともにインキュベートされた生存円錐体細胞の数および生存の対照細胞の数を、上記の方法に従い数える。Rdcvf1またはRdcvf2を発現する細胞は、有意に高い量の生存細胞を示す。
【0162】
桿状体特異的因子
リアルタイムRT−PCR分析を標準的条件で、5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nからの5週網膜外植体における桿状体アレスチン(対照)およびRdcvf1の発現について、下記のプライマーを用いて実施した。
配列番号24:5'TCTATGTGTCCCAGGACCCTACAG3'
配列番号25:5'TTTATGCACAAGTAGTACCAGGACAG3'
その結果、RdCVF1が桿状体の存在でのみ発現された(桿状体誘導CVF1)。
【0163】
ポリクローナル抗体の産生
ポリクローナル抗体を、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)精製融合タンパク質(GST−Rdcvf1)ならびにマウスRdCVF1配列番号2ペプチド配列アミノ酸11〜32(Ab番号2)および配列番号3ペプチド配列アミノ酸79〜96(Ab番号3)をウサギに注射して、調製する。融合構築体pGST−Rdcvf1をオリゴヌクレオチド配列番号26および配列番号27での増幅により、pcDNA-Rdcvf1を鋳型として標準条件で使用して、調製する。Rdcvf1のオープンリーディングフレーム(ORF)を、標準的な方法でBamHIとEcoRI制限部位の間でpGex2TK(Pharmacia) 中にクローン化し、E.coli[BL21(DE3)pLysS, Promega]中に形質転換する。単一コロニーを3リットルのLB液体培地中で100μg/mlアンピシリンとともに30℃で生育せしめ、タンパク質の産生を1μg/mlイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)の付加により誘発し、5時間30℃で続ける。細胞を採取し、音波処理で分解し、グルタチオン・セファロースで標準的プロトコールの下に精製する。融合タンパク質を10mM還元グルタチオンで室温で溶離する。溶離されたタンパク質をウサギへの注射の前に透析する。タンパク質精度をポリアクリルアミドゲル電気泳動によりモニターする。2ウサギへの免疫付与を、100μgの精製GST−Rdcvf1を80部位に皮内注射することにより行う。血清を8週後に採取する。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、網膜変性疾患の検出および処置のための組成物および方法に関する。特に、本発明は、円錐体変性に対する保護をなすタンパク質、該タンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を認識する抗体、および網膜変性疾患を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
光受容体は、網膜ニューロンの特殊なサブセットであって、視覚に関与する。光受容体は、網膜の光感受性細胞である桿状体および円錐体よりなる。各桿状体および円錐体は、外側セグメントと呼ばれる、光伝導機構を有する特殊な線毛を精巧につくる。桿状体は特異的な光吸収性の視覚色素、ロドプシンを含有する。ヒトの円錐体には3クラスがあり、明白な視覚色素の発現によって特徴分けされる。すなわち、ブルー円錐体、グリーン円錐体、レッド円錐体の色素である。各タイプの視覚色素タンパク質は、相違する波長で最大限に光を吸収するように調律される。桿状体ロドプシンは暗所視覚(薄暗い光)を仲介し、一方、円錐体色素は光視覚(明るい光)に関与する。ブルー、グリーン、レッドの色素はまた、ヒトにおける色視覚の基礎を形成する。桿状体および円錐体中の視覚色素は、光に応答し、アウトプット細胞、桿状体2極ニューロンに強力に作用し、網膜神経節ニューロンに中継ぎされて、視覚皮質に視覚刺激をつくる。
【0003】
ヒトにおける多くの網膜疾患には、光受容体の進行性変性およびその後の死があり、これは必然的に盲目を導く。先天性網膜ジストロフィー(すなわち、網膜色素症)などによる光受容体変性、関連斑点変性などの斑点症または網膜剥離は、光受容体の外側セグメントの進行性アトロフィーおよび機能喪失を特徴とする。さらに、光受容体の死および光受容体機能の喪失は、網膜ジストロフィーの患者において第2級網膜ニューロン(桿状体2極細胞および水平細胞)の部分的遮断をもたらし、それによって、光受容体がつくる電気的シグナルの伝播の全体的効率を低下さす。光受容体変性に二次的な、二次的神経膠および色素上皮変化は、虚血および神経膠症となる脈管系変化をもたらす。細胞死から光受容体を救い得る、および/または機能障害性(アトロフィーまたはジストロフィー性)光受容体の機能を回復し得る栄養的因子は、このような症状の処置において有用な治療法を提供し得る。
【0004】
これらの症状の進行は2クラスの光受容体の連続的喪失を表す。最初は、遺伝的、環境的または原因不明の損傷の直接的結果として桿状体が失われて、夜盲および視野狭窄となり、必然的に全盲となる円錐体の喪失がおきる。このように、円錐体が主要な損傷部を発現しないので、円錐体が間接的に死ぬ。
【0005】
網膜ジストロフィーに関連する遺伝子のすべては同定されていない。このような遺伝子の同定は、この疾患の診断および効果的な治療法の同定を可能にするであろう。
【発明の概要】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、新規な遺伝子ファミリーである桿状体誘導の円錐体生存能因子(Rdcvf)に関する。第1態様において、本発明は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドを提供する。このポリペプチドまたはその断片は、網膜ジストロフィー患者の眼では網膜ジストロフィーのない個体の眼におけるよりも非常に低い程度にしか認めない。配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドの断片は、約5〜10アミノ酸、好ましくは約10〜約20アミノ酸、さらに好ましくは約20〜約100アミノ酸、最も好ましくは約20〜約50アミノ酸を含有するポリペプチドを含む。本発明のこの態様において、哺乳動物由来、特にマウスまたはヒト由来の新規ペプチドさらにその生物学的、診断的または治療的に有用な、その断片、変異体および誘導体、その断片の変異体および誘導体、ならびに上記のものの類似体を提供する。また、本発明範囲内において、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドに実質的に類似するポリペプチド、例えば、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列を提供する。
【0007】
第2態様において、本発明は、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。また、本発明範囲内において、核酸は、配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を有する核酸に実質的に類似する核酸、例えば、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13のヌクレオチド配列を提供する。好ましい実施態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドをコードする単離核酸分子を提供する。例えば、配列番号1のヌクレオチド45−374、配列番号3のヌクレオチド26−676、配列番号5のヌクレオチド24−353、配列番号7のヌクレオチド48−686、配列番号9のヌクレオチド265−570、配列番号11のヌクレオチド300−770、配列番号13のヌクレオチド331−738を提供する。好ましい実施態様において、単離DNAは、配列番号1または配列番号3のDNAを含むベクター分子の形態をとる。
【0008】
本発明の第3態様はヒトでの網膜ジストロフィーの診断のための方法を含む。これは、哺乳動物、特にヒトの眼におけるRdcvf1またはRdcvf2コードDNAから転写されるmRNAの転写の低下を検出することを含む。転写の低下は、網膜ジストロフィーまたは病理的老化を有する疾患(ARMD)の診断となる。本発明のアッセイ態様についての他の実施態様は、哺乳動物、好ましくはヒトでの網膜ジストロフィーの診断のための方法を提供する。この方法では、網膜ジストロフィーの罹患が疑われるヒトの眼におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片の量を測定する。このポリペプチドまたはその断片の量が、網膜ジストロフィーに罹患していない者の眼におけるポリペプチドまたはその断片の量に比して低下していると、網膜ジストロフィーに罹患しているとの診断になる。
【0009】
他の態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の転写を調節するアンチセンス・ポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の転写を調節できる二本鎖RNAを提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、上記のポリペプチド、ポリペプチド断片、変異体および誘導体、その変異体および誘導体の断片ならびに上記のものの類似体を提供する。好ましい実施態様において、本発明のこの態様は、上記のRdcvf1ポリペプチドをつくる方法を提供する。この方法は、外因的に誘導されたRdcvf1またはRdcvf2コードポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを中に組み込んでいる宿主細胞を、その宿主におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドの発現に十分な条件で培養し、ついで発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0011】
本発明の他の態様は、上記のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、なかでも研究、生物学的、臨床上および医療的な目的に役立つ産物、組成物、プロセス、方法を提供する。
【0012】
ある追加的な好ましい態様において、本発明は、下記のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片を提供する。アミノ酸配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8のアミノ酸配列、すなわちRdcvf1、または配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列、すなわちRdcvf2である。この点についての特に好ましい態様において、抗体は、哺乳動物、好ましくはマウス、特に好ましくはヒトのRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはそれらの部分に選択的である。関連の態様において、提供される抗体およびその断片は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列の断片または部分に結合する。
【0013】
別の態様において、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子発現の変化、例えば、眼でのRDCVF1またはRDCVF2ポリペプチドの存在の低下により仲介されるか、またはこれらに関連する疾患を処置する方法を提供する。これには、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のRDCVF1またはRDCVF2タンパク質またはその断片もしくは部分の医療上有効な量を対象に投与する。また、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子発現の低下またはRDCVF1またはRDCVF2ポリペプチドの存在の低下に関連する疾患または状態を診断する方法を提供する。この方法は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその断片もしくは部分に結合する抗体をイムノアッセイで使用することを含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を含むポリペプチドを、培養基での成長の際に、つくり得るインビトロ増殖可能な細胞、特に脊椎動物の細胞を提供する。これらの細胞は、転写コントロールDNA配列、マウスまたはヒト以外のRdcvf1またはRdcvf2転写コントロール配列を含有し、転写コントロール配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸を有するポリペプチドをコードするDNAの転写を制御する。
【0015】
関連する態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドをつくる方法を提供する。この方法は、外因的に誘導されたRdcvf1またはRdcvf2コードポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを中に組み込んでいる宿主細胞を、その宿主におけるRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドの発現に十分な条件で培養し、それによって発現されたポリペプチドの産生をなし、ついで発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、患者からの体組織サンプル中のRdcvf1またはRdcvf2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたはその断片の異常な、例えば正常より低い発現を検出するアッセイ法、および検出に必要な成分を含有するキットを提供する。このキッドは、例えば、Rdcvf1またはRdcvf2、あるいは本発明のポリヌクレオチドにハイブリドするオリゴヌクレオチド・プローブに結合する抗体を含有する。好ましい実施態様において、該キットはキットの構成成分を使用する方法を詳記した説明書も含む。
【0017】
他の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体の処置に使用するためのRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドに関する。関連態様は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチド、またはRdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片に結合する抗体を、網膜ジストロフィーの処置のための薬剤の製造において、使用することである。
【0018】
他の態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチド、および選択的に、薬学的に許容される担体を含有する網膜保護剤を提供する。関連する態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片、Rdcvf1またはRdcvf2ポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチドを含む、網膜ジストロフィーの処置のための医薬組成物を提供する。他の関連態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチドの医療上有効な量、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
関連態様において、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14よりなる群から選ばれるポリペプチドの医療上有効な量、および薬学的に許容される担体を、その必要とする対象に投与することを含む、網膜ジストロフィーの処置のための方法を提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、Rdcvf1またはRdcvf2に結合し得るか、および/またはRdcvf1またはRdcvf2の活性を調節し得る分子、またはRdcvf1またはRdcvf2の転写または翻訳を調節する核酸配列に結合し得る分子を同定する方法に関する。方法自体は、米国特許 5,541,070; 5,567,317; 5,593,853; 5,670,326; 5,679,582; 5,856,083; 5,858,657; 5,866,341; 5,876,946; 5,989,814; 6,010,861; 6,020,141; 6,030,779; 6,043,024 (出典明示により本明細書の一部とする)に開示されている。かかる方法で同定される分子も本発明の範囲内にある。
【0021】
他の態様において、本発明は、本発明の核酸を、処置を必要とする対象の1以上の組織に導入する方法に関する。その結果、核酸によりコードされる1以上のタンパク質が組織内の細胞により発現または分泌される。
【0022】
他の態様において、本発明は、光受容体細胞がRdCVF1またはRdCVF2をともに培養されるような内移植用の光受容体細胞を提供する方法に関する。
【0023】
本発明の他の目的、特性、利点、態様は、以下の記載より当業者にとって明らかになるであろう。しかし、以下の記載および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様でもって、説明のためにのみ提示されるものである。開示の本発明の精神および範囲内で種々の改変および修飾は、当業者が以下の記載および本開示の他の部分を読むことで容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、発現クローニングからのマウスRdcvf1ヌクレオチド配列およびマウスRdCVF1アミノ酸配列。
【図2】図2は、マウスRdcvf1Lヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。
【図3】図3は、ヒトRdcvf1およびヒトRdcvf1アミノ酸配列。
【図4】図4は、ヒトRdcvf1Lヌクレオチド配列、およびヒトRdcvf1Lアミノ酸配列。
【図5】図5は、マウスRdcvf2ヌクレオチド配列、およびマウスRdcvf2アミノ酸配列。
【0025】
【図6】図6は、マウスRdcvf2Lヌクレオチド配列、およびマウスRdcvf2Lアミノ酸配列。
【図7】図7は、ヒトRdcvf2ヌクレオチド配列、およびヒトRdcvf2アミノ酸配列。
【図8】図8は、Rdcvfの短形態のアミノ酸整列(配列番号2、6、10、14)およびRdcvfの長形態のアミノ酸整列(配列番号4、8,12,14)。
【図9】図9は、GST−Rdcvf1のプライマー。
【図10】図10:RDCVF1/RDCVF2の複数整列。
【0026】
【図11】図11は、マウスとヒトのRDCVF2の比較。
【図12】図12は、マウスRdcvf2とESTクローンbe552141、bi517442、bg707818、bi603812の複数整列。
【図13】図13は、Rdcvf1とESTクローンbg299078、ai716631、bg294111、be108041,bg395078の複数整列。
【図14】図14は、Rdcvf1にマッチするように正されたEST配列bg299078。
【図15】図15は、Rdcvf1Lにマッチするように正されたEST配列bg294111。
【0027】
【図16】図16は、5週網膜C57BL/6@N5週(グリーン)およびC3H/HE@N(レッド)における桿状体アレスチン(A)およびRdCSF1(B)の発現についてのリアルタイムRT−PCR分析。
【図17】図17は、Rdcvf2が桿状体依存的に発現され、かつCNSの他の部分で発現されることを示すRT−PCR分析。
【図18】図18は、RdCVF1が桿状体依存的に発現されることを示すPCR分析。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本明細書に引用されるすべての特許出願、特許、文献は出典明示により本明細書の一部とする。
【0029】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、組換えDNA学などについての多くの通常の技術を使用する。これらの技術は周知であり、例えば、下記に説明されている:Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.): Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M.P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory); Methods in Enthymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds.,)。
【0030】
本明細書で用いる「分別的に発現される遺伝子」は、(a)本明細書に開示されるDNA(例えば、図1および配列番号1に示されるもの、または図2および配列番号3に示されるもの)の少なくとも1つを含有する遺伝子;(b)本明細書に開示されるDNAによりコードされるアミノ酸配列(例えば、図1および配列番号2に示されるもの、または図2および配列番号4に示されるもの)をコードするすべてのDNA配列;(c)本明細書に開示されるコード配列に実質的に類似のすべてのDNA配列を意味する。
【0031】
最も広い意味で、用語「実質的に類似」は、ヌクレオチド配列について使用するとき、言及のヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を意味する。なお、この対応する配列は、言及のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと同じ構造および機能を実質的に有するポリペプチドをコードし、例えば、ポリペプチドの機能に影響を及ぼさないアミノ酸の変化のみが生じているものである。望ましくは、実質的に類似のヌクレオチド配列は、言及ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする。実質的に類似のヌクレオチド配列と言及ヌクレオチド配列との同一性の比率は、望ましくは少なくとも90%であり、より好ましくは少なくとも95%であり、さらに好ましくは少なくとも99%である。配列比較は、Smith-Waterman 配列整列算法(参照、例えば、Waterman, M.S. Introduction to Computational Biology: Maps, sequences and genomes. Chapman & Hall. London 1995. ISBN o-412-99391-0 または http://www-hto.usc.edu/software/squaln/index.html)を用いて行う。この localS プログラム、version 1.16 を次のパラメーターと共に用いる:マッチ:1、ミスマッチ・ペナルティ:0.33、オープンギャップ・ペナルティ:2、伸長ギャップ・ペナルティ:2。言及ヌクレオチド配列に「実質的に類似」のヌクレオチド配列は、言及ヌクレオチド配列に、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、2X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、より望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、さらにより望ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、50℃で洗うと、より好ましくは、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5M NaPO4、1mM EDTA中で50℃で、0.1X SSC、0.1%SDS、65℃で洗うと、ハイブリドし、なお機能的に均等の遺伝子産物をコードする。
【0032】
本明細書で開示の分別的に発現される遺伝子は、眼組織で発現され、桿状体細胞で作られる。しかし、この産生は、網膜ジストロフィー、例えば、網膜色素症、加齢関連斑点変性、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜症、迂曲状アトロフィー、先天性アモロシス、レフサム症候群、スタルガルド病、アッシャ症候群に罹患している者において、網膜ジストロフィーに罹患していない者における対応の組織に比べて、減少量すなわち低いレベルでしかなされない。分別的に発現された遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAおよびかかるmRNAから翻訳されたタンパク質は、桿状体組織および/またはかかる組織の関連組織において、網膜ジストロフィーに罹患していない者の対応組織におけるのに比して、多くとも約半分の量でしか、好ましくは多くとも1/5で、より好ましくは多くとも1/10で、さらにより好ましくは多くとも1/100の量でしか、存在しない。このようなRdcvf1またはRdcvf2mRNAの転写低下を、本明細書で「転写低下」という。
【0033】
本明細書での「宿主」は、いかなる手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降法、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などにより細胞中に導入された異型DNAを含有する真核細胞および原核細胞を意味する。
【0034】
本明細書での「異型」は、「天然源と異なる」を意味し、すなわち非天然状態を表す。例えば、宿主細胞が他の生物体、特に別の種から誘導されるDNAまたは遺伝子で形質転換されると、この遺伝子を有する宿主細胞またはその子孫細胞に関して、この遺伝子は異型である。同様に、異型は、同じ元の細胞型から誘導されるか、またはその細胞型に挿入されたヌクレオチド配列であって、非天然状態、例えば、異なる複写数で存在するか、または異なる調節エレメントの制御下に存在するヌクレオチド配列を意味する。
【0035】
ベクター分子は、異型核酸を挿入し得、ついで適当な宿主細胞に導入できる核酸分子である。好ましくは、ベクターは、1以上の複製源、および組換えDNAを挿入できる1以上の部位を有する。ベクターは、ベクターを有する細胞を有さない細胞から選択できる便利な手段をしばしば有する。例えば、薬物耐性遺伝子をコードする。通常のベクターは、プラスミド、ウイルスゲノムおよび(主に酵母および細菌で)「人工的染色体」を含む。
【0036】
「プラスミド」は、本明細書では一般的に、当業者に周知の標準的命名法にしたがって、大文字および/または数字の前および/または後の小文字pで表す。本明細書に開示の出発プラスミドは、市販され入手可能なもの、非制限的に公に入手可能なもの、周知の通常の適用により入手可能なプラスミドから構築できるものである。本発明において使用できる多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは、当業者に周知であり、容易に利用可能である。さらに、当業者は、本発明での使用のために適した多くの他のプラスミドを構築できよう。本発明におけるこれらのプラスミドなどのベクターの性質、構築、使用は、本開示から当業者に非常に明白であろう。
【0037】
用語「単離された」は、材料がその元の環境(例えば、自然界に存在するものの場合、自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物中の自然界に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然界に共存する材料のあるものまたはすべてから分離される同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、後に自然系に導入されるとしても、単離される。該ポリヌクレオチドは、ベクターの部分であり得、および/または該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成の部分であり得、かかるベクターや組成物が自然環境の部分でないように単離される。
【0038】
本明細書のおける用語「転写コントロール配列」は、DNA配列が作動的に連結しているタンパク質コード核酸配列の転写を導入、抑制あるいは制御するDNA配列、例えば、イニシエーター配列、エンハンサー配列、プロモーター配列を意味する。
【0039】
本明細書のおける用語「Rdcvf1転写コントロール配列」または「Rdcvf2転写コントロール配列」は、哺乳動物Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子、好ましくはマウスまたはヒトゲノムのRdcvf2遺伝子に関連して通常みられるいかなる転写コントロール配列でもある。
【0040】
本明細書のおける用語「非ヒトの転写コントロール配列」は、ヒトゲノムにみられない転写コントロール配列である。
本明細書のおける用語「ポリペプチド」は、用語「ポリペプチド」または「タンパク質(複数)」と互変的に使用する。
【0041】
本明細書における用語、本発明のポリペプチドの「化学的誘導体」は、通常は分子の部分でない追加の化学的部分を含有する本発明のポリペプチドである。かかる部分は、分子の溶解、吸収、生物学的半減期などを改善し得る。あるいは、この部分は、分子の毒性を低下し、分子の望ましくない副作用などを消失または軽減し得る。このような作用を仲介し得る部分は、例えば、下記に開示されている。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1980)。
【0042】
本明細書のおける用語「ニューロ保護剤」は、ニューロン細胞の変性を防ぐか、変性から保護する化合物である。「網膜保護剤」は、網膜細胞の変性を防ぐか、変性から保護する化合物である。
【0043】
本発明は、核酸分子、好ましくは下記のようなDNA分子を含む。(1)配列番号1または配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離された分子、(2)配列番号1または配列番号3の単離されたDNAに、高ストリンジェント条件でハイブリドする核酸配列を含む単離された核酸配列、(3)上記の(1)または(2)にハイブリドする核酸配列。かかるハイブリダイゼーション条件は、上記のように、高ストリンジェントまたはより低い高ストリンジェントであり得る。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合、高ストリンジェント条件は、例えば、6X SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で、37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)、60℃(23塩基オリゴ)で洗うことを意味し得る。種々の組成の核酸についてのかかるストリンジェント条件の適当な範囲は、下記に記載されている。Krause and Aaronson (1991) Methods in Enzymology, 200:546-556 および Maniatis et al. (前出)。
【0044】
これらの核酸分子は、標的遺伝子アンチセンス分子として働き、例えば、標的遺伝子調節および/または標的遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセンス・プライマーとして有用である。さらに、かかる配列は、リボザイムの部分および/またはトリプル・ヘリックス配列として使用でき、標的遺伝子の調節に有用である。なおさらに、かかる分子は、RdCVF1またはRdCVF2疾患原因対立遺伝子の存在を検出し得る診断方法の構成要素として有用であり得る。
【0045】
本発明はまた下記を含む:(a)上記のコード配列(すなわち、センス)および/またはその相補体(すなわち、アンチセンス)を含有するベクター;(b)コード配列の発現を指令する調節エレメントに作動的に結合する上記のコード配列を含有する発現ベクター;(c)宿主細胞においてコード配列の発現を指令する調節エレメントに作動的に結合する上記のコード配列を含有する遺伝子操作された宿主細胞。本明細書での使用において、調節エレメントは、限定でないが、誘導性および非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーター、および発現を駆動または調節する当業者に既知の他のエレメントを含む。
【0046】
本発明は、本明細書に開示された核酸配列の断片を含む。完全長Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子の断片を、cDNAライブラリーのハイブリダイゼーション・プローブとして使用し、完全長の遺伝子を単離し、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子に高い配列類似性および類似の生物学的活性をもつ他の遺伝子を単離し得る。この型のプローブは、好ましくは少なくとも約30塩基を有し、例えば、約30〜約50塩基、約50〜約100塩基、約100〜約200塩基または200塩基以上(例えば300塩基)を含有する。プローブを用いてまた、完全長の転写体に対応するcDNAクローン、および完全なRdcvf1またはRdcvf2遺伝子を含有し、調節およびプロモーター領域、エキソンならびにイントロンを含むゲノムクローンまたはクローンを同定できる。スクリーンの例は、Rdcvf1またはRdcvf2遺伝子のコード領域を既知のDNA配列の使用により単離し、図1〜8に開示の単離配列のオリゴヌクレオチドプローブまたはランダム・プライニングを合成することを含む。本発明の遺伝子配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを用いて、ヒトcDNA、ゲノムDNAのライブラリーをスクリーンし、プローブがライブラリーの個々のクローンのいずれにハイブリドするかを調べる。
【0047】
上記の遺伝子配列に加えて、かかる配列のオルトログ(orthologs)が他の種に存在し得ると、過剰な実験を伴わずに、当技術分野でよく知られる分子生物学の技術により、同定し、容易に単離できる。さらに、この遺伝子産物の1以上のドメインに広範な相同性を有するタンパク質をコードするゲノム中の他の遺伝子座に遺伝子が存在することがある。この遺伝子も類似の技法により同定できる。オルトログまたは相同の例を図8、10、11、12,13に示す。
【0048】
例えば、単離の発現された遺伝子配列を標識して使用し、所望の生物体から得られたmRNAで構築されたcDNAライブラリーをスクリーンできる。標識配列が誘導された生物体と異なる生物体からcDNAが誘導されたときは、ハイブリダイゼーション条件は低ストリンジェントである。あるいは、標識された断片を用いると所望の生物体から誘導されたゲノムライブラリーをスクリーンし得る。この場合も適当に低ストリンジェント条件を用いる。かかる低ストリンジェント条件は当業者によく知られており、ライブラリーおよび標識配列が誘導される具体的な生物体の系列発生に依存して変わり得るであろう。かかる条件についての指針として、例えば、上記引用の Sambrook et al を参照のこと。
【0049】
さらに未知の発現された遺伝子型の配列を、所望の遺伝子内のアミノ酸配列に基づいて設計された2つの変性オリゴヌクレオチド・プライマーのプールを用いるPCRによって、単離できる。反応のテンプレートは、相同体またはスプライシング変異体を発現することが知られているか、発現すると思われる、ヒトまたは非ヒトの細胞系または組織から調製されたmRNAの逆転写により得られるcDNAであり得る。
【0050】
PCR産物をサブクローンし配列決定して、増幅された配列が発現の遺伝子様核酸配列の配列を表すことを確認できる。ついで、PCR断片を用いて、種々の方法により完全長cDNAクローンを単離できる。例えば、増幅された断片を標識して用い、バクテリアファージcDNAライブラリーをスクリーンできる。あるいは、標識された断片を用いて、ゲノムライブラリーをスクリーンできる。
【0051】
PCR技法を用いて、完全長cDNA配列も単離できる。例えば、標準的な方法に従って、RNAを適当な細胞または組織源から単離できる。逆転写反応をRNAに、第1鎖合成のプライミングのため増幅断片の最5'末端に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、行い得る。ついで、得られたRNA/DNAハイブリドに、標準的なターミナル・トランスフェラーゼ反応を用いて、「テイルされた」グアニンを末端につけ、ハイブリドをRNAaseHで消化し、そして第2鎖合成をポリCプライマーで駆動できる。このように、増幅断片のcDNA配列上流を容易に単離できる。使用し得るクローニング法の総説については、例えば、Sambrook et al., 1989 前出を参照。
【0052】
同定された分別的に発現された遺伝子が正常または野生の遺伝子であると同定された場合、この遺伝子を用いて、その変異対立遺伝子を単離できる。このような単離は、遺伝的基礎を有することが知られるか予測されるプロセスまたは障害において好ましい。疾患症候群に関係する遺伝子型を有することが知られるか予測される個体から変異対立遺伝子を単離できる。変異対立遺伝子またはその産物を下記の診断アッセイ系に利用できる。
【0053】
変異遺伝子のcDNAを、例えば、当業者に周知のPT−PCRを用いて単離できる。この場合、変異遺伝子を有すると思われる個体で発現されることが知られるか予測される組織より単離のmRNAに、オリゴdTオリゴヌクレオチド(またはランダム・ヘキソマー)をハイブリダイズせしめ、そして新しい鎖をリバース・トランスクリプターゼで伸長して、第1cDNA鎖を合成できる。ついで、cDNAの第2鎖を、正常遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(または他の適当な手段)を用いて、合成する。これらの2プライマーを用い、産物をPCRで増幅し、適当なベクター中にクローン化し、当業者に周知の方法でDNA配列解析を行う。DNA配列を変異遺伝子と正常遺伝子で比較して、変異遺伝子産物の機能の喪失または変更を起こす変異を確かめ得る。
【0054】
あるいは、ゲノムまたはcDNAライブラリーを、変異対立遺伝子を有すると思われる個体で所望の遺伝子を発現することが知られるか予測される組織より、DNAまたはRNAを用いて、構築およびスクリーンできる。正常遺伝子またはその適当な断片を標識し、プローブとして用いて、ライブラリーにおける対応の変異対立遺伝子を同定できる。この遺伝子を含有するクローンを当技術分野で通常的に用いられる方法で精製し、上記の配列解析を行い得る。
【0055】
あるいは、発現ライブラリーを、変異対立遺伝子を有すると思われる個体で所望の遺伝子を発現することが知られるか予測される組織より、単離されるDNAまたは合成されるcDNAを用いて、構築できる。この方法において、推定の変異組織によりつくられる遺伝子産物を、発現せしめ、正常遺伝子産物に対する抗体と組合す標準的抗体スクリーニング法でスクリーンできる(スクリーニング法について、例えば、参照、Harlow, E. and Lane, eds., 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor)。変異が変化した機能を有する発現遺伝子産物をもたらした場合(例えば、ミスセンス変異の結果)、抗体のポリクローナルセットは変異遺伝子産物と交差反応するようである。この標識抗体との反応により検出されるライブラリークローンを精製し、上記の配列解析を行い得る。
【0056】
分別的に発現される遺伝子産物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13のヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質を含む。特に、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のアミノ酸配列であるか、それを含むポリペプチドおよびその断片である。
【0057】
さらに、発現される遺伝子産物は、機能的に均等の遺伝子産物を表すタンパク質を含む。この均等の遺伝子産物は、上記の分別的に発現される遺伝子配列によりコードされるアミノ酸配列の中で、アミノ酸残基の欠失、付加または置換を含有し得る。なお、これらの欠失等の変化は、サイレントの変化であり、従って機能的に均等の分別的に発現される遺伝子産物(多形性)をつくる。アミノ酸の置換は、関与残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性を基に、および他種に由来のアミノ酸との比較でなし得る。
【0058】
例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アニリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアニリン、トリプトファン、メチオニンがあり、極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンがあり、陽性電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、ヒスチジンがあり、陰性電荷(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸、グルタミン酸がある。
【0059】
本明細書のおける用語「機能的に均等」は、分別的に発現される遺伝子配列によりコードされる外因性の分別的に発現される遺伝子産物と実質的に類似のインビトロまたはインビボ活性を発揮し得るタンパク質またはポリペプチドを意味する。「機能的に均等」はまた、外因性の分別的に発現される遺伝子産物の対応する部分が反応するのと類似の態様で、他の細胞分子または細胞外分子と反応し得るタンパク質またはポリペプチドを意味する。例えば、「機能的に均等」のペプチドは、イムノアッセイにおいて、抗体が外因性タンパク質の対応ペプチド(すなわち、「機能的に均等」のペプチドを達成するように改変されたペプチドのアミノ酸配列)に、または外因性タンパク質自体に結合するのを減少せしめる。なお、抗体は外因性タンパク質の対応ペプチドに対して生じている。当モル濃度の機能的に均等のペプチドは対応ペプチドの上記結合を、少なくとも約5%、好ましくは約5%〜10%、さらに好ましくは約10%〜25%、よりさらに好ましくは約25%〜50%、最も好ましくは約40〜50%減少せしめる。
【0060】
分別的に発現される遺伝子産物は、当技術分野で周知の技術を用いる組換えDNA法によりつくり得る。分別的に発現される本発明のポリペプチドおよびペプチドを、分別的に発現される遺伝子配列をコードする核酸の発現により調製する方法を記載する。当業者に周知の方法を用いて、発現される遺伝子タンパク質コード配列および適当な転写/翻訳コントロールシグナルを含有する発現ベクターを構築できる。この方法には、例えば、インビトロ組換えDNA法、合成法、インビボ組換え/遺伝子組換え法がある。参照、例えば、Sambrook et al., 1989、前出および Ausuubel et al., 1989、前出。あるいは、発現遺伝子タンパク質配列をコードし得るRNAまたはcDNAを、例えば、シンセサイザーにより化学的に合成できる。例えば、"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait, M. J. ed., IRL Press, Oxford を参照(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0061】
多様な宿主−発現ベクター系を用いて、本発明の分別的に発現される遺伝子コード配列を発現できる。このような宿主−発現ベクター系は、所望のコード配列をつくり、精製し得るビヒクルを提示し、また、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされたときに、本発明の分別的に発現される遺伝子タンパク質をインシトゥで発現する細胞を提示する。これには、限定でないが、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えバクテリアファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E. coli、B. subtilis)などの微生物があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces, Pichia)があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、baculovirus)で感染された昆虫細胞系があり、分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワー・モザイクウイルス)で感染されるか、組換えプラスミド形質転換ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系があり、哺乳動物細胞のゲノムから誘導されるプロモーター(例えば、メタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物のウイルスから誘導されるプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシナウイルス7.5プロモーター、シトメガロウイルス前期遺伝子プロモーター)を含有する組換え発現構築体を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)がある。
【0062】
細胞に固有のRdcvf1またはRdcvf2遺伝子からの細胞によるRDCVF1またはRDCVF2の発現も行い得る。この発現方法の詳細は、米国特許5,641,670、5,733,761、5,968,502、5,994,127に記載されている(出典明示により本明細書の一部とする)。米国特許5,641,670、5,733,761、5,968,502、5,994,127の方法によりRDCVF1またはRDCVF2を発現するように誘発された細胞を、組織中のRDCVF1またはRDCVF2の局所濃度を増すために、生きている動物の所望の組織に植え込み得る。
【0063】
細菌系において、多くの発現ベクターを、分別的に発現される遺伝子タンパク質の発現についての使用意図にしたがって、好都合に選択できる。例えば、大量の該タンパク質をつくり、抗体の産生のために、ペプチド・ライブラリーをスクリーンするとき、例えば、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベル発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターには、限定でないが、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J, 2:1791)があり、このベクターでは分別的に発現される遺伝子タンパク質コード配列がlacZコード領域をもつフレーム内でベクター中に、融合タンパク質がつくられるように、個々に連結反応し得るものであり、さらにpINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264:5503-5509)などがある。PGEXベクターを用いても、外来タンパク質を融合タンパク質としてグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)で発現できる。一般的に、このような融合タンパク質は溶性であり、溶解細胞からグルタチオン−アセファガロース・ビードへの吸収および遊離グルタチオンの存在での溶出により容易に精製できる。PGEXベクターを設計して、クローン化標的遺伝子タンパク質がGTS部分からエンドペプチダーゼにより放出され得るように、トロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ開裂部位を導入する。
【0064】
プロモーター領域は、プロモーター領域を欠くレポーター転写ユニット、例えば、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(「cat」)またはルシフェラーゼ転写ユニット、候補プロモーター断片すなわちプロモーターを含有し得る断片を導入するための制限部位の下流を含むベクター用いる所望の遺伝子から選択できる。よく知られているように、catまたはルシフェラーゼ遺伝子の制限部位上流でプロモーター含有断片のベクター中への導入は、CATまたはルシフェラーゼ活性をつくりだす。この活性は標準的CATアッセイまたは発光測定により検出できる。この目的に適したベクターはよく知られており、容易に入手できる。この3ベクターはpKK232−8、−pCM7、pGL3(Promega, E1751, Genebank Ass. no. u47295)である。このように、本発明のポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターは、よく知られ容易に入手できるプロモーターのみを含むだけでなく、レポーター遺伝子アッセイを用いる上記の技法で容易に得られるプロモーターも含む。
【0065】
本発明におけるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に適する既知の細菌性プロモーターには、E. coli lacI および lacZ プロモーター、T3およびT7プロモーター、T5 tac プロモーター、ラムダPR、PLプロモーター、trp プロモーターがある。この発現に適する既知の真核プロモーターには、CMC直接初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、Rous 肉腫ウイルス(RSV)などのレトロウイルスLTRプロモーター、マウスのメタロチオネイン−Iプロモーターなどのメタロチオネインプロモーターがある。
【0066】
昆虫系において、Autographa california 核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現するためのウイルスとして使用し得るいくつかの昆虫系のひとつである。このウイルスは Spodoptera frugiperda 細胞中で生長する。分別的に発現される遺伝子コード配列は、個々にウイルスの非必須領域(例えば、ポリヒドリン遺伝子)中にクローン化して、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。分別的に発現される遺伝子コード配列を成功裡に挿入すると、ポリヒドリン遺伝子の不活化および非閉の組換えウイルス(例えば、ポリヘドリン遺伝子によるコードのタンパク様膜を欠くウイルス)の産生が起きる。ついで、これらの組換えウイルスを用いて、挿入遺伝子が発現される Spodoptera frugiperda 細胞を感染せしめる(例えば、Smith et al., 1983, J. Virol. 46: 584; Smith, USP 4,215,051 を参照)。
【0067】
哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルスを基にする発現系を使用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、所望の分別的に発現される遺伝子コード配列をアデノウイルス転写/翻訳コントロール複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列に連結反応せしめ得る。このキメラ遺伝子をアデノウイルス・ゲノム中にインビボおよびインビトロ組換えにより挿入できる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE2)での挿入は、感染の宿主における分別的に発現される遺伝子タンパク質を発現し得る組換えウイルスもたらす(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3666-3669 参照)。特殊な開始シグナルも分別的に発現される遺伝子コード配列の効率的な翻訳に必要なことがある。このシグナルには、ATG開始コドンおよび近接の配列がある。完全な分別的に発現される遺伝子が、それ自体で開始コドンおよび近接の配列を含み、適当な発現ベクターに挿入された場合、追加の翻訳コントロールシグナルは必要でない。しかし、分別的に発現される遺伝子コード配列の部分のみが挿入された場合、ATG開始コドンをおそらく含む外因性の翻訳コントロールシグナルを用意しなければならない。さらに、開始コドンは、全挿入体の翻訳を確保するために、所望のコード配列のリーディングフレームをもつ相にあらねばならない。これらの外因性翻訳コントロールシグナル(Kozack 配列)および開始コドンは、天然または合成の種々の源に由来し得る。発現の効率は、適当な転写エンハンサー・エレメント、転写ターミネーターなどの挿入により向上できる(参照、Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544)。
【0068】
宿主細胞での発現のための適当なベクターおよびプロモーターの選択は、既知の方法であり、発現ベクターの構築、ベクターの宿主中への導入、および宿主での発現は、当技術分野で通常の技術である。
【0069】
一般的に、組換え発現ベクターは、複製源、下流構造配列の転写を指示する高度発現遺伝子由来のプロモーター、およびベクターへの曝露後にベクター含有細胞の単離を可能にする選択的マーカーを含む。
【0070】
加えて、挿入の配列の発現を調節し、または所望の特定の形態で遺伝子産物を改変やプロセシングを行う宿主細胞種を選び得る。タンパク質産物のこの改変(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、開裂)は、タンパク質機能にとって重要なことがある。異なる宿主細胞がタンパク質の翻訳後プロセシングおよび改変に特徴的および特異的なメカニズムをもつ。適当な細胞系および宿主系を選んで、発現された外来のタンパク質の正しい改変およびプロセシングを確保し得る。この目的のために、一次転写体の適当なプロセシング、グリコシル化、遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用し得る。この哺乳動物宿主細胞には、限定でないが、CHO、VERO,BHK,HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などがある。
【0071】
組換えタンパク質の長期間・高収量の産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、分別的に発現されるタンパク質を安定的に発現する細胞系を操作できる。複製のウイルス源を含有する発現ベクターを用いるよりも、適当な発現コントロールエレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択可能マーカーにより調節されたDNAで宿主細胞を形質転換できる。外来DNAの導入に続き、操作された細胞を1−2日、強化培地で成長せしめ、次いで選択培地に移し得る。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に抵抗性を付与し、プラスミドの染色体への安定的な組み込みのを可能にし、クローン化され、細胞系に伸長され得る焦点を細胞がつくるのを可能にする。この方法を適切に使用して、分別的に発現されるタンパク質を発現する細胞系を操作する。この操作された細胞系は、分別的に発現されるタンパク質の外因性活性に作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用である。これらの安定な細胞系は、直接的にまたは包膜して、細胞治療法として使用できる。
【0072】
多くの選択系を使用できる。それには、限定でないが、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン-グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc, Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)、アデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22:817)がある。遺伝子を tk-、hgprt-または aprt- 細胞でそれぞれ使用できる。また、アンチメタボレート抵抗を dhfr、gtp、neo、hygro の選択基礎に使用できる。dhfr はメトトレキセートに抵抗を付与する(Wigler et al., 1980, Natl. Acad. Sci. USA 78:1527)。gtp はミコフェノール酸に抵抗を付与する(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072)。neo はアミノグリコシドG−418に抵抗を付与する(Colberre-Garapin et al., 1981, J. Mol. Biol. 150:1)。hygro はヒグロマイシンに抵抗を付与する(Santerre et al., 1984, Gene 30:147)。
【0073】
別の融合タンパク質系がヒト細胞系で発現された非変性融合タンパク質の精製を容易にする(Janknecht et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-8976)。この系において、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ酸末端タグに翻訳的に融合されるように、所望の遺伝子をワクシニア組換えプラスミド中にサブクローンする。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに入れ、ヒスチジン標識タンパク質をイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0074】
下記のようなアッセイ系で成分として使用するとき、分別的に発現されるタンパク質を直接的または間接的に標識し、分別的に発現されるタンパク質と試験物質とで形成された複合体の検出を容易にする。種々の標識系のいずれかを用いる。それには、限定でないが、125Iなどの放射性同位元素;基質に曝露されたときに検出可能な熱量測定シグナルまたは光を生み出す酵素標識系;蛍光標識がある。
【0075】
組換えDNA法を用いて、これらのアッセイ系用の分別的に発現されるタンパク質をつくる場合、標識化、免疫化および/または検出を容易にできる融合タンパク質を操作するのが好都合である。
【0076】
間接的標識化には、分別的に発現される遺伝子産物に特異的に結合する標識抗体などのタンパク質の使用がある。この抗体には、限定でないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単一鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリーによりつくられる断片がある。
【0077】
他の実施態様において、RDCVF1またはRDCVF2タンパク質、またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸を、遺伝子治療法で投与して、円錐体機能を促進する。遺伝子治療法とは、核酸を対象に投与することによりなされる治療を意味する。本発明のこの実施態様において、核酸は、円錐体機能を促進して治療効果を仲介する、そのコードされたタンパク質をつくる。
【0078】
当技術分野で利用可能な遺伝子治療のいかなる方法も本発明にしたがって使用できる。例示的な方法を下記する。
【0079】
好ましい態様において、治療物は、RDCVF1もしくはRDCVF2タンパク質またはその断片もしくはキメラタンパク質を適当な宿主中で発現する発現ベクターの部分であるRdcvf1またはRdcvf2核酸を含む。特に、この核酸は、Rdcvf1またはRdcvf2コード領域に作動し得るように連結されたプロモーター、誘導性または構成性で選択的に組織特異的な該プロモーターを有する。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2コード配列および他の所望の配列が、ゲノムの所望の部位で同族組換えを促進する領域で挟まれているような核酸分子を用いると、Rdcvf1またはRdcvf2核酸の染色体内発現を得る(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Natrure 342:435-438)。
【0080】
核酸の患者への配送は、核酸または核酸保持ベクターに患者が直接曝露されるように直接的であるか、または細胞がまずインビトロで核酸に形質転換され次いで患者に移植されるように間接的である。この2つの方法は、それぞれインビボ治療法または生体外治療法として知られている。
【0081】
具体的な実施態様において、核酸をインビボで直接投与し、核酸が発現され、コード産物をつくる。これは、当技術分野で知られている多数の方法のいずれでも行い得る。例えば、適当な核酸発現ベクターの部分として核酸を構築し、細胞内になるように投与することにより、欠損または弱毒化レトロウイルスなどのウイルス(アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス)を使用する感染により(例えば、USP 4,980,286 および前出の他の文献を参照)、裸のDNAの直接注入により、微粒子衝撃(例えば、遺伝子ガン;Biolistic, DuPont)、リピドまたは細胞表面受容体またはトランスフェクト剤でのコーティング、リポソームまたは微粒子またはマイクロカプセルへの封入の使用により、核に入ることが知られているペプチドとの結合での核酸の投与により、受容体仲介エンドサイトーシスの結合での核酸の投与による(例えば、参照、米国特許 5,166,320; 5,728,399; 5,874297; 6,030,954、これらのすべてを出典明示により本明細書の一部とする)(受容体を特異的に発現する細胞型を標的にするために使用できる)などである。別の実施態様において、リガンドがエンドソームを破壊する融合性ウイルス性ペプチドを含む核酸-リガンド複合体をつくり、核酸がリポソーム変性を回避するのを可能にできる。別の実施態様において、特異的な受容体を標的にして、細胞特異的取りこみおよび発現についてインビボで核酸を標的にできる(参照、例えば、PCT WO 92/06180; WO 92/22635; WO 92/20316; WO 93/14188; WO 93/20221)。あるいは、核酸を同族組換えにより細胞内に導入し、発現のための宿主細胞DNAにくみ込むことができる(参照、例えば、米国特許 5,413,923; 5,416,260; 5,574,205; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438)。
【0082】
具体的な実施態様で、Rdcvf1またはRdcvf2核酸を含有するウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスを使用できる(参照、例えば、米国特許 5,219,740; 5,604,090; 5,834,182)。このレトロウイルスを改変して、ウイルスゲノムの梱包および宿主細胞DNAへの統合に必要でないレトロウイルス配列を削除できる。遺伝子治療で使用されるRdcvf1またはRdcvf2核酸をベクターにクローン化する。このベクターは遺伝子の患者への配送を容易にする。
【0083】
アデノウイルスは遺伝子治療で使用できる別のベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸器上皮に配送するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは、自然的に呼吸器上皮に感染して、緩和な疾患を起こす。アデノウイルスによる配送系のための他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、筋肉である。アデノウイルスは非分割細胞を感染し得るという利点を有する。アデノウイルスによる遺伝子治療を行う方法は、例えば、米国特許 5,824,544; 5,868,040; 5,871,722; 5,880,102; 5,882,877; 5,885,808; 5,932,210; 5,981,225,5,994,106; 5,994,132; 5,994,134; 6,001,557; 6,033,8843(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0084】
アデノ関連ウイルス(AAV)も遺伝子治療に提案されている。アデノ関連ウイルスは、遺伝子を網膜に配送するための特に魅力的なビヒクルである。AAVを作り、使用する方法は、例えば、米国特許 5,173,414; 5,252,479; 5,552,311; 5,658,785; 5,763,416; 5,773,289; 5,843,742;5,869,040; 5,942,496; 5,948,675(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0085】
遺伝子治療の他の方法には、遺伝子を組織培養での細胞に移入することがあり、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクションまたはウイルス感染などの方法による。通常、移入の方法には、選択可能マーカーの細胞への移入がある。ついで、細胞を選択下に置き、移入された遺伝子を取り上げ発現さす細胞を単離する。この細胞を患者に直接または封入後に配送する。
【0086】
この実施態様において、得られる組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸を細胞中に導入する。この導入は、当技術分野で知られているいかなる方法でも行い得る。それには、限定でないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスまたはバクテリオファージ感染、細胞融合、染色体仲介遺伝子移入、マイクロ細胞仲介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などがある。外来遺伝子の細胞への導入について多くの技法が当技術分野で知られており、受容細胞の必要な発育的および生理的機能が破壊されない場合に、本発明で使用できる。この技法で核酸の細胞への安定的な移入をなし、核酸が細胞により発現されて、好ましくは、その子孫細胞により受け継がれ発現される。
【0087】
得られる組換え細胞を当技術分野で知られる種々の方法で患者に配送できる。好ましい実施態様において、上皮細胞を皮下注射などにより注入する。他の実施態様において、組換え皮膚細胞を皮膚移植片として患者に適用し得る。組換え血液細胞(例えば、造血桿細胞または先祖細胞)を好ましくは静脈投与する。使用する細胞の量は所望する作用や患者の状態などに依存し、当業者はそれを決定できる。
【0088】
核酸を遺伝子治療の目的のために導入できる細胞はいかなる所望の利用可能な細胞を含む。それには、限定でないが、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;種々の幹細胞または先祖細胞、特に骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られる造血幹細胞または先祖細胞がある。
好ましい実施態様において、遺伝子治療に使用される細胞は患者に自己由来である。
【0089】
組換え細胞を遺伝子治療に使用する実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2を細胞中に導入して、細胞またはその子孫細胞がそれを発現するようにし、ついで組換え細胞を治療作用のためにインビボ投与する。具体的な実施態様において、幹細胞または先祖細胞を使用する。インビトロで単離および保持できるいずれの幹および/または先祖細胞を本発明のこの実施態様において使用し得る。そのような幹細胞には、限定でないが、造血幹細胞(HSC)、皮膚や臓器内膜などの上皮組織の幹細胞、胚心筋細胞、肝幹細胞(参照、例えば、WO 94/08598)および神経幹細胞(Stemple and Anderson, 1992, Cell 71:973-985)がある。
【0090】
上皮幹細胞(ESC)や角化細胞は、既知の方法により皮膚や臓器内膜などの組織から得ることができる(Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)。皮膚などの層化された上皮細胞において、再生が胚層、基底板に近接の層内で有糸分裂により起きる。臓器内膜中の幹細胞がこの組織の迅速な再生速度を提供する。患者またはドナーの皮膚や臓器内膜から得られるESCまたは角化細胞を組織培養において生育できる(Pittelkow and Scott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。もしESCをドナーから準備すると、宿主の移植片に対する反応を抑制する方法(例えば、中程度の免疫抑制を促進するため、照射、薬剤または抗体の投与)を使用できる。網膜幹細胞(Tropepe et al., 2000, Science, 287:2032)。
【0091】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCのインビトロでの単離、増殖、保持を提供するいかなる技法も本発明の実施態様で使用できる。これを実施し得る技術は、(a)未来の宿主またはドナーから単離される骨髄細胞からのHSC培養物質の単離および確立、または(b)同種または異種の前に確立された長時間HSC培養物の使用を含む。非自己由来のHSCは、未来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法を併せて使用し得る。本発明のある実施態様において、ヒト骨髄細胞を針挿入により後腸骨稜から得ることができる(参照、例えば、Kodo et al., 1984, J. Clin. Invest. 73:1377-1384)。本発明の好ましい実施態様において、HSCを非常に富んだ、または実質的に純粋の形でつくり得る。この富化形態は、長時間培養の前、間、後に達成でき、当技術分野で知られている技法でなし得る。骨髄細胞の長時間培養の確立および保持に、例えば、修飾 Dexter 細胞培養法(Dexter et al., 1977, J. Cell Physiol. 91:335)または Witlock-Witte 培養法(Witlock and Witte, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:3608-3612)を使用できる。
【0092】
具体的な実施態様において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コード領域に作動し得るように連結された誘発プロモーターを含み、核酸の発現が転写の適当な誘発剤の存在あるいは不存在の調節により調節可能である。
【0093】
1以上の分別的に発現される遺伝子エピトープを特異的に認識し得る抗体の産生について本明細書で記載する。この抗体には、限定でないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')2抗体、Fab発現ライブラリーによりつくられる断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合断片がある。このような抗体を、例えば、生物サンプルにおける指紋、標的、遺伝子の検出に、または異常な標的遺伝子の活性の阻害法として使用できる。この抗体を疾患処置法の部分としておよび/または診断法の部分として使用する。この方法では、Rdcvf1またはRdcvf2の異常、またはレベルRdcvf1またはRdcvf2の異常形態の存在について患者で、当業者に周知の方法により水性体液および/または硝子体を採取する(例えば、Foster, RK, Abbott, RI., Gelender, H. (1980) Management of infectious endophthalmitis Ophthalmology 87, 313-319)。
【0094】
分別的に発現される遺伝子に対する抗体の産生のために、種々の宿主動物を、分別的に発現されたタンパク質またはその部分の注射により、またはDNA免疫化法により免疫できる。このような宿主動物には、限定でないが、ウサギ、マウス、ラット、さらに多数がある。種々のアジュバントを用いて、宿主の種類に応じて免疫応答を増大できる。それには、フロインドアジュバント(完全および不完全)、酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リソレシチンなどの界面活性剤、pluronic ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、かぎ穴カサガイ・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、BCG(Calmette-Guerin 菌)および Corynebacterium parvum などの有用なヒトアジュバントがある。
【0095】
ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物やその抗原機能誘導体などの抗原で免疫された動物の血清から誘導された抗体分子の異質性集団である。ポリクローナル抗体の産生には、上記のような宿主動物を、やはり上記のようなアジュバントで補われた分別的に発現される遺伝子産物の注射で免疫する。
【0096】
モノクローナル抗体は、特定の抗原に対する抗体の同族性集団であって、培養中での継続的細胞系による抗体分子の産生を提供するいかなる技法によっても得ることができる。この技法には、限定でないが、Kohler and Milstein のハイブリドーマ法 (1975, Nature 256:495-497; USP 4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、EBVハイブリドーマ法(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96) がある。これらの抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む免疫グロブリンおよびこれらのサブクラスで有り得る。本発明のmAbをつくるハイブリドーマはインビトロおよびインビボで培養し得る。インビボでの高力価のmAbの産生は、これを現在での好ましい産生法とする。
【0097】
加えて、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法を使用し得る(Morisson et al., 1984, Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314:452-454)。これは、適当な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子、併せて適当な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子のスプライシングによる。キメラ抗体は異なる部分が異なる動物種から誘導される分子である。この動物種は、ネズミmAbから誘導される可変または高度可変の領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する。
【0098】
あるいは、単鎖抗体の産生についての技法(米国特許 4,946,778; Bird, 1988, Science 242:423-426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Ward et al, 1989, Nature 334:544-546)を、分別的に発現される遺伝子-単鎖抗体をつくるのに適用できる。単鎖抗体の形成は、Fv領域の重鎖および軽鎖断片をアミノ酸橋で連結し、単鎖ポリペプチドをつくることによる。
【0099】
最も好ましくは、「ヒト化抗体」の産生に有用な技法を用いて、本明細書に開示されたようなポリペプチド、断片、誘導体、機能的均等物に対する抗体をつくる。その技法は、下記の米国特許に開示されている:米国特許 5,932,448; 5,693,762; 5,693,761; 5,585,089; 5,530,101; 5,910,771; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; 5,789,650; 5,545,580; 5,661,016; 5,770,429(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0100】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知の方法でつくり得る。例えば、この断片には、限定でないが、抗体分子のペプシン消化によりつくられるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド橋の減少によりつくられるFab断片がある。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science, 246:1275-1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を行い得る。
容易な検出に特に好ましいのは、多くの変形を有するサンドイッチ法であってそのすべてを本発明に含める。
【0101】
例えば、典型的なフォワードアッセイにおいて、非標識抗体を固体基質上で免疫化し、試験サンプルを結合分子と接触せしめる。適当な時間でのインキュベーション後に、十分な時間で抗体-抗原バイナリー複合体が形成する。この時点で、検出可能なシグナルを誘発できるレポーター分子で標識された第2抗体を加え、インキュベートし、抗体-抗原-標識抗原の3体複合体の形成に十分な時間を与える。未反応材料を洗い出し、抗体の存在を、シグナルの観察により測定するか、既知量の抗原を含有する対照サンプルと比較して定量し得る。フォワードアッセイの変法には、サンプルと抗体の両方を同時に結合抗体に加える同時アッセイ、または標識抗体と試験サンプルとを最初に結合せしめ、インキュベートし、ついで非標識表面結合抗体に加える逆アッセイがある。これらの技法は当業者に周知であり、少しの変形の可能性も容易に明らかである。本明細書での「サンドイッチ法」は、基本的な2部位法についての変法を含む。本発明のイムノアッセイについて、唯一の限定的要素は、非標識および標識の抗体がRdCVF1またはRdCVF2特異的抗体であることである。
【0102】
この型のアッセイにおいて最も普通に使用されるレポーター分子は、いずれかの酵素、蛍光体または放射性核種を含有する分子である。酵素イムノアッセイの場合、酵素が第2抗体に、通常グルタルアルデヒドまたはペリオデートによってコンジュゲートしている。しかし、容易に分かるように、変形された種々の異なる連結反応が存在し、当業者に知られている。通常使用される酵素は、ホースラッジッシュ・ペルオキシダーゼ、グルコース・オキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどである。具体的な酵素とともに使用される基質は、対応する酵素による加水分解時の検出可能な色変化の産出について、一般的に選択する。例えば、リン酸 p‐ニトロフェニルがアルカリホスファターゼ・コンジュゲートでの使用に適しており、ペルオキシダーゼ・コンジュゲートには1,2‐フェニレンジアミンまたはトルイジンを通常使用する。蛍光源性基質も使用でき、これは、上記の色素形成基質よりも蛍光産物をつくる。適当な基質を含有する溶液を、抗体‐RdCVF1またはRdCVF2‐標識抗体の3体複合体に加える。基質が第2抗体と結合している酵素と反応し、定量的な視覚シグナルをもたらし、通常分光器でこれを定量すると、血清サンプル中に存在するRdcvf1またはRdcvf2の量を評価できる。
【0103】
あるいは、フルオレッセンやローダミンなどの蛍光化合物を抗体に、その結合能を変えないで、化学的にカップリングできる。特定波長の光の照射で活性化されたときに、蛍光色素‐標識抗体が光エネルギーを吸収し、分子内で励起状態をおこし、ついで特徴的な長い波長で光が照射する。照射は、光顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光法およびEIA法は、当技術分野でよく知られており、本発明に特に好ましい。しかし、放射性同位体などの他のレポーター分子、化学ルミネッセンスや生物ルミネッセンス分子も使用できる。当業者にとって、必要とする使用に適した方法を改変するのは容易であろう。
【0104】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドの診断試薬としての使用に関する。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドをコードする遺伝子の変異形の検出が、機能欠損に関連して、疾患の診断または疾患の疑いに加え、またはそれらを明確にする診断的手段を提供する。これは、遺伝子の過小発現、過剰発現、発現の空間的または時間的な変化から得られる。遺伝子に変異を持っている個体を種々の技法によりDNAレベルで検出できる。
【0105】
診断用の核酸は、血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料などの対象の細胞から取得できる。ゲノムDNAは、検出のために直接的に使用でき、あるいは解析の前にPCRなどの増幅法で酵素的に増幅できる。RNAまたはcDNAも同様に使用できる。削除および挿入を、増幅された産物を正常な遺伝子型と比較することによるサイズの変化で検出できる。点変異を、増幅DNAを標識ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることにより同定できる。好ましく対合された配列を、誤対合のデュープレックスとRNase消化または融点の変化により識別できる。DNAの相違も、DNA断片のゲル中における電気泳動の、変性剤のありまたはなしでの動態変化により、あるいは直接的なDNA配列決定により検出できる(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)。特定の部位での配列変化も、RNaseおよびS1保護などのヌクレアーゼ保護または化学的開裂法で明らかにし得る(参照、Cotton et al., Proc Natl Acad Sci USA (1985) 85:4397-4401)。別の実施態様において、Rdcvf1またはRdcvf2あるいはその断片を含むオリゴヌクレオチド・プローブのアレイを構築して、遺伝子変異などの効率的なスクリーニングを行い得る。アレイ技法は、周知であり、一般的に適用可能であり、遺伝子発現、遺伝的連鎖、遺伝的可変性を含む分子遺伝学における多様な問題に取り組むのに使用できる(参照、例えば、M. Chee et al., Science, Vol 274, pp 610-613 (1996))。
【0106】
診断アッセイは、上記の方法によるRdcvf1またはRdcvf2遺伝子の変異の検出を介する疾患に対する感受性を診断または決定する方法を提供する。さらに、そのような疾患を、対象に由来するサンプルから異常なRdcvf1またはRdcvf2の発現を調べることを含む方法により診断できる。すなわち、発現はポリヌクレオチドの定量についての既知のいずれの方法でもRNAレベルで測定できる。例えば、PCRなどの核酸増幅法、RT-PCR、RNase保護法、ノーザンブロット法、他のハイブリダイゼーション法による。宿主に由来するサンプルにおいて本発明のポリペプチドなどのタンパク質のレベルを調べるのに使用できるアッセイは当業者に周知である。このアッセイには、放射性イムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエステンブロット法、ELISAアッセイがある。
【0107】
他の態様において、本発明は、下記を含む診断キットに関する:
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくはそのポリペプチドまたはその断片;
(d)本発明のポリペプチドに対する抗体、好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14のポリペプチドよりなる群から選ばれるポリペプチドに対する抗体。
【0108】
このようなキット中に、(a)、(b)、(c)または(d)が実質的な成分を含み得ることは、十分理解されるであろう。このキットは疾患または疾患に対する感受性を診断するのに使用し得る。特に、網膜色素症、加齢関連斑点変性、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜症、迂曲状萎縮、先天性アモロシス、レフサム症候群、スタルガルド病、アッシャ症候群の診断に使用し得る。本発明のヌクレオチド配列は、染色体局在にも価値がある。染色体位置は、ハイブリド細胞系のパネル(マウス-ハムスター)から調製されるDNAに対するPCRで得ることができる。ヒト遺伝子の染色体位置をマウス遺伝子の位置から類似性で推定できる(McCathy et al., 1997, Genome research, 7, 1153)。配列を、マウスまたはヒトの染色体を含む個々の染色体上の特定位置を特に標的とし、そしてそれとハイブリダイズできる。本発明の染色体関連配列のマッピングは、この配列の遺伝子関連疾患との相関における重要な最初の工程である。染色体が染色体位置に正確にマップされると、染色体上の配列の物理的位置が遺伝子マップデータに相関し得る。このようなデータは、例えば、Man の V. McMusick, Mendelian Inheritence(オンラインで Johns Hopkins University Welch Medical Library, RetNet より入手可能)にある。ついで、同じ染色体領域にマップされる遺伝子と疾患の関係は、連結反応分析(物理的に隣接する遺伝子の共伝達)により同定する。
【0109】
cDNAまたはゲノム配列における感染個体と非感染個体の相違も調べ得る。変異が感染個体のすべてまたはいくつかで認められ、正常の個体で認められないとき、変異は疾患の原因であり得る。
【0110】
本発明の追加の実施態様は、上記の治療作用のために、薬学的に許容される担体とともに医薬組成物を投与することに関する。この医薬組成物はRdcvf1またはRdcvf2、類似体またはアゴニストを含む。組成物は単独でまたは少なくとも1つの他の物質、例えば、無菌のバイオ適合性製薬担体で投与できる安定化化合物および水とともに投与し得る。これには、限定でないが、塩、緩衝塩、デキストローズがある。組成物は、患者に単独で、または他の物質、薬剤またはホルモンと併せて投与できる。
【0111】
本発明に含まれる医薬組成物は、種々の経路で投与できる(例えば、Transscleral delivery of bioreactive protein to the choroid and retina, Ambati et al., 2000, Investigative Ophthalmology and Visual Science, 41, 1186)。眼用の溶液、懸濁液、軟膏を含む局所眼製剤は、当業者によく知られている(参照、Remington's Pharmaceutical Science, 18th Edition, Chapter 86, pages 1581-1592, Mack Publishing Company, 1990)。他の投与形態も使用できる。それには、房室内注射(前眼房または後眼房への直接投与)、結膜下注射、眼球後部注射がある。このような投与形態に適した眼用製剤をつくる方法および手段は周知である。
【0112】
本明細書での「眼外の」は、眼表面および眼球と瞼の間の(外部の)箇所を意味する。眼外の領域の例には、瞼円蓋すなわち cul de sac、結膜表面、角膜表面がある。この位置はすべての眼組織の外であって、この領域にアクセスするのに侵襲的処置を要しない。眼外システムの例は、これらの領域に治療物質を運ぶのに使用し得る挿入物、「局所的に」用いられるドロップ、ゲルまたは軟膏を含む。眼外のデバイスは、患者自身でも一般的に容易に取り除くことができる。
【0113】
下記の特許は、眼外の領域に薬剤を投与するのに使用する眼外システムを開示している。Higuchi の米国特許 3,981,303; 3,986,510; 3,995,635 は、薬剤を含有するバイオ分解性眼挿入物を開示する。挿入物は、眼球の cul de sac、眼球と瞼の間の眼外の箇所での保持のために種々の形態でつくり得る。いくつかの通常のバイオ適合性ポリマーを、このデバイスの製造での使用に適したものとして開示する。このポリマーには、アルギン酸亜鉛、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルデヒド)、ポリ(グリコール酸)がある。特許は、薬剤の低い透過性を有し、薬剤を保持する空洞の室を有する膜被覆デバイスも記載している。
【0114】
Theeuwes の米国特許 4,217,898 は、薬剤配送の調節に使用される微穴貯蔵所を開示する。このデバイスは眼の cul de sac に眼外的に入れられる。所望のポリマー系には、ポリ(塩化ビニル)-コ-ポリ(酢酸ビニル)コポリマーがある。Kaufman の米国特許 4,865,846 および 4,882,150 は、結膜包に少なくとも1つのバイオ腐食性材料または軟膏担体を含有する眼用薬剤配送系を開示している。この特許は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ビニルアルコール)などのポリマー系および橋かけ結合コラーゲンを適当な配送系として開示している。
【0115】
網膜疾患または損傷の処置のためのRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物の上記使用において、局所的に適用される眼製剤が、治療薬剤の眼への浸透または移行を促進する物質を含むと好都合でもある。そのような物質は当技術分野で知られている。Ke の米国特許 5,221,696 は、角膜を経る眼製剤の透過を高める材料の使用を開示している。
【0116】
眼内系は、眼自体の組織層の内、間または周りのすべての組織区画における使用に適する系である。その位置は、結膜下(眼球に隣接する眼粘膜の下)、眼窩(眼球の後)、房室内(眼球室自体の中)を含む。眼外系と異なり、注射または移植からなる侵襲的処置が、これらの領域へのアクセスに必要である。
【0117】
下記の特許は、眼内デバイスを開示している。Wong の米国特許 4,853,224 は眼室への導入のためにマイクロ封入された薬剤を開示する。この系で使用されているポリマーは、ポリエステルおよびポリエーテルを含む。Lee の米国特許 4,863,457 は、治療物質の持続性放出のために眼内に外科的に入れられるバイオ分解性デバイスを開示する。このデバイスは、結膜下(眼球の粘膜)に外科的に埋め込まれるように設計されている。Krezancaki の米国特許 4,188,373 は、ヒト体温でゲル化する製薬ビヒクルを開示する。このビヒクルは、薬剤およびガムまたはセルロース誘導の合成誘導体の水性懸濁液である。Haslam の米国特許 4,474,751 および 4,474,752 は、室温で液体であり、体温でゲル化するポリマー-薬剤系を開示する。この系で使用される適当なポリマーは、ポリオキシエチレンおよびプロピレンを含む。Davis の米国特許 5,384,333 は、長時間薬剤放出を提供するバイオ分解性注射用薬剤配送ポリマーを開示する。薬剤組成物は、バイオ分解性ポリマー・マトリクス中の医薬活性物質からつくる。ポリマー・マトリクスは20℃〜37℃の温度で固体であり、38〜52℃の温度で流動化する。薬剤配送ポリマーは溶性または液体の薬剤処方の配送に限定されない。例えば、薬剤含有ミクロスフェアー、リポソーム、他の粒子結合薬剤を注射部位で安定にし、保持するために、マトリクスとしてポリマーを使用できる。
【0118】
眼内注射に特に適したビヒクルは無菌の蒸留水であって、その中にRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を無菌の等張液として製剤し、適当に保存する。他の眼用製剤においてRDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を注射可能なミクロスフェアーやリポソームなどの物質とともに含め得る。この物質は、後にデポ注射として配送され得るタンパク質の緩和な持続的放出を提供する。RDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物の眼内導入のための他の適当な手段は、RDCVF1またはRDCVF2タンパク質産物を含有する埋め込み可能な薬剤配送デバイスである。
【0119】
本発明の眼科用製剤、特に局所製剤は、他の成分、例えば、眼用に許容される保存剤、張性剤、共溶媒、湿潤剤、錯生成剤、緩衝剤、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤を、当技術分野で知られるように含み得る。例えば、適当な張性向上剤には、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは、塩化ナトリウムまたはカリウム)、マニトール、ソルビトールなどがある。十分な張性向上剤は、眼中に徐々に注入される製剤が低張または実質的に等張になるように、好都合に加える。適当な保存剤には、限定でないが、塩化べンザルコニウム、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸がある。過酸化水素も保存剤として使用できる。適当な共溶媒には、限定でないが、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールがある。適当な錯生成剤には、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキシトリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキシトリンがある。適当な界面活性剤または湿潤剤には、限定でないが、ソルビタンエステル、ポリソルベート80などのポリソルベート、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポルなどがある。緩衝剤は、通常の緩衝剤であって、例えば、ホウ酸塩、クエン酸塩、ビカルボン酸塩、TrisHClなどである。
【0120】
製剤の成分は、投与の眼外または眼内の部位に適した濃度で存在する。例えば、緩衝剤を用いて、組成物のpHを生理的な値または僅かに低い値、典型的には約5〜8に保持する。追加の製剤成分は、眼外的に投与される治療剤の長時間眼存在をもたらす材料を、局所的接触を最大にし、吸収を促進するように、含み得る。適当な材料には、眼製剤の粘度を増加するポリマーまたはゲル形成材料がある。キトサンは、持続性放出液体眼科薬剤における眼科放出速度調節剤として特に適した材料である(参照、USP 5,422,116, Yen et al.,)。眼科剤の調節的放出についての本発明製剤の適用性は、当技術分野で知られる種々の方法、例えば、Journal of Controlled Release, 6:367-373, 1987 やその変法で決定できる。
【0121】
活性成分に加えて、この医薬組成物は、活性化合物を医薬として使用される製剤に製造するのを容易にする賦形剤や補助剤を含む適当な薬学的に許容される担体を含有し得る。製剤法および投与法のさらなる詳細については、最新版の Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa) を参照できる。
【0122】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適した容量で製剤し得る。担体によって医薬組成物を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液など、患者の摂取のために製剤できる。
【0123】
経口用の医薬組成物は、活性化合物を固体賦形剤と併用し、得られる混合物を選択的に粉砕し、適当な補助剤を加えた後に顆粒状の混合物とし、所望に応じて錠剤や糖衣錠の芯とする。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質の充填剤であって、例えば、ラクトース、スクロース、マニトール、ソルビトールなどの糖類;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモなどの植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムやトラカントゴムなどのガム類;ゼラチンやコラーゲンなどのタンパク質である。所望に応じて、崩壊剤または安定化剤を加え得る。例えば、橋かけ結合ポリビニルピロリドンゲル、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどの塩を加え得る。
【0124】
糖衣錠芯を適当な被膜物、例えば、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/またはニ酸化チタニウムも含み得る濃縮糖溶液、ラッカー溶液、適当な有機溶媒または溶媒混合物とともに使用し得る。染料や色素を錠剤または糖衣被膜に加えて、産物の同定および活性化合物の量、すなわち容量の特徴化などに用い得る。
【0125】
経口的に使用され得る医薬製剤は、ゼラチンからつくられる硬カプセル、およびゼラチンおよびグリセロールやソルビトールなどの被膜からつくられる軟密封カプセルを含む。硬カプセルは、活性成分を、ラクトースやデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクやステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、選択的に安定剤とともに含有し得る。軟カプセルにおいて、活性成分を、脂肪油、液体または液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体中に、安定剤とともにまたは安定剤なしで、溶解または懸濁せしめ得る。
【0126】
非経口投与に適する医薬製剤を、水性溶液、好ましくは生理的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液、リンゲル液などの生理的緩衝液中に製剤し得る。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ソルビトール、デキストランなどを含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁液を油性注射用懸濁液としても調製できる。適当な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルやトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、リポソームがある。非リピドポリカチオン性アミノポリマーも配送に使用できる。選択的に、懸濁液は、化合物の溶解性を増加し高濃度溶液の調製を可能にする適当な安定剤も含有し得る。
【0127】
局所または経鼻製剤については、透過すべきある種のバリアーに適する透過剤を製剤に使用し得る。そのような透過剤は当技術分野で知られている。
【0128】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られる方法で製造し得る。例えば、通常のように、混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作成、水簸、エムルジョン化、封入、捕捉、凍結乾燥などの方法である。
【0129】
医薬組成物は塩としても提供でき、多種の酸でつくり得る。酸には、限定でないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などがある。塩は対応する遊離塩基よりも、水性などのプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。別の態様において、好ましい製剤は、下記のいずれかまたはすべてを含有することのある凍結乾燥末であり得る:1−50mMヒスチジン、0.1−2%スクロース、2−7%マニトール。pH域4.5〜5.5で、使用前に混合する。
【0130】
医薬組成物を調製した後、適当な容器に入れ、表示の状態での処置のために標識する。Rdcvf1またはRdcvf2の投与に、この標識は、投与の量、回数、方法を含む。
本発明の医薬組成物は、意図する目的を達成するのに有効な量を含有する組成物を含む。有効な量の決定は当業者の能力の範囲内にある。
【0131】
いかなる化合物についても、治療的に有効な用量は、最初に、新形成性細胞などの細胞培養アッセイまたはマウス、ウサギ、イヌ、ブタなどの動物のモデルで予測できる。動物モデルを用いて、投与に適する濃度範囲および経路を決定できる。ついで、この情報を用いて、ヒトでの投与に有用な量と経路を決定できる。
【0132】
治療的に有効な用量は、活性成分、例えば、Rdcvf1またはRdcvf2、その断片、Rdcvf1に対する抗体、アゴニストの、症候または症状を軽減する量を意味する。治療的な効力および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法、例えばED50(全体の50%に有効な量)やLD50(全体の50%に対する致死量)で決定できる。毒性量と治療量との比率は治療係数であり、ED50/LD50として表示できる。大きい治療係数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータをヒトでの使用のため容量範囲の決定に用いる。この組成物に含まれる容量は、好ましくは毒性がないか、ほとんどなくて、ED50を含む範囲の濃度内にある。この容量は、使用される容量形態、患者の感受性、投与経路により変化する。
【0133】
具体的な用量は、処置を要する対象に関連する因子に照らして、医師が決定する。用量および投与を調整して、活性物質の十分な量を提供し、所望の作用を維持する。考慮される因子は、病状の重篤度、対象者の全身的健康状態、患者の年齢、体重、性、食事、投与の頻度、併用薬物、反応過敏性、治療に対する耐容性/応答性を含む。長時間作用医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクレアランス速度に応じて、3〜4日毎、毎週または2週毎に投与し得る。
【0134】
普通の投与量は、投与経路に応じて0.1〜100,000μg、全量約1gまでで変化し得る。特定の用量および配送経路についての指針は、当技術分野の文献に記載されており、医師に利用可能である。当業者は、タンパク質やその阻害剤と異なるヌクレオチドの種々の製剤を使用し得る。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配送は特定の細胞、状態、位置などに特異的であるタンパク質の経口投与に適する医薬製剤は、米国特許 5,008,114; 5,505,962; 5,641,515; 5,681,811; 5,700,486; 5,766,633; 5,792,451; 5,853,748; 5,972,387; 5,976,569; 6,051,561 に記載されている。
下記の実施例は、本発明を説明するものであって、その範囲を限定するものでない。
【実施例】
【0135】
1.発現クローニング
1)5週齢正常マウス網膜から全ARN精製
cDNAライブラリーを、5週齢のC57BL/@Nマウスの網膜から、Glissin et al., (1974), Biochemistry, 13, 2633-2637 に記載の方法に一般的に従って構築した。要約すると、動物を殺した後、眼を摘出し、0.1%ピロカルボン酸ジエチル(DEPC)補充のリン酸緩衝液中に入れた。神経網膜をすばやく分断した(網膜色素上皮をこの組織調製物で除去した)。各分断の後すぐに、組織を新鮮な6M塩化グアニジウム中で均質化した。10網膜を4ml滅菌管中の2.4mlGCに集め、組織を強力な均質化により1分間室温で完全に破壊した。
【0136】
5週齢正常マウス網膜からメッセンジャーRNA(mRNA)精製
mRNAをオリゴdT被膜小穴ビーズ(Oligotex, Qiagen) 上でストリンジェント条件で、Kuribayashi et al., (1988) Nucleic Acids Res. Symposium series, 19, 61-64 に従って単離した。簡単にいうと、100−150μg全マウス網膜RNAを15μlのオリゴdTビーズと複合緩衝液(10mMトリスpH7.5;0.3MのNaCl;0.1MのEDTA;0.5w/v%デュオデシル硫酸ナトリウム(SDS))中で混合し、6分間65℃で0.51ベッカーの水においてインキュベートし、ついで徐々に室温に約3-4時間冷やし、室温で遠心分離してアガロースビーズを回収した。ついで、0.4mlの(10mMトリスpH7.5;0.3MのNaCl;0.1MのEDTA;0.5w/v%SDS)中で10分間インキュベートして2回洗い、2工程で50μlの70℃加温RNaseなしの水で溶出し、10μl酢酸ナトリウムpH5.2および0.25mlエタノールで沈降せしめ、−75℃で12時間インキュベートした。mRNAを遠心分離(1時間15,000rpm、ついで2回70%エタノールで洗う)で採取し、20μlのRNaseなしの水に再懸濁した。mRNA濃度を260nmで測定し、rRNA汚染の不存在を上記の変性条件でゲル電気泳動で確認した。
【0137】
cDNA合成
cDNAを Okayama and Berg (1982), Mol Cell Biol., 2, 161-170 の方法に従って合成した。最初の鎖合成を2.5μgのNotIアダプター・オリゴヌクレオチド(5'TGTTACCAATCTGAAGTGGGAGCGGCCGACAA(T)183')で開始し、50単位の改変モロニイ・ネズミ白血病ウイルス(M−MLV)リバース・トランスクリプターゼ(Superscript II, Life Technology) で供給者の推薦条件で2時間インキュベートした。第2鎖合成のために、反応物を4時間14℃で4単位のRNaseHおよび100単位のDNAポリメラーゼとともにSS緩衝液(40mMトリスpH7.2;85mM塩化カリウム;4.4mM塩化マグネシウム;3mMのDTT;5μg/mlウシ血清アルブミン(BSA))中で最終量0.25mlにインキュベートした。EcoRIアダプター(5'-OH AATTCGGCACGAGG3'-OH/3'-OH GCCGTGCTCC5'-PO4)を、2重鎖cDNAの両端に14時間16℃で40単位のT4DNAリガーゼ(Promega, Madison, USA) を用い、全量20μlで供給者の推薦条件でインキュベートした。この反応の産物は、クローニング・ベクター中で方向つけされ得る5'のEcoRI半部位および3'のEcoRI半部位を有するdscDNAである。
【0138】
pcDNA3におけるdscDNAの連結反応
この連結反応を Maniatis T (1992), Molecular Cloning: 実験室マニュアル第2版に従って10μgのpcDNA3プラスミド(インビトロゲン)で行った。このプラスミドはEcoRIおよびNotI(Promega, Madison, USA) で供給者の推薦条件で切断して調製した。
【0139】
組換えクローンの増殖
組換えクローンの増殖を、Birnboim et al., (1979), Nucleic Acids Res., 7, 1513-1523 の方法に一般的にしたがって行った。簡単にいうと、100主要クローンのプールをつくるために、XL1 Gold (Strategene) 形質転換プロトコール(Strategene 提供)を下記のように少し改変した。生育培地でインキュベートした後、形質転換反応を20%(v/v)グリセロールおよび8%(v/v)ウマ血清アルブミン(HAS、Life Technology) で行った。HASおよびグリセロールは解凍後の死を防止する。滴定で、寒天プレート(100μg/mlアンピシリン)上に各形質転換反応物を置いて、100コロニーをもたらす量を計算した。バルク形質転換反応物を−80℃で貯蔵した。ライブラリー由来の組換えプラスミドをすぐに96まで精製した。100クローンの96プールを調製するために、100クローンに相当する計算量を寒天上に置き、20時間37℃で生育した。DNAを寒天プレートから剥がしたコロニーから直接精製した。23%グリセロールでの各培養基のストックを−80℃で保存した。DNAを Qiawell ultra (Qiagen) でその供給者の推薦するプロトコールに従い精製した。典型的に、10μgの精製プラスミドを得て、各調製物の濃度を吸光度260nmで測定した。100選択プールを10プールにサブ分割し、元のプールからのグリセロール・ストックの1/250.000稀釈50μlを寒天プレート上に100μg/mlアンピシリンで置いた。16時間37℃での生育の後、個々の160コロニーを16寒天プレート上で(プレートにつき10)複製し、16時間37℃で生育する。各プレートから10コロニーを採取し、液体培地(Luria Broth (LB)、100μg/mgアンピシリン)中で3時間37℃で生育した。30%グリセロールでのこれらの培養のストックを−80℃で保存した。プラスミドDNAを前のように調製した。10のサブプールを個々のクローンに分割するために、10のサブプールのグリセロール・ストックの1/250.000稀釈50μlを寒天プレート上に100μg/mlアンピシリンとともに置いた。16時間37℃での生育の後、個々の16コロニーを取り、16時間2mlLB100μg/mlアンピシリン中で生育した。30%グリセロールでのこれらの培養のストックを−80℃で保存した。プラスミドDNAを前のように調製した。
【0140】
Cos−1細胞での遷移トランスフェクション
Cos−1細胞での遷移トランスフェクションを、Chen and Okayama (1987) の方法で行った(High-efficiency transformation of mammalian cells by plasmid DNA, Mol Cell Biol., 7, 2745-2752)。
【0141】
若とり胚網膜の培養
プロトコールは Adler and Hatlee (1989, Science, 243, 391) による。若とり胚網膜(卵中6日)を解離し、単層培養基に入れた。分化シグナルのない培養条件で、円錐体が細胞の60−80%を占める。visinin (チキン円錐体マーカー、ジーンバンク・アクセス番号 M84729)に対するポリクローナル抗体をウサギ中でつくり、培養基中の円錐体の割合が60−80%であることを確認した。方法の容易さと速度に加えて、このモデルの簡単な環境(化学的定義培地、細胞と細胞との接触がない)が、この方法を円錐体の生存に関与する栄養因子を調べるのに非常に適したシステムにする。簡単にいうと、親のコントロール単離体からの胚の網膜を卵での6日間発育後に切開し、細胞を解離し、低い密度(105細胞/cm2)でプレートに置いた。10日間での細胞の生存度(60−80%)をLIVE/DEADアッセイ(Molecular probes, Eugene, USA)で調べた。このアッセイは生きている細胞と死んだ細胞を定量できる。生存細胞の数が、化学的定義培地での7日間培養の後に、最初の細胞数の8%に減少する。ライブラリー由来のクローン・プールでトランスフェクトされたCOS1細胞からの条件培地の存在で行い、生存細胞を7日後にインビトロで数える。
【0142】
チキン親(strain 657 red label)を実験室から25kmの孵化施設で本実験目的のための分離室に保有した。自然に得られる受精卵を毎週集め、孵化後に実験室に17℃(その生物的0)で保有した。毎日、5卵を24時間20℃ついで136時間37℃で加湿室において、卵の向きを時々反転させながらインキュベートする。培養日に、卵の表面をMucocit−Aで洗い、ついで壊し、チキン胚をPBSに移す。各胚の発育段階が第29であるのを Hamburger and Hamilton (1951, Essential Development biology, Stern and Holland Ed.) と視覚比較で確認する。2胚を選択し摘出して、眼をCO2独立培地(Life Technologies) に移した。網膜を切開し、リンゲル緩衝液に移し、2回洗った。網膜を小片に切断し、20分間37℃でトリプシン溶液(0.25w/v%)で処理した。10%不活性化FCS補充の培養基(M199, Life Technology)を加えて、反応を止める。細胞懸濁液を数分間25μlのDNAseI(1mg/ml, Sigma) で処理する。ついで細胞懸濁液を化学的定義培地でFCSの除去のために2回洗う。化学的定義培地は、CDCM、等量のDMEMおよびM199培地(Life Technologies)、AB補充物つき(5μg/mlインスリン; 5μg/mlTransferring;64nMプロゲステロン;0.1mMプトレシン;5ng/mlセレニウム;3mMタウリン;2.7μMシチジン 5'‐ジホスホエタノールアミン;5.2μMシチジン 5'‐ジホスホコリン;0.2μg/mlヒドロコルチゾン;30nM3,3'‐5‐トリヨード‐L‐チロニン;1mMピルビン酸ナトリウム)、0.3μMプロスタグランジンD2;0.1μg/mlリノール酸を含む。トリパンブルーで着色された細胞の濃度を Mallassez' 細胞で測定し、2プレート密度(2および4x105細胞/cm2)に対応する2濃度(5.6および1.12x105細胞/cm2)に持ってくる。
【0143】
Cos−1トランスフェクト細胞からの条件培地を氷解し、50μlを2つの96ウエル組織培養基で処理された黒プレート(Corning Coaster)に移す。このプレートは、100μg/mlポリ‐L‐リシン(Sigma) 溶液で計画にしたがい被覆されている。
【0144】
第1回スクリーニング
【表1】
【0145】
数字は100クローンのプール番号を、Cは空のベクター(pcDNA3)でトランスフェクトされたCos−1細胞からの条件培地を、Pはポジティブ対照(pcDNA‐マウスGDNFでトランスフェクトされた条件培地)を意味する。
【0146】
第2および第3回スクリーニング
【表2】
【0147】
x(第2回)およびy(第3回)はそれぞれ第1および第2回で選択されたプールの番号を表す。01から16は用いられたサブプールを表す。x(y)は16プールが分割された元のプールを表す。Cは第1回と同じである。Pは改変されて第2回でpCMVScript‐CNTF、第3回でpcDNA‐939.09.08 である。0はCDCM培地中の若とり円錐体細胞のみを表す。C57およびC3Hは、それぞれ5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nマウス網膜から「マウス網膜の体外移植組織からの条件培地の調製」に記載のように調製された網膜の体外移植組織からの条件培地である。
【0148】
2つの密度(2および4x105細胞/cm2)に対応する細胞懸濁液50μlを、実験誤差を最小にするため8チャネル動力化ピペット(Biohit) 付きの条件培地を充たした2つの96ウエルプレートのウエルに加えた。細胞を7日間37℃で50%CO2でインキュベートした。
【0149】
マウス網膜の体外移植組織からの条件培地の調製
第2および第3回スクリーニングは、Mohand-Said et al., (1998) から調整されたポジティブ対照を含む。5週齢マウスC57BL/6@NおよびC3H/He@Nを殺し、網膜を摘出した。2網膜を切開し、12ウエルプレートにおける1.5mlのCDCM中、24時間37℃で50%CO2でインキュベートした。条件培地を回収し、Vivaspin (Sartorius、切断点10kDa)で超ろ過により因子40で濃縮した。条件培地を液体窒素で凍らせ、使用の前−20℃でアリコートに保存した。使用の日に、条件培地を氷解し、CDCMに10倍に稀釈し、0.22μmフィルター(Acrodisk 13, Gelman Science)で滅菌ろ過した。
【0150】
機能アッセイ、生/死アッセイ
機能アッセイは、インビトロ7日間インキュベーション後に生きているチキン網膜細胞の数を基にする。生細胞と死細胞をそれぞれ染色する2種の蛍光源染料(カルセインAMとエチジウムダイマー)の使用を基にする生/死アッセイキット(Molecular probes, Eugene, USA) を使用した。生きている細胞は、基質(カルセインAM)を520nmで発光する蛍光産物に変換する代謝活性(ここではエステラーゼ活性)を起こす。死細胞の膜透過性が変えられて、635nmで発光するエチジウムダイマーによる核のDNA着色が可能になる。生細胞は485nmでの励起後に520nmで発光し、死細胞は520nmでの励起後に635nmで発光する。エピ蛍光顕微鏡を用いて、2つの型の蛍光細胞を別個に視覚できる。インビトロで7日後、細胞を30分間、室温で暗所で2.7μMカルセインAMおよび0,3mMエチジウムダイマーとともにインキュベートした。
【0151】
影像取得
簡単にいうと、影像取得は各ウエルの自動焦点化からなり、2種の蛍光における自動的な細胞計数に続き特殊なソフトウエアー、例えば、Metamorph (Universal Imaging Corporation, West Chester, USA)を用いて粗データを処理し、プレートの各ウエルについてのデジタル化像を得る。水銀エピ蛍光ランプの装着されたインバート顕微鏡(Nikon TE 200)を用いた。これは2励起フィルター485および520nm、2発光フィルター520および635nm、対象(x10)、コンピューター駆動電動 platine (Multicontrol 2000, Martzauzer and a CCD camera (Cohu))を有す。
【0152】
プレートと記録するために電動 platine 上に置き、焦点を手動で第1ウエルに合わせ、このプレーンを記録する(zオリジン)。死と生の像の閾値を第1ウエルからセットする。第1ウエルの中心を白光で調整する。それには、第1ウエルの底を像の底にコンピューター・モニター上で手動で整え、ついで第1ウエルの最右端を像の右にコンピューター・スクリーン上で整えて、2の位置を記録する。第1ウエルの中心を計算すると、プレートの各ウエルの中心位置がわかる。開発過程で、ウエルの端で細胞密度が僅かに高く、取得から端が出ていることに気がついた。結果を誤まらないために、各ウエルを完全に中心にすることが重要である。起動さすと、プレートの最初のスキャンが死細胞を記録する。死細胞密度は、これらの条件下であまり変らない。この適用は異なる焦点プランで像を取って自動焦点化し、最も輝く正しい焦点を選ぶ。このz位置が保存され、platine がx軸とy軸にプログラム化された運動を起こす。これは、ひとつの像で再構築されたときに、ウエルの2/3表面を表す全4像を取る。焦点プランからの像の集まりを対照のために保存する。platine が自動焦点化を行い、ウエルA1からA12、ついでB12からB1、C1からC12など...で始まるプレートの各ウエルについて4取得をもたらす。最後に、最後のウエル(H1)を過剰暴露するために、platine がプレートを外側に動かす。死細胞のスキャンに30分かかる。
【0153】
第2スキャン(生細胞)をフィルター交換後に行う。この第2スキャンで死スキャンからの各ウエルの記録されたz位置を用いる。死細胞と同様に各ウエルから4像を取る。第2スキャンの終了時(22分)に、死および生の再構築された像を、自動的に日付が記されたファイルに保存する。細胞数(死および生)が自動的に予めセットされた体形測定パラメーター(平均)で計数され、試験が正しいかどうかを調べるために、コンピューター・モニター上に表示される。生細胞の数が高すぎないかを毎日調べることが重要である。大き過ぎる密度で置かれると、チキン網膜細胞が、それ自体の生存因子をつくって多くの場合、より長く生存することを観察した。この作用の不存在で細胞をスクリーンした。第2プレートのスキャンの前に(プレートの細胞の2倍である同じ実験)、第1プレートからのlog ファイル名の後にaを加えた。各実験の像をCD-rom に保存した。250以上のCD-rom をつくった。
【0154】
細胞の計数およびプールの選択
細胞数(生および死)の計数にCD-rom に保存された各実験の像を使用した。1実験からのlog ファイルを最初にコンピューターに入れ、Metamorph ソフトウエアーで開いた。第1段階で、14ウエルC(空のベクターでトランスフェクトされたCos−1細胞からの条件培地)に対応する像を開いた。像の閾値を調整し、コマンド挿入の体型測定分析を用いて、これらの対照ウエルについて10から250の対象間の領域(各全領域についての生細胞の数)の分布を測定した。分布は Gaussin 曲線に従い、単離された細胞に対応する対象の最大数を有する。ついで、この標準値を、対象が実験的関数:SOC = 29/20.74 SV で2細胞(標準対象カット、SOC)として数えられる上記領域の値を計算する。個々のプレートのSOC値を用いて、プレートの生細胞の数を数える。この数をエクセル表に移す。
【0155】
第1回スクリーニングについて、フォールド相違(生細胞数の増加または減少)としての各プール対14対照ウエルの平均+標準偏差の値をプロットした。プレート内の位置相違から来る変化を是正するために、試験するプールの位置に対応する80ウエルと14ウエル対照との個々のフォールド相違の平均を、200独立プレートについて計算した。平均で、観測された相違は、位置相違にのみ原因しており、この係数で細胞数を補正した。選択されるプールをさらに厳密に識別するために、生細胞数を、フォールド相違対1.3を越えないで0.4を越えるすべての対照値としてプロットした。この方法において、すべてのプールが空のベクターに対応する14ウエルに対するフォールド相違であり、0.4〜1.3の間を作用なしと考え、対照として使用する。補正後、2プレートの対照に対するフォールド相違を倍加し、結果をフォールド相違の減少により選別した。誤りのプールをスクリーンするのを回避するために、リストの上部のプールを実験の20プール(両プレート)に対応するグラフならびに生細胞および死細胞の像を視覚検査でさらに調べた。
【0156】
第2回および第3回について、サブプールのためのプレートスクリーニングは追加の対照を含む。5週齢の網膜外植体から条件培地を調製した。C57BL/6@N由来の網膜外植体のポジティブ作用を記録し、他のものを除外する実験を選択した。結果を14対照ウエルに対するフォールド相違としてプロットし、対照の再計算をしなかった。2プレートの対照に対するフォールド相違を倍加し、結果を16サブプールについてフォールド相違の減少により選別した。
【0157】
単離されたcDNAの配列決定を、T7プライマー(5'GTAATACGACTCACTATAGGGC3')を用いて毛管シークエンサー(CEQ2000, Beckman Coulter)で行った。DNA配列をデータベースと Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) で比較した。
【0158】
Rdcvf2およびヒト同族体の同定
Rdcvf1(配列番号2または配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)およびBLASTを用いて、同族のネズミおよびヒトポリペプチドを同定した(図8)。マウスRdCVF2に対する同族性を有するESTクローン(ジーンバンク・アクセス番号:bc016199)を同定した。ジーンバンク・アクセス番号:be552141, bi517442, bg707818, bi603812, ai433287, be088414, bg297383, bg297304(参照、図12)。マウスRdcvf1(配列番号1)に対する同族性を有するESTクローンを同定した。ジーンバンク・アクセス番号:bg299078, ai716631, bg294111, be108041, bg395178(参照、図13)。
【0159】
Rdcvf1発現についてのリアルタイムPT−PCR分析
5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nならびに共通遺伝子C3H(+/+およびrd/rd)を、サイバーグリーンPCRキット(Roche)を有するライトサイクラー(Roche)でリアルタイムRT−PCRにより試験する。cDNAを、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド(pdN6, Amersham)、M−MLVリバーストランスクリプターゼ(superscript II, Life Technology)および1)で調製されたマウス網膜由来の全RNAを駆動させて、調製する。cDNAを、普遍的メッセンジャー・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を用いて正常にする。0.2μlの第1鎖cDNA合成(10ngの全RNAに等価)を2μMの配列番号24および配列番号25のオリゴヌクレオチドで3倍に下記のプログラムを用いて全量25μlで増幅する:30秒95℃および35サイクルの配列(1秒95℃、18秒55℃、10秒72℃)。解析によると(図16)、Rdcvf1発現がrd1マウス(C3H/He@N)で桿状体変性の後に減少する。リアルタイムRT−PCRで、Rdcvf1が光受容体により直接的に発現されることが分かる。これにはビブラトーム切断により網膜の外層から調製されたRNAを用いる。産物をアガロースゲル電気泳動で確認する。ポジティブ対照として、桿状体アレスチン(アクセス番号:M24086)の発現を同じ条件でプライマー(5'CTATTACGTCAAGCCTGTAGCC3’および5'CATCCTCATCTTTCTTCCCTTC3')でモニターする。Rdcvf1が円錐体保護因子であるとの確認を、適当な量のRdcvf1を5週齢のrd1マウス(C3H/He@N)の網膜外植体に加えることにより得る。適当な量については、いくつかの最初の滴定実験で分かる。7日後に適当な対照と比較すると、生存円錐体が増加する。
【0160】
Rdcvf2についてのPT−PCR分析
Rdcvf2発現のためのRT−PCRを、プライマーGCCAGCGTTTTCTGCCTTTTAC3'および5'AAGCCCTGCCTGCTCTAACATC3'を用いて実施した。解析によると、RdCVF2が桿状体依存的に発現され、Rdcvf2発現が網膜に限定されないで、他の神経細胞がRdcvf2を発現する(図17)。一方、Rdcvf1の発現は網膜細胞に限定されるようである。
【0161】
Rdcvf1またはRdcvf2の生/死アッセイ
COS−1細胞を、Rdcvf1またはRdcvf2を保持する適当な発現ベクターで誘発プロモーターの調整下にトランスフェクトする。対照細胞を空のベクターでトランスフェクトする。細胞を、Rdcvf1またはRdcvf2の誘発に適当な時間、細胞をインキュベートする。Rdcvf1またはRdcvf2でトランスフェクトされたCOS−1細胞からの条件培地とともにインキュベートされた生存円錐体細胞の数および生存の対照細胞の数を、上記の方法に従い数える。Rdcvf1またはRdcvf2を発現する細胞は、有意に高い量の生存細胞を示す。
【0162】
桿状体特異的因子
リアルタイムRT−PCR分析を標準的条件で、5週齢のC57BL/6@NおよびC3H/He@Nからの5週網膜外植体における桿状体アレスチン(対照)およびRdcvf1の発現について、下記のプライマーを用いて実施した。
配列番号24:5'TCTATGTGTCCCAGGACCCTACAG3'
配列番号25:5'TTTATGCACAAGTAGTACCAGGACAG3'
その結果、RdCVF1が桿状体の存在でのみ発現された(桿状体誘導CVF1)。
【0163】
ポリクローナル抗体の産生
ポリクローナル抗体を、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)精製融合タンパク質(GST−Rdcvf1)ならびにマウスRdCVF1配列番号2ペプチド配列アミノ酸11〜32(Ab番号2)および配列番号3ペプチド配列アミノ酸79〜96(Ab番号3)をウサギに注射して、調製する。融合構築体pGST−Rdcvf1をオリゴヌクレオチド配列番号26および配列番号27での増幅により、pcDNA-Rdcvf1を鋳型として標準条件で使用して、調製する。Rdcvf1のオープンリーディングフレーム(ORF)を、標準的な方法でBamHIとEcoRI制限部位の間でpGex2TK(Pharmacia) 中にクローン化し、E.coli[BL21(DE3)pLysS, Promega]中に形質転換する。単一コロニーを3リットルのLB液体培地中で100μg/mlアンピシリンとともに30℃で生育せしめ、タンパク質の産生を1μg/mlイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)の付加により誘発し、5時間30℃で続ける。細胞を採取し、音波処理で分解し、グルタチオン・セファロースで標準的プロトコールの下に精製する。融合タンパク質を10mM還元グルタチオンで室温で溶離する。溶離されたタンパク質をウサギへの注射の前に透析する。タンパク質精度をポリアクリルアミドゲル電気泳動によりモニターする。2ウサギへの免疫付与を、100μgの精製GST−Rdcvf1を80部位に皮内注射することにより行う。血清を8週後に採取する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜細胞の生存率を向上させる機能を有する、配列番号4のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたDNA。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAを含むベクター。
【請求項4】
請求項2に記載のDNAを含む宿主細胞。
【請求項5】
請求項3に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
転写コントロール配列を含む、請求項3から5のいずれかに記載のベクターまたは細胞。
【請求項7】
インビトロで増殖可能で、かつ培養での成長で請求項1に記載のポリペプチドを産生できる脊椎動物の宿主細胞であって、該細胞が少なくとも1つの外因性転写コントロール配列を発現し、該1以上の転写コントロール配列が請求項2に記載のDNAの転写を調節する、脊椎動物細胞。
【請求項8】
該1以上の転写コントロール配列が非ヒト転写コントロール配列である、請求項7に記載の脊椎動物細胞。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する精製された抗体またはその断片。
【請求項10】
FabまたはF(ab')2断片である、請求項9に記載の抗体断片。
【請求項11】
ポリクローナル抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
モノクローナル抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトの網膜ジストロフィーの診断用のキットであって、サンプルを採取するための手段および請求項9から12のいずれかに記載の抗体または抗体断片を含むキット。
【請求項14】
請求項1に記載のポリペプチドを含む網膜保護剤。
【請求項15】
請求項2に記載のDNAを含む網膜保護剤。
【請求項16】
医療上の有効量の請求項1に記載のポリペプチド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
医療上の有効量の請求項2に記載のDNA、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項1】
網膜細胞の生存率を向上させる機能を有する、配列番号4のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたDNA。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAを含むベクター。
【請求項4】
請求項2に記載のDNAを含む宿主細胞。
【請求項5】
請求項3に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
転写コントロール配列を含む、請求項3から5のいずれかに記載のベクターまたは細胞。
【請求項7】
インビトロで増殖可能で、かつ培養での成長で請求項1に記載のポリペプチドを産生できる脊椎動物の宿主細胞であって、該細胞が少なくとも1つの外因性転写コントロール配列を発現し、該1以上の転写コントロール配列が請求項2に記載のDNAの転写を調節する、脊椎動物細胞。
【請求項8】
該1以上の転写コントロール配列が非ヒト転写コントロール配列である、請求項7に記載の脊椎動物細胞。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドまたはその断片に特異的に結合する精製された抗体またはその断片。
【請求項10】
FabまたはF(ab')2断片である、請求項9に記載の抗体断片。
【請求項11】
ポリクローナル抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
モノクローナル抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトの網膜ジストロフィーの診断用のキットであって、サンプルを採取するための手段および請求項9から12のいずれかに記載の抗体または抗体断片を含むキット。
【請求項14】
請求項1に記載のポリペプチドを含む網膜保護剤。
【請求項15】
請求項2に記載のDNAを含む網膜保護剤。
【請求項16】
医療上の有効量の請求項1に記載のポリペプチド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
医療上の有効量の請求項2に記載のDNA、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図13−2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−232843(P2009−232843A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50689(P2009−50689)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2002−579898(P2002−579898)の分割
【原出願日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【出願人】(509228260)ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2002−579898(P2002−579898)の分割
【原出願日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【出願人】(509228260)ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール (8)
【Fターム(参考)】
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