説明

病理組織の多次元検出装置とその方法

【課題】
超音波等の放射波を用いて、病巣をイメージ化する。
【解決手段】
複数の放射源と複数の検出器を用いて、多次元フィールド・レンダリングを行う手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体および動物体内の医療病理の検出および特徴付けに関する。より詳細には、本発明は、器官または組織内の癌の検出および識別に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、医療または非医療適用分野では、人体内の癌性障害および腫瘍など調査中の対象物内部の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるために利用可能なシステムがない。現在、X線に基づくイメージング・システム、マンモグラフィ、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴映像法(MRI)などのイメージング・システムのみが利用可能である。これらのイメージング・システムは全て、単に人体内部の病理のイメージを提供するにすぎず、フィーチャを特徴付けない。
【0003】
さらに、これらのイメージング技術はそれぞれ、重大な欠点を有する。例えば、X線、マンモグラフィ、およびCTスキャンはどれも電離放射線を使用し、したがって患者に対して細胞突然変異など健康に関するある種のリスクが存在する。また、CTスキャンとMRIは共に比較的高価な手順を含み、それらの普及を妨げている。さらに、MRIとCTスキャンは共に、デバイスを操作して、結果を解釈するために、長期間にわたり非常に良く訓練された人員の専門技術を必要とする。さらに、これらのイメージング技術はそれぞれ、患者が、時として長期間、横たわって動かないでいることを必要とする。この動きに関する制約は、患者に不便を感じさせるだけでなく、ことによると患者内部の組織の動きから発見される可能性がある情報を切り捨てる。マンモグラフィに関しては、組織密度をより均一にし、X線貫通をより良くし、かつ組織を安定化させるために胸部を圧迫する必要があるため、患者にとって特に不快である。より重要なことには、マンモグラフィなどの方法は2次元イメージに依拠し、そのため診断に重要である可能性がある3次元構造情報を隠す。
【0004】
上述したイメージング技術に対する代替法として、医学界は、安全で低コストの高分解能イメージング・ツールを提供するために超音波に目を向けている。しかし、従来の超音波(超音波Bスキャニング)は、いくつかの制限を有する。従来の超音波分析では、約1000個未満の要素の小さなアレイを調査中の対象物に接触するように手で移動させる。実際、最新の超音波アレイは、わずか256個の要素しか有しない。アレイは、組織からそのアレイへ反射して戻る波を送り出す。超音波イメージング手順を行うため、およびその結果を解釈するためには、訓練された技師および医師が必要である。反射される波のみに依存することが、2つの主要な欠点をもたらす。第1に、超音波Bスキャンが、材料それ自体の特性に関する情報を提供せずに、異なるタイプの材料間の境界の反射率に関する情報を提供する。第2に、アレイは、反射されてハンドヘルド検知アレイに戻る放射エネルギー以外の放射エネルギーを捕獲することができない。しかし、従来の超音波Bスキャンで捕獲または使用されない透過波に相当な情報が存在する。
【0005】
したがって、人体内の医療病理の検出および特徴付けを提供する装置および方法が求められている。より一般的には、調査中の対象物内部の特異なフィーチャを検出し、特徴付ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、3次元対象物内部の特異なフィーチャの高分解能検出および特徴付けのための多次元フィールド・レンダリングの構築および使用法を提供する。より具体的には、本発明は、人体および動物体内の医療病理の高分解能検出および識別、特に器官または組織内の癌の高分解能検出および識別のための多次元フィールド・レンダリングの構築を提供する。本発明はまた、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、アテローム性動脈硬化心疾患、心筋梗塞、および動脈または静脈壁に対する外傷に加えて、筋骨格系、消化器系、および消化管の病理を含めた他の医療病理の検出および特徴付けを提供する。
【0007】
本発明は、調査中の任意の3次元対象物の物理的詳細を記述する多次元フィールド・レンダリングの構築を提供する。訓練された評価システムを使用して、そのような多次元フィールド中に含まれる情報を、調査中の一般的な対象物の知られている詳細に関する情報と相関させることによって、本発明は、調査中の対象物に存在する構造の検出および特徴付けを提供する。例えば本発明は、人の胸部を観察するために使用されるときに、胸部組織に存在することが知られている組織タイプの知られている形態および音響特徴のカタログを、物理的特性の多次元フィールド導出と相関させる超音波に基づくシステムを提供する。この場合、本発明のシステムは、繊維腺種、脂肪、繊維腺組織および良性/悪性障害または腫瘍を含めた様々な組織を検出し、特徴付ける。
【0008】
本発明は、調査中の対象物内部のフィーチャの検出および特徴付けを可能にする方法および装置を提供する。本発明は、調査中の対象物に関する散乱放射エネルギーを収集するために、放射源のアレイおよび放射エネルギー検出器のアレイを使用する。1つの好ましい実施態様では、放射源アレイと検出器アレイが、単一の集積ユニットとして構成される。他の好ましい実施態様では、放射源と検出器が同じ物理的デバイスである。これらは、ある時間枠では放射エネルギー放出器として動作し、別の時間枠では検出器として動作する。本発明の他の好ましい実施態様では、アレイが多数の放射源と検出器を備え、好ましくは5000個よりも多い検出器を有する。十分な数のそのような放射源および検出器を用いて、本発明は、対象物を記述し、そこから解釈を導出するために、多数の物理量の3次元レンダリングの構築を行う。放射源は、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で特定の波形の放射エネルギーを放出し、それが調査中の対象物内部に伝搬されて、その後調査中の対象物内部のフィーチャによって散乱される。概括的な散乱には、反射(後方散乱)、透過(前方散乱)、および回折が含まれ、調査中の対象物内部のフィーチャから任意の方向に、または全ての方向に生じる可能性がある。これらのタイプの2次波は全て、調査中の対象物から返される波信号を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの好ましい実施態様では、放射源および検出器が大きな立体角をカバーし、それにより調査中の対象物を実質的に取り囲む。その結果、これら全てのタイプの2次波の大部分が放射エネルギー検出器によって検出される。分解能は、放射源の数と検出器の数の積によって決まり、調査中の対象物によって占有されるボリュームが分割される分解能要素の数を決める。
【0010】
本発明は一般に、電磁放射エネルギーおよび音響放射エネルギーを含めた任意の放射エネルギーの使用を包含しているが、本発明の1つの好ましい実施態様では、放射エネルギーは超音波放射エネルギーである。本発明のより具体的な実施態様では、調査中の対象物が人体など動物体の組織もしくは器官、または他の部位である。十分に多い数の検出器および放射源を使用することによって、本発明に従って高分解能多次元フィールドが提供される。本発明の他の実施態様では、異なる位相を有するように放射源が変調され、放射エネルギーの合焦またはスキャニングを可能にする。
【0011】
本発明の他の実施態様によれば、放射エネルギーが十分に合焦され、人または動物の組織内部の癌性障害など対象物内部のフィーチャを破壊するために使用される。
【0012】
本発明によれば、次いで、放射エネルギー検出器によって収集されたデータを使用して、調査中の対象物の物理的特徴を表す、本明細書で
【数1】

として表される多次元フィールドのレンダリングを構築する。ベクトルrは、特定のボリューム要素(「ボクセル」)の位置座標を表し、「t」は時間であり、「Θ」は、そのボクセルでのフィールドに関連する物理的パラメータのリストである。一般に、フィールドおよび各物理的パラメータは、空間と時間の両方に依存している。多次元フィールドは、調査中の対象物の物理的特徴を個別に表すこのパラメータのセットに関する値の推定を備える。これらのパラメータ値は、まとまって、調査中の対象物内部のフィーチャの特性を特徴付ける。医療適用例の場合、この特徴付けが、焦点領域の識別と、悪性度などそれらの領域の病理の確率と、それに関連する周波数分散および誤り率の確率を生じる。
【0013】
例として、放射エネルギーが超音波であり、調査中の対象物が人の器官である本発明の実施態様を考える。この例では、
【数2】

は例えば、周波数の関数として器官の音の速さ、吸音、組織圧力、密度、せん断係数、弾性率などを記述することができる。フィールド値は、フロッピ・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ、ハード・メモリ・ディスクなどコンピュータ可読媒体に電子的に格納される。これにより、格納されたフィールド値のその後の処理が可能になる。
【0014】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、各検出器の位置で検出された放射エネルギーの波形の記述からの要素を備える検出データからの、多次元フィールド
【数3】

のレンダリングの構築が、最適な信号処理技法を用いて実施される。
【0015】
本発明の一実施態様では、これは、実際の検出器データに一致するモデル検出器データを生成するようにフィールド・レンダリングが構築され、反復技法を通じて達成することができる一致フィールド処理を用いて実施される。この反復技法では、まず調査中の対象物の形状が推定される。これは、検出される透過のみの放射エネルギーを使用して従来のコンピュータ断層撮影技法を用いて初期推定を発生するなど、既存の技法を使用して、いくつかの異なる方法で達成することができる。調査中の対象物が人または動物の組織、器官、または他の体の部位である実施態様では、初期推定は「解剖学的」構築と呼ばれる。
【0016】
次いで、「生理学的」構築を生成するために、多次元フィールド
【数4】

の初期推定が、生理学的データを注入することによって計算される。これは、エキスパート・システムなどのパターン認識アルゴリズムを使用することによって進み、解剖学的構築の形態フィーチャを分析し、それにより多次元フィールドの初期公称推定を割り当てる。この公称推定は、パターン認識アルゴリズムによる形態学ベースの識別に基づいて対象物内の構造が有すると予想される平均値のみに基づいている。パターン認識アルゴリズムは、解剖学的構築の形態フィーチャを、伸び、平面度、粗さなど格納された形態フィーチャのデータベースと比較することによってこの初期割当てを達成する。
【0017】
この点で、推定フィールド
【数5】

中に含まれる対象物の物理的特徴が、最初に生成された放射エネルギーの特徴に関する情報と共に、波伝搬コードに入力される。そのような波伝搬コードを使用して、この情報に基づいて検出器の位置で予想される放射エネルギーの波形を生成することができる。そのような波伝搬コードは比較的複雑である場合があるが、従来技術において存在している。これらの信号データは、推定フィールドに基づいて生成され、検出器によって受け取られる実際の信号データと比較される。信号データの2つのセットの差が、システム内のノイズに関して予想されるレベルにある場合、推定フィールドは、実際に構築されたフィールド・レンダリングになるように、すなわち
【数6】

とさせられる。
【0018】
しかし、実際の信号データとの比較が、推定フィールドによって生成された信号と実際の信号との差がシステム内で予想されるノイズよりも大きいことを示す場合、推定フィールドに対する補正が計算される。この補正は、実際の信号と、推定多次元フィールドによって生成される信号との差から精製フィールド
【数7】

を生成するように波伝搬コードを使用することによって求められる。次いで、この精製フィールドを使用して、推定フィールドを(例えば追加することによって)修正し、新たな推定フィールドを生成し、次いでこれを使用して、検出された信号の新たなセットを計算する。このプロセスは、推定多次元フィールド
【数8】

から生成された信号のセットが、検出された信号の実際のセットのノイズ・レベル範囲内にある波形信号を生成する収束多次元フィールド
【数9】

に収束するまで反復される。
【0019】
多次元フィールド
【数10】

は、計算されると、調査中の対象物を特徴付けるために解釈される。これは、例えばエキスパート・システム、ニューラル・ネットや、あらゆるボクセルで
【数11】

に関して計算された値をとり、調査中の対象物内の識別されたフィーチャが何であるかを判定することに達するように教えられてきた他の訓練された評価システムを使用することによって行われる。訓練された評価システムによって実行される解釈方法に関連する多次元フィールドの特定のフィーチャは、調査中の対象物が何であるか、および対象物に関して何が学習されているかの両方に依存する。
【0020】
例えば、人または動物の組織または器官が超音波放射エネルギーによって調査され、癌の存在を示唆する診断パラメータを識別することが目標である本発明の実施態様では、訓練された評価システムに解釈させるために多次元フィールドからの情報を抽出するのに使用される少なくとも7つの識別方法がある。
【0021】
第1の識別方法では、収束多次元フィールドが、あらゆるボクセルでの組織または器官の音の速さおよび吸音を含む。次いで、訓練された評価システムが、この情報に基づいて、あらゆるボクセルに存在する組織のタイプを分類し、これら特定の物理的特性に基づいて癌性組織を識別する。
【0022】
第2の識別方法では、多次元フィールドのHough変換を使用して、新生物の存在を示す組織内の閉じたボリュームを識別する。
【0023】
第3の識別方法では、循環器系の血管形成および他の異形の存在が、ドップラー効果を用いて3次元血流を検査することによって識別される。
【0024】
第4の識別方法では、組織圧力が多次元フィールドから抽出され、取り囲まれたボリュームの局所限定、および他の識別方法からの特異な結果と相関される。
【0025】
第5の識別方法では、ドップラー効果を使用して組織に対する外部振動の効果を分析し、組織せん断係数を識別できるように多次元フィールドにおける特徴的な結果を生成する。関連する方法では、癌の示唆もするマイクロ石灰化および組織弾性が、特徴的なドップラー・シグニチャを生成する。
【0026】
第6の識別方法では、組織の電気インピーダンスに関する情報が多次元フィールドから抽出される。この情報は、腫瘍の存在に関連する。
【0027】
第7の識別方法では、2つの異なる時間に多次元フィールド・レンダリングを形成し、それらを比較して、組織内の時間による変化を調査するか、または分解能を改善するために干渉計技法を使用させる。
【0028】
癌性組織など医療病理の実際の識別は、好ましくはこれらの識別方法を複数合わせて使用する。複数の識別方法を使用することにより、評価の信頼性が改善される。このようにすると、例えば人の胸部を、所望の分解能で癌性組織を識別するように超音波放射エネルギーによって検査することができる。他の実施態様では、本発明を使用して前立腺、結腸、肺など他の器官内の癌を識別する。
【発明の効果】
【0029】
(本発明の目的および利点)
したがって、本発明の目的は、空間的、または空間時間的特性を検知し、実質的に取り囲まれたボリューム内の構成物質の物理的かつ/または生物学的性質を決定する装置および方法を生み出すことである。
【0030】
本発明の他の目的は、検知された媒体全体にわたって、高分解能で分解された連続するボリューム要素における物理的特性を一意に識別する検知操作を行うことである。
【0031】
本発明の他の目的は、癌、脈管疾患などを含めた早期病理の小さく微妙なインジケータを見つけるように特に設計された疾患検出システムを提供することである。
【0032】
本発明の他の目的は、被験者環境をプローブし、プローブ妨害に対するコンテンツの応答を観察し、次いで測定されるデータの関係を診断する物理学ベースの診断デバイスのクラスを生成することである。
【0033】
本発明の利点は、調査中の対象物が動物または人の組織または器官である組織異形の検出および識別を提供することである。特に、本発明は、動物および人の器官内の癌性組織を検出し、識別する。本発明はまた、心血管、筋骨格、または消化器系を含めた系での他の医療病理の検出および識別を提供する。特徴付けることができる疾患状態には、様々な生物学的経路の外傷、感染、新生物、異常が含まれる。
【0034】
本発明のさらなる利点は、調査中の対象物または調査中の対象物内部のフィーチャによって反射された、透過された、または回折された放射エネルギーを含む全ての散乱放射エネルギーを使用することによって、3空間次元で多次元フィールド・レンダリングの構築を提供することである。
【0035】
本発明の追加の利点は、検査の単一平面内に存在するドップラー・シフトに制限されないため、ドップラー・シフトが行われたデータを完全に使用することができるようにすることである。
他の目的および利点は、詳細な開示および図面を読めば当業者に想定されよう。本発明は、上述した目的および利点に限定されず、開示の点から当業者に想定される全ての目的および利点を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】人の胸部を調査するのに適切な幾何構成であるジオデシック・ドーム構成を有する本発明の一実施形態に関する検出および識別装置の断面図(a)、(b)と放射源および検出器アレイの一実施形態の平面図(c)である。
【図2】本発明の一実施形態における放射源および検出器の配置構成のブロック図である。
【図3】放射源および検出器の線形最大長シーケンス修正を使用する際のシーケンスの数とシーケンス長の関係を示す柱状図である。
【図4】Walsh関数修正を使用する放射源および検出器の修正シーケンスの一例を示す図である。
【図5】放射エネルギー検出器によって収集されたデータから多次元フィールドのレンダリングを構築するための方法を示す流れ図である。
【図6】調査中の対象物の形態的特徴に基づいて、多次元フィールドのレンダリングの初期構成に生理学的データを注入するための方法を詳細に示す流れ図である。
【図7】超音波複合音速度(音の速さおよび吸収)と、人の胸部において見られる組織のタイプとの関係を示すグラフである。
【図8】多次元フィールドのレンダリングの構築の反復部分における生理学的データを変更する方法を詳細に示す流れ図である。
【図9】モーフィング超音波フィールドの斜視図である。部分(a)および部分(c)では、組織内のフィーチャの表現が、初期時間に表示される。部分(b)および部分(d)では、後の時間にフィーチャが示される。部分(b)では癌成長が検出されないが、部分(d)で癌が検出される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明の詳細な説明)
本発明を以下詳細に説明する。使用される放射エネルギーが超音波放射エネルギーである本発明の特定の実施形態に時々言及するが、本発明がそれに限定されるものでないことを当業者には理解されたい。本発明は、音響放射エネルギーと電磁放射エネルギーを共に含めた任意のタイプの放射エネルギーの使用を包含し、超音波放射エネルギーの特定の実施形態に対する言及は、限定を意図するものではない。また、以下の詳細な説明では、癌を診断するために人の患者に対する方法の応用例に言及するが、この場合もそのような言及は限定を意図するものでなく、単に本発明の好ましい実施形態を表す。
【0038】
本発明は、調査中の対象物内部のフィーチャの検出および特徴付けを可能にするために使用することができる装置と方法の両方に関する。本発明は、分解することができるあらゆるボリューム要素(「ボクセル」)で多次元フィールド
【数12】

のレンダリングを構築することによって、この検出および特徴付けを達成する。ここで、rは、ボクセルの位置座標を表し、Θは、そのボクセルでのフィールドに関連する物理的パラメータのリストである。原理的に、
【数13】

は、対象の適用例に関してどのような物理的特性が望まれているかに関する情報を含むことができる。おそらく最も単純なレベルでは、多次元フィールド
【数14】

は、調査中の対象物の視覚的イメージの構築に関する情報を含むことができる。しかし、ある適用例では、
【数15】

が、対象物の他のより適切な物理的特性を記述するように構築されていることがより有用である。
【0039】
一般的な多次元フィールド
【数16】

の汎用性を本発明の一実施形態の一例によって示すことができ、ここで調査中の対象物は人の胸部であり、対象物を調査する目標は、癌性腫瘍を識別することであり、超音波放射エネルギーが使用される。望まれるものが内部構造を示す胸部のイメージのみである場合、
【数17】

を、密度などあらゆる点での対象物の単一量、すなわちΘ={ρ}を含む1次元スカラ・フィールドとして構築することができる。しかし、腫瘍の検出および/または識別は、音速度、吸音、組織圧力など複数の量の検査によって、より簡単に実施される。この場合、
【数18】

は、あらゆるボクセルでのこれらの量の値、すなわちΘ={v、A、P}を含むフィールドとして構築することができ、ここでvは音速度、Aは吸音、Pは組織圧力である。
【0040】
1.装置 本発明で使用される放射エネルギーを生成するために、放射源が存在しなければならない。単一の放射源を使用することが本発明の範囲内にあるが、複数の放射エネルギーの源が存在することが好ましい。単一の放射源が使用される例では、調査中の対象物の多次元フィールド・レンダリングを構築するために十分に適切なデータを収集するには、放射源が大きい、かつ/またはそれが動いている必要がある場合がある。一般に、放射源は、放射源から放出される放射エネルギーによって到達されない調査中の対象物のボリュームを最小限に抑えるように構成されている。放射源は、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で放射エネルギーを放出するように適合されている。放射源が超音波放射エネルギーを提供する実施形態では、放射源は、対象のボリューム内に超音波照射されない領域がほとんどない、または全くないように構成されている。
【0041】
複数の放射源が存在する本発明の実施形態では、放射源を様々な幾何構成で配置構成することができる。これらの様々な構成は、様々な形状を有する対象物の特性の測定を可能にする。特に、これらの様々な構成は、対象物が調査される大きな立体角Ωを提供するという、本発明の一目的の達成を可能にする。調査中の対象物を実質的に取り囲むことによって可能な最大レベルの情報を得るためには、これが望ましい。好ましくは、装置のカバレージは、Ω≧2πsrである。
【0042】
そのような構成の例示は、本発明の一実施形態である、人間のある種の解剖学的フィーチャの調査に関して行うことができる。例えば、調査中の対象物が人の胸部であるとき、放射源の修正された半球体配置構成が大きなカバレージ(Ω≒2π)を提供する。調査中の対象物が人の脚である場合、円筒形の配置構成を Ω>2πとすることができる。代替配置構成は、調査中の対象物が人体内部の器官であるときの同心円筒形、または同心円筒形の一部の使用を含み、これもまた、Ω>2πを有する十分な立体角とすることができる。一例では、小さな内部円筒形が患者の消化管内に挿入され、大きな外部円筒形または円筒形弧が患者の外側に、調査中の対象物付近に配置される。このようにすると、例えば人の前立腺を分析するときに、必要な大きな立体角カバレージが達成される。他のアレイ構成には、長円体と、円錐および円錐台が含まれる。
【0043】
これらが調査中の様々な対象物に関してとることができる構成のタイプの例に過ぎないことは容易に理解されよう。また、これらの例を組み合わせて、他の対象物に適合される追加の構成を作成することも本発明の範囲内にあり、本発明はその構成によって限定されない。例えば、人の胸部の調査の場合には、腫瘍が、腋窩に向かう上部外側4分円、および腋窩リンパ節(腕の下)に現れることがたびたびあるため、図1(b)に示されるジオデスティック・ドーム構成など半球体を超えた追加のカバレージを有することが好ましい。本発明の他の実施形態では、適切な構成を使用して、前立腺、肝臓、肺、消化管の一部など体の他の部位における癌を検出し識別する。
【0044】
本発明の一実施形態では、放射源は、位相が均一な放射エネルギーを放出するが、代替実施形態では、各放射源によって放出される放射エネルギーの位相を変えることができる。これは、以下に説明する各個々の放射源の個別エンコーディングによって達成される。この位相のばらつきは、調査中の対象物の特定の領域内に放射エネルギーを合焦するように構成することができ、または調査中の対象物全体をスキャンするように構成することができる。位相ばらつきが狭く合焦するように構成される場合、調査中の対象物の共焦顕微鏡検査の可能性を与える。さらに放射エネルギーは、十分に合焦される場合、フィーチャを破壊することが本発明の特定の適用例に関する所望の目的である場合は、調査中の対象物内部の明確に定義されたフィーチャを破壊するために使用することができる強度になることがある。例えば、合焦された放射エネルギーを使用して、外科用の器具を体に進入させることなく、器官内で発見された癌性組織を破壊することができる。
【0045】
本発明はまた、複数の放射エネルギー検出器を備える。これらの検出器も、ここでも好ましくは2πsrよりも大きい大きな立体角をカバーするように配置され、上述したのと同じタイプの幾何パターンで放射源に関連して配置して、このカバレージを達成することができる。ほとんどの適用例では、検出器に関して使用される幾何パターンは放射源に関して使用される幾何パターンと同様であり、しかし本発明はそれに限定されない。本発明はまた、検出器の数が放射源の数を大幅に上回る実施形態を包含する。
【0046】
デバイスの空間分解能が、使用される放射源および検出器の数、および放射エネルギーの周波数に直接関連することは当業者に容易に理解されよう。放射源の数と検出器の数の積が、所望の分解能を達成するために必要とされるボクセルの数と少なくとも同じ大きさであるべきである。放射源および検出器の数に対して固定された制限は存在しないが、所望の分解能を達成するために適切な数が使用されるとすると、本発明は、従来技術で使用されるよりもかなり多くの検出器を使用することを包含する。分解能は、望ましくないエイリアシングを避けるために空間的に一波長の少なくとも2倍の信号をサンプルしなければならない最も単純な形で記述するナイキスト基準に原理的に支配される。したがって、調査中の対象物の全サンプリングは、使用される放射エネルギーの周波数によって示されるナイキスト半波長制限で近接して離隔された検出器を配置することによって達成される。
【0047】
組織内の癌の識別に適用される本発明の実施形態では、例えば、分解能が、直径3mm未満の小さな新生物マスを検出するために十分であることが好ましい。人の胸部内の癌の識別の場合には、本発明の実施形態は、約250個の超音波源と約4,000,000個の超音波検出器を使用する。5MHZの動作周波数で、これは、胸部によって占有されるボリュームに対応して、直径20cmの半球体に関し約0.3mmの分解能を達成することになる。本発明の他の実施形態では、放射エネルギーの周波数および必要な分解能は、かなり少ない数の放射源および検出器の必要性を指示することもあり、また非常に詳細な調査に対してはより多い数の放射源および検出器の必要性が求められることもある。
【0048】
本発明の異なる実施形態では、検出器が、縦波または横波(超音波の特定の場合には「せん断波」)、または好ましくは縦波と横波の両方を測定することができる。異なる実施形態がまた、検出器によってどの波形の成分が測定されるかということに対応する。特に、検出される波の振幅、位相、および/または周波数が測定されるが、物理的多次元フィールド
【数19】

のレンダリングを構築するために使用することができるより多くの情報を提供するため、3つ全てが測定されることが好ましい。また、検出器が、調査中の対象物から反射された波と、調査中の対象物を透過された波の両方を検出するように構成されることが好ましい。この場合も、これは、検出される放射エネルギーからできるだけ多くの情報を抽出するために好ましく、そのような構成は、放射源と検出器のアレイが立体角Ω≧2πとなるように構成されるときに、より簡単に達成される。
【0049】
図2を参照すると、放射源とそれに対応する検出器の好ましい配置構成の詳細なブロック図が示されている。マスタ制御装置(「入力」)が変調ストラテジを生成し、マスタ検出器(「出力」)が検出器から出るものを制御する。放射源に結合された変調器は、変調信号を生成する。放射源は、変調器から受け取った変調信号に基づいて変調された波形信号を生成する。各変調器が別個の変調信号を生成し、それにより各放射源に別個の変調された波形信号を生成させる。1つの変調器を複数の放射源に結合し、結合された放射源に関して複数の別個の変調信号を生成することができることに留意されたい。
【0050】
所望の相関特性に応じて波をエンコーディングするために波形を変調するための多くのデジタル・コーディング方法および設計が存在する。一般的には、本明細書に参照により組み込むK.Sam Shamugam著「Digital and Analog CommunicationSystems」(John Wiley & Sons,NewYork,1979)を参照のこと。ここでは、デジタル・スイッチング変調スキームの2例が与えられている。線形最大長(LML)コードは、時間分解能に関する優れた自動相関を有し、Walsh関数(WF)は、空間分解能に関する優れた相互相関を有する。エンコーディング・スキームは、それぞれに関して提供される。放射源から生成される波形信号は、対象物によって透過され、反射され、または回折されて、複数の検出器に達する。各検出器は、1つの特有の変調された信号をデコードするように設計された少なくとも1つの一致フィルタを含む。時間分解能に強調が置かれる場合、LMLコードなどのコーディング・シーケンスを変調に関して使用することができる。一方、空間分解能に強調が置かれる場合、Walshシーケンスなどの直交シーケンスを使用することができる。各タイプに関する放射源検出器設計スキームの一例を、以下の説明で詳細に述べる。
【0051】
例えば、本明細書に参照によって組み込むK.Metzger,Jr.、R.J.Bouwens共著「An Ordered Table ofPrimitive Polynomials Over GF[2] of Degree 2 to 19 for Use with LinearMaximal Sequence Generators」,Cooley Electronics Laboratory,Universityof Michigan Tech.MemoNo.107(1972)に記載されるLMLシーケンス変調を使用して、変調された信号の各シーケンスが、Nを正の整数として、次数Nの原始多項式に基づいてフィードバック機構を有する多段デジタル・シフト・レジスタによって生成される。シーケンスの長さは、多項式の次数に関係し、生成することができる別個のシーケンスの数を決定する。別個のシーケンスの数とシーケンスの長さの関係は図3に示される。例えば、シーケンス長が2047であるとき、利用可能な別個のシーケンスの数は60である。したがって、シーケンス長が2047であるスキームに関して、60個の放射源から60個の別個の波形信号を生成することが可能である。
【0052】
変調器からの変調信号は、放射源に入力される。変調信号を受け取ると、放射源は、好ましくは変調信号に従って搬送波波形の位相をシフトする。代替実施形態では、搬送波波形の振幅または周波数を変調信号に基づいて変更することができる。次いで、搬送波波形が放射源から放出され、対象物内部の様々な内部部位によって散乱され、透過され、反射され、または回折される。最終的に、波形が検出器に達する。
【0053】
各検出器は、到着した波形信号をデコードすることが可能な少なくとも1つの一致フィルタを含む。換言すると、一致フィルタは、各別個のシーケンスをデコードして、個々の放射源を識別するために設けられる。したがって、放射源の位置と検出器の位置がわかると、波形が進んできた経路を推定することができる。さらに、元の波形信号と比較することによって、デコードされた波形信号から抽出される位相ずれ、速さ変化、振幅変化、およびその他の情報を使用することにより、対象物の内部構造を特徴付けることを可能にする。
【0054】
他の実施形態では、所望の分解能で対象物をカバーするために60個より多い放射源が必要とされる場合、反復シーケンスを減少して分解能を高めることができる。例えば、240個の放射源が必要とされる場合、60個の放射源の4つのグループをオンおよびオフで循環することができ、対応する反復シーケンスを16まで減少し、しかし分解能を高める。
【0055】
代替実施形態では、上述したLMLシーケンス変調の代わりに、例えば、本明細書に参照により組み込むH.Harmuth著「SequencyTheory:Foundations and Applications」,Advances in Electronics andElectron Physics(AcademicPress,1977)に記載されるWalsh関数(WF)変調スキームを利用して、変調信号を生成する。WF変調は、値+1および−1をとるが、デジタル値1および0とみなされるように線形に変換し、その後、分析のために元の形に変換し直すことができる。
【0056】
WF変調はまた、フィードバックを有する1組のシフト・レジスタによって実施される。WF変調もまた、整数Nのシーケンス長を有し、しかしLMLシーケンス変調と比較して、任意の値Nについて多くのシーケンスが存在する。したがって、WF変調によって、LMLシーケンス変調よりも多くのトランスミッタを収容することがある。WF変調のこの特徴は、WF変調信号のサブサンプリングなどの設計技法が、オンオフ比などそれらにおいて最も望ましいものを選択することを可能にする。WF変調はまた、短い長さNを有する。その場合、それらは周期的なシーケンスで使用され、通常各パルスに関する多くの反復を有する。長さ5の可能な変調シーケンス32個を有する例示的なWF変調シーケンスが図4に示される。
【0057】
本発明の様々な実施形態で使用することができる特定の検出器がいくつかある。例えば、検出器アレイを、液晶アレイと同様に、シリコン・マイクロ電子機械システム(MEMS)検出器、圧電検出器、または変形可能誘電体検出器で構築することができる。あるいは、検出器アレイを、強力圧電トランスミッタに応答するPVDFレシーバ・アレイによって構築することができる。現在超音波医療に使用されている従来のアレイは圧電エミッタからなり、検出器としても働く。
【0058】
本発明の異なる実施形態では、検出器を、1つまたは複数のセンサを含むマイクロ電子機械チップに集積することができる。チップそれ自体が、信号処理要素を含むことができる。本発明の1つの代替実施形態では、放射源および検出器が、単一の集積ユニットとして存在する。これは例えば、超音波放射エネルギーを放出し、かつ受け取ることができるPZT要素の使用により実現される。放射源と検出器が個別に別々の要素であり、しかし単一のユニットとして構築されている別々の実施形態の一例は、図1(c)に提供される。この例では、図の部分(a)、(b)、(c)を参照すると、装置が、人の胸部の検査のために構成されている。図1(b)における断面図に示されるように、ハウジング100は、修正された半球体形状に形作られている。特に、腕の下の胸壁の側部を含めた情報を得るように、患者の胴の側部に突出する、半球体100を超えた延長部102が存在する。ハウジング100は、複数のセグメント105に分割される。各セグメント105は、複数の端点110と、端点110間に配置された領域115とを有するシリコン・チップを備えることができる。図示される実施形態では、各セグメント105は、形状が三角形であり、一辺が長さ2cmである。各セグメント105は、三角形の各端点110に波源120を有し、端点110間に配置された各領域115は、それぞれ一辺0.1mmの20000個の検出器を有する。セグメント105を使用して、ジオデシック・ドームの形にハウジング100を形成する。
【0059】
検出器要素はそれら自体、時間の関数として力の変化を検出することによって圧力波を測定することが可能なマイクロ加速器を備えることができる。あるいは、各検出器が、変形可能な誘電体媒体上を浮遊する1つのプレートを有する容量要素を備えることができる。調査中の対象物から散乱され、そこを通った後、波が検出器に達すると、容量プレートの1つの動きを引き起こし、ポテンシャルの変化を生じる。他の代替例は、機械的に変形したときに電気信号を生成する圧電材料の使用である。
【0060】
本発明はまた、調査中の対象物と検出器および放射源の配置構成とのインピーダンスを一致させるためにコンタクトを含む。超音波放射エネルギーが使用されるとき、対象物に接するように液体またはゲルを配置することにより、本発明の実施形態において、調査中の対象物との超音波コンタクトすることができる。本発明の他の実施形態では、調査中の対象物全体を水中に浸漬させることができ、これが一致したインピーダンスの超音波コンタクトを提供する。本発明の他の実施形態では、液体またはゲルが薄膜内部に配置される。調査中の対象物が人の器官であるとき、この実施形態は、患者が処置から水や油を受けないという利点がある。さらなる実施形態では、インピーダンス一致コンタクトは、皮膚表面の輪郭に適合し、各放射源および検出器から調査中の対象物に付着する低インピーダンス変形可能薄膜に延在する複数の個々のコンタクト要素によって行われる。本発明のこの実施形態は、装置の動作に干渉することなくバイオプシおよび他のプローブを挿入することができる複数のコンタクト間の間隙空間を可能にするため有利である。
【0061】
さらに、本発明の範囲内にある装置に対するいくつかの改良が存在する。例えば、本発明の一実施形態では、機構は調査中の対象物を擾乱させて使用される。これは、本発明の一実施形態において、低周波数、例えば500Hz未満で振動する振動源を体に加えることによって行うことができる。この擾乱は、調査中の対象物内部のフィーチャの動きを生じさせ、それにより周波数シフトなどのデータを得るための追加の手段としてドップラー効果を使用することができる。そのような周波数シフト・ドップラー・データを収集して使用する場合、本発明の代替実施形態として、検出器が、位相および振幅に加えて、受け取られた放射エネルギーの周波数を検出することが必要である。これらの追加のデータは次いで、構築された多次元フィールド・レンダリングに組み込むことができ、それによって調査中の対象物を特徴付けるためにより良い機会を与える。特に、外部振動が加えられるとき、組織内のマイクロ石灰化が、まわりの組織との明確に定義された高いコントラストを生み出すため、このコンテキストにおいてドップラー効果が有用である。これは、本明細書に参照によって組み込まれるC.M.Sehgal等著「Visualization of Breast Calcification by AcousticResonance Imaging」RadiologySupplement,1150(1999)に記載されている。70〜250Hzの振動共振周波数付近で、そのようなマイクロ石灰化に関するドップラー信号は、まわりの組織に関する信号よりも5〜6倍大きく、そのようなフィーチャの良好な区別を可能にする。マイクロ石灰化はまた、振動を使用することなくドップラー・シフトによって検出可能である。これは、本明細書に参照によって組み込まれるChelfouhN.等著「Characterization of urinary calculi:in vitro study of “twinklingartifact” revealed by color−flow sonography」AJRAm.J.Roentgenol.171(4):1055〜60(1998)において、多くの胸部石灰化のサイズを有する粒子に関して詳細に記述される。さらに、共鳴周波数振動の使用は、「点滅人工物(twinkling artifact)」によって与えられる検出および/または特徴付けのさらなる改良を提供することができる。
【0062】
しかし、ドップラー効果の使用は、動きを生み出すために調査中の対象物が故意に擾乱される場合に制約されない。その場合、整合性のある振動が確立され、多次元フィールドの構成が隣接するボクセルの集合的な動きに関する検査を必要とする。しかし、対象物それ自体の内部で、ある種のフィーチャの自然な動きが存在する対象物がある。これは、例えば調査中の対象物が胸部など人の器官である本発明の特定の実施形態における場合である。ここでは、脈管を通る血の自然な流れ運動があり、この血流の識別は、癌性腫瘍の識別に有用である。全3次元速度フィールドが、腫瘍のまわりの血管形成の取り囲む性質を示す。したがってこの実施形態では、組織の脈管化を特徴付けるためにドップラー効果を使用することができる。上述した改良された擾乱もまた、例えば胸部の導管におけるような流体の集合的な動きを誘発することができる。
【0063】
ドップラー効果が動きの方向に依存することは当業者によって理解されよう。したがって、調査中の対象物の大きな立体角カバレージと結合された、3次元でのフィールド構築を対象とする本発明の態様が、本発明を従来の2次元イメージング技法よりも非常に有利にする。これは、そのような2次元技法が、2次元イメージング平面に直交する動きの成分に関するドップラー情報を使用することができないためである。したがって、取り囲まれたボリュームの3次元ドップラー特徴が、まわりの脈管構造のより良いボリュームの記述、および「点滅人工物」または振動誘発音響共鳴イメージングによるマイクロ石灰化の改善された局所限定を生み出すことができる。
【0064】
本発明の他の実施形態では、多次元フィールド
【数20】

のレンダリングが、患者の体全体に関して構築される。このいわゆる「ウェット・スーツ」実施形態では、人体の形に形作られたスキューバ・スーツによく似たスーツが、水または他の低インピーダンス材料を裏打ちされ、放射源および検出器がウェット・スーツ全体にわたって配置される。そのような配置構成は、人体の隔離された部位を調査するために使用することもできるが、この実施形態では、調査中の対象物が人体全体であってよく、体の大きな立体角カバレージが、体の全体を効果的にカバーする放射源および検出器のアレイによって達成される。
【0065】
当業者に明らかなように、放射源および検出器のアレイは、必要な入射放射エネルギーを提供し、多次元フィールド・レンダリングを構築するのに必要とされる適切なデータを収集し、さらに多次元フィールドから導くことができる結論を生成するように制御されることが必要である。これは、適切にプログラムされたコンピュータによって達成することができる。このコンピュータは、放射源によって放出される放射エネルギーのタイミング、振幅、周波数、および位相を制御するために使用されるだけでなく、以下に説明するフィールド構築および癌検出アルゴリズムを実行するために使用することもできる。あるいは、放射源および検出器の制御に関して、かつフィールド構築および癌検出アルゴリズムに関して別々のコンピュータを使用することができる。多次元フィールド
【数21】

の構築は、計算主体である。したがって、必要な計算を行うためには、並列プロセッサなど様々なスタンドアローン・プロセッサ、アプリケーション特定集積回路(ASIC)、またはデジタル信号処理(DSP)チップが適切である。他の実施形態では、ダイアルアップ・サービス、または大学もしくは他の施設のイントラネット・フックアップなどの分散処理装置を使用することができる。
【0066】
2.多次元フィールドの構築 検出器のアレイによって送られる透過され、かつ反射された波信号の測定値から、組織内の病理、特に癌など対象物内の3次元フィーチャを検出し、識別するために、まず収集されたデータから多次元フィールド
【数22】

のレンダリングを構築する必要がある。多次元フィールド・レンダリングを構築するためのいくつかの方法を以下に記述し、特定の反復アルゴリズムを詳細に記述する。以下の記述は、検出される波信号が超音波波信号である特定の実施形態に言及するが、この方法が、音響放射エネルギーおよび電磁放射エネルギーを含めた任意のタイプの検出される放射エネルギーに、より一般的に適用可能であることを当業者は容易に理解されよう。
【0067】
この方法では、目的は、多次元フィールド
【数23】

のレンダリングを構築することであり、ここでΘは、検出器によって受け取られたデータを十分に説明する物理的特性のセットである。この方法は、図5に流れ図の形で示される。初期ステップ10は、検出器からデータを収集することである。このデータのセットはセット{Si(0)}によって表され、検出器がアレイ内に存在するあらゆる点iに関して、本発明の実施形態に応じて、検出される波の振幅および/または位相を含む。特定の代替実施形態では、データはまた、検出器が存在するあらゆる点iでの放射エネルギーの周波数を含む。この場合、これらのデータは、内部で動きがある対象物の一部から散乱されたときに放射エネルギーのドップラー・シフトに関する情報を使用して、
【数24】

の構築に使用することができる。この動きは、器官内の血の運動など対象物内部のフィーチャの自然な動きから生じることがあり、または上述したように、対象物に対して振動源を直接適用する方法による対象物の意図的な擾乱から生じることもある。周波数シフトに関するデータを収集することによって、ドップラー・シフト・データを使用して、多次元フィールドに関してΘによって示されるパラメータの1つとして調査中の対象物内のフィーチャの速度を含める。
【0068】
生成されたデータを分析する方法における第2のステップ12は、観察されるデータを生成することになる多次元フィールドの初期推定
【数25】

を定式化することである。この方法のこのステップを行うと、初期フィーチャの形状を含めた調査中の対象物の3次元形状の表現を単に提供する再構築技法に依拠することが可能になる。これは、好ましくは、対象物のただ1つの物理量Θ0の空間表現を生成することによって行われる。例えば、本発明は最終的に、分析中に反射された波と透過された波の両方を活用するが、標準のコンピュータ断層技法を使用することによってなど、形状の初期推定を生成するために、透過される波のみに依拠することが可能である。さらに、この初期形状推定は、対象物を介する放射エネルギーの経路が直線経路に沿っていることを仮定することによって行うことができる。これは、波の経路が胸部構造によって影響を受けるため、人の胸部を介する超音波伝搬などの場合には完全に正確でないことは確かであるが、初期形状推定に関しては妥当な近似である。これは、分解能が減少するにつれて低周波数で実施することができる。この場合、周波数がより高い周波数へ段階的に上げられるとき、本発明の一実施形態において低周波数ソリューションを統合することができ、そのため所望の分解能が達成される。
【0069】
これらの仮定を用いると、検出器によって受け取られる情報を、放射エネルギー波によってとられる直線経路に沿った音の速さおよび音減衰の統合として記述することができる。直線経路は、調査中の対象物によって反射、散乱、または回折されないときに放射エネルギー波によってとられる経路である。この情報が各放射源に関して収集されると、連立方程式の体系を解くための十分な情報が存在することになる。例えば、本明細書に参照によって組み込まれるGaborT.Herman著「Image Reconstruction from Projections:The Fundamentals ofComputerized Tomography(Computer Science and Applied Mathmatics)」を参照のこと。
【0070】
本発明の異なる実施形態は、形状推定を滑らかにするために、またはエッジ完了を導入するためにイメージ処理技法を使用するなど、初期形状推定
【数26】

を形成する際に追加のステップを含むことができる。従来のイメージ処理技法は、例えば、本明細書に参照によって組み込まれるJohnC.Russ著「The Image Processing Handbook,ThirdEdition(1998)」に記述されている。イメージが2空間次元に依存する従来のイメージ処理では、スムージングは、移動ウィンドウ(例えば3×3)を、ウィンドウ内部のピクセル値の平均を計算するために所与のイメージ上で動作させることによって実施することができる。移動ウィンドウのピクセル値は、平均値で置き換えられる。次いでこれがイメージ全体に関して反復され、それによりイメージを滑らかにする。本発明の一実施形態では、そうではなく3空間次元に依存する初期形状推定
【数27】

を滑らかにするためにアナログ方法を使用する。この場合、ボクセルにわたって平均値を計算する移動ボックス(3×3×3)を有することによって形状が滑らかにされ、移動ウィンドウのボクセル値が平均値で置き換えられる。これらの方法は、イメージがスペックルを含むときに特に有用であるが、過剰なスムージングの場合、情報を損失する傾向があるため注意が払われるべきである。
【0071】
本発明の他の実施形態では、初期形状推定
【数28】

のエッジが完了される。従来のエッジ完了方法は、隣接するピクセル間の差を計算し、傾きをスレショルドすることによってイメージから傾きを抽出することにより動作する。具体的には、ある値よりも変化が大きい場合、その位置がエッジとして指定される。初期形状推定
【数29】

におけるエッジを検出するために同じ原理を容易に適用することができる。この場合には、傾きが隣接するボクセルから抽出され、変化がある値よりも大きい場合、位置がエッジとして指定される。
【0072】
しばしば、エッジ検出アルゴリズムによって検出されたエッジが閉じた境界を形成しない。これらのエッジは、従来の方法によって連続的な境界を形成するように接続される。イメージが2空間次元に依存するときに適用される従来の方法は、まず互いに触れ合うエッジをグループ化すること、次いで初期グループから2、3のピクセルによって同じ方向に沿って見つけられるエッジを含むようにその初期グループから成長させることなどを含む。3空間次元に依存する初期形状推定
【数30】

のエッジを完了させるために、アナログ方法を適用することができる。この場合、互いに触れ合う表面がはじめにグループ化される。この初期グループから、初期グループからの少数のボクセルによって同じ方向に延びる表面が漸進的に成長する。これら既存のイメージ処理技法に適合することによるエッジ完了の導入は、エッジ検出の機能がマスの悪性特性の適切な識別に関連しているため、有用である。以下、癌性組織を識別する際に含むことができるステップに関してより詳細に以下にこれを論じる。
【0073】
この方法ではこの点で、多次元フィールド
【数31】

は、検出された信号の観察された波形にのみ基づいて推定され、対象物および対象物内部のフィーチャの形状の表現を含む。したがって、調査中の対象物の「解剖学的」推定として記述される。
【0074】
方法14における第3のステップは、推定を精製し、調査中の対象物の「生理学的」表現としてより現実的なものにするように生理学的データを注入することである。このステップの詳細は、図6に流れ図の形で表わされる。生理学的データを注入する際の第1のサブステップ30は、物理空間内の3次元構造に従ってフィールドを分化することである。
【0075】
初期3次元形状推定
【数32】

を別々の物理的領域に分化するために、形状を表すために使用される物理量Θ0を検査する、特にΘ0の突然の変化がどこにあるかを確かめることが必要である。はじめに、量が大きいか小さいかなどの基準に従って別々の領域が定義される。これは、対象物によって占有される物理的空間に存在する各個別のボクセルに関して行われる。
【0076】
ボクセルの完全なセットがそのような領域によって指定されると、個々のボクセルをセグメントに集めることができることが理解されよう。例えば、10個の隣接するボクセルが1つの領域として指定された場合、その10個のボクセルは、単一のセグメントにグループ化されるべきである。この集合ステップにおいて、領域はまた、適宜併合され、分割される。したがって、例えば、1つのボクセルが1つの領域として指定され、100個のボクセルが同じ領域として指定され、しかし1つの中間ボクセルが異なる領域として指定された場合、それにもかかわらず、102個のボクセル全てが単一のセグメントに集められるべきである。この分化が完了した後、初期形状推定
【数33】

は、個別に定義された形状を有する個々の物理的領域に定義される。
【0077】
次いでこれは、個々のセグメントにラベル付けするサブステップ32に続く。このラベル付けは、エキスパート・システムやニューラル・ネットワークなど、調査中の対象物内で予想される構造の格納された知識に依拠する訓練された評価システムを使用することによって達成することができる。このラベル付けの一態様は、訓練された評価システムが依拠する形態学的識別データベースの使用を含むことがあり、その生成を以下に示す。例えば、癌が胸部組織内で識別される実施形態では、エキスパート・システムは、胸部内に存在する予想される構造の3次元形態学的フィーチャを格納している。形態学的識別データベースは、細長い、平面的である、粗いなどに従って構造を定義することができる。各分化されたイメージの形態を検査し、それを形態学的識別データベースに格納された構造のカタログと比較することによって、エキスパート・システムは、その構造に対応するフィールドの各隔離されたセグメントにラベルを割り当てる。代替実施形態ではデータベースが特定の個体に関して生成されるが、この形態学データベースは、個体群の分析に基づいて生成される。
【0078】
個々のセグメントのこのラベル付け、サブステップ32は実質的に、訓練された評価システムを使用して、格納された形態学的データに基づいて分化されたフィールドを識別するパターン認識アルゴリズムである。このパターン認識アルゴリズムの特定の実装形態では、訓練された評価システムが信頼できる割当てを行うことを保証する必要がある。これは、この場合システムを使用して実際のデータを評価する前にエンコードされた、関連するリスク・ファクタを説明する保証可能なデータの適切なセットによって評価システムを予備訓練することによって行われる。例えば、いくつかのサンプル分化されたパターンを、エキスパート・システムの割当ての正確さを評価するために放射エネルギー技師に提供することができる。このプロセスでは、セグメントの3次元形状の2次元スライスなどのイメージが、識別のために放射エネルギー技師に対して提供される。彼等によって行われる識別に基づいて、この情報は、評価システムのパターン認識アルゴリズムを訓練するために使用される。本発明の異なる実施形態において、多次元フィールドの解釈に当てられた以下のサブセクションで詳細に説明されるフィーチャ認識技法がまた、初期形状推定の識別を行うために使用される。
【0079】
生理学的データを注入する際の最終サブステップ34は、実際に、公称生理学的値を各セグメントに割り当てることである。これらの生理学的値は、最終多次元フィールド
【数34】

において生成される任意の関連する量であってよい。超音波を使用して組織内の医療病理を識別する一実施形態では、これらの生理学的量は、音の速さおよび吸音であってよい。これらの量は複合音速度νの点から、
【数35】

は音の速さであり、
【数36】

は吸音定数に関連し、それぞれ調査中の対象物内部で変化することがあるとして、より簡便に論じられる。したがって、本発明のこの特定の実施形態では、対象の多次元フィールド
【数37】

が、調査中の対象物中のあらゆるボクセルで、この複合音速度
【数38】

を記述する。
【0080】
vの公称値の割当ては、形態学的に割り当てられたセグメントと複合音速度との間の所定のマッピングを参照することによって実施することができる。当業者に理解されるように、かつ音響波の場合に関して図7に示されるように、実際に、異なる組織に関して複合音速度のばらつきがあり、このためこの方法におけるこのステップでの割当てが単に公称となる。この図は例示のために2次元(音速さおよび吸収)に関して示されているが、この関係を、特定の組織の識別に対する各追加の次元を与えられた任意の多次元に一般化することができることを当業者は容易に理解されよう。
【0081】
また、同様の関係が異なるタイプの医療病理に関して構築され、異なる物理的パラメータを含むことができ、このコンテキストにおいて本発明がそのような関係全ての使用を包含することも容易に理解されよう。さらに広い意味では、この関係が位相変化や振幅変化などの生データさえも含むように拡張することができ、しかし当然、この場合これらの量のいくつかが互いに非常に良く相関されることになる可能性がある。本発明による生理学的データの注入後、ここでは「生理学的」推定と呼ばれる3次元フィールドの新たな推定
【数39】

が計算される。
【0082】
この方法の次のステップ16は、方法の反復部分における最初のステップである。このステップでは、モデル多次元フィールドが調査中の対象物の実際のフィールドに正確に対応した場合に、調査中の対象物の既存のモデルを使用して、どの検出器データが生成されることになるかを計算する。波が超音波である特定の実施形態では、適切な音波伝搬コードを使用することによってこれを実施することができる。超音波放射エネルギーの使用を対象とする本発明の実施形態では、Lawrence Livermore国立研究所、Oak Ridge国立研究所、LosAlamos国立研究所、およびSandia国立研究所を含めた様々な米国国立研究所で適切なコードが利用可能である。フランスのtheInstitut Francais Du Petrole、the National Oceanic and AtmosphericAdministration(本明細書に参照によって組み込むR.M.Jones等著「HARPO:A Versatilethree−dimensional Hamiltonian ray−tracing program for acoustic waves inan ocean with irrgular bottom,NOAA Special ReportPB87−172573/LL(1986)」参照)、およびアラバマ州ハンツビルのComputationalFluid Dynamics Researchでは他の超音波伝搬コードが利用可能である。普及しているコードは、LINUX OceanAcoustics and Seismic Exploration SynthesisPackageである。このコードのフル・バージョンは、MIT Technology LicensingOffice,Massachusetts Institute of Technology,Five CambridgeCenter,Kendall Square,Room NE25−230,Cambridge MA02142−1493からライセンスを受けて利用可能である。既存の超音波伝搬コードに共通する1つの特徴は、それらが、推定フィールド
【数40】

、ならびに放射源および検出器の構成と、放射源によって生成された超音波の特徴とを入力するために使用することができるアルゴリズムの複合体を含むことであり、それにより各検出器に到着する超音波の波形を計算する。代替実施形態では、そのようなコードのより洗練された機能を使用して、伝搬される波に関するノイズおよび不確かさの効果をモデルすることができる。この方法におけるこのステップの結果は、実際に検出される信号{Si(0)}と比較することができる検出される信号{Si(n)}の推定を生成することである。
【0083】
この方法における次のステップ18は、推定された信号と実際の信号の差{εi}={Si(0)−Si(n)}を計算することである。次いで、このエラー・セットがステップ20で試験されて、推定された信号と実際の信号の差がノイズより小さいかどうかを判定する。そうである場合は、反復が、多次元フィールド
【数41】

のレンダリングの構築に関する最終値に収束したと考えられる。そうでない場合は、反復が追加のステップに関して進む。エラー・フィールドがノイズ範囲内にあるかどうかを判定するために、以下の量が、いくつかの所定のしきい値Tと比較される。
【数42】

ここで、VSiは、セット{Si}に関するばらつきである。
【0084】
推定フィールドが、少なくともノイズ・レベル範囲内で実際の信号と一致する1組の推定され検出される信号を生成しないとき、ステップ24における推定を改善するために生理学的データが変更される。生理学的データを変更する方法は、図8により詳細に示される。このステップでは、方法が、サブステップ40でのエラー信号のセットから始まり、サブステップ42で、補正フィールド
【数43】

を生成するために超音波伝搬コードに使用される。一実施形態では、同じ超音波伝搬コードがステップ16で使用されたのと同様に使用されるが、これは本発明の要件ではなく、異なる超音波伝搬コードを異なる実施形態で使用することができる。フィールドの前もって割当てられたセグメンテーションをここで使用して、セグメント外で
【数44】

となるようにサブステップ44で補正フィールドを精製する。前もって確立されたセグメント内部では、補正フィールドが平均をとられ、精製フィールド
【数45】

を生成する。
【0085】
基本方法の最終ステップ26では、新たな多次元フィールド
【数46】

が、精製フィールドを前の多次元フィールドに追加することによって計算される。
【数47】

次いでこの方法は、ステップ16で使用されるこの新たな多次元フィールドを用いて反復的に進み、いくつかの利用可能な超音波伝搬コードを使用する実際のフィールドであるかのように、検出された信号を計算する。この方法は、エラー・フィールドが、しきい値Tによって定義されるノイズのレベル範囲内にあると考えられるようになるまで反復する。収束のための方法の能力および収束の速度が、初期推定
【数48】

の質に大きく依存することが、当業者には容易に理解されよう。
【0086】
当業者によって理解されるこの方法のいくつかの異なる実施形態が存在する。一実施形態では、多次元フィールド
【数49】

の推定を改善するため、およびベイズまたはカルマン・フィルタリング、共分散交差、何らかのフォームのファジー組合せ等の技法によってそのような推定量の結果を組み合せるために、ステップ16または42で異なる推定量の間のサイクリングが存在する。例えば、本明細書に参照によって組み込まれるJamesV.Candy著「Signal Processing:The Model−Based Approach」(McGrawHill,1986)を参照のこと。
【0087】
また、多次元フィールドを構築するために使用することもできる代替方法が存在する。そのような方法は全て、2つのクラスの1つに入るように大まかに類別することができる。上に詳細に記述した方法が入る第1のクラスでは、方法が、漸進的に改良される初期近似から始まる。方法の第2のクラスでは、システムは、実質的にランダムに変更することを可能にされ、プロセス中に生じる個々の多次元フィールドが評価されて、観察されたデータをどれが最も良く再生するかを判定する。そのような方法の一例は、遺伝的アルゴリズムである。
【0088】
遺伝的アルゴリズムは、自然の進化をまねるようにその振る舞いを導出する機械学習のモデルである。例えば、本明細書に参照により組み込むMelanieMitchell著「An Introduction to Genetic Algorithms」(Complex AdaptiveSystems,1996)を参照のこと。これは、染色体、本質的にはDNAの基本4染色体に類似する1組の文字列によって表される個体の個体群を生成することによって行われる。次いで、個体群中の個体が、シミュレートされた「進化」のプロセスを通る。遺伝的アルゴリズムは、最適化される異なるパラメータに関する値をエンコードするために染色体の文字列を使用することができる多次元最適化問題に広く使用される。したがって、実質上、染色体を表すためのビットまたは文字のアレイ、この場合は多次元フィールド
【数50】

が提供される。このときビット操作が、クロスオーバ、突然変異、および他の操作の実施を可能にする。
【0089】
遺伝的アルゴリズムが実施されるとき、以下のサイクルを含む様式で訓練される。個体群中の全ての個体の適応度がまず評価される。次いで、今適応度が測定された個体に対してクロスオーバ、適応度比例生殖、突然変異などの操作を行うことによって新たな個体群が作成される。最後に、古い個体群が切り捨てられ、新たな個体群を用いて反復が行われる。このループの反復は、世代と呼ばれる。本発明では、いくつかのランダムに生成された多次元フィールド
【数51】

が初期入力として使用される。次いで、フィールドのこの個体群が、上述したように進化させられ、各個体フィールドは、観察されたデータを適切に再生することができるかどうかを見るために各世代で試験される。これは、上述したのと正確に同じ様式で行われ、波伝搬コードを使用して、実際に観察されたデータ{Si(0)}と比較されるデータのセット{Si(n)}を生成する。遺伝的アルゴリズムは、多次元フィールド
【数52】

を生成するために本発明の代替実施形態として使用することができる。
【0090】
多次元フィールド・レンダリングを構築する際に使用するための最も適切な技法が、計算を行うために使用されるハードウェアおよびソフトウェアの計算能力の点から技法の速度に大きく依存することは、当業者に容易に理解されよう。多次元フィールドを構築する方法の特定の例を用いて本発明を詳細に説明してきたが、本発明はそれに限定されず、それを行うための代替スキームを包含する。
【0091】
3.多次元フィールドの解釈 多次元フィールド
【数53】

を決定した結果、解釈は、フィールド
【数54】

を構築する物理的特徴Θからなる。導かれる解釈は、
【数55】

において計算された物理量のタイプと、解釈を生じるようにその情報をとることができる訓練された評価システムの存在とに直接関連する。本発明の範囲を限定することを意図せずに、多次元フィールドが人の胸部内部の組織から散乱された超音波に関する複合音速度ν(r,t)を記述する実施形態を説明することによって、これを最も良く例示することができる。複合音速度と、胸部内にどのようなフィーチャが存在するかに関する解釈との関係が図7によって示される。複合音速度を与え、この関係を使用して組織タイプを分類する。この関係が、ある方程式に変えることができる単純な関数フォームであることを予想するための「アプリオリな」理由は存在せず、したがってこの解釈に対する複合音速度からのマッピングは、より洗練された技法の使用を必要とする。これらは、ニューラル・ネット、急な下降またはシミュレートされたアニーリングなどの方法を使用することによって、ある種の解釈を包含する曲線の形状が変更される推定学的最適化、または多次元フィールドを進化させるために上述した遺伝的アルゴリズムによって形状が変更される進化的方法の使用を含むことができる。一般的には、本明細書に参照によって組み込まれるStanley R.Deans著「The Radon Transform and Some of Its Applications」(Krieger Publishing,1993)を参照のこと。
【0092】
多次元フィールドを解釈する一方法は、確率的推定を含む。確率的推定量の基本概念は、
【数56】

のある入力値を与えられたある組織分類の確率の点からボクセルの領域を指定することである。例えば、特定のボクセルに関する値のセットを与えると、ボクセルが特定の解釈を表す確率がまず決定される。次いで、ボクセルは、最大確率を有する領域として識別される。試験情報を使用して、基本的な確率を生成する。例えば、超音波を使用して胸部組織を調査する実施形態では、個々のボクセルに関して計算された複合音速度に基づく、あるタイプの組織または組織病理の確率が存在する。
【0093】
より特化された推計学的評価スキームでは、間違った陽性または陰性のレートを減少するために、いくつかの領域が他よりも重く与えられている。本発明の様々な実施形態において、間違った陽性のレートまたは間違った陰性のレートを最小限に抑えることがより望ましいことが容易に理解されよう。例えば、癌が組織内で識別される特定の実施形態では、癌の陽性の識別には追加の医療処置が続くため、あるレベルの間違った陽性は受け入れ可能であることがある。しかし、間違った陰性のレベルは最小限に抑えられることが望ましい。
【0094】
代替実施形態では、ニューラル・ネットを使用して多次元フィールドを解釈する。例えば、本明細書に参照によって組み込まれるSimon S.Hagkin著「Neural Networks−A Comprehensive Foundation」(PrenticeHall,1998)を参照のこと。この場合、識別を正確にかつ持続的に行うことが可能になるようにニューラル・ネットを訓練する必要がある。典型的なニューラル・ネットワークは複数のノードを含み、各ノードがそれに関連する重み値を有する。1つの層が、複数の入力ノードを有する入力層であり、別の層が、複数の出力ノードを有する出力層であり、それらの間に少なくとも1層を有する。この例では、入力ノードが多次元フィールド値
【数57】

(例示的な実施形態における複合音速度)を受け取り、出力ノードが解釈指定(例示的な実施形態では組織タイプ)を生成する。換言すると、1つのボクセルの多次元フィールド値を備える入力を与えると、入力が組み合わされ(ニューラル・ネットワークがはじめにどのように編成されたかに応じて様々な組合せおよび反復で加算され、乗算され、減算される)、次いで解釈がそれに従って生成される。
【0095】
ニューラル・ネットを訓練するために、出力値が、いくつかの知られているサンプルを有する正確な解釈と比較される。そのような試験解釈と比較されたときに出力値が不正確である場合、ニューラル・ネットがそれ自体を修正して、正確な出力値に達する。これは、あるノードを接続または切断することによって、かつ/または複数の反復を通る訓練中にノードの重み値を調節することによって達成される。訓練が完了すると、結果として生じる層/ノード構成およびそれに対応する重みが、訓練されたニューラル・ネットを表す。次いで、訓練されたニューラル・ネットは、未知の多次元フィールドデータを受け取り、各ボクセルに関して解釈を指定するように準備される。古典的なニューラル・ネットには、コホーネン・ネット、フィード・フォワード・ネット、バック・プロパゲーション・ネットがある。様々なニューラル・ネットが、訓練プロセス中に重みを調整し、それぞれのニューラル・ネットを編成する様々な方法を有する。
【0096】
超音波を使用して胸部組織を調査する本発明の実施形態では、癌性腫瘍が発見される確率を高めるために、Hough変換に基づく第2の方法が使用される。例えば、本明細書に参照によって組み込まれるStanley R.Deans著「The Radon Transform and Some ofIts Applications」(KriegerPublishing,1993)を参照のこと。この実施形態における基本概念は、閉じたボリュームが新生物の存在を示すため、それが組織内で識別されることである。次いで、識別された新生物が悪性のものであるという解釈の信頼性を高めるために、この情報が、癌を示唆する複合音速度と結合される。
【0097】
閉じたボリュームは、r=(x,y,z)の長円体として表すことができる。
【数58】

固定された(x0,y0,z0,A,B,C)に関して、式を満足する各(x,y,z)が長円体の表面上の点を定義することが当業者には明らかであろう。しかし、対象物の表面上のあらゆる点が、(x0,y0,z0,A,B,C)が可変である6次元空間での曲線を定義することも確かである。対象物が真の長円体である場合、これらの曲線全てが単一の点で交差する。真の長円体からの逸脱が、その点を通らない曲線として現れる。したがって、閉じたボリュームを識別するためには、各点をこの6次元空間内にマッピングすることによって定義される曲線のクランピングを検査することのみが必要である。曲線のクランピングが検出されると、閉じたボリュームが実3次元空間に存在する可能性がある。
【0098】
閉じたボリュームが認識されると、ボリュームの表面の準フラクタル次元を計算することも有用である。この計算は、腫瘍の表面特性が異なるため、癌が識別される可能性を高めることができ、良性腫瘍は、悪性腫瘍と異なり一般的に滑らかである。したがって、準フラクタル次元が2に近い場合、表面は滑らかであり、ボリュームが癌性のものである可能性は小さい。準フラクタル次元が2より大きい場合、表面は不明瞭であり、識別された閉じたボリュームが癌性のものである可能性がより大きい。
【0099】
多次元フィールド、および癌の識別のために使用することができる第3の方法から引き出される他の有用な特徴は、血管形成の存在である。これは、局部的に増大した血流の識別が、それが腫瘍補充によるものであることを示すものとして働くため、有用である。本明細書に参照により組み込むLouvar等著「Correlation of color Doppler flow in the prostate with tissuemicrovascularity」Cancer 1998 July1:83(1):135〜40を参照のこと。放射エネルギー検出器が周波数を検出するように設計されているとき、上述したように、これはドップラー効果の使用が器官内の流体、特に血の動きを認識することを可能にするため、この識別を行うために必要な関連情報は多次元フィールドから抽出される。
【0100】
具体的には、この例における多次元フィールドは、器官全体にわたるフィーチャの周波数シフトまたは速度を含む成分を含む。この場合、訓練された評価システムは、流体速度が顕著であり、上述した閉じたボリュームなど他の腫瘍インジケータに一致する幾何形状に形作られた領域を識別し、それによって血管形成を識別することができる。血管形成を識別するためのそのようなシステムの能力は、本発明のフィールド構築の3次元性質、および本発明の大きな立体角カバレージによって大幅に高められる。他の2次元画像システムでは、2次元イメージの平面に直交する動きの成分から導出される情報を使用することができないため、ドップラー情報が制限される。
【0101】
血管形成の識別の信頼性は、癌識別の第4の方法として、多次元フィールドからのドップラー情報を、組織圧力に関連する多次元フィールド中の情報と相関させることによって高めることができる。組織圧力は、悪性腫瘍の識別における他の重要な成分であり、低調波信号振幅の検査から決定することができる。超音波調査における低調波信号振幅と組織圧力との相関の存在は、本明細書に参照により組み込むW.T.Shi等著「Effects of Pressure Changes on Harmonic and SubharmonicResponse of US Contrast Microbubbles」RadiologySupplement,1154(1999)に示されている。
【0102】
動きに対するシステムのドップラー感度もまた、癌識別の第5の方法として働く他の理由に関する癌の識別において重要である。上述したように既知の周波数で振動が組織に加えられるとき、本発明は、まわりの普通の組織を襲う癌の初期傾向に関連するより強い組織を認識させる。特に、このコンテキストでは、外部振動が加えられたときに組織内のマイクロ石灰化がまわりの組織との明確に定義された高いコントラストを生成するため、ドップラー効果が有用である。これは、本明細書に参照により組み込むC.M.Sehgal等著「Visualization of Breast Calcification byAcoustic Resonance Imaging」RadiologySupplement,1150(1999)に記載されている。振動共鳴周波数が70〜250Hz付近のとき、そのようなマイクロ石灰化に関するドップラー信号は、まわりの組織よりも5〜6倍大きく、そのようなフィーチャの良好な区別を可能にする。
【0103】
癌識別の第6の方法では、組織内の電気インピーダンスが多次元フィールドから抽出される。本明細書に参照により組み込むJeremyC.Hebden等著「Acoustically modulated electrical impedancetomography」,Proceedings of the SPIE,1231:7−14(1990)に記載されるように、組織の電気インピーダンスは、腫瘍を識別するためのファクタとして使用することができる。
【0104】
癌識別の第7の方法では、2つの異なる時間で行われる検査中の対象物の測定値を比較することによって分解能を改善することができる。多次元フィールド
【数59】

のレンダリングは、測定値の各セットに関して構築され、フィールドが比較される。これは、少なくとも元の生データを格納すること、新たな生データに対して元の生データを登録すること、および2つの異なる時間の間の変化を確かめるために元の生データと新たな生データを比較することを必要とする。原理的には、元の生データを直接格納することが可能であるが、これには大きなデータ記憶容量が必要である。あるいは、データに対して圧縮を行うことによって、元の生データを格納することができる。
【0105】
損失のある圧縮方法と損失のない圧縮方法の両方が利用可能である。正確さのためには、JPEG(Joint Photographic ExpertGroup)標準などを使用することによって、損失のない圧縮を使用することができ、効率のためには、損失のある圧縮を使用することができる。特に、非常に高い圧縮率が望まれるときは、フラクタル圧縮方法を使用することができる。フラクタル圧縮方法は、自然のシーン(例えば人の胸部)を含むイメージを圧縮する際により正確であるため、最適な圧縮方法である場合がある。従来のフラクタル圧縮方法は、3次元に依存する多次元フィールドに容易に適合することができる。この方法では、フィールドの各成分を、複数の均一にサイズをとられたブロックに分割することによって圧縮する。他の方法は、クアドツリー(quad-tree)区画を使用してフィールドの成分を分割するものである。フィールドは大きなブロックに分割され、適切に正確な一致を発見することができない場合に、これらのブロックはより小さなブロックに分割される。次いで、これらのサブブロックに関して一致が試みられ、一致が見られない場合は、これらのサブブロックがさらにサブブロックに分割される。一致をなす可能性があるとき、プロセスは最小ブロック・サイズに到達するまで続く。
【0106】
各組織ボリュームは、脈管、血管、石灰化、および長期にわたってさえもほとんど変化しない他の人工物を含む。しかし、元のデータが、形状全体の変化、被験者の物理的状態の変化などにより新たなデータと正確に一致しない場合がある。この問題を改善するための一方法は、新たなデータが収集されたときに存在する状態への元のデータのモーフィングである。ここで、イメージ・モーフィングは、複数の中間画像を介して1つまたは両方の画像をワープすることによってソース画像を宛先画像に混ぜる従来のイメージ・モーフィング方法である。これらは、組織内のフィーチャの斜視図である図9に示される。図の部分(a)および(c)では、初期時間での観察に関するフィーチャが構築され、図の部分(b)および(d)では、後の時間に行われた観察に関するフィーチャが構築される。各場合において、組織サンプルの形状全体になんらかの変更がある。しかし、ランドマークとして時間にわたってほとんど変化しない人工物を使用することによってフィールドが互いにモーフィングされるときは、違いが現れる。図の部分(b)では、モーフィング後の有意な変化はなく、癌成長がないという結論を導く。しかし、部分(d)では、モーフィング後に明らかな有意な変化があり、組織サンプル中に異常変化があったという結論を導く。
【0107】
多次元フィールドが元のデータに関して再構築された後、それを新たなデータに関して生成された多次元フィールドと比較することができる。2つフィールドの相違は、単に一方から他方を引くことによって達成することができる。あるいは、返された超音波信号の位相を使用して、任意の変化を突き止めるために干渉計測定を行うことができる。また、2つのフィールドが、(おそらく数ミリ秒だけ離れた)比較的近い時間にとられたデータから生成される場合、干渉計測定技法を使用して、本発明の分解能を改善することができる。
【0108】
これらの癌識別技法はそれぞれ、エキスパート・システム・コンピュータ・プログラムまたは自己学習ニューラル・ネットワークなど訓練された評価システムによって独立して評価することができる。様々なセンサ融合の手段を用いて様々なファクタを結合することができる。例として、訓練された評価システムが、いくつかの独立ファクタに基づいて癌が識別される確率を割り当てるとき、確率の積を計算することによって割当ての信頼性を高めることができる。例えばpkが、識別技法kに基づいた所与のフィーチャが癌である確率である場合、複数の技法の使用に基づいたフィーチャが癌である確率Pは、 P=1−Π(1−pk)
である。
【0109】
この方法に関するさらなる変形例が存在する。これは、疑いがあるものとして識別された領域に合焦するように、放出される放射エネルギーを放射源内で修正することを含み、それによりそれらの領域をより詳しく分析する。この方法は、マンモグラフィなど他の知られている技法と統合することができる。この例では、識別の信頼性は、この場合も確率の積を計算することによって改善される。
【0110】
医療病理の検出および特徴付けを対象とする本発明の実施形態に関連して、本発明を特に示し、記述してきたが、記述した方法および装置を非医療適用例にも容易に適用することできることは、当業者に理解されよう。特にこの方法および装置を使用して、対象物内の特異なフィーチャを検出し、特徴付けることができる。これは、航空宇宙デバイスにおける欠陥の検出および特徴付けのために使用される装置および方法によって、本発明を限定することなく例示することができる。航空宇宙デバイスと、放射源および検出器のアレイとの間にインピーダンス一致コンタクトを形成することにより、本発明を使用して、航空宇宙デバイスを照射する、または超音波照射する。次いで、放射エネルギーが散乱された(放射エネルギーの反射、回折、および透過を含む)後に収集されたデータを使用して、航空宇宙デバイスの多次元フィールド・レンダリングを構築する。次いで、この多次元フィールド・レンダリングを使用して、航空宇宙デバイス内部の欠陥などのフィーチャを検出し特徴付ける。これらのステップはそれぞれ、医療適用例に関して具体的にかつ明確に上述した様式で行われる。
【0111】
本発明を特にその好ましい実施形態を参照して示し、記述してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明に様々な変更および修正を行うことができることを、当業者にはよく理解されたい。
【0112】
以下に、この発明の実施形態例を示す。
〈実施形態例1〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で放射エネルギーを放出するように適合された放射源であって、そのような対象物に放射するように配置された放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取るようにそのような対象物に対して配置された複数の放射エネルギー検出器であって、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供することが可能な複数の検出器と、(c)放射エネルギーを放出し、受け取るように、前記放射源および前記複数の放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例2〉 前記放射源が複数の放射源を備える実施形態例1に記載の装置。
〈実施形態例3〉 前記複数の放射源が複数の超音波源であり、前記複数の放射エネルギー検出器が複数の超音波検出器である実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例4〉 前記複数の超音波源および前記複数の超音波検出器が、1つの超音波源および1つの超音波検出器として両方に使用される少なくとも1つのデバイスを含む実施形態例3に記載の装置。
〈実施形態例5〉 前記複数の放射エネルギー検出器が、シリコン・マイクロ電子機械システム検出器である実施形態例3に記載の装置。
〈実施形態例6〉 前記複数の放射エネルギー検出器が、圧電検出器である実施形態例3に記載の装置。
〈実施形態例7〉 前記複数の放射エネルギー検出器が、変形可能誘電体検出器である実施形態例3に記載の装置。
〈実施形態例8〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、前記調査中の対象物のまわりにπsrよりも大きい立体角を定めるように構成されている実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例9〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、前記調査中の対象物のまわりに2πsrよりも大きい立体角を定めるように構成されている実施形態例8に記載の装置。
〈実施形態例10〉 前記複数の放射源が、同一の位相をとられた放射エネルギーを生成する実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例11〉 前記複数の放射源が、異なる位相をとられた放射エネルギーを生成する実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例12〉 前記複数の放射源が、合焦するように位相をとられた放射エネルギーを生成する実施形態例11に記載の装置。
〈実施形態例13〉 前記複数の放射源が、調査中の対象物をスキャンするように位相をとられた放射エネルギーを生成する実施形態例11に記載の装置。
〈実施形態例14〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、長円体アレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例15〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、半球体アレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例16〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、円筒形アレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例17〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、同心円筒形を備えるアレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例18〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、内側円筒形および外側同心円筒形弧を備えるアレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例19〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、円錐または円錐台アレイとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例20〉 前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、ジオデシック・ドームとして構成された実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例21〉 前記複数の放射エネルギー検出器が、放射エネルギーが前記調査中の対象物を透過した、またはそれによって反射された後に、前記放射エネルギーの振幅、位相、および周波数の少なくとも1つを検出する実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例22〉 前記複数の放射エネルギー検出器のかなりの数が、少なくとも1つのセンサを含む集積回路チップ内に集積される実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例23〉 前記集積回路チップが信号処理要素を含む実施形態例22に記載の装置。
〈実施形態例24〉 前記複数の放射源が、個別に識別可能な変調された信号を生成し、前記複数の放射エネルギー検出器の少なくとも1つが、個別に識別可能な変調された信号の少なくとも1つをデコードするように構成された一致フィルタを含む実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例25〉 前記変調された信号が、線形最大長シーケンス変調に従って変調される実施形態例24に記載の装置。
〈実施形態例26〉 前記変調された信号が、Walsh関数変調スキームに従って変調された実施形態例24に記載の装置。
〈実施形態例27〉 前記調査中の対象物が、複数の動物または人の組織を含む実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例28〉 前記複数の動物または人の組織が、人の胸部を含む実施形態例27に記載の装置。
〈実施形態例29〉 前記複数の動物または人の組織が、人の前立腺を含む実施形態例27に記載の装置。
〈実施形態例30〉 前記複数の動物または人の組織が、人の肺を含む実施形態例27に記載の装置。
〈実施形態例31〉 前記複数の動物または人の組織が、人の消化管を含む実施形態例27に記載の装置。
〈実施形態例32〉 前記複数の動物または人の組織が、人の肝臓を含む実施形態例27に記載の装置。
〈実施形態例33〉 さらに、 前記調査中の対象物と、前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器との間にインピーダンス一致コンタクトを備える実施形態例2に記載の装置。
〈実施形態例34〉 前記インピーダンス一致コンタクトが、液体またはゲルを備える実施形態例33に記載の装置。
〈実施形態例35〉 前記インピーダンス一致コンタクトが、等角人形状スーツを備え、前記放射源および前記放射エネルギー検出器が、前記等角人形状スーツ内に組み込まれている実施形態例33に記載の装置。
〈実施形態例36〉 前記放射源が電磁放射源であり、前記複数の放射エネルギー検出器が複数の電磁放射エネルギー検出器である実施形態例1に記載の装置。
〈実施形態例37〉 さらに、前記調査中の対象物に接触するように振動源を備える実施形態例1に記載の装置。
〈実施形態例38〉 前記医療病理が癌を含む実施形態例1に記載の装置。
〈実施形態例39〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように適合された複数の超音波放射源であって、そのような対象物を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るようにそのような対象物に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器であって、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供することが可能な複数の検出器と、(c)超音波放射エネルギーを放出し、受け取るように、前記複数の超音波放射源および前記複数の放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の超音波放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例40〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で放射エネルギーを放出するように、かつ前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取るように適合された複数のデバイスであって、そのような対象物を超音波照射するように配置され、受け取った放射エネルギーに対応するデータを提供することが可能な複数のデバイスと、 (b)前記複数のデバイスを制御する手段と、(c)前記複数のデバイスに結合され、前記複数のデバイスによって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成された計算デバイスと を備える装置。
〈実施形態例41〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように、かつ前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るように適合された複数のデバイスであって、そのような対象物を超音波照射するように配置され、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供することが可能な複数のデバイスと、 (b)前記複数のデバイスを制御する手段と、(c)前記複数のデバイスに結合され、前記複数のデバイスによって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成された計算デバイスと を備える装置。
〈実施形態例42〉 人の胸部内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、 (a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように適合された複数の超音波放射源であって、そのような対象物を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るようにそのような対象物に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器であって、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の超音波放射エネルギー検出器と、(c)超音波放射エネルギーを放出し、受け取るように、前記複数の超音波放射源および前記複数の超音波放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の超音波放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例43〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で放射エネルギーを放出するように適合された放射源であって、そのような対象物に放射するように配置された放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取るようにそのような対象物に対して配置された少なくとも5000個の放射エネルギー検出器であって、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の検出器と、(c)放射エネルギーを放出し、受け取るために、前記放射源および前記少なくとも5000個の放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記少なくとも5000個の放射エネルギー検出器に結合され、前記少なくとも5000個の放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例44〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように適合された複数の超音波放射源であって、そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るようにそのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器であって、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の超音波放射エネルギー検出器と、(c)超音波放射エネルギーを放出し、受け取るように、前記複数の超音波放射源および前記複数の超音波放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の超音波放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例45〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように適合された複数の超音波放射源であって、そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るようにそのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器であって、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の超音波放射エネルギー検出器と、(c)超音波放射エネルギーを放出し、受け取るために、前記複数の超音波放射源および前記複数の超音波放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の超音波放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと を備える装置。
〈実施形態例46〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で超音波放射エネルギーを放出するように適合された複数の超音波放射源であって、そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取るようにそのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器であって、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の超音波放射エネルギー検出器と、(c)超音波放射エネルギーを放出し、受け取るために、前記複数の超音波放射源および前記複数の超音波放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の超音波放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるように構成されたニューラル・ネットとを備える装置。
〈実施形態例47〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、 (a)そのような対象物を照射するように配置された放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置される複数の放射エネルギー検出器を使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取り、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップと を含む方法。
〈実施形態例48〉 前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付ける前記ステップが、エキスパート・システムを使用することによって実施される実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例49〉 前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付ける前記ステップが、ニューラル・ネットを使用することによって実施される実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例50〉 前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築する前記ステップが、(a)前記データに基づいて前記調査中の対象物の3次元形状を推定するサブステップと、(b)前記3次元形状に基づいて、かつ少なくとも1つの生理学的特徴から導出される生理学的データに基づいて、前記調査中の対象物の推定多次元フィールド・レンダリングを構築するサブステップと、(c)前記調査中の対象物の前記推定多次元フィールド・レンダリングによって生成されることになる推定放射エネルギーデータを計算するサブステップと、(d)前記データと前記推定放射エネルギーデータの差をノイズの所定のレベルに対して試験するサブステップと、(e)前記調査中の対象物の新たな推定多次元フィールド・レンダリングを計算するために、前記生理学的データを調節するサブステップと、(f)前記データと前記推定放射エネルギーデータの差が、ノイズの所定のレベルよりも低くなるまで、サブステップ(c)と(e)を反復するサブステップとを含む実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例51〉 前記放射エネルギーが超音波放射エネルギーである実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例52〉 前記調査中の対象物が、複数の動物または人の組織である実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例53〉 前記複数の動物または人の組織が人の胸部である実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例54〉 前記複数の動物または人の組織が人の前立腺である実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例55〉 前記複数の動物または人の組織が人の肺である実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例56〉 前記複数の動物または人の組織が人の消化管の1セクションである実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例57〉 前記複数の動物または人の組織が人の肝臓である実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例58〉 前記多次元フィールド・レンダリングが、前記複数の動物または人の組織によって占有される複数のボリューム要素に関する音の速さおよび吸音を備える実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例59〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の動物または人の組織を分類するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例60〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の動物または人の組織内の閉じたボリュームを識別するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例61〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記閉じたボリュームの準フラクタル次元を決定するステップを含む実施形態例60に記載の方法。
〈実施形態例62〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の動物または人の組織内の血管形成を識別するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例63〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の動物または人の組織に接触するように振動源を適用するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例64〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の組織内のマイクロ石灰化を識別するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例65〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて前記複数の組織の電気インピーダンスを識別するステップを含む実施形態例52に記載の方法。
〈実施形態例66〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングを格納するステップを含む実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例67〉 前記多次元フィールド・レンダリングを格納する前記ステップが、損失のない圧縮によって実施される実施形態例66に記載の方法。
〈実施形態例68〉 さらに、前記多次元フィールド・レンダリングを、前記調査中の対象物の先に格納されている多次元フィールド・レンダリングと比較するステップを含む実施形態例47に記載の方法。
〈実施形態例69〉前記多次元フィールド・レンダリングを、前記調査中の対象物の先に格納されている多次元フィールド・レンダリングと比較する前記ステップが、前記先に格納された多次元フィールド・レンダリングを前記多次元フィールド・レンダリングにモーフィングするサブステップを含む実施形態例68に記載の方法。
〈実施形態例70〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような対象物を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数の超音波放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを超音波照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器を使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップ とを含む方法。
〈実施形態例71〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような対象物を照射するように配置された複数のデバイスを使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置された複数のデバイスを使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取り、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数のデバイスによって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップと を含む方法。
〈実施形態例72〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような対象物を照射するように配置された放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数の放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置された少なくとも5000個の放射エネルギー検出器を使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取り、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記少なくとも5000個の放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップと を含む方法。
〈実施形態例73〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような対象物を超音波照射するように配置された複数の超音波デバイスを使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数の超音波放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを超音波照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置された複数の超音波デバイスを使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の超音波デバイスによって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップ とを含む方法。
〈実施形態例74〉 人の胸部内部の1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような人の胸部を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での超音波放射エネルギーによって、人の胸部内部のボリュームを超音波照射するステップと、(b)そのような人の胸部に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器を使用して、人の胸部内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップ とを含む方法。
〈実施形態例75〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での超音波放射エネルギーによって、人または動物の組織内部のボリュームを超音波照射するステップと、(b)そのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器を使用して、人または動物の組織内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、 (c)前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、 (d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるステップとを含む方法。
〈実施形態例76〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での超音波放射エネルギーによって、人または動物の組織内部のボリュームを超音波照射するステップと、(b)そのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器を使用して、人または動物の組織内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを分析するためにエキスパート・システムを使用して、前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるステップ とを含む方法。
〈実施形態例77〉 人または動物の組織内部の癌を検出し、特徴付けるための方法であって、(a)そのような人または動物の組織を超音波照射するように配置された複数の超音波放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での超音波放射エネルギーによって、人または動物の組織内部のボリュームを超音波照射するステップと、 (b)そのような人または動物の組織に対して配置された複数の超音波放射エネルギー検出器を使用して、人または動物の組織内部の前記ボリュームによって散乱された超音波放射エネルギーを受け取り、受け取られた超音波放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の超音波放射エネルギー検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを分析するためにニューラル・ネットを使用して、前記ボリューム内部のそのような癌を検出し、特徴付けるステップ とを含む方法。
〈実施形態例78〉調査中の対象物内部の1つまたは複数の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるための装置であって、(a)そのような対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数で放射エネルギーを放出するように適合された放射源であって、そのような対象物に放射するように配置された放射源と、(b)前記ボリュームによって散乱された放射エネルギーを受け取るようにそのような対象物に関連づけて配置された複数の放射エネルギー検出器であって、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供する複数の検出器と、(c)放射エネルギーを放出し、受け取るために、前記放射源および前記複数の放射エネルギー検出器を制御する手段と、(d)前記複数の放射エネルギー検出器に結合され、前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するように、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるように構成されたデバイスとを備える装置。
〈実施形態例79〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるための方法であって、 (a)そのような対象物の照射するように配置された放射源を使用して、所定の周波数範囲内で、または所定の周波数での放射エネルギーによって、調査中の対象物内部のボリュームを照射するステップと、(b)そのような対象物に対して配置された複数の放射エネルギー検出器を使用して、対象物内部の前記ボリュームによって散乱される放射エネルギーを受け取り、受け取られた放射エネルギーに対応するデータを提供するステップと、(c)前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して、前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築するステップと、(d)前記ボリュームの前記多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるステップと を含む方法。
〈実施形態例80〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の医療病理を破壊する方法であって、(a)調査中の対象物のボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築する、または検索するステップと、(b)前記多次元フィールド・レンダリングに基づいてそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるステップと、(c)そのような1つまたは複数の医療病理を破壊する、またはなくするために、高強度合焦放射エネルギーによって、そのような1つまたは複数の医療病理を照射するステップと を含む方法。
〈実施形態例81〉 調査中の対象物内部の1つまたは複数の特異なフィーチャを破壊する方法であって、(a)調査中の対象物のボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築する、または検索するステップと、(b)前記多次元フィールド・レンダリングに基づいてそのような1つまたは複数の特異なフィーチャを検出し、特徴付けるステップと、(b)そのような1つまたは複数の医療病理を破壊する、またはなくするために、高強度合焦放射エネルギーによって、そのような1つまたは複数の特異なフィーチャを照射するステップと を含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部イメージング・デバイスの制御方法であって、
(a)人間の胸部に超音波照射可能なように配置された複数の超音波照射源を制御して、所定の周波数範囲内の超音波を人間の胸部内のボリュームに照射し、
(b)人間の胸部の少なくとも一部分の回りに配置された複数の超音波検出器を制御して、前記ボリュームによって散乱された超音波を受信するとともに該受信した超音波に対応するデータを提供し、
(c)前記複数の超音波検出器によって提供されたデータを使用して、多次元フィールド・レンダリングを構成し、
(d)前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを使用して、前記ボリューム内の医療病理を検出するとともに特徴付ける
ことを含む方法。
【請求項2】
前記多次元フィールド・レンダリングが、複数の生体組織によって占められた複数のボリューム要素の音速度および吸音を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、複数の生体組織内での閉じたボリュームを識別すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、閉じたボリューム内の準フラクタル次元を決定すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、前記胸部の脈管疾患を識別すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、複数の生体組織に接触する振動源を適用すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、前記胸部のマイクロ石灰化を識別すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多次元フィールド・レンダリングに基づいて、前記胸部の電気インピーダンスを識別すること、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)対象物内部のボリュームに、所定の周波数範囲内で、超音波放射を行うように設けられた複数の放射源と、
(b)前記ボリュームによって散乱された超音波を受け取ることができるように、前記対象物の少なくとも一部の回りに配置された複数の超音波検出器であって、受け取られた超音波に対応するデータを提供することが可能な複数の検出器と、
(c)超音波を放出し、受け取るように、前記複数の超音波放射源および前記複数の超音波検出器を制御する手段と、
(d)前記複数の超音波検出器に結合され、前記複数の検出器によって提供されるデータを使用して前記ボリュームの多次元フィールド・レンダリングを構築し、かつ前記ボリューム内部のそのような1つまたは複数の医療病理を検出し、特徴付けるように構成されたデバイスと
を備える装置。
【請求項10】
前記複数の放射源が複数の超音波源であり、前記複数の放射エネルギー検出器が複数の超音波検出器である請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の超音波源および前記複数の超音波検出器が、1つの超音波源および1つの超音波検出器として両方に使用される少なくとも1つのデバイスを含む請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の放射エネルギー検出器が、シリコン・マイクロ電子機械システム検出器である請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の放射エネルギー検出器が、圧電検出器である請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の放射エネルギー検出器が、変形可能誘電体検出器である請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の放射源が、同一の位相の放射エネルギーを生成する請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記複数の放射源が、異なる位相の放射エネルギーを生成する請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、長円体アレイとして構成された請求項9に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、半球体アレイとして構成された請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記複数の放射源および前記複数の放射エネルギー検出器が、円筒形アレイとして構成された請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−29679(P2010−29679A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223314(P2009−223314)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2000−536290(P2000−536290)の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(500441024)バーバラ・アン・カーマノス・キャンサー・インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】