説明

病的障害の治療および/または予防において使用するための抗LPS強化免疫グロブリン製剤

本発明は、病的障害、例えば慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の合併症または障害の進行を治療、遅延または防止するための、抗LPS抗体で強化された調製物、例えば、ほ乳類初乳または鳥卵由来のもの、および任意でさらに疾患関連抗原に対する抗体、初乳、乳または乳製品成分/複数可および任意のアジュバントの使用に関する。本発明はさらに、抗LPS強化抗体調製物および病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識する抗体の組み合わせを含む複合組成物ならびに免疫関連障害の治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病的障害、例えば慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の合併症または障害の進行を治療、遅延または防止するための、抗LPS抗体で強化された調製物、例えば、ほ乳類初乳または鳥卵由来のもの、および任意でさらに疾患関連抗原に対する抗体、初乳、乳または乳製品成分/複数可および任意のアジュバントの使用に関する。本発明はさらに、抗LPS強化抗体調製物および病的障害に対し特異的な少なくとも1つの抗原を認識する抗体の組み合わせを含む複合組成物ならびに免疫関連障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願を通して言及される出版物はすべて参照により全体が本明細書に組み込まれ、本明細書で引用されるすべての参考文献が含まれる。
【0003】
慢性肝炎は少なくとも6ヶ月続く肝臓の炎症である。慢性肝炎は、急性肝炎よりずっと一般的ではないが、何年も、さらには何十年も持続し得る。ほとんどの人々においては、きわめて軽度であり、著しい肝損傷を引き起こさない。しかしながら、人によっては、継続する炎症が徐々に肝臓を損傷し、ついには肝硬変(肝臓の重傷瘢痕)、肝不全、時として肝癌となる。慢性肝炎は通常、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)および薬物により引き起こされる。
【0004】
慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、宿主が有効な免疫応答を確立できないことにより特徴づけられる。同時に、慢性HCV感染は、持続性の異常に高レベルの、免疫活性化を伴う。この活性化は、肝損傷および疾患進行の一因となる。慢性HCV感染患者は、非常に様々な臨床経過を有し、肝硬変を発症するものもあれば、肝疾患の進行を示さないものある。
【0005】
同時エタノール消費を含むいくつかの危険因子は、加速型肝損傷および肝硬変への進行と関連づけられている。慢性HCVおよびエタノール消費を両方有する患者は、肝疾患の加速された進行を有することが見いだされている。これは、LPSのレベルの増加と関連づけられている[Bedogni, G. Am. J. Gastroenterol. 103(9): 2248-53
(2008)]。興味深いことに、最近の研究は、HCV非構造タンパク質NS5AはToll様受容体(TLR)4を活性化し、これはまた、LPSによっても活性化されることを示している。[Machida, K. et al. Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 106(5):1548-53 (2009]。
【0006】
LPSは肝疾患の進行だけでなく、慢性感染の永続化と関連し得る。自己限定感染患者に比べ、慢性HCV患者由来の単球は、HCVコアタンパク質またはLPSに応答して、著しくより多くのIL−10およびTNFαを産生する[Martin-Blondel,
G. et al. J. Viral. Hepatitis (March 11,
2009)]。このように、消化管微生物産物のトランスロケーション、免疫活性化および肝疾患の進行は密接に関係するように見えるが、因果関係の証拠は欠如している。さらに、LPSレベルとウイルス排除の間には関係があるようにみえるが、これは解明する必要がある。このように、これらの関係を明らかにすることを目的とする研究が必要である。微生物トランスロケーションが免疫活性化および肝疾患の進行を推進するなら、微生物トランスロケーションを減少させ、または防止する戦略が免疫活性化、よって慢性HCV感染の自然歴に対し著しい影響を有し得る。
【0007】
突発性細菌性腹膜炎(SBP)は慢性肝疾患、例えば肝硬変、門脈圧亢進症および腹水症の一般的な重症の合併症である。SBPは30%までの患者で起こり、25%までの院内死亡率を伴う。よどんだ免疫除去された腹水中への細菌トランスロケーションは、SBPの主な発症機序であると考えられる。穿刺術および薬効範囲が広い抗生物質療法が急性感染の有効な治療を構成するが、多くの患者が抗生物質療法に対し益々耐性をもつようになっている病原体によるSBPの再発性エピソードに苦しんでいる[Song,
K.H. et al. BMC Infect Dis. 9(1): 41 (2009)]。慢性抗生物質を使用するSBP予防のための方法は、議論の余地があり、抗生物質耐性種の出現と関連する[Cohen,
M.J. et al. Cochrane Database Syst Rev. 2: CDO04791 (2009)]。
【0008】
近年、細菌トランスロケーションと肝硬変の合併症の発生率の間の関連の増加が見いだされている。血清または内毒素血中の細菌産物(リボソーム16s RNA)のいずれか(LPSまたはLBP)のレベルは、静脈瘤出血、肝腎症候群および肝硬変患者において見られる運動過多性循環状態と相関されている[El-Naggar,
M.M. 'et al. J. Med. Microbiol. 57(Pt 12):1533-8 (2008)]。
【0009】
数十年間、家畜の乳腺を介する免疫源特異抗体の分泌の増加を得るために様々な試みがなされてきた。そのような試みは、乳を介する大量の免疫源特異抗体の産生を目的としている。しかしながら、成熟乳中の抗体レベルは、初乳で達成することができるものに比べ、依然として低いまま(約一桁)である。
【0010】
初乳(最初の乳としても知られている)は、妊娠後期および生後数日に乳腺から産生される乳の形態である。ヒトでは、高濃度の栄養分および抗体を有するが、量が少ない。初乳は、糖質、タンパク質、無機塩、ビタミンおよび免疫グロブリンが高い。初乳はまた、様々な浮遊細胞、例えば顆粒およびストローマ細胞、好中球、単球/マクロファージおよびリンパ球を含み、ならびに成長因子、ホルモンおよびサイトカインを含む。
【0011】
白血球もまた、初乳中多数存在し、ウイルスおよび細菌に対する保護を可能にする。初乳白血球は、とりわけ腸の免疫に必須である抗体および免疫グロブリンクラスに関し、新生子ウシの受動免疫を増強する。
【0012】
初乳で見られる多数の分泌型抗体は新生児の喉、肺、および腸における粘膜の保護を助ける。ウシ初乳(BC)は3つの主クラスの免疫グロブリン、すなわちIgG、IgMおよびIgAを含む。
【0013】
上記で示した通り、初乳は乳腺の特徴的な生理および機能状態から生じるきわめて独特な産物である。反芻動物では、初乳と成熟乳の間の主要な組成差は、非常に高い量の生理活性成分、例えばラクトフェリンおよび免疫グロブリンであり[Tarbell,
K.V. et al. J. Exp. Med. 199:1467-77 (2004); Bluestone, J.A. and Tang, Q. J.
Autoimmun 24:55-62 (2005); Putnam, A.l. et al J.Autoimmun. 24:55-62 (2005)]、そのうち、IgGクラスが80〜90%を占める。
【0014】
特異抗原によるウシなどの動物の免疫化により、免疫応答の調節、よって免疫関連障害の治療において使用され得る特異抗体の産生および回収が可能になる。したがって、この方法は、抗原特異抗体および免疫アジュバントを生成するための簡便で安全な手段として機能する。
【0015】
本発明者らの幾人かによるいくつかの以前の特許および特許出願は、感染症の受動的処置のためのウシ初乳から得られた特定の細菌病原体抗体の使用を記載した。例えば、本発明者らの幾人かによるWO04/078209号は、1つ以上の腸内細菌、特定的には、グラム陰性細菌の細胞壁抗原を含むワクチンで宿主動物を免疫化することにより調製された、胃腸障害の治療または予防のための化合物および組成物を記載する。生成された高免疫物質は、経口投与のための錠剤形態である。WO03/097094号は、風媒性病原菌の存在に起因する症状の防止を目的とする鼻腔内投与のための、ほ乳類初乳および初乳抽出物とコンジュゲートされた、抗体(全IgG)、またはF(ab’)2抗体断片の生成における、高免疫初乳の使用を記載する。
【0016】
粘膜免疫寛容は、毒性の欠如、投与の容易さ、および抗原特異作用機序のために、自己免疫および炎症疾患の治療のための魅力的なアプローチとされている[Wershil,
B.K. and Furuta, G.T. J. Allergy Clin. Immunol. 121:S380-3; quiz S415 (2008);
Faria, A.M. and Weiner, H.L. Clin. Dev. Immunol. 13:143-57 (2006)]。このように、主な試みは、経口および経鼻投与に好適な安定な初乳由来の生成物を生成するためになされた。例えば、本発明者らの幾人かによるWO95/08562号は、抗体を豊富に含む初乳から高純度免疫グロブリンを得る方法および活性の実質的な損失なしでこれらの初乳−抗体を錠剤形態に圧縮する可能性を記載する。特異抗体は毒素原性細菌、例えば大腸菌、サルモネラ菌および赤痢菌に対する特異抗原でほ乳類を免疫化することにより得ることができる。本発明者らの幾人かによるWO06/053383号は、高免疫初乳、ラクトフェリンまたはラクトフェリシンの生理活性剤組成物に、様々な胃pH値下での安定性を付与するカルボン酸およびアルカリ化部分を記載する。最後に、本発明者らの幾人かによるWO03/080082号は、生理活性物質ならびにほ乳類初乳および初乳抽出物の混合物を形成させることを含む、不安定な生理活性物質、好ましくは免疫グロブリンまたはそれらの断片あるいは酵素の胃環境内での生存率を改善する方法を記載する。このコンジュゲーションは抗体または抗体断片を酵素または低pH条件により引き起こされるタンパク質分解から保護し、胃またはルーメンあるいは他の不適な環境でそれらの機能を保持する。
【0017】
腸粘膜は身体の最も大きなリンパ器官である。これは、栄養分吸収をしながら消化管内容物に対する物理的および免疫学的障壁を維持するという2つの役割に対処する。絶え間ない抗原刺激に関わらず、通常は炎症が抑制される。以下の2つの重要な概念が、初乳によるウイルス疾患およびその合併症の治療に関連する:粘膜による微生物トランスロケーション、および「経口免疫寛容」と呼ばれる、疾患抗原の経口栄養による増強された免疫調節。
【0018】
粘膜による微生物トランスロケーションの増加:これは、病因における新しい概念である。LPSおよび細菌DNAの存在により定量される、より高い微生物トランスロケーションのレベルは、免疫性疲労および自己免疫損傷の一因となる慢性免疫活性化状態の中心となる。
【0019】
腸粘膜を介する刺激は免疫寛容誘発免疫応答を引き起こす傾向がある。この特徴を、自己抗原に対する寛容性を誘導するように、よって自己免疫を抑制するように好都合に使用することができ得る。実際、「経口免疫寛容」は、異なる疾患モデルにおいて、経口により摂取させた抗原に対する免疫応答を効果的に減少させることが示されている[Safadi,
R. et al. Am. J. Gastroenterol. 98(11): 2505-15 (2003)]。
【0020】
ウシ由来の初乳調製物は、毒素による腸管病状を治療する際に使用することができることが以前から、示されている。経口により、腸管毒素原性大腸菌濃縮物に曝露された10人のボランティアの研究では、対応する大腸菌株でウシを免疫化することにより得られたウシ抗体濃縮物の投与により、生成物を受けた10人すべての参加者において下痢の発症が防止され;対照的に、対照10人中9人が下痢を発症した[Tacket,
C.O. et al. N. Engl. J. Med. 318(19): 1240-3 (1988)]。別の研究では、腸管毒素原性大腸菌コロニー形成因子に対する乳由来の抗体の投与により、プラセボが摂取させた10人中7人の被験者に比べ、15人中14人の被件者が下痢から保護された[Freedman,
D.J. et al. J. Infect. Dis. 177(3): 662-7 (1998)]。
【0021】
同様の病因を有する別の疾患は、偽膜性大腸炎である。ウシをクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)不活性化毒素および全細胞死滅クロストリジウム・ディフィシルで免疫化することにより得られた免疫乳清タンパク質の効果を評価する研究は、クロストリジウム・ディフィシル疾患の再発を防止することを示した。16人の患者が、2週間、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎の確認されたエピソードに対する標準治療後に、生成物を摂取した。一例を除くすべての例で、クロストリジウム・ディフィシル毒素が便から消失し、333日のメジアン追跡期間後、再発はなかった[van
Dissel, J.T. et al. J. Med. Microbiol. 54(2):
197-205 (2005)].
【0022】
まとめると、これらの観察は、ウシ由来の初乳調製物は、経口により摂取された場合、生物学的に活性な特異抗体濃縮物を腸管腔に送達し、その機序により消化管で様々な型の細菌毒素をブロックすることができ得ることを示唆する。
【0023】
微生物トランスロケーションは免疫活性化および肝疾患の進行を推進するので、微生物トランスロケーションを減少させ、または防止するための戦略は、免疫活性化、よって慢性HCV感染の自然歴に、著しい影響を有し得る。本発明は以下、高レベルの抗体を含む、免疫化ウシ由来のウシ初乳粉末(BPC)調製物の、微生物産物、例えばLPSに応答する免疫活性化を減少させることができる免疫調節剤としての使用を明示する。いずれの理論にも縛られないが、本発明者らは、BPC抗体の微生物抗原への結合により、それらの血流へのトランスロケーションが防止され、よって、免疫応答が制限され得ると仮定する。免疫系へのこれらの効果により、免疫系が関係する感染症の治療のためにそのような初乳調製物を使用することができる。より具体的には、本発明は慢性肝疾患の治療および寛解における、高濃度の抗LPS抗体を含む初乳由来の調製物の使用を提供する。
【0024】
微生物トランスロケーションはまた、異なる肝臓障害、例えば、ウイルス媒介、薬物媒介、非アルコール性脂肪性肝炎および任意の他の肝障害における肝臓炎症の変化と関連する。微生物トランスロケーションはまた、インスリン抵抗性、2型糖尿病、肥満および体重過多と関連し得る。本発明により示されるように、そのようなトランスロケーションの防止は、本発明の抗LPS強化初乳を、任意で制御性T細胞または任意の他の免疫系成分の制御と共に用い、抗LPS強化初乳の、疾患特異抗原を認識する抗体で強化された初乳調製物、例えば、抗インスリン強化初乳との組み合わせを使用して、達成され得る。このように、本発明はさらに、任意の急性または慢性肝疾患、糖尿病およびそれらと関連する任意の合併症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、および肥満の治療のための組成物、複合組成物および方法を提供する。
【0025】
したがって、本発明の目的は組成物での初乳−または鳥卵由来の抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用および、慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の合併症または障害の進行を治療、遅延、または防止する方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、抗LPS抗体強化初乳および病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識する抗体の組み合わせを含む複合組成物、ならびに免疫関連障害の治療における、それらの使用を提供することである。
【0027】
本発明のこれらのおよび他の目的は、説明が進むにつれ、より明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0028】
1つの態様では、本発明は病的障害の治療および/または予防において使用するための抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0029】
1つの実施形態では、病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。別の実施形態では、病的障害は肝損傷である。
【0030】
別の実施形態では、病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびこれと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である。
【0031】
また、病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択され得る。
【0032】
別の実施形態では、組成物はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含む。さらなる免疫グロブリン製剤は、初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0033】
1つの実施形態では、組成物は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する。
【0034】
別の実施形態では、組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、ここで、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0035】
別の実施形態では、組成物はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防のためのものである。別の実施形態では、組成物は、糖尿病の治療および/または予防、耐糖能障害の治療、例えば耐糖能の減少、血清インスリンレベルの減少、肝臓トリグリセリドレベルの減少、もしくはコレステロールレベルの減少のためのものである。
【0036】
1つの実施形態では、組成物は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0037】
組成物はさらに、治療薬、担体もしくはアジュバントおよび/または非高免疫初乳を含み得る。
【0038】
組成物は、経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与するために製剤化され得る。
【0039】
1つの実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらに任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0040】
別の実施形態では、組成物は微生物トランスロケーションを阻止する。別の実施形態では組成物は微生物トランスロケーションを阻止し、それにより免疫活性化を調節する。
【0041】
別の態様では、本発明は対象において免疫寛容を調節するための、または、別の態様では、対象において経口免疫寛容を調節するための、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。
【0043】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0044】
別の態様では、本発明は病的障害の治療および/または予防のための薬剤の製造における、抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用を提供する。
【0045】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0046】
1つの実施形態では、病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。
【0047】
別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。
【0048】
別の実施形態では、薬剤は、肝損傷の治療および/または予防のためのものである。
【0049】
別の実施形態では、病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である。また、病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される。
【0050】
薬剤はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含み得る。さらなる免疫グロブリン製剤は、初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0051】
1つの実施形態では、薬剤は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する。
【0052】
別の実施形態では、薬剤は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、ここで、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0053】
別の実施形態では、薬剤はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性 脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防、糖尿病の治療および/または予防、耐糖能障害の治療、例えば耐糖能の減少、血清インスリンレベルの減少、肝臓トリグリセリドレベルの減少、もしくはコレステロールレベルの減少のためのものである。
【0054】
1つの実施形態では、薬剤は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0055】
薬剤はさらに、治療薬、担体もしくはアジュバントおよび/または非高免疫初乳を含み得る。
【0056】
1つの実施形態では、薬剤は、経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与するために製剤化される。
【0057】
別の実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0058】
別の実施形態では、組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少させ、または阻止し、それにより免疫活性化を調節する。
【0059】
別の態様では、本発明は対象において免疫寛容を調節するための薬剤、または、別の実施形態では、対象において経口免疫寛容を調節するための薬剤の製造における、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供した。
【0060】
別の態様では、本発明は、肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、または脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための薬剤の製造における、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供する。
【0061】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0062】
1つの態様では、本発明は、治療の必要な対象に治療的有効量の、抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む病的障害を治療および/または予防するための方法を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0063】
1つの実施形態では、病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。
【0064】
別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。
【0065】
別の実施形態では、病的障害は、肝損傷である。
【0066】
別の実施形態では、病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である。また、病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される。
【0067】
別の実施形態では、組成物はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含む。さらなる免疫グロブリン製剤は、初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0068】
別の実施形態では、組成物は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する。
【0069】
別の実施形態では、組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、ここで、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0070】
別の実施形態では、病的障害はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方である。
【0071】
別の実施形態では、病的障害は糖尿病である。別の実施形態では、病的障害は耐糖能障害である。
【0072】
別の実施形態では、方法は、耐糖能を減少させ、血清インスリンレベルを減少させ、肝臓トリグリセリドレベルを減少させ、またはコレステロールレベルを減少させる。
【0073】
別の実施形態では、方法は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0074】
別の実施形態では、組成物はさらに、非高免疫初乳および/または治療薬、担体もしくはアジュバントを含む。
【0075】
組成物は、経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与され得る。
【0076】
別の実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0077】
別の実施形態では、方法は粘膜による微生物トランスロケーションを減少させ、または阻止する。別の実施形態では、方法は粘膜による微生物トランスロケーションを減少させ、または阻止し、それにより免疫活性化を調節する。
【0078】
別の態様では、本発明は治療の必要な対象に、治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象において免疫寛容を調節するための方法を提供する。また、方法は経口免疫寛容を調節するためのものとすることができる。
【0079】
対象の肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための方法は、治療の必要な対象に、治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む。別の実施形態では、方法は、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を減少させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、または脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するためのものとすることができる。
【0080】
別の態様では、本発明は、病的障害を治療および予防するための組成物を提供する。本発明の組成物は活性成分として、ほ乳類抗リポ多糖(抗LPS)強化初乳由来免疫グロブリン製剤および任意で別の初乳、乳または乳製品成分/複数可、および任意のアジュバント/複数可を含む。免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。任意的な実施形態によれば、本発明の組成物はさらに、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を活性化または阻止する初乳由来免疫グロブリン製剤を含み得る。そのような複合組成物は任意でさらに、追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含み得る。
【0081】
このように、1つの特定の実施形態によれば、本発明は活性成分としてほ乳類抗リポ多糖(抗LPS)強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。そのような組成物は、特に、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症の治療、防止および予防に適用可能であり、任意で前記組成物はさらに、追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含む。
【0082】
別の任意的な実施形態によれば、本発明は、抗LPS強化免疫グロブリン製剤を、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの初乳−またはトリ−由来の免疫グロブリン製剤との組み合わせを含む複合組成物を提供する。そのような複合組成物は、任意でさらに追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含み得る。これらの複合組成物は自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、例えば2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多のいずれか1つを治療するために使用され得る。
【0083】
別の態様では、本発明は、病的障害の治療および予防のための組成物の製造における、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤および任意で、病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識する初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供する。免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合することに注意すべきである。任意的な実施形態によれば、本発明は、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識する免疫グロブリンを含む少なくとも1つ免疫グロブリン製剤と、さらに組み合わせた、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用を提供する。そのような複合組成物は、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を活性化または阻止する免疫調節組成物として使用され得る。
【0084】
さらなる態様では、本発明は病的障害の治療および/または予防のための方法を提供する。本発明の方法は、治療の必要な対象に治療的有効量のほ乳類初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤またはこれを含む組成物を投与する工程を含む。免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合することに注意すべきである。そのような方法は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症の治療、防止および予防のために使用され得る。任意的な実施形態によれば、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤はさらに、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を活性化または阻止する少なくとも1つ免疫グロブリンと組み合わせることができる。この方法は、特定的には免疫関連障害を治療するために適用され得る。本発明の方法により使用される組成物および複合組成物はまた、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害例えば2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多のいずれか1つを治療するために適用され得ることが、特に認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は肝臓酵素を減少させる。値は平均±標準偏差である。AST;アスパラギン酸トランスアミナーゼ、およびALT;アラニンアミノトランスフェラーゼ。
【図2】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は肝臓においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図3】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、肝臓においてCD25+CD4+LAP−、CD45+LAP+およびCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる。値は平均である。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図4】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、脾臓においてCD45+LAP+およびCD8+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図5】経口T−IgG−初乳はOb/Obマウスにおいて血清インスリンを減少させる。値は平均±標準偏差である。
【図6】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、Ob/Obマウスにおいて耐糖能を減少させる。
【図7】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、Ob/Obマウスにおいて肝損傷を減少させる。値は平均±標準偏差である。AST;アスパラギン酸トランスアミナーゼ、およびALT;アラニンアミノトランスフェラーゼ。
【図8】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、Ob/Obマウスにおいて肝臓トリグリセリド(TGs)を減少させる。値は平均±標準偏差である。
【図9】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、脾臓においてCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図10】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、脾臓においてCD8+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる。値は平均±標準偏差である。
【図11】抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、脾臓においてCD8+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる。FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図12】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪組織においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図13】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪組織においてCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図14】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、間質血管細胞(前脂肪細胞を含む)において、CD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図15】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、間質血管細胞(前脂肪細胞を含む)において、CD4+CD25+LAP+リンパ球の発現を増加させる。 A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット
【図16】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はOb/Obマウスにおいて肝臓酵素を減少させる。値は平均±標準偏差である。AST;アスパラギン酸トランスアミナーゼ、およびALT;アラニンアミノトランスフェラーゼ。
【図17】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、Ob/Obマウスにおいて総コレステロールを減少させる。値は平均±標準偏差である。
【図18】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はOb/Obマウスにおいて肝臓TGを減少させる。T−IgGおよびHIBC初乳の経口投与はOb/Obマウスにおいて肝臓TGを減少される。値は平均±標準偏差である。減少は、D、E、Fに対して群Aで有意であった(p<0.05)。
【図19】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はOb/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させた。A.1μg、1mg、3mgのT−IgGを、100μgHIBCと共に経口投与すると、Ob/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞が減少した。リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B:1μgおよび100μgのT−IgGの経口投与は、Ob/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させた。FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図20】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はOb/Obマウスの肝臓においてCD4+CD25+LAP−/LAP+細胞を増加させる。A;リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B;FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図21】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はCD25+LAP−肝臓リンパ球の変化を誘導する。T−IgGおよびHIBC−初乳の経口投与は、CD25+LAP−肝臓リンパ球の変化を誘導する。FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図22】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はCD25+LAP+脾臓リンパ球を減少させる。A.T−IgGおよびHIBC−初乳経口投与は、CD25+LAP+脾臓リンパ球を減少させる。リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B:FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図23】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、CD4+CD25+LAP−脾臓リンパ球を増加させる。A.1および3mgのT−IgGならびに100mgのHIBC−初乳の経口投与は、CD4+CD25+LAP−脾臓リンパ球を増加させる。
【図24】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪組織においてCD4+CD25+を増加させる。A.T−IgG−初乳の経口投与は脂肪組織においてCD4+CD25+を増加させる。リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。
【図25】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪細胞においてCD4+CD25+を増加させる。A.100mgのT−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞においてCD4+CD25+を増加させる。リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B.1μg、100mgおよび1mgのT−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞においてCD4+CD25+を増加させる。FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【図26】経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪細胞においてCD3+LAP+を増加させる。A.T−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞においてCD3+LAP+を増加させる。リンパ球上でのマーカーの平均表面発現。値は平均±標準偏差である。B:FACS分析から得られた代表的なドットブロット。
【発明を実施するための形態】
【0086】
生産的免疫応答は自然および獲得免疫細胞の両方に影響を有する正および負のシグナルの有効な統合に起因する。正のシグナルが優勢である場合、細胞活性化および炎症促進性応答が起き、病原微生物、ウイルスならびに形質転換された細胞が排除される。そのような生産的な刺激がない場合、細胞活性化はブロックされ、活性抗炎症性応答が起こりえる。この二元系の調節は、サイトカインの作用、下流シグナル制御経路および細胞−細胞接触により起こる。これらのしきい値の動揺は、病原微生物を処理するには不十分であるか、寛容の損失および自己免疫応答の誘導のいずれかとなる異常応答となり得る。本発明は、免疫関連障害の治療のために活性化様式で作用し得る抗リポ多糖(LPS)抗体が強化された初乳由来免疫グロブリン製剤の免疫調節効果を示す。
【0087】
制御性T細胞(Treg)は、獲得免疫系の重要な免疫調節成分としてますます認識されている。免疫調節異常は、慢性インスリン非感受性に対する誘因として慢性炎症に至らしめる可能性がある。本発明は特定の実施例において、初乳由来抗LPS抗体の経口投与は脂肪組織および脂肪組織関連間質血管系においてTregを促進することを示す。これらの変化は、Ob/Obマウスモデルにおいてメタボリックシンドロームおよび肝損傷の軽減を伴う。したがって、本発明は、タボリックシンドロームの軽減および治療のための新規治療組成物を提供する。
【0088】
本発明者らは、経口投与された抗LPS抗体が、肝臓、脾臓、脂肪組織およびSV(間質血管細胞)においてTregを促進したことを示している。CD25+LAP+T細胞、CD4+CD25+T細胞、CD4+CD25+LAP−T細胞、CD45+LAP+TおよびCD3+LAP+T細胞が肝臓において誘導される。CD45+LAP+T細胞、CD8+LAP+T細胞、CD3+LAP+T、CD8+CD25+T細胞が脾臓において誘導される。CD4+CD25+T細胞、CD3+LAP+T細胞、CD4+CD25+LAP−T細胞が脂肪組織において誘導される。CD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25+LAP+T細胞が間質血管細胞において誘導され、CD3+NK1.1+細胞が肝臓において、CD25+LAP−T細胞が肝臓において減少される。
【0089】
脂肪組織の様々な構成物、例えば成熟脂肪細胞および間質血管細胞は別々の機能を有する。それらは、まとめてアディポカインと呼ばれる異なる種類の生理活性分子を発現し、分泌する。アディポカイン分泌パターンの変化は、2型糖尿病に対する主な危険因子である肥満およびインスリン抵抗性を特徴づける。肥満の、および痩せたズッカーラット由来の間質血管細胞では、局所性の遺伝子型差異が存在する[Turkenkopf, I. J. et al. Int. J. Obes. 12:515-24 (1988)]。DNAマイクロアレイを使用する遺伝子発現プロファイリングは、脂肪組織、脂肪細胞、および間質血管細胞間の違いを示した[Permana (2008) 前記]。本発明はさらに、これらの組織におけるTregの分布はメタボリックシンドロームおよび肝疾患において重要であることを示して、この概念を支持する。
【0090】
本発明はさらに、抗LPS抗体の投与による脂肪組織およびSVにおけるTregの促進は、インスリン抵抗性軽減を伴うことを示す。これは、糖負荷試験により証明される。さらに、肝臓酵素の減少により明らかなように、炎症性肝損傷が本発明により軽減される。
【0091】
上で記載されるように、本発明は抗LPS抗体で強化された初乳の経口投与は脂肪組織および脂肪組織関連間質血管系においてTregを促進する手段として機能することができることを示す。
【0092】
本発明はまた、Tregの分布に対する効果による初乳由来成分と抗LPS抗体との間の相乗作用を提供する。いくつかのタンパク質が生体防御に関与するものとして母乳中で特定されており[Kahn, S. E. et al. Nature 444:840-6 (2006)]、それには自然免疫系の高濃度メディエーターが含まれる[Poggi, M. et al. Diabetologia (2009)]。これらのメディエーターの中には、複数のデフェンシンタンパク質、スフィンゴ脂質、オステオポンチン、エキソソーム、TLR、カテリシジン、好酸球由来ニューロトキシン、および高移動度グループボックスタンパク質1、ならびにLL−37がある[Poggi (2009) 前記; Nagatomo, T. et al. Clin.
Exp. Immunol. 138:47-53 (2004); Admyre, C. et al. J. Immunol. 179:1969-78
(2007); Oppenheim, J. J. and Yang, D. Curr. Opin. Immunol. 17:359-65 (2005)]。これらは、自然および獲得免疫系を活性化することができる。これらのタンパク質のいくつかは、免疫系を起動する際のそれらの役割により「アラーミン」とも呼ばれる[Oppenheim (2005)前記]。アラーミンはAPCに対する走化性および活性化効果の両方を有し、よって、危険シグナルに対する自然およびAg−特異免疫応答を増幅することができる[Yang, D. et al. J.
Immunol. 173:6134-42 (2004); Oppenheim, J. J. et al. Adv. Exp. Med. Biol.
601:185- 94 (2007)]。BC(ウシ初乳)は高レベルのβ−スフィンゴ糖脂質(BGS)を含み[Martin, M.J. et al. Lipids 36:291-8 (2001);
SaIa-Vila, A. et al. Nutrition 21:467-73 (2005); Van, Y.H.
et al. Diabetes 58:146-55 (2009); Nagatomo, T. et al. Clin. Exp. Immunol.
138:47-53 (2004)]、その組成物は消化管−免疫系のAPCまたは他の成分の効果を決定することができる[Novak, J. et al. Int.
Kev. Immunol. 26:49-72 (2007); Nowak, M. and Stein-Streilein, J. Int. Rev.
Immunol. 26:95-119 (2007); Nikoopour, E. and Schwartz, J.A. Inflamm. Allergy
Drug Targets 7:203-10 (2008); Admyre, C. et al. J. Immunol. 179:1969-78 (2007);
Oppenheim, J. J. and Yang, D. Curr. Opin. Immunol. 17:359-65 (2005); Yang, D.
et al. J. Immunol. 173:6134-42 (2004); Oppenheim, J. J. et al. Adv. Exp. Med.
Biol. 601:185-94 (2007)]。これらのメディエーターのいくつかは、粘膜アジュバントとして機能することができ、腸粘膜においてAPCのサブセットとTregの間のクロストークを増強させる[Vignali, D.A. et al. Nat. Rev. Immunol. 8:523-32 (2008); Margalit, M. et al. J.
Pharmacol. Exp. Ther. 319:105-10 (2006); Godfrey, D.I. and Berzins, S.P.
Immunol. 7:505-18 (2007; Margalit, M. and Ilan, Y. 肝臓
Int. 25:501-4 (2005); Novak, J. et al. Int.
Rev. Immunol. 26:49-72 (2007); Nowak, M. and Stein-Streilein, J. Int. Rev.
Immunol. 26:95-119 (2007); Nikoopour, E. and Schwartz, J.A. Inflamm. Allergy
Drug Targets 7:203-10 (2008)]。Treg細胞の誘導により、膵臓流入領域リンパ節(PLN)において局所免疫調節により媒介される、β細胞抗原への持続性寛容性が得られ得る[Homann, D. et al. J.
Immunol. 163:1833-8 (1999); Homann, D. et al. Immunity 11:463-72 (1999)]。この介入は動物モデルにおいてかなり有望であるが、ヒト試験ではほとんど効力を有さなかった。糖尿病予防試験では、処置された患者の一部のみが、膵島自己抗原による免疫化により有益な効果を示した[Skyler, J.S. et al. Diabetes Care 28:1068-76 (2005)]。1型糖尿病の防止は、患者が前糖尿病性段階中に免疫化された場合にのみ見られ、免疫化は最近発症した糖尿病を復帰させることはできなかった[Larche, M. and Wraith, D. C. Nat. Med. ll:S69-76 (2005)]。したがって、抗原特異介入は、ヒト、とりわけ最近発症した糖尿病における使用を成功させるために追加のアジュバントを必要とする可能性がある[Harlan (2005) 前記]。
【0093】
本発明者らは免疫系に対する用量依存的効果を示した。
【0094】
要約すれば、本発明は、抗LPS抗体は初乳アジュバントと共に、Treg細胞蓄積を促進することができ、よって、炎症反応を軽減し、肝損傷を改善し、メタボリックシンドローム合併症を改善するための手段として機能することを明確に証明する。さらに、本発明によれば、脂肪組織およびSV中の制御性Tリンパ球は、メタボリックシンドローム患者において新規治療標的として機能することができる。さらに、初乳中の免疫グロブリンは抗原特異および非特異様式で、傍観者抗原を標的とすることにより、または非関連抗原に対して誘導させることにより、制御性T細胞または免疫系に関連する任意の他の細胞を促進することができる。
【0095】
このように、第1の態様では、本発明は、病的障害の治療および/または予防において使用するための抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0096】
本明細書では「治療」は、疾患の症状の重篤度、そのような症状が発症する頻度、またはその両方の減少または排除を指す。
【0097】
本明細書では「予防」は、疾患の症状またはそのような症状が発症する頻度を完全にまたは部分的に防止または阻止することを指す。
【0098】
1つの態様では、本発明は、病的障害の治療および予防のための組成物を提供する。本発明の組成物は、活性成分としてほ乳類抗リポ多糖(抗LPS)強化初乳由来免疫グロブリン製剤、および任意でさらに初乳、乳または乳製品成分/複数可、および任意のアジュバント/複数可を含む。免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。任意で、本発明の組成物は、抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤と、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、よって前記障害に対し特異的に誘導される免疫応答を活性化または阻止する免疫グロブリンを含む少なくとも1つ免疫グロブリン製剤の組み合わせを含み得る。さらに、本発明の抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、任意の他の免疫調節薬、例えば、限定はされないが、他の初乳由来抗体、他の抗原、他のアジュバント、他のサイトカインまたは免疫系の任意の成分を変化させることができる任意の型の分子と組み合わせることができることに注意すべきである。その組み合わせは1つの製品として、または2つ以上の別個の製品として投与することができる。その組み合わせは、一緒にまたは互いに別々に投与することができる。
【0099】
1つの特定の実施形態によれば、初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、IgG、IgAおよびIgMからなる群より選択される単量体、二量体または多量体免疫グロブリンならびに任意のそれらの断片を含み得る。上記で示した通り、反芻動物では、初乳と成熟乳の間の主要な組成の違いは、IgGクラスが80〜90%を占める、非常に高い初乳免疫グロブリン量である。
【0100】
このように、特定的な実施形態によれば、本発明の初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤は主にIgG、特定的には、IgG1およびIgG2を含む。
【0101】
本明細書では、免疫グロブリンG(IgG)は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構築される多量体免疫グロブリンである。各複合体は2つの抗原結合部位を有する。これは最も豊富な免疫グロブリンであり、血液および組織液中に大体等しく分布し、ヒトにおける血清免疫グロブリンの75%を占める。一般に、IgGサブクラスの数は、異なる種間で広く異なり、ウサギでの1つのサブクラスからウマにおける7つのサブクラスにわたり、そのため、オルソログを見いだすのは困難である。ヒトでは、例えば、IgG1およびIgG3は最も炎症促進性のIgGサブクラスである。しかしながら、マウスでは、IgG2aおよびIgG2bが最も炎症促進性のIgG分子であり、多くのインビボモデル系においてマウスIgG1およびIgG3よりも大きな活性を示す。
【0102】
任意で、または追加的に、抗LPS強化免疫グロブリン製剤は分泌性抗体、特定的には、sIgAを含み得る。
【0103】
二量体および多量体IgAおよびIgMは、多くの外分泌組織により分泌される。IgAは、初乳、唾液、涙、気管支分泌物、鼻粘膜、前立腺液、膣分泌物、および小腸からの粘膜分泌物中に存在する主な分泌免疫グロブリンである。IgA産生量がすべての他の免疫グロブリンの産生量を超えており、身体により毎日産生される主抗体となり、ヒト乳、乳清および初乳において見られる主免疫グロブリンとなっている。IgM分泌はIgAほど多くはないが、IgA分泌不足を補うために増加し得る。J鎖を含むIgAが、外分泌細胞の基底膜の真下の固有層に位置するプラズマB免疫細胞により産生され、分泌される。IgAは、2つの重鎖(M55,000)および2つの軽鎖(M23,000)から構成される典型的な免疫グロブリン4本鎖構造(M160,000)を有する。ヒトでは、IgAの2つのサブクラスが存在する。それぞれ、1本および2本の重鎖を有するIgAlおよびIgA2が存在する。IgAは単量体、二量体、三量体または多量体として生じ得る。血漿中では、総IgAの10%が多量体であり、残りの90%は単量体である。分泌されるIgAはほとんどの粘膜細胞の側底面内に位置するM100,000ポリ−Ig受容体に結合する。受容体−IgA複合体は次に、IgAが分泌される頂端膜側に移行される。二量体IgAのポリ−Ig受容体への結合は、J鎖の存在に完全に依存する。単量体IgAはその受容体に結合しない。
【0104】
lgGおよびIgAの機能差異は、分子が動作する位置に従う。IgAは主に、組織液が免疫細胞および化学物質を運搬する方法がほとんどない粘膜表面で見いだされる。そのため、IgAは(しばしば二量体として)、好ましくは病原体の物理的中和のために使用され、他の免疫機能に対しては効果的すぎる可能性がある。IgGは、白血球、補体系、マクロファージなどの完全な集合が存在する組織液および血液中に存在し、物理的に、病原体を効果的に中和することができ、また、IgAよりも伝達/提示役割に効果的であり、すなわち、それらは、より良好に貪食細胞(例えば、キラーT細胞およびマクロファージ)によるオプソニン作用を誘導し、補体系をより良好に作動させる傾向がある。
【0105】
より特定的には、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、脱脂乳、全乳、またはそのようなストリームの再構成形態に直接由来する、初乳、初乳血清、過免疫乳または初乳、初乳乳清(チーズまたはカゼインのいずれか)、チーズまたはカゼイン乳清のいずれか1つから得ることができる。
【0106】
本発明の組成物内に含まれる抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳の任意の画分とすることができることは認識されるべきである。このように、本明細書で使用される初乳という用語は、初乳の乳、加工初乳、例えば脂肪、細胞残屑、ラクトースおよびカゼインの1つ以上を部分的にまたは完全に除去するように処理された初乳を含む。
【0107】
抗LPS抗体および任意で、抗原特異抗体を含む初乳、または乳は、好ましくは動物初乳または乳を搾ることにより収集することができ、このように収集されたものは直接使用することができ、あるいは、さらに処理されてもよく、例えば、抗LPSおよび任意で、抗原特異抗体が精製され得る。(LPSおよび任意で、抗原特異的)抗体を初乳または乳から(部分)精製するための方法は、当技術分野において存在する。
【0108】
任意のアジュバントが本発明の組成物に添加され得ることがさらに認識されるべきである。そのため、適切なアジュバントは任意の抗原、抗体、スフィンゴ糖脂質、タンパク質、サイトカイン、接着分子、および、抗原提示細胞または免疫系に関連する任意の他の細胞の機能を直接または間接的な様式で活性化または変化させることができる成分とすることができる。
【0109】
また、抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、アフィニティー精製抗体またはそれらの任意の断片であり得る。「抗体」という用語は、抗原に結合することができる無傷の分子ならびにそれらの断片の両方、例として、例えば、FabおよびF(ab’)を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)断片は、無傷抗体のFc断片が欠如しており、無傷抗体よりも、循環からより迅速に除去され、より少ない非特異的組織結合を有し得る。無傷抗体分子のために本明細書で開示された方法に従い、FabおよびF(ab’)ならびに本発明において有用な他の抗体断片が免疫調節のために使用され得ることは認識されるであろう。そのような断片は典型的には、酵素、例えばパパイン(Fab断片を生成させるため)またはペプシン(F(ab’)断片を生成させるため)を使用するタンパク質切断により生成される。
【0110】
抗体は、この特定の実施例ではある免疫関連障害に特異な抗原または抗原混合物である抗原と特異的に反応することができる場合、ある一定の抗原を「特異的に認識することができる」と言われ、これにより、分子が抗体に結合される。
【0111】
「抗原」は抗体により結合され得る分子または分子の一部であり、さらに、動物に、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生させるように誘導することができる。抗原は1つ以上のエピトープを含み得る。「エピトープ」という用語は、抗体により結合され得、その抗体により認識されることもできる任意の分子のその部分を示すことを意味する。エピトープまたは「抗原決定基」は通常、分子の化学的に活性な表面基、例えばアミノ酸または糖側鎖から構成され、特異三次元構造特性および特異電荷特性を有する。
【0112】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物のための活性成分として使用される抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、LPSまたはその任意の断片で免疫化されたほ乳類から得ることができる。任意で、LPSに加えて、ある実施形態による前記ほ乳類はさらに、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原または少なくとも2つの抗原の混合物、ならびに前記疾患と関連する少なくとも2つの異なる抗原に対して誘導される少なくとも2つの異なる抗体の混合物で免疫化することができる。
【0113】
1つの実施形態によれば、前記ほ乳類、好ましくはウシまたはトリを免疫化するために使用されるLPSまたは任意の抗原は、前記障害を患う対象から得られる組織培養細胞、プライマリ細胞または組織試料のいずれか一つの単離および精製ペプチド、精製組換えタンパク質、融合タンパク質、細胞可溶化物、膜調製物、核調製物、または細胞質調製物のいずれか一つとして提供され得る。
【0114】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、任意でさらに初乳成分/複数可、例えば、アラーミン、デフェンシン、コロストリニン、および任意の他の初乳または乳由来の糖質、糖脂質または、免疫応答の調節をさらに増強または阻止し得る任意の他の分子もしくは成分、またはそれらの任意の調製物、混合物もしくは組み合わせを含み得る。さらに、本発明の組成物は任意の追加のアジュバントを含み得る。そのため、適切なアジュバントは任意の抗原、抗体、スフィンゴ糖脂質、タンパク質、サイトカイン、接着分子、および抗原提示細胞または免疫系に関連する任意の他の細胞の機能を直接または関節様式で活性化または変化させることができる成分とすることができる。
【0115】
組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、鳥卵の構成物を含み、ここで、鳥卵はLPSまたはその断片に特異的なIgYを含む。粗卵黄は、抗体源として使用され得る。しかしながら、トリ抗体は通常、使用前に卵黄から精製または濃縮される。鳥卵の構成物は、当業者により理解されるように、必要に応じて濃縮され、または精製され得る。組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、卵黄、または任意のIgY抗体−を含むその画分を含む。卵黄は典型的には卵白よりもずっと高濃度のIgYを含むので、卵黄が卵白より好ましい。しかしながら、卵白はいくらかの用途に十分な濃度のIgYを含み得る。
【0116】
抗体組成物のいくつかの実施形態では、IgYは鳥卵の構成物から濃縮され、単離され、または精製される。これは、様々な方法により達成することができる。いくつかの実施形態では、抗体は水希釈法により精製され得る。その後、沈殿が、任意の従来の方法、例えば遠心分離により除去され得る。その後、上清は例えば−20℃で凍結保存することができる。IgYはその後、硫酸アンモニウムによる沈殿、その後の透析により単離することができる。所望であれば、IgY抗体の力価は、イムノアッセイ、例えばELISAにより決定することができる。水希釈法は、よく知られた文献、例えばAkita and Nakai (1993)(この方法を教示するために参照により組み込まれる)により、より完全に記載される。他の有用な方法は、例えば、米国特許第4,550,019号、米国特許第4,748,018号、および米国特許公開第2004/0161427号において記載され、これらはそのような教示のために参照により本明細書に組み込まれる。市販のキットが例えばPromega Corporation(Madison,Wisconsin)から入手可能である。
【0117】
抗体組成物のいくつかの実施形態は、実質的に単離される。そのような実施形態では、非抗体卵黄成分のかなりの画分が除去されている。非抗体卵黄成分は、例えば、卵黄の脂質成分、卵黄の糖質成分、卵黄顆粒、卵黄の疎水性成分、卵黄のステロイド成分、および卵黄の非免疫グロブリンタンパク質成分とすることができる。除去される成分の画分は少なくとも50%である。いくつかの実施形態では、除去される画分は少なくとも60%、75%、80%、90%、95%、99%、または99.9%である。より多くの画分が除去されると、より純粋な抗体組成物が生成される利点がある。除去される画分が少ないほど、必要とされる処理が少なくなる利点がある。
【0118】
抗体組成物のいくつかの実施形態は実質的に濃縮される。そのような実施形態では、IgYの濃度は、卵黄よりも組成物中で多くなる。実質的に濃縮され抗体組成物は、卵黄の少なくとも2倍濃縮されたIgYを含む。実質的に濃縮された抗体組成物のいくつかの実施形態は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、100、1000、または10,000倍濃縮される。より濃縮された抗体組成物は、より少ない体積で同じ質量の抗体を提供するという利点を有する。より低く濃縮された抗体組成物は、必要とされる処理が少なくなる利点がある。
【0119】
本開示の抗体組成物は、IgGおよびIgY以外のアイソタイプすべてをほとんど除去するように処理され得る。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンは多くのドナー由来とすることができる。かなり多数のドナーが使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は1つのドナー由来である。さらなる実施形態では、抗体は1〜10ドナー由来である。さらなる実施形態では、抗体は10〜100ドナー由来である。さらなる実施形態では、抗体は100〜1000ドナー由来である。さらに別の実施形態では、抗体は1000超のドナー由来である。
【0120】
抗体組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、インフルエンザに対して前に免疫化された家禽により産み出された卵を得、その卵の卵黄から抗体画分を分離することを含む方法により製造される。組成物のいくつかの実施形態では、家禽は、例えばワクチン接種により、能動免疫される。家禽は好ましくは、飼い慣らされた家禽である。飼い慣らされた家禽は、ニワトリ、アヒル、ハクチョウ、ガチョウ、シチメンチョウ、クジャク、ホロホロチョウ、ダチョウ、ハト、ウズラ、キジ、ハト、または他の飼い慣らされた家禽である。飼い慣らされた家禽は好ましくはニワトリである。飼い慣らされた家禽は、より好ましくは、主に卵または肉生産のために育てられた、飼い慣らされたニワトリである。家禽は任意のインフルエンザ株、任意のサブタイプのインフルエンザ、任意の型のインフルエンザ、またはそれらの組み合わせに対して免疫化され得る。
【0121】
卵または肉生産のために育てられ、この目的に従ってワクチン接種されたニワトリ由来の卵の使用は、処理のための原料として、大量に、非常に低い価格で広く市場で入手可能な卵を使用するという大きな利点がある。以前、抗体の産生のために使用される動物はもっぱら、または主にその目的のために育てられ、少数で、非常に高い経費で維持されていた。
【0122】
抗体組成物のいくつかの実施形態では、抗体組成物は、雌鳥を抗原で能動免疫し、免疫化期間後に雌鳥から卵を回収し、卵の卵黄から抗体画分を分離することを含む方法により製造される。任意で、雌鳥から卵を収集することは、免疫化期間後連続して実施することができる。鳥の免疫化は当技術分野で知られた任意の手段により実施され得る。例えば、鳥において免疫応答を効果的に誘発することが知られている、またはほ乳類において免疫応答を効果的に誘発することが知られているワクチンが鳥に投与され得る。多くのそのようなインフルエンザワクチンは、市販されており、当業者により過度の実験なしで日常的に開発され得る。さらに、特異標的を用いてIgYを生産させる方法は、当業者に知られている。
【0123】
そのような方法は、例えば、米国特許第4,550,019号、米国特許第4,748,018号、および米国特許公開第2004/0161427号、ならびに米国特許第6,537,500号において見いだすことができ、それらは参照により組み込まれる。
【0124】
1つの実施形態では、本発明は、病的障害の治療および/または予防において使用するための抗LPS強化免疫グロブリン製剤およびさらに非高免疫初乳を含む組成物を提供し、ここで、抗LPS強化免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である。
【0125】
1つの実施形態では、病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。別の実施形態では、病的障害は肝損傷である。
【0126】
別の実施形態では、病的障害は自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、および増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である。
【0127】
また、病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択され得る。
【0128】
1つの実施形態では、本発明の免疫調節組成物は、粘膜による微生物トランスロケーションを減少、排除または阻止し、これによって免疫活性化を調節することができる。免疫系の慢性活性化は、進行性ウイルス感染の特徴であり、疾患転帰を予測することに注意すべきである。「粘膜による微生物トランスロケーション」としても知られている過程において、胃腸管由来の可能性のある循環微生物産物は、ウイルス関連全身免疫活性化の主原因であることが以前、示されている。このように、ある実施形態によれば、本発明の組成物は、免疫機能を調節することができ、または、免疫系の変化に関連しない細菌もしくは細菌関連産物の数を減少または変化させることができる。
【0129】
1つの実施形態によれば、本発明は活性成分としてほ乳類抗リポ多糖(LPS)強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。そのような組成物は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症の治療、防止および予防のために特に適用することができ、任意で前記組成物は、追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントをさらに含む。
【0130】
より特定的には、本発明によれば、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、例えば、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、静脈瘤出血、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化の少なくとも1つとすることができる。
【0131】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、病的障害、例えば任意の型のウイルス疾患、例えばHCV、HBV、CMV、およびEBVの治療のために使用され得る。
【0132】
そのような初乳由来の調製物は、そのため、追加の治療薬として、肝疾患のために使用される任意の薬物と組み合わせることができることに注意すべきである。
【0133】
本明細書では「肝硬変」という用語は、肝機能の進行性消失に至る、肝臓組織の線維性瘢痕組織による置換および結節再生により特徴づけられる、様々な慢性肝疾患の最終的な共通の組織学的転帰を示す。肝硬変は通常、BおよびC型肝炎ウイルス、アルコール依存症および脂肪肝疾患により引き起こされる。
【0134】
本明細書では「腹水症」という用語は、最も一般的には肝硬変および重症肝疾患による、腹腔内での病的な液体貯留の状態を説明する。
【0135】
そのような初乳由来の調製物は、そのため、任意の免疫調節治療薬/複数可またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と組み合わせることができ、免疫関連障害、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、悪性または感染性疾患を治療および/または防止するための複合免疫調節組成物が生成されることに注意すべきである。
【0136】
本発明の初乳由来の組成物は、さらに任意の追加のアジュバントを含み得ることに注意すべきである。
【0137】
微生物トランスロケーションはまた、多くの肝障害、例えばウイルス−媒介、薬物−媒介、非アルコール性脂肪性肝炎および任意の他の肝障害における肝臓炎症の変化、ならびにインスリン抵抗性、2型糖尿病、肥満および体重過多と関連するので、本発明の組成物による、このトランスロケーションの防止は、これらの障害の治療において適用され得ることに注意すべきである。したがって、本発明はさらに、任意の急性もしくは慢性肝疾患、糖尿病および糖尿病の合併症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、および肥満の治療における、疾患と関連する抗原に対し誘導される抗体、例えば、抗インスリン抗体が強化された初乳調製物と組み合わされる本発明の抗LPS組成物の使用を提供する。
【0138】
別の実施形態では、組成物はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤 を含む。さらなる免疫グロブリン製剤は、初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0139】
1つの任意的な実施形態によれば、本発明は抗LPS強化免疫グロブリン製剤と、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合し、よって免疫制御細胞、特定的には、制御性T細胞を調節する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの初乳由来免疫グロブリン製剤との組み合わせを含む複合組成物を提供する。そのような調節により、例えば、炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節が得られ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答が阻止され得ることに注意すべきである。
【0140】
前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合し、これによって免疫制御細胞、特定的には、制御性T細胞を調節する免疫グロブリンとしては下記が挙げられる:
【0141】
インフルエンザの治療および/または予防のための抗インフルエンザ抗体;HCV感染に関連する任意の型の肝癌または急性および慢性肝障害の治療および/または予防のための抗体のための抗HCV抗体;HBV感染に関連する任意の型の肝癌または急性および慢性肝障害の治療および/または予防のための抗HBV抗体;CMV感染に関連する急性および慢性障害の治療および/または予防のための抗CMV抗体;アルツハイマー病、肝性脳症、任意の型の記憶喪失、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響の治療および/または予防のための抗アミロイド抗体、関連感染に関連する急性および慢性障害の治療および/または予防のための任意のウイルス、細菌、スピロヘータ、プレオン、寄生虫、胞子または真菌抗原に対する抗体;インスリン抵抗性と関連する任意の障害の治療および/または予防のための抗インスリン抗体;標的抗原に関連する、転移性および非転移性、固形および非固形を含む任意の悪性障害の治療および/または予防のための任意の型の癌関連抗原に対する抗体;任意の型の免疫媒介または自己免疫疾患の治療および/または予防のための疾患特異的および疾患関連抗原に対する抗体;ウイルス疾患の治療および/または予防のための抗HSV、JCウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスおよびRSV抗体;肺炎の治療および/または予防のための抗マイコプラズマ/レジオネラ抗体;分泌腫瘍の治療および/または予防のための抗PTHrp、アルドステロン、ステロイド、GHおよびプロラクチン抗体;IBDの治療および/または予防のための抗IL−12、omp C抗体;巨赤芽球性貧血の治療および/または予防のための抗内因子抗体;ピロリ菌感染の治療および/または予防のための抗ピロリ菌抗体;バーキットリンパ腫の治療および/または予防のための抗EBV抗体;ならびに自己免疫性膵炎、慢性肺疾患、例えばCF、喘息など、肝硬変、肝線維症(CCL4)、および高カルシウム血症と関連する抗原に特異的な抗体。
【0142】
別の代替実施形態によれば、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤はさらに、治療される障害に対し特異的でない抗原に向けられる免疫グロブリンを含み得る。そのような抗原は免疫応答に対し調節効果を有する任意の標的免疫関連成分とすることができる。それにより、本発明免疫グロブリン製剤によりそのような疾患非特異抗原が認識されると、免疫応答の変化が生じ得る。そのような調節により、例えば、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節が得られ、前記障害に特異的に向けられる免疫応答が阻止される。別の実施形態によれば、本発明の複合組成物は、任意でさらに追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含み得る。
【0143】
代替として、あるいはさらに、本発明の初乳由来免疫グロブリン製剤の組み合わせならびにそれら由来の免疫調節組成物は、制御性細胞、または抗原提示細胞の特定のサブセットの活性化または促進により、または、任意の型の細胞−細胞接触により、間接的な様式で作用することができる。そのような抗LPS強化複合組成物は、免疫系の異なる構成要素に向けられ得る。例えば、特定の制御性T細胞、B細胞もしくは抗原提示細胞、または免疫系への効果と関連する任意の他の細胞の活性化は、サイトカインまたはケモカインの分泌を誘導し、または任意の他の様式で免疫系に影響する。免疫細胞の変化または促進はさらに、任意の型の制御性細胞、好ましくは、制御性T細胞、例えば、Th3細胞、Trl、T17細胞または任意の他の型の制御性、エフェクターまたはサプレッサー細胞の誘導を含み得る。Th17細胞は最近特定されたCD4Tヘルパー細胞のサブセットであることに注意すべきである。それらは、外部環境と内部環境の間の界面、例えば、皮膚および胃腸管内面で見いだされる。より特定的には、本発明の初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤は制御性T細胞または任意の他の免疫系に関連する細胞を、抗原特異および非特異様式で、傍観者抗原を標的とすることにより、または非関連抗原に向かって誘導されることにより、促進することができることに注意すべきである。
【0144】
このように、別の実施形態によれば、本発明は、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤と、前記障害と関連する少なくとも1つ抗原に対して誘導される免疫グロブリンを含む少なくとも1つの追加の免疫グロブリン製剤の組み合わせ、免疫関連障害を治療するための複合組成物を生成させることを提供する。したがって、そのような組成物は抗原または疾患特異的とすることができ、または、非抗原特異的様式で、例えば免疫傍観者効果で免疫系の特定の細胞または一部を増強するまたは誘導することができる。
【0145】
1つの実施形態では、組成物は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する。
【0146】
別の実施形態では、組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、この場合、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0147】
別の実施形態では、組成物はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防のためのものである。別の実施形態では、組成物は、糖尿病の治療および/または予防、耐糖能障害の治療、例えば耐糖能の減少、血清インスリンレベルの減少、肝臓トリグリセリドレベルの減少、もしくはコレステロールレベルの減少のためのものである。
【0148】
1つの実施形態では、組成物は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0149】
組成物はさらに、治療薬、担体もしくはアジュバントおよび/または非高免疫初乳を含み得る。
【0150】
本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤は能動的または受動的処置のいずれかのために使用され得ることが、さらに認識されるべきである。
【0151】
本発明の免疫調節組成物のさらなる実施形態では、前記免疫関連障害は自己免疫疾患、感染症、および増殖性疾患のいずれか1つである。
【0152】
本発明の組成物は、急性合併症の治療、またはこれらの合併症の発症もしくは再発の防止に適用することができることに注意すべきである。
【0153】
1つの実施形態によれば、本発明の複合組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止する。そのような制御は、制御性T細胞、抗原提示細胞、任意の型のT細胞またはB細胞、免疫系と直接または関節的に関連する任意の細胞の機能、または任意の型のサイトカインもしくはケモカイン、あるいはアジュバントを含み得る。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は自己免疫疾患の治療に適用され得る。自己免疫障害の例としては、円形脱毛症、ループス、強直性脊椎炎、メニエール病、抗リン脂質抗体症候群、混合性結合組織病、自己免疫アジソン病、多発性硬化症、自己免疫溶血性貧血、重症筋無力症、自己免疫肝炎、尋常性天疱瘡、ベーチェット病、悪性貧血、水疱性類天疱瘡、結節性多発性関節炎、心筋症、多発性軟骨炎、セリアックスプルー−皮膚炎、多腺性症候群、慢性疲労症候群(CFIDS)、リウマチ性多発筋痛症、慢性炎症性脱髄、多発性筋炎および皮膚筋炎、慢性炎症性多発ニューロパチー、原発性無ガンマグロブリン血症、チャーグ・ストラウス症候群、原発性胆汁性肝硬変、瘢痕性類天疱瘡、乾癬、クレスト症候群、レイノー現象、寒冷凝集素症、ライター症候群、クローン病、リウマチ熱、円板状ループス、関節リウマチ、本態性混合型、クリオグロブリン血症サルコイドーシス、線維筋痛症、強皮症、グレーブス病、シェーグレン症候群、ギラン・バレー、全身硬直症候群、橋本甲状腺炎、高安動脈炎、突発性肺線維症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、潰瘍性大腸炎、IgA腎症、ブドウ膜炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、血管炎、扁平苔癬、および白斑が挙げられるが、それらに限定されない。本発明で記載される複合組成物は、細胞、組織または臓器移植、例えば、腎臓、肝臓、および心臓移植と関連する異常な、または望まれない免疫応答と関連する障害、例えば、移植片対宿主病(GVHD)を治療または防止するために、または同種移植片拒絶を防止するために投与することができる。
【0154】
さらに別の実施形態では、本発明の複合組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多の任意の1つを治療するために使用され得る。
【0155】
また、本発明の複合組成物は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させることができる。そのような制御は、制御性T細胞、抗原提示細胞、任意の型のT細胞またはB細胞、免疫系と直接または関節的に関連する任意の細胞の機能、または任意の型のサイトカインもしくはケモカイン、あるいはアジュバントを含み得る。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療において適用することができる。
【0156】
1つの特定の実施形態によれば、悪性増殖性疾患は固形または非固形腫瘍、例えば、癌腫、肉腫、メラノーマ、白血病、ミエローマまたはリンパ腫であり得る。
【0157】
別の特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、癌腫、例えば肝細胞癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌を防止および/または治療することを対象とする。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は白血病、より特定的には、急性もしくは慢性白血病を防止および/または治療するために使用され得る。
【0158】
本明細書では、本発明を説明するために、「癌」、「腫瘍」、および「悪性腫瘍」はすべて、組織または臓器の過形成に同等に関連する。組織がリンパまたは免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環細胞の非固形腫瘍を含み得る。他の組織または臓器の悪性腫瘍は、固形腫瘍を生成させ得る。一般に、本発明の方法および組成物は、非固形および固形腫瘍の治療において使用され得る。
【0159】
本発明において企図される、悪性腫瘍は、癌腫、メラノーマ、リンパ腫および肉腫からなる群より選択され得る。本発明において有用性が見いだされ得る悪性腫瘍としては、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫および骨髄増殖性疾患を含む)、低形成性および再生不良性貧血(ウイルス誘導性および特発性の両方)、骨髄異形成症候群、すべての型の腫瘍随伴症候群(免疫媒介および特発性の両方)および固形腫瘍(肺、肝臓、胸部、結腸、前立腺、胃腸管、膵臓およびカポジを含む)が挙げられるが、それらに限定されない。より特定的には、悪性障害は、肝細胞癌、結腸癌、メラノーマ、ミエローマおよび急性もしくは慢性白血病であり得る。
【0160】
別の実施形態によれば、本発明の免疫調節組成物は、特定的には感染症、例えば、ウイルス病原体、例えばHCV、HBV、CMV、およびEBVにより引き起こされる病状を治療するのに適用され得る。
【0161】
1つの特定の実施形態によれば、本発明の複合免疫調節組成物は、Th2、Trl/Th3抗炎症反応をもたらし得る。より特定的には、そのような抗炎症反応は、炎症促進性サイトカイン、例えばIL−2、IL−17、IL−23、IFN−γ、IL−6の量または発現の減少または低減を伴い得る。本発明によるそのような減少または低減は、未処置対照に比べ、約5%〜99%の低減、特定的には、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の低減とすることができる。さらに別の特定の実施形態では、本発明の組成物は、抗炎症性サイトカイン、例えばTGF−β、IL−10、IL−4、IL−5、IL−9およびIL−13の量または発現を上昇および増加させ得る。より特定的には、抗炎症性サイトカインの増加、誘導または上昇は、未処置対照に比べ、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の増加とすることができる。
【0162】
本発明の複合免疫調節組成物の抗炎症性効果は、制御性細胞の特定のサブセット、抗原提示細胞または任意の型の細胞−細胞接触の活性化または促進により、あるいはサイトカインおよび/またはケモカインの直接または間接的活性化により達成され得ることが認識されるべきである。任意の型の制御またはエフェクター細胞、特定的には制御性T細胞、例えばTh3およびTrl細胞が関係し得ることにさらに注意すべきである。このように、本発明の初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、傍観者抗原を標的にすることにより、あるいは、非関連抗原に対して誘導されることにより、抗原特異および非特異様式で制御性T細胞または免疫系に関係する任意の他の細胞を促進することができる。
【0163】
より特定的には、本発明の組成物により活性化または促進される免疫−関連細胞は、APC(例えばDC)、Treg細胞または、免疫系と直接または間接的に関連する任意の他の細胞、例えば、限定はされないが、血小板、マクロファージ、任意の型のB細胞、T細胞(ダブルネガティブ細胞を含む)、および任意の型のノンプロフェッショナル抗原提示細胞、脂肪細胞、内皮細胞、臓器、特定的には、治療される免疫関連障害と関係がある臓器の一部である任意の型の細胞、ならびに制御性増強または抑制特性を有する任意の型の細胞とすることができる。より特定的には、本発明の組成物は免疫関連細胞例えば、特異的なT制御性細胞、例えば、脂肪細胞および抗原提示細胞(APC)、例えばDCに対する抗炎症性効果を証明する。そのため、1つの実施形態によれば、本発明の組成物は、肝障害を患う対象においてT制御性(Treg)細胞、または制御特性、抑制または誘導のいずれかを有する任意の細胞、脂肪細胞および抗原提示細胞(APC)の少なくとも1つを誘導するために使用され得る。
【0164】
上記で示した通り、本発明の組成物または任意的な複合組成物は、病的障害、特定的には、肝障害、または免疫関連障害を防止および/または治療することを対象とする。本明細書では、「障害」という用語は、正常機能の異常が存在する状態を示す。「疾患」は、患者またはその人と接触するものに対し不快感、機能不全、または窮迫を引き起こす任意の身体または精神の異常な状態である。時として、この用語は、傷害、能力障害、症候群、症状、異常挙動、ならびに構造および機能の非定型変化を含むように広く使用され、他の状況では、これらは、区別可能なカテゴリとして考えられる。「疾患」、「疾患」、「病状」および「病気」は本明細書では同様に使用されることに注意すべきである。さらに、「免疫関連障害もしくは疾患」または「肝障害」は、正常でない免疫応答と関連する、それにより引き起こされる、それに関係がある任意の障害であり得ることに注意すべきである。そのような障害は通常、妨害された免疫応答と共に起こり得、正常でない免疫応答に影響を有する、またはそれにより影響されると考えられる。
【0165】
組成物は、経口で、エアロゾルとして吸入により、または非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、または任意のそれらの組み合わせにより投与するために製剤化され得る。
【0166】
1つの実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0167】
別の実施形態では、組成物は、微生物トランスロケーションを阻止する。別の実施形態では、組成物は微生物トランスロケーションを阻止し、よって免疫活性化を調節する。
【0168】
別の態様では、本発明は、対象において免疫寛容を調節するための、または別の態様では、対象において経口免疫寛容を調節するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。
【0169】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明の組成物のいずれも、経口で、またはエアロゾルとして吸入により、または静脈内、筋内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸もしくは皮下投与により、あるいは任意のそれらの組み合わせにより、投与され得る。低い胃pHならびに胃および腸管プロテアーゼの存在を考えると、経口で投与される抗体は、胃腸管で分解されると予測される。しかしながら、ウシ初乳IgG(BCIg)は、他の免疫グロブリンに比べ、GI破壊に対し特に抵抗性であると言及されている。BCIgの初期の研究は、著しく「異種宿主の腸におけるタンパク質分解消化に対し抵抗性がある」と言及した。ウシIgG1は他のIgよりも、トリプシン、キモトリプシンおよびペプシンによるタンパク質分解に対し幾分抵抗性が高いという証拠も存在する。これらの結果から、経口抗体療法の初期開発の多くが推進された。より特定的には、本発明の組成物は、粘膜投与、例えば、肺、頬側、経鼻、鼻腔内、舌下、直腸、膣内投与およびそれらの任意の組み合わせのために好適であり得る。
【0170】
上記で示した通り、経口および経鼻投与が好ましいが、任意の他の投与経路、例えば、静脈内、静脈内、筋内、皮下、腹腔内、非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸もしくは皮下投与、またはそれらの任意の組み合わせが適用可能であることが認識されるべきである。
【0171】
さらに、本発明の組成物および複合組成物により使用される抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、調製物、例えば食品添加物、水溶液、油性調製物、エマルジョン、ジェルなどで調製することができ、これらの調製物は経口、局所、直腸、経鼻、頬側、または膣内投与され得る。調製物は、従来の非毒性の許容される担体を含む投与製剤で投与することができ、1つ以上の許容される添加物、例えば許容される塩、ポリマー、溶媒、緩衝剤、賦形剤、バルク剤、希釈剤、賦形剤、懸濁化剤、滑沢剤、アジュバント、ビヒクル、送達系、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香味剤または甘味剤もまた含み得る。本発明の任意的な剤形は、当技術分野で知られている技術を用いて、飲料に組み込むための粉末、丸剤、シロップ、カプセル、錠剤、顆粒、ビーズ、チュアブルトローチまたは食品添加物とすることができる。このように、本発明の免疫調節組成物は、経口粉末、丸剤、カプセル、茶、抽出物、乾燥抽出物、舌下剤、噴霧剤、分散物、溶液、懸濁剤、エマルジョン、泡、シロップ、ローション、軟膏、ジェル、ペースト、皮膚パッチ、注射剤、膣内クリームおよび坐剤からなる群より選択される形態で投与され得る。
【0172】
治療製剤は任意の従来の投与製剤で投与され得る。製剤は典型的には、上で規定される少なくとも1つ活性成分を、1つ以上のその許容される担体と共に含む。
【0173】
各担体は、他の構成成分と適合可能であり、患者にとって有害でないという意味で、薬学的および生理学的の両方で許容されるべきである。製剤としては、経口、直腸、経鼻、または非経口(例えば皮下、筋内、静脈内および皮内、あるいは吸入による)投与に好適なものが挙げられる。製剤は、都合良く、単位剤形で提供することができ、薬学分野においてよく知られた任意の方法により調製され得る。そのような化合物すべての性質、利用能および供給源、ならびに対象において望ましい効果を生成させるのに必要とされる有効量を含む投与は当技術分野でよく知られており、本明細書でさらに説明する必要はない。
【0174】
医薬組成物の調製は当技術分野でよく知られており、多くの論文およびテキストブックで記載されており、例えば、Remington's
Pharmaceutical Sciences, Gennaro A. R. 編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990、およびとりわけその中の pp. 1521-1712(参照により完全に本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0175】
本発明の医薬組成物は、適正な医療行為に従い投与し、服用させることができる。
【0176】
本発明の組成物は、遊離形態の活性物質を含むことができ、直接、治療される対象に投与され得る。製剤は典型的には、上記で規定される少なくとも1つ活性成分を、1つ以上の許容されるその担体と共に含む。各担体は、他の構成成分と適合可能であり、患者にとって有害でないという意味で、薬学的および生理学的の両方で許容されるべきである。
【0177】
製剤としては、経口、経鼻、または非経口(例えば皮下(s.c.)、筋内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、静脈内(i.v.)および皮内、あるいは肺粘膜への吸入による)投与に好適なものが挙げられる。製剤は、都合良く、単位剤形で提供することができ、薬学分野においてよく知られた任意の方法により調製され得る。そのような化合物すべての性質、利用能および供給源、ならびに対象において望ましい効果を生成させるのに必要とされる有効量を含む投与は当技術分野でよく知られており、本明細書でさらに説明する必要はない。
【0178】
本発明の医薬組成物は一般に、緩衝剤、そのオスモル濃度を調節する作用物質、および任意で、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または当技術分野で知られている添加物を含む。補助的な活性成分もまた、組成物に組み込むことができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、など)、それらの好適な混合物、おび植物油を含む溶媒または分散媒質とすることができる。特有の流動性は、例として、コーティング、例えばレシチンを使用することにより、分散物の場合要求される粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0179】
本明細書では、「薬学的に許容される担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌および抗真菌剤などを含む。医薬活性物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の媒質または作用物質のいずれも活性成分と適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。
【0180】
経口投与が錠剤またはカプセルの形態である場合、活性薬物成分(抗LPS強化免疫グロブリン製剤または他の免疫グロブリン製剤との組み合わせ)は、非毒性の薬学的に許容される不活性担体、例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、加工糖、加工デンプン、メチルセルロースおよびその誘導体、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、および他の還元および非還元糖、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなどと組み合わせることができる。液体形態の経口投与のために、活性薬物成分は、非毒性薬学的に許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。望まれる、または必要とされる場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤ならびに着色および香味剤もまた、混合物に組み入れることができる。剤形を安定化するために、安定化剤、例えば抗酸化剤、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、メタ重亜硫酸カルシウム、ヒドロキノン、および7−ヒドロキシクマリンもまた添加することができる。他の好適な化合物としては、ゼラチン、甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。
【0181】
別の態様では、本発明は、病的障害の治療および予防のための免疫調節組成物の製造における、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤および任意で、病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識する初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合することに注意すべきである。任意で、本発明の使用により調製された組成物は、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤および前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの免疫グロブリン製剤を含み得る。そのような認識により、制御性T細胞の変化がもたらされ、結果として、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するか、あるいは炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節が引き起こされる。これにより、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する、複合免疫調節組成物が生成される。
【0182】
任意の型の制御またはエフェクター細胞、特定的には制御性T細胞、例えばTh3およびTrl[T3、T細胞は粘膜表面で優先的に誘導され、トランスフォーミング成長因子(TGF)−βを分泌する]細胞が関係し得ることに注意すべきである。さらに、本発明の初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤は、傍観者抗原を標的にすることにより、あるいは、非関連抗原に対して誘導されることにより、抗原特異および非特異様式で制御性T細胞または免疫系に関係する任意の他の細胞を促進することができることに注意すべきである。
【0183】
1つの実施形態によれば、本発明のために使用される抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はIgG、IgAおよびIgMならびにそれらの任意の断片、混合物または組み合わせからなる群より選択される単量体、二量体または多量体免疫グロブリンを含む。
【0184】
さらに別の実施形態では、初乳由来の、乳または乳製品由来の抗LPS強化免疫グロブリン製剤の本発明による使用は、任意で初乳、乳または乳製品成分/複数可および任意のアジュバント/複数可、好ましくは、アラーミン、デフェンシン、コロストリニンおよびそれらの任意の調製物、混合物または組み合わせをさらに含み得る組成物または複合組成物を製造するためである。本発明の組成物は任意の追加のアジュバントを含み得ることがさらに認識されるべきである。したがって、適切なアジュバントは任意の抗原、抗体、スフィンゴ糖脂質、タンパク質、サイトカイン、接着分子、および抗原提示細胞または免疫系に関連する任意の他の細胞の機能を直接または間接的様式で活性化または変化させることができる成分とすることができる。ある実施形態によれば、本発明はさらに、免疫調節治療薬の免疫調節効果を増強させるための、本発明の複合組成物における初乳または任意の初乳由来調製物の使用を提供することに注意すべきである。
【0185】
アラーミンという用語は、感染または組織損傷中に迅速に放出され、宿主防御および組織修復に関与する受容体−発現細胞への効果を起動し、活性化する、一連の構造的に多様な多官能宿主タンパク質を示す。アラーミン機能を有する自然−免疫メディエーターとしては、デフェンシン、好酸球由来ニューロトキシン、カテリシジンおよびHMGB1が挙げられる。
【0186】
デフェンシンは脊椎動物および無脊椎動物の両方において見られる小さな(15−20残基)システインリッチカチオン性タンパク質である。これらは、細菌、真菌およびエンベロープウイルスに対して活性である。これらは6〜8の保存システイン残基を含む15〜20のアミノ酸から構成される。免疫系の細胞は、例えば好中球顆粒球およびほとんどすべての上皮細胞において、貪食された細菌を死滅させるのを補助するために、これらのペプチドを含む。ほとんどのデフェンシンは、電気的吸引力により微生物の細胞膜に浸透し、埋め込まれると直ちに、膜内に流出を可能にする細孔を形成することにより機能する。
【0187】
本明細書では、「コロストリニン」という用語は、その天然型でほ乳類初乳から得られるポリペプチドを示す。コロストリニンは時として、「コロストリニン(colostrinine)」として知られており、16,000〜26,000ダルトンの範囲の分子量を有する。コロストリニンは、サブユニッのト二量体または三量体(それぞれが、5,000〜10,000ダルトンの範囲、好ましくは6,000ダルトンの分子量を有する)を形成することができ、ほとんどプラリン(プロリンの量は任意の他の単一アミノ酸の量よりも大きい)を含む。
【0188】
コロストリニンは、サイトカイン、とりわけγインターフェロン(IFN−γ)、腫瘍壊死因子TNF−α)、インターロイキン(例えばIL−6およびIL−10)ならびに様々な成長因子の産生を刺激することを特徴とする。
【0189】
上で示したように、本発明により使用される抗LPS強化免疫グロブリン製剤およびすべての他の任意的な免疫グロブリン製剤は、LPSまたはその任意の断片および任意で、さらに、治療される障害に特異的な少なくとも1つ抗原または少なくとも2つの抗原の混合物で免疫化されたほ乳類から得られ得ることに注意すべきである。本発明の手段および方法は、任意の授乳中のほ乳類の初乳、乳または乳製品における高く、長期の抗原特異的抗体産生を得るのに適している。好ましくは、前記動物は家畜である。家畜は、人間により商業ベースで使用される動物であり、乳、肉またはさらには抗体の産生のためのものである。乳の商業規模の生産のためにすでに使用されている家畜は、これらの動物が特別の系であり、およびまたは、乳産生のために最適化されて、飼育され、存在するので、本発明にとって好ましい。好ましくは、前記家畜はウシまたはヤギである。より好ましくは前記家畜はウシである。
【0190】
本発明の前記使用の1つの実施形態では、組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少させ、または阻止する。本発明の前記使用の1つの実施形態では、組成物粘膜による微生物トランスロケーションを減少させ、または阻止し、これによって免疫活性化を調節する。
【0191】
1つの実施形態によれば、本発明は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症の治療、防止および予防のための組成物を製造するための、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用に関し、任意で前記組成物はさらに、追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含む。
【0192】
本発明の使用の1つの実施形態によれば、この特定の組成物は、粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止し、よって門脈圧亢進症または任意の他の原因によるかに関係なく、細菌または任意の他の感染病原体の急性もしくは慢性肝疾患−関連合併症の病因に対する直接的な影響を変化させる。
【0193】
より特定的には、本明細書では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化の少なくとも1つである。
【0194】
これらの合併症は、慢性HCV感染、アルコール性肝炎、慢性HBV、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤性肝損傷、または急性もしくは慢性肝疾患の任意の他の原因に起因し得ることに注意すべきである。
【0195】
任意的な実施形態によれば、本発明は、抗LPS強化免疫グロブリン製剤の、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの初乳由来免疫グロブリン製剤との組み合わせの使用を提供する。この特定の実施形態によれば、そのような組み合わせの使用は、制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Thl免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する免疫調節組成物を調製するためのものである。任意でそのような複合組成物はさらに、追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含む。そのような組成物は、制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する。
【0196】
さらなる実施形態では、免疫関連障害は自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患のいずれか1つとすることができる。
【0197】
本発明の使用の1つの実施形態によれば、本発明の組成物は、急性合併症を治療するために、またはこれらの合併症の発症または再発を防止するために使用され得る。
【0198】
別の実施形態によれば、本発明の複合組成物は抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を防止する。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は自己免疫疾患の治療において適用され得る。
【0199】
また、本発明の複合組成物は炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させることができる。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は感染症、および増殖性疾患の治療において適用され得る。
【0200】
本発明の前記使用のさらに別の実施形態では、本発明の組成物は、経口でまたはエアロゾルとして吸入により、あるいは静脈内、筋内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸もしくは皮下、またはそれらの任意の組み合わせを介して投与され得る。
【0201】
寛容は、自己に対する応答の欠如、または有害な可能性のある免疫応答が防止、抑制され、または有害でないクラスの免疫応答にシフトされるある任意の機序として規定されている。このように、寛容は、その自身の成分に対する免疫系の失認ではなく生産的自己認識に関連する。本発明者らは、自己抗原かどうかに関係なく、疾患関連抗原に曝露されると、免疫系のいくらかの部分が活性化され得、抗原特異的様式で望まれない免疫が抑制されることを証明した。理論に縛られることは望まないが、経口抗原投与は一方では、特定の細胞サブセットを活性化し、特定の細胞を抑制し、望まれない自己免疫を軽減させ、他方では抗ウイルスまたは抗腫瘍関連抗原免疫応答を促進する。免疫系が役割を果たす多くの免疫媒介疾患または障害では、全身免疫系において促進される異なる型のシグナル/細胞間のバランスが、最終的な免疫学的効果を決定する。
【0202】
経口免疫寛容は、自然経路を介して身体にアクセスし、その後自己の一部となる外部作用物質を処理するように展開すると考えられる、外因性抗原の存在により駆動される天然の免疫過程である。胃腸管、例えば腸における抗原の経口曝露は活性免疫応答となることを理解すると、抗原特異的療法は、消化管粘膜内に存在する抗原に対する免疫療法のための魅力的なアプローチと考えられ、この場合、それらは非有害な、または非炎症性の免疫環境で処理され得る。したがって、特定の免疫細胞が活性化され得、抗原特異的療法は、慢性肝炎、感染病原体、メタボリックシンドロームおよび本明細書で記載される他の病的障害の免疫療法として機能することができる。
【0203】
胃腸恒常性に関与する機序は、異なる型のT細胞、例えば制御性T細胞、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、と消化管微小環境の間の複雑な相互作用を含む。
【0204】
濾胞関連上皮(FAE)は抗原取り込みおよびその後の粘膜免疫の誘導において重要な役割を果たす。FAE M細胞は抗原(Ag)送達を標的にすることにより、全身および粘膜リンパ組織の両方において、Ag特異CD4+T細胞の減少ならびにトランスフォーミング成長因子(TGF)−βおよびインターロイキン(IL)−10−産生CD25+CD4+T−制御性細胞(Treg)のレベルの増加を介して経口免疫寛容を促進する。
【0205】
腸管DCは、病原性免疫、経口免疫寛容、および腸管炎症の重要な制御因子である。関連するDCは、絨毛粘膜のPP、MLN、またはLP中に存在し得る。これらの組織はすべて多くの特有のDCサブセット、例えば、Tregの分化を優先的に誘導することができるいくつかを含む。
NKT細胞はNK細胞およびメモリーT細胞の両方と特性を共有するT細胞の独特の系列である。このリンパ球のサブセットは、CD4+またはダブルネガティブとすることができ、CD1d反応性である。これらの細胞は、インバリアントVα14−Jα18TCR α−鎖が独特であり、それらのT−細胞受容体(TCR)β−鎖は、Vβ8.2、Vβ2、およびVβ7に偏っている。NKT細胞は、それらの糖脂質抗原反応性および優れたサイトカイン産生が独特である。NKT細胞がTh1およびTh2応答の両方を生成させることができることは、それらの免疫制御性細胞としての重要性を示す。NKTリガンドの使用は、これらの細胞の柔軟性を変化させることにより重大な免疫調節効果を誘導する。
【0206】
本発明者らは経口免疫寛容誘導におけるNKT細胞の役割を証明し、最近の証拠は、TregとNKT細胞の間のクロストークの証拠を提供した。理論に縛られることを望まないが、NK細胞は、活性化シグナルに曝露された直後にサイトカインを産生し、Tregの分化を決定することができると考えられる。
【0207】
肝臓は、経口免疫寛容にとって重要であると考えられる。肝臓は、アポトーシスCD8+T細胞が抹消免疫応答のクリアランス段階中で蓄積する部位である。正常なマウス肝臓は、通常ではないリンパ球混合物を含み、その中では、ナチュラルキラー(NK)およびナチュラルキラーT(NKT)細胞が豊富であり、アポトーシスT細胞もまた存在する。これらの細胞は肝内T−細胞トラップおよび死滅に関連する。様々な肝細胞型の腸管細菌由来のLPSへの連続曝露は、サイトカイン、抗原提示分子、およびT−細胞を不活性化させる同時刺激シグナルの発現を促進すると考えられる。肝臓における免疫寛容誘発環境に対する他の可能な説明はクローン除去、内皮細胞またはクッパー細胞による特異抗原提示、および制御性T細胞を誘導する能力を含む。
【0208】
肝臓微小環境における異なる刺激は、T−細胞プライミングおよび有効免疫応答の生成と関連し、一方、他のものは寛容をもたらす。樹状細胞による肝臓での抗原提示およびそれらの肝臓への移動は、消化管−肝臓軸における相互作用の一部を表す。肝臓由来DCは、皮膚DCと比べると本質的に免疫寛容誘発性であり、IL−10を産生し、低レベルの同時刺激分子を発現する。クッパー細胞および肝細胞によるIL−10およびTGF−βの局所分泌は、エフェクター経路ではなく、制御因子の生成の方向にDC機能を偏らせることができる。肝臓類洞内皮細胞(LSEC)は、MHCクラスI上での提示に関係づけられた早期エンドソームコンパートメントへ抗原を輸送することができ、CD8+T細胞へ交差提示できることが説明される。LSECによる抗原提示の結果は、通常寛容であり、CD8+T細胞のアポトーシスならびにCD4+T細胞によるIL−4およびIL−10の分泌を伴う。活性化T細胞はまた、全身CD8応答の制御中のアポトーシス経路を制御するための機序としての類洞内の細胞接着分子1(ICAM−1)依存機序によりトラップされる。肝細胞自体は、APCとして機能し、未処理T細胞を活性化することができる。ほとんどの場合、肝細胞による活性化は抗原特異的寛容に至るが、この過程は、Tregの活性化を含み得る。末梢Tregは、未成熟DCによる未処理T細胞の活性化により、またはIL−10およびTGF−β(どちらも肝臓環境内に存在する)の存在下で生成される。
【0209】
Tregは消化管−肝臓免疫軸において重要である。CD4+CD25+Tregは、LSEC、クッパー細胞、または肝細胞によるCD4+T細胞の活性化を抑制する。この過程は、TLR4活性化により克服することができるので、Treg、病原体および他の肝細胞の間の相互作用は、肝臓における免疫活性化の結果を決定する。Tregは、望まれない免疫応答を抑え、ミクロフローラへの応答を制御することができ、多くの消化管の慢性炎症疾患において役割を果たすことができる。Tregは、消化管下部における共生生物に対する有害な炎症反応を防止することができ、このように、炎症性腸疾患を防いでいる。Tリンパの様々なサブセットが、制御機能を示すことが示唆されており、ナチュラルTreg、誘導Treg、Tr1、およびTh3細胞が挙げられる。これらの細胞は、サイトカインにより活性化することができ、それらの誘導段階は、抗原により駆動され得る。ほとんどのCD4+制御性T細胞(Tr1、Th3、およびCD4+CD25+)は、樹状細胞と相互作用すると考えられる。Tregの他のサブセット、例えばCD8+TrE細胞は、腸管上皮細胞により提示される抗原を認識し得る。
【0210】
CD4+CD25+Tregは、粘膜における免疫応答を制御する際に役に立つと考えられる。TGF−βは消化管で産生される最も重要なサイトカインの1つとして出現し、そのCD4+CD25+Tregとの相互作用は、T−細胞免疫と寛容の間のバランスを維持する際に重要である。CD4+CD25+Tregでのβ−カテニンの安定形態の発現により、これらの細胞の生存の著しい増強が得られる。炎症性腸疾患に対する保護に必要とされるTregの数は、安定β−カテニン−発現CD4+CD25+Tregが使用される場合、実質的に減少され得る。IL−35は、Treg細胞により産生される抑制性サイトカインであり、最大抑制活性のために必要とされる。下記で記載されるように、本発明者らは、本発明による組成物を用いたCD4+CD25+Treg細胞の調節を証明した。
【0211】
Foxp3+Tregは、粘膜免疫寛容の確立および維持に重要である。サイトカイン欠乏−誘導アポトーシスは、TregがエフェクターTCRを阻止する顕著な機序である。したがって、CD4+CD25+Foxp3+Tregは、エフェクターCD4+T細胞においてアポトーシスを誘導する。
【0212】
Th3または他のTreg細胞によるTGF−β分泌は、経口免疫寛容において重要な因子であると考えられる。TGF−β−産生細胞は経口免疫寛容に極めて重要であり、抗原摂食により引き起こされるほとんどの機序の主制御因子となり得る。潜伏関連ペプチド(LAP)はTGF−β前駆体ペプチドのアミノ末端ドメインであり、切断後、TGF−βペプチドと非共有結合により結合されたままであり、潜伏複合体を形成する。Tregの表面上の膜結合TGF−βまたはLAPの存在は、TGF−βをTregの抑制機能と関連づけた。TGF−β分泌Th3細胞およびCD8+制御性細胞は経口免疫寛容と関連しており、TGF−βに依存する。下で記載されるように、本発明者らは本発明による組成物を用いたLAP+およびLAP−Treg細胞の調節を証明した。
【0213】
LAPを含むTGF−βの膜結合形態は、記載されている。LAP+CD4+細胞は、消化管において、TGF−β−依存機序により抑制を媒介する。本発明者らは、表面LAPを発現するTGF−β−依存Tregは抗LPS抗体の経口投与により誘導/促進されることを示している。TGF−βはIL−10−産生細胞の分化を誘発することができ、異なるサイトカイン−産生Treg間のクロストークが経口免疫寛容誘導において存在し得ることが示され、例えばCD4+CD25−LAP+Tregが誘導され、これは自己免疫を抑制する。
【0214】
CD8+リンパ球のサブセットもまた、寛容誘導に関係する。腸管上皮細胞(IEC)は、抗原を処理し、T細胞に提示させるようにCD8+Tregを促進することができる。IECにより活性化されたT細胞は、機能において抑制的であり、一方IECはCD8+末梢T細胞の一部の増殖を誘導することができる。IEC−活性化CD8+T細胞のCD8+CD28−サブセットは、CD101およびCD103を発現し、gp180を介してIECと相互作用し、制御機能を有する。制御活性を有するCD8+T細胞は正常で、健康な個体のLP中には存在するが、炎症性腸疾患(IBD)患者には存在せず、これらの細胞が粘膜免疫寛容において積極的な役割を果たすことが示される。「抗原交差提示」またはプロフェッショナルAPCにより提示される分子が主要組織適合性抗原クラスI(MHC−I)経路に漏れ出し、CD8+T細胞に提示される可能性は、可能な機序である。また、CD4+T−細胞活性化と関連するAPCによるCD8+の「クロスプライミング」は、抑制に関与する機序であり得る。CD8+T細胞は、TGF−βの分泌により制御役割を果たす。抗原刺激を受けたCD8+T−細胞集団は、IL−4またはIL−10を産生し、寛容誘導と関連し得る。
【0215】
したがって、別の態様では、本発明は、肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を提供する。
【0216】
脂肪細胞は、脂肪としてエネルギーを貯蔵することを専門とする、主に脂肪組織を構成する細胞である。2つの型の脂肪組織、すなわち白色脂肪組織(WAT)および褐色脂肪組織(BAT)が存在し、これらはそれぞれ、白色脂肪および褐色脂肪としても知られており、2つの型の脂肪細胞を成す。白色脂肪細胞または一液胞(monovacuolar)細胞は、細胞質層で囲まれた大きな脂肪滴を含む。核は平らにされ、周辺に位置する。典型的な脂肪細胞は直径0.1mmであり、そのサイズの2倍のものもあり、そのサイズの半分のものもある。貯蔵された脂肪は、半液体状態であり、主にトリグリセリドおよびコレステリルエステルから構成される。白色脂肪細胞はレジスチン、アディポネクチン、およびレプチンを分泌する。褐色脂肪細胞または多液胞(pluri vacuolar)細胞は、多角形形状である。白色脂肪細胞とは異なり、これらの細胞はかなりの細胞質を有し、全体に脂肪滴が分散されている。核は丸く、偏心して位置しているが、細胞周辺にはない。褐色の色は、大量のミトコンドリアに由来する。
【0217】
実施例により示されるように、本発明の組成物は、トリグリセリド、ALT、ASTおよびグルコースの血清レベルを著しく減少させた。そのため、1つの実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、肝障害または免疫関連障害、例えば、メタボリックシンドロームを患う対象において、コレステロール、トリグリセリド、ALT、ASTおよびグルコースの血清レベルの減少およびインスリン抵抗性の減少の少なくとも1つをもたらす。減少、低減、阻止と示される場合、本発明の組成物は、免疫関連障害を患う対象において、トリグリセリド、ALT、ASTおよびグルコースのいずれか1つの血清レベルの約5%〜99%の低減をもたらすことを意味する。より特定的には、そのような低減は、処置前のレベル、または未処置対照のレベルと比べた場合、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および99%超の低減であり得る。増加、上昇、増強、誘導と示される場合、本発明の組成物が約5%〜99%の誘導、または増加をもたらすことを意味する。より特定的には、そのような増加は、処置前のレベル、または未処置対照のレベルと比べた場合、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および99%超の増加であり得る。
【0218】
1つの特定の実施形態によれば、本発明の組成物は自己免疫疾患、例えば、メタボリックシンドロームまたはこれを含む病状のいずれか、メタボリックシンドロームと関連する、これにより引き起こされる、これに関係するまたはこれに対し影響を有すると考えられる任意の病状、例えば、異常リポ蛋白血症(高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL−コレステロール)、肥満、NIDDM(非−インスリン依存性糖尿病)、IGT(耐糖能障害)、血液凝固性、血液線維素溶解欠如および高血圧の少なくとも1つを防止および/または治療するために使用され得る。
【0219】
メタボリックシンドロームは、下記を含む、一人の人における一群の代謝危険因子により特徴づけられる:
腹部肥満(腹部内またはその周囲の過剰脂肪組織);
アテローム生成的脂質異常症(血液脂肪障害−高トリグリセリド、低HDLコレステロールおよび高LDLコレステロール−動脈壁においてプラーク蓄積を助長する);血圧上昇;インスリン抵抗性または耐糖能障害;血栓形成促進性状態(例えば、血液中の高フィブリノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1);および炎症誘発性状態(例えば、血液中の上昇したC−反応性タンパク質)。メタボリックシンドロームを有する人々は、冠動脈心疾患および動脈壁中のプラーク蓄積に関連する他の疾患(例えば、脳卒中および末梢血管疾患)および2型糖尿病の危険が増加している。
【0220】
より特定的には、本発明の組成物は、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および低HDL−コレステロール、肥満、NIDDM(2型非インスリン依存性糖尿病)、IGT(耐糖能障害)、血液凝固性、血液線維素溶解欠如および高血圧を含み得る、異常リポ蛋白血症の治療を対象とする。
【0221】
1つの特定の実施形態によれば、本発明の免疫調節組成物は、糖尿病、特に2型糖尿病を治療するために使用され得る。真性糖尿病、しばしば単に糖尿病は、低レベルのインスリンホルモンまたは補うには不十分なレベルのインスリン分泌を伴うインスリンの効果に対する異常な抵抗性のいずれかに起因する障害された代謝および不適切に高い血糖(高血糖)により特徴づけられる症候群である。特徴的な症状は過剰な尿産生(多尿)、過度の口渇および水分摂取量の増加(多渇症)、ならびにかすみ目である。これらの症状は、血糖がわずかに上昇しただけでは生じない可能性がある。
【0222】
世界保健機関は、3つの主な型の糖尿病、すなわち1型、2型、および妊娠糖尿病(妊娠中に起こる)を認識し、これらは異なる原因および人口分布を有する。最終的には、すべての型が膵臓のβ細胞が高血糖を防止するのに十分なインスリンを産生することができないことによるが、原因は異なっている。1型糖尿病は通常、膵臓β細胞の自己免疫破壊による。2型糖尿病は、標的組織中のインスリン抵抗性により特徴づけられ、これにより、異常に高い量のインスリンが必要とされ、β細胞がこの要求を満たすことができなくなると糖尿病が発症する。妊娠糖尿病は、インスリン抵抗性が関与するという点で、2型糖尿病に類似し、妊娠中のホルモンは、この病状を発症する遺伝的な傾向がある女性においてインスリン抵抗性を引き起こし得る。
【0223】
糖尿病の急性合併症(低血糖、ケトアシドーシスまたは非ケトン性高浸透圧性昏睡)は、疾患が十分に制御されない場合に起こり得る。重篤な長期合併症としては、心血管疾患(倍の危険)、慢性腎不全、網膜障害(失明に至り得る)、神経障害(いくつかの種類)、および微小血管障害(インポテンスおよび治癒不良を引き起こし得る)が挙げられる。特に足の、創傷の治癒不良は壊疽に至る可能があり、切断が必要となる場合がある。
【0224】
別の実施形態によれば、本発明の免疫調節組成物は1型糖尿病の治療のために使用され得る。1型糖尿病は、インスリン欠乏に至る、膵臓内のランゲルハンス島のインスリン−産生β細胞の損失により特徴づけられる。このβ細胞損失の主原因は、T−細胞媒介自己免疫発作である。
【0225】
さらに別の実施形態では、本発明の医薬組成物は自己免疫障害の治療のために使用され得る。自己免疫障害の例としては、円形脱毛症、ループス、強直性脊椎炎、メニエール病、抗リン脂質抗体症候群、混合性結合組織病、自己免疫アジソン病、多発性硬化症、自己免疫溶血性貧血、重症筋無力症、自己免疫肝炎、尋常性天疱瘡、ベーチェット病、悪性貧血、水疱性類天疱瘡、結節性多発性関節炎、心筋症、多発性軟骨炎、セリアックスプルー−皮膚炎、多腺性症候群、慢性疲労症候群(CFIDS)、リウマチ性多発性筋痛症、慢性炎症性脱髄、多発性筋炎および皮膚筋炎、慢性炎症性多発ニューロパチー、原発性無ガンマグロブリン血症、チャーグ・ストラウス症候群、原発性胆汁性肝硬変、瘢痕性類天疱瘡、乾癬、クレスト症候群、レイノー現象、寒冷凝集素症、ライター症候群、クローン病、リウマチ熱、円板状ループス、関節リウマチ、本態性混合型、クリオグロブリン血症サルコイドーシス、線維筋痛症、強皮症、グレーブス病、シェーグレン症候群、ギラン・バレー、全身硬直症候群、橋本甲状腺炎、高安動脈炎、突発性肺線維症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、潰瘍性大腸炎、IgA腎症、ブドウ膜炎、インスリン依存性糖尿病(1型)、血管炎、扁平苔癬、および白斑が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で記載される経口組成物は、細胞、組織または臓器移植、例えば、腎臓、肝臓、および心臓移植に関連する異常なまたは望まれない免疫応答と関連する障害、例えば移植片対宿主病(GVHD)を治療または防止するために、または同種移植片拒絶を防止するために対象に投与することができる。
【0226】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の組成物により治療される自己免疫疾患は、関節リウマチ、1型糖尿病、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化、喘息、急性および慢性移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、乾癬、ブドウ膜炎、甲状腺炎および免疫媒介肝炎のいずれか1つとすることができる。
【0227】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、MSの治療のために使用され得る。多発性硬化症(MS)は典型的には、CNSにおける病変により引き起こされる再発性または慢性進行性神経機能障害により臨床的に特徴づけられる。病理学的に、病変は、脳、視神経、および脊髄に影響する複数の脱髄領域を含む。基礎をなす病因は不確かであるが、MSは、少なくとも部分的に自己免疫または免疫媒介疾患であると広く考えられる。
【0228】
このように、本発明は経口でまたは粘膜で、本発明の初乳由来免疫グロブリン製剤を投与することにより、MSの発症を治療、遅延または防止する組成物および方法を含む。MSを有するまたはその危険のある対象が、経口で本発明の組成物が投与される方法が含まれる。
【0229】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、RAの治療のために使用され得る。関節リウマチ(RA)は最も一般的な慢性炎症性関節炎であり、成人の約1%が罹患し、男性に比べ女性において2〜3倍高頻度に見られる。RAは、早ければ乳児期に始まる可能性があるが、発症は典型的には、50代または60代である。
【0230】
診断は、関節リウマチの分類のためのアメリカリウマチ学会判断基準に従い実施され得る。治療的有効量は、下記の1つ以上において改善を引き起こす:炎症関節数、腫脹の程度、および関節可動域。検査室測定(例えば、ESRおよびヘマトクリット値)および自覚的な特徴の評価(例えば、頭痛および朝のこわばり)もまた実施できる。本発明はまた、対象に治療的有効量の、初乳由来免疫グロブリン製剤を含む本発明の組成物を投与することにより、対象における自己免疫関節炎、例えば、RAを治療する方法を含む。
【0231】
本明細書で記載される本発明の組成物はまた、移植レシピエントにおける移植片拒絶を治療または防止するために使用することができる。例えば、組成物は、様々な組織および臓器移植手順において使用することができ、例えば、組成物は、レシピエントにおいて細胞移植片、例えば、幹細胞、例として骨髄の、および/または組織または臓器、例えば膵臓膵島、肝臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、筋肉、神経組織、胃、および腸の中枢性寛容を誘導するために使用することができる。このように、新規方法は、細胞、組織または臓器移植(例えば、高コレステロール血症を治療するための肝臓移植、筋ジストロフィーを治療するための筋細胞の移植、またはハンチントン病もしくはパーキンソン病を治療するための神経組織の移植)を伴う疾患または病状の治療において適用することができる。
【0232】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、IBDを患う対象において抗Th2、Trl/Th3応答に対してThl/Th2、Th3バランスを調節することができる。そのため、この実施形態によれば、本発明の組成物は、IBDを治療することを対象とする。炎症性腸疾患(IBD)は、免疫応答のThl−炎症促進性サブタイプとTh2−抗炎症性サブタイプの間のバランス異常の結果であると考えられる、一般に見られる胃腸障害である。
【0233】
IBD患者は、結腸細胞の成分およびいくつかの異なる細菌抗原に対する抗体を有する。これらの抗原は、上皮損傷の結果として免疫系に到達する。T細胞−媒介免疫の異常、例えば同期間のアネルギーおよびT細胞刺激への応答性の減少もまた、これらの患者において説明されている。さらに、粘膜細胞媒介免疫の変化、例えば粘膜IgG細胞濃度の増加およびT細胞サブセットの変化が同定され、抗原刺激が示唆された。
【0234】
さらに別の好ましい実施形態では、、本発明の組成物は、アテローム性動脈硬化の治療のために使用され得る。アテローム性動脈硬化は、動脈壁内のコレステロールの蓄積により特徴づけられる遅い進行性疾患である。アテローム性動脈硬化過程は、LDL−Cが血管壁内に閉じ込められると始まる。LDL−Cの酸化により、血管壁の内側の内皮細胞へ単球が接着する。これらの単球は活性化され、内皮空間に移動し、そこで、それらはマクロファージに転換され、LDL−Cのさらなる酸化がもたらされる。酸化LDL−Cは、マクロファージ上のスカベンジャー受容体を介して取り込まれ、泡沫細胞の形成に至る。線維キャップが、動脈平滑筋細胞の増殖および移動により生成され、よってアテローム性動脈硬化プラークが生成する。アテローム性動脈硬化病変部中の脂質沈着は、主に血漿アポBを含むリポタンパク質に由来する。これらとしては、カイロミクロン、LDL−C、IDL、およびVLDLが挙げられる。この蓄積は、バルクなプラークを形成し、これは血流を阻止し、最終的に血餅が形成し、動脈を閉塞させ、心発作または脳卒中を引き起こす。
【0235】
また、本発明の組成物により使用される免疫グロブリン製剤は、治療される障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合することができ、免疫制御細胞、特定的には、制御性T細胞を調節することができる。そのような調節により、例えば、炎症促進性ThI免疫応答に対するThl/Th2細胞バランスの調節が得られ、これにより前記障害に特異的に向けられる免疫応答が活性化される。
【0236】
本発明の免疫調節組成物の炎症促進性効果は、サイトカイン、および/またはケモカインの直接または間接的な活性化を介する、制御性細胞の特定のサブセット、抗原提示細胞または任意の型の細胞−細胞接触の活性化または促進により達成され得ることが認識されるべきである。
【0237】
この特定的な実施形態によれば、炎症促進性Th1応答に対するThl/Th2、Th3バランスの調節は、望ましくない不均衡な抗炎症性Th2、Trl/Th3応答を有する免疫関連障害、例えば、悪性および非悪性増殖性疾患、感染症、遺伝性疾患および神経変性障害において特に適用することができる。
【0238】
別の態様では、本発明は、病的障害の治療および/または予防のための薬剤の製造における抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0239】
1つの実施形態では、病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。
【0240】
別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。
【0241】
別の実施形態では、薬剤は肝損傷の治療および/または予防のためのものである。
【0242】
別の実施形態では、病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、感染症、および増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である。また、病的障害は手術後の続発性腹膜炎および感染、肝臓心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される。
【0243】
薬剤は、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤をさらに含み得る。さらなる免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0244】
1つの実施形態では、薬剤は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応を阻止または活性化する。
【0245】
別の実施形態では、薬剤は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、ここで、前記組成物は自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択される、それらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0246】
別の実施形態では、薬剤は、メタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防、糖尿病の治療および/または予防、耐糖能障害の治療、例えば、耐糖能を減少させる、血清インスリンレベルを減少させる、肝臓トリグリセリドレベルを減少させる、またはコレステロールレベルを減少させるのためのものである。
【0247】
1つの実施形態では、薬剤は炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0248】
薬剤はさらに、治療薬、担体もしくはアジュバントおよび/または非高免疫初乳を含み得る。
【0249】
1つの実施形態では、薬剤は、経口で、エアロゾルとして吸入により、または非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与するために製剤化される。
【0250】
別の実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0251】
別の実施形態では、組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止する。別の実施形態では、組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止し、これによって免疫活性化を調節する。
【0252】
別の態様では、本発明は、対象において免疫寛容を調節するための薬剤、または別の実施形態では対象において経口免疫寛容を調節するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供した。
【0253】
別の態様では、本発明は、肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、または脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用を提供する。
【0254】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0255】
1つの態様では、本発明は、治療の必要な対象に治療的有効量の、抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む病的障害の治療および/または予防のための方法を提供する。抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0256】
1つの実施形態では、病的障害は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である。
【0257】
別の実施形態では、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される。
【0258】
別の実施形態では、病的障害は肝損傷である。
【0259】
別の実施形態では、病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、感染症、および増殖性疾患からなる群より選択される、免疫関連障害である。また、病的障害は手術後の続発性腹膜炎および感染、肝臓心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される。
【0260】
別の実施形態では、組成物は、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤をさらに含む。さらなる免疫グロブリン製剤は初乳または鳥卵由来とすることができる。
【0261】
別の実施形態では、組成物は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応を阻止または活性化する。
【0262】
別の実施形態では、組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、ここで、前記組成物は自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択される、それらと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである。
【0263】
別の実施形態では、病的障害は、メタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方である。
【0264】
別の実施形態では、病的障害は糖尿病である。別の実施形態では、病的障害は耐糖能障害である。
【0265】
別の実施形態では、方法は耐糖能を減少させ、血清インスリンレベルを減少させ、肝臓トリグリセリドレベルを減少させ、またはコレステロールレベルを減少させる。
【0266】
別の実施形態では、方法は炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対してTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、ここで、前記組成物は感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである。
【0267】
別の実施形態では、組成物はさらに、非高免疫初乳、および/または治療薬、担体もしくはアジュバントを含む。
【0268】
組成物は、経口で、エアロゾルとして吸入により、または非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与され得る。
【0269】
別の実施形態では、免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分は、LPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する。
【0270】
別の実施形態では、方法は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止する。別の実施形態では、方法は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止し、これによって免疫活性化を調節する。
【0271】
別の態様では、本発明は、治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象において免疫寛容を調節するための方法を提供する。また、方法は経口免疫寛容を調節するためのものとすることができる。
【0272】
対象の肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための方法は、治療の必要な対象に有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む。別の実施形態では、方法は、肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導する、間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導する、肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させる、肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させる、脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導する、または脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するためものとすることができる。
【0273】
さらなる態様では、本発明は、病的障害の治療および/または予防のための方法を提供する。本発明の方法は、治療の必要な対象に治療的有効量のほ乳類初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤またはそれを含む組成物を投与する工程を含む。免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合することに注意すべきである。任意的な実施形態によれば、本発明の方法は、本発明の抗LPS強化免疫グロブリン製剤と、前記障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの免疫グロブリン製剤との複合組成物を投与する工程を含み、これにより、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を活性化または阻止する。
【0274】
1つの実施形態によれば、本発明の方法により使用される初乳由来の、乳または乳製品/複数可−由来の抗LPS強化免疫グロブリン製剤またはそれらの断片または混合物、組み合わせ、または任意の組成物は、IgG、IgAおよびIgMからなる群より選択される単量体、二量体および多量体免疫グロブリンならびにそれらの断片、それらの調製物、混合物および組成物を含む。より特定的には、本発明の方法により使用される免疫グロブリン製剤は、特定的にはIgG、特に、IgG1および/またはIgG2およびそれらの任意の断片を含み得る。また、あるいはさらに、本発明の方法により使用される免疫グロブリン製剤は特定的には分泌型二量体IgAを含む。
【0275】
別の実施形態によれば、本発明の方法は初乳由来の抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物または複合組成物を使用し得る。そのような組成物は任意でさらに初乳成分/複数可、好ましくは、アラーミン、デフェンシン、コロストリニン、または任意の糖脂質、糖質またはそれらの任意の調製物、混合物および組み合わせ、または任意の他のアジュバント/複数可を含む。本発明はさらに、免疫調節治療薬の免疫調節効果を増強させるために、初乳または任意の初乳由来の調製物の使用を提供することに注意すべきである。1つの特定の実施形態では、本発明の方法により使用される組成物または複合組成物は、任意の追加のアジュバントを含み得る。したがって、適切なアジュバントは任意の抗原、抗体、スフィンゴ糖脂質、タンパク質、サイトカイン、接着分子、および抗原提示細胞または免疫系に関連する任意の他の細胞の機能を直接または間接的様式で活性化または変化させることができる成分とすることができる。
【0276】
さらに別の実施形態では、本発明により使用される抗LPS強化免疫グロブリン製剤または任意の他の免疫グロブリン製剤は、LPSおよび任意で、さらに、治療される障害に特異的な少なくとも1つ抗原または少なくとも2つの抗原の混合物で免疫化されたほ乳類、好ましくはウシから獲得され得る。
【0277】
1つの実施形態によれば、本発明の方法は、前記対象に、治療的有効量のほ乳類抗リポ多糖(LPS)強化初乳由来免疫グロブリン製剤またはこれを含む任意の組成物を投与する工程を含む。そのような方法は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症の治療、防止および予防に特に適用され得ることに注意すべきである。
【0278】
より特定的には、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化の少なくとも1つである。
【0279】
これらの合併症は、慢性HCV感染、アルコール性肝炎、慢性HBV、非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤性肝損傷、または急性もしくは慢性肝疾患の任意の他の原因に起因し得ることに注意すべきである。
【0280】
1つの任意的な実施形態によれば、本発明は、免疫関連障害を治療するための方法を提供する。この特定的な実施形態によれば、本発明の方法は、前記対象に治療的有効量の、抗LPS強化免疫グロブリン製剤と、前記病的障害に特異的な少なくとも1つの抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む少なくとも1つの初乳由来免疫グロブリン製剤との組み合わせ、あるいはこれらと、および任意で追加の治療薬または任意の担体およびアジュバントを含む複合組成物を投与する工程を含む。
【0281】
この実施形態によれば、本発明により使用される組み合わせは、制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応を阻止または活性化する。
【0282】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、免疫関連障害、例えば、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、感染症、および増殖性疾患の治療に特に適用され得る。
【0283】
別の実施形態では、本発明は耐糖能障害を治療する方法を提供する。
【0284】
別の実施形態では、本発明は耐糖能を減少させる方法を提供する。
【0285】
別の実施形態では、本発明は血清インスリンレベルを減少させる方法を提供する。
【0286】
別の実施形態では、本発明は肝臓トリグリセリドレベルを減少させる方法を提供する。
【0287】
別の実施形態では、本発明はコレステロールレベルを減少させる方法を提供する。
【0288】
本発明の方法は、急性合併症の治療のため、これらの合併症の発症および/または再発の防止のためのものであることに注意すべきである。
【0289】
1つの実施形態によれば、本発明の方法により使用される複合組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止する。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれらと関連する任意の障害、例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多のいずれか1つの治療に適用され得る。
【0290】
また、本発明の方法により使用される複合組成物は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節をもたらし、よって前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ得る。この特定的な実施形態によれば、そのような組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療に適用され得る。
【0291】
1つの実施形態によれば、本発明の方法は、ウイルス疾患、例えばHCV、HBV、CMV、およびEBVを治療するために特定的に適用され得る。
【0292】
前記本発明の方法のさらに別の実施形態では、抗LPS−強化免疫グロブリン製剤、またはこれを含む任意の組成物は、経口で、またはエアロゾルとして吸入により、または静脈内、筋内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸もしくは皮下投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与される。
【0293】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、特定的には、ほ乳類対象の治療に好適である。治療のための「ほ乳類」または「ほ乳類の」はほ乳類として分類された任意の動物、例えば、ヒト、研究動物、飼育動物および家畜、ならびに動物園、スポーツ、またはペット動物、例として、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを示す。特定の実施形態では、前記ほ乳類対象はヒト対象である。
【0294】
「治療」は、治療的処置を指す。治療の必要なものは、免疫関連疾患を患うほ乳類対象である。「患者」または「治療の必要な対象」は、そのような苦しみを防止、克服または減速させるために、本発明の免疫調節組成物の投与が望ましい任意のほ乳類を意味する。
【0295】
「有効量」または「十分量」という用語は、選択された結果を達成するのに必要な量を意味する。「有効治療量」は、防止または治療目的、投与経路、患者の全身状態(年齢、性別、体重および担当医にわかっている他の留意事項)と併せて疾患の重篤度により決定される。
【0296】
上で示した通り、一般に、治療効果を達成するのに必要とされる用量は、患者の年齢、体重および性別ならびに投与方法のような因子だけでなく、疾患進行程度および関係する疾患の特定の障害のために使用される特定の誘導体の効力に依存する。
【0297】
免疫関連疾患を発症する危険の防止または低減はまた、本発明の範囲内に含まれることが認識されるべきである。そのような方法は、予防的有効量の本発明の組成物またはそのような組成物内に含まれる活性成分の、疾患を発症する危険のある人間への投与を含み得る。
【0298】
「予防的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医により組織、系、動物またはヒトにおいて防止されることが求められる生物学的または医学的事象の発生の危険を防止または減少させる医薬複合組成物の量を意味するよう意図される。
【0299】
本発明において提供される治療および防止法では、前記治療的有効量または用量は治療される病態の重篤度および反応性に依存し、治療過程は、数日〜数ヶ月続き、または治癒が得られるまで、あるいは病態の減退が達成されるまで続くことに注意すべきである。最適投薬スケジュールは、患者の体内の薬物蓄積の測定から計算することができる。当業者は、容易に最適用量、投与法および繰り返し率を決定することができる。一般に、用量は、体重に従い計算され、毎日、毎週、毎月または毎年、あるいはさらに2〜20年毎に1回または複数回投与され得る。当業者は、測定された本発明の組成物の体液または組織中での滞留時間および濃度に基づいて投薬のための繰り返し率を推定することができる。治療の成功に続き、病態の再発を防止するために患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、ここで、本発明の組成物は、維持量で、1日に1回以上投与される。
【0300】
開示され、記載されるように、この発明は、本明細書で開示される特定の実施例、方法工程および組成物に限定されないことが理解されるべきである。それは、そのような方法工程および組成物は幾分変動し得るからである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するために使用され、制限することを意図していないことも理解されるべきである。それは、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物にのみ制限されるからである。
【0301】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「an」および「その(the)」は、その内容が明確に別記しない限り、複数の指示対象を含むことを注意するべきである。
【0302】
この明細書および実施例、それに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈が別様に要求しない限り、「含む、備える(comprise)」という用語および変形、例えば「含む(comprises)」および「含んでいる」は、1つの提示された完全体もしくは工程または完全体もしくは工程の群を含むが、いかなる他の完全体もしくは工程または完全体もしくは工程の群をも排除しないことを意味することが理解されるであろう。
【0303】
下記実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明者らに使用される技術を表す。これらの技術は本発明を実施するための好ましい実施形態の例示であるが、当業者であれば、本開示を考慮すると本発明の精神および意図された範囲から逸脱せずに多くの改変が可能であることを認識するであろうことが理解されるべきである。
【0304】
実施例
下記実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明者らに使用される技術を表す。これらの技術は本発明を実施するための好ましい実施形態の例示でるが、当業者であれば、本開示を考慮すると本発明の精神および意図された範囲から逸脱せずに多くの改変が可能であることを認識するであろうことが理解されるべきである。
【0305】
実施例1:初乳由来抗LPS強化調製物の調製
製品「BioGARD」は、Anadis Limitedから供給される専売の初乳調製物である。各Anadis BioGARD錠剤は、無コート1.2g経口錠剤であり、これは600mgの凍結乾燥されたウシ初乳粉末(BCP)を、賦形剤と共に含む。BioGARD錠剤中の活性物質は、民間の乳牛飼いにより搾乳された凍結乾燥ウシ初乳粉末である。これらの群れ中のウシは、所定のウシ病原体に対しワクチン接種されると共に、ヒト消化管ミクロフローラ中の主生物である複数の大腸菌の菌株の細胞外壁抗原に対する専売Anadisワクチンでワクチン接種される。Anadis BCPは、分娩後に集められた民間の乳牛の最初の搾乳由来の、高−タンパク質(>80%)、ラクトース−および脂肪低減天然産物である。これは濃縮された凍結乾燥粉末として錠剤化前に提供される。
【0306】
Anadis BCPは、乾燥粉末中に約40%の抗体(免疫グロブリン)を含む。BioGARDのBCP中の免疫グロブリンは、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)に対し高い結合活性を有する。LPSの結合は、Anadisにより標準ELISAおよび免疫ブロット検出システムを用いてアッセイされる。
【0307】
3匹の乳牛はLPS抗原混合物で免疫化される。抗原ワクチンは、妊娠期間の最後の8週の間に投与した。初乳の乳を授乳の最初の2日間中に回収した。乳脂肪を除去し、脱脂乳を56℃で30分間低温殺菌し、その後、Hilpert, Human Milk Banking 1984におけるようにレンネット処理することにより凝固させた。カゼインを含む凝乳を除去した後、乳清を遠心分離し、微細沈殿物を廃棄した。等体積の飽和硫酸アンモニウム溶液をBrandonら[Brandon et al.、Aust. J. Exp. Biol. Med. Sci.
49:613 (1971)]におけるように、上清に連続混合しながら徐々に添加した。遠心分離後、得られた沈殿物を確保し、ラクトースおよび塩を含む上清を廃棄した。
【0308】
沈殿物を、0.32M NaCl(元の体積の30%)を含む0.01M TRIS−HCl緩衝液pH8に溶解した。この溶液を、5体積の同じ緩衝液に対し、Amiconスパイラル膜SIY30カートリッジを用いて大規模に透析した。その後、抗体溶液を濃縮し10%とし、瞬間凍結し、凍結乾燥させた。
【0309】
初乳からの抗体断片の生産
抗体断片は、Jones R.G.A.およびLandon J.により記載される方法に基づく改良法に従い調製される[Jones R.G.A. and Landon J. J. Immunol. Methods 263: 57-74
(2002)]。簡単に言うと、等量の0.2M酢酸ナトリウム緩衝液pH4.0を、上で記載されるように免疫化動物から獲得された初乳プールに添加する。希釈初乳プールのpHを、4.6に調節し、37℃で2時間インキュベートし、カゼインを沈殿させる。その後、初乳を遠心分離し、濾過して(0.45μm)カゼインを除去する。得られた初乳乳清のpHをpH4.0に調節し、続いて、ペプシン(1:15,000活性を有する酵素溶液)を5.0%w/wで添加し、20時間45℃でインキュベートする。ペプシン消化を、0.5体積のIM Tris pH8を添加し、反応濃混合物を4℃まで冷却することにより停止させる。反応物のpHを7.0に調節し、F(ab’)2混合物を、30kD限外濾過膜および50体積超の20mMリン酸ナトリウム/150mM NaCl pH6.0緩衝液に対する透析濾過液を用いて濃縮する。その後、小ペプチドを除去し、F(ab’)2、ペプシンおよび大ペプチドを含む得られた溶液を、ペプシンおよび酸性凝集物に結合するQセファロースアニオン交換カラムに供した。精製されたF(ab’)2を得るために、残りのFcおよび未消化IgをF(ab’)2(残りの大ペプチドおよび未消化Igとの混合)から、タンパク質Gにより、またはPrometic Mabsorbent AlPクロマトグラフィーにより除去する。
【0310】
2−メルカプトエチルアミン(MEA)によるFab’の調製
Fabを調製するために、新たに調製した5mM EDTA−二ナトリウムを含む50μl(1/9体積)の0.1M2−メルカプトエチルアミン(MEA)の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0を、0.1〜3.0mgのF(ab’)2を含む0.45mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0に添加する。混合物をその後、37℃で90分間インキュベートする。その後、反応混合物をPD−10カラム、または好適なG25カラム上に適用し、過剰なMEAを除去するために、0.1Mリン酸ナトリウム(pH6.0、5mM EDTA−二ナトリウムを有する)をランニング緩衝液として使用する。Fab’を含む第1のタンパク質ピークを収集し、本発明書において下で示される対応する異なる適応症を治療するために使用する。
【0311】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤を調製するために、初乳を約200の民間の乳牛飼いから収集した。これらの群れ中のウシは、所定のウシ病原体に対しワクチン接種されていると共に、ヒト消化管ミクロフローラ中の主生物である複数の大腸菌の菌株の細胞外壁抗原に対する専売Anadisワクチンでワクチン接種されている。得られた初乳を試験のための個々のバッグ内で凍結させた。処理のために、初乳を解凍し、プールし、脂肪を除去した。各バッチを低温殺菌した。初乳を限外濾過により濃縮し、凍結乾燥前に体積を減少させた。限外濾過工程により最終粉末中のラクトースを7%未満まで(約50%から)減少させた。
【0312】
実施例2:肝炎治療における初乳由来抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用
免疫媒介肝炎モデルでは、11〜12週齢の雄C57/blマウスに、肝炎を誘発することが知られている、50mM Trig pH7、150mM NaCl、4mM CaClに溶解されたCon A(MP Biornedicals、USA)の500μglinouse(約15mg/kg)の用量を尾静脈注射する。試験されたすべての群の動物は、未処置対照に比べ、異なる濃度の特異抗体調製物または、実験手順で記載されるBioGARD調製物を用いて経口投与する。試験されたすべての群の動物を、以下のパラメータについて追跡し、対照群と比較する:血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、肝臓標本の組織学的検査
、NKTマーカーのための肝内および脾臓内リンパ球のFACS分析、血清サイトカインレベルの測定ならびに転写因子STAT1、4および6ならびにNFκBの発現に対するウエスタンブロット分析。
【0313】
実施例3:抗LPS抗体で強化した初乳の経口投与
抗LPS強化免疫グロブリン製剤の調製のために、初乳を約200の民間の乳牛飼いから収集した。これらの群れ中のウシは、所定のウシ病原体に対しワクチン接種されていると共に、ヒト消化管ミクロフローラ中の主生物である複数の大腸菌の菌株の細胞外壁抗原に対する専売Anadisワクチンでワクチン接種されている。得られた初乳を試験のための個々のバッグ内で凍結させた。処理のために、初乳を解凍し、プールし、脂肪を除去した。各バッチを低温殺菌した。初乳を限外濾過により濃縮し、凍結乾燥前に体積を減少させた。限外濾過工程により最終粉末中のラクトースが7%未満まで(約50%から)減少した。
【0314】
抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む2つの組成物を、初乳中でLPSに対する高濃縮抗体(IgGを含む)を生産させるために、妊娠したウシに、多くの大腸菌株から調製された細菌細胞壁抗原(例えばLPS)をワクチン接種することにより調製した。以下の実施例では、この組成物は「HIBC」と呼ばれる。
【0315】
第2の調製をは、初乳中でLPSに対する高濃縮抗体(IgGを含む)を生産させるために、妊娠したウシに、多くの大腸菌株を含むワクチンを接種することにより調製し、また、LPSおよび他の表面抗原に対し強化させた。IgGを、その後、この初乳調製物から精製した。下記実施例では、この組成物は、「T−IgG」と呼ばれる。
【0316】
【表1】

【0317】
実験群
2つの群のマウス(表11)を研究した。マウス(1群あたり10匹)に毎日7日間(経口的に)、30μlの水(対照、A群)または30μl(約3mg)の、水に溶解させた抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤(B群)を与えた。7日後、マウスを屠殺した。屠殺日に、心臓血液を標準技術により収集し、その後、さらなる目的のために血清を獲得した。
【0318】
動物
未処置のC57Bl/6マウス(11−12週齢)を使用した。マウスは、Harlan Laboratories(Jerusalem、Israel)から入手し、Animal Core of the Hadassah−Hebrew University Medical Schoolで維持した。マウスには、標準の飼料および水を自由に与え、12時間明/暗サイクルで維持した。動物実験は、Hebrew University−Hadassah Institutional Committee for Care and Use of Laboratory Animals(実験動物の世話および使用のための組織委員会)のガイドラインに従い、委員会の承認を得て実施した。
【0319】
肝臓
収集した後、肝臓を氷冷PBSに移し、切り、刻んで、Dounceホモジナイザーを用いて9mlの滅菌冷溶解緩衝液1と共にホモジナイズし、エッペンドルフ管に分割し(各管中1.5ml)、氷上で30分間維持し、続いて、超音波処理し(25秒の5サイクル)、遠心分離する(4℃、14,000RPMで15分間)。上清を収集して1つの管に入れ、タンパク質定量のためにBradford技術を用いてサンプリングし、−20℃で貯蔵する。
【0320】
脾臓
切除後、脾臓を細胞解離グリッド(60メッシュ)上RPMI1640媒質中で刻み、遠心分離し(4℃、14,000RPMで10分間)、上清を廃棄する;赤血球を、1mlの冷RBC溶解緩衝液(155mM塩化アンモニウム)を添加することにより溶解させ、続いて3回冷PBSですすぎ、遠心分離する。
【0321】
脾臓の細胞質画分の調製
冷緩衝液1を脾臓細胞のペレットに添加し(6:1の緩衝液対ペレット比)、細胞を2mlのバイアルに分割し、氷上で30分間維持し、5回超音波処理し(毎回25秒)、遠心分離する(4℃、14,000RPMで15分間);その後、上清をすべてのバイアルから収集し、タンパク質定量のためにサンプリングし、−20℃で維持する。
【0322】
脾臓の膜画分の調製
細胞質分別の上記遠心分離工程から得られる残りのペレットに、100〜250mlの緩衝液2を添加し、30分間4℃で撹拌し、遠心分離する(4℃、14,000RPMで15分間)。その後、上清をすべてのバイアルから収集し、タンパク質定量のためにサンプリングし、−20℃で維持する。
【0323】
T細胞亜集団の決定のための脾臓および肝臓リンパ球の単離
異なる実験モデルのマウスを指示された日に屠殺する。脾臓リンパ球およびNKT細胞を単離し、赤血球を除去する。肝内リンパ球を以下のように単離する:横隔膜上方の下大静脈を切断した後、肝臓を冷PBSで、色が薄くなるまでフラッシングし、続いて、結合組織および胆嚢を除去する。肝臓および脾臓を、RPMI−1640+FCS中で維持した。その後、脾臓を、70μmナイロンセルストレイナー(Falcon)を通して粉砕し、細胞残屑を除去するために遠心分離した(1250rpmで7分)。赤血球を1mlの冷155mM塩化アンモニウム溶解緩衝液で溶解させ、直ちに遠心分離した(1250rpmで3分)。その後、脾細胞を洗浄し、1ml RPMI+FCSで再懸濁させた。結合組織の残りを除去した。トリパンブルー染色による生存率は、90%超であった。肝内リンパ球に対しては、肝臓を最初にステンレスメッシュ(サイズ60、Sigma)を通して粉砕させ、細胞懸濁液を50ml管に5分間入れ、細胞残屑を降下させた。10mlのLymphoprep(Ficoll、Axis−Shield PoC AS、Oslo、Norway)を徐々に、50ml管内の同じ体積の細胞懸濁液下に入れた。管をその後、1800rpmで18分間遠心分離した。界面中の細胞を収集し、新しい管に取り出し、これを再び1800rpmで10分間遠心分離し、肝細胞が激減した細胞ペレットを得、250μlの最終体積とした。約1×10細胞/マウス肝臓を収集した。細胞生存率はトリパンブルー染色により検出した。
【0324】
脂肪細胞の単離
脂肪組織(内臓脂肪体)を刻み、10mMグルコースおよび2.5%ウシ血清アルブミンを含むKrebs−Ringer重炭酸塩緩衝液(3mL/g脂肪組織)中でインキュベートし、840U/gコラーゲナーゼ1型(Sigma、Rehovot、Israel)と共に、37℃で、穏やかに撹拌しながら1時間インキュベートした。その後、2回、シフォンメッシュ(100μm)を通して濾過し、50×gで5分間遠心分離した。その後、浮遊脂肪細胞を間質血管系(SV)画分のペレットから分離した。下方画分を除去し、200×gで5分間遠心分離し、SV細胞をペレット化した。その後、細胞数を計数した。
【0325】
リンパ球の異なるサブセットを決定するためのフローサイトメトリー分析(FACS)
血液、脾臓または任意の臓器からリンパ球を単離した後、3組の2〜5×10細胞/500μL PBSをFalcon 2052管に入れ、4mLの1%BSAと共に10分間インキュベートし、1400rpmで5分間遠心分離する。細胞を10μL FCS中に、下記リンパ球マーカー:CD3、CD4、CD8、NKl.1、CD25、FOXp3、LAP細胞、IL−17、アネキシンおよびT細胞活性化のための表面マーカーに対し誘導される1:20標識(FITC、APCまたはPE−標識)1次抗体と共に再懸濁させる。細胞−抗体混合物を、10分毎に、30分間混合する。細胞を、それぞれ、抗CD3および抗CD4、抗CD8、ならびに抗NKl.lを使用して単離する。細胞を2回1%BSA中で洗浄し、4℃で、読み取りまで維持する。対照群では、5μLの1%BSAのみを添加する。表面染色は、細胞を、抗体および抗CD16/32(Fcブロック、eBioscience)と4℃で、PBSおよび0.5%BSAを含むFACS緩衝液中、30分間インキュベートすることにより実施した。細胞をさらに2回FACS緩衝液で洗浄し、FACS緩衝液中に再懸濁させ、フローサイトメトリーにより分析した。分析細胞選別を、各群由来の1×I0細胞に対し、蛍光活性化細胞選別機(FACStar Plus、Becton Dickinson)を用いて実施する。適切なアイソタイプ対照を、すべての実験で使用した。分析は、FACSCalibur機器(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用いて実施した。生細胞のみを計数し、非抗体処理リンパ球からのバックグラウンド蛍光を減算した。ゲートを前方および側方散乱に対し設定し、死細胞および赤血球を排除した。データはConsort30 2色輪郭プロット(Becton Dickinson、Oxnard、CA、USA)またはCell Questプログラムにより解析した。
【0326】
NKTリンパ球パーセンテージの決定のためのFACS分析
リンパ球単離後直ちに、3組の2〜5×10細胞/500μL PBSをFalcon 2052管に入れ、4mLの1%BSAと共に10分間インキュベートし、350gで5分間遠心分離する。NKTリンパ球パーセンテージを決定するために、抗CD3および抗DX5抗体を使用する(Pharmingen、USA)。分析細胞選別を、各群由来の1×I0細胞に対し、蛍光活性化細胞選別機(FACSTAE plus、Becton Dickinson)を用いて実施する。生細胞のみを計数し、非抗体処理リンパ球からのバックグラウンド蛍光を減算する。ゲートを前方および側方散乱に対し設定し、死細胞および赤血球を排除する。データはConsort30 2色輪郭プロット(Becton Dickinson、Oxnard、CA、USA)またはCell Questプログラムにより解析する。
【0327】
NKTリンパ球の単離
細胞分離を製造者の指示に従い、磁気細胞選別(MACS、Miltenyi Biotec、Germany)を用いて実施する。抗CD3および抗DX5磁気ビーズをNKTリンパ球の分離のために使用する。ビーズを、製造者の指示に従い2つの工程の間で除去する。細胞のFACS分析により、95%を超える精度が達成される。
【0328】
肝細胞障害
肝損傷を、血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性により評価し、これらは自動分析器を用いて決定された。
【0329】
測定
以下のパラメータを測定した:血糖、総コレステロールおよびトリグリセリド。血糖値は、標準グルコメーターを用いて測定した。血漿トリグリセリドおよび総コレステロール値は、臨床化学分析器Reflovet Plus機器(Roche Diagnostics、GmbH、Mannheim、Germany)により測定した。
【0330】
耐糖能試験
マウスを第30日に、一晩の絶食後、耐糖能試験(GTT)に供した。グルコースを経口で(1.25g/kg)投与した。血清グルコース測定を、尾静脈血液に対して、15分毎に3時間実施した。グルコースレベルは、標準グルコメーターにより測定した。
【0331】
グルコース朝レベル
研究群はまた、安静時(非絶食時)朝グルコースレベルにより評価した。
【0332】
サイトカイン決定
血清に対し「サンドイッチ」ELISAにより、市販のキット(Quantikine、R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を用いて、IFN−γおよびTGF−βレベルを決定した。血清インスリンもまた、製造者の指示に従い、「サンドイッチ」ELISAにより、Mercodia ABの市販のキット(Uppsala、Sweden)を用いて決定した。
【0333】
統計
統計的有意性を対応のない両側スチューデントt検定により決定し、p<0.05の値のみを示す。
【0334】
トリグリセリド測定
示される日に、分光光度計(Cobas DP−25P)を用いて血清トリグリセリドレベルを測定する。
【0335】
肝臓脂肪性肝炎スコア
各マウス由来の肝臓セグメントを、10%ホルムアルデヒド中で固定し、組織学的分析のためにパラフィン中に埋め込んだ。5つの切片(5μm)をヘマトキシリン/エオシンで染色し、2人の病理学者により盲検方式で検査する。組織学的検査および脂肪性肝炎グレードスコアリング(NASHスコア)を脂肪性肝炎スコアリングシステムを用いて実施する。
【0336】
組織学的検査
パラフィンに埋め込まれた肝臓切片のヘマトキシリン/エオシン染色を実施する。切片を実験条件に対しては知らされていない2人の熟練した病理学者(VD、YS)により検査する。
【0337】
実施例4:抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は肝臓酵素を減少させる
本発明者らは、抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が経口投与された動物の、肝損傷を示す肝臓酵素レベルが治療により改善されるかどうかを評価した。アスパルチルトランスアミナーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性のレベルを、臨床化学分析器、Reflovet Plus(Roche Diagnostics、GmbH、Mannheim、Germany)により決定した。図1は、減少がAST群A対B(p<0.001)に対し有意であったことを示す。これは、対照群に対するALTおよびAST血清レベルの明確で有意な減少により明らかにされるように、肝損傷の寛解を証明する。
【0338】
実施例5.経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は肝臓においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる
肝内リンパ球の単離
マウスを屠殺した後、以下のように、肝内リンパ球を単離した:肝臓を除去した後、媒質(RPMI−1640+FCS)中で維持した。その後、肝臓をステンレスメッシュ(サイズ60、Sigma)を通して粉砕し、細胞懸濁液を50ml管に5分間入れた。Lymphoprep(10ml、Ficoll、Axis−Shield PoC AS、Oslo、Norway)を、50ml管内の同様の体積の細胞懸濁液下に入れた。管を1800rpmで18分間遠心分離した。界面中の細胞を収集し、1800rpmで10分間遠心分離し、肝細胞が激減した細胞ペレットを得、250μlの最終体積とした。約1×10細胞/マウス肝臓を収集し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0339】
フローサイトメトリー
細胞の2〜3色表面染色を下記表面抗体:抗CD4−FITCおよび抗CD25−PEを用いて実施した。(抗体は、eBioscience、San Diego、CAから購入した)。表面染色は、新たに単離した細胞を抗体および抗CD16/32(Fcブロック、eBioscience)と4℃で、PBSおよび0.5%BSAを含むFACS緩衝液中、30分間インキュベートすることにより実施した。細胞を2回FACS緩衝液で洗浄し、FACS緩衝液中に再懸濁させ、フローサイトメトリーにより分析した。適切なアイソタイプ対照をすべての実験において使用した。分析は、FACSCalibur機器(Becton Dickinson、San Jose、CA)を使用し、FCS express V.3ソフトウェア(DeNovo software、Los Angeles、CA)を用いて実施した。
【0340】
統計分析
統計分析を、スチューデントt検定を用いて実施した。P≦0.05は有意であるとみなした。
【0341】
肝臓における制御性T細胞の増加の特異性を決定するために、肝臓リンパ球上でのマーカー(CD4+CD25+)の平均表面発現を、フローサイトメトリーを用いて、第7日に(屠殺日)3.0mg抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤で処置したすべてのマウスにおいて測定した。図2Aは、経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が、肝臓においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させることを証明する。ゲーティングはCD4上にあり、値は平均±標準偏差である。
【0342】
抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤で処置されたマウスの肝臓(群B)または未処置対照(群A)から単離されたリンパ球上で実施されたFACS由来の代表的なドットブロットを図2Bに示し、この図は、経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が肝臓においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させることを示す。
【0343】
実施例6:経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は、肝臓においてCD25+CD4+LAP−、CD45+LAP+およびCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる
肝内リンパ球の単離およびFACS分析を上記のように実施した。
【0344】
フローサイトメトリー
LAP染色では、以下の抗体を使用した:抗CD3−Alexa−fluor405、抗CD45−PerCP−Cy5.5および抗LAP−APC。アフィニティ精製されたビオチン化ヤギ抗LAP特異ポリクローナル抗体をR&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から購入し、ストレプトアビジン−APCをビオチン化1次抗体(R&D)を検出するための2次試薬として使用した。LAP染色では、細胞をLAP/対照抗体と20分間プレインキュベートし、CD3−Alexa−fluor405またはCD45−PerCP−Cy5.5で染色し、続いて、ストレプトアビジン−APC染色を実施した。
【0345】
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤がTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。図3は、フローサイトメトリーを用いて、第7日に(屠殺日)3.0mgで処置したすべてのマウスにおいて測定した、肝臓リンパ球上でのマーカー(CD25+CD4+LAP−、CD45+LAP+およびCD3+LAP+)の平均表面発現を示す。図3AおよびBは、抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与が、肝臓においてCD25+CD4+LAP−、CD45+LAP+およびCD3+LAP+制御性T細胞のサブセットを増加させたことを証明する。
【0346】
実施例7:経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脾臓においてCD45+LAP+およびCD8+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤がTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、脾臓における、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。図4は、フローサイトメトリーを用いて、第7日に(屠殺日)3.0mgで処置したすべてのマウスにおいて測定した、脾臓リンパ球上でのマーカー(CD45+LAP+およびCD8+LAP+)の平均表面発現を示す。図4AおよびBは、抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与が、脾臓においてCD45+LAP+およびCD8+LAP+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0347】
実施例8:抗LPS抗体が強化された初乳のOb/Obマウスへの経口投与
【0348】
【表2】

実験群
3つの群のマウス(表2)を試験した。Ob/Obマウス(4匹/群)に、毎日、25日間(1週につき5日)、30μlのPBS(対照、群A)または水に溶解した30μl(=100μg)のT−IgG初乳(群B)、または30μl(=100ug)の抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤(群C)を与えた(PO)。4週後、マウスを屠殺した。屠殺日に、心臓血液を標準技術により収集し、血清を得た。
【0349】
動物
Ob/Obモデルでは、Harlan Laboratories (USA)から購入した若い(6〜7週齢)雄C57BL/6 Ob/Obマウスを使用した。すべてのマウスを、Animal Core of the Hadassah−Hebrew University Medical Schoolで維持した。マウスには、標準の飼料および水を自由に与え、12時間明/暗サイクルで維持した。動物実験は、Hebrew University−Hadassah Institutional Committee for Care and Use of Laboratory Animals(実験動物の世話および使用のための組織委員会)のガイドラインに従い、委員会の承認を得て実施した。
【0350】
実施例9:経口T−IgGはOb/Obマウスにおいて血清インスリンを減少させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の効果をさらに評価するために、絶食血清インスリンのレベルを、4週のT−IgGまたはHIBCを経口投与後に、群A〜Cのマウスで決定した。血清インスリンを、製造者の指示に従い、「サンドイッチ」ELISAにより、Mercodia ABの市販のキット(Uppsala、Sweden)を用いて決定した。血清を、マウスを30日に屠殺後Ob/Obマウスから収集した。図5は、マウス投与されたT−IgGは、血清インスリンレベルの減少を示し、インスリン抵抗性に対する抗LPS抗体の有益な影響が示される。さらに、観察された減少は、代謝的効果における初乳由来のアジュバントの重要な役割を支持するデータを提供する。
【0351】
実施例10:経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤はOb/Obマウスにおいて耐糖能を減少させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が血清グルコースレベルを減少させることができるかどうかを検査するために、Ob/Obマウスは、第30日に、一晩の絶食後耐糖能試験(GTT)を受けた。グルコースを経口で(1.25g/kg)投与した。血清グルコース測定を、尾静脈血液に対して、15分毎に3時間実施した。グルコースレベルは、標準グルコメーターにより測定した。
【0352】
図6に示されるように、マウス投与されたHIBCは耐糖能を改善し、対照群に比べ、耐糖能試験での、曲線下面積の減少を伴う、より低いグルコース値により証明された。統合すると、実施例9および10で得られたデータは、メタボリックシンドロームの改善における、本発明によるHIBCの重要性を支持する。
【0353】
実施例11.抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与はOb/Obマウスにおいて肝損傷を減少させる
抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は様々なメタボリックシンドロームマーカーを改善する、例えば、耐糖能を減少させる、および血清インスリンを減少させることを示してきたので、本発明者らは次に、調製物を与えられた肝臓酵素レベル(肝損傷を示す)もまた、治療により改善されるかどうかを評価した。ASTおよびALT活性のレベルを、臨床化学分析器、Reflovet Plus(Roche Diagnostics、GmbH、Mannheim、Germany)により決定した。図7はT−IgG−初乳処置マウスにおけるASTおよびALTレベルの減少を証明する。
【0354】
実施例12.抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与はOb/Obマウスにおいて肝臓TGを減少させる
抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は様々なメタボリックシンドロームマーカーを改善することを示してきたので、肝臓トリグリセリド蓄積に対する抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤およびT−IgG初乳の経口投与の効果を、研究の最後に、マウスを屠殺した後決定した。肝臓内での細胞内トリグリセリド(TG)の蓄積を、Folch法の改変型を使用して定量した。TGを瞬間凍結肝臓のアリコートから抽出し、その後、GPO−Trinderキット(Sigma、Rehovot、Israel)を用いて分光光度的にアッセイし、ホモジネート中のタンパク質量に正規化させた。肝臓トリグリセリド量を、すべての処置および対照群に対し計算した。
【0355】
図8は、経口投与抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が、対照群中のマウスに比べ、肝臓トリグリセリド量を減少させたことを証明する。減少は、対照に比べHIBCに対し有意であった(P<0.04)。
【0356】
実施例13.抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は、脾臓においてCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤がTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、脾臓において組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。図9は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脾臓リンパ球上でのマーカー(CD3+LAP+)の平均表面発現を示す。値は平均±標準偏差である。図9AおよびBは、T−IgGの経口投与が、脾臓においてCD3+LAP+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0357】
実施例14.抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の経口投与は脾臓においてCD8+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤がTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、脾臓において組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。脾臓リンパ球の単離、フローサイトメトリー手順および分析ならびに染色抗体は上記で記載したものと同じである。図10および11は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脾臓リンパ球上でのマーカー(CD8+CD25+)の平均表面発現を示す。値は平均±標準偏差である。
【0358】
図10および11は、T−IgGの経口投与が、脾臓においてCD8+CD25+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0359】
実施例15.経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪組織においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が脂肪組織においてTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。FACS分析を、脂肪組織から単離したリンパ球に対し実施した。脂肪組織は、屠殺直後に、Ob/Obマウスから単離した。組織(内臓脂肪体)を刻んで微細断片とした。刻んだ試料を10mMグルコースおよび2.5%ウシ血清アルブミンを含むKrebs−Ringer重炭酸塩緩衝液(3mL/g脂肪組織)に入れ、840U/gコラーゲナーゼ1型(Sigma、Rehovot、Israel)と共に、37℃で、1時間インキュベートした。細胞を、2回、シフォンメッシュ(100μm)を通して濾過し、50gで5分間遠心分離した。浮遊脂肪細胞をペレット化した脂肪組織関連間質血管(S/V)細胞画分から分離した。下澄画分を除去し、200gで5分間遠心分離し、S/V細胞をペレット化した。図12Aおよび12Bは、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪組織リンパ球上でのマーカー(CD4+CD25+)の平均表面発現を示す。
【0360】
図12は、T−IgGの経口投与が、脂肪組織においてCD4+CD25+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0361】
実施例16.経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は脂肪組織においてCD3+LAP+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が脂肪組織においてTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。FACS分析を、上記の方法に従い、単離した脂肪組織から単離したリンパ球に対し実施した。図13Aおよび13Bは、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪組織リンパ球上でのマーカー(CD3+LAP+)の平均表面発現を示す。
【0362】
図13は、T−IgGの経口投与が、脂肪組織においてCD3+LAP+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0363】
実施例17:経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤は間質血管細胞(前脂肪細胞を含む)においてCD4+CD25+制御性T細胞の発現を増加させる
経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤が脂肪組織においてTregを促進するかどうかを決定するために、本発明者らは、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。FACS分析を、上記の方法に従い、単離した前脂肪細胞を含む間質血管細胞から単離したリンパ球に対し実施した。
【0364】
図14Aおよび14Bは、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪組織リンパ球上でのマーカー(CD4+CD25+)の平均表面発現を示す。
【0365】
図14は、T−IgGの経口投与が、前脂肪細胞を含む間質血管細胞においてCD4+CD25+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0366】
さらに、この細胞集団を調べるために、FACS分析を、間質血管細胞から単離したリンパ球上で実施し、マーカー(CD4+CD25+LAP+)の発現を検査した(第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて)。
【0367】
図15Aおよび15Bは、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪組織リンパ球上でのマーカー(CD4+CD25+LAP+)の平均表面発現を示す。
【0368】
図15は、T−IgGの経口投与が、前脂肪細胞を含む間質血管細胞においてCD4+CD25+制御性T細胞のサブセットを増加させることを証明する。
【0369】
実施例18:Ob/Obマウスにおける抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の用量研究
【0370】
【表3】

実験群
6つの群のマウス(表3)を試験した。Ob/Obマウス(5匹/群)に、毎日、25日間(1週につき5日)、30μlのPBS(対照、群A)または30μl(=1μg)のT−IgG初乳(群B)、または30μl(=100μg)のT−IgG初乳(群C)、または30μl(=1mg)のT−IgG初乳(群D)、または30μl(=3mg)のT−IgG初乳(群E)、または30μl(=1mg)のHIBC初乳(群F)を与えた(PO)。初乳調製物はどちらも水に溶解した。
【0371】
4週後、マウスを屠殺した。屠殺日に、心臓血液を標準技術により収集し、その後の目的のために血清を得た。
【0372】
動物
Ob/Obモデルでは、Harlan Laboratories(USA)から購入した若い(6〜7週齢)雄C57BL/6 Ob/Obマウスを使用した。すべてのマウスを、Animal Core of the Hadassah−Hebrew University Medical Schoolで維持した。マウスには、標準の飼料および水を自由に与え、12時間明/暗サイクルで維持した。動物実験は、Hebrew University−Hadassah Institutional Committee for Care and Use of Laboratory Animals(実験動物の世話および使用のための組織委員会)のガイドラインに従い、委員会の承認を得て実施した。
【0373】
実施例19:抗LPS強化初乳由来免疫グロブリンの経口投与は、Ob/Obマウスにおいて肝臓酵素を減少させる
ASTおよびALT活性のレベルを、上記のように、臨床化学分析器により決定した。図16は1mgのT−IgGが、肝臓酵素を減少させるのに最も有効な用量であったことを証明する。
【0374】
実施例20:抗LPS強化初乳由来免疫グロブリンの経口投与は、Ob/Obマウスにおいて総コレステロールを減少させる
血漿トリグリセリドおよび総コレステロールを、上記のように、臨床化学分析器、Reflovet Plus(Roche Diagnostics、GmbH、Mannheim、Germany)により決定した。図17は、100μgのT−IgGが、総コレステロールを減少させるのに最も有効な用量であったことを証明する。
【0375】
実施例21:抗LPS強化初乳由来免疫グロブリンの経口投与は、Ob/Obマウスにおいて肝臓TGを減少させる
肝臓内での細胞内トリグリセリド(TG)の蓄積を、Folch法の改変型を使用して定量した。TGを瞬間凍結肝臓のアリコートから抽出し、その後、GPO−Trinderキット(Sigma、Rehovot、Israel)を用いて分光光度的にアッセイし、ホモジネート中のタンパク質量に規準化させた。
【0376】
図18は、100μgの1mg、3mgおよび100μgのT−IgGが、肝臓トリグリセリドを減少させるのに最も有効な用量であったことを証明する。減少はD、E、Fに対し群Aで統計学的に有意であった(p<0.05)。
【0377】
実施例22:1μg、1mg、3mgのT−IgGを100μgのHIBCと共に経口投与すると、Ob/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させた
FACS分析を、Ob/Obマウスの肝臓から単離したリンパ球に対し実施した。肝臓リンパ球上のマーカー(CD3+NK1.1+)の発現の平均を、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した。フローサイトメトリーでは、下記抗体を使用した:抗CD3−FITCおよび抗NK1.1−PE。表面染色およびFACS分析は、上記のように実施した。
【0378】
図19Aは、1μg、1mg、3mgのT−IgGを100μgのHIBCと共に経口投与すると、Ob/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させたことを証明する。さらに、図19Bは、1μgおよび100μgのT−IgG経口投与がOb/Obマウスの肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させたことを証明する。
【0379】
実施例23:T−IgGおよびHIBC初乳の経口投与はOb/Obマウスの肝臓においてCD4+CD25+LAP−/LAP+細胞を増加させる
肝臓においてTregを促進する経口抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の用量を決定するために、本発明者らは、組織由来の制御性T細胞のサブセットに対する経口投与の効果を検査した。FACS分析を、上記の方法に従い、肝臓から単離したリンパ球に対し実施した。図20は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、肝臓リンパ球上でのマーカーの発現の平均を示す。
【0380】
図20Aは、T−IgGおよびHIBC初乳の経口投与が、Ob/Obマウスの肝臓においてCD4+CD25+LAP−/LAP+細胞を増加させることを証明する。図20Bは、100μgのHIBC初乳の経口投与が、Ob/Obマウスの肝臓においてCD4+CD25+LAP+細胞を増加させることを証明する。
【0381】
実施例24:T−IgGおよびHIBC−初乳の経口投与は、CD25+LAP−肝臓リンパ球の変化を誘導する
図21は、1μg、1mg、3mgのT−IgGを100μgのHIBCと共に経口投与すると、Ob/Obマウスの肝臓においてCD25+LAP−リンパ球の変化を誘導することを証明する。
【0382】
実施例25:T−IgGおよびHIBC−初乳の経口投与は、CD25+LAP+脾臓リンパ球の変化を誘導する
図22Aは、T−IgGおよびHIBC−初乳の経口投与が、CD25+LAP+脾臓リンパ球を減少させることを証明する。図22Bは、T−IgG−初乳の経口投与が、CD25+LAP+脾臓リンパ球を増加させることを証明する。
【0383】
実施例26:1および3mgのT−IgGならびに100μgのHIBC−初乳の経口投与はCD4+CD25+LAP−脾臓リンパ球を増加させる
FACS分析を、Ob/Obマウスの肝臓から単離したリンパ球に対し実施した。図23は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脾臓リンパ球上でのマーカー(CD4+CD25+LAP−)の発現の平均を示す。図23は、1および3mgのT−IgGならびに100μgのHIBC−初乳の経口投与が、CD4+CD25+LAP−脾臓リンパ球を増加させることを証明する。
【0384】
実施例27:T−IgG−初乳の経口投与は脂肪組織においてCD4+CD25+を増加させる
FACS分析を、上記のように、Ob/Obマウスの脂肪組織から単離したリンパ球に対し実施した。図24は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪組織細胞上でのマーカー(CD4+CD25+)の発現の平均を示す。図24は、T−IgG−初乳の経口投与が、脂肪組織においてCD4+CD25+リンパ球を増加させることを証明する。
【0385】
実施例28:100μgのT−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞において、CD4+CD25+を増加させる
FACS分析を、上記のように、Ob/Obマウスの脂肪組織から単離した脂肪細胞に対し実施した。図25Aは、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪細胞でのマーカー(CD4+CD25+)の発現の平均を示す。
【0386】
図25Aは、100μgのT−IgG−初乳の投与が、脂肪細胞においてCD4+CD25+を増加させることを証明する。図25Bは、100μgのT−IgG−初乳の経口投与が、脂肪細胞においてCD4+CD25+を増加させることを証明する。
【0387】
実施例29:T−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞においてCD3+LAP+を増加させる
FACS分析を、上記のように、Ob/Obマウスの脂肪組織から単離した脂肪細胞に対し実施した。図26は、フローサイトメトリーを用いて、第25日に(屠殺日)すべてのOb/Obマウスにおいて測定した、脂肪細胞上でのマーカー(CD3+LAP+)の発現の平均を示す。
【0388】
図26Aは、T−IgG−初乳の経口投与が、脂肪細胞においてCD3+LAP+を増加させることを証明する。図26Bは、T−IgG−初乳の経口投与が、脂肪細胞においてCD3+LAP+を増加させることを証明する。
【0389】
実施例30:T−IgG−初乳の経口投与は脂肪細胞においてCD4+CD25+LAP−を増加させる
図27Aは、T−IgG−初乳の投与が、脂肪細胞においてCD4+CD25+LAP−を増加させることを証明する。
【0390】
実施例31:抗LPS強化初乳の経口投与は肝炎モデルにおいて細菌トランスロケーションを減少させる
細菌トランスロケーションおよび肝炎を検査するために、マウス群を下記のように処置した:
群A:BCP:抗体を含まない初乳で処理
群B:抗LPS含有初乳
マウスに初乳を4日間与えた後、Con A肝炎を誘導した。
【0391】
Con Aの投与および血清トランスアミナーゼ活性の測定
Con Aは、MP Biomedicals(Ohio、USA)から購入した。Con A(0.5mg、20mg/kg)を200μLの50mM Tris(pH7)、150mM NaCl、4mM CaClに溶解し、マウスに静脈注射した。個々のマウス由来の血清を、Con A注射後8または20時間に得た。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清活性を、自動分析器を用いて測定した。
【0392】
細菌トランスロケーションを評価するために、リポ多糖(LPS)レベルを、リムルスアメボサイトライセート(LAL)発色アッセイを用いて測定した;LALは、細菌トランスロケーションの程度の測定値である。
【0393】
表4は、平均LALレベルの減少により示されるように、抗LPS初乳の経口投与が細菌トランスロケーションを減少させたことを証明する。
【0394】
【表4】

【0395】
重要なことには、減少した細菌トランスロケーションは、表5で示されるように、肝損傷のマーカーである肝臓酵素ALTの改善を伴った。
【0396】
【表5】

【0397】
実施例32:初乳由来抗LPS強化調製物および抗インスリン抗体を含む組成物の調製
抗LPS強化免疫グロブリン製剤を調製するために、初乳を約200の民間の乳牛飼いから収集した。これらの群れ中のウシは、所定のウシ病原体に対しワクチン接種されていると共に、ヒト消化管ミクロフローラ中の主生物である複数の大腸菌の菌株の細胞外壁抗原に対する専売Anadisワクチンでワクチン接種されている。抗インスリン強化免疫グロブリン製剤を調製するために、3匹の乳牛を抗原としてKLHにコンジュゲートされたインスリンで免疫化する。抗原ワクチンを妊娠期間の最後の8週の間に投与する。初乳の乳を授乳の最初の2日間中に回収する。得られた初乳を試験のための個々のバッグ内で凍結させた。処理のために、初乳を解凍し、プールし、脂肪を除去した。各バッチを低温殺菌した。初乳を限外濾過により濃縮し、凍結乾燥前に体積を減少させた。限外濾過工程により最終粉末中のラクトースが7%未満まで(約50%から)減少した。
【0398】
抗LPS強化免疫グロブリン製剤および抗インスリン強化免疫グロブリン製剤を混合し、下記で示されるように使用するための組成物を形成させる。
【0399】
免疫媒介肝炎モデルでは、11〜12週齢の雄C57/blマウスに、肝炎を誘発することが知られている、50mM Trig pH7、150mM NaCl、4mM CaClに溶解されたCon A(MP Biornedicals、USA)の500μglinouse(約15mg/kg)の用量を尾静脈注射する。試験されるすべての群の動物に、抗LPSおよび抗インスリン強化免疫グロブリン製剤を含む異なる濃度の組成物を用いて経口投与し(経管栄養により)、未処置対照と比較する。試験されるすべての群の動物を、以下のパラメータについて追跡し、対照群と比較する:血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、肝臓標本の組織学的検査、NKTマーカーのための肝内および脾臓内リンパ球のFACS分析、TG、総コレステロール、耐糖能、血清インスリン、血清グルコース、サイトカインレベルの測定ならびに転写因子STAT1、4および6ならびにNFκBの発現に対するウエスタンブロット分析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的障害の治療および/または予防において使用するための、抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項2】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記病的障害は、急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記病的障害は肝損傷である、請求項4または5記載の組成物。
【請求項7】
前記病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
メタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
糖尿病の治療および/または予防のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
耐糖能障害の治療のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
耐糖能を減少させるためのものである、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
血清インスリンレベルを減少させるためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
肝臓トリグリセリドレベルを減少させるためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
コレステロールレベルを減少させるためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
さらに治療薬、担体またはアジュバントを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
さらに非高免疫初乳を含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与するために製剤化される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
微生物トランスロケーションを阻止する、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
微生物トランスロケーションを阻止し、よって免疫活性化を調節する、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
対象において免疫寛容を調節するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項29】
対象において経口免疫寛容を調節するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項30】
肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項31】
肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項32】
肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項33】
肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項34】
脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項35】
脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項36】
脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項37】
脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項38】
脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項39】
脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項40】
間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項41】
間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項42】
肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させるためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項43】
肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させるためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項44】
肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させるためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項45】
脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項46】
脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するためのほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物。
【請求項47】
病的障害の治療および/または予防のための薬剤の製造における抗LPS強化免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項48】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項47記載の使用。
【請求項50】
前記病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される、請求項50記載の使用。
【請求項52】
前記薬剤は、肝損傷の治療および/または予防のためのものである、請求項50または51記載の使用。
【請求項53】
前記病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
前記薬剤はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含む、請求項47〜54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項55記載の組成物。
【請求項58】
前記薬剤は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する、請求項47〜57のいずれか一項に記載の使用。
【請求項59】
前記薬剤は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである、請求項58記載の使用。
【請求項60】
前記薬剤はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方の治療および/または予防のためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記薬剤は、糖尿病の治療および/または予防のためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記薬剤は、耐糖能障害の治療のためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
前記薬剤は耐糖能を減少させるためのものである、請求項62記載の使用。
【請求項64】
前記薬剤は、血清インスリンレベルを減少させるためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
前記薬剤は、肝臓トリグリセリドレベルを減少させるためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項66】
前記薬剤は、コレステロールレベルを減少させるためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記薬剤は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである、請求項47〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記薬剤はさらに、治療薬、担体またはアジュバントを含む、請求項47〜67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
前記組成物はさらに非高免疫初乳を含む、請求項47〜68のいずれか一項に記載の使用。
【請求項70】
前記薬剤は、経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与するために製剤化される、請求項47〜69のいずれか一項に記載の使用。
【請求項71】
前記免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する、請求項47〜70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
前記組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止する、請求項71記載の使用。
【請求項73】
前記組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止し、よって免疫活性化を調節する、請求項71記載の方法。
【請求項74】
対象において免疫寛容を調節するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項75】
対象において経口免疫寛容を調節するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項76】
肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項77】
肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項78】
肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項79】
肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項80】
脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用
【請求項81】
脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項82】
脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項83】
脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項84】
脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項85】
脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項86】
間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項87】
間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項88】
肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させるための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項89】
肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させるための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項90】
肝臓においてCD25+LAP+T細胞を増加させるための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項91】
脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項92】
脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための薬剤の製造におけるほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤の使用。
【請求項93】
治療の必要な対象に治療的有効量の、抗LPS強化免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、病的障害の治療および/または予防のための方法。
【請求項94】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記抗LPS強化免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項93記載の方法。
【請求項96】
前記病的障害は急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変またはそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症である、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記急性もしくは慢性肝疾患、肝硬変およびそれらと関連する任意の疾患もしくは合併症は、肝性脳症、突発性細菌性腹膜炎(SBP)、腹水症、出血性静脈瘤、肝硬変関連収縮過多性循環、肝腎症候群、肝肺症候群、門脈肺高血圧症、静脈瘤出血、副腎不全および意識水準変化からなる群より選択される、請求項96記載の方法。
【請求項98】
前記病的障害は、肝損傷である、請求項96または97記載の方法。
【請求項99】
前記病的障害は、自己免疫疾患、非アルコール性 脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームおよびそれと関連する任意の障害、感染症、ならびに増殖性疾患からなる群より選択される免疫関連障害である、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記病的障害は、手術後の続発性腹膜炎および感染、肝性心筋症および低血圧、肝腎症候群、肝細胞癌、アルツハイマー病、任意の型の記憶喪失、任意の型の認知症、注意欠陥障害(ADHA)、任意の型の学習障害、脳へのアルコールまたは薬物の影響、任意の型の免疫媒介疾患、例えば喘息、および腹膜炎からなる群より選択される、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記組成物はさらに、前記病的障害に特異的な少なくとも1つ抗原を認識し、それに結合する免疫グロブリンを含む免疫グロブリン製剤を含む、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は初乳由来である、請求項101記載の組成物。
【請求項103】
前記さらなる免疫グロブリン製剤は鳥卵由来である、請求項101記載の組成物。
【請求項104】
前記方法は制御性T細胞を調節し、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答または炎症促進性Th1免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスの調節に至らしめ、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止または活性化する、請求項93〜103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記方法は、抗炎症性Th2、Trl/Th3免疫応答に対するTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を阻止し、前記組成物は、自己免疫疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、アテローム性動脈硬化、メタボリックシンドロームならびに2型糖尿病、インスリン抵抗性、肥満および体重過多から選択されるそれと関連する任意の障害のいずれか1つの治療のためのものである、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記病的障害はメタボリックシンドロームもしくは非アルコール性脂肪性肝炎または両方のである、請求項93〜105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記病的障害は、糖尿病である、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記病的障害は、耐糖能障害である、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
耐糖能を減少させる、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
血清インスリンレベルを減少させる、請求項109記載の方法。
【請求項111】
肝臓トリグリセリドレベルを減少させる、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
コレステロールレベルを減少させる、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記方法は、炎症促進性Th1/Th2免疫応答に対しTh1/Th2、Trl/Th3細胞バランスを調節し、よって、前記障害に特異的に向けられる免疫応答を増強させ、前記組成物は、感染症、および増殖性疾患の治療のためのものである、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記組成物はさらに非高免疫初乳を含む、請求項93〜95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記組成物はさらに、治療薬、担体またはアジュバントを含む、請求項93〜114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記組成物は、経口で、エアロゾルとして吸入により、あるいは非経口、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、もしくは直腸投与、またはそれらの任意の組み合わせにより投与される、請求項93〜115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記免疫グロブリン製剤またはそれらの任意の画分はLPSまたはその任意の断片を認識し、それに結合する、請求項93〜116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止する、請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記組成物は粘膜による微生物トランスロケーションを減少または阻止し、よって免疫活性化を調節する、請求項118記載の方法。
【請求項120】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象において免疫寛容を調節するための方法。
【請求項121】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象において経口免疫寛容を調節するための方法。
【請求項122】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための方法。
【請求項123】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための方法。
【請求項124】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項125】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項126】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脾臓においてCD45+LAP+T細胞を誘導するための方法
【請求項127】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脾臓においてCD8+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項128】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脾臓においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項129】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脾臓においてCD8+CD25+T細胞を誘導するための方法。
【請求項130】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脂肪組織においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための方法。
【請求項131】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脂肪組織においてCD3+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項132】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の間質血管細胞においてCD4+CD25+T細胞を誘導するための方法。
【請求項133】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の間質血管細胞においてCD4+CD25+LAP+T細胞を誘導するための方法。
【請求項134】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD3+NK1.1+細胞を減少させるための方法。
【請求項135】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD25+LAP−T細胞を減少させるための方法。
【請求項136】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の肝臓においてCD25+LAP+T細胞を減少させるための方法。
【請求項137】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脾臓においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための方法。
【請求項138】
治療の必要な対象に治療的有効量の、ほ乳類抗LPS強化初乳由来免疫グロブリン製剤を含む組成物を投与する工程を含む、対象の脂肪組織においてCD4+CD25+LAP−T細胞を誘導するための方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22A】
image rotate

【図22B】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25A】
image rotate

【図25B】
image rotate

【図26A】
image rotate

【図26B】
image rotate

【図27A】
image rotate

【図27B】
image rotate


【公表番号】特表2012−525376(P2012−525376A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507877(P2012−507877)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000339
【国際公開番号】WO2010/125565
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511259153)イミューロン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】IMMURON LIMITED
【住所又は居所原語表記】39 Leveson Street North Melbourne Victoria 3051 Australia
【Fターム(参考)】