説明

癌の画像化と処置

構造:[(P1−S1−L−(S2−P2)を含む化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルであって、式中:P1およびP2は、同じであっても異なっていてもよく、環状オリゴペプチド部分であり、P1とP2の少なくとも一方は該環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有し、ここで、Bは、塩基性アミノ酸、その誘導体、またはフェニルアラニンもしくはその誘導体であり;S1およびS2は、スペーサー基であり、同じであっても異なっていてもよく;Lは、該環状オリゴペプチドまたはスペーサー基の結合のための少なくとも2つの官能基を含むリンカー部分であり;nおよびqは独立して、0または1であり;pおよびrは独立して、1以上の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の画像化と処置に関する。特に、排他的ではないが、本発明は、放射性核種をケモカイン受容体CXCR4発現細胞に標的化するのに適した、その画像化と処置の目的のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍の転移の可能性および転移性拡散を早期評価するための方法は、治療の予測と管理に有益なツールとなろう。最近、転移における重要な役割がケモカイン受容体CXCR4に原因があるとされた(非特許文献1)。乳癌および前立腺癌などのさまざまな腫瘍では、CXCR4が、腫瘍細胞ホーミングの際に支配的な役割を果たしていることがわかり、原発性腫瘍と転移腫瘍の両方で発現されることが示された。
【0003】
ストロマ細胞由来因子1α(SDF−1α)は、CXCR4に対する内因性リガンドである(非特許文献2)。CXCR4に対するペプチド系アンタゴニスト、例えば、CPCR4(FC131としても知られており、配列シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]を有する)が報告されている(非特許文献3参照)。CXCR4は、HIV−1とHIV−2に対する共受容体であり、細胞内への該ウイルスの侵入を可能にする。特許文献1には、組織学試験用の放射性標識SDF−1αが記載されている。また、この文献には、いくつかの比較的嵩高い、CXCR4の合成ペプチドアンタゴニストが開示されている。特許文献2には、ビオチンで標識したCXCR4アンタゴニストが開示されている。かかる化合物の検出には、ストレプトアビジンを有する第2のレポーター化合物の添加が必要とされる。特許文献2に例示されているアンタゴニストは、4位と13位のCys残基の間のジスルフィド結合によって環化された14アミノ酸のペプチドである。1位と2位、すなわち環状部分の外側にArg−Argモチーフが存在する。
【0004】
これまで、CXCR4に対するアンタゴニスト(ペプチドおよび非ペプチドの両方)に関する研究は、本質的に、転移性過程またはHIV感染の抑制剤としての使用の可能性に限定されていた。同時係属中の出願PCT/GB2007/000684において、本発明者らは、CXCR4に対するいくつかの新規な環状オリゴペプチドアンタゴニスト、およびCXCR4発現のトレーサーとしてのCXCR4アンタゴニストの適用を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1541585号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/087608号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Muellerら Nature(2001)410、50
【非特許文献2】Nagasawa T.ら PNAS.(1994)91、2305
【非特許文献3】Fujii N.ら,Angew.Chem.Int.Ed(2003)42、3251
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、構造:
[(P1−S1−L−(S2−P2)
(式中:
P1およびP2は、同じであっても異なっていてもよく、環状オリゴペプチド部分であり、P1とP2の少なくとも一方は該環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有し、ここで、Bは、塩基性アミノ酸、その誘導体、またはフェニルアラニンもしくはその誘導体であり;
S1およびS2は、スペーサー基であり、同じであっても異なっていてもよく;
Lは、該環状オリゴペプチドまたはスペーサー基の結合のための少なくとも2つの官能基を含むリンカー部分であり;
jおよびqは、独立して0または1であり;
pおよびrは独立して、1以上の整数であり;そして
tは、1以上の整数であり、
ただし、t、pまたはrが1より大きいとき、該環状オリゴペプチド部分、スペーサー基および/またはjもしくはqの値は、多数の該(P1−S1)部分または多数の該(S2−P2)部分の間で同じであっても異なっていてもよいものとする)を含む化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルを提供する。
【0008】
リンカーまたはスペーサー基を用いて1つの受容体系に対する2つ以上の高親和性リガンドを共有結合させることにより、単量体リガンドと比べ、構造全体の見かけ上の結合親和性が増大し得る。この方法を、疾患の程度を可視化する目的、疾患の領域の位置および境界を特定する目的、または治療ストラテジーによって介入する目的で、疾患の「分子的相関性」または対応する経路に対処するための化合物または放射性標識化合物の開発のために使用すると、高選択性が得られ得る。したがって、この方法論は、単量体リガンドに対して有益な改善となる。本発明の化合物は、CXCR4受容体に対する親和性および潜在的拮抗作用によって、該受容体が関与している状態(例えば、HIV感染、新形成および転移性の疾患)に使用される可能性がある。さらに、検出可能な標識を含むように修飾した場合、本発明の化合物により、CXCR4ケモカイン受容体のインビボ標的化のための効率的なプローブが提供され得る。該化合物は、高い親和性および特異性でその結合部位に結合し、容易な画像化を可能にし(さまざまな方法によって)、従ってインビボでのCXCR4陽性腫瘍(およびあらゆる付随する転移)の明確な輪郭描写を可能にする。この新規なクラスのプローブ/トレーサーにより、腫瘍の転移の可能性の検討および早期画像化のための高度に有益なツールが提供され得、場合によっては、転移過程の放射性核種療法が提供され得る。
【0009】
スペーサー基S1およびS2は1〜20個の炭素原子のアルキル鎖を含むものであり得、該アルキル鎖は、分枝鎖または非分枝鎖、置換または非置換であり得、1つ以上のヘテロ原子、環式基および/または複素環式基で分断されていてもよく、該環状オリゴペプチドおよびリンカーLの結合に適した少なくとも2つの官能基を有するものであり得る。S1およびS2のアルキル鎖は、1〜14個の炭素原子;例えば4〜10個の炭素原子を含むものであり得る。スペーサー基S1および/またはS2の全長は、任意の分断ヘテロ原子および/または環式基を考慮に入れると、およそ1〜20個の炭素、例えば1〜14個の炭素(4〜10個の炭素など)の線状アルキル鎖に相当するものであり得る。特定のある実施形態において、スペーサー基S1および/またはS2は、環状オリゴペプチドのアミノ酸の1つの側鎖基から分枝状となるように結合されたアミノ酸(または短鎖オリゴペプチド鎖)を含むものであり得る。例えば、BがOrnまたはD−Orn(あるいは類似の塩基性アミノ酸)である場合、該スペーサーは、グリシル基を含むものであり得る。その場合、このグリシル部分の遊離アミノ基は、例えばリンカー基Lがジカルボン酸を含む場合、リンカー基Lへの結合に利用可能となる。
【0010】
2つ以上の単量体リガンド間の分離(該分離は、認識されるように、リンカーL、ならびに存在する場合はスペーサー基S1および/またはS2によって構成される)は、両方のリガンドの妨害が回避され、したがって多量体化合物に対する立体障害および受容体親和性の減少が回避されるのに充分長いことが必要である。本発明者らは、驚くべきことに、二量体および多量体に対する高親和性を得るための分離の最適な長さは比較的短く、2つ以上の受容体を架橋(bridge)するにはおそらく短すぎる長さであることを見い出した。それにもかかわらず、「二価」相互作用は排除され得るが、親和性の有意な増大が種々の多量体で見られ、これは、CXCR4リガンドの開発に対する本発明のアプローチの有効性を示す。さらなる驚くべき知見は、単量体オリゴペプチドの1つがCXCR4受容体に対して親和性が低いかまたはわずかであるが、その他は該受容体に対して高親和性を有する多量体(例えば、二量体)の環状オリゴペプチドの全体としての該受容体親和性が、「高親和性」の単量体単独の親和性と類似しているか、またはより大きいことがあり得るということである。このことは、結合しない第2のオリゴペプチドの存在により、高親和性ペプチドが該受容体に結合する能力が低下し得ると推測されていたため、予想外である。この興味深い知見により、広範囲の官能基を有する残基で構成されたオリゴペプチドを含む多量体が作製できる可能性が導かれ、それにより、該多量体のより多様な誘導体化と官能性付与が可能となる。
【0011】
該環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有するP1またはP2の少なくとも一方は、125I−CPCR4の存在下で、対応するP1またはP2単量体のIC50として測定したとき、CXCR4受容体に対して250nM以下の結合親和性を有するものであり得る。
【0012】
該環状オリゴペプチド部分は、好ましくは20個以下のアミノ酸残基、より好ましくは9個以下の残基を含む。好ましい実施形態において、該環状オリゴペプチドはペンタペプチドである。該環状オリゴペプチドは、好ましくはペプチド結合(これは、そのN末端とC末端の間のものであり得る)によって環化されたものであるが、存在する場合は、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって環化されたものであってもよい。該化合物は、該環状オリゴペプチド部分、該リンカーおよびスペーサーに加えて他の部分を含むものであってもよい。したがって、該化合物の薬物動態学的および/または物理化学的特性が改変され得るさらなるペプチド配列または基(例えば、糖類またはポリエチレングリコール鎖などの親水性基)が結合され得る。
【0013】
特定のある実施形態において、オリゴペプチドP1およびP2は、好ましくは合成のものである。本発明において、P1とP2の少なくとも一方がCXCR4に、対応する単量体として、200nM以下、より好ましくは100nM以下、最も好ましくは50nM以下の親和性(IC50)で結合することが好ましい。用語「IC50」は、CXCR4発現細胞に対する放射性標識参照ペプチド125I−CPCR4の結合を、最大結合の50%まで低下させるのに必要とされる試験化合物の濃度をいう。当業者なら、所与の化合物のIC50を容易に決定することができよう。その方法は後述する。本発明の化合物はCXCR4受容体に、該受容体を活性化せずに結合するものであり得る(すなわち、アンタゴニスト特性)。あるいはまた、本発明の化合物は、該受容体の内因性リガンドと競合するが、該受容体を低度に活性化するものであり得る(すなわち、部分アゴニスト特性)。さらなる代替として、本発明の化合物は、CXCR4受容体に結合し、その後のシグナル伝達をベースラインより低い非活性化レベルまで低下させるものであり得る(すなわち、負の効力、または逆アゴニスト特性)。特定のある好ましい実施形態において、本発明の化合物はCXCR4受容体に、該受容体を活性化せずに結合する。他の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、CXCR4において充分なアゴニスト特性を有するリガンドを含まない。
【0014】
本明細書で用いる場合、表現「(Me)Xaa」は、アミノ酸のNα−メチル誘導体を意味する。表現「Xaa(置換基)」は、アミノ酸の側鎖が、表示した置換基で誘導体化されていることを意味する。表現「Xaa/(Me)Xaa」は、記載のアミノ酸がメチル化されていないものであってもよく、Nα−メチル基を有するものであってもよいことを意味する。本明細書で用いるアミノ酸の略号は、「D−Xaa」という表現(この場合、Dエナンチオマーを表す)が使用されていない限り、それぞれのアミノ酸のL−エナンチオマーを示す。用語「塩基性アミノ酸」は、本明細書で用いる場合、通常の生理学的条件下でプロトンを受容して正電荷を有するものとなり得る側鎖を有する天然または合成の(好ましくは天然の)アミノ酸を表す。したがって、塩基性アミノ酸としては、リシン、アルギニン、シトルリン、オルニチン、ヒスチジン、Dap(2,3−ジアミノプロピオン酸)およびDab(2,4−ジアミノ酪酸)が挙げられる。好ましい塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニン、シトルリン、オルニチンおよびヒスチジンであり、より好ましくはアルギニンおよびオルニチンである。
【0015】
特定のある実施形態において、P1および/またはP2内のモチーフは、Bが塩基性アミノ酸のNα−メチル誘導体である場合、B−Argである。P1およびP2の各々が、該環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有するものであってもよい。
【0016】
本発明の第1の態様の特別な実施形態において、P1とP2の少なくとも一方は、配列:
シクロ[D−Tyr/(Me)D−Tyr−B−Arg/(Me)Arg−Z−(Ala)−X]
(式中:
Bは上記に規定のとおりであるが、ただし、Bが塩基性アミノ酸のNα−メチル誘導体であるとき、該モチーフはB−Argであるものとし;
Zは、側鎖内に芳香族基を含むアミノ酸であり;
nは1または0であるが、ただし、該環状部分の配列内の先の4つのアミノ酸がD−Tyr/(Me)D−Tyr−Arg−Arg−Nalであり、NalがL−3−(2−ナフチル)アラニンであるときのみ、nが1であるものとし;そして
Xは、Gly、(Me)Gly、Ala、Dap(ジアミノプロピオン酸)、Dap(FP)((N−フルオロプロピオニル)−ジアミノプロピオン酸)、Dab(ジアミノ酪酸)、Dab(FP)((N−フルオロプロピオニル)−ジアミノ酪酸)、Dab(FB)((N−フルオロベンゾイル)−ジアミノ酪酸)およびDap(FB)((N−フルオロベンゾイル)−ジアミノプロピオン酸)から選択される)を有する環状オリゴペプチドから選択される。
【0017】
Zは、Nal、Dap(FB)、AMS(FB)(アミノオキシセリン(O−アミノセリン)と4−フルオロベンズアルデヒドのオキシム)から選択され得、Bが(Me)Argである場合、(Me)Nalである。Zは、好ましくはNalである。
【0018】
Xは、好ましくは、Gly、(Me)Gly、Ala、Dap(ジアミノプロピオン酸)およびDap(FP)((N−フルオロプロピオニル)−ジアミノプロピオン酸)から選択される。Xは、好ましくはGlyまたはDap(FP)である。
【0019】
Bは、好ましくは塩基性アミノ酸である。塩基性アミノ酸は、好ましくは、Arg、Orn、D−Orn、CitおよびHis、Lys、Dap、Dab、またはそのN−置換誘導体から選択される。特に好ましいのは、Arg、Orn、D−Orn、CitおよびHis、またはそのN−置換誘導体である。最も好ましくは、Bは、ArgまたはOrnである。オルニチン残基は、アミノ含有側鎖が比較的直接的に誘導体化されるという利点をもたらす。特定のある実施形態において、Bは、Me基でNα−置換されたものであり得る。好ましくは、環状オリゴペプチド部分内のMe基でNα−置換された残基は1個以下である。
【0020】
BがOrnまたはD−Ornである場合、オルニチン残基は、Nδにおいて1つまたは2つの基で置換されたものであり得、該基は、フルオロベンゾイル(FB)、フルオロプロピオニル(FP)、アセチル(Ac)、アミド(Am)(すなわち、尿素型部分が形成されるように)、メチル(Me)、1−ナフチルメチル(N1)、2−ナフチルメチル(N2)、ベンジル(Bz)およびアシルスペーサー部分から選択され得る。好ましくは、該アシルスペーサー部分は、1〜14個の炭素の鎖を含み、ヘテロ原子により任意選択で分断され、好ましくは、該オルニチンのNδに対して遠位の末端に求核性官能基を有するアシル基である。該求核性官能基は、例えば、アミノ基またはヒドロキシル基であり得る。この基によって、さらなる部分が該スペーサーの末端に付加されることが可能になり、該スペーサーの目的は、該環状オリゴペプチドのCXCR4結合能力に対する任意のさらなる基の効果を最小限に抑えることである。該アシルスペーサー部分は、アミノヘキサノイル(Ahx)、トリエチレングリコールアミノアシル(TGAS、すなわち、−COCH(OCHCHNH)、(Ahx)、(Ahx)、(TGAS)および(TGAS)から選択され得る。このようなスペーサーの多量体が存在する場合、その繰返し単位は、アミド結合によってともに連接されている。本発明において好ましいスペーサー基は、Ahx、TGAS、(Ahx)、(TGAS)および(TGAS)である。オルニチンに関して記載したアシルスペーサー部分などの置換基は、BがLys、DapまたはDabである場合にも使用され得る。かかる場合において、該スペーサー部分は、好ましくは、該オリゴペプチドに対する結合点に対して遠位の末端(すなわち、BがLysである場合は、Nε)に求核性官能基を有する。オリゴペプチドP1および/またはP2が、残基BによってリンカーLあるいはスペーサーS1および/またはS2に連接されている状況下では、上記のアシルスペーサー部分がリンカー基Lあるいはスペーサー部分S1および/またはS2として使用され得ることは認識されよう。
【0021】
特定のある実施形態において、Bは、NαにおいてMe基で置換されたOrnまたはD−Orn(好ましくはD−Orn)である。BがOrnである場合、これは、NδにおいてFB、FP、Ac、Am、N1、N2、MeとN1、MeとN2、Bz、BzとFB、BzとFP、MeとFB、MeとFP、またはMeで置換されていてもよい。
【0022】
また他の実施形態において、Bは、NδにおいてFB、FP、MeとFB、またはMeとFPで置換され、任意選択でNαにおいてMe基で置換されたOrnまたはD−Orn(好ましくはD−Orn)である。この場合の好ましい置換基は、FB、およびMeとFBであり、任意選択で、Me基によるNαの置換との組合せである。
【0023】
該環状オリゴペプチド部分は、配列:シクロ[D−Tyr−B−Arg−Z−X](式中、B、ZおよびXは上記に列挙した選択肢から選択されるが、ただし、Nα−メチル化され得るのは前記配列内の残基の1つ以下であるものとする)を有するものであり得る。好ましくは、かかる実施形態において、BはArgである。あるいはまた、該環状オリゴペプチド部分は、配列:シクロ[D−Tyr/(Me)D−Tyr−B−Arg/(Me)Arg−Z−X](式中、ZおよびXは、上記に列挙した選択肢から選択され、Bは、Arg、(Me)Arg、Orn、Cit、Orn(FB)、Orn(FP)、Orn(Ac)、Orn(Am)、Orn(N1)、Orn(N2)、Orn(Me,N1)、Orn(Me,N2)、Orn(Me)、Orn(Bz)、Orn(Bz、FB)、Orn(Ahx)、Orn(Ahx)、Orn(Ahx)、Orn(TGAS)、Orn(TGAS)、Orn(TGAS)、Orn(Me,FB)、D−Orn(FB)、(Me)D−Orn(FB)、(Me)D−Orn(Me,FB)、HisおよびPheから選択されるが、ただし、Nα−メチル化され得るのは前記配列内の残基の1つ以下であるものとする)を有するものであり得る。かかる実施形態において、最初の残基は好ましくはD−Tyrである。また、かかる実施形態において、Zは好ましくはNalである、また、かかる実施形態において、Xは好ましくはGlyである。また、かかる実施形態において、3番目の残基は好ましくはArgである。
【0024】
好ましい具体的な実施形態において、環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方は、
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−(Me)Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−(Me)Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Cit−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Ala]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−(Me)Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−(Me)Nal−Gly]
シクロ[(Me)D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Gly]
シクロ[(Me)D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FP)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ac)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Am)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Dap(FP)]
シクロ[D−Tyr−Orn(N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Bz)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Bz,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ahx)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ahx)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(Me,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−His−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Phe−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Cit−Nal−Gly]
から選択される配列を有する。
【0025】
より具体的には、環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方は、
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−(Me)Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Cit−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FP)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ac)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Am)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−His−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]
から選択される配列を有するものであり得る。
【0026】
特別な実施形態において、環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方が、シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]およびシクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly]を除く上記に列挙したもののいずれかから選択される配列を有する。
【0027】
特定のある実施形態において、環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方は、
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]
から選択される配列を有する。
【0028】
好ましい実施形態において、環状オリゴペプチドP1とP2は同じである。かかる実施形態において、環状オリゴペプチド部分P1とP2の各々は、上記に列挙して示したものから選択される配列を有するものであり得る。
【0029】
本発明の特別な化合物において、P1および/またはP2は、配列:シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]を有する。本発明の他の特別な化合物において、P1および/またはP2は、配列:シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]を有する。
【0030】
本発明の第1の態様の実施形態において、リンカー部分Lは少なくとも3つの官能基を含み、そのうちの2つが該環状オリゴペプチドまたはスペーサー部分の結合に適したものであり、そのうちの1つが検出可能な標識または細胞傷害性部分またはさらなるリンカー部分の結合に適したものである。
【0031】
かかる「三官能性」(またはより高度に官能性付与された)リンカーを含む化合物により、2つのオリゴペプチド部分+特定の官能性を有するさらなる基の容易な結合が可能になる。例えば、リンカーL上の第3の官能基は、転移の可能性を有する腫瘍およびそれに伴う転移(かかる組織によるCXCR4の比較的高い発現の結果)の目的の化学療法のための細胞傷害性化合物の結合に使用され得る。好ましい細胞傷害性部分は、関係する腫瘍の化学療法に一般的に使用されている任意の細胞傷害性化合物から選択され得る。
【0032】
あるいはまた、該第3の官能基は、標的化放射線療法または診断的画像化のための(例えば、キレート化放射性核種によって)放射性標識の結合に使用され得る。さらに、リンカーL上には、該化合物の親和性および特異性を増大させるために、さらなる環状オリゴペプチド部分を結合させるためのさらなる官能基が使用されることがあり得る。多種多様なリンカーLが使用され得、該リンカーは、例えば、ペプチド系官能基の場合、多数の官能基を含むものであり得る。したがって、本質的に、リンカーLに連接させ得る環状オリゴペプチドまたはスペーサー基の数(すなわち、pとrの値)に上限はない。
【0033】
さらに、多官能性リンカー(例えば、ペプチド)上の該さらなる官能基は、各々が2つ以上の環状オリゴペプチドを有する多数のリンカーを互いにカップリングさせるのに使用され得る。この様式では、高次多量体(およびデンドリマー)が作製され得る。かかる化合物において、tは1より大きいことは認識されよう。特定のある実施形態において、tは、1〜100、例えば、1〜50、1〜30、1〜20、1〜10、1〜8または1〜4などであり得る。
【0034】
本発明の化合物において、リンカー部分Lは、ジカルボン酸、アミノ酸、線状オリゴペプチド、アルキン、ジオキシム(例えば、ジアルデヒド含有リンカー基と、1つ以上のアミノオキシ基(アミノオキシアセチルなど)を含むように(例えば、ペンダント(pendant)アミノ基において)誘導体化された環状オリゴペプチドとの反応によって形成されるもの)、ポリ(アルキレングリコール)、カルボン酸−および/またはアミノ−置換ポリ(アルキレングリコール)、糖類、アミノ修飾型糖類、ポリアミンおよびオリゴ−またはポリ−アミノオキシ官能性付与された種(poly−aminooxy−functionalised species)(官能性付与されたペプチドもしくは樹脂など)から選択される基を含むものであり得る。該リンカーは該環状オリゴペプチドに、アミノ酸の非修飾側鎖基(例えば、オルニチンもしくはリシンのペンダントアミノ基、あるいはチロシンの−OH基)を用いて、または修飾側鎖基(例えば、リシンもしくはオルニチンのアミノオキシ含有側鎖基など)によって結合され得る。また、含硫アミノ酸(システインなど)が該環状オリゴペプチドに含まれる場合、チオ基は、マレイミド、α−ハロケトンまたはα−ハロアミド官能基を含むリンカー(またはスペーサー基)とのチオエーテル結合の形成に使用され得る。また、含硫アミノ酸(システインなど)は、得られたペプチドをより複雑な系にカップリングさせる別の可能な官能基(例えば、ブロモエチルアミン)を有するハロゲン化アルカンによって修飾されたものであってもよい。
【0035】
リンカーLは、特定のある実施形態において、一連の繰返し単位を含むものであり得ることは認識されよう。したがって、Lは、各残基が該環状オリゴペプチドまたはスペーサーあるいは検出可能な標識または細胞傷害性部分の結合のための官能基を含む短鎖ホモポリペプチドを含むものであり得る。同様に、リンカーLは、2つ以上の一連の単量体単位で構成されたものであり得る。リンカーが2つのかかる単量体単位で構成されている場合、各単量体単位は、その官能基の1つ以上にカップリングされた1つ以上の環状オリゴペプチドを有するが、各単量体単位の少なくとも1つの官能基は他方の単量体単位に連接されている。リンカーが3つ以上の(three of more)かかる単量体単位で構成されている場合、本発明の範囲に含まれる化合物全体として、かかる単位すべてが環状オリゴペプチドに連接されている必要はないことは認識されよう。懸念を回避するため、単量体単位は環状オリゴペプチドを1つだけ有するものであり得るが最終化合物は2つ以上の環状オリゴペプチドを有する単量体単位で構成されたリンカーLを含む化合物が本発明の範囲の含まれるものとすることを強調しておく。
【0036】
好ましい実施形態において、該化合物は検出可能な標識または細胞傷害性部分を含む。検出可能な標識または細胞傷害性部分は、リンカー部分Lに直接または間接的に共有結合されたものであり得る。検出可能な標識または細胞傷害性部分はLに、スペーサー基S3を介して間接的に結合されていてもよい。S3は、S1およびS2について上記に規定のものであり得る。特に、該標識は、環状オリゴペプチド部分P1もしくはP2またはリンカーLに共有結合された錯化剤によって結合され得る(例えば、放射性金属標識の場合)。
【0037】
検出可能な標識は、好ましくは、蛍光部分、磁性または常磁性部分、または放射性核種から選択される。多くの適用用途では、放射性核種が好ましい。該標識は、好ましくは、さらなる試薬の添加なしで、標識自体からの検出可能な電磁性放射線もしくは他の核放射線の出力によって、またはそれ自体の磁性または常磁性の性質の結果として検出可能なものである。該標識は、場合によっては、該環状オリゴペプチドの1つに直接共有結合されたものであり得る。
【0038】
スペーサー基S3が使用される場合、上記のように、該標識および/または錯化剤は、該スペーサーの遠位末端の求核性基によって結合され得る。該リンカーと標識間の間接的結合を容易にする他の中間基は、当業者に自明であろう。
【0039】
環状ペンタペプチドであるシクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly)(CPCR4またはFC131としても知られる)は、CXCR4に高親和性で結合する。また、これは、例えば、チロシン残基に結合させたヨウ素放射性核種を使用することにより、放射性標識することが比較的容易である。動物での予備試験において、放射性標識CPCR4は、対照腫瘍と比べ、CXCR4+腫瘍においてほぼ10倍の蓄積の増大が示された。CPCR4の薬物動態学的特性および他の特性は、アミノ酸残基の修飾によって改変され得る。特に、得られたヘキサペプチドにおけるArg残基のN−メチル化、Argの別のカチオン性アミノ酸(例えば、オルニチン)での置換、NalとGly間へのAlaの挿入、およびTyrのN−メチル化は、すべて、修飾型CXCR4アンタゴニストをもたらし、該受容体に対する有用な親和性を維持している。本発明の二量体化合物または多量体化合物は、CXCR4受容体に対して親和性がより高く、潜在的特異性がより高い化合物を作製するための上記の知見に基づいたものである。
【0040】
本発明の特定のある化合物において、放射性標識は、存在する場合、18F、123I、124Iおよび125Iから選択され得る。123Iは、該化合物がインビボでのシングルフォトンエミッションCT(SPECT)試験に使用される場合、特に有用である。125Iは、該化合物のインビトロまたはエキソビボ使用に好ましい場合があり得る。18Fおよび124Iは、陽電子断層撮影法(PET)画像化を使用するインビボ試験に特に有用である。
【0041】
本発明の化合物が1つ以上のDap(FB)、Dap(FP)、Dab(FB)、Dab(FP)、FBまたはFP基を含む場合、フッ素置換基は18Fであり得る。これは、かかる化合物を放射性標識するための簡便な手段を提示する。この型の好ましい化合物において、18Fは、OrnまたはD−OrnのNδにおけるFBまたはFP置換基上に存在している。
【0042】
あるいはまた、放射性標識は、211At、225Ac、211Biおよび212Biから選択され得る。これらの放射性核種はすべて、本発明の化合物が標的化放射線療法に使用されることを可能にする比較的低レンジのα−放射体である。低レンジの放射により、転移に対するより安全な放射線治療アプローチが提供される。本発明の化合物を用いた原発性腫瘍の放射線療法には、高レンジ(longer−range)の放射を有する放射性核種を使用することが好ましい場合があり得、したがって、この場合、放射性標識は、低レンジおよび高レンジのβ−放射体、例えば、それぞれ177Luまたは90Y、188Reおよび131Iから選択され得る。
【0043】
一般に、本発明による使用のための有用な診断用同位体(PETおよびSPECT系検出ならびに画像化用)としては、18F、47Sc、51Cr、52Fe、52mMn、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、72As、75Br、76Br、77Br、82Br、89Zr、94mTc、97Ru、99mTc、111In、123I、124I、131I、191Pt、197Hg、201Tl、203Pb、110mIn、120Iが挙げられる。
【0044】
一般に、本発明による使用のための有用な治療用同位体としては、32P、67Cu、77As、90Y、99Mo、103Ru、105Rh、109Pd、111Ag、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、131I、140La、140Nd、142Pr、143Pr、149Tb、149Pm、151Pm、153Sm、159Gd、161Tb、166Ho、166Dy、169Er、169Yb、172Tm、175Yb、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、211At、211Bi、212Bi、213Bi、225Acが挙げられる。
【0045】
本発明の特定のある化合物において、放射性標識は該リンカーまたは環状オリゴペプチドに、有機錯化剤と放射性核種との錯体によって結合されており、該錯体は該化合物の残部に、CXCR4受容体での結合特性が破壊されないような様式で結合されている。かかる実施形態において、錯化剤は、好ましくは、該リンカーまたは環状オリゴペプチド(最も好ましくはリンカー)に共有結合されているが、放射性標識は錯化剤に共有結合されていても非共有結合されていてもよい。
【0046】
錯化剤の使用により、本発明の化合物に結合され得る放射性核種の範囲が広がる。好ましい錯化剤としては、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’,N’’−四酢酸)およびその誘導体、TETA(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)ならびにHYNIC(ヒドラジノニコチンアミド)が挙げられる。錯化剤は、本発明の化合物の環状オリゴペプチドのアミノ酸の適切な側鎖に結合され得るか、または一般的には本発明の化合物の環状オリゴペプチドのアミノ酸の適切な側鎖に結合されているリンカー基に結合され得る、すなわち、該化合物のCXCR4結合特性の破壊が最小限となるように結合され得る。あるいはまた、上記のように、介在スペーサー基S3が使用されることがあり得る。特別な実施形態において、アミノ酸(特に、合成アミノ酸)が、錯化剤を本発明の化合物に連接するためのリンカー基として使用され得る。例えば、Ahx基は、錯化剤(例えば、DOTA)のペンダントカルボン酸基に連接され、それにより、本発明の化合物にカップリングのための遠位ペンダント酸基が、直接または酸性アミノ酸(例えばアスパラギン酸基)などのさらなる基のいずれかによって提供され得る。かかる場合において、アスパラギン酸基の残りの遊離の二酸は、2つの環状オリゴペプチド単量体間のリンカーLとしての機能を果たし得る。
【0047】
また、本発明の化合物を、1つ以上の親水性部分(例えば、炭水化物またはポリエチレングリコール鎖)の付加によって修飾することも可能である。かかる修飾は、インビボでの該化合物の薬物動態を改善するために使用され得る。例えば、本発明の炭水化物修飾型ペプチド含有化合物は、肝臓内取込みの減少を示すことが予測され、したがって、親油性ペプチドと比べ、投与後、いくらかの血中クリアランスの遅延および主として腎臓での排出を示すはずである。これにより、画像を投与直後に得ることができ、かつCXCR4陽性とCXCR4陰性組織とのコントラストがよりはっきりすることが予測される画像が得られる。
【0048】
本発明の第5の態様の態様によれば、上記の第1、第2、第3または第4の態様に記載の本発明の化合物を、1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤とともに含む医薬組成物が提供される。好ましくは、該組成物は、注射に適したものである。
【0049】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルのいずれかを、薬学的に許容され得る任意の担体、佐剤またはビヒクルとともに含むものである。意図される製剤および投与経路に応じて本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容され得る担体、佐剤およびビヒクルとしては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩など)、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0050】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入噴霧、直腸、鼻、口腔内、膣または埋入レザバーによって投与されるものであり得る。上記のように、非経口投与が好ましい。本発明の医薬組成物には、慣用的な無毒性の薬学的に許容され得る任意の担体、佐剤またはビヒクルが含有され得る。本明細書で用いる非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内および頭蓋内注射または注入手法を含む。ほとんどの適用では、静脈内または病変内(例えば、腫瘍内)注射が想定される。
【0051】
医薬組成物は、例えば、滅菌注射用の水性または油性懸濁剤としての滅菌注射用調製物の形態であってもよい。このような懸濁剤は、当該技術分野で知られた手法に従い、適当な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80など)および懸濁化剤を用いて製剤化され得る。また、滅菌注射用調製物は、無毒性の非経口に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤または懸濁剤(例えば、1,3−ブタンジオール中の液剤として)であってもよい。中でも、使用され得る許容され得るビヒクルおよび溶媒は、マンニトール溶液、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌された固定油も、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用されている。この目的のためには、任意の無刺激性固定油、例えば、合成モノ−またはジグリセリドが使用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射用剤の調製に有用であり、かかる脂肪酸は、天然の薬学的に許容され得る油(オリーブ油またはヒマシ油など)、特にそのポリオキシエチル化形態である。また、このような油性液剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤(Ph.Helvに記載のものなど)または同様のアルコールも含有するものであってもよい。
【0052】
本発明の医薬組成物は、経口に許容され得る任意の投薬形態で、例えば限定されないが、カプセル剤、錠剤、ならびに水性懸濁剤および液剤で経口投与されるものであり得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用されている担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、通常添加される。カプセル剤の形態での経口投与では、有用な希釈剤としてラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤を経口投与する場合、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と合わせる。所望により、ある種の甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0053】
また、本発明の医薬組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与されるものであり得る。このような組成物は、本発明の化合物を、室温で固形であるが直腸温度では液状となり、したがって直腸内で融解して活性成分を放出する適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製され得る。かかる物質としては、限定されないが、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0054】
本発明の医薬組成物は、鼻エーロゾル剤または吸入によって投与されるものであり得る。かかる組成物は、医薬用製剤の技術分野でよく知られた手法に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適当な保存料、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該技術分野で知られた他の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の液剤として調製され得る。
【0055】
本発明の第3の態様によれば、環状オリゴペプチドP1およびP2、リンカーLならびに、任意選択でスペーサーS1および/またはS2を、該オリゴペプチドの官能基が、リンカーLの官能基あるいは、存在する場合はスペーサーS1および/またはS2の官能基と反応し、該スペーサーのその他の官能基がリンカーLの官能基と反応するような条件下で合わせることを含む、第1の態様による化合物の合成方法が提供される。
【0056】
当業者には理解され、また上記に示唆され得るように、さまざまな官能基、例えば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、アシル、アミド、グアニジノ、チオール、アルキン、アミノオキシおよびかかる基の活性化型誘導体(例えば、カルボキシル基の活性化型エステル)が好適であり得る。当業者であれば、スペーサーおよび選択した環状オリゴペプチドの官能基への結合に適切な官能基を有するリンカーを容易に選択することができよう。また、該オリゴペプチドの種々の基の保護および活性化に対するアプローチは、当業者の周知の一般知識の範囲内であろう。
【0057】
該方法は、さらに、任意選択でスペーサー基S3を有する細胞傷害性部分または検出可能な標識を、該細胞傷害性部分もしくは該検出可能な標識上の官能基または存在する場合はスペーサー基S3の官能基が、リンカーLあるいは環状オリゴペプチドP1および/またはP2上の官能基と反応するように導入することを含むものであってもよい。
【0058】
好ましい実施形態において、環状オリゴペプチドおよび/またはスペーサー基S1および/またはS2とリンカーLとの反応に使用される条件は、該細胞傷害性部分もしくは該検出可能な標識または存在する場合はスペーサーS3とリンカーLまたは該環状オリゴペプチドとの反応に使用される条件と異なる。環状オリゴペプチドあるいはスペーサーS1および/またはS2の結合と、該細胞傷害性部分、該検出可能な標識またはスペーサーS3の結合に対して異なる官能基を選択することにより、保護および脱保護化学反応は、該構築物全体を形成する2つの段階で異なることがあり得る。換言すると、該細胞傷害性部分、該検出可能な標識もしくはS3(またはこれらの成分の官能基)の結合のためのリンカーの官能基が、P1、P2もしくはS1、S2(またはこれらの成分の官能基)の結合のためのリンカーの官能基の脱保護に適した条件下で保護されたままであり得る、直交した(orthogonal)アプローチが使用され得る。後者の官能基は、脱保護されると、P1、P2もしくはS1、S2(またはP1、P2、S1、S2の官能基が脱保護を必要とする保護された種である場合は該リンカー)と、これらの成分が該細胞傷害性部分、該標識またはS3と直接結合することなく、該リンカー自体が種々の成分の結合に対して異なる官能基を含む場合は、おそらくP1、P2、S1またはS2が該細胞傷害性部分、該検出可能な標識またはS3の結合のためのリンカーの官能基に結合することなく、反応することができる(場合によっては活性化工程を含む)。当業者であれば、該官能基に適した保護、脱保護および必要であれば活性化の条件を容易に決定することができよう。かかる保護基の付加および除去の方法は、具体的な分子の型または保護対象の基に関して慣用的に使用され得るもの、例えば、Kocienski(2004)Protecting Groups.第4版.Georg Thieme Verlagなどの合成方法論の標準的な参考資料に記載された方法である。
【0059】
また、第4の態様において、本発明は、治療または診断における使用のための本発明の第1の態様による化合物を提供する。
【0060】
また、関連する態様において、本発明は、新形成状態の処置のための医薬の調製における本発明の第1の態様による化合物の使用を提供する。同様に、新形成状態の処置および/または診断における使用のための本発明の第1の態様による化合物もまた提供する。
【0061】
CXCR4受容体をブロックすることにより、特に、適切な放射性核種または細胞傷害性成分を、CXCR4受容体を有する組織に標的化させることと組み合わせると、転移の可能性を有する新形成の比較的選択的な化学療法を提供することが可能なはずである。また、かかる腫瘍に起因する転移または循環腫瘍細胞はいずれも、標的化された該放射性核種または細胞傷害性成分によって標的化されるはずである。
【0062】
また、本発明は、新形成状態の診断的画像化のための医薬の調製における使用であって、該化合物が検出可能な標識を含む、本発明の第1の態様による化合物の使用を提供する。
【0063】
本発明の化合物の使用の特定のある実施形態において、新形成は、転移の可能性を有するか、または有することが疑われるものである。新形成状態は、特に、乳癌または前立腺癌であり得る。
【0064】
また、新形成を有するか、または有することが疑われる被験体に、本発明の第1の態様による化合物を投与する工程、およびインビボでの該化合物の分布後に該化合物を検出する工程を含み、該化合物が検出可能な標識を含む、新形成組織の画像化方法を提供する。該方法は、該検出する工程の後、検出された化合物の画像を生成するさらなる工程を含むものであってもよい。
【0065】
上記のように、本発明の第1の態様の化合物は、検出可能な標識を有する場合、CXCR4受容体を有し、したがって転移の可能性を有する細胞の選択的検出および画像化のための高度に有用なツールを提供する。該化合物は常套的な方法(例えば、i.v.注射)によって投与され得、短時間(この段階までに、比較的高発現のCXCR4を有するあらゆる組織は検出可能な本発明の化合物の相対濃度を示す)の後に患者の画像が撮影され得る。
【0066】
検出工程は、特に、標識が放射性核種である場合ではPETまたはシングルフォトンエミッションCT(SPECT)を用いて行なわれ得る。磁性または常磁性標識が使用される場合は、磁気共鳴画像法が好ましい。
【0067】
本発明は、さらに、新形成の細胞の転移の可能性を判定する方法であって、該細胞を本発明の第1の態様による化合物に、該化合物が該細胞の表面上のCXCR4受容体に結合することが可能となるように曝露する工程、未結合化合物を該細胞の近傍から除去する工程、ならびに該細胞に結合された該化合物の存在および/または量を測定する工程を含む方法を提供する。前記の細胞の転移の可能性の判定方法は、インビボまたはインビトロで(すなわち、患者から採取された細胞もしくは組織の試料を用いて)行なわれ得る。
【0068】
細胞の転移の可能性の判定方法が、検出可能な標識を有する本発明の第1の態様による化合物を用いて行なわれる場合、結合された該化合物の画像化あるいは存在および/または量の測定は、特に、標識が放射性核種である場合では、PETまたはシングルフォトンエミッションCT(SPECT)を用いて行なわれ得る。磁性または常磁性標識が使用される場合は、磁気共鳴画像法が好ましい。
【0069】
本発明の化合物における使用のための他の検出可能な標識としては、蛍光成分(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ローダミン)が挙げられる。
【0070】
さらに、本発明は、また別の態様において、被験体の、転移の可能性を有するか、または有することが疑われる新形成状態の処置方法であって、該被験体に本発明の第1の態様による化合物、または上記の組成物を投与することを含む方法を提供する。特定のある実施形態において、新形成状態は乳癌または前立腺癌であり得る。
【0071】
次に、本発明を、ほんの一例として添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、CXCR4とGFPレポーターをコードするベクターによるインビトロでの細胞のトランスフェクションの蛍光励起細胞分取(FACS)の結果を示す。
【図2−1】図2aおよび2b(ならびに表)は、ジャーカット細胞上のCXCR4における125I−CPCR4結合パラメータの測定および(図2b)125I−SDF−1αとの比較を示す。
【図2−2】図2aおよび2b(ならびに表)は、ジャーカット細胞上のCXCR4における125I−CPCR4結合パラメータの測定および(図2b)125I−SDF−1αとの比較を示す。
【図3】図3(および表)は、ヌードマウスにおける静脈内注射後の125I−CPCR4の体内分布を示す。
【図4】図4は、CXCR4陽性および陰性腫瘍を有するマウスにおける放射性標識CPCR4の分布のPET/SPECT画像を示す。
【図5】図5は、検出可能な標識を有する本発明の多量体化合物を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
実施例1−放射性標識CPCR4のSPECT/PET画像化
1.1 概要
1.1.1 材料および方法:
腫瘍の転移の可能性の早期評価方法は、治療の予測と管理のための有益なツールとなり得る。最近、転移における重要な役割がケモカイン受容体CXCR4に原因があるとされた。乳癌および前立腺癌などのさまざまな腫瘍において、CXCR4は、腫瘍細胞ホーミングの際に支配的な役割を果たしていることがわかり、原発性腫瘍と転移腫瘍の両方において発現されることが示された。この試験の目的は、SPECTおよびPET画像化による腫瘍および転移腫瘍上のCXCR4発現のインビボでの画像化のための新規な放射性標識プローブを開発することであった。
【0074】
環状ペプチド(シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly)であるCPCR4を放射性標識し、CXCR4発現ジャーカット細胞での結合アッセイにおいて評価した。腫瘍形成性の線維肉腫細胞株CMS5をレトロウイルスにより形質導入して安定にCXCR4/GFPを発現させ、蛍光励起細胞分取(FACS)および放射性リガンド結合アッセイで特徴付けた。体内分布試験およびSPECT/PET画像化は、CMS5/CXCR4マウスにおいて行なった。腫瘍をさらに、オートラジオグラフィ、IHCおよびGFP蛍光によって解析した。
【0075】
1.1.2 結果および結論:
放射性標識CPCR4は、高い親和性(K:0.4±0.1nM)および特異性(>90%)で、拮抗的様式で内因的にCXCR4を発現するジャーカット細胞および形質導入したCXCR4/GFP発現CMS5細胞に結合する。CMS5/CXCR4−線維肉腫は、オートラジオグラフィ、免疫組織化学検査(IHC)およびGFP蛍光によって確認されるように、マウスの信頼のおけるCXCR4腫瘍モデルであることがわかった。i.v.注射された放射性標識CPCR4の体内分布試験では、注射1時間後、CMS5/CXCR4腫瘍において5.5±1.5%ID/g(注射用量/g)、およびCMS5/CXCR4対照において0.6±0.2%ID/gが示された。急速な血中クリアランスおよび低いバックグラウンド蓄積(<1.0%ID/g)の他、より高いトレーサーの取込みが、肝臓(19.5±2.8%ID/g)、腸(17.2±2.9%ID/g)および腎臓(12.2±2.3%ID/g)において見られた。マウスのCPCR4−SPECTおよび動物PET画像化を使用すると、CXCR4腫瘍の明確な輪郭描写が可能となったが、同じ動物のCXCR4対照では、活性蓄積が可視的ではなかった。
【0076】
本発明者らは、CXCR4ケモカイン受容体のインビボ標的化のための最初の放射性標識プローブの開発に成功した。トレーサーは、高い親和性および特異性で、拮抗的様式でその結合部位に結合し、インビボでのCXCR4腫瘍の明確な輪郭描写を可能にした。本発明者らは、この新規なクラスのトレーサーが、腫瘍の転移の可能性の検討ならびに転移過程の早期画像化および放射性核種療法のための非常に有望なプローブであるという仮説を立てる。
【0077】
環状オリゴペプチド部分としてCPCR4およびその類似体を含む本発明の二量体および多量体は、したがって、転移過程の処置および画像化において相当有用である可能性がある。CXCR4受容体でのかかる二量体および多量体の結合親和性は、下記に示すように、対応する単量体オリゴペプチドと比べて有意に改善される。
【0078】
1.2 実施例1の詳細説明
1.2.1 材料および方法
1.2.1.1 ペプチドの合成および放射性標識
ペプチドは、Fmocストラテジーに従う標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用することにより合成した。Fmocアミノ酸Fmoc−Arg(Pbf)、Fmoc−D−Tyr(tBu)およびFmoc−Glyは、Novabiochem(Bad Soden,Germany)から購入し、Fmoc−2−ナフチルアラニンはBachem(Bubendorf,Switzerland)から入手した。ペプチド合成は、TCP(塩化トリチルポリスチレン)樹脂上で手作業にて行なった。O−(1H−ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)およびジフェニルホスホリルアジド(DPPA)は、それぞれ、AlexisおよびAldrich(Steinheim,Germany)から購入した。IodoGen(1,3,4,6−テトラクロロ−3R,6R−ジフェニルグリコールウリル)は、Pierce(Rockford,IL,USA)から入手し、ナトリウムのヨウ化物−125はHartmann−Analytic GmbH(Braunschweig,Germany)から購入し、ナトリウムのヨウ化物−123は、Amersham Health(Eindhoven,The Netherlands)から入手した。ナトリウムのヨウ化物−124は、W.Brandau教授(Essen,Germany)のご好意によって提供して頂いた。他の試薬はすべて、Merck(Darmstadt,Germany)またはSigma−Aldrich(Taufkirchen,Germany)から購入した。特に指定のない限り、溶媒は、さらに精製せずに使用した。
【0079】
環状ペンタペプチドCPCR4およびその誘導体の合成は、最近報告されたとおりに行なった(わずかな変更を伴った)[1,2]。簡単には、Fmoc−Gly−OHをTCP樹脂に結合後、残りのアミノ酸を、それぞれTBTUでの活性化後にカップリングさせ、続いて、20%ピペリジン含有DMFを使用することによりFmoc基を脱保護した。ペプチド鎖の組立て後、樹脂結合ペプチドを、酢酸、2,2,2−トリフルオロエタノールおよびジクロロメタン(2:2:6)の混合物で室温にて2時間処理した。その後、樹脂を濾過し、この切断混合物で2回洗浄した。合わせた濾液を石油エーテルの存在下、真空にてエバポレートした。
【0080】
環化のため、側鎖を保護したペプチドをDMFに2.5mMの濃度で溶解させた。−40℃で5当量のNaHCOおよび3当量のDPPAを添加し、室温まで昇温させながら一晩溶液を撹拌した。固形のNaHCOを濾過後、DMFを真空にてエバポレートした。残基を水とともに摩砕し、濾過し、水とジエチルエーテルで洗浄した。完全に保護された環化ペプチドを95%TFAと5%水の溶液で室温にて2時間処理した。脱保護されたペプチドを氷冷ジエチルエーテルで沈殿させ、5℃で遠心分離した。非放射性ヨード化参照ペプチドの合成では、アミノ酸の基本要素Fmoc−D−3−ヨード−Tyr−OHを既報のとおりに合成した[2]。このアミノ酸の組込みおよびその後のペプチド環化のため、PyBOP(ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)/コリジン活性化を使用した。その後、粗製環状ペプチドを凍結乾燥させ、分取用RP−HPLCによって精製した。最後に、このペプチドを、Hewlett−Packard 1100シリーズHPLCシステムを用いたLCQ LC−MSシステム(Finnigan(Bremen,Germany)製)の分析用HPLCおよびHPLC−ESI/MSによって特徴付けた。
【0081】
このペプチド合成のさらなる詳細は以下のとおりである。
【0082】
材料および方法
概要
市販の化学試薬はすべて、さらに精製せずに使用した。工業用溶媒は、使用前に蒸留した。
【0083】
トリチル樹脂はPepChemから、アミノ酸誘導体はIris Biotech GmbH、NovaBiochem、Merck、Bachem、Neosystem、Aldrichから購入したが、他の化学薬品はすべて、特に記載のない限り、Aldrich、FlukaまたはMerckから購入した。
【0084】
NMP(N−メチルピロリドン)はBASFから入手し、さらに蒸留せずに使用した。乾燥溶媒は、Aldrich、FlukaまたはMerckから購入した。乾燥ジクロロメタンは、アルゴン下、水素化カルシウムとともに蒸留し、4Åモレキュラーシーブに維持した。RP−HPLC用の水は、0.22μmフィルター(Millipore、Millipak40)に通して濾過した。
【0085】
RP−HPLC解析は、Omnicrom YMCカラム(4.6mm×250mm、5μm C18、1mL/分)を用いて行なった。溶離剤は、30分間で水(0.1%TFA)からアセトニトリル(0.1%TFA)の線形勾配(10%〜100%、10%〜60%、および20%〜50%)とし、220nmおよび254nmで検出した。解析用RP−HPLCの保持時間(R)は単位:分で示し、勾配は、単位:アセトニトリルのパーセンテージで示す。純度は、220nmでUnicornソフトウエアパッケージを用いて測定し、出発化合物に対して示す。半分取用RP−HPLCは、高圧モジュール125、UV検出器166を取り付けたBeckman System Goldにおいて行ない、Omnicrom ODS−A C18(120Å、5μm、250mm×20mm)カラムを上記のものと同じ溶媒と組み合わせて使用した。
【0086】
NMRスペクトルをBruker Avance 250またはBruker DMX 500において298Kで記録した。化学シフトを単位:使用した溶媒シグナルに対するδ目盛上のppmで報告する。13C−NMRスペクトルは、H−ブロードバンドデカップリングを用いて記録した。パルスプログラムはBrukerライブラリーから採用したもの、または本発明者らが開発したものとした。試料は、0.5mlの重水素化溶媒を用いて、5mmの直径を有するチューブ内で調製した。得られたスペクトルは、Bruker TOPSPIN 1.3ソフトウエアを使用し、PCワークステーションにて処理した。
【0087】
ESI質量スペクトルは、0.2mL/分の流速でOmnicrom YMC ODS−A C18カラム(120Å、3μm、125mm×2mm)を使用するAgilent/HP 1100 RP−HPLCシステムと組み合わせたFinnigan LCQにおいて記録した。溶離剤は、20分間で水からアセトニトリル(0.1%ギ酸含有)の線形勾配(10%〜100%アセトニトリル)とし、検出は220nmとした。
【0088】
TCP樹脂の負荷(一般手順)
ペプチドの合成は、TCP樹脂(0.9mmol/g)を使用し、標準的なFmocストラテジーに従って行なった[13]。Fmoc−Xaa−OH(1.2当量)をTCP樹脂に、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)(2.5当量)含有無水DCM(0.8ml/g樹脂)を用いて室温で1時間結合させた。MeOHとDIEA(5:1;v:v)溶液の添加により、残りの塩化トリチル基を15分間キャップした。樹脂を濾過し、DCM(5回)とMeOH(3回)で徹底的に洗浄した。真空乾燥後の樹脂の重量によって負荷容量を測定すると、0.4〜0.9mmol/gの範囲であった。
【0089】
樹脂上でのFmoc脱保護(一般手順)
樹脂結合Fmocペプチドを20%ピペリジン含有NMP(v/v)で10分間処理し、2回目は5分間処理した。樹脂をNMP(5回)で洗浄した。
【0090】
TBTU/HOBtカップリング(一般手順)
Fmoc−Xaa−OH(2当量)、TBTU(2当量)、HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)(2当量)、DIEA(5.2当量)のNMP(1ml/g樹脂)の溶液を、樹脂結合遊離アミンペプチドに添加し、室温で60分間振とうし、NMP(5回)で洗浄した。
【0091】
o−ニトロベンゼンスルホニル(o−Ns)保護
N−アルキル化は、最適化されたプロトコル[14]を用いて行なった。塩化o−ニトロベンゼン(benzenel)スルホニル(o−Ns−Cl)(5当量)とコリジン(10当量)のNMP(1ml/g樹脂)の溶液を、樹脂結合遊離アミンペプチドに添加し、室温で15分間振とうした。樹脂をNMP(3回)および乾燥THF(3回)で洗浄した。
【0092】
ミツノブ条件下でのN−アルキル化
トリフェニルホスフィン(5当量)、DIAD(ジイソプロピルアゾジカルボキシレート)(5当量)とアルコールROH(10当量)の乾燥THF(1ml/g樹脂)溶液を、樹脂結合o−Ns保護ペプチドに添加し、室温で10分間振とうした。樹脂を濾別し、乾燥THF(3回)とNMP(3回)で洗浄した。
【0093】
樹脂上でのo−Ns脱保護
o−Ns脱保護のため、樹脂結合o−Ns−ペプチドを、メルカプトエタノール(10当量)とDBU(5当量)のNMP(1ml/g樹脂)溶液で5分間処理した。脱保護手順をもう一度繰り返し、樹脂をNMP(5回)で洗浄した。
【0094】
HATU/HOAtカップリング(一般手順)
Fmoc−Xaa−OH(2当量)、HATU(2当量)、HOAt(ヒドロキシアゾベンゾトリアゾール)(2当量)、DIEA(4当量)のNMP(1ml/g樹脂)の溶液を、樹脂結合ペプチドに添加し、室温で3時間振とうし、NMP(5回)で洗浄した。
【0095】
Allocおよびアリル脱保護
Pd(PPh(0.125当量)含有乾燥DCM(0.5ml/g樹脂)を樹脂結合Allocペプチドに添加した後、フェニルシラン含有乾燥DCM(0.5ml/g樹脂)を添加し、1時間振とうした。樹脂をDCMで5回洗浄した。
【0096】
樹脂上でのDde脱保護
Dde基の脱保護のため、樹脂結合ペプチドを、2%ヒドラジンのNMP(1ml/g樹脂)溶液中で5分間振とうした。脱保護手順をもう一度繰り返し、樹脂をNMPで5回洗浄した。
【0097】
樹脂上でのAlloc保護基の存在下でのDde脱保護
Dde基の脱保護のため、樹脂結合ペプチドを6.5%ヒドラジンのNMP(1ml/g樹脂)溶液(200当量のアリル型アルコール含有)中で5分間振とうした。脱保護手順をもう一度10分間繰り返し、樹脂をNMPで5回洗浄した。
【0098】
ペプチド切断
樹脂からの完全な切断のため、ペプチドをDCMとHFIP(4:1;v:v)の溶液で室温で0.5時間で3回処理し、溶媒を減圧下でエバポレートした。
【0099】
環化
ペプチドを含有するDMF(1mMペプチド濃度)とNaHCO(5当量)の溶液にDPPA(3当量)を室温で添加し、一晩中または線状ペプチドがESI−MSで観察され得なくなるまで撹拌した。溶媒を小容量になるまで減圧下でエバポレートし、ペプチドを飽和NaCl溶液中で沈殿させ、HPLC等級水中で2回洗浄した。
【0100】
溶液中でのアシル化
完全に脱保護したペプチドを、HATU(1.1当量)およびDIEA(2.2当量)ならびに対応する酸(1当量)を含むDMF(10mMペプチド濃度)とともに室温で30分間撹拌した。この溶液をHPLC分離によって直接精製した。
【0101】
オキシムライゲーション
完全に脱保護したペプチドを、対応するカルボニル(1当量)を含む水(pH1〜2;TFA;10mMペプチド濃度)中で室温で30分間撹拌した。この溶液をHPLC分離によって直接精製した。
【0102】
溶液中でのFmoc脱保護
環状ペプチドを2.5mlの20%ピペリジンを含むDMF(v/v)で30分間処理し、飽和NaCl溶液中で沈殿させ、HPLC等級水中で2回洗浄した。
【0103】
溶液中でのo−Ns脱保護
o−Ns脱保護のため、環化ペプチドを、メルカプトエタノール(10当量)とDBU(5当量)の2.5mlのDMF溶液で30分間処理し、飽和NaCl溶液中で沈殿させ、HPLC等級水中で2回洗浄した。
【0104】
溶液中でのDde脱保護
Dde基の脱保護のため、ペプチドを2%ヒドラジンのDMF溶液中で15〜30分間撹拌し、飽和NaCl溶液中で沈殿させ、HPLC等級水中で2回洗浄した。
【0105】
酸不安定性側鎖保護基の除去
環化ペプチドをTFA、水およびTIPS(95:2.5:2.5)の溶液中、室温で1時間または保護されたペプチドがESI−MSで観察され得なくなるまで撹拌し、ジエチルエーテル中で沈殿させ、さらに2回洗浄した。
【0106】
DOTA t−Bu基の除去
二量体ペプチドを含むカップリング溶液に、激しく撹拌しながら氷浴上で、同容量の濃HClを添加した。脱保護を室温で行い、完全に行なわれたかをESI−MSによって30分毎にモニターし、氷浴上で濃NHOHで中和することにより終了させた。
【0107】
DOTAリガンドとのInのキレート化
DOTAリガンドを5M NHCl(0.5ml;pH4.5)に溶解させ、5M NHCl(0.05ml)に溶解させたInCl(5当量)で処理した。室温で15分間撹拌後、溶液を、HPLC精製に供した。
【0108】
アミノ酸の合成
α−Alloc−Nδ−Boc−L−オルニチンおよびNα−Alloc−Nδ−Boc−D−オルニチン
【0109】
【化1】

ε−Boc−L−オルニチン(1.00g,4.3mmol)を、NaCO(1.14g,10.75mmol)を含む水とTHF(50ml,1:1,v/v)の溶液に溶解した。クロロギ酸アリル(0.46ml,4.3mmol)の添加後、溶液を1.5時間撹拌した。THFを減圧下でエバポレートし、水相をジエチルエーテル(1×50mL)で洗浄し、濃HClでpH1に酸性化し、生成物をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、真空乾燥させ、無色で粘着性の油状物を、充分に純粋な生成物として得た(1.20g,90%)。H NMR (250 MHz,DMSO−d):δ 12.52 (s,1H,OH),7.49 (d,7.72 Hz,1H,NHα),6.78 (t,5.05 Hz,1H,NHε),5.91 (br m,1H,CHAlloc),5.30 (dd,17.15 Hz,1.69 Hz,HAllocTerm1),5.19 (dd,10.17 Hz,1.68 Hz,HAllocTerm2),4.48 (m,2H,CHAlloc),3.91 (br m,1H,Hα),2.91 (m,2H,Hβ),1.81−1.40 (br m,4H,Hγ,Hδ),1.38 (s,9H,HBoc)。13C NMR (63 MHz,DMSO−d):174.4,156.5,156.1,134.1,117.4,77.9,65.1,60.2,54.1,28.8,26.7,14.6. R (10〜100%):16.7分。
【0110】
α−Alloc−Nδ−Fmoc−L−オルニチンおよびNα−Alloc−Nδ−Fmoc−D−オルニチン
【0111】
【化2】

α−Alloc−Nε−Boc−L−オルニチン(1.20g,3.87mmol)をDCM(10mL)に溶解し、TFA(5mL)をゆっくり添加した。45分間撹拌後、液体をエバポレートした。
【0112】
粗生成物を、NaCO(1.02g,9.68mmol)を含む水とTHF(40ml,1:1,v/v)の溶液に溶解した。FmocONスクシンイミド(1.31g、3.87mmol)の添加後、溶液を1.5時間撹拌した。THFを減圧下でエバポレートし、水相をジエチルエーテル(1×50mL)で洗浄し、濃HClでpH1に酸性化し、生成物をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、真空乾燥させ、無色のシロップ状物質を、充分に純粋な生成物として得た(1.65g,97%)。H NMR (500 MHz,DMSO−d):δ 12.5 (s,1H,),7.9 (d,2H),7.7 (d,2H),7.5 (d,1H),7.4 (t,2H),7.32 (t,2H),7.28 (m,1H),5.9 (m,1H),5.3 (d,1H),5.2 (d,1H),4.5 (d,2H),4.3 (d,2H),4.2 (t,1H),3.9 (m,1H),3.0 (d,2H),1.7 (m,1H),1.5 (m,3H)。13C NMR (125 MHz,DMSO−d):174,156.0,155.9,144,141,133,128,127.0,126.9,125.1,125.0,120.1,119.9,65,64,53.54,53.50,47,28,26. R (10〜100%):21.9分。
【0113】
反応スキームを以下に示す。
【0114】
【化3】

グルタル酸モノアミド(ナトリウム塩)の合成
【0115】
【化4】

無水グルタル酸(0.50g;4.4mmol)をDCM(10ml)に溶解し、不溶性のグルタル酸を濾別した。水酸化アンモニウム水溶液を70℃まで加熱し、撹拌DCM溶液中でガスを起泡させた。白色固形物の沈殿後、アンモニアをさらに30分間加熱し、DCM溶液を一晩中撹拌した。白色固形物を濾過し、DCM(10ml)で2回洗浄し、乾燥させ、0.58g(3.9mmol;89%)のグルタル酸モノアミドアンモニウム塩を得た。
【0116】
このアンモニウム塩を水(10ml)に溶解し、等モル量の水酸化ナトリウム(0.16g)で処理し、凍結乾燥させ、該ナトリウム塩を得た。H NMR (250 MHz,DMSO−d):δ 7.31 (s,1H,),6.63 (s,1H),2.03 (q,4H),1.65 (m,2H)。
【0117】
1,4,7−トリス(tert−ブトキシカルボニルメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン臭化水素酸塩[1・HBr]の合成
JACS,2008,130,794−795を適合。さらなる解析データは、これを見るとよい。
【0118】
【化5】

1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(2g;12mmol;1当量)とNaHCO(5g;60mmol:5当量)をアセトニトリル(80ml)中、Ar下で0℃にて撹拌し、次いで、ブロモ酢酸tert−ブチル(5ml;34mmol;2.9当量)を30分間にわたって滴下した。反応混合物を室温で反応させ、Ar下で24時間撹拌した。無機固形物を濾過によって除去し、濾液を減圧下でエバポレートすると、ベージュ色の固形残渣が残った。トルエン(10〜15ml)からの再結晶により、1・HBrを白色固形物として得た(2.86g;4.8mmol;41%収率)。
【0119】
1,4,7−トリス(tert−ブトキシカルボニルメチル)−10−(ベンジルオキシカルボニルメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン[2]の合成
JACS,2008,130,794−795を適合。さらなる解析データは、これを見るとよい。
【0120】
【化6】

1・HBr(2.86;4.8mmol;1当量)のアセトニトリル溶液(114ml)に、NaHCO(2.02g;24mmol;5当量)とブロモ酢酸ベンジル(0.97ml;6.29mmol;1.3当量)を添加した。この混合物を100℃で30時間還流した。反応混合物を冷却し、次いで濾過した。濾液を減圧下でエバポレートすると、黄色ゴム状物が残った。生成物をDCMに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製(the purified)し、5%MeOH/DCM(R:0.08〜0.06)で溶出し、2(3.15g;4.8mmol;99%収率)を得た。
【0121】
1,4,7−トリス(tert−ブトキシカルボニルメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−10−酢酸[3]の合成
JACS,2008,130,794−795を適合。さらなる解析データは、これを見るとよい。
【0122】
【化7】

化合物2(2.81g;4.2mmol;1当量)をMeOH(110ml)に溶解し、10%Pd/C(110mg)を添加した。反応混合物をH下、室温で5時間激しく撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下でエバポレートし、3(2.23g;3.9mmol;93%収率)を得た。
【0123】
(R)−1−(カルボニル)−3−(tert−ブトキシカルボニル)プロパン−2−イルカルバミン酸(9H−フルオレン−9−イル)メチル[4]の合成
【0124】
【化8】

α−Fmoc−L−アスパラギン酸(tBu)OH(2.0g;4.9mmol;1当量)を、無水THF(20ml)に溶解した。Net(0.74ml;5.4mmol;1.1当量)とクロロギ酸エチル(0.52ml;5.4mmol;1.1当量)を、逐次、−15℃で添加した。撹拌を15分間継続し、次いで、溶液を0℃まで昇温させた。その間、N−メチルニトロソウレア(2.5g;24.3mmol;5当量)を氷冷EtO(20ml)中で撹拌し、40%KOH(20ml;氷冷)を、完全に溶解するまで滴下する。黄色のジアゾメタンEtO溶液を、0℃でこのアミノ酸溶液に滴下し、次いで、室温まで昇温させ、さらに2.5時間撹拌した。HOAcの滴下により、過剰のジアゾメタンを分解させた。この溶液を飽和NaHCO、飽和NHClおよびブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートした。得られたジアゾケトンを水/ジオキサン(1:5;v/v;160ml)に溶解した。安息香酸銀(0.12g;0.5mmol;0.1当量)の添加後、混合物を超音波浴中で、完全に変換されるまで(30分間)超音波処理し、TLC(MeOH/DCM;1:20;R:0.1〜0.2)によってモニターした。ジオキサンを減圧下でエバポレートした後、溶液を5%HClで酸性化し、沈殿物をEtOAc(3回)で抽出した。有機層を乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートし、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(MeOH/DCM;1:20;R:0.1〜0.2)によって精製し、[4](1.3g;3.1mmol;63%収率)を得た。
H NMR (250 MHz,DMSO−d):δ 12.2 (s,br,1H,),7.90 (d,2H),7.69 (dd,2H),7.42 (t,2H),7.33 (m,3H),4.27 (m,3H),3.59 (m,1H),2.41 (m,4H),1.38 (s,9H),13C NMR (75 MHz,DMSO−d):172.49,170.24,144.35,141.19,128.07,127.51,125.63,120.56,80.39,65.80,60.20,47.17,45.81,28.13. R (10〜100%):23.5分. ESI (m+Na):448.1。
【0125】
(R)−1−((アリルオキシ)カルボニル)−3−(tert−ブトキシカルボニル)プロパン−2−イルカルバミン酸(9H−フルオレン−9−イル)メチル[5]の合成
【0126】
【化9】

[4](0,98g;2.3mmol;1当量)を、臭化アリル(5.52ml;6,4mmol;2.8当量)とDIEA(0.78ml;4.6mmol;2当量)を含むACN(4.6ml)とともに45℃で1時間撹拌した。反応をTLC MeOH/DCM(1:20;v/v)によってモニターした。この溶液を室温に至らせた。EE(20ml)の添加後、有機層を飽和KHSO、飽和NaHCOおよび半飽和NaClで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートし、[5](0.77g;1.7mmol;74%収率)を得た。
H NMR (250 MHz,CDCl):δ 7.76 (d,2H,),7.58 (d,2H),7.40 (t,2H),7.31 (m,2H),5.91 (m,1H),5.63 (d,1H),5.32 (m,1H),5.24 (d,1H),4.60 (d,2H),4.36 (m,3H),4.21 (m,1H),2.66 (m,4H),1.45 (s,9H),13C NMR (75 MHz,CDCl):143.91,141.29,131.84,127.67,127.04,125.08,119.95,118.57,66.86,65.38,47.21,45.13,39.26,38.08,28.05. R (10〜100%):27.6分. ESI (m+Na):488.3。
【0127】
(S)−1−((アリルオキシ)カルボニル)−3−(カルボニル)プロパン−2−イルカルバミン酸(9H−フルオレン−9−イル)メチル[6]の合成
【0128】
【化10】

[5](0.77g;1.65mmol)をDCM(4ml)に溶解し、TFA(2ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。蒸発乾固後、固形物を飽和NaHCOに溶解し、エーテルで洗浄し、HCl(5%)で酸性化すると(pH2)白色沈殿物が形成され、これをEEで2回抽出した。有機層を酸性化水(HCl、pH1)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートし、[6](0.58g;1.4mmol;85%収率)を得た。
H NMR (250 MHz,CDCl):δ 7.75 (d,2H,),7.68 (s,1H),7.57 (d,2H),7.40 (t,2H),7.31 (m,2H),5.89 (m,1H),5.66 (d,1H),5.28 (m,2H),4.60 (d,2H),4.38 (m,br,2H),4.22 (m,1H),2.62 (m,4H),13C NMR (75 MHz,CDCl):143.69,141.33,131.60,127.77,127.10,125.00 120.01,118.87,67.25,65.65,47.13,44.47,37.87,37.64. R (10〜100%):22.0分. ESI (m+Na):432.2。
【0129】
α−Fmoc−L−アスパラギン酸(t−Bu)アリルエステル[7]の合成
【0130】
【化11】

α−Fmoc−L−アスパラギン酸(β−t−Buエステル)(0103g;2.50mmol;1当量)を、臭化アリル(6.0ml;7.0mmol;2.8当量)とDIEA(0.78ml;5.0mmol;2当量)を含むACN(5.0ml)とともに、45℃で100分間撹拌した。反応をTLC MeOH/DCM(1:20;v/v)によってモニターした。溶液を室温に至らせた。EE(40ml)の添加後、有機層を飽和KHSO、飽和NaHCOおよび半飽和NaClで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートし、[8](1.01g;2.24mmol;90%収率)を得た。
H NMR (250 MHz,CDCl):δ 7.74 (d,2H,),7.58 (m,2H),7.38 (t,2H),7.29 (t,2H),5.89 (m,1H),5.81 (d,1H),5.32 (d,1H),5.23 (d,1H),4.56 (m,3H),4.37 (m,3H),4.23 (m,1H),2.86 (m,2H),1.42 (s,9H),13C NMR (75 MHz,CDCl):170.62,170.00,155.98,143.91,143.73,141.29,131.49,127.71,127.07,125.13,119.98,118.80,81.89,67.28,66.30,50.61,47.10,37.79,28.03. R (10〜100%):27.8分. ESI (m+Na):474.3。
【0131】
α−Fmoc−L−アスパラギン酸(OH)アリルエステル[8]の合成
【0132】
【化12】

[7](1.01g;2.23mmol)をDCM(4ml)に溶解し、TFA(2ml)を添加し、室温で1時間撹拌した。蒸発乾固後、固形物を飽和NaHCOに溶解し、エーテルで洗浄し、HCl(5%)で酸性化すると(pH2)白色沈殿物が形成され、これをEEで2回抽出した。有機層を酸性化水(HCl、pH1)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下でエバポレートし、[8](0.77g;1.94mmol;87%収率)を得た。
H NMR (250 MHz,DMSO):δ 7.90 (m,2H,),7.83 (m,1H),7.70 (d,2H),7.42 (m,2H),7.32 (m,2H),5.87 (m,1H),5.30 (d,1H),5.18 (m,1H),4.58 (d,2H),4.45 (m, 1H),4.26 (m,3H),2.70 (m,2H),13C NMR (75 MHz,CDCl):171.85,171.29,144.22,141.20,132.72,128.11,127.540,125.66 120.59,118.03,66.24,65.52,51.02,47.07,36.32. R (10〜100%):22.0分. ESI (m+Na):418.1。
【0133】
3tBuDOTA−Ahx−Asp[9]の合成
【0134】
【化13】

[9]は、固形支持体上にて[3]、[8]、およびFmoc−6−アミノカプロン(capronic)−1−酸を用いて合成し、HPLCによって精製した。
HPLC−MS:R=8.37分;m/z(m+H)=801.4
3tBuDOTA−Ahx−βAsp[10]
【0135】
【化14】

[10]は、固形支持体上にて[3]、[6]、およびFmoc−6−アミノカプロン−1−酸を用いて合成し、HPLCによって精製した。
HPLC−MS:R=8,29分;m/z(m+H)=815.4
上記のDOTA誘導体をオリゴペプチド基に結合させるため、上記のアプローチ「溶液中アシル化」を使用した。
【0136】
1.2.1.2 ペプチドの放射性ヨウ素化
CPCR4を、Iodogen法を用いて123I−、124I−または125I−ヨウ化物で標識した[2]。0.2mgのペプチドを250μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)に溶解させた。この溶液を、150μgのIodogenをコートしたエッペンドルフカップに添加し、放射ヨウ化物溶液と合わせた。室温で15分後、この溶液を、固形の酸化試薬から除去した。勾配RP−HPLCを用いて精製を行なった。放射化学的純度は概ね>95%であった。動物実験のため、放射性標識ペプチドを含む画分を水で希釈し、Sep−Pak C18カラムに結合させた。その後、カラムを水で洗浄し、放射性標識ペプチドをメタノールで溶出した。メタノールを真空除去後、残渣をPBS(pH7.4)に溶解させて希釈した。4℃での保存のため、溶液を、0.1%トリフルオロ酢酸を含む20%エタノール含有HOで酸性化した。
【0137】
1.2.1.3 脂肪親和性
脂肪親和性の測定のため、0.4〜2.7μCiの125I−CPCR4を含む500μlのPBS(pH7.4)を500μlのオクタノールと混合し、激しくボルテックスした。定量的相分離のための遠心分離後、各相から100μlを採取し、放射能をガンマカウンターで測定した。実験は3連で行ない、独立して2回繰り返した。
【0138】
1.2.1.4 細胞株および組織培養
マウス線維肉腫細胞株CMS5[3]およびヒト293T細胞株[4](R.Willemsen(Department of Clinical and Tumour Immunology,Daniel den Hoed Cancer Center,Rotterdam,The Netherlands)によりご好意によって提供して頂いたもの)は、両方とも、10%(v/v)ウシ胎仔血清(PAA,Linz,Austria)および1%(v/v)L−グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。Tリンパ球ジャーカット細胞株(ATCC)を、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)および1%(v/v)L−グルタミンを補充したRPMI 1640培地中で維持した。培地および補充物は、特に記載のない限り、Biochrom(Berlin,Germany)から入手したものとした。
【0139】
1.2.1.5 レトロウイルスベクターの構築および標的細胞の形質導入
増強型蛍光タンパク質をコードするcDNAを、pEGFP(BD Biosciences Clontech,Germany)からNcoI StuI消化によって切り出し、クレノウ酵素を用いて平滑末端とし、pIRESneo3(BD Biosciences Clontech,Germany)の独特なSmaI部位内に挿入し、pIRESeGFPneo3を得た。次の工程では、IRES−eGFPを有するNotI断片をpBullet(Schaftら 2003)のNotI部位内にクローニングし、pBulletIRESeGFPを得た。ヒトケモカイン受容体4型(CXCR4)cDNAを有するpcDNA3CXCR4[5]の1292bpのHindIII XbaI断片(B.Moser(Bern)によりご好意によって提供して頂いたもの)を単離し、すべての部位をクレノウ酵素で平滑末端とした後、レトロウイルスベクター pBulletIRESeGFPのBamHI部位内にクローニングした。得られたベクターをpBulletCXCR4−IRES−eGFPと命名した。293T細胞の一過性トランスフェクションおよびCMS5細胞の形質導入によるレトロウイルス作製は、別途報告されている[6]。
【0140】
1.2.1.6 FACS分取および解析
トリプシン処理した細胞のEGFPおよびCXCR4発現を、蛍光励起細胞分取器(Becton Dickinson FACS Vantage,Heidelberg,Germany)により、488nmで励起エネルギー40mWのアルゴンレーザー光線(Spectra−Physics)およびCellQuestソフトウェアを用いて解析した。EGFP発現は、FL1(530/30nm)フィルターを用いて直接測定した。死細胞を、細胞へのヨウ化プロピジウムの添加によって測定し、蛍光を、FL2 585/42nmフィルターを用いて測定した。死細胞のパーセンテージは常に≦0.2%であった。CXCR4発現CMS5細胞の集団を、最小蛍光が20であるFL1についてCXCR4−EGFP共発現細胞を分取することにより富化した。
【0141】
トリプシン処理した細胞の細胞表面上でのCXCR4発現を、ヒトCXCR4に対する特異性を有するフィコエリトリン(PE)標識モノクローナルラット抗体(1D9、BD Biosciences Pharmingen,Heidelberg,Germany)を用いて調べた。トリプシン処理した細胞をFACSバッファー(PBS、0.5%FCS)で洗浄し、1×10細胞を0.5μgの抗体で、4℃で暗所にて30分間染色した。細胞を氷冷FACSバッファーで充分に洗浄し、フローサイトメトリーによって解析した。非特異的染色をPEコンジュゲートラットIgG2b,κ(BD Biosciences Pharmingen,Heidelberg,Germany)によって評価した。細胞表面上のCXCR4の検出はEGFPと同じ試料中とし、575/26nmフィルターを用いて検出した(FL2)。CXCR−4染色をEGFP蛍光に対してプロットした(FL1)。
【0142】
このとき、示された細胞は、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma,Taufkirchen,Germany)を補充した培地に再懸濁させ、100nMの組換えヒトSDF−1α(R&D Systems,Wiesbaden,Germany)とともに37℃で1時間インキュベートした(以前に公開されたプロトコルを適合)[7,8];対照は、希釈剤(PBS/0.1%BSA)とともにインキュベートした。さらなるインターナリゼーションを回避するため試料をすぐに氷に移し、遠心分離し、PBS/0.5%BSAで洗浄し、CXCR4のFACS染色を上記のようにして行なった。
【0143】
1.2.1.7受容体結合アッセイ
受容体結合アッセイのため、細胞をPBS/0.2%BSA中に再懸濁させた。400,000個のジャーカット細胞を含む懸濁液総量200μlを、25μlのトレーサー溶液(3.1kBq、ほぼ0.1nM含有)および25μlの希釈剤または種々の濃度の競合物質とともにインキュベートした。IC50値の測定のため、シクロ(D−Tyr125I]−Arg−Arg−Nal−Gly)をトレーサーとして使用した。非特異的結合を、1μMのコールドなシクロ(D−Tyr127I]−Arg−Arg−Nal−Gly)の存在下で調べた。室温で2時間振とう後、5分間の1300rpmでの遠心分離によってインキュベーションを終了させた。細胞ペレットを冷PBSで1回洗浄した後、第2の遠心分離工程を行なった。細胞結合放射能を、ガンマカウンターを使用することにより測定した。実験は、3連で2〜3回繰り返した。化合物のIC50値は、GraphPad Prism(GraphPad Prism 4.0 Software,Inc.,San Diego、CA,USA)を用いた非線形回帰によって計算した。各データ点は、3回の測定の平均である。
【0144】
1.2.1.8 インビボ試験
動物実験のため、CMS5親細胞および形質導入CMS5/CXCR4細胞を雌Swiss nu/nuマウス(Charles River,France)に皮下注射した。したがって、各マウスについて、製造業者のプロトコルに従い、1.5´10個のCMS5細胞および2´10個のCMS5/CXCR4細胞を、それぞれ75μlのPBS中に再懸濁させ、同じ容量のMatrigel−Matrix HC(BD Biosciences,Heidelberg,Germany)と混合した。続いて、細胞懸濁液を、それぞれの肩に接種した。14〜16日間の腫瘍成長後、マウスを画像化および体内分布の目的に使用した。動物実験はすべて、地方当局に承認されたものであり、当該当局のガイドラインを順守したものである。
【0145】
1.2.1.9 体内分布試験
370kBq(10μCi)の125I標識CPCR4を、腫瘍を有するマウスの尾静脈(vain)に静脈内注射した。動物を屠殺し、トレーサー注射の30、60および120分後に解剖した。対象の器官を取り出し、重量測定した組織試料中の放射能を、1480 Wizard3ガンマカウンター(Wallac(Turku、Finland)製)を用いて測定した。結果を組織重量1グラムあたりの注射用量に対するパーセント(%ID/g)として示す。各値は、4〜6匹の動物の平均を示す。
【0146】
1.2.2 結果
1.2.2.1 CPCR4合成および放射性標識
CXCR4受容体に対して高い親和性と選択性を示すCPCR4すなわち環状ペンタペプチドであるシクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly)の合成は、標準的なFmoc固相ペプチド合成プロトコルを使用することにより、酸不安定性トリチルクロリド樹脂において既報のとおりに行なった[1,2]。N−アルキル化でのさらなる修飾は、N−メチル化のために設計された変形プロトコルを使用し、フクヤマ−ミツノブ反応によって行なった[14]。ペプチド鎖の組立て後、側鎖保護ペプチドを樹脂から切断し、DPPA法を用いて環化した[2]。すべての保護基を除去した後、粗環状ペンタペプチドを、分取用HPLCによってさらに精製した。解析用HPLCおよびHPLC/ESI−MS解析により、ペプチドの均一性と正体が示された。
【0147】
CPCR4のTyr側鎖の放射性標識はIodogen法を使用し、123I−または125I−いずれかのヨウ化物を用いて行ない、続いて、HPLCによって非標識前駆物質を分離した。適用したHPLC条件では、非標識前駆物質と副生成物からの放射ヨウ化物含有ペプチドの非常に効率的な分離が可能であり、したがって、高い放射化学的純度(>99%)および比放射能が得られた。標識ペプチドの比放射能は、標識に使用した放射ヨウ化物のものであると推定された(125Iでは>2000Ci/mmol、123Iでは>5000Ci/mmol)。放射ヨウ化物の取込みは通常>95%であったが、HPLC精製および生体適合性製剤化後の123I−および125I標識ペプチドの全体的な放射化学的収率は50%の範囲であった。PBS中での生体適合性製剤化後、125I−CPCR4の脂肪親和性を、オクタノール/水(PBS)分配係数として測定した。−0.04(±0.01)のlogP値が得られた。
【0148】
1.2.2.2 CXCR4ベクターの構築およびウイルス感染
マウス線維肉腫細胞株CMS5を、CXCR4−IRES−eGFPでレトロウイルスにより形質導入した。該細胞プールにおいて、レトロウイルスによるCXCR4形質導入CMS5細胞の70〜80%がeGFP発現について陽性であり(FACS解析によって測定)、平均蛍光強度は130であった。増殖曲線および生存アッセイ(XTT)により、両細胞株とも、インビトロで類似した増殖反応速度論を有することが示された(データ示さず)。CMS5細胞とCMS5/CXCR4細胞をヒトCXCR4について染色すると、CMS5では2.2%のバックグラウンド染色が示され、一方、CMS5/CXCR4細胞の61.6%がヒトCXCR4について陽性に染色され、66の平均蛍光強度を示し、該細胞の57.9%がCXCR4とeGFPの両方について陽性であった(図1)。細胞株は、経時的に安定であった(反復FACS解析(データ示さず)によって表示)。
【0149】
1.2.2.3 受容体結合試験
125I−CPCR4のCXCR4放射性リガンドとしての適性を、まず、CXCR4受容体を内因的に発現するジャーカット細胞において試験し[9,10]、続いて、CXCR4発現のためにレトロウイルスにより形質導入したCMS5/CXCR4細胞において試験した。両方の細胞株で、125I−SDF−1α(50−70%)および125I−CPCR4(>90%)を使用することにより、再現性のある高特異的結合が見られた。CMS5親細胞では、ジャーカット細胞および形質導入CMS5/CXCR4細胞の非特異的結合の範囲において、両方のトレーサーで示された結合はごくわずかであった。飽和結合曲線から、ナノモル以下の範囲(0.3〜0.4nM)において、ほぼ同一のK値が両方の細胞株で得られ、CXCR4受容体に対する125I−CPCR4の高い親和性を示す(図2および関連する表A)。さらに、多数の125I−CPCR4結合部位(Bmax)を調べた。ジャーカット細胞では、Bmax値は、起源に対する依存性が高く、培養条件によって大きく異なるが、CMS5/CXCR4細胞上の結合部位(Bmax)の数は一定であり、再現性がより良好であった(23±6fmol受容体タンパク質)。
【0150】
新規な放射性リガンドとしての125I−CPCR4により、異なるCXCR4選択的リガンドの親和性プロフィールを、競合的放射性リガンド結合アッセイにおいて確認した(図2,表B)。SDF−1α、CPCR4およびその非放射性ヨード化参照化合物Iodo−CPCR4では、ナノモルのIC50値を有する高い親和性が、CXCR4受容体において125I−CPCR4または125I−SDF−1αのいずれかで見られた。SDF−1αと環状ペンタペプチドCXCR4との比較において、選択的ビシクラムAMD3100では、両方のトレーサーで親和性の低下が示された。トレーサーおよび競合物質に応じて、2つのCXCR4結合部位を既報のとおりにモニターした[9]。結合曲線の解析では、必要に応じて、一部位および二部位競合曲線フィットを使用した。得られた高親和性結合部位および低親和性結合部位を(1)および(2)と表示した(図2,表B)。
【0151】
CXCR4受容体への125I−CPCR4の結合後の受容体インターナリゼーションを、酸性バッファー(pH5.0)での2回の短時間洗浄工程後に解析した。その後、トレーサーは、大部分が該受容体から放出可能であった(>80%)。これは、受容体アンタゴニストから予測されるとおり、受容体インターナリゼーションが起こらないことを示す(データ示さず)。
【0152】
1.2.2.4 受容体の機能性
ヒトCXCR4がマウス細胞において機能性であるかどうかを調べるため、細胞をヒトSDF−1αとともにプレインキュベートし、表面CXCR4について染色し、続いてFACS解析を行なった。ヒトSDF−1αとのプレインキュベーション後、CMS5/CXCR4細胞の54.7%がCXCR4について陽性に染色されたのに比べて対照処理細胞では79.2%であり、これは、マウスCMS5細胞における該ヒト受容体の機能性を示す。CMS5細胞におけるCXCR4バックグラウンド染色は、SDF−1αの存在下で7.9から2.7%に減少した。ジャーカット細胞を陽性対照として供した。この細胞では、陽性細胞%の減少は示されなかったが、平均蛍光強度は385.4から155.4に低下した。CMS5/CXCR4細胞では、平均蛍光強度が、mock処理細胞の209.0からSFD−1α処理細胞の80.5に低下した。これは、ジャーカット細胞がCMS5/CXCR4細胞よりも多くのCXCR4受容体を含むことを示す。
【0153】
1.2.2.5 インビボ試験
125I−CPCR4の体内分布および腫瘍蓄積を注射の30、60および120分後に、CMS5およびCMS5/CXCR4腫瘍を有するヌードマウスにおいて調べた。CMS5/CXCR4腫瘍における125I−CPCR4の腫瘍蓄積は60分後に最高に達し、1グラムあたり注射用量に対して5.5(±1.5)パーセント(%ID/g)であったが、この時点で親CMS5腫瘍で観察されたのは、わずか0.6(±0.2)%ID/gであった。30分後、125I−CPCR4はCMS5/CXCR4腫瘍において4.7(±1.3)%ID/gの蓄積を示し、120分後では3.8(±1.4)%ID/gの蓄積を示している。すべての時間点で、高いトレーサー蓄積が観察されたのは、肝臓、腸および腎臓のみであった。他の器官では、非常に低いバックグラウンド蓄積が示されたにすぎなかった。肝臓では、125I−CPCR4の蓄積は、30分後の27.7(±4.9)%ID/gから120後では15.0(±1.8)%ID/gに時間とともに減少しているが、腸内のトレーサー蓄積は、30分後の16.0(±4.7)%ID/gから120分後では19.2(±4.5)%ID/gに若干増加しており、これらの器官における代謝過程を示す。腎臓内のトレーサー蓄積は、60分後に12.2(±2.3)%ID/gでピークを示しており、120分後では8.2(±1.1)%ID/gに減少している(図3および表)。
【0154】
図4は、CXCR4−陽性(CMS5/CXCR4)および陰性(CMS5対照)腫瘍の両方を有するマウスにおける放射ヨウ化物含有−CPCR4分布に関するPET/SPECT結果を示す。2つの型の腫瘍のCPCR4取込みの差による明確な輪郭描写が観察され得る。比較のため、MRIの結果を示す。CXCR4陽性腫瘍は、注射の25時間後でもPETにより認識可能であった。18F標識放射性リガンドを用いたPETおよび123I標識を用いたガンマカメラを使用しても同様の結果が得られた。同様に、マイクロ撮像装置を用いた腫瘍の凍結切片のエキソビボ解析でも、陽性腫瘍と陰性腫瘍間で、放射線における顕著な差がみられた。
【0155】
実施例2−CXCR4ケモカイン受容体発現の標的化のための環状ペプチドの開発
HIV−1感染、癌の転移、関節リウマチおよびB細胞性慢性リンパ球性白血病などのいくつかの疾患は、CXCR4ケモカイン受容体と、その天然リガンドである68アミノ酸含有タンパク質ストロマ細胞由来因子−1α(SDF−1α)との相互作用に関連している[11]。このような疾患の処置のためのストラテジーの一例は、小分子CXCR4アンタゴニストによりCXCR4とSDF−1α間の相互作用をブロックすることができたことである。さらに、適当な化合物を適切な放射性同位体で放射性標識することにより、PETによってインビボでCXCR4発現を画像化するための薬剤を提供することが可能となった。
【0156】
FujiiらによるCXCR4アンタゴニストに関する以前の研究により、配列シクロ[Gly−D−Tyr−Arg−Arg−Nal]を有する高親和性環状ペンタペプチドCPCR4がもたらされた[1]。この構造をさらに改善するため、代謝安定性、バイオアベイラビリティ、立体配座の剛性および放射性標識の化学的多様性に関して種々のアプローチが選択されている。
【0157】
まず、立体配座の自由度に影響を及ぼすため、および代謝安定性とバイオアベイラビリティを増大させるため、アミド主鎖のN−メチルスキャン(N-methyl scan)が行なわれた。アルギニン残基のNα−メチル化により、有用な親和性を有するペプチドが得られたが(それぞれ、IC50値が23nM(N−Me)のArgおよび31nM(N−Me)のArg、Arg残基の番号付けは、先のパラグラフに示した配列の位置に従っている)、他のアミノ酸のN−メチル化では、親和性が顕著に減少した(IC50>100nM)。オルニチンによるArgの置換により、親和性の大部分が保持された[12]。Ornのδ−アミノ基は、短寿命の同位体を含む放射性標識基によってアルキル化またはアシル化され得る。さらに、2つのグアニジノ基の高い塩基性度が低減され得るため、バイオアベイラビリティが改善されるはずである。第1オルニチンアシル化誘導体では11〜35nMのIC50値が示され、インビボでのPET画像化のための小分子CXCR4アンタゴニストの18F−放射性標識が初めて可能になった。以下のパネルは、Ornが、それぞれFB、FP、AcおよびAmでδ−N置換された環状のOrn含有ペンタペプチドで得られた結果を示す。
【0158】
【化15】

α−モノメチル化環状ペンタペプチド(Nα−メチルスキャン)での結合アッセイの結果を、以下の表1に示す(以下の表において、IC50値>250nMを有し、従って本発明の第1〜第3の態様の範囲に含まれないペプチドを比較目的で含めており、IC50値の後ろに*印を付していることに注意のこと)。
【0159】
【表1】

OD1(cyc[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly])の構造は、以下のとおりである。
【0160】
【化16】

この結果から、Arg残基がメチル化されると、得られる親和性の低下はわずか5分の1〜10分の1であることが観察され得る。他の残基がメチル化された場合、より大きな低下が得られる。
【0161】
α−ジメチル化ペンタペプチドでの対応する結果を以下に示す(表2)。かかる修飾により、さらなる親和性の低下が示される。
【0162】
【表2】

Argがオルニチンまたはシトルリンで置換されたペンタペプチドでの結合アッセイの結果を、以下の表3に示す。
【0163】
【表3】

表3の結果は、環状ペンタペプチドの最初のArg残基が、劇的な親和性の低下なく、オルニチンなどのカチオン性残基で置換され得ることを示す。
【0164】
18F含有補欠分子族の取込みに関する側鎖アシル化オルニチン誘導体の評価では、フルオロベンゾイル化誘導体が最も高い親和性を示すことがわかった(11nM−上記のパネル参照)。この化合物は、比較的高い脂肪親和性を示した(LogP 1.06)。
【0165】
また、いくつかの他のOrn−Nδおよび/またはOrn−Nα−修飾ペンタペプチド(例えば、Nδスペーサー部分を有する一連の誘導体)も作製した。CXCR4結合の結果を表4に示す。
【0166】
【表4】

また、D−Ornの誘導体を含む一連のペンタペプチドを、BがHisまたはPheであるペンタペプチドとともに作製した。CXCR4結合の結果を表5に示す。
【0167】
【表5】

Alaまたは類似残基が鎖内に挿入されたいくつかの環状のヘキサペプチドを、CXCR4に対する結合親和性について試験した。結果を表6に示す(注−Dap(FP)は、(N−フルオロプロピオニル)−ジアミノプロピオン酸である)。
【0168】
【表6】

表6の結果は、親和性の低下がほんの中程度で、AlaがNalとGly間に挿入され得ること、および/またはGlyがAlaで置き換えられ得ることを示す。他の残基のこの位置への挿入、または表6の試験した残基のいずれかの他の位置への挿入は、充分許容されるものではなかった。
【0169】
さらなるNα−メチルスキャンを、一連の環状のヘキサペプチド(N−モノ−、ジ−およびトリメチル化型)で行ない、これを表7に報告する。
【0170】
【表7】

この結果は、環状のヘキサペプチドのNα−メチル化後の明白な結合親和性の低下を示すが、N−メチル−D−Tyrヘキサペプチドは、その他のほとんどの誘導体と同様、かかる有意な親和性の低下がなかった。
【0171】
標識のための補欠分子族の結合をより柔軟性にするため、CPCR4内のGly残基をDapで置換することにより、アミノ基の導入を調べた。結果(表8)は、この置換後の親和性の低下は中程度にすぎないことを示す(注−FP:2−フルオロプロピオニル;FB:4−フルオロベンゾイル)。
【0172】
【表8】

CPCR4または本明細書に記載のその他のペプチドの他の考えられ得る修飾としては、対応する18F標識化合物の類似化合物としての他のフッ素含有芳香族部分でのNal置換体が挙げられる。例えば、
【0173】
【化17】

AMS(FB)は、アミノオキシ−セリン部分と4−フルオロベンズアルデヒドとのオキシムである。
【0174】
蛍光CXCR4リガンドの開発のため、Nalを蛍光Dap誘導体(Dap(NBD)など)で置換することが可能である(NBDは、7−ニトロ−1,2,3−ベンゾキサジアゾールである)。この誘導体は、CPCR4と比べて低下した親和性を示したが、FACS解析の結果により、かかるリガンドは依然として、かかる手法によるCXCR4発現の研究に適したものであり得ることが示されている。
【0175】
実施例3−ペプチド系PETプローブおよび生物発光を用いたCXCR4ケモカイン受容体発現の複数様式の分子画像化
腫瘍細胞の転移と器官特異的ホーミングにおける重要な役割は、ケモカイン受容体CXCR4とその内因性リガンドSDF−1αに因る。インビボでのCXCR4発現の標的化のため、本発明者らは、放射性標識環状ペプチドCPCR4を開発した。125I−CPCR4は、高親和性でCXCR4に結合し(K=0.4nM)、インビボでCXCR4発現腫瘍内において高い蓄積を示し(注射1時間後5.5%ID/g)、CXCR4陽性腫瘍の明確な輪郭描写を可能にする最初のPET画像化用プローブである。
【0176】
腫瘍の発達と受容体発現の相関を可能にするため、および複数様式(multimodality)(生物発光および核)画像化により非放射性標識プローブを用いて治療的介入の可能性をモニターするため、腫瘍細胞をルシフェラーゼ(luc)で形質導入した。CXCR4とluc、あるいは対照としてlucまたはeGFPのみの遺伝子を含むレンチウイルスベクターを構築した。これらのベクターは、マウスCMS5線維肉腫細胞の安定な形質導入に成功裡に使用された。CMS5/CXCR4/luc細胞上のCXCR4の表面発現を、放射性リガンド結合アッセイおよびFACS試験において調べた。CPCR4結合の高い親和性と特異性およびlucの機能性発現が細胞アッセイで確認された。この形質導入細胞をヌードマウスに皮下注射した。動物をμ−PETにより、放射性標識CPCR4および生物発光(luc)/蛍光(eGFP)画像化を用いて解析した。オートラジオグラフィ、生物発光測定および免疫組織化学検査により、エキソビボ解析を行なった。CPCR4結合のより良好な理解のため、および改善された薬物動態学特性を有するリガンドを設計するため、新規に提案されたCXCR4受容体モデルが開発されており、現在、CXCR4受容体変異型を調べることにより確認されている。このコンピューターモデルに基づき、トレーサー最適化と他の標識選択肢の検討のために、CPCR4誘導体の構造と活性の関係に関する試験が行なわれている。
【0177】
結論として、このアプローチにより、インビボでのCXCR4発現の画像化が可能となり、腫瘍の転移の可能性の非侵襲的研究用および個別治療のためのCXCR4発現の測定用の向上した画像化用プローブの開発が可能となる。
【0178】
実施例4−多量体オリゴペプチド系CXCR4受容体結合化合物の作製および特徴付け
4.1. いくつかの環状オリゴペプチド二量体を、本明細書に記載のオリゴペプチド単量体を基にして作製した。かかる二量体(合成に使用されたスペーサーおよび/またはリンカー基を含む)は、本発明の範囲に含まれるあらゆる二量体、ならびにさらなる環状オリゴペプチドを組み込むことによって作製される高次多量体の合成の一般原理を例示するものである。
【0179】
最初に、以下の単量体(化合物Aと表示、シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]、および化合物B、シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]を有する二量体を調べた。
【0180】
【化18】

【0181】
【化19】

Fujiiら[1]によるCXCR4アンタゴニストに関する研究により、高親和性環状ペンタペプチドシクロ[D−Tyr−Arg−Arg−2−Nal−Gly](CPCR4またはFC131としても知られている)がもたらされた。CPCR4の単量体誘導体シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−2−Nal−Gly](化合物A)およびシクロ[D−Tyr−(Me)−D−Orn−Arg−2−Nal−Gly](化合物B)では、CPCR4と比べて親和性の改善が示された(それぞれ、9.1nMおよび6.15±1.2nM)。
【0182】
このような単量体CXCR4リガンドの親和性をさらに改善するため、いくつかの多量体CXCR4リガンドを合成した。最初に化合物Aの二量体ペプチドを、グルタルアルデヒド(58.0±4.2nM)とグルタル酸(4.3±0.3nM)によって、以下に示すようにして合成した。
【0183】
【化20】

【0184】
【化21】

グルタル(gluataric)アルデヒドは、単量体Aの1対のオルニチンNδ−アミノオキシアセチル誘導体に、ジオキシム共役体が形成されるようにカップリングさせたことに注意のこと。
【0185】
一般に、該二量体化合物は、環状ペプチドのアミン基(Orn、Lysまたは側鎖に末端アミン官能性を有する他のアミノ酸)の、三官能性リンカーのカルボン酸基(例えば、Boc保護アスパラギン酸、Boc保護グルタミン酸)へのカップリングによって合成される。Boc基はTFAでの処理によって切除される。次いで(than)、遊離アミノ基がDOTA、DTPA、蛍光基などのカップリングに使用され得る。続く四量体およびオリゴマーの合成には、例えば、本発明の二量体化合物(例えば、リンカーとしてGluまたはAspを有する)が使用され、リンカーの遊離アミノ基が、別のBoc保護GluまたはAsp残基のカルボン酸基へのカップリングに使用される。この場合も遊離アミノ基によってDOTA、DTPA、または蛍光基にカップリングされ得る。あるいはまた、このアミノ基は、次の二量体にカップリングして「分枝ツリー」を合成するのに使用され得る。
【0186】
また、多量体化合物は、官能基選択的Huisgen反応、アシル化、ヒドラゾン形成、チオエーテルなどによって合成され得る。これらの方法は文献に記載されている。
【0187】
該二量体の合成条件に関しては、リンカーとしてグルタル酸が使用される上記の化合物が例示的である。これを溶液中でのアシル化によって作製した。オルニチン側鎖のアシル化では、環化して充分脱保護したペプチドを、HATUおよび対応する酸を含むDMFならびに塩基としてのDIEAとともに撹拌した。反応をESI−MSによってモニターした。完全に変換されたら、溶媒を減圧下でエバポレートし、アセトニトリルと水に溶解後、精製のためにHPLC内に注入した。
【0188】
本明細書に記載の本発明の化合物すべてに関する解析結果を以下の表9に示す。
【0189】
本明細書に報告した該二量体のIC50の結果(以下の表10)は、上記の方法に従って求めた。
【0190】
【表9−1】

【0191】
【表9−2】

【0192】
【表10】

4.2. この実施例では二量体として、化合物Bを有する多量体を合成した。オリゴペプチドを連結するためのスペーサーとして、以下に概略的に示したような、いくつかのジカルボン酸を使用した。スペーサーの長さは、至適親和性が達成されるように最適範囲にする必要があることは明らかである。例えば、スベリン酸(HOOC−(CH−COOH)およびセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)が最適なスペーサーであった(それぞれ、IC50=2.51±0.7nMおよび2.12±0.9nM)。より短いか、またはより長いスペーサー、例えば、グルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、アジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、またはトリデカン二酸(HOOC−(CH11−COOH)などを使用すると、親和性が低下した(それぞれ、4.28±2.3nM、4.42nM、11.1±3.4nM)。
【0193】
【化22】

種々の長さのリンカー/スペーサー(nの値は、上記概略図のメチレン基数を示す)を有する化合物Bの二量体の結合親和性の結果を表10に報告する。
【0194】
4.3. 結合しない環状ペンタペプチドを有し、グルタル酸がスペーサーとして使用された化合物Bからなる二量体(「混合型二量体」、以下に図示)は、2つのB単位(B1)からなるその類似体と比べて低い親和性を有することがわかった。これは、多量体CXCR4リガンドが、その単量体対応物と比べて改善された親和性を有すること、およびB1などの二量体の高い結合親和性は、単量体と比べた大きさ、電荷または形状の違いによるものではないこと(これは、ヘテロ二量体によって確認される)を示す。
【0195】
【化23】

結果は以下のとおりであった。単量体B単独(すなわち、上記概略図の左側の単量体)IC50=6.15nM;「不活性」なシトルリン含有単量体単独(すなわち、上記概略図の右側の単量体)IC50>10mM;および単量体Bと該不活性な単量体からなる二量体:IC50=19.5±8.9。
【0196】
ホモ二量体B1を以下に示す。
【0197】
【化24】

これらの結果から、CXCR4リガンドの親和性は多量体化(例えば、二量体化)によって改善され得ると結論付けられ得る。二量体化合物の親和性は、後述(4.4)するように、少なくともスペーサーの長さ(上記4.2)およびスペーサーの構造に依存する。
【0198】
4.4. 例えば、二量体ペプチドであるグルタルアルデヒド−(シクロ[D−Tyr−Orn(アミンオキシアセチル)−Arg−2−Nal−Gly])(A2)は、トリデカン二酸(HOOC−(CH11COOH)スペーサーで連結されたシクロ[D−Tyr−(Me)−D−Orn−Arg−2−Nal−Gly]二量体(下記参照)と比べて、有意に低い親和性(58.0±4.2nM)を有する。両方のスペーサーは同じ数の原子からなるが、スペーサーの構造のみが異なる。競合アッセイでのIC50値によって示される両化合物の親和性の有意な差は、異なる単量体が使用されていることでは説明され得ない(上記に示したように、ペプチド鎖内にL−OrnまたはNMe−D−Ornのいずれかを有する単量体Aと単量体Bは、非常に類似した親和性を有する)。この差は、スペーサーの構造が異なることによってのみ説明され得る。以下の上側の概略図(単量体A)に示すように、Orn側鎖に連結されたアミノオキシアセチル基に結合しているグルタルジアルデヒドスペーサーによって連結されたシクロ[D−Tyr−Orn−Arg−2−Nal−Gly]単量体からなる二量体を作製した。リンカー(スペーサー)全体は、Ornのδ−アミノ基に連接された2つのカルボニル基を除いて11個の原子からなる。下側の概略図(単量体B)は、Orn側鎖に直接結合しているトリデカン二酸(HOOC−(CH11COOH)スペーサーによって連結されたシクロ[D−Tyr−Orn−Arg−2−Nal−Gly]単量体からなる二量体である。このスペーサー(該2つのカルボニル基を除く)も11個の原子からなる。
【0199】
【化25】

【0200】
【化26】

4.5. また、単量体B、すなわち、シクロ[D−Tyr−(Me)−D−Orn−Cit−2−Nal−Gly]においてArgとCitの交換によって作製した、CXCR4に対して親和性のない環状ペプチドを、化合物/単量体Aを有する二量体に導入すると、対応する高親和性単量体単独および対応するホモ二量体(A1)と類似した、またはほんの少し低下した親和性が示されることが実証された(下記参照)。
【0201】
【化27】

【0202】
【化28】

ホモ二量体A1は、上記の4.1に示しており、4.3±0.3nMのIC50を有する。
【0203】
4.6. したがって、CXCR4受容体に対して高い親和性を有する多量体化合物(例えば、二量体、三量体、四量体およびそれより大きいオリゴマー(デンドリマー)など)が作製され得る。このような多量体は、種々のスペーサーおよび/またはリンカー部分にカップリングされた単量体の環状ペンタペプチドを用いて合成される。スペーサーは、該環状ペプチド内のアミノ酸(Orn、D−OrnまたはNMe−D−Ornなど)に連結される。さまざまなスペーサー、例えば、ジカルボン酸、アミノ酸(リシン、グルタミン酸)およびアミノ酸鎖(小分子ペプチド)、ポリエチレングリコール鎖(PEG)またはアルキンが使用され得る。このようなリンカーは、a)多数の単量体ペプチドリンカー単位、およびb)シグナル伝達単位、例えば、放射性標識基(放射性金属含有キレート化剤もしくは補欠分子族(prothetic group)など)、または錯体構築物の1つに対する蛍光基のカップリングを可能にする多数の官能基を有する。
【0204】
いくつかのかかるアプローチを、一例として以下に概略的に示す。
【0205】
【化29】

上記概略図は、該環状ペプチドに対するスペーサーのカップリングのための異なるストラテジーを示す。上側の図では、修飾チロシンがスペーサーのカップリングに使用されている。また、Tyrは、スペーサーを非修飾Tyrに直接結合されるようにO−アルキル化されていてもよい。また、結合のための官能基を提供するため、Cysなどの他のアミノ酸を導入してもよい。マレイミドまたはチオエーテルの形成、ならびに特にα−ハロケトンおよびα−ハロアミドとの反応は、このアミノ酸にスペーサーを導入するのに好適な修飾である(概略図の下側の例)。
【0206】
4.7. いくつかのカルボン酸系スペーサーを以下に示す。
【0207】
【化30】

スペーサーおよび/またはリンカー基のこれらの例に加え、さらなるスペーサー、すなわち、アルコールまたはハロゲンによるカルボン酸残基の1つまたは2つの定型的な(formal)交換によって作製される、アルキル化のためのスペーサーが好適なリンカーまたはスペーサーである。アミノ酸鎖または小分子の線状ペプチドもまた、考えられ得るリンカーおよび/またはスペーサーである。
【0208】
4.8. また、驚くべきことに、該環状オリゴペプチド内のOrnの側鎖に大型の嵩高い基が直接連結されていることは、例えば、以下の単量体の例で示されるように、親和性に有意に影響しないこともわかった。
【0209】
【化31】

この知見により、さまざまな官能基を含み、必ずしも大きさまたは嵩に制限がなく、かつ結合体の薬物動態学特性および薬力学特性を改変するために他のオリゴペプチド、標識、細胞傷害性部分および他の基を結合するためのリンカーおよびスペーサーによって環状オリゴペプチドを結合させ、二量体および多量体にするさらなる可能性が開かれる。
【0210】
4.8. 結論として、図5に概略的に示した構築物は、CXCR4受容体が関与している状態において、治療的および診断的介入のための有意な影響を有することが期待される。図5の構築物は、親和性が比較的高い2つの単量体のホモ二量体がリンカー基によってともに連接されて構成されている。リンカー基は少なくとも三官能性であり、18Fを有する置換基またはキレート化剤(DOTAなど)との錯体状態の放射性金属のいずれかの形態である放射性標識を、任意選択のスペーサー基によってカップリングさせることを可能にするものである。
【0211】
多量体化は、多数のペプチド単位またはペプチド−スペーサー単位を、多官能性部分(すなわち、リンカー)(これは、シグナル伝達単位/検出可能な標識のカップリングのためにも使用される)にカップリングさせることによって行なわれ得ることは認識されよう。さらに、リンカーの構造は非常に柔軟性であり得、したがって、例えば、糖(この場合、OH官能基はアルキル化されている)、またはオリゴ−もしくはポリアミンまたはオリゴ−もしくはポリアミノオキシ官能性付与された分子、ペプチドもしくは樹脂からなるものであってもよいことは容易に理解されよう。
【0212】
多量体は、多数のペプチド単位またはペプチド−スペーサー単位を単一のリンカーにカップリングさせることによって、または多数のリンカーのカップリングによって作製され得る。したがって、一実施形態において、3つの三官能性リンカーが、4つのオリゴペプチド単位およびキレート化剤(DOTA)とともに直列に連接され、構築物(P1−スペーサー)−リンカー−リンカー(DOTA)−リンカー−(スペーサー−P1)が形成される。
【0213】
オリゴペプチドまたはポリアミンなどの多官能性リンカーにより、多数の環状オリゴペプチドが同じリンカーに、必要に応じて検出可能な標識ととも連接され得るだけでなく、多数のリンカーが互いにカップリングされることもあり得ることは理解されよう。したがって、別の実施形態では、各々が典型的には2つ以上の環状オリゴペプチド部分を有する多数のリンカーをカップリングさせる。したがって、2つのリンカー基間のカップリングにより二量体は四量体に変換され得る。かかるリンカー−リンカーカップリングは、さらなるスペーサー基によるものであってもよい。デンドリマーなどの高次多量体が、かかる乗法的合成アプローチによって作製され得ることは認識されよう。かかる多量体によって、有意に高い結合親和性および選択性が得られる可能性がもたらされ、さらに、化合物の特性を変更するためのさらなる基の結合のための有意な機会がもたらされる。
【0214】
新規な環状オリゴペプチド単量体に関して本明細書に示した結果は、かかるオリゴペプチドを含む二量体または高次多量体で得られるであろう結果の例示である。また、本発明による二量体は、既知の環状オリゴペプチドCXCR4リガンドを含むものであってもよく、本明細書において、比較的弱い結合性オリゴペプチドを使用した場合であっても、CXCR4受容体親和性において驚くべき改善が得られ得ることが示された。
【0215】
さらに、本明細書に記載した二量体の結果は、該環状オリゴペプチドの三量体および高次多量体で予測され得る結果の例示であることは認識されよう。
【0216】
実施例5−CXCR4結合性環状オリゴペプチドとキレート化剤との結合体の作製
当業者なら、本発明による環状オリゴペプチド、適当なスペーサー部分(好ましくは、本明細書に記載のリンカー部分の1つ)、キレート化剤または放射性金属の錯体形成に適した他の部分の多量体からなる構築物または結合体を容易に作製することができよう。典型的には、近年の数多くの刊行物に記載されているように、例えばDOTAを、リンカーを有する完全に保護されたオリゴペプチドに、標準的な活性化手順を用いた三重保護(例えば、tert−ブチル三重保護)DOTAの使用、または予め活性化したDOTA種(例えば、DOTAのモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラN−スクシンイミジルエステルもしくは4−ニトロフェニルエステル)の使用のいずれかによってカップリングさせる。あるいはまた、この目的は、標準的なペプチドカップリング条件を用いて達成され得る。
【0217】
同様に、TETAまたはDTPAなどの他のキレート化剤/錯体形成部分をカップリングさせてもよい。また、DTPAは、環状のビス無水物を用いてカップリングさせ得る。また、明らかに、キレート化剤をスペーサーに予めカップリングさせ、したがって最終工程でペプチド−スペーサー結合の形成がもたらされるようにしてもよい。
【0218】
好適なアプローチの一例としては、本明細書に記載のDOTA−Ahx−Aspリンカー−キレート化剤結合体を主成分とする化合物が挙げられよう。このような化合物は、関連する金属を放射性医薬品にキレート化する能力を示す(InDOTA類似体での結果に示すように)が、依然として、標的CXCR4受容体に対して強い結合能力を示す(表10)。
【0219】
また、キレート化剤または錯化剤のカップリングは、当業者により、放射性医薬品の分野で確立された充分報告されたカップリング手順を用いて行なわれ得る。他のカップリング経路(オキシムまたはヒドラゾンの形成など)、ならびに他の選択的な方法(チオールとマレイミドとの反応など)の使用により、同様の結果が達成され得る。
【0220】
前述の実施例は、本発明の具体的な実施形態を例示することを意図するものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。本明細書に挙げた文献はすべて、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0221】
参考文献
【0222】
【化32】

【0223】
【化33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
[(P1−S1−L−(S2−P2)
を含む化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステルであって、式中:
P1およびP2は、同じであっても異なっていてもよく、環状オリゴペプチド部分であり、P1とP2の少なくとも一方は該環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有し、ここで、Bは、塩基性アミノ酸、その誘導体、またはフェニルアラニンもしくはその誘導体であり;
S1およびS2は、同じであっても異なっていてもよいスペーサー基であり;
Lは、該環状オリゴペプチドまたはスペーサー基の結合のための少なくとも2つの官能基を含むリンカー部分であり;
jおよびqは、独立して0または1であり;
pおよびrは独立して、1以上の整数であり;そして
tは、1以上の整数であり、
ただし、t、pまたはrが1より大きいとき、該環状オリゴペプチド部分、スペーサー基および/またはjもしくはqの値は、多数の該(P1−S1)部分または多数の該(S2−P2)部分間で同じであっても異なっていてもよいものとする、
化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはエステル。
【請求項2】
前記スペーサー基S1およびS2が1〜20個の炭素原子のアルキル鎖を含み、該アルキル鎖は、分枝鎖または非分枝鎖、置換または非置換であり得、1つ以上のヘテロ原子、環式基および/または複素環式基で分断されていてもよく、前記環状オリゴペプチドおよびリンカーLの結合に適した少なくとも2つの官能基を有するものであり得る、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
S1およびS2の前記アルキル鎖が1〜14個の炭素原子を含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
S1およびS2の前記アルキル鎖が4〜10個の炭素原子を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有するP1またはP2の少なくとも一方が、125I−CPCR4の存在下で、対応するP1またはP2単量体のIC50として測定したとき、CXCR4受容体に対して250nM以下の結合親和性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Bが塩基性アミノ酸のNα−メチル誘導体であるとき、前記モチーフはB−Argであるものとする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
P1とP2の各々が前記環状部分内にB−ArgまたはB−(Me)Argモチーフを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
P1とP2の少なくとも一方が、配列:
シクロ[D−Tyr/(Me)−D−Tyr−B−Arg/(Me)Arg−Z−(Ala)−X]
を有する環状オリゴペプチドから選択され、式中:
Bは、請求項1に規定のとおりであるが、ただし、Bが塩基性アミノ酸のNα−メチル誘導体であるとき、前記モチーフはB−Argであるものとし;
Zは、側鎖内に芳香族基を含むアミノ酸であり;
nは1または0であるが、ただし、該環状部分の配列内の先の4つのアミノ酸がD−Tyr/(Me)−D−Tyr−Arg−Arg−Nalであり、NalがL−3−(2−ナフチル)アラニンであるときのみ、nが1であるものとし;そして
Xは、Gly、(Me)Gly、Ala、Dap(ジアミノプロピオン酸)、Dap(FP)((N−フルオロプロピオニル)−ジアミノプロピオン酸)、Dab(ジアミノ酪酸)、Dab(FP)((N−フルオロプロピオニル)−ジアミノ酪酸)、Dab(FB)((N−フルオロベンゾイル)−ジアミノ酪酸)およびDap(FB)((N−フルオロベンゾイル)−ジアミノプロピオン酸)から選択される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Zが、Nal、Dap(FB)またはAMS(FB)(アミノオキシセリンと4−フルオロベンズアルデヒドのオキシム)から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Bが、Arg、Orn、D−Orn、CitおよびHis、またはそのN−置換誘導体から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Bが、Me基でNα−置換されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
BがOrnまたはD−Ornであり、該オルニチン残基が、Nδにおいて、フルオロベンゾイル(FB)、フルオロプロピオニル(FP)、アセチル(Ac)、アミド(Am)、Me、1−ナフチルメチル(N1)、2−ナフチルメチル(N2)、ベンジル(Bz)およびアシルスペーサー部分から選択される1つまたは2つの基で置換されており、該アシルスペーサー部分は、1〜14個の炭素の鎖を含み、ヘテロ原子により任意選択で分断され、該オルニチンのNδに対して遠位の末端に求核性官能基を有するアシル基である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記アシルスペーサー部分が、アミノヘキサノイル(Ahx)、トリエチレングリコールアミノアシル(TGAS)、(Ahx)、(Ahx)、(TGAS)および(TGAS)から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Bが、NαにおいてMe基で置換されたD−Ornである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
Bが、Nδにおいて、FB、FP、Ac、Am、N1、N2、MeとN1、MeとN2、Bz、BzとFB、BzとFP、MeとFB、MeとFP、またはMeで置換されたOrnである、請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
Bが、Nδにおいて、FB、FP、MeとFB、またはMeとFPで置換され、任意選択でNαにおいてMe基で置換されたD−Ornである、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
前記環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方が、配列:シクロ[D−Tyr−B−Arg−Z−X]を有し、式中、B、ZおよびXは、請求項8に規定のとおりであるが、ただし、Nα−メチル化され得るのは該配列内の残基の1つ以下であるものとする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
BがArgである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記環状オリゴペプチド部分の少なくとも一方が、配列:シクロ[D−Tyr/(Me)D−Tyr−B−Arg/(Me)Arg−Z−X]を有し、式中、ZおよびXは、請求項8に規定のとおりであり、Bは、Arg、(Me)Arg、Orn、Cit、Orn(FB)、Orn(FP)、Orn(Ac)、Orn(Am)、Orn(N1)、Orn(N2)、Orn(Me,N1)、Orn(Me,N2)、Orn(Me)、Orn(Bz)、Orn(Bz,FB)、Orn(Ahx)、Orn(Ahx)、Orn(Ahx)、Orn(TGAS)、Orn(TGAS)、Orn(TGAS)、Orn(Me,FB)、D−Orn(FB)、(Me)D−Orn(FB)、(Me)D−Orn(Me,FB)、HisおよびPheから選択されるが、ただし、Nα−メチル化され得るのは該配列内の残基の1つ以下であるものとする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
最初の残基がD−Tyrである、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
3番目の残基がArgである、請求項19または請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
ZがNalである、請求項17〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
XがGlyである、請求項17〜22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方が、
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−(Me)Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−(Me)Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Cit−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Ala]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−(Me)Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−(Me)Nal−Gly]
シクロ[(Me)D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Ala−Gly]
シクロ[(Me)D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FP)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ac)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Am)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Dap(FP)]
シクロ[D−Tyr−Orn(N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Bz)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Bz,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ahx)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ahx)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(TGAS)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(Me,FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−His−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Phe−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Cit−Nal−Gly]
から選択される配列を有する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
前記環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方が、
シクロ[D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)Arg−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Arg−(Me)Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Cit−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FP)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Ac)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Am)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N1)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(Me,N2)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−His−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]
から選択される配列を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記環状オリゴペプチド部分P1とP2の少なくとも一方が、
シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn(FB)−Arg−Nal−Gly]
から選択される配列を有する、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
P1とP2が同じである、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
前記環状オリゴペプチド部分P1とP2の各々が、請求項24に列挙して示したものから選択される配列を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項29】
P1およびP2が、配列:シクロ[D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly]を有する、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項30】
P1およびP2が、配列:シクロ[D−Tyr−(Me)D−Orn−Arg−Nal−Gly]を有する、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項31】
前記リンカー部分Lが少なくとも3つの官能基を含み、そのうちの2つが前記環状オリゴペプチドまたはスペーサー部分の結合に適したものであり、そのうちの1つが検出可能な標識または細胞傷害性部分の結合に適したものである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
前記リンカー部分Lが、ジカルボン酸、アミノ酸、線状オリゴペプチド、アルキン、ジオキシム、ポリ(アルキレングリコール)、カルボン酸−および/またはアミノ−置換ポリ(アルキレングリコール)、糖類、ポリアミンおよび官能性付与されたペプチドもしくは樹脂などのオリゴ−またはポリ−アミノオキシ−官能性付与された種から選択される基を含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
検出可能な標識または細胞傷害性部分を含む、請求項1〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
前記リンカー部分Lに直接または間接的に結合された検出可能な標識または細胞傷害性部分を含む、請求項31〜32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
前記検出可能な標識または細胞傷害性部分がLに、スペーサー基S3を介して間接的に結合されている、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
S3が、請求項2のS1およびS2について規定されるとおりである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
検出可能な標識として放射性標識を含む、請求項33〜36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項38】
前記放射性標識が、放射性核種と有機錯化剤との錯体の形態である、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
1つ以上のDap(FB)、Dap(FP)、FBまたはFP基を含み、該フッ素置換基の1つが18Fである、請求項1〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
18Fが、OrnまたはD−OrnのNδにおけるFBまたはFP置換基上に存在する、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
18F47Sc、51Cr、52Fe、52mMn、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、72As、75Br、76Br、77Br、82Br、89Zr、94mTc、97Ru、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、191Pt、197Hg、201Tl、203Pb、110mIn、120Iから選択される放射性標識を有する、請求項37に記載の化合物。
【請求項42】
前記錯化剤が、前記環状オリゴペプチドまたはリンカー部分Lの一方にスペーサー基S3によって結合されている、請求項38に記載の化合物。
【請求項43】
前記放射性標識が、32P、67Cu、77As、90Y、99Mo、103Ru、105Rh、109Pd、111Ag、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、131I、140La、140Nd、142Pr、143Pr、149Tb、149Pm、151Pm、153Sm、159Gd、161Tb、166Ho、166Dy、169Er、169Yb、172Tm、175Yb、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、211At、211Bi、212Bi、213Bi、225Acから選択される、請求項37に記載の化合物。
【請求項44】
前記放射性標識が、90Y、188Reおよび131Iから選択される
、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
1つ以上の親水性部分の結合によって修飾されたものである、請求項1〜44のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項46】
前記1つ以上の親水性部分が前記リンカー基Lに結合されている、請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物を、1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項48】
注射に適した、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
請求項1に記載の化合物の合成方法であって、環状オリゴペプチドP1およびP2、リンカーLならびに、任意選択でスペーサーS1および/またはS2を、該オリゴペプチドの官能基が、該リンカーLの官能基あるいは、存在する場合は該スペーサーS1および/またはS2の官能基と反応し、該スペーサーのその他の官能基が該リンカーLの官能基と反応するような条件下で合わせることを含む、方法。
【請求項50】
さらに、任意選択でスペーサー基S3を有する細胞傷害性部分または検出可能な標識を、該細胞傷害性部分もしくは該検出可能な標識上の官能基または存在する場合は該スペーサー基S3の官能基が、前記リンカーLあるいは前記環状オリゴペプチドP1および/またはP2上の官能基と反応するように導入することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記環状オリゴペプチドと前記リンカーLおよび/またはスペーサー基S1および/またはS2との反応に使用される条件が、前記細胞傷害性部分もしくは前記検出可能な標識または存在する場合はスペーサーS3と該リンカーLまたは該環状オリゴペプチドとの反応に使用される条件とは異なる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
治療または診断における使用のための請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項53】
新形成状態の処置のための医薬の調製における請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項54】
新形成状態の処置および/または診断における使用のための請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項55】
新形成状態の診断的画像化のための医薬の調製における請求項33〜46のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該化合物が検出可能な標識を含む、使用。
【請求項56】
前記新形成が転移の可能性を有するか、または有することが疑われる、請求項53または請求項54に記載の使用。
【請求項57】
前記新形成状態が乳癌または前立腺癌である、請求項53〜55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
新形成組織を画像化する方法であって、新形成を有するか、または有することが疑われる被験体に、請求項33〜46のいずれか1項に記載の化合物を投与する工程、およびインビボでの該化合物の分布後に該化合物を検出する工程を含み、該化合物が検出可能な標識を含む、方法。
【請求項59】
前記検出する工程後、前記検出された化合物の画像を生成するさらなる工程を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
新形成の細胞の転移の可能性を判定する方法であって、該方法は、該細胞を請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物に、該化合物が該細胞の表面上のCXCR4受容体に結合することが可能となるように曝露する工程、未結合化合物を該細胞の近傍から除去する工程、ならびに該細胞に結合された化合物の存在および/または量を測定する工程を含む、方法。
【請求項61】
前記新形成から前記細胞を取り出し、インビトロで該化合物に曝露する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
結合された化合物の画像化あるいはその存在および/または量の測定が、前記標識が放射性核種を含む場合PETまたはSPECTを用いて行われる、請求項58〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
被験体の新形成状態の処置方法であって、該新形成が転移の可能性を有するか、または有することが疑われ、該方法は、該被験体に請求項1〜46のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項64】
前記新形成状態が乳癌または前立腺癌である、請求項58〜63のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−536938(P2010−536938A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522449(P2010−522449)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002950
【国際公開番号】WO2009/027706
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(508258792)
【Fターム(参考)】