癌を治療するための(2’−デオキシ−リボフラノシル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−(1,3)ジアゼピン−2−オン誘導体
治療化合物の不活性化の原因である脱アミノ化酵素を阻害するために使用される化合物、およびその使用方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌は、米国では心疾患のみがその上位に位置する2番目に多い死因であり、死因の1/4を占めている。1990年以来、米国だけでも、ほぼ500万人の生命が、癌のいずれかの形態によって失われている。
【0002】
例えば、米国では毎年186,000人の女性が乳癌に罹患し、この疾患による死亡率は、50年間変わらないままである。根治的乳房切除術、非定型的根治的乳房切除術または腫瘍摘出手術を介しての疾患の外科的切除が依然として、この状態を治療するための中核である。残念なことに、腫瘍摘出手術のみで治療された人のうちの高いパーセンテージが、疾患を再発する。
【0003】
肺癌は、米国ではいずれの性別においても最も多い癌の死因である。肺癌は、肺で発生した原発性腫瘍、または、腸もしくは乳房などの他の臓器から拡散した続発性腫瘍から生じ得る。原発性肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、および中皮腫の3つの主な種類に分類されている。非小細胞肺癌には、扁平上皮細胞癌、腺癌、および大細胞癌の3種類がある。中皮腫は、胸膜と称される肺の外皮が罹患する稀な種類の癌であり、多くの場合、アスベスト曝露が原因である。
【0004】
卵巣癌は、女性の癌全体の約3%を占めており、婦人科癌のうち、子宮体部の癌に次いで2位にランキングされている。米国では卵巣癌に毎年20,000人を超える女性が罹患しており、毎年約15,000人の死亡原因となっている。疾患が局在ステージと診断された場合、5年生存率は90%を超えるが、このステージで発見されるのは、全ての症例のうちの約19%にすぎない。
【0005】
膵臓癌の発病率は、多くの先進国において過去20年にわたって、ずっと上昇し続けており、このことは、大きくなりつつある疫学的問題の特徴を示している。
【0006】
白血病は、血液細胞が罹患する癌の種類である。白血病のために現在処方されている治療計画には、全身照射および化学療法がある。しかし、これら2つの治療計画は、臨床的なジレンマを提起する。即ち、白血病は、血液の癌であるので、血液中の全ての細胞および骨髄中で生じる全ての細胞が、新生物細胞の破壊を保証するように治療されなければならない。これらの細胞全ての破壊は、患者を深刻な免疫抑制状態にしてしまい、このことは、白血病と同程度に致死的になり得るであろう。
【0007】
一部の抗癌薬は、アデノシンデアミナーゼ(ADA、EC 3.5.4.4)およびシチジンデアミナーゼ(CDA、シトシンヌクレオシドデアミナーゼ、シチジンアミノヒドロラーゼ、またはEC 3.5.4.5とも称される)などの生体の天然の酵素によって代謝される。これらの酵素はそれぞれ、天然アミノプリンおよびアミノピリミジンヌクレオシドを、ヒトおよび他の生体中で脱アミノ化するように機能する。これらの酵素はまた、活性なヌクレオシドベースの抗癌薬を不活性な代謝産物へと変換する。例えば、プリンヌクレオシド薬であるアラビノシルアデニン(フルダラビン、ara−A)はADAによって脱アミノ化され、その結果生じた化合物は、親アミノ基がヒドロキシルで置換されたことで、親化合物と比較すると抗腫瘍薬として不活性である。同様に、抗白血病薬であるアラビノシルシトシン(シタラビン、Ara−C(もしくはAraC)、4−アミノ−1−(β−D−アラビノフラノシル)−2(1H)−ピリミジノン、シトシンアラビノシド、または1−(β−D−アラビノフラノシル)シトシンとも称される)は、CDAによって代謝分解されて、不活性なアラビノシルウラシルになる。
【0008】
CDAは、ピリミジンサルベージ経路の成分である。これは、シチジンおよびデオキシシチジンを加水分解脱アミノ化によって、それぞれウリジンおよびデオキシウリジンに変換する(Arch.Biochem.Biophys.1991年、290巻、285〜292頁;Methods Enzymol.1978年、51巻、401〜407頁;Biochem.J.1967年、104巻、7頁)。これはまた、上記で挙げられたara−Cなどの臨床的に有用な薬物である数種の合成シトシン類似体を脱アミノ化する(Cancer Chemother.Pharmacol.1998年、42巻、373〜378頁;Cancer Res.1989年、49巻、3015〜3019頁;Antiviral Chem.Chemother.1990年、1巻、255〜262頁)。シトシン化合物からウリジン誘導体への変換は通常、治療活性の喪失または副作用の付加をもたらす。また、シトシン類似薬に対する耐性を獲得している癌は多くの場合に、CDAを過剰発現することが判明している(Leuk.Res.1990年、14巻、751〜754頁)。高レベルのCDAを発現する白血病細胞は、シトシン代謝拮抗薬に対する耐性を顕現することがあり、したがって、そのような治療の抗新生物活性を限定し得る(Biochem.Pharmacol.1993年、45巻、1857〜1861年)。
【0009】
テトラヒドロウリジン(THU、または、1(β−D−リボフラノシル)−4−ヒドロキシテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン)は、長年にわたりシチジンデアミナーゼの阻害薬として知られている。
【化1】
THUの同時投与がシチジンベースの薬物の効力および経口活性を高めることを、様々な報告が示唆している。例えば、THUは、抗白血病薬である5−アザシチジン(AzaC、4−アミノ−1−(β−D−リボフラノシル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、または1−(β−D−リボフラノシル)−5−アザシトシンとも称される)の経口活性をL1210白血病マウスにおいて増大させることが判明している(Cancer Chemotherapy Reports 1975年、59巻、459〜465頁)。THUおよび5−アザシチジンの組合せはまた、ヒヒ鎌状赤血球性貧血モデル(Am.J.Hematol.1985年、18巻、283〜288頁)において、および鎌状赤血球性貧血のヒト患者において、経口投与された5−アザシチジンと組み合わせて研究されている(Blood 1985年、66巻、527〜532頁)。
【0010】
THUはまた、L1210白血病マウス(Cancer Research 1970年、30巻、2166頁;Cancer Invest 1987年、5巻(4号)、293〜9頁)において、および腫瘍のあるマウス(Cancer Treat.Rep.1977年、61巻、1355〜1364頁)において、ara−Cの経口効力を増大させることが判明している。静脈内投与ara−Cと静脈内投与THUとの組合せが、いくつかの臨床研究でヒトにおいて調査されている(Cancer Treat.Rep.1977年、61巻、1347〜1353頁;Cancer Treat.Rep.1979年、63巻、1245〜1249頁;Cancer Res.1988年、48巻、1337〜1342頁)。特に、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)の患者において組合せ研究が行われている(Leukemia 1991年、5巻、991〜998頁;Cancer Chemother.Pharmacol.1993年、31巻、481〜484頁)。
【0011】
ゲムシタビン(dFdC、1−(4−アミノ−2−オキソ−1H−ピリミジン−1−イル)−2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−リボフラノース、または2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン、または2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジンとも称される)、他のシチジンベースの抗新生物薬もまた、CDA阻害薬と共に研究されている(Biochem.Pharmacol.1993年、45巻、1857〜1861頁)。THUとの同時投与は、マウスにおいて、ゲムシタビンの薬物動態および生物学的利用能を変化させることが判明している(Abstr.1556、2007 AACR Annual Meeting、2007年4月14〜18日、Los Angeles、CA;Clin.Cancer Res.2008年、14巻、3529〜3535頁)。
【0012】
5−フルオロ−2’−デオキシシチジン(フルオロシチジン、FdCyd)は、他のシチジンベースの抗癌薬であり、これは、DNAメチル基転移酵素の阻害薬である。マウスにおいて、THUによるその代謝および薬物動態の変化が研究されている(Clin Cancer Res.、2006年、12巻、7483〜7491頁;Cancer Chemother.Pharm.2008年、62巻、363〜368頁)。THUと組み合わされたFdCydは現在、米国国立癌研究所の臨床試験番号NCT00378807で確認される進行中の臨床試験の対象である。
【0013】
上記の研究の結果は、CDA阻害薬をゲムシタビン、ara−C、5−アザシチジンなどのシチジンベースの薬物と一緒に投与することには、治療的有用性があることを示唆している。しかし、THUなどの初期のCDA阻害薬には、酸不安定性(J.Med.Chem.1986年、29巻、2351頁)および低い生物学的利用能(J.Clin.Pharmacol.1978年、18巻、259頁)を含む欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、新規で効力があり、かつ治療的に有用なCDAの阻害薬、および癌または新生物疾患を治療するのに有用な新規の組成物が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
癌および癌に随伴する障害のための新たな治療および療法が未だ必要とされている。また、癌の1種または複数の症状を治療または改善する際に有用な化合物も必要とされている。さらに、酵素シチジンデアミナーゼの活性を阻害する方法が必要とされている。
【0016】
したがって本明細書において、式I、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIIIの化合物を提供する。また本明細書において、(i)式I、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIIIの化合物のいずれか1種と、(ii)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。
【0017】
他の態様では、シチジンデアミナーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の任意の式I〜VIIIの化合物を利用することを含む。この方法の一実施形態では、化合物は、式VIIIの化合物である。
【0018】
他の態様では、非デシタビンCDA基質と、任意の式I〜VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。他の態様では、非デシタビンCDA基質と、式Iの化合物とを含む医薬組成物を提供する。さらに他の態様では、非デシタビンCDA基質と、式VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物のある種の実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロル(cytochlor)であってよい。
【0019】
他の態様では、癌を治療する方法を提供し、これは、対象に非デシタビンCDA基質を含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式Iの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。この方法の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。
【0020】
この方法の他の実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0021】
他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に非デシタビンCDA基質を含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式VIIIの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。この方法の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0022】
他の態様では、本発明は、非デシタビンCDA基質で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式Iの化合物の使用を提供する。さらに他の態様では、本発明は、非デシタビンCDA基質で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式VIIIの化合物の使用を提供する。これらの使用のいずれかに関して、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。これらの使用の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。これらの使用のさらに他の実施形態では、血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0023】
他の態様では、ゲムシタビンと、式Iの化合物とを含む医薬組成物を提供する。さらに他の態様では、ゲムシタビンと、式VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
さらに他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象にゲムシタビンを含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式Iの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象にゲムシタビンを含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式VIIIの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。これらの方法の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0025】
他の態様では、ゲムシタビンを含む組成物で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式Iの化合物の使用を提供する。他の態様では、ゲムシタビンを含む組成物で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式VIIIの化合物の使用を提供する。これらの使用の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0026】
他の態様では、CDAが非デシタビンCDA基質と結合するのを阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の任意の式I〜VIIIの化合物を利用することを含む。この方法の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。この方法の他の実施形態では、化合物は、式VIIIの化合物であり、非デシタビンCDA基質は、ゲムシタビンである。
【0027】
一実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せに関する。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤とからなる組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せに関する。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せに関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0030】
他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せに関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、その方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0031】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0032】
他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せに関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0034】
さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せに関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】37℃の人工胃液中、時間を関数としてのER−876400(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)の全HPLC面積%純度を示すプロットである。
【図2】37℃の人工胃液中、時間を関数としてのER−876437(1−((2R,4R,5R)−3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)の全HPLC面積%純度を示すプロットである。
【図3】A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルにおけるゲムシタビン(1mg/kg)POおよびER−876437(10mg/kg)POの組合せの効果を示すグラフである。
【図4】ゲムシタビンおよびER−876437のUVスペクトルである。
【図5】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのゲムシタビンのHPLCクロマトグラムである。
【図6】CDAおよびER−876437の存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのゲムシタビンのHPLCクロマトグラムである。
【図7】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのゲムシタビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【図8】シタラビンおよびER−876437のUVスペクトルである。
【図9】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのシタラビンのHPLCクロマトグラムである。
【図10】CDAおよびER−876437の存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのシタラビンのHPLCクロマトグラムである。
【図11】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのシタラビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【図12】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのシタラビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
天然アミノプリンおよびアミノピリミジンヌクレオシドを脱アミノ化する酵素はまた、活性な抗癌薬を不活性な化合物へとヒトの体内において変換し得る。例えば、酵素シチジンデアミナーゼは、ある種の薬物のアミノ基をヒドロキシル基に迅速に変換して、これらの化合物を不活性にし得る。シチジンデアミナーゼの阻害薬を、そうしないとこの酵素によって脱アミノ化される(その結果、脱活性化される)薬物と共に同時投与すれば、抗腫瘍活性の改善が達成されるはずである。
【0038】
シチジンデアミナーゼ阻害薬(Z)−3,4−ジヒドロ−1−((2R,3R,4S,5R)−テトラヒドロ−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)フラン−2−イル)−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン(本明細書中では「ER−876400」、1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン、2H−1,3−ジアゼピン−2−オン、1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−D−リボフラノシル−とも称されるか、または化学物質登録番号75421−11−3によって示される)は、Liu,P.S.ら、J.Med.Chem.24巻:662〜666頁(1981年)、米国特許第4,275,057号(いずれもその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。ER−876400は、式IX
【化2】
によって示される
(ここで、および他において、化合物の名称と化合物の構造との間に矛盾が存在する場合、化学構造が優先される)。
【0039】
他のシチジンデアミナーゼ阻害薬は、2008年10月16日出願の国際出願PCT/US2008/80163号、2008年10月16日出願の米国特許出願第12/252,961号、および2007年10月16日出願の米国特許仮出願第60/980,397号に既に記載されており、これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0040】
シチジンデアミナーゼ(「CDA」)の阻害薬の新たな群を、本明細書において提供する。本明細書に記載されている通り、これらの化合物は、他の既知の化合物を上回る改善された半減期を有する。一実施形態では、本発明の化合物はER−876400と比較して、人工胃液中で改善された半減期を有する。これらの化合物は、癌(例えば、骨髄異形成症候群、白血病、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌)を治療することを目的としている他の抗癌医薬品(例えば、非デシタビンCDA基質)と組み合わせて投与することができる。
【0041】
[定義]
下記の定義を、本明細書を通して使用する。
明細書および請求項中で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で他に明確に示されていない限り、複数形についての言及を包含する。したがって例えば、「1種の(a)化合物」を含む医薬組成物に関する言及は、2種以上の化合物を包含し得る。
【0042】
「アルキル」または「アルキル基」は、本明細書で使用される場合、完全に飽和している、直鎖(即ち、非分岐)、分岐または環式炭化水素鎖を意味する。例としては、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC6分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C3からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC2炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC3分岐または非分岐炭素鎖である。ある種の実施形態では、「アルキル」または「アルキル基」という用語には、炭素環としても知られているシクロアルキル基が包含される。例示的なC1〜3アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびシクロプロピルが挙げられる。
【0043】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の二重結合を有する、直鎖(即ち、非分岐)、分岐または環式炭化水素鎖を指す。例としては、限定はされないが、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニル、イソ−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニルおよびn−ヘキセニルが挙げられる。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC6分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C3からC5分岐または非分岐炭素鎖である。他の態様では、アルケニルという用語は、「ジエン」とも称される2つの二重結合を有する直鎖炭化水素を指す。他の実施形態では、「アルケニル」または「アルケニル基」という用語は、シクロアルケニル基を指す。
【0044】
「C1〜6アルキルエステル」は、C1〜6アルキル基がそれぞれ上記で定義された通りであるC1〜6アルキルエステルを指す。したがって、アルコール(−OH)のC1〜6アルキルエステル基は、式−C(=O)O(C1〜6アルキル)を有し、この場合、末端酸素が、アルコール酸素の位置を占めている。
【0045】
「C2〜6アルケニルエステル」は、C2〜6アルケニル基がそれぞれ上記で定義された通りであるC2〜6アルケニルエステルを指す。したがって、アルコール(−OH)のC2〜6アルケニルエステル基は、式−C(=O)O(C2〜6アルケニル)を有し、この場合、末端酸素が、アルコール酸素の位置を占めている。
【0046】
別段に示されていない限り、二価基が、「−」によって示される2つの末端結合部位を包含するその化学式によって示される場合、結合は、左から右へと読み取ると理解されるはずである。
【0047】
立体化学が図示されていないか、または別段に述べられていない、もしくは示されていない場合、本明細書に図示されている構造はまた、構造の全ての鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または配座異性)形態、例えば、各不斉中心でのRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体ならびに(Z)および(E)配座異性体を包含することを意味している。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体も、鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または配座異性)混合物も、本発明の範囲内である。本発明の化合物の互変異性形態はいずれも、本発明の範囲内である。
【0048】
加えて、別段に述べられていない限り、本明細書に図示されている構造は、1個または複数の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を包含することも意図している。例えば、水素がジュウテリウムまたはトリチウムによって置き換えられているか、または炭素が13C−または14C−濃縮炭素によって置き換えられていること以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0049】
「治療」、「治療する」および「治療すること」は、本明細書に記載されている疾患または障害を反転、緩和、その発症を遅延またはその進行を阻害することを指す。一部の実施形態では、1種または複数の症状が発生した後に、治療を施すことができる。他の実施形態では、症状がなくても、治療を施すことができる。例えば、罹患しやすい個体に症状の発症前に(例えば、症状の履歴を考慮して、もしくは遺伝的もしくは他の罹病性因子を考慮して、または症状の履歴を考慮し、かつ遺伝的または他の罹病性因子を考慮して)治療を施すことができる。例えば、再発の低減または遅延のために、症状が消散した後に、治療を継続することもできる。疾患、障害または状態に関して「治療すること」はまた、(i)疾患、障害または状態を遅らせること、例えば、進行を停止させること、または(ii)疾患、障害または状態の軽減、例えば、臨床的症状を退縮させること、または(iii)疾患、障害または状態を遅らせ、かつ疾患、障害または状態を軽減することを指す。
【0050】
疾患、障害または状態に関して「予防すること」は、疾患、障害または状態を予防すること、例えば、疾患、障害または状態の臨床的症状を発生させないことを指す。
【0051】
式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか(または、限定はされないが、任意のその塩、アルキルエステルまたはアルケニルエステルを包含する本明細書に記載のCDA阻害薬)に関して、「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、CDAがCDA基質に結合する能力を低下させて、それによって、CDAがCDA基質を酵素的に脱アミノ化する能力を低下させることを指す。どの理論にも拘束されることはないが、CDAを阻害する化合物の能力は、特定のCDAタンパク質の活性部位に結合して、それによって、その特定のCDAタンパク質がCDA基質と結合する能力を低下させる化合物の能力に起因し得る。本内容において「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、全てのCDAタンパク質がいずれかのCDA基質に結合することを完全に妨げることを指していない。むしろ、本内容では、「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、CDAによるCDA基質の酵素脱アミノ化を低減するCDA阻害薬の能力に関する。一態様では、本発明の方法は、細胞を、有効量のCDA阻害薬化合物、即ち、本発明の化合物と接触させて、それによって、CDAの活性を阻害することを含む。
【0052】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、動物対象、好ましくは、哺乳動物対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、サルなど)、特にヒト対象(男性および女性対象の両方を包含し、新生児、幼児、若年者、青年、成人および老人対象を包含する)を意味する。「対象」はまた、in vitroまたはin vivoの、動物またはヒトの細胞または組織を指し得る。
【0053】
下記でさらに検討する通り、「CDA基質」という用語は、CDAによって脱アミノ化され得る任意の化合物を指す。一実施形態では、CDA基質は、(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもない。「非デシタビンCDA基質」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもないCDA基質を指す。「非デシタビンCDA基質のプロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、そのCDA基質が(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもないCDA基質のプロドラッグを指す。「デシタビンプロドラッグ」は、in vivoでデシタビンに変換される任意の化合物である。非デシタビンCDA基質の非限定的な例としては、シチジン、デオキシシチジン、aza−C(5−アザシチジン)、ゲムシタビン、ara−C(1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、シトクロル、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン、6−アザシチジンおよび1−メチル−Ψ−イソシチジンが挙げられる。シチジンおよびデオキシシチジンは、天然の非デシタビンCDA基質である。特定の実施形態では、非デシタビンCDA基質はゲムシタビンである。
【0054】
下記でさらに検討する通り、化合物を、次の少なくともいずれかを介してCDA基質であると決定することができる。(i)CDAによる脱アミノ化に関連した動態(Km)の証明、および(ii)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか1種を投与された場合の対象におけるその曝露に対する変化である。化合物は、これらの評価の両方によって、CDA基質であると決定されるような肯定の評価を受ける必要はない。
【0055】
化合物は、既知のアッセイを使用して、CDAによるその脱アミノ化の動態(Km)を評価することによってCDA基質であると決定することができる。例えば、全てその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Bouffard,D.Y.ら、Biochem.Pharm.45巻(9号):1857〜1861頁(1993年);Momparler,R.L.ら、Biochem.Pharm.32巻(7号):1327〜1328頁(1983年);Cacciamani,T.ら、Arch.Biochem.Biophys.290巻(2号):285〜292頁(1991年);Wentworth,D.F.およびWolfenden,R.、Biochemistry 14巻(23号):5099〜5105頁(1975年);およびVincenzetti,S.ら、Prot.Expression and Purification 8巻:247〜253頁(1996年)を参照されたい。シチジンのKm値は以前に、12±0.9μMと報告されており、デオキシシチジンのKm値は以前に、19±4μMと報告されている。Chabotら、Biochem.Pharm.32巻(7号):1327〜8頁(1983年)。加えて、ara−C(87±10μM)、ゲムシタビン(95.7±8.4μM)および5−アザシチジン(216±51μM)のKm値も以前に報告されている。同文献およびBouffard,D.Y.ら、Biochem.Pharm.45巻(9号):1857〜1861頁(1993年)。ヒト肝臓からのCDAでのシチジンのKm値もまた、9.2μMと報告されている。Wentworth,D.F.およびWolfenden,R.、Biochemistry 14巻(23号):5099〜5105頁(1975年)。この刊行物はまた、5−アザシチジン(58μM)および6−アザシチジン(4200μM)でのKm値も特定している。同文献。
【0056】
したがって、CDA基質には、少なくとも10μMより高く、4500μMまでのKm値を有する化合物が包含される。CDA基質のKmは、10μMから500μMまで、10μMから400μMまで、10μMから300μMまで、10μMから200μMまで、10μMから175μMまで、10μMから150μMまで、または200μMから300μMまでの範囲内に該当し得る。別法では、Km値は、少なくとも50μMより高く、500μM以下である。CDA基質のKmは、50μMから500μMまで、50μMから400μMまで、50μMから300μMまで、50μMから200μMまで、50μMから175μMまで、または50μMから150μMまでの範囲に該当し得る。
【0057】
化合物はまた、対象に式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種と同時または連続投与された場合のある種の薬理学的パラメーターを評価することによって、CDA基質であると決定することもできる。例えば、化合物が式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれかと同時または連続投与された場合に、対象での化合物の曝露が増大することがある。このような評価は、(i)単独で対象に投与された場合の化合物の曝露を、(ii)式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種と一緒に対象に投与された場合の同じ化合物の曝露と比較して測定するであろう。式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種の同時または連続投与が化合物の曝露を増大させると判明した場合、その化合物はCDA基質である。
【0058】
化合物の曝露に続いて、生体試料(例えば、血液または尿)を対象から採取し、分析技術(例えば、高圧もしくは高速液体クロマトグラフィーまたは他の分析手段)を使用して、その生体試料を評価することができる。分析測定を使用して、化合物の濃度時間プロファイルを決定し、既知の技術を使用して、化合物の曝露を推定することができる。例えば、引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするGibaldi,M.およびPerrier,D.、Pharmacokinetics、第2版、Marcel Dekker、New York、1982年を参照されたい。典型的には、化合物の消失は、時間の関数として生じる。
【0059】
曝露実験を、物質が、その物質の形態に関わらず(例えば、塩、多形またはプロドラッグ)、CDA基質であるかどうかを決定する目的で行うことができる。したがって、例えば、化合物を対象にプロドラッグとして、例えば、エステル化または他の代謝可能に保護された形態で投与することができる。対象に投与されると、プロドラッグは、例えば、脱エステル化されて、それによって、in vivoで活性薬物を放出することができる。この活性薬物がCDA基質であるかどうかは、その活性薬物で上記の分析測定を行うことによって、決定することができる。別法では、プロドラッグ自体がCDA基質であるかどうかを、そのプロドラッグに関して上記2つのパラグラフに記載の分析測定を行うことによって決定することができる。
【0060】
非デシタビンCDA基質は、癌を治療するために使用される薬物、または任意の他の疾患または病気を治療するために使用される薬物であってよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、対象に投与された場合にin vivo変性を受け、その際、in vivo変性の生成物が治療的に有効な化合物である組成物である。例えば、所定の化合物をエステルとして調製することによって、化合物のプロドラッグを調製することができる。化合物のエステル化形態を対象に投与することができ、それは、in vivoで脱エステル化されて、それによって、治療的に有効な化合物を放出し得る。別法では、短鎖ポリペプチド(例えば、1〜6アミノ酸)を化合物に付加することによって、一部の化合物をプロドラッグとして調製することができる。そのようなプロドラッグは、対象に投与された場合に開裂して(例えば、トリプシンまたは他のペプチダーゼによって)、それによって治療的に有効な化合物を放出し得る。プロドラッグの形成は、本明細書に記載の具体例に限られない。治療的に有効な化合物をプロドラッグとして調製する他の方法は公知である。非デシタビンCDA基質のプロドラッグの例としては、限定はされないが、ゲムシタビンエライデート(9(E)−オクタデセン酸2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン−5’−イルエステル、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−5’−O−[9(E)−オクタデセノイル]シチジン、CP−4126、またはCAS登録番号210829−30−4とも称される)、アゼライン酸ゲムシタビンエステルメグルミン塩(1−[5−O−(9−カルボキシノナノイル)−β−D−アラビノフラノシル]シトシンメグルミン塩とも称される)、アゼライン酸ゲムシタビンエステルの他の塩、および1−[4−(2−プロピルペンタンアミド)−2−オキソ−1H−ピリミジン−1−イル]−2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−リボフラノース(LY−2334737とも称される)が挙げられる。
【0062】
「組合せ」という用語は、1投薬単位形態中で固定された組合せか、あるいは本発明の化合物と組合せパートナーとを独立に、同時に、または組合せパートナーが協同効果、例えば相加効果もしくは相乗効果を示すことを特に可能にする時間内で別々に投与することができる組合せ投与のためのパーツからなるキット、または任意のその組合せを意味している。
【0063】
「薬学的に許容される」は、薬理学的または毒性の観点から患者に許容されるか、あるいは、組成、製剤化、安定性、患者の受容、生物学的利用能および他の成分との相容性に関する物理的または化学的観点から製剤化学者に許容される、特性または物質を指す。
【0064】
「薬学的に許容される賦形剤」は、治療薬自体ではなく、治療薬を対象に送達するために担体、希釈剤、結合剤またはビヒクルとして使用されるか、またはその取扱いもしくは貯蔵特性を改善するために、または投与用の単位剤形への化合物もしくは組成物の形成を可能または容易にするために医薬組成物に加えられる任意の物質を意味し得る。薬学的に許容される賦形剤は、医薬分野において公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton,Pa(例えば、第20版、2000年)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、American Pharmaceutical Association、Washington,D.C.(例えば、第1版、第2版および第3版、それぞれ1986年、1994年および2000年)に記載されている。賦形剤は、様々な機能を提供することができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁化剤、滑沢剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香味剤および甘味剤として記載されることもある。薬学的に許容される賦形剤の例としては、限定はされないが、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、(2)コーンスターチおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)トラガカント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤、(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などのオイル、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質不含の水、(17)等張性食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリ無水物、ならびに(22)医薬製剤で使用される他の非毒性で相容性の物質が挙げられる。
【0065】
「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、それを用いて製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体またはビヒクルを指す。本発明の組成物中で使用することができる薬学的に許容される担体またはビヒクルとしては、これらに限られないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0066】
「薬学的に許容される塩」は、所望の薬理学的活性を有し、生物学的にも他の点でも不所望ではない本発明の化合物の酸または塩基塩を指す。塩は、酸を用いて形成することができ、これらとしては、限定はされないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンフルスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタン−スルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基塩の例としては、限定はされないが、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基との塩、N−メチル−D−グルカミン、ならびにアルギニンおよびリシンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。一部の実施形態では、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、ならびに臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキルといった薬剤で四級化することができる。
【0067】
「動物」は、感覚および随意運動の力を有し、存在するために、酸素および有機質食物を必要とする生体を指す。
【0068】
「哺乳動物」は、毛髪または毛皮を有する温血脊椎動物を指す。例としては、限定はされないが、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、マウス、イヌまたはネコ種が挙げられる。
【0069】
「癌」は、制御から逸脱して増殖し、場合によっては、転移(拡散)する傾向を有する異常な細胞増殖を指す。具体的な癌の種類としては、限定はされないが、米国特許出願公開第2006/0014949号で特定されている癌と、
心臓:肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫など)、横紋筋腫および奇形腫、
肺:気管支癌(例えば、扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌など)、肺胞腺(例えば、細気管支など)癌、肉腫、リンパ腫、非小細胞肺癌および中皮腫、
胃腸:食道(例えば、扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫など)、胃(例えば、癌、リンパ腫、平滑筋肉腫など)、膵臓(例えば、導管性腺癌、インスリノーマ、類癌腫、ビポーマなど)、小腸(例えば、腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫など)、大腸(例えば、腺癌など)、
尿生殖路:腎臓(例えば、腺癌、リンパ腫、白血病など)、膀胱および尿道(例えば、扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌など)、前立腺(例えば、腺癌、肉腫など)、精巣(例えば、精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛上皮腫、肉腫、間質細胞癌など)、
肝臓:肝癌(例えば、肝細胞癌腫など)、胆管癌、肝芽腫および血管肉腫、
骨:骨原性肉腫(例えば、骨肉腫など)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(例えば、小神経膠腫など)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫(例えば、骨軟骨性外骨症など)、軟骨芽細胞腫および巨細胞腫、
神経系:頭蓋、髄膜(例えば、髄膜肉腫、神経膠腫症など)、脳(例えば、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、膠腫、脳室上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性神経膠芽細胞腫、乏突起神経膠腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍など)、脊髄(例えば、肉腫など)、
乳癌、
婦人科:子宮(例えば、子宮内膜癌など)、子宮頸(例えば、子宮頸癌など)、卵巣(例えば、卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、非分類癌腫]、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫など)、外陰(例えば、扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫など)、膣(例えば、明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫]、ファロピウス管(癌腫)など)、
血液:血液(例えば、骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群など)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫など、および
副腎:神経芽細胞腫とが挙げられる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。例えば、治療的有効量のゲムシタビンは、本明細書に記載の疾患または障害を治療するのに十分な量である。治療的有効量の式I〜VIIIによって示される化合物は、非デシタビンCDA基質のin vivo曝露を増大させるのに十分な量である。
【0071】
本明細書を通して、名付けられている化合物と示されている構造との間に矛盾がある場合、構造が優先されることとする。任意の特定の化合物に対して与えられている任意の指名同義語(例えば、略語、IUPAC名、一般名もしくは他の化学的名称または登録番号)が実際には異なる化合物に関している場合、本明細書は、これらの化合物を選択肢で指していると解釈されたい。
【0072】
[本発明の化合物]
本発明は、CDAの活性を阻害する化合物を提供する。他の実施形態では、これらの化合物は、癌(例えば、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄球性白血病、非小細胞肺癌、膵臓癌、卵巣癌および乳癌)を治療する目的で、他の抗癌医薬品(例えば、非デシタビンCDA基質、非デシタビンCDA基質のプロドラッグまたは非デシタビンCDA基質の前駆体)と組み合わせて投与することができる。
【0073】
本発明は、式Iの化合物
【化3】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在せず、R3は平面上にある]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルに関する。
【0074】
本明細書を通して使用される場合、「R3は平面上にある」という表現は、R3が結合している炭素、さらに、R3が結合している炭素に直に隣接している2個の炭素原子を含有する平面と同じ平面に、R3基が存在することを意味している。
【0075】
式Iの一実施形態では、R1およびR2はそれぞれFである。
【0076】
他の実施形態では、式Iは、式IIの化合物
【化4】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0077】
他の態様では、本発明は、ER−876437(または式VIIIとして示される2H−1,3−ジアゼピン−2−オン,1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−(D−2−デオキシ−2,2−ジフルオロリボフラノシル)−、または1−((2R,4R,5R)−3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)に関する。ここにおいて、および他において、化合物の化学名称とその構造の図示との間に矛盾がある場合、構造の図示が優先されることとする。構造の図示と、1H NMRデータとの間に矛盾がある場合、1H NMRデータが優先されることとする。
【0078】
他の態様では、本発明は、式VIIIの化合物
【化5】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルに関する。
【0079】
他の態様では、本発明は、式VIIIの化合物に関する。
【化6】
【0080】
他の実施形態では、式Iは、式IIIの化合物
【化7】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0081】
他の実施形態では、式Iは、式IVの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0082】
一実施形態では、式IVは、式Vの化合物
【化9】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0083】
他の実施形態では、式Iは、式VIの化合物
【化10】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0084】
一実施形態では、式VIは、式VIIの化合物
【化11】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0085】
本発明はまた、式Iの化合物
【化12】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在せず、R3は平面上にある]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0086】
他の実施形態では、本発明はまた、式IIの化合物
【化13】
[式中、R3はHおよびOHから選択される]または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0087】
他の実施形態では、本発明はまた、式IIIの化合物
【化14】
[式中、R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0088】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質と、式Iの化合物
【化15】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0089】
非デシタビンCDA基質と式Iの化合物とを含む医薬組成物の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルからなる群から選択される。他の実施形態では、医薬組成物は、非デシタビンCDA基質のプロドラッグおよび式Iの化合物を含み、非デシタビンCDA基質のプロドラッグは、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルのプロドラッグからなる群から選択される。
【0090】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質と、式VIIIの化合物
【化16】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0091】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、式VIIIの化合物
【化17】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0092】
非デシタビンCDA基質と式VIIIの化合物とを含む医薬組成物の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルからなる群から選択される。非デシタビンCDA基質のプロドラッグと式VIIIの化合物とを含む医薬組成物の他の実施形態では、非デシタビンCDA基質のプロドラッグは、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルのプロドラッグからなる群から選択される。
【0093】
本発明の他の実施形態では、医薬組成物は、(a)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物と、さらに(b)非デシタビンCDA基質とを含み得る。非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、(a)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物と、さらに(b)ゲムシタビンとを含む。
【0094】
本発明の他の実施形態は、本明細書に記載の医薬組成物を投与する方法に関する。したがって、本発明は、対象に非デシタビンCDA基質を投与するステップと、対象に式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む、対象を癌について治療する方法に関する。非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とは、対象に連続してまたは同時に投与することができる。連続投与は、(a)初めに非デシタビンCDA基質を投与し、続いて、(b)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与することを包含する。別の連続投与は、初めに式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与し、続いて、(b)非デシタビンCDA基質を投与することを包含する。同時投与は、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を同時に投与すること、または実質的に同時に投与することを包含する。
【0095】
本明細書に記載されている通り、投与が、第1の化合物(例えば、式Iの化合物)および第2の化合物(例えば、非デシタビンCDA基質)の別々の投与(例えば、連続投与)を伴う場合、それらの化合物を、所望の治療効果が得られるような十分に近接した時間内で投与する。例えば、所望の治療効果をもたらし得る各投与の間の時間は、数分から、数時間、数日までの範囲であってよく、効力、溶解性、生物学的利用能、血漿半減期および動態プロファイルなどの各化合物の特性に基づき決定することができる。例えば、化合物は、任意の順序で、相互に24〜72時間以内に、または相互に24時間未満の任意の時間内で投与することができる。別法では、化合物を、任意の順序で相互に1週間以内に投与することができる。
【0096】
非デシタビンCDA基質と式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを連続投与する場合、それらを別々に製剤化して、任意の順序で提供することができる。しかし、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を同時に投与する場合には、それらを別々に製剤化するか、同じ製剤中で組み合わせることができる。同じ製剤中で組み合わせる場合、非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを、同時に、または異なる時間に対象に放出されるように製剤化することができる。非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の両方を含む製剤の放出プロファイルには、
A)非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、続く、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能、
B)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能、続く、非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、
C)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能と同時の(または、実質的に同時の)非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、が包含される。
【0097】
したがって、それを必要とする対象に、非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを含む組成物を投与することを含む、癌を治療する方法を本明細書において提供する。
【0098】
非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、結直腸癌、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、脳腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、転移または再発性上咽頭癌、転移充実性腫瘍、前立腺腺癌、尿路腫瘍、腎臓腫瘍、腎細胞癌、移行上皮癌、尿道癌、頭頚部腫瘍、切除不可能な頭頚部癌、頭頚部の扁平上皮細胞癌、悪性胸膜または腹膜中皮腫、子宮頸癌、子宮腫瘍、精巣腫瘍、胚細胞腫瘍、卵巣の顆粒膜細胞腫、生殖管腫瘍、白血病、成人T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキン病、リンパ滲出性疾患、マントル細胞リンパ腫、ヒト骨髄性およびリンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、血液学的癌、皮膚T細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、血液学的新生物、慢性リンパ球性白血病、肉腫、平滑筋肉腫、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、骨の骨肉腫、肝胆道系腫瘍、肝臓癌、胆管癌、胆嚢腫瘍、膵管腺癌、腹膜腫瘍、小腸腫瘍、胃腫瘍、子宮内膜様癌、中枢神経系腫瘍、小細胞肺癌、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫または膠腫であってよい。
【0099】
特定の実施形態では、非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、膵臓癌、卵巣癌、転移性乳癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、移行上皮癌、胆管癌、尿路上皮癌、胆嚢癌、ファロピウス管癌、原発腹膜癌、頭頚部の扁平上皮細胞癌、肝細胞癌、肝臓腫瘍、肺癌、子宮頸腫瘍または結腸癌である。
【0100】
さらに他の実施形態では、非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、非小細胞肺癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または食道癌である。したがって、本明細書において、非小細胞肺癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または食道癌を、それを必要とする対象において治療する方法を提供し、この方法は、対象に式VIIIの化合物およびゲムシタビンを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0101】
他の実施形態では、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含む。さらに他の実施形態では、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含み、その際、癌は、非小細胞肺癌、膵臓癌、卵巣癌および乳癌からなる群から選択される。
【0102】
他の実施形態では、尋常性乾癬、天然痘、肝硬変、血栓塞栓症、髄膜炎、唾液腺疾患、尿道疾患、リンパ滲出性疾患または好中球減少症を、それを必要とする対象において治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含む。
【0103】
他の実施形態では、本発明は、式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか1種と非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。そのような組合せは、非デシタビンCDA基質を含む組合せに関して本明細書に記載されたどの方法でも、製剤化または投与することができる。
【0104】
本発明の他の実施形態では、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物は、癌について治療されている対象に典型的に投与される他の薬剤と連続して(任意の順序で)、またはそれと同時に投与することができる。そのような他の薬剤としては、限定はされないが、制吐薬、食欲を増す薬剤、他の細胞毒または化学療法薬および疼痛を軽減する薬剤が挙げられる。非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物は、そのような他の薬剤と一緒に、またはそれとは別に製剤化することができる。
【0105】
そのような他の薬剤との組合せは、抗癌活性における相乗的な増大をもたらし得るか、またはそのような増大は相加的であってよい。本明細書に記載の組成物は典型的には、より低い投薬量で各化合物を組成物中に包含し、そのことによって、化合物同士の不利な相互作用または類似の化合物で報告されているものなどの有害な副作用が回避される。さらに、通常量の各化合物を組み合わせて投与した場合、単独で使用された場合には各化合物に対して応答しないか、最小限しか応答しない対象において、より大きな効力を提供し得るであろう。
【0106】
例えば、Sigmoid−Emax式(Holford,N.H.G.およびScheiner,L.B.、Clin.Pharmacokinet.6巻:429〜453頁(1981年))、Loewe相加効果式(Loewe,S.およびMuischnek,H.、Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114巻:313〜326頁(1926年))および50%有効式(Chou,T.C.およびTalalay,P.、Adv.Enzyme Regul.22巻:27〜55頁(1984年))などの適切な方法を使用して、相乗効果を算出することができる。上記で言及された式をそれぞれ実験データに適用すると、薬物の組合せの効果を推定する際の補助となる対応するグラフを作成することができる。上記で言及された式に関連した対応するグラフは、それぞれ濃度効果曲線、アイソボログラム曲線および併用指数曲線である。
【0107】
ある種の実施形態では、本発明は、任意の本発明の組成物の医薬組成物を提供する。関連する実施形態では、本発明は、任意の本発明の組成物と、任意のこれらの組成物の薬学的に許容される担体または賦形剤とからなる医薬組成物を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、新規な化学成分としての組成物を包含する。
【0108】
一実施形態では、本発明は、パッケージ式癌治療を包含する。パッケージ式治療は、所定の使用のために有効量の本発明の組成物を使用するための指示書と共にパッケージングされた本発明の組成物を包含する。他の実施形態では、本発明は、対象において癌感染を治療するための医薬品を製造するための任意の本発明の組成物の使用を提供する。
【0109】
[合成手順]
本テキストの範囲内において、本発明の化合物の特に所望される最終生成物の成分ではない容易に除去可能な基は、「保護基」と名付けられている。そのような保護基による官能基の保護、保護基自体およびその開裂反応は例えば、Science of Synthesis:Houben−Weyl Methods of Molecular Transformation.Georg Thieme Verlag、Stuttgart、Germany.2005年、41627頁(URL:http://www.science−of−synthesis.com(電子版、48巻));J.F.W.McOmie、「Protective Groups in Organic Chemistry」、Plenum Press、London and New York 1973年、T.W.Greene and P.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、Wiley、New York 1999年、「The Peptides」;3巻(編者:E.Gross and J.Meienhofer)、Academic Press、London and New York 1981年、「Methoden der organischen Chemie(Methods of Organic Chemistry)」、Houben Weyl、第4版、Volume 15/I、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974年、H.−D.Jakubke and H.Jeschkeit、「Aminosauren,Peptide,Proteine」(Amino acids,Peptides,Proteins)」、Verlag Chemie、Weinheim、Deerfield Beach,and Basel 1982年およびJochen Lehmann、「Chemie der Kohlenhydrate:Monosaccharide und Derivate(Chemistry of Carbohydrates:Monosaccharides and Derivatives)」、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974年などの標準的な参照文献に記載されている。保護基の特徴は、それらを容易に(即ち、望ましくない副反応を起こすことなく)、例えば、加溶媒分解、還元、光分解によって、または別法では生理学的条件下で(例えば、酵素開裂によって)除去することができることである。
【0110】
本発明の化合物の酸付加塩は、最も適切には、薬学的に許容される酸から形成され、それらには例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸、および、有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸またはフマル酸と共に形成されたものが包含される。例えば本発明の化合物を単離する際に、実験室での使用のために、または、薬学的に許容される酸付加塩に後で変換するために、他の薬学的に許容されない塩、例えば、シュウ酸塩を使用することもできる。また、本発明の溶媒和物および水和物も、本発明の範囲内に包含される。
【0111】
所定の化合物塩から所望の化合物塩への変換は、所定の塩の水溶液を、塩基、例えば、炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液で処理して、遊離塩基を遊離させ、これを次いで、エーテルなどの適切な溶媒に抽出する標準的な技術を適用することによって達成される。次いで、遊離塩基を水性部分から分離し、乾燥させ、必要な酸で処理して、所望の塩が得られる。
【0112】
塩基の存在下、塩化メチレンまたはクロロホルムなどの不活性溶媒中で、遊離ヒドロキシまたはアミノ官能基を有する化合物を、所望のエステルの酸塩化物で処理することによって、本発明のある種の化合物のin vivoで加水分解可能なエステルまたはアミドを形成することができる。適切な塩基には、トリエチルアミンまたはピリジンが包含される。逆に、活性化、それに続く、適切な塩基の存在下での所望のアルコールでの処理を包含し得る標準的な条件を使用して、遊離カルボキシ基を有する本発明の化合物をエステル化することができる。
【0113】
本発明に従って得られる異性体の混合物は、公知の方法によって、個々の異性体に分離することができる。ジアステレオ異性体は、例えば、多相溶媒混合物への分配、再結晶化、または、例えばシリカゲル上での、もしくは例えば逆相カラム上での中圧液体クロマトグラフィーによるクロマトグラフィー分離によって分離することができる。ラセミ化合物は、例えば光学的に純粋な塩を形成する試薬で塩を形成し、例えば分別結晶化により、または光学的に活性なカラム材料でのクロマトグラフィーにより、得ることができたジアステレオ異性体の混合物を分離することによって、分離することができる。
【0114】
標準的な方法に従って、例えば、クロマトグラフィーによる方法、分散方法、(再)結晶化などを使用して、中間体および最終生成物を後処理または精製することができる。
【0115】
ゲムシタビンを調製する方法は、当技術分野で公知である。
【0116】
他の実施形態では、本発明は、イミダゾリジン−2−オン、テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン、1,3−ジアゼパン−2−オン、またはl,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(ER−878899)などの環式尿素化合物を、C−2−置換テトラヒドロフラン環とカップリングさせる方法に関し、この方法は、(i)反応溶媒中に1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オンを含む第1の溶液を、(ii)反応溶媒中にC−2−置換テトラヒドロフラン環を含む第2の溶液と還流条件下で混合することによって、反応混合物を形成することを含む。この実施形態では、第1の溶液を第2の溶液に加える際に、還流条件によって、反応混合物の体積を維持することができる。別法では、還流条件によって、反応混合物の体積が、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%より高く上昇することを防ぐことができる。この実施形態では、反応溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMA)またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの150℃を超える沸点を有する極性非プロトン性溶媒であってよい。この実施形態では、第2の溶液を150℃を超えるまで加熱し、第1の溶液をシリンジを介して、第2の溶液に加えることができる。この実施形態では、10時間未満、5時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満または30分未満におよぶ期間にわたって、第1の溶液を第2の溶液に加えることができる。この実施形態では、第2の溶液を150℃から250℃まで、175℃から225℃まで、または200℃から220℃まで加熱することができる。この実施形態では、C−2−置換テトラヒドロフラン環はC−3位に置換基を有してもよく、これには、C−3位の1個のハロゲン、C−3位の2個のハロゲンまたはC−3位に2個のフッ素が包含され得る。この実施形態では、テトラヒドロフラン環は、ER−878898であってよい。互いに排他的な値を除いて、このパラグラフに記載されている択一的特徴はいずれも、一緒に用いることができる。
【0117】
他の実施形態では、本発明は、ER−879381を、ER−878617を含む混合物から単離する方法に関し、この方法は、(i)混合物をクロマトグラフィー物質と接触させ、移動相としてトルエンおよびアセトニトリルを使用して、その物質上で混合物を分離することを含む。この実施形態では、クロマトグラフィー物質は、シリカゲルであってよい。この実施形態では、移動相は、7:1の比のトルエン:アセトニトリルであってよい。別法で、この実施形態では、トルエン:アセトニトリルは、7:1を超えるか、または7:1未満の比を有してよい。互いに排他的な値を除いて、このパラグラフに記載されている択一的特徴はいずれも、一緒に用いることができる。
【0118】
[剤形]
ある種の他の実施形態では、いずれもその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6,001,994号、米国特許第6,469,058号および米国特許第6,555,518号に記載されている製剤および方法を使用して、本発明の組成物(例えば、非デシタビンCDA基質と組み合わせた式Iの化合物、例えば、ゲムシタビンと組み合わせたER−876437)を、それを必要とする対象に投与することができる。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の化合物の医薬組成物(または組合せ)は、経口、直腸または非経口注射で投与するのに適した単位剤形であってよい。例えば、経口剤形で組成物を調製する際、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および液剤などの経口液体製剤の場合には水、グリコール、オイル、アルコールなど、または散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合にはデンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体といった、通常の医薬媒体はどれでも使用することができる。その投与の容易さのために、錠剤およびカプセルが、最も有利な経口投薬単位形態であり、この場合、固体医薬担体が使用される。非経口組成物では、担体は通常、無菌水を少なくとも大部分含むが、例えば、溶解性を補助するために、他の成分が包含されていてもよい。注射用液剤は例えば、食塩水、グルコース溶液、または食塩水およびグルコース溶液の混合物を含む担体を使用して調製される。注射用懸濁剤もまた、調製することができ、この場合、適切な液体担体、懸濁化剤などを使用することができる。経皮投与に適した組成物の場合には、担体は場合によって、透過増強剤または適切な湿潤剤を含み、これらを、その添加剤が皮膚に対して重大な有害作用の原因とはならない小さい割合の任意の性質の適切な添加剤と組み合わせることができる。添加剤は、皮膚への投与を容易にし得るか、または所望の組成物を調製するのに役立ち得る。これらの組成物は、様々な方法で、例えば、経皮パッチ剤として、スポットオン剤として、軟膏剤として投与することができる。
【0120】
本明細書に記載の医薬組成物を投薬単位形態に製剤化して、投与を容易にし、投薬量を均一化することが特に有利である。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、その際、各単位は、所望の治療効果をもたらすように算出された予め決定された量の有効成分を必要な医薬担体と共に含有する。そのような投薬単位形態の例は、錠剤(割線があるか、コーティングされた錠剤を包含)、カプセル剤、丸剤、散剤パケット、ウェハ剤、注射用液剤または懸濁剤、茶さじ量、食さじ量など、およびそれらを複数に分割したものである。
【0121】
一般に、第1または第2の化合物の治療的有効量は、0.0001mg/体重kgから0.001mg/体重kgまで、0.001mg/体重kgから10mg/体重kgまで、または0.02mg/体重kgから5mg/体重kgまでであろうと考えられる。一部の実施形態では、第1または第2の化合物の治療的有効量は、0.007mgから0.07mgまで、0.07mgから700mgまで、または1.4mgから350mgまでである。予防または治癒的治療の方法はまた、1日当たり1回から5回摂取する計画で組成物を投与することを包含し得る。
【0122】
一部の実施形態では、第1の化合物または第2の化合物の治療的有効量には、これらに限られないが、0.01mg/用量未満、または0.5mg/用量未満、または1mg/用量未満、または2mg/用量未満、または5mg/用量未満、または10mg/用量未満、または20mg/用量未満、または25mg/用量未満、または50mg/用量未満、または100mg/用量未満、または500mg/用量未満の量が包含される。当技術分野で一般に使用されている様々な基準か、または本明細書に記載されている基準に基づき、第1または第2の化合物を対象に投与する1日当たりの回数を決定することができる。
【0123】
湿潤剤、乳化剤、ならびに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、さらに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在してよい。
【0124】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤、およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート化剤が挙げられる。
【0125】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所、頬側、舌下、直腸、膣または非経口投与に適したものが包含される。製剤は簡便には、単位剤形であってよく、薬学の分野で公知の任意の方法によって調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は一般に、治療効果をもたらす組成物の量であるはずである。一般に、100パーセントのうち、この量は、有効成分約1パーセントから約99パーセントまで、好ましくは約5パーセントから約70パーセントまで、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントまでの範囲であろう。
【0126】
これらの製剤または組成物の調製方法は、本発明の組成物を担体および、場合によって、1種または複数の副成分と一緒にするステップを包含する。一般に、本発明の組成物と液体担体もしくは微細に分割された固体担体またはその両方とを均一かつ完全に一緒にし、次いで、必要な場合には、生成物を成形することによって、製剤を調製する。
【0127】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味のある基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体中の液剤または懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型液体乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤を使用)として、または口内洗剤などであってよく、これらはそれぞれ、予め決定された量の本発明の組成物を有効成分として含有する。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
【0128】
経口投与するための本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤など)では、有効成分を、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1種または複数の薬学的に許容される担体か、またはデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールまたはケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースまたはアラビアゴムなどの結合剤、グリセロールなどの湿潤剤、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム硫酸およびこれらの混合物などの滑沢剤、ならびに着色剤のいずれかと混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、医薬組成物はまた、緩衝剤を含むことができる。類似の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、さらに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。
【0129】
1種または複数の副成分を場合によっては用いて圧縮または成形することによって、錠剤を製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレートまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、適切な機械中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化組成物の混合物を成形することによって製造することができる。
【0130】
本発明の医薬組成物の錠剤ならびに糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの他の固体剤形は、場合によって、割溝を備えていてよいか、または腸溶コーティングおよび医薬製剤分野で公知の他のコーティングなどのコーティングおよび殻と共に調製されていてよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロファイルをもたらす様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームまたはマイクロスフェアを使用して、その中にある有効成分の遅延または制御放出をもたらすように製剤化することができる。これらは、例えば、細菌保定フィルターでの濾過によって、または使用直前に無菌水または別の無菌注射用媒体に溶かすことができる無菌固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。これらの組成物はまた場合によって、不透明化剤を含有してもよく、かつ胃腸管の特定の部分においてのみ、またはその部分において優先的に、場合によっては遅延して有効成分(複数可)を放出する組成物であってよい。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが包含される。有効成分はまた、適切な場合には、1種または複数の上記の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0131】
本発明の組成物を経口投与するための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が包含される。有効成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの当技術分野で通常使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル(詳細には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにこれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含有してよい。
【0132】
不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤などのアジュバントを包含してよい。
【0133】
活性組成物に加えて、懸濁剤は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物などの懸濁化剤を含有してよい。
【0134】
直腸または膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、1種または複数の本発明の組成物を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含む1種または複数の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶けて、活性組成物を放出する坐剤として提供することができる。
【0135】
膣投与に適した本発明の製剤にはまた、適切であると当技術分野で知られているような担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤または噴霧剤が包含される。
【0136】
本発明の組成物の局所または経皮投与のための剤形には、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および吸入剤が包含される。活性組成物を無菌条件下で、薬学的に許容される担体と、かつ必要なこともある任意の保存剤、緩衝剤または噴射剤と混合することができる。
【0137】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の活性組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛またはこれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。
【0138】
散剤および噴霧剤は、本発明の組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有してよい。噴霧剤は加えて、クロロフルオロ炭化水素ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの通例の噴射剤を含有してよい。
【0139】
経皮パッチ剤は、身体への本発明の組成物の制御送達をもたらすという追加の利点を有する。そのような剤形は、組成物を適切な媒体に溶解または分散させることによって製造することができる。吸収促進剤もまた、皮膚を通過する組成物のフラックスを増大させるために使用することができる。そのようなフラックスの速度を、速度調節膜を用意することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に活性組成物を分散させることによって制御することができる。
【0140】
眼用製剤、眼軟膏剤、散剤、液剤などもまた、本発明の範囲内と企図されている。
【0141】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種または複数の本発明の組成物を、1種または複数の薬学的に許容される無菌等張性水性もしくは非水性液剤、分散剤、懸濁剤もしくは乳剤と一緒に、または使用の直前に無菌注射用液剤または分散剤に再構成することができる無菌散剤と一緒に含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、意図されている受容体の血液と製剤を等張性にする溶質または懸濁化剤または増粘剤を含有してよい。
【0142】
本発明の医薬組成物中で使用することができる適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、オリブ油などの植物油ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが包含される。例えば、レシチンなどのコーティング物質を使用することによって、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、かつ界面活性剤を使用することによって、適正な流動性を維持することができる。
【0143】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって、微生物の作用の予防を保証することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に包含させることが望ましいこともある。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含させることによって、注射用医薬形態の持続吸収を達成することができる。
【0144】
場合によっては、薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。水溶性が低い結晶質または非晶質物質の液体懸濁剤を使用することによって、これを達成することができる。したがって、薬物の吸収速度は、その溶解速度に左右され、さらにこのことは、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。別法では、非経口投与された薬物形態の遅延吸収を、オイルビヒクル中に薬物を溶解または懸濁させることによって達成する。
【0145】
ポリラクチド−ポリグリコライドなどの生分解性ポリマー中で本組成物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって、注射用デポー剤形態を製造する。薬物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が包含される。また、身体組織と相容性であるリポソームまたはマイクロ乳剤に薬物を捕捉することによっても、デポー注射用製剤は調製される。
【0146】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所または直腸で与えられる。これらは勿論、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、これらを、錠剤またはカプセル形態で、注射、吸入、目薬、軟膏剤、坐剤などによって、注射、点滴または吸入による投与によって、ローション剤または軟膏剤によって局所で、坐剤によって直腸で投与する。経口または静脈内投与が好ましい。
【0147】
「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、腸内および局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内および胸骨内注射および点滴を包含する。
【0148】
「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、患者の全身に入って、代謝および他の同様のプロセスを受けるような、中枢神経系に直接に投与する以外の化合物、薬物または他の物質の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0149】
これらの化合物は、ヒトおよび他の動物に治療のために、頬側および舌下を包含する経口、例えば噴霧剤による経鼻、直腸、膣内、非経口、槽内および散剤、軟膏剤または滴剤による局所を包含する任意の適切な投与経路によって投与することができる。
【0150】
選択された投与経路に関わらず、適切な水和物形態で使用することができる本発明の化合物または本発明の医薬組成物を、慣用の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化する。
【0151】
患者に対して毒性であることなく、所望の治療的応答を特定の患者、組成物および投与方法で達成するために有効な有効成分の量が得られるように、本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬量レベルは変動し得る。
【0152】
選択される投薬量レベルは、使用される本発明の特定の化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康および先行する医学的履歴ならびに医学分野で周知の同様の因子を包含する様々な因子に左右されるはずである。
【0153】
医師または獣医師であれば、必要な医薬組成物の有効量を決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物中で使用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増大させることができるであろう。
【0154】
一般に、本発明の化合物の適切な一日用量は、治療効果を生じさせるのに有効な最小用量である化合物の量であるはずである。そのような有効な用量は一般に、上記の因子に左右されるはずである。一般に、患者での本発明の化合物の静脈内および皮下用量は、指示されている鎮痛効果のために使用される場合、1日当たり体重1kg当たり約0.0001から約100mgまで、より好ましくは1日当たり体重1kg当たり約0.01から約50mgまで、さらにより好ましくは1日当たり体重1kg当たり約1.0から約100mgまでの範囲であろう。有効量は、ウイルス感染を治療する量である。
【0155】
所望の場合には、活性化合物の有効な一日用量を、一日を通して適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回以上の分割用量として単位剤形で投与することができる。
【0156】
本発明の化合物は単独で投与することも可能であるが、化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
【実施例】
【0157】
本発明の化合物を調製する一般的な方法および実験を下記に記載する。
【0158】
[実施例I:化学合成]
別段に述べられていない限り、実施例I.B.〜I.C.では、溶媒除去を、Buchi回転蒸発器を使用して実施した。分析クロマトグラフィーは、Hewlett Packardシリーズ1100HPLCを使用して実施し、分取クロマトグラフィーは、Biotage SP4装置またはWaters 4000装置を使用して、Chiralpak IAカラムを用いて、別段に示されていない限り中性条件下で実施した。質量スペクトルは、Waters Acquity UPLC/MSシステムを使用して記録した。残りの実施例については、同様か、または匹敵する装置を使用した。
【0159】
NMRスペクトルを、Varian400MHz分光計(実施例I.B.〜I.C.)を使用して、またはFluka400MHz分光計(実施例I.A.およびI.D.)を使用して記録した。
【0160】
<実施例I.A.:ER−876437>
≪I.A.1.:ER−878899(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)の調製≫
ER−878899を、下記のスキームIに概説されている通りに調製した。この調製は、J.Med.Chem.1981年、24巻、662〜666頁;J.Org.Chem.1980年、45巻、485〜489頁およびBull.Soc.Chim.Fr.1973年、198〜292頁に記載されており、これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【化18】
【0161】
スキームIに従って製造されるER−878899の形成には、機械による撹拌が必要である。反応の間に形成する固体が原因で目詰まりする傾向のある針ではなく、ガラスピペット(大きな直径のもの)を使用して、硫化カルボニルを反応フラスコに気泡導入することができる。反応の終了時に、反応媒体中の不溶性物質を濾過したが、ER−878899は、フィルターケーキ中に存在し得る。
【0162】
≪I.A.2.:ER−876437の調製≫
I.A.1に従って調製されたER−878899を、下記の通りにスキームIIで使用した。
【化19】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ベンゾイル−5−ベンゾキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−879381)。上記スキームIIに示されている市販のメシレートER−878898(3.8g、8.3mmol)および尿素ER−878899(900mg、8.0mmol)をジメチルアセトアミド(DMA)(400ml)に加えた。加熱(170℃)すると、反応成分は可溶化した。窒素雰囲気下で、溶液を一晩(15h)加熱した。
【0163】
次いで、DMAを真空除去した。残渣をEtOAc(150ml)に再懸濁させ、次いで、水(2×75ml)で洗浄した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。物質をSiO2でクロマトグラフィー処理し、50%EtOAc/ヘキサンで溶離した。クロマトグラフィーの後に得られた物質は、非分離α/βアノマーであった。次いで、順相分取HPLC(50%EtOAc/ヘキサン定組成、10ml/分、保持時間=25.7分)、カラム:phenomenex luna 10μ Silica100A、250×21.20mm、屈折率検出器を使用して、アノマーを分離した。βアノマーER−879381が純度>90%で単離された(10%αアノマー、保持時間.24分)。1H NMR (CDCl3) δ 8.05 (m, 4H), 7.59 (m, 2H), 7.43 (m, 4H), 5.99 (m, 1H), 5.72 (m, 2H), 5.54 (m, 1H), 4.77 (dd, J = 12.1, 3.4 Hz, 1H), 4.65 (br s, 1H), 4.56 (dd, J = 12.4, 4.0 Hz, 1H), 4.38 (m, 1H), 3.80 (m, 4H).
【0164】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−876437)。ER−879381をMeOH中のNH3(7M)(40ml)に溶かした。溶液を一晩撹拌した。溶媒を除去し、RP HPLC(10%アセトニトリル/H2O、流速10ml/分、R1=23分)、カラム:phenomenex luna 5μ C18(2)100A、250×21.2mm、屈折率検出器によって、残渣を精製した。所望の化合物ER−876437が全体収率1.5%(62mg)で得られた。1H NMR (D2O) δ 5.86 (m, 2H), 5.69 (dd, J = 14.3 Hz, 6.2 Hz, 1H), 4.14 (m, 1H), 3. 86 (m 1H), 3.74 (m, 6H). 13C NMR (D2O) δ 164.5, 127.3, 126.2, 122.1 (dd, J = 252, 261 Hz, 1C), 85.9 (dd, J = 41, 22 Hz, 1C), 77.4 (d, J = 8 Hz, 1C), 69.5 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz, 1C), 58.9, 41.0, 40.7.
【0165】
分子式(C10H14N2O4F2+0.5H2O)の炭素、水素および窒素成分は、C、43.96;H、5.53;およびN、10.25であると算出された。元素分析によって、この物質がC、43.99;H、5.36;およびN、10.21を含有することが明らかになった。
【0166】
反応溶媒を変えることによって、ER−878899とメシレートとのカップリング反応の収率の僅かな改善を得ることができる。ジグリムを溶媒として使用する場合、15%の収率改善を観察することができる。
【0167】
<実施例I.B.:ER−876437>
≪I.B.1.:ER−878899の調製(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)≫
Feigenbaum,A.およびLehn,J.M.、Bull.Soc.Chim.Fr.、1973年、198〜202頁およびLiu,P.S.、Marquez,V.E.、Driscoll,J.S.およびFuller,R.W.、J.Med.Chem.、1981年、24巻、662〜666頁に記載された手順に従って、ER−878705(下記に示されている)を調製した。
【化20】
【0168】
機械撹拌機を備えた二つ口2Lフラスコ中で、ER−878705(79.7g、230mmol)のエタノール(470mL)中の白色の懸濁液に、ヒドラジン水和物(23.5mL、483mmol)を室温で加えた。生じた白色の懸濁液を50℃に30分間加熱すると、透明な薄黄色の溶液が得られた。白色の沈澱物が現れ始めたので、混合物を60℃に3時間加熱すると、撹拌が非常に困難になった。混合物を室温に冷却した後に、濃塩化水素溶液(40.3mL、483mmol)を加えると、混合物は、容易に撹拌されるようになった。30分間撹拌した後に、混合物を濾過し、水5×200mLで洗浄した。濾液を濃縮して、乾燥した固体にした。この乾燥した固体をエタノール200mLに懸濁し、1時間撹拌して、適切な懸濁液を製造した。懸濁液を濾過し、純エタノール3×100mLで洗浄した。ケーキ(白色の顆粒様結晶)を集め、乾燥させて、1,4−ジアミノ−2−ブテン二塩酸塩34.6(94%)gを得た。1H NMRは、生成物が少量の不純物としてフタルヒドラジドを5:1の比で含有することを示した。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.85 (ddd, J=1.6, 1.8および4.4 Hz, 2H), 3.69 (d, J=4.4, 4H).
【化21】
【0169】
2つ口2Lフラスコ中で、1,4−ジアミノ−2−ブテン二塩酸塩(22.7g、143mmol)のエタノール(1.2L)中の懸濁液に、1.0MのNaOH溶液(330mL、330mmol)を加えた。懸濁液にNaOHを加えたら、混合物が無色透明の溶液になった。溶液を70℃に加熱し、硫化カルボニルを加熱されている混合物に気泡導入した。その後、混合物を80℃に還流加熱した。3時間後に、気泡導入を止め、混合物をさらに1.5時間加熱し、室温に冷却し、1.0NのHCl(50mmol)を加えることによって中和した。混合物を濃縮して、乾燥した灰色の固体にした。固体をメタノール1L中に懸濁させ、2時間撹拌し、濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を体積約200mLまで濃縮し、0℃に冷却し、濾過し、冷メタノールで洗浄した。固体を回収し、乾燥させると、生成物5.05gが得られた。1H NMRは、それが非常に少量の不純物フタルヒドラジドを13:1の比で含有することを示した。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.91 (ddd, J=0.8, 1.2および1.6 Hz, 2H), 3.67 (d, J=4.0, 4H).母液を約30mLに濃縮し、−10℃に冷却し、濾過し、冷却したMeOH(−10℃)で洗浄した。固体を回収し、乾燥させると、1H NMRによって決定された通り、生成物7.10gが4:1の比でフタルヒドラジドの少量の汚染と共に得られた。
【0170】
≪I.B.2.:ER−878617の調製≫
【化22】
上記のスキームVに図示されている通り、ER−878898(1.33g、2.92mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(200.0mg、1.78mmol)の無水DMA(30mL)中の溶液を、DMAを徐々に留去しながら、180〜190℃(油浴温度)で加熱および撹拌した。このDMA蒸留の間に、シリンジポンプを用いて、DMA(50mL)中の追加の共沸1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(800.0mg、7.13mmol)を2時間にわたって加えた。全ての物質を添加した後に、反応を還流で30分間維持し、冷却した。反応混合物を真空濃縮し、残渣をクロマトグラフィーで精製すると、ER−878617(624.8mg、45%)が2種のエピマーの混合物として得られた。
【0171】
≪I.B.3.:ER−876437の調製≫
【化23】
上記スキームVIに図示されている通り、ER−878617(624.8mg、1.32mmol)の7Mのアンモニア/メタノール(53mL)中の溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、残渣を分取TLCで精製すると、粗製生成物(274.2mg、78%)が2種のエピマーの混合物として得られた。2種のエピマーの混合物を分取クロマトグラフィーでChiralpak IAカラム(Daicel Chemical Industries、Ltd.、Tokyo Japan)で分離すると、ER−876437(160.2mg)が得られた。
【0172】
<実施例I.C.:ER−876437>
≪I.C.1.:ER−879381の調製≫
ER−879381を、下記に示されている通りスキームVIIに従って製造した。ER−878899は、実施例I.B.1.に記載の通り調製した。
【化24】
【0173】
上記のスキームVIIに図示されている通り、ER−878898(8.0g、18mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(1.2g、10.7mmol)の無水DMA(100mL)中の溶液を加熱し、DMAを徐々に留去しながら、200〜220℃(油浴温度)で撹拌した。このDMA蒸留の間に、シリンジポンプを介して、DMA(350mL)中の追加の共沸1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(4.8g、42.9mmol)を2時間にわたって加えた。全ての物質を添加した後に、反応を還流で30分間維持し、冷却した。反応混合物を真空濃縮し、残渣を、同じ手順を使用して同じ規模で行われた別の実験からの残渣と合わせた。合わせた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:50〜100%AcOEt/ヘプタン)で精製すると、2種のエピマーの混合物(9.38g)が得られた。2種のエピマーの混合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:トルエン:アセトニトリル=7:1)でさらに分離すると、ER−879381(3.94g)が生じた。
【0174】
≪I.C.2.:ER−876437の調製≫
ER−876437を下記のスキームVIIIに示されている通りに調製した。
【化25】
上記のスキームVIIIに図示されている通り、ER−879381(3.8g、8.0mmol)の7Mのアンモニア/メタノール(100mL)中の溶液を周囲温度で17時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(移動相:50〜100%のAcOEt/ヘプタン)で精製すると、ER−876437(1.89g、収率89%)が得られた。
【0175】
<実施例I.D.:ER−878895>
≪I.D.1.:ER−878890の調製≫
【化26】
上記のスキームIXに図示されている通り、ER−878889(Stimac,A.およびKobe,J.、Carbohydr.Res.、2000年、329巻、317〜324頁に従って調製、4.3g、11.7mmol)および二炭酸ジ−tert−ブチル(5.4g、24.6mmol)のTHF(125mL)中の溶液を、Lindlar触媒(1g)の存在下、30psiで週末にわたって撹拌した。水素化生成物を含有する反応懸濁液をセライトで濾過し、濃縮した。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878890(2.8g)が得られた。AcOEt/ヘキサンからの再結晶化によって、ER−878890をさらに精製すると、融点106〜108℃の白色の針状物が得られた。
【0176】
≪I.D.2.:ER−878891の調製≫
【化27】
上記のスキームXに図示されている通り、撹拌されているER−878890(1.6g、3.48mmol)のTHF/DMF(100mL/30mL)中の溶液に、トルエン中0.5Mのカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)(8.5mL、4.25mmol)を約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で滴加し、続いて、臭化アリル(0.4mL、4.6mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌したが、その間、ドライアイス−アセトン浴を室温(約25℃)に徐々に加温した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。乾燥させた溶液を濾過し、蒸発させた。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878891(0.64g)が得られた。
【0177】
≪I.D.3.:ER−878892の調製≫
【化28】
上記スキームXIに図示されている通り、撹拌されているER−878891(0.1g、0.2mmol)のジクロロメタン(DCM)(1mL)溶液に窒素下で、トリフルオロ酢酸(TFA)(0.5mL)を室温で加えた。ER−878891は1時間で消失し、溶媒およびTFAは真空蒸発させた。DCM(2mL)に再溶解させた生じたオイルに、イソシアン酸アリル(0.2mL、2.2mmol)を室温で加えた。反応混合物を1時間後に蒸発させ、円形クロマトグラフィーによって精製すると、ER−878892(収率50%)が2種のアノマーの混合物(ベータ/アルファ 約3/1)として得られた。
【0178】
≪I.D.4.:ER−878893の調製≫
【化29】
【0179】
上記のスキームXIIに図示されている通り、撹拌されているER−878892(0.27g、0.56mmol)のTHF(10mL)中の溶液に窒素下で、トルエン中0.5MのKHMDS(1.5mL、0.75mmol)を約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で加え、続いて、塩化ベンゾイル(0.6mL、5.1mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌し、室温に徐々に加温した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878893(0.13g、収率50%)がアノマーの混合物として得られた。
【0180】
≪I.D.5.:ER−878894の調製≫
【化30】
上記のスキームXIIIに図示されている通り、脱ガスされたER−878893(0.13g、0.22mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、Grubb第2世代触媒(約30mg、Sigma−Aldrichから入手可能、St.Louis、MO)を窒素下で加えた。この触媒は、環化複分解(RCM)をもたらす。反応混合物を40℃で1時間加熱し、続いて、溶媒を蒸発させた。AcOEt(20mL)に溶かした残渣に、Silicycle Si−トリアミンPd捕捉剤(Silicycle Inc.)を加え、1時間激しく撹拌した。反応混合物を濾過し、濃縮した。生じた淡黄色の粘稠性のオイルを円形クロマトグラフィーで精製し、より極性の低い化合物がER−878894(40mg)であると決定したが、これは、放置すると結晶化した。
【0181】
≪I.D.6.:ER−878895の調製≫
【化31】
上記スキームXIVに図示されている通り、TLCによって、全てのUV活性なスポットが消失するまで、ER−878894(65mg、0.14mmol)の0.1NのNaOH/MeOH(3mL)中の溶液を30分間撹拌した。溶媒を真空除去し、粗製の固体を水(2mL)に溶かした。溶液をHClで中和し、溶媒を真空除去した。残渣を逆相分取HPLCによって精製すると、ER−878895(12mg、35%)が得られた。
【0182】
表1は、本明細書に記載されている化合物に関する分析データを示している。
【0183】
【表1−1】
【0184】
【表1−2】
【0185】
[実施例II:シチジンデアミナーゼ(CDA)の阻害に関するアッセイ]
Cacciamani,T.ら、Arch.Biochem.Biophys.1991年、290巻、285〜92頁;Cohen R.ら、J.Biol.Chem.、1971年、246巻、7566〜8頁;およびVincenzetti S.ら、Protein Expr.Purif.1996年、8巻、247〜53頁に記載されているシチジンデアミナーゼ(CDA)酵素アッセイを使用して、本明細書に記載されている化合物の阻害活性(IC50)を決定した。このアッセイを使用し、CDAによって触媒される脱アミノ化反応が原因である基質(シチジン)の減少を追うことによって、これらの化合物のIC50を決定した。反応の280nmでの吸光度によって、時間の経過に伴う基質(シチジン)の消失をモニタリングした。
【0186】
アッセイ反応を、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、20mM、1mMのDTT含有)中、100μlの全体積、96ウェルプレートフォーマットで実施した。最終反応混合物は、シチジン(50μM)および精製ヒト組換えCDAを含有した。精製された酵素を希釈して、約2ミリ吸光度単位/分の吸光度変化が生じるようにした。時間の経過に伴う吸光度変化の基線測定を、基質(シチジン)を加える前に行った。FlexStation(登録商標)3(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、基質を添加した後に、吸光度の変化を1分毎に30分間読み取った。各化合物で、8種の異なる濃度(10μM、3.33μM、1.11μM、0.37μM、0.12μM、0.041μM、および0.014μM、および0.0047μM)を使用して、反応を阻害した。SoftMax(登録商標)Pro 5ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)によって、各反応における時間経過に伴う吸光度変化の傾きを算出および使用して、IC50値を得た。
【0187】
【表2−1】
【0188】
【表2−2】
【0189】
[実施例III:IVおよびPO投与後のマウスにおけるER−876437およびER−876400の薬物動態]
ER−876437およびER−876400を両方ともマウスに、10mg/kgで静脈内(IV)に尾静脈を介して、および10mg/kgで経口的に(POまたは経口で)胃管栄養法を介して投与した。全ての用量をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で調製し、5mL/kgの体積で投与した。1群当たりマウス5匹をこれらの研究では使用した。血液試料を各マウスの尾静脈から、予め決定された時点で連続して採取した。血漿のために処理する前に、各群中のマウス全てからの血液試料を一緒に貯留した。抜き出した後に、貯留した血液試料を30〜60分以内遠心し、血漿を回収し、アッセイのために凍結させた。調製および抽出の後に、試料をLC/MS/MSによってアッセイした。観察された濃度(ng/mL)を下記の表3に報告する。
【0190】
【表3】
【0191】
非コンパートメント分析を介して、Watson(登録商標)v.7.2を使用して、ER−876437およびER−876400の薬物動態(PK)パラメーターを算出した。生じたPKパラメーターを下記の表4および5に示す。
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
本研究の結果は、雄のBALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルは類似していることを示唆している。10mg/kgのIV後では、ER−876437およびER−876400の両方のPKは、中程度の分布(それぞれVss=1.64および3.20L/kg)、遅いクリアランス(それぞれCL=0.77および0.48L/hr/kg)および遅い排泄(それぞれt1/2=6.1時間および16.1時間)によって特徴付けられ得る。
【0195】
マウスへのER−876437およびER−876400のIV投与後の全曝露AUC0−∞は、それぞれ13071および20999ng・hr/mLであり、これはそれぞれ、1307および2100mL/gの用量−正規化曝露(AUC0−∞/D)をもたらした。10mg/kgのPO後に、ER−876437およびER−876400のCmaxはそれぞれ8597および7859ng/mLであり、それぞれ1.0および2.0hrのtmaxで観察された。10mg/kgのPO投与後のAUC0−tはER−876437およびER−876400でそれぞれ8579および13160ng・hr/mLであった。ER−876437のAUC0−∞は9499ng・hr/mLであり、t1/2は16.3hrであった。最終排泄相でのデータが不十分であったので、これらのパラメーターを、ER−876400では決定することができなかった。加えて、PO投与後のER−876437でのt1/2は、IV投与後のものよりもおおむね2.5倍高い。
【0196】
ER−876437およびER−876400の生物学的利用率(F%)は類似しており、それぞれ66.5%および69.9%であった。
【0197】
結論として、10mg/kgの単一のIVまたはPO用量後の雄のBALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルは、類似している。しかし、正常な給餌条件下では、マウスは、約5の高い胃内pHを有することに留意されたい。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするSimpson,R.J.ら、「Forms of soluble iron in mouse stomach and duodenal lumen:significance for mucosal update」、British Journal of Nutrition.、63巻:79〜89頁(1990年)を参照されたい。
【0198】
[実施例IV:37℃の人工胃液中でのER−876400およびER−876437の安定性]
この実施例では、室温(約25℃)および37℃で1.45のpHを有する人工胃液中でのER−876400およびER−876437の安定性を記載する。絶食条件下のヒトでは、胃内pHは、1.4から2.1の範囲であると報告されている。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするKararli、T.T.Comparison of the GI anatomy、physiology,and biochemistry of humans and commonly used laboratory animals.BioPharm & DrugDispos.16巻:351〜380頁、1995年を参照されたい。絶食しているサルの胃内pHは、1〜3の同様の範囲を有すると報告されている。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするKondo,H.ら、Characteristics of the gastric pH profiles of unfed and fed cynomolgus monkeys as pharmaceutical product development subjects.BioPharm & DrugDispos.24巻:45〜51頁、2003年を参照されたい。
【0199】
<材料> 塩化ナトリウム200mgおよび37.52%のHClストック溶液1.87mLをHPLCグレードの水(または精製水)100mL中に混合することによって、人工胃液(SGF)を調製した。
【0200】
<試料調製> ER−876400またはER−876437を水中でそれぞれ希釈することによって、当初(t=0)試料を調製した。分析物(ER−876400またはER−876437)約2mgを37℃の人工胃液約1.0mLに溶かすことによって、他の全ての試料を調製した。
【0201】
Waters UPLC溶媒送達系をCorona CAD検出と共に使用して、HPLC分析を行った。HPLCカラム(Waters Atlantis HHS T3 2.1×100mm、1.8μm)を40℃に維持し、水98%およびアセトニトリル2%を含有する溶液で予め平衡させた。恒温オートサンプラーを37℃に維持した。水/MeCN移動相の流速は0.65mL/分であり、その際、試料注入(5μL)後に次の通りの勾配を伴った:
<勾配> 時間(分) 水% MeCN%
0〜2 98 2
2〜2.5 (水98%/MeCN2%)から
(水60%/MeCN40%)への直線勾配
2.5〜3.5 60 40
【0202】
したがって、これらのHPLC−SGF分解研究では、5μLアリコットをSGF/分析物溶液から様々な時点で取り出し、上記の特徴および条件を備えたHPLCカラムに負荷した。水/MeCN移動相を上記の流速および勾配でカラムに施与し、HPLCクロマトグラムを回収した。3.5分後に、カラムを、水98%/MeCN2%で1.5分間、再平衡させた。
【0203】
水中でのER−876400またはER−876437のHPLCクロマトグラムは、ER−876400またはER−876437に帰せられるピークの特定をもたらした。ER−876400またはER−876437を何ら伴わないSGFのHPLCトレースは、ブランク(またはバックグラウンド)クロマトグラムを提供し、これは、SGF関連ピークを特定し、かつそのピークと分析物のピークとを識別するために使用することができた。クロマトグラムを表6および7に特定されている時点で集め、ER−876400またはER−876437にそれぞれ帰せられる試料の対応するパーセンテージを各サンプリング時間について提供する。これらの結果をまた、図1および2にプロットとして図示する。
【0204】
【表6−1】
【0205】
【表6−2】
【0206】
【表7−1】
【0207】
【表7−2】
【0208】
【表7−3】
【0209】
<結論> 37℃の人工胃液中で、ER−876400は、30秒未満で50%分解されることが判明した一方で、ER−876437はおおむね4〜6時間の半減期を有する。
【0210】
[実施例V:生存マウスリンパ腫L1210モデルにおける非デシタビンCDA基質に対するER−876437の効果]
この研究を使用して、ER−876437がマウスのL1210生存モデルにおける非デシタビンCDA基質(またはそのプロドラッグ)の経口効力を増大させるかを決定することができる。
【0211】
<L1210細胞の調製> 次の通りに少なくとも3回マウスにおいて継代することによって、L1210腹水細胞を調製することができる。各CD2F1雌マウスにL1210腹水細胞約105を腹腔内(IP)注射することができる。1週間後に、マウスを屠殺(CO2で窒息)することができる。屠殺の後に、マウスを仰向けにし、その腹部表面をアルコールで拭き取ることで清浄し、腹膜腔へと小さく切開することができる。氷冷されている食塩水中2.1%のBSA2mlを腹膜腔に注射し、次いで、流体を抜き取り、18G 3ccシリンジを用いて、清浄な無菌管に移し、氷上に維持することができる。流体を1:10で、食塩水中2.1%のBSAで希釈し、Zap oglobin II溶解試薬1滴(Beckman Coulter、Inc.から入手可能)を希釈腹水1mlに加えることができる。希釈腹水(再び1:10希釈)を血球計数器でカウントし、1mL当たりの細胞数を算出することができる。L1210細胞約105を他のマウス継代のための後続の継代のために使用することができる。または、BSA溶液中のL1210腹水のストックを1×104細胞/0.1mlまで希釈して、研究用マウスにおいて使用することができる。
【0212】
<研究用マウスの調製> CD2F1 6〜7週齢の雌のマウスを表8に特定されているような群に無作為に分けることができる。投与を開始する1日前に、マウスを、L1210腹水の静脈内(IV)注射で調製することができる(上記の通り調製)。尾静脈を介し、27G針を用いて、マウスに細胞液0.1mlを注射することができる。
【0213】
非デシタビンCDA基質を投与する30分前に、マウスにビヒクルまたはER−876437を経口的に(PO、即ち、経口で)投与することができる。ER−876437をPBS中1mg/mlで調製し、次いで、より低い用量ではPBS中0.1mg/ml、0.01mg/mlおよび0.001mg/mlに希釈することができる。
【0214】
非デシタビンCDA基質は、PBS中1mg/mlのストックで調製し、適切に希釈して0.01mg/ml投与溶液にすることができる。各投与日の開始時にER−876437は調製し、4℃で貯蔵することができる。非デシタビンCDA基質は投与の直前に1日2回新たに調製することができる。全ての溶液を投与の間、氷上に置いておくことができる。マウスに連続して4日間、1日2回(8時間空けて)投与することができる(腹腔内(IP)または経口的に(経口で、PO))。提案されている最終投与スキームおよび提案されている全非デシタビンCDA基質(NDCS)およびER−876437用量を表8に概説する。提案されている投与スキームでは、マウスに経口、腹腔内または静脈内で投与することができる(ビヒクル、ER−876437またはNDCS)。
【0215】
【表8−1】
【0216】
【表8−2】
【0217】
<生存および解剖> 研究期間の間(30日)、マウスを生存について観察し、毎日秤量することができる。死亡したマウスを解剖し、臓器内の腫瘍の存在について観察することができる。腫瘍による死は、Covey JMおよびZaharko DS、Eur J Cancer Clin Oncol、21巻、109〜117頁、1985年に従って、1.6gを超える肝臓重量および150mgを超える脾臓重量によって決定することができる。
【0218】
非デシタビンCDA基質とのER−876437の同時投与が、非デシタビンCDA基質のみの投与と比較して、マウスにおけるL1210生存モデルにおいて生存を増大させるかに関する結論は、次いで、生じたデータから決定することができる。
【0219】
[実施例VI:A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルにおけるER−876437およびゲムシタビンのIn vivo効力研究]
この研究によって、A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルでの経口ゲムシタビン治療に対するER−876437の増大活性を評価した。ゲムシタビンの30分前にER−876437を投与したが、その際、両方の化合物を経口投与した。動物に月曜から金曜までの毎日、2週間にわたって投与した。
【0220】
<材料および方法>
ER−876437およびゲムシタビン−HCl(Gemzar(R)注射用、Eli Lilly)を0.5%メチルセルロース(Sigma)中で処方した。雌のヌードマウス(NU/NU、株コード088、6週齢、Charles River Laboratory)に、マウス1匹当たりA2780癌細胞5×106を皮下移植した。腫瘍が約150mm3になった13日目に、表9に記載されている通りに治療を開始した。
【0221】
【表9】
【0222】
腫瘍体積および退縮を時間経過に伴って追った。腫瘍体積を(長さ×幅2)/2で算出した。完全な退縮は、少なくとも3回連続する測定で測定不可能な腫瘍と定義される一方で、部分退縮は、3回連続する測定で元の腫瘍体積の50%以下までの腫瘍退縮と定義されたことに留意されたい。腫瘍増殖遅延(TGD)は、対照群および治療群で342.14mm3まで増殖するまでの中央日数と定義された。治療初日(13日目)での平均腫瘍体積は、171.07mm3である。したがって、当初腫瘍サイズの2倍の大きさが、342.14mm3である。
【0223】
<結果>
ER−876437単独(群3)は、腫瘍増殖に対して全く効果を有さなかった(図3)。1mg/kgをPOで、qd×5で2週間の計画でのゲムシタビンの経口投与(群2)は、治療の第2週目の後に限られた効力を示したが(図3)、ER−876437単独(群3)は、治療期間全体を通して何ら効力を示さなかった(図3)。腫瘍の2倍化時間を腫瘍増殖遅延(TGD)を定義するために使用すると、ゲムシタビン単独(群2)およびER−876437単独(群3)の両方は、ビヒクル(群1)と比較して僅か2日の遅延を示した(表10)。群1、2および3の間に統計的に重大な差違はなく(Mann−Whitney検定、GraphPad Prism 5、La Jolla、CA)、41日目に、退縮または腫瘍消失を示した生存体はない。
【0224】
対照的に、ゲムシタビンの約30分前にER−876437を投与すると(群4)、マウス10匹のうち1匹(10%)が完全な退縮を示し、研究停止日(41日目)に腫瘍消失を示した生存体であった。マウス10匹のうちの3匹(30%)もまた、部分的な腫瘍退縮を示した。これらの結果は、ビヒクル(群1)と比較して、またはゲムシタビン単独(群2)と比較して、ER−876437/ゲムシタビンの組合せ(群4)において、治療的効力が観察されたことを示している(図3)。この組合せ(群4)をゲムシタビン単独(群2)と比較すると、TGDにおいて著しい差違が観察される(P=0.0001、Mann−Whitney検定、GraphPad Prism 5、La Jolla、CA、表10)。
【0225】
【表10】
【0226】
<結論> ER−876437の前処理は、この研究において経口ゲムシタビンの治療活性の著しい増大を示した。経口ゲムシタビン単独と比較した場合の組合せ群における著しい腫瘍増殖遅延が、Mann−Whitney統計的検定(GraphPad Prism 5、La Jolla、CA)で確認された。
【0227】
[実施例VII:37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのゲムシタビン半減期に対するER−876437の効果]
【0228】
この実施例では、37℃のトリス−HCl緩衝液中、シチジンデアミナーゼ(CDA)の存在下でのゲムシタビンの半減期(T1/2)に対するER−876437の効果を記載する。
【0229】
<材料および装置>
この実施例は、Phenomenex Luna C18(2)HPLCカラム(100Å 4.6×250mm 5μm)を使用した。溶媒送達系は、HPLC四成分ポンプ、低圧混合を使用した。可変ループ、0.1から100μL範囲および温度制御恒温器を有するオートサンプラーを使用した。UV検出器は、二波長検出器、ダイオードアレー検出器、可変波長検出器または同等物を使用することができ、クロマトグラフィーソフトウェア(例えば、HPLCまたは同等物でWaters Empower 2 Build 2154、Agilent ChemStation ソフトウェアバージョンA.09.03以上)を使用して記録することができる。
【0230】
使用された化学てんびんは、±0.1mgを秤量することができた。脱ガスされたHPLCグレードの水および脱ガスされたHPLCグレードのアセトニトリルを移動相のための溶媒として使用した。
【0231】
下記の溶液を作るために使用される希釈溶液は、トリス−HCl(37℃、ph7.4、Boston BioProducts)であった。希釈溶液はまた、UVスペクトルのためのブランクとしても役だった。
【0232】
<ゲムシタビン標準対照> ゲムシタビン2.6mgを10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.2mMのゲムシタビン対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ゲムシタビンストック溶液としてラベルを貼り付けた。ゲムシタビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0233】
<ER−876437標準対照> 5.2mgのER−876437を10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.4mMのER−876437対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ER−876437ストック溶液としてラベルを貼り付けた。ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0234】
<ゲムシタビンとCDA> ゲムシタビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2〜3mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0235】
<ゲムシタビンとCDAおよびER−876437> ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移した。ゲムシタビンストック溶液1.0mLを同じフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0236】
<HPLCパラメーター> 表11に示されているパラメーターを使用して、上記溶液をHPLCカラムに流した。
【0237】
【表11】
【0238】
ゲムシタビンでの保持時間は、約8分であることが判明し、ER−876437の保持時間は、約21.8分であることが判明した。
【0239】
<結果および検討>
【0240】
【表12】
【0241】
37℃のTris−HCl緩衝液中、CDAの存在および不在下、ER−876437を伴うか、または伴わない場合のゲムシタビンのレベルを、UV検出を使用するHPLC分析によって測定した。実験試料におけるゲムシタビンおよびER−876437ピークの面積を測定し、それぞれゲムシタビンおよびER−876437の0時点注入の面積と比較した。結果を、対照に対する残留パーセントとして報告した。
【0242】
データを205nmUVで集めたが、それというのも、ゲムシタビンおよびER−876437はこのUV最大を共有しているためである。図4を参照されたい。結果を35分毎に12時間獲得し、その後は間欠的に、分析方法の長さによって獲得した。規定の時点で重ねた痕跡を示すHPLCクロマトグラムを、図5および図6に示す。
【0243】
これらの図中のHPLCクロマトグラムは、一定の相加的相殺を明確に示している。下部痕跡は時点=0.00分で出発して示されているが、ピークが重なり合わないように、連続クロマトグラムはそれぞれ、前のクロマトグラムの右方へ(一定量の時間で)任意に移動させてある。クロマトグラム痕跡の出発を、時間が0.00分に等しい垂直軸まで(左側へ)戻すことによって、これらのクロマトグラムに示されているピークに関する実際の時間が分かる。同様に、mAU=0.00である位置までクロマトグラムの基線を移動させることによって、どのピークでも実際のUV吸収が分かる。
【0244】
CDAの不在下では、ゲムシタビン濃度の低下は10時間後に観察されなかったが、CDAの存在下では、ゲムシタビン濃度は、1時間以内にほぼ0%対照まで低下し、T1/2は<35分であることが判明した。インキュベーション混合物にER−876437を加えると、7時間後に95%を超えるゲムシタビンが残留する反応の阻害が生じた。同様に、ER−876437のレベルは、CDAと共にゲムシタビンに曝露した7時間の後に、影響を受けなかった。全ての結果の概要を図7に示す。
【0245】
結論として、37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのゲムシタビンのT1/2は、<35分であることが判明した。ER−876437はほぼ完全に、この作用を阻害した。37℃のトリス−HCl緩衝液中にゲムシタビン単独では、観察の終了時に何ら分解は示されなかった。
【0246】
[実施例VIII:37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのシタラビンの半減期に対するER−876437の効果]
この実施例では、37℃のトリス−HCl緩衝液中、シチジンデアミナーゼ(CDA)の存在下でのシタラビン(Sigma)の半減期(T1/2)に対するER−876437の効果を記載する。
【0247】
下記に特定されている例外はあるが、材料および装置は、実施例VIIに関して上記されたものと同じである。
【0248】
下記の溶液を作るために使用される希釈溶液は、トリス−HCl(37℃、ph7.4、Boston BioProducts)であった。希釈溶液はまた、UVスペクトルのためのブランクとしても役だった。
【0249】
<シタラビン標準対照> シタラビン2.4mgを10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.2mMのシタラビン対照を調製した。フラスコを37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、シタラビンストック溶液としてラベルを貼り付けた。シタラビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0250】
<ER−876437標準対照> 5.2mgのER−876437を10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.4mMのER−876437対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ER−876437ストック溶液としてラベルを貼り付けた。ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0251】
<シタラビンとCDA> シタラビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2〜3mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0252】
<シタラビンとCDAおよびER−876437> ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移した。シタラビンストック溶液1.0mLを同じフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0253】
上記の標準および試料を、実施例VIIの表11に示されているパラメーターを使用してHPLCカラムに流したが、但し、UVスペクトルは205および275nmで集めた。シタラビンでの保持時間は、約4.4分であることが判明し、ER−876437の保持時間は、約21.8分であることが判明した。
【0254】
<結果および検討>
【0255】
【表13】
【0256】
37℃のTris−HCl緩衝液中、CDAの存在および不在下、ER−876437を伴うか、または伴わない場合のシタラビンのレベルを、UV検出を使用するHPLC分析によって測定した。安定試料中でのシタラビンおよびER−876437ピークの面積を測定し、それぞれシタラビンおよびER−876437標準対照の面積と比較した。結果を、対照に対する残留パーセントとして報告した。
【0257】
ER−876437およびシタラビンは異なるUV最大を有するので、HPLCクロマトグラムは205nmおよび275nmUVで集めた。シタラビンの結果は、275nmUVを使用して算出し、ER−876437の結果は、205nmUVを使用して算出した。ER−876437およびシタラビンUVスペクトルについては図8を参照されたい。
【0258】
結果を35分毎に12時間獲得し、その後は間欠的に、分析方法の長さによって獲得した。規定の時点で重ねた痕跡を示すHPLCクロマトグラムを、図9および図10に示す。
【0259】
これらの図中のHPLCクロマトグラムは、一定の相加的相殺を明確に示している。下部痕跡は時点=0.00分で出発して示されているが、ピークが重なり合わないように、連続クロマトグラムはそれぞれ、前のクロマトグラムの右方へ(一定量の時間で)任意に移動させてある。クロマトグラム痕跡の出発を、時間が0.00分に等しい垂直軸まで(左側へ)戻すことによって、これらのクロマトグラムに示されているピークに関する実際の時間が分かる。同様に、mAU=0.00である位置までクロマトグラムの基線を移動させることによって、どのピークでも実際のUV吸収が分かる。
【0260】
CDAの不在下では、シタラビン濃度の低下は55時間後に観察されなかったが、CDAの存在下では、シタラビン濃度は、35分以内にほぼ0%対照まで低下し、T1/2は<35分であることが判明した。インキュベーション混合物にER−876437を加えると、52時間後に95%を超えるシタラビンが残留する反応の阻害が生じた。同様に、ER−876437のレベルは、CDAと共にシタラビンに曝露した52時間の後に、影響を受けなかった。全ての結果の概要を図11および図12に示す。
【0261】
結論として、37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのシタラビンのT1/2は、<35分であることが判明した。ER−876437はほぼ完全に、この作用を阻害した。37℃のトリス−HCl緩衝液中にシタラビン単独では、観察の終了時(52時間)に何ら分解は示されなかった。
【0262】
本明細書に記載されている全ての刊行物または特許出願は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0001】
癌は、米国では心疾患のみがその上位に位置する2番目に多い死因であり、死因の1/4を占めている。1990年以来、米国だけでも、ほぼ500万人の生命が、癌のいずれかの形態によって失われている。
【0002】
例えば、米国では毎年186,000人の女性が乳癌に罹患し、この疾患による死亡率は、50年間変わらないままである。根治的乳房切除術、非定型的根治的乳房切除術または腫瘍摘出手術を介しての疾患の外科的切除が依然として、この状態を治療するための中核である。残念なことに、腫瘍摘出手術のみで治療された人のうちの高いパーセンテージが、疾患を再発する。
【0003】
肺癌は、米国ではいずれの性別においても最も多い癌の死因である。肺癌は、肺で発生した原発性腫瘍、または、腸もしくは乳房などの他の臓器から拡散した続発性腫瘍から生じ得る。原発性肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、および中皮腫の3つの主な種類に分類されている。非小細胞肺癌には、扁平上皮細胞癌、腺癌、および大細胞癌の3種類がある。中皮腫は、胸膜と称される肺の外皮が罹患する稀な種類の癌であり、多くの場合、アスベスト曝露が原因である。
【0004】
卵巣癌は、女性の癌全体の約3%を占めており、婦人科癌のうち、子宮体部の癌に次いで2位にランキングされている。米国では卵巣癌に毎年20,000人を超える女性が罹患しており、毎年約15,000人の死亡原因となっている。疾患が局在ステージと診断された場合、5年生存率は90%を超えるが、このステージで発見されるのは、全ての症例のうちの約19%にすぎない。
【0005】
膵臓癌の発病率は、多くの先進国において過去20年にわたって、ずっと上昇し続けており、このことは、大きくなりつつある疫学的問題の特徴を示している。
【0006】
白血病は、血液細胞が罹患する癌の種類である。白血病のために現在処方されている治療計画には、全身照射および化学療法がある。しかし、これら2つの治療計画は、臨床的なジレンマを提起する。即ち、白血病は、血液の癌であるので、血液中の全ての細胞および骨髄中で生じる全ての細胞が、新生物細胞の破壊を保証するように治療されなければならない。これらの細胞全ての破壊は、患者を深刻な免疫抑制状態にしてしまい、このことは、白血病と同程度に致死的になり得るであろう。
【0007】
一部の抗癌薬は、アデノシンデアミナーゼ(ADA、EC 3.5.4.4)およびシチジンデアミナーゼ(CDA、シトシンヌクレオシドデアミナーゼ、シチジンアミノヒドロラーゼ、またはEC 3.5.4.5とも称される)などの生体の天然の酵素によって代謝される。これらの酵素はそれぞれ、天然アミノプリンおよびアミノピリミジンヌクレオシドを、ヒトおよび他の生体中で脱アミノ化するように機能する。これらの酵素はまた、活性なヌクレオシドベースの抗癌薬を不活性な代謝産物へと変換する。例えば、プリンヌクレオシド薬であるアラビノシルアデニン(フルダラビン、ara−A)はADAによって脱アミノ化され、その結果生じた化合物は、親アミノ基がヒドロキシルで置換されたことで、親化合物と比較すると抗腫瘍薬として不活性である。同様に、抗白血病薬であるアラビノシルシトシン(シタラビン、Ara−C(もしくはAraC)、4−アミノ−1−(β−D−アラビノフラノシル)−2(1H)−ピリミジノン、シトシンアラビノシド、または1−(β−D−アラビノフラノシル)シトシンとも称される)は、CDAによって代謝分解されて、不活性なアラビノシルウラシルになる。
【0008】
CDAは、ピリミジンサルベージ経路の成分である。これは、シチジンおよびデオキシシチジンを加水分解脱アミノ化によって、それぞれウリジンおよびデオキシウリジンに変換する(Arch.Biochem.Biophys.1991年、290巻、285〜292頁;Methods Enzymol.1978年、51巻、401〜407頁;Biochem.J.1967年、104巻、7頁)。これはまた、上記で挙げられたara−Cなどの臨床的に有用な薬物である数種の合成シトシン類似体を脱アミノ化する(Cancer Chemother.Pharmacol.1998年、42巻、373〜378頁;Cancer Res.1989年、49巻、3015〜3019頁;Antiviral Chem.Chemother.1990年、1巻、255〜262頁)。シトシン化合物からウリジン誘導体への変換は通常、治療活性の喪失または副作用の付加をもたらす。また、シトシン類似薬に対する耐性を獲得している癌は多くの場合に、CDAを過剰発現することが判明している(Leuk.Res.1990年、14巻、751〜754頁)。高レベルのCDAを発現する白血病細胞は、シトシン代謝拮抗薬に対する耐性を顕現することがあり、したがって、そのような治療の抗新生物活性を限定し得る(Biochem.Pharmacol.1993年、45巻、1857〜1861年)。
【0009】
テトラヒドロウリジン(THU、または、1(β−D−リボフラノシル)−4−ヒドロキシテトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン)は、長年にわたりシチジンデアミナーゼの阻害薬として知られている。
【化1】
THUの同時投与がシチジンベースの薬物の効力および経口活性を高めることを、様々な報告が示唆している。例えば、THUは、抗白血病薬である5−アザシチジン(AzaC、4−アミノ−1−(β−D−リボフラノシル)−1,3,5−トリアジン−2(1H)−オン、または1−(β−D−リボフラノシル)−5−アザシトシンとも称される)の経口活性をL1210白血病マウスにおいて増大させることが判明している(Cancer Chemotherapy Reports 1975年、59巻、459〜465頁)。THUおよび5−アザシチジンの組合せはまた、ヒヒ鎌状赤血球性貧血モデル(Am.J.Hematol.1985年、18巻、283〜288頁)において、および鎌状赤血球性貧血のヒト患者において、経口投与された5−アザシチジンと組み合わせて研究されている(Blood 1985年、66巻、527〜532頁)。
【0010】
THUはまた、L1210白血病マウス(Cancer Research 1970年、30巻、2166頁;Cancer Invest 1987年、5巻(4号)、293〜9頁)において、および腫瘍のあるマウス(Cancer Treat.Rep.1977年、61巻、1355〜1364頁)において、ara−Cの経口効力を増大させることが判明している。静脈内投与ara−Cと静脈内投与THUとの組合せが、いくつかの臨床研究でヒトにおいて調査されている(Cancer Treat.Rep.1977年、61巻、1347〜1353頁;Cancer Treat.Rep.1979年、63巻、1245〜1249頁;Cancer Res.1988年、48巻、1337〜1342頁)。特に、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)の患者において組合せ研究が行われている(Leukemia 1991年、5巻、991〜998頁;Cancer Chemother.Pharmacol.1993年、31巻、481〜484頁)。
【0011】
ゲムシタビン(dFdC、1−(4−アミノ−2−オキソ−1H−ピリミジン−1−イル)−2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−リボフラノース、または2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン、または2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジンとも称される)、他のシチジンベースの抗新生物薬もまた、CDA阻害薬と共に研究されている(Biochem.Pharmacol.1993年、45巻、1857〜1861頁)。THUとの同時投与は、マウスにおいて、ゲムシタビンの薬物動態および生物学的利用能を変化させることが判明している(Abstr.1556、2007 AACR Annual Meeting、2007年4月14〜18日、Los Angeles、CA;Clin.Cancer Res.2008年、14巻、3529〜3535頁)。
【0012】
5−フルオロ−2’−デオキシシチジン(フルオロシチジン、FdCyd)は、他のシチジンベースの抗癌薬であり、これは、DNAメチル基転移酵素の阻害薬である。マウスにおいて、THUによるその代謝および薬物動態の変化が研究されている(Clin Cancer Res.、2006年、12巻、7483〜7491頁;Cancer Chemother.Pharm.2008年、62巻、363〜368頁)。THUと組み合わされたFdCydは現在、米国国立癌研究所の臨床試験番号NCT00378807で確認される進行中の臨床試験の対象である。
【0013】
上記の研究の結果は、CDA阻害薬をゲムシタビン、ara−C、5−アザシチジンなどのシチジンベースの薬物と一緒に投与することには、治療的有用性があることを示唆している。しかし、THUなどの初期のCDA阻害薬には、酸不安定性(J.Med.Chem.1986年、29巻、2351頁)および低い生物学的利用能(J.Clin.Pharmacol.1978年、18巻、259頁)を含む欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、新規で効力があり、かつ治療的に有用なCDAの阻害薬、および癌または新生物疾患を治療するのに有用な新規の組成物が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
癌および癌に随伴する障害のための新たな治療および療法が未だ必要とされている。また、癌の1種または複数の症状を治療または改善する際に有用な化合物も必要とされている。さらに、酵素シチジンデアミナーゼの活性を阻害する方法が必要とされている。
【0016】
したがって本明細書において、式I、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIIIの化合物を提供する。また本明細書において、(i)式I、II、III、IV、V、VI、VIIまたはVIIIの化合物のいずれか1種と、(ii)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。
【0017】
他の態様では、シチジンデアミナーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の任意の式I〜VIIIの化合物を利用することを含む。この方法の一実施形態では、化合物は、式VIIIの化合物である。
【0018】
他の態様では、非デシタビンCDA基質と、任意の式I〜VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。他の態様では、非デシタビンCDA基質と、式Iの化合物とを含む医薬組成物を提供する。さらに他の態様では、非デシタビンCDA基質と、式VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物のある種の実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロル(cytochlor)であってよい。
【0019】
他の態様では、癌を治療する方法を提供し、これは、対象に非デシタビンCDA基質を含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式Iの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。この方法の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。
【0020】
この方法の他の実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0021】
他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に非デシタビンCDA基質を含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式VIIIの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。この方法の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0022】
他の態様では、本発明は、非デシタビンCDA基質で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式Iの化合物の使用を提供する。さらに他の態様では、本発明は、非デシタビンCDA基質で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式VIIIの化合物の使用を提供する。これらの使用のいずれかに関して、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。これらの使用の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。これらの使用のさらに他の実施形態では、血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0023】
他の態様では、ゲムシタビンと、式Iの化合物とを含む医薬組成物を提供する。さらに他の態様では、ゲムシタビンと、式VIIIの化合物とを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
さらに他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象にゲムシタビンを含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式Iの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。他の態様では、癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象にゲムシタビンを含む医薬組成物を投与するステップと、対象に式VIIIの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む。これらの方法の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0025】
他の態様では、ゲムシタビンを含む組成物で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式Iの化合物の使用を提供する。他の態様では、ゲムシタビンを含む組成物で治療される対象において癌を治療するための医薬品を製造するための、式VIIIの化合物の使用を提供する。これらの使用の一実施形態では、癌は、血液学的癌または固形癌であってよい。血液学的癌は、骨髄異形成症候群または白血病であってよい。白血病は、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病であってよい。固形癌は、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌であってよい。
【0026】
他の態様では、CDAが非デシタビンCDA基質と結合するのを阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の任意の式I〜VIIIの化合物を利用することを含む。この方法の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。この方法の他の実施形態では、化合物は、式VIIIの化合物であり、非デシタビンCDA基質は、ゲムシタビンである。
【0027】
一実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せに関する。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤とからなる組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せに関する。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せに関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0030】
他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せに関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質と、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、その方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質との組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質は(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0031】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0032】
他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。他の好ましい実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関する。さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せに関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0034】
さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれかと、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せに関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。他の実施形態では、本発明は、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグと、(iii)薬学的に許容される賦形剤との組合せを含む医薬組成物に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与する方法に関するが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。さらに他の実施形態では、本発明は、癌を治療する方法に関し、この方法は、対象に、(i)式VIIIによって示される化合物と、(ii)CDA基質のプロドラッグとの組合せを含む医薬組成物を投与することを含むが、但し、そのCDA基質のプロドラッグは(a)デシタビンでも、(b)デシタビンプロドラッグでもないことを条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】37℃の人工胃液中、時間を関数としてのER−876400(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)の全HPLC面積%純度を示すプロットである。
【図2】37℃の人工胃液中、時間を関数としてのER−876437(1−((2R,4R,5R)−3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)の全HPLC面積%純度を示すプロットである。
【図3】A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルにおけるゲムシタビン(1mg/kg)POおよびER−876437(10mg/kg)POの組合せの効果を示すグラフである。
【図4】ゲムシタビンおよびER−876437のUVスペクトルである。
【図5】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのゲムシタビンのHPLCクロマトグラムである。
【図6】CDAおよびER−876437の存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのゲムシタビンのHPLCクロマトグラムである。
【図7】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのゲムシタビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【図8】シタラビンおよびER−876437のUVスペクトルである。
【図9】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのシタラビンのHPLCクロマトグラムである。
【図10】CDAおよびER−876437の存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中、選択時点でのシタラビンのHPLCクロマトグラムである。
【図11】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのシタラビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【図12】CDAの存在下、37℃のトリス−HCl緩衝液中でのシタラビンのレベルに対するER−876437の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
天然アミノプリンおよびアミノピリミジンヌクレオシドを脱アミノ化する酵素はまた、活性な抗癌薬を不活性な化合物へとヒトの体内において変換し得る。例えば、酵素シチジンデアミナーゼは、ある種の薬物のアミノ基をヒドロキシル基に迅速に変換して、これらの化合物を不活性にし得る。シチジンデアミナーゼの阻害薬を、そうしないとこの酵素によって脱アミノ化される(その結果、脱活性化される)薬物と共に同時投与すれば、抗腫瘍活性の改善が達成されるはずである。
【0038】
シチジンデアミナーゼ阻害薬(Z)−3,4−ジヒドロ−1−((2R,3R,4S,5R)−テトラヒドロ−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)フラン−2−イル)−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン(本明細書中では「ER−876400」、1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン、2H−1,3−ジアゼピン−2−オン、1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−D−リボフラノシル−とも称されるか、または化学物質登録番号75421−11−3によって示される)は、Liu,P.S.ら、J.Med.Chem.24巻:662〜666頁(1981年)、米国特許第4,275,057号(いずれもその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。ER−876400は、式IX
【化2】
によって示される
(ここで、および他において、化合物の名称と化合物の構造との間に矛盾が存在する場合、化学構造が優先される)。
【0039】
他のシチジンデアミナーゼ阻害薬は、2008年10月16日出願の国際出願PCT/US2008/80163号、2008年10月16日出願の米国特許出願第12/252,961号、および2007年10月16日出願の米国特許仮出願第60/980,397号に既に記載されており、これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0040】
シチジンデアミナーゼ(「CDA」)の阻害薬の新たな群を、本明細書において提供する。本明細書に記載されている通り、これらの化合物は、他の既知の化合物を上回る改善された半減期を有する。一実施形態では、本発明の化合物はER−876400と比較して、人工胃液中で改善された半減期を有する。これらの化合物は、癌(例えば、骨髄異形成症候群、白血病、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌)を治療することを目的としている他の抗癌医薬品(例えば、非デシタビンCDA基質)と組み合わせて投与することができる。
【0041】
[定義]
下記の定義を、本明細書を通して使用する。
明細書および請求項中で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で他に明確に示されていない限り、複数形についての言及を包含する。したがって例えば、「1種の(a)化合物」を含む医薬組成物に関する言及は、2種以上の化合物を包含し得る。
【0042】
「アルキル」または「アルキル基」は、本明細書で使用される場合、完全に飽和している、直鎖(即ち、非分岐)、分岐または環式炭化水素鎖を意味する。例としては、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルが挙げられる。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC6分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C3からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C1からC2炭素鎖である。一部の実施形態では、アルキル鎖は、C2からC3分岐または非分岐炭素鎖である。ある種の実施形態では、「アルキル」または「アルキル基」という用語には、炭素環としても知られているシクロアルキル基が包含される。例示的なC1〜3アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびシクロプロピルが挙げられる。
【0043】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の二重結合を有する、直鎖(即ち、非分岐)、分岐または環式炭化水素鎖を指す。例としては、限定はされないが、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニル、イソ−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニルおよびn−ヘキセニルが挙げられる。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC6分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC5分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C2からC4分岐または非分岐炭素鎖である。一部の実施形態では、アルケニル鎖は、C3からC5分岐または非分岐炭素鎖である。他の態様では、アルケニルという用語は、「ジエン」とも称される2つの二重結合を有する直鎖炭化水素を指す。他の実施形態では、「アルケニル」または「アルケニル基」という用語は、シクロアルケニル基を指す。
【0044】
「C1〜6アルキルエステル」は、C1〜6アルキル基がそれぞれ上記で定義された通りであるC1〜6アルキルエステルを指す。したがって、アルコール(−OH)のC1〜6アルキルエステル基は、式−C(=O)O(C1〜6アルキル)を有し、この場合、末端酸素が、アルコール酸素の位置を占めている。
【0045】
「C2〜6アルケニルエステル」は、C2〜6アルケニル基がそれぞれ上記で定義された通りであるC2〜6アルケニルエステルを指す。したがって、アルコール(−OH)のC2〜6アルケニルエステル基は、式−C(=O)O(C2〜6アルケニル)を有し、この場合、末端酸素が、アルコール酸素の位置を占めている。
【0046】
別段に示されていない限り、二価基が、「−」によって示される2つの末端結合部位を包含するその化学式によって示される場合、結合は、左から右へと読み取ると理解されるはずである。
【0047】
立体化学が図示されていないか、または別段に述べられていない、もしくは示されていない場合、本明細書に図示されている構造はまた、構造の全ての鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または配座異性)形態、例えば、各不斉中心でのRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体ならびに(Z)および(E)配座異性体を包含することを意味している。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体も、鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または配座異性)混合物も、本発明の範囲内である。本発明の化合物の互変異性形態はいずれも、本発明の範囲内である。
【0048】
加えて、別段に述べられていない限り、本明細書に図示されている構造は、1個または複数の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を包含することも意図している。例えば、水素がジュウテリウムまたはトリチウムによって置き換えられているか、または炭素が13C−または14C−濃縮炭素によって置き換えられていること以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0049】
「治療」、「治療する」および「治療すること」は、本明細書に記載されている疾患または障害を反転、緩和、その発症を遅延またはその進行を阻害することを指す。一部の実施形態では、1種または複数の症状が発生した後に、治療を施すことができる。他の実施形態では、症状がなくても、治療を施すことができる。例えば、罹患しやすい個体に症状の発症前に(例えば、症状の履歴を考慮して、もしくは遺伝的もしくは他の罹病性因子を考慮して、または症状の履歴を考慮し、かつ遺伝的または他の罹病性因子を考慮して)治療を施すことができる。例えば、再発の低減または遅延のために、症状が消散した後に、治療を継続することもできる。疾患、障害または状態に関して「治療すること」はまた、(i)疾患、障害または状態を遅らせること、例えば、進行を停止させること、または(ii)疾患、障害または状態の軽減、例えば、臨床的症状を退縮させること、または(iii)疾患、障害または状態を遅らせ、かつ疾患、障害または状態を軽減することを指す。
【0050】
疾患、障害または状態に関して「予防すること」は、疾患、障害または状態を予防すること、例えば、疾患、障害または状態の臨床的症状を発生させないことを指す。
【0051】
式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか(または、限定はされないが、任意のその塩、アルキルエステルまたはアルケニルエステルを包含する本明細書に記載のCDA阻害薬)に関して、「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、CDAがCDA基質に結合する能力を低下させて、それによって、CDAがCDA基質を酵素的に脱アミノ化する能力を低下させることを指す。どの理論にも拘束されることはないが、CDAを阻害する化合物の能力は、特定のCDAタンパク質の活性部位に結合して、それによって、その特定のCDAタンパク質がCDA基質と結合する能力を低下させる化合物の能力に起因し得る。本内容において「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、全てのCDAタンパク質がいずれかのCDA基質に結合することを完全に妨げることを指していない。むしろ、本内容では、「阻害する」、「阻害薬」および「阻害」は、CDAによるCDA基質の酵素脱アミノ化を低減するCDA阻害薬の能力に関する。一態様では、本発明の方法は、細胞を、有効量のCDA阻害薬化合物、即ち、本発明の化合物と接触させて、それによって、CDAの活性を阻害することを含む。
【0052】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、動物対象、好ましくは、哺乳動物対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、サルなど)、特にヒト対象(男性および女性対象の両方を包含し、新生児、幼児、若年者、青年、成人および老人対象を包含する)を意味する。「対象」はまた、in vitroまたはin vivoの、動物またはヒトの細胞または組織を指し得る。
【0053】
下記でさらに検討する通り、「CDA基質」という用語は、CDAによって脱アミノ化され得る任意の化合物を指す。一実施形態では、CDA基質は、(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもない。「非デシタビンCDA基質」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもないCDA基質を指す。「非デシタビンCDA基質のプロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、そのCDA基質が(i)デシタビンでも、(ii)デシタビンプロドラッグでもないCDA基質のプロドラッグを指す。「デシタビンプロドラッグ」は、in vivoでデシタビンに変換される任意の化合物である。非デシタビンCDA基質の非限定的な例としては、シチジン、デオキシシチジン、aza−C(5−アザシチジン)、ゲムシタビン、ara−C(1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、シトクロル、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン、6−アザシチジンおよび1−メチル−Ψ−イソシチジンが挙げられる。シチジンおよびデオキシシチジンは、天然の非デシタビンCDA基質である。特定の実施形態では、非デシタビンCDA基質はゲムシタビンである。
【0054】
下記でさらに検討する通り、化合物を、次の少なくともいずれかを介してCDA基質であると決定することができる。(i)CDAによる脱アミノ化に関連した動態(Km)の証明、および(ii)式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか1種を投与された場合の対象におけるその曝露に対する変化である。化合物は、これらの評価の両方によって、CDA基質であると決定されるような肯定の評価を受ける必要はない。
【0055】
化合物は、既知のアッセイを使用して、CDAによるその脱アミノ化の動態(Km)を評価することによってCDA基質であると決定することができる。例えば、全てその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Bouffard,D.Y.ら、Biochem.Pharm.45巻(9号):1857〜1861頁(1993年);Momparler,R.L.ら、Biochem.Pharm.32巻(7号):1327〜1328頁(1983年);Cacciamani,T.ら、Arch.Biochem.Biophys.290巻(2号):285〜292頁(1991年);Wentworth,D.F.およびWolfenden,R.、Biochemistry 14巻(23号):5099〜5105頁(1975年);およびVincenzetti,S.ら、Prot.Expression and Purification 8巻:247〜253頁(1996年)を参照されたい。シチジンのKm値は以前に、12±0.9μMと報告されており、デオキシシチジンのKm値は以前に、19±4μMと報告されている。Chabotら、Biochem.Pharm.32巻(7号):1327〜8頁(1983年)。加えて、ara−C(87±10μM)、ゲムシタビン(95.7±8.4μM)および5−アザシチジン(216±51μM)のKm値も以前に報告されている。同文献およびBouffard,D.Y.ら、Biochem.Pharm.45巻(9号):1857〜1861頁(1993年)。ヒト肝臓からのCDAでのシチジンのKm値もまた、9.2μMと報告されている。Wentworth,D.F.およびWolfenden,R.、Biochemistry 14巻(23号):5099〜5105頁(1975年)。この刊行物はまた、5−アザシチジン(58μM)および6−アザシチジン(4200μM)でのKm値も特定している。同文献。
【0056】
したがって、CDA基質には、少なくとも10μMより高く、4500μMまでのKm値を有する化合物が包含される。CDA基質のKmは、10μMから500μMまで、10μMから400μMまで、10μMから300μMまで、10μMから200μMまで、10μMから175μMまで、10μMから150μMまで、または200μMから300μMまでの範囲内に該当し得る。別法では、Km値は、少なくとも50μMより高く、500μM以下である。CDA基質のKmは、50μMから500μMまで、50μMから400μMまで、50μMから300μMまで、50μMから200μMまで、50μMから175μMまで、または50μMから150μMまでの範囲に該当し得る。
【0057】
化合物はまた、対象に式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種と同時または連続投与された場合のある種の薬理学的パラメーターを評価することによって、CDA基質であると決定することもできる。例えば、化合物が式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれかと同時または連続投与された場合に、対象での化合物の曝露が増大することがある。このような評価は、(i)単独で対象に投与された場合の化合物の曝露を、(ii)式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種と一緒に対象に投与された場合の同じ化合物の曝露と比較して測定するであろう。式I〜VIIIによって示されるCDA阻害薬のいずれか1種の同時または連続投与が化合物の曝露を増大させると判明した場合、その化合物はCDA基質である。
【0058】
化合物の曝露に続いて、生体試料(例えば、血液または尿)を対象から採取し、分析技術(例えば、高圧もしくは高速液体クロマトグラフィーまたは他の分析手段)を使用して、その生体試料を評価することができる。分析測定を使用して、化合物の濃度時間プロファイルを決定し、既知の技術を使用して、化合物の曝露を推定することができる。例えば、引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするGibaldi,M.およびPerrier,D.、Pharmacokinetics、第2版、Marcel Dekker、New York、1982年を参照されたい。典型的には、化合物の消失は、時間の関数として生じる。
【0059】
曝露実験を、物質が、その物質の形態に関わらず(例えば、塩、多形またはプロドラッグ)、CDA基質であるかどうかを決定する目的で行うことができる。したがって、例えば、化合物を対象にプロドラッグとして、例えば、エステル化または他の代謝可能に保護された形態で投与することができる。対象に投与されると、プロドラッグは、例えば、脱エステル化されて、それによって、in vivoで活性薬物を放出することができる。この活性薬物がCDA基質であるかどうかは、その活性薬物で上記の分析測定を行うことによって、決定することができる。別法では、プロドラッグ自体がCDA基質であるかどうかを、そのプロドラッグに関して上記2つのパラグラフに記載の分析測定を行うことによって決定することができる。
【0060】
非デシタビンCDA基質は、癌を治療するために使用される薬物、または任意の他の疾患または病気を治療するために使用される薬物であってよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は、対象に投与された場合にin vivo変性を受け、その際、in vivo変性の生成物が治療的に有効な化合物である組成物である。例えば、所定の化合物をエステルとして調製することによって、化合物のプロドラッグを調製することができる。化合物のエステル化形態を対象に投与することができ、それは、in vivoで脱エステル化されて、それによって、治療的に有効な化合物を放出し得る。別法では、短鎖ポリペプチド(例えば、1〜6アミノ酸)を化合物に付加することによって、一部の化合物をプロドラッグとして調製することができる。そのようなプロドラッグは、対象に投与された場合に開裂して(例えば、トリプシンまたは他のペプチダーゼによって)、それによって治療的に有効な化合物を放出し得る。プロドラッグの形成は、本明細書に記載の具体例に限られない。治療的に有効な化合物をプロドラッグとして調製する他の方法は公知である。非デシタビンCDA基質のプロドラッグの例としては、限定はされないが、ゲムシタビンエライデート(9(E)−オクタデセン酸2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン−5’−イルエステル、2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−5’−O−[9(E)−オクタデセノイル]シチジン、CP−4126、またはCAS登録番号210829−30−4とも称される)、アゼライン酸ゲムシタビンエステルメグルミン塩(1−[5−O−(9−カルボキシノナノイル)−β−D−アラビノフラノシル]シトシンメグルミン塩とも称される)、アゼライン酸ゲムシタビンエステルの他の塩、および1−[4−(2−プロピルペンタンアミド)−2−オキソ−1H−ピリミジン−1−イル]−2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−β−D−リボフラノース(LY−2334737とも称される)が挙げられる。
【0062】
「組合せ」という用語は、1投薬単位形態中で固定された組合せか、あるいは本発明の化合物と組合せパートナーとを独立に、同時に、または組合せパートナーが協同効果、例えば相加効果もしくは相乗効果を示すことを特に可能にする時間内で別々に投与することができる組合せ投与のためのパーツからなるキット、または任意のその組合せを意味している。
【0063】
「薬学的に許容される」は、薬理学的または毒性の観点から患者に許容されるか、あるいは、組成、製剤化、安定性、患者の受容、生物学的利用能および他の成分との相容性に関する物理的または化学的観点から製剤化学者に許容される、特性または物質を指す。
【0064】
「薬学的に許容される賦形剤」は、治療薬自体ではなく、治療薬を対象に送達するために担体、希釈剤、結合剤またはビヒクルとして使用されるか、またはその取扱いもしくは貯蔵特性を改善するために、または投与用の単位剤形への化合物もしくは組成物の形成を可能または容易にするために医薬組成物に加えられる任意の物質を意味し得る。薬学的に許容される賦形剤は、医薬分野において公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton,Pa(例えば、第20版、2000年)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、American Pharmaceutical Association、Washington,D.C.(例えば、第1版、第2版および第3版、それぞれ1986年、1994年および2000年)に記載されている。賦形剤は、様々な機能を提供することができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁化剤、滑沢剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香味剤および甘味剤として記載されることもある。薬学的に許容される賦形剤の例としては、限定はされないが、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、(2)コーンスターチおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)トラガカント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤、(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などのオイル、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質不含の水、(17)等張性食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリ無水物、ならびに(22)医薬製剤で使用される他の非毒性で相容性の物質が挙げられる。
【0065】
「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、それを用いて製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体またはビヒクルを指す。本発明の組成物中で使用することができる薬学的に許容される担体またはビヒクルとしては、これらに限られないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0066】
「薬学的に許容される塩」は、所望の薬理学的活性を有し、生物学的にも他の点でも不所望ではない本発明の化合物の酸または塩基塩を指す。塩は、酸を用いて形成することができ、これらとしては、限定はされないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンフルスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタン−スルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基塩の例としては、限定はされないが、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基との塩、N−メチル−D−グルカミン、ならびにアルギニンおよびリシンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。一部の実施形態では、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、ならびに臭化フェネチルなどのハロゲン化アラルキルといった薬剤で四級化することができる。
【0067】
「動物」は、感覚および随意運動の力を有し、存在するために、酸素および有機質食物を必要とする生体を指す。
【0068】
「哺乳動物」は、毛髪または毛皮を有する温血脊椎動物を指す。例としては、限定はされないが、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、マウス、イヌまたはネコ種が挙げられる。
【0069】
「癌」は、制御から逸脱して増殖し、場合によっては、転移(拡散)する傾向を有する異常な細胞増殖を指す。具体的な癌の種類としては、限定はされないが、米国特許出願公開第2006/0014949号で特定されている癌と、
心臓:肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫など)、横紋筋腫および奇形腫、
肺:気管支癌(例えば、扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌など)、肺胞腺(例えば、細気管支など)癌、肉腫、リンパ腫、非小細胞肺癌および中皮腫、
胃腸:食道(例えば、扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫など)、胃(例えば、癌、リンパ腫、平滑筋肉腫など)、膵臓(例えば、導管性腺癌、インスリノーマ、類癌腫、ビポーマなど)、小腸(例えば、腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫など)、大腸(例えば、腺癌など)、
尿生殖路:腎臓(例えば、腺癌、リンパ腫、白血病など)、膀胱および尿道(例えば、扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌など)、前立腺(例えば、腺癌、肉腫など)、精巣(例えば、精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛上皮腫、肉腫、間質細胞癌など)、
肝臓:肝癌(例えば、肝細胞癌腫など)、胆管癌、肝芽腫および血管肉腫、
骨:骨原性肉腫(例えば、骨肉腫など)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(例えば、小神経膠腫など)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫(例えば、骨軟骨性外骨症など)、軟骨芽細胞腫および巨細胞腫、
神経系:頭蓋、髄膜(例えば、髄膜肉腫、神経膠腫症など)、脳(例えば、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、膠腫、脳室上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性神経膠芽細胞腫、乏突起神経膠腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍など)、脊髄(例えば、肉腫など)、
乳癌、
婦人科:子宮(例えば、子宮内膜癌など)、子宮頸(例えば、子宮頸癌など)、卵巣(例えば、卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、非分類癌腫]、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫など)、外陰(例えば、扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫など)、膣(例えば、明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫]、ファロピウス管(癌腫)など)、
血液:血液(例えば、骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群など)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫など、および
副腎:神経芽細胞腫とが挙げられる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。例えば、治療的有効量のゲムシタビンは、本明細書に記載の疾患または障害を治療するのに十分な量である。治療的有効量の式I〜VIIIによって示される化合物は、非デシタビンCDA基質のin vivo曝露を増大させるのに十分な量である。
【0071】
本明細書を通して、名付けられている化合物と示されている構造との間に矛盾がある場合、構造が優先されることとする。任意の特定の化合物に対して与えられている任意の指名同義語(例えば、略語、IUPAC名、一般名もしくは他の化学的名称または登録番号)が実際には異なる化合物に関している場合、本明細書は、これらの化合物を選択肢で指していると解釈されたい。
【0072】
[本発明の化合物]
本発明は、CDAの活性を阻害する化合物を提供する。他の実施形態では、これらの化合物は、癌(例えば、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄球性白血病、非小細胞肺癌、膵臓癌、卵巣癌および乳癌)を治療する目的で、他の抗癌医薬品(例えば、非デシタビンCDA基質、非デシタビンCDA基質のプロドラッグまたは非デシタビンCDA基質の前駆体)と組み合わせて投与することができる。
【0073】
本発明は、式Iの化合物
【化3】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在せず、R3は平面上にある]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルに関する。
【0074】
本明細書を通して使用される場合、「R3は平面上にある」という表現は、R3が結合している炭素、さらに、R3が結合している炭素に直に隣接している2個の炭素原子を含有する平面と同じ平面に、R3基が存在することを意味している。
【0075】
式Iの一実施形態では、R1およびR2はそれぞれFである。
【0076】
他の実施形態では、式Iは、式IIの化合物
【化4】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0077】
他の態様では、本発明は、ER−876437(または式VIIIとして示される2H−1,3−ジアゼピン−2−オン,1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−(D−2−デオキシ−2,2−ジフルオロリボフラノシル)−、または1−((2R,4R,5R)−3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)に関する。ここにおいて、および他において、化合物の化学名称とその構造の図示との間に矛盾がある場合、構造の図示が優先されることとする。構造の図示と、1H NMRデータとの間に矛盾がある場合、1H NMRデータが優先されることとする。
【0078】
他の態様では、本発明は、式VIIIの化合物
【化5】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルに関する。
【0079】
他の態様では、本発明は、式VIIIの化合物に関する。
【化6】
【0080】
他の実施形態では、式Iは、式IIIの化合物
【化7】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0081】
他の実施形態では、式Iは、式IVの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0082】
一実施形態では、式IVは、式Vの化合物
【化9】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0083】
他の実施形態では、式Iは、式VIの化合物
【化10】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0084】
一実施形態では、式VIは、式VIIの化合物
【化11】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルによって表される。
【0085】
本発明はまた、式Iの化合物
【化12】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在せず、R3は平面上にある]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0086】
他の実施形態では、本発明はまた、式IIの化合物
【化13】
[式中、R3はHおよびOHから選択される]または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0087】
他の実施形態では、本発明はまた、式IIIの化合物
【化14】
[式中、R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0088】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質と、式Iの化合物
【化15】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0089】
非デシタビンCDA基質と式Iの化合物とを含む医薬組成物の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルからなる群から選択される。他の実施形態では、医薬組成物は、非デシタビンCDA基質のプロドラッグおよび式Iの化合物を含み、非デシタビンCDA基質のプロドラッグは、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルのプロドラッグからなる群から選択される。
【0090】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質と、式VIIIの化合物
【化16】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0091】
他の実施形態では、本発明はまた、非デシタビンCDA基質のプロドラッグと、式VIIIの化合物
【化17】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルとを含む医薬組成物に関する。
【0092】
非デシタビンCDA基質と式VIIIの化合物とを含む医薬組成物の一実施形態では、非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルからなる群から選択される。非デシタビンCDA基質のプロドラッグと式VIIIの化合物とを含む医薬組成物の他の実施形態では、非デシタビンCDA基質のプロドラッグは、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、およびシトクロルのプロドラッグからなる群から選択される。
【0093】
本発明の他の実施形態では、医薬組成物は、(a)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物と、さらに(b)非デシタビンCDA基質とを含み得る。非デシタビンCDA基質は、5−アザシチジン、ゲムシタビン、ara−C、テザシタビン、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、またはシトクロルであってよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、(a)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物と、さらに(b)ゲムシタビンとを含む。
【0094】
本発明の他の実施形態は、本明細書に記載の医薬組成物を投与する方法に関する。したがって、本発明は、対象に非デシタビンCDA基質を投与するステップと、対象に式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与するステップとを含む、対象を癌について治療する方法に関する。非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とは、対象に連続してまたは同時に投与することができる。連続投与は、(a)初めに非デシタビンCDA基質を投与し、続いて、(b)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与することを包含する。別の連続投与は、初めに式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を投与し、続いて、(b)非デシタビンCDA基質を投与することを包含する。同時投与は、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を含む医薬組成物を同時に投与すること、または実質的に同時に投与することを包含する。
【0095】
本明細書に記載されている通り、投与が、第1の化合物(例えば、式Iの化合物)および第2の化合物(例えば、非デシタビンCDA基質)の別々の投与(例えば、連続投与)を伴う場合、それらの化合物を、所望の治療効果が得られるような十分に近接した時間内で投与する。例えば、所望の治療効果をもたらし得る各投与の間の時間は、数分から、数時間、数日までの範囲であってよく、効力、溶解性、生物学的利用能、血漿半減期および動態プロファイルなどの各化合物の特性に基づき決定することができる。例えば、化合物は、任意の順序で、相互に24〜72時間以内に、または相互に24時間未満の任意の時間内で投与することができる。別法では、化合物を、任意の順序で相互に1週間以内に投与することができる。
【0096】
非デシタビンCDA基質と式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを連続投与する場合、それらを別々に製剤化して、任意の順序で提供することができる。しかし、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物を同時に投与する場合には、それらを別々に製剤化するか、同じ製剤中で組み合わせることができる。同じ製剤中で組み合わせる場合、非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを、同時に、または異なる時間に対象に放出されるように製剤化することができる。非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の両方を含む製剤の放出プロファイルには、
A)非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、続く、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能、
B)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能、続く、非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、
C)式I〜VIIIのいずれか1つの化合物の放出および生物学的利用能と同時の(または、実質的に同時の)非デシタビンCDA基質の放出および生物学的利用能、が包含される。
【0097】
したがって、それを必要とする対象に、非デシタビンCDA基質と、式I〜VIIIのいずれか1つの化合物とを含む組成物を投与することを含む、癌を治療する方法を本明細書において提供する。
【0098】
非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、結直腸癌、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、脳腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、転移または再発性上咽頭癌、転移充実性腫瘍、前立腺腺癌、尿路腫瘍、腎臓腫瘍、腎細胞癌、移行上皮癌、尿道癌、頭頚部腫瘍、切除不可能な頭頚部癌、頭頚部の扁平上皮細胞癌、悪性胸膜または腹膜中皮腫、子宮頸癌、子宮腫瘍、精巣腫瘍、胚細胞腫瘍、卵巣の顆粒膜細胞腫、生殖管腫瘍、白血病、成人T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキン病、リンパ滲出性疾患、マントル細胞リンパ腫、ヒト骨髄性およびリンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、血液学的癌、皮膚T細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、血液学的新生物、慢性リンパ球性白血病、肉腫、平滑筋肉腫、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、骨の骨肉腫、肝胆道系腫瘍、肝臓癌、胆管癌、胆嚢腫瘍、膵管腺癌、腹膜腫瘍、小腸腫瘍、胃腫瘍、子宮内膜様癌、中枢神経系腫瘍、小細胞肺癌、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫または膠腫であってよい。
【0099】
特定の実施形態では、非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、膵臓癌、卵巣癌、転移性乳癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、移行上皮癌、胆管癌、尿路上皮癌、胆嚢癌、ファロピウス管癌、原発腹膜癌、頭頚部の扁平上皮細胞癌、肝細胞癌、肝臓腫瘍、肺癌、子宮頸腫瘍または結腸癌である。
【0100】
さらに他の実施形態では、非デシタビンCDA基質がゲムシタビンである場合、治療される癌は、非小細胞肺癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または食道癌である。したがって、本明細書において、非小細胞肺癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌または食道癌を、それを必要とする対象において治療する方法を提供し、この方法は、対象に式VIIIの化合物およびゲムシタビンを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0101】
他の実施形態では、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含む。さらに他の実施形態では、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含み、その際、癌は、非小細胞肺癌、膵臓癌、卵巣癌および乳癌からなる群から選択される。
【0102】
他の実施形態では、尋常性乾癬、天然痘、肝硬変、血栓塞栓症、髄膜炎、唾液腺疾患、尿道疾患、リンパ滲出性疾患または好中球減少症を、それを必要とする対象において治療する方法を提供し、この方法は、対象に、ゲムシタビンおよびER−876437を含む組成物を投与することを含む。
【0103】
他の実施形態では、本発明は、式I〜VIIIによって示される化合物のいずれか1種と非デシタビンCDA基質のプロドラッグとの組合せに関する。そのような組合せは、非デシタビンCDA基質を含む組合せに関して本明細書に記載されたどの方法でも、製剤化または投与することができる。
【0104】
本発明の他の実施形態では、非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物は、癌について治療されている対象に典型的に投与される他の薬剤と連続して(任意の順序で)、またはそれと同時に投与することができる。そのような他の薬剤としては、限定はされないが、制吐薬、食欲を増す薬剤、他の細胞毒または化学療法薬および疼痛を軽減する薬剤が挙げられる。非デシタビンCDA基質および式I〜VIIIのいずれか1つの化合物は、そのような他の薬剤と一緒に、またはそれとは別に製剤化することができる。
【0105】
そのような他の薬剤との組合せは、抗癌活性における相乗的な増大をもたらし得るか、またはそのような増大は相加的であってよい。本明細書に記載の組成物は典型的には、より低い投薬量で各化合物を組成物中に包含し、そのことによって、化合物同士の不利な相互作用または類似の化合物で報告されているものなどの有害な副作用が回避される。さらに、通常量の各化合物を組み合わせて投与した場合、単独で使用された場合には各化合物に対して応答しないか、最小限しか応答しない対象において、より大きな効力を提供し得るであろう。
【0106】
例えば、Sigmoid−Emax式(Holford,N.H.G.およびScheiner,L.B.、Clin.Pharmacokinet.6巻:429〜453頁(1981年))、Loewe相加効果式(Loewe,S.およびMuischnek,H.、Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114巻:313〜326頁(1926年))および50%有効式(Chou,T.C.およびTalalay,P.、Adv.Enzyme Regul.22巻:27〜55頁(1984年))などの適切な方法を使用して、相乗効果を算出することができる。上記で言及された式をそれぞれ実験データに適用すると、薬物の組合せの効果を推定する際の補助となる対応するグラフを作成することができる。上記で言及された式に関連した対応するグラフは、それぞれ濃度効果曲線、アイソボログラム曲線および併用指数曲線である。
【0107】
ある種の実施形態では、本発明は、任意の本発明の組成物の医薬組成物を提供する。関連する実施形態では、本発明は、任意の本発明の組成物と、任意のこれらの組成物の薬学的に許容される担体または賦形剤とからなる医薬組成物を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、新規な化学成分としての組成物を包含する。
【0108】
一実施形態では、本発明は、パッケージ式癌治療を包含する。パッケージ式治療は、所定の使用のために有効量の本発明の組成物を使用するための指示書と共にパッケージングされた本発明の組成物を包含する。他の実施形態では、本発明は、対象において癌感染を治療するための医薬品を製造するための任意の本発明の組成物の使用を提供する。
【0109】
[合成手順]
本テキストの範囲内において、本発明の化合物の特に所望される最終生成物の成分ではない容易に除去可能な基は、「保護基」と名付けられている。そのような保護基による官能基の保護、保護基自体およびその開裂反応は例えば、Science of Synthesis:Houben−Weyl Methods of Molecular Transformation.Georg Thieme Verlag、Stuttgart、Germany.2005年、41627頁(URL:http://www.science−of−synthesis.com(電子版、48巻));J.F.W.McOmie、「Protective Groups in Organic Chemistry」、Plenum Press、London and New York 1973年、T.W.Greene and P.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、Wiley、New York 1999年、「The Peptides」;3巻(編者:E.Gross and J.Meienhofer)、Academic Press、London and New York 1981年、「Methoden der organischen Chemie(Methods of Organic Chemistry)」、Houben Weyl、第4版、Volume 15/I、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974年、H.−D.Jakubke and H.Jeschkeit、「Aminosauren,Peptide,Proteine」(Amino acids,Peptides,Proteins)」、Verlag Chemie、Weinheim、Deerfield Beach,and Basel 1982年およびJochen Lehmann、「Chemie der Kohlenhydrate:Monosaccharide und Derivate(Chemistry of Carbohydrates:Monosaccharides and Derivatives)」、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974年などの標準的な参照文献に記載されている。保護基の特徴は、それらを容易に(即ち、望ましくない副反応を起こすことなく)、例えば、加溶媒分解、還元、光分解によって、または別法では生理学的条件下で(例えば、酵素開裂によって)除去することができることである。
【0110】
本発明の化合物の酸付加塩は、最も適切には、薬学的に許容される酸から形成され、それらには例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸、および、有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸またはフマル酸と共に形成されたものが包含される。例えば本発明の化合物を単離する際に、実験室での使用のために、または、薬学的に許容される酸付加塩に後で変換するために、他の薬学的に許容されない塩、例えば、シュウ酸塩を使用することもできる。また、本発明の溶媒和物および水和物も、本発明の範囲内に包含される。
【0111】
所定の化合物塩から所望の化合物塩への変換は、所定の塩の水溶液を、塩基、例えば、炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液で処理して、遊離塩基を遊離させ、これを次いで、エーテルなどの適切な溶媒に抽出する標準的な技術を適用することによって達成される。次いで、遊離塩基を水性部分から分離し、乾燥させ、必要な酸で処理して、所望の塩が得られる。
【0112】
塩基の存在下、塩化メチレンまたはクロロホルムなどの不活性溶媒中で、遊離ヒドロキシまたはアミノ官能基を有する化合物を、所望のエステルの酸塩化物で処理することによって、本発明のある種の化合物のin vivoで加水分解可能なエステルまたはアミドを形成することができる。適切な塩基には、トリエチルアミンまたはピリジンが包含される。逆に、活性化、それに続く、適切な塩基の存在下での所望のアルコールでの処理を包含し得る標準的な条件を使用して、遊離カルボキシ基を有する本発明の化合物をエステル化することができる。
【0113】
本発明に従って得られる異性体の混合物は、公知の方法によって、個々の異性体に分離することができる。ジアステレオ異性体は、例えば、多相溶媒混合物への分配、再結晶化、または、例えばシリカゲル上での、もしくは例えば逆相カラム上での中圧液体クロマトグラフィーによるクロマトグラフィー分離によって分離することができる。ラセミ化合物は、例えば光学的に純粋な塩を形成する試薬で塩を形成し、例えば分別結晶化により、または光学的に活性なカラム材料でのクロマトグラフィーにより、得ることができたジアステレオ異性体の混合物を分離することによって、分離することができる。
【0114】
標準的な方法に従って、例えば、クロマトグラフィーによる方法、分散方法、(再)結晶化などを使用して、中間体および最終生成物を後処理または精製することができる。
【0115】
ゲムシタビンを調製する方法は、当技術分野で公知である。
【0116】
他の実施形態では、本発明は、イミダゾリジン−2−オン、テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン、1,3−ジアゼパン−2−オン、またはl,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(ER−878899)などの環式尿素化合物を、C−2−置換テトラヒドロフラン環とカップリングさせる方法に関し、この方法は、(i)反応溶媒中に1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オンを含む第1の溶液を、(ii)反応溶媒中にC−2−置換テトラヒドロフラン環を含む第2の溶液と還流条件下で混合することによって、反応混合物を形成することを含む。この実施形態では、第1の溶液を第2の溶液に加える際に、還流条件によって、反応混合物の体積を維持することができる。別法では、還流条件によって、反応混合物の体積が、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%より高く上昇することを防ぐことができる。この実施形態では、反応溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMA)またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの150℃を超える沸点を有する極性非プロトン性溶媒であってよい。この実施形態では、第2の溶液を150℃を超えるまで加熱し、第1の溶液をシリンジを介して、第2の溶液に加えることができる。この実施形態では、10時間未満、5時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満または30分未満におよぶ期間にわたって、第1の溶液を第2の溶液に加えることができる。この実施形態では、第2の溶液を150℃から250℃まで、175℃から225℃まで、または200℃から220℃まで加熱することができる。この実施形態では、C−2−置換テトラヒドロフラン環はC−3位に置換基を有してもよく、これには、C−3位の1個のハロゲン、C−3位の2個のハロゲンまたはC−3位に2個のフッ素が包含され得る。この実施形態では、テトラヒドロフラン環は、ER−878898であってよい。互いに排他的な値を除いて、このパラグラフに記載されている択一的特徴はいずれも、一緒に用いることができる。
【0117】
他の実施形態では、本発明は、ER−879381を、ER−878617を含む混合物から単離する方法に関し、この方法は、(i)混合物をクロマトグラフィー物質と接触させ、移動相としてトルエンおよびアセトニトリルを使用して、その物質上で混合物を分離することを含む。この実施形態では、クロマトグラフィー物質は、シリカゲルであってよい。この実施形態では、移動相は、7:1の比のトルエン:アセトニトリルであってよい。別法で、この実施形態では、トルエン:アセトニトリルは、7:1を超えるか、または7:1未満の比を有してよい。互いに排他的な値を除いて、このパラグラフに記載されている択一的特徴はいずれも、一緒に用いることができる。
【0118】
[剤形]
ある種の他の実施形態では、いずれもその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6,001,994号、米国特許第6,469,058号および米国特許第6,555,518号に記載されている製剤および方法を使用して、本発明の組成物(例えば、非デシタビンCDA基質と組み合わせた式Iの化合物、例えば、ゲムシタビンと組み合わせたER−876437)を、それを必要とする対象に投与することができる。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の化合物の医薬組成物(または組合せ)は、経口、直腸または非経口注射で投与するのに適した単位剤形であってよい。例えば、経口剤形で組成物を調製する際、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および液剤などの経口液体製剤の場合には水、グリコール、オイル、アルコールなど、または散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合にはデンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体といった、通常の医薬媒体はどれでも使用することができる。その投与の容易さのために、錠剤およびカプセルが、最も有利な経口投薬単位形態であり、この場合、固体医薬担体が使用される。非経口組成物では、担体は通常、無菌水を少なくとも大部分含むが、例えば、溶解性を補助するために、他の成分が包含されていてもよい。注射用液剤は例えば、食塩水、グルコース溶液、または食塩水およびグルコース溶液の混合物を含む担体を使用して調製される。注射用懸濁剤もまた、調製することができ、この場合、適切な液体担体、懸濁化剤などを使用することができる。経皮投与に適した組成物の場合には、担体は場合によって、透過増強剤または適切な湿潤剤を含み、これらを、その添加剤が皮膚に対して重大な有害作用の原因とはならない小さい割合の任意の性質の適切な添加剤と組み合わせることができる。添加剤は、皮膚への投与を容易にし得るか、または所望の組成物を調製するのに役立ち得る。これらの組成物は、様々な方法で、例えば、経皮パッチ剤として、スポットオン剤として、軟膏剤として投与することができる。
【0120】
本明細書に記載の医薬組成物を投薬単位形態に製剤化して、投与を容易にし、投薬量を均一化することが特に有利である。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、その際、各単位は、所望の治療効果をもたらすように算出された予め決定された量の有効成分を必要な医薬担体と共に含有する。そのような投薬単位形態の例は、錠剤(割線があるか、コーティングされた錠剤を包含)、カプセル剤、丸剤、散剤パケット、ウェハ剤、注射用液剤または懸濁剤、茶さじ量、食さじ量など、およびそれらを複数に分割したものである。
【0121】
一般に、第1または第2の化合物の治療的有効量は、0.0001mg/体重kgから0.001mg/体重kgまで、0.001mg/体重kgから10mg/体重kgまで、または0.02mg/体重kgから5mg/体重kgまでであろうと考えられる。一部の実施形態では、第1または第2の化合物の治療的有効量は、0.007mgから0.07mgまで、0.07mgから700mgまで、または1.4mgから350mgまでである。予防または治癒的治療の方法はまた、1日当たり1回から5回摂取する計画で組成物を投与することを包含し得る。
【0122】
一部の実施形態では、第1の化合物または第2の化合物の治療的有効量には、これらに限られないが、0.01mg/用量未満、または0.5mg/用量未満、または1mg/用量未満、または2mg/用量未満、または5mg/用量未満、または10mg/用量未満、または20mg/用量未満、または25mg/用量未満、または50mg/用量未満、または100mg/用量未満、または500mg/用量未満の量が包含される。当技術分野で一般に使用されている様々な基準か、または本明細書に記載されている基準に基づき、第1または第2の化合物を対象に投与する1日当たりの回数を決定することができる。
【0123】
湿潤剤、乳化剤、ならびに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、さらに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在してよい。
【0124】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤、およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート化剤が挙げられる。
【0125】
本発明の製剤には、経口、経鼻、局所、頬側、舌下、直腸、膣または非経口投与に適したものが包含される。製剤は簡便には、単位剤形であってよく、薬学の分野で公知の任意の方法によって調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は一般に、治療効果をもたらす組成物の量であるはずである。一般に、100パーセントのうち、この量は、有効成分約1パーセントから約99パーセントまで、好ましくは約5パーセントから約70パーセントまで、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントまでの範囲であろう。
【0126】
これらの製剤または組成物の調製方法は、本発明の組成物を担体および、場合によって、1種または複数の副成分と一緒にするステップを包含する。一般に、本発明の組成物と液体担体もしくは微細に分割された固体担体またはその両方とを均一かつ完全に一緒にし、次いで、必要な場合には、生成物を成形することによって、製剤を調製する。
【0127】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味のある基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体中の液剤または懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型液体乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤を使用)として、または口内洗剤などであってよく、これらはそれぞれ、予め決定された量の本発明の組成物を有効成分として含有する。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
【0128】
経口投与するための本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤など)では、有効成分を、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1種または複数の薬学的に許容される担体か、またはデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールまたはケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースまたはアラビアゴムなどの結合剤、グリセロールなどの湿潤剤、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム硫酸およびこれらの混合物などの滑沢剤、ならびに着色剤のいずれかと混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、医薬組成物はまた、緩衝剤を含むことができる。類似の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、さらに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。
【0129】
1種または複数の副成分を場合によっては用いて圧縮または成形することによって、錠剤を製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレートまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、適切な機械中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化組成物の混合物を成形することによって製造することができる。
【0130】
本発明の医薬組成物の錠剤ならびに糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの他の固体剤形は、場合によって、割溝を備えていてよいか、または腸溶コーティングおよび医薬製剤分野で公知の他のコーティングなどのコーティングおよび殻と共に調製されていてよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロファイルをもたらす様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームまたはマイクロスフェアを使用して、その中にある有効成分の遅延または制御放出をもたらすように製剤化することができる。これらは、例えば、細菌保定フィルターでの濾過によって、または使用直前に無菌水または別の無菌注射用媒体に溶かすことができる無菌固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。これらの組成物はまた場合によって、不透明化剤を含有してもよく、かつ胃腸管の特定の部分においてのみ、またはその部分において優先的に、場合によっては遅延して有効成分(複数可)を放出する組成物であってよい。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが包含される。有効成分はまた、適切な場合には、1種または複数の上記の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0131】
本発明の組成物を経口投与するための液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が包含される。有効成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの当技術分野で通常使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル(詳細には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにこれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含有してよい。
【0132】
不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤などのアジュバントを包含してよい。
【0133】
活性組成物に加えて、懸濁剤は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物などの懸濁化剤を含有してよい。
【0134】
直腸または膣投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、1種または複数の本発明の組成物を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含む1種または複数の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶けて、活性組成物を放出する坐剤として提供することができる。
【0135】
膣投与に適した本発明の製剤にはまた、適切であると当技術分野で知られているような担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤または噴霧剤が包含される。
【0136】
本発明の組成物の局所または経皮投与のための剤形には、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および吸入剤が包含される。活性組成物を無菌条件下で、薬学的に許容される担体と、かつ必要なこともある任意の保存剤、緩衝剤または噴射剤と混合することができる。
【0137】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の活性組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛またはこれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。
【0138】
散剤および噴霧剤は、本発明の組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有してよい。噴霧剤は加えて、クロロフルオロ炭化水素ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの通例の噴射剤を含有してよい。
【0139】
経皮パッチ剤は、身体への本発明の組成物の制御送達をもたらすという追加の利点を有する。そのような剤形は、組成物を適切な媒体に溶解または分散させることによって製造することができる。吸収促進剤もまた、皮膚を通過する組成物のフラックスを増大させるために使用することができる。そのようなフラックスの速度を、速度調節膜を用意することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に活性組成物を分散させることによって制御することができる。
【0140】
眼用製剤、眼軟膏剤、散剤、液剤などもまた、本発明の範囲内と企図されている。
【0141】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種または複数の本発明の組成物を、1種または複数の薬学的に許容される無菌等張性水性もしくは非水性液剤、分散剤、懸濁剤もしくは乳剤と一緒に、または使用の直前に無菌注射用液剤または分散剤に再構成することができる無菌散剤と一緒に含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、意図されている受容体の血液と製剤を等張性にする溶質または懸濁化剤または増粘剤を含有してよい。
【0142】
本発明の医薬組成物中で使用することができる適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、オリブ油などの植物油ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが包含される。例えば、レシチンなどのコーティング物質を使用することによって、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、かつ界面活性剤を使用することによって、適正な流動性を維持することができる。
【0143】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを包含させることによって、微生物の作用の予防を保証することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に包含させることが望ましいこともある。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を包含させることによって、注射用医薬形態の持続吸収を達成することができる。
【0144】
場合によっては、薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。水溶性が低い結晶質または非晶質物質の液体懸濁剤を使用することによって、これを達成することができる。したがって、薬物の吸収速度は、その溶解速度に左右され、さらにこのことは、結晶サイズおよび結晶形に左右され得る。別法では、非経口投与された薬物形態の遅延吸収を、オイルビヒクル中に薬物を溶解または懸濁させることによって達成する。
【0145】
ポリラクチド−ポリグリコライドなどの生分解性ポリマー中で本組成物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって、注射用デポー剤形態を製造する。薬物とポリマーとの比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が包含される。また、身体組織と相容性であるリポソームまたはマイクロ乳剤に薬物を捕捉することによっても、デポー注射用製剤は調製される。
【0146】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所または直腸で与えられる。これらは勿論、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、これらを、錠剤またはカプセル形態で、注射、吸入、目薬、軟膏剤、坐剤などによって、注射、点滴または吸入による投与によって、ローション剤または軟膏剤によって局所で、坐剤によって直腸で投与する。経口または静脈内投与が好ましい。
【0147】
「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、腸内および局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内および胸骨内注射および点滴を包含する。
【0148】
「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、患者の全身に入って、代謝および他の同様のプロセスを受けるような、中枢神経系に直接に投与する以外の化合物、薬物または他の物質の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0149】
これらの化合物は、ヒトおよび他の動物に治療のために、頬側および舌下を包含する経口、例えば噴霧剤による経鼻、直腸、膣内、非経口、槽内および散剤、軟膏剤または滴剤による局所を包含する任意の適切な投与経路によって投与することができる。
【0150】
選択された投与経路に関わらず、適切な水和物形態で使用することができる本発明の化合物または本発明の医薬組成物を、慣用の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化する。
【0151】
患者に対して毒性であることなく、所望の治療的応答を特定の患者、組成物および投与方法で達成するために有効な有効成分の量が得られるように、本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬量レベルは変動し得る。
【0152】
選択される投薬量レベルは、使用される本発明の特定の化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康および先行する医学的履歴ならびに医学分野で周知の同様の因子を包含する様々な因子に左右されるはずである。
【0153】
医師または獣医師であれば、必要な医薬組成物の有効量を決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物中で使用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増大させることができるであろう。
【0154】
一般に、本発明の化合物の適切な一日用量は、治療効果を生じさせるのに有効な最小用量である化合物の量であるはずである。そのような有効な用量は一般に、上記の因子に左右されるはずである。一般に、患者での本発明の化合物の静脈内および皮下用量は、指示されている鎮痛効果のために使用される場合、1日当たり体重1kg当たり約0.0001から約100mgまで、より好ましくは1日当たり体重1kg当たり約0.01から約50mgまで、さらにより好ましくは1日当たり体重1kg当たり約1.0から約100mgまでの範囲であろう。有効量は、ウイルス感染を治療する量である。
【0155】
所望の場合には、活性化合物の有効な一日用量を、一日を通して適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回以上の分割用量として単位剤形で投与することができる。
【0156】
本発明の化合物は単独で投与することも可能であるが、化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
【実施例】
【0157】
本発明の化合物を調製する一般的な方法および実験を下記に記載する。
【0158】
[実施例I:化学合成]
別段に述べられていない限り、実施例I.B.〜I.C.では、溶媒除去を、Buchi回転蒸発器を使用して実施した。分析クロマトグラフィーは、Hewlett Packardシリーズ1100HPLCを使用して実施し、分取クロマトグラフィーは、Biotage SP4装置またはWaters 4000装置を使用して、Chiralpak IAカラムを用いて、別段に示されていない限り中性条件下で実施した。質量スペクトルは、Waters Acquity UPLC/MSシステムを使用して記録した。残りの実施例については、同様か、または匹敵する装置を使用した。
【0159】
NMRスペクトルを、Varian400MHz分光計(実施例I.B.〜I.C.)を使用して、またはFluka400MHz分光計(実施例I.A.およびI.D.)を使用して記録した。
【0160】
<実施例I.A.:ER−876437>
≪I.A.1.:ER−878899(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)の調製≫
ER−878899を、下記のスキームIに概説されている通りに調製した。この調製は、J.Med.Chem.1981年、24巻、662〜666頁;J.Org.Chem.1980年、45巻、485〜489頁およびBull.Soc.Chim.Fr.1973年、198〜292頁に記載されており、これらは全て、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【化18】
【0161】
スキームIに従って製造されるER−878899の形成には、機械による撹拌が必要である。反応の間に形成する固体が原因で目詰まりする傾向のある針ではなく、ガラスピペット(大きな直径のもの)を使用して、硫化カルボニルを反応フラスコに気泡導入することができる。反応の終了時に、反応媒体中の不溶性物質を濾過したが、ER−878899は、フィルターケーキ中に存在し得る。
【0162】
≪I.A.2.:ER−876437の調製≫
I.A.1に従って調製されたER−878899を、下記の通りにスキームIIで使用した。
【化19】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ベンゾイル−5−ベンゾキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−879381)。上記スキームIIに示されている市販のメシレートER−878898(3.8g、8.3mmol)および尿素ER−878899(900mg、8.0mmol)をジメチルアセトアミド(DMA)(400ml)に加えた。加熱(170℃)すると、反応成分は可溶化した。窒素雰囲気下で、溶液を一晩(15h)加熱した。
【0163】
次いで、DMAを真空除去した。残渣をEtOAc(150ml)に再懸濁させ、次いで、水(2×75ml)で洗浄した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。物質をSiO2でクロマトグラフィー処理し、50%EtOAc/ヘキサンで溶離した。クロマトグラフィーの後に得られた物質は、非分離α/βアノマーであった。次いで、順相分取HPLC(50%EtOAc/ヘキサン定組成、10ml/分、保持時間=25.7分)、カラム:phenomenex luna 10μ Silica100A、250×21.20mm、屈折率検出器を使用して、アノマーを分離した。βアノマーER−879381が純度>90%で単離された(10%αアノマー、保持時間.24分)。1H NMR (CDCl3) δ 8.05 (m, 4H), 7.59 (m, 2H), 7.43 (m, 4H), 5.99 (m, 1H), 5.72 (m, 2H), 5.54 (m, 1H), 4.77 (dd, J = 12.1, 3.4 Hz, 1H), 4.65 (br s, 1H), 4.56 (dd, J = 12.4, 4.0 Hz, 1H), 4.38 (m, 1H), 3.80 (m, 4H).
【0164】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−876437)。ER−879381をMeOH中のNH3(7M)(40ml)に溶かした。溶液を一晩撹拌した。溶媒を除去し、RP HPLC(10%アセトニトリル/H2O、流速10ml/分、R1=23分)、カラム:phenomenex luna 5μ C18(2)100A、250×21.2mm、屈折率検出器によって、残渣を精製した。所望の化合物ER−876437が全体収率1.5%(62mg)で得られた。1H NMR (D2O) δ 5.86 (m, 2H), 5.69 (dd, J = 14.3 Hz, 6.2 Hz, 1H), 4.14 (m, 1H), 3. 86 (m 1H), 3.74 (m, 6H). 13C NMR (D2O) δ 164.5, 127.3, 126.2, 122.1 (dd, J = 252, 261 Hz, 1C), 85.9 (dd, J = 41, 22 Hz, 1C), 77.4 (d, J = 8 Hz, 1C), 69.5 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz, 1C), 58.9, 41.0, 40.7.
【0165】
分子式(C10H14N2O4F2+0.5H2O)の炭素、水素および窒素成分は、C、43.96;H、5.53;およびN、10.25であると算出された。元素分析によって、この物質がC、43.99;H、5.36;およびN、10.21を含有することが明らかになった。
【0166】
反応溶媒を変えることによって、ER−878899とメシレートとのカップリング反応の収率の僅かな改善を得ることができる。ジグリムを溶媒として使用する場合、15%の収率改善を観察することができる。
【0167】
<実施例I.B.:ER−876437>
≪I.B.1.:ER−878899の調製(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)≫
Feigenbaum,A.およびLehn,J.M.、Bull.Soc.Chim.Fr.、1973年、198〜202頁およびLiu,P.S.、Marquez,V.E.、Driscoll,J.S.およびFuller,R.W.、J.Med.Chem.、1981年、24巻、662〜666頁に記載された手順に従って、ER−878705(下記に示されている)を調製した。
【化20】
【0168】
機械撹拌機を備えた二つ口2Lフラスコ中で、ER−878705(79.7g、230mmol)のエタノール(470mL)中の白色の懸濁液に、ヒドラジン水和物(23.5mL、483mmol)を室温で加えた。生じた白色の懸濁液を50℃に30分間加熱すると、透明な薄黄色の溶液が得られた。白色の沈澱物が現れ始めたので、混合物を60℃に3時間加熱すると、撹拌が非常に困難になった。混合物を室温に冷却した後に、濃塩化水素溶液(40.3mL、483mmol)を加えると、混合物は、容易に撹拌されるようになった。30分間撹拌した後に、混合物を濾過し、水5×200mLで洗浄した。濾液を濃縮して、乾燥した固体にした。この乾燥した固体をエタノール200mLに懸濁し、1時間撹拌して、適切な懸濁液を製造した。懸濁液を濾過し、純エタノール3×100mLで洗浄した。ケーキ(白色の顆粒様結晶)を集め、乾燥させて、1,4−ジアミノ−2−ブテン二塩酸塩34.6(94%)gを得た。1H NMRは、生成物が少量の不純物としてフタルヒドラジドを5:1の比で含有することを示した。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.85 (ddd, J=1.6, 1.8および4.4 Hz, 2H), 3.69 (d, J=4.4, 4H).
【化21】
【0169】
2つ口2Lフラスコ中で、1,4−ジアミノ−2−ブテン二塩酸塩(22.7g、143mmol)のエタノール(1.2L)中の懸濁液に、1.0MのNaOH溶液(330mL、330mmol)を加えた。懸濁液にNaOHを加えたら、混合物が無色透明の溶液になった。溶液を70℃に加熱し、硫化カルボニルを加熱されている混合物に気泡導入した。その後、混合物を80℃に還流加熱した。3時間後に、気泡導入を止め、混合物をさらに1.5時間加熱し、室温に冷却し、1.0NのHCl(50mmol)を加えることによって中和した。混合物を濃縮して、乾燥した灰色の固体にした。固体をメタノール1L中に懸濁させ、2時間撹拌し、濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を体積約200mLまで濃縮し、0℃に冷却し、濾過し、冷メタノールで洗浄した。固体を回収し、乾燥させると、生成物5.05gが得られた。1H NMRは、それが非常に少量の不純物フタルヒドラジドを13:1の比で含有することを示した。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.91 (ddd, J=0.8, 1.2および1.6 Hz, 2H), 3.67 (d, J=4.0, 4H).母液を約30mLに濃縮し、−10℃に冷却し、濾過し、冷却したMeOH(−10℃)で洗浄した。固体を回収し、乾燥させると、1H NMRによって決定された通り、生成物7.10gが4:1の比でフタルヒドラジドの少量の汚染と共に得られた。
【0170】
≪I.B.2.:ER−878617の調製≫
【化22】
上記のスキームVに図示されている通り、ER−878898(1.33g、2.92mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(200.0mg、1.78mmol)の無水DMA(30mL)中の溶液を、DMAを徐々に留去しながら、180〜190℃(油浴温度)で加熱および撹拌した。このDMA蒸留の間に、シリンジポンプを用いて、DMA(50mL)中の追加の共沸1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(800.0mg、7.13mmol)を2時間にわたって加えた。全ての物質を添加した後に、反応を還流で30分間維持し、冷却した。反応混合物を真空濃縮し、残渣をクロマトグラフィーで精製すると、ER−878617(624.8mg、45%)が2種のエピマーの混合物として得られた。
【0171】
≪I.B.3.:ER−876437の調製≫
【化23】
上記スキームVIに図示されている通り、ER−878617(624.8mg、1.32mmol)の7Mのアンモニア/メタノール(53mL)中の溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、残渣を分取TLCで精製すると、粗製生成物(274.2mg、78%)が2種のエピマーの混合物として得られた。2種のエピマーの混合物を分取クロマトグラフィーでChiralpak IAカラム(Daicel Chemical Industries、Ltd.、Tokyo Japan)で分離すると、ER−876437(160.2mg)が得られた。
【0172】
<実施例I.C.:ER−876437>
≪I.C.1.:ER−879381の調製≫
ER−879381を、下記に示されている通りスキームVIIに従って製造した。ER−878899は、実施例I.B.1.に記載の通り調製した。
【化24】
【0173】
上記のスキームVIIに図示されている通り、ER−878898(8.0g、18mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(1.2g、10.7mmol)の無水DMA(100mL)中の溶液を加熱し、DMAを徐々に留去しながら、200〜220℃(油浴温度)で撹拌した。このDMA蒸留の間に、シリンジポンプを介して、DMA(350mL)中の追加の共沸1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(4.8g、42.9mmol)を2時間にわたって加えた。全ての物質を添加した後に、反応を還流で30分間維持し、冷却した。反応混合物を真空濃縮し、残渣を、同じ手順を使用して同じ規模で行われた別の実験からの残渣と合わせた。合わせた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:50〜100%AcOEt/ヘプタン)で精製すると、2種のエピマーの混合物(9.38g)が得られた。2種のエピマーの混合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:トルエン:アセトニトリル=7:1)でさらに分離すると、ER−879381(3.94g)が生じた。
【0174】
≪I.C.2.:ER−876437の調製≫
ER−876437を下記のスキームVIIIに示されている通りに調製した。
【化25】
上記のスキームVIIIに図示されている通り、ER−879381(3.8g、8.0mmol)の7Mのアンモニア/メタノール(100mL)中の溶液を周囲温度で17時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(移動相:50〜100%のAcOEt/ヘプタン)で精製すると、ER−876437(1.89g、収率89%)が得られた。
【0175】
<実施例I.D.:ER−878895>
≪I.D.1.:ER−878890の調製≫
【化26】
上記のスキームIXに図示されている通り、ER−878889(Stimac,A.およびKobe,J.、Carbohydr.Res.、2000年、329巻、317〜324頁に従って調製、4.3g、11.7mmol)および二炭酸ジ−tert−ブチル(5.4g、24.6mmol)のTHF(125mL)中の溶液を、Lindlar触媒(1g)の存在下、30psiで週末にわたって撹拌した。水素化生成物を含有する反応懸濁液をセライトで濾過し、濃縮した。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878890(2.8g)が得られた。AcOEt/ヘキサンからの再結晶化によって、ER−878890をさらに精製すると、融点106〜108℃の白色の針状物が得られた。
【0176】
≪I.D.2.:ER−878891の調製≫
【化27】
上記のスキームXに図示されている通り、撹拌されているER−878890(1.6g、3.48mmol)のTHF/DMF(100mL/30mL)中の溶液に、トルエン中0.5Mのカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)(8.5mL、4.25mmol)を約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で滴加し、続いて、臭化アリル(0.4mL、4.6mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌したが、その間、ドライアイス−アセトン浴を室温(約25℃)に徐々に加温した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。乾燥させた溶液を濾過し、蒸発させた。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878891(0.64g)が得られた。
【0177】
≪I.D.3.:ER−878892の調製≫
【化28】
上記スキームXIに図示されている通り、撹拌されているER−878891(0.1g、0.2mmol)のジクロロメタン(DCM)(1mL)溶液に窒素下で、トリフルオロ酢酸(TFA)(0.5mL)を室温で加えた。ER−878891は1時間で消失し、溶媒およびTFAは真空蒸発させた。DCM(2mL)に再溶解させた生じたオイルに、イソシアン酸アリル(0.2mL、2.2mmol)を室温で加えた。反応混合物を1時間後に蒸発させ、円形クロマトグラフィーによって精製すると、ER−878892(収率50%)が2種のアノマーの混合物(ベータ/アルファ 約3/1)として得られた。
【0178】
≪I.D.4.:ER−878893の調製≫
【化29】
【0179】
上記のスキームXIIに図示されている通り、撹拌されているER−878892(0.27g、0.56mmol)のTHF(10mL)中の溶液に窒素下で、トルエン中0.5MのKHMDS(1.5mL、0.75mmol)を約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で加え、続いて、塩化ベンゾイル(0.6mL、5.1mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌し、室温に徐々に加温した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を円形クロマトグラフィーで精製すると、ER−878893(0.13g、収率50%)がアノマーの混合物として得られた。
【0180】
≪I.D.5.:ER−878894の調製≫
【化30】
上記のスキームXIIIに図示されている通り、脱ガスされたER−878893(0.13g、0.22mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、Grubb第2世代触媒(約30mg、Sigma−Aldrichから入手可能、St.Louis、MO)を窒素下で加えた。この触媒は、環化複分解(RCM)をもたらす。反応混合物を40℃で1時間加熱し、続いて、溶媒を蒸発させた。AcOEt(20mL)に溶かした残渣に、Silicycle Si−トリアミンPd捕捉剤(Silicycle Inc.)を加え、1時間激しく撹拌した。反応混合物を濾過し、濃縮した。生じた淡黄色の粘稠性のオイルを円形クロマトグラフィーで精製し、より極性の低い化合物がER−878894(40mg)であると決定したが、これは、放置すると結晶化した。
【0181】
≪I.D.6.:ER−878895の調製≫
【化31】
上記スキームXIVに図示されている通り、TLCによって、全てのUV活性なスポットが消失するまで、ER−878894(65mg、0.14mmol)の0.1NのNaOH/MeOH(3mL)中の溶液を30分間撹拌した。溶媒を真空除去し、粗製の固体を水(2mL)に溶かした。溶液をHClで中和し、溶媒を真空除去した。残渣を逆相分取HPLCによって精製すると、ER−878895(12mg、35%)が得られた。
【0182】
表1は、本明細書に記載されている化合物に関する分析データを示している。
【0183】
【表1−1】
【0184】
【表1−2】
【0185】
[実施例II:シチジンデアミナーゼ(CDA)の阻害に関するアッセイ]
Cacciamani,T.ら、Arch.Biochem.Biophys.1991年、290巻、285〜92頁;Cohen R.ら、J.Biol.Chem.、1971年、246巻、7566〜8頁;およびVincenzetti S.ら、Protein Expr.Purif.1996年、8巻、247〜53頁に記載されているシチジンデアミナーゼ(CDA)酵素アッセイを使用して、本明細書に記載されている化合物の阻害活性(IC50)を決定した。このアッセイを使用し、CDAによって触媒される脱アミノ化反応が原因である基質(シチジン)の減少を追うことによって、これらの化合物のIC50を決定した。反応の280nmでの吸光度によって、時間の経過に伴う基質(シチジン)の消失をモニタリングした。
【0186】
アッセイ反応を、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、20mM、1mMのDTT含有)中、100μlの全体積、96ウェルプレートフォーマットで実施した。最終反応混合物は、シチジン(50μM)および精製ヒト組換えCDAを含有した。精製された酵素を希釈して、約2ミリ吸光度単位/分の吸光度変化が生じるようにした。時間の経過に伴う吸光度変化の基線測定を、基質(シチジン)を加える前に行った。FlexStation(登録商標)3(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、基質を添加した後に、吸光度の変化を1分毎に30分間読み取った。各化合物で、8種の異なる濃度(10μM、3.33μM、1.11μM、0.37μM、0.12μM、0.041μM、および0.014μM、および0.0047μM)を使用して、反応を阻害した。SoftMax(登録商標)Pro 5ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)によって、各反応における時間経過に伴う吸光度変化の傾きを算出および使用して、IC50値を得た。
【0187】
【表2−1】
【0188】
【表2−2】
【0189】
[実施例III:IVおよびPO投与後のマウスにおけるER−876437およびER−876400の薬物動態]
ER−876437およびER−876400を両方ともマウスに、10mg/kgで静脈内(IV)に尾静脈を介して、および10mg/kgで経口的に(POまたは経口で)胃管栄養法を介して投与した。全ての用量をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で調製し、5mL/kgの体積で投与した。1群当たりマウス5匹をこれらの研究では使用した。血液試料を各マウスの尾静脈から、予め決定された時点で連続して採取した。血漿のために処理する前に、各群中のマウス全てからの血液試料を一緒に貯留した。抜き出した後に、貯留した血液試料を30〜60分以内遠心し、血漿を回収し、アッセイのために凍結させた。調製および抽出の後に、試料をLC/MS/MSによってアッセイした。観察された濃度(ng/mL)を下記の表3に報告する。
【0190】
【表3】
【0191】
非コンパートメント分析を介して、Watson(登録商標)v.7.2を使用して、ER−876437およびER−876400の薬物動態(PK)パラメーターを算出した。生じたPKパラメーターを下記の表4および5に示す。
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
本研究の結果は、雄のBALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルは類似していることを示唆している。10mg/kgのIV後では、ER−876437およびER−876400の両方のPKは、中程度の分布(それぞれVss=1.64および3.20L/kg)、遅いクリアランス(それぞれCL=0.77および0.48L/hr/kg)および遅い排泄(それぞれt1/2=6.1時間および16.1時間)によって特徴付けられ得る。
【0195】
マウスへのER−876437およびER−876400のIV投与後の全曝露AUC0−∞は、それぞれ13071および20999ng・hr/mLであり、これはそれぞれ、1307および2100mL/gの用量−正規化曝露(AUC0−∞/D)をもたらした。10mg/kgのPO後に、ER−876437およびER−876400のCmaxはそれぞれ8597および7859ng/mLであり、それぞれ1.0および2.0hrのtmaxで観察された。10mg/kgのPO投与後のAUC0−tはER−876437およびER−876400でそれぞれ8579および13160ng・hr/mLであった。ER−876437のAUC0−∞は9499ng・hr/mLであり、t1/2は16.3hrであった。最終排泄相でのデータが不十分であったので、これらのパラメーターを、ER−876400では決定することができなかった。加えて、PO投与後のER−876437でのt1/2は、IV投与後のものよりもおおむね2.5倍高い。
【0196】
ER−876437およびER−876400の生物学的利用率(F%)は類似しており、それぞれ66.5%および69.9%であった。
【0197】
結論として、10mg/kgの単一のIVまたはPO用量後の雄のBALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルは、類似している。しかし、正常な給餌条件下では、マウスは、約5の高い胃内pHを有することに留意されたい。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするSimpson,R.J.ら、「Forms of soluble iron in mouse stomach and duodenal lumen:significance for mucosal update」、British Journal of Nutrition.、63巻:79〜89頁(1990年)を参照されたい。
【0198】
[実施例IV:37℃の人工胃液中でのER−876400およびER−876437の安定性]
この実施例では、室温(約25℃)および37℃で1.45のpHを有する人工胃液中でのER−876400およびER−876437の安定性を記載する。絶食条件下のヒトでは、胃内pHは、1.4から2.1の範囲であると報告されている。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするKararli、T.T.Comparison of the GI anatomy、physiology,and biochemistry of humans and commonly used laboratory animals.BioPharm & DrugDispos.16巻:351〜380頁、1995年を参照されたい。絶食しているサルの胃内pHは、1〜3の同様の範囲を有すると報告されている。引用することにより全体が本明細書の一部をなすものとするKondo,H.ら、Characteristics of the gastric pH profiles of unfed and fed cynomolgus monkeys as pharmaceutical product development subjects.BioPharm & DrugDispos.24巻:45〜51頁、2003年を参照されたい。
【0199】
<材料> 塩化ナトリウム200mgおよび37.52%のHClストック溶液1.87mLをHPLCグレードの水(または精製水)100mL中に混合することによって、人工胃液(SGF)を調製した。
【0200】
<試料調製> ER−876400またはER−876437を水中でそれぞれ希釈することによって、当初(t=0)試料を調製した。分析物(ER−876400またはER−876437)約2mgを37℃の人工胃液約1.0mLに溶かすことによって、他の全ての試料を調製した。
【0201】
Waters UPLC溶媒送達系をCorona CAD検出と共に使用して、HPLC分析を行った。HPLCカラム(Waters Atlantis HHS T3 2.1×100mm、1.8μm)を40℃に維持し、水98%およびアセトニトリル2%を含有する溶液で予め平衡させた。恒温オートサンプラーを37℃に維持した。水/MeCN移動相の流速は0.65mL/分であり、その際、試料注入(5μL)後に次の通りの勾配を伴った:
<勾配> 時間(分) 水% MeCN%
0〜2 98 2
2〜2.5 (水98%/MeCN2%)から
(水60%/MeCN40%)への直線勾配
2.5〜3.5 60 40
【0202】
したがって、これらのHPLC−SGF分解研究では、5μLアリコットをSGF/分析物溶液から様々な時点で取り出し、上記の特徴および条件を備えたHPLCカラムに負荷した。水/MeCN移動相を上記の流速および勾配でカラムに施与し、HPLCクロマトグラムを回収した。3.5分後に、カラムを、水98%/MeCN2%で1.5分間、再平衡させた。
【0203】
水中でのER−876400またはER−876437のHPLCクロマトグラムは、ER−876400またはER−876437に帰せられるピークの特定をもたらした。ER−876400またはER−876437を何ら伴わないSGFのHPLCトレースは、ブランク(またはバックグラウンド)クロマトグラムを提供し、これは、SGF関連ピークを特定し、かつそのピークと分析物のピークとを識別するために使用することができた。クロマトグラムを表6および7に特定されている時点で集め、ER−876400またはER−876437にそれぞれ帰せられる試料の対応するパーセンテージを各サンプリング時間について提供する。これらの結果をまた、図1および2にプロットとして図示する。
【0204】
【表6−1】
【0205】
【表6−2】
【0206】
【表7−1】
【0207】
【表7−2】
【0208】
【表7−3】
【0209】
<結論> 37℃の人工胃液中で、ER−876400は、30秒未満で50%分解されることが判明した一方で、ER−876437はおおむね4〜6時間の半減期を有する。
【0210】
[実施例V:生存マウスリンパ腫L1210モデルにおける非デシタビンCDA基質に対するER−876437の効果]
この研究を使用して、ER−876437がマウスのL1210生存モデルにおける非デシタビンCDA基質(またはそのプロドラッグ)の経口効力を増大させるかを決定することができる。
【0211】
<L1210細胞の調製> 次の通りに少なくとも3回マウスにおいて継代することによって、L1210腹水細胞を調製することができる。各CD2F1雌マウスにL1210腹水細胞約105を腹腔内(IP)注射することができる。1週間後に、マウスを屠殺(CO2で窒息)することができる。屠殺の後に、マウスを仰向けにし、その腹部表面をアルコールで拭き取ることで清浄し、腹膜腔へと小さく切開することができる。氷冷されている食塩水中2.1%のBSA2mlを腹膜腔に注射し、次いで、流体を抜き取り、18G 3ccシリンジを用いて、清浄な無菌管に移し、氷上に維持することができる。流体を1:10で、食塩水中2.1%のBSAで希釈し、Zap oglobin II溶解試薬1滴(Beckman Coulter、Inc.から入手可能)を希釈腹水1mlに加えることができる。希釈腹水(再び1:10希釈)を血球計数器でカウントし、1mL当たりの細胞数を算出することができる。L1210細胞約105を他のマウス継代のための後続の継代のために使用することができる。または、BSA溶液中のL1210腹水のストックを1×104細胞/0.1mlまで希釈して、研究用マウスにおいて使用することができる。
【0212】
<研究用マウスの調製> CD2F1 6〜7週齢の雌のマウスを表8に特定されているような群に無作為に分けることができる。投与を開始する1日前に、マウスを、L1210腹水の静脈内(IV)注射で調製することができる(上記の通り調製)。尾静脈を介し、27G針を用いて、マウスに細胞液0.1mlを注射することができる。
【0213】
非デシタビンCDA基質を投与する30分前に、マウスにビヒクルまたはER−876437を経口的に(PO、即ち、経口で)投与することができる。ER−876437をPBS中1mg/mlで調製し、次いで、より低い用量ではPBS中0.1mg/ml、0.01mg/mlおよび0.001mg/mlに希釈することができる。
【0214】
非デシタビンCDA基質は、PBS中1mg/mlのストックで調製し、適切に希釈して0.01mg/ml投与溶液にすることができる。各投与日の開始時にER−876437は調製し、4℃で貯蔵することができる。非デシタビンCDA基質は投与の直前に1日2回新たに調製することができる。全ての溶液を投与の間、氷上に置いておくことができる。マウスに連続して4日間、1日2回(8時間空けて)投与することができる(腹腔内(IP)または経口的に(経口で、PO))。提案されている最終投与スキームおよび提案されている全非デシタビンCDA基質(NDCS)およびER−876437用量を表8に概説する。提案されている投与スキームでは、マウスに経口、腹腔内または静脈内で投与することができる(ビヒクル、ER−876437またはNDCS)。
【0215】
【表8−1】
【0216】
【表8−2】
【0217】
<生存および解剖> 研究期間の間(30日)、マウスを生存について観察し、毎日秤量することができる。死亡したマウスを解剖し、臓器内の腫瘍の存在について観察することができる。腫瘍による死は、Covey JMおよびZaharko DS、Eur J Cancer Clin Oncol、21巻、109〜117頁、1985年に従って、1.6gを超える肝臓重量および150mgを超える脾臓重量によって決定することができる。
【0218】
非デシタビンCDA基質とのER−876437の同時投与が、非デシタビンCDA基質のみの投与と比較して、マウスにおけるL1210生存モデルにおいて生存を増大させるかに関する結論は、次いで、生じたデータから決定することができる。
【0219】
[実施例VI:A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルにおけるER−876437およびゲムシタビンのIn vivo効力研究]
この研究によって、A2780ヒト卵巣癌異種移植片モデルでの経口ゲムシタビン治療に対するER−876437の増大活性を評価した。ゲムシタビンの30分前にER−876437を投与したが、その際、両方の化合物を経口投与した。動物に月曜から金曜までの毎日、2週間にわたって投与した。
【0220】
<材料および方法>
ER−876437およびゲムシタビン−HCl(Gemzar(R)注射用、Eli Lilly)を0.5%メチルセルロース(Sigma)中で処方した。雌のヌードマウス(NU/NU、株コード088、6週齢、Charles River Laboratory)に、マウス1匹当たりA2780癌細胞5×106を皮下移植した。腫瘍が約150mm3になった13日目に、表9に記載されている通りに治療を開始した。
【0221】
【表9】
【0222】
腫瘍体積および退縮を時間経過に伴って追った。腫瘍体積を(長さ×幅2)/2で算出した。完全な退縮は、少なくとも3回連続する測定で測定不可能な腫瘍と定義される一方で、部分退縮は、3回連続する測定で元の腫瘍体積の50%以下までの腫瘍退縮と定義されたことに留意されたい。腫瘍増殖遅延(TGD)は、対照群および治療群で342.14mm3まで増殖するまでの中央日数と定義された。治療初日(13日目)での平均腫瘍体積は、171.07mm3である。したがって、当初腫瘍サイズの2倍の大きさが、342.14mm3である。
【0223】
<結果>
ER−876437単独(群3)は、腫瘍増殖に対して全く効果を有さなかった(図3)。1mg/kgをPOで、qd×5で2週間の計画でのゲムシタビンの経口投与(群2)は、治療の第2週目の後に限られた効力を示したが(図3)、ER−876437単独(群3)は、治療期間全体を通して何ら効力を示さなかった(図3)。腫瘍の2倍化時間を腫瘍増殖遅延(TGD)を定義するために使用すると、ゲムシタビン単独(群2)およびER−876437単独(群3)の両方は、ビヒクル(群1)と比較して僅か2日の遅延を示した(表10)。群1、2および3の間に統計的に重大な差違はなく(Mann−Whitney検定、GraphPad Prism 5、La Jolla、CA)、41日目に、退縮または腫瘍消失を示した生存体はない。
【0224】
対照的に、ゲムシタビンの約30分前にER−876437を投与すると(群4)、マウス10匹のうち1匹(10%)が完全な退縮を示し、研究停止日(41日目)に腫瘍消失を示した生存体であった。マウス10匹のうちの3匹(30%)もまた、部分的な腫瘍退縮を示した。これらの結果は、ビヒクル(群1)と比較して、またはゲムシタビン単独(群2)と比較して、ER−876437/ゲムシタビンの組合せ(群4)において、治療的効力が観察されたことを示している(図3)。この組合せ(群4)をゲムシタビン単独(群2)と比較すると、TGDにおいて著しい差違が観察される(P=0.0001、Mann−Whitney検定、GraphPad Prism 5、La Jolla、CA、表10)。
【0225】
【表10】
【0226】
<結論> ER−876437の前処理は、この研究において経口ゲムシタビンの治療活性の著しい増大を示した。経口ゲムシタビン単独と比較した場合の組合せ群における著しい腫瘍増殖遅延が、Mann−Whitney統計的検定(GraphPad Prism 5、La Jolla、CA)で確認された。
【0227】
[実施例VII:37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのゲムシタビン半減期に対するER−876437の効果]
【0228】
この実施例では、37℃のトリス−HCl緩衝液中、シチジンデアミナーゼ(CDA)の存在下でのゲムシタビンの半減期(T1/2)に対するER−876437の効果を記載する。
【0229】
<材料および装置>
この実施例は、Phenomenex Luna C18(2)HPLCカラム(100Å 4.6×250mm 5μm)を使用した。溶媒送達系は、HPLC四成分ポンプ、低圧混合を使用した。可変ループ、0.1から100μL範囲および温度制御恒温器を有するオートサンプラーを使用した。UV検出器は、二波長検出器、ダイオードアレー検出器、可変波長検出器または同等物を使用することができ、クロマトグラフィーソフトウェア(例えば、HPLCまたは同等物でWaters Empower 2 Build 2154、Agilent ChemStation ソフトウェアバージョンA.09.03以上)を使用して記録することができる。
【0230】
使用された化学てんびんは、±0.1mgを秤量することができた。脱ガスされたHPLCグレードの水および脱ガスされたHPLCグレードのアセトニトリルを移動相のための溶媒として使用した。
【0231】
下記の溶液を作るために使用される希釈溶液は、トリス−HCl(37℃、ph7.4、Boston BioProducts)であった。希釈溶液はまた、UVスペクトルのためのブランクとしても役だった。
【0232】
<ゲムシタビン標準対照> ゲムシタビン2.6mgを10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.2mMのゲムシタビン対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ゲムシタビンストック溶液としてラベルを貼り付けた。ゲムシタビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0233】
<ER−876437標準対照> 5.2mgのER−876437を10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.4mMのER−876437対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ER−876437ストック溶液としてラベルを貼り付けた。ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0234】
<ゲムシタビンとCDA> ゲムシタビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2〜3mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0235】
<ゲムシタビンとCDAおよびER−876437> ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移した。ゲムシタビンストック溶液1.0mLを同じフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0236】
<HPLCパラメーター> 表11に示されているパラメーターを使用して、上記溶液をHPLCカラムに流した。
【0237】
【表11】
【0238】
ゲムシタビンでの保持時間は、約8分であることが判明し、ER−876437の保持時間は、約21.8分であることが判明した。
【0239】
<結果および検討>
【0240】
【表12】
【0241】
37℃のTris−HCl緩衝液中、CDAの存在および不在下、ER−876437を伴うか、または伴わない場合のゲムシタビンのレベルを、UV検出を使用するHPLC分析によって測定した。実験試料におけるゲムシタビンおよびER−876437ピークの面積を測定し、それぞれゲムシタビンおよびER−876437の0時点注入の面積と比較した。結果を、対照に対する残留パーセントとして報告した。
【0242】
データを205nmUVで集めたが、それというのも、ゲムシタビンおよびER−876437はこのUV最大を共有しているためである。図4を参照されたい。結果を35分毎に12時間獲得し、その後は間欠的に、分析方法の長さによって獲得した。規定の時点で重ねた痕跡を示すHPLCクロマトグラムを、図5および図6に示す。
【0243】
これらの図中のHPLCクロマトグラムは、一定の相加的相殺を明確に示している。下部痕跡は時点=0.00分で出発して示されているが、ピークが重なり合わないように、連続クロマトグラムはそれぞれ、前のクロマトグラムの右方へ(一定量の時間で)任意に移動させてある。クロマトグラム痕跡の出発を、時間が0.00分に等しい垂直軸まで(左側へ)戻すことによって、これらのクロマトグラムに示されているピークに関する実際の時間が分かる。同様に、mAU=0.00である位置までクロマトグラムの基線を移動させることによって、どのピークでも実際のUV吸収が分かる。
【0244】
CDAの不在下では、ゲムシタビン濃度の低下は10時間後に観察されなかったが、CDAの存在下では、ゲムシタビン濃度は、1時間以内にほぼ0%対照まで低下し、T1/2は<35分であることが判明した。インキュベーション混合物にER−876437を加えると、7時間後に95%を超えるゲムシタビンが残留する反応の阻害が生じた。同様に、ER−876437のレベルは、CDAと共にゲムシタビンに曝露した7時間の後に、影響を受けなかった。全ての結果の概要を図7に示す。
【0245】
結論として、37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのゲムシタビンのT1/2は、<35分であることが判明した。ER−876437はほぼ完全に、この作用を阻害した。37℃のトリス−HCl緩衝液中にゲムシタビン単独では、観察の終了時に何ら分解は示されなかった。
【0246】
[実施例VIII:37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのシタラビンの半減期に対するER−876437の効果]
この実施例では、37℃のトリス−HCl緩衝液中、シチジンデアミナーゼ(CDA)の存在下でのシタラビン(Sigma)の半減期(T1/2)に対するER−876437の効果を記載する。
【0247】
下記に特定されている例外はあるが、材料および装置は、実施例VIIに関して上記されたものと同じである。
【0248】
下記の溶液を作るために使用される希釈溶液は、トリス−HCl(37℃、ph7.4、Boston BioProducts)であった。希釈溶液はまた、UVスペクトルのためのブランクとしても役だった。
【0249】
<シタラビン標準対照> シタラビン2.4mgを10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.2mMのシタラビン対照を調製した。フラスコを37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、シタラビンストック溶液としてラベルを貼り付けた。シタラビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0250】
<ER−876437標準対照> 5.2mgのER−876437を10mLメスフラスコ中で秤量することによって、0.4mMのER−876437対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵されたトリス−HCl緩衝液で容積まで希釈し、反転によって混合した。溶液に、ER−876437ストック溶液としてラベルを貼り付けた。ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈し、反転によって混合した。
【0251】
<シタラビンとCDA> シタラビンストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2〜3mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移し、希釈溶液で容積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0252】
<シタラビンとCDAおよびER−876437> ER−876437ストック溶液1.0mLを5mLメスフラスコに移した。希釈溶液約2mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移した。シタラビンストック溶液1.0mLを同じフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製直後にHPLCに注入した。
【0253】
上記の標準および試料を、実施例VIIの表11に示されているパラメーターを使用してHPLCカラムに流したが、但し、UVスペクトルは205および275nmで集めた。シタラビンでの保持時間は、約4.4分であることが判明し、ER−876437の保持時間は、約21.8分であることが判明した。
【0254】
<結果および検討>
【0255】
【表13】
【0256】
37℃のTris−HCl緩衝液中、CDAの存在および不在下、ER−876437を伴うか、または伴わない場合のシタラビンのレベルを、UV検出を使用するHPLC分析によって測定した。安定試料中でのシタラビンおよびER−876437ピークの面積を測定し、それぞれシタラビンおよびER−876437標準対照の面積と比較した。結果を、対照に対する残留パーセントとして報告した。
【0257】
ER−876437およびシタラビンは異なるUV最大を有するので、HPLCクロマトグラムは205nmおよび275nmUVで集めた。シタラビンの結果は、275nmUVを使用して算出し、ER−876437の結果は、205nmUVを使用して算出した。ER−876437およびシタラビンUVスペクトルについては図8を参照されたい。
【0258】
結果を35分毎に12時間獲得し、その後は間欠的に、分析方法の長さによって獲得した。規定の時点で重ねた痕跡を示すHPLCクロマトグラムを、図9および図10に示す。
【0259】
これらの図中のHPLCクロマトグラムは、一定の相加的相殺を明確に示している。下部痕跡は時点=0.00分で出発して示されているが、ピークが重なり合わないように、連続クロマトグラムはそれぞれ、前のクロマトグラムの右方へ(一定量の時間で)任意に移動させてある。クロマトグラム痕跡の出発を、時間が0.00分に等しい垂直軸まで(左側へ)戻すことによって、これらのクロマトグラムに示されているピークに関する実際の時間が分かる。同様に、mAU=0.00である位置までクロマトグラムの基線を移動させることによって、どのピークでも実際のUV吸収が分かる。
【0260】
CDAの不在下では、シタラビン濃度の低下は55時間後に観察されなかったが、CDAの存在下では、シタラビン濃度は、35分以内にほぼ0%対照まで低下し、T1/2は<35分であることが判明した。インキュベーション混合物にER−876437を加えると、52時間後に95%を超えるシタラビンが残留する反応の阻害が生じた。同様に、ER−876437のレベルは、CDAと共にシタラビンに曝露した52時間の後に、影響を受けなかった。全ての結果の概要を図11および図12に示す。
【0261】
結論として、37℃のトリス−HCl緩衝液中、CDAの存在下でのシタラビンのT1/2は、<35分であることが判明した。ER−876437はほぼ完全に、この作用を阻害した。37℃のトリス−HCl緩衝液中にシタラビン単独では、観察の終了時(52時間)に何ら分解は示されなかった。
【0262】
本明細書に記載されている全ての刊行物または特許出願は、その全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるそのC1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステル。
【請求項2】
R1およびR2がそれぞれFである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項3】
式IIの化合物
【化2】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項4】
式VIIIの化合物
【化3】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステル。
【請求項5】
式VIIIの化合物。
【化4】
【請求項6】
式IIIの化合物
【化5】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項7】
式IVの化合物
【化6】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項8】
式Vの化合物
【化7】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項7に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項9】
式VIの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項10】
式VIIの化合物
【化9】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項11】
式Iの化合物
【化10】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
R1およびR2がそれぞれFである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物が、式IIの化合物
【化11】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式VIIIの化合物
【化12】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
式VIIIの化合物
【化13】
と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記化合物が、式IIIの化合物
【化14】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物が、式IVの化合物
【化15】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物が、式Vの化合物
【化16】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記化合物が、式VIの化合物
【化17】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記化合物が、式VIIの化合物
【化18】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるそのC1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステル。
【請求項2】
R1およびR2がそれぞれFである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項3】
式IIの化合物
【化2】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項4】
式VIIIの化合物
【化3】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステル。
【請求項5】
式VIIIの化合物。
【化4】
【請求項6】
式IIIの化合物
【化5】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項2に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項7】
式IVの化合物
【化6】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項8】
式Vの化合物
【化7】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項7に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項9】
式VIの化合物
【化8】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項10】
式VIIの化合物
【化9】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容されるそのアルキルエステルもしくはアルケニルエステル。
【請求項11】
式Iの化合物
【化10】
[式中、
R1およびR2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
-----は共有結合であるか、または存在せず、-----が共有結合である場合、R4は存在しない]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
R1およびR2がそれぞれFである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物が、式IIの化合物
【化11】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式VIIIの化合物
【化12】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
式VIIIの化合物
【化13】
と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記化合物が、式IIIの化合物
【化14】
[式中、
R3およびR4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される]
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物が、式IVの化合物
【化15】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物が、式Vの化合物
【化16】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記化合物が、式VIの化合物
【化17】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記化合物が、式VIIの化合物
【化18】
または薬学的に許容されるその塩、C1〜6アルキルエステルもしくはC2〜6アルケニルエステルである、請求項19に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−522840(P2012−522840A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504771(P2012−504771)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/030073
【国際公開番号】WO2010/118006
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509282066)エーザイ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/030073
【国際公開番号】WO2010/118006
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509282066)エーザイ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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