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癌幹細胞の同定および単離方法
説明

癌幹細胞の同定および単離方法

【課題】 癌幹細胞を標的とする治療法および診断法を確立するため、癌細胞または癌組織中の癌幹細胞の同定および癌細胞または癌組織からの癌幹細胞の分離方法が求められている。
【解決手段】 本発明により、癌幹細胞含む癌細胞または癌組織を調製し、該癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞を検出し、該ヌクレオステミンを発現する細胞を癌幹細胞と同定することからなる癌幹細胞の同定方法、および該方法により同定された癌幹細胞を癌細胞または癌組織から分離することからなる癌幹細胞の分離方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌幹細胞の同定および分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、近年の日本における第1位の死因であり、毎年30,0000人を超える死亡の原因となっている。癌の検出および治療は進歩しているにもかかわらず、癌の死亡率は依然として高い。癌の分子的な解析や理解が顕著に進展しているにもかかわらず、それがいまだに効果的な治療法の開発に結びついていない。
外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法および免疫療法等の既存治療法は高い効果を示す一方で、治療耐性および転移性の癌細胞の出現によりその効果は限定されている。このような治療耐性癌および転移性癌を治療するための標的を特定するための、新たなアプローチが必要とされている。
【0003】
種々の癌において、癌を構成する癌細胞に不均一性が存在していることが知られていた(非特許文献1)が、癌は単一の細胞を起源とするものと考えられてきた(非特許文献2,3)。軟寒天培地におけるコロニー形成能および脾臓におけるコロニー形成能を指標とするアッセイにより、コロニー形成能を有する細胞は、細胞集団の中に微量にしか存在しないことが示された(非特許文献4,5)。一方、少数の細胞がin vivoへの移植により造腫瘍活性を有することが示された(非特許文献6、7)。これらの結果より、癌細胞集団の中で、大多数の癌細胞は腫瘍を形成する能力がなく、微量しか存在しない一部の癌細胞集団のみが腫瘍形成能力を有することが示された。このことを説明するモデルとして二つのモデルすなわち、確率論的モデル(stochastic model)および階層モデル(hierarchical model)が提唱された(非特許文献8)。確率論的モデルは、腫瘍内の癌細胞は全て造腫瘍能を有するが、低頻度かつ非同期的に一部の細胞でこのような能力が活性化されるとするものである。一方、階層モデルは、腫瘍内の極微量の細胞集団のみが強い増殖能力と高い造腫瘍能力を示し、さらに多様な子孫細胞を生み出して階層構造を形成するとするものである。
【0004】
階層モデルは、癌幹細胞の存在を想定するモデルと合致しており、最近、このような仮説を支持する多くの知見が報告されている。即ち、細胞表面マーカーを検出するための多様な抗体の利用が可能となり、細胞を解析、分離するためのフローサイトメーターの開発、さらには、分離した癌細胞を移植し解析するのに適した非肥満糖尿病/複合免疫不全(NOD/SCID)マウスなどの免疫不全マウスの開発と相俟って、不均一な癌細胞集団に極微量しか存在しない癌幹細胞の同定、分離が可能となってきた。例えば、ヒト急性骨髄性白血病細胞において、癌幹細胞は、正常造血幹細胞と同様、極微量しか存在しないCD34陽性/CD38陰性の細胞集団に濃縮されていた。CD34陽性/CD38陰性の細胞集団は、NOD/SCIDマウスにおいて造腫瘍活性を示し、さらに2次移植も可能であった(非特許文献9)。但し、正常造血幹細胞とは異なり、c-kitの発現は消失していた(非特許文献10)。また、ヒト多発性骨髄腫においても、NOD/SCIDマウスにおいて造腫瘍能を有する癌幹細胞は、少数のCD138陰性画分に濃縮されていることが示された(非特許文献11)。さらに、血液系の癌細胞のみならず、ある種の固形癌においても癌幹細胞の存在が報告されてきた。例えば、ヒト乳癌において、微量に存在するCD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)の細胞画分、およびCD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)かつ上皮特異的抗原(EPA、epithelial-specific antigen)陽性の細胞画分に癌幹細胞が濃縮されていることが示された(非特許文献12)。ヒトのグリア芽腫、髄芽(細胞)腫においては、少数のCD133陽性細胞画分に癌幹細胞が濃縮され、NOD/SCIDマウスにおいて造腫瘍能を示すことが報告されている(非特許文献13)。更に、ヒトの前立腺癌においては、非常に少ない細胞集団であるCD44陽性/α2β1高発現/CD133陽性細胞画分に癌幹細胞が存在すると想定されている(非特許文献14)。
【0005】
このような細胞表面マーカーを用いた癌幹細胞の濃縮法の他に、幹細胞がさまざまなATP-binding cassette (ABC)トランスポーターを発現し蛍光色素Hoechst33342を排出する能力が高い性質を有すること(非特許文献15)を利用した癌幹細胞の濃縮方法が開発された。即ち、セルソーター、あるいはフローサイトメーターを用いて、サイドポピュレーション(side population、SP)画分を分取し、癌細胞株から癌幹細胞様の性質を有する細胞が濃縮可能であることが報告されている(非特許文献16,17)。
【0006】
また、神経幹細胞の培養・濃縮方法として確立された浮遊細胞塊(sphere)培養法(非特許文献18)を用いて、乳癌幹細胞、グリア芽腫および髄芽腫癌幹細胞、メラノーマ癌幹細胞等についても、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)等を添加した無血清培地で、浮遊細胞塊を形成し、維持・濃縮されることが報告されているが、癌幹細胞の性質を有する細胞の割合は低い(非特許文献13,16,19,20)。
【0007】
上記のような報告から、癌幹細胞は以下(1)〜(3)により特徴づけられている(非特許文献21,22)。
(1)癌幹細胞は、自己複製能を保有する。自己複製とは、細胞増殖とは同義ではない。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つ、あるいは、両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同等の能力および分化程度を保持している細胞を産出できる能力を示す。
(2)癌幹細胞は、腫瘍を構成する複数種の癌細胞へ分化できる。癌幹細胞から分化した複数種の癌細胞は、正常幹細胞と同様に、細胞系譜上、癌幹細胞を起点とする階層性を有する。癌幹細胞より、段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する腫瘍が形成される。
(3)癌幹細胞は、高い細胞増殖活性を保有する。癌幹細胞は、対照分裂(自己複製)および非対称分裂(分化)を繰り返すことで癌細胞集団の過剰な増殖を可能にする。
【0008】
ヌクレオステミンは、神経幹細胞、造血幹細胞を含む細胞集団(c-kit陽性/Lineage陰性)、胚性幹(ES)細胞、数種のヒト癌細胞株において発現する新しい核小体タンパク質として報告された(特許文献1、非特許文献23)。
また、ヌクレオステミンは、その発現様式から、正常組織由来の幹細胞の幹細胞性(Stemness)の維持に必要であると考えられているが、ヌクレオステミンは核小体に局在しているため、細胞内で発現するヌクレオステミンを検出するためには細胞固定が必要となり、ヌクレオステミンを発現する細胞を生きた状態で分離することは出来ない。また、ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターやエンハンサーなどの発現調節領域についてはこれまで報告が全くなく、該発現調節領域を用いたレポーター系による癌幹細胞の同定および分離については報告されていない。
【0009】
幹細胞および癌細胞で発現する遺伝子の一部は癌幹細胞では発現が減少していることは既に報告されている(特許文献2)。例えば、ANKT, CKAP2, DLG7, FANCGなどの遺伝子は癌幹細胞では発現が減少している。しかしながら、ヌクレオステミンの癌幹細胞での発現、およびヌクレオステミンのプロモーターを用いたレポーターによる癌幹細胞の同定、分離、濃縮および利用法に関する報告はない。
【特許文献1】WO2004/031731
【特許文献2】WO2005/005601
【非特許文献1】Cancer Res, 44, 2259-2265 (1984)
【非特許文献2】Proc Natl Acad Sci USA, 58, 1468-1471 (1967)
【非特許文献3】Blood Cells, 15, 261-282 (1979)
【非特許文献4】Science 197, 461-463 (1977)
【非特許文献5】Nature, 199, 79-80 (1963)
【非特許文献6】Cancer, 14, 971-978 (1961)
【非特許文献7】Nature, 367, 645-648 (1994)
【非特許文献8】Nature, 414, 105-111 (2001)
【非特許文献9】Nature Med, 3, 730-737 (1997)
【非特許文献10】Exp Hematol, 28, 660-671 (2000)
【非特許文献11】Blood, 103, 2332-2336 (2004)
【非特許文献12】Proc Natl Acad Sci USA, 100, 3983-3988 (2003)
【非特許文献13】Nature, 432, 396-401 (2004)
【非特許文献14】Cancer Res, 65, 10946-10951 (2005)
【非特許文献15】J Exp Med, 183, 1797-1806 (1996)
【非特許文献16】Proc Natl Acad Sci USA, 101, 3781-3786 (2004)
【非特許文献17】Cancer Res, 65, 6207-6219 (2005)
【非特許文献18】Science, 255, 1707-1710 (1992)
【非特許文献19】Oncogene, 23, 9392-9400 (2004)
【非特許文献20】Cancer Res, 65, 9328-9337 (2005)
【非特許文献21】Cancer Res, 66, 9339-9344 (2006)
【非特許文献22】N Eng J Med, 355, 1253-1261 (2006)
【非特許文献23】Genes & Development, 16, 2991-3003 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
癌の治療に関しては多くの治療法が開発されてきたが、治療後の再発や転移が問題となっており、根治療法が求められている。血液癌のみならず固形癌にも癌幹細胞が存在するという知見が報告されてきたことから、癌幹細胞を標的とする治療法および診断法が確立されれば、多くの癌種について、癌患者の延命率やQuality of lifeの大きな改善が期待される。癌幹細胞は不均一な癌細胞集団に非常に少ない割合でしか含まれていないため、癌幹細胞を標的とする治療法および診断法を確立するためには、実用的な癌幹細胞の分離・同定技術が不可欠である。癌幹細胞を同定、分離または濃縮する方法として、多様な癌種および癌細胞株に有効な方法はなく、それらに広く適応可能な方法が求められている。
【0011】
すなわち、本発明は、癌幹細胞の同定および分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の(1)〜(23)に関する。
(1)癌幹細胞を含む癌細胞または癌組織を調整し、該癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞を検出し、該ヌクレオステミンを発現する細胞を癌幹細胞と同定することからなる癌幹細胞の同定方法。
(2) 癌幹細胞を含む癌細胞または癌組織を調整し、該癌幹細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞を検出し、該ヌクレオステミンを発現する細胞を該癌細胞または癌組織から分離することからなる癌幹細胞の分離方法。
(3)ヌクレオステミンが、配列番号4または5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(1)または(2)記載の方法。
(4) ヌクレオステミンが、配列番号6または7で表される塩基配列にコードされるポリペプチドからなる上記(1)または(2)記載の方法。
(5) ヌクレオステミンを検出する方法が、細胞中の該ヌクレオステミンのメッセンジャーRNAを検出することを特徴とする上記(1)〜(4)記載の方法。
(6) ヌクレオステミンのメッセンジャーRNAを検出する方法が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションを用いることを特徴とする上記(5)記載の方法。
(7) ヌクレオステミンを検出する方法が、細胞中の該ヌクレオステミンポリペプチドを検出することを特徴とする上記(1)〜(4)記載の方法。
(8) ヌクレオステミンポリペプチドを検出する方法が、該ポリペプチドに対する特異的な抗体を用いることを特徴とする、上記(7)記載の方法。
(9) 抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体である、上記(8)記載の方法。
(10) ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、免疫組織化学的方法である上記(7)〜(9)記載の方法。
(11) ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、アプタマーを用いる方法である上記(7)記載の方法。
(12) ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、セルソーター、フローサイトメーター、あるいは磁気ビーズを用いる方法である上記(7)記載の方法。
(13) ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、該ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターを含むDNAをレポーター遺伝子に機能的に結合した配列を有するDNAを細胞に導入し、該レポーター遺伝子の発現を検出する方法である上記(7)記載の方法。
(14) ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2または3で表される塩基配列からなるDNAである上記(13)記載の方法。
(15) ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである上記(13)記載の方法。
(16) ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである上記(13)記載の方法。
(17) ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである上記(13)記載の方法。
(18) レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、セルソーター、フローサイトメーター、あるいは磁気ビーズを用いる方法である上記(13)〜(17)のいずれか1項に記載の方法。
(19) レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、該レポータータンパク質に対する特異的な抗体を用いた免疫組織化学的方法あるいはウェスタンブロットを用いる方法である上記(13)〜(17)のいずれか1項に記載の方法。
(20) レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、該レポーター遺伝子のメッセンジャーRNAを測定する方法である上記(13)〜(17)のいずれか1項に記載の方法。
(21) 癌細胞が血液癌である上記(1)〜(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22) 癌細胞が固形癌由来である上記(1)〜(20)のいずれか1項に記載の方法。
(23) 癌細胞が培養癌細胞株である上記(1)〜(20)のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、癌幹細胞の同定および分離方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.ヌクレオステミンを用いた癌幹細胞の同定および分離方法
本発明で用いられるヌクレオステミンは、とくに限定はないが、動物由来のものが好ましい。例えば、ヒト、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジまたはニワトリ等のヌクレオステミンを用いることができる。とくに、ヒト由来のヌクレオステミンが好ましい。具体的には、GenBankに登録されている、Accession No. NM_014366、NM_206825、NM_206826、AF191018、AI028402、AK027514、AK027516、AY825265、BC001024、BF732788、CF272475、CR598596、CR607914、CR608648、AC104446、NT_005986等のヒト由来のヌクレオステミン、Accession No. NM_153547、NM_178846、AI785289、AK034825、AK077523、AK087757、AK167094、AK167183、AY181025、AY185498、BC018560、BC037996、BF021177、BG065812、BG079080、AC154727、NW_000091等のマウス由来のヌクレオステミンを用いることができる。また、一般的には動物個体内および個体間に遺伝子配列の欠失、置換、あるいは付加変異をもつ遺伝子多型が存在することが知られているが、このような塩基配列あるいはアミノ酸配列が一部異なるヌクレオステミンも用いることができる。
【0015】
癌幹細胞とは、継続的に増殖可能な腫瘍の再構築に必要な細胞であり、以下の(1)〜(3)の能力を有する細胞をいう。
(1)自己複製能を保有する。自己複製とは、細胞増殖とは同義ではない。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つ、あるいは、両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同等の能力および分化程度を保持している細胞を産出できる能力を示す。
(2)腫瘍を構成する複数種の癌細胞へ分化できる。癌幹細胞から分化した複数種の癌細胞は、正常幹細胞と同様に、細胞系譜上、癌幹細胞を起点とする階層性を有する。癌幹細胞より、段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する腫瘍が形成される。
(3)高い細胞増殖活性を保有する。癌幹細胞は、対照分裂(自己複製)および非対称分裂(分化)を繰り返すことで癌細胞集団の過剰な増殖を可能にする。
【0016】
本発明において、癌幹細胞としては、上記の性質を有する細胞であればいずれも包含されるが、好ましくは血液癌幹細胞、各種固形癌由来幹細胞、各種癌細胞株、より好ましくは血液癌幹細胞があげられる。
血液癌としては、骨髄腫およびリンパ腫が包含され、具体的には、急性骨髄性白血病、急性前骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、Hodgkin病、非Hodgkinリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、多発性骨髄腫などがあげられる。
【0017】
固形癌としては、肉腫および癌腫が包含され、具体的には、繊維肉腫、粘膜肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢腺癌、骨髄癌、気管支原性癌、腎細胞癌、尿管癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮内膜癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、骨髄芽種、頭蓋咽頭癌、喉頭癌、舌癌、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、腹膜播腫、奇形腫、神経芽細胞腫、髄芽腫および網膜芽細胞腫などがあげられる。
【0018】
癌細胞株としては、U937、HL60、KG-1、KG-1a、K562など、ATCC、JCRB、DSMZなど公的セルバンクより入手することができる癌細胞株などがあげられる。
本発明において、血液癌幹細胞としては、例えば、急性骨髄性白血病におけるCD34陽性/CD38陰性の細胞、多発性骨髄腫におけるCD138陰性の細胞等があげられる。
固形癌幹細胞としては、乳癌における、CD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)の細胞、およびCD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)かつ上皮特異的抗原(EPA、epithelial-specific antigen)陽性の細胞、神経芽細胞腫におけるCD133陽性の細胞、前立腺癌における、CD44陽性/α2β1高発現/CD133+細胞等があげられる。
【0019】
癌細胞株癌幹細胞としては、急性骨髄性白血病由来細胞株における、CD34陽性/CD38陰性の細胞、多発性骨髄腫由来細胞株における、CD138陰性の細胞、乳癌由来細胞株における、CD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)の細胞株、およびCD44陽性/CD24陰性(あるいは低発現)かつ上皮特異的抗原(EPA、epithelial-specific antigen)陽性の細胞、神経芽細胞腫由来細胞株における、CD133陽性の細胞、前立腺癌由来細胞における、CD44陽性/α2β1高発現/CD133+細胞等があげられる。
【0020】
上記いずれの癌細胞或いは癌細胞株において、Hoechst33342を排出する能力が高い性質を有するサイドポピュレーションの細胞も本発明の癌幹細胞又は癌幹細胞株に包含される。
幹細胞を含む癌細胞および癌組織の調製方法
本発明において、癌幹細胞を含む癌細胞および癌組織の調製方法は、該癌細胞または癌組織を安全かつ効率的に調製することができればいかなる方法でもよい。具体的には、下記の1.-(1)〜1.-(7)の方法が挙げられる。
【0021】
1.-(1)血液癌から骨髄穿刺により癌幹細胞を含む骨髄細胞混合物を取得する方法
S. E. Haynesworth et al. Bone, 13, 81 (1992)に記載された方法等に基づき胸骨または腸骨から骨髄穿刺を行う。具体的には、骨髄穿刺を行う場所の皮膚面を消毒し、局所麻酔を行う。特に骨膜下を充分に麻酔する。骨髄穿刺針の内筒を抜き、5000単位のヘパリンを入れた10 mL注射器を装着して必要量の骨髄液を速やかに吸引する。平均的には10 mL〜20 mLの骨髄液を吸引する。骨髄穿刺針を取り外し、10分間程圧迫止血する。取得した骨髄液を1,000×gの遠心分離により骨髄細胞を回収した後、該骨髄細胞をPBS (Phosphate Buffered Saline)で洗浄する。本ステップを2回繰り返した後、該骨髄細胞を10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM (α-modified MEM)、DMEM (Dulbecco's modified MEM)あるいはIMDM (Isocove's modified Dulbecco's medium)等の細胞培養用培地に再浮遊させることにより骨髄細胞液を得ることができる。
【0022】
該骨髄細胞液から癌幹細胞を含む骨髄細胞混合物を調製する方法としては、溶液中に混在する他の細胞、例えば血球系細胞、線維芽細胞などを除去できれば特に限定されないが、例えば、M. F. Pittenger et al. Science, 284, 143 (1999)に記載された方法に基づき骨髄細胞液を密度1.073 g/mLのpercollに重層した後、1,100×gで30分間遠心分離して界面の細胞を回収することにより癌幹細胞を含む骨髄細胞混合物を調製することができる。
【0023】
1.-(2)血液癌から末梢血採取により癌幹細胞を含む血液細胞混合物を取得する方法
静脈から末梢血採取を行う。具体的には、末梢血採取を行う場所の皮膚面を消毒する。注射針の内筒を抜き、5000単位のヘパリンを入れた10 mL注射器を装着して必要量の末梢血を速やかに吸引する。平均的には10 mL〜20 mLの末梢血を吸引する。注射針を取り外し、10分間程圧迫止血する。取得した末梢血を1,000×gの遠心分離により末梢血細胞を回収した後、該末梢血細胞をPBS (Phosphate Buffered Saline)で洗浄する。本ステップを2回繰り返した後、該末梢血細胞を10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM (α-modified MEM)、DMEM (Dulbecco's modified MEM)あるいはIMDM (Isocove's modified Dulbecco's medium)等の細胞培養用培地に再浮遊させることにより末梢血細胞液を得ることができる。
【0024】
該末梢血細胞液から癌幹細胞を含む血液細胞混合物を調製する方法としては、溶液中に混在する他の細胞、例えば血球系細胞、線維芽細胞などを除去できれば特に限定されないが、例えば、M. F. Pittenger et al. Science, 284, 143 (1999)に記載された方法に基づいて、末梢血細胞液を密度1.073 g/mLのpercollに重層した後、1,100×gで30分間遠心分離して界面の細胞を回収することにより癌幹細胞を含む血液細胞混合物調製することができる。
【0025】
1.-(3)固形癌から細胞穿刺により癌幹細胞を含む癌細胞混合物を取得する方法
腫瘍部位から細胞穿刺を行う。具体的には、細胞穿刺を行う場所の皮膚面を消毒する。細胞穿刺針の内筒を抜き、5000単位のヘパリンを入れた10 mL注射器を装着して必要量の癌組織を速やかに回収する。平均的には0.1 g〜0.2 gの癌組織を吸引する。細胞穿刺針を取り外し、10分間程圧迫止血する。取得した癌組織をトリプシン、コラゲナーゼ、もしくはヒアルロニダーゼ等のタンパク質分解酵素により分解処理後、1,000×gの遠心分離により癌細胞を回収した後、該癌細胞をPBS (Phosphate Buffered Saline)で洗浄する。本ステップを2回繰り返した後、該癌細胞を10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM (α-modified MEM)、DMEM (Dulbecco's modified MEM)あるいはIMDM (Isocove's modified Dulbecco's medium)等の細胞培養用培地に再浮遊させることにより癌細胞混合物を得ることができる。
【0026】
1.-(4)ラットおよびマウスの血液癌から癌幹細胞を含む骨髄細胞混合物を取得する方法
ラットあるいはマウスを頚椎脱臼により致死させ、70%エタノールで充分消毒した後、大腿骨の皮膚ならびに大腿四頭筋を切除する。膝関節の部分にハサミをいれて関節をはずし、大腿骨背面の筋肉を除去する。股関節の部分にハサミを入れて関節を外し、大腿骨を取り出す。大腿骨に付着している筋肉をハサミでできるだけ除去した後、大腿骨の両端をハサミで切断する。骨の太さに応じた適当なサイズの針を2.5 mLの注射器に装着し、10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM、DMEM、あるいはIMDM等の細胞培養用培地約1.5 mLを注射器に充填した後、注射針の先端を大腿骨の膝関節側の断端に差し込む。注射器内の培養液を骨髄内に注入することで、股関節側の断端から骨髄細胞が押し出される。得られた骨髄細胞はピペッティングにより培養液中に浮遊させる。該骨髄液からは、上記1.-(1)に記載したヒト骨髄液からの骨髄細胞の単離と同様の方法により、癌幹細胞を含む骨髄細胞混合物を調製することができる。
【0027】
1.-(5)ラットおよびマウスの固形癌から癌幹細胞を含む癌細胞混合物を取得する方法
ラットあるいはマウスを頚椎脱臼により致死させ、70%エタノールで充分消毒した後、腫瘍形成部を切開し腫瘍部位を取り出す。得られた癌細胞は、トリプシン、コラゲナーゼ、もしくはヒアルロニダーゼ等のタンパク質分解酵素により培養液中に浮遊させる。該癌細胞液からは、上記1.-(3)に記載したヒト癌細胞液からの癌細胞の調製と同様の方法により、癌幹細胞を含む癌細胞混合物を調製することができる。
【0028】
1.-(6)ヒト、ラットおよびマウスの固形癌から癌幹細胞を含む組織切片を作製する方法
例えば、特開2005-261236に記載された方法に基づき、ヒト、ラットおよびマウスの固形癌から癌幹細胞を含む組織切片を作製することができる。試料は、これら生物由来の癌組織の一部であってもよく、全部であってもよい。また、細胞や組織を培養したものでもよい。培養細胞の場合、スライドグラスに細胞を培養し、そのスライドグラスを試料としてもよく、培養皿に培養した細胞をそのまま用いてもよい。
【0029】
試料は必ずしも固定の必要はないが、固定して使用することもできる。固定方法は、試料を直接固定液に漬けてもよいし、還流固定してもよい。 固定液はとくに制限はないが、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルマリンやそれらの混合液が用いられ、特に好ましくは4%ホルムアルデヒド水溶液が最もよく用いられる。
試料は、組織の場合、切片でも、ホールマウント(whole-mount)でもよい。切片の場合は、凍結切片、パラフィン切片、レジンなどを包埋剤に用いたプラスティック切片など、いずれでもよい。
【0030】
1.-(7)ヒト、ラットおよびマウスの血液癌もしくは固形癌由来の細胞混合物および癌細胞株から癌幹細胞を含む細胞標本を作製する方法
細胞を溶液のまま、あるいはサイトスピンなどを用いてスライドグラス等の支持体に塗布する。細胞は、細胞の一部であってもよく、全部であってもよい。また、上記1.-(1)〜1.-(5)に記載した方法で調整した細胞混合物であってもよく、該細胞混合物を培養したものでもよい。
【0031】
試料は必ずしも固定の必要はないが、固定して使用することもできる。固定方法は、試料を直接固定液に漬けてもよいし、還流固定してもよい。 固定液は何でもよく、例えば、グルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルマリンやそれらの混合液が用いられ、特に好ましくは4%ホルムアルデヒド水溶液が最もよく用いられる。
【0032】
癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞の検出方法
本発明において、癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞の検出方法は、上記方法1.-(1)〜1.-(7)により取得した癌幹細胞を含む該細胞混合物、組織切片、および細胞標本において、ヌクレオステミンのmRNAおよびタンパク質の発現量を指標に癌幹細胞を検出することができればいかなる方法でもよい。具体的には、下記の1.-(8)〜1.-(9)の方法が挙げられる。
【0033】
1.-(8)ヌクレオステミンのmRNAを発現する癌細胞を検出する方法
ヌクレオステミンのmRNAを検出する方法としては、例えば、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版 [T.マニアティス(T. Maniatis)ら編集、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed., コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory )発行,(1989)] 、特開2005-261236等に記載されている方法に基づきin situハイブリダイゼーションを行うことで検出する方法が挙げられる。具体的には、以下のようにして行うことができる。
【0034】
上記1.-(6)および1.-(7)に記載した方法で癌細胞もしくは癌組織標本を作製する。前処理として、固定した切片、細胞あるいはホールマウントの試料に対し、脱パラフィン処理や再水和処理、膜透過性向上処理、例えば、トリプシン、プロテイナーゼ K、サポニン、あるいはストレプトリジンO処理などなどの処理を行う。その後、mRNAに結合するタンパク質を分解して、mRNAを露出させるためにタンパク質分解処理を行う。、タンパク質分解処理に用いられるタンパク質分解剤の具体的な例として、サーモリジン、プロテイナーゼK、もしくはトリプシンなどをあげることができる。また、これらのタンパク質分解酵素を混合して用いることもできる。タンパク質分解処理の処理時間は通常5〜30分間、処理温度は37〜50℃であるが、予め、濃度を含めたいくつかの条件で処理し、処理時間と処理温度を最適化するのが好ましい。その後、グリシンを用いたクエンチン化や無水酢酸を用いたアセチル化などの処理を行ってもよい。
【0035】
上記の処理を行った後、プレハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーションを行う。プレハイブリダイゼーションは、例えばSSC、ホルムアミドを含む溶液中で、37 ℃、30〜60分間行う。各試薬の濃度は0.1〜2 x SSC、1〜50% ホルムアミドが好ましい。ハイブリダイゼーションは、例えばSSC、SDS (sodium dodecyl sulfate)、ホルムアミドを含む溶液中で、37 ℃、一晩行う。各試薬の濃度は、0.1〜2 x SSC(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mmol/L塩化ナトリウム、15 mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる), 0.05〜1% SDS, 1〜50% ホルムアミドが好ましい。ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、例えば、放射性同位元素、ジゴキシゲニン、ビオチン、β−ガラクトシダーゼ、HRP (horse radish peroxidase)、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれるタンパク質、より好ましくは、ジゴキシゲニンなどが用いられる。また、プローブは、オリゴヌクレオチドでも、一本鎖DNAでも二本鎖DNAでもよく、RNAでもよい。プローブの合成は、化学合成でもよく、DNA依存性DNAポリメラーゼを用いたプライマー・エクステンションやDNA依存性RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写系を使用して行ってもよく、PCR(polymerase chain reaction)を使用して行ってもよい。
【0036】
ハイブリダイゼーションした試料を洗い、各標識に適した検出方法を選択してmRNAの検出を行う。例えば、(1)放射線同位元素でラベルされたプローブの場合、エマルジョンを用いて現像する。(2)標識がビオチンやジゴキシゲニンの場合、例えば、β−ガラクトシダーゼ、HRP、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれるタンパク質、より好ましくは、HRP、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼなどの酵素を結合した抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用い、その酵素に対する基質を用いて発色させることによりmRNAを検出する。さらに、例えば、ABC法などの方法を組み合わせて、シグナルを増幅してmRNAを検出してもよい。(3)FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などの蛍光色素もしくはタンパク質を結合したプローブや抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用いてプローブを蛍光標識した場合、例えば、蛍光顕微鏡やコンフォーカルレーザー顕微鏡、レーザースキャニング顕微鏡などを用いてシグナルを検出することができる。
【0037】
1.-(9)ヌクレオステミンを発現している癌細胞を検出する方法
ヌクレオステミンを検出する方法としては、例えば、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版 [T.マニアティス(T. Maniatis)ら編集、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed., コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory )発行,(1989)] 、特開2005-261236等に記載されている方法に基づき、抗ヌクレオステミンに対する抗体を用いた免疫組織化学的方法やアプタマーを用いて検出する方法等を挙げられる。以下、具体的に説明する。
【0038】
1.-(9-1)抗ヌクレオステミンに対する抗体を用いた免疫組織化学的検出方法
(i)抗ヌクレオステミン抗体を作製する方法
抗ヌクレオステミン抗体の作製方法としては、ヌクレオステミンを免疫源として用い、ヌクレオステミンを特異的に認識する抗体の作製方法であればいかなる方法でも良い。具体的には、以下に示すポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法が挙げられる。
【0039】
A.抗原の調製
ヌクレオステミンまたは該ヌクレオステミンの部分断片の精製標品、あるいは該ヌクレオステミンの一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用いることにより、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等、ヌクレオステミンを認識する抗体を作製することができる。
【0040】
本発明で用いられるヌクレオステミンは、とくに限定はないが、動物由来のものが好ましい。ヒト、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジまたはニワトリ等のヌクレオステミンを用いることができる。とくに、ヒト由来のヌクレオステミンが好ましい。具体的には、GenBankに登録されている、Accession No. NM_014366、NM_206825、NM_206826、AF191018、AI028402、AK027514、AK027516、AY825265、BC001024、BF732788、CF272475、CR598596、CR607914、CR608648、AC104446、NT_005986等のヒト由来のヌクレオステミン、Accession No. NM_153547、NM_178846、AI785289、AK034825、AK077523、AK087757、AK167094、AK167183、AY181025、AY185498、BC018560、BC037996、BF021177、BG065812、BG079080、AC154727、NW_000091等のマウス由来のヌクレオステミンを用いることができる。また、一般的には動物個体内および個体間に遺伝子配列の欠失、置換、あるいは付加変異をもつ遺伝子多型が存在することが知られているが、このような塩基配列あるいはアミノ酸配列が一部異なるヌクレオステミンも用いることができる。
【0041】
該ヌクレオステミンをコードするDNA断片、あるいは完全長cDNAを発現ベクター内のプロモーターの下流に挿入することにより、該タンパク質の組換発現ベクターを造成する。
該組換タンパク質発現ベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞内に導入する。
宿主細胞としては、目的とするDNAを発現できるものは全て用いることができ、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属等に属する細菌、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シワニオミセス(Schwanniomyces)属等に属する細菌、酵母、動物細胞、および昆虫細胞等を用いることができる。
【0042】
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、ヌクレオステミン遺伝子DNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌を宿主細胞として用いる場合は、ヌクレオステミンの組換え発現ベクターは該細菌中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ヌクレオステミンをコードするDNAおよび転写終結配列より構成された組換え発現ベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0043】
発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233-2(Amersham Pharmacia Biotech社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pKYP10[特開昭58-110600]、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescript II SK(-)(Stratagene社製)、pGEX(Amersham Pharmacia Biotech社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(USP4686191、USP4939094、USP5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]等を例示することができる。
【0044】
発現ベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したものを用いることが好ましい。
プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrpx2)、tacプロモーター、letIプロモーター[Gene, 44, 29 (1986)]、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
【0045】
本発明で用いられるヌクレオステミンをコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、目的とするタンパク質の生産率を向上させることができる。
本発明で用いるヌクレオステミン遺伝子の発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、とくに構造遺伝子の直後に転写終結配列を配置することが好ましい。
【0046】
宿主細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、ミクロバクテリウム属等に属する微生物、例えば、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp. D-0110等をあげることができる。
【0047】
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)]、プロトプラスト法(特開昭63-248394)、またはGene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等をあげることができる。
【0048】
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を例示することができる。
プロモーターとしては、酵母中で発現できるものであればいかなるものでもよく、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP 1プロモーター等をあげることができる。
【0049】
宿主細胞としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)等をあげることができる。
【0050】
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods in Enzymol., 194, 182 (1990)]、スフェロプラスト法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)]、酢酸リチウム法[J. Bacteriol., 153, 163 (1983)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)]等をあげることができる。
【0051】
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pCDNAI(Invitrogen社製)、pCDM8(Invitrogen社製)、pAGE107[特開平3-22979;Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAS3-3(特開平2-227075)、pCDM8[Nature, 329, 840 (1987)]、pCDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pAGE210等を例示することができる。
【0052】
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0053】
宿主細胞としては、例えば、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637[特開昭63-299]等をあげることができる。
組換えベクターの導入法としては、動物細胞にDNAを導入できるいかなる方法も用いることができ、例えば、エレクトロポーレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 84, 7413 (1987)、Virology, 52, 456 (1973)]等を用いることができる。形質転換体の取得および培養は、特開平2-227075号公報あるいは特開平2-257891号公報に記載されている方法に準じて行なうことができる。
【0054】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えば、バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ,ア・ラボラトリー・マニュアル[Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W.H. Freeman and Company, New York (1992)]、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1-38(1987-1997)、 Bio/Technology, 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、タンパク質を発現することができる。
【0055】
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitrogen社製)等をあげることができる。
【0056】
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、例えば、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21[Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual、W.H.Freeman and Company,New York,(1992)]、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh 5(Invitrogen社製)等を用いることができる。
【0057】
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法[特開平2-227075]、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等をあげることができる。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング 第2版 [Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)] に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
【0058】
酵母、動物細胞または昆虫細胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加されたタンパク質を得ることができる。
ヌクレオステミン遺伝子DNAを組み込んだ組換え体DNAを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中にヌクレオステミンを生成蓄積させ、該培養物より該ヌクレオステミンを採取することにより、ヌクレオステミンを製造することができる。
【0059】
ヌクレオステミンを製造する形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該宿主が資化し得る炭素源、窒素源、無機物等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。
【0060】
炭素源としては、それぞれの宿主が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
【0061】
無機物としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、例えば、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
【0062】
また培養中必要に応じて、例えば、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0063】
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396 (1959)]、199培地[Proceeding of the Society for the Biological Medicine, 73, 1 (1950)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
【0064】
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、例えば、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているTNM-FH培地(Pharmingen社製)、Sf-900 II SFM培地(Life Technologies社製)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社製)、Grace's Insect Medium[Grace, T.C.C., Nature, 195, 788 (1962)]等を用いることができる。
【0065】
培養は、通常pH 6〜7、25〜30 ℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、例えば、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上述の形質転換体の培養物から、通常のタンパク質の単離、精製法を用いてヌクレオステミンを単離精製すればよい。
【0066】
例えば、ヌクレオステミンが、形質転換体の細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Amersham Pharmacia Biotech社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0067】
また、ヌクレオステミンが形質転換体の細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、細胞を回収後破砕し、遠心分離することにより、沈殿画分として該タンパク質の不溶体を回収する。
回収した該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。
該可溶化液を、希釈あるいは透析により、該可溶化液中のタンパク質変性剤の濃度を下げることにより、該タンパク質の構造を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により該タンパク質の精製標品を得る。
【0068】
ヌクレオステミンまたはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清から、該タンパク質またはその糖鎖付加体等の誘導体を回収することができる。即ち、培養物から遠心分離等の手法により培養上清を回収し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
このようにして取得されるヌクレオステミンの具体的な例として、配列番号4および5で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質等をあげることができる。
【0069】
また、上記方法により発現させたヌクレオステミンを、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、例えば、米国Advanced ChemTech社製、Perkin-Elmer社製、Amersham Pharmacia Biotech社製、米国Protein Technology Instrument社製、米国Synthecell-Vega社製、米国PerSeptive社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して合成することもできる。
【0070】
B.ポリクローナル抗体
本発明で用いるヌクレオステミンに対するポリクローナル抗体は、上記1.-(9-1)A.に記載の方法で調製したヌクレオステミンの全長型ポリペプチドまたは部分断片の精製標品、あるいは該ポリペプチドの一部のアミノ酸配列を有する部分ポリペプチドを抗原として、動物に免疫し、ポリクローナル抗体を作製することができる。
【0071】
投与する動物の具体的な例として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。
該抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。
ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)やウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。
【0072】
該抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)〕等で抗ヌクレオステミン抗体価を測定して、該血清が免疫に用いた抗原と反応することを確認する。
【0073】
具体的な抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(RIA法)、固相酵素免疫定量法(ELISA法)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法等種々の公知技術があげられるが、感度、迅速性、正確性および自動化の可能性等の観点から、RIA法およびELISA法が好ましい。
本発明による抗体価の測定は、とくに限定はないが、ELISA法により行うことができる。具体的には、抗原を固相に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えば、牛血清アルブミン(BSA)により覆い、該表面を洗浄後、一次抗体として、段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗ヌクレオステミン抗体を結合させ、さらに二次抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加え、マウス抗体に結合させ、洗浄後、該酵素の基質を加え、基質分解に基づく、発色等を測定することにより、抗体価算出を行うことができる。
【0074】
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、該血清を分離、精製することによりポリクローナル抗体を取得することができる。
分離、精製する方法としては、とくに限定はないが、遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿〔Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)〕、またはDEAE-セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインAまたはG-カラムあるいはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等を、単独または組み合わせて処理する方法があげられる。
【0075】
C.モノクローナル抗体
本発明で用いるヌクレオステミンに対するモノクローナル抗体は、例えば以下のようにして作製する。
【0076】
上記1.-(9-1)A.に記載の方法で調製した抗原に対し、抗血清が十分な抗体価を示した動物を抗体産生細胞の供給源として用いる。
具体的には、十分な抗体価を示した動物の脾臓を、抗原を最終投与した後3〜7日目に、摘出する。
該脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、1,200 rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
【0077】
得られた沈殿画分の脾細胞をトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH 7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去した後、MEM培地で3回洗浄し、得られた脾細胞を抗体産生細胞として用いる。
ハイブリドーマの作製に用いられる骨髄腫細胞としては、マウスまたはラットから取得した株化細胞が好ましい。具体的には、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1 (P3-U1)〔Curr. Topics Microbiol. Immunol., 81, 1 (1978)、Eur. J. Immunol., 6, 511 (1976)〕、SP2/0-Ag14(SP-2)〔Nature, 276, 269 (1978)〕、P3-X63-Ag8653(653)〔J. Immunol., 123, 1548 (1979)〕、P3-X63-Ag8(X63)〔Nature, 256, 495 (1975)〕等を用いることができる。これらの細胞株は、8-アザグアニン培地〔RPMI-1640培地にグルタミン(1.5 mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10-5 mol/L)、ゲンタマイシン(10 μg/mL)および牛胎児血清(FCS)〔シー・エス・エル(CSL)社製、10%〕を加えた培地(以下、正常培地という)に、さらに8-アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地で培養し、融合には該細胞を2×107個以上用いる。
【0078】
得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とをMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83 g、リン酸一カリウム0.21 g、食塩7.65 g、蒸留水1L、pH 7.2)でよく洗浄し、抗体産生細胞数:骨髄腫細胞数が、5:1〜10:1になるよう混合し、1,200 rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐし、該細胞群に、攪拌しながら、37 ℃で、抗体産生細胞数108個あたり、ポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)2 g、MEM 2 mLおよびジメチルスルホキシド(DMSO)0.7 mLを混合した溶液を0.2〜1 mL添加し、更に1〜2分間毎にMEM培地1〜2 mLを数回に分けて添加する。
【0079】
添加後、MEM培地を加えて全量が50 mLになるように調製する。
該調製液を900 rpmで5分間遠心分離後、上清を捨てる。得られた沈殿画分の細胞を、ゆるやかにほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかにHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10-4mol/L)、チミジン(1.5×10-5 mol/L)およびアミノプテリン(4×10-7 mol/L)を加えた培地〕100 mL中に懸濁する。
【0080】
該懸濁液を96穴培養用プレートに100 μL/穴ずつ分注し、5% CO2インキュベーター中、37 ℃で7〜14日間培養する。
コロニー状に生育してきたハイブリドーマの認められる穴について、上清半容量を捨て、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)を同量加え、以後1〜3日間10〜30時間目ごとにHT培地への変換を行う。
【0081】
HT培地で3〜4日培養後、培養上清の一部をとり、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Chapter14 (1988)等に述べられている酵素免疫測定法により抗ヌクレオステミン抗体価を測定し、本発明に用いられるポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。
ここで用いる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(RIA法)、固相酵素免疫定量法(ELISA法)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法等種々の公知技術が上げられるが、感度、迅速性、正確性および自動化の可能性等の観点から、RIA法およびELISA法が好ましい。
【0082】
ELISA法による抗体価の測定は、例えば、以下のような手順により行うことができる。即ち、抗原を固相に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えば、牛血清アルブミン(BSA)により覆い、該表面を洗浄後、一次抗体として、段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗ヌクレオステミン抗体を結合させ、さらに二次抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加え、マウス抗体に結合させ、洗浄後、該酵素の基質を加え、基質分解に基づく、発色等を測定することにより、抗体価算出を行うことができる。
【0083】
上記の例示においては、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いたが、ハイブリドーマの選択に応じて他の細胞株を使用して、適切な組成の培地を使用することもできる。
上記抗体価の測定により特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移し、クローニングを行う。具体的なクローニング法としては、限界希釈により1穴に1個のハイブリドーマが含まれるように希釈してまき込む方法、軟寒天培地上にまきこみコロニーを取る軟寒天法、マイクロマニピュレーターによって1個の細胞を取り出しまきこむ方法、セルソーター、フローサイトメーター、および磁気ビーズによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」等が挙げられるが、限界希釈法が好ましい。
【0084】
抗体価の認められたプレート穴について、例えば、限界希釈法によりクローニングを2〜4回繰り返し、安定して抗体価の認められたものを、抗ヌクレオステミン抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
該ハイブリドーマ株を、HT培地より通常の培地に換えて培養する。大量培養は、例えば、大型培養瓶を用いた回転培養あるいはスピナー培養等で行われる。
【0085】
また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)あるいはNu/Nuマウスの腹腔内等でも上述のハイブリドーマ株を増殖させることができる。例えば、プリスタン処理した8〜10週令のBALB/c雌マウスに抗ヌクレオステミン抗体産生ハイブリドーマ株を2〜4×106 細胞/匹になるように腹腔内注射し、ハイブリドーマ株を腹水癌化させる。該マウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、モノクローナル抗体として供することができる。
【0086】
モノクローナル抗体の同定、得られたモノクローナル抗体のイソタイプ、サブクラス等の同定法としては、例えば、オクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法またはRIA法等があげられる。
タンパク質の定量は、例えば、フォーリンロウリー法および280 nmにおける吸光度〔1.4(OD280)=イムノグロブリン1 μg/mL〕等より算出することができる。
【0087】
モノクローナル抗体は、例えば、遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿〔Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)〕、またはDEAE-セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインAまたはG-カラムあるいはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等を、単独または組み合わせて用い、IgG画分を集める操作により分離または精製することができる。
【0088】
(ii)ヌクレオステミンを発現している細胞を免疫組織化学的方法を用いて検出する方法
上記1.-(9)(i)に記載の方法で調製したヌクレオステミンに対する抗体を一次抗体として、上記1.-(8)に記載の方法で前処理した試料と接触させる。一次抗体は、放射性同位元素、ジゴキシゲニン、ビオチン、β−ガラクトシダーゼ、HRP、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体等のタンパク質、より好ましくは、HRPやアルカリホスファターゼ等と結合させた抗体を用いる。一次抗体と試料との反応は、4〜37℃で、1時間から数日であることが好ましいが、反応条件はこれに限定されない。
【0089】
試料は一次抗体と反応させた後、PBS等で洗浄し、架橋剤を用いて架橋反応を行う。架橋剤としては、EDC[0.1〜10 mg/mL 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸を0.1 mol/L メス(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸1水和物に溶解した溶液]、SMPT[0.01〜5 mmol/L 4-サクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-(2-ピチジルジチオ]トルエンのPBS溶液)、BMH[0.5-20 mmol/L ビス-マレイミドヘキサンのPBS溶液]、ABH[0.1-10 mmol/L p-アジドベンゾイル ヒドラジドのPBS溶液]、SIAB[0.1-10 mmol/L N-スクシンイミジル [4-ヨードアセチル]アミノベンゾエートのPBS溶液]、GMBS[0.1-10 mmol/L N-(g-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド エステルのPBS溶液]、Sulfo-GMBS[0.1-10 mmol/L Mスルホ- N-(g-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド エステルのPBS溶液]、DMS[1-50 mmol/L ジメチルスベルイミデート・2塩酸のPBS溶液]、BS3[1-50 mmol/L ビス(スルホスクシンイミジルスベレート)のPBS溶液)、Sulfo-NHS[1-50 mmol/L スルホ−N-ヒドロキシスルホスクシンイミドのPBS溶液]、NHS[1-50 mmol/L N-ヒドロキシスルホスクシンイミドのPBS溶液]、ASBA[0.1-10 mmol/L 4-(p-アジドサリシルアミド)ブチルアミンのPBS溶液]等を用いることができる。反応は通常、室温で、1〜2時間行う。
【0090】
架橋反応後、試料をPBS等で洗浄し、HRP、アルカリホスファターゼ、β−Gal(β−ガラクトシダーゼ)などの酵素等を結合した二次抗体と反応させる。一次抗体として、放射性同位元素、HRPやアルカリホスファターゼに結合したものを用いた場合は、二次抗体との反応を省略することができる。
一次または二次抗体に結合した酵素の基質を添加し、発色させることにより、シグナルを検出する。具体的な基質としては、HRPに対してはジアミノベンチジン(DABトリス錠、MUTO PURE CHEMICALS社)、アルカリホスファターゼに対しては、 NBT(Nitrotetrazolium Blue Chloride)および BCIP(5-Bromo -4-Chloro-3-indolyl-phosphate disodium salt)、β−Galに対しては、X-gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside)をあげることができる。さらに、例えば、ABC法などの方法と組み合わせて、シグナルを増幅させることもできる。
【0091】
放射線同位元素でラベルされた抗体の場合は、エマルジョンを用いて現像する。
FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などの蛍光色素もしくはタンパク質を用いて一次抗体もしくは二次抗体を蛍光標識した場合は、蛍光顕微鏡、コンフォーカルレーザー顕微鏡、もしくはレーザースキャニング顕微鏡などを用いてシグナルを検出することもできる。
【0092】
1.-(9−2)ヌクレオステミンを発現している細胞をアプタマーを用いて検出する方法
本発明に用いるアプタマーのは、例えば、特開2006−149302に記載の方法に基づいて、以下のようにしてアプタマーを作製できる。
【0093】
本発明におけるアプタマーとは、タンパク質、アミノ酸、抗生物質等の各種分子を認識する核酸分子を表し、本発明の検出方法においては、ヌクレオステミンを特異的に認識しおよび/またはヌクレオステミンの生物学的活性を阻害する機能を有する核酸分子であればいかなるものでも用いることができるよい。具体的には、RNAであってもDNAがあげられ、DNAが好ましい。さらに、該アプタマーは、核酸分子構造中のリン酸骨格に修飾を加え、生体内における安定性を増大させた核酸分子を含んでもよい。該リン酸骨格としては、例えば、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホラミドチオエート結合、ホスホラミデート結合、ホスホルジアミデート結合、メチルホスホネート結合を含むリン酸骨格などがあげられる。さらに、該アプタマーは、構造的特徴として、(1)少なくとも1つのループ構造、(2)デオキシグアノシン(グアノシン、グアノシンアナログを含む)を多く包含する一次構造、または、(3)デオキシグアノシン(グアノシン、グアノシンアナログを含む)が4量体クラスター構造を形成するアプタマーも包含される。該アプタマーは、二本鎖からなる核酸分子または、一本鎖からなる核酸分子のいずれでもよいが、一本鎖からなる核酸分子が好ましい。
【0094】
本発明で用いるアプタマーの塩基数は、ヌクレオステミンに特異的に結合することができる塩基長を有していれば、特に制限はないが、例えば、10〜200塩基、好ましくは、20〜150塩基、より好ましくは30〜150塩基、さらに好ましくは50〜150塩基であり、具体的には50、60、70、80、90、100、110、120、130、140および150塩基のアプタマーがあげられる。
【0095】
本発明に用いられるアプタマーは、他の分子種、例えば、蛍光標識色素などを結合させた形態で使用することもできる。
本発明で用いるアプタマーは、アプタマーを製造できる方法であればいかなる方法であってもよいが、例えば、インビトロセレクション法(Ellingtonら, 1990;Tuerkら, 1990)を用いて製造することができる。
【0096】
本発明において、インビトロセレクション法とは、ランダムな配列を含む核酸分子のプールからヌクレオステミンに対して親和性を有する分子を選択し、親和性を持たない分子を排除する方法をいう。
具体的には、まず、20〜300塩基、好ましくは30〜150、より好ましくは30〜100塩基程度のランダムな塩基配列を含む1本鎖核酸分子、例えば、DNA、RNAなどを調製する。該核酸分子は、直接合成してもよく、RNA分子の場合には、まずDNA分子を合成した後、転写反応により調製してもよい。該核酸分子がDNAの場合は、その両端にPCR増幅を可能にするためのプライマーとなる塩基配列を有することが好ましい。プライマー結合配列部分は、PCR増幅後にプライマー部分を制限酵素によって切除するための適当な制限酵素認識配列を有するように調製してもよい。プライマー結合配列部分の長さは、特に制限はないが、通常20〜50、好ましくは20〜30塩基長である。また、該プライマーの5’側末端にPCR増幅後の一本鎖DNAを電気泳動などで分離するために、放射物質、蛍光物質などを用いて標識を行ってもよい。さらに、RNA分子を調製する場合には、5’末端側のプライマーに適当なプロモーター、例えば、T7プロモーター配列を有する核酸分子などを用いて、DNA分子からRNA分子へ転写して調製してもよい。
【0097】
次に、PCR増幅によって得られたランダムな核酸分子と、ヌクレオステミンまたはヌクレオステミンの特定の領域を包含するペプチド断片とを混合し、インキュベートする。インキュベート後、混合物を電気泳動にかけて、核酸分子 − ヌクレオステミン複合体と遊離核酸分子とを分離する。ヌクレオステミンと複合体を形成している核酸分子を公知の方法に従って抽出する。回収された核酸分子がDNAの場合には、さらにPCR増幅を行い、増幅されたDNAを熱変性するなどして、一本鎖DNAとして回収する。回収された核酸分子がRNAの場合には、該RNAを逆転写してcDNAとしたのち、PCR増幅し、増幅されたDNAを転写してRNAを調製する。
【0098】
上述の核酸分子とヌクレオステミンとを混合する工程、ヌクレオステミンと結合した核酸分子を分離する工程、PCR増幅(RNAの場合には、逆転写後増幅)の工程、増幅された核酸分子を再びヌクレオステミンとの結合に使用する工程からなる操作を、数回繰り返し行う。得られた核酸分子の配列決定を、公知の方法に従い行うことができる。
アプタマーの合成は、化学合成、DNA依存性RNAポリメラーゼあるいはDNA依存性DNAポリメラーゼを用いたin vitro転写系、PCRによる増幅合成法により行ってもよい。上記の操作により得られた核酸分子の配列に基づいて、リン酸骨格部分に修飾を加え、、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホラミドチオエート結合、ホスホラミデート結合、ホスホルジアミデート結合、メチルホスホネート結合等を含むリン酸骨格から構成されるアプタマーを合成することもできる。
【0099】
上記1.-(8)に記載の方法で前処理試料について、アプタマーによるヌクレオステミン結合反応を行う。アプタマーは予め1 mmol/L MgClを含むリン酸緩衝液(以下、これを結合バッファーという。)の中で94℃、3分間加熱した後、4℃、30分間冷却して高次構造を再構成させる。結合反応は、例えば、結合バッファーを含む溶液中で、4℃〜37℃、0.5時間〜数日間行う。結合反応に用いるアプタマーは、放射性同位元素、ジゴキシゲニン、ビオチン、β−ガラクトシダーゼ、HRP、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体等のタンパク質など、より好ましくは、ジゴキシゲニンでラベルしたものを用いる。
【0100】
結合反応の後、試料を洗い、各標識に適した検出反応を行う。例えば、(1)放射線同位元素でラベルされたアプタマーの場合、エマルジョンを用いて現像する。(2)標識がビオチンやジゴキシゲニンの場合、β−ガラクトシダーゼ、HRP、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体などのタンパク質、より好ましくは、HRP、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼなどの酵素を結合した抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用い、その酵素に対する基質を用いて発色させることにより検出する。さらに、ABC法などの方法を組み合わせて、シグナルを増幅して検出することもできる。(3)FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などの蛍光色素もしくはタンパク質を結合したアプタマーや抗ビオチン抗体や抗ジゴキシゲニン抗体を用いてアプタマーを蛍光標識した場合は、例えば、蛍光顕微鏡、コンフォーカルレーザー顕微鏡、もしくはレーザースキャニング顕微鏡などを用いてシグナルを検出することもできる。
【0101】
ヌクレオステミンを発現する癌幹細胞を分離する方法
上記のようにして癌幹細胞と同定された試料がスライドグラスに塗布されている場合は、以下1.-(10)に記載したレーザーマイクロダイセクションなどを用いてヌクレオステミンを発現する癌幹細胞を分離することができる。一方、癌幹細胞と同定された試料が溶液の場合は、以下1.-(11)に記載したセルソーター、フローサイトメーター、あるいは磁気ビーズを用いて癌幹細胞細胞を分離することができる。
【0102】
1.-(10)レーザーマイクロダイセクションを用いてヌクレオステミンを発現している癌幹細胞を分離する方法
上記1.-(6)もしくは1.-(7)で調製した癌組織標本もしくは癌細胞標本から、顕微鏡下でヌクレオステミンを発現する癌細胞を分離するには、試料上の必要な領域を回収するレーザーマイクロダイセクション法(M. Emmert-Buck et al: Science 274:998-1001(1996)、RF. Bonner et al: Science 278:1481-1483(1997))を用いることができる、。例えば、laser capture microdissection system LM100(オリンパス社)を用いて癌幹細胞を分離することができる。
【0103】
1.-(11)ソーテイング機能を有したフローサイトメーターを用いる方法、もしくは磁気ビーズを用いて、ヌクレオステミンを発現している癌幹細胞を分離する方法
本発明で用いるソーテイング機能を有したフローサイトメーターは、癌幹細胞に発現しているヌクレオステミン分子に結合した抗体、プローブ、およびアプタマー、より好ましくは抗体から発せられる蛍光強度を電気信号に変換することによりヌクレオステミンの発現を検出して、癌幹細胞を分離することができればいかなるものでもよい。例えば、水滴荷電方式、セルキャプチャー方式などのフローサイトメーターがあげられる(フローサイトメーター自由自在、pp.14−23、秀潤社、1999年)。また、使用する蛍光の種類を組み合わせて、複数の抗原を利用して癌幹細胞を分離してもよい。蛍光色素の具体的な例としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、Hoechst33342などがあげられる(フローサイトメーター自由自在、pp.3−13、秀潤社、1999年)。
【0104】
具体的には、例えば以下のようにして癌幹細胞をフローサイトメーターにより分離することができる。
細胞はまず、トリプシン、プロテイナーゼ K、サポニン、あるいはストレプトリジンO処理などによる膜透過性向上処理を行った後に、抗原を認識する一次抗体と目的の細胞サンプルを混合し、氷上で30分間〜1時間、インキュベーションする。一次抗体が上記したリポソーム化、あるいはペプチドや糖鎖で修飾されている場合は、直接に抗原を認識する一次抗体と目的の細胞サンプルを混合することができる。一次抗体が蛍光で標識されている場合には、洗浄後フローサイトメーターで分離を行う。一次抗体が蛍光標識されていない場合には、洗浄後一次抗体に対して結合活性を有する蛍光標識された二次抗体と一次抗体が反応した細胞とを混合し、再び氷上で30分間〜1時間、インキュベーションする。洗浄後、一次抗体と二次抗体で染色された細胞をフローサイトメーターで分離を行う。一次抗体と二次抗体が蛍光標識されておらず、二次抗体がビオチン標識されている場合には、洗浄後二次抗体に対して結合活性を有する蛍光標識されたストレプトアビジンと一次抗体および二次抗体が反応した細胞とを混合し、再び氷上で30分間〜1時間、インキュベーションする。洗浄後、一次抗体、二次抗体、および蛍光標識されたストレプトアビジンで染色された細胞をフローサイトメーターで分離を行う。
【0105】
Hoechst 33342はDNA結合色素であり、生きたままの細胞を染色することができる。骨髄細胞の大多数は活発に分裂しているため、非常に明るく染色されるが、未熟な細胞ほど暗く染まる。ABC(ATP binding cassette)トランスポーターによる色素排除能力が未熟な細胞ほど大きいことが知られている(中内啓光、蛋白質核酸酵素、Vol.45, No.13, pp.2056-2062, 2000、Goodell, MA et al. J Exp Med, 183, 1797-1806 (1996)、http://www.bcm.tmc.edu/genetherapy/goodell/new_site/index2.html)。従って、抗ヌクレオステミン抗体にて染色され、かつHoechst 33342を取り込まない細胞をフローサイトメーターで分離することにより、癌幹細胞をより高い純度で分離することができる。
【0106】
癌幹細胞のヌクレオステミンを標識する方法は、例えば、蛍光標識抗ヌクレオステミン抗体[FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などで標識]、もしくは抗ヌクレオステミン抗体および蛍光標識二次抗体[FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などで標識]、もしくはタンパク質標識抗ヌクレオステミン抗体(β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、成長ホルモン、ルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼおよびこれらの誘導体などのタンパク質などで標識)および蛍光標識二次抗体[FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質]、もしくはビオチン標識抗ヌクレオステミン抗体および蛍光標識ストレプトアビジン[FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質]を使用することができる。
【0107】
また、蛍光標識抗ヌクレオステミン抗体あるいは蛍光標識ヌクレオステミン特異的アプタマー[FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allo-phycocyanin)、TR(TexasRed)、Cy3、Cy5、CyChrome、Red613、Red670、PerCP、TRI-Color、QuantumRed、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質などで標識]に、リポソーム化、もしくは、ファイブロネクチンなど細胞接着や細胞内取り込みを促進するペプチド、例えば、HIV-tat、D-tat、Rg-tat、もしくはAntennapediaなどのペプチドやその部分ペプチド、11R(11-mer Arg)、Octa(8-mer Arg)などの膜透過性ペプチド、ODD、SynB1, SynBX, XMTM, DPV、Chariotなどの合成ペプチド、あるいは糖鎖などを用いて修飾した後に、ヌクレオステミンの標識に用いることもできる。
【0108】
磁気ビーズを用いる方法は、目的の表面抗原を発現している細胞を大量に分離することができる。例えば以下のようにして行う。
細胞に一次抗体を反応させた後、細胞と反応しなかった一次抗体を除去し、一次抗体と特異的に結合する二次抗体を付加した磁気ビーズを結合させる。残存する二次抗体を洗浄除去した後、磁気ビーズ付加抗体と特異的に結合した細胞は、磁石を設置したスタンドで分離することができる。これらの操作に必要な材料および装置はDYNAL社から入手することができる。
【0109】
磁気ビーズを用いる方法は、細胞サンプル中より不要な細胞を除去する場合にも同様に利用することができる。不要な細胞をより効率的に除去するにはStem Cell Technologies Inc(Vancouver,Canada)より販売されているStemSep法を用いることができる。
抗ヌクレオステミン抗体を用いた分離法と、他の細胞マーカーに対する抗体を適宜組み合わせることにより、癌幹細胞をさらに濃縮することができる。
【0110】
癌幹細胞の他の細胞マーカーに対する抗体としては例えば、血液癌幹細胞の表面抗原であるCD13、CD34、CD38、CD33、CD44、CD117、CD123、CD133、CD138、Flt-3、Sca-1を認識する抗体、固形癌幹細胞の表面抗原であるCD44、CD24、CD19、CD133、ESA(Epithelial-Specific Antigen)、インテグリンα2β1を認識する抗体、造血系細胞の表面抗原であるCD34、CD117、CD14、CD45、CD90、CD150、Sca-1、Ly6c、Ly6gを認識する抗体、血管内皮細胞の表面抗原であるFlk-1、Flt-1、CD31、CD105、CD144を認識する抗体、間葉系細胞の表面抗原であるCD44、CD140を認識する抗体、インテグリンの表面抗原であるCD49b、CD49d、CD29、CD41を認識する抗体、マトリックス受容体であるCD54、CD102、CD106、CD44を認識する抗体があげられる。これらの抗体および手法を組み合わせることで、より高い純度で癌幹細胞を濃縮することができる。
【0111】
2. ヌクレオステミンプロモーターを用いた癌幹細胞の同定または分離法
本発明のヌクレオステミンプロモーターを用いた癌幹細胞の同定または分離は、例えば、下記の2.-(1)〜2.-(6)の手法により行うことができる。
【0112】
2.-(1)ヌクレオステミンプロモーター
プロモーターとは、細胞内でRNAポリメラーゼとの会合が可能な発現調節領域を含み、該領域の下流(3’末端方向)に存在するコーディング配列の転写を開始させる機能を有する領域を含むDNA上の領域をいう。本発明においてプロモーターを機能的に遺伝子に結合するとは、プロモーターが下流に接続した該遺伝子の転写を誘導可能なように連結された状態を言う。
【0113】
本発明の癌幹細胞の同定または分離に用いるヌクレオステミンプロモーターとしては、癌幹細胞でプロモーター活性を有するものであれば特に限定はないが、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジまたはニワトリなどのヌクレオステミンプロモーターを用いることができる。具体的には、配列番号1、2または3で表される塩基配列からなるDNAがあげられる。
【0114】
配列番号1で表される塩基配列は、マウスヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始点(1st atg)の下流6番目のgから該翻訳開始点の上流7078番目のgまでの約7kb からなる領域の配列である。
配列番号2で表される塩基配列は、マウスヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始点(1st atg)の下流6番目のgから該翻訳開始点の上流10058番目のgまでの約10kb からなる領域の配列である。
【0115】
配列番号3で表される塩基配列は、ヒトヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始点(1st atg)の下流3番目のaから該翻訳開始点の上流9998番目のaまでの約10kb からなる領域の配列である。
なお、前記マウスヌクレオステミン遺伝子の配列としては、Genbank Accession Number NM_153547、NM_178846、AI785289、AK034825、AK077523、AK087757、AK167094、AK167183、AY181025、AY185498、BC018560、BC037996、BF021177、BG065812、BG079080、AC154727、NW_000091、前記ヒトヌクレオステミン遺伝子の配列としては、Genbank Accession Number NM_014366、NM_206825、NM_206826、AF191018、AI028402、AK027514、AK027516、AY825265、BC001024、BF732788、CF272475、CR598596、CR607914、CR608648、AC104446、NT_005986を用いることができる。
【0116】
本発明で用いるDNAのプロモーター活性の測定方法は、該DNAのプロモーター活性を測定できればいかなる測定方法でもよいが、例えばレポータージーンアッセイ系により測定することができる。具体的には、下記の(1)〜(3)の工程により行うことができる。
【0117】
(1) 被検対象のプロモーターの下流に、例えばルシフェラーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、青色蛍光タンパク質遺伝子、黄色蛍光タンパク質遺伝子、赤色蛍光タンパク質遺伝子、β-ラクタマーゼ遺伝子これらの誘導体等のレポーター遺伝子を作動可能に連結した配列を含む活性測定用プラスミドを作製する。
(2) 前記(1)の活性測定用プラスミドを用いて癌幹細胞および対照細胞を形質転換する。ここで、対照細胞とは、癌幹細胞に由来する分化した(癌幹細胞としての性質を失った)癌細胞、あるいは癌幹細胞が由来する組織の正常細胞のことを言う。
(3) 前記(2)で得られた細胞におけるレポーター遺伝子の発現の有無を検出し、発現強度を測定する。
【0118】
本発明で用いるヌクレオステミンプロモーターDNAは、配列番号1、2または3で表される塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換または付加(以下、単に「変異」と称する場合がある)された塩基配列からなり、かつ癌幹細胞特異的なプロモーター活性を有するDNAを包含する。
該ヌクレオステミンプロモーターDNAは、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、配列番号1、2、または3で表される塩基配列からなるDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
【0119】
変異の数および導入位置は、変異後のDNAが癌幹細胞特異的なプロモーター活性を有していればいずれでもよい。癌幹細胞特異的なプロモーター活性の測定方法としては、例えば前記のレポーターアッセイ系があげられる。
本発明のDNAにおいて1以上の塩基が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1または複数の塩基配列中の位置において、1または複数の塩基の欠失、置換または付加があることを意味し、欠失、置換または付加が同時に生じてもよい。さらに、配列番号1、2、または3で表される塩基配列の3’側の翻訳開始点もしくは転写開始点より下流側を欠失してもよい。
【0120】
欠失、置換または付加される塩基の数は特に限定されないが、上記部位特異的変異法等の公知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であり、1〜1000個、好ましくは1〜500個、より好ましくは1〜100個、特に好ましくは1〜50個であり、1、5、10、20、30、40および50個を含む数である。
また、本発明のDNAが癌幹細胞特異的なプロモーター活性を有するためには、配列番号1、2、または3で表される塩基配列と、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有していることが好ましい。
【0121】
塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST [Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばScore=100、wordlength=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
【0122】
本発明のDNAは、配列番号1、2、または3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ癌幹細胞特異的なプロモーター活性を有するDNAを包含する。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとは、配列番号1、2、または3で表される塩基配列を有するDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University (1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、上記したBLAST等を用いて計算したときに、配列番号1、2、または3で表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、より好ましくは90%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
【0123】
2.-(2)ヌクレオステミンプロモーターを含むベクター
本発明で用いるベクターは、外来遺伝子配列の上流側に上述のヌクレオステミンプロモーターDNA、例えばは配列番号1、2あるいは3で表される塩基配列からなるDNAが連結されており、癌幹細胞特異的に外来遺伝子を発現させることができれば特に制限はない。
【0124】
上記外来遺伝子としては、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、成長ホルモン遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、青色蛍光タンパク質遺伝子、黄色蛍光タンパク質遺伝子、赤色蛍光タンパク質遺伝子、β-ラクタマーゼ遺伝子ならびにそれらの誘導体等のレポーター遺伝子があげられる。前記誘導体には、人工的に作製された変異体も含まれる。
【0125】
該ヌクレオステミンプロモーターを機能的にレポーター遺伝子に結合した遺伝子を動物細胞あるいは非ヒト哺乳類の受精卵に導入するベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体への組み込みが可能なもの、あるいは一過性の発現が可能なものが用いられる。プラスミドベクター、ウイルスベクターなどいずれのベクターを用いることもできる。また、適当な制限酵素を用いてベクター部分を切断、除去し、該プロモーターとレポーター遺伝子を含む領域を細胞や受精卵に導入することもできる。
【0126】
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、プラスミド、ファージ、コスミド等があげられ、例えば、pCDNAI(Invitrogen社製)、pCDM8(Invitrogen社製)、pAGE107[特開平3-22979;Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAS3-3(特開平2-227075)、pCDM8[Nature, 329, 840 (1987)]、pCDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pAGE210、pNASS β、pGL3、pCAT3、pβgal、pEGFP-1、pEGFP-N1、pEYFP-1、pSEAP2、pGeneBLAzer-TOPO等を例示することができる。
【0127】
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology, 3, 133 (1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)〕、Virology, 52, 456 (1973)に記載の方法等をあげることができる。
【0128】
また、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入し、用いることもできる。該組換えウイルスベクタープラスミドを、該ウイルスベクタープラスミドに適合したパッケージング細胞に導入する。
パッケージング細胞としては、ウイルスのパッケージングに必要なタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも1つを欠損している組換えウイルスベクタープラスミドの該欠損するタンパク質を補給できる細胞であればいかなるものも用いることができる。例えばヒト腎臓由来のHEK293細胞、マウス線維芽細胞NIH3T3などを用いることができる。
【0129】
パッケージング細胞で補給するタンパク質としては、レトロウイルスベクターの場合はマウスレトロウイルス由来のgag、pol、envなどのタンパク質、レンチウイルスベクターの場合はHIVウイルス由来のgag、pol、env、vpr、vpu、vif、tat、rev、nefなどのタンパク質、アデノウイルスベクターの場合はアデノウイルス由来のE1A、E1Bなどのタンパク質、アデノ随伴ウイルスの場合はRep(p5,p19,p40)、Vp(Cap)などのタンパク質を用いることができる。
【0130】
ウイルスベクタープラスミドとしてはMFG [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 6733-6737 (1995)]、pBabePuro [Nucleic Acids Research, 18, 3587-3596 (1990)],LL-CG、CL-CG、CS-CG、CLG [Journal of Virology, 72, 8150-8157 (1998)]、pAdex1 [Nucleic Acids Res., 23, 3816-3821 (1995)]等が用いられる。
上記組換えウイルスベクタープラスミドを上記パッケージング細胞に導入することで組換えウイルスベクターを生産することができる。
【0131】
上記パッケージング細胞への上記ウイルスベクタープラスミドの導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法[特開平2-227075]、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等をあげることができる。
【0132】
2.-(3)ヌクレオステミンプロモーターを含むベクターを導入した細胞からの癌幹細胞の同定または分離
上記、ヌクレオステミンプロモーターの下流にレポーター遺伝子を結合したベクターを導入する癌細胞としては、動物由来の癌細胞であればいかなる細胞を用いることもできる。具体的には、上記1.に記載した腫瘍由来の癌細胞あるいは癌細胞株が挙げられる。動物としては、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、またはニワトリ、癌細胞としては、血液癌、固形癌由来の癌細胞あるいは、培養癌細胞株等用いることができる。
【0133】
また、正常細胞に、ヌクレオステミンプロモーターの下流にレポーター遺伝子を結合したベクターを導入した後、以下の2.-(4)に記載されているように、オンコジーンの導入や化学発癌剤処理、放射線の照射により癌化させた細胞も用いることができる。
癌幹細胞の同定または分離は、それぞれのレポーター遺伝子の特性に応じた検出法を用いることが好ましく、細胞中のレポーター遺伝子の発現量は公知の方法〔東京大学医科学研究所制癌研究部編、新細胞工学プロトコール、秀潤社(1993年)、Biotechniques, 20, 914 (1996)、J. Antibiotics, 49, 453 (1996), Trends in Biochemical Sciences, 20, 448 (1995)、細胞工学, 16, 581 (1997)等に記載の方法〕を用いて測定することができる。上記1.-(11)に記載の方法に準じた、セルソーター、フローサイトメーター、および磁気ビーズを用いた方法、上記1.-(8)に記載の方法に準じた、該レポーター遺伝子に対する特異的なプローブを用いたin situ hybridization、上記1.-(9-1)に記載の方法に準じた、該レポータータンパク質に対する特異的な抗体を用いた免疫組織化学的検出法、あるいは上記1.-(9-2)に記載の方法に準じた、該レポータータンパク質に特異的な結合を示す蛍光標識したアプタマー、あるいは上記2.-(1)に記載の方法に準じた、該レポータータンパク質の酵素活性により生成する蛍光物質等を測定する方法等を用いることができる。
【0134】
本発明の方法により同定または分離された細胞が癌幹細胞の性質を有することは、その細胞が由来する腫瘍を構成する多様な癌細胞を生み出す能力、自己を複製する能力および造腫瘍能力を有するかを確認することにより調べることができる。分化した通常の癌細胞と比較して、非ヒト免疫不全動物、好適には免疫不全マウス、例えば、NOD/SCIDマウス、NOGマウス等に、移植した際、例えば、1/2以下、好ましくは、1/5以下、更に好ましくは、1/10以下の細胞数でレシピエントマウスに腫瘍を形成する能力を有すること確認することにより調べることができる。
【0135】
2.-(4)ヌクレオステミンプロモーターを含むベクターを導入したトランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物からの癌幹細胞の同定または分離
非ヒト哺乳動物をレシピエント動物として、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物があげられる。とくに、マウス、ラット等のるげっ歯類が好ましい。
【0136】
本発明で用いるトランスジェニック非ヒト動物の作製は、例えば、マウス胚の操作マニュアル(近代出版、1989)、分子生物学プロトコール(南江堂、1994)、ジーンターゲティング(羊土社、1995)等により行うことができる。
具体的には、まず、過排卵誘起した雌と種雄とを交配させる。交配後約12時間を経た雌から卵管を取り出し、1細胞期(前核期)の受精卵を採取し、適切な培養液に入れる。ついで、本発明のベクターを受精卵の前核にマイクロインジェクションする。一方、性成熟に達した雌に精管切除した雄を交尾させて、偽妊娠雌を作製する。マイクロインジェクション後、生存した受精卵を前記偽妊娠雌の卵管内に移植する。その後、卵管内に移植された受精卵より発生した胎仔を自然分娩又は切開手術により取り出す。得られた仔の尾の一部からゲノムDNAを調製する。得られたDNAを分析して、得られた仔がトランスジェニック動物であるか否かを調べる。トランスジェニック動物を交配して系統を樹立する。
【0137】
本発明で用いるトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、ベクターが哺乳動物の染色体中に組み込まれていてもよい。
例えば以下の方法で、トランスジェニック非ヒト哺乳動物に腫瘍を形成させ、レポーター遺伝子の発現を指標に、癌幹細胞を同定、濃縮、分離することができる。
非ヒト哺乳動物に腫瘍を形成させる方法としては、オンコジーンの導入、放射線(例えばこれに限定されないが、重粒子線、エックス線、ガンマ線、紫外線、マイクロ波など)照射、化学発癌剤(例えばこれに限定されないが、N-ethyl-N-nitrosourea、N-Methyl-N-nitrosourea、3,4-benzopyrene、3-methylcholanthrene、2-acetylaminofluorene、7,12-dimethylbenz[a]anthracene、N-nitroso-N-buthylurea、7,8,12-trimethylbenz(a)anthraceneなど)の投与等いずれの方法を用いることもできる。
【0138】
オンコジーンとしては、例えばこれに限定されないが、血液癌であれば、Meis1、HoxA9、HoxD13、HoxB3、HoxB8、HoxA10、MLL-ENZ、MLL-AF9、AML-ETO、MOZ-TIF2、CDX2、Bcr-Abl、BCL6、maf-B、FGFR、c-maf、SCL、Hox11、LMO2、LMO1、E2a-Pbx1、TEL-Abl、mycなど、固形癌であれば、ENS-WT1、k-ras、Bcrp1、ras、src、jun、met、fos、retなどが挙げられるが、標的臓器あるいは組織に腫瘍を形成するものであれば、いずれのオンコジーンを用いることもできる。また、それぞれを組み合わせて用いることもできる。
【0139】
オンコジーンの非ヒト哺乳動物への導入に用いるベクターとしては、該遺伝子を発現することができるものであれば、2.-(2)に記載されているように、プラスミド、ファージ、コスミド、ウイルス等いずれのベクターを用いることもできる。また、適当な制限酵素等を用いて、ベクター部分を切断、除去し、該遺伝子の発現に必要な領域を含む断片を調製して用いることもできる。また、該遺伝子のレシピエントへの導入方法としては、該遺伝子を発現させることができる方法であれば、公知の方法を用いることができる。以下に、ウイルスベクターを用いる場合について説明するが、これに限定されない。
【0140】
オンコジーンの遺伝子DNA断片、あるいは全長cDNAをウイルスベクタープラスミド内のプロモーターの下流に挿入することにより、組換えウイルスベクタープラスミドを造成する方法としては、目的の遺伝子DNAがウイルスベクタープラスミド内のプロモーターの下流に挿入できれば特に限定されないが、例えば、Nature, 423, 255-260(2003)に記載された方法に基づき組換えウイルスベクタープラスミドを造成することができる。
【0141】
該組換えウイルスベクタープラスミドを、該ウイルスベクタープラスミドに適合したパッケージング細胞に導入する。パッケージング細胞としては、ウイルスのパッケージングに必要なタンパク質をコードする遺伝子の少なくとも1つを欠損している組換えウイルスベクタープラスミドの該欠損するタンパク質を補給できる細胞であればいかなるものも用いることができる。例えばヒト腎臓由来のHEK293細胞、マウス線維芽細胞NIH3T3などを用いることができる。
【0142】
パッケージング細胞で補給するタンパク質としては、レトロウイルスベクターの場合はマウスレトロウイルス由来のgag、pol、envなどのタンパク質、レンチウイルスベクターの場合はHIVウイルス由来のgag、pol、env、vpr、vpu、vif、tat、rev、nefなどのタンパク質、アデノウイルスベクターの場合はアデノウイルス由来のE1A、E1Bなどのタンパク質、アデノ随伴ウイルスの場合はRep(p5,p19,p40)、Vp(Cap)などのタンパク質を用いることができる。
【0143】
ウイルスベクタープラスミドとしては上記パッケージング細胞において組換えウイルスが生産できるものが用いられる。
ウイルスベクタープラスミドとしてはMFG [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 6733-6737 (1995)]、pBabePuro [Nucleic Acids Research, 18, 3587-3596 (1990)],LL-CG、CL-CG、CS-CG、CLG [Journal of Virology, 72, 8150-8157 (1998)]、pAdex1 [Nucleic Acids Res., 23, 3816-3821 (1995)]等が用いられる。
【0144】
プロモーターとしては、動物組織中で該タンパク質を発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0145】
上記組換えウイルスベクタープラスミドを上記パッケージング細胞に導入することで組換えウイルスベクターを生産することができる。上記パッケージング細胞への上記ウイルスベクタープラスミドの導入法としては、例えば、リン酸カルシウム法[特開平2-227075]、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]等をあげることができる。
【0146】
該ウイルスベクターを、本発明のベクターを含有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物に投与することにより、該動物に腫瘍を形成することができる。
また、非ウイルス遺伝子移入法によっても、該動物に腫瘍を形成することができる。非ウイルス遺伝子移入法としては、リン酸カルシウム共沈法〔Virology, 52, 456 (1973);Science, 209, 1414 (1980)〕、マイクロインジェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77, 5399 (1980);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77, 7380 (1980);Cell, 27, 223 (1981);Nature, 294, 92 (1981)〕、リポソームを介した膜融合-介在移入法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,84, 7413 (1987);Biochemistry, 28, 9508 (1989);J. Biol. Chem., 264, 12126 (1989);Hum. Gene Ther., 3, 267 (1992);Science, 249, 1285 (1990);Circulation, 83, 2007 (1992)〕あるいは直接DNA取り込みおよび受容体-媒介DNA移入法〔Science, 247, 1465 (1990);J. Biol. Chem., 266, 14338 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 3655 (1991);J. Biol. Chem., 264, 16985 (1989);BioTechniques, 11, 474 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 3410-3414 (1990);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88, 4255 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 4033 (1990);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88, 8850 (1991);Hum. Gene Ther., 3, 147 (1991)〕等があげられる。
【0147】
癌細胞または癌組織からの癌幹細胞の同定または分離は、以下2.-(5)および2.-(6)に記載の方法により行うことができる。
また、該トランスジェニック非ヒト哺乳動物由来の細胞を分離した後、放射線(例えば、重粒子線、エックス線、ガンマ線、紫外線、マイクロ波など)照射、化学発癌剤(例えば、N-ethyl-N-nitrosourea、N-Methyl-N-nitrosourea、3,4-benzopyrene、3-methylcholanthrene、2-acetylaminofluorene、7,12-dimethylbenz[a]anthracene、N-nitroso-N-buthylurea、7,8,12-trimethylbenz(a)anthraceneなど)処理、あるいはオンコジーンを導入し、得られた細胞をレシピエントの非ヒト哺乳動物に導入する。また、該細胞を培養して用いることもできる。
【0148】
オンコジーンとしては、例えばこれに限定されないが、血液癌であれば、Meis1、HoxA9、HoxD13、HoxB3、HoxB8、HoxA10、MLL-ENZ、MLL-AF9、AML-ETO、MOZ-TIF2、CDX2、Bcr-Abl、BCL6、maf-B、FGFR、c-maf、SCL、Hox11、LMO2、LMO1、E2a-Pbx1、TEL-Abl、mycなど、固形癌であれば、ENS-WT1、k-ras、Bcrp1、ras、src、jun、met、fos、retなどが挙げられるが、標的臓器あるいは組織由来の細胞を癌化させる能力を有するものであれば、いずれのオンコジーンを用いることもできる。また、それぞれを組み合わせて用いることもできる。
【0149】
該トランスジェニック非ヒト哺乳動物由来の細胞としては、いかなる組織由来の細胞でも用いることができ、例えば、骨髄細胞や末梢血細胞、造血幹細胞、各種臓器由来の細胞等を用いることができる。また、レシピエントとして用いる非ヒト哺乳動物としては、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物があげられるとくに、マウス、ラット等に代表されるげっ歯類が好ましい。更に、免疫不全動物、例えば、NOD/SCIDマウス、NOGマウスが好ましく、放射線処理した後、用いることが更に好ましい。
【0150】
2.-(5)トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物の血液癌からの癌幹細胞の同定または分離
トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物から癌幹細胞を有する骨髄細胞を取得する方法としては、例えば以下の手順で取得することができる。
【0151】
トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物を頚椎脱臼により致死させ、70%エタノールで充分消毒した後、大腿骨の皮膚ならびに大腿四頭筋を切除する。膝関節の部分にハサミをいれて関節をはずし、大腿骨背面の筋肉を除去する。股関節の部分にハサミを入れて関節を外し、大腿骨を取り出す。大腿骨に付着している筋肉をハサミでできるだけ除去した後、大腿骨の両端をハサミで切断する。骨の太さに応じた適当なサイズの針を2.5mLの注射器に装着し、10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM、DMEM、あるいはIMDM等の細胞培養用培地約1.5mLを注射器に充填した後、注射針の先端を大腿骨の膝関節側の断端に差し込む。注射器内の培養液を骨髄内に注入することで、股関節側の断端から骨髄細胞が押し出される。得られた骨髄細胞はピペッテイングにより培養液中に浮遊させる。該骨髄液からは、上記1.-(1)に記載した、ヒト骨髄液からの骨髄細胞の調製と同様の方法により、癌幹細胞を有する骨髄細胞混合物を調製することができる。
【0152】
該骨髄細胞混合物からの癌幹細胞の同定または、分離は、上記2.-(3)に記載の方法により行うことができる。
【0153】
2.-(6)トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物の固形癌からの癌幹細胞の同定または分離
トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物から癌幹細胞を有する癌細胞を取得する方法としては、特に限定されないが以下の手順で取得することができる。
【0154】
トランスジェニック非ヒト哺乳発癌動物を頚椎脱臼により致死させ、70%エタノールで充分消毒した後、腫瘍形成部を切開し腫瘍部位を取り出す。得られた癌細胞は、タンパク質分解酵素であれば特に限定されないが、例として、トリプシン、コラゲナーゼ、もしくはヒアルロニダーゼにより培養液中に浮遊させる。該癌細胞液からは、上記1.-(3)に記載した、ヒト癌細胞液からの癌細胞の調製と同様の方法により、癌幹細胞を有する癌細胞混合物を調製することができる。
【0155】
該癌細胞混合物からの癌幹細胞の同定または分離は、上記2.-(3)に記載の方法により行うことができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0156】
ヌクレオステミンを用いた癌幹細胞の同定および分離(1)
白血病オンコジーンHoxA9/Meis1を発現するレトロウイルスベクターを文献の方法[Nature, 423, 255-260(2003)]に基づき調製した。一方、参考例で作製した、ヌクレオステミン遺伝子の上流配列およびEGFP(増強された緑色蛍光タンパク質)遺伝子を含むトランスジェニックマウスの骨髄から公知の方法を用いて取得した血球系細胞についてFACSソーター(BD FACS Aria, BD Biosystems社)を用いて、細胞表面抗原の発現を指標にしてlineage陰性の細胞集団(Lin-)を分離し、さらに造血幹細胞が濃縮されているc-kit陽性 Sca-1陽性の細胞集団(KSL)を分取した。なお、細胞表面抗原に対する抗体としては、抗c-kit抗体(BD Parmingen社製、2B8)、抗Sca-1抗体(BD Parmingen社製、D7)、抗CD4抗体(BD Parmingen社製、L3T4)、 抗CD8抗体(BD Parmingen社製、53-6.72)、抗B220抗体(BD Parmingen社製、RA3-6B2)、 抗TER-119抗体(BD Parmingen社製)、抗Gr-1抗体(BD Parmingen社製、RB6-8C5)および抗Mac-1抗体(BD Parmingen社製、M1/70)を用いた。CD4およびCD8はT細胞のマーカー、B220はB細胞のマーカー、TER-119は赤血球のマーカー、Gr-1は顆粒球のマーカー、Mac-1はマクロファージのマーカーであり、これらのマーカーのいずれかが陽性の細胞をlineage陽性細胞、全て陰性の細胞をlineage陰性細胞とした。
【0157】
該KSL細胞に公知の方法[Nature, 431, 997-1002 (2004)]を用いて、HoxA9/Meis1を発現するレトロウイルスベクターを感染させ、HoxA9/Meis1を発現するKSL細胞を調製し、レシピエントマウスに移植した。すなわち、C57BL/6マウス(Ly5.1)をレシピエントマウスとして用い、致死量のX線 (線原9.5Gy、0.5 Gy/min)を照射した後、尾静脈よりHoxA9/Meis1を発現するKSL細胞を注入した。またその際、4×105個のC57BL/6マウス由来骨髄単核球を同時に注入した。レシピエントマウスは、移植約50日後に急性骨髄性白血病を発症し、死亡した。発症後、骨髄細胞を採取し、EGFPの発現を調べたところ、約90%の細胞はEGFP陽性であった(図1)。この骨髄細胞をEGFPの発現に従って4分割し、発現の弱い方から1番,2番,3番,4番とした(図1)。これらの分画のヌクレオステミンのメッセンジャーRNAの発現は、EGFPの発現と相関していた。4分画の白血病の細胞表面マーカーを調べると、EGFPの発現が高くなる程c-kit陽性の細胞集団が多いことが判明した。
【0158】
そこで、EGFPの発現とc-kitの発現を同時に検討したところ、c-kit-EGFP-/+(1番), c-kit-EGFP++(2番), c-kit+EGFP++(3番), c-kit+EGFP+++(4番)の4分画に分かれていた(図2A)。形態的に1番は小型の好中球への分化傾向の強い細胞で、2番および3番はやや未分化な骨髄芽球の形態を示すのに対して、EGFP強陽性の4番は、大型の未分化性の強い細胞集団であった。
【0159】
それぞれの細胞集団を、SCF (stem cell factor)、TPO (トロンボポエチン)、IL-6、IL-3およびG-CSFを添加しメチルセルロース法で培養したところ、EGFPの発現量に応じてコロニー形成能が高かった(図4B)。また、EGFP強陽性集団(c-kit+EGFP+++)由来コロニーは、EGFP陽性の未分化型細胞および陰性の分化型細胞集団から構成されるのに対して、EGFP中陽性の細胞集団(c-kit+EGFP+)からは、分化型でEGFP弱陽性の細胞のみが観察された。従って、EGFP強陽性集団から、白血病細胞が分化誘導され、産生されることが示唆され、EGFP強陽性細胞が、白血病の源の集団であること、すなわち、癌幹細胞であることが示された。
【0160】
さらに、c-kit-EGFP-/+(1番), c-kit-EGFP++(2番), c-kit+EGFP++(3番), c-kit+EGFP+++(4番)の10個づつを4×105個のC57BL/6マウス由来骨髄単核球と共に放射線照射C57BL/6マウスに移植したところ、c-kit+EGFP+++のみが白血病を発症した(図3)。このEGFP強陽性の白血病集団は、生体の中で、他の分画の癌細胞を産生することから、HoxA9/Meis1による急性骨髄性白血病モデルにおいてヌクレオステミン高発現細胞集団が、癌幹細胞であることが示された。
【実施例2】
【0161】
ヌクレオステミンを用いた癌幹細胞の同定および分離(2)
白血病オンコジーンBcr-ablを発現するレトロウイルスベクターを文献の方法[J. Exp. Med., 189, 1399-1412 (1999)]に基づき調製した。一方、参考例で作製した、ヌクレオステミン遺伝子の上流配列およびEGFP遺伝子を含むトランスジェニックマウスの骨髄から公知の方法を用いて取得した血球系細胞についてFACSソーター(BD FACS Aria, BD Biosystems社)を用いて、実施例1と同様の方法によりKSL細胞集団を調製した。該KSL細胞集団に公知の方法を用いて、Bcr-ablを発現するレトロウイルスベクターを感染させ、Bcr-ablを発現するKSL細胞を調製し、レシピエントマウスに移植した。すなわち、C57BL/6マウス(Ly5.1)をレシピエントマウスとして用い、致死量のX線 (線原9.5Gy、0.5 Gy/min)を照射した後、尾静脈よりBcr-ablを発現するKSL細胞を注入した。またその際、4×105個のC57BL/6マウス由来骨髄単核球を同時に注入した。
【0162】
レシピエントマウスは、約20日間で白血病を発症して死亡した。このマウスの骨髄中の白血病細胞を、EGFPとc-kitの発現量に基づいて、1番、2番、3番、4番の分画に分けた(図4A)。1番、2番、3番、4番の細胞を、サイトカイン(SCF、TPO、IL-6、IL-3およびG-CSF)とともにメチルセルロースにて培養したところ、EGFP強陽性の細胞集団が、最も高い頻度でコロニーを形成した(図4B)。以上より、Bcr-ablによる慢性骨髄性白血病モデルにおいても、ヌクレオステミン高発現細胞集団が、癌幹細胞であることが示された。
【実施例3】
【0163】
ヌクレオステミンを用いた癌幹細胞の同定および分離(3)
p53-/-Ptch1+/-マウスを文献の方法〔Cancer Res. 2001 Jan 15;61(2):513-6〕に基づき作製した。3ヶ月以降に小脳由来の髄芽腫(medulloblastoma)が発生することを確認した。このマウスを、参考例で作製したヌクレオステミン遺伝子の上流配列およびEGFP遺伝子を含むトランスジェニックマウスと交配させた。髄芽腫細胞をEGFPの発現量を指標にして、EGFP強陽性、陽性、弱陽性の細胞を分取した。分取した細胞を、ヌードマウス(SLCより購入)の脳内基底核に一匹当り1.5 x105細胞になるように注入した。2ヶ月後、レシピエントマウスの脳内を観察したところ、EGFP強陽性細胞を注入したマウスにEGFP陽性の癌細胞が観察された。一方、EGFP陽性、弱陽性細胞を注入したマウスには、腫瘍の発生を肉眼的に観察できなかった。以上の知見により、脳腫瘍のがん幹細胞を特定できることが示された。
【0164】
(参考例1)
ヌクレオステミン遺伝子の転写調節配列のクローン化
1.マウスヌクレオステミン遺伝子の上流配列のクローン化
まず、マウスヌクレオステミン遺伝子を含むゲノム配列のクローニングを行った。
マウスゲノムが挿入されたBACクローン(BACPAC Resources Center)からマウスヌクレオステミン遺伝子(Genbank Accession No. BC037996)を含むクローン(RP23-84O17、Invitrogen社)を選出し、以下のサザン解析に供した。
サザン解析用のプローブは、6週齢オスのC57Bl/6マウス(日本クレア社)の尾部より精製したゲノムDNAを鋳型にして、配列番号12および13でそれぞれ表されるマウスヌクレオステミン遺伝子特異的プライマーを用いて増幅し、PCR DIG Probe Synthesis Kit (Roche社)でDIG標識したものを用いた。
【0165】
制限酵素(KpnI, BamHI, EcoRIまたはHindIII, TaKaRa社)で処理したBACクローンRP23-84O17を転写したナイロンメンブレン(Hybond N+, Amersham社)に対して、上記DIG標識したマウスヌクレオステミン遺伝子のプローブをDIG High Prime DNA Labeling and Detection Starter Kit II(Roche社)を用いてハイブリダイズさせた。
その結果、RP23-84O17には、マウスゲノム配列(Genbank Accession No. NW_000091)から予想される長さのヌクレオステミン遺伝子配列が含まれていることを確認した。
【0166】
次に、RP23-84O17をKpnIで酵素処理して得られた断片をpBlueScriptIISK(-)(Stratagene社)にクローニングしたライブラリーを作製し、上記プローブおよびDIG High Prime DNA Labeling and Detection Starter Kit II (Roche社)を用いて、ヌクレオステミン遺伝子の上流配列を含むKpnI断片(12.2kb)のサブクローンを確認した。配列解析を行った結果、クローニングした断片にはヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始点(1st ATG)より上流10kbを含む配列が含まれていた。
【0167】
2.マウスヌクレオステミン遺伝子の上流配列を含むレポーターベクターの構築
増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子レポーターベクター(pEGFP-N1, BD Biosciences Clontech社)をAseIおよびBglIIにて切断して平滑末端に変換した後、再結合することにより、プロモーターおよびエンハンサー領域を切除したレポーターベクター(pPLE)を構築した。上記のKpnI断片(12.2kb)の制限酵素部位KpnIから翻訳開始点(ATG)の下流に存在するStuIまでの10kbの配列をpPLEの制限酵素部位KpnIからBamHI(平滑化処理)に挿入し、ヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始位置より上流10kbのゲノム配列を含むEGFPレポーターベクターpPLEmNSgKSB10(図7)を構築した。pPLEmNSgKSB10に含まれる、ヌクレオステミン遺伝子の翻訳開始位置より上流10kbのゲノム配列を、配列番号2に示す。
【0168】
3.ヌクレオステミン遺伝子上流10kb配列の転写調節能
上記の、ヌクレオステミン遺伝子の上流10kbのゲノム配列の転写調節能を解析するため、構築したEGFPレポーターベクターpPLEmNSgKSB10のレポーター活性を検討した。
ヌクレオステミン遺伝子の発現が報告されている胚性幹細胞(ES細胞)[Cell, 94, 339-352 (1998)]にpPLEmNSgKSB10をエレクトロポレーション(GenePulser, BioRad社)により導入し、300μg/mLのG418(Geneticin, Invitrogen社)存在下で培養することにより、pPLEmNSgKSB10安定導入ES細胞株を樹立した。
樹立した細胞株を蛍光顕微鏡(ECLIPSE TE300, Nikon社)下で観察した結果、多くの細胞でEGFPが発現されており、ヌクレオステミン遺伝子上流10kbのゲノム配列がES細胞において転写活性を示すことが明らかとなった。
【0169】
さらに、前記細胞株をLIF(白血病阻害因子)非存在下で培養することにより分化誘導させた結果、レポーター活性が低下することが明らかとなった。
次に、前記細胞株について、FACSソーター(BD FACSVantage SE System, BD Biosystems社)でEGFPの発現量の高い細胞集団(EGFP++)および低い細胞集団(EGFP+)を分取し、それぞれの細胞集団のEGFPの発現レベルを調べた。
【0170】
すなわち、分取した細胞から前記と同様にcDNAを合成し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems社)を用いて定量RT-PCRを行った。マウスヌクレオステミン遺伝子特異的プライマーの配列は配列番号8および9に、マウスGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子特異的プライマーの配列は配列番号10および11に、EGFP遺伝子特異的プライマーの配列は配列番号14および15にそれぞれ示した。
【0171】
また、各PCR プライマーセットで増幅したPCR産物をpT7Blue (TaKaRa社)にクローニングしたものを調製し、これらを段階希釈したものから検量線を作成して各サンプルにおける遺伝子の発現量を定量した。
なお、各サンプルのヌクレオステミン遺伝子の発現量をGAPDH遺伝子の発現量に対する相対量で表した。
【0172】
結果を図8に示す。前記細胞集団におけるEGFPレポーター遺伝子の発現量は、内在性のヌクレオステミン遺伝子の発現に相関していることが明らかとなった。この結果から、クローン化したヌクレオステミン遺伝子上流約10kbのゲノム配列には、ヌクレオステミン遺伝子の正および負の転写調節領域が含まれていることが示された。
【0173】
参考例2
EGFPレポーター遺伝子トランスジェニックマウスの作製
pPLEmNSgKSB10に含まれるヌクレオステミン遺伝子の上流10kbのゲノム配列をKpnI、ついでNdeIで切断した後、Erase-a-Base System(Promega社)を用いて、5’側から段階的に欠失させた。
プラスミドを再環状化した後、大腸菌に導入し、pPLE-N1 mNSgKSB10 AU7078を得た。pPLE-N1 mNSgKSB10 AU7078に含まれる、約7kbのヌクレオステミン遺伝子上流の塩基配列を配列番号1に示す。
pPLE-N1 mNSgKSB10 AU7078に含まれる約7kbのヌクレオステミン遺伝子上流配列およびEGFP遺伝子を含むSalI/NotI断片を、pCMV-SPORT6 (Invitrogen社)に結合させ、プラスミドNS promoter7-EGFP/pCMV-SPORT6を作製した。その後、pPLE-N1 mNSgKSB10 AU7078に含まれるSV40polyA部分をPCRにて増幅させた。その際、5’側のプライマー(配列番号16)にNotI切断部位を、3’側のプライマー(配列番号17)にNotI-SalI切断部位を挿入した。PCR産物をNotIにて消化した後、NS promoter7-EGFP/pCMV-SPORT6のNotI部位に挿入し、pNS Promoter7-EGFPを作製した(図7)。
【0174】
株式会社ワイエス研究所にて、制限酵素SalIを用いてヌクレオステミン遺伝子転写調節配列-EGFP-PolyA部分のみを切り出したフラグメントを精製し、C57BL/6由来の受精卵前核に注入した。遺伝子導入受精卵は常法に従って仮親の卵管に移植し、個体へと発生させた。得られた初代トランスジェニックマウス(F0)をC57BL/6マウスと交配させ系統を樹立した。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】レポーター遺伝子であるEGFPの急性骨髄性白血病を発症したマウス骨髄細胞における発現量を示した図である。横軸は、EGFPの蛍光強度を示し、縦軸は、カウント数を表す。
【図2】Aは、レポーター遺伝子であるEGFPおよびc-kitの急性骨髄性白血病を発症したマウス骨髄細胞における発現量を示した図である。横軸はEGFPの蛍光強度を示し、縦軸はc-kitの蛍光強度を表す。 Bは、図2Aにて4分類(1番、2番、3番、4番)された細胞画分それぞれのメチルセルロース内でのコロニー形成能を示した図である。縦軸は、細胞1000個当りに対するコロニー数を表す。
【図3】図2Aにて4分類(1番、2番、3番、4番)された細胞画分それぞれをレシピエントマウスに移植し、白血病発症に伴うマウス生存率および生存期間を示した図である。横軸は時間(日数)を示し、縦軸は生存率(%)を表す。
【図4】Aは、レポーター遺伝子であるEGFPおよびc-kitの慢性骨髄性白血病を発症したマウス骨髄細胞における発現量を示した図である。横軸はEGFPの蛍光強度を示し、縦軸はc-kitの蛍光強度を表す。 Bは、図4Aにて4分類(1番、2番、3番、4番)された細胞画分それぞれのメチルセルロース内でのコロニー形成能を示した図である。縦軸は、細胞5000個当りに対するコロニー数を表す。
【図5】pPLEmNSgKSB10の制限酵素地図を示した図である。
【図6】pPLEmNSgKSB10を安定導入したES細胞株を、レポーター活性を指標にしてFACSにより、EGFP高発現細胞集団(EGFP++)とEGFP低発現細胞集団(EGFP+)に分離し、それぞれにおける内在性NS遺伝子(□カラム)とEGFP遺伝子の発現量(■カラム)をRT-PCRで測定し、比較した結果を示した図である。縦軸は、遺伝子の相対的発現量を表す。
【図7】pNS Promoter7-EGFPの制限酵素地図を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0176】
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成DNA
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号11−人工配列の説明:合成DNA
配列番号12−人工配列の説明:合成DNA
配列番号13−人工配列の説明:合成DNA
配列番号14−人工配列の説明:合成DNA
配列番号15−人工配列の説明:合成DNA
配列番号16−人工配列の説明:合成DNA
配列番号17−人工配列の説明:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌幹細胞含む癌細胞または癌組織を調製し、該癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞を検出し、該ヌクレオステミンを発現する細胞を癌幹細胞と同定することからなる癌幹細胞の同定方法。
【請求項2】
癌幹細胞を含む癌細胞または癌組織を調製し、該癌細胞または癌組織からヌクレオステミンを発現する細胞を検出し、該ヌクレオステミンを発現する細胞を該癌細胞または癌組織から分離することからなる癌幹細胞の分離方法。
【請求項3】
ヌクレオステミンが、配列番号4または5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ヌクレオステミンが、配列番号6または7で表される塩基配列でコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、細胞中の該ヌクレオステミンのメッセンジャーRNAを検出することである請求項1〜4記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオステミンのメッセンジャーRNAを検出する方法が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションを用いることである請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、細胞中の該ヌクレオステミンを検出することを特徴とする請求項1〜4記載の方法。
【請求項8】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、該ヌクレオステミンに対する特異的な抗体を用いることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、免疫組織化学的方法である請求項7〜9記載の方法。
【請求項11】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、アプタマーを用いる方法である請求項7記載の方法。
【請求項12】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、セルソーター、フローサイトメーター、あるいは磁気ビーズを用いる方法である請求項7記載の方法。
【請求項13】
ヌクレオステミンを発現する細胞を検出する方法が、該ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターを含むDNAをレポーター遺伝子に機能的に結合した配列を有するDNAを細胞に導入し、該レポーター遺伝子の発現を検出する方法である請求項7記載の方法。
【請求項14】
ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2または3で表される塩基配列からなるDNAである請求項13記載の方法。
【請求項15】
ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列において1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである請求項13記載の方法。
【請求項16】
ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである請求項13記載の方法。
【請求項17】
ヌクレオステミン遺伝子のプロモーターが配列番号1、2、または3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ癌幹細胞においてプロモーター活性を有するDNAである請求項13記載の方法。
【請求項18】
レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、セルソーター、フローサイトメーター、あるいは磁気ビーズを用いる方法である請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、該レポータータンパク質に対する特異的な抗体を用いた免疫組織化学的方法あるいはウェスタンブロットを用いる方法である請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
レポーター遺伝子の発現を検出する方法が、該レポーター遺伝子のメッセンジャーRNAを測定する方法である請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
癌細胞が血液癌である請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
癌細胞が固形癌由来である請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
癌細胞が培養癌細胞株である請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−102012(P2008−102012A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284662(P2006−284662)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】