説明

癌患者における診断使用のための方法及び組成物

ここに開示されるものは、癌を有する患者に最適な臨床的利益を与えそうである治療を識別するのに有用な方法及び組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床結果の予測、及び抗血管新生療法を用いて治療された癌患者のモニタに有用な方法及び組成物に関する。
【0002】
癌は、ヒトの健康に対する最も致命的な脅威の一つである。米国だけで、毎年約130万人もの新しい患者が癌に罹患しており、循環器疾患に次いで第2番目の死因であり、およそ4人に1人の死亡を占める。固形腫瘍がその死亡のほとんどの原因である。ある種の癌の医療治療には顕著な進歩があったが、全ての癌に対する全体的な5年生存率は、過去20年間で約10%改善されたにすぎない。癌、又は悪性腫瘍は、制御できない形で転移し急速に増殖し、適時な検出及び治療は極めて困難にする。
【0003】
癌の種類に応じて、患者は一般的に、化学療法、放射線および抗体ベースの薬剤を含む、患者に有用な様々な治療の選択がある。異なる治療投薬計画からの臨床結果を予測するのに有用な診断法は、これらの患者の臨床管理に大きな利益を与える。様々な研究が、例えば突然変異特異的アッセイ、マイクロアレイ分析、qPCR等により、遺伝子発現と特定の癌種の同定との相関性を研究してきた。このような方法は、患者が示す癌の同定及び分類に有用でありうる。しかしながら、臨床転帰を伴う遺伝子発現の予測又は予後値についてはあまり知られていない。
【0004】
従って、治療結果を予測しこれにより各患者に対する最適な治療投薬計画を選択するための客観的且つ再現性のある方法が求められている。
【0005】
本発明の方法は、例えば、薬剤開発の経過中の患者の選択における支援において、患者の最適な治療コースの選択において、特定の治療レジメンの個々の患者を治療する時の成功の可能性の予測、疾患進行の評価において、治療効果のモニタにおいて、個々の患者の予後の決定において、及び特定の治療、例えば抗癌治療及び/又は抗血管新生治療から利益を得るための患者の素因の評価において等を含む、様々な状況において活用されることができる。
【0006】
本発明は、癌を患う患者におけるbFGFの発現レベルが、抗血管新生治療からの増加した臨床利点と相関することに基づく。従って、一態様では、本発明は、抗血管新生治療から利益を得うる癌患者を識別する方法であって、患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定することを含んでなり、対照試料と比較した患者から得られた試料におけるbFGFのより高い発現レベルは、患者が抗血管新生治療から利益を得うることを示す方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、癌を有する患者の抗血管新生治療に対する応答性を予測する方法であって、患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定することを含んでなり、対照試料と比較した患者から得られた試料におけるbFGFのより高い発現レベルは、患者が抗血管新生治療に応答しそうであることを示す方法を提供する。
【0008】
ある実施態様では、抗血管新生治療は患者にVEGFアンタゴニスト又はそれらの断片を投与することを含む。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。ある実施態様では、抗VEGF抗体はモノクローナル抗体である。ある実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。ある実施態様では、抗血管新生治療は5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgのベバシズマブを投与することを含む。ある実施態様では、抗血管新生治療は患者に少なくとも一つの化学療法薬を投与することを更に含む。ある実施態様では、少なくとも一つの化学療法薬はシスプラチン又はゲムシタビンである。ある実施態様では、抗血管新生治療は患者に少なくとも2つの化学療法薬を投与することを更に含む。ある実施態様では、少なくとも2つの化学療法剤はシスプラチン及びゲムシタビンである。
【0009】
ある実施態様では、対照サンプルと比較した、患者から得られたサンプルにおけるbFGFのより高い発現レベルは、患者が7.5mg/kgのベバシズマブの投与を含んでなる抗血管新生治療から利益を得うることを示す。別の実施態様では、対照サンプルと比較した、患者から得られたサンプルにおけるbFGFのより高い発現レベルは、患者が患者が7.5mg/kgのベバシズマブの投与を含んでなる抗血管新生治療に応答しそうであることを示す。
【0010】
ある実施態様では、本発明の方法は、患者に有効量の抗VEGF抗体を投与することを更に含んでなる。ある実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。ある実施態様では、患者に投与される有効量のベバシズマブは7.5mg/kgのベバシズマブである。ある実施態様では、本発明の方法は、患者に有効量の少なくとも一つの化学療法剤を投与することを更に含んでなる。ある実施態様では、少なくとも一つの化学療法薬はシスプラチン又はゲムシタビンである。ある実施態様では、抗血管新生治療は患者に少なくとも2つの化学療法薬を投与することを更に含む。ある実施態様では、少なくとも2つの化学療法剤はシスプラチン及びゲムシタビンである。
【0011】
別の態様では、本発明は抗VEGF抗体を用いて患者を治療する方法であって、(1)患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定する工程及び(2)対照試料と比較して試料においてbFGFのより高い発現レベルがある場合、患者に有効量の抗VEGF抗体を投与する工程を含んでなる方法を提供する。ある実施態様では、測定されるbFGFの発現レベルはタンパク質発現レベルである。ある実施態様では、タンパク質発現レベルは免疫学的アッセイを用いて測定される。ある実施態様では、免疫学的アッセイはELISAである。ある実施態様では、測定されるbFGFの発現レベルはmRNA発現レベルである。
【0012】
ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約2pg/mlより大きい。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約4pg/mlより大きい。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6pg/mlより大きい。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6.9pg/mlより大きい。ある実施態様では、対照サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約2pg/ml以下である。ある実施態様では、対照サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約4pg/ml以下である。ある実施態様では、対照サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6pg/ml以下である。ある実施態様では、対照サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6.9pg/ml以下である。
【0013】
本発明は、癌患者を治療する方法であって、患者から得られたサンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルを決定すること、bFGFタンパク質発現レベルが約2pg/mlより大きい場合に患者に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含んでなる方法を更に提供する。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約4pg/mlより大きい。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6pg/mlより大きい。ある実施態様では、サンプルにおけるbFGFのタンパク質発現レベルは約6.9pg/mlより大きい。
【0014】
ある実施態様では、患者に投与される抗VEGF抗体はモノクローナル抗体である。ある実施態様では、患者に投与される抗VEGF抗体はヒト化抗体である。ある実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブ又はそれらの断片である。ある実施態様では、患者は5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgのベバシズマブが投与される。ある実施態様では、患者に投与される有効量のベバシズマブは7.5mg/kgのベバシズマブである。
【0015】
ある実施態様では、本発明の方法は、患者に少なくとも一つの化学療法薬を投与することを更に含む。ある実施態様では、化学療法剤はシスプラチンである。ある実施態様では、化学療法剤はゲムシタビンである。ある実施態様では、化学療法剤はカルボプラチンである。ある実施態様では、化学療法剤はパクリタキセルである。ある実施態様では、化学療法剤はペメトレキセドである。ある実施態様では、本発明の方法は、患者に有効量のシスプラチン又はゲムシタビンを投与することを更に含む。ある実施態様では、本発明の方法は、患者に有効量のカルボプラチン又はパクリタキセルを投与することを更に含む。
【0016】
ある実施態様では、癌は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、腎癌又は神経膠芽腫である。ある実施態様では、癌は肺癌である。ある実施態様では、癌は過去に無処置の肺癌である。ある実施態様では、肺癌は非小細胞肺癌である。ある実施態様では、肺癌は過去に無処置の非小細胞肺癌である。ある実施態様では、癌は乳癌である。
【0017】
ある実施態様では、患者から得られたサンプルは、組織、血液由来細胞、血漿、血清、及びそれらの組合せから成る群から選択されるメンバーである。ある実施態様では、サンプルは血液サンプルである。ある実施態様では、サンプルは血漿サンプルである。ある実施態様では、患者からのサンプルは抗血管新生治療の開始時又は前に得られる。
【0018】
ある実施態様では、測定されるbFGFの発現レベルは血液におけるbFGFタンパク質レベルである。ある実施態様では、bFGFタンパク質はbFGFタンパク質の成熟形態である。
【0019】
本発明の別の態様は、癌患者から得られたサンプルにおけるbFGFの発現レベルを検出するための化合物のセットを提供する。セットは、bFGFの発現レベルを検出可能な一又は複数の化合物を含み、対照試料と比較した、癌を有する患者から得られた試料における、一又は複数の化合物を使用して決定された、bFGFのより高い発現レベルは患者が抗血管新生治療から利益を得うることを示す。ある実施態様では、化合物はタンパク質である。ある実施態様では、タンパク質は抗体である。ある実施態様では、少なくとも一つの抗体がbFGFに結合可能である。
【0020】
本発明の別の態様は、患者が抗血管新生治療を用いた治療から利益を得うるか決定するためのキットを提供する。キットは、bFGFに特異的にハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドを含んでなるアレイを含み、キットは癌患者の抗血管新生治療への応答性を予測するために前記アレイを使用するための説明を含み、対照サンプルと比較したbFGFのより高い発現は、患者が抗血管新生治療から利益を得うることを示す。
【0021】
ここに記載の何れかの実施態様又はそれらの何れかの組合せは、ここに記載の本発明の何れか又は全ての方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図を提供する:
【図1】はAVAiL治験デザインを示す。
【図2】はカプラン・マイヤー曲線であり、bFGFの高たんぱく質発現レベルを有する肺癌患者における治療グループによる無進行生存の確率を示す。
【図3】はカプラン・マイヤー曲線であり、bFGFの低たんぱく質発現レベルを有する肺癌患者における治療グループによる無進行生存の確率を示す。
【図4】はカプラン・マイヤー曲線であり、bFGFの高たんぱく質発現レベルを有する肺癌患者における治療グループによる全生存の確率を示す。
【図5】はカプラン・マイヤー曲線であり、bFGFの低たんぱく質発現レベルを有する肺癌患者における治療グループによる全生存の確率を示す。
【0023】
ここに記載又は引用される技術及び手順は、一般的に良く理解され、当業者により一般的な方法論を用いて使用され、広く活用される方法論は、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (2003)); the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987)); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R. I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995); and Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載される。
【0024】
特段の定義のない限り、本明細書中で用いる技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), and March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用する多くの用語についての一般的な指針を当業者に提供する。特許出願及び出版物を含む本明細書中で引用されるすべての文献は、出典明記によってその全体が援用される。
【0025】
本出願を理解するために、以下の定義を適用し、必要な場合はいつでも、単数で使用した用語には複数形も含まれ、その逆もそうである。以下に示すいずれかの定義が出典明記によって本明細書中に援用されるいずれかの文献と矛盾する場合、以下の定義を調節してもよい。
【0026】
本明細書中で用いる「試料」又は「試験試料」なる用語は、例えば理学的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する対象とする被検体から得られる、又は対象とする被検体由来の組成物を指す。一実施態様では、この定義には、血液及び生物起源の他の液体試料、及び生検試料などの組織試料又は組織培養物又はこれら由来の細胞が包含される。細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存されていた臓器や組織試料または生検または吸引による固形組織;血液または血液成分;体液;及び被検体の妊娠期または発生期の任意の時期の細胞ないし血漿であってもよい。
【0027】
他の実施態様では、この定義には、試薬による処理、可溶化又は特定成分(例えばタンパク質又はポリヌクレオチド)の濃縮、又は切断のための半固形又は固形マトリックスへの包埋といった、調達後の何れかの方法で操作されている生物学的試料が含まれる。本明細書中で、組織試料の「切片」は、組織試料の一部又は断片、例えば、組織の薄切り又は組織からの細胞片を意味する。
【0028】
試料には、限定するものではないが、原発性又は培養された細胞又は細胞株、細胞上清物、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、関節液、ろ胞液、精液、羊水、乳汁、全血、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物および組織培養液、並びに組織抽出物、例としてホモジナイズした組織、腫瘍組織および細胞抽出物が含まれる。
【0029】
一実施態様では、試料は臨床試料である。別の実施態様では、試料は診断検査法で使われる。ある実施態様では、試料は血液試料である。ある実施態様では、試料は末梢血試料である。ある実施態様では、試料は血清試料である。
【0030】
ある実施態様では、試料は原発性又は転移性の腫瘍から得られる。組織生検は、腫瘍組織の代表的な部分を得るために用いられることが多い。あるいは、腫瘍細胞は、対象の腫瘍細胞を含むとわかっているか又はそう思われる組織又は体液の形態で間接的に得られてもよい。例えば、肺癌病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は痰、胸膜液ないし血液から得られてよい。
【0031】
一実施態様では、試験試料は、抗血管形成療法の前に被検体又は患者から得られる。別の実施態様では、試験試料は、VEGFアンタゴニスト療法の前に被検体又は患者から得られる。さらに他の実施態様において、試験試料は、抗VEGF抗体療法の前に被検体又は患者から得られる。さらに他の実施態様において、試験試料は、抗VEGF抗体ベバシズマブの投与の前に被検体又は患者から得られる。ある実施態様では、試験試料は、抗血管新生、VEGFアンタゴニスト又は抗VEGF抗体療法の間又は後に得られる。ある実施態様では、試料は癌が転移した後に得られる。
【0032】
本明細書の「対照試料」は、比較のために用いられる任意の試料、標準物質又はレベルを指す。対照試料は、用語「試料」の下で上記で定められる全てのタイプの生物学的試料を含む。ある実施態様では、対象試料は血液試料である。ある実施態様では、対象試料は末梢血試料である。ある実施態様では、対象試料は血清試料である。ある実施態様では、対象試料は血漿試料である。対象試料は、選択された試料又は貯蔵された飼料のどちらかであってもよい。
【0033】
一実施態様では、対照試料は、同じ被検体又は患者の身体の健康な及び/又は罹患していない部分から得られる。別の実施態様では、対照試料は、同じ被検体又は患者の身体の処置していない組織及び/又は細胞から得られる。
【0034】
ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない、癌を有する一又は複数の個体から得られる。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない個体の身体の健康な及び/又は罹患していない部分から得られる。別の実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない個体の身体の処置していない組織及び/又は細胞から得られる。
【0035】
ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない一又は複数の健康な個体からの組み合わせた複数の試料である。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない、癌を有する一又は複数の個体からの組み合わせた複数の代表である。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない一又は複数の個体からのプールしたタンパク質及び/又はRNA試料である。
【0036】
ある実施態様では、対照試料は、試験試料を得るときとは異なる一又は複数の時点で得る同じ被検体又は患者からの単一試料又は組み合わせた複数の試料である。例えば、対照試料は、同じ被検体又は患者から、試験試料を得る時より早い時点に得られる。この対照試料は、対照試料が癌の初期診断時に得られ、試験試料が後の癌が転移性になるときに得られている場合に、有用でありうる。ある実施態様では、対照試料は、同じ被検体又は患者から、試験試料を得る時より後の時点で得られる。
【0037】
「個体」、「被検体」又は「患者」は脊椎動物である。ある実施態様では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、これに限定されないが、家畜(ウシなど)、スポーツ用動物、愛玩動物(ネコ、イヌ及びウマなど)、霊長類、マウス及びラットが含まれる。ある実施態様では、哺乳動物はヒトである。
「検出」とは、検出する任意の手段を含み、直接的及び間接的検出を含む。
【0038】
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブ又は抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0039】
本明細書で用いる「標的配列」、「標的核酸」又は「標的タンパク質」は、その検出が望まれる、対象とするポリヌクレオチド又はタンパク質である。通常、本明細書中で用いる「鋳型」は標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドである。幾つかの実施態様では、「標的配列」、「鋳型DNA」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」及びその変異体が交換可能に用いられる。
【0040】
本明細書中で用いられる「バイオマーカー」なる用語は、一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(又は本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、哺乳動物細胞又は組織の、VEGF特異的阻害剤といった抗血管形成薬などの血管形成の阻害に基づく治療投薬計画への感受性を予測、診断及び/又は予後の予測をするものである。ある実施態様では、このようなバイオマーカーの発現は、対照試料について観察されたものより高いものであると決定される。ある実施態様では、バイオマーカーはbFGFである。バイオマーカーの発現は、Rules Based Medicine, Inc. or Meso Scale Discoveryから市販されているような高性能多重化イムノアッセイを使用して決定されてよい。また、バイオマーカーの発現は、例えば、PCR又はFACSアッセイ、免疫組織化学アッセイ又はジーンチップベースのアッセイを用いて決定してよい。バイオマーカーの発現を測定するための更なるが、本明細書中、発明の方法の下に記載される。
【0041】
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。遺伝子発現分析又はプロトコルの実施態様に関し、遺伝子発現分析又はプロトコルの結果を用いて、特定の治療投薬計画を実行するかどうかを決定してもよい。
【0042】
遺伝子、遺伝子産物、例えばバイオマーカーの発現レベル/量は、当技術分野で知られる何れかの適切な基準に基づいて決定されることが可能であり、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片及び/又は遺伝子コピーを含む。発現レベル/量は、質的及び/又は量的に決定されることができる。ある実施態様では、サンプルは、検定されたRNA又はタンパク質の量における差、及び使用されたRNA又はタンパク質の質における可変性双方に関して正規化される。このような正規化は、特定の正規化遺伝子(よく知られるGAPDH等のハウスキーピング遺伝子を含む)の発現の測定及び取り込みによって達成され得る。あるいは、正規化は、検定された遺伝子の全て又はそれらの大きいサブセットの平均又は中央値シグナルに基づくことが可能である(網羅的正規化手法)。遺伝子ごとに基づく場合は、患者の腫瘍mRNAの測定された正規化量が対照セットで測定された量と比較される。患者あたりの試験腫瘍あたりの各mRNA又はタンパク質の正規化発現レベルは、対照セットにおいて測定された発現レベルのパーセンテージとして表されることができる。分析される特定の患者のサンプルにおいて測定された発現レベルはこの範囲内のあるパーセンタイルに含まれ、これは当技術分野でよく知られる方法によって決定されることができる。
【0043】
本明細書で用いる「アレイ」又は「マイクロアレイ」なる用語は、基質上でのハイブリダイズ可能なアレイ成分、好ましくはポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)の規則正しい整列を指す。基質は、ガラススライドなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えであってよい。
【0044】
本明細書中で用いる「増幅」は通常、所望の配列の複数のコピーを生産する方法を指す。「複数のコピー」は少なくとも2のコピーを意味する。「コピー」が、鋳型配列に対して相補的な又は同一な完全な配列を必ずしも意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体、例えばデオキシイノシン、意図的配列変化(鋳型に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含むプライマーにより導入された配列変化など)、及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
【0045】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの重合体を意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより重合体内に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、重合体の組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に例えば標識成分とのコンジュゲーション等により更に修飾されうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体担体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有する有機キャップ基部分又はアミンで置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み得、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0046】
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
【0047】
「プライマー」は、一般に、標的配列とハイブリダイズすることによって、興味の試料中に存在する可能性がある標的に結合して、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、一般に遊離した3’-OH基を有する短い単鎖のポリヌクレオチドである。
【0048】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来のポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。よって、天然配列ポリペプチドは、任意の哺乳動物由来の天然に生じるポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。このような天然配列ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、あるいは組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列」ポリペプチドという用語は特にポリペプチドの天然に生じる切断型又は分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異体型(例えば、選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。
【0049】
「単離された」ポリペプチド又は「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定されて分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、ポリペプチドの診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質を含みうる。ある実施態様では、ポリペプチドは、(1)ローリー法により定量したポリペプチドの95重量%を上回るまで、又は99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が得られるまで、精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組換え細胞内にインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは、少なくとも一の精製工程により調製されるであろう。
【0050】
「ポリペプチド鎖」は、その各ドメインが、非共有的相互作用又はジスルフィド結合とは対照的にペプチド結合(一又は複数)によって他のドメイン(一又は複数)に連結しているポリペプチドである。
【0051】
ポリペプチド「変異体」は対応する天然配列ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば一又は複数のアミノ酸(天然に生じるアミノ酸及び/又は天然に生じないアミノ酸)残基が、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端に付加され、又は欠失されたポリペプチドが含まれる。通常は、変異体は天然配列ポリペプチドと少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性、又は少なくともおよそ90%のアミノ酸配列同一性、又は少なくともおよそ95%のアミノ酸配列同一性を有する。また、変異体には、典型的には生物学的に活性な天然配列のポリペプチド断片(例えば、サブ配列、切断型など)が含まれる。
【0052】
本明細書中で用いる「タンパク質変異体」なる用語は、上記の変異体及び/又は一又は複数のアミノ酸突然変異を天然のタンパク質配列に含むタンパク質を指す。場合によって、一又は複数のアミノ酸突然変異にはアミノ酸置換(一又は複数)が含まれる。本発明での使用のためのタンパク質及びその変異体は当分野で公知の様々な方法によって調製されうる。タンパク質のアミノ酸配列変異体はタンパク質DNAの突然変異によって調製されうる。このような変異体には、タンパク質のアミノ酸配列内の残基の例えば欠失、挿入又は置換が含まれる。欠失、挿入及び置換の何かを組み合わせて、所望の活性を有する最終コンストラクトに達成してもよい。変異体をコードするDNA中に作製される突然変異は、リーディングフレーム外の配列におくべきでなく、好ましくは二次的mRNA構造を生産しうる相補的な領域を作製しないであろう。欧州特許第75444号A。
【0053】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体(完全長又は無傷のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片(以下を参照)も含む。
【0054】
特に断らない限りは、本明細書全体を通して「多価抗体」という表現は3又はそれ以上の抗原結合部位を含む抗体を指すために使用される。多価抗体は好ましくは3又はそれ以上の抗原結合部位を持つように遺伝子操作されたものであり、一般には天然配列IgM又はIgA抗体ではない。
【0055】
「抗体断片」は、一般にはインタクトな抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持しているインタクトな抗体の一部のみを含む。本定義に包含される抗体断片の例には、(i)V、C、V及びC1ドメインを持つFab断片;(ii)C1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を持つFab断片であるFab'断片;(iii)V及びC1ドメインを持つFd断片;(iv)C1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基とV及びC1ドメインを持つFd'断片;(v)抗体の単一アームのV及びVドメインを持つFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward等, Nature 341, 544-546 (1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域がジスルフィド架橋によって結合された2つのFab'断片を含む二価断片であるF(ab')2断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば単鎖Fv;scFv)(Bird等, Science 242:423-426 (1988);及びHuston等, PNAS (USA) 85:5879-5883 (1988));(x)同一のポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む、2つの抗原結合部位を持つ「ダイアボディー」(例えばEP404,097;WO93/11161; and Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(V-C1-V-C1)を含む「線形抗体」(Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995);及び米国特許第5641870号)が含まれる。
【0056】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、例えば少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」との形容は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原に対する。ある実施態様では、モノクローナル抗体は典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含んでなる抗体を含み、標的結合ポリペプチドポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンから特有のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
【0057】
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法 (e.g., Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975); Hongo et al., Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法 (例えばU.S. Patent No. 4,816,567を参照)、ファージディスプレイ技術(例えばClackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004); and Lee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン配列遺伝子座又は遺伝子の部分又は全てを有する動物におけるヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(例えばWO1998/24893; WO1996/34096; WO1996/33735;WO1991/10741; Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362: 255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993); U.S. Patent Nos. 5,545,807; 5,545,806; 5,569,825; 5,625,126; 5,633,425; and 5,661,016; Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368: 812-813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996); and Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)を参照)を含む様々な技術によって作ることができる。
【0058】
ここに記載のモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から由来するか、特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か相同である一方、鎖の残りが、他の種から由来するか、他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物活性を示す限りはその抗体の断片を含む(米国特許第,4816,567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0059】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型とは、非ヒト抗体から誘導された最小配列を含むキメラ抗体である。大部分では、ヒト化抗体はレシピエントの高頻度可変領域からの残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細は、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。また、例えばVaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994); and U.S. Pat. Nos. 6,982,321 and 7,087,409を参照のこと。また、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)を参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してかかる抗体を生産するよう改変されているが、その内因性遺伝子座は動作不能となっているトランスジェニック動物、例えば免疫化されたゼノマウス、に抗原を投与することによって調整されることができる(XENOMOUSETM技術に関しては例えばU.S. Pat. Nos. 6,075,181 and 6,150,584を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関しては、例えばLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)を参照のこと。
【0060】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に一致するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を製造するいずれかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体この定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、この分野で知られている種々の技術を使用することによって生産することが可能である。一実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughan et al. Nature Biotechnology 14:309-314 (1996): Sheets et al. PNAS (USA) 95:6157-6162 (1998)); Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。この試みでは、ヒト抗体の生産が観察され、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものと密接に類似しているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチ法は、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載される。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を生産するヒトBリンパ球の不死化によって調製されてもよい(そのようなBリンパ球は、個々から回収されてもよいし、インビトロで免疫化してもよい)。例えば、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147 (1):86-95 (1991); and US Pat No. 5,750,373を参照のこと。
【0061】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主に採る4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して保持され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接には関与していないが、例えば抗体依存性細胞傷害活性における抗体の関与等の様々なエフェクター機能を示す。
【0062】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。例えば、高頻度可変領域は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つのHVRを含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例えば、Xu et al., Immunity 13:37-45 (2000); Johnson and Wu, in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993); Sheriff et al., Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照のこと。
【0063】
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。

【0064】
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる:VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
【0065】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0066】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語及びその異なる言い回しは、上掲のKabat 等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当するより少ない又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のカバット番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲すべてにわたって、一般的に、可変ドメインの残基を指す場合にはカバット番号付けシステムを用いる(およそ、軽鎖の残基1−107と重鎖の残基1−113)(例えばSequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。一般的に、イムノグロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」を用いる(EUインデックスはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において報告されており、出典明示によってここに明示的に援用される)。ここで別の定義を記載しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する。ここで別の定義をしない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する(詳細については例えば、米国特許仮出願第60/640323号の優先権を主張する米国特許出願公開第2998/0181888を参照)。
【0068】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、更にこれらの幾つかは、例えばIgG(非A及びAアロタイプを含む)、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られており、一般に、例えばAbbas et al. Cellular and Mol. Immunology, 4th ed. (W.B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有的又は非共有的結合によって形成される大きな融合分子の一部であってもよい。
【0069】
何れかの脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明瞭に異なるタイプの一つに割り当てられることができる。
【0070】
「Fc領域」なる用語は、無傷の抗体のパパイン消化によって生成されうる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列Fc領域又は変異型Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はおよそCys226の位置又はおよそPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。従って、無傷の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。免疫グロブリンのFc領域は一般に、C2ドメインとCH3ドメインの2つの定常ドメインを含み、場合によってC4ドメインを含む。
【0071】
特に明記しない限り、本明細書中の免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に特別に援用される上掲のKabat等のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
ここでは、「F領域鎖」はF領域の2つのポリペプチド鎖の一つを意味する。
【0072】
ヒトIgG Fc領域の「C2ドメイン」(「Cg2」ドメインとも呼ばれる)は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで延びている。C2ドメインは、別のドメインと親密な対にならないという点で独特である。代わりに、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、無傷の天然IgG分子の2つのC2ドメインの間に挿入される。炭水化物はドメイン-ドメイン対の代替物を提供し、C2ドメインの安定化を助けることができると推測される。Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985)。ここで、C2ドメインは天然配列のC2ドメイン又は変異体CH2ドメインとすることができる。
【0073】
「C3ドメイン」は、Fc領域における残基C末端からC2ドメインへの一続きを含む(すなわち、IgGのおよそアミノ酸残基341からおよそアミノ酸残基447まで)。ここにおけるC3領域は、天然配列C3ドメイン又は変異体C3ドメインでもよい(例えば、その一方の鎖に導入「突出部」を有し、及びその他方の鎖に対応する導入「キャビティ」を有するC3ドメイン;米国特許第5,821,333号を参照のこと(出典明示により本明細書中に援用する))。
【0074】
「ヒンジ領域」は、ヒトIgG1のGlu216、又は約Cys226から約Pro230の伸展として一般に定義されている(Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配することにより、IgG1と整合させられうる。ここにおけるヒンジ領域は、天然配列ヒンジ領域又は変異体ヒンジ領域であってもよい。変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、一般的に、少なくともポリペプチド鎖当たり少なくとも一つのシステイン残基を保持し、変異体ヒンジ領域の二つのポリペプチド鎖は、二つの鎖の間でジスフィルド結合を形成できる。ここにおける好ましいヒンジ領域は、天然配列ヒトヒンジ領域で、例えば天然配列ヒトIgG1ヒンジ領域である。
【0075】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも一つの「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合;補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC);食作用;細胞表層受容体(例えばB細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーション等を含む。このようなエフェクター機能は、一般に、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合するFc領域を必要とし、そのような抗体エフェクター機能を評価するための当該分野で知られている様々なアッセイ法を使用して評価することができる。
【0076】
「天然配列Fc領域」は、自然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ);天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域;及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域並びに天然に生じるそれらの変異体を含む。
【0077】
「変異体Fc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。ある実施態様では、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較し、少なくとも一つの一アミノ酸置換を有し、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、約1から約10のアミノ酸置換、好ましくは約1から約5アミノ酸置換を有する。本願における変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%配列同一性、又はそれとの少なくとも約90%配列同一性、又はそれとの少なくとも約95%配列又はそれ以上の同一性を有する。
【0078】
抗体「エフェクター機能」は抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因するそれらの生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプと共に変わる。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合及び補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化を含む。
【0079】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞傷害性の形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0080】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。ある実施態様では、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が一般的に好ましい。エフェクター細胞は、ここに記載されるように、それらの天然源から、例えば血液又はPBMCから単離されうる。
【0081】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。幾つかの実施態様では、FcRは天然ヒトFcRである。幾つかの実施態様では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合するものであり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的にスプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性型受容体」)及びFcγRIIB(「阻害型受容体」)が含まれ、これは、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含んでいる。阻害型受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含んでいる(例えばDaeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、 Ravetch及びKinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に総説される。将来的に同定されるものも含む他のFcRはここでの「FcR」なる用語に包含される。
【0082】
「Fc受容体」又は「FcR」なる用語はまた胎児への母のIgGの移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))、及び免疫グロブリンの恒常性維持の調節の原因となる、新生児受容体FcRnを含む。FcRnへの結合性を測定する方法は知られている(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004);WO2004/92219(Hinton et al.)を参照)。
【0083】
インビボでのヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現している遺伝子導入マウス又は形質移入ヒト細胞株において、又は変異体Fc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類において検定されることができる。WO2000/42072(Presta)は改善又は低減されたFcRnへの結合を有する抗体変異体を記載する。
【0084】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。変更されたFc領域アミノ酸配列を有するポリペプチド変異体(変異体Fc領域を有するポリペプチド)及び増大又は減少したC1q結合能力が、例えば米国特許第6,194,551 B1号及びWO1999/51642に記載される。また、例えばIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
【0085】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、それらの変更を有しない親抗体と比較して結果として抗原に対する抗体の親和性を向上させる。一実施態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野で知られる手順によって生産される。Marks et al. Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VHドメイン及びVLドメインのシャフリングによる親和性成熟を記載する。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発が、Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995); Jackson et al., J. Immunol. 154(7):3310-9 (1995); and Hawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載される。
【0086】
抗体の「機能的抗原結合部位」は、標的抗原に結合可能なものである。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が誘導される親抗体ほど強い必要はないが、抗原に結合する能力は、抗原への抗体結合性を評価するために、様々な公知の方法の任意の一つを使用して測定可能なものでなくてはならない。更に、ここで多価抗体の各抗原結合部位の抗原結合親和性は、定量的に同じである必要はない。ここでマルチマー抗体について、機能的抗原結合部位の数は、超遠心分離分析を使用して評価することができる。この分析方法によれば、マルチマー抗体に対する標的抗原の様々な比率が組合せられ、複合体の平均分子量が、異なる数の機能的結合部位を仮定して算出される。これらの理論値は、機能的結合部位の数を評価するために、得られた実際の実験値と比較される。
指定された抗体の「生物学的特性」を有する抗体は、同じ抗原に結合する他の抗体からそれを区別するその抗体の生物学的特性の一又は複数を保有するものである。
【0087】
対象の抗体が結合する抗原上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするためには、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されたもののような常套的な交差ブロックアッセイ法を実施することができる。
【0088】
「アンタゴニスト」なる用語は、ここで使用される場合、本発明のタンパク質の活性をブロック、阻害、抑制、低減又は干渉することが可能な分子を意味し、リガンドの場合は一又は複数の受容体へのそれの結合、又は受容体の場合には一又は複数のリガンドへの結合を含む。アンタゴニストは、抗体及びそれらの抗原結合断片、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、生体有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的物質及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。アンタゴニストはまた、本発明のタンパク質の小分子阻害剤、及び融合タンパク質、受容体分子及び誘導体(タンパク質に特異的に結合し、これによってその標的へのその結合を隔離するもの)、タンパク質のアンタゴニスト変異体、本発明のタンパク質に対するアンチセンス分子、RNAアプタマー、及び本発明のタンパク質に対するリボザイムを含む。
【0089】
「遮断」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減するものである。ある遮蔽抗体又はアンタゴニスト抗体は、実質的又は完全に、抗原の生物学的活性を阻害する。
【0090】
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung et al. Science, 246:1306 (1989), Houck et al. Mol. Endocrin., 5:1806 (1991), and, Robinson & Stringer, Journal of Cell Science, 144(5):853-865 (2001)によって記載されているように、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子と、関連した121-、145-、183-、189-、及び206-アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。VEGF-Aは、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、VEGF-F及びPlGFを含む遺伝子ファミリの一部である。VEGF-Aは、VEGFR-1(Flt-1)及びVEGFR-2(Flk-1/KDR)の2つの高親和性受容体チロシンキナーゼに主に結合する。この後者はVEGF-Aの血管内皮細胞分裂促進シグナルの主な伝達物質である。また、「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、マウス、ラット又は霊長類などの非ヒト動物腫由来のVEGFも意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGFなどの用語で表されることが多い。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含むポリペプチドの切断型ないしはその断片を意味する。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt-1受容体結合親和性を有する。
【0091】
「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGF受容体への結合を含む、VEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる分子(ペプチジル又は非ペプチジル)を指す。VEGFアンタゴニストには、抗VEGF抗体及びその抗原結合性断片、VEGFに特異的に結合することによって一又は複数の受容体への結合を隔離する受容体分子及び誘導体(例えば、可溶性VEGF受容体タンパク質、又はそのVEGF結合断片、又はキメラVEGF受容体タンパク質)、VEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビターなどの抗VEGF受容体抗体及びVEGF受容体アンタゴニスト、及び融合タンパク質、例として、VEGF-Trap(Regeneron)、VEGF121-ゲロニン(Peregine)が含まれる。また、VEGFアンタゴニストには、VEGFのアンタゴニスト変異体、VEGFに対するアンチセンス分子、RNAアプタマー、及びVEGFないしはVEGF受容体に対するリボザイムが含まれる。さらに、本発明の方法に有用なVEGFアンタゴニストには、VEGFを特異的に結合するペプチジルないしは非ペプチジル化合物、例えば、抗VEGF抗体ないしその抗原結合性断片、ポリペプチド、又はVEGFに特異的に結合するその断片;VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補性があるアンチセンス核酸塩基のオリゴマー;VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補性がある小RNA;VEGFを標的とするリボザイム;VEGFに対するペプチボディ;及び、VEGFアプタマーが含まれる。一実施態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベル又は生物学的活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上低減するか、又は阻害する。他の実施態様では、VEGFアンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8−109)、VEGF(1−109)又はVEGF165である。
【0092】
「抗VEGF抗体」又は「VEGFに結合する抗体」なる用語は、抗体がVEGFを標的とした診断上の薬剤及び/又は治療上の薬剤として有用であるために十分な親和性と特異性を有してVEGFに結合することができる抗体を指す。例えば、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患及び症状を標的とし、干渉する際の治療上の薬剤として有用でありうる。例として米国特許第6582959号、同第6703020号;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202、WO2005/044853;EP0666868B1;米国特許公開第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、同第20050112126号、同第20050186208号及び同第20050112126号;Popkov et al., Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004);及びWO2005012359号を参照のこと。選択した抗体は通常、VEGFに対して十分に強い結合親和性を有する。例えば、抗体は100nM−1pMの間のKd値でhVEGFを結合しうる。抗体親和性は、例えば、表面プラスモン共鳴をベースとしたアッセイ(PCT出願公開番号WO2005/012359に記載のあるBIAcoreアッセイなど);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);及び、競合アッセイ(例えばRIAのもの)によって決定されうる。例えば治療としての有効性を評価するために、抗体を他の生物学的な活性アッセイに用いてもよい。このようなアッセイは当分野で公知であり、標的抗原と抗体の使用目的に依存する。例として、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば国際公開第89/06692号に記載のもの);抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体媒介性細胞障害(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号);及び、アゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開第95/27062号を参照)などがある。抗VEGF抗体は通常、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D又はVEGF-Eなどの他のVEGFホモログにも、PlGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないだろう。一実施態様では、抗VEGF抗体には、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体;Presta等 (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って産生される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、限定するものではないが「ベバシズマブ(BV)」とも「rhuMAb VEGF」又は「AVASTINTM」としても知られる抗体が含まれる。AVASTINTMは現在市販されている。ベバシズマブは、ヒトVEGFのその受容体への結合をブロックするマウスの抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1から、変異したヒトのIgG1フレームワーク領域と抗原結合性相補性決定領域を含む。フレームワーク領域のほとんどを含め、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%は、ヒトのIgG1に由来し、配列のおよそ7%はマウスの抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、およそ149000のダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行の米国特許第6884879号にさらに記載されている。PCT出願公開番号WO2005/012359に記載のあるように、更なる好適な抗体には、G6又はB20系列抗体(例えば、G6-23、G6-31、B20-4.1)が含まれる。さらに好適な抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202;EP0666868B1;米国特許公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号;及び、Popkov et al., Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照のこと。
【0093】
ここで使用される「B20系列ポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを意味する。B20系列ポリペプチドには、限定するものではないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20抗体又はB20誘導抗体の配列から誘導された抗体が含まれ、これらの特許出願の内容は出典明示により明示的にここに援用される。一実施態様では、B20系列ポリペプチドは、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20-4.1である。他の実施態様では、B20系列ポリペプチドは、その全開示を出典明示により明示的にここに援用するPCT公開番号WO2009/073160号に記載されたB20-4.1.1である。
【0094】
ここで使用される「G6系列ポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを意味する。G6系列ポリペプチドは、限定しないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたG6抗体又はG6誘導抗体の配列から誘導された抗体を含む。G6系列ポリペプチドは、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたように、限定しないが、G6-8、G6-23及びG6-31を含む。
【0095】
用語「bFGF」は、「FGF2」、「FGF-β」又は「塩基性線維芽細胞増殖因子」としても知られ、線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバーであり、4番染色体の短腕に位置する遺伝子いよってコードされる。ここで使用される用語bFGFは、天然配列bFGFポリペプチド及びbFGF変異体を含む。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は溶質のヘパリン結合ポリペプチドである。また、bFGFはFGFR-1(Flg)と称される受容体にも結合する。bFGFは内皮細胞への分裂促進的効果を有し、血管新生の強力な誘導因子である。腫瘍細胞におけるbFGFのパラクリン分泌生成は、腫瘍形成の血管新生スイッチと関連するとの報告がされた (Kandel, J., et al., Cell, 1991. 66(6): p. 1095-104)。内皮細胞へのその独立的効果の他に、bFGFはまた血管新生の誘導においてVEGFと相乗効果的にも働く(Asahara, T., et al., Circulation, 1995. 92(9 Suppl): p. II365-71)。
【0096】
天然配列bFGFは、調製の様式に関わらず自然由来のbFGFと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを有する。従って、天然配列bFGFは、天然に生じるヒトbFGF、マウスbFGF、又は他の何れかの哺乳種からのbFGFを有することができる。また、ヒトbFGF配列は開示されている(配列番号:1から5)。このような天然配列bFGFは、自然から単離されることができ、又は組換え及び/又は合成手段によって製造されることができる。用語天然配列bFGFは具体的には、bFGFの天然に生じるプレプロ、プロ及び成熟形態及び切断型、天然に生じる変異体形態(例えば選択的スプライシング形態)、及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。
【0097】
bFGF変異体は、天然配列内の一又は複数のアミノ酸残基の挿入、欠失、修飾及び/又は置換により天然配列bFGFポリペプチドの配列と異なるアミノ酸配列を有するbFGFポリペプチドである。bFGF変異体は、一般に天然配列bFGFと100%未満の配列同一性を有する。しかしながら、通常、生物学的に活性なbFGF変異体は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%又は約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列である。bFGF変異体は少なくとも5アミノ酸のペプチド断片を含み、対応する天然配列bFGFポリペチドの生物学的活性を保持する。またbFGF変異体は、天然bFGF配列のN-又はC末端、又は内に一又は複数のアミノ酸残基が加えられたbFGFポリペプチドを含む。また、bFGF変異体は、多数のアミノ酸残基が欠失され、場合によっては一又は複数のアミノ酸残基によって置換されたbFGFポリペプチドを含む。
【0098】
用語「bFGFアンタゴニスト」は本願明細書において用いられる場合、bFGFと結合して、bFGFの生物学的活性を阻害又は実質的に低減する分子を意味する。bFGFアンタゴニストの非制限的な例は、抗体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的物質及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。本発明の一実施態様では、bFGFアンタゴニストは抗体、特にヒトbFGFに結合する抗bFGF抗体である。
【0099】
ポリペチドに関する「生物学的活性」及び「生物学的に活性」は、特異的に結合し、細胞応答、例えば増殖、遊走等を調節する分子の能力を意味する。細胞応答はまた、受容体を通して媒介されるものを含み、限定するものではないが遊走及び/又は増殖を含む。これに関係することにおいて、用語「調整」は促進及び阻害双方を含む。
【0100】
「VEGF生物学的活性」には、任意のVEGF受容体への結合又は任意のVEGFシグナル伝達活性、例えば正常および異常な血管形成および脈管形成の調節(Ferrara and Davis-Smyth (1997) Endocrine Rev. 18:4-25; Ferrara (1999) J. Mol. Med. 77:527-543))、胚性の脈管形成および血管形成の促進(Carmeliet et al. (1996) Nature 380:435-439; Ferrara et al. (1996) Nature 380:439-442)、および雌生殖管における、および骨の成長および軟骨形成のための周期的血管増殖の調節(Ferrara et al. (1998) Nature Med. 4:336-340; Gerber et al. (1999) Nature Med. 5:623-628)が含まれる。血管形成および脈管形成における血管新生因子であることに加えて、多面発現増殖因子としてのVEGFは、他の生理的過程、例えば内皮細胞生存、脈管透過性および血管拡張、単球走化性、およびカルシウム流入において複数の生物学的効果を示す(上掲のFerrara and Davis-Smyth (1997)、およびCebe-Suarez et al. Cell. Mol. Life Sci. 63: 601-615 (2006))。さらに、近年の研究では、わずかな内皮性以外の細胞種、例えば網膜色素上皮細胞、膵管細胞およびシュワン細胞に対するVEGFの分裂促進効果が報告されている。Guerrin et al. (1995) J. Cell Physiol. 164:385-394; Oberg-Welsh et al. (1997) Mol. Cell. Endocrinol. 126:125-132; Sondell et al. (1999) J. Neurosci. 19:5731-5740。
【0101】
「血管形成因子又は作用剤」は、血管の発達を刺激する、例えば、血管新生、血管内皮細胞成長、血管の安定化及び/又は脈管形成などを促進する成長因子である。例えば、血管形成因子には、限定するものではないが、例としてVEGFおよびVEGFファミリーのメンバー、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、ANGPTL3、ANGPTL4等が含まれる。また、創傷治癒を促進する因子、例として成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、VIGF、上皮細胞成長因子(EGF)、CTGF、及び、そのファミリーメンバー及びTGF-α及びTGF-βが含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991); Streit and Detmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003); Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12):1359-1364 (1999); Tonini et al., Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、血管形成因子を挙げている表1);及びSato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)を参照のこと。
【0102】
「抗血管形成剤」又は「血管新生(血管形成)阻害剤」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する、小分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義したように血管形成剤に対する抗体又はアンタゴニスト、例えば、VEGFに対する抗体、VEGF受容体に対する抗体、VEGF受容体シグナル伝達を遮断する小分子(例えばPTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT/SU11248(スニチニブリンゴ酸塩)、AMG706)である。また、抗血管形成剤には、天然の血管形成阻害剤、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991); Streit and Detmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生治療を記載している表3); Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12):1359-1364 (1999); Tonini et al., Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、抗血管新生因子を記載している表2);及びSato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)(例えば、臨床試験で用いられる抗血管新生剤を記載している表1)を参照のこと。
【0103】
用語「抗血管新生治療」は、血管新生を阻害するのに有用な治療を意味し、ここで定義される少なくとも一つの抗血管新生剤の投与を含む。ある実施態様では、抗血管新生治療は被験体にVEGFアンタゴニストを投与することを含む。ある実施態様では、抗血管新生治療はここで定められるVEGFアンタゴニストを投与することを含む。一実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。別の実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。ある種の実施形態では、抗血管新生治療は7.5mg/kgのベバシズマブを投与することを含む。
【0104】
ここで用いられる場合「免疫抑制剤」なる用語は、本明細書中で治療される哺乳動物の免疫系を抑制する又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御又は抑制する、あるいはMHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例として、2-アミノ-6-アリル-5-代替ピリミジン(米国特許第4665077号を参照);非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);ガンシクロビル、タクロリムス、糖質ステロイド、例としてコルチゾール又はアルドステロン、抗炎症剤、例としてシクロオキシゲナーゼインヒビター、5-リポキシゲナーゼインヒビター又はロイコトリエン受容体アンタゴニスト;プリンアンタゴニスト、例えばアザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチル(MMF);アルキル化剤、例えばシクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド (米国特許第4120649号に記載のように、MHC抗原を遮断する);MHC抗原及びMHCフラグメントに対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリン;6メルカプトプリン;副腎皮質ステロイド又は糖質副腎皮質ステロイド又は糖質ステロイド類似体などのステロイド、例としてプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、例えばSOLU-MEDROL(登録商標)メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、及びデキサメタゾン;ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、例としてメトトレキサート(経口又は皮下);クロロキン及びヒドロキシクロロキンなどの抗マラリア剤;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカイン受容体抗体又はアンタゴニスト、例として抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2(IL-2)抗体及び抗IL-2受容体抗体;抗CD11a及び抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体、好ましくは、抗-CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開のWO90/08187);ストレプトキナーゼ;トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β);ストレプトドルナーゼ(streptodornase);宿主由来のRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアニン(deoxyspergualin);ラパマイシン;T細胞受容体 (Cohen等, 米国特許第5114721号);T細胞受容体断片(Offner等, Science 251:430-432 (1991);WO90/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及びWO91/01133);及びT10B9などのT細胞受容体抗体 (EP340109)を含む。
【0105】
「非ステロイド性抗炎症薬」又は「NSAID」の例は、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチンであり、それらの塩類及び誘導体を含む。
用語「細胞傷害剤」は、ここで使用される場合、細胞の機能を阻害又は防止する及び/又は細胞の破壊を導く物質を指す。該用語は、放射性同位元素(例えば211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物又は動物起源の小分子毒素又は酵素的に活性な毒素等の毒素を指し、これらの断片及び/変異体を含む。
【0106】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。従って、増殖阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、TAXOLTM、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel, eds., Chapter 1, entitled "Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs" by Murakami et al. (WB Saunders: Philadelphia, 1995), especially p. 13に見出すことができる。
【0107】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学化合物である。科学療法剤は、チオテパ及びCYTOXANTMシクロホスファミド等のアルキル化剤;スルホン酸アルキル類、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メトレドーパ、及びウレドーパ等;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラミド及びトリメチロロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブルタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOLTM);βラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似化合物トポテカン(HYCAMTINTM)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSARTM)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン及びビセレシン合成類似化合物を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似化合物KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスター等;ニトロスレアス、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照のこと));ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラミシン;並びにネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン抗生物質発光団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCINTM、モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHCLリポソーム注入(DOXILTM)及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;ペメトレキセド(ALIMTATM);ゲムシタビン(GEMZARTM);代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZARTM)、テガフール(UFTORALTM)、カペシタビン(XELODATM)、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU)等;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン等;アンドロゲン類、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸等の葉酸リプレニッシャー;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサマイトシン等のメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKTM多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリデンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINETM、FILDESINTM);ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOLTM)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)、及びドキセタキセル(TAXOTERETM);クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチン等のプラチナ類似体;ビンブラスチン(VELBANTM);プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVINTM);オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINETM);ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;上述の何れかの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体;並びに上記の二以上の組み合わせ、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの組合せ療法の略称)、及びFOLFOX(オキサリプラチン(ELOXATINTM)と5-FU及びロイコボリンとを組み合わせた治療計画の略称)を含む。
【0108】
また、この定義に含まれるものは、癌の増殖を促進することができるホルモンの効果を調整、低減、遮断、又は阻害するよう作用する抗ホルモン剤であり、しばしば全身性又は全身治療の形態である。それらはホルモンそれ自身であってもよい。例えば、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ、例えばタモキシフェン(NOLVADEXTMタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTATM)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びトレミフェン(FARESTONTM)を含む;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERDs);卵巣を抑制又は遮断するよう機能する薬剤、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えばリュープロリド酢酸塩(LUPRONTM及びELIGARDTM)、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩及びトリプトレリン等;他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド等;及び副腎におけるエストロゲン生産を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、メゲストロール酢酸エステル(MEGASETM)、エキセメスタン(AROMASINTM)、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISORTM)、レトロゾール(FEMARATM)、及びアナストロゾール(ARIMIDEXTM)等を含む。更に、化学療法剤の定義は、ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBONEFOSTM又はOSTACTM)、エチドロネート(DIDROCALTM)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETATM)、アレンドロネート(FOSAMAXTM)、パミドロネート(AREDIATM)、チルドロネート(SKELIDTM)、又はリセドロネート(ACTONELTM)等;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関わるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPETMワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTINTMワクチン、LEUVECTINTMワクチン、及びVAXIDTMワクチン等;トポイソメラーゼI阻害薬(例えばLURTOTECANTM);rmRH(例えばABARELIXTM);ラパチニブトシル酸塩(ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤、GW572016としても知られる);COX-2阻害剤、例えばセレコキシブ(CELEBREXTM;4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル) ベンゼンスルホンアミド;及び上記の何れかの塩、酸、又は誘導体を含む。
【0109】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;マレリアン阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(例えばVEGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E);胎盤増殖因子(PlGF);血小板由来増殖因子(PDGF、例えばPDGFA、PDGFB、PDGFC、PDGFD);インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF-アルファ;血小板増殖因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF-α及びTGF-β等;インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロンα、β、γ等、コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20-IL-30等;セクレトグロビン/ウテログロビン;オンコスタチンM(OSM);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β;及びLIF及びKitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子等である。
【0110】
「障害(疾患)」とは治療から利益を得る何れかの状態である。これは慢性及び急性の障害又は疾患を含み、問題となる障害に哺乳類を罹患し易くする病理学的状態を包含する。ここで治療される障害の非限定的な例は、何れかの腫瘍、良性及び悪性腫瘍;血管新生化腫瘍;肥大;白血病及びリンパ性悪性疾患;神経細胞性、グリア性、星状細胞性、視床下部性及び他の腺性、マクロファージ性、上皮性、間質性及び胞胚腔性の障害;及び炎症性、血管新生性及び免疫学的な障害、不適当、異常、過剰及び/又は病的脈管形成及び/又は脈管透過性から生じる脈管障害を包含する。
【0111】
ここで使用される場合、「治療」(及び「治療(処置)」又は「治療する」等のバリエーション)は、治療される個体又は細胞の天然の経過を変更する試みにおける臨床介入を意味し、臨床病理の経過中又は予防に対して実施されることができる。治療の所望の効果は、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、疾患の直接的又は間接的病態結果の何れかの低減、転移の防止、疾患進行の割合の低下、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解又は改善された予後を含む。幾つかの実施態様では、本発明の方法及び組成物は、疾患又は障害の形成を遅延するため、又は疾患又は障害の進行を遅くするために使用される。
【0112】
「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患の治療のために有効な薬剤の量に相当する。癌の場合は、有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度に遅く、典型的には止める);腫瘍の転移を阻害し(すなわち、ある程度に遅く、典型的には止める);腫瘍増殖をある程度阻害し;VEGF独立腫瘍の治療を可能にし、及び/又は障害に伴う一又は複数の症状をある程度軽減する。存在する癌細胞を殺す及び/又は増殖を防止する範囲において、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。癌治療に関して、インビボでの効果は、例えば、生存の期間、疾患進行までの時間(TTP)、奏効率(RR)、奏功期間、及び/又は生活の質により測定されることができる。
【0113】
「予防的に有効な量」とは、所望の予防的効果を得るための、必要な用量及び期間において有効な量を意味する。典型的には、必ずしもではないが、予防的用量は被験体において疾患の初期段階で又は前に使用されるため、予防的有効量は治療的有効量より少ないと考えられる。
【0114】
「癌」及び「癌性の」という用語は無秩序な細胞の増殖により典型的には特徴付けられる哺乳類における生理学的状態を指すか、それを説明するものである。癌の例は限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性腫瘍を含む。このような癌のより特定的な例は、腎臓又は腎性癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌等、扁平上皮細胞癌(例えば上皮の扁平上皮細胞癌)、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌又は腹部の癌、例えば胃腸癌、消化管間葉性腫瘍(GIST)、膵癌、頭頸部癌、神経膠芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、ヘパトーマ、血液学的悪性疾患、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫及び急性の血液学的な悪性疾患、子宮内膜又は子宮の癌腫、子宮内膜症、腺維肉腫、絨毛癌、唾液腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、食道癌、肝臓の癌腫、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌腫、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚の癌腫、シュワン腫、乏突起神経膠腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、尿道癌腫、甲状腺癌腫、ウイルムス腫瘍、B-細胞リンパ腫(例えば低等級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL));小リンパ球性NHL;中悪性度/濾胞性非NHL;高悪性度免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症を伴う異常脈管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)、及びメイグス症候群を含む。
【0115】
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
治療される腫瘍性疾患の例は、限定するものではないが、「癌」及び「癌性」なる用語の下でここに記載されるものを含む。
【0116】
用語「抗癌治療」又は「癌治療」は、癌の治療において有用な治療を指す。抗癌治療薬の例は、限定するものではないが、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、放射線療法において使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤及び癌を治療するための他の薬剤、例えば抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えばエルロチニブ(TARCEVATM)、血小板由来増殖因子阻害剤(例えばGLEEVECTM(イマチニブメシル酸塩))、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、ERBITUXTM(セツキシマブ、Imclone)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGF受容体の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2、及び他の生理活性及び有機化学剤等を含む。それらの組み合わせもまた本発明に含まれる。
【0117】
「診断」なる用語は、癌の同定といった分子又は病的状態、疾患又は状態の同定を指すため、又は特定の治療投薬計画から利益を得うる癌患者の同定を指すためにここで用いられる。
「予後」なる用語は、抗癌療法から臨床上の利益の可能性の予測を指すためにここで用いられる。
【0118】
「予測」なる用語は、患者が特定の抗癌治療に対して有利又は不利に応答する可能性を指すためにここで用いられる。本発明の予測方法は、任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、ステロイド治療などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうかを予測する際の有用なツールである。
【0119】
患者の応答性は患者への利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価されてよく、限定するものではないが、(1)緩徐化及び完全な停止を含む、疾患進行のある程度の阻害、(2)病変サイズの減少、(3)隣接する周辺臓器及び/又は組織への疾患細胞の浸潤の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、(4)疾患播種の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、(5)疾患と関連する一又は複数の症状のある程度の軽減、(6)治療後の無疾患状態の期間の増加、及び/又は(8)治療後のある時点での死亡率の減少が含まれる。
【0120】
臨床上の利益は、例えば、緩徐化及び完全な停止を含む疾患進行のある程度の阻害、疾患出現及び/又は症状の数の減少、病変サイズの減少、隣接する周辺臓器及び/又は組織への疾患細胞の浸潤の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、疾患播種の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、必ずしもそうではないが、疾患病変の退縮又は除去となりうる自己免疫応答の減少、疾患と関連する一又は複数の症状のある程度の軽減、治療後の無疾患状態の期間、例えば無進行生存期間の増加、全生存率の増加、応答率の向上、及び/又は、治療後のある時点での死亡率の減少といった、様々なエンドポイントを評価することによって測定されうる。
【0121】
「利益」なる用語は広義の意味で用いられ、何れかの所望の効果を指し、特に本明細中で定義する臨床上の利益を包含する。
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、製剤が投与される被験体に許容不可能に毒性である付加的成分を含有しない調製物を意味する。かかる製剤は無菌であり得る。
【0122】
「無菌」製剤とは、無菌又は全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないものである。
一又は複数の更なる治療剤と「の併用での」投与は同時(同時発生)及び任意の順序での継続的又は連続的投与を含む。
【0123】
「同時」なる用語は、二以上の治療薬の投与を意味するためにここで使用され、投与の少なくとも一部が時間において重なる。従って、同時投与は、一又は複数の薬剤の投与が一又は複数の他の薬剤の投与を中断した後に続く投与計画を含む。
【0124】
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。
「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的には周期的になされる治療である。
【0125】
ここで用いられる「担体」は、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤を含む。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0126】
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤(例えば抗VEGF抗体等)のデリバリーに有用な様々なタイプの脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞である。リポソームの成分は、一般に、生体膜の脂質配置と同様に二層構造で配されている。
【0127】
抗血管新生剤は、限定するものではないが以下の薬剤を含む:VEGF阻害剤、例えばVEGF特異的アンタゴニスト、EGF阻害剤、EGFR阻害剤ERBITUXTM(セツキシマブ, ImClone Systems, Inc., Branchburg, N.J.)、VECTIBIXTM(パニツムマブ, Amgen, Thousand Oaks, CA)、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX-II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、及びMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤、CP-547,632(Pfizer Inc., NY, USA)、アキシチニブ (Pfizer Inc.; AG-013736)、ZD-6474 (AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD-2171)、VEGFトラップ(Regeneron/Aventis)、バタラニブ (PTK-787、ZK-222584: Novartis & Schering AGとしても知られる)、マクジェン(ペガプタニブオクタナトリウム、NX-1838、EYE-001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862 (Cytran Inc. of Kirkland, Wash., USA);及びangiozyme、Ribozyme(Boulder, Colo.)及びChiron(Emeryville, Calif.)からの合成リボザイム及びそれらの組み合わせ。他の血管新生阻害剤は、トロンボスポンジン1、トロンボスポンジン2、コラーゲンIV及びXVIIIを含む。VEGF阻害剤は米国特許代6,534,524及び6,235,764に開示され、全ての目的に対してその全体を援用する。
【0128】
VEGF特異的アンタゴニストは、VEGFへの結合、VEGF発現レベルの低減、又は、一又は複数のVEGF受容体とのVEGFの結合、及びVEGF媒介血管新生及び内皮細胞生存又は増殖を含むVEGF生物学的活性を中和、ブロック、阻害、抑制、低減、又は干渉することが可能な分子を意味する。本発明の方法においてVEGF特異的アンタゴニストとして含まれるものは、VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びそれらの抗原結合断片、受容体分子及び誘導体(VEGFに特異的に結合しこれによって一又は複数の受容体へのそれの結合を隔離するもの)、融合タンパク質(例えばVEGFトラップ(Regeneron))、及びVEGF121-ゲロニン(Peregrine)である。またVEGF特異的アンタゴニストは、VEGFポリペチドのアンタゴニスト変異体、VEGFに対するアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFに対する小RNA分子、RNAアプタマー、ペプチボディー、及びVEGFに対するリボザイムを含む。
【0129】
2つの最も特徴づけられたVEGF受容体は、VEGFR1(Flt-1としても知られる)及びVEGFR2(マウス相同体に対してはKDR及びFLK-1としても知られる)である。各VEGFファミリーメンバーに対する2つの受容体の特異性は様々であるが、VEGF-AはFlt-1及びKDR双方と結合する。完全長Flt-1受容体は、7つのIgドメインを有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びチロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインはVEGFの結合に関与し、細胞内ドメインはシグナル伝達に関与する。
【0130】
VEGFに特異的に結合するVEGF受容体分子又はそれらの断片は、VEGFタンパク質に結合し隔離しこれによってそれがシグナル伝達するのを防止する、VEGF阻害剤として使用することができる。ある実施態様では、VEGF受容体分子、又はそれらのVEGF結合断片は、溶質形態であり例えばsFlt-1等である。受容体の溶質形態はVEGFに結合し、これによってそれが標的細胞の表面上に存在する天然の受容体に結合するのを防ぐことによってVEGFの生物学的活性に阻害効果を及ぼす。また含まれるものは、VEGF受容体融合タンパク質であり、それらの例は下に記載される。
【0131】
キメラVEGF受容体タンパク質は少なくとも2つの異なるタンパク質に由来するアミノ酸配列を有する受容体分子であり、その少なくとも一つはVEGF受容体タンパク質(例えばflt-1又はKDR受容体)であり、VEGFに結合しVEGFの生物学的活性を阻害することが可能である。ある実施態様では、本発明のキメラ受容体タンパク質は、2つの異なるVEGF受容分子のみに由来するアミノ酸配列から成る;しかしながら、flt-1及び/又はKDR受容体の細胞外リガンド結合領域からの1、2、3、4、5、6、又は全7つのIg様ドメインを含んでなるアミノ酸配列が、例えば免疫グロブリン配列等の他の無関係のタンパク質からのアミノ酸配列と結合されることができる。Ig様ドメインが結合される他のアミノ酸配列は当業者にとって明瞭であろう。キメラVEGF受容体タンパク質の例は、限定するものではないが、溶質Flt-1/Fc、KDR/Fc又はFlt-1/KDR/Fc(VEGFトラップとしても知られる)を含む。(例えばPCT出願公開WO97/44453を参照)。
溶質VEGF受容体タンパク質又はキメラVEGF受容体タンパク質は、膜貫通ドメインを介して細胞の表層に固定されていないVEGF受容体タンパク質を含む。このように、VEGF受容体の溶質形態は、キメラ受容体タンパク質を含め、VEGFに結合し相互作用することが可能であるが、膜貫通ドメインを持たず、従って一般的に、分子が発現される細胞の細胞膜に付随しない。
【0132】
更なるVEGF阻害剤は、例えばWO99/24440、PCT国際出願PCT/IB99/00797、WO95/21613、WO99/61422、米国特許第6,534,524号、米国特許第5,834,504号、WO98/50356、米国特許第5,883,113号、米国特許第5,886,020号、米国特許第5,792,783号、米国特許第6,653,308号、WO99/10349、WO97/32856、WO97/22596、WO98/54093、WO98/02438、WO99/16755およびWO98/02437に記載され、出典明示によりその全体をここに援用する。
【0133】
全体では、NSCLCを有する患者の53−74%が腫瘍組織試料においてbFGFを発現するとして報告され(Takanami, I., et al., Jpn J Clin Oncol, 1996. 26(5): p. 293-7; Volm, M., et al., Eur J Cancer, 1997. 33(4): p. 691-3; Shou, Y., et al., Br J Cancer, 2001. 85(11): p. 1706-12)、bFGF発現はより高いT及びN(TNM分類において);よい高い腫瘍ステージ;及び低い生存率(Takanami, I., et al., Jpn J Clin Oncol, 1996. 26(5): p. 293-7)と関連した。bFGF発現はまた、NSCLCを有する患者において、低い分化、血管浸潤及びリンパ節転移と関連すると報告された(Volm, M., et al. , Anticancer Res, 1999. 19(1B): p. 651-5; Ito, H., et al., Oncol Rep, 2002. 9(1): p. 119-23)。
【0134】
NSCLCを有する患者における循環bFGFの役割を調査する研究は様々な結果を示し、増加bFGF及び生存度の間の有利な関連(Brattstrom, D., et al., Anticancer Res, 1998. 18(2A): p. 1123-7)から、生存度との非相関(Ueno, K., et al., Lung Cancer, 2001. 31(2-3): p. 213-9)及び上昇レベル及び生存度の間の負の関連(Brattstrom, D., et al., Lung Cancer, 2002. 37(1): p. 57-63; Brattstrom, D., et al., Lung Cancer, 2004. 43(1): p. 55-62; Joensuu, H., et al., Cancer Res, 2002. 62(18): p. 5210-7)である。
【0135】
循環bFGFはまた、抗VEGF治療からの腫瘍の回避と関連されることが示唆され、これは別の血管新生促進性シグナル伝達経路(例えばbFGF)のアップレギュレーションが抗VEGF治療への耐性に関与し得るからである(Jain, R.K., et al., Nat Rev Clin Oncol, 2009. 6(6): p. 327-38; Dempke, W.C. and V. Heinemann, Eur J Cancer, 2009. 45(7): p. 1117-28)。
【0136】
本発明は、bFGFの発現レベルが抗VEGF抗体ベバシズマブを含んでなる抗血管新生治療の進行を予測及び/又はモニタすることにおいて有用である識別に一部基づく。特に、本発明は、血液におけるbFGFタンパク質レベルが抗VEGF抗体治療への患者の応答性を予測することにおいて有用である識別に一部基づく。従って、開示される方法及びアッセイは、癌患者を治療するために適切な又は有効な治療を評価することにおいて有用なデータ及び情報を得るための、簡便、効果的、及び潜在的に対費用効果の高い手段を提供する。例えば癌患者からのサンプルは、サンプルにおけるbFGFの発現レベルが対照サンプルにおけるbFGFの発現レベルより高いか決定するために、様々なインビトロアッセイによって調査されることができる。より高い発現レベルが検出されば場合は、患者は抗VEGF抗体を含んでなる抗癌治療からおそらく利益を得うるだろう。ある実施態様では、より高いのbFGF発現レベルが検出された場合は、患者は7.5mg/kgの抗VEGF抗体ベバシズマブの投与を含んでなる抗血管新生治療からおそらく利益を得うるだろう。
【0137】
バイオマーカーの発現レベル/量は、何れかの適切な基準に基づいて決定されることが可能であり、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片及び/又は遺伝子コピー数を含む。
【0138】
例えば、サンプルにおけるbFGFの発現レベルは多くの方法論によって分析されることが可能であり、それらの多くは当技術分野において知られており熟練した技術者によって理解され、限定するものではないが、免疫組織化学的及び/又はウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光標示式細胞分取(FACS)等、血液に基づく定量的アッセイ(例えば血清ELISA)(例えばタンパク質発現レベルを決定するため)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、並びに遺伝し及び/又は組織アレイ分析によって実施されることができる様々なアッセイの何れか一つを含む。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えばAusubel et al. eds., 1995, Current Protocols In Molecular Biology, Units 2 (ノーザンブロット), 4 (サザンブロット), 15 (免疫ブロット)及び18 (PCR分析)に見られる。マルチプレックスイムノアッセイ、例えばRules Based Medicine又はMeso Scale Discovery (MSD)から入手可能なものも使用され得る。
【0139】
bFGFを含んでなるサンプルは、興味の癌の特定のタイプ及び位置に適切である、当技術分野でよく知られる方法によって得られることが可能である。定義の箇所を参照のこと。例えば、癌病変のサンプルは、切除、気管支鏡検査法、穿刺吸引、気管支擦過法によって、又は痰、胸水又は血液から得られ得る。遺伝子又は遺伝子産物、例えばbFGF遺伝子、bFGFタンパク質又はbFGF mRNAは、癌又は腫瘍組織から、又は体の他のサンプル、例えば尿、痰、血清又は血漿等から検出されることができる。癌サンプルにおける標的遺伝子又は遺伝子産物の検出のための上記で検討された同じ技術が、体の他のサンプルに使用されることができる。このような体のサンプルをスクリーニングすることによって、これらの癌に対する簡単であり早期の診断を得ることができる。更に、治療の進行を、標的遺伝子又は遺伝子産物に対するこれらの体サンプルを試験することによって、より容易にモニタすることができる。
【0140】
癌細胞に対する組織調製物を濃縮するための手段は当技術分野で知られている。例えば組織はパラフィン又はクリオスタット切片から単離されることができる。また、癌細胞はフローサイトメトリー又はレーザーキャプチャー法によって正常細胞から分離されることができる。これらは、正常細胞から癌細胞を分離するための他の技術と同様に当技術分野でよく知られている。癌細胞が正常細胞により高くコンタミされている場合は、シグネチャ遺伝子又はタンパク質発現プロファイルの検出はより困難であり得るが、コンタミネーション及び/又は偽陽性/陰性結果を最小化するための技術が知られており、その幾つかを下記に記載する。また、例えばサンプルは、興味の癌細胞と関連するが、対応する正常細胞とは異なるバイオマーカーの存在に対して評価され得、逆も同様である。
【0141】
ある実施態様では、サンプルにおけるタンパク質の発現は、免疫組織化学(「IHC」)及び染色プロトコルを用いて検査される。組織切片の免疫組織化学的染色は、サンプルにおけるタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織化学技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法又は蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。
【0142】
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。例として、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液又はパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
【0143】
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィン又は他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、Broloid及びTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology”を参照)。この手順の例として、切片は約3ミクロンから約5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジン等があるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライド及び/又はポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
【0144】
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレン及び段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology”を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0145】
ある実施態様では、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばGalNac-T14)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体又は蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
【0146】
一般的に、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、H、及び131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)コロイド金粒子。
(c)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体及び/又は上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、又はエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed. J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0147】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
【0148】
数多くの他の酵素-基質の組合せが当業者には利用可能である。これらの一般的な総説は、米国特許第4275149号及び第4318980号を参照のこと。標識は抗体に間接的にコンジュゲートされる場合もある。当業者であれば、これを達成するための様々な技術を知っているであろう。例えば、抗体はビオチンにコンジュゲートされることが可能であり、また上述した4つの広い範疇の標識の何れかがアビジンにコンジュゲートされることが可能であり、又はその逆が可能である。ビオチンはアビジンに選択的に結合し、よってこの間接的な方式で抗体に標識をコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体との標識の間接的なコンジュゲートを達成するために、抗体に小さなハプテンをコンジュゲートさせ、上述の異なるタイプの標識を抗ハプテン抗体にコンジュゲートさせる。よって、抗体との標識の間接的なコンジュゲートを達成できる。
【0149】
上で検討した試料調製手順の他に、IHCの前、中又は後に、組織切片をさらに処理することが所望されうる。例えば、エピトープ回収法、例えばクエン酸バッファー中で組織試料を加熱することを実施することができる(例えば、Leong等 Appl. Immunohistochem. 4(3):201 (1996)を参照)。
【0150】
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。ある実施態様では、標識は、3,3’-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)である。一実施態様では、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
【0151】
このようにして調製された標本はマウントされカバーグラスが取り付けられてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい:

【0152】
別法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で該バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は、多くの方法、血漿又は血清を含む多種多様な組織及び試料を検定するためのウエスタンブロッティング(免疫沈降を含んでも含まなくてもよい)及びELISA手順によって、検定してもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号及び同第4,018,653号参照。これらには、単一の部位及び2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
【0153】
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0154】
フォーワードアッセイへのバリエーションには、試料及び標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。典型的なフォーワードのサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は一晩)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
【0155】
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているか又は標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体又は分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)及び化学発光分子である。
【0156】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法及びEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子又は生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0157】
上記技術が、bFGFのタンパク質発現レベルを検出するために使用されうることが考えられる。
【0158】
本発明の方法は、試料におけるbFGFのmRNA発現レベルを調査するプロトコルを更に含む。細胞中のmRNAの評価方法は公知であり、例えば、相補DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、一又は複数の遺伝子に特異的である標識リボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連した技術)及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、一又は複数の遺伝子に特異的な相補プライマーを用いたRT-PCR及び、他の増幅型の検査法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
【0159】
ある実施態様では、哺乳動物の組織又は細胞試料は、ノーザン、ドットブロット又はPCR分析を用いて、mRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中の標的のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、標的cDNAを増幅するために、標的ポリヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅された標的cDNAの存在を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中の標的mRNAのレベルを決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅された標的cDNAの配列を決定してもよい。
【0160】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のmRNA、例えば標的mRNAを調べるか又は検出する手順が含まれる。核酸マイクロアレイを用いて、試験及びコントロールの組織試料から得た試験及びコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列及び各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、その発現が抗血管形成治療の臨床上の利益の増加又は減少と相関している遺伝子の選択を、固形支持体上に配してよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術及び演算技術を利用する。(例えば2001年10月11日公開のWO01/75166、米国特許第5700637号、同第5445934号及び同第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラス又は他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色及びアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70マー)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0161】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25マー)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターン及びシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンド及び非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値又は特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbank及び他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコルを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄及び染色プロトコルを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0162】
また、組織又は細胞試料中の選択した遺伝子又はバイオマーカーの発現は、機能的なアッセイ又は活性に基づくアッセイにより検査されてもよい。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、組織又は細胞試料中の所定の酵素の存在を決定又は検出するために公知技術のアッセイを行ってもよい。
【0163】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。ある実施態様では、キットは容器、該容器上のラベル、及び該容器内に収容される組成物を具備し、組成物はbFGFに結合する一又は複数の一次抗体を含み、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞におけるbFGFタンパク質の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞におけるbFGFタンパク質の存在を評価するための抗体の使用についての指示書を示すものである。さらにキットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。さらに、キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
【0164】
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、組成物はストリンジェントな条件下でbFGFのポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする一又は複数のポリヌクレオチドを含み、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞におけるbFGFタンパク質の存在及び/又は発現レベルを評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞におけるbFGF RNA又はDNAの存在及び/又は発現レベルを評価するためのポリヌクレオチドの使用についての指示書を示すものである。
【0165】
キットの他の任意の要素は、一又は複数のバッファー(例えばブロックバッファー、洗浄バッファー、基質バッファーなど)、酵素標識によって化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一ないし複数)等を含む。
【0166】
本発明は、患者において血管新生疾患(例えば異常な血管新生又は異常な脈管漏出により特徴付けられる疾患)を治療するための方法を考え、患者から得られたサンプルが対照サンプルと比較してより高いbFGFの発現レベルを有することを決定する工程、及び有効量の抗血管新生剤を患者に投与する工程を含んでなり、これにより腫瘍、癌又は細胞増殖性疾患が治療される。ある実施態様では、抗血管新生治療はVEGFアンタゴニストを投与することを含む。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。ある実施態様では、VEGF抗体はベバシズマブである。ある実施態様では、方法は、より高いbFGFの発現レベルを有する患者に5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgのベバシズマブを投与することを含む。
【0167】
ここで治療される血管新生障害の例は、限定するものではないが、癌、特に血管新生化固形腫瘍及び転移性腫瘍(結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、腎癌および神経グリア芽細胞腫を含む)、眼血管新生により生じる疾患、特に糖尿病性失明、網膜症、主に糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生および虹彩血管新生;乾癬、乾癬性関節炎、血管芽腫、例えば血管腫;炎症性腎臟病、例えば糸球体腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎障害または高血圧性腎硬化症;様々な炎症性疾患、例えば関節炎、特に関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス 、動脈性動脈硬化及び移植後に生じる疾患、子宮内膜症又は慢性喘息及び他の状態;疾患状態は、例えば腫瘍に伴う浮腫、例えば脳腫瘍;悪性腫瘍に伴う腹水;メイグス症候群;肺炎症;ネフローゼ症候群;心膜液貯留;胸水貯留;心血管疾患に伴う透過性、例えば心筋梗塞及び脳卒中後の状態を含む。
【0168】
ここで治療される癌の例は、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病を含む。このような癌のより特定的な例は、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌又は腹部の癌(胃腸癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌、腎臓又は腎性癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB-細胞リンパ腫(例えば低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性非NHL;中悪性度びまん性NKL;高悪性度免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症を伴う異常脈管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)、及びメイグス症候群を含む。より特定的には、本発明の抗体によって治療可能である癌は、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド腫瘍、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、及び多発性骨髄腫を含む。
【0169】
腫瘍等の様々な疾患を治療するために用いられる場合、VEGFアンタゴニストが、同じ又は類似の疾患に適した一又は複数の他の治療薬と組み合わされることが考えられる。例えば、癌を治療するために使用される場合、VEGFアンタゴニストは、一般的な抗癌療法、例えば手術、放射線療法、化学療法又はそれらの組合せ等との組合せで使用されることができる。
【0170】
ある実施態様では、VEGFアンタゴニスト(例えば抗VEGF抗体)及び一又は複数の他の治療剤は、腫瘍を治療するのに十分な量及び時間で同時に又は順次に投与されることができる。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは他の抗癌剤の後に投与されることができる。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは、例えば化学療法等の癌療法と同時に投与されることができる。あるいは又は加えて、アンタゴニスト治療は他の癌療法と交代で行われてもよく、任意の順で実施されることができる。
【0171】
ある実施態様では、VEGFアンタゴニストを用いた癌治療との組合せに有用な他の治療剤は、他の抗血管新生剤を含む。多くの抗血管新生剤が当技術分野で同定され知られており、Carmeliet and Jain (2000) Nature 407(6801):249-57に挙げられているもの、及びここの定義及び血管新生阻害セクションに記載されているものを含む。
【0172】
ある実施態様では、VEGFアンタゴニストはbFGFアンタゴニストと組み合わせて使用されうる。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。ある実施態様では、bFGFアンタゴニストは抗bFGF抗体である。ある実施態様では、抗VEGF抗体ベバシズマブはbFGFアンタゴニストと組み合わせて使用されうる。ある実施態様では、ベバシズマブは抗bFGF抗体と組み合わせて使用されうる。ある実施態様では、抗VEGF抗体は及び抗bFGF抗体は、癌を治療するのに十分な量及び時間において、同時に又は順次に投与されることができる。
【0173】
本発明の薬剤(例えばVEGFアンタゴニスト、bFGFアンタゴニスト、化学療法剤または抗癌剤)は、既知の方法に従ってヒト患者に投与され、例えばボーラスとして又は期間にわたり連続的注入よる静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、経口、局所的、又は吸入経路、及び/又は皮下投与によって投与される。
【0174】
本発明の方法において患者に抗体の投与を考える場合、疾患のタイプ及び重症度により、約1μg/kgから50mg/kg(例えば0.1−20mg/kg)の抗体が、患者への投与の初回候補用量であり、例えば一又は複数の別個の投与又は連続的注入により行われる。典型的な一日投与量は約1μg/kgから約100mg/kgの範囲もしくはそれ以上であり、上述の要因に依存する。数日又はそれ以上にわたる反復投与に関しては、状態に応じ、治療は疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続される。しかしながら他の投与計画が有用でありうる。ある実施態様では、抗体は約5mg/kgから約15mg/kgの範囲の用量で2〜3週ごとに投与される。一態様では、抗体は約5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kgの用量で2〜3週ごとに投与される。このような投与計画は、化学療法計画と組み合わせて使用されてもよい。幾つかの態様では、化学療法計画は従来の高用量間欠投与を含む。ある実施態様では、化学療法剤は計画的中断無しでより少量でより頻回の投与を用いて投与される(「メトロノミック化学療法」)。本発明の治療の経過は一般的な技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0175】
VEGFアンタゴニストと併用して投与される治療剤、例えばbFGFアンタゴニストの有効量は、医師の決定となるであろう。VEGFアンタゴニストの適切な用量は現在用いられているものであり、VEGFアンタゴニスト及び本発明の異なるアンタゴニスト(例えばbFGFアンタゴニスト)の組合せ作用(相乗)により低下されることができる。
【0176】
抗体組成物が処方され、用量決定され、良好な医学的実務に適合する方式で投与される。ここで考慮すべき因子は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患の原因、薬剤の輸送部位、投与方法、投与計画、及び医学実務者に知られた他の因子を含む。投与すべき抗体の「治療的有効量」は、それらを考慮して決定され、疾患又は障害を予防、改善、又は治療するのに必要な最小量である。抗体は、問題とする疾患の予防又は治療に現在使用されている一又は複数の他の薬剤とともに製剤する必要はないが、場合によってはそのようにされる。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患又は治療の型、及び上述した他の因子に依存する。これらは、一般的にはこれまでに使用されたのと同じ用量かつ投与経路で、あるいはこれまでに使用された用量の1から99%で用いられる。通常、疾患又は障害の軽減又は治療は、疾患又は障害に伴う一又は複数の症状又は医学的問題の減少を含む。癌の場合では、や薬剤の治療上有効量は以下の一又は複数の組合せを達成することができる:癌細胞の数を減少する;腫瘍サイズを低減する;癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害する(例えばある程度低下する及び/又は停止する);腫瘍転移を阻害する;腫瘍増殖をある程度阻害する;及び/又は癌に伴う症状の一又は複数をある程度軽減する。薬剤が存在する癌細胞を殺す及び/又は増殖を妨げる範囲において、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性でありうる。幾つかの実施態様では、本発明の組合せは、被験体又は哺乳動物における疾患又は障害の発生又は再発を防止するために使用されることができる。
【0177】
ある実施態様では、本発明は抗血管新生治療から利益を得うる、癌を有する患者を識別する方法であって、患者から得られたサンプルにおけるbFGFの発現レベルを決定することを含んでなり、患者に有効量のVEGFアンタゴニスト及び一又は複数の化学療法剤を投与することによって患者を治療することを含んでなる方法を提供する。様々な化学療法剤が本発明の組合せ治療法において使用されることができる。考えられる化学療法剤の例示的、非限定的なリストが、本明細書において使用される用語の定義を提供するセクションにおいてここに提供される。
【0178】
ある実施態様では、本発明の方法は患者にVEGFアンタゴニスト及び有効量の少なくとも一つの化学療法剤を投与することを含む。ある実施態様では、化学療法剤はシスプラチンである。ある実施態様では、化学療法剤はゲムシタビンである。ある実施態様では、化学療法剤はカルボプラチンである。ある実施態様では、化学療法剤はパクリタキセルである。ある実施態様では、有効量のVEGFアンタゴニスト、シスプラチン及びゲムシタビンが被験者に投与される。ある実施態様では、有効量のVEGFアンタゴニスト、カルボプラチン及びパクリタキセルが被験者に投与される。
【0179】
当業者によって理解されるであろう化学療法剤の適切な用量は一般的に、およそ臨床治療において既に採用される量であり、化学療法剤は単独で又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される。用量におけるバリエーションは治療される状態に依存して生じるだろう。治療を実施する医師が、個々の被験体に対する適切な用量を決定することができるだろう。
【0180】
前述において、本発明は特定の実施態様を参照し説明されたが、限定されるものではない。実際、ここに示されまた記述されるものに加え、本発明の様々な変更が当業者にとり前述から明瞭であり、添付の請求の範囲内に含まれる。明細書を通して挙げた全ての引用及びそこに挙げられる引用は、出典明示によりその全体を全ての目的のために本明細書中に援用する。
【0181】
実施例
実施例1:AVAiL治験プロトコル
2つの第III相試験、E4599及びAVAiLにおける白金を用いた化学療法へのベバシズマブの追加は、無処置の進行NSCLC患者の結果を改善した。研究E4599では、複数バイオマーカーの予後及び予測値を決定することが研究の目的であった。複数バイオマーカーのこの分析は、細胞内接着分子細胞内接着分子-1(ICAM-1)のレベルが治療への応答を予測し、また生存率を予後予測し得、高いベースライン血管内皮増殖因子(VEGF)レベルを有する患者はベバシズマブへのより高い応答を有しうることを示した。AVAiLでは、類似のバイオマーカー分析を実施した。
【0182】
AVAiL(「肺におけるAVASTINTM」、BO177704)研究は、ランダム化、コントロール化、二重盲検化第III相試験であり、扁平細胞以外の組織構造を有し、過去に無処置の進行非小細胞肺癌(NSCLC)を有する1000以上の患者を含んだ(図1)。研究の主要な目的は、対コントロールレジメンの両AVASTINTM利用治療アームの無進行生存(PFS)の患者における優位性を実証することであった。この研究の副次的エンドポイントは、対標準治療の2用量のAVASTINTMの全生存(OS)、奏効率及び奏功期間、生活の質及び安全性比較を含んだ。2用量のAVASTINTMを研究した(15mg/kg及び7.5mg/kg)。AVAiL研究は、NSCLC(E4599)治験において既に発見された、著しく増加されたPFS(化学療法のみを受けたものより20〜30%高いPFS率)における臨床利点を確認した(Reck M, et al. J Clin Oncol 2009; 27(8):1227-1234; Sandler A.B. et al.; N Engl. J. Med. 2006; 355: 2542-2550)。類似の治療効果が用量7.5及び15mg/kgAVASTINTMの双方で観察された。
2542-2550).
【0183】
治験プロトコルは、各場所で治験審査委員会により認証され、Declaration of Helsinki、現在の米国食品医薬品局の実施の基準、地域の倫理的法的必要条件に準拠して行った。AVAiL治験にランダム化された全患者に関して後向きバイオマーカー分析を実施するという決定は、研究への動員が完了した後に成された。
【0184】
一組の患者の完全な人口統計学的プロファイルを作成し、各患者の完全な病歴を記録にとった。全患者は身体検査を受け、体重、身長、バイタルサイン及び心肺検査、ECOGパフォーマンスステータス、12リードECGを含んだ。各患者の腫瘍状態を前述のように評価した(Reck M. et al., J. Clin. Oncol. 2009; 27(9):1227-1234)。簡潔には、治験治療の間、腫瘍状態を3サイクル(およそ9週ごと)に評価した。患者が進行性疾患以外の理由で治験治療から離脱した場合は、追跡腫瘍評価を、疾患進行まで2ヶ月ごとに繰り返した。腫瘍反応は、調査員によりResponse Evaluation Criteria in Solid Tumorsに従い評価した(Therasse P. et al., J. Clin. Oncol. 2009; 27(9):1227-1234)。独立データ安全性監視委員会が非混合安全データの見直しを担った。有害事象(AE)をNational Cancer Institute Common Toxicity Criteria for Adverse Events (version 3.0)を用いてグレード化し、医薬品規制用語集に従いコード化した。また、実験室データを得て、Data and Safety Monitoring Boardに提出した。
【0185】
低用量ベバシズマブ(7.5mg/kg)を受けた患者のバイオマーカー母集団ベースライン特徴を下の表1に示す。表1に示すバイオマーカー分析に含んだ患者のベースライン人口統計学的特徴は、全体として研究対象母集団を反映する。



【0186】
実施例2:サンプル採取及び分析
血漿サンプルを、ステージIIIB又はIVの患者又は再発性非扁平NSCLC患者から、何れかの薬剤を投与する前に採取した。全サンプルを患者から得て、その後最高で6サイクルまでシスプラチン80mg/m及びゲムシタビン1,250mg/mで、加えて疾患進行まで3週間ごとに低用量ベバシズマブ(7.5mg/kg)、高用量ベバシズマブ(15mg/kg)、又はプラセボで処置した。
【0187】
合計で3mLsの血液をクエン酸ナトリウムバキュテナー管に採取した。それらを10から15回の管の反転によって直ちに混合し、4Cの冷却遠心機においておよそ3000gで遠心分離した。血漿を2つのプラスチックバイアルに分注した。サンプルを、直立−70Cで保管した。幾つかの場合では、サンプルを最高で1ヶ月−20C で保管し、次いで−70Cに移した。
【0188】
全サンプルを解凍し、72のバッチにおいて384ウェルREMPマイクロ管プレートに40μlの一定分量で分配した。管をアルミニウムセプタムで密閉し、−70°Cの温度を維持した冷凍庫に分析まで保管された。全部で366のサンプルが、bFGF濃度の分析のために利用可能であった。
【0189】
bFGFを測定するためのサンドイッチ・イムノアッセイをR&D Systems (Minneapolis, MN)から購入した。このキットを製造者の推奨に従い使用した。簡潔には、基本標準を64pg/mLの原液でCalibrator Diluentを用いて調整した。Calibrator Diluentにおける標準希釈系列は、32、16、8、4、2、1及び0pg/mLのbFGFを含んだ。
【0190】
アッセイバッファーに前希釈された標準、コントロール又はサンプルを、アッセイキットに提供されるbFGFに対するマウスモノクローナル抗体でコートされたポリスチレンマイクロプレートの各ウェルに加えた。室温で3時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、コンジュゲートされた検出抗体を添加し更に2時間インキュベートした。更なる洗浄の後、50μlの基質溶液を各ウェルに添加し室温で45分間インキュベートした。その後、増幅溶液(50μl/ウェル)を添加し、色を45分間形成させ、そして反応を2N硫酸(50μl/ウェル)によって停止させた。30分以内に、プレートをMicroplate Spectrophoto-meter (Versamax, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて490nmの波長で読んだ。490nmでの吸光度値を650nmでの吸光度に補正した。データ整理は4パラメーターロジスティック曲線フィッティングに基づき、アッセイの機能的限界により2−64pg/mlの範囲となった。
【0191】
bFGFタンパク質レベルが検出の範囲外であった場合、結果をBLQ(定量化限界下)又はALQ(定量化限界上)として報告した。bFGF測定のためのサンプル体積は限られたので単回測定のみを実施した。サンプル体積が測定のために、単回の反復測定にさえに十分でない場合、QNS(数量不足)を報告した。単回測定が可能であった場合、単回測定からの結果を報告した。
【0192】
各試験プレートに含んだ3つのインランコントロールサンプルに基づくと、サンプル分析におけるbFGFアッセイの実施は、研究の実施を通して満足のいくものだった。妥当な結果を出すサンプルの数、定量化範囲下又は上の結果、又は非妥当結果を下の表2にまとめる。

【0193】
実施例3:bFGFタンパク質レベルデータの統計解析
統計解析のために、bFGFタンパク質発現レベルに関するデータを2つのカテゴリに分けた:高レベル及び低レベル。高及び低レベルの定義はここに提供している。
全生存(OS)エンドポイントを、研究におけるエントリーから死又は打切りまでの時間として定義した。無進行生存(PFS)エンドポイントを、研究におけるエントリーから疾患進行又は死までとして定義した。
【0194】
コックス比例ハザード回帰モデルを予測因子のOS及びPFSへの効果を評価するために使用した。OSに対するハザード比を、治療グループにおける死亡の危険性をプラセボグループにおける死亡の危険性で割った比率として定義した。1未満のハザード比は死の危険性がプラセボアームより治療アームにおいて少なく、従って平均OSが、プラセボ患者より治療された患者において長いことを示す。PFSに対するハザード比を、治療グループにおける死又は進行の危険性をプラセボグループにおける死の危険性によって割った比率として定義した。1未満のハザード比は、進行又は死の危険性がプラセボアームより治療アームにおいて少ないく、従って平均PFSがプラセボ患者より治療患者において長いことを示す。
【0195】
「治療効果」又は「治療の効果」をOS又はPFSへの効果として定義し、プラセボと比較して7.5mg/kgのベバシズマブを患者に投与した場合に観察した。治療効果をハザード比を用いて評価した。有効な治療を、OS又はPFSがプラセボアームと比較して治療アームにおいて増加したことを意味するよう定義した。従って有効な治療効果は1未満のハザード比に該当する。
【0196】
カプラン・マイヤー方法を、高bFGFタンパク質レベルである患者のサブグループ及び低bFGFタンパク質レベルである患者のサブグループにおける治療グループによる生存確率のグラフ表示を生成するために使用した(図2〜5)。
【0197】
分析の第一セットは、高bFGFタンパク質レベル患者の治療効果を評価した。サンプルからのbFGFレベルの中央値は6.9pg/mlであった。従って、第一実施例では、患者から得られたサンプルにおけるbFGFタンパク質レベルが6.9pg/mlより大きい場合、サンプルを高レベルのbFGFタンパク質を有するとした。更に、2pg/mlのカットオフ値をバイオマーカーの効果を特徴づけるために用い、これは該値がアッセイ検出の低限に該当するからである。従って、第二実施例では、患者から得られたサンプルにおけるbFGFタンパク質レベルが2pg/mlより大きい場合、サンプルを高レベルのbFGFタンパク質を有するとした。
【0198】
OSに関しては、帰無仮説は、プラセボ治療グループ及び7.5mg/kgのベバシズマブ治療グループの間にOSの違いがないと示した。別の仮説は、2つの治療グループの間にOSの違いがあると示した。ログランク検定を、この仮説に対応するp値を算出するために使用した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0199】
PFSに関しては、帰無仮説は、プラセボ治療グループ及び7.5mg/kgのベバシズマブ治療グループの間にPFSの違いがないと示した。別の仮説は、2つの治療グループの間にOSの違いがあると示した。ログランク検定を、この仮説に対応するp値を算出するために使用した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0200】
分析の第二セットは、低bFGFタンパク質レベル患者における治療効果を評価した。第一実施例では、患者から得られたサンプルにおけるbFGFタンパク質レベルが6.9pg/ml以下である場合に、サンプルが低レベルのbFGFタンパク質を有するとした。第二実施例では、患者から得られたサンプルにおけるbFGFタンパク質レベルが2pg/ml以下である場合に、サンプルが低レベルのbFGFタンパク質を有するとした。
【0201】
帰無仮説は、2つの治療グループの間にOSの違いが無いと示した。別の仮説は、2つの治療グループの間にOSの違いが有ると示した。ログランク検定を、この仮説に対応するp値を算出するために使用した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0202】
PFSに関しては、帰無仮説は、2つの治療グループの間に無進行生存における違いが無いことを示した。別の仮説は、2つの治療グループの間にPFSにおける差があることを示した。ログランク検定を、この仮説に対応するp値を算出するために使用した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0203】
分析の第三セットは、治療効果がbFGFタンパク質レベルにより異なるかを評価するために実施した。予測因子として、治療グループ、bFGFレベル及びbFGF相互作用によるによる治療を有するモデルを使用した。
【0204】
OSに関しては、この相互作用試験に対する帰無仮説は、bFGFレベルによるOSへの治療効果における違いが無いことを示した。別の仮説は、治療効果がbFGFレベルにより異なることを示した。尤度比検定を使用してこの仮説に対応するp値を算出した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。0.1未満のP値を、有意境界とする。
【0205】
PFSに関しては、この相互作用試験に対する帰無仮説は、bFGFレベルによるPFSへの治療効果における違いが無いことを示した。別の仮説は、治療効果がbFGFレベルにより異なることを示した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。0.1未満のP値を、有意境界とする。
【0206】
分析の第4セットを、上述の他の3分析で出された結果の頑健性を点検するために実施した。この組の分析では、bFGFタンパク質レベルの値は二分されず、対数変換後、連続型変数として扱われた。さらに、bFGFの効果が他の要因に交絡されていないか検討するために、他のベースライン予後予測変数をモデルに含んだ。モデルは予測因子として、治療グループ、bFGFレベル、bFGF相互作用による治療及び他のベースライン共変数を有した。他のベースライン予測因子は:性別(男性対女性);過去の喫煙者対他全て;年齢(65未満対65以上);疾患ステージ(IV対他全て);西ヨーロッパ/オーストラリア/カナダ対他全て;人種(白人対他全て);スクリーニングでのECOG;腺癌対他全てであった。
【0207】
全生存に関して、帰無仮説は、OSに対する治療効果は、変動bFGFタンパク質発現レベルと線形的に変化しないことを示した。別の仮説は、治療効果が変動bFGFタンパク質発現レベルによって変化することを示した。尤度比検定を使用してこの仮説に対応するp値を算出した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0208】
PFSに関して、帰無仮説は、PFSに対する処理効果は、変動bFGFタンパク質発現レベルと線形的に変化しないことを示した。別の仮説は、治療効果が変動bFGFタンパク質発現レベルによって変化することを示した。尤度比検定を使用してこの仮説に対応するp値を算出した。0.05未満のP値を、統計学的に有意であるとする。
【0209】
下記の表3は、値を6.9pg/ml以下として定義するbFGFの低タンパク質発現レベル及び値を6.9pg/mlより大きいとして定義するbFGFの高タンパク発現レベルを有する、患者のサブグループにおける治療の効果を評価する分析セット1及び2の結果を示す。
【0210】
表3の結果は、bFGFの高タンパク発現レベル(>6.9pg/ml)を有する患者におけるOS及びPFSへの強い治療効果を示す。ハザード比は1を大きく下回り、p値は0.05以下であり、双方は、治療が6.9pg/mlより大きいbFGFタンパク質レベルを有する患者における死までの時間及び進行までの時間を著しく延長することを示す。

【0211】
下記の表4は、値を2pg/ml以下として定義するbFGFの低タンパク質発現レベル及び値を2pg/mlより大きいとして定義するbFGFの高タンパク発現レベルを有する、患者のサブグループにおける治療の効果を評価する分析セット1及び2の結果を示す。
表4の結果は、bFGFの高タンパク発現レベル(>2pg/ml)を有する患者におけるOS及びPFSへの強い治療効果を示す。ハザード比は1を大きく下回り、p値は0.05以下であり、双方は、治療が2pg/mlより大きいbFGFタンパク質レベルを有する患者における死までの時間及び進行までの時間を著しく延長することを示す。

【0212】
下記の表5は、分析の第3セットの結果を示す。これは、治療効果及びbFGFタンパク質発現レベル間の相互作用の試験のp値を報告する。これらの結果は、治療効果が、bFGFの高タンパク発現レベルを有する患者のサブグループにおいて有意により重要であることの更なるエビデンスを提供する。

【0213】
下の表6は、分析の第4のセットの結果を示す。これは、対数変換された連続変数としてのbFGFタンパク質発現レベルに対する値及び他のベースライン患者特性を使用したモデルにおいて、相互作用項による治療に対するp値を示す。これらの結果は、治療効果が、bFGFの高タンパク発現レベルと有意に関連する更なるエビデンスを提供し、より高い治療効果が、bFGFのより高いタンパク質発現レベルを有する患者に観察された。

【0214】
要約すると、幾つかの統計学モデルをOS及びPFSに対する治療効果をbFGFレベルに関連して評価するために適用した。分析はまず、全bFGFタンパク質発現レベルが2pg/mlより大きい値を有するとして定義される高タンパク質レベルbFGFで実施した。次に治療効果において、高及び低bFGFタンパク質発現レベル間の差異を検出する統計学的検定力を増加するために、全値が6.9pg/mlより大きいとして定義される高タンパク発現レベルでも実施した。全分析は、OS及びPFSにおける有意な増加が、高タンパク発現レベルbFGFを有する患者に存在することを一貫して示した(図2、3、4及び5)。
【0215】
開示を通して引用される全引例は、出典明記によりその全体を本明細書中に援用する。
本発明は、特定の実施例として考えられるものを参照して記述したが、発明はかかる実施態様に限定されるものではない。逆に、本発明は添付の請求の範囲と精神の中に含まれる様々な変更及び均等なものを包含することを意図する。
【0216】
請求の範囲を含む本出願を通して、用語「含んでなる」は包括的、オープンエンドな移行句として使用され、追加の、非列挙要素又は方法工程を除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗血管新生治療から利益を得うる、癌を有する患者を識別する方法であって、患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定することを含んでなり、対照試料と比較した患者から得られた試料におけるbFGFのより高い発現レベルが、患者が抗血管新生治療法から利益を得うることを示す方法。
【請求項2】
癌を有する患者の抗血管新生治療法に対する応答性を予測する方法であって、患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定することを含んでなり、対照試料と比較した患者から得られた試料におけるbFGFのより高い発現レベルが、患者が抗血管新生治療法に応答しそうであることを示す方法。
【請求項3】
抗血管新生治療法が患者にVEGFアンタゴニストを投与することを含む請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗VEGF抗体がベバシズマブである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗血管新生治療法が、患者に少なくとも一つの化学療法薬を投与することを更に含む請求項3から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤がシスプラチン又はゲムシタビンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗血管新生治療法が、患者に少なくとも2つの化学療法薬を投与することを更に含む請求項3から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの化学療法剤がシスプラチン及びゲムシタビンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗血管新生治療法が、患者に7.5mg/kgのベバシズマブを投与することを含む請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
患者に有効量の抗VEGF抗体を投与することを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗VEGF抗体がベバシズマブである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
7.5mg/kgのベバシズマブが患者に投与される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌を患う患者の治療効果を改善するための抗VEGF抗体の使用であって、以下の工程:(1)患者から得られた試料におけるbFGFの発現レベルを決定する工程及び(2)対照試料と比較して試料においてbFGFのより高い発現レベルがある場合、患者に有効量の抗VEGF抗体を投与する工程を含んでなる使用。
【請求項15】
患者に有効量の少なくとも一つの化学療法剤を投与することを更に含んでなる請求項14に記載の使用。
【請求項16】
少なくとも一つの化学療法剤がシスプラチン又はゲムシタビンである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
患者に有効量の少なくとも2つの化学療法剤を投与することを更に含んでなる請求項14に記載の使用。
【請求項18】
少なくとも2つの化学療法剤がゲムシタビン及びシスプラチンである請求項17に記載の使用。
【請求項19】
bFGFの発現レベルがタンパク質発現レベルである請求項1から13の何れか一項に記載の方法又は請求項14から18の何れか一項に記載の使用。
【請求項20】
試料におけるbFGFのタンパク質発現レベルが2pg/mlより大きい請求項1から13の何れか一項に記載の方法又は請求項14から18の何れか一項に記載の使用。
【請求項21】
試料におけるbFGFのタンパク質発現レベルが6.9pg/mlより大きい請求項1から13の何れか一項に記載の方法又は請求項14から18の何れか一項に記載の使用。
【請求項22】
癌が肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、腎癌又は神経膠芽腫である請求項1から13の何れか一項に記載の方法又は請求項14から18の何れか一項に記載の使用。
【請求項23】
癌が肺癌である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
癌が過去に無処置の肺癌である請求項23に記載方法。
【請求項25】
癌が非小細胞肺癌である請求項23に記載の方法。
【請求項26】
患者から得られる試料が、組織、血液、血液由来細胞、血漿、血清、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるメンバーである請求項1から13の何れか一項に記載の方法又は請求項14から18の何れか一項に記載の使用。
【請求項27】
bFGFの発現レベルを検出することが可能である、一又は複数の化合物又はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドアレイを含んでなる請求項1から13の何れか一項の方法を実行するために有用なキット。
【請求項28】
請求項1から13の何れか一項に記載の方法においてbFGFの発現レベルを決定するための、タンパク質又はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドアレイの使用。
【請求項29】
bFGFの発現レベルを決定することが可能な化合物が、免疫組織化学法における使用に適したポリペプチド及び/又はbFGFに特異的な抗体である請求項28に記載のキット又は請求項29に記載の使用。
【請求項30】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505436(P2013−505436A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529264(P2012−529264)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063584
【国際公開番号】WO2011/033006
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】