説明

癌抑制剤

【課題】癌抑制遺伝子を新たに見出してこれを含有する癌抑制剤ならびに該癌抑制遺伝子を用いる癌の診断方法を提供すること。
【解決手段】RGC32遺伝子又はその相同遺伝子を含有する癌抑制剤;RGC32タンパク質又はその相同タンパク質を含有する癌抑制剤。RGC32遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAを用いて検体試料中のRGC32遺伝子を解析する工程を含む癌の診断方法;ならびにRGC32タンパク質に対する抗体又はその断片を用いて検体試料中のRGC32タンパク質を解析する工程を含む癌の診断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌抑制遺伝子及び該遺伝子がコードするタンパク質の医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の発症は細胞のタンパク質の変異や量的変化に起因することは古くから知られている。近年の遺伝子工学の発達は特定タンパク質をコードする遺伝子の増幅や癌細胞における遺伝子変異の解析を可能にし、癌研究の分野においても飛躍的な発展をもたらした。これまでに細胞の癌化や癌細胞の異常増殖に関与するいわゆる癌遺伝子の解析及び同定が進んでいる。一方、変異あるいは発現低下により癌化につながる癌抑制遺伝子がここ数年脚光を浴びている。これまでに癌抑制遺伝子として網膜芽細胞腫のRb遺伝子、大腸癌のp53遺伝子及びAPC遺伝子、Wilms腫瘍のWT1遺伝子などが発見されている。WT1遺伝子を活用した癌抑制剤の例も報告されている(特許文献1)。
【0003】
また、癌の発生、進展悪性化、転移などには一つの遺伝子の異常だけでなく複数の遺伝子の異常が関与していることが次第に明らかになりつつあり、さらに多くの未同定の癌遺伝子及び癌抑制遺伝子が存在するものと考えられている。癌抑制効果を有する遺伝子は数多く知られているが、多くの場合、その選別には患者の遺伝子の変異を、染色体DNAを染色することにより視覚化して見つけ出すアプローチ(非特許文献1)や、遺伝子の欠失をLOH(Loss Of Heterozygosity)解析で大まかな範囲を選定した後、重要な遺伝子領域を絞り込むという方法がこれまで行われてきた(特許文献2)。しかし、これらの方法では、判別できるDNA欠失領域が莫大なものとなり、重要な遺伝子領域を絞り込む作業に大量の時間と手間を必要とする欠点を持っており、癌抑制遺伝子を探し出す手段としては限界があった。また、従来の遺伝子を用いた癌病態の分離・識別法では悪性度の判定は困難であった。
【0004】
【特許文献1】WO2003/002142号公報
【特許文献2】WO01/032859号公報
【非特許文献1】Yasuhide Yamashita、et al.、World J Gastroenterol 、11(33):5129−5135、2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存の方法に代わる新たな方法により癌抑制遺伝子を見出して、これを含有する癌抑制剤を提供することを課題とする。本発明はまた、該癌抑制遺伝子がコードするタンパク質を含有する癌抑制剤を提供することを課題とする。本発明はさらに該癌抑制遺伝子の存在量または発現量を計測することによる癌患者の病態における悪性度を診断する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく神経膠腫(Glioma)症例のDNAの部分欠失領域を探索することを精力的に行ってきた。神経膠腫は、主に星膠腫(Astrocytoma)、乏突起膠腫(Oligodendroglioma)、上衣腫(Ependymoma)、最も悪性度の高い膠芽腫(Glioblastoma)に分類され、脳腫瘍全体の30−40%を占める。本発明者らは、神経膠腫における癌関連遺伝子を特定するため、新規に開発されたアレイCGH法(Inazawa J.、et al.、 Cancer Sci.95(7)、559、2004)により癌で高頻度に欠失した遺伝子をスクリーニングした。さらに、cDNAマイクロアレイとRT−PCR法を組み合わせ、神経膠腫でDNA中から欠失し、発現が著しく抑制されている遺伝子として、RGC32(response gene to complement 32)遺伝子を同定した。さらに、RGC32タンパク質の無い癌細胞にRGC32タンパク質を発現させることで、足場依存性増殖能の低下、細胞増殖速度の低下が起こることを確認し、RGC32タンパク質は癌抑制遺伝子産物の働きを持つことを実証した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0007】
即ち、本発明によれば、RGC32遺伝子又はその相同遺伝子を含有する癌抑制剤が提供される。
好ましくは、前記遺伝子又はその相同遺伝子はベクターに組み込まれている。
好ましくは、前記ベクターはウイルスベクター又は動物細胞発現用プラスミドベクターである。
【0008】
好ましくは、前記ウイルスベクターはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである。
好ましくは、前記遺伝子又はその相同遺伝子はリポソームに封入されている。
【0009】
本発明の別の側面によれば、RGC32タンパク質又はその相同タンパク質を含有する癌抑制剤が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、RGC32遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAを用いて検体試料中のRGC32遺伝子を解析する工程を含む、癌の診断方法が提供される。
好ましくは、前記解析は遺伝子の変異の検出又は遺伝子の発現量の異常の検出である。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、RGC32タンパク質に対する抗体又はその断片を用いて検体試料中のRGC32タンパク質を解析する工程を含む、癌の診断方法が提供される。
好ましくは、前記解析はタンパク質の発現量の異常の検出である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たに癌抑制機能を見出したRGC32遺伝子又は該遺伝子がコードするRGC32タンパク質を含有する癌抑制剤が提供される。これらの薬剤は癌の個別性に基づく治療や癌の予後の改善などの臨床上の観点から、あるいは癌の基礎的研究の観点から非常に有用である。また、RGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現量を測定すること、ゲノムDNA上でのRGC32遺伝子の存在を確認すること、あるいはRGC32タンパク質量を測定することにより、脳腫瘍患者の病理学的悪性度を予測することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
(1)本発明の癌抑制剤
本発明の一態様によれば、本発明の癌抑制剤は有効成分としてRGC32遺伝子又はその相同遺伝子を含む。本発明のもう一つの態様によれば、本発明の癌抑制剤は有効成分としてRGC32タンパク質又はその相同タンパク質を含む。
【0014】
RGC32遺伝子の塩基配列及びRGC32タンパク質のアミノ酸配列は既に知られており(Badea、T.C.、 Niculescu、F.I.、 Soane、L.、 Shin、M.L. and Rus、H. 1998)、RGC32遺伝子の塩基配列はNational Center for Biotechnology InformationのデータベースにAF16963番にて、またRGC32タンパク質のアミノ酸配列は同データベースにNP054778番にて登録されている。RGC32遺伝子の塩基配列は配列番号1に記載する通りであり、RGC32タンパク質は配列番号1の塩基配列の147番目から500番目までの領域をコードし、そのアミノ酸配列は配列番号2に示される通りである。
【0015】
本明細書において「RGC32遺伝子」というのは、上記塩基配列で特定されるヒト由来の遺伝子をいい、「RGC32タンパク質」というのは、該RGC32遺伝子がコードし、上記アミノ酸配列で特定されるタンパク質をいう。
【0016】
RGC32遺伝子は、当業者に公知の技術を用いて培養細胞などから取得したcDNAであってもよいし、又は本明細書の配列番号1に記載の塩基配列に基づいてPCR法などにより化学的に合成したものでもよい。PCR法により配列番号1に記載した塩基配列を有するDNAを取得する場合、ヒトの染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを使用してPCRを行う。PCRで増幅したDNA断片は大腸菌などの宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
【0017】
上記のブローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual、2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Supplement 1〜38、John Wiley & Sons(1987−1997)などに記載された方法に準じて行うことができる。
【0018】
本発明において、「RGC32遺伝子の相同遺伝子」とは、配列番号1に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、癌抑制活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子;又は配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、癌抑制活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子いう。また、RGC32遺伝子の相同遺伝子にはRGC32遺伝子の断片も含まれる。
【0019】
上記の「配列番号1に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から60個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは1から5個程度を意味する。
【0020】
上記の「癌抑制活性」の程度は特に限定はされないが、好ましくはRGC32タンパク質が有する癌抑制活性と実質的に同等又はそれ以上の癌抑制活性をいう(以下、本明細書における「癌抑制活性」は同じ意味を示す)。
【0021】
従って、「RGC32遺伝子の相同遺伝子」は上記に定義される構造と機能を有する限り、由来は問わず、ヒト以外の哺乳動物由来であってもよいし、ヒトなどの哺乳動物由来の遺伝子に対して人工的に変異を導入したものであってもよい。ただし、該遺伝子を後記のごとく癌抑制剤に使用する場合は臨床上の安全性の観点からヒト由来のものが好ましい。
【0022】
上記の「配列番号1に記載の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、付加又は置換されている塩基配列であって、癌抑制活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子」は、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。具体的には、上記遺伝子は配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより取得することができる。例えば、配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法などを用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual、2nd Ed.、 Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Supplement 1〜38、John Wiley &Sons(1987−1997)などに記載の方法に準じて行うことができる。
【0023】
上記の「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニー又はプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning:A laboratory Mannual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY.、1989などに記載されている方法に準じて行うことができる。
【0024】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
【0025】
上記の「配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、癌抑制活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する遺伝子」は、上述の通り、一定のハイブリダイゼーション条件下でコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法などを行うことにより得ることができる。
【0026】
本発明において、「RGC32タンパク質の相同タンパク質」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列であって、癌抑制活性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質;又は、配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、癌抑制活性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。
【0027】
上記した「配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は挿入したアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
【0028】
上記した「配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列」とは、該アミノ酸配列と配列番号2に記載のアミノ酸配列との相同性が少なくとも70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。
【0029】
RGC32タンパク質は、天然由来のタンパク質でも、化学合成したタンパク質でも、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質の何れでもよい。比較的容易な操作でかつ大量に製造できるという点では、組み換えタンパク質が好ましい。
【0030】
天然由来のタンパク質は、該タンパク質を発現している細胞又は組織からタンパク質の単離・精製方法を適宜組み合わせて単離することができる。化学合成タンパク質は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。組み換えタンパク質は、該タンパク質をコードする塩基配列(例えば、配列番号1に記載の塩基配列)を有するDNAを好適な発現系に導入することにより生産することができる。
【0031】
なお、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換又は挿入したアミノ酸配列を有するタンパク質、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列の一例示す配列番号1に記載の塩基配列の情報に基づいて当業者であれば適宜製造又は入手することができる。
【0032】
本発明の癌抑制剤の好ましい態様としては、有効成分として上記のRGC32遺伝子又はその相同遺伝子をベクターに組み込んだ組換えベクターを含む。ベクターとしてはウイルスベクター又は動物細胞発現用ベクター、好ましくはウイルスベクターが用いられる。
【0033】
ウイルスベクターとしてはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。中でも、レトロウイルスベクターは、細胞に感染後、ウイルスゲノムが宿主染色体に組み込まれ、ベクターに組み込んだ外来遺伝子を安定にかつ長期的に発現させる可能であるからレトロウイルスベクターを使用することが特に望ましい。
【0034】
動物細胞発現用ベクターとしては例えばpCXN2(Gene、108、193−200、1991)、PAGE207(特開平6−46841号公報)又はその改変体などを用いることができる。
【0035】
上記組換えベクターは適当な宿主に導入して形質転換し、得られた形質転換体を培養することによって生産することができる。組換えベクターがウイルスベクターの場合、これを導入する宿主としてはウイルス生産能を有する動物細胞が用いられ、例えば、COS−7細胞、CHO細胞、BALB/3T3細胞、HeLa細胞などが挙げられる。レトロウイルスベクターの宿主としては、ΨCRE、ΨCRIP、MLVなどが、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターの宿主としては、ヒト胎児腎臓由来の293細胞などが用いられる。ウイルスベクターの動物細胞への導入はリン酸カルシウム法などで行うことができる。また、組換えベクターが動物細胞発現用ベクターの場合、これを導入する宿主としては大腸菌K12株、HB101株、DH5α株などを使用でき、大腸菌の形質転換は当業者に公知である。
【0036】
得られた形質転換体はそれぞれに適した培地、培養条件により培養する。例えば、大腸菌の形質転換体の培養は、生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を含有するpH5〜8程度の液体培地を用いて行うことができる。培養は通常15〜43℃で約8〜24時間程度行う。この場合、目的とする組み換えベクターは、培養終了後、通常のDNA単離精製法により得ることができる。
【0037】
また、動物細胞の形質転換体の培養は、例えば約5〜20%のウシ胎児血清を含む199培地、MEM培地、DMEM培地などの培地を用いて行うことができる。培地のpHは約6〜8が好ましい。培養は通常約30〜40℃で約18〜60時間行う。この場合、目的とする組み換えベクターは、それを含有するウイルス粒子が培養上清中に放出されるので、ウイルス粒子の濃縮、精製を塩化セシウム遠心法、ポリエチレングリコール沈澱法、フィルター濃縮法などにより得ることができる。
【0038】
本発明の癌抑制剤のうち、有効成分としてRGC32遺伝子又はその相同遺伝子を含む癌抑制剤(以下、遺伝子治療剤という)は、有効成分であるRGC32遺伝子又はその相同遺伝子を遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合することにより製造することができる。また、RGC32遺伝子又はその相同遺伝子をウイルスベクターに組み込んだ場合は、組換えベクターを含有するウイルス粒子を調製し、これを遺伝子治療剤に通常用いる基剤と共に配合する。
【0039】
上記基剤としては、通常注射剤に用いる基剤を使用することができ、例えば、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物などの塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコースなどの溶液、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液などが挙げられる。あるいはまた、当業者に既知の常法に従って、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、植物油、界面活性剤などの助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製することもできる。これらの注射剤は、粉末化、凍結乾燥などの操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。
【0040】
また、本発明の遺伝子治療剤は、常法により調製されたリポソームの懸濁液にRGC32遺伝子を添加し凍結した後融解することにより製造することもできる。リポソームを調製する方法は、薄膜振とう法、超音波法、逆相蒸発法、界面活性剤除去法などがある。リポソームの懸濁液は超音波処理した後、遺伝子を添加するのが遺伝子の封入効率を向上させる上で好ましい。遺伝子を封入したリポソームはそのまま、又は水、生理食塩水などに懸濁して静脈投与することができる。
【0041】
上記遺伝子治療剤の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内などの全身投与でもよいし、あるいは癌原病巣又は予想転移部位に対して、局所注射又は経口投与などの局所投与を行ってもよい。さらに、遺伝子治療剤の投与にあたっては、カテーテル技術、遺伝子導入技術、又は外科的手術などと組み合わせた投与形態をとることもできる。
【0042】
上記遺伝子治療剤の投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、成人では一日当たり組み換え遺伝子の重量として1μg/kg体重から1000mg/kg体重程度の範囲であり、好ましくは10μg/kg体重から100mg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0043】
また、本発明の癌抑制剤のうち、有効成分としてRGC32タンパク質又はその相同タンパク質を含む癌抑制剤(以下、タンパク質製剤という)は、有効成分であるRGC32タンパク質又はその相同タンパク質に製剤用添加物(例えば、担体、賦形剤など)を含む医薬組成物の形態で提供される。
【0044】
上記タンパク質製剤の形態は特に限定されず、経口投与のための製剤としては例えば、錠剤、カプセル剤、細粒剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などが挙げられ、非経口投与のための製剤としては例えば、注射剤、点滴剤、座剤、吸入剤、経粘膜吸収剤、経皮吸収剤などが挙げられる。
【0045】
上記タンパク質製剤の投与経路は特に限定されず、経口投与又は非経口投与(例えば、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与などへの粘膜投与、又は吸入投与など)の何れでもよい。
【0046】
上記タンパク質治療剤の投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、成人では一日あたり0.001μg/kg体重から1000μg/kg体重程度の範囲であり、好ましくは0.001μg/kg体重から100μg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0047】
上記癌抑制剤(遺伝子治療剤及びタンパク質製剤の両形態を含む)は、その有効量をヒトを含む哺乳動物に投与することによって癌を抑制するのに使用することができる。上記癌抑制剤はまたその予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与することによって癌の予防及び/又は治療をするのに使用することができる。
【0048】
本明細書でいう「癌抑制」とは、癌の発生又は転移・着床を防止するという予防的作用、ならびに癌細胞の増殖を抑制したり、癌を縮小することによって癌の進行を阻止したり、症状を改善させるという治療的作用の両方を含む最も広い意味を有し、いかなる場合においても限定的に解釈されるものではない。
【0049】
本発明の癌抑制剤の適用対象となる癌の具体例としては、例えば悪性黒色腫、悪性リンパ腫、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、白血病、真性多血症、神経芽細胞腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、皮膚付属器癌、皮膚転移癌、皮膚黒色腫などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記のうち特に好ましい適用対象となる癌は、脳腫瘍である。
【0050】
(2)RGC32遺伝子を用いた癌の診断方法
本発明の癌の診断方法としては、癌の悪性度の診断方法、本発明の癌抑制剤の適用対象となる癌を選別するための診断方法などを挙げることができる。本発明の癌の診断方法は、RGC32遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAを用いて検体試料中のRGC32遺伝子を解析する工程を含む。
【0051】
ここで、RGC32遺伝子の一部とは、配列番号1に記載するRGC32遺伝子の塩基配列のうち、例えば約10〜30個の連続する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを意味する。検体試料としては、腫瘍が疑われる組織切片、血液、リンパ液、喀痰、肺洗浄液、尿、便、組織培養上清などを用いることができる。
【0052】
上記の「癌抑制剤の適用対象となる癌を選別するための検出」とは組織等における本発明における癌抑制剤が有効に作用する癌の存在の有無を知ることをいう。
【0053】
癌の診断は、RGC32遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAをプライマー又はプローブとして用いて検体試料中のRGC32遺伝子を解析することにより行う。ここで「RGC32遺伝子を解析する」とは、具体的にはゲノムDNAの当該遺伝子の欠失の検出又は遺伝子の発現量の異常を検出することをいう。
【0054】
遺伝子の変異の検出は、上記DNA又はRNAをプライマーとして用いる場合では、例えば選択した2種の配列のプライマーによりPCR法で検体試料より調製したDNAの部分配列を増幅させ、その存在の有無を確認する、もしくはその増幅物をそのまま、あるいは各種プラスミドベクターに組み換えた後配列を確認することにより可能である。
【0055】
一方、遺伝子の発現量の異常の検出は、上記RNA配列を含むプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーション法又はRT−PCR(reverse transcription−polymerase chain reaction)法によって行うことができる。
【0056】
(3)RGC32タンパク質抗体又はその断片を用いた癌の診断方法
本発明の癌の診断方法は、RGC32タンパク質に対する抗体又はその断片を用いて検体試料中のRGC32タンパク質の量を解析する工程を含む。
【0057】
本方法に用いるRGC32タンパク質に対する抗体(以下、RGC32抗体という)は、RGC32タンパク質の全部又は一部を抗原として、通常の方法で作成することができる。RGC32タンパク質の一部とは、配列番号2に記載するRGC32タンパク質のアミノ酸配列のうち、例えば連続する少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも約11〜20個のアミノ酸からなるポリペプチドをいう。抗原とするRGC32タンパク質の全部又は一部の調製法は生物学的手法、化学合成手法いずれでもよい。
【0058】
ポリクローナル抗体は、例えば上記抗原をマウス、モルモット、ウサギなどの動物の皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内などに複数回接種し十分に免疫した後、該動物から採血、血清分離して作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば上記抗原で免疫したマウスの脾細胞と市販のマウスミエローマ細胞との細胞融合により得られるハイブリドーマを作成後、該ハイブリドーマ培養上清、又は該ハイブリドーマ投与マウス腹水から作成することができる。
【0059】
上記のようにして調製したRGC32タンパク質抗体又はその断片を用いることによって検体試料中のRGC32タンパク質の発現量を知ることができる。測定には、例えばイムノブロット法、酵素抗体法(EIA)、放射線免疫測定法(RIA)、蛍光抗体法、免疫細胞染色などの免疫学的方法、又はウェスタンブロット法などが利用できる。ここで、RGC32タンパク質抗体の断片とは当該抗体の一本鎖抗体断片(scFv)などをいう。また、検体試料としては、腫瘍が疑われる組織切片、血液、リンパ液、喀痰、肺洗浄液、尿、便、組織培養上清などを用いることができる。測定した検体試料中のRGC32タンパク質の発現量が低い場合は、検体とした組織や細胞においてRGC32遺伝子の発現が抑制されていることになり、本発明の癌抑制剤の適用対象となる癌を選別することができる。
【0060】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
(1)実験材料
神経膠腫由来細胞株はA−172、AM−38、Becker、GB−1、KALS−1、KINGS−1、KNS−42、KNS−60、KNS−81、KNS−89、KS−1、Marcus、NMC−G1、no.10、no.11、SF126、T98G、U−251 MG、YH−13、YKG−1を医薬基盤研究所(JCRB)より入手し用いた。U−373 MG、U−87 MG、SaOS2はAmerican Type Culture Collection(ATCC)より入手した。子宮頸癌のHeLa Tet−On細胞はClontech社より入手した。大腸癌細胞株HCT116(p53+/+)とHCT116(p53−/−)はDr.Bert Vogelsteinの好意により譲渡された。これら細胞株を10%胎児牛血清、100 units/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシンの存在下Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)にて培養を行った。臨床検体由来の35人からの星細胞腫サンプルは東京医科歯科大学病院・脳神経外科部門から入手し、各患者の同意をもってかつ各組織の倫理委員会の承認を得て使用した。ヘマトキシリン−エオシン染色による病期分類は世界保健機関(WHO)の基準に従った。35サンプルの癌腫において8種がlow−grade diffuse astrocytoma(Grade II)、8種がanaplastic astrocytoma(Grade III)さらに19種がglioblastoma multiforme(GBM 、Grade IV)と判定された。表1に神経膠腫由来細胞株の組織情報をまとめた。
【0062】
【表1】

【0063】
(2)発現解析マイクロアレイ法による神経膠腫由来細胞での低発現遺伝子の分離
アレイCGH法にて、MCG Cancer Array−800(Saigusa K.、et al.、 Cancer Sci.96、676、2005)を用いて上記22種の神経膠腫由来細胞におけるDNAの増幅・欠失遺伝子のスクリーニングが報告されている。この際染色体13番の長腕に高頻度のヘミ欠失が観察された。そこで正常ヒト脳およびMarcus細胞由来のRNAを用いて、ヒトの30,000遺伝子の発現量を観察可能なAceGene Human oligo chip 30K(DNAチップ研究所)によりメッセンジャーRNAの発現解析を行い、染色体13番長腕中の低発現遺伝子の探索を行った。Oligo(dT)12−18プライマーを用いて、アミノアリル−dUTP(Ambion Inc.)を取り込ませた相補鎖DNA(complimentary DNA)を作製後、アミノアリル基に反応性のCy3(シアニン3、Marcus)、Cy5(シアニン5、正常ヒト脳)(Amersham Biosciences)とカップリング反応を行い標識を行った。ハイブリダイゼーション後に、GenePix 4000B(Axon Instruments)を用いてシグナルを測定後、GenePix Pro 6.0ソフトウェア(Axon Instruments)にて解析した。表2には、染色体13番の長腕に存在する遺伝子でMarcus細胞で正常ヒト脳に比べ発現の低下した遺伝子を示した。
【0064】
【表2】

【0065】
染色体13番長腕のRGC32を含む遺伝子のメッセンジャーRNAの発現RGC32遺伝子および発現解析マイクロアレイ法により染色体13番の長腕で発現量低下が観察されたMRP63、ALOX5AP、RGC32、F10遺伝子についてメッセンジャーRNAの発現量を測定するため正常脳(Brain)をコントロールとし、神経膠腫由来細胞22株についてRT−PCRを行った(図1)。RT−PCRの発現量のコントロールとして発現量が細胞種、条件で変化しにくいことで知られるGAPDHを用いた。RGC32遺伝子およびMRP63、ALOX5AP、F10遺伝子について発現解析を行ったが、特にRGC32遺伝子が22株中21株で発現の著しい低下が観察された。
【0066】
35種の星細胞腫(astrocytoma)サンプルについて、病理学的な分類を行い、コントロールとしてGAPDHを用いRGC32遺伝子の定量RT−PCRを行った。8種のlow−grade diffuse astrocytoma(Grade II)、8種のanaplastic astrocytoma(Grade III)19種のglioblastoma multiforme(GBM 、Grade IV)のそれぞれについてStudent’s t−testを行った結果、Grade IIとGrade IV間で有意にRGC32遺伝子の発現と病理学的悪性度の間に逆相関が見られた(図2A、p=0.003)。また、代表的な癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の点突然変異の有無とRGC32遺伝子の発現について病理学的な分類毎に比較を行った(図2B)。その結果、p53遺伝子の点突然変異はGradeを問わず存在し、有意差は無いものの、RGC32遺伝子の発現量はp53遺伝子の点突然変異があるもので発現量が低下する傾向が観察された。
【0067】
(3)p53遺伝子を強制発現させた細胞でのRGC32遺伝子の発現
p53遺伝子が機能しないことで知られるU−373 MG細胞株を用いて、ヒトp53遺伝子を発現するアデノウィルスを感染させ、RGC32遺伝子の発現を観察した。ヒトβ−galactosidase(Ad−lacZ)をコントロールとし、p53(Ad−p53)の両ウィルスを別々の細胞に感染後、RGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現量をRT−PCRにて測定した(図3A)。コントロールとしてGAPDHを用いた。p21遺伝子はp53遺伝子の発現により発現上昇が知られている遺伝子であるが、RGC32遺伝子もp21遺伝子と同様にp53遺伝子のアデノウィルス感染後に発現上昇することが確認された。一方、ヒトβ−galactosidase(Ad−lacZ)を感染させた細胞では、p21、p53遺伝子共に発現上昇が認められなかった。
【0068】
(4)DNA細胞でのRGC32遺伝子、タンパク質の発現
内在性のp53遺伝子が存在する大腸癌細胞株HCT116(p53+/+)と内在性のp53遺伝子が存在しないHCT116(p53−/−)両者を用い、DNA損傷を惹起する抗癌剤アドリアマイシン(ADR)を細胞に1μg/ml濃度で添加後、p21、p53タンパク質の発現量をWestern blotting法(上段)ならびにp21、RGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現をRT−PCR法にて測定した(図3B)。細胞にDNA損傷を与えることによりp53、p21遺伝子両者が発現上昇することは広く知られているが、正常なp53タンパク質を有するHCT116細胞(p53+/+)のみでそのタンパク質の誘導が観察された。一方、p21、RGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現もADR添加後正常なp53タンパク質を有するHCT116細胞(p53+/+)のみでそのメッセンジャーRNAの発現が上昇することが観察された。この結果から、RGC32遺伝子は正常なp53タンパク質を介して発現上昇することが確認された。
【0069】
(5)RGC32遺伝子DNA上のp53タンパク質の結合サイト
RGC32遺伝子のゲノムDNA上の塩基配列を確認した。20塩基対程度からなるp53タンパク質の結合サイトの存在を調査したところ、80%以上の相同性(el−Deiry WS、et al.Nat Genet.1.45.1992)で10ヶ所のp53タンパク質の結合サイトを確認した(図3C)。RGC32−RE1からRGC32−RE10と命名した。
【0070】
(6)レポーターアッセイによるRGC32遺伝子のプロモーター領域の転写促進効果の測定
RGC32遺伝子のゲノムDNA上の10ヶ所のp53タンパク質の結合サイトRGC32−RE1からRGC32−RE10それぞれについて、ホタルルシフェラーゼ酵素による発光物を測定する方法にて、プロモーター活性を確認した。p53遺伝子を持たないSaOS2細胞に、pGL3ベクター(プロメガ)を用いルシフェラーゼ遺伝子を下流域に配置しプロモーター解析領域としてRGC32−RE1からRGC32−RE10含むコンストラクト(construct)について、野生型p53タンパク質を発現するベクター(pCMV−Tag3−p53)と コントロールとしてp53変異体タンパク質を発現するベクターとp53遺伝子無しのベクター(pCMV−Tag3−p53MutおよびpCMV−Tag3−mock)を組み合わせ酵素活性を測定した。その結果、RGC32−RE2のみが野生型p53タンパク質が発現した際のみルシフェラーゼ酵素活性が上昇した(データは示していない)。そこで、RGC32−RE2を合成オリゴヌクレオチド5’−AGGCgAGTTT−aag−cAGCTTGTCC −3’を1回または繰り返して2回連結して合成したものをpGL3ベクターのプロモーターとして挿入したものを作製しpCMV−Tag3−p53、pCMV−Tag3−p53Mut(R273H)、pCMV−Tag3−mockそれぞれと共にSaOS2細胞に遺伝子導入36時間後、ルシフェラーゼ酵素活性を測定した(図4)。p21遺伝子由来のp53 Consensus Binding Site(CBS)が野生型p53タンパク質を発現するベクターの存在下ルシフェラーゼ酵素活性が上昇するのと同様に、RGC32−RE2、特に2回連結して合成したRGC32−RE2x2でコントロールに対し60倍高い下ルシフェラーゼ酵素活性を示し、この配列がp53タンパク質依存性にプロモーター領域として働くことが確認された。
【0071】
(7)Chromatin Immunoprecipitation(ChIP)によるプロモーターDNAの存在確認
ChIPアッセイはChIP Assay Kit(Upstate Biotechnology)を用いた。2x106個のHCT116(p53+/+)とHCT116(p53−/−)を10cmディッシュに蒔き、終濃度1μg/mlのADRを添加24時間後に1%のホルムアミドを10分間処理後、細胞をprotease inhibitor cocktail(Roche)を含む200μlのSDS細胞溶解バッファーに回収した。超音波処理を行い、DNA長が200から1000bpとなるように破砕した。上清をサケ精子DNA/protein agaroseにて処理し、抗p53抗体(Ab−6;Oncogene Research Products)またはコントロールとして抗FLAG抗体(M2;Sigma)を用い4°Cにて16時間免疫沈降を行った。沈殿物を50μlのTris−EDTAに溶解し1μlを鋳型としてPCRにてそれぞれのp53の結合サイトを検出した。HCT116(p53+/+)のADR処理後の、抗p53抗体にて免疫沈降したもののみにプロモーター配列の存在が観察された(図5、p21、RGC32−RE2)。このことから細胞内で実際にDNA損傷応答時にp53タンパク質を介したプロモーター配列への応答がRGC32−RE2上にも観察された。
【0072】
(8)神経膠腫細胞へのRGC32遺伝子導入による癌原性の低下
神経膠腫細胞へのRGC32遺伝子導入による細胞増殖活性に及ぼす影響を、足場依存性条件下でコロニー形成能に変化が見られるかを検討した。先ず、挿入遺伝子のアミノN末端にmycペプチドを付加したpCMVベクター(Stratagene)にRGC32完全長cDNAを挿入したものおよびコントロールとして挿入遺伝子なしのものを作製した(pCMV−Tag3−RGC32、pCMV−Tag3−Mock)。これを、RGC32遺伝子の発現がみられないU−87 MG細胞に導入した。遺伝子導入48時間後その細胞溶解液を用いWestern blotting法にてmycタンパク質の発現を観察したところ、予想どおりpCMV−Tag3−RGC32を導入した細胞にのみpRGC32−Myc融合タンパク質の存在を確認した(図6、A上)。別途ディッシュにG418存在下3週間培養したものを固定、クリスタルバイオレットにより染色しコロニーを計測した。Mockに比べ、RGC32遺伝子を発現させることで有意にコロニー数を低下させることが確認された(図6、A下)。
【0073】
(9)神経膠腫細胞へのRGC32遺伝子導入による増殖能の低下
細胞へのRGC32遺伝子導入による細胞増殖活性に及ぼす影響について、増殖速度に変化が見られるかを検討した。pCMV−Tag3−RGC32とpCMV−Tag3−Mockを、RGC32遺伝子の発現がみられないU−87 MG細胞に導入した。G418存在下3週間培養し構成的にmyc−RGC32を発現する細胞、および陰性コントロール細胞を樹立した。これら細胞についてその増殖速度について、テトラゾリウム塩(WST−1)を利用した生細胞中のミトコンドリア脱水素酵素によるホルマザン色素への変換にて色素で細胞数をモニター(同仁化学研究所:cell counting kit−8)した(図6B)。96ウェルプレートにて1x103個を蒔き培養した。コントロール細胞(empty)に比しRGC32タンパクが発現することでクローン1、2共に3日間の培養で明らかに細胞増殖が低下した。この結果から、RGC32タンパクは細胞内に発現することで細胞増殖を抑制する働きのあることが判明した。これまで知られている癌抑制遺伝子タンパクが細胞増殖を抑制したり、細胞死を誘導することにより生体を癌から守っていることから、RGC32タンパクの機能として癌抑制遺伝子産物としての働きがあることが示された。
【0074】
(10)一過性発現細胞でのRGC32タンパク質集積部位の解析
Myc抗原を有するRGC32タンパク質を発現させるためpCMV−Tag3−RGC32を8ウェルスライドグラスにて104個のU−87 MG細胞に導入後、24時間後に冷アセトン−メタノール(1:1)にて固定した。ブロッキング液(3%BSA入りphosphate−buffered saline、PBS)と抗Myc抗体(1:200)および抗β−tubulin抗体(1:200、Sigma)にて2時間反応させた。その後1時間FITC標識羊由来抗マウスIgG(1:400、MBL)およびAlexa 594標識羊由来抗ウサギIgG(1:1000、Molecular Probes)を反応させた。細胞核を染めるための対比染色のため4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI)による染色を行い、ECLIPSE E800蛍光顕微鏡(ニコン)にて観察した(図7)。細胞周期上、分裂期(M期)を除く間期(interphase)に一過性発現したRGC32タンパク質は細胞質上に広く分布し、特に核膜での分布が顕著に観察された。M期には、前期(prophase)で中心体(centrosome)への分布を観察し、前中期(prometaphase)から中期(metaphase)に、最大染色強度を観察した。終期(telophase)と細胞質分裂(cytokinesis)の細胞では、中心体に低いレベルのRGC32タンパク質が観察された。このことからRGC32タンパク質は主として中心体において機能するタンパクであることが判明した。
【0075】
(11)RGC32タンパク質の細胞周期に与える影響の観察
RGC32 cDNAをpTRE2hygにGreen fluorescence protein (GFP)遺伝子とともに挿入した発現ベクター(pTRE2−GFP−RGC32)を構築しHeLa Tet−On細胞(Clontech)を樹立した。同時にコントロールとして、GFPのみを有するベクター(pTRE2−GFP)を用いた細胞も樹立した。doxycycline(Dox)添加後細胞溶解液を用い抗GFP抗体(MBL)にてWestern blotting 法でGFPタンパクの存在を確認した。これら細胞において10cm培養皿にて104個の細胞を播き24時間後にDox(10μg/ml)を添加後さらに24時間培養した。細胞を70%冷エタノールにて固定後、RNase A処理とpropidium iodide染色を行いfluorescence activated cell sorting(FACS;FACSCalibur HG(Becton−Dickinson))にて蛍光を測定し、BD CellQuestTM Pro(Becton−Dickinson)にて解析した(図8)。その結果、G2/M期の細胞含量がコントロール(16.53%)に比べGFP−RGC32発現細胞で高い(24.87%)ことが判明した。このことからRGC32タンパク質は細胞周期に対してG2/M期細胞を増加させる効果があることが示された。
【0076】
(12)RGC32タンパク質発現によるG2/M期の延長効果
対数増殖期の2種のHeLa Tet−On細胞(GFP−RGC32、GFP)を10cm培養皿にて106個の細胞を播き24時間後に終濃度10mMのthymidine(Sigma)を5%Fetal Bovine Serum(FBS)入りの培養液にて37°Cで15時間培養を行った。PBSにて3回洗浄後通常の培養液にて9時間培養し、さらに再度終濃度10mMのthymidine存在下15時間培養しPBSにて3回洗浄後、通常の培養液中24時間培養までDox(10μg/ml)存在下での経時時間を変えた細胞を用意した。これらをFACSにて解析した(図9)。その結果、GFPに比しGFP−RGC32ではDox添加後10時間以降でG2/M期の細胞含量が高いことから、RGC32タンパク質の発現によりG2/M期の延長が起こったことを示す。
【0077】
(13)RGC32タンパク質のPlk1リン酸化酵素との相互作用の検証
RGC32タンパク質の発現によりG2/M期からG1期への移行が遅れ、M期に中心体に分布を示したことから有糸分裂のタンパクリン酸化酵素と結合するかについて検討した。まずHeLa Tet−On細胞(GFP−RGC32、GFP)のDox処理時間別の細胞溶解液をprotease−inhibitor cocktail存在下NP−40バッファー(50mM Tris−Hcl、pH 7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、 0.5% Nonidet P−40、2mM Na3VO4、 100mM NaF、10mM sodiumdiphosphate decahydrate)にて溶解し、定法にて抗polo−like kinase 1(Plk1)抗体(Zymed Laboratories)、抗cyclin B1抗体(Upstate)、抗Aurora−Bキナーゼ抗体(Abcam)、抗Aurora−Aキナーゼ抗体(佐谷秀行氏より譲渡)、コントロールとして抗βアクチン抗体にてWestern blotting法にて解析した(図10)。その結果、Plk1の分解のみが遅延しており、RGC32タンパク質がそれを遅らせG2/M期を延長させていることが示された。さらにHeLa Tet−On細胞(GFP−RGC32、GFP)でDox添加24時間後の細胞をNP−40バッファーにて溶解後抗GFP抗体にて4°C、2時間処理後Protein A Sepharoseで4°Cで1時間処理した。これをNP−40バッファーで5回洗浄し、抗Plk1抗体にてWestern blotting法にて解析した(図11)。その結果、GFP−RGC32でのみ免疫沈降したGFPに結合するRGC32タンパク質に起因したPlk1の結合が観察された。さらにPlk1のタンパクリン酸化酵素活性に与えるRGC32タンパク質の影響について検討した。全長RGC32のcDNAをpET−23d(Novagen)に挿入(pET−23d−RGC32)し組み換えHis6結合RGC32タンパク質をBL21−CodonPlus(DE3)(Stratagene)大腸菌にて産生、Ni−NTA superflow affinity resin(Qiagen)を用い精製後PBSにて透析した。ヒト組み換えPlk1(Invitrogen)と組み換えHis6結合RGC32タンパク質とを脱リン酸化α−casein (Sigma)存在下4°C、30分間Raf バッファー(20mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM MgCl2、0.1mM EGTA、 25mM KCl、1mM dithiothreitol)中で[γ−32P]ATPを加え保温した。2μlの6xSDSサンプルバッファーを加え、SDS−PAGE後オートラジオグラフィーにてシグナルを検出した(図12)。Plk1、RGC32のPlk1によるリン酸化が検出される他(RGC32中のThr82とThr113にPlk1によるリン酸化標的配列が存在)、Plk1によるα−caseinのリン酸化をRGC32タンパク質が阻害することが確認された。以上のことから、RGC32タンパク質はPlk1と結合しリン酸化酵素活性を抑制すると共にPlk1の分解を遅延させることにより、G2/M期を延長させていることが確認された。
【0078】
(14)結論
(a)アレイCGH法によるスクリーニングから、22種の神経膠腫由来細胞におけるDNAのヘミ欠失遺伝子のスクリーニングが報告され、発現解析データを組み合わせた確認によりRGC32遺伝子に高頻度に異常が観察された。
(b)神経膠腫の臨床検体において有意にRGC32遺伝子の発現とその病理学的な分類による悪性度に逆相関が見られた。また、RGC32遺伝子の発現量はp53遺伝子の点突然変異があるもので発現量が低下する傾向も観察された。
(c)RGC32遺伝子の発現はp53遺伝子産物により正に制御されていることが明らかとなった。
(d)RGC32タンパク質の無い癌細胞にRGC32タンパク質を発現させることで、足場依存性増殖能の低下、細胞増殖速度の低下が起こることからRGC32タンパク質は癌抑制遺伝子産物の働きを持つことが判明した。
(e)RGC32タンパク質は核分裂期における中心体部位に局在し、Plk1リン酸化酵素と相互作用し、その酵素活性を低下、分解を遅らせることにより核分裂におけるG2/M期での細胞周期制御に関わっていることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、MRP63、ALOX5AP、RGC32およびF10遺伝子のメッセンジャーRNAの発現量をRT−PCRにて22種の神経膠腫(glioma)細胞株および正常脳にて検出した結果を示す。アスタリスクのあるMarcus細胞は染色体13qでの遺伝子欠失がアレイCGH解析で確認された。
【図2】図2Aは、神経膠腫の臨床検体35個についてRGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現量をリアルタイムRT−PCR法にてGAPDH遺伝子をコントロールに測定し、病理組織学的な分類での相関を示した。low−grade diffuse astrocytoma (Grade II)とglioblastoma multiforme(GBM 、Grade IV)間で有意なRGC32遺伝子の発現との逆相関が見られた。図2Bは、p53遺伝子の点突然変異の有無という観点からRGC32遺伝子の発現について病理学的な分類毎に比較を行った。p53遺伝子の点突然変異はGradeを問わず存在し、有意差は無いがRGC32遺伝子の発現量はp53遺伝子の点突然変異があるもので発現量が低下する傾向が示された。
【図3】図3Aは、RGC32遺伝子のメッセンジャーRNAの発現のないU−373 MG細胞に於いてアデノウィルスAd−p53 とコントロールアデノウィルスAd−lacZを感染後、p21とGAPDHを陽性コントロールとして用い、RT−PCR解析を行った結果を示す。図3Bは、p53遺伝子をホモ欠失(p53−/−)しているHCT116細胞および正常型(p53+/+)のHCT116細胞を用い、DNA損傷を惹起するアドリアマイシン(ADR)添加後のp53、p21遺伝子のWestern blotting解析とp21、RGC32、コントロールのGAPDH遺伝子についてRT−PCR解析を行った結果を示す。図3Cは、RGC32遺伝子のゲノムDNA構造を図式化したものである。黒いボックスはエクソン構造を示す。楔形はp53応答配列(Consensus sequence)を示す。RGC32−RE2に関して実際のp53応答配列との比較を示した。大文字はp53応答配列に一致する塩基を、小文字は一致しない塩基を示す。Rはプリン塩基を、Yはピリミジン塩基を、WはAまたはTの塩基であることを示す。
【図4】図4は、RGC32−RE2およびRGC32−RE2x2(RGC32−RE2の2コピー)をルシフェラーゼレポータープラスミド(pGL3−RGC32−RE2、pGL3−RGC32−RE2x2)に結合・構築し、p21 (pGL3−p53CBS)を陽性コントロールとし、phRL−TKベクターと共にSaOS2細胞にSV40の最小プロモーターを持つ野生型p53 (pCMV−Tag3−p53)乃至変異型p53(pCMV−Tag3−p53Mut)あるいはコントロールの(pCMV−Tag3)を遺伝子導入後、各3回のレポーター活性を測定した結果を示す。縦軸はpGL3のプロモーターのMockコントロールに対する相対活性を示す。
【図5】図5は、HCT116(p53−/−)あるいはHCT116(p53+/+)を用い、ADR(1μg/ml、24時間)の添加の有無の違いにより細胞破壊液を調整し、それらを抗p53 抗体または、陰性コントロールとして抗FLAG抗体にて免疫沈降したものを材料にその沈降物の中にどのようなDNAが含まれるかを、p21 のプロモーター領域、RGC32−RE2、RGC32−RE3に特異的なプライマーを用いPCRにて検出した。Inputは免疫沈降前の細胞破壊液を用いた陽性コントロールを示す。
【図6】図6A左上は、RGC32遺伝子の発現がみられないU−87 MG細胞にMycが結合したRGC32遺伝子発現ベクター(pCMV−Tag3−RGC32)あるいは陰性コントロール(pCMV−Tag3−Mock)を遺伝子導入48時間後に細胞破壊液10μgを用いその外部導入遺伝子の発現を抗Myc抗体にてWestern blotting法にて検出した結果を示す。図6A左下は、上記条件の2種の遺伝子導入細胞を培地中にてG418存在下3週間培養し、コロニー形成能をクリスタルバイオレット染色にて観察した培養皿の写真を示す。図6A右は、コロニー形成能の結果を径2mm以上のコロニーに関しまとめたもので、コントロールに比しRGC32遺伝子を発現させることで、有意にコロニー形成能が低下したことを示す。図6Bは、U−87 MG細胞にてRGC32遺伝子(pCMV−Tag3−RGC32)、陰性コントロールの(pCMV−Tag3−Mock(empty vector))を遺伝子導入し、G418耐性であるクローンを樹立(RGC32遺伝子発現クローンは2種)後その細胞増殖速度を生細胞数として水溶性テトラゾリウム塩の色度にて検出した結果を示す。
【図7】図7は、RGC32遺伝子の発現がみられないU−87 MG細胞にMycが結合したRGC32遺伝子発現ベクター(pCMV−Tag3−RGC32)を一過性に発現した細胞を用い、抗Myc抗体(赤)、β−チューブリン(緑)、DAPI(青)にてそれぞれ染色し、間期(interphase)から細胞質分裂(cytokinesis)期までを通して観察し、下段にはそれらを結合(Merge)した蛍光顕微鏡像を示した。
【図8】図8は、GFPもしくはGFP−RGC32のDoxでの誘導後HeLa Tet−On細胞をFACS解析した結果を示す。矢印は4Nのピーク(G2/M期)を示す。
【図9】図9は、GFPもしくはGFP−RGC32を発現するHeLa Tet−On細胞にて2回のチミジンによる細胞のG1/S同調解除後にFACS解析した結果を示す。矢印は4Nのピーク(G2/M期)を示す。GFP−RGC32を発現するHeLa Tet−On細胞ではコントロールのGFP発現細胞に比べM期からの移行に遅延がみられることが判明した。
【図10】図10は、GFPもしくはGFP−RGC32を発現するHeLa Tet−On細胞にて2回のチミジンによる細胞のG1/S同調解除後にM期リン酸化酵素Plk1、cyclin B1、Aurora−A、Aurora−Bならびにコントロールのβアクチンについてそれぞれの抗体にてWestern blotting法にて検出した結果を示す。
【図11】図11は、GFPもしくはGFP−RGC32のDoxでの誘導後HeLa Tet−On細胞破壊液を抗GFP抗体にて免疫沈降後、抗Plk1抗体にてWestern blotting法にて検出した結果を示す。cell lysateは細胞破壊液コントロールでの検出を示す。
【図12】図12は、RGC32の遺伝子組み換えタンパク質を用意し、ヒト組み換えPlk1、脱リン酸化α−caseinの組み合わせにより、Plk1リン酸化酵素活性をオートラジオグラフィーにて検出した結果を示した。
【配列表フリーテキスト】
【0080】
SEQUENCE LISTING[配列表]
<110> Fuji Photo Film Co.
<120> A cancer-suppressing agent
<130> A61523A
<160> 2
<210> 1
<211> 895
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 1
gcggccgcgt cgaccggcgc ggctggagcg cagcgccgaa gggactggca gggctgaagt 60
gtgcgggaca gcaagccccc gaatagcccc ggctgccacc tcgcaggacc caaggccacg 120
cgcgccgggc ccagctgagc cgcctcatga agccgcccgc ggaggacctg tcggacgcgc 180
tgtgcgagtt tgacgcggtg ctggccgact tcgcgtcgcc cttccacgag cgccacttcc 240
actacgagga gcacctggag cgcatgaagc ggcgcagcag cgccagtgtc agcgacagca 300
gcggcttcag cgactcggag agtgcagatt cactttatag gaacagcttc agcttcagtg 360
atgaaaaact gaattctcca acagactcta ccccagctct tctctctgcc actgtcactc 420
ctcagaaagc taaattagga gacacaaaag agctagaagc cttcattgct gatcttgaca 480
aaactttagc aagtatgtga aacaagaagt tctgggtcct ttcatcataa gggagaagct 540
tcagaaagtt ccgaggacct gctaaaatca gctactagaa tctgctgcca gaggggacaa 600
agacgtgcac tcaaccttct accaggccac tctcaggctc accttaaaat cagcccttga 660
tcccatttct gggcaattta gacagtgaaa ctgactttgt ttacctgctt gcagcatatt 720
agaacagacg atccatgcta atattgtatt ttctcttaaa acatagcttt cctgtaattt 780
aaagtgcttt tatgaaaata tttgtaatta attatatata gttggaaata gcagtaagct 840
ttcccattat aatatatttt tgtatacaaa taaaatttga actgaacctc gtgcc 895
<210> 2
<211> 117
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Met Lys Pro Pro Ala Glu Asp Leu Ser Asp Ala Leu Cys Glu Phe Asp
1 5 10 15
Ala Val Leu Ala Asp Phe Ala Ser Pro Phe His Glu Arg His Phe His
20 25 30
Tyr Glu Glu His Leu Glu Arg Met Lys Arg Arg Ser Ser Ala Ser Val
35 40 45
Ser Asp Ser Ser Gly Phe Ser Asp Ser Glu Ser Ala Asp Ser Leu Tyr
50 55 60
Arg Asn Ser Phe Ser Phe Ser Asp Glu Lys Leu Asn Ser Pro Thr Asp
65 70 75 80
Ser Thr Pro Ala Leu Leu Ser Ala Thr Val Thr Pro Gln Lys Ala Lys
85 90 95
Leu Gly Asp Thr Lys Glu Leu Glu Ala Phe Ile Ala Asp Leu Asp Lys
100 105 110
Thr Leu Ala Ser Met
115

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGC32遺伝子又はその相同遺伝子を含有する癌抑制剤。
【請求項2】
前記遺伝子又はその相同遺伝子がベクターに組み込まれている、請求項1に記載の癌抑制剤。
【請求項3】
前記ベクターがウイルスベクター又は動物細胞発現用プラスミドベクターである、請求項2に記載の癌抑制剤。
【請求項4】
前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、請求項3に記載の癌抑制剤。
【請求項5】
前記遺伝子又はその相同遺伝子がリポソームに封入されている、請求項1に記載の癌抑制剤。
【請求項6】
RGC32タンパク質又はその相同タンパク質を含有する癌抑制剤。
【請求項7】
RGC32遺伝子の全部又はその一部を含むDNA又はRNAを用いて検体試料中のRGC32遺伝子を解析する工程を含む、癌の診断方法。
【請求項8】
前記解析が遺伝子の変異の検出又は遺伝子の発現量の異常の検出である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
RGC32タンパク質に対する抗体又はその断片を用いて検体試料中のRGC32タンパク質を解析する工程を含む、癌の診断方法。
【請求項10】
前記解析がタンパク質の発現量の異常の検出である、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−31063(P2008−31063A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204601(P2006−204601)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】