説明

癌治療のための置換ジアリールウレアを用いた薬物の組み合わせ

本発明は、非小細胞肺癌などの癌を治療するための薬物の組み合わせ、及び医薬組成物に関し、該組み合わせは、(1)BAY43‐9006などの少なくとも1種類の置換ジアリールウレア、(2)パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、及びアブラキサン(商標)などの少なくも1種類のタキサン、並びに(3)カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標))、及びシスプラチン(プラチノール(登録商標))などの白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤を含み、ここで、これらの成分はいずれも、その薬理学的に許容される塩、又はその他のその誘導体の形で存在することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ジアリールウレアキナーゼ阻害薬と、2種類のその他の化学治療薬との組み合わせ、並びにヒト及びその他の動物における癌などの過剰増殖性疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非小細胞肺癌(NSCLC)は、類表皮癌又は扁平上皮癌、腺癌、及び大細胞癌を含む肺癌の少なくとも3種類の異なる組織学的診断から成る異種凝集体(heterogeneous aggregate)である。これらは、局在的な状態ではすべて外科手術によって治癒する可能性があるため、同じ分類とされることが多い。診断時、NSCLCの患者は、疾患の程度と治療方法を反映する3つのグループに分けることができる。第一のグループは、腫瘍が外科手術によって切除可能であることが特徴であり、ステージI又はIIの段階に分けることができる。これは、腫瘍及びホストの種々の要因によるが、予後が最も良いグループである。第二のグループは、進行肺癌の患者であり、局所性(local)又は領域性(regional)というサブカテゴリーに分けることができる。好ましい治療方法は、化学療法を伴うか、若しくは伴わない放射線療法、又はその他の治療モダリティである。最後のグループは、遠隔転移の患者を含む。このグループは、原発腫瘍の症状を緩和するための放射線療法、又は化学療法によって治療することができる。シスプラチンに基づく化学療法では、症状の軽減が短期的であることと、生存率という恩恵が小さいことが示されている。
【0003】
手術可能な患者の場合、肺の症状の存在、腫瘍のサイズが大きいこと(>3センチメートル)、及びErb‐2腫瘍性タンパク質の存在により、予後が悪影響を受ける[1‐6]。切除可能な非小細胞肺癌を持ついくつかのグループの患者で、有害な予後因子として識別されたその他の因子としては、K‐ras遺伝子の変異、 血管浸潤、及び腫瘍検体中の血管数の増加が挙げられる[3,7,8]。
【0004】
【表1】

【0005】
化学応答性である小細胞肺癌と非小細胞癌とを混同する場合があるため、どのような肺癌患者に対しても、その治療を開始する前に熟練の病理学者による病理学的検体の再検査を行うことは重要であり得る[1]。非小細胞肺癌は、組織学的には扁平上皮細胞(類表皮)癌、腺癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌、及び未分化癌に分類することができる。同様に、ステージ分類の手順は、対癌米国合同委員会(AJCC)によって設定されたガイドラインを用いて行うことができる。この分類は、原発腫瘍の特徴付け(T)、リンパ節のサイズの測定(N)、及び遠隔転移の評価(M)に基づいているため、略して、NSCLCのTNM分類システムとして知られる。
【0006】
進行ステージの疾患では、化学療法によって生存期間のメジアン値がやや改善されると報告されている[1,2]。化学療法は疾患関連の症状の短期的な改善をもたらすと報告されているが、一方、併用化学療法では症状の軽減が見られるとの報告がある[3,4]。
【0007】
パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン、及びゲムシタビンを含む数種類の新しい薬剤が進行NSCLCの治療に効果的であることが示されている。
【0008】
【表2】

【0009】
シスプラチンを含む、及びカルボプラチンを含む併用化学療法レジメンによって、単剤化学療法よりも高い奏効率(数例の完全寛解を含む)が得られると報告されている。毒性の影響は様々であり得るが、結果はシスプラチンを含むほとんどのレジメンで類似しており;チスプラチンを含む5種類のレジメンを比較した無作為化試験では、その応答、応答の期間、又は生存率に有意の差が見られなかったとの報告がある[1]。全身状態が良好で遠隔転移部位の数が限定的である患者が化学療法を施された場合、他の患者と比較して、優れた応答と生存率を示したと報告されている[2]。2つの小規模なフェーズIIの研究の報告によると、パクリタキセル(タキソール)は単剤で有効であり、奏効率は21%乃至24%であった[4,5]。パクリタキセルの組み合わせに関する報告では、相対的に高い奏効率、高い1年生存率、及び肺癌症状の寛解が示された[6]。パクリタキセルとカルボプラチンとを用いたレジメンでは、奏効率は27%乃至53%であり、1年生存率は32%乃至54%であった[6,7]。シスプラチンとパクリタキセルとの組み合わせでは、シスプラチンとエトポシドとの組み合わせよりも高い奏効率が見られた[8]。
【0010】
これらの結果は、転移性及び局所性両方の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する化学療法的手段と現在のプログラムの有効性のさらなる検討を支持するものだが、標準的な治療方法とみなすことができる特定のレジメンというものはないと報告されている。放射線療法は、気管、食道性、若しくは気管支の圧迫、骨若しくは脳への転移、痛み、声帯麻痺、喀血、又は上大静脈症候群などの、NSCLCの局所的な合併症の症状の軽減に効果的であり得る。
【0011】
以下の化学療法レジメンは、同様の生存率の結果と関連付けられている:
シスプラチンとビンブラスチンとマイトマイシン[15]
シスプラチンとビノレルビン[3]
シスプラチンとパクリタキセル[8]
シスプラチンとゲムシタビン[16]
カルボプラチンとパクリタキセル[6,7]。
【0012】
【表3】

【0013】
肺は原発性肺癌を持つ患者の第二の原発性悪性腫瘍の部位となることも多い。その新しい病変部が新たな原発性癌か又は転移癌であるかを判断することは困難である場合がある。研究により大部分の患者において新しい病変部は第二の原発性腫瘍であり、切除によって患者の中には長期間の生存を達成する場合もあることが示唆されている。従って、第一の原発性腫瘍が制御された場合、第二の原発性腫瘍は可能であれば切除すべきである[8,9]。
【0014】
転移性疾患の患者に対する化学療法の使用により、有効な応答(objective response)、及び生存率のわずかな改善が見られたとの報告がある[10]。
【0015】
治療オプション:
1.緩和放射線療法。
2.化学療法単独。以前に化学療法を受けたことのない患者の場合、以下のレジメンが、同様の生存率の結果と関連付けられている:
シスプラチンとビンブラスチンとマイトマイシン[13]
シスプラチンとビノレルビン[14]
シスプラチンとパクリタキセル[15]
シスプラチンとゲムシタビン[16]
カルボプラチンとパクリタキセル[17,18]。
3.孤立性脳転移の外科手術による切除(厳選された患者)[6]。
4.気管支内病変部位に対するレーザー療法又は組織内放射線療法[19]。
5.定位放射線手術(厳選された患者)[3,5]。
【0016】
【表4】

【表5】

【0017】
置換ジアリールウレアは、本技術分野で公知のセリンスレオニンキナーゼ阻害薬、並びにチロシンキナーゼ阻害薬に分類される(Smith et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2001,11,2775‐2778,Lowinger et al.,Clin.Cancer Res.2000,6(suppl.),335,Lyons et al.,Endocr.‐Relat.Cancer 2001,8,219‐225,Lowinger et al.,Curr.Pharm.Design 2002,8,99‐110)。オメガ‐カルボキシアリールジフェニルウレアが、WO00/42012及びWO00/41698に開示されている。特に、「BAY43‐9006」、又は「4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}‐カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミド」、又は「N‐(4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル)‐N’‐(4‐(2‐(N‐メチルカルバモイル)‐4‐ピリジルオキシ)フェニル)ウレア」、又は「4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミド」とも称する、式(A)のジフェニルウレア、
【化1】

及びその薬理学的に許容される塩は、raf、VEGFR‐2、p38、PDGFR、及び/又はflt‐3シグナル伝達キナーゼの強力な阻害薬である。例えば、US20050038080、を参照のこと。これらの酵素はすべて、癌を含む過剰増殖性疾患の治療において対象となる分子標的である。
【0018】
ソラフェニブ(BAY43‐9006のトシレート塩を活性成分として含有する薬物)とカルボプラチン及びパクリタキセルとの組み合わせが、切除不能なステージIII又はステージIVの黒色腫及び再発性卵巣癌、原発性腹膜癌、並びに卵管癌の治療のためのフェーズIIIの臨床試験中であると報告されている(www.clinicaltrials.gov.参照)。
【0019】
非小細胞肺癌の治療における置換ジアリールウレア、BAY43‐9006、の使用については開示されている。Lee and McCubrey,Curr.Opin.Investig.Drugs,4:657‐63,June 2003、及びWilhelm et.al.,Cancer Res.,64:7099‐7109,2004、2004年11月11日、2003年4月29日公開のWO/04096224(Boehringer;Hilberg et al.)を参照のこと。
【0020】
WO03/047579は、置換ジアリールウレアの、細胞毒性化合物又は細胞分裂阻害化合物と組みあせての癌治療のための使用に関する。
【0021】
BAY43‐9006などの置換ジアリールウレアの作製方法は、以下に示す米国特許出願に記載されている:
1999年10月22日出願、第09/425,228号;
2000年11月28日出願、第09/722,418号;
2001年1月12日出願、第09/758,547号;
2001年4月20日出願、第09/838,285号;及び
2001年4月20日出願、第09/838,286号。
【発明の概要】
【0022】
発明の説明
本発明は、薬物の組み合わせ、医薬組成物、並びに、結腸癌、胃癌、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、白血病、黒色腫、肝細胞癌、腎臓癌、頭頚部癌、神経膠腫、及び乳癌を含むがこれらに限定されない癌など、これらに限定されない細胞増殖性疾患を含む疾患及び状態を治療する方法を提供する。
【0023】
薬物の組み合わせは、(1)少なくとも1種類の式I(下記で定める)の置換ジアリールウレア、(2)パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、及びアブラキサン(商標)などの少なくも1種類のタキサン、並びに(3)カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標))、及びシスプラチン(プラチノール(登録商標))などの少なくとも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤を含み、ここで、これらの成分はいずれも、その薬理学的に許容される塩、又はその他のその公知の誘導体の形で存在することができる。
【0024】
組み合わせの好ましい態様では、置換ジアリールウレアはソラフェニブ、タキサンはパクリタキセル、及び白金錯体はカルボプラチンである。
【0025】
本発明は、1若しくは2種類以上の薬理学的に許容される担体分子、並びに式I(下記で定める)のジアリールウレア化合物、タキサン(例:パクリタキセル)、及び白金錯体(例:カルボプラチン)を、合わせて癌の治療に有効となる量含む医薬組成物にも関し、ここで、これらの成分はいずれも、その薬理学的に許容される塩、又はその他の一般的な誘導体の形で存在することができる。
【0026】
方法は、(1)式Iの置換ジアリールウレア化合物(例:ソラフェニブ)、(2)タキサン(例:パクリタキセル)、及び(3)白金錯体(例:カルボプラチン)、又はこれらの薬理学的に許容される塩若しくは誘導体などを投与する工程を含むことができる。
【0027】
本発明の特定の態様では、薬物の組み合わせの活性成分は、経口送達、及び/又は静脈内注射若しくは注入によって患者に投与される。
【0028】
本発明の特定の態様では、式Iの置換ジアリールウレア化合物は、タキサン(例:パクリタキセル)、及び白金錯体(例:カルボプラチン)と同時に、同一の製剤として又は別々の製剤として、任意に異なる投与経路を用いて、癌患者へ投与される。投与は、いずれの順序でも、逐次的に行うこともできる。
【0029】
本発明の特定の態様では、式Iの置換ジアリールウレア化合物(例:ソラフェニブ)は、タキサン(例:パクリタキセル)、及び白金錯体(例:カルボプラチン)とタンデム方式で投与され、ここで、式Iの置換ジアリールウレア化合物は、一日に1若しくは2回以上、最大連続して28日間まで患者に投与され、タキサン及び白金錯体は、同じ全期間にわたって、同時に若しくは間欠的に投与される。
【0030】
本発明の特定の態様では、式Iの置換ジアリールウレア化合物(例:ソラフェニブ)は、全体重に対して約0.1乃至約300mg/kgの範囲とすることができる経口、静脈内、筋肉内、皮下、又は非経口投与量で患者に投与することができる。
【0031】
本発明の特定の態様では、タキサン(例:パクリタキセル)は、患者の表面積に対して約10乃至300mg/m2の範囲とすることができる静脈内、筋肉内、皮下、又は非経口投与量で患者に投与される。
【0032】
本発明の特定の態様では、白金錯体(例:カルボプラチン)は、患者の表面積に対して約100乃至500mg/m2の範囲とすることができる静脈内、筋肉内、皮下、又は非経口投与量で患者に投与される。
【0033】
本発明の特定の態様では、式Iの置換ジアリールウレア化合物はソラフェニブであり、「Bay43‐9006」、N‐(4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル)‐N’‐(4‐(2‐(N‐メチルカルバモイル)‐4‐ピリジルオキシ)フェニル)ウレアのトシレート塩である。このアリールウレア化合物のスケールアップ可能な合成は、Organic Process Research and Development(2002),Vol.6,Issue #6,777‐781、及び2001年9月10日出願の同時継続出願である特許出願第09/948,915号に開示されており、これらは参照することで本明細書に組み入れられる。
【0034】
本発明は、本発明の目的に一致する量の式Iの置換ジアリールウレア化合物、パクリタキセル、及びカルボプラチンを含む組成物にも関する。本発明は、さらに、この3種類の化学療法薬の別々の製剤を別々の容器に有するキットに関する。本発明の組み合わせは、例えば、患者の体内など、インビボで形成することもできる。
【0035】
パクリタキセルは、タキソール(登録商標)という商品名でBristol‐Myers Squibb Companyより販売されている。パクリタキセル(5β,20‐エポキシ‐1,2α,4,7β,10β,13α‐ヘキサヒドロキシ‐11‐タキセン‐9‐オン 4,10‐ジアセテート 2‐ベンゾエート 13‐[(2R,3S)‐N‐ベンゾイル‐3‐フェニルイソセリン]エステル)は、実験式C4751NO14を有し、分子量は853.9である。水中では高い親油性を示す。パクリタキセルは、チュブリン二量体からの微小管の構築を促進し、解重合を防ぐことで微小管を安定化させる微小管阻害薬である。理論に束縛されるわけではないが、この安定性により、静止期及び有糸分裂期の細胞の生体機能にとって不可欠である微小管ネットワークの通常の動的な再構築を阻害する結果になると考えられる。さらに、パクリタキセルは、全細胞周期を通して微小管の異常な配列又は異常な束を、そして有糸分裂の間には微小管の複数の星状体を誘発すると考えられる。パクリタキセルは、静脈内注射、又は従来の製剤及びレジメンにおいて単独での使用が知られているその他の適切な注入法によって投与される。
【0036】
式(I)の置換ジアリールウレア化合物、その塩、多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、及びプロドラッグは、ジアステレオ異性体の形(立体異性体の単離物、及び立体異性体の混合物の両方)を含めて、本明細書ではまとめて「式(I)の化合物」と称する。式(I)は以下の通りであり:
【化2】

ここで、
Qは、‐C(O)Rxであり;
xは、ヒドロキシ、C1‐4アルキル、C1‐4アルコキシ、又はNRabであり;
a及びRbは、独立して:
a)水素、
b)‐ヒドロキシ、
‐C1‐4アルコキシ、
‐ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾキサゾール、イソキノリン、キノリン、及びイミダゾピリミジンから選択されるヘテロアリール基、
‐テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,3‐ジオキソラン、1,4‐ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピペリジノン、テトラヒドロピリミドン、ペンタメチレンスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、及びジヒドロチオフェンから選択されるヘテロ環基、
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキル基で置換されていてもよいアミノ、‐NH2、若しくは
‐フェニル、
で任意に置換されていてもよいC1‐4アルキル、
c)‐ハロゲン、若しくは、
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキルで置換されていてもよいアミノ、‐NH2
で任意に置換されていてもよいフェニル、又は、
d)ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾキサゾール、イソキノリン、キノリン、及びイミダゾピリミジンから選択されるヘテロアリール基であり;
Aは、任意に置換されていてもよい、フェニル、ピリジニル、ナフチル、ベンゾキサゾール、イソキノリン、キノリン、又はイミダゾピリミジンであり;
Bは、任意に置換されていてもよい、フェニル又はナフチルであり;
Lは、‐S‐又は‐O‐である架橋基であり;
Mは、0、1、2、又は3であり、並びに
2は、各々独立して、C1‐5アルキル、C1‐5ハロアルキル、C1‐3アルコキシ、N‐オキソ、又はN‐ヒドロキシである。
【0037】
特に重要である、式(I)のAに対する任意に置換されていてもよいフェニル部分の構造には、式1xxの構造が含まれる。
【化3】

【0038】
特に重要である、式(I)のAに対する任意に置換されていてもよいピリジニル部分の構造には、式1xの構造が含まれる。
【化4】

【0039】
特に重要である、式(I)のAに対する任意に置換されていてもよいナフチル部分の構造には、式1yの構造が含まれる。
【化5】

【0040】
構造1yは、置換基R3が、それがなければ水素原子が置換基として埋めるはずである価数を有するいずれかの環のいずれの炭素原子上にも存在することができることを表している。ウレア基との結合も、それがなければ水素原子が置換基として埋めるはずである価数を有するいずれかの環のいずれの炭素原子を通しても形成することができる。
【0041】
Bは、任意に置換されていてもよいフェニル又はナフチルである。特に重要である、式(I)のBに対する任意に置換されていてもよいフェニル又はナフチル部分の構造には、2a及び2bの構造が含まれる。
【化6】

【0042】
2a及び2bの構造は、置換基R1が、それがなければ水素原子が置換基として埋めるはずである価数を有する構造のいずれの炭素原子上にも存在することができること、及びウレア基との結合が、それがなければ水素原子が置換基として埋めるはずである価数を有する構造のいずれの炭素原子を通しても形成することができることを表している。
【0043】
本発明の態様の1つの群では、Bは、少なくとも1個のハロゲン置換基によって置換されている。態様の別の群では、Rxは、NRabであり、Ra及びRbは、独立して、水素、又は任意にヒドロキシで置換されていてもよいC1‐4アルキルであり、Lは、‐S‐又は‐O‐である架橋基である。
【0044】
変数pは、0、1、2、3、又は4であり、通常は0又は1である。変数nは、0、1、2、3、4、5、又は6であり、通常は0、1、2、3、又は4である。変数mは、0、1、2、又は3であり、通常は0である。
【0045】
1は、各々独立して、ハロゲン、C1‐5ハロアルキル、NO2、C(O)NR45、C1‐6アルキル、C1‐6ジアルキルアミン、C1‐3アルキルアミン、CN、アミノ、ヒドロキシ、又はC1‐3アルコキシである。存在する場合、R1は、より一般的にはハロゲンであり、ハロゲンの中では、通常は、塩素又はフッ素であり、より一般的にはフッ素である。
【0046】
2は、各々独立して、C1‐5アルキル、C1‐5ハロアルキル、C1‐3アルコキシ、N‐オキソ、又はN‐ヒドロキシである。存在する場合、R2は、通常は、メチル又はトリフルオロメチルである。
【0047】
3は、各々独立して、ハロゲン、R4、OR4、S(O)R4、C(O)R4、C(O)NR45、オキソ、シアノ、又はニトロ(NO2)から選択される。
【0048】
4及びR5は、独立して、水素、C1‐6アルキル、及び過ハロゲン化までのハロゲン化C1‐6アルキルより選択される。
【0049】
Aのその他の例としては、3‐tert‐ブチルフェニル、5‐tert‐ブチル‐2‐メトキシフェニル、5‐(トリフルオロメチル)‐2‐フェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4クロロフェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4‐ブロモフェニル、及び5‐(トリフルオロメチル)‐4‐クロロ‐2‐メトキシフェニルが挙げられる。
【0050】
Bのその他の例としては:
【化7】

が挙げられる。
【0051】
好ましくは、ウレア基‐NH‐C(O)‐NH‐、及び架橋基Lは、Bの近接する環炭素とは結合せず、1若しくは2個の環炭素によって両者が分けられている。
【0052】
1基の例としては、フッ素、塩素、臭素、メチル、NO2、C(O)NH2、メトキシ、SCH3、トリフルオロメチル、及びメタンスルホニルが挙げられる。
【0053】
2基の例としては、メチル、エチル、プロピル、酸素、及びシアノが挙げられる。
【0054】
3基の例としては、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert‐ブチル、塩素、フッ素、臭素、シアノ、メトキシ、アセチル、トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメトキシ、及びトリフルオロメチルチオが挙げられる。
【0055】
重要な化合物の一つのクラスとしては、以下の式IIであり、
【化8】

ここで、Ra及びRbは、独立して、水素、及びC1‐C4アルキルであり、式IIのBは、
【化9】

であり、
ここで、ウレア基‐NH‐C(O)‐NH‐、及び酸素架橋基は、Bの近接する環炭素とは結合せず、1若しくは2個の環炭素によって両者が分けられており、式(II)のAは、
【化10】

であり、
ここで、変数nは、0、1、2、3、又は4である。
【0056】
3は、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert‐ブチル、塩素、フッ素、臭素、シアノ、メトキシ、アセチル、トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメトキシ、又はトリフルオロメチルチオである。
【0057】
そのような化合物の一つのサブクラスでは、式IIのA上のR3置換基は、各々、塩素、トリフルオロメチル、tert‐ブチル、又はメトキシから選択される。
【0058】
そのような化合物の別のサブクラスでは、式IIのAは、
【化11】

であり、
式IIのBは、フェニレン、フルオロ置換フェニレン、又はジフルオロ置換フェニレンである。
【0059】
重要な化合物の別のクラスは、以下の式Xの構造を有する化合物を含み、ここで、フェニレン環「B」は、任意に、1個のハロゲン置換基、好ましくはCl又はF、より好ましくはFを有する。
【化12】

【0060】
式Xの化合物において、Aは、式Iに対して上記で定めた通りである。C(O)NHCH3の部分は、ピリジニル部分の唯一の置換基である。Aに対する好ましい内容は、少なくとも1個の置換基R3を有する置換フェニルである。R3は、好ましくは、Cl又はFが好ましいハロゲン、トリフルオロメチル、及び/又はメトキシである。
【0061】
重要な化合物の一つのサブクラスは、以下の式Z1、Z2、及びZ3の構造を有する化合物を含む。
【化13】

化合物Z1は、WO00/42012に記載されている。WO00/42012、及びBankston et al.(Organic Process Research & Development,2002,6,777‐781)の両文献には、化合物Z1の作製プロセスが記載されており、それは以下のスキームで示される。
【化14】

【0062】
本発明にかかる医薬組成物に好ましく使用されるのは、4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミドのp‐トルエンスルホン酸塩である(化合物(I)のトシレート塩)。4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミドのp‐トルエンスルホン酸塩の少なくとも80%が、安定な多形Iとして存在することがより好ましい。4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミドのp‐トルエンスルホン酸塩の少なくとも80%が、安定な多形体I、及び微粒子形態で存在することが最も好ましい。
【0063】
微粒子化は、当業者に公知の標準的な粉砕方法によって達成することができ、エアーチャットミリング(air chat milling)が好ましい。微粒子形態は、0.5乃至10μmの平均粒子径を有することができ、好ましくは1乃至6μmであり、より好ましくは1乃至3μmである。記載の粒子径は、当業者に公知のレーザー回折によって測定した粒子径分布の平均値である(測定機器:HELOS、Sympatec)。
【0064】
4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミドのp‐トルエンスルホン酸塩、及びその安定な多形体Iを作製するプロセスは、欧州特許出願EP04023131.8及びEP04023130.0に記載されている。
【0065】
いずれかの部分が「置換される」場合、記載の置換基の最大数まで有することができ、各置換基は、その部分の可能ないずれの位置にも存在することができ、その置換基のいずれの可能な原子を通しても結合することができる。「可能ないずれの位置にも」とは、本技術分野で公知の又は本明細書で開示する手段によって化学的に利用可能であり、及び、例えば、ヒトに投与できないなどの不安定な分子を形成することのない、その部分上のいずれの位置をも意味する。いずれかの部分上に2若しくは3個以上の置換基が存在する場合、各置換基は、その他のいずれの置換基とも独立して決定され、従って、同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
「任意に置換されていてもよい」という用語は、そのように修飾された部分が、無置換であってもよく、又は示される置換基によって置換されていてもよいということを意味する。
【0067】
ピリジンの置換基としての「ヒドロキシ」という用語は、2‐、3‐、及び4‐ヒドロキシピリジンを含み、さらに、本技術分野で1‐オキソピリジン、1‐ヒドロキシピリジン、又はピリジンN‐オキシドと称される構造も含むことは理解される。
【0068】
本明細書において、化合物及び塩などの単語の複数形が用いられる場合、単一の化合物又は塩なども意味するとみなされる。
【0069】
1‐6アルキルという用語は、特に断りのない限り、1乃至6個の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基を意味し、これらは、単一の若しくは複数の分岐鎖を有する環状、直鎖状、又は分岐鎖状であってよい。このような基としては、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、シクロプロピル、及びシクロブチルなどが挙げられる。
【0070】
1‐6ハロアルキルという用語は、特に断りのない限り、最大6個の炭素原子を有し、少なくとも1個のハロゲン原子に置換され、最大で過ハロゲン化までである飽和炭化水素ラジカルを意味する。このラジカルは、単一の若しくは複数の分岐鎖を有する環状、直鎖状、又は分岐鎖状であってよい。ハロゲン置換基としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。フッ素、塩素、及び臭素が好ましく、フッ素及び塩素がより好ましい。ハロゲン置換基は、置換可能ないずれの炭素上に位置してもよい。この部分に2個以上のハロゲン置換基が存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。そのようなハロゲン化アルキル置換基の例としては、これらに限定されないが、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2‐トリフルオロエチル、及び1,1,2,2‐テトラフルオロエチルなどが挙げられる。
【0071】
1‐6アルコキシという用語は、特に断りのない限り、1乃至6個の炭素原子を有する環状、直鎖状、又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、これらは、単一の若しくは複数の分岐鎖を有する環状、直鎖状、又は分岐鎖状であってよく、例えば、メトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、及びペントキシなどの基が挙げられる。2,2‐ジクロロエトキシ及びトリフルオロメトキシなどのハロゲン化基も含まれる。
【0072】
ハロ又はハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。フッ素、塩素、及び臭素が好ましく、フッ素及び塩素がより好ましい。
【0073】
1‐3アルキルアミンは、特に断りのない限り、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、又はイソプロピルアミノを意味する。
【0074】
1‐6ジアルキルアミンの例としては、これらに限定されないが、ジエチルアミノ、エチル‐イソプロピルアミノ、メチル‐イソブチルアミノ、及びジヘキシルアミノが挙げられる。
【0075】
ヘテロアリールという用語は、単環式及び二環式ヘテロアリール環の両方を意味する。単環式へテロアリールは、5乃至6個の環原子を有し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を1乃至4個有して、残りの原子が炭素である、芳香族単環を意味する。この部分に2個以上のヘテロ原子が存在する場合、それらは他のヘテロ原子とは独立して選択され、同一であっても異なっていてもよい。単環式へテロアリール環としては、これらに限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、及びトリアジンが挙げられる。
【0076】
二環式へテロアリールは、環の一方が上述の単環式へテロアリール環から選択され、第二の環がベンゼン、又は上述の別の単環式へテロアリール環である、縮合二環部分を意味する。二環式部分の両方の環がヘテロアリール環である場合、それらは、本技術分野で公知の手段で化学的に入手可能である限り、同一であっても異なっていてもよい。二環式へテロアリール環は、合成によって入手可能な5‐5、5‐6、又は6‐6縮合二環式芳香族構造を含み、例としては、限定されないが、ベンゾオキサゾール(フェニルとオキサゾールの縮合)、キノリン(フェニルとピリジンの縮合)、及びイミダゾピリミジン(イミダゾールとピリミジンの縮合)などが挙げられる。
【0077】
二環式へテロアリール部分は、そう記載されている場合、部分的に飽和されていてもよい。部分飽和されている場合、上述の単環式へテロアリール環が完全に若しくは部分的に飽和されているか、上述の第二の環が完全に若しくは部分的に飽和されているか、又は両方の環が部分的に飽和されているかのいずれかである。「酸素、窒素、及び硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含み、飽和、部分飽和、又は芳香族である5又は6員環のへテロ環」という用語は、限定されないが、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,3‐ジオキソラン、1,4‐ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピペリジノン、テトラヒドロピリミドン、ペンタメチレンスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、及びトリアジンなどを含む。
【0078】
「C1‐3アルキル‐フェニル」という用語は、例えば、2‐メチルフェニル、イソプロピルフェニル、3‐フェニルプロピル、又は2‐フェニル‐1‐メチルエチルを含む。置換された例としては、2‐[2‐クロロフェニル]エチル、及び3,4‐ジメチルフェニルメチルなどが挙げられる。
【0079】
特に断り又は記載のない限り、「アリール」という用語は、0、1、2、3、4、5、若しくは6個の置換基を有する6乃至12員環の単環式又は二環式芳香族炭化水素基(例:フェニル、ナフタレン、アズレン、インデン基)を含む。
【0080】
式(I)の化合物は、所望の種々の置換基の位置及び性質に応じて、1若しくは2箇所以上の不斉中心を有することができる。不斉炭素原子は、(R)、(S)、又は(R,S)の立体配置で存在することができる。ある場合では、不斉性は、例えば、特定の化合物の2個の置換芳香環を繋ぐ中心結合など、ある結合の周りの回転が制限されることによっても存在することができる。環上の置換基は、シス又はトランスの形で存在することもできる。そのような立体配置(エナンチオマー及びジアステレオマーを含む)はすべて、本発明の範囲内に含まれることを意図している。好ましい化合物は、より望ましい生物活性を発生させる式(I)の化合物の絶対立体配置を有する化合物である。分離された、純粋な、若しくは部分的に精製された本発明の化合物の異性体、又はラセミ体の混合物も、本発明の範囲内に含まれる。前記異性体の精製、及び前記異性体混合物の分離は、本技術分野で公知の標準的な技術によって達成することができる。
【0081】
光学異性体は、例えば、光学活性な酸若しくは塩基を用いたジアステレオマーの塩を形成、又は共有結合性ジアステレオマーの形成など、従来のプロセスに従ったラセミ体混合物の分割によって得ることができる。適切な酸の例としては、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、及びカンファースルホン酸である。ジアステレオマーの混合物は、その物理的及び/又は化学的な違いに基づき、例えば、クロマトグラフィー若しくは分別再結晶などの本技術分野で公知の方法により、個々のジアステレオマーに分離することができる。そして、分離されたジアステレオマーの塩から光学活性な塩基又は酸を遊離させる。光学異性体の分離のための別のプロセスでは、従来の誘導体化を伴うか若しくは伴わない、エナンチオマーの分離が最大となるように最適に選択されたキラルクロマトグラフィー(例:キラルHPLCカラム)の使用を含む。適切なキラルHPLCカラムは、Diacel製の、数ある中で、例えば、Chiracel OD、及びChiracel OJがあり、すべて通常通りに選択可能である。誘導体化を伴うか若しくは伴わない酵素分離も有用である。光学活性な式Iの化合物は、同様に、光学活性である出発物質を用いたキラル合成によって得ることができる。
【0082】
本発明は、式(I)の化合物すべての薬理学的に許容される塩、代謝物、及びプロドラッグなど、本明細書で開示する化合物の有用な形態にも関する。「薬理学的に許容される塩」という用語は、比較的無毒性である本発明の化合物の無機酸又は有機酸の付加塩を意味する。例えば、S.M.Berge,et al.”Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.1977,66,1‐19、を参照のこと。薬理学的に許容される塩としては、親化合物を塩基として機能させて無機酸又は有機酸と反応させ、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸の塩などの塩を形成することによって得られる塩が含まれる。薬理学的に許容される塩としては、親化合物を酸として機能させ、適切な塩基と反応させて形成される、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、及び塩素の塩なども含まれる。当業者であれば、さらに、請求された化合物の酸付加塩を、数多くの公知の方法のいずれによっても、その化合物と適切な無機酸若しくは有機酸との反応によって作製可能であることが認識されるであろう。別の選択肢として、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が、種々の公知の方法により、本発明の化合物を適切な塩基と反応させることによって作製される。
【0083】
本発明の化合物の代表的な塩としては、従来の無毒性の塩及び四級アンモニウム塩が挙げられ、これらは、例えば、無機若しくは有機の酸又は塩基より本技術分野で公知の手段によって形成される。例えば、そのような酸付加塩としては、アセテート、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、硫酸水素塩、ブチレート、シトレート、カンファレート、カンファースルホネート、シナメート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2‐ヒドロキシエタンスルホネート、イタコネート、ラクテート、マレエート、マンデレート、メタンスルホネート、2‐ナフタレンスルホネート、ニコチネート、硝酸塩、オキサレート、パモエート、ペクチネート、過硫酸塩、3‐フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネ−ト、スクシネート、スルホネート、タルトレート、チオシアネート、トシレート、トリフルオロメタンスルホネート、及びウンデカノエートが挙げられる。
【0084】
塩基塩としては、ジシクロヘキシルアミン及びN‐メチル‐D‐グルカミンなどの有機塩基の、カリウム塩及びナトリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩が挙げられる。さらに、塩基性窒素を有する基を、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物、ジメチル、ジエチル、及びジブチルサルフェート、並びにジアミルサルフェートなどのジアルキルサルフェート、デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物、ベンジル及びフェネチルの臭化物などのアリール又はアラルキルハロゲン化物、並びに、その他の一置換アラルキルハロゲン化物又は多置換アラルキルハロゲン化物などの剤で四級化することもできる。
【0085】
本発明の目的のための溶媒和物は、本化合物のそのような形態のことであり、ここで、溶媒分子は、固体状態で複合体を形成し、例えばエタノール及びメタノールであるがこれらに限定されない。水和物は、溶媒和の特別な形態であり、ここで、溶媒分子が水である。
【0086】
特定の薬理学的に活性な薬剤を、インビボでの投与後に開裂して主たる活性薬剤と薬理学的に不活性な誘導基とを提供する不安定性の官能基でさらに修飾することができる。このような誘導体は、一般にプロドラッグと称され、これを用いることにより、例えば、活性薬剤の物理化学的性質の変化、活性薬剤の特定の組織への標的化、活性薬剤の薬物動態学的及び薬力学的性質の変化、並びに望ましくない副作用の低減などが可能となる。本発明のプロドラッグとしては、例えば、耐容性が良好であって薬理学的に許容されるエステルである本発明の適切な化合物のエステルであり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、又はペンチルのエステルを含むアルキルエステルなどが挙げられる。メチルエステルが好ましいが、フェニル‐C1‐C5アルキルなどのさらなるエステルも用いることができる。
【0087】
その他のプロドラッグの合成に用いることができる方法は、この件に関する以下のレビューに記載されており、これらの合成法に関する記述は参照することで本明細書に組み入れられる。
【表6】

【0088】
本発明の化合物の代謝物としては、式I、II、X、Y、Za、Zb、Zc、及びZdの化合物の酸化誘導体が挙げられ、ここで、1若しくは2個以上の窒素がヒドロキシ基で置換されており;本技術分野で1‐オキソ‐ピリジンと称されるピリジン基の窒素原子が酸化された形である誘導体、又は本技術分野で1‐ヒドロキシ‐ピリジンと称されるピリジン基の窒素原子がヒドロキシ置換基を有する誘導体が含まれる。
【0089】
一般的な作製方法
本発明の本態様で用いられる化合物の作製に用いられる特定のプロセスは、所望する具体的な化合物に応じて異なる。具体的な置換基の選択などの因子が、本発明の具体的な化合物を作製する際に辿る経路に影響を与える。このような因子は、当業者であれば容易に認識される。
【0090】
本発明の化合物は、以下に示すWO00/42012、WO03/047579、WO2005/009961、WO2004/078747、及びWO05/000284、並びに欧州特許出願、EP04023131.8及びEP04023130.0に記載の公知の化学反応及び手順を用いることによって作製することができる。
【0091】
本発明の化合物は、従来の化学的な方法に従い、及び/又は、以下に開示するように、市販されている出発物質、若しくは通常の従来の化学的な方法に従って作製可能である出発物質から作製することができる。本化合物を作製するための一般的な方法を以下に示し、代表的な化合物の作製については、例の中で具体的に例示する。
【0092】
式(I)のウレアの作製は、これら特許公開公報の1若しくは2つ以上に記載のように、ホスゲン、ジ‐ホスゲン、トリ‐ホスゲン、カルボニルジイミダゾール、又は同等物の存在下、いずれの出発物質とも反応しない溶媒中での2種類のアリールアミン成分の縮合によって行うことができる。別の選択肢として、式(I)の化合物は、上述の公開国際特許出願の1若しくは2つ以上に記載のように、アミノ化合物をイソシアネート化合物と反応させることによって合成することができる。
【0093】
イソシアネートは、市販されており、又は、当業者に公知の方法に従ってヘテロ環アミンから合成することができる(例:アミンを、ホスゲン、又はトリクロロメチルクロロホルメート(ジホスゲン)、ビス(トリクロロメチル)カーボネート(トリホスゲン)、若しくはN,N’‐カルボニルジイミダゾール(CDI)などのホスゲン同等物で処理することにより;又は、別の選択肢として、アミド、若しくはエステル、酸ハライド、若しくは無水物などのカルボン酸誘導体のCurtius転位により)。
【0094】
式のアリールアミンは、市販されており、又は、当業者に公知の方法に従って合成することができる。アリールアミンは、一般に、Ni、Pd、若しくはPtなどの金属触媒、及びH2、又はホルメート、シクロヘキサジエン、若しくはボロヒドリドなどのヒドリド転位剤を用いたニトロアリールの還元によって合成される(Rylander.Hydrogenation Methods;Academic Press:London,UK(1985))。ニトロアリールは、LiAlH4などの強力なヒドリド源を用いることで(Seyden‐Penne. Reductions by the Alumino‐ and borohydrides in Organic Synthesis;VCH Publishers:New York(1991))、又は、Fe、Sn、若しくはCaなどのゼロ価金属を、多くの場合酸性媒体中で用いることで、直接還元することもできる。ニトロアリールの合成には多くの方法が存在する(March.Advanced Organic Chemistry,3rd Ed.;John Wiley:New York(1985).Larock.Comprehensive Organic Transformations;VCH Publishers:New York(1989))。ニトロアリールは、一般に、HNO3、又は別のNO2+源を用いた求電子芳香族ニトロ化反応によって形成される。
【0095】
ピリジン環がその窒素原子上にヒドロキシ置換基を有し、A、B、Lが上記で広く定められる式(I)のピリジン‐1‐オキシドは、本技術分野で公知の酸化条件を用い、対応するピリジンから作製することができる。いくつかの例を以下に示す:
・ ジクロロメタン、ジクロロエタン、又はクロロホルムなどの塩素化溶媒中のメタクロロ過安息香酸などの過酸(Markgraf et al.,Tetrahedron 1991,47,183);
・ ジクロロメタンなどの塩素化溶媒中、触媒量の過レニウム酸の存在下での(Me3SiO)2(Coperet et al.,Terahedron Lett.1998,39,761);
・ ハロゲン化溶媒のいくつかの組み合わせの中でのパーフルオロ‐シス‐2‐ブチル‐3‐プロピルオキサジリジン(Amone et al.,Tetrahedron 1998,54,7831);
・ クロロホルム中の次亜フッ素酸(hypofluoric acid)‐アセトニトリル複合体(Dayan et al.,Synthesis 1999,1427);
・ KOHなどの塩基の存在下、水中のオキソン(Robker et al.,J.Chem.Res.,Synop.1993,10,412);
・ 氷酢酸の存在下でのモノパーオキシフタル酸マグネシウム(Klemm et al.,J.Heterocylic Chem.1990,6,1537);
・ 水及び酢酸の存在下での過酸化水素(Lin A.J.,Org.Prep. Proced.Int.1991.23(1),114);
・ アセトン中のジメチルジオキシラン(Boyd et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1991,9,2189)。
【0096】
さらに、ジアリールウレア及び中間化合物を作製する具体的な方法が、別の特許文献に既に記載されており、本発明の化合物に適応することができる。例えば、
【表7】

である。前述の特許出願はすべて、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0097】
式(I)の化合物の合成、及び式(I)の化合物の合成に関わる中間体の合成で用いることができる合成のための変換法は、当業者に公知であるか、又は当業者が利用可能である。様々な合成のための変換法を編纂物中に見ることができ、例えば:
【表8】

などである。
【0098】
さらに、合成方法、及び関連事項に関するレビューは頻繁に行われており、例えば、Organic Reactions;John Wiley:New York;Organic Syntheses;John Wiley:New York;Reagents for Organic Synthesis:John Wiley:New York;The Total Synthesis of Natural Products;John Wiley:New York;The Organic Chemistry of Drug Synthesis;John Wiley:New York;Annual Reports in Organic Synthesis;Academic Press:San Diego CA;及び、Methoden der Organischen Chemie(Houben‐Weyl);Thieme:Stuttgart,Germany、が挙げられる。さらに、合成のための変換法に関するデータベースとしては、CAS OnLine又はSciFinderを用いて検索可能であるChemical Abstracts、SpotFireを用いて検索可能であるHandbuch der Organischen Chemie(Beilstein)、及びREACCSが挙げられる。
【0099】
式Iの化合物は、Raf/MEK/ERK経路、c‐raf、b‐raf、p38、VEGFR、VEGFR2、VEGR3、FLT3、PDGFR、PDGFR‐ベータ、及びc‐kitの阻害を含む種々の活性を有するという特性がすでに確認されている。これらの活性、並びに種々の疾患及び状態の治療へのその利用については、例えば、WO00/42021、WO00/41698、WO03/068228、WO03/047579、WO2005/00996、WO2005/000284、及び米国特許出願第20050038080号に開示されており、これらはその全文が参照することで本明細書に組み入れられる。
【0100】
経口投与を意図した医薬組成物は、医薬組成物の製造のための本技術分野で公知の適切ないかなる方法によっても作製することができる。医薬組成物は、本発明の化合物を速やかに送達させる適切な投与形態を含み、例えば、錠剤(コーティングなし、又はコーティングありの錠剤)、口腔内で速やかに崩壊する錠剤若しくは任意に顆粒剤を充填してもよいカプセル剤(例えば、硬質若しくは軟質ゼラチンカプセル剤)、シュガーコートした錠剤、粉末剤、袋剤(sachet)、顆粒剤、ペレット、糖衣錠、チュアブル錠、分散錠、トローチ、及びロゼンジである。このような組成物は、飲みやすい製剤を提供するために、希釈剤、甘味料、香味料、着色剤、及び保存剤から成る群より選択される1若しくは2種類以上の剤を含むことができる。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に適する無毒性の薬理学的に許容される賦形剤との混合物として含有する。このような賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、若しくはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えば、コーンスターチ、若しくはアルギン酸などの造粒(granulating)剤及び崩壊(disintegrating)剤;並びに、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、若しくはタルクなどの結合剤であってよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は、胃腸管内での崩壊及び吸着を遅らせ、それによって長期間にわたる持続作用をもたらすために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル、又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延剤(time delay material)を使用することができる。このような化合物は、固体の速放性の形態で作製することもできる。
【0101】
経口投与のための医薬組成物は、硬質ゼラチンカプセル錠として提供することもでき、この場合、活性成分は、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合され、又は、軟質ゼラチンカプセル錠として提供することもでき、この場合、活性成分は、水、又は例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油などの油媒体と混合される。
【0102】
水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物として活性成分の少なくとも1種類を含有する水性懸濁液を用いることもできる。そのような賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル‐メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、及びアラビアゴムなどの懸濁剤であり;分散剤若しくは湿潤剤は、例えばレシチンなどの天然のホスファチド、又は、例えば、ポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、又は、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、又は、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合物、又は、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合物であってよい。水性懸濁液は、さらに、例えば、p‐ヒドロキシ安息香酸のエチル又はn‐プロピルエステルなどの1若しくは2種類以上の保存剤、1若しくは2種類以上の着色剤、1若しくは2種類以上の香味料、及びショ糖又はサッカリンなどの1若しくは2種類以上の甘味料を含有することもできる。
【0103】
薬理学的に許容される担体は、その担体に起因するいかなる副作用も活性成分の有益な効果を損なうことのないように、活性成分の有効作用に適合する濃度において、比較的無毒性であり、患者に無害であるいずれかの担体である。
【0104】
本化合物の薬理学的効果量とは、治療される特定の状態に対して効果をもたらすか、又は影響を及ぼす量である。本発明の化合物は、本技術分野で公知の薬理学的に許容される担体と共に、速放性、徐放性、及び時限放出性製剤を含む効果的である従来のいずれの単位剤形を用いても投与することができる。
【0105】
薬理学的に許容される賦形剤は、その賦形剤に起因するいかなる副作用も活性成分の有益な効果を損なうことのないように、活性成分の有効作用に適合する濃度において、比較的無毒性であり、患者に無害であるいずれかの賦形剤である。
【0106】
本発明にかかる薬理学的に許容される賦形剤は、例えば、崩壊剤(disintegrant)、結合剤、滑沢剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤及び湿潤剤、膜形成剤及びコーティング剤、並びに、例えば顔料などの着色剤である。
【0107】
崩壊剤としては、これらに限定されないが、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポラクリリンカルシウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムスターチグリコレート、部分加水分解デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びデンプンが挙げられる。クロスカルメロースナトリウム、及び/又は架橋ポリビニルピロリドンが好ましく、クロスカルメロースナトリウムがより好ましい。
【0108】
医薬組成物に含まれる崩壊剤の量は、組成物の総重量に対して、0乃至15%とすることができ、好ましくは5乃至12%である。
【0109】
結合剤としては、これらに限定されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ハイプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)、微結晶セルロース、アラビアゴム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮糖(compressible sugar)、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びアルファ化デンプンが挙げられる。顆粒化液(granulation liquid)中に溶解する水性結合剤が好ましく、ハイプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)及び/又はポリビニルピロリドンがより好ましく、ハイプロメロースが最も好ましい。
【0110】
医薬組成物に含まれる結合剤の量は、組成物の総重量に対して、0乃至15%とすることができ、好ましくは0.5乃至8%である。
【0111】
滑沢剤としては、これらに限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ステアリン酸、フマル酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、及びポリエチレングリコールが挙げられる。好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
【0112】
医薬組成物に含まれる滑沢剤の量は、組成物の総重量に対して、0乃至2%とすることができ、好ましくは0.2乃至0.8%である。
【0113】
充填剤としては、これらに限定されないが、リン酸水素カルシウム、カオリン、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、珪化微結晶セルロース(silicated microcrystalline cellulose)、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三珪酸マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、例えば無水物若しくは一水和物などの水和物の形のラクトース、デキストロース、マルトース、ショ糖、グルコース、フルクトース若しくはマルトデキストリン、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びデンプンが挙げられる。微結晶セルロース、マンニトール、ラクトース、及び/又はリン酸二カルシウムが好ましく、微結晶セルロースがより好ましい。
【0114】
医薬組成物に含まれる充填剤の量は、組成物の総重量に対して、0乃至60%とすることができ、好ましくは3乃至20%である。
【0115】
界面活性剤及び湿潤剤としては、これらに限定されないが、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、レシチン、ソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、塩化ベンザルコニウム、ノノキシノール10、オクストキシノール(oxtoxynol)9、ポリソルベートの例えば20、40、60、若しくは80、ソルビタンモノパルミテート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、などの脂肪アルコール硫酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸ナトリウム塩、グリセリンモノステアレートなどのアルコールによる脂肪酸の部分エステル、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタンによる脂肪酸の部分エステル、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、モノステアレート、若しくはモノオレエートなどのポリヒドロキシエチレンソルビタンによる脂肪酸の部分エステル、脂肪アルコールのポリヒドロキシエチレンによるエーテル、脂肪酸のポリヒドロキシエチレンによるエステル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体(Pluronic(登録商標))、並びにエチレンオキシド付加トリグリセリドが挙げられる。好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0116】
医薬組成物に含まれる界面活性剤の量は、組成物の総重量に対して、0乃至5%とすることができ、好ましくは0.1乃至2%である。
【0117】
膜形成剤及びコーティング剤としては、これらに限定されないが、液体グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ハイプロメロース、HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、シェラック、ポリビニルピロリドン、Kollidon(登録商標)VA64 BASFなどのビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステルとトリメチルアンモニウムメチルアクリレートとの共重合体、ジメチルアミノメタクリル酸と中性メタクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸又はメタクリル酸エステルの重合体、アクリル酸エチルエステルとメタクリル酸メチルエステルとの共重合体、並びにアクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合体が挙げられる。膜形成剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ハイプロメロース、HPMC)が好ましい。
【0118】
可塑剤としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール、フタル酸ジエチル、及びグリセロールが挙げられる。好ましくはポリエチレングリコールである。
【0119】
着色剤としては、これらに限定されないが、顔料、無機顔料、FD&CレッドNo.3、FD&CレッドNo.20、FD&CイエローNo.6、FD&CブルーNo.2、D&CグリーンNo.5、D&CオレンジNo.5、D&CレッドNo.8、カラメル、赤酸化第二鉄、黄酸化第二鉄、及び二酸化チタンが挙げられる。好ましくは、赤酸化第二鉄、黄酸化第二鉄、及び二酸化チタンである。
【0120】
必要に応じて意図する投与経路のための組成物の製剤に使用することができる、通常使用されるさらなる医薬賦形剤としては、これらに限定されないが;例えば、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、及び硝酸などの酸性化剤;例えば、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、及びトロラミンなどのアルカリ化剤;例えば、粉末セルロース及び活性炭などの吸着剤;例えば、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及びメタ重亜硫酸ナトリウムなどの安定化剤及び抗酸化剤;例えば、ブロック重合体、天然及び合成ゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリシロキサン、並びにスチレン‐ブタジエン共重合体などのその他の結合剤;例えば、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム無水物、及びクエン酸ナトリウム水和物などの緩衝剤;例えば、ゼラチン、デンプン、及びセルロース誘導体などのカプセル化剤;例えば、アニス油、シナモン油、ココア、メントール、オレンジ油、ペパーミント油、及びバニリンなどの香味料、マスク剤、及び香料;例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びソルビトールなどの湿潤剤;例えば、アスパルテーム、デキストロース、グリセロール、マンニトール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、ソルビトール、及びショ糖などの甘味料;例えば、ステアリン酸マグネシウム及びタルクなどの粘着防止剤(anti‐adherent)、例えば、リン酸水素カルシウム、ラクトース、及び微結晶セルロースなどの直打用賦形剤(direct compression excipient);例えばカルナウバロウ及び白ロウなどの錠剤研磨剤、が挙げられる。
【0121】
必要に応じて意図する投与経路のための組成物の製剤に使用することができる、通常使用される医薬成分としては;
酸性化剤(例としては、これらに限定されないが、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸が挙げられる);
アルカリ化剤(例としては、これらに限定されないが、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロラミンが挙げられる);
吸着剤(例としては、これらに限定されないが、粉末セルロース及び活性炭が挙げられる);
エアロゾル噴霧剤(例としては、これらに限定されないが、二酸化炭素、CCl22、F2ClC‐CClF2、及びCClF3が挙げられる);
空気置換剤(air displacement agent)(例としては、これらに限定されないが、窒素およびアルゴンが挙げられる);
抗真菌保存剤(例としては、これらに限定されないが、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムが挙げられる);
抗菌保存剤(例としては、これらに限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、及びチメロサールが挙げられる);
抗酸化剤(例としては、これらに限定されないが、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる);
結合剤(例としては、これらに限定されないが、ブロック重合体、天然及び合成ゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリシロキサン、並びにスチレン‐ブタジエン共重合体が挙げられる);
緩衝剤(例としては、これらに限定されないが、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム無水物、及びクエン酸ナトリウム二水和物が挙げられる);
担体(carrying agent)(例としては、これらに限定されないが、アラビアゴムシロップ、芳香族シロップ、芳香族エリキシル剤、チェリーシロップ、ココアシロップ、オレンジシロップ、シロップ、コーン油、鉱油、ピーナッツ油、ゴマ油、静菌性塩化ナトリウム注射液、及び注射用の静菌水が挙げられる);
キレート化剤(例としては、これらに限定されないが、エデト酸二ナトリウム及びエデト酸が挙げられる);
着色剤(例としては、これらに限定されないが、FD&CレッドNo.3、FD&CレッドNo.20、FD&CイエローNo.6、FD&CブルーNo.2、D&CグリーンNo.5、D&CオレンジNo.5、D&CレッドNo.8、カラメル、及び赤酸化第二鉄が挙げられる);
透明化剤(clarifying agent)(例としては、これに限定されないが、ベントナイトが挙げられる);
乳化剤(例としては、これらに限定されないが、アラビアゴム、セトマクロゴール、セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、レシチン、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン50モノステアレートが挙げられる);
カプセル化剤(例としては、これらに限定されないが、ゼラチン及びセルロースアセテートフタレートが挙げられる);
香味料(例としては、これらに限定されないが、アニス油、シナモン油、ココア、メントール、オレンジ油、ペパーミント油、及びバニリンが挙げられる);
湿潤剤(例としては、これらに限定されないが、グリセロール、プロピレングリコール、及びソルビトールが挙げられる);
研和剤(levigating agent)(例としては、これらに限定されないが、鉱油及びグリセリンが挙げられる);
油類(例としては、これらに限定されないが、アラキス油、鉱油、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、及び植物油が挙げられる);
軟膏基剤(例としては、これらに限定されないが、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ワセリン、親水性ワセリン、白色軟膏、黄色軟膏、及びバラ水軟膏が挙げられる);
浸透促進剤(経皮送達)(例としては、これらに限定されないが、モノヒドロキシ若しくはポリヒドロキシアルコール、1価若しくは多価アルコール、飽和若しくは不飽和脂肪アルコール、飽和若しくは不飽和脂肪エステル、飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、精油、ホスファチジル誘導体、セファリン、テルペン、アミド、エーテル、ケトン、及びウレアが挙げられる);
可塑剤(例としては、これらに限定されないが、フタル酸ジエチル及びグリセロールが挙げられる);
溶媒(例としては、これらに限定されないが、エタノール、コーン油、綿実油、グリセロール、イソプロパノール、鉱油、オレイン酸、ピーナッツ油、純水、注射用水、注射用殺菌水、及び灌注用殺菌水が挙げられる);
硬化剤(例としては、これらに限定されないが、セチルアルコール、セチルエステルワックス、微結晶ワックス、パラフィン、ステアリルアルコール、白ロウ、及び黄ロウが挙げられる);
坐薬基剤(例としては、これらに限定されないが、ココアバター及びポリエチレングリコール(混合物)が挙げられる);
界面活性剤(例としては、これらに限定されないが、塩化ベンザルコニウム、ノノキシノール10、オクストキシノール9、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、及びソルビタンモノパルミテートが挙げられる);
懸濁剤(例としては、これらに限定されないが、寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガカントガム、及びビーゴム(veegum)が挙げられる);
甘味料(例としては、これらに限定されないが、アスパルテーム、デキストロース、グリセロール、マンニトール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、ソルビトール、及びショ糖が挙げられる);
錠剤用抗粘着剤(例としては、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム及びタルクが挙げられる);
錠剤用結合剤(例としては、これらに限定されないが、アラビアゴム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮糖、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、非架橋ポリビニルピロリドン、及びアルファ化デンプンが挙げられる);
錠剤及びカプセル剤用希釈剤(例としては、これらに限定されないが、リン酸水素カルシウム、カオリン、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトール、及びデンプンが挙げられる);
錠剤用コーティング剤(例としては、これらに限定されないが、液体グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、及びシェラックが挙げられる);
錠剤直打用賦形剤(例としては、これに限定されないが、リン酸水素カルシウムが挙げられる);
錠剤用崩壊剤:(例としては、これらに限定されないが、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、微結晶セルロース、ポラクリリンカリウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムスターチグリコレート、及びデンプンが挙げられる);
錠剤用流動化剤(tablet glidant)(例としては、これらに限定されないが、コロイダルシリカ、コーンスターチ、及びタルクが挙げられる);
錠剤用滑沢剤(例としては、これらに限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ステアリン酸、及びステアリン酸亜鉛が挙げられる);
錠剤/カプセル剤用不透明化剤(例としては、これに限定されないが、二酸化チタンが挙げられる);
錠剤用研磨剤(例としては、これらに限定されないが、カルナウバロウ及び白ロウが挙げられる);
粘稠化剤(例としては、これらに限定されないが、蜜ロウ、セチルアルコール、及びパラフィンが挙げられる);
等張化剤(tonicity agent)(例としては、これらに限定されないが、デキストロース及び塩化ナトリウムが挙げられる);
増粘剤(例としては、これらに限定されないが、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、及びトラガカントガムが挙げられる);並びに、
湿潤剤(例としては、これらに限定されないが、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、レシチン、ソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートが挙げられる);
が挙げられる。
【0122】
水を添加することによる水性懸濁液の調製に適する分散性粉末及び顆粒により、活性成分が、分散剤又は湿潤剤と、懸濁剤と、1若しくは2種類以上の保存剤との混合物として提供される。適切な分散剤又は湿潤剤、及び懸濁剤は、上記ですでに述べられているもので例示される。例えば、甘味料、香味料、及び着色剤などのさらなる賦形剤も存在していてよい。
【0123】
医薬組成物は、例えば、ポリエチレングリコール、例えばアラキス油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはピーナッツ油などの植物油、又は液状パラフィンなどの鉱油の中に活性成分を懸濁させて製剤することができる油状懸濁液などの、非水液体製剤の形であってもよい。油状懸濁液は、例えば、密ロウ、硬質パラフィン、又はセチルアルコールなどの粘稠化剤を含むことができる。上述のような甘味料、及び香味料を添加して飲みやすい経口製剤を提供することができる。このような組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存することができる。
【0124】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形であってもよい。油相は、例えば、オリーブ油若しくはアラキス油などの植物油、又は、例えば、液体パラフィンなどの鉱油、又はこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、例えば、アラビアゴム若しくはトラガカントガムなどの天然ガム、例えば、大豆レシチンなどの天然ホスファチド、例えばソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸と無水ヘキシトールとから誘導されるエステル若しくは部分エステル、並びに、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物であってよい。エマルジョンは、甘味料及び香味料をさらに含んでいてもよい。
【0125】
シロップ及びエリキシル剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はショ糖などの甘味料を用いて製剤することができる。そのような製剤は、粘滑剤、保存剤、並びに香味料及び着色剤をさらに含んでもよい。
【0126】
本発明の薬物の組み合わせの活性成分は、当業者に公知の方法を用いて、経皮投与することもできる(例えば、Chien;”Transdermal Controlled Systemic Medications”;Marcel Dekker,Inc.;1987.、1994年3月3日公開のLipp et al.WO94/04157、を参照)。例えば、アリールウレア化合物の、任意に浸透促進剤を含有してもよい適切な揮発性溶媒中の溶液又は懸濁液は、マトリックス剤及び殺菌剤など、当業者に公知のさらなる添加剤と組み合わせることができる。殺菌の後、得られた混合物は、公知の手順に従って剤形へ製剤することができる。さらに、懸濁剤及び水で処理することにより、アリールウレア化合物の溶液又は懸濁液は、ローション又は軟膏へ製剤することができる。
【0127】
経皮送達システムを行うための適切な溶媒は、当業者に公知であり、ジメチルスルホキシド、エタノール若しくはイソプロピルアルコールなどの低級アルコール、アセトンなどの低級ケトン、酢酸エチルなどの低級カルボン酸エステル、テトラヒドロフランなどの極性エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、若しくはベンゼンなどの低級炭化水素、又はジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロトリフルオロエタン、若しくはトリクロロフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が含まれる。適切な溶媒としては、低級アルコール、低級ケトン、低級カルボン酸エステル、極性エーテル、低級炭化水素、ハロゲン化炭化水素から選択される1若しくは2種類以上の物質の混合物も含むことができる。
【0128】
経皮送達システムに適切な浸透促進剤は、当業者に公知であり、例えば、エタノール、プロピレングリコール、又はベンジルアルコールなどのモノヒドロキシ若しくはポリヒドロキシアルコール、ラウリルアルコール又はセチルアルコールなどの飽和若しくは不飽和C8‐C18脂肪アルコール、ステアリン酸などの飽和若しくは不飽和C8‐C18脂肪酸、酢酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、又はパルミチン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、イソブチル、tert‐ブチル、又はモノグリセリンエステルなどの炭素数が最大24個までの飽和若しくは不飽和脂肪エステル、又は、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジイソプロピル、又はフマル酸ジイソプロピルなどの炭素数の総数が最大24個までの飽和若しくは不飽和脂肪ジカルボン酸のジエステルなどが含まれる。さらなる浸透促進剤としては、レシチン若しくはセファリンなどのホスファチジル誘導体、テルペン、アミド、ケトン、ウレア及びその誘導体、並びにジメチルイソソルビド及びジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルが含まれる。適切な浸透促進製剤は、さらに、モノヒドロキシ若しくはポリヒドロキシアルコール、飽和若しくは不飽和C8‐C18脂肪アルコール、飽和若しくは不飽和C8‐C18脂肪酸、炭素数が最大24個までの飽和若しくは不飽和脂肪エステル、炭素数の総数が最大24個までの飽和若しくは不飽和脂肪ジカルボン酸のジエステル、ホスファチジル誘導体、テルペン、アミド、ケトン、ウレア及びその誘導体、並びにエーテルから選択される1若しくは2種類以上の物質の混合物も含むことができる。
【0129】
経皮送達システムに適切な結合剤は、当業者に公知であり、ポリアクリレート、シリコーン、ポリウレタン、ブロック重合体、スチレンブタジエン共重合体、並びに天然及び合成ゴムが含まれる。セルロースエーテル、誘導体化ポリエチレン、及びシリケートも、マトリックス成分として使用することができる。粘稠性樹脂又は油類などのさらなる添加剤を加えてマトリックスの粘度を上昇させることができる。
【0130】
本発明の薬物の組み合わせの範囲内である化合物の具体的な製剤は、本技術分野で公知のその他から適合させることができる。例えば、Riedl,B.,et al.,”O‐Carboxy Aryl Substituted Diphenyl Ureas as raf Kinase Inhibitors”WO00 42012、Riedl,B.,et al.,”O‐Carboxy Aryl Substituted Diphenyl Ureas as p38 Kinase Inhibitors”WO00 41698であり、これらは参照することで本明細書に組み入れられる。
【0131】
本発明にかかる医薬組成物は、以下のように例示することができる。
【0132】
殺菌IV溶液:
本発明の薬物の組み合わせの所望の化合物の溶液5mg/mlを、殺菌注射用水で作製し、必要に応じてpHを調節する。この溶液を、投与用に、5%の殺菌デキストロースで1乃至2mg/mlに希釈し、IV注入液として60分かけて投与する。
【0133】
IV投与のための凍結乾燥粉末:
殺菌製剤は、(i)本発明の薬物の組み合わせの所望の化合物を凍結乾燥粉末として100乃至1000mg、(ii)クエン酸ナトリウムを32乃至327mg/mg、及び(iii)デキストラン40を300乃至3000mg使用して調製することができる。この製剤は、注射用殺菌食塩水又は5%の殺菌デキストロースにより10乃至20mg/mlの濃度へ再構築し、これをさらに、食塩水又は5%デキストロースにより0.2乃至0.4mg/mlへ希釈し、IVボーラス又はIV注入により、15乃至60分かけて投与する。
【0134】
筋肉内投与用懸濁液:
筋肉注射用には、以下の溶液又は懸濁液を調製することができる。
本発明の薬物の組み合わせの所望の水溶性化合物を50mg/ml
カルボキシメチルセルロースナトリウムを5mg/ml
TWEEN80を4mg/ml
塩化ナトリウムを9mg/ml
ベンジルアルコールを9mg/ml
【0135】
ハードシェルカプセル剤:
標準的なツーピース(two‐piece)硬質ゼラチンカプセルの各々に、粉末活性成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg、及びステアリン酸マグネシウム6mgを充填することにより、大量の単位カプセル剤が作製される。
【0136】
軟質ゼラチンカプセル剤
大豆油、綿実油、又はオリーブ油などの消化可能な油類中の活性成分の混合物を調製し、容積式ポンプ(positive displacement pump)を用いた手段によって溶融ゼラチン中へ注入して、100mgの活性成分を含有する軟質ゼラチンカプセル剤を形成する。このカプセル剤を洗浄し、乾燥させる。活性成分は、ポリエチレングリコール、グリセリン、及びソルビトールの混合物へ溶解させて、水混和性の薬剤混合物を調製してもよい。
【0137】
錠剤:
単位投与量が活性成分100mg、コロイダル二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、微結晶セルロース275mg、デンプン11mg、及びラクトース98.8mgとなるように、従来の手順により、大量の錠剤が作製される。適切な水性及び非水性コーティングを施すことにより、飲みやすさを向上させたり、高級感及び安定性を改善したり、又は吸収を遅らせたりすることができる。
【0138】
速放性錠剤/カプセル剤:
これは、従来の、及び新規なプロセスによって作製される固体経口剤形である。これらの単位剤形は、水なしで経口摂取され、直ちに溶解して薬物を送達する。活性成分は、糖分、ゼラチン、ペクチン、及び甘味料などの成分を含有する液体中で混合される。このような液体を凍結乾燥及び固体抽出法によって固化し、固形錠剤又はカプセル剤とする。この薬物化合物は、粘弾性及び熱弾性である糖分、並びに重合体、又は発泡成分と共に圧縮し、水を必要としない速放性を意図した多孔性マトリックスを形成することができる。
【0139】
本発明は、さらに、哺乳類の癌を治療するためのキットも包含する。そのようなキットを用いて、rafキナーゼに刺激された癌、並びにrafキナーゼによって刺激されない癌を有する患者を治療することができる。このキットは、式Iの置換ジアリールウレア化合物(例:ソラフェニブ)、及びタキサン(例:パクリタキセル)、及び白金錯体(例:カルボプラチン)を含有する単一の医薬製剤を含むことができる。別の選択肢として、このキットは、別々の製剤として、置換ジアリールウレア化合物、タキサン、及び白金錯体を含むことができる。このキットは、さらに、治療を必要とする癌患者への化合物の投与方法を示した説明書も含むことができる。このキットを用いて、NSCLC、結腸癌、前立腺癌、白血病、黒色腫、肝細胞癌、腎臓癌、頭頚部癌、神経膠腫、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、及び乳癌を含むがこれらに限定されない種々の癌を治療することができる。
【0140】
当業者であれば、特定の投与方法が様々な要因に依存し、それらは全て治療薬の投与の際に通常の手順として考慮されるということは、正しく認識されるであろう。しかしながら、ある患者に対する具体的な投与レベルが、使用する具体的な化合物の活性、患者の年齢、患者の体重、患者の一般的健康状態、患者の性別、患者の食事習慣、投与時間、投与経路、排出速度、薬物の組み合わせ、及び治療を行う状態の重症度を含む種々の要因に依存することも理解されるであろう。さらに、当業者であれば、最適な治療方針、すなわち、治療方法、及び定められた日数の間投与される組み合わせの範囲内の1若しくは2種類以上の薬物(又は、その薬理学的に許容される塩)の一日あたりの投与回数は、従来の治療試験を用いることで、当業者によって確認可能であることは、正しく認識されるであろう。
【0141】
標準的な毒性試験、上記で識別された哺乳類の状態の治療方法を決定するための標準的な薬理学的アッセイ、及びこれらの状態の治療に用いられる公知の薬物による結果とこれらの結果との比較によって、過剰増殖性疾患の治療に有用である化合物を評価することで知られる標準的な実験方法に基づき、各所望の適応症の治療に対する本発明の化合物の効果投与量を容易に決定することができる。これらの状態の一つを治療する際に投与される活性成分の量は、使用される特定の化合物及び投与単位、投与方法、治療期間、治療を受ける患者の年齢及び性別、並びに治療する状態の性質及び程度、などの考慮事項に応じて、大きく変わり得る。
【0142】
一般的に、本発明の薬物の組み合わせの使用によって、(1)単一の化学療法薬の投与と比較して、より優れた腫瘍の増殖を低減する効力、又は腫瘍の根絶さえも得られ、(2)投与される化学療法薬の量が低減し、(3)単一の化学療法薬のより多い投与量、及び特定のその他の併用治療に起因する薬理学的な合併症による有害な影響が低減される結果として、患者の耐容性が高い化学療法治療が提供され、(4)哺乳類、特にヒトにおける広範囲にわたる様々な種類の癌の治療が提供され、(5)治療を行った患者の中で、高い応答率が得られ、(6)通常の化学療法治療と比較して、長い生存期間が得られ、(7)腫瘍の進行時間が引き伸ばされ、及び/又は(8)その他の癌治療薬の組み合わせが拮抗効果を生み出す公知のケースと比較して、薬剤を単独で用いた結果と少なくとも同程度に優れた効力と耐容性が得られる。
【0143】
式Iの置換ジアリールウレア化合物は、全体重に対して約0.001乃至約300mg/kgの範囲とすることができる投与量で患者に投与することができる。単位投与量は、約0.5mg乃至約2000mgの活性成分を含有することができ、一日あたり1若しくは2回以上投与することができる。医薬組成物中の式(I)の置換ジアリールウレア化合物の量としては、20乃至2000mgが好ましく、40乃至800mgが好ましく、50乃至600mgがさらに好ましい。特に好ましいのは、医薬組成物中の4‐{4‐[3‐(4‐クロロ‐3‐トリフルオロメチルフェニル)‐ウレイド]‐フェノキシ}‐ピリジン‐2‐カルボン酸メチルアミドのp‐トルエンスルホン酸塩の量が27乃至2740mgであり、54乃至1096mgが好ましく、68乃至822mgがさらに好ましい。
【0144】
経口投与の毎日の投与量は、全体重に対して0.1乃至300mg/kgが好ましく、通常は、体重に対して一日あたり約0.1mg/kg乃至50mg/kgである。静脈内、筋肉内、皮下、及び非経口の注射、並びに注入法を含む注射投与の場合の一日の投与量としては、全体重に対して0.1乃至300mg/kgが好ましい。一日の膣内投与計画としては、全体重に対して0.1乃至300mg/kgが好ましい。一日の局所投与レジメンンとしては、一日1乃至4回の投与で、0.1乃至300mgが好ましい。経皮投与の濃度としては、一日の投与量を1乃至300mg/kgに維持するのに必要な濃度が好ましい。上述のすべての投与経路について、好ましい投与量は0.1乃至300mg/kgである。一日の吸入投与レジメンとしては、全体重に対して0.1乃至300mg/kgが好ましい。
【0145】
パクリタキセルなどのタキサン、及びカルボプラチンなどの白金錯体は、各々、非経口投与されることが好ましく、静脈内注入がより好ましく、癌の単剤療法で従来から通常用いられる量、又は活性薬剤との組み合わせに基づいて減少させた量で投与される。
【0146】
体表面積に基づき、パクリタキセルの注入投与量は、約10乃至300mg/m2の範囲とすることができ、好ましくは約30乃至200mg/m2、さらに好ましくは約100、135、又は175mg/m2である。パクリタキセルの注入に先立って、当業者に公知の適切な前投薬を行うべきである。パクリタキセルの投与量は、好ましくは静脈内注入により、少なくとも約3時間、好ましくは約3又は24時間かけて投与される。カルボプラチンの投与量は、好ましくは静脈内注入により、好ましくは少なくとも約15分かけて投与される。カルボプラチンの注入投与量は、約100乃至500mg/m2の範囲とすることができ、好ましくは約300、又は360mg/m2である。
【0147】
カルボプラチンとパクリタキセルを合わせた投与量は、一回の注入あたり、50乃至500mg/m2、100乃至400mg/m2、150乃至300mg/m2、175乃至275mg/m2、及び200乃至250mg/m2の範囲とすることができる。
【0148】
式Iの置換ジアリールウレア化合物、タキサン、及び白金錯体の各々について、その化合物の投与量は、定期的な測定によって、本発明により得られる優れた又は予期しない結果に応じて変更することができる。標準的な毒性試験、上記で識別された哺乳類の状態の治療方法を決定するための標準的な薬理学的アッセイ、及びこれらの状態の治療に用いられる公知の薬物による結果とこれらの結果との比較によって、過剰増殖性疾患の治療に有用である化合物を評価することで知られる標準的な実験方法に基づき、当業者であれば本発明の医薬組成物の効果投与量を容易に決定することができる。活性成分の投与量は、使用される特定の化合物及び投与単位、投与の方法及び時間、治療期間、治療を受ける患者の年齢、性別、及び一般的健康状態、治療する状態の性質及び程度、薬物の代謝及び排出の速度、考えられる薬物の組み合わせ、並びに薬物同士の相互作用などの考慮事項に応じて、大きく変わり得る。
【0149】
式Iの置換ジアリールウレア化合物は、経口、局所、非経口、直腸、吸入、及び注射投与することができる。注射投与としては、静脈内、筋肉内、皮下、及び非経口投与、並びに注入法による投与が挙げられる。アリールウレア化合物は、1若しくは2種類以上の無毒性の薬理学的に許容される担体、及び所望する場合はその他の活性成分と共に存在することができる。アリールウレア化合物の好ましい投与経路は、経口投与である。
【0150】
タキサン及び白金錯体は、これらの化合物に対する従来のいずれの投与経路によっても、患者へ投与することができる。これには、経口、局所、非経口、直腸、及び吸入投与、並びに注射投与を挙げることができる。注射投与としては、静脈内、筋肉内、皮下、及び非経口投与、並びに注入法による投与が挙げられる。本発明で用いられるタキサン及び白金錯体に対する好ましい投与経路としては、通常、注射投与であり、これはこの薬剤単独に対して用いられる投与経路と同じである。いずれのタキサン及び白金錯体も、置換ジアリールウレア化合物と組み合わせて、既述のいずれの投与経路によっても投与することができる。
【0151】
式Iの置換ジアリールウレア化合物、並びにタキサン及び白金錯体の両方を、本明細書で議論するいずれの投与経路によって投与する場合でも、置換ジアリールウレア化合物は、タキサン及び白金錯体と同時に投与することができる。これは、置換ジアリールウレア化合物と、タキサン及び白金錯体との両方を含有する単一の製剤を投与することによって、又は、独立した製剤中の置換ジアリールウレア化合物、タキサン、及び白金錯体を同時に患者へ投与することによって実施することができる。
【0152】
別の選択肢として、式Iの置換ジアリールウレア化合物は、タキサン及び白金錯体と共にタンデム方式で投与することができる。置換ジアリールウレア化合物は、タキサン、白金錯体のいずれか、又は両方に先立って投与することができる。例えば、置換ジアリールウレア化合物は、一日に1若しくは2回以上、最大連続して28日間まで投与し、これに続いてタキサン及び白金錯体を投与することができる。さらに、タキサン、白金錯体のいずれか、又は両方をまず投与し、これに続いて置換ジアリールウレア化合物を投与することもできる。タキサン及び白金錯体に対する置換ジアリールウレア化合物の投与順序の選択は、薬剤に応じて変わり得る。さらに、タキサン及び白金錯体は、これらの薬剤に対して従来から用いられるいかなるレジメンを用いても、投与することができる。
【0153】
別の投与レジメンでは、式Iの置換ジアリールウレア化合物、及びタキサン、及び白金錯体は、投与日に、一日あたり1乃至2回以上投与することができる。
【0154】
使用方法
本発明は、癌を含む哺乳類の過剰増殖性疾患を治療するための本発明にかかる薬物又は医薬組成物を製造するための、本発明の組み合わせの使用方法にも関する。
【0155】
過剰増殖性疾患の治療方法
本発明は、癌を含む哺乳類の過剰増殖性疾患を治療するための本発明にかかる医薬組成物の使用方法にも関する。本方法は、薬物の組み合わせを含有する医薬組成物のその疾患を治療するために効果的な量を、ヒトを含むそれを必要とする哺乳類に投与する工程を含む。
【0156】
「過剰増殖性疾患」及び/又は「癌」という用語は、乳癌、気道癌、脳癌、生殖器癌、消化管癌、尿路癌、眼癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、並びにこれらの遠隔転移などの固形腫瘍を意味するだけでなく、リンパ腫、肉腫、及び白血病も含む。
【0157】
本発明の薬物の組み合わせを用いることにより、その組み合わせを構成する化合物によって調節される細胞経路に関連する、若しくはこれによって媒介されるいかなる疾患、又は状態も治療することができる。このような経路としては、これらに限定されないが、例えば、VEGFR、VEGFR2、Raf/Mek/Erk、Akt/PI3K、MTOR、PTENなどを含むシグナル伝達経路が挙げられる(上記も参照)。この薬物の組み合わせは、PTEN、ras、Raf、Akt、PI3Kなどでの癌関連変異を含む、これらの経路内に存在する1若しくは2個以上の遺伝子の変異に関連する、若しくはこれによって媒介される疾患の治療にも有用であり得る。
【0158】
化合物が特定の阻害薬として公知である場合もあるが、本発明には、作用のメカニズム又はその達成される方法に関係なく、いかなる寛解効果、又は治療効果も含まれる。
【0159】
薬物の組み合わせは、以下に示すものを含む活性、抗増殖;抗腫瘍;抗血管新生;内皮細胞又は腫瘍細胞の増殖の阻害;抗悪性腫瘍;免疫抑制;免疫調節;アポトーシス促進など、の1若しくは2個以上を有することができる。
【0160】
本発明に従って治療することができる状態又は疾患には、癌などの増殖性疾患が含まれる。
【0161】
いかなる腫瘍又は癌も治療することができ、それらには、これらに限定されないが、raf、VEGFR‐2、VEGFR‐3、PDGFR‐ベータ、Flt‐3、ras、PTEN、Akt、PI3K、mTOR、並びにこれらがその一部分を成すシグナル伝達経路の上流若しくは下流の構成要素における1若しくは2個以上の変異を有する癌が含まれる。その原因となるメカニズムに関係なく、腫瘍又は癌を本発明の化合物によって治療することができる。 いかなる器官の癌も治療することができ、例えば、結腸癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、骨癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、精巣癌、皮膚癌、膵臓癌、胃癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、頭頚部癌、血球癌、リンパ癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
本発明に従って治療可能な癌としては、これらに限定されないが、特に、脳腫瘍、乳癌、骨肉腫(例:骨肉腫、及びユーイング肉腫)、気管支前癌状態(bronchial premalignancy)、子宮内膜癌、神経膠芽腫、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、ホジキン病、腎臓腫瘍、白血病、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ腫、レルミット・デュクロ病、悪性神経膠腫、黒色腫、悪性黒色腫、転移、多発性骨髄腫、骨髄化生、骨髄異形成症候群、非小細胞肺癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌(例:進行癌、治療抵抗性進行癌)、横紋筋肉腫、軟部肉腫、皮膚の扁平上皮癌、PTENの機能の欠損;Aktの活性化に伴う癌(例:PTEN欠損腫瘍、及びras変異を有する腫瘍)が挙げられる。
【0163】
乳癌の例としては、これらに限定されないが、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌、及び非浸潤性小葉癌が挙げられる。
【0164】
気道癌の例としては、これらに限定されないが、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支腺腫、及び胸膜肺芽腫が挙げられる。
【0165】
脳癌の例としては、これらに限定されないが、脳幹及び視床下部の(hypophtalmic)神経膠腫、小脳及び大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉及び松果体の腫瘍が挙げられる。
【0166】
雄性生殖器官の腫瘍としては、これらに限定されないが、前立腺癌及び精巣癌が挙げられる。雌性生殖器官の腫瘍としては、これらに限定されないが、子宮内膜、子宮頸部、卵巣、膣、及び外陰部の癌、並びに子宮肉腫が挙げられる。
【0167】
消化管の腫瘍としては、これらに限定されないが、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、及び唾液腺の癌が挙げられる。
【0168】
尿路の腫瘍としては、これらに限定されないが、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、及び尿道の癌が挙げられる。
【0169】
眼癌としては、これらに限定されないが、眼球内黒色腫及び網膜芽腫が挙げられる。
【0170】
肝臓癌の例としては、これらに限定されないが、肝細胞癌(線維層板の変異を伴うか、または伴わない肝細胞の癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、及び混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma)が挙げられる。
【0171】
皮膚癌としては、これらに限定されないが、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、及び非黒色腫皮膚癌が挙げられる。
【0172】
頭頸部癌としては、これらに限定されないが、喉頭、下咽頭、鼻咽頭、及び/又は口咽頭の癌、並びに口唇及び口腔の癌が挙げられる。
【0173】
リンパ腫としては、これらに限定されないが、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、及び中枢神経系のリンパ腫が挙げられる。
【0174】
肉腫としては、これらに限定されないが、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、及び横紋筋肉腫が挙げられる。
【0175】
白血病としては、これらに限定されないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及びヘアリーセル白血病が挙げられる。
【0176】
腫瘍細胞の増殖の阻害に加えて、本発明の化合物は、例えば、腫瘍の大きさの減少、又は体内の癌の程度の低下などの腫瘍退縮も引き起こすことができる。
【0177】
さらに、薬物の組み合わせを投与することにより、以下に示すプロセス、すなわち、細胞成長(例:増殖)、腫瘍細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、腫瘍退縮、内皮細胞成長(例えば、分化、細胞生存、及び/又は増殖を含む)、血管新生(血管成長)、血管新生、及び/又は血球新生(例:増殖、T細胞発生など)、の1又は2種類以上を調節することができる。
【0178】
薬物は、異なる時間に、順番に投与することもできる。薬剤は、従来の方法で製剤し、例えば、12時間、24時間などの長い時間にわたって放出される所望の放出速度を達成することができる。これは、適切な代謝半減期を有する薬剤及び/若しくは誘導体を用いることにより、並びに/又は、徐放性製剤を用いることによって達成することができる。
【0179】
薬物の組み合わせは、相乗作用的であってよもよく、例えば、その場合、薬物の作用が組み合わされることにより、組み合わせられた効果が、個々の効果の代数的な合計よりも大きくなる。従って、薬物の投与量を少なくすることができ、例えば、毒性又はその他の有害若しくは望ましくない影響を低減したり、並びに/又は、薬剤を単独で投与した場合と同じ量を用いながらも、例えば、より強力な抗増殖作用及びアポトーシス促進作用を有するなど、より高い効力を達成したりすることが可能である。
【0180】
本発明の化合物は、さらにその他の適切ないかなる添加剤又は薬理学的に許容される担体とも組み合わせることができる。そのような添加剤には、既述の物質のいずれも、並びに、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro and Gennaro,eds.,20th edition,Lippincott Williams & Wilkins,2000);Theory and Practice of Industrial Pharmacy(Lachman et al.,eds.,3rd edition,Lippincott Williams & Wilkins,1986);Encyclopedia of Pharmaceutical Technology(Swarbrick and Boylan,eds.,2nd edition,Marcel Dekker,2002)、に記載のものなどの従来から用いられるいずれもが含まれる。これらは、本明細書では「薬理学的に許容される担体」と称する場合があり、これらが活性薬物と組み合わせられて、治療目的で対象に安全に投与することができることを示している。
【0181】
さらに、本発明の化合物は、上述の疾患及び/若しくは状態の治療に用いられるその他の活性薬剤、又は治療法(例:放射線)と合わせて投与することができる。
【0182】
アッセイ
本発明の組み合わせの活性は、効果的ないかなるインビトロ又はインビボの方法によっても測定することができる。
【0183】
キナーゼ活性
キナーゼ活性は、従来のアッセイの方法を用いた通常の手順により測定することができる。キナーゼアッセイは、通常、キナーゼ酵素、基質、バッファー、及び検出システムの成分を含む。典型的なキナーゼアッセイは、タンパク質キナーゼと、ペプチド基質及び32P‐ATPなどのATPとの反応によるリン酸化最終産物(例えば、ペプチド基質を用いた場合は、リン酸化タンパク質)の生成を含む。得られた最終産物は、適切ないずれかの方法によって検出することができる。放射性ATPを使用した場合は、親和性膜又はゲル電気泳動を用いて、放射標識されたリン酸化タンパク質を未反応のガンマ‐32P‐ATPから分離し、その後、オートジオグラフィーを用いてゲル上に可視化するか、又はシンチレーションカウンターで検出することができる。非放射性の方法も使用することができる。例えば抗ホスホチロシン抗体など、リン酸化基質を認識する抗体を使用することができる方法がある。例えば、キナーゼ酵素を、基質と共に、ATP及びキナーゼバッファーの存在下、酵素が基質をリン酸化するのに効果的な条件下でインキュベートすることができる。この反応混合物を、例えば電気泳動などによって分離し、その後、基質のリン酸化を、例えば抗ホスホチロシン抗体を用いたウエスタンブロッティング法などによって測定することができる。抗体は、例えば、HRPなどの酵素、アビジン若しくはビオチン、化学発光試薬など、検出可能な標識によって標識することができる。その他の方法では、ELISA方式、親和性膜分離、蛍光偏光アッセイ、発光アッセイなどを用いることができる。
【0184】
放射性方式に代わる方法としては、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR‐FRET)がある。この方法は、標準的なキナーゼ反応に従うが、ここで、例えば、ビオチン化ポリ(GluTyr)などの基質が、ATPの存在下でタンパク質キナーゼによりリン酸化される。そして、最終産物は、ユーロピウムキレートリン酸化型特異的抗体(europium chelate phosphospecific antibody)(抗ホスホチロシン、又は抗ホスホセリン/スレオニン)、及びビオチン化基質と結合するストレプトアビジン‐APCによって検出することができる。この2つの成分は、結合によって空間的に接近し、リン酸化型特異的抗体から受容体(SA‐APC)へのエネルギー転移によって、読み取ることができる均一な形での蛍光を発生させる。
【0185】
Raf/MEK/ERK活性
c‐Rafキナーゼアッセイは、Lckキナーゼによって活性化(リン酸化)されたc‐Raf酵素を用いて実施することができる。Lckで活性化されたc‐Raf(Lck/c‐Raf)は、ポリヘドリンプロモーターの支配下でGST‐c‐Raf(アミノ酸302からアミノ酸648)、及びLck(全長)を発現するバキュロウイルスで細胞を共感染させることにより、Sf9昆虫細胞内で産生される。両バキュロウイルスは、感染効率2.5で用い、細胞は、感染後48時間で回収する。
【0186】
MEK‐1タンパク質は、Sf9昆虫細胞内で産生され、GST‐MEK‐1(全長)融合タンパク質を発現するバキュロウイルスにより感染効率5で細胞を感染させ、細胞を感染後48時間で回収する。GST‐c‐Raf302‐648及びGST‐MEK‐1に対しては、類似の精製手順を用いる。
【0187】
トランスフェクトされた細胞を、10mMのリン酸ナトリウム、140mMの塩化ナトリウム、pH7.3、0.5%のTriton X‐100、及びプロテアーゼ阻害薬カクテルを含有するバッファー中に、1mLあたり湿潤状態の細胞の生物体量(wet cell biomass)100mgで懸濁させる。細胞をPolytronホモジナイザーで破砕し、30000gを30分間遠心分離にかける。この30000gの上清をGSH‐セファロースにかける。この樹脂を、50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、及び0.01%のTriton X‐100を含有するバッファーで洗浄する。GSTタグタンパク質を、100mMのグルタチオン、50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、及び0.01%のTriton X‐100を含有する溶液で溶出させる。精製したタンパク質を、20mMのTris、pH7.5、150mMのNaCl、及び20%のグリセロールを含有するバッファー中へ透析する。
【0188】
試験化合物を、三倍希釈によってDMSO中へ段階希釈し、通常は、50μM乃至20nMの範囲のストック液濃度とした(例:アッセイでの最終濃度は、1μM乃至0.4nMの範囲とすることができる)。c‐Raf生化学アッセイは、放射性フィルターマットアッセイとして、96ウェルのCostarポリプロピレンプレート(Costar 3365)中で実施する。プレートに、50mMのHEPES pH7.5、70mMのNaCl、80ngのLck/c‐Raf、及び1μgのMEK‐1を含有する溶液75μLを充填する。続いて、段階希釈した個々の化合物2μLを、ATPを添加する前に、この反応液に添加する。5μMのATP及び0.3μCiの[33P]‐ATPを含有するATP溶液25μLで反応を開始させる。プレートを密封し、32℃で1時間インキュベートした。4%のリン酸50μlを添加することで反応を停止し、Wallac Tomtec Harvesterを使用してP30フィルターマット(PerkinElmer)上で回収を行う。フィルターマットをまず1%のリン酸で、次に脱イオン水で洗浄する。フィルターをマイクロ波中で乾燥し、シンチレーション液に浸漬し、Wallac 1205 Betaplate Counter(Wallac Inc.,米国、ジョージア州、アトランタ)で読み取りを行う。結果をパーセント阻害として表す。
%阻害=[100−(Tib/Ti)]x100
ここで、
Tib=(阻害薬ありのカウント毎分)−(バックグラウンド)
Ti=(阻害薬なしのカウント毎分)−(バックグラウンド)
【0189】
Raf活性は、ERKリン酸化(すなわち、raf/MEK/ERK)を誘発するカスケードを開始させてリン酸化‐ERKを産生する能力によってモニタリングすることも可能である。Bio‐Plex Phospho‐ERK1/2免疫アッセイは、以下のように実施することができる:
【0190】
細胞株中の基底pERKの阻害を測定するために、レーザーフローサイトメトリーのプラットフォームを用いる96ウェルのリン酸化‐ERK(pERK)免疫アッセイを確立した。MDA‐MB‐231細胞を、細胞数50000個/ウェルで、96ウェルマイクロタイタープレート上の完全増殖培地中へ播種する。基底pERK1/2の阻害に対する試験化合物の効果を調べるために、播種の翌日、MDA‐MB‐231細胞を0.1%BSAを含むDMEMに移し、最終濃度3mM乃至12nMとなるように0.1%DMSO中に1:3で希釈した試験化合物と共にインキュベートする。細胞を試験化合物と共に2時間インキュベートし、洗浄し、Bio‐Plex全細胞溶解バッファーAの中に溶解する。サンプルをバッファーBで1:1(v/v)に希釈し、直接アッセイプレートに移すか、又は、処理を行うまで−80℃で冷凍しておく。希釈したMDA‐MB‐231細胞溶解液50mLを、抗‐ERK1/2抗体を結合させた5ミクロンのBio‐Plexビーズ約2000個と共に、シェーカー上、室温で一晩インキュベートする。翌日、ビオチン化リン酸化‐ERK1/2サンドイッチ免疫アッセイを実施し、各インキュベーションの間にビーズを3回洗浄し、次にPE‐ストレプトアビジン50mLを現像剤として使用する。Bio‐Plexフローセル(プローブ)を用いて高感度で25個のビーズを計数することにより、pERK1/2の相対蛍光単位を検出する。未処理細胞を最大値とし、細胞無し(ビーズのみ)をバックグラウンドとして、IC50を算出する。
【0191】
細胞増殖
細胞増殖アッセイの例は、下記の例の中で述べる。しかし、増殖アッセイは、適切ないかなる方法によっても実施することができる。例えば、乳癌細胞増殖アッセイは、以下のように実施することができる。他の種類の細胞を、MDA‐MB‐231細胞株と置き換えることができる。
【0192】
ヒト乳癌細胞(MDA MB‐231、NCI)を、10%熱失活FBSを添加した標準的な増殖培地(DMEM)中、5%CO2(vol/vol)下、37℃で、加湿インキュベーター内で培養する。細胞を、細胞3000個/ウェルの密度で、増殖培地90μL中、96ウェル培養ディッシュ上に播種する。T0hCTG値を決定するために、播種の24時間後、CellTiter‐Glo発光試薬(Promega)100μLを各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートする。Wallac Victor II装置で発光を記録する。CellTiter‐Glo試薬により、細胞が溶解し、そしてATP存在量に比例する発光シグナルが発生し、それはさらに、存在する細胞数に直接比例する。
【0193】
試験化合物を100%DMSOに溶解し、10mMのストック液を調製する。ストック液を増殖培地中でさらに1:400に希釈し、0.25%DMSO中25μMの試験化合物の作業用ストック液を得る。試験化合物を、0.25%DMSOを含有する増殖培地により、全ウェルで一定のDMSO濃度が維持されるように段階希釈する。希釈した試験化合物60μLを各培養ウェルに添加し、最終体積を180μLとする。細胞を、個々の試験化合物と共に、及び試験化合物なしで、72時間インキュベートし、前述のように、そこでATPによる発光を測定することでT72h値を得る。任意に、化合物濃度対パーセント阻害を用いた最小二乗解析プログラムにより、IC50値を決定することができる。
%阻害=[1−(T72h test−T0h)/(T72h ctrl−T0h)]x100
ここで、
72h test=試験化合物存在下、72時間でのATPによる発光
72h ctrl=試験化合物非存在下、72時間でのATPによる発光
0h=ゼロ時間でのATPによる発光
【0194】
血管新生
血管新生を研究するための1つの有用なモデルは、増殖因子(例:FGF‐1)を添加したMatrigelなどの再構築された基底膜マトリックスをホスト動物に皮下注射すると、内皮細胞がマトリックスに取り込まれ、数日間かけて新しい血管が形成されるという観察に基づいている。例えば、Passaniti et al.,Lab.Invest.,67:519‐528,1992、を参照のこと。抽出物を様々な時間でサンプリングすることにより、血管新生を時間的に分析することができ、例えば、内皮細胞のマトリックス中への遊走、内皮細胞の血管新生経路への関与、細胞伸長及び嚢状の空間(sac‐like space)の形成、並びに赤血球を含有する連結した線状構造を有する機能的毛細血管の確立などを含む、血管新生の全段階に関与する遺伝子の同定が可能となる。増殖因子の安定化、及び/又はマトリックスからのその放出の遅延化のために、増殖因子をヘパリン、又はその他の安定化剤に結合させることができる。マトリックスに定期的に増殖因子を再注入して、血管新生プロセスを促進及び延長することもできる。
【0195】
血管新生を研究するためのその他の有用なシステムとしては、例えば、腫瘍外植片の新血管新生(例:米国特許第5,192,744号;第6,024,688号)、ニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイ(例:Taylor and Folkman,Nature,297:307‐312,1982;Eliceiri et al.,J.Cell Biol.,140,1255‐1263,1998)、ウシ毛細血管内皮(BCE)細胞アッセイ(例:米国特許第6,024,688号;Polverini,P.J.et al.,Methods Enzymol.,198:440‐450,1991)、遊走アッセイ、HUVEC(ヒト臍帯血管内皮細胞)増殖阻害アッセイ(例:米国特許第6,060,449号)、などが挙げられる。
【0196】
フェーズIデータ
固形腫瘍の治療におけるソラフェニブ、カルボプラチン、及びパクリタキセルの組み合わせに関するフェーズIデータは、Flaherty et al.による「カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた、経口用マルチキナーゼ阻害薬ソラフェニブのフェーズI試験(A Phase I Trial of the Oral, Multi‐kinase Inhibitor Sorafenib in Combination with Carboplatin and Paclitaxel)」という表題の文書に報告されており、これは、2006年11月16日出願の米国特許仮出願第60/859,241号に、「Appendix A」として添付されている。2006年11月16日出願の米国特許仮出願第60/859,241号のAppendix Aは、本出願の一部分を成しており、以下に示す内容である。
【0197】
カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた、経口用マルチキナーゼ阻害薬ソラフェニブのフェーズI試験
Keith T.Flaherty,Joan Schiller,Lynn M.Schuchter,Insert 2nd Wisconsin author,David A.Tuveson,Maryann Redlinger,Chetan Lathia,Chenghua Xia,Oana Petrenciuc,Sunil R.Hingorani,Michael A.Jacobetz,Pat VanBelle,David Elder,Marcia S.Brose,Barbara L.Weber,Insert 3rd Wisconsin author,and Peter J.O’Dwyer
ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンター(The Abramson Cancer Center of the University of Pennsylvania)、ペンシルベニア州、フィラデルフィア;ウィスコンシン大学がんセンター(University of Wisconsin Cancer Center)、ウィスコンシン州、マジソン;及びBayer Pharmaceuticals Corporation、コネチカット州、ウエストヘイブン、米国
研究サポート:著者による情報提供
連絡先の著者:Keith T.Flaherty,M.D.,Abramson Cancer Center of the University of Pennsylvania,51 N.39th Street,Medical Arts Building,Suite 103,39th & Market Streets,Philadelphia,PA 19104
電話:+1‐215‐662‐8624;ファックス:+1‐215‐243‐3269
Email:ktflaherty@aol.com
欄外見出し:フェーズIソラフェニブ‐カルボプラチン‐パクリタキセル試験
過去の発表:ASCO2004
免責事項:著者が情報を提供
キーワード:ソラフェニブ、カルボプラチン、パクリタキセル、転移性黒色腫、薬物動態、安全性
要約語数:249(最大250まで)
語数:2969(最大3000まで)
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】黒色腫又はその他の腫瘍を持つ患者の無進行生存期間を示す図である。略語:無進行生存期間(PFS)
【図2A】ソラフェニブによる治療の前後での白金の薬物動態を示す図である。平均値は、少なくともデータの3分の2が定量限界(LOQ)である50μg/Lを超える場合に算出した。平均値の算出において、LOQである50μg/Lより低い濃度はLOQの半分の値に置き換えた。
【図2B】ソラフェニブによる治療の前後でのパクリタキセルの薬物動態を示す図である。平均値は、少なくともデータの3分の2が定量限界(LOQ)である5μg/Lを超える場合に算出した。平均値の算出において、LOQの5μg/Lより低い濃度はLOQの半分の値に置き換えた。
【図3】BRAF変異を有する応答患者からの連続生検を示す図である。
【実施例】
【0199】
要約
目的
本研究は、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わされた、マルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブの、固形腫瘍を有する患者に対する安全性、最大許容投与量、薬物動態、及び抗腫瘍活性を評価したものである。
【0200】
患者と方法
進行癌を有する39人の患者(24人は黒色腫)に対して、100mg、200mg、又は400mgのソラフェニブを一日2回、21日間のサイクルの中の第2日から第19日に経口投与した。すべての患者は、第1日に、血漿中曲線下面積6(AUC6)に対応するカルボプラチン、及び225mg/m2のパクリタキセルの投与を受けた。薬物動態分析は、ソラフェニブに対してはサイクル1の第2日及び第19日に行い、白金及びパクリタキセルに対してサイクル1及び2の第1日に行った。黒色腫患者17人からの前処理腫瘍サンプルを、B‐Raf変異について分析した。
【0201】
結果
ソラフェニブは、評価した投与量において、良好な耐容性を示した。最も多い重度の有害事象は、血液毒性であった(33人の患者においてグレード3又は4、85%)。27人の患者(69%)でソラフェニブ関連の有害事象が発生し、その中で最も多かったのは皮膚科学的事象であった(26人の患者、67%)。カルボプラチン及びパクリタキセルへの曝露が、ソラフェニブによる介入治療によって変化することはなかった。ソラフェニブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンによる治療により、1人が完全寛解を、9人が部分応答を示し、これはすべて黒色腫の患者であった。B‐Raf変異の状態と黒色腫患者の腫瘍の応答との間に明確な関連性は見られなかった。
【0202】
結論
推奨されるフェーズIIでの投与量は、経口で、ソラフェニブが400mgを一日2回、カルボプラチンはAUC6の投与量、及びパクリタキセルは225mg/m2である。黒色腫患者で観察された腫瘍の応答は、さらなる研究を行うに値するものである。
【0203】
緒言
ソラフェニブ(BAY43‐9006;Nexavar(登録商標))は、Raf‐1、野生型B‐Raf、変異体V600EB‐Raf、c‐Kit、Ret、血管内皮増殖因子受容体‐1/‐2/‐3、及び血小板由来増殖因子受容体‐βの活性をインビトロで阻害する強力な経口用マルチキナーゼ阻害薬である1‐3。インビボでは、ソラフェニブは、例えば、結腸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、及び黒色腫など、B‐Raf又はK‐Ras変異を有するいくつかの異種移植モデルで、腫瘍の増殖を阻害することが示されている1。黒色腫の異種移植モデルでは、ソラフェニブは、B‐Rafを標的とする低分子干渉(si)RNAと同様の方法により、V600EB‐Raf活性、MEK及びERKのリン酸化、並びに血管発生を阻害することによって、腫瘍の進行を遅延させた4。単剤によるフェーズI/II試験では、ソラフェニブが、良好な毒性プロフィールを示した5,6。効力の予備分析では、種々の固形腫瘍を持つ患者で、ソラフェニブによる抗腫瘍活性が明らかとなった5,6。さらに、腎細胞癌(RCC)の患者での単剤療法のフェーズIII試験では、ソラフェニブを用いた治療による無進行生存期間のメジアン値が、プラセボの投与を受けた患者の12週間に比べて、24週間であるという結果が示された7。ソラフェニブは現在、米国及び欧州においてRCCの治療薬として認可されている。
【0204】
前臨床試験では、ソラフェニブとその他の抗癌剤との組み合わせにより、ヒトの癌細胞の増殖がインビトロで8、及び、異種移植モデルで9阻害された。ソラフェニブとその他の抗癌剤との組み合わせは、種々の癌を持つ患者への臨床試験で期待の持てる結果をもたらした10‐14。しかし、ソラフェニブを用いた単剤療法による臨床成功例は限定的であり、病勢の安定化は、黒色腫の患者のわずかに16%でしか達成されなかった15。同様に、黒色腫の患者をカルボプラチン又はパクリタキセル単独で治療した場合、得られた全応答率(ORR)は<20%であった16‐22。カルボプラチンとパクリタキセルとの組み合わせによってもORRは改善せず、2つの試験において<10%及び20%であった22,23。後向き分析では、カルボプラチン‐パクリタキセルの組み合わせでの治療を受けた黒色腫の患者の45%で部分応答、又は病勢の安定化が見られ、このことにより、このレジメンが、恐らくは他の治療法との組み合わせによって有望であることが示唆された24。従って、進行黒色腫の患者に対してソラフェニブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンの組み合わせの使用の可能性を考慮することは妥当なことであった。
【0205】
ソラフェニブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンによる併用療法の効果を評価する前に、まずはそのような組み合わせの安全性を評価することが不可欠である。従って、本研究の主たる目的は、進行癌の患者にパクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせてソラフェニブを投与した場合の安全性を評価し、その最大耐容量(MTD)を決定することであった。治療効力に関する予備分析も行った。
【0206】
患者と方法
患者
Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG)一般状態が0又は1であり、病勢が測定可能であり、平均余命が少なくとも12週間である、組織学的又は細胞学的な報告された癌を持つ18歳以上の患者が研究に参加した。MTDの確立後、さらに薬物動態を評価し、ソラフェニブの介入治療によってカルボプラチン及びパクリタキセルへの曝露に著しい違いが生じることを除外するために、さらに追加の患者が参加した。ソラフェニブの製剤を50mgの錠剤から200mgの錠剤に変更するため、追加の患者のコホートが参加し、これらの錠剤が類似の薬物動態を持つことを確認した。患者はすべて、適切な骨髄、肝臓、及び腎臓の機能を有することが条件であった。
【0207】
ニューヨーク心臓病学会分類でクラス2度よりも重いうっ血性心不全を持つことが臨床的に明らかであるか、又は、研究期間中若しくは研究への参加後3週間以内に抗癌化学治療若しくは免疫治療を受けたか、又は研究への参加後6週間以内にマイトマイシンC若しくはニトロソ尿素の投与を受けた患者は除外した。アジュバント化学療法を以前に受けた患者は参加することができた。患者は、転移性疾患に対して最大2回までであれば以前に化学療法レジメンを受けていても良かった(以前に3若しくは4回以上のレジメンを受けている患者は、スポンサーとの協議の後、参加可能であった)。研究期間中及び研究への参加後4週間以内は、治験薬の併用を禁止した。ケトコナゾール、イトラコナゾール、リトナビル、グレープフルーツ製品の使用、及び過去のRas経路阻害薬への曝露は禁止した。妊娠中及び授乳中の女性は除外した。妊娠の可能性のある女性は、治療開始後7日以内に妊娠テストが陰性であること、及び研究期間中は適切な避妊手段を使用することが必要であった。本研究で用いるいずれかの薬剤に対してアレルギーを有することが分かっているか若しくはそう疑われる場合、不適切な状態であるか、又は安全性若しくは研究手順に従う能力が脅かされる得る状態である場合、又は、結果の評価の妨げになる可能性がある場合は、そのような患者は除外した。
【0208】
すべての患者は、本研究への参加に関する文書でのインフォームドコンセントを提出しており、この研究は、ヘルシンキ宣言、米国食品医薬品局の研究用新薬及びバイオ研究に関する規制(the Investigational New Drug and Bioresearch Regulations)、医薬品の臨床試験の実施の基準のガイドライン(the Good Clinical Practice guidelines)、並びに地域の該当するすべての法律、及び規制に準じて実施した。研究のプロトコル及び修正事項は、各施設内審査委員会(Institutional Review Board)又は独立倫理委員会(Independent Ethics Committee)による承認を受けた。
【0209】
研究計画及び治療
これは、二施設、オープンラベル、プラセボ対照なしで、投与量を段階的に増加させる試験であった。第1日に、パクリタキセルを静脈内注入で3時間かけて患者に投与し、続いてカルボプラチンを30分かけて注入した。ソラフェニブは1日2回(bid)、第2日から第19日にかけて経口投与した。第20日及び21日は、いずれの薬剤も投与しなかった。開始時の投与量は、ソラフェニブが1日2回100mg、パクリタキセルが225mg/m2、及びカルボプラチンが曲線下面積6(AUC6)に対応する量とした。患者は、許容されない毒性の発生、腫瘍の進行、又は死亡まで、続けての治療サイクルを受け続けることができた。第6サイクルの化学治療の後にソラフェニブによる単剤治療を続けることができた。
【0210】
用量規制毒性(DLT)は、以下に示すもののいずれか一つとして定めた:少なくとも7日間のグレード4の好中球減少;その期間に関係なく、敗血症、若しくは>38.5℃の熱を伴うグレード4の好中球減少;血小板数<25000/μL;グレード3若しくは4の非血液系毒性(制吐薬に対する抵抗性のない吐き気、若しくは嘔吐、及び引き続いての前投薬によって制御された過敏症反応は除く);並びに、研究者が治験薬に関連すると考え、その記述があてはまるような十分な重度を有する毒性。治療の第一サイクルからのデータを用いてDLTを決定した。次の投与量コホート(dose cohort)は、任意の投与量レベルで参加した患者3人がDLTを経験することなく第21日に到達した場合に開始した。1人の患者がDLTを経験した場合は、3人の患者をそのコホートに追加した。いずれのコホートでも2若しくは3人以上の患者がDLTを経験した場合、MTDを超過したと見なした。投与量コホートは:(i)パクリタキセル225mg/m2、カルボプラチンAUC6、及びソラフェニブ1日2回100mg;(ii)パクリタキセル225mg/m2、カルボプラチンAUC6、及びソラフェニブ1日2回200mg;並びに(iii)パクリタキセル225mg/m2、カルボプラチンAUC6、及びソラフェニブ1日2回400mg、であった。
【0211】
研究アセスメント
治療を開始する前に、各患者に対して、病歴、身体検査、コンピュータ断層撮影法(CT)若しくは磁気共鳴画像法(MRI)を適宜用いた腫瘍測定、ECOG一般状態のアセスメント、構成成分を含む全血球数、血清の化学的性質、尿検査、及び心電図についての評価を行った。これらのアセスメントは、続けて行う各サイクルの投与前にも実施した。身体検査、バイタルサイン、有害事象、併用薬物、及び実験室での試験の結果を含む、ソラフェニブの安全性に関連するすべての観察結果を記録した。全血球数は、1週間に2回測定し、血清の化学的性質の検査は、第一サイクル中に毎週実施し、重度の骨髄抑制が発生した場合は検査回数を増やした。患者のチェックは3週間毎に行い、有害事象発生の場合は必要に応じて行った。腫瘍の応答及び進行は、治療の2サイクル毎のサイクル終了後に、Response Evaluation Criteria In Solid Tumors(RECIST)を用い、画像分析を実施して評価した。サイクル1の第2日及び第19日に血液サンプルを採取し、ソラフェニブの血漿内濃度の分析を行った。さらに、サイクル1及び2の第1日にサンプルを採取し、白金(全白金、及び遊離白金)、パクリタキセル、及び6‐OH‐パクリタキセルの分析を行った。時間0から時間tまでの濃度‐時間曲線下面積(AUC0‐t)の幾何平均及びパーセント変動係数(%CV)、最大血漿中濃度(Cmax)、血漿中の薬物の半減期(t1/2)、並びに薬物が最大血漿中濃度に達するまでの時間(tmax)を含む薬物動態の変数を算出した。
【0212】
B‐Raf及びN‐Ras変異の分析のために、すべての黒色腫患者から腫瘍サンプルを採取するよう試みた。対象領域の少なくとも70%に黒色腫が存在することを確認するために、パラフィン包埋組織又は凍結組織のいずれかより、既に報告されている技術を用いてDNAを単離した25。ゲノムDNAを、ABI3100自動配列決定装置を用いた増幅された対象領域の直接配列決定により、B‐Raf変異についてのスクリーニングにかけた。転移性黒色腫を持つ1人の患者の同意を得て、皮膚病変部位の連続する4mmのパンチ生検を、ソラフェニブ、カルボプラチン、及びパクリタキセルによる併用治療の3週間前と3週間後とに実施した。サンプルはヘマトキシリン及びエオシンの染色によって分析し、サンプルの大部分が黒色腫であることを確認した。MAPキナーゼカスケードの活性化は、免疫ブロット法で確認した26。リン酸化MEK及び全MEKに対する一次抗体は、Cell Signaling、マサチューセッツ州、べバリー、より入手した。西洋わさびペルオキシダーゼ抱合二次抗体はJackson Immunoresearch(ペンシルベニア州、ウエストグローブ)より入手した。
【0213】
結果
患者の性質及びベースライン特性
本試験の投与量増加フェーズ(dose‐escalation phase)に参加した39人の患者のベースライン特性を表1に示す。これらの患者の一次診断は黒色腫(皮膚、n=23;眼、1)、結腸癌(n=4)、NSCLC(n=4)、RCC(n=2)、又はその他の腫瘍(n=5)であった。すべての患者は、少なくとも1回の治験薬の投与を受け、安全性及び包括解析の両方に含まれた。
【0214】
用量規制毒性
1日2回ソラフェニブ100mgを投与された2人の患者は、治療の第一サイクル中にグレード3/4の毒性を示した(1人は、7日間未満の好中球減少でグレード4、もう1人は、ソラフェニブに関連すると考えられる発疹でグレード3)。グレード3の発疹はDLTと見なされたことから、このコホートに4人の患者を追加した。1日2回ソラフェニブ200mgを投与された3人の患者、又は50mgの錠剤でソラフェニブ400mgを投与された最初の3人の患者の中ではDLTは見られなかった。第三のコホートに追加された9人の患者のうち、4人(44%)が治療の第一サイクル中にグレード3又は4の毒性を経験し、その中でDLTと見なされたのは1例(グレード3手足皮膚反応(HFSR))だけであった。第四のコホートを追加し、ここでは、17人の患者が200mgの錠剤を用いて1日2回ソラフェニブ400mgを投与され、この内8人(47%)が治療の第一サイクル中にグレード3の毒性を示し、その内5人(29%)がDLTと見なされた(HFSR4人、及び高血圧1人)。
【0215】
安全性
治療に関連する有害事象がすべての患者で発生した。最もよく見られた個々の薬物関連の有害事象を表2に示す。最も多く見られた有害事象は、血液系(95%)、皮膚系(85%)、疲労感(59%)、感覚性ニューロパシー(59%)、吐き気(56%)、及び関節痛(26%)であった。グレード4の好中球減少は、1日2回100mg投与のコホートの3人(43%)、1日2回200mg投与のコホートの1人(33%)、及び1日2回400mg投与のコホートの20人(69%)で発生した。グレード4の血小板減少の例はなかった。発疹及び足の裏の手掌紅斑が、1日2回100mg、200mg、及び400mg投与のコホートで、それぞれ、71%、33%、及び59%の患者で報告された。1日2回400mgのソラフェニブを投与した患者29人の内、グレード3以上の手足の皮膚の反応が報告されたのは5人(17%)であった。しかし、本研究では、これらの薬物関連の有害事象の投与量に関連しての明らかな増加は見られなかった。
【0216】
効力
RECIST基準で部分応答が9人、完全寛解が1人であり、すべて黒色腫の患者の中からであった(ORR26%)。さらに、19人の患者で病勢が安定し、5人で疾患が進行し、5人が応答アセスメントの前に研究から除外された。最初のアセスメントの時点で、29人の患者(74%)が無進行であった。米国対癌合同委員会(American Joint Committee on Cancer)によるステージ分類、個体群統計特性、及び黒色腫の患者に投与された治療サイクル数を表3に示す。完全寛解が見られたのは、転移性黒色腫を皮下部位、肺、及び副腎に持ち、過去にテモゾロミドを投与されたことのある男性であった。応答期間のメジアン値は467日(範囲:81‐575日)であり、投与レベルによって大きく異なることはなかった。黒色腫を持つ24人の患者の中での無進行生存期間のメジアン値は、他の種類の腫瘍を持つ患者の104日(範囲:34‐286日)と比較して、307日(範囲:27‐658日)であった(図1)。
【0217】
薬物動態
その長い半減期(第19日で23.37‐34.83時間)から想定されるように、サイクル1の第2日から第19日まで、投与量100、200、及び400mgに対してAUC0‐12の平均値がそれぞれ21.28、15.66、及び32.61mg・h/L増加して、すべての投与量においてソラフェニブの著しい蓄積が見られ、これは、Cmaxの増加に反映している(表4)。この増加は、ソラフェニブの投与量を増加させることによる最大曝露への到達時間の短縮を伴った。サイクル1(ソラフェニブなし)、及びサイクル2(18日間のソラフェニブ投与後)における全白金及びパクリタキセルの薬物動態プロフィールに目立った違いはなかった(図2)。平均全白金Cmax、及びAUC0-∞値(%CV)は、ソラフェニブ治療後の各々24.82mg/L(26.39%)及び48.43mg・h/L(13.57%)に対して、サイクル1では各々23.27mg/L(37.33%)及び51.23mg・h/L(18.15%)であった。パクリタキセル及び6‐OH‐パクリタキセルの平均Cmax値は、すべての投与量でのソラフェニブ治療後の各々9.93mg/L(39.40%)及び1.28mg/L(73.98%)に対して、サイクル1では各々9.57mg/L(46.22%)及び1.15mg/L(58.51%)であった。パクリタキセル及び6‐OH‐パクリタキセルの平均AUC0-∞値は、すべての投与量でのソラフェニブ治療後の各々29.20mg・h/L(33.60%)及び3.81mg・h/L(128.82%)に対して、サイクル1では各々31.49mg・h/L(43.01%)及び3.22mg・h/L(74.15%)であった。
【0218】
相関性分析
試験を行った黒色腫患者17人の内11人でV600EB‐Raf変異が検出され(65%)、これらの患者の内6人(55%)で有効な応答を達成した。N‐Rasに変異を有する2人の患者の内の1人が、部分応答を示した(50%)。野生型N‐Ras及びB‐Rafを有する4人の患者の内の3人が(75%)、治療に対して応答を示した。7人の患者からは分析用の腫瘍サンプルを採取できなかった;この7人の患者は全員、有効な応答を示さなかった。皮膚病変部位の連続生検(serial biopsy)を行った患者からの黒色腫サンプルも、V600EB‐Raf変異を有していた。免疫ブロット分析により、3週間の治療の後、MEKタンパク質レベルに変化は見られなかったが、リン酸化MEKは著しく減少したことが明らかとなった(図3)。
【0219】
考察
この投与量増加試験は、カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた場合のソラフェニブの安全性とMTDを調べ、さらなるフェーズII/IIIの評価に適したレジメンを明らかにするよう計画されたものである。本試験では重度の骨髄抑制が見られたものの、その発生率は、同様の投与量のカルボプラチン及びパクリタキセルに関して報告されたものと同程度である27。皮膚系の有害事象(発疹が最も多い)は、ソラフェニブ治療に付随する主な毒性であった。症状は第一サイクル中に始まり、通常、第二サイクルの終わりまでには回復した。ソラフェニブに関連する累積毒性を示す証拠はなかった。神経障害は通常は軽度であり、この投与量及び投与計画でカルボプラチンとパクリタキセルを使用した場合に想定される頻度と重症度で発生した27。さらに、本試験におけるソラフェニブの薬物動態は、過去に報告された結果と一致するものである28。重要なことは、1日2回ソラフェニブ400mgの投与が、白金とパクリタキセルいずれの薬物動態にも、統計的に有意な影響を与えなかったことである。このことは、ソラフェニブと、カルボプラチン及びパクリタキセルの組み合わせとの間には、ソラフェニブの投与をこれらの化学療法薬の投与前少なくとも24時間は休止する場合、相互作用が発生しない可能性があることを示唆している。これらのデータは、ソラフェニブ、カルボプラチン、及びパクリタキセルの全投与量を、このレジメンに沿って安全に投与可能であることを示唆している。
【0220】
黒色腫の患者へのソラフェニブによる単剤治療に関する過去の研究で得られた応答率は低いものであったが、いくつかの臨床試験により、ソラフェニブは、タキサン及び白金含有薬物を含むその他の抗癌剤と組み合わせて用いた場合に効果を示すことが実証されている10‐14。従って、進行黒色腫の患者に対するソラフェニブ、パクリタキセル、及びカルボプラチンの組み合わせの効力を評価することは理にかなったことであった。この組み合わせにより、39人の患者中完全寛解が1人、部分応答が9人、そして合計24人の患者(62%)で病勢の安定又は有効な応答が見られるという、有望な結果が得られた。完全寛解及び部分応答はすべて、これらの患者が化学治療を停止後メジアン値で少なくとも6ヶ月は無進行の状態が維持されたことから、継続して行くと思われる。この10人の患者がすべて黒色腫と診断されていたということは興味深い。この効力分析は予備的なものであるが、カルボプラチンとパクリタキセルの組み合わせを用いた黒色腫の治療に関する過去の臨床成功例の報告が非常に限られているという観点から22‐24、この治療レジメンにソラフェニブを加えたことが、黒色腫の患者で観察された成功の原因であった可能性があると推論することは理にかなっている。これらの結果は、さらに規模の大きい対照研究によって確認する必要があるであろう。
【0221】
黒色腫細胞株及び生検でB‐Raf内の変異の活性化が高頻度であることが報告されており、因果関係を示唆している25,29。しかし、24人の黒色腫患者の内17人で実施することができた変異解析によると、臨床応答とB‐Rafの状態との間に相関関係は見られなかった。活性化された遺伝子産物は、MEK及びERKのリン酸化を引き起こすキナーゼカスケードを誘発し、単に遺伝子の変異というよりも、癌の表現型とより密接に関連している可能性がある。MEKのリン酸化の試験を実施した黒色腫を持つ唯一の患者からのデータは、この仮説を裏付けるものであると思われる。この患者は、治療に対して応答を示し、治療開始後3週間の時点で皮膚病変部位に実施した連続生検でMEKリン酸化の著しい低下が見られた。しかし、これはわずかに1人の患者の結果であり、いかなる結論を導くにしてもさらなるデータを収集する必要があるであろう。B‐Raf変異状態と治療への応答との間の明らかな不一致は、サンプルサイズが小さいことが原因である可能性があり、より大規模な研究によってB‐Rafと治療への応答との間の関係をより詳細に解明できる可能性があることを示唆している。一方、この2つのパラメーター間には単に予測可能な関係が存在しないだけである可能性もある。
【0222】
結論として、この投与量増加試験は、ソラフェニブをカルボプラチン及びパクリタキセルと安全に組み合わせることができることを示している。本試験の結果に基づいて、黒色腫の治療に対するこの薬物の組み合わせのフェーズIIでの推奨投与量は、1日2回の経口投与で400mgのソラフェニブ、AUC6のカルボプラチン、及び225mg/m2のパクリタキセルである。このレジメンは、NSCLC、卵巣癌、及び頭頚部癌での評価においても、カルボプラチン及びパクリタキセルがこれらの種類の腫瘍に対する標準的な治療薬であることから、適したものである。黒色腫の患者で見られた応答は、より大きな患者の集団でのさらなる研究を行うに値するものであり、治療への応答とB‐Raf変異状態との間の関係を解明する一助となり得る。
【0223】
【表9】

*その他の腫瘍に含まれるのは、虫垂壁の粘液性腺癌、遠位食道の腺癌、食道の神経内分泌腫瘍、右肋骨部及び肺のユーイング肉腫、並びに右肩部の基底細胞癌であった。
略語:ECOG、Eastern Cooperative Oncology Group;NSCLC、非小細胞肺癌;SD、標準偏差
【0224】
【表10】

*4×50mg及び2×200mgの錠剤レジメンにおける有害事象発生数の合計
略語:NCI‐CTC、National Cancer Institute‐Common Toxicity Criteria
【0225】
【表11】

【表12】

*患者は眼内黒色腫を有していた。
略語:AJCC M、米国対癌合同委員会(American Joint Committee on Cancer)転移分類;CR、完全寛解;ECOG、Eastern Cooperative Oncology Group;F、女性;M、男性;N/A、該当せず;NE、評価できず;WT、野生型;PD、進行性疾患;PR、部分応答;SD、病勢安定
【0226】
【表13】

略語:AUC0‐12、0時間から12時間の間の濃度‐時間曲線下面積;Cmax、最大血漿中濃度;CV、変動係数;t1/2、血漿中の薬物の半減期
【0227】
【表14】

【表15】

【表16】

【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の癌の治療に対して治療的に有効な組み合わせであって:
(1)少なくとも1種類の、式(I)
【化1】

(式中、
Qは、‐C(O)Rxであり、
xは、ヒドロキシ、C1‐4アルキル、C1‐4アルコキシ、又はNRabであり、
a及びRbは、独立して:
a)水素、
b)‐ヒドロキシ
‐C1‐4アルコキシ、
‐ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、イソキノリン、若しくはキノリンであるヘテロアリール基;
‐ピペラジン若しくはピペリジンであるヘテロ環基;
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキル基で置換されていてもよいアミノ(‐NH2)、若しくは、
‐フェニル、
で任意に置換されていてもよいC1‐4アルキル、又は
c)‐ハロゲン、若しくは、
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキル基で置換されていてもよいアミノ(‐NH2)、
で任意に置換されていてもよいフェニルであり、又は
Aは、式1xxのフェニル、式1xのピリジル、又は式1yのナフチルであり:
【化2】

Bは、式2aのフェニル、又は式2bのナフチルであり:
【化3】

Lは、‐S‐又は‐O‐である架橋基であり;
mは、0、1、2、又は3であり、
pは、0、1、2、3、又は4であり、
nは、0、1、2、3、4、5、又は6であり、
1は、各々独立して、ハロゲン、C1‐5ハロアルキル、NO2、C(O)NR45、C1‐6アルキル、C1‐6ジアルキルアミン、C1‐3アルキルアミン、CN、アミノ、ヒドロキシ、又はC1‐3アルコキシであり;
2は、各々独立して、C1‐5アルキル、C1‐5ハロアルキル、C1‐3アルコキシ、N‐オキソ、又はN‐ヒドロキシであり、
3は、各々独立して、ハロゲン、R4、OR4、S(O)R4、C(O)R4、C(O)NR45、オキソ、シアノ、又はニトロ(NO2)であり、そして
4及びR5は、独立して、水素、C1‐6アルキル、及び過ハロゲン化までであるハロゲン化C1‐6アルキルである)の置換ジアリールウレア、又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、ジアステレオ異性体、若しくは薬理学的に許容される塩;
(2)少なくとも1種類のタキサン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、及び
(3)少なくとも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、
を含んでなる組み合わせ。
【請求項2】
(1)式Aの4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドである置換ジアリールウレア、
【化4】

又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、若しくは薬理学的に許容される塩と、
(2)パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、アブラキサン(商標)、若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩である少なくも1種類のタキサンと、
(3)カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、オキサプラチン(エロキサチン(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩である少なくも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤と、
を含む非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のための治療的有効量である請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
(a)4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}‐カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩である置換ジアリールウレアの薬理学的に許容される塩と、
(b)パクリタキセル若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩と、
(c)カルボプラチン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩と、
を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のための治療的に有効な請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記成分(1)、(2)、及び(3)を、これらを必要とする患者へ
(a)同一の製剤として、
(b)同一の投与経路を用いた別々の製剤として、又は、
(c)異なる投与経路を用いた別々の製剤として、
投与するために適応された、請求項1、2、又は3に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記成分(1)、(2)、及び(3)を、これらを必要とする患者へ、経口送達により、及び/又は、静脈内注射若しくは注入、又は筋肉内、皮下、若しくは非経口の投与経路により投与するために適応された、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項6】
(1)1日あたり1若しくは2回以上、最大で連続28日間にわたり、少なくとも1種類の置換ジアリールウレア、又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、ジアステレオ異性体、若しくは薬理学的に許容される塩を、
(2)少なくとも1種類のタキサン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、及び、
(3)少なくも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩の、同一の期間にわたる、同時又は間欠的な投与と共に、
これらを必要とする患者へ投与するように適応された、請求項1、2、3、4、又は5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
以下に示す薬剤:
(1)全体重に対して約0.1乃至約300mg/kgの範囲内の投与量の、少なくとも1種類の置換ジアリールウレア化合物、又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、ジアステレオ異性体、若しくは薬理学的に許容される塩、
(2)患者の表面積に対して約10乃至約300mg/m2の範囲の投与量の、少なくとも1種類のタキサン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、及び、
(3)患者の表面積に対して約100乃至約500mg/m2の範囲内の、少なくも1種類の白金錯体若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩を、
これらを必要とする患者へ投与するように適応された、請求項1、2、3、4、5、又は6に記載の組み合わせ。
【請求項8】
式IのR1が、塩素又はフッ素であり;
式IのR2が、メチル又はトリフルオロメチルであり;
式IのR3が、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert‐ブチル、塩素、フッ素、臭素、シアノ、メトキシ、アセチル、トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメトキシ、又はトリフルオロメチルチオであり;
式IのAが、3‐tert‐ブチルフェニル、5‐tert‐ブチル‐2‐メトキシフェニル、5‐(トリフルオロメチル)‐2‐フェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4クロロフェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4‐ブロモフェニル、又は5‐(トリフルオロメチル)‐4‐クロロ‐2‐メトキシフェニル;であり、そして
式IのBが:
【化5】

である、請求項1、4、5、6、又は7に記載の組み合わせ。
【請求項9】
式IのR3が、塩素、トリフルオロメチル、tert‐ブチル、又はメトキシであり、そしてBが、フェニレン、フルオロ置換フェニレン、又はジフルオロ置換フェニレンである、請求項1、4、5、6、7、又は8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
式Iの置換ジアリールウレアが、式Xの構造を有し、
【化6】

ここで、Aが請求項1の式Iで定義されるものである、請求項1、4、5、6、7、8又は9に記載の組み合わせ。
【請求項11】
4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)‐アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩の少なくとも80%が、安定な多形体Iとして存在する、請求項3、4、5、6、又は7に記載の組み合わせ。
【請求項12】
非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、前立腺癌、白血病、肝細胞癌、腎臓癌、頭頚部癌、神経膠腫、肺癌、膵臓癌、及び卵巣癌を治療するためのキットであって:
(1)少なくとも1種類の、式(I):
【化7】

(式中、
Qは、‐C(O)Rxであり、
xは、ヒドロキシ、C1‐4アルキル、C1‐4アルコキシ、又はNRabであり、
a及びRbは、独立して:
a)水素;
b)‐ヒドロキシ
‐C1‐4アルコキシ、
‐ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、イソキノリン、若しくはキノリンであるヘテロアリール基;
‐ピペラジン若しくはピペリジンであるヘテロ環基;
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキル基で置換されていてもよいアミノ(‐NH2)、若しくは、
‐フェニル、
で任意に置換されていてもよいC1‐4アルキル、又は、
c)‐ハロゲン、若しくは、
‐任意に、1若しくは2個のC1‐4アルキル基で置換されていてもよいアミノ(‐NH2)、
で任意に置換されていてもよいフェニルであり、
Aは、式1xxのフェニル、式1xのピリジル、又は式1yのナフチルであり:
【化8】

Bは、式2aのフェニル、又は式2bのナフチルであり:
【化9】

Lは、‐S‐又は‐O‐の架橋基であり;
mは、0、1、2、又は3であり、
pは、0、1、2、3、又は4であり、
nは、0、1、2、3、4、5、又は6であり、
1は、各々独立して、ハロゲン、C1‐5ハロアルキル、NO2、C(O)NR45、C1‐6アルキル、C1‐6ジアルキルアミン、C1‐3アルキルアミン、CN、アミノ、ヒドロキシ、又はC1‐3アルコキシであり;
2は、各々独立して、C1‐5アルキル、C1‐5ハロアルキル、C1‐3アルコキシ、N‐オキソ、又はN‐ヒドロキシであり、
3は、各々独立して、ハロゲン、R4、OR4、S(O)R4、C(O)R4、C(O)NR45、オキソ、シアノ、又はニトロ(NO2)であり、そして
4及びR5は、独立して、水素、C1‐6アルキル、及び過ハロゲン化までであるハロゲン化C1‐6アルキルである)の置換ジアリールウレア、又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、ジアステレオ異性体、若しくは薬理学的に許容される塩;
(2)少なくとも1種類のタキサン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、及び
(3)少なくとも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩、
を含むキット。
【請求項13】
(1)式Aの4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドである置換ジアリールウレア、
【化10】

又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、若しくは薬理学的に許容される塩と、
(2)パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、アブラキサン(商標)、若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩である少なくも1種類のタキサンと、
(3)カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、オキサプラチン(エロキサチン(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩である少なくも1種類の白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤とを、
別々の容器に、治療的有効量の別々の投与量で含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
(a)4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩である置換ジアリールウレアの薬理学的に許容される塩と、
(b)パクリタキセル若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩と、
(c)カルボプラチン若しくはその立体異性体、その前駆体(プロドラッグ)、又はその薬理学的に許容される塩とを、
別々の容器に、治療的有効量の別々の投与量で含む、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
非小細胞肺癌の治療のための、請求項12、13、又は14に記載のキット。
【請求項16】
前記成分が、単一の容器内の単一の医薬製剤内に含まれる、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
前記成分が、別々の容器内の別々の医薬製剤内に含まれる、請求項12に記載のキット。
【請求項18】
式IのR1が、塩素又はフッ素であり;
式IのR2が、メチル又はトリフルオロメチルであり;
式IのR3が、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert‐ブチル、塩素、フッ素、臭素、シアノ、メトキシ、アセチル、トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメトキシ、又はトリフルオロメチルチオであり;
式IのAが、3‐tert‐ブチルフェニル、5‐tert‐ブチル‐2‐メトキシフェニル、5‐(トリフルオロメチル)‐2‐フェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4クロロフェニル、3‐(トリフルオロメチル)‐4‐ブロモフェニル、又は5‐(トリフルオロメチル)‐4‐クロロ‐2‐メトキシフェニル;であり、そして
式IのBが:
【化11】

である、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
式IのR3が、塩素又はトリフルオロメチルであり、Bが、フェニレン、フルオロ置換フェニレン、又はジフルオロ置換フェニレンである、請求項12に記載のキット。
【請求項20】
式Iの置換ジアリールウレアが、式Xの構造を有し、
【化12】

ここで、Aが、式Iで定義されるものである、請求項12に記載のキット。
【請求項21】
4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩の少なくとも80%が、安定な多形体Iとして存在する、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項22】
(1)置換ジアリールウレア、又はその多形体、溶媒和物、水和物、代謝物、プロドラッグ、若しくは薬理学的に許容される塩の投与量が50乃至600mgであり、
(2)タキサン若しくはその立体異性体、前駆体(プロドラッグ)、又は薬理学的に許容される塩の投与量が約30乃至200mg/m2であり、そして
(3)白金錯体抗悪性腫瘍核酸結合剤若しくはその立体異性体、前駆体(プロドラッグ)、又は薬理学的に許容される塩の投与量が100乃至500mg/m2である、請求項12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21に記載のキット。
【請求項23】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせと、少なくとも1種類の薬理学的に許容される担体とを含む、哺乳類の癌を治療するための医薬組成物。
【請求項24】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせと、少なくとも1種類の薬理学的に許容される担体とを含む、非小細胞肺癌を治療するための医薬組成物。
【請求項25】
哺乳類の癌を治療するための薬物の製造における、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせの使用方法。
【請求項26】
非小細胞肺癌を治療するための薬物の製造における、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせの使用方法。
【請求項27】
非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、前立腺癌、白血病、肝細胞癌、腎臓癌、頭頚部癌、神経膠腫、肺癌、膵臓癌、及び卵巣癌を治療するための請求項12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、又は22に記載のキットの製造における、4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩の使用方法。
【請求項28】
非小細胞肺癌(NSCLC)を治療するための請求項12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、又は22に記載のキットの製造における、4‐{4‐[({[4‐クロロ‐3‐(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]フェノキシ}‐N‐メチルピリジン‐2‐カルボキシアミドのトシレート塩の使用方法。
【請求項29】
治療されるべき哺乳類の癌が、非小細胞肺癌、並びに結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、頭頚部癌、膵臓癌、及び卵巣癌である、請求項1、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせ。
【請求項30】
治療されるべき哺乳類の癌が、
(a)小細胞肺癌、非小細胞癌、気管支腺腫、胸膜肺芽腫;
(b)脳幹及び視床下部の(hypophtalmic)神経膠腫、小脳及び大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉、松果体の腫瘍;
(c)子宮内膜癌、子宮頸部癌、卵巣癌、膣癌、外陰部癌、子宮骨肉腫;
(d)肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、唾液腺癌;
(e)肝細胞癌、胆管癌、及び混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma);
(f)膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎臓腫瘍、腎盂癌、尿管癌、尿道癌;
(g)扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、非黒色腫皮膚癌;
(h)眼球内黒色腫、網膜芽腫;
(i)喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、口咽頭癌、口唇及び口腔癌;
(j)精巣癌、前立腺癌;
(k)AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、中枢神経系のリンパ腫;
(l)神経膠芽腫、血液系腫瘍、レルミット・デュクロ病、悪性神経膠腫、多発性骨髄腫、骨髄化生、骨髄異形成症候群;
(m)軟部肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫;
(n)急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及びヘアリーセル白血病、
である、請求項1、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載の組み合わせ。
【請求項31】
治療されるべき哺乳類の癌が、非小細胞肺癌、並びに結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、頭頚部癌、膵臓癌、及び卵巣癌である、請求項24に記載の使用方法。
【請求項32】
治療されるべき哺乳類の癌が、
(a)小細胞肺癌、非小細胞癌、気管支腺腫、胸膜肺芽腫;
(b)脳幹及び視床下部の(hypophtalmic)神経膠腫、小脳及び大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉、松果体の腫瘍;
(c)子宮内膜癌、子宮頸部癌、卵巣癌、膣癌、外陰部癌、子宮骨肉腫;
(d)肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、唾液腺癌;
(e)肝細胞癌、胆管癌、及び混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma);
(f)膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎臓腫瘍、腎盂癌、尿管癌、尿道癌;
(g)扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、非黒色腫皮膚癌;
(h)眼球内黒色腫、網膜芽腫;
(i)喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、口咽頭癌、口唇及び口腔癌;
(j)精巣癌、前立腺癌;
(k)AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、中枢神経系のリンパ腫;
(l)神経膠芽腫、血液系腫瘍、レルミット・デュクロ病、悪性神経膠腫、多発性骨髄腫、骨髄化生、骨髄異形成症候群;
(m)軟部肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫;
(n)急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及びヘアリーセル白血病、
である、請求項24に記載の使用方法。
【請求項33】
治療されるべき哺乳類の癌が、非小細胞肺癌、並びに結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、頭頚部癌、膵臓癌、及び卵巣癌である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項34】
治療されるべき哺乳類の癌が、
(a)小細胞肺癌、非小細胞癌、気管支腺腫、胸膜肺芽腫;
(b)脳幹及び視床下部の(hypophtalmic)神経膠腫、小脳及び大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉、松果体の腫瘍;
(c)子宮内膜癌、子宮頸部癌、卵巣癌、膣癌、外陰部癌、子宮骨肉腫;
(d)肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、唾液腺癌;
(e)肝細胞癌、胆管癌、及び混合型肝細胞胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma);
(f)膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎臓腫瘍、腎盂癌、尿管癌、尿道癌;
(g)扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、非黒色腫皮膚癌;
(h)眼球内黒色腫、網膜芽腫;
(i)喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、口咽頭癌、口唇及び口腔癌;
(j)精巣癌、前立腺癌;
(k)AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、中枢神経系のリンパ腫;
(l)神経膠芽腫、血液系腫瘍、レルミット・デュクロ病、悪性神経膠腫、多発性骨髄腫、骨髄化生、骨髄異形成症候群;
(m)軟部肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫;
(n)急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及びヘアリーセル白血病、
である、請求項23に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538317(P2009−538317A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512162(P2009−512162)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/012477
【国際公開番号】WO2007/139930
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508130960)バイエル ヘルスケア リミティド ライアビリティ カンパニー (6)
【Fターム(参考)】