発光センサ
本発明は、少なくとも一つのチャンバと、少なくとも第1の導電格子により形成される少なくとも一つの光学フィルタとを有する発光センサであって、前記少なくとも第1の導電格子は複数のワイヤを有し、前記少なくとも第1の導電格子の前記複数のワイヤのうちの少なくとも一つは、当該発光センサの少なくとも一つのチャンバの温度を制御するための温度制御装置にリンクされている、発光センサに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光バイオセンサ、発光化学センサなどの発光センサと、斯様な発光センサを製造するための方法と、斯様な発光センサを使用して、サンプル流体の温度を決定し、及び/又は加熱しながら同時に、サンプル流体にある一つ以上の発光団により生成された発光放射線の検出のための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光などの発光解析は、バイオ化学及び分子バイオ物理学の分野において最も広汎に使用される技術の一つである。多くの現在のバイオ化学プロトコルが蛍光などの発光ラベルをすでに組み込んでいるので、蛍光などの発光検出方法は、非常に魅力的である。したがって、チップベースの分析は、バイオ化学を変更することなく、存在するプロトコルに容易に組み込まれ得る。蛍光などの発光検出は、表面上の静止した又はハイブリッドの(ラベル付けされた)核酸の、染色した細胞の、及びラベル付けされたたんぱく質の、DNA増幅の間光学的ビーコンの蛍光検出のような、解析チップ上のさまざまなアプリケーションで使用できる。サンガーシークエンシングのような反応及びポリメラーゼ連鎖反応は、発光ラベリング方法で用いられるように適合された。
【0003】
一般に、図1に示すように、バイオチップのキャリア2に供された発光サンプル1から発する発光信号の検出が、図1に示されるような光学検出システム10を用いてなされてもよく、当該システム10は、光源3、発光フィルタ4及び励起フィルタ5のようなスペクトル光学フィルタ、及び存在する発光団の量を計る卓上/ラボ用マシンにローカライズされたCCDカメラ7のような光学センサを有してもよい。光学検出システム10は、発光サンプル1と発光フィルタ4との間にレンズ6を更に有する。
【0004】
卓上/ラボ用マシンに用いられる斯様な光学検出システム10は、発光信号を取得し解析するために、高額の光学部品を通常要求する。励起スペクトラム(吸収)と発光スペクトラム(発光)との間のシフト(いわゆるストークスシフト)がしばしば小さい(<50nm)ので、特に、鋭い波長カットオフを持つ高い光学フィルタ(すなわち、高い選択フィルタ)が、これら光学システムの要求される感度を得るために用いられる。加えて、発光強度は、典型的には励起強度よりも106のオーダーで小さい。結局、発光に基づく光学システムにおいて背景信号の主な源は、前記励起光の部分を検出することにより生じる。
【0005】
バイオテクノロジーアプリケーションでは、温度制御は極めて重要であり、制御された加熱が、固形試薬の混合、溶解のような機能的能力、たんぱく質及び核酸の熱変性、試料内の分子の強化された拡散率、並びに表面結合係数の変更を提供する。DNA増幅技術、リガンド結合、酵素反応、拡張、転写及び交配反応を含む多くの反応が、最適化され、制御された温度で概して実施される。更に、温度制御は、熱的に動作される可逆的又は不可逆的弁及びポンプを操作するのに必須である。
【0006】
再生可能で正確な温度制御を必要とする生化学プロセスの主要な例は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用して、DNA増幅のための高効率の温度サイクルである。PCRは、92℃−96℃での変性ステップ、37−65℃でのアニールステップ及び〜72℃での延伸ステップである通常3つの反応ステップの周期的繰り返しからなる。PCRは、短時間内に特定のDNAターゲットシーケンスの何百万もの同一のコピーを作ることができ、特定の遺伝子配列を識別し検出するため、多くの診断、環境及び法医学の研究所において、日常的に使用される工程となった。高速の熱伝達は効率的なPCRを行うために非常に重要であり、これは、温度制御をPCRシステムにおける本質的な特徴となす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リアルタイムPCRにおける検出感度は、発光信号と励起バックグラウンドとの比によって主に決定される。検出器に到達する入射励起光の一部によって事前に主に生じるバックグラウンド信号は、高い検出感度を持つために、できる限り抑制されるべきである。更に、PCRのようなプロセスはしばしば再現可能で正確な温度制御を必要とするので、これらのプロセスが実施される装置は、例えば抵抗のような制御可能な加熱手段の存在を要求する。このことは、当該装置に加えられるべき追加の部品を必要とし、よって追加の処理ステップを必要とするので、斯様な装置のコストを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、良好な発光センサ、斯様な発光センサを製造するための良好な方法、サンプル流体の温度を同時に加熱及び/又は決定する一方で、前記サンプル流体内の一つ以上の発光体により生成される発光放射線の検出のための方法を提供することである。
【0009】
上記目的は、本発明による方法及び装置により達成される。
【0010】
第1の態様では、本発明は、少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)により形成される少なくとも一つの光学フィルタを有する発光センサを提供する。このフィルタは、好ましくは偏光フィルタリングに基づいている。第1の態様における本発明は、少なくとも一つのチャンバ(22)と、少なくとも第1の導電格子(11)により形成される少なくとも一つの光学フィルタとを有する発光センサであって、前記少なくとも第1の導電格子(11)は複数のワイヤ(12)を有し、前記少なくとも第1の導電格子(11)の前記複数のワイヤ(12)のうちの少なくとも一つは、当該発光センサの少なくとも一つのチャンバ(22)の温度を制御するための温度制御装置にリンクされている、発光センサに関する。本発明の実施例による発光センサは、温度制御電極及び高品質の光学フィルタ両方が導電格子内で組み合わせられるので、低コストである。両方とも単一の簡単なプロセスで提供できる。更に、導電格子、例えばワイヤ・グリッドは、例えばリアルタイムPCRでのサンプルの高温度一様性を得ることができる一様な加熱を供給できる。反応チャンバの局所的加熱のための可能性も生じる。
【0011】
本発明の実施例による発光センサは、少なくとも第2の導電格子により形成される少なくとも第2の光学フィルタを更に有する。斯様な実施例は、発光放射線の少なくとも一部が検出器に到達することを許容する一方で、検出器への入射放射線を抑制できる。斯様な発光センサでは、第1の導電格子は第1のタイプの偏光透過を持ち、第2の導電格子は第2のタイプの偏光透過を持ち、第1及び第2のタイプの偏光透過は、互いに異なる。このように、発光センサに統合された交差偏光器のための少なくとも2つの導電格子は、発光放射線が検出器に到達することを許容する一方で、バックグラウンド信号の良好な抑制ができる。
【0012】
第2の導電格子は複数のワイヤを有する。第2の導電格子の少なくとも一つのワイヤは温度制御電極として機能するのに適している。これは、前記少なくとも第1の導電格子だけがあるときに対して、改善された局所的加熱を可能にする。
【0013】
本発明の実施例による発光センサは、基板の表面により形成される第1の側を持つ反応チャンバを有し、少なくとも一つの導電格子が、前記反応チャンバの第1の側に形成される。
【0014】
本発明の実施例による発光センサは、基板に略平行であって、前記基板から離れて位置する蓋により形成される第2の側を持つ反応チャンバを有する。少なくとも一つの導電格子が前記反応チャンバの第2の側に形成される。
【0015】
本発明の実施例による発光センサは、発光放射線を検出するための検出器を更に有する。前記発光放射線が、励起放射線の照射を受けた前記発光センサの反応チャンバにある発光団により生成される。
【0016】
検出器は、発光センサの外部にあってもよく、すなわち、検出器は統合されていない検出器でもよい。検出器は、励起放射線が発光センサに入射する当該発光センサと同じ側に位置してもよい。あるいは、検出器は発光センサの第1の側に位置され、励起放射線が前記発光センサの第2の側で前記発光センサに入力し、すなわち励起放射線源が前記発光センサの第2の側に位置し、第1及び第2の側は、前記反応チャンバに関して互いに対向する。
【0017】
本発明の実施例において、発光センサは、当該発光センサと検出器との間に検出器フィルタを更に有する。これは、入射励起放射線が前記検出器に到達することを防止する。
【0018】
本発明の実施例による代替の実施例では、検出器は発光センサに統合されている。これは、検出される発光放射線の強度が強められるので有益である。更に、コストが低減できる。この実施例は、発光放射線のオンチップ検出が検出の速度及び信頼性を改善するので、携帯センサに対して特に有益である。
【0019】
本発明の実施例による発光センサは、温度制御装置とともに機能するのに適する少なくとも一つの導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するための駆動手段を更に有する。
【0020】
本発明の実施例による発光センサでは、前記少なくとも一つのワイヤは、ヒータの一部である。
【0021】
本発明の実施例による発光センサでは、前記少なくとも一つのワイヤは、温度センサの一部である。
【0022】
本発明の実施例による発光センサは、好ましくは複数の第1の導電格子を有し、当該複数の第1の導電格子は行及び列に論理的に配されてもよい。用語「列」及び「行」は、一緒にリンクされたアレイのセットを記述するために用いられる。このリンクは、行及び列の直交座標アレイの形式でもよいが、本発明はこれに限定されない。当業者により理解されるように、行及び列は容易に交換可能であり、これらの用語は互いに交換可能であることが、本明細書の意図するところである。また、直交座標形式ではないアレイも考慮され、本発明の範囲に含まれる。したがって、「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を促すために、ここに「論理的に配された行及び列」と呼ばれる。これにより、導電格子のセットは、形而上的にリニアに交差する態様で共にリンクされるが、当該物理的又は形而上的配列は必ずしも必要ではない。前記複数の導電格子は、アレイの形式で配されてもよい。本発明の実施例によると、行及び列は、熱処理アレイを形成するマトリクスに配されてもよい。
【0023】
発光センサは、マトリクスの導電格子をアドレスするための行選択電極及び列選択電極を更に有する。
【0024】
本発明の実施例によると、一つ以上の上記導電格子は、ワイヤ・グリッドでもよい。
【0025】
本発明の実施例による発光センサは、好ましくは、例えばa−Si、LTPS、有機TFT等のような広範囲の電子技術を用いて、例えば薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、MIMダイオードのような能動スイッチング素子を更に有する。これら能動スイッチング素子は、電気的制御信号、動作信号(例えば加熱電流)向けのため、又は電流源として(以下に詳述)働くために用いられる。
【0026】
本発明の実施例による発光センサは、発光バイオセンサ、例えば蛍光バイオセンサでもよい。
【0027】
第2の態様において、本発明は、少なくとも一つの発光団により生成される発光放射線の検出のための発光センサを製造する方法を提供する。当該発明は、好ましくは偏光ベースの少なくとも一つの光学フィルタとして、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子を供給するステップを有し、前記少なくとも第1の導電格子の前記ワイヤの少なくとも一つは前記温度制御装置にリンクされる。この製造方法は、温度制御電極及び高品質の光学フィルタ両方が結合され、単一の単純なプロセスで供給できるので、低コストである。
【0028】
本発明の実施例による方法は、少なくとも第2の導電格子を供給することにより、少なくとも第2の光学的偏光に基づくフィルタを供給するステップをさらに有する。
【0029】
前記少なくとも第1の導電格子及び/又は前記少なくとも第2の導電格子は、ワイヤ・グリッドでもよい。
【0030】
本発明の実施例による方法では、少なくとも第1の導電格子を供給するステップは、第1のタイプの偏光伝送を示す導電格子を供給することにより実施され、少なくとも第2の導電格子を供給するステップは、第2のタイプの偏光伝送を示す導電格子を供給することにより実施され、第1及び第2のタイプの偏光伝送は、互いに異なる。例えばワイヤ・グリッドのような前記少なくとも2つの導電格子は、このように発光センサに統合される交差偏光子を形成する。これは、発光放射線が検出器に到達することを許容する一方で、バックグラウンド信号の良好な抑制を提供する。
【0031】
本発明の実施例による方法は、発光放射線を検出するための検出器を供給するステップを更に有する。検出器を供給する斯様なステップは、発光センサの基板に検出器を供給することにより実施される。このようにして、検出される発光放射線の強度が強められる。更に、別個の検出器が供給される必要がないので、コストが低減できる。この実施例は、発光放射線のオンチップ検出が検出のスピード及び信頼性を改善するので、携帯センサに対して有益である。
【0032】
本発明の実施例による方法では、少なくとも第1の導電格子を供給するステップは、行及び列に論理的に配された複数の導電格子を供給することにより実施される。用語「列」及び「行」は、一緒にリンクされたアレイのセットを記述するために用いられる。このリンクは、行及び列の直交座標アレイの形式でもよいが、本発明はこれに限定されない。当業者により理解されるように、行及び列は容易に交換可能であり、これらの用語は互いに交換可能であることが、本明細書の意図するところである。また、直交座標形式ではないアレイも考慮され、本発明の範囲に含まれる。したがって、「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を促すために、ここに「論理的に配された行及び列」と呼ばれる。これにより、導電格子のセットは、形而上的にリニアに交差する態様で共にリンクされるが、当該物理的又は形而上的配列は必ずしも必要ではない。本発明の実施例によると、行及び列は、熱処理アレイを形成するマトリクスに配されてもよい。
【0033】
第3の態様によると、本発明は、サンプル流体を加熱しながら同時に前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法を提供する。当該方法は、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、特定のタイプの発光放射線を選択的に伝送し、前記サンプル流体を少なくとも局地的に加熱するため少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するため、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子により形成された少なくとも一つの光学フィルタを使用するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する。本発明の実施例では、検出される発光放射線は、導電格子により伝送される発光である。本発明の他の実施例では、検出される発光放射線は、発光団から直接放射する発光と組み合わされた、導電格子により反射される発光である。本発明のこの態様の利点は、付加的外部加熱手段が要求されないということである。均一な加熱が可能である。
【0034】
本発明の第3の態様の実施例による方法では、導電格子の全てのワイヤは同時に駆動され、当該ワイヤの駆動は、電流をこれらワイヤに流すことにより実施される。あるいは、ワイヤの駆動は、これらワイヤの端部をあらかじめ決められた電位に置くことにより実施される。
【0035】
本発明の第3の態様の実施例による方法では、導電格子の全てのワイヤは駆動可能であり、これらのワイヤは次々とセグメントにおいて駆動される。
【0036】
本発明の実施例による方法は、導電格子の少なくとも一つのワイヤにわたって電圧を測定し、前記少なくとも一つのワイヤにわたって測定された電圧及び前記少なくとも一つのワイヤを通って流れる電流から前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定し、前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化からサンプル流体の温度の変化を決定することによりサンプル流体の温度の変化を決定するステップを有する。
【0037】
他の態様では、本発明は、サンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方で、サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法を提供する。当該方法は、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、光学的に偏光ベースのフィルタの少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定するステップと、抵抗の前記変化から前記サンプル流体の温度の変化を決定するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する。
【0038】
抵抗の変化を決定するステップは、前記少なくとも一つのワイヤに電流を送ることによって少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するステップと、前記少なくとも一つのワイヤにわたる電圧の変化を測定するステップと、前記少なくとも一つのワイヤに送られる電流及び前記少なくとも一つのワイヤにわたって測定された電圧から、前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定するステップとを有する。
【0039】
本発明の実施例の方法によるサンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方、前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法において、導電格子は複数のワイヤを有し、前記導電格子の全てのワイヤは同時に駆動され、当該ワイヤの駆動は電流をワイヤに流すことにより実施される。
【0040】
本発明の実施例による方法によるサンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方、前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための代替の方法において、前記導電格子の全てのワイヤは次々にセグメントにおいて駆動される。
【0041】
他の態様によると、本発明は、発光センサの導電格子の少なくとも一つのワイヤの制御された駆動のための制御器を有する。前記制御器は、導電格子の少なくとも一つのワイヤに電流を流すための少なくとも一つの電流源を制御するための制御ユニットを有する。
【0042】
本発明は更に、計算手段で実行されるとき、本発明の方法の実施例の何らかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを提供する。
【0043】
本発明は更に、本発明のコンピュータプログラムを格納するためのマシン可読データ格納装置を提供する。
【0044】
本発明は、ローカル又はワイドエリアの遠隔通信ネットワークにわたって、本発明のコンピュータプログラムを送信することも提供する。
【0045】
好ましくは偏光ベースのフィルタとセンサ内の温度制御電極とを一つに組み合わせることが、本発明の実施例による発光センサの利点であり、これにより斯様なセンサの製造コストを低減する。
【0046】
センサ内にあるサンプル流体の均一な加熱を提供することが、本発明の実施例による発光センサの他の利点である。
【0047】
局所的な加熱が提供できることが、本発明の実施例による発光センサの更に他の利点である。
【0048】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に設定されている。従属請求項内の特徴は、これら請求項内で明瞭に設定されたものだけでなく適当に、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせられてもよい。
【0049】
本発明の上記及び他の特長、特徴及び利点は、本発明の原理を例示として示す添付図面と併せた以下の詳細な記述から明らかとなるであろう。この記述は、本発明の範囲を制限することなく例示としてのみ与えられる。以下に引用される参照図面は、添付された図と呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、発光信号を検出するための光学セットアップを図式的に例示する。
【図2】図2は、ワイヤ・グリッド偏光子の概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図4】図4は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図5】図5は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図6】図6は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図7】図7は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図8】図8は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図9】図9は、本発明の異なる実施例による熱制御電極として、ワイヤ・グリッドの使用を図式的に例示する。
【図10】図10は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図11】図11は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図12】図12は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図13】図13は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッド・ヒータのアドレス指定を図式的に例示する。
【図14】図14は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッドを有する、アクティブ・マトリックス原理に基づいた熱処理アレイを例示する。
【図15】図15は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッドを有する、アクティブ・マトリックス原理に基づいた熱処理アレイの一つのセルを例示する。
【図16】図16は、定量的リアルタイムPCR実験のための蛍光信号対サイクル数を例示する。
【図17】図17は、本発明の実施例による、発光センサとの使用のためのシステム・コントローラを図式的に例示する。
【図18】図18は、本発明の実施例による方法を実行するために使用できる処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
異なる図において、同じ参照符号は、同じであるか類似した素子である。
【0052】
本発明は、具体例及び図面を参照して記述されるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、クレームによってのみ限定されるものである。請求項の何れの参照符号も、範囲を制限するものとして解釈されない。記載されている図面は、単なる概略図であって、非限定的である。図において、素子のいくつかのサイズは、誇張されていて、説明の便宜上スケール通りに描かれてはいない。
【0053】
「を有する」用語が明細書の説明及び請求項において使われる所では、この用語は他の素子又はステップを除外するものではない。例えば「a」などの単数名詞で呼ばれて一般名詞等が用いられる時、特に述べない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0054】
さらにまた、明細書及び請求項の第1、第2、第3等の用語は、同様の素子を区別するために使われるものであって、時間的にも空間的にもランキング的にも又は他の態様のための何れにおいても順序を記述するためのものでは必ずしもない。よく使用される用語は適当な状況下で交換可能であり、本願明細書に記載されている本発明の実施例が本願明細書において記載され例示されている以外の別のシーケンスで動作できることは、理解されるべきである。
【0055】
さらに、明細書及び請求項の「一番上の」「上の」「下の」等の用語は、記述目的のために使用され、相対的位置を記載するために必ずしもあるというわけではない。よく使用される用語は適当な状況下で交換可能であり、本願明細書に記載されている本発明の実施例が本願明細書において記載され例示されている以外の別のオリエンテーションで動作できることは、理解されるべきである。
【0056】
この明細書全体にわたる「一つの実施例」又は「実施例」は、実施例に関連して記載されている特定のフィーチャ、構造体又は特徴が、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味する。よって、この明細書にわたって種々の場所で述べられるフレーズ「一つの実施例において」、又は「実施例において」という用語は、同じ実施例にすべて必ずしも関連する必要はないが、関連してもよい。さらにまた、特定のフィーチャ、構造体又は特徴は何らかの適切な態様で組み合わせてもよく、この開示から一つ以上の実施例で、当業者にとって明らかである。
【0057】
同様に、本発明の例示的実施形態の説明において、本開示を合理化し、一つ以上のさまざまな本発明の態様の理解を助けるために、さまざまな本発明の特徴が、単一の実施例、図又は説明においてときどき集められることが理解されるべきである。しかしながら、開示のこの方法は、クレームされた本発明が各請求項において明確に引用されたものより多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、前に開示された単一の実施例のすべての特徴より少なくある。このように、詳細な説明の後の請求項は、各請求項が本発明の別々の実施例のようにそれ自身で表わして、この詳細な説明にここに明確に組み込まれる。
【0058】
さらに、本願明細書において記載されている幾つかの実施例は、他の実施例に含まれる他の特徴でなくいくつかを含む一方、当業者には理解されるように、異なる実施例の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあり、異なる実施例を形成することを意味する。例えば、以下の請求項において、請求された実施例のいずれも、何らかの組合せで使われることができる。
【0059】
さらにまた、実施例のいくつかは、方法として、又はコンピュータシステムのプロセッサによって、若しくは機能を実行する他の手段によって行うことができる方法の要素の組合せとして本願明細書において記述されている。このように、斯様な方法又は方法の要素を実施するための必要な命令を持つプロセッサは、方法を実施するための手段又は方法の要素を形成する。さらにまた、装置実施例の中で本願明細書において記載されている素子は、本発明を実施するための素子によって実行される機能を実行するための手段の実施例である。
【0060】
本願明細書において提供される説明において、多数の具体的な詳細が、記載される。しかしながら、本発明の実施例がこれらの具体的な詳細なしで実践されてもよいものと理解される。他の例において、よく知られた方法、構造体及び技術は、この説明の理解を不明瞭にしないために、詳細には示されなかった。
【0061】
本発明の第1の態様において、発光センサが提供される。本発明は、良好なSB比(信号対背景ノイズ比)を示す、質的又は量的センサを提供する。センサは特に発光センサであり、例えば発光バイオセンサ(例えば蛍光バイオセンサ又は発光化学センサ)である。本発明は、斯様な発光センサを製造する方法、及び斯様な発光センサを使用して少なくとも一つの発光団によって生成された発光放射線の検出のための方法も提供する。
【0062】
本発明の実施例による発光センサは、少なくとも一つの光学フィルタを有する。これは、少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)によって形成される。前記少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、複数のワイヤを有する。ワイヤは、必ずしもそうである必要はないが、規則的なアレイに位置し、入射ビームに対して垂直な平面に置かれる。本発明の実施例によると、前記少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)のワイヤの少なくとも1つは、さらに、温度制御(例えばヒータの一部)又は温度センサにおいて使用される電極として機能するのに適している。
【0063】
したがって、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、本発明の実施例による、発光センサに組み込まれる。発光センサは、好ましくはミクロな流体の装置であり、最も好ましくはRT―PCR(リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応)プロセスにおいて用いられるミクロな流体の装置である。本発明の実施例によると、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、分極化ベースのフィルタとして、及び温度制御又は測定の(例えばヒータの一部又は温度センサとしての)電極両方として機能する。導電格子は、少なくとも一つの開口を持つ複数の平行したワイヤのアレイを有する。開口の1方の平面方向の寸法は開口を充填する媒体の回折限界より下にあり、他方の平面方向の寸法は開口を充填する媒体の回折限界より上にある。必ずしもそうである必要はないが、アレイは周期的なアレイである。導電格子のワイヤは、これらが光学偏光子として、及びオプションで熱制御素子として機能することができるために、導電材料でできている。好ましくは、ワイヤの材料の屈折率の虚数部分は、十分に大きくあるべきであり、1より典型的に大きい。ワイヤのための適切な材料は、例えばAl、Au、Ag、Crである。ワイヤは、何らかの適切な方法、例えばパターン化された金属構造体の印刷又はスパッタされた金属コーティングのパターン化を含む、薄膜処理技術によって製造されるか又は形成される。
【0064】
図2は、偏光子として使用されるワイヤ・グリッド11のような導電格子に基づく偏光子の原理を図式的に例示する。更なる説明はワイヤ・グリッドに関連してなされるが、本発明はこれに制限されない。例示される実施例のワイヤ・グリッドの場合には、ワイヤ・グリッド11は、規則的なアレイの複数の平行なワイヤ12を有する。ワイヤ・グリッド11は、分極化依存的なサプレッションを持つ。ワイヤ・グリッド偏光子の性能は、入射光の波長とワイヤ12の中心‐中心間の距離又は周期とにより決定される。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12間の間隔又は周期が入射光の波長より非常に短い場合、ワイヤ・グリッド11はワイヤ12と平行に分極化する電磁放射を反射し、直角方向分極の放射線を送信する偏光子として機能する。概して、偏光されていない放射線(図2の参照番号13で示される)がワイヤ・グリッド11に入射するとき(矢印14によって示される)、ワイヤ・グリッド11はワイヤ・グリッド11のワイヤ12に平行な電界ベクトルを持つ放射線を反射し(図2に示されない)、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12に対して垂直な電界ベクトルを持つ放射線(参照番号15によって示される)を伝送する。理想的には、ワイヤ・グリッド偏光子は、例えばs分極化放射線のような第1のタイプの分極化の放射線に対する完璧な鏡として機能し、例えばp分極化放射線のような第2のタイプの分極化の放射線に対して完全に透過である。しかしながら、実際は、最も反射する金属で形成されるワイヤ12でさえ、入射光の若干を吸収し、第1のタイプに当たる光の90%〜95%だけを反射する。また、ワイヤ・グリッド11が形成される基板は、入射光の全部分を伝送しない。斯様な基板が、例えば、平坦なガラスから作られるときでも、例えば表面反射により、当該基板は入射光の全100%を伝送しない。
【0065】
しかしながら、以下の本発明の説明では、説明の容易さのため、上記の反射又は吸収は特に言及されず、これらは本発明の性質を変えるようには考慮されない。
【0066】
分極化ベースのフィルタとして、及び温度制御(例えばヒータ、温度センサとして)に用いられる電極として機能しているワイヤ・グリッドの使用は、入射励起光によって生じる光学バックグラウンド信号を抑制する一方、例えば蛍光の発光のラベル又はプローブから例えば放射する発光センサの反応チャンバのサンプル流体から発生する例えば蛍光の発光信号の光学検出を可能にする。他の説明において、例えば蛍光のような発光のラベル又はプローブは、発光団(例えばフルオロフォア)と呼ばれる。
【0067】
大部分の実用的なケースで、例えば流体内で、励起放射線(例えば励起光)によって励起される発光団によって生成される発光放射線は、励起放射線の分極化から独立しているとみなされる。ランダムであるとみなされ、すなわち50%のp分極化及び50%のs分極化発光放射線を有する。
【0068】
本発明の第1の実施例(異なる実施例が図3〜8に図示される)によると、発光センサ20は基板21を有し、この上に導電格子(例えば複数の並列ワイヤ12を有するワイヤ・グリッド11)が位置する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルの間(例えば100ナノメートル)のワイヤ間のすきまを満たす媒体内における放射線の波長の半分未満のワイヤ12間の分離距離を持って、規則的なパターンに位置する。分離距離とは、ワイヤの周期ではなく、ワイヤ間のオープンスペースをいう。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、当業者によって、既知の何らかの適切な導電材料(典型的には1より大きい虚数の屈折率を持つ)、好ましくは例えば金、Pt、アルミニウム、銅、銀等のような金属で形成される。ワイヤ12は、25ナノメートル以上の、より好ましくは、50ナノメートル以上の、そして、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間の幅を持つ。ワイヤの幅があまり小さいと、導電格子(例えばワイヤ・グリッド)の性能を悪化させる。ワイヤは、かなりの消光比(p及びs偏光に対する伝達間比率)を持つ偏光子として作用するために、十分に広くなければならない。好ましくは、ワイヤ幅は、ワイヤ間の分離距離の2倍である。ワイヤ・グリッド11は、前述したように光学的分極化ベースのフィルタとして機能する。ワイヤ・グリッド11の分極化伝送のタイプは、アプリケーションに応じて選択される。例えば、p分極化放射線を伝送し、s分極化放射線を反射するように、ワイヤ・グリッド11は形成されてもよいし、逆でもよい。
【0069】
発光センサ20は、第1の平面に位置している基板21の表面によって形成される第1側部、基板21より上に位置して、第1の平面と実質的に平行な第2の平面に位置している蓋23の面により形成される第2側部、及び基板21と蓋23との間に位置して、第1及び第2の平面と実質的に直角をなす第3の平面に位置している側壁24を持つ反応チャンバ22をさらに有する。物質の何れの適切な組合せも、発光の信号を得るために用いられてもよい。以下において、特定の組合せが記載されているが、これは単なる実施例である。
【0070】
例えばフルオロフォアである発光団25のような物質を有するサンプル流体は、反応チャンバ22に供給される。例えばフルオロフォアである発光団25のような物質は、例えば、検出されるべきサンプル流体のターゲット部分に結合する。本発明の実施例による発光センサ20の原則の簡略化及び説明のために、図において、例えばフルオロフォアのような発光団25のみが例示され、ターゲット部分は例示されない。励起放射線(矢印26によって示される)での発光団25の照射は、発光団25を励起し、続いて発光(例えば蛍光)放射線を生じる。入射励起放射線26は、偏光される(p又はs偏光)か、又は偏光されてない(p及びs偏光両方を持つ)。本発明の実施例によると、サンプル流体の照射は、蓋23(図3〜5を参照)を通って実行されるか又は基板21(図6〜8を参照)を通って実行される。例えばフルオロフォアの発光団25から来る発光(例えば蛍光)放射線(矢印27で示される)は、光学的検出器のような放射線検出器28によって検出される。検出器28は、本発明の実施例によると、発光センサ20が照射を受ける(図3、4、6及び7を参照)センサ20の側に位置する。他の実施例によると、検出器28は、センサ20が照射を受ける(図5、8、10を参照)側の反対側である発光センサ20の側に位置する。本発明の実施例によると、検出器28は、CCD検出器であるが、発光(例えば蛍光)放射線27を検出することに適している何れの他の検出器でもよい。
【0071】
本発明による光学的偏光ベースのフィルタとしてのワイヤ・グリッド11の機能の他に、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12のうちの少なくとも1つは、温度制御又は温度の測定用の電極としても機能する。本発明の実施例によると、電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、何らかの適切な金属で形成され、25ナノメートル以上、より好ましくは、50ナノメートル以上の、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートル)のワイヤ間のすきまを満たす媒体内の放射線の半分の波長より小さい、ワイヤ12間の分離距離の間隔を持って置かれる。温度制御で用いられる一つ又は複数の金属電極を有するので、斯様なワイヤ・グリッド11は均一なヒータを供給する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0072】
ワイヤ12は、本発明の実施例によると、個々に、又は一斉にアドレスされることができる。個々にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということであり、又は、ワイヤがセンサとして用いられる場合、検出が局所化されることである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは例えばPCRのような反応チャンバ22内において、例えば特定の化学的、生物学的、生化学的な反応又はプロセスのために必要とされる。
【0073】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられる。あるいは、幾つかのワイヤが一方の機能のために使用され、残りのワイヤが他方の機能のために使われる。例えば、一つ以上のワイヤが温度検知のために用いられ、一つ以上のワイヤは加熱のために用いられる。例えば、実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)に図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12に流れる電流を駆動することによって、熱は、ワイヤ12における電力消散によって発生する。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、同じ電流源31に接続されている。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)への部分11a、11bに接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11の異なる部分11a、11bは、異なる時間に及び/又は異なる駆動信号で駆動される。これらは、例えば、反応チャンバ22内の例えば特定の化学的、生物学的、生化学的反応又はプロセスのために必要とされる反応チャンバ22の局所的加熱のために用いられる。
【0074】
他の実施例(図示されない)によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられてもよい。従って、電流源31は、ワイヤ12を流れる電流を送るために供給され、電圧測定手段32は、ワイヤ12にわたる電圧を測定するために供給される。ワイヤ12を通って送られる電流及びワイヤにわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗の変化が決定できる。ワイヤ12の抵抗の変化は、このとき、サンプル流体の温度の変化の尺度である。斯様な情報は、反応チャンバ22内の前記サンプル流体において起こっている化学的、生化学的、又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0075】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11の第1の数のワイヤ12aは、抵抗加熱に用いられ、ワイヤ・グリッド11の第2の数のワイヤ12bは抵抗温度検知のために用いられる。これは、図9(c)に示される。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を始めるためにヒータとして機能するワイヤ12aを流れる電流を送ることによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってなされる。一旦反応が始まったならば、抵抗温度センサとして機能するよう適応されたワイヤ12bは、当該機能を止めるか、又は反応の間、前記サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12の抵抗力の変化が、ワイヤ12aを通って送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定される。ワイヤ12bの抵抗力の変化は、サンプル流体の温度の変化に対する尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体に起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0076】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、これらが加熱及び温度検知両方のために使われるように構成される。
【0077】
以下に、本発明の第1の実施例による発光センサ20の可能性ある構成を例示している幾つかの具体例が、記載されている。温度電極の機能は、以下に記載されている実施例に対しては、もはや述べられない点に留意されたい。以下に述べられるすべての実施例では、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12はまた、上記のような実施例のいずれかによる温度制御電極としても機能すると理解されなければならない。s偏光又はp偏光が下記の実施例のどこで使われても、より一般的にいえば、第1及び第2のタイプの偏光が意味され、両方のタイプが交換可能であることを理解すべきである。
【0078】
図3は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の第1の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、p偏光放射線、例えばp偏光である。p偏光放射線26は、本実施例によると、反応チャンバ22のサンプル流体にある、発光団25(例えばフルオロフォア)へ、蓋23を通って入射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料から作られる。したがって、蓋23に入射するp偏光放射線26は、蓋23を通って伝送され、反応チャンバ22において発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)放射線27を生成する。入射p偏光放射線26はワイヤ・グリッド11を通って更に伝送され、基板21によって吸収されるか、又は当該基板が例えばガラス又はプラスチックのような透明材料でできているときは、基板21を通って発光センサ20に残るだろう。発光(例えば蛍光)放射線27の一部は、蓋23を通って検出器28に達することが可能である。この部分は、矢印29によって示される。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)放射線27は、ランダムに分散され、50%p偏光及び50%s偏光の発光(例えば蛍光)放射線27を有するとみなされる。さらに、図3にて図示したように、発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)放射線27を放射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すものであるので、実質的に半分のp偏光部分の発光(例えば蛍光)放射線27が基板21を通過し、検出されることなく発光センサ20に残るとみなされる。残り半分のp偏光部分の発光放射線は、検出器28に達することができる。他方、ワイヤ・グリッド11はp偏光放射線だけを通過させるので、s偏光部分の発光(例えば蛍光)放射線27は、検出器28の方向にワイヤ・グリッド11によって反射され、よって検出器28によってほとんど完全に検出される。したがって、インタフェース反射及び吸収を考慮することなく、本発明のこの実施例によると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)放射線27の強度の75%(すなわちp偏光の発光(例えば蛍光)放射線の強度の25%、及びs偏光の発光(例えば蛍光)放射線の強度の50%)が、検出器28に達する。ワイヤ・グリッド11が存在しなかったときは、実質的に半分のp偏光部分と実質的に半分のs偏光部分との発光(例えば蛍光)放射線27が検出器28に達することができ、実質的に半分のs偏光部分及びp偏光部分の発光(例えば蛍光)光27が、基板21によって吸収されたか又は伝送されたので、発光(例えば蛍光)放射線27のわずか50%が検出されただろう。
【0079】
本発明の実施例によると、s偏光を伝送し、p偏光を反射する検出器フィルタ(図3に示されていない)は、インタフェースで反射されたか又は散乱された入射p偏光励起放射線26が検出器28に達するのを防止するため検出器28の前に配置される。これは、測定された発光(例えば蛍光)信号内のバックグラウンド信号を減らす際の助けとなる。
【0080】
図4は、第1の実施例による発光センサ20の他の実施例を例示する。この例では、入射放射線26は、非偏光である。発光センサ20は、蓋23を通って照明される。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である、例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。非偏光26は、センサ20の蓋23を通過し、反応チャンバ22にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光団25(例えばフルオロフォア)が発光(例えば蛍光)光27を生成する。図3に図示される実施例のワイヤ・グリッド11と同様に、本実施例のワイヤ・グリッド11は、第1のタイプの偏光(例えばp偏光)放射線を伝送し、第2のタイプの偏光(例えばs偏光)放射線を反射するようなものである。したがって、非偏光26のp偏光部分はワイヤ・グリッド11を通過し、基板21によって吸収されるか、又は、基板21が例えばガラス又はプラスチックのような透明材料で形成されているとき、検出器28によって検出されることなく、基板21を通って発光センサ20に残る。入射非偏光26のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド24によって反射され、励起した発光団25(例えばフルオロフォア)から生成された発光(例えば蛍光)光27と共に、検出器28に達するだろう。p偏光伝送を示す偏光フィルタ30は、図4に図示されるように、入射励起光26の反射されたs偏光部分が検出器28に達することを防止するために、検出器28の前に用いられる。この偏光フィルタ30の使用の結果は、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが検出器28に達するということである。したがって、インタフェース反射又は吸収を考慮することなく、発光(例えば蛍光)光27がランダムで、50%p偏光及び50%s偏光の発光(例えば蛍光)光27とすると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器28に達する。この25%は、p偏光発光(例えば蛍光)光27の半分によって形成される。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0081】
さらに、本発明の第1の実施例による発光センサ20の他の実施例が、図5に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、s偏光である。s偏光26は、反応チャンバ22内の発光団25(例えばフルオロフォア)上へ蓋23を通って入射され、当該発光団25は、励起され、発光(例えば蛍光)光27を放射する。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。また、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射s偏光26は、ワイヤ・グリッド11によって反射されるだろう。この実施例によると、検出器28は、発光センサ20の照射を受ける側よりむしろ発光センサ20のその反対側にある。このように、本実施例によると、入射s偏光26がワイヤ・グリッド11によって検出器28から離れるように反射されるので、入射光26の検出によって生じるバックグラウンド信号が最小にされることができる。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27は、検出器28によって検出できる前に、基板21を通過しなければならない。従って、前記基板は、本実施例において好ましくは、生成された発光の放射線(例えば蛍光の光27)に対して透過であり、例えばガラス又はプラスチックである材料で形成されている。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に達することができる。発光(例えば蛍光)光27は、50%のp偏光及び50%のs偏光の発光(例えば蛍光)光27を有するとすると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%、すなわち発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、検出器28に達する。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23に達し、蓋23により吸収されるか、蓋23が生成された発光放射線27に対して透過な材料で形成されるとき、蓋23を通ってセンサ20に残るだろう。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0082】
上記の実施例において、図4に図示される実施例は、入射励起放射線26(例えば励起光)のサプレッションに関する好適なものである。これは、ワイヤ・グリッド11及び追加検出器フィルタ30が、例えば1000倍のs偏光のサプレッションを持つと仮定することで以下に例示される。図3及び5に図示される実施例は、斯様な検出器フィルタ30を有しないので、図3及び5に図示される実施例は、1000倍の励起光のサプレッションを示す一方、図4に図示される実施例は1000*1000=1000000倍の励起光のサプレッションを示す。したがって、図4において例示される発光センサ20は、図3及び5に図示される発光センサ20より低いバックグラウンド信号を持つ。
【0083】
上記の実施例において、発光センサ20は、上から照射される、すなわち換言すれば、蓋23を通って照射される。しかしながら、他の実施例によると、発光センサ20は、下から照射されてもよく、すなわち換言すれば、基板21を通って照射されてもよい。これは、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の以下の実施例において記載されている。
【0084】
図6は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の他の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、p偏光である。p偏光26は、基板21を通って入射される。したがって、この実施例によると、基板は、入射放射線26に対して透過であるガラス又はプラスチックのような材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射p偏光26は、基板21を通って、ワイヤ・グリッド11を通って伝わり、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起して、これにより発光(例えば蛍光)光27を放射する。この実施例によると、発光(例えば蛍光)光27を検出するための検出器28は、センサ20が照射される側より発光のセンサ20と同じ側に位置する。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に達することが可能である。発光団25(例えばフルオロフォア)が全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射するので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の約半分は、検出器28に到達できる。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23によって吸収されるか、蓋23が生成された発光の放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、検出されることなく、蓋23を通ってセンサ21に残る。したがって、反射及び/又は吸収を考慮することなく、本実施例によると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器28に到達するだろう。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分が、矢印29によって示される。
【0085】
図7は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の他の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、非偏光である。非偏光26は、この実施例によると、基板21を通って入射する。従って、また、基板21は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射非偏光26は基板21を通って送信されるが、入射非偏光26のp偏光部分だけがワイヤ・グリッド11を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体の発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)光27を生成する。入射非偏光26のs偏光部分は、基板21を通って、発光センサ20から反射される。追加フィルタ30は、入射励起光26のs偏光部分が検出器28に達するのを防止するため、基板21と検出器28との間に好ましくは位置する。この態様では、バックグラウンド信号が、最小限に保たれることができる。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に到達できる。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分がワイヤ・グリッド11及び基板21を通って伝送し、検出器28に達する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分及び発光光27のs偏光部分は、蓋23によって吸収されるか、蓋23が生成された発光放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、検出されることなく、蓋23を通ってセンサ20に残る。インタフェース反射又は吸収を考慮しないで、この実施例によると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%、すなわち換言すれば、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、検出器28に到達するだろう。検出器28に到達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0086】
更に、本発明の第1の実施例による発光センサ20の他の実施例が、図8に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、偏光されていないか又はp偏光である。偏光されていない光又はp偏光26は、基板21を通って入射する。したがって、前記基板は、例えばガラス又はプラスチックのような透明材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。よって、非偏光の又はp偏光の両方の場合において、入射光26のp偏光部分は、ワイヤ・グリッド11を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体の発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)放射線27を生成する。入射放射線が非偏光26である場合、入射非偏光26のs偏光部分はワイヤ・グリッド11によってセンサ20から反射される。この実施例によると、検出器28は、照射を受ける側より発光センサ20のその反対側に位置される。s偏光伝送を示す検出器フィルタ30は、入射光26のp偏光部分が検出器28に達するのを防止するために、検出器28の前に用いられる。これは、入射放射線26の検出によるバックグラウンド信号を最小にする際の助けとなる。結果として、発光(例えば蛍光)光27のs偏光部分だけが、検出器28によって検出される。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。しかしながら、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示し、基板21に向かう部分がワイヤ・グリッド11によって反射されるので、すべてのs偏光発光(例えば蛍光)光25は、検出器28に向かっていくだろう。したがって、インタフェース反射又は吸収を考慮せずに、この実施例によると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって放射される発光(例えば蛍光)光27の50%の強度は、検出器28によって検出される。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0087】
本発明の第1の実施例による発光センサ20のすべての実施例において、入射放射線26のp及びs偏光部分、ワイヤ・グリッド11のp又はs偏光伝送、オプションの検出器フィルタ30のp又はs偏光伝送が交換されてもよいことは、理解されるべきである。
【0088】
上記例から、発光センサ20が蓋23を通るか又は基板21を通って照射されるかどうかとは関係なく、検出器28は最も好ましくは、ワイヤ・グリッド11が位置する側の反対側、例示される実施例のように、すなわち蓋23(図3及び8を参照)側に配置されることであることが明らかになる。これらの場合、最も高い発光(例えば蛍光)信号(それぞれ75%及び50%)が、検出器28によって検出される。これらの実施例において好ましくは、偏光ベースの検出器フィルタ30が、検出器28の前に用いられる。これは発光(例えば蛍光)信号を抑制するにもかかわらず、インタフェース及び他の異質で反射され及び/又は散乱された入射放射線26が検出器28に達することを防ぎ、よって、入射放射線26の検出から生じているバックグラウンド信号を最小にする。他の実施例によると、偏光ベースの検出器フィルタ30の代わりに、反射防止コーティングが、検出器28への入射放射線26の反射を防止するために、検出器28と放射線源(図示されない)との間に備えられる。
【0089】
励起放射線26を生成するための放射線源は、例えば、LED又はレーザーでもよく、狭いスペクトル幅(例えばモノクロの光源)を持つ。好ましくは、入射励起放射線26は、検出器28への入射放射線26の鏡面反射を防止するためにコリメートされている。
【0090】
他の実施例によると、他の光学特徴が、更にバックグラウンド信号を抑制するために、発光センサ20に組み込まれる。例えば、スペクトルフィルタが、放射線源とサンプル流体との間に、及び/又は検出器28とサンプル流体との間に位置する。
【0091】
放射線源及び検出器28が発光センサ20の同じ側に置かれる上記の実施例において、蓋23又は基板21の何らかによって形成された発光センサ20の前記側は、励起放射線及び生成された発光放射線に対して透過である、例えばガラス又はプラスチックのような、材料で形成される。これらの場合、基板21又は蓋23の何らかによって形成された発光センサ20の反対側は、例えば黒いレジストのような吸収層を有してもよい。これは、さもなければ、検出器28によって検出されるバックグラウンド信号となる入射放射線26の反射を抑制する。
【0092】
概して、検出器28又は放射線源のどちらか又は両方とも基板21の側にあるとき、基板21は、発光放射線及び/又は励起放射線に透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。検出器28又は放射線源のどちらか又は両方とも蓋23の側にあるとき、蓋23は、発光放射線及び/又は励起放射線に透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。検出器28及び放射線源のいずれも基板21の側にないとき、基板21は例えば黒いレジストのような吸収層を有する。同じことは、検出器28又は放射線源のいずれも蓋23の側にないとき、蓋23にあてはまり、蓋23は、例えば黒いレジストのような吸収層を有する。
【0093】
異なる実施例で述べられるバックグラウンド信号の抑制の他に、本発明の実施例による温度制御電極及び偏光ベースの光学フィルタの機能を持つ導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)の組込みは、以下の付加的な効果を持つ。
【0094】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、特に導電格子が金属電極から成るとき、均一なヒータを供給する。斯様な均一なヒータは、例えば、生化学(例えばリアルタイムPCR)の特定の技術のために必要とされる試料ボリュームの高温均一性を得ることを可能にする。
【0095】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、単一の単純なプロセスの中で温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)及び高品質の偏光ベースの光学フィルタ両方を組み込むための低コスト・ソリューションを提供する。バイオ素子は、例えば、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は比較的廉価でなければならず、したがって、光学式検出器28を照射することから励起放射線を抑制するための高品質のスペクトルフィルタ(卓上/ラボ用マシンへ)の組込みはオプションにはならない。
【0096】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)を使用することの他の効果は、それが広範囲にわたる入射角に対する高い消光値(p及びs偏光間の比率)を持つということである。例えば市販のワイヤ・グリッド偏光子に対して、20度までの入射角の適切な動作が決まって示された。
【0097】
−スペクトル・フィルタリングが使われる場合より本発明の実施例による偏光ベースのフィルタリングが使われるとき、光学式検出器28で検出できる発光(例えば蛍光)放射線27の強度は、より高い。スペクトル・フィルタリングは、有効なスペクトルバンド幅を著しく狭めるのに対し、偏光ベースのフィルタリングを用いることにより、十分な励起スペクトル及び発光(例えば蛍光)スペクトルが使われることができる。
【0098】
−読出装置(例えば卓上装置)による装置(例えばLab―on―a―Chip)から来る偏光ベースのフィルタリングに基づく発光(例えば蛍光)信号の光学的検出を考慮すると、異なる発光団25(例えばフルオロフォア)(すなわち異なるスペクトルを持つ)が検出されるべきとき、前記読出装置のフィルタは、変えられる必要がない。従来から使用されたスペクトルフィルタとは対照的に、偏光ベースのフィルタは、励起放射線のスペクトル又は発光(例えば蛍光)スペクトルに依存しない。したがって、本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)によって可能にされる偏光ベースのフィルタ手法は、発光団25(例えばフルオロフォア)の発光(例えば蛍光)スペクトルに整合させる必要なくセットされる単一のフィルタを通って反応チャンバ22のサンプル流体に存在する異なる発光団25(例えばフルオロフォア)から放射している複数の異なる発光(例えば蛍光)スペクトルを検出することを可能にする。
【0099】
本発明の第2の実施例によると、発光センサ20は、第1の実施例にて説明したような、その実施例の特徴を持つ発光センサ20であるが、蓋23の表面に位置される少なくとも第2の導電格子(例えばワイヤ・グリッド33)をさらに有してもよい。換言すれば、少なくとも第2の導電格子(例えばワイヤ・グリッド33)は、第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)が位置される反応チャンバ22の側と対向する反応チャンバ22の側に位置する。したがって、本発明の第2の実施例によると、発光センサ20は、少なくとも2つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド11、33)を有し、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、基板21に位置し、少なくとも一つの導電格子(e.g;ワイヤ・グリッド33)は、蓋23に位置する。本発明によると、導電格子(例えばワイヤ・グリッド11、33)のうちの少なくとも1つの導電格子の少なくとも一つのワイヤ12が、温度制御電極(例えばヒータとして及び/又はセンサとして)として用いられる。本発明の第2の実施例は、ワイヤ・グリッドである導電格子に関して更に説明されるが、しかしながら、本発明は、これに限定されるわけではない。導電格子は、少なくとも一つの開口を持つ複数の平行ワイヤのアレイを有する。開口の一方の平面方向の寸法は、開口を充填する媒体の回折限界より小さく、他方の平面方向の寸法は、開口を充填する媒体の回折限界より大きい。前記アレイは、必ずしも必要ではないが、周期的なアレイである。ワイヤ・グリッドの場合、前記アレイは、周期的なアレイである。少なくとも、導電格子のいくつかのワイヤは、導電材料でできている。好ましくは、ワイヤの材料の屈折率の虚数部分は、十分に大きくあるべきであり、1より典型的に大きくなければならない。ワイヤのための適切な材料は、例えばAl、Au、Ag、Crである。ワイヤは、何らかの適切な方法によって、例えばパターン化された金属構造体の印刷ステップ又はスパッタされた金属コーティングをパターン化するステップを含む、薄膜処理技術によって、製造されるか又は形成される。
【0100】
光学的には、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33は、最も好ましくは異なる偏光伝送を持ち、よって、発光センサ20に統合された交差した偏光子として機能する。例えば、本発明の実施例によると、基板21上の第1のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示す一方、蓋23上のワイヤ・グリッド33はs偏光伝送を示すが、又はこの逆もありえる。ワイヤ・グリッド11、33は、高い偏光比率を有する(〉99.9%、すなわち1000より良好な消光)ので、発光(例えば蛍光)放射線27の少なくとも一部が検出器28に達することを許容する一方、第1及び第2のワイヤ・グリッド11、33によって形成される交差したワイヤ・グリッド偏光子は、バックグラウンド信号を抑制する。
【0101】
第1の実施例と同様で、すでに上述したように、光学的偏光ベースのフィルタとしてのワイヤ・グリッド11の機能の他に、本発明によると、第1及び第2のワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12のうちの少なくとも1つが、温度制御電極としても機能する。本発明の実施例によると、前記温度制御電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。
【0102】
少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33のワイヤ12は、何らかの適切な金属で形成され、25ナノメートル以上、より好ましくは50ナノメートル以上、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的な幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間、例えば100ナノメートルで、ワイヤ間のすきまを満たす媒体の放射線の波長の半分未満で、ワイヤ12間の分離距離を持つ間隔で置かれる。分離距離とは、ワイヤ間のオープンスペースをいい、ワイヤの周期ではない。例えばワイヤ・グリッドが金属電極を有するとき、斯様なワイヤ・グリッド11、33は均一なヒータを提供する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0103】
ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの複数のワイヤ12が温度制御電極として機能するために用いられるとき、ワイヤ12は、本発明の実施例によると、個々にアドレスされることができるか又は一斉にアドレスされることができる。個々にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは、例えばPCRのような反応チャンバ22内の例えば特定の化学的、生物学的、若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0104】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられてもよい。実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)にて図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12に流れる電流を駆動することによって、熱は、ワイヤ12のパワーの消散によって生成される。実施例によると、電流源は、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の各々のために供給される。他の実施例によると、1つの電流源は、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の全てのために供給される。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)に、部分11a、11bにおいて接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの異なる部分は、異なる時間に駆動されることができ、例えば、反応チャンバ22を局所的に加熱するために使われることができ、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0105】
他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられる。従って、電流源31は、ワイヤ12を流れる電流を伝送し、電圧測定手段32はワイヤ12にわたって電圧を測定するために供給される。ワイヤ12によって送られる電流及びワイヤ12にわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗力の変化が決定できる。ワイヤ12の抵抗力の変化は、このときサンプル流体の温度の変化に対する尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的、又は生物学的反応に関する情報を提供する。
【0106】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの第1の番号のワイヤ12aは、抵抗加熱のために用いられ、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの第2の番号のワイヤ12bは抵抗温度検出のために用いられる(図9(c)を参照)。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を開始するため、ヒータとして機能するワイヤ12aに電流を送ることによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってなされる。一旦反応が開始したならば、抵抗温度センサとして機能するために適したワイヤ12bが、反応の間、サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12bの抵抗力の変化が、ワイヤ12bに送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定されることができる。ワイヤ12bの抵抗の変化は、この時サンプル流体の温度の変化のための尺度となり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0107】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのすべてのワイヤ12は、加熱及び温度検出のために使われるのに適している。
【0108】
以下、第2の実施例による発光センサ20の実施例が、記載されている。この例では、温度制御電極としてのワイヤ・グリッド11、33の機能は、もう述べられないだろう。実施例のワイヤ・グリッド11、33が、上記の実施例のいずれかによる温度制御電極として機能することができると理解されなければならない。
【0109】
本発明の第2の実施例による発光センサ20の構成の実施例が、図10に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、非偏光である。非偏光26は、蓋23を通って入射する。蓋23は、入射放射線26を透過する例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。この実施例によると、蓋23上のワイヤ・グリッド33は、s偏光伝送を示すようなものであり、基板21上のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、本実施例によれば、非偏光26は、蓋23を通って伝送し、入射非偏光26のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド33を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)光27を生成する。検出器28は、当該検出器28が照射を受ける側(すなわち基板21の側で)の反対側の発光センサ20の側に位置する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。蓋23上のワイヤ・グリッド33がs偏光伝送及びよってp偏光反射を示すので、ワイヤ・グリッド33が蓋23に存在しないときには、蓋23によって吸収されるか又は送信される発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分は、ワイヤ・グリッド33によって反射され、基板21上のワイヤ・グリッド11を通って伝送できる。従って、発光団25(例えばフルオロフォア)によって放射される発光(例えば蛍光)光27は、ランダムであり、略50%のp偏光及び略50%のs偏光を有するとすると、発光(例えば蛍光)光27の略50%(p偏光部分)は、基板21上のワイヤ・グリッド11を通って伝送される。検出器28に到達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。インタフェース反射又は吸収を考慮しないで、本実施例によって示されたように、発光(例えば蛍光)光27の強度の略50%が、検出器28に到達する。同じことは、図10の上記の設定の入射放射線26がs偏光であるときでも、あてはまる。
【0110】
また、第2の実施例の上記説明において、入射放射線26のs及びp偏光とワイヤ・グリッド11、32のs及びp偏光とが交換されてもよいことは、理解されるべきである。さらにまた、励起放射線26は、蓋23(図面に図示されない実施例)側に検出器28が位置されて、基板21を通って入射してもよい。
【0111】
バックグラウンド信号の抑制の他に、本発明の実施例による少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の組込みが、付加的な効果を持つ。
【0112】
−ワイヤ・グリッドが導電性電極(例えば金属電極)から成るとき、本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つは、均一なヒータを供給する。斯様に均一なヒータは、試料ボリュームにおいて、例えば、生化学(例えばRT―PCR)の特定の技術のために必要とされる高温均一性を得ることを可能にする。
【0113】
−本発明の実施例による少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の使用は、単一の単純なプロセスの中で高品質の偏光ベースの光学フィルタと、温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)との両方を組み込む低コストソリューションを供給する。例えば、バイオ素子は、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は、比較的廉価でなければならないので、光学式検出器28を照明するために励起放射線を抑制する高品質のスペクトルフィルタの(卓上/ラボ用マシンへの)組込みは、オプションではない。
【0114】
本発明の第3の実施例によると、上述の発光センサ実施例のいずれかの発光センサではあるが、上記の実施例のような外部光学式検出器28の代わりに、発光センサ20の基板21において統合される光学式検出器34を有する発光センサ20が供給される。
【0115】
本発明の第3の実施例による発光センサ20は、センサ20の基板21に位置する少なくとも第1のワイヤ・グリッド11を有する。上記実施例や例にて説明したように、少なくとも第1のワイヤ・グリッド11は、複数のワイヤ12を有し、偏光ベースの光学フィルタ及び温度制御電極両方として機能する。本発明の実施例によると、温度制御電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、何らかの適切な導電材料、好ましくは金属で形成され、導電性電極、例えば、25ナノメートル以上、より好ましくは、50ナノメートル以上の、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートル)での、ワイヤ間のすきまを満たす媒体の放射線の半分の波長より小さい、ワイヤ12間に分離距離を持った間隔を持つ。分離距離とは、ワイヤ間のオープンスペースをいい、ワイヤの周期ではない。斯様なワイヤ・グリッド11は、導電の、例えば金属電極を有するので、均一なヒータを供給する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0116】
本発明の実施例によると、ワイヤ12は、個々に、又は一斉にアドレスされることができる。ワイヤ12を個々にアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的、若しくは生化学的反応又はプロセス(例えばPCR)のために必要とされる。
【0117】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられる。実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)にて図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12を通る電流を駆動することによって、熱が、ワイヤ12のパワーの消散によって生成される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、同じ電流源31に接続されている。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)とセグメント11a、11bにおいて接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11の異なるセグメントが、異なる時間にドライブされることができ、例えば、反応チャンバ22を局所的に加熱するために用いられることができ、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0118】
他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられる。従って、電流供給源31は、ワイヤ12を流れる電流を伝送し、ワイヤ12にわたって電圧を測定するための電圧測定手段32のために供給される。ワイヤ12を通って送られる電流及びワイヤにわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗の変化が、決定できる。ワイヤ12の抵抗の変化は、サンプル流体の温度の変化のための尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を供給する。
【0119】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11の第1の番号のワイヤ12aは、抵抗加熱のために用いられ、ワイヤ・グリッド11の第2の番号のワイヤ12bは、抵抗温度検出のために用いられる。これは、図9(c)に示される。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を開始するためにヒータとして機能するワイヤ12aに電流を伝送することによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってされる。一旦反応が始まったならば、抵抗温度センサとして機能するのに適合されているワイヤ12bは、反応の間、サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12の抵抗の変化が、ワイヤ12bに送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定されることができる。ワイヤ12bの抵抗の変化は、この時サンプル流体の温度の変化のための尺度となり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0120】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、加熱及び温度検出両方のために使われるのに適している。
【0121】
以下、本発明の第3の実施例による発光の構成例が、記載されている。これらの例では、ワイヤ・グリッド11の少なくとも一つの温度制御電極の機能は、もう述べられないだろう。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、上記の実施例のいずれかによる温度制御電極として機能することができると理解されなければならない。
【0122】
図11において挙げられる実施例において、励起放射線26は、蓋23を通って、すなわち、統合した光学式検出器34が位置する発光センサ20の側よりむしろ発光センサ20のその反対側から入射する。蓋23は、入射放射線26を透過する例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。この実施例によれば、入射放射線26は、s偏光である。s偏光26は、発光センサ20の蓋23を通って入射し、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)光27を生成する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、すべての方向において発光(例えば蛍光)光27を放射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、発光(例えば蛍光)光のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド11によって反射され、基板21において統合された検出器34に到達できない。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、ワイヤ・グリッド11及び基板21を通過し、よって基板21において統合された光学式検出器34に到達する。蓋23が発光の光27に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23を通ってセンサ20に残る。本実施例に従って、インタフェース反射及び吸収を考慮しないとすると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、統合された検出器34に到達する。
【0123】
図12は、励起放射線26が入射する発光センサ20の同じ側に光学式検出器34が統合される、第3の実施例による発光センサ20の他のより好適な実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、例えばp偏光である。基板21上のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。p偏光26は、基板21を通って入射し、ワイヤ・グリッド11を通過する。基板21は、励起放射線26に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。反応チャンバ22において、p偏光26は発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)光27を生成する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド11によって反射され、よって検出器34から離れていく。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、ワイヤ・グリッド11を通って伝送でき、よって統合した検出器34に到達する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23によって吸収されるか、又は蓋23が発光放射線27に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、蓋23を通ってセンサ20に残るだろう。本実施例に従って、インタフェース反射及び吸収を考慮しないとすると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器34に到達する。
【0124】
図12に図示される実施例において、入射励起放射線26による、統合した光学式検出器34への直射的な照射を防止するため、発光センサ20は、光学式検出器34と励起放射線源(図に示されない)との間に位置される(例えば金属質の又は黒い)シールドを有する。本発明の実施例によると、前記シールドは、例えば、統合した光学式検出器34の一部分である。本発明の実施例において、統合した光学式検出器34は、流体チャンバ(図12に図示される状況と異なって)の下の領域より小さい。本発明の別の実施例において、統合した光学式検出器34は、規則的であるか不規則なアレイに例えば配置される、複数の別々の発光検出素子を有するように構想されてもよい。パターン化されたシールドは、裏面にあり、前記シールドのパターンは、発光検出素子のアレイに対応し、これによって、入射光が発光団に到達することができ、入射光が光学式検出器34に直接衝突することを防止する。
【0125】
統合した検出器34は、外部光学式検出器28より反応チャンバ22に近く位置されるので、インタフェース及び/又は不均質で反射及び/又は散乱した入射放射線26であって、統合した光学式検出器34によって検出された当該入射放射線26の強度が本発明の第1及び第2の実施例の場合のような外部光学式検出器28の場合より低いので、発光センサ20の統合した検出器34の使用は有利である。加えて、統合した光学式検出器34は、外部検出器28より大きい発光(例えば蛍光)強度を検出することが可能である。これは、発光(例えば蛍光)放射線27が、統合した検出器34によって検出されるために、センサ20を離れる必要はないので空気の散乱による損失がより少ないからである。さらにまた、収集の角度は増大し、検出器34が基板21に統合されるので、媒体境界及び対応する反射の数は減少する。
【0126】
統合した光学式検出器34は、例えばピン―ダイオードのような、例えばフォトダイオードである。統合した光学式検出器34は、光学式検出器34のアレイを有する。例えば、複数にセグメント化された検出器34又は複数の検出器34は、発光センサ20の基板21に組み込まれる。好ましくは、統合した光学式検出器34は、既知の広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS又は有機技術)の1つを用いて組み立てられる。
【0127】
とりわけ、統合した光学センサ34を持つ発光センサ20の効果は、以下の通りである。
【0128】
−オンチップ発光(例えば蛍光)信号獲得又は生成システムは、分析チップ又はセンサ・デバイスの速度及び信頼性を改善する。
【0129】
−例えばポイントケア診断及びロードサイドテストのような(すなわち、中心卓上マシンがもはや必要でない)アプリケーション用の携帯用の携帯センサ・デバイスの場合、特に有利である、製造プロセスのコストの削減。
【0130】
−収集の角度が増大し、媒体の境界及び対応する反射の数が減少するので、発光(例えば蛍光)放射線27の強度が大きくなる。
【0131】
本発明の第3の実施例による発光センサ20は、他の構成も持つ。第1及び第2の実施例並びにこれらの実施例における上記の構成は、第3実施例による発光センサ20にも適用されることに留意されたい。上記の構成間の唯一の違いは、第3実施例による発光センサ20は、外部光学式検出器28よりもむしろ統合した光学式検出器34を有することである。本発明の第3の実施例による発光センサ20は、本発明の第1及び第2の実施例のために記載されたものと同じ効果を持つ、すなわち、バックグラウンド信号の抑制の他に本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11の組込みは、付加的な効果を持つことは、当業者によって理解されるだろう。
【0132】
−本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11は、導電性電極(例えば金属電極)から成るので、均一なヒータを供給する。斯様な均一なヒータは、例えば、生化学(例えばリアルタイムPCR)の特定の技術のために必要とされる試料ボリュームの高温均一性を得ることを可能にする。
【0133】
−本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11は、単一の単純なプロセスで、ヒータ又はセンサのような温度制御電極及び高品質の偏光ベースの光学フィルタ両方を組み込むため低コスト・ソリューションを提供する。例えば、バイオ素子は、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は、比較的廉価でなければならないので、光学式検出器28を照明するために励起放射線を抑制する高品質のスペクトルフィルタの(卓上/ラボ用マシンにおいてのような)組込みは、オプションではない。
【0134】
本発明の第4の実施態様によると、発光センサ20は、熱処理アレイにおいて統合される本発明の異なる実施例及び例にて説明したように、複数のワイヤ・グリッド11を有する。複数のワイヤ・グリッド11の各々は、個々にアドレスされる。図13は、広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS、有機TFTなど)を好ましくは使用した、好ましくは薄膜トランジスタ(TFT)であるが、ダイオード、MIMダイオードでもよい、スイッチ35(例えばトランジスタスイッチ)を介した熱処理アレイのような、ワイヤ・グリッド11をアドレスするやり方を図式的に例示する。本発明によると、ワイヤ12のうちの少なくとも1つが温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)として用いられる一方、ワイヤ・グリッド11は偏光ベースの光学フィルタとして機能する。
【0135】
図13において挙げられる実施例は、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12用に1つの電流源31だけを持つ。従って、ワイヤ12は、図13にて図示したように、2本のワイヤ電極41の間に付与される。電流源31は、バイア穴接続42を通るスイッチ35に接続されている。ワイヤ・グリッド11がアドレスされるとき、スイッチ35によって電流がワイヤ電極41を通ってワイヤ12に流れることができる。
【0136】
図13に挙げられる実施例がいかなる形であれ、本発明を制限することを目的としないと理解されるべきである。熱処理アレイ40のワイヤ・グリッド11のワイヤ12も、上記実施例で記載されたように、図9(a)−(c)で図示されたように、アドレスされる。
【0137】
熱処理アレイ40は、パラレルに処理でき、高い用途の広さ及び高いスループットを独立に許容するため、温度制御された区画36のアレイを有する(図14を参照)。斯様な処理アレイ40は、各区画36に対して偏光ベースの光学フィルタとして機能する少なくとも一つのワイヤ・グリッド11と、加熱素子及び/又は温度センサとしても機能している少なくとも一つのワイヤ・グリッド11のワイヤ12のうちの少なくとも1つのワイヤとを有する。区画36は、フィードバック制御システムをさらに有する。
【0138】
本発明の第4の実施態様による熱処理アレイ40が、個々に各区画36の全域全体の常温を維持するために使用できるか、あるいは、各区画36がアレイ形式で構成され、反応チャンバ22の異なる部分が異なる温度を必要とする場合、各区画36においてあらかじめ決められた時間依存温度プロフィールをつくるために使用できる。全ての場合に、熱処理アレイ40は、複数の個々にアドレス指定可能で、ドリル加工可能なワイヤ・グリッド11を有し、温度センサ及び流体混合素子又は流体ポンプ素子のような追加素子をオプションで有してもよい。
【0139】
本発明の実施例による熱処理アレイ40は、多数の生物工学的なアプリケーションのために有益である。例えば、リアルタイムPCRの多重化の程度は通常4に限られていて、よりしばしば2(例えば生化学のため)に限られている。診断されるか又は検出されるべき分析物の総数を増加させるために、異なる分析物のパラレル検出のため複数の異なる区画36を有する熱処理アレイ40は、リアルタイムPCRプロセスのようなDNA増幅プロセス用に有益である。
【0140】
温度制御素子のアレイは、例えば、個々に制御素子を有する温度制御素子(US2004/0053290A1を参照)、又はCMOS技術に基づく温度制御素子(WO2005−037433A1を参照)のように、文献にすでに記載されている。しかしながら、本発明によれば、偏光ベースの光学フィルタ及び温度制御電極両方として機能する、複数のワイヤ12を持つワイヤ・グリッド11を有する熱処理アレイを発光センサ(例えば発光バイオセンサ、例えば蛍光バイオセンサ)へ組み込むことが提案される。
【0141】
好ましくは、熱処理アレイ40は、アクティブ・マトリックス原理に基づく。これは、図14に図示されている。アクティブ・マトリックス手法において、個別のワイヤ・グリッド11が行及び列に論理的に組織される。用語「列」及び「コラム」は、特定のワイヤ・グリッド11において、共にリンクされたアレイ素子のセットを記載するために用いられる。リンクは、行列の直交式のアレイ形式であるが、本発明は、これに限定されない。当業者に理解されるように、行及び列は容易に交換でき、これらの用語が交換可能であることが本明細書では意図される。また、非直交式のアレイも考慮され、本発明の範囲内に含まれる。よって、用語「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を容易にするために、「論理的に組織化された行又は列」と呼ばれてもよい。これによって、ワイヤ・グリッドのセットは、トポロジー的に線形交差した態様で共にリンクされているが、物理的又は地形的配置がそうである必要はないことを意味する。
【0142】
個々のワイヤ・グリッド11は、一度に1つの行又は1つの列をアドレスする。ワイヤ・グリッド11の行は、行選択ドライバ、例えば選択ドライバIC37によって選択される。列選択ドライバ、例えばヒータ・ドライバIC38は、対応するトランジスタスイッチ35が開き、選択されたワイヤ・グリッド11のワイヤ12が対応する区画36を加熱するように、選択された行の特定の列のワイヤ・グリッド11をアドレスする。
【0143】
アクティブマトリックスアレイは、よく知られた広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS又は有機半導体技術)の1つから、好ましくは製造される。スイッチ35としてTFTの他に、また、ダイオード又はMIM(金属―絶縁体―金属)が、能動素子として用いられることができる。
【0144】
本発明の他の実施例によると、選択ドライバIC37は、局所的メモリ機能をドライブし、これによりヒータが実際にアドレスされる時を越えて駆動信号を特定のセル36まで広げることが可能になる。これは、あらかじめ決められた時間依存温度プロフィールをつくるために用いることができる。局所的メモリ機能は、メモリ素子39によって形成できる。多くの場合、前記メモリ素子は、単純なコンデンサである。例えば、ワイヤ・グリッド11(図15を参照)を駆動する電流信号の場合、メモリ素子39、例えば追加のキャパシタは、例えばワイヤ・グリッド11の他のラインがアドレスされる間、電流源トランジスタ31のゲートの電圧を格納し、ヒータ電流を維持するために、スイッチ35とライン電圧源との間に供給される。局所的メモリ機能39を加えることによって加熱信号がより長い間付与されることができ、これによって、温度プロフィールはよりよく制御できる。
【0145】
以下、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)の発光センサの使用の具体例が示される。分子診断法(例えば臨床アプリケーション、法医学、食品アプリケーションのため)のような多数の生物工学的なアプリケーションにおいて、光学的発光(例えば蛍光)信号が、高い信号対背景比率で読み出し得る(個々に)温度制御された反応区画のアレイを有する(使い捨ての)バイオチップ又は同様のシステムのリアルタイム定量的DNA増幅(RT―PCR)モジュールに対するニーズがある。従って、本発明の実施例による発光(例えば蛍光)センサ20は、リアルタイムPCRにおいて好適に用いられる。
【0146】
本発明は、例えば医学診断法の定量的リアルタイムPCRのために使われてもよい。定量的リアルタイムPCRにおいて、増幅産物の存在は、同じ装置でのリアルタイムに測定される光学的信号を生成するリポーター分子(例えば分子ビーコン、スコーピオン等)を使用して、温度処理の間、量的に記録される。記録された信号は、特定の核酸分子(例えば(制限されるわけではないが)バクテリア又は一組のバクテリア)の濃度と同様に、存在のための尺度である。
【0147】
定量的リアルタイム―PCRは、非常に正確で、開始ターゲット分子の決定の非常に大きいダイナミックレンジを持つ(エンドポイント分析で典型的に観察される大きさの1、2のオーダーと比較して、少なくとも5倍のオーダー)。他の定量的PCR方法とは異なり、フルオレジェニック(fluoregenic)プローブ又はフルオロフォアに基づいたリアルタイムPCRは、ポストPCRサンプル処理、潜在的PCR製品キャリーオーバー汚染防止を必要としないので、非常により速く、より高いスループット分析に結果としてなる。さらに、定量的リアルタイムPCRは、DNAのトレース検出に依存した法律及び規則の施行で、ますます頼られている。
【0148】
リアルタイムPCRにおいて、反応は、一定のサイクル数の後の蓄積したPCRプロダクト量の時よりもむしろPCRプロダクトの増幅が先ず検出される時の循環の間のポイントにより特徴づけられる。
【0149】
図16は、代表的な増幅プロット線(サイクル数の関数における蛍光)を示し、量子化分析において使用される用語を規定する。
【0150】
基線(参照番号44によって示される)より上の蛍光(曲線43によって示される)の増加は、蓄積されるPCRプロダクトの検出を示す。パラメータCT(閾値サイクル)は、蛍光が一定の閾値45を超える部分的なサイクル数として定義される。ゲノムDNAの初期の量がより高いほど、蓄積されたプロダクトは、PCRプロセスにおいてすぐに検出され、CT値がより低い。一組の標準の初期のターゲットコピー数対CTのログのプロット線は、直線である。未知サンプルのターゲットの量の量子化は、CTを測定し、開始コピー数を決定するための標準曲線を使用することによって達成される。閾値がPCRの指数フェーズにあるように採られるので、CT値は反復試験でよく再生可能である。指数フェーズにおいて、反応構成素子は制限しないで、反復試験反応は均一で再生可能な結果を呈する。
【0151】
リアルタイムPCRは、実験の間の再生可能で正確な温度制御が実行されることを必要とし、異なるステップが異なる温度を必要とする。本発明の実施例による発光センサ20を使用するとき、加熱機能が、発光センサ20において統合されたワイヤ・グリッド11に組み込まれるので、追加の加熱装置は、必要とされない。サンプル流体を加熱し、サンプル流体の温度を測定し、発光(例えば蛍光)放射線27を検出することは、単一のセンサ20ででき、複雑なプロセス・ステップを必要としない。
【0152】
さらにまた、定量的リアルタイムPCRの検出感度は、発光(例えば蛍光)信号対励起バックグラウンド比率で主に決定される。高い検出感度を得るために、検出器28、34に到達する、入射励起放射線26(例えば励起光)の一部によって主に生じるバックグラウンド信号は、可能な限り抑制されなければならない。上記の実施例にて説明したように、前記バックグラウンド信号の抑制は、本発明の実施例による発光センサ20によって好適に得られる。最大検出感度を許容する他に、これは、閾値が低減できるので、分析が実行できる速度も上げる。
【0153】
他の態様において、本発明は、本発明の実施例による発光センサ20のワイヤ・グリッド11の少なくとも一つのワイヤ12の駆動を制御するため、発光センサ20用のシステム・コントローラ50を提供する。図17において図示されるシステム・コントローラ50は、ワイヤ・グリッド11の少なくとも一つのワイヤ12に電流を流すための電流源31を制御する制御ユニット51を有する。
【0154】
システム・コントローラ50は、例えばマイクロプロセッサのようなコンピュータ装置を含み、例えば、これはマイクロ・コントローラである。特に、これは、プログラマブルコントローラ(たとえばProgrammableArrayLogic(PAL)、PLA、プログラマブルゲートアレイ、特にFPGAのようなプログラム可能なデジタル論理装置)を含む。FPGAの使用は、例えばFPGAの必要な設定をダウンロードすることによって、微小流体システムのその後のプログラミングを許容する。システム・コントローラ50は、駆動パラメータ(例えば温度及びタイミング・パラメータ)のような、設定可能なパラメータに従って動作される。
【0155】
本発明の実施例による上記の方法は、図18に示されるような演算処理システム60で行う。図18は、メモリ(例えば、RAM、ROM等)の少なくとも一つの形式を含むメモリ・サブシステム62に結合された少なくとも一つのプログラマブルプロセッサ61を含む演算処理システム60の1つの構成を示す。プロセッサ61又は複数のプロセッサは、一般的な目的又は特別な目的プロセッサであり、装置(例えば、他の機能を実行する他の構成素子を持つチップ)に含まれてもよいことに留意されたい。このように、一つ以上の本発明の態様は、デジタル電子回路で、又はコンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア若しくはこれらの組合せで行うことができる。演算処理システムは、少なくとも一つのディスク駆動装置及び/又はCD―ROMドライブ及び/又はDVDドライブを持つストレージ・サブシステム63を含んでもよい。いくつかの実施態様において、ディスプレイシステム、キーボード及びポインティング・デバイスは、ユーザが手動で情報(例えばパラメータ値)を入力するために供給するユーザ・インタフェース・サブシステム64の一部として含まれる。データ(例えば所望の又は得られたフローレート)の入出力のポートも、含まれてもよい。ネットワーク接続のようなより多くの素子、各種デバイスに対するインタフェース等が含まれてもよいが、図18には図示されていない。演算処理システム60のさまざまな素子は、単一バスとして説明を簡単にするため図18に示されるバス・サブシステム65を介することを含む、さまざまな態様で結合されてもよいが、少なくとも一つのバスのシステムを含むことは当業者に理解されるだろう。メモリ・サブシステム62のメモリは、演算処理システム60で実行されるとき、ここに記載されている方法の実施例のステップを実施する一組の指示の全て又は一部(いずれも66として示される)を、ある時期保持してもよい。
【0156】
本発明はまた、コンピュータ装置で実行されるとき、本発明による方法のいずれかの機能を供給するコンピュータ・プログラム製品を含む。斯様なコンピュータ・プログラム製品は、プログラマブルプロセッサによる実行のためのマシン読み取り可読コードを担持している担体媒体で、明らかに例示されることができる。本発明は、このように、計算手段で実行されるとき、上記の方法のいずれかを実行するための命令を供給するコンピュータ・プログラム製品を担持している担体媒体に関する。「担体媒体」という用語は、実行のためプロセッサに命令を供給することに関与するいかなる媒体のこともいう。斯様な媒体は、不揮発性メディア及び伝送メディアを含む多くの形式を採用するが、これに限定されるものではない。不揮発性メディアは、例えば、大容量記憶装置の一部であるストレージ装置のような光学又は磁気ディスクを含む。コンピュータ可読媒体の一般の形式は、CD―ROM、DVD、フレキシブル・ディスク、フレキシブルディスク、テープ、メモリ・チップ、カートリッジ又はコンピュータが読むことができる何れの他の媒体も含む。コンピュータ可読媒体のさまざまな形式は、実行するためのプロセッサへ、一つ以上の命令の一つ以上のシーケンスを坦持することを含む。コンピュータ・プログラム製品は、ネットワーク(例えばLAN、WAN又はインターネット)のキャリアを介して、送信されることもできる。伝送メディアは、電波及び赤外線通信の間、生成されるような、音響又は光の波という形をとることができる。伝送メディアは、コンピュータ内のバスを有するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅のワイヤ及び光ファイバを含む。
【0157】
好ましい実施例、特定の構造及び構成(材料と同様に)が本発明による装置のために本願明細書において述べられたが、形式及び細部のさまざまな変化又は修正は、本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない範囲でなされてもよいことは、理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光バイオセンサ、発光化学センサなどの発光センサと、斯様な発光センサを製造するための方法と、斯様な発光センサを使用して、サンプル流体の温度を決定し、及び/又は加熱しながら同時に、サンプル流体にある一つ以上の発光団により生成された発光放射線の検出のための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光などの発光解析は、バイオ化学及び分子バイオ物理学の分野において最も広汎に使用される技術の一つである。多くの現在のバイオ化学プロトコルが蛍光などの発光ラベルをすでに組み込んでいるので、蛍光などの発光検出方法は、非常に魅力的である。したがって、チップベースの分析は、バイオ化学を変更することなく、存在するプロトコルに容易に組み込まれ得る。蛍光などの発光検出は、表面上の静止した又はハイブリッドの(ラベル付けされた)核酸の、染色した細胞の、及びラベル付けされたたんぱく質の、DNA増幅の間光学的ビーコンの蛍光検出のような、解析チップ上のさまざまなアプリケーションで使用できる。サンガーシークエンシングのような反応及びポリメラーゼ連鎖反応は、発光ラベリング方法で用いられるように適合された。
【0003】
一般に、図1に示すように、バイオチップのキャリア2に供された発光サンプル1から発する発光信号の検出が、図1に示されるような光学検出システム10を用いてなされてもよく、当該システム10は、光源3、発光フィルタ4及び励起フィルタ5のようなスペクトル光学フィルタ、及び存在する発光団の量を計る卓上/ラボ用マシンにローカライズされたCCDカメラ7のような光学センサを有してもよい。光学検出システム10は、発光サンプル1と発光フィルタ4との間にレンズ6を更に有する。
【0004】
卓上/ラボ用マシンに用いられる斯様な光学検出システム10は、発光信号を取得し解析するために、高額の光学部品を通常要求する。励起スペクトラム(吸収)と発光スペクトラム(発光)との間のシフト(いわゆるストークスシフト)がしばしば小さい(<50nm)ので、特に、鋭い波長カットオフを持つ高い光学フィルタ(すなわち、高い選択フィルタ)が、これら光学システムの要求される感度を得るために用いられる。加えて、発光強度は、典型的には励起強度よりも106のオーダーで小さい。結局、発光に基づく光学システムにおいて背景信号の主な源は、前記励起光の部分を検出することにより生じる。
【0005】
バイオテクノロジーアプリケーションでは、温度制御は極めて重要であり、制御された加熱が、固形試薬の混合、溶解のような機能的能力、たんぱく質及び核酸の熱変性、試料内の分子の強化された拡散率、並びに表面結合係数の変更を提供する。DNA増幅技術、リガンド結合、酵素反応、拡張、転写及び交配反応を含む多くの反応が、最適化され、制御された温度で概して実施される。更に、温度制御は、熱的に動作される可逆的又は不可逆的弁及びポンプを操作するのに必須である。
【0006】
再生可能で正確な温度制御を必要とする生化学プロセスの主要な例は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用して、DNA増幅のための高効率の温度サイクルである。PCRは、92℃−96℃での変性ステップ、37−65℃でのアニールステップ及び〜72℃での延伸ステップである通常3つの反応ステップの周期的繰り返しからなる。PCRは、短時間内に特定のDNAターゲットシーケンスの何百万もの同一のコピーを作ることができ、特定の遺伝子配列を識別し検出するため、多くの診断、環境及び法医学の研究所において、日常的に使用される工程となった。高速の熱伝達は効率的なPCRを行うために非常に重要であり、これは、温度制御をPCRシステムにおける本質的な特徴となす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リアルタイムPCRにおける検出感度は、発光信号と励起バックグラウンドとの比によって主に決定される。検出器に到達する入射励起光の一部によって事前に主に生じるバックグラウンド信号は、高い検出感度を持つために、できる限り抑制されるべきである。更に、PCRのようなプロセスはしばしば再現可能で正確な温度制御を必要とするので、これらのプロセスが実施される装置は、例えば抵抗のような制御可能な加熱手段の存在を要求する。このことは、当該装置に加えられるべき追加の部品を必要とし、よって追加の処理ステップを必要とするので、斯様な装置のコストを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、良好な発光センサ、斯様な発光センサを製造するための良好な方法、サンプル流体の温度を同時に加熱及び/又は決定する一方で、前記サンプル流体内の一つ以上の発光体により生成される発光放射線の検出のための方法を提供することである。
【0009】
上記目的は、本発明による方法及び装置により達成される。
【0010】
第1の態様では、本発明は、少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)により形成される少なくとも一つの光学フィルタを有する発光センサを提供する。このフィルタは、好ましくは偏光フィルタリングに基づいている。第1の態様における本発明は、少なくとも一つのチャンバ(22)と、少なくとも第1の導電格子(11)により形成される少なくとも一つの光学フィルタとを有する発光センサであって、前記少なくとも第1の導電格子(11)は複数のワイヤ(12)を有し、前記少なくとも第1の導電格子(11)の前記複数のワイヤ(12)のうちの少なくとも一つは、当該発光センサの少なくとも一つのチャンバ(22)の温度を制御するための温度制御装置にリンクされている、発光センサに関する。本発明の実施例による発光センサは、温度制御電極及び高品質の光学フィルタ両方が導電格子内で組み合わせられるので、低コストである。両方とも単一の簡単なプロセスで提供できる。更に、導電格子、例えばワイヤ・グリッドは、例えばリアルタイムPCRでのサンプルの高温度一様性を得ることができる一様な加熱を供給できる。反応チャンバの局所的加熱のための可能性も生じる。
【0011】
本発明の実施例による発光センサは、少なくとも第2の導電格子により形成される少なくとも第2の光学フィルタを更に有する。斯様な実施例は、発光放射線の少なくとも一部が検出器に到達することを許容する一方で、検出器への入射放射線を抑制できる。斯様な発光センサでは、第1の導電格子は第1のタイプの偏光透過を持ち、第2の導電格子は第2のタイプの偏光透過を持ち、第1及び第2のタイプの偏光透過は、互いに異なる。このように、発光センサに統合された交差偏光器のための少なくとも2つの導電格子は、発光放射線が検出器に到達することを許容する一方で、バックグラウンド信号の良好な抑制ができる。
【0012】
第2の導電格子は複数のワイヤを有する。第2の導電格子の少なくとも一つのワイヤは温度制御電極として機能するのに適している。これは、前記少なくとも第1の導電格子だけがあるときに対して、改善された局所的加熱を可能にする。
【0013】
本発明の実施例による発光センサは、基板の表面により形成される第1の側を持つ反応チャンバを有し、少なくとも一つの導電格子が、前記反応チャンバの第1の側に形成される。
【0014】
本発明の実施例による発光センサは、基板に略平行であって、前記基板から離れて位置する蓋により形成される第2の側を持つ反応チャンバを有する。少なくとも一つの導電格子が前記反応チャンバの第2の側に形成される。
【0015】
本発明の実施例による発光センサは、発光放射線を検出するための検出器を更に有する。前記発光放射線が、励起放射線の照射を受けた前記発光センサの反応チャンバにある発光団により生成される。
【0016】
検出器は、発光センサの外部にあってもよく、すなわち、検出器は統合されていない検出器でもよい。検出器は、励起放射線が発光センサに入射する当該発光センサと同じ側に位置してもよい。あるいは、検出器は発光センサの第1の側に位置され、励起放射線が前記発光センサの第2の側で前記発光センサに入力し、すなわち励起放射線源が前記発光センサの第2の側に位置し、第1及び第2の側は、前記反応チャンバに関して互いに対向する。
【0017】
本発明の実施例において、発光センサは、当該発光センサと検出器との間に検出器フィルタを更に有する。これは、入射励起放射線が前記検出器に到達することを防止する。
【0018】
本発明の実施例による代替の実施例では、検出器は発光センサに統合されている。これは、検出される発光放射線の強度が強められるので有益である。更に、コストが低減できる。この実施例は、発光放射線のオンチップ検出が検出の速度及び信頼性を改善するので、携帯センサに対して特に有益である。
【0019】
本発明の実施例による発光センサは、温度制御装置とともに機能するのに適する少なくとも一つの導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するための駆動手段を更に有する。
【0020】
本発明の実施例による発光センサでは、前記少なくとも一つのワイヤは、ヒータの一部である。
【0021】
本発明の実施例による発光センサでは、前記少なくとも一つのワイヤは、温度センサの一部である。
【0022】
本発明の実施例による発光センサは、好ましくは複数の第1の導電格子を有し、当該複数の第1の導電格子は行及び列に論理的に配されてもよい。用語「列」及び「行」は、一緒にリンクされたアレイのセットを記述するために用いられる。このリンクは、行及び列の直交座標アレイの形式でもよいが、本発明はこれに限定されない。当業者により理解されるように、行及び列は容易に交換可能であり、これらの用語は互いに交換可能であることが、本明細書の意図するところである。また、直交座標形式ではないアレイも考慮され、本発明の範囲に含まれる。したがって、「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を促すために、ここに「論理的に配された行及び列」と呼ばれる。これにより、導電格子のセットは、形而上的にリニアに交差する態様で共にリンクされるが、当該物理的又は形而上的配列は必ずしも必要ではない。前記複数の導電格子は、アレイの形式で配されてもよい。本発明の実施例によると、行及び列は、熱処理アレイを形成するマトリクスに配されてもよい。
【0023】
発光センサは、マトリクスの導電格子をアドレスするための行選択電極及び列選択電極を更に有する。
【0024】
本発明の実施例によると、一つ以上の上記導電格子は、ワイヤ・グリッドでもよい。
【0025】
本発明の実施例による発光センサは、好ましくは、例えばa−Si、LTPS、有機TFT等のような広範囲の電子技術を用いて、例えば薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、MIMダイオードのような能動スイッチング素子を更に有する。これら能動スイッチング素子は、電気的制御信号、動作信号(例えば加熱電流)向けのため、又は電流源として(以下に詳述)働くために用いられる。
【0026】
本発明の実施例による発光センサは、発光バイオセンサ、例えば蛍光バイオセンサでもよい。
【0027】
第2の態様において、本発明は、少なくとも一つの発光団により生成される発光放射線の検出のための発光センサを製造する方法を提供する。当該発明は、好ましくは偏光ベースの少なくとも一つの光学フィルタとして、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子を供給するステップを有し、前記少なくとも第1の導電格子の前記ワイヤの少なくとも一つは前記温度制御装置にリンクされる。この製造方法は、温度制御電極及び高品質の光学フィルタ両方が結合され、単一の単純なプロセスで供給できるので、低コストである。
【0028】
本発明の実施例による方法は、少なくとも第2の導電格子を供給することにより、少なくとも第2の光学的偏光に基づくフィルタを供給するステップをさらに有する。
【0029】
前記少なくとも第1の導電格子及び/又は前記少なくとも第2の導電格子は、ワイヤ・グリッドでもよい。
【0030】
本発明の実施例による方法では、少なくとも第1の導電格子を供給するステップは、第1のタイプの偏光伝送を示す導電格子を供給することにより実施され、少なくとも第2の導電格子を供給するステップは、第2のタイプの偏光伝送を示す導電格子を供給することにより実施され、第1及び第2のタイプの偏光伝送は、互いに異なる。例えばワイヤ・グリッドのような前記少なくとも2つの導電格子は、このように発光センサに統合される交差偏光子を形成する。これは、発光放射線が検出器に到達することを許容する一方で、バックグラウンド信号の良好な抑制を提供する。
【0031】
本発明の実施例による方法は、発光放射線を検出するための検出器を供給するステップを更に有する。検出器を供給する斯様なステップは、発光センサの基板に検出器を供給することにより実施される。このようにして、検出される発光放射線の強度が強められる。更に、別個の検出器が供給される必要がないので、コストが低減できる。この実施例は、発光放射線のオンチップ検出が検出のスピード及び信頼性を改善するので、携帯センサに対して有益である。
【0032】
本発明の実施例による方法では、少なくとも第1の導電格子を供給するステップは、行及び列に論理的に配された複数の導電格子を供給することにより実施される。用語「列」及び「行」は、一緒にリンクされたアレイのセットを記述するために用いられる。このリンクは、行及び列の直交座標アレイの形式でもよいが、本発明はこれに限定されない。当業者により理解されるように、行及び列は容易に交換可能であり、これらの用語は互いに交換可能であることが、本明細書の意図するところである。また、直交座標形式ではないアレイも考慮され、本発明の範囲に含まれる。したがって、「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を促すために、ここに「論理的に配された行及び列」と呼ばれる。これにより、導電格子のセットは、形而上的にリニアに交差する態様で共にリンクされるが、当該物理的又は形而上的配列は必ずしも必要ではない。本発明の実施例によると、行及び列は、熱処理アレイを形成するマトリクスに配されてもよい。
【0033】
第3の態様によると、本発明は、サンプル流体を加熱しながら同時に前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法を提供する。当該方法は、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、特定のタイプの発光放射線を選択的に伝送し、前記サンプル流体を少なくとも局地的に加熱するため少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するため、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子により形成された少なくとも一つの光学フィルタを使用するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する。本発明の実施例では、検出される発光放射線は、導電格子により伝送される発光である。本発明の他の実施例では、検出される発光放射線は、発光団から直接放射する発光と組み合わされた、導電格子により反射される発光である。本発明のこの態様の利点は、付加的外部加熱手段が要求されないということである。均一な加熱が可能である。
【0034】
本発明の第3の態様の実施例による方法では、導電格子の全てのワイヤは同時に駆動され、当該ワイヤの駆動は、電流をこれらワイヤに流すことにより実施される。あるいは、ワイヤの駆動は、これらワイヤの端部をあらかじめ決められた電位に置くことにより実施される。
【0035】
本発明の第3の態様の実施例による方法では、導電格子の全てのワイヤは駆動可能であり、これらのワイヤは次々とセグメントにおいて駆動される。
【0036】
本発明の実施例による方法は、導電格子の少なくとも一つのワイヤにわたって電圧を測定し、前記少なくとも一つのワイヤにわたって測定された電圧及び前記少なくとも一つのワイヤを通って流れる電流から前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定し、前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化からサンプル流体の温度の変化を決定することによりサンプル流体の温度の変化を決定するステップを有する。
【0037】
他の態様では、本発明は、サンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方で、サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法を提供する。当該方法は、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、光学的に偏光ベースのフィルタの少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定するステップと、抵抗の前記変化から前記サンプル流体の温度の変化を決定するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する。
【0038】
抵抗の変化を決定するステップは、前記少なくとも一つのワイヤに電流を送ることによって少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するステップと、前記少なくとも一つのワイヤにわたる電圧の変化を測定するステップと、前記少なくとも一つのワイヤに送られる電流及び前記少なくとも一つのワイヤにわたって測定された電圧から、前記少なくとも一つのワイヤの抵抗の変化を決定するステップとを有する。
【0039】
本発明の実施例の方法によるサンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方、前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法において、導電格子は複数のワイヤを有し、前記導電格子の全てのワイヤは同時に駆動され、当該ワイヤの駆動は電流をワイヤに流すことにより実施される。
【0040】
本発明の実施例による方法によるサンプル流体の温度の変化を同時にモニタする一方、前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための代替の方法において、前記導電格子の全てのワイヤは次々にセグメントにおいて駆動される。
【0041】
他の態様によると、本発明は、発光センサの導電格子の少なくとも一つのワイヤの制御された駆動のための制御器を有する。前記制御器は、導電格子の少なくとも一つのワイヤに電流を流すための少なくとも一つの電流源を制御するための制御ユニットを有する。
【0042】
本発明は更に、計算手段で実行されるとき、本発明の方法の実施例の何らかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを提供する。
【0043】
本発明は更に、本発明のコンピュータプログラムを格納するためのマシン可読データ格納装置を提供する。
【0044】
本発明は、ローカル又はワイドエリアの遠隔通信ネットワークにわたって、本発明のコンピュータプログラムを送信することも提供する。
【0045】
好ましくは偏光ベースのフィルタとセンサ内の温度制御電極とを一つに組み合わせることが、本発明の実施例による発光センサの利点であり、これにより斯様なセンサの製造コストを低減する。
【0046】
センサ内にあるサンプル流体の均一な加熱を提供することが、本発明の実施例による発光センサの他の利点である。
【0047】
局所的な加熱が提供できることが、本発明の実施例による発光センサの更に他の利点である。
【0048】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に設定されている。従属請求項内の特徴は、これら請求項内で明瞭に設定されたものだけでなく適当に、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせられてもよい。
【0049】
本発明の上記及び他の特長、特徴及び利点は、本発明の原理を例示として示す添付図面と併せた以下の詳細な記述から明らかとなるであろう。この記述は、本発明の範囲を制限することなく例示としてのみ与えられる。以下に引用される参照図面は、添付された図と呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、発光信号を検出するための光学セットアップを図式的に例示する。
【図2】図2は、ワイヤ・グリッド偏光子の概略図である。
【図3】図3は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図4】図4は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図5】図5は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図6】図6は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図7】図7は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図8】図8は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図9】図9は、本発明の異なる実施例による熱制御電極として、ワイヤ・グリッドの使用を図式的に例示する。
【図10】図10は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図11】図11は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図12】図12は、本発明の実施例による、発光センサを例示する。
【図13】図13は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッド・ヒータのアドレス指定を図式的に例示する。
【図14】図14は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッドを有する、アクティブ・マトリックス原理に基づいた熱処理アレイを例示する。
【図15】図15は、本発明の実施例によるワイヤ・グリッドを有する、アクティブ・マトリックス原理に基づいた熱処理アレイの一つのセルを例示する。
【図16】図16は、定量的リアルタイムPCR実験のための蛍光信号対サイクル数を例示する。
【図17】図17は、本発明の実施例による、発光センサとの使用のためのシステム・コントローラを図式的に例示する。
【図18】図18は、本発明の実施例による方法を実行するために使用できる処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
異なる図において、同じ参照符号は、同じであるか類似した素子である。
【0052】
本発明は、具体例及び図面を参照して記述されるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、クレームによってのみ限定されるものである。請求項の何れの参照符号も、範囲を制限するものとして解釈されない。記載されている図面は、単なる概略図であって、非限定的である。図において、素子のいくつかのサイズは、誇張されていて、説明の便宜上スケール通りに描かれてはいない。
【0053】
「を有する」用語が明細書の説明及び請求項において使われる所では、この用語は他の素子又はステップを除外するものではない。例えば「a」などの単数名詞で呼ばれて一般名詞等が用いられる時、特に述べない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0054】
さらにまた、明細書及び請求項の第1、第2、第3等の用語は、同様の素子を区別するために使われるものであって、時間的にも空間的にもランキング的にも又は他の態様のための何れにおいても順序を記述するためのものでは必ずしもない。よく使用される用語は適当な状況下で交換可能であり、本願明細書に記載されている本発明の実施例が本願明細書において記載され例示されている以外の別のシーケンスで動作できることは、理解されるべきである。
【0055】
さらに、明細書及び請求項の「一番上の」「上の」「下の」等の用語は、記述目的のために使用され、相対的位置を記載するために必ずしもあるというわけではない。よく使用される用語は適当な状況下で交換可能であり、本願明細書に記載されている本発明の実施例が本願明細書において記載され例示されている以外の別のオリエンテーションで動作できることは、理解されるべきである。
【0056】
この明細書全体にわたる「一つの実施例」又は「実施例」は、実施例に関連して記載されている特定のフィーチャ、構造体又は特徴が、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味する。よって、この明細書にわたって種々の場所で述べられるフレーズ「一つの実施例において」、又は「実施例において」という用語は、同じ実施例にすべて必ずしも関連する必要はないが、関連してもよい。さらにまた、特定のフィーチャ、構造体又は特徴は何らかの適切な態様で組み合わせてもよく、この開示から一つ以上の実施例で、当業者にとって明らかである。
【0057】
同様に、本発明の例示的実施形態の説明において、本開示を合理化し、一つ以上のさまざまな本発明の態様の理解を助けるために、さまざまな本発明の特徴が、単一の実施例、図又は説明においてときどき集められることが理解されるべきである。しかしながら、開示のこの方法は、クレームされた本発明が各請求項において明確に引用されたものより多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、前に開示された単一の実施例のすべての特徴より少なくある。このように、詳細な説明の後の請求項は、各請求項が本発明の別々の実施例のようにそれ自身で表わして、この詳細な説明にここに明確に組み込まれる。
【0058】
さらに、本願明細書において記載されている幾つかの実施例は、他の実施例に含まれる他の特徴でなくいくつかを含む一方、当業者には理解されるように、異なる実施例の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあり、異なる実施例を形成することを意味する。例えば、以下の請求項において、請求された実施例のいずれも、何らかの組合せで使われることができる。
【0059】
さらにまた、実施例のいくつかは、方法として、又はコンピュータシステムのプロセッサによって、若しくは機能を実行する他の手段によって行うことができる方法の要素の組合せとして本願明細書において記述されている。このように、斯様な方法又は方法の要素を実施するための必要な命令を持つプロセッサは、方法を実施するための手段又は方法の要素を形成する。さらにまた、装置実施例の中で本願明細書において記載されている素子は、本発明を実施するための素子によって実行される機能を実行するための手段の実施例である。
【0060】
本願明細書において提供される説明において、多数の具体的な詳細が、記載される。しかしながら、本発明の実施例がこれらの具体的な詳細なしで実践されてもよいものと理解される。他の例において、よく知られた方法、構造体及び技術は、この説明の理解を不明瞭にしないために、詳細には示されなかった。
【0061】
本発明の第1の態様において、発光センサが提供される。本発明は、良好なSB比(信号対背景ノイズ比)を示す、質的又は量的センサを提供する。センサは特に発光センサであり、例えば発光バイオセンサ(例えば蛍光バイオセンサ又は発光化学センサ)である。本発明は、斯様な発光センサを製造する方法、及び斯様な発光センサを使用して少なくとも一つの発光団によって生成された発光放射線の検出のための方法も提供する。
【0062】
本発明の実施例による発光センサは、少なくとも一つの光学フィルタを有する。これは、少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)によって形成される。前記少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、複数のワイヤを有する。ワイヤは、必ずしもそうである必要はないが、規則的なアレイに位置し、入射ビームに対して垂直な平面に置かれる。本発明の実施例によると、前記少なくとも第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド)のワイヤの少なくとも1つは、さらに、温度制御(例えばヒータの一部)又は温度センサにおいて使用される電極として機能するのに適している。
【0063】
したがって、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、本発明の実施例による、発光センサに組み込まれる。発光センサは、好ましくはミクロな流体の装置であり、最も好ましくはRT―PCR(リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応)プロセスにおいて用いられるミクロな流体の装置である。本発明の実施例によると、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド)は、分極化ベースのフィルタとして、及び温度制御又は測定の(例えばヒータの一部又は温度センサとしての)電極両方として機能する。導電格子は、少なくとも一つの開口を持つ複数の平行したワイヤのアレイを有する。開口の1方の平面方向の寸法は開口を充填する媒体の回折限界より下にあり、他方の平面方向の寸法は開口を充填する媒体の回折限界より上にある。必ずしもそうである必要はないが、アレイは周期的なアレイである。導電格子のワイヤは、これらが光学偏光子として、及びオプションで熱制御素子として機能することができるために、導電材料でできている。好ましくは、ワイヤの材料の屈折率の虚数部分は、十分に大きくあるべきであり、1より典型的に大きい。ワイヤのための適切な材料は、例えばAl、Au、Ag、Crである。ワイヤは、何らかの適切な方法、例えばパターン化された金属構造体の印刷又はスパッタされた金属コーティングのパターン化を含む、薄膜処理技術によって製造されるか又は形成される。
【0064】
図2は、偏光子として使用されるワイヤ・グリッド11のような導電格子に基づく偏光子の原理を図式的に例示する。更なる説明はワイヤ・グリッドに関連してなされるが、本発明はこれに制限されない。例示される実施例のワイヤ・グリッドの場合には、ワイヤ・グリッド11は、規則的なアレイの複数の平行なワイヤ12を有する。ワイヤ・グリッド11は、分極化依存的なサプレッションを持つ。ワイヤ・グリッド偏光子の性能は、入射光の波長とワイヤ12の中心‐中心間の距離又は周期とにより決定される。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12間の間隔又は周期が入射光の波長より非常に短い場合、ワイヤ・グリッド11はワイヤ12と平行に分極化する電磁放射を反射し、直角方向分極の放射線を送信する偏光子として機能する。概して、偏光されていない放射線(図2の参照番号13で示される)がワイヤ・グリッド11に入射するとき(矢印14によって示される)、ワイヤ・グリッド11はワイヤ・グリッド11のワイヤ12に平行な電界ベクトルを持つ放射線を反射し(図2に示されない)、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12に対して垂直な電界ベクトルを持つ放射線(参照番号15によって示される)を伝送する。理想的には、ワイヤ・グリッド偏光子は、例えばs分極化放射線のような第1のタイプの分極化の放射線に対する完璧な鏡として機能し、例えばp分極化放射線のような第2のタイプの分極化の放射線に対して完全に透過である。しかしながら、実際は、最も反射する金属で形成されるワイヤ12でさえ、入射光の若干を吸収し、第1のタイプに当たる光の90%〜95%だけを反射する。また、ワイヤ・グリッド11が形成される基板は、入射光の全部分を伝送しない。斯様な基板が、例えば、平坦なガラスから作られるときでも、例えば表面反射により、当該基板は入射光の全100%を伝送しない。
【0065】
しかしながら、以下の本発明の説明では、説明の容易さのため、上記の反射又は吸収は特に言及されず、これらは本発明の性質を変えるようには考慮されない。
【0066】
分極化ベースのフィルタとして、及び温度制御(例えばヒータ、温度センサとして)に用いられる電極として機能しているワイヤ・グリッドの使用は、入射励起光によって生じる光学バックグラウンド信号を抑制する一方、例えば蛍光の発光のラベル又はプローブから例えば放射する発光センサの反応チャンバのサンプル流体から発生する例えば蛍光の発光信号の光学検出を可能にする。他の説明において、例えば蛍光のような発光のラベル又はプローブは、発光団(例えばフルオロフォア)と呼ばれる。
【0067】
大部分の実用的なケースで、例えば流体内で、励起放射線(例えば励起光)によって励起される発光団によって生成される発光放射線は、励起放射線の分極化から独立しているとみなされる。ランダムであるとみなされ、すなわち50%のp分極化及び50%のs分極化発光放射線を有する。
【0068】
本発明の第1の実施例(異なる実施例が図3〜8に図示される)によると、発光センサ20は基板21を有し、この上に導電格子(例えば複数の並列ワイヤ12を有するワイヤ・グリッド11)が位置する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルの間(例えば100ナノメートル)のワイヤ間のすきまを満たす媒体内における放射線の波長の半分未満のワイヤ12間の分離距離を持って、規則的なパターンに位置する。分離距離とは、ワイヤの周期ではなく、ワイヤ間のオープンスペースをいう。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、当業者によって、既知の何らかの適切な導電材料(典型的には1より大きい虚数の屈折率を持つ)、好ましくは例えば金、Pt、アルミニウム、銅、銀等のような金属で形成される。ワイヤ12は、25ナノメートル以上の、より好ましくは、50ナノメートル以上の、そして、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間の幅を持つ。ワイヤの幅があまり小さいと、導電格子(例えばワイヤ・グリッド)の性能を悪化させる。ワイヤは、かなりの消光比(p及びs偏光に対する伝達間比率)を持つ偏光子として作用するために、十分に広くなければならない。好ましくは、ワイヤ幅は、ワイヤ間の分離距離の2倍である。ワイヤ・グリッド11は、前述したように光学的分極化ベースのフィルタとして機能する。ワイヤ・グリッド11の分極化伝送のタイプは、アプリケーションに応じて選択される。例えば、p分極化放射線を伝送し、s分極化放射線を反射するように、ワイヤ・グリッド11は形成されてもよいし、逆でもよい。
【0069】
発光センサ20は、第1の平面に位置している基板21の表面によって形成される第1側部、基板21より上に位置して、第1の平面と実質的に平行な第2の平面に位置している蓋23の面により形成される第2側部、及び基板21と蓋23との間に位置して、第1及び第2の平面と実質的に直角をなす第3の平面に位置している側壁24を持つ反応チャンバ22をさらに有する。物質の何れの適切な組合せも、発光の信号を得るために用いられてもよい。以下において、特定の組合せが記載されているが、これは単なる実施例である。
【0070】
例えばフルオロフォアである発光団25のような物質を有するサンプル流体は、反応チャンバ22に供給される。例えばフルオロフォアである発光団25のような物質は、例えば、検出されるべきサンプル流体のターゲット部分に結合する。本発明の実施例による発光センサ20の原則の簡略化及び説明のために、図において、例えばフルオロフォアのような発光団25のみが例示され、ターゲット部分は例示されない。励起放射線(矢印26によって示される)での発光団25の照射は、発光団25を励起し、続いて発光(例えば蛍光)放射線を生じる。入射励起放射線26は、偏光される(p又はs偏光)か、又は偏光されてない(p及びs偏光両方を持つ)。本発明の実施例によると、サンプル流体の照射は、蓋23(図3〜5を参照)を通って実行されるか又は基板21(図6〜8を参照)を通って実行される。例えばフルオロフォアの発光団25から来る発光(例えば蛍光)放射線(矢印27で示される)は、光学的検出器のような放射線検出器28によって検出される。検出器28は、本発明の実施例によると、発光センサ20が照射を受ける(図3、4、6及び7を参照)センサ20の側に位置する。他の実施例によると、検出器28は、センサ20が照射を受ける(図5、8、10を参照)側の反対側である発光センサ20の側に位置する。本発明の実施例によると、検出器28は、CCD検出器であるが、発光(例えば蛍光)放射線27を検出することに適している何れの他の検出器でもよい。
【0071】
本発明による光学的偏光ベースのフィルタとしてのワイヤ・グリッド11の機能の他に、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12のうちの少なくとも1つは、温度制御又は温度の測定用の電極としても機能する。本発明の実施例によると、電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、何らかの適切な金属で形成され、25ナノメートル以上、より好ましくは、50ナノメートル以上の、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートル)のワイヤ間のすきまを満たす媒体内の放射線の半分の波長より小さい、ワイヤ12間の分離距離の間隔を持って置かれる。温度制御で用いられる一つ又は複数の金属電極を有するので、斯様なワイヤ・グリッド11は均一なヒータを供給する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0072】
ワイヤ12は、本発明の実施例によると、個々に、又は一斉にアドレスされることができる。個々にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということであり、又は、ワイヤがセンサとして用いられる場合、検出が局所化されることである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは例えばPCRのような反応チャンバ22内において、例えば特定の化学的、生物学的、生化学的な反応又はプロセスのために必要とされる。
【0073】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられる。あるいは、幾つかのワイヤが一方の機能のために使用され、残りのワイヤが他方の機能のために使われる。例えば、一つ以上のワイヤが温度検知のために用いられ、一つ以上のワイヤは加熱のために用いられる。例えば、実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)に図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12に流れる電流を駆動することによって、熱は、ワイヤ12における電力消散によって発生する。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、同じ電流源31に接続されている。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)への部分11a、11bに接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11の異なる部分11a、11bは、異なる時間に及び/又は異なる駆動信号で駆動される。これらは、例えば、反応チャンバ22内の例えば特定の化学的、生物学的、生化学的反応又はプロセスのために必要とされる反応チャンバ22の局所的加熱のために用いられる。
【0074】
他の実施例(図示されない)によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられてもよい。従って、電流源31は、ワイヤ12を流れる電流を送るために供給され、電圧測定手段32は、ワイヤ12にわたる電圧を測定するために供給される。ワイヤ12を通って送られる電流及びワイヤにわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗の変化が決定できる。ワイヤ12の抵抗の変化は、このとき、サンプル流体の温度の変化の尺度である。斯様な情報は、反応チャンバ22内の前記サンプル流体において起こっている化学的、生化学的、又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0075】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11の第1の数のワイヤ12aは、抵抗加熱に用いられ、ワイヤ・グリッド11の第2の数のワイヤ12bは抵抗温度検知のために用いられる。これは、図9(c)に示される。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を始めるためにヒータとして機能するワイヤ12aを流れる電流を送ることによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってなされる。一旦反応が始まったならば、抵抗温度センサとして機能するよう適応されたワイヤ12bは、当該機能を止めるか、又は反応の間、前記サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12の抵抗力の変化が、ワイヤ12aを通って送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定される。ワイヤ12bの抵抗力の変化は、サンプル流体の温度の変化に対する尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体に起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0076】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、これらが加熱及び温度検知両方のために使われるように構成される。
【0077】
以下に、本発明の第1の実施例による発光センサ20の可能性ある構成を例示している幾つかの具体例が、記載されている。温度電極の機能は、以下に記載されている実施例に対しては、もはや述べられない点に留意されたい。以下に述べられるすべての実施例では、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12はまた、上記のような実施例のいずれかによる温度制御電極としても機能すると理解されなければならない。s偏光又はp偏光が下記の実施例のどこで使われても、より一般的にいえば、第1及び第2のタイプの偏光が意味され、両方のタイプが交換可能であることを理解すべきである。
【0078】
図3は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の第1の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、p偏光放射線、例えばp偏光である。p偏光放射線26は、本実施例によると、反応チャンバ22のサンプル流体にある、発光団25(例えばフルオロフォア)へ、蓋23を通って入射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料から作られる。したがって、蓋23に入射するp偏光放射線26は、蓋23を通って伝送され、反応チャンバ22において発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)放射線27を生成する。入射p偏光放射線26はワイヤ・グリッド11を通って更に伝送され、基板21によって吸収されるか、又は当該基板が例えばガラス又はプラスチックのような透明材料でできているときは、基板21を通って発光センサ20に残るだろう。発光(例えば蛍光)放射線27の一部は、蓋23を通って検出器28に達することが可能である。この部分は、矢印29によって示される。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)放射線27は、ランダムに分散され、50%p偏光及び50%s偏光の発光(例えば蛍光)放射線27を有するとみなされる。さらに、図3にて図示したように、発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)放射線27を放射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すものであるので、実質的に半分のp偏光部分の発光(例えば蛍光)放射線27が基板21を通過し、検出されることなく発光センサ20に残るとみなされる。残り半分のp偏光部分の発光放射線は、検出器28に達することができる。他方、ワイヤ・グリッド11はp偏光放射線だけを通過させるので、s偏光部分の発光(例えば蛍光)放射線27は、検出器28の方向にワイヤ・グリッド11によって反射され、よって検出器28によってほとんど完全に検出される。したがって、インタフェース反射及び吸収を考慮することなく、本発明のこの実施例によると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)放射線27の強度の75%(すなわちp偏光の発光(例えば蛍光)放射線の強度の25%、及びs偏光の発光(例えば蛍光)放射線の強度の50%)が、検出器28に達する。ワイヤ・グリッド11が存在しなかったときは、実質的に半分のp偏光部分と実質的に半分のs偏光部分との発光(例えば蛍光)放射線27が検出器28に達することができ、実質的に半分のs偏光部分及びp偏光部分の発光(例えば蛍光)光27が、基板21によって吸収されたか又は伝送されたので、発光(例えば蛍光)放射線27のわずか50%が検出されただろう。
【0079】
本発明の実施例によると、s偏光を伝送し、p偏光を反射する検出器フィルタ(図3に示されていない)は、インタフェースで反射されたか又は散乱された入射p偏光励起放射線26が検出器28に達するのを防止するため検出器28の前に配置される。これは、測定された発光(例えば蛍光)信号内のバックグラウンド信号を減らす際の助けとなる。
【0080】
図4は、第1の実施例による発光センサ20の他の実施例を例示する。この例では、入射放射線26は、非偏光である。発光センサ20は、蓋23を通って照明される。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である、例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。非偏光26は、センサ20の蓋23を通過し、反応チャンバ22にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光団25(例えばフルオロフォア)が発光(例えば蛍光)光27を生成する。図3に図示される実施例のワイヤ・グリッド11と同様に、本実施例のワイヤ・グリッド11は、第1のタイプの偏光(例えばp偏光)放射線を伝送し、第2のタイプの偏光(例えばs偏光)放射線を反射するようなものである。したがって、非偏光26のp偏光部分はワイヤ・グリッド11を通過し、基板21によって吸収されるか、又は、基板21が例えばガラス又はプラスチックのような透明材料で形成されているとき、検出器28によって検出されることなく、基板21を通って発光センサ20に残る。入射非偏光26のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド24によって反射され、励起した発光団25(例えばフルオロフォア)から生成された発光(例えば蛍光)光27と共に、検出器28に達するだろう。p偏光伝送を示す偏光フィルタ30は、図4に図示されるように、入射励起光26の反射されたs偏光部分が検出器28に達することを防止するために、検出器28の前に用いられる。この偏光フィルタ30の使用の結果は、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが検出器28に達するということである。したがって、インタフェース反射又は吸収を考慮することなく、発光(例えば蛍光)光27がランダムで、50%p偏光及び50%s偏光の発光(例えば蛍光)光27とすると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器28に達する。この25%は、p偏光発光(例えば蛍光)光27の半分によって形成される。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0081】
さらに、本発明の第1の実施例による発光センサ20の他の実施例が、図5に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、s偏光である。s偏光26は、反応チャンバ22内の発光団25(例えばフルオロフォア)上へ蓋23を通って入射され、当該発光団25は、励起され、発光(例えば蛍光)光27を放射する。蓋23は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。また、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射s偏光26は、ワイヤ・グリッド11によって反射されるだろう。この実施例によると、検出器28は、発光センサ20の照射を受ける側よりむしろ発光センサ20のその反対側にある。このように、本実施例によると、入射s偏光26がワイヤ・グリッド11によって検出器28から離れるように反射されるので、入射光26の検出によって生じるバックグラウンド信号が最小にされることができる。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27は、検出器28によって検出できる前に、基板21を通過しなければならない。従って、前記基板は、本実施例において好ましくは、生成された発光の放射線(例えば蛍光の光27)に対して透過であり、例えばガラス又はプラスチックである材料で形成されている。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に達することができる。発光(例えば蛍光)光27は、50%のp偏光及び50%のs偏光の発光(例えば蛍光)光27を有するとすると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%、すなわち発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、検出器28に達する。発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23に達し、蓋23により吸収されるか、蓋23が生成された発光放射線27に対して透過な材料で形成されるとき、蓋23を通ってセンサ20に残るだろう。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0082】
上記の実施例において、図4に図示される実施例は、入射励起放射線26(例えば励起光)のサプレッションに関する好適なものである。これは、ワイヤ・グリッド11及び追加検出器フィルタ30が、例えば1000倍のs偏光のサプレッションを持つと仮定することで以下に例示される。図3及び5に図示される実施例は、斯様な検出器フィルタ30を有しないので、図3及び5に図示される実施例は、1000倍の励起光のサプレッションを示す一方、図4に図示される実施例は1000*1000=1000000倍の励起光のサプレッションを示す。したがって、図4において例示される発光センサ20は、図3及び5に図示される発光センサ20より低いバックグラウンド信号を持つ。
【0083】
上記の実施例において、発光センサ20は、上から照射される、すなわち換言すれば、蓋23を通って照射される。しかしながら、他の実施例によると、発光センサ20は、下から照射されてもよく、すなわち換言すれば、基板21を通って照射されてもよい。これは、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の以下の実施例において記載されている。
【0084】
図6は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の他の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、p偏光である。p偏光26は、基板21を通って入射される。したがって、この実施例によると、基板は、入射放射線26に対して透過であるガラス又はプラスチックのような材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射p偏光26は、基板21を通って、ワイヤ・グリッド11を通って伝わり、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起して、これにより発光(例えば蛍光)光27を放射する。この実施例によると、発光(例えば蛍光)光27を検出するための検出器28は、センサ20が照射される側より発光のセンサ20と同じ側に位置する。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に達することが可能である。発光団25(例えばフルオロフォア)が全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射するので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の約半分は、検出器28に到達できる。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23によって吸収されるか、蓋23が生成された発光の放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、検出されることなく、蓋23を通ってセンサ21に残る。したがって、反射及び/又は吸収を考慮することなく、本実施例によると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器28に到達するだろう。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分が、矢印29によって示される。
【0085】
図7は、本発明の第1の実施例による、発光センサ20の他の実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、非偏光である。非偏光26は、この実施例によると、基板21を通って入射する。従って、また、基板21は、使用される励起放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、入射非偏光26は基板21を通って送信されるが、入射非偏光26のp偏光部分だけがワイヤ・グリッド11を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体の発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)光27を生成する。入射非偏光26のs偏光部分は、基板21を通って、発光センサ20から反射される。追加フィルタ30は、入射励起光26のs偏光部分が検出器28に達するのを防止するため、基板21と検出器28との間に好ましくは位置する。この態様では、バックグラウンド信号が、最小限に保たれることができる。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分だけが、検出器28に到達できる。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分がワイヤ・グリッド11及び基板21を通って伝送し、検出器28に達する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分及び発光光27のs偏光部分は、蓋23によって吸収されるか、蓋23が生成された発光放射線に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、検出されることなく、蓋23を通ってセンサ20に残る。インタフェース反射又は吸収を考慮しないで、この実施例によると、発光(例えば蛍光)光27の強度の25%、すなわち換言すれば、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、検出器28に到達するだろう。検出器28に到達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0086】
更に、本発明の第1の実施例による発光センサ20の他の実施例が、図8に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、偏光されていないか又はp偏光である。偏光されていない光又はp偏光26は、基板21を通って入射する。したがって、前記基板は、例えばガラス又はプラスチックのような透明材料で形成される。ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。よって、非偏光の又はp偏光の両方の場合において、入射光26のp偏光部分は、ワイヤ・グリッド11を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体の発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)放射線27を生成する。入射放射線が非偏光26である場合、入射非偏光26のs偏光部分はワイヤ・グリッド11によってセンサ20から反射される。この実施例によると、検出器28は、照射を受ける側より発光センサ20のその反対側に位置される。s偏光伝送を示す検出器フィルタ30は、入射光26のp偏光部分が検出器28に達するのを防止するために、検出器28の前に用いられる。これは、入射放射線26の検出によるバックグラウンド信号を最小にする際の助けとなる。結果として、発光(例えば蛍光)光27のs偏光部分だけが、検出器28によって検出される。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。しかしながら、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示し、基板21に向かう部分がワイヤ・グリッド11によって反射されるので、すべてのs偏光発光(例えば蛍光)光25は、検出器28に向かっていくだろう。したがって、インタフェース反射又は吸収を考慮せずに、この実施例によると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって放射される発光(例えば蛍光)光27の50%の強度は、検出器28によって検出される。検出器28に達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。
【0087】
本発明の第1の実施例による発光センサ20のすべての実施例において、入射放射線26のp及びs偏光部分、ワイヤ・グリッド11のp又はs偏光伝送、オプションの検出器フィルタ30のp又はs偏光伝送が交換されてもよいことは、理解されるべきである。
【0088】
上記例から、発光センサ20が蓋23を通るか又は基板21を通って照射されるかどうかとは関係なく、検出器28は最も好ましくは、ワイヤ・グリッド11が位置する側の反対側、例示される実施例のように、すなわち蓋23(図3及び8を参照)側に配置されることであることが明らかになる。これらの場合、最も高い発光(例えば蛍光)信号(それぞれ75%及び50%)が、検出器28によって検出される。これらの実施例において好ましくは、偏光ベースの検出器フィルタ30が、検出器28の前に用いられる。これは発光(例えば蛍光)信号を抑制するにもかかわらず、インタフェース及び他の異質で反射され及び/又は散乱された入射放射線26が検出器28に達することを防ぎ、よって、入射放射線26の検出から生じているバックグラウンド信号を最小にする。他の実施例によると、偏光ベースの検出器フィルタ30の代わりに、反射防止コーティングが、検出器28への入射放射線26の反射を防止するために、検出器28と放射線源(図示されない)との間に備えられる。
【0089】
励起放射線26を生成するための放射線源は、例えば、LED又はレーザーでもよく、狭いスペクトル幅(例えばモノクロの光源)を持つ。好ましくは、入射励起放射線26は、検出器28への入射放射線26の鏡面反射を防止するためにコリメートされている。
【0090】
他の実施例によると、他の光学特徴が、更にバックグラウンド信号を抑制するために、発光センサ20に組み込まれる。例えば、スペクトルフィルタが、放射線源とサンプル流体との間に、及び/又は検出器28とサンプル流体との間に位置する。
【0091】
放射線源及び検出器28が発光センサ20の同じ側に置かれる上記の実施例において、蓋23又は基板21の何らかによって形成された発光センサ20の前記側は、励起放射線及び生成された発光放射線に対して透過である、例えばガラス又はプラスチックのような、材料で形成される。これらの場合、基板21又は蓋23の何らかによって形成された発光センサ20の反対側は、例えば黒いレジストのような吸収層を有してもよい。これは、さもなければ、検出器28によって検出されるバックグラウンド信号となる入射放射線26の反射を抑制する。
【0092】
概して、検出器28又は放射線源のどちらか又は両方とも基板21の側にあるとき、基板21は、発光放射線及び/又は励起放射線に透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。検出器28又は放射線源のどちらか又は両方とも蓋23の側にあるとき、蓋23は、発光放射線及び/又は励起放射線に透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。検出器28及び放射線源のいずれも基板21の側にないとき、基板21は例えば黒いレジストのような吸収層を有する。同じことは、検出器28又は放射線源のいずれも蓋23の側にないとき、蓋23にあてはまり、蓋23は、例えば黒いレジストのような吸収層を有する。
【0093】
異なる実施例で述べられるバックグラウンド信号の抑制の他に、本発明の実施例による温度制御電極及び偏光ベースの光学フィルタの機能を持つ導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)の組込みは、以下の付加的な効果を持つ。
【0094】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、特に導電格子が金属電極から成るとき、均一なヒータを供給する。斯様な均一なヒータは、例えば、生化学(例えばリアルタイムPCR)の特定の技術のために必要とされる試料ボリュームの高温均一性を得ることを可能にする。
【0095】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、単一の単純なプロセスの中で温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)及び高品質の偏光ベースの光学フィルタ両方を組み込むための低コスト・ソリューションを提供する。バイオ素子は、例えば、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は比較的廉価でなければならず、したがって、光学式検出器28を照射することから励起放射線を抑制するための高品質のスペクトルフィルタ(卓上/ラボ用マシンへ)の組込みはオプションにはならない。
【0096】
−本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)を使用することの他の効果は、それが広範囲にわたる入射角に対する高い消光値(p及びs偏光間の比率)を持つということである。例えば市販のワイヤ・グリッド偏光子に対して、20度までの入射角の適切な動作が決まって示された。
【0097】
−スペクトル・フィルタリングが使われる場合より本発明の実施例による偏光ベースのフィルタリングが使われるとき、光学式検出器28で検出できる発光(例えば蛍光)放射線27の強度は、より高い。スペクトル・フィルタリングは、有効なスペクトルバンド幅を著しく狭めるのに対し、偏光ベースのフィルタリングを用いることにより、十分な励起スペクトル及び発光(例えば蛍光)スペクトルが使われることができる。
【0098】
−読出装置(例えば卓上装置)による装置(例えばLab―on―a―Chip)から来る偏光ベースのフィルタリングに基づく発光(例えば蛍光)信号の光学的検出を考慮すると、異なる発光団25(例えばフルオロフォア)(すなわち異なるスペクトルを持つ)が検出されるべきとき、前記読出装置のフィルタは、変えられる必要がない。従来から使用されたスペクトルフィルタとは対照的に、偏光ベースのフィルタは、励起放射線のスペクトル又は発光(例えば蛍光)スペクトルに依存しない。したがって、本発明の実施例による導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)によって可能にされる偏光ベースのフィルタ手法は、発光団25(例えばフルオロフォア)の発光(例えば蛍光)スペクトルに整合させる必要なくセットされる単一のフィルタを通って反応チャンバ22のサンプル流体に存在する異なる発光団25(例えばフルオロフォア)から放射している複数の異なる発光(例えば蛍光)スペクトルを検出することを可能にする。
【0099】
本発明の第2の実施例によると、発光センサ20は、第1の実施例にて説明したような、その実施例の特徴を持つ発光センサ20であるが、蓋23の表面に位置される少なくとも第2の導電格子(例えばワイヤ・グリッド33)をさらに有してもよい。換言すれば、少なくとも第2の導電格子(例えばワイヤ・グリッド33)は、第1の導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)が位置される反応チャンバ22の側と対向する反応チャンバ22の側に位置する。したがって、本発明の第2の実施例によると、発光センサ20は、少なくとも2つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド11、33)を有し、少なくとも一つの導電格子(例えばワイヤ・グリッド11)は、基板21に位置し、少なくとも一つの導電格子(e.g;ワイヤ・グリッド33)は、蓋23に位置する。本発明によると、導電格子(例えばワイヤ・グリッド11、33)のうちの少なくとも1つの導電格子の少なくとも一つのワイヤ12が、温度制御電極(例えばヒータとして及び/又はセンサとして)として用いられる。本発明の第2の実施例は、ワイヤ・グリッドである導電格子に関して更に説明されるが、しかしながら、本発明は、これに限定されるわけではない。導電格子は、少なくとも一つの開口を持つ複数の平行ワイヤのアレイを有する。開口の一方の平面方向の寸法は、開口を充填する媒体の回折限界より小さく、他方の平面方向の寸法は、開口を充填する媒体の回折限界より大きい。前記アレイは、必ずしも必要ではないが、周期的なアレイである。ワイヤ・グリッドの場合、前記アレイは、周期的なアレイである。少なくとも、導電格子のいくつかのワイヤは、導電材料でできている。好ましくは、ワイヤの材料の屈折率の虚数部分は、十分に大きくあるべきであり、1より典型的に大きくなければならない。ワイヤのための適切な材料は、例えばAl、Au、Ag、Crである。ワイヤは、何らかの適切な方法によって、例えばパターン化された金属構造体の印刷ステップ又はスパッタされた金属コーティングをパターン化するステップを含む、薄膜処理技術によって、製造されるか又は形成される。
【0100】
光学的には、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33は、最も好ましくは異なる偏光伝送を持ち、よって、発光センサ20に統合された交差した偏光子として機能する。例えば、本発明の実施例によると、基板21上の第1のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示す一方、蓋23上のワイヤ・グリッド33はs偏光伝送を示すが、又はこの逆もありえる。ワイヤ・グリッド11、33は、高い偏光比率を有する(〉99.9%、すなわち1000より良好な消光)ので、発光(例えば蛍光)放射線27の少なくとも一部が検出器28に達することを許容する一方、第1及び第2のワイヤ・グリッド11、33によって形成される交差したワイヤ・グリッド偏光子は、バックグラウンド信号を抑制する。
【0101】
第1の実施例と同様で、すでに上述したように、光学的偏光ベースのフィルタとしてのワイヤ・グリッド11の機能の他に、本発明によると、第1及び第2のワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12のうちの少なくとも1つが、温度制御電極としても機能する。本発明の実施例によると、前記温度制御電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。
【0102】
少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33のワイヤ12は、何らかの適切な金属で形成され、25ナノメートル以上、より好ましくは50ナノメートル以上、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的な幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間、例えば100ナノメートルで、ワイヤ間のすきまを満たす媒体の放射線の波長の半分未満で、ワイヤ12間の分離距離を持つ間隔で置かれる。分離距離とは、ワイヤ間のオープンスペースをいい、ワイヤの周期ではない。例えばワイヤ・グリッドが金属電極を有するとき、斯様なワイヤ・グリッド11、33は均一なヒータを提供する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0103】
ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの複数のワイヤ12が温度制御電極として機能するために用いられるとき、ワイヤ12は、本発明の実施例によると、個々にアドレスされることができるか又は一斉にアドレスされることができる。個々にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは、例えばPCRのような反応チャンバ22内の例えば特定の化学的、生物学的、若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0104】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられてもよい。実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)にて図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12に流れる電流を駆動することによって、熱は、ワイヤ12のパワーの消散によって生成される。実施例によると、電流源は、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の各々のために供給される。他の実施例によると、1つの電流源は、少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の全てのために供給される。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)に、部分11a、11bにおいて接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの異なる部分は、異なる時間に駆動されることができ、例えば、反応チャンバ22を局所的に加熱するために使われることができ、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0105】
他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられる。従って、電流源31は、ワイヤ12を流れる電流を伝送し、電圧測定手段32はワイヤ12にわたって電圧を測定するために供給される。ワイヤ12によって送られる電流及びワイヤ12にわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗力の変化が決定できる。ワイヤ12の抵抗力の変化は、このときサンプル流体の温度の変化に対する尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的、又は生物学的反応に関する情報を提供する。
【0106】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの第1の番号のワイヤ12aは、抵抗加熱のために用いられ、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドの第2の番号のワイヤ12bは抵抗温度検出のために用いられる(図9(c)を参照)。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を開始するため、ヒータとして機能するワイヤ12aに電流を送ることによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってなされる。一旦反応が開始したならば、抵抗温度センサとして機能するために適したワイヤ12bが、反応の間、サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12bの抵抗力の変化が、ワイヤ12bに送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定されることができる。ワイヤ12bの抵抗の変化は、この時サンプル流体の温度の変化のための尺度となり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0107】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つのワイヤ・グリッドのすべてのワイヤ12は、加熱及び温度検出のために使われるのに適している。
【0108】
以下、第2の実施例による発光センサ20の実施例が、記載されている。この例では、温度制御電極としてのワイヤ・グリッド11、33の機能は、もう述べられないだろう。実施例のワイヤ・グリッド11、33が、上記の実施例のいずれかによる温度制御電極として機能することができると理解されなければならない。
【0109】
本発明の第2の実施例による発光センサ20の構成の実施例が、図10に図示される。この実施例によると、入射放射線26は、非偏光である。非偏光26は、蓋23を通って入射する。蓋23は、入射放射線26を透過する例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。この実施例によると、蓋23上のワイヤ・グリッド33は、s偏光伝送を示すようなものであり、基板21上のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、本実施例によれば、非偏光26は、蓋23を通って伝送し、入射非偏光26のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド33を通って伝送され、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)光27を生成する。検出器28は、当該検出器28が照射を受ける側(すなわち基板21の側で)の反対側の発光センサ20の側に位置する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。蓋23上のワイヤ・グリッド33がs偏光伝送及びよってp偏光反射を示すので、ワイヤ・グリッド33が蓋23に存在しないときには、蓋23によって吸収されるか又は送信される発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分は、ワイヤ・グリッド33によって反射され、基板21上のワイヤ・グリッド11を通って伝送できる。従って、発光団25(例えばフルオロフォア)によって放射される発光(例えば蛍光)光27は、ランダムであり、略50%のp偏光及び略50%のs偏光を有するとすると、発光(例えば蛍光)光27の略50%(p偏光部分)は、基板21上のワイヤ・グリッド11を通って伝送される。検出器28に到達する発光(例えば蛍光)光27の部分は、矢印29によって示される。インタフェース反射又は吸収を考慮しないで、本実施例によって示されたように、発光(例えば蛍光)光27の強度の略50%が、検出器28に到達する。同じことは、図10の上記の設定の入射放射線26がs偏光であるときでも、あてはまる。
【0110】
また、第2の実施例の上記説明において、入射放射線26のs及びp偏光とワイヤ・グリッド11、32のs及びp偏光とが交換されてもよいことは、理解されるべきである。さらにまた、励起放射線26は、蓋23(図面に図示されない実施例)側に検出器28が位置されて、基板21を通って入射してもよい。
【0111】
バックグラウンド信号の抑制の他に、本発明の実施例による少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の組込みが、付加的な効果を持つ。
【0112】
−ワイヤ・グリッドが導電性電極(例えば金属電極)から成るとき、本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11、33のうちの少なくとも1つは、均一なヒータを供給する。斯様に均一なヒータは、試料ボリュームにおいて、例えば、生化学(例えばRT―PCR)の特定の技術のために必要とされる高温均一性を得ることを可能にする。
【0113】
−本発明の実施例による少なくとも2つのワイヤ・グリッド11、33の使用は、単一の単純なプロセスの中で高品質の偏光ベースの光学フィルタと、温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)との両方を組み込む低コストソリューションを供給する。例えば、バイオ素子は、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は、比較的廉価でなければならないので、光学式検出器28を照明するために励起放射線を抑制する高品質のスペクトルフィルタの(卓上/ラボ用マシンへの)組込みは、オプションではない。
【0114】
本発明の第3の実施例によると、上述の発光センサ実施例のいずれかの発光センサではあるが、上記の実施例のような外部光学式検出器28の代わりに、発光センサ20の基板21において統合される光学式検出器34を有する発光センサ20が供給される。
【0115】
本発明の第3の実施例による発光センサ20は、センサ20の基板21に位置する少なくとも第1のワイヤ・グリッド11を有する。上記実施例や例にて説明したように、少なくとも第1のワイヤ・グリッド11は、複数のワイヤ12を有し、偏光ベースの光学フィルタ及び温度制御電極両方として機能する。本発明の実施例によると、温度制御電極は、例えば、ヒータ(例えば抵抗性加熱器)又は温度センサである。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、何らかの適切な導電材料、好ましくは金属で形成され、導電性電極、例えば、25ナノメートル以上、より好ましくは、50ナノメートル以上の、最も好ましくは50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートルの幅)の典型的幅を持つ金属電極を形成する。ワイヤ12は、概して50ナノメートルと150ナノメートルとの間(例えば100ナノメートル)での、ワイヤ間のすきまを満たす媒体の放射線の半分の波長より小さい、ワイヤ12間に分離距離を持った間隔を持つ。分離距離とは、ワイヤ間のオープンスペースをいい、ワイヤの周期ではない。斯様なワイヤ・グリッド11は、導電の、例えば金属電極を有するので、均一なヒータを供給する。均一なヒータは、サンプル流体の高温均一性を得ることを可能にする。これは、例えば、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)プロセスにおいて必要とされる。
【0116】
本発明の実施例によると、ワイヤ12は、個々に、又は一斉にアドレスされることができる。ワイヤ12を個々にアドレスすることの効果は、反応チャンバ22が局所的に加熱されることができるということである。一斉にワイヤ12をアドレスすることの効果は、反応チャンバ22のサンプル流体が一様に加熱されることができるということであり、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的、若しくは生化学的反応又はプロセス(例えばPCR)のために必要とされる。
【0117】
本発明の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12が、温度制御電極として用いられる。実施例によると、ワイヤ12が、抵抗加熱電極(図9(a)を参照)として用いられる。図9(a)にて図示したように、例えば電流源31によってワイヤ12を通る電流を駆動することによって、熱が、ワイヤ12のパワーの消散によって生成される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、同じ電流源31に接続されている。他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12は、異なる電流源31a、31b(図9(b)を参照)とセグメント11a、11bにおいて接続される。これらの実施例によると、ワイヤ・グリッド11の異なるセグメントが、異なる時間にドライブされることができ、例えば、反応チャンバ22を局所的に加熱するために用いられることができ、これは、反応チャンバ22の例えば特定の化学的、生物学的若しくは生化学的反応又はプロセスのために必要とされる。
【0118】
他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、抵抗温度感知電極として用いられる。従って、電流供給源31は、ワイヤ12を流れる電流を伝送し、ワイヤ12にわたって電圧を測定するための電圧測定手段32のために供給される。ワイヤ12を通って送られる電流及びワイヤにわたって測定される電圧の変化から、ワイヤ12の抵抗の変化が、決定できる。ワイヤ12の抵抗の変化は、サンプル流体の温度の変化のための尺度であり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を供給する。
【0119】
好ましい実施例によると、ワイヤ・グリッド11の第1の番号のワイヤ12aは、抵抗加熱のために用いられ、ワイヤ・グリッド11の第2の番号のワイヤ12bは、抵抗温度検出のために用いられる。これは、図9(c)に示される。これらの実施例によると、例えば、サンプル流体は、反応を開始するためにヒータとして機能するワイヤ12aに電流を伝送することによって、一様に加熱される。これは、電流源31aによってされる。一旦反応が始まったならば、抵抗温度センサとして機能するのに適合されているワイヤ12bは、反応の間、サンプル流体の温度を決定するために用いられる。よって、すでに上で説明されたように、ワイヤ12の抵抗の変化が、ワイヤ12bに送られる電流及びワイヤ12bにわたって測定される電圧の変化から決定されることができる。ワイヤ12bの抵抗の変化は、この時サンプル流体の温度の変化のための尺度となり、反応チャンバ22のサンプル流体において起こっている化学的、生化学的又は生物学的反応に関する情報を与える。
【0120】
さらに他の実施例によると、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12は、加熱及び温度検出両方のために使われるのに適している。
【0121】
以下、本発明の第3の実施例による発光の構成例が、記載されている。これらの例では、ワイヤ・グリッド11の少なくとも一つの温度制御電極の機能は、もう述べられないだろう。ワイヤ・グリッド11のワイヤ12が、上記の実施例のいずれかによる温度制御電極として機能することができると理解されなければならない。
【0122】
図11において挙げられる実施例において、励起放射線26は、蓋23を通って、すなわち、統合した光学式検出器34が位置する発光センサ20の側よりむしろ発光センサ20のその反対側から入射する。蓋23は、入射放射線26を透過する例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。この実施例によれば、入射放射線26は、s偏光である。s偏光26は、発光センサ20の蓋23を通って入射し、反応チャンバ22のサンプル流体にある発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これによって発光(例えば蛍光)光27を生成する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、すべての方向において発光(例えば蛍光)光27を放射する。この実施例によると、ワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。したがって、発光(例えば蛍光)光のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド11によって反射され、基板21において統合された検出器34に到達できない。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、ワイヤ・グリッド11及び基板21を通過し、よって基板21において統合された光学式検出器34に到達する。蓋23が発光の光27に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるので、発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23を通ってセンサ20に残る。本実施例に従って、インタフェース反射及び吸収を考慮しないとすると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、統合された検出器34に到達する。
【0123】
図12は、励起放射線26が入射する発光センサ20の同じ側に光学式検出器34が統合される、第3の実施例による発光センサ20の他のより好適な実施例を例示する。この実施例によると、入射放射線26は、例えばp偏光である。基板21上のワイヤ・グリッド11は、p偏光伝送を示すようなものである。p偏光26は、基板21を通って入射し、ワイヤ・グリッド11を通過する。基板21は、励起放射線26に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成される。反応チャンバ22において、p偏光26は発光団25(例えばフルオロフォア)を励起し、これにより発光(例えば蛍光)光27を生成する。発光団25(例えばフルオロフォア)は、全方向に発光(例えば蛍光)光27を放射する。ワイヤ・グリッド11がp偏光伝送を示すので、発光(例えば蛍光)光27のs偏光部分は、ワイヤ・グリッド11によって反射され、よって検出器34から離れていく。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の半分は、ワイヤ・グリッド11を通って伝送でき、よって統合した検出器34に到達する。発光(例えば蛍光)光27のp偏光部分の残り半分は、蓋23によって吸収されるか、又は蓋23が発光放射線27に対して透過である例えばガラス又はプラスチックのような材料で形成されるとき、蓋23を通ってセンサ20に残るだろう。本実施例に従って、インタフェース反射及び吸収を考慮しないとすると、発光団25(例えばフルオロフォア)によって生成される発光(例えば蛍光)光27の強度の25%は、検出器34に到達する。
【0124】
図12に図示される実施例において、入射励起放射線26による、統合した光学式検出器34への直射的な照射を防止するため、発光センサ20は、光学式検出器34と励起放射線源(図に示されない)との間に位置される(例えば金属質の又は黒い)シールドを有する。本発明の実施例によると、前記シールドは、例えば、統合した光学式検出器34の一部分である。本発明の実施例において、統合した光学式検出器34は、流体チャンバ(図12に図示される状況と異なって)の下の領域より小さい。本発明の別の実施例において、統合した光学式検出器34は、規則的であるか不規則なアレイに例えば配置される、複数の別々の発光検出素子を有するように構想されてもよい。パターン化されたシールドは、裏面にあり、前記シールドのパターンは、発光検出素子のアレイに対応し、これによって、入射光が発光団に到達することができ、入射光が光学式検出器34に直接衝突することを防止する。
【0125】
統合した検出器34は、外部光学式検出器28より反応チャンバ22に近く位置されるので、インタフェース及び/又は不均質で反射及び/又は散乱した入射放射線26であって、統合した光学式検出器34によって検出された当該入射放射線26の強度が本発明の第1及び第2の実施例の場合のような外部光学式検出器28の場合より低いので、発光センサ20の統合した検出器34の使用は有利である。加えて、統合した光学式検出器34は、外部検出器28より大きい発光(例えば蛍光)強度を検出することが可能である。これは、発光(例えば蛍光)放射線27が、統合した検出器34によって検出されるために、センサ20を離れる必要はないので空気の散乱による損失がより少ないからである。さらにまた、収集の角度は増大し、検出器34が基板21に統合されるので、媒体境界及び対応する反射の数は減少する。
【0126】
統合した光学式検出器34は、例えばピン―ダイオードのような、例えばフォトダイオードである。統合した光学式検出器34は、光学式検出器34のアレイを有する。例えば、複数にセグメント化された検出器34又は複数の検出器34は、発光センサ20の基板21に組み込まれる。好ましくは、統合した光学式検出器34は、既知の広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS又は有機技術)の1つを用いて組み立てられる。
【0127】
とりわけ、統合した光学センサ34を持つ発光センサ20の効果は、以下の通りである。
【0128】
−オンチップ発光(例えば蛍光)信号獲得又は生成システムは、分析チップ又はセンサ・デバイスの速度及び信頼性を改善する。
【0129】
−例えばポイントケア診断及びロードサイドテストのような(すなわち、中心卓上マシンがもはや必要でない)アプリケーション用の携帯用の携帯センサ・デバイスの場合、特に有利である、製造プロセスのコストの削減。
【0130】
−収集の角度が増大し、媒体の境界及び対応する反射の数が減少するので、発光(例えば蛍光)放射線27の強度が大きくなる。
【0131】
本発明の第3の実施例による発光センサ20は、他の構成も持つ。第1及び第2の実施例並びにこれらの実施例における上記の構成は、第3実施例による発光センサ20にも適用されることに留意されたい。上記の構成間の唯一の違いは、第3実施例による発光センサ20は、外部光学式検出器28よりもむしろ統合した光学式検出器34を有することである。本発明の第3の実施例による発光センサ20は、本発明の第1及び第2の実施例のために記載されたものと同じ効果を持つ、すなわち、バックグラウンド信号の抑制の他に本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11の組込みは、付加的な効果を持つことは、当業者によって理解されるだろう。
【0132】
−本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11は、導電性電極(例えば金属電極)から成るので、均一なヒータを供給する。斯様な均一なヒータは、例えば、生化学(例えばリアルタイムPCR)の特定の技術のために必要とされる試料ボリュームの高温均一性を得ることを可能にする。
【0133】
−本発明の実施例によるワイヤ・グリッド11は、単一の単純なプロセスで、ヒータ又はセンサのような温度制御電極及び高品質の偏光ベースの光学フィルタ両方を組み込むため低コスト・ソリューションを提供する。例えば、バイオ素子は、一般に使い捨ての装置である。従って、発光センサ20は、比較的廉価でなければならないので、光学式検出器28を照明するために励起放射線を抑制する高品質のスペクトルフィルタの(卓上/ラボ用マシンにおいてのような)組込みは、オプションではない。
【0134】
本発明の第4の実施態様によると、発光センサ20は、熱処理アレイにおいて統合される本発明の異なる実施例及び例にて説明したように、複数のワイヤ・グリッド11を有する。複数のワイヤ・グリッド11の各々は、個々にアドレスされる。図13は、広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS、有機TFTなど)を好ましくは使用した、好ましくは薄膜トランジスタ(TFT)であるが、ダイオード、MIMダイオードでもよい、スイッチ35(例えばトランジスタスイッチ)を介した熱処理アレイのような、ワイヤ・グリッド11をアドレスするやり方を図式的に例示する。本発明によると、ワイヤ12のうちの少なくとも1つが温度制御電極(例えばヒータ又はセンサ)として用いられる一方、ワイヤ・グリッド11は偏光ベースの光学フィルタとして機能する。
【0135】
図13において挙げられる実施例は、ワイヤ・グリッド11のすべてのワイヤ12用に1つの電流源31だけを持つ。従って、ワイヤ12は、図13にて図示したように、2本のワイヤ電極41の間に付与される。電流源31は、バイア穴接続42を通るスイッチ35に接続されている。ワイヤ・グリッド11がアドレスされるとき、スイッチ35によって電流がワイヤ電極41を通ってワイヤ12に流れることができる。
【0136】
図13に挙げられる実施例がいかなる形であれ、本発明を制限することを目的としないと理解されるべきである。熱処理アレイ40のワイヤ・グリッド11のワイヤ12も、上記実施例で記載されたように、図9(a)−(c)で図示されたように、アドレスされる。
【0137】
熱処理アレイ40は、パラレルに処理でき、高い用途の広さ及び高いスループットを独立に許容するため、温度制御された区画36のアレイを有する(図14を参照)。斯様な処理アレイ40は、各区画36に対して偏光ベースの光学フィルタとして機能する少なくとも一つのワイヤ・グリッド11と、加熱素子及び/又は温度センサとしても機能している少なくとも一つのワイヤ・グリッド11のワイヤ12のうちの少なくとも1つのワイヤとを有する。区画36は、フィードバック制御システムをさらに有する。
【0138】
本発明の第4の実施態様による熱処理アレイ40が、個々に各区画36の全域全体の常温を維持するために使用できるか、あるいは、各区画36がアレイ形式で構成され、反応チャンバ22の異なる部分が異なる温度を必要とする場合、各区画36においてあらかじめ決められた時間依存温度プロフィールをつくるために使用できる。全ての場合に、熱処理アレイ40は、複数の個々にアドレス指定可能で、ドリル加工可能なワイヤ・グリッド11を有し、温度センサ及び流体混合素子又は流体ポンプ素子のような追加素子をオプションで有してもよい。
【0139】
本発明の実施例による熱処理アレイ40は、多数の生物工学的なアプリケーションのために有益である。例えば、リアルタイムPCRの多重化の程度は通常4に限られていて、よりしばしば2(例えば生化学のため)に限られている。診断されるか又は検出されるべき分析物の総数を増加させるために、異なる分析物のパラレル検出のため複数の異なる区画36を有する熱処理アレイ40は、リアルタイムPCRプロセスのようなDNA増幅プロセス用に有益である。
【0140】
温度制御素子のアレイは、例えば、個々に制御素子を有する温度制御素子(US2004/0053290A1を参照)、又はCMOS技術に基づく温度制御素子(WO2005−037433A1を参照)のように、文献にすでに記載されている。しかしながら、本発明によれば、偏光ベースの光学フィルタ及び温度制御電極両方として機能する、複数のワイヤ12を持つワイヤ・グリッド11を有する熱処理アレイを発光センサ(例えば発光バイオセンサ、例えば蛍光バイオセンサ)へ組み込むことが提案される。
【0141】
好ましくは、熱処理アレイ40は、アクティブ・マトリックス原理に基づく。これは、図14に図示されている。アクティブ・マトリックス手法において、個別のワイヤ・グリッド11が行及び列に論理的に組織される。用語「列」及び「コラム」は、特定のワイヤ・グリッド11において、共にリンクされたアレイ素子のセットを記載するために用いられる。リンクは、行列の直交式のアレイ形式であるが、本発明は、これに限定されない。当業者に理解されるように、行及び列は容易に交換でき、これらの用語が交換可能であることが本明細書では意図される。また、非直交式のアレイも考慮され、本発明の範囲内に含まれる。よって、用語「行」及び「列」は、広く解釈されるべきである。この広い解釈を容易にするために、「論理的に組織化された行又は列」と呼ばれてもよい。これによって、ワイヤ・グリッドのセットは、トポロジー的に線形交差した態様で共にリンクされているが、物理的又は地形的配置がそうである必要はないことを意味する。
【0142】
個々のワイヤ・グリッド11は、一度に1つの行又は1つの列をアドレスする。ワイヤ・グリッド11の行は、行選択ドライバ、例えば選択ドライバIC37によって選択される。列選択ドライバ、例えばヒータ・ドライバIC38は、対応するトランジスタスイッチ35が開き、選択されたワイヤ・グリッド11のワイヤ12が対応する区画36を加熱するように、選択された行の特定の列のワイヤ・グリッド11をアドレスする。
【0143】
アクティブマトリックスアレイは、よく知られた広域エレクトロニクス技術(例えばa―Si、LTPS又は有機半導体技術)の1つから、好ましくは製造される。スイッチ35としてTFTの他に、また、ダイオード又はMIM(金属―絶縁体―金属)が、能動素子として用いられることができる。
【0144】
本発明の他の実施例によると、選択ドライバIC37は、局所的メモリ機能をドライブし、これによりヒータが実際にアドレスされる時を越えて駆動信号を特定のセル36まで広げることが可能になる。これは、あらかじめ決められた時間依存温度プロフィールをつくるために用いることができる。局所的メモリ機能は、メモリ素子39によって形成できる。多くの場合、前記メモリ素子は、単純なコンデンサである。例えば、ワイヤ・グリッド11(図15を参照)を駆動する電流信号の場合、メモリ素子39、例えば追加のキャパシタは、例えばワイヤ・グリッド11の他のラインがアドレスされる間、電流源トランジスタ31のゲートの電圧を格納し、ヒータ電流を維持するために、スイッチ35とライン電圧源との間に供給される。局所的メモリ機能39を加えることによって加熱信号がより長い間付与されることができ、これによって、温度プロフィールはよりよく制御できる。
【0145】
以下、リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(RT―PCR)の発光センサの使用の具体例が示される。分子診断法(例えば臨床アプリケーション、法医学、食品アプリケーションのため)のような多数の生物工学的なアプリケーションにおいて、光学的発光(例えば蛍光)信号が、高い信号対背景比率で読み出し得る(個々に)温度制御された反応区画のアレイを有する(使い捨ての)バイオチップ又は同様のシステムのリアルタイム定量的DNA増幅(RT―PCR)モジュールに対するニーズがある。従って、本発明の実施例による発光(例えば蛍光)センサ20は、リアルタイムPCRにおいて好適に用いられる。
【0146】
本発明は、例えば医学診断法の定量的リアルタイムPCRのために使われてもよい。定量的リアルタイムPCRにおいて、増幅産物の存在は、同じ装置でのリアルタイムに測定される光学的信号を生成するリポーター分子(例えば分子ビーコン、スコーピオン等)を使用して、温度処理の間、量的に記録される。記録された信号は、特定の核酸分子(例えば(制限されるわけではないが)バクテリア又は一組のバクテリア)の濃度と同様に、存在のための尺度である。
【0147】
定量的リアルタイム―PCRは、非常に正確で、開始ターゲット分子の決定の非常に大きいダイナミックレンジを持つ(エンドポイント分析で典型的に観察される大きさの1、2のオーダーと比較して、少なくとも5倍のオーダー)。他の定量的PCR方法とは異なり、フルオレジェニック(fluoregenic)プローブ又はフルオロフォアに基づいたリアルタイムPCRは、ポストPCRサンプル処理、潜在的PCR製品キャリーオーバー汚染防止を必要としないので、非常により速く、より高いスループット分析に結果としてなる。さらに、定量的リアルタイムPCRは、DNAのトレース検出に依存した法律及び規則の施行で、ますます頼られている。
【0148】
リアルタイムPCRにおいて、反応は、一定のサイクル数の後の蓄積したPCRプロダクト量の時よりもむしろPCRプロダクトの増幅が先ず検出される時の循環の間のポイントにより特徴づけられる。
【0149】
図16は、代表的な増幅プロット線(サイクル数の関数における蛍光)を示し、量子化分析において使用される用語を規定する。
【0150】
基線(参照番号44によって示される)より上の蛍光(曲線43によって示される)の増加は、蓄積されるPCRプロダクトの検出を示す。パラメータCT(閾値サイクル)は、蛍光が一定の閾値45を超える部分的なサイクル数として定義される。ゲノムDNAの初期の量がより高いほど、蓄積されたプロダクトは、PCRプロセスにおいてすぐに検出され、CT値がより低い。一組の標準の初期のターゲットコピー数対CTのログのプロット線は、直線である。未知サンプルのターゲットの量の量子化は、CTを測定し、開始コピー数を決定するための標準曲線を使用することによって達成される。閾値がPCRの指数フェーズにあるように採られるので、CT値は反復試験でよく再生可能である。指数フェーズにおいて、反応構成素子は制限しないで、反復試験反応は均一で再生可能な結果を呈する。
【0151】
リアルタイムPCRは、実験の間の再生可能で正確な温度制御が実行されることを必要とし、異なるステップが異なる温度を必要とする。本発明の実施例による発光センサ20を使用するとき、加熱機能が、発光センサ20において統合されたワイヤ・グリッド11に組み込まれるので、追加の加熱装置は、必要とされない。サンプル流体を加熱し、サンプル流体の温度を測定し、発光(例えば蛍光)放射線27を検出することは、単一のセンサ20ででき、複雑なプロセス・ステップを必要としない。
【0152】
さらにまた、定量的リアルタイムPCRの検出感度は、発光(例えば蛍光)信号対励起バックグラウンド比率で主に決定される。高い検出感度を得るために、検出器28、34に到達する、入射励起放射線26(例えば励起光)の一部によって主に生じるバックグラウンド信号は、可能な限り抑制されなければならない。上記の実施例にて説明したように、前記バックグラウンド信号の抑制は、本発明の実施例による発光センサ20によって好適に得られる。最大検出感度を許容する他に、これは、閾値が低減できるので、分析が実行できる速度も上げる。
【0153】
他の態様において、本発明は、本発明の実施例による発光センサ20のワイヤ・グリッド11の少なくとも一つのワイヤ12の駆動を制御するため、発光センサ20用のシステム・コントローラ50を提供する。図17において図示されるシステム・コントローラ50は、ワイヤ・グリッド11の少なくとも一つのワイヤ12に電流を流すための電流源31を制御する制御ユニット51を有する。
【0154】
システム・コントローラ50は、例えばマイクロプロセッサのようなコンピュータ装置を含み、例えば、これはマイクロ・コントローラである。特に、これは、プログラマブルコントローラ(たとえばProgrammableArrayLogic(PAL)、PLA、プログラマブルゲートアレイ、特にFPGAのようなプログラム可能なデジタル論理装置)を含む。FPGAの使用は、例えばFPGAの必要な設定をダウンロードすることによって、微小流体システムのその後のプログラミングを許容する。システム・コントローラ50は、駆動パラメータ(例えば温度及びタイミング・パラメータ)のような、設定可能なパラメータに従って動作される。
【0155】
本発明の実施例による上記の方法は、図18に示されるような演算処理システム60で行う。図18は、メモリ(例えば、RAM、ROM等)の少なくとも一つの形式を含むメモリ・サブシステム62に結合された少なくとも一つのプログラマブルプロセッサ61を含む演算処理システム60の1つの構成を示す。プロセッサ61又は複数のプロセッサは、一般的な目的又は特別な目的プロセッサであり、装置(例えば、他の機能を実行する他の構成素子を持つチップ)に含まれてもよいことに留意されたい。このように、一つ以上の本発明の態様は、デジタル電子回路で、又はコンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア若しくはこれらの組合せで行うことができる。演算処理システムは、少なくとも一つのディスク駆動装置及び/又はCD―ROMドライブ及び/又はDVDドライブを持つストレージ・サブシステム63を含んでもよい。いくつかの実施態様において、ディスプレイシステム、キーボード及びポインティング・デバイスは、ユーザが手動で情報(例えばパラメータ値)を入力するために供給するユーザ・インタフェース・サブシステム64の一部として含まれる。データ(例えば所望の又は得られたフローレート)の入出力のポートも、含まれてもよい。ネットワーク接続のようなより多くの素子、各種デバイスに対するインタフェース等が含まれてもよいが、図18には図示されていない。演算処理システム60のさまざまな素子は、単一バスとして説明を簡単にするため図18に示されるバス・サブシステム65を介することを含む、さまざまな態様で結合されてもよいが、少なくとも一つのバスのシステムを含むことは当業者に理解されるだろう。メモリ・サブシステム62のメモリは、演算処理システム60で実行されるとき、ここに記載されている方法の実施例のステップを実施する一組の指示の全て又は一部(いずれも66として示される)を、ある時期保持してもよい。
【0156】
本発明はまた、コンピュータ装置で実行されるとき、本発明による方法のいずれかの機能を供給するコンピュータ・プログラム製品を含む。斯様なコンピュータ・プログラム製品は、プログラマブルプロセッサによる実行のためのマシン読み取り可読コードを担持している担体媒体で、明らかに例示されることができる。本発明は、このように、計算手段で実行されるとき、上記の方法のいずれかを実行するための命令を供給するコンピュータ・プログラム製品を担持している担体媒体に関する。「担体媒体」という用語は、実行のためプロセッサに命令を供給することに関与するいかなる媒体のこともいう。斯様な媒体は、不揮発性メディア及び伝送メディアを含む多くの形式を採用するが、これに限定されるものではない。不揮発性メディアは、例えば、大容量記憶装置の一部であるストレージ装置のような光学又は磁気ディスクを含む。コンピュータ可読媒体の一般の形式は、CD―ROM、DVD、フレキシブル・ディスク、フレキシブルディスク、テープ、メモリ・チップ、カートリッジ又はコンピュータが読むことができる何れの他の媒体も含む。コンピュータ可読媒体のさまざまな形式は、実行するためのプロセッサへ、一つ以上の命令の一つ以上のシーケンスを坦持することを含む。コンピュータ・プログラム製品は、ネットワーク(例えばLAN、WAN又はインターネット)のキャリアを介して、送信されることもできる。伝送メディアは、電波及び赤外線通信の間、生成されるような、音響又は光の波という形をとることができる。伝送メディアは、コンピュータ内のバスを有するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅のワイヤ及び光ファイバを含む。
【0157】
好ましい実施例、特定の構造及び構成(材料と同様に)が本発明による装置のために本願明細書において述べられたが、形式及び細部のさまざまな変化又は修正は、本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない範囲でなされてもよいことは、理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのチャンバと、少なくとも第1の導電格子により形成される少なくとも一つの光学フィルタとを有する発光センサであって、前記少なくとも第1の導電格子は複数のワイヤを有し、前記少なくとも第1の導電格子の前記複数のワイヤのうちの少なくとも一つは、当該発光センサの少なくとも一つのチャンバの温度を制御するための温度制御装置にリンクされている、発光センサ。
【請求項2】
少なくとも第2の導電格子により形成される少なくとも第2の光学フィルタを更に有する、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項3】
第1の導電格子は第1のタイプの偏光透過を持ち、第2の導電格子は第2のタイプの偏光透過を持ち、第1及び第2のタイプの偏光透過は、互いに異なる、請求項2に記載の発光センサ。
【請求項4】
第2の導電格子は複数のワイヤを有し、第2の導電格子の少なくとも一つのワイヤは温度制御電極として機能する、請求項2又は3に記載の発光センサ。
【請求項5】
基板の面により形成される第1の側を持つ反応チャンバを有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の発光センサであって、少なくとも一つの導電格子が、前記反応チャンバの第1の側に形成される、発光センサ。
【請求項6】
基板に略平行であって、前記基板から離れて位置する蓋により形成される第2の側を持つ反応チャンバを有する請求項1乃至5の何れか一項に記載の発光センサであって、少なくとも一つの導電格子が前記反応チャンバの第2の側に形成される、発光センサ。
【請求項7】
発光放射線を検出するための検出器を更に有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の発光センサ。
【請求項8】
前記発光放射線が、励起放射線の照射を受けて前記発光センサの反応チャンバにある発光団により生成される、請求項7に記載の発光センサ。
【請求項9】
前記検出器は前記発光センサの第1の側に位置され、励起放射線が前記発光センサの第2の側で前記発光センサに入力し、第1及び第2の側は、前記反応チャンバに関して互いに対向する、請求項8に記載の発光センサ。
【請求項10】
前記少なくとも一つのワイヤがヒータの一部である、請求項1乃至9の何れか一項に記載の発光センサ。
【請求項11】
少なくとも一つの発光団により生成される発光放射線の検出のための請求項1に記載の発光センサを製造する方法であって、少なくとも一つの光学フィルタとして、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子を供給するステップと、前記温度制御装置にリンクされた前記少なくとも第1の導電格子の前記ワイヤの少なくとも一つを供給するステップとを有する、方法。
【請求項12】
サンプル流体を同時に加熱しながら前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法であって、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、特定のタイプの発光放射線を選択的に伝送し、前記サンプル流体を少なくとも局地的に加熱するため少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するため、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子により形成された少なくとも一つの光学フィルタを使用するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する、方法。
【請求項13】
計算手段で実行されるとき、請求項11又は12に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを格納するためのマシン可読データ格納装置。
【請求項1】
少なくとも一つのチャンバと、少なくとも第1の導電格子により形成される少なくとも一つの光学フィルタとを有する発光センサであって、前記少なくとも第1の導電格子は複数のワイヤを有し、前記少なくとも第1の導電格子の前記複数のワイヤのうちの少なくとも一つは、当該発光センサの少なくとも一つのチャンバの温度を制御するための温度制御装置にリンクされている、発光センサ。
【請求項2】
少なくとも第2の導電格子により形成される少なくとも第2の光学フィルタを更に有する、請求項1に記載の発光センサ。
【請求項3】
第1の導電格子は第1のタイプの偏光透過を持ち、第2の導電格子は第2のタイプの偏光透過を持ち、第1及び第2のタイプの偏光透過は、互いに異なる、請求項2に記載の発光センサ。
【請求項4】
第2の導電格子は複数のワイヤを有し、第2の導電格子の少なくとも一つのワイヤは温度制御電極として機能する、請求項2又は3に記載の発光センサ。
【請求項5】
基板の面により形成される第1の側を持つ反応チャンバを有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の発光センサであって、少なくとも一つの導電格子が、前記反応チャンバの第1の側に形成される、発光センサ。
【請求項6】
基板に略平行であって、前記基板から離れて位置する蓋により形成される第2の側を持つ反応チャンバを有する請求項1乃至5の何れか一項に記載の発光センサであって、少なくとも一つの導電格子が前記反応チャンバの第2の側に形成される、発光センサ。
【請求項7】
発光放射線を検出するための検出器を更に有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の発光センサ。
【請求項8】
前記発光放射線が、励起放射線の照射を受けて前記発光センサの反応チャンバにある発光団により生成される、請求項7に記載の発光センサ。
【請求項9】
前記検出器は前記発光センサの第1の側に位置され、励起放射線が前記発光センサの第2の側で前記発光センサに入力し、第1及び第2の側は、前記反応チャンバに関して互いに対向する、請求項8に記載の発光センサ。
【請求項10】
前記少なくとも一つのワイヤがヒータの一部である、請求項1乃至9の何れか一項に記載の発光センサ。
【請求項11】
少なくとも一つの発光団により生成される発光放射線の検出のための請求項1に記載の発光センサを製造する方法であって、少なくとも一つの光学フィルタとして、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子を供給するステップと、前記温度制御装置にリンクされた前記少なくとも第1の導電格子の前記ワイヤの少なくとも一つを供給するステップとを有する、方法。
【請求項12】
サンプル流体を同時に加熱しながら前記サンプル流体の発光団により放射された発光放射線を検出するための方法であって、励起放射線で前記発光団を照射するステップと、特定のタイプの発光放射線を選択的に伝送し、前記サンプル流体を少なくとも局地的に加熱するため少なくとも第1の導電格子の少なくとも一つのワイヤを駆動するため、複数のワイヤを有する少なくとも第1の導電格子により形成された少なくとも一つの光学フィルタを使用するステップと、発光放射線を検出するステップとを有する、方法。
【請求項13】
計算手段で実行されるとき、請求項11又は12に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを格納するためのマシン可読データ格納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−522322(P2010−522322A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554116(P2009−554116)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051032
【国際公開番号】WO2008/117208
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051032
【国際公開番号】WO2008/117208
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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