発光ダイオードおよび発光ダイオード光源
【課題】プリント基板に対する取り付け角度を変更することなく、プリント基板の法線方
向から片側に概ね光を照射して、その反対側には光をほとんど照射しないという特徴をもつ発光ダイオードおよび発光ダイオード光源を提供する。
【解決手段】発光素子3を封止した樹脂モールド5は発光素子3の略上方の頂点15を頂部とした凸形状となっており、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の16bに至る面で出射面5bを形成し、発光素子3より反射面5a方向に発せられた光は概ね反射面5aにて全反射して出射面5bから出射し、発光素子3より出射面5b方向に発せられた光は出射面5bで屈折して出射し、全体として出射面5b方向に光を出射する。
向から片側に概ね光を照射して、その反対側には光をほとんど照射しないという特徴をもつ発光ダイオードおよび発光ダイオード光源を提供する。
【解決手段】発光素子3を封止した樹脂モールド5は発光素子3の略上方の頂点15を頂部とした凸形状となっており、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の16bに至る面で出射面5bを形成し、発光素子3より反射面5a方向に発せられた光は概ね反射面5aにて全反射して出射面5bから出射し、発光素子3より出射面5b方向に発せられた光は出射面5bで屈折して出射し、全体として出射面5b方向に光を出射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード、特に、表示灯、看板などの一定方向に指向することを求められる照明用光源に用いられる発光ダイオードおよび発光ダイオード光源に関し、プリント基板に対する取り付け角度を変更することなく、プリント基板の法線方向から法線に対して照明方向を求められる片側に概ね光を照射して、その反対側には光をほとんど照射しないという特徴を有するものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13を参照して、従来の発光ダイオードの構成を説明する。従来の発光ダイオード21は、2本のリード端子2a、2bのうち、一方のリード端子2aの先端部に発光素子3が固着され、この発光素子3と他方のリード端子2bの間を金属細線4で接続されている。発光素子3が組み込まれたリード端子2a、2bの先端部分は、透光性樹脂により封止されており、樹脂モールド5を形成している。
【0003】
樹脂モールド5は、その底面5cに垂直な光軸Cに対して回転対称形の砲弾型形状であり、また、発光素子3は略光軸上に設置されているので、この発光ダイオード21の指向性は図14に示すような0°を中心として前方指向的に集束されたものになる。集束レンズとしての役割も持つ樹脂モールド5の作用により光が照射される範囲は比較的狭い。
【0004】
図15は複数個の従来の発光ダイオードから構成される発光ダイオード光源31を示している。この発光ダイオード光源31は、発光ダイオード21が、マトリックス状にプリント基板6に取り付けられており、図示していない電源供給装置により電力が供給され面状に発光する光源を構成している。なお発光ダイオードは、通常、発光ダイオード底面がプリント基板6に平行になるように取り付けられ、その場合、光の照射方向はプリント基板の取り付け面に対して直交する方向となる。
【0005】
発光ダイオードは、出力の向上により逐次に表示灯や看板などの光源として用いられるようになっているが、表示灯や看板については、ビルの壁など高所に設置されることも多い。以下、高所に取り付けられる表示灯や看板について述べる。
【0006】
配置の制約から、発光ダイオードが取り付けられたプリント基板は、表示灯や看板の表面に対して平行に取り付けられるのが通常であるため、図15に示す発光ダイオード光源を表示灯や看板の光源として用いた場合、個々の発光ダイオードの指向特性は図14に示す前方指向的に集束されたものであるため、表示灯や看板を真正面から見た場合に最も明るく感じる。図16には発光ダイオード光源を使った表示灯や看板7からの光の向きと地上にいる人8との関係を示すが、表示灯や看板7が高所に取り付けられるので人間は前方指向的に集束された光の真正面からではなく、前方指向的に集束された光の照射範囲より外れた下方より表示灯や看板を見ることになるため、光源として用いた発光ダイオードの特性より、この光源を暗く感じてしまう。またこの表示灯や看板からは水平方向から上方にも光を照射しているが、高所に設置した表示灯や看板を上方から見ることは通常ないため、この上方に向かう光は無駄となっており、エネルギの有効利用の観点からも問題である。実際には、発光ダイオードの特性上暗く感じる下方で見る人に対して十分な光になるように光源の出力が決定されるため、上方を照らす無駄となる光も増大する、ということになる。
【0007】
これを解決するためには、図17のようにリード端子を折り曲げ加工して、プリント基板6上に取り付けた発光ダイオード光源が考えられるが、この折り曲げ加工は煩雑であるため製造コストの増大を招くという問題点がある。また、この光源を表示灯や看板の光源として用いても、使用する発光ダイオード自体の指向特性は図14に示す前方指向的に集束されたものであるため、図18に示すような発光ダイオード光源を使った表示灯や看板7からの光の向きと地上にいる人8との関係となり、地上のある領域にいる人には明るく感じるが、発光ダイオード光源の照射範囲から外れた人にとっては暗く感じる、ということになる。つまりは、この照射範囲から外れたところから見難くなるため、多くの人に正確な情報を伝えるという目的で用いられる表示灯や看板の目的には好ましくない。また、光源から水平方向に進む光がほとんど無いため、遠くの人の目に届き難いという欠点がある。
【0008】
またプリント基板への取り付け角度を変えることなく、光が発せられる方向を変えることのできる発光ダイオードとして特許文献1に示される発光ダイオードが提案されている。この特許文献1に示される発光ダイオードは図19に示すように、傾斜した集束レンズを用いて光の発せられる方向を変えたものであり、図19においては左斜め上の方向に向けて光が発するように構想されている。しかしながら、この発光ダイオードの指向特性は図20に示すものであり、光の発せられる方向は変わっているものの、照射範囲は−15度〜−40度程度と斜め方向へ指向して集束された比較的狭い範囲であることから、表示灯や看板の光源に用いた場合の特性は、リード端子を折り曲げ加工して取り付けた場合である図18と同等になる。したがってこの場合でも、リード端子を折り曲げてプリント基板に取り付けることによる製造コストの増大は回避できるものの、表示灯や看板の光源として用いたときの特性は図17に示す光源と同様な欠点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−264839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術欄に説明した欠点の解決を課題とするものであり、表示灯や看板から発せられる光は、理想的には、図7に示すように表示灯や看板7表面の法線方向Hから下の領域のみを照らし、なおかつ地上にいる人8の位置によらず明るい光である必要がある。また無駄となる上の領域を照らさないことが好ましい。さらに光源を製作するにあたっては、発光ダイオードのリード端子を折り曲げ加工してプリント基板への取り付け角度を変えるというような製造コストの増大する製造方法は避ける必要がある。
【0011】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、プリント基板への取り付け角度を変えることなく、図7のような法線方向Hから下の領域のみを照らす特性を持つ発光ダイオード光源、ならびにその光源に使用する発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1に、電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線などを有し、これらを透光性樹脂で封止する樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、該樹脂モールドは発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とし、これにより発光素子からの光の大部分は出射面から出射され、つまりは発光ダイオードの出射面側方に向けて一定方向に指向する発光ダイオードを実現することができる。なお反射面は大部分の光が全反射するように設定されるが、反射面への入射角が臨界角より大きくなる一部の光、つまり反射面に直交する傾向の一部の光は反射面で全反射せずに反射面から樹脂モールドの外に出射する。
【0013】
第2に、前記反射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線よりも外側に張り出した面であることを特徴とし、これにより反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合を小さくすることが可能となり、出射面方向の一定方向に指向し、他の方向に漏れる光の割合が少ない発光ダイオードを実現することができる。
【0014】
第3に、主として樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴とし、これにより、発光素子中心を通って発光素子法線方向に進む光も存在するため真正面から見ても明るく感じ、また同時に出射面方向の側方に向かう一定方向に指向する光も存在することから、本発明による発光ダイオードを用いて図6に示すような表示灯や看板などの光源を製作した場合、遠くからも認知でき、同時に下から見る人にとっても明るく感じる光源を実現することができる。
【0015】
第4に、前記反射面に密接した反射膜を具備していることを特徴とし、これにより、反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合がさらに小さい発光ダイオードを実現することができる。
【0016】
第5に、本発明による発光ダイオードを複数並設するのに、出射面の向きをそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴し、これにより、出射面方向の一定方向に指向した発光ダイオード光源を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂モールドに設けられた反射面と出射面により、出射光を出射面方向の側方に向かう一定方向に指向した発光ダイオードを実現することができる。また本発明による発光ダイオードを用いて表示灯や看板などに用いる光源を製作する場合、プリント基板への取り付け角度を変えることなく、図6に示すように、下方から表示灯や看板などを見ても明るく感じる光源を提供するこが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図2】図1に示す発光ダイオードの正面図である。
【図3】図1に示す発光ダイオードの平面図である。
【図4】図1に示す発光ダイオードの光の進行方向を側面図に示したものである。
【図5】図1に示す発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図6】図1に示す発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図7】地上の人と表示灯や看板、および理想的なその光との関係を表す図である。
【図8】実施例に係る発光ダイオードの反射面での光の挙動を説明する図である。
【図9】実施例に係る発光ダイオードの出射面での光の挙動を説明する図である。
【図10】本発明の第二実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図11】図10に示す発光ダイオードの正面図である。
【図12】図10に示す発光ダイオードの平面図である。
【図13】従来の発光ダイオードを示す図である。
【図14】従来の発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図15】従来の発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図16】従来技術を用いた表示灯や看板およびその光と地上の人との関係を表す図である。
【図17】従来の発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図18】従来技術を用いた表示灯や看板およびその光と地上の人との関係を表す図である。
【図19】従来の発光ダイオードを示す図である。
【図20】従来の発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図21】本発明の第三実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図22】本発明の第四実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図23】図22に示す発光ダイオードの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は本発明に係る発光ダイオードの一実施例を示した側面図、図2は本発明に係る発光ダイオードの第一の実施例を示した正面図であり一部を断面表示したものである。また図3は本発明に係る発光ダイオードの第一の実施例を示した平面図である。この発光ダイオード1は、従来の発光ダイオードと同様に、リード端子2aの先端部に固着された発光素子3が金属細線4を介して他端のリード端子2bに接続され、発光素子を含むリード端子端部は透光性樹脂で封止され、樹脂モールド5を形成している。該樹脂モールド5は発光素子3中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面(図2のX−X断面視)での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点15が発光素子表面法線M上の点(発光素子3の垂直方向上方延長線上の点)近傍にあって、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の点16bに至る面で出射面5bを形成している。
【0020】
反射面5aは、頂点15と反射面側の裾部の点16aを結んだ仮想的な直線Aよりも内側に窪んだ凹面で形成されている。また出射面5bは、頂点15と前記出射面側の裾部の点16bを結んだ仮想的な直線Bよりも外側に張り出した凸面で形成されている。そしてこの発光ダイオード1の樹脂モールド5の形状は図2で明らかなように、頂点15は横長の稜線状に形成され、反射面5aが羽子板状に矩形形成された扁平形態にされたことを特徴としており、図3の平面視で見るように樹脂モールド5の裾部は四角状に形成されている。
【0021】
図4にこの発光ダイオード1の発光素子3から放たれた光の進み方を示す。発光素子3から反射面5a側に放出された光は、反射面5aで全反射されたのち、出射面5bに到達し、屈折して樹脂モールド5の外に照射され、また発光素子3から出射面5b側に放出された光は、出射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に照射される。このときに反射面5aが羽子板状に矩形形成された扁平形態にされているので反射面5aでの光の全反射を効率的にできる。反射面5aは、光の全反射を効率的に行えるように設定されるのであるが、反射面5aと発光素子3との位置関係により発光素子3から発するすべての光が全反射できない場合もあり、その場合は、例えば、図4に示す反射面5aに直交する傾向の光のように反射面5aより樹脂モールド5の外に照射される光も存在する。
【0022】
図5に、図1〜3に示す形態の本発明による発光ダイオードの指向特性を示す。この図に示すように、本発明による発光ダイオードの指向特性としては、角度の定義を発光素子3法線方向を0度として、反射面5a方向をプラス側、出射面5b方向をマイナス側とすると概ね0度からマイナス側のみを照らす特性を持つ。なお若干の光が反射面5aで全反射できずプラス側にも進むが、この光の割合は小さい。従って、反射面5aに入射した光の概ね大半の光が全反射することになる。
【0023】
図6は本発明による発光ダイオードを用いた光源の例である。ここでは複数個の本発明による発光ダイオード1が反射面5aを上側に向けてプリント基板6側面に装着されている。これら発光ダイオードのリード端子には図示していない電源供給装置により電力が供給されて面状に発光する光源を構成している。この発光ダイオード1の指向特性は図5に示すものであるため、リード端子を折り曲げずにプリント基板6に装着しても、水平方向から斜め下方に向けて光は放たれる。すなわち、樹脂モールドに設けられた反射面と出射面により、プリント基板6の法線方向から法線に対して照明方向を求められる下方向の片側に概ね光を照射して、その反対側の上方には光をほとんど照射しないという特徴を有する
出射光を出射面方向の側方に向かう一定方向に指向した発光ダイオードを実現することができる。そのため、この光源を表示灯や看板に用いた場合には、図7に示す理想的な場合のように人の目に届かない上側にはほとんど光を放たず、人のいる下側の広い範囲を照らすことが可能となる。また、水平方向へ放たれる光も存在するため、遠く離れたところにいる人の目に届く光を発することが可能となる。
【0024】
ここで反射面5aについて詳細に述べる。反射面5aで全反射せずに樹脂モールド5の外に照射される光は無駄となるため、反射面5aではなるべく多くの光を全反射させることが好ましい。反射面5aの形状については、頂点15と裾部の点16aを結んだ仮想的な直線Aを基準とすると、1)仮想的な直線Aより膨らんだ面を反射面とする場合、2)仮想的な直線Aを反射面とした場合、3)仮想的な直線Aより窪ませた面を反射面とする場合の3種類が考えられる。以下にこの3つの場合での反射面での光の挙動について述べる。図8(a)は仮想的な直線Aより膨らんだ凸面を反射面5aとする場合、図8(b)は仮想的な直線Aに沿う平坦面を反射面5aとする場合、図8(c)は仮想的な直線Aより窪ませた凹面を反射面5aとする場合の光の進行を示した図である。どの形状であっても、反射面5aで全反射する光は存在し、全体として反射面5aから出射される光が少ないという特性をもつ発光ダイオードが実現するが、発光素子3から同じ方向に出射された光であっても図8(c)の窪ませた凹面を反射面5aとした場合の方が、図8(a)の膨らんだ凸面を反射面5aとする場合と比較して、反射面5aへの入射角が大きくなるため、全反射する光が多くなる。つまりは図8(c)の窪ませた凹面を反射面5aとするほうが無駄になる光が少なくなり、反射面形状としては好ましい。図8(c)の反射面は円弧状に湾曲した構成になっているが、複数本の直線または複数本の曲線、またはその組み合わせで屈曲した形状に構成しても良い。
【0025】
また出射面5bの形状については、図9(a)または図9(b)のように頂点15と裾部の点16bを結んだ仮想的な直線Bより膨らんだ凸面形状を取ることが好ましい。図9(c)のように直線Bに沿う平坦面を反射面5bとする場合、反射面5aで全反射した光は反射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に放出されるが、発光素子3から直接、出射面5bに入射する光の入射角が大きくなるため、出射面5bで全反射して無駄となる光が生じる。図9(a)の出射面は円弧状に湾曲した構成、図9(b)の出射面は3本の直線で構成されているが、複数本の直線、または複数本の曲線、またはその組み合わせで屈曲した形状に構成しても良い。
【0026】
以上は本発明による発光ダイオードの側面形状について述べてきたが、正面形状については、通常の発光ダイオードと同様に、必要な光の広がりに応じて樹脂モールドの形状を決めることが可能である。図10は本発明による第二実施例の側面図、図11は本発明による第二実施例の正面図、図12は本発明による第二実施例の平面図を示す。図10に示す側面形状は図1に示す実施例の側面形状と同じ特徴をもつ形状であり、樹脂モールド5は発光素子3の略上方の頂部を頂点15とした凸形状となっており、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の点16bに至る面で出射面5bを形成している。したがって光の進み方としては、発光素子3から反射面5a側に放出された光は、反射面5aで全反射されたのち、出射面5bに到達し、屈折して樹脂モールド5の外に照射され、また発光素子3から出射面5b側に放出された光は、出射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に照射され、出射面方向の一定方向に指向する光を放出する発光ダイオードとなる。図11に示す正面図では、樹脂モールド5は頂点15を頂部として左右になだらかに下降する形態の放物線状に湾曲した外形線をもつ、発光素子表面の法線を基準線とした対称形を成している。この樹脂モールド5は正面から見ると集束レンズの効果を持つため、発光素子から放出された光は、樹脂モールド表面で屈折し、発光素子表面の法線の略平行方向に集束された光となる。
【0027】
この場合も、表示灯や看板の光源に用いた場合は、図7に示すような特性を得ることが可能であるが、横方向(地上で表示灯や看板を見る人にとって、光源面に対して平行方向)へは、発光ダイオード1と比較して集束度が大きくなるため照射範囲は狭くなり、その一方で、照射範囲内での光の放射照度としては大きくなる。このように、表示灯や看板の用途、必要な明るさ、プリント基板へ発光ダイオードを装着するときの間隔などを考慮し、必要な横方向の広がりに応じて正面の断面形状を採用することが可能である。
【0028】
図21は本発明による別実施例であり、樹脂モールドの形状5などは図1に示す第一実施例と同じ特徴を持つが、反射面5aに密着して配設された反射膜17が具備されることにより、反射膜17が無い場合には反射面5aにて全反射せずに反射面5aから樹脂モールド5の外に放出されていた光も含めて、反射面5aおよび反射膜17で反射することができ、有効な出射面方向の光を増やすことができる。この場合の反射膜は、アルミニウム、銀などの高反射率金属の蒸着、化学的被着または箔の接着などの手段により反射面5aに具備することができる。さらに反射膜17としては高反射率、つまり透過率の小さいものが選定され、反射面5a方向に漏れる光も遮蔽されて少なくなることから、コンサートホールに設置する足元灯のように床面は照らす必要があるが上方には光を漏らしたくない用途にも有効である。反射膜17は反射面5a全体を覆う形で具備しても良いし、反射面5aのうち、発光素子3からの光の入射角が臨界角以下で反射膜17無しでは全反射できない領域のみに部分的に反射膜17を具備しても良い。
【0029】
また図1はリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向に平行で、発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面を記載したものであるが、リード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向と反射面5a、出射面5bの位置関係は図1に示す第一の実施例に限定されたものではなく、例えば、図21および図22の本発明に関わる第四の実施例の側面図及び正面図に示すようにリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向が反射面5a、出射面5bを基準にして90度回転した構成とすることも可能であり、光が必要な方向と発光ダイオードを設置する基板の仕様を勘案してリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向と反射面5a、出射面5bの向きを設定することが可能である。
【実施例1】
【0030】
本発明による発光ダイオードは第1に、電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線、樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とし、これにより発光素子からの光の大部分は出射面から出射され、一定方向に指向するという特徴をもった発光ダイオードである。
【0031】
本発明による発光ダイオードは第2に、前記反射面が発光素子上方の頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線より張り出した面であることを特徴とし、これにより反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合を小さくすることが可能となり、出射面方向の一定方向に指向し、他の方向に漏れる光の割合が少ないという特徴をもった発光ダイオードである。
【0032】
本発明による発光ダイオードは第3に、主として、樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴としている発光ダイオードである。本発明による第3の発光ダイオードは、発光素子法線方向に進む光も存在するため真正面から見ても明るく感じ、また同時に出射面方向の一定方向に指向する光も存在することから、本発明による発光ダイオードを用いて表示灯や看板などの光源を製作すると、遠くからも認知でき、同時に下から見る人にとっても明るく感じる光源を実現することができる。
【0033】
本発明による発光ダイオードは第4に、反射面に密接して配設された反射膜を具備していることを特徴とする発光ダイオードである。本発明による第4の発光ダイオードは、反射面および反射面に密接して具備された反射膜によりさらに効果的に光を反射することができ、有効な出射面方向の光を増やすことができる。
【0034】
第5に示す発光ダイオード光源は、本発明による発光ダイオードを出射面の向きをそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴とする発光ダイオード光源であり、出射面方向の一定方向に指向する発光ダイオードの光源を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による発光ダイオードは、一定方向に指向することを求められる照明用光源に使用可能である。表示灯や看板の他にも、イカ釣り漁船などに使用される集魚灯は、船上に設置して海水面を照らすことが要求されることから、本発明による発光ダイオードが利用できる。また、パトライト、屋外照明も高所に設置される場合が多いため、本発明による発光ダイオードが利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1、10、18、19、21、22、 発光ダイオード
2a、2b リード端子
3 発光素子
4 金属細線
5 樹脂モールド
5a 樹脂モールド反射面
5b 樹脂モールド出射面
5c 樹脂モールド底面
6 プリント基板
7 高所に設置された表示灯または看板
8 地上の人
11、31、32 発光ダイオード光源
15 頂点
16a、16b 裾部の点
17 反射膜
A、B 仮想的な直線
C 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード、特に、表示灯、看板などの一定方向に指向することを求められる照明用光源に用いられる発光ダイオードおよび発光ダイオード光源に関し、プリント基板に対する取り付け角度を変更することなく、プリント基板の法線方向から法線に対して照明方向を求められる片側に概ね光を照射して、その反対側には光をほとんど照射しないという特徴を有するものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13を参照して、従来の発光ダイオードの構成を説明する。従来の発光ダイオード21は、2本のリード端子2a、2bのうち、一方のリード端子2aの先端部に発光素子3が固着され、この発光素子3と他方のリード端子2bの間を金属細線4で接続されている。発光素子3が組み込まれたリード端子2a、2bの先端部分は、透光性樹脂により封止されており、樹脂モールド5を形成している。
【0003】
樹脂モールド5は、その底面5cに垂直な光軸Cに対して回転対称形の砲弾型形状であり、また、発光素子3は略光軸上に設置されているので、この発光ダイオード21の指向性は図14に示すような0°を中心として前方指向的に集束されたものになる。集束レンズとしての役割も持つ樹脂モールド5の作用により光が照射される範囲は比較的狭い。
【0004】
図15は複数個の従来の発光ダイオードから構成される発光ダイオード光源31を示している。この発光ダイオード光源31は、発光ダイオード21が、マトリックス状にプリント基板6に取り付けられており、図示していない電源供給装置により電力が供給され面状に発光する光源を構成している。なお発光ダイオードは、通常、発光ダイオード底面がプリント基板6に平行になるように取り付けられ、その場合、光の照射方向はプリント基板の取り付け面に対して直交する方向となる。
【0005】
発光ダイオードは、出力の向上により逐次に表示灯や看板などの光源として用いられるようになっているが、表示灯や看板については、ビルの壁など高所に設置されることも多い。以下、高所に取り付けられる表示灯や看板について述べる。
【0006】
配置の制約から、発光ダイオードが取り付けられたプリント基板は、表示灯や看板の表面に対して平行に取り付けられるのが通常であるため、図15に示す発光ダイオード光源を表示灯や看板の光源として用いた場合、個々の発光ダイオードの指向特性は図14に示す前方指向的に集束されたものであるため、表示灯や看板を真正面から見た場合に最も明るく感じる。図16には発光ダイオード光源を使った表示灯や看板7からの光の向きと地上にいる人8との関係を示すが、表示灯や看板7が高所に取り付けられるので人間は前方指向的に集束された光の真正面からではなく、前方指向的に集束された光の照射範囲より外れた下方より表示灯や看板を見ることになるため、光源として用いた発光ダイオードの特性より、この光源を暗く感じてしまう。またこの表示灯や看板からは水平方向から上方にも光を照射しているが、高所に設置した表示灯や看板を上方から見ることは通常ないため、この上方に向かう光は無駄となっており、エネルギの有効利用の観点からも問題である。実際には、発光ダイオードの特性上暗く感じる下方で見る人に対して十分な光になるように光源の出力が決定されるため、上方を照らす無駄となる光も増大する、ということになる。
【0007】
これを解決するためには、図17のようにリード端子を折り曲げ加工して、プリント基板6上に取り付けた発光ダイオード光源が考えられるが、この折り曲げ加工は煩雑であるため製造コストの増大を招くという問題点がある。また、この光源を表示灯や看板の光源として用いても、使用する発光ダイオード自体の指向特性は図14に示す前方指向的に集束されたものであるため、図18に示すような発光ダイオード光源を使った表示灯や看板7からの光の向きと地上にいる人8との関係となり、地上のある領域にいる人には明るく感じるが、発光ダイオード光源の照射範囲から外れた人にとっては暗く感じる、ということになる。つまりは、この照射範囲から外れたところから見難くなるため、多くの人に正確な情報を伝えるという目的で用いられる表示灯や看板の目的には好ましくない。また、光源から水平方向に進む光がほとんど無いため、遠くの人の目に届き難いという欠点がある。
【0008】
またプリント基板への取り付け角度を変えることなく、光が発せられる方向を変えることのできる発光ダイオードとして特許文献1に示される発光ダイオードが提案されている。この特許文献1に示される発光ダイオードは図19に示すように、傾斜した集束レンズを用いて光の発せられる方向を変えたものであり、図19においては左斜め上の方向に向けて光が発するように構想されている。しかしながら、この発光ダイオードの指向特性は図20に示すものであり、光の発せられる方向は変わっているものの、照射範囲は−15度〜−40度程度と斜め方向へ指向して集束された比較的狭い範囲であることから、表示灯や看板の光源に用いた場合の特性は、リード端子を折り曲げ加工して取り付けた場合である図18と同等になる。したがってこの場合でも、リード端子を折り曲げてプリント基板に取り付けることによる製造コストの増大は回避できるものの、表示灯や看板の光源として用いたときの特性は図17に示す光源と同様な欠点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−264839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術欄に説明した欠点の解決を課題とするものであり、表示灯や看板から発せられる光は、理想的には、図7に示すように表示灯や看板7表面の法線方向Hから下の領域のみを照らし、なおかつ地上にいる人8の位置によらず明るい光である必要がある。また無駄となる上の領域を照らさないことが好ましい。さらに光源を製作するにあたっては、発光ダイオードのリード端子を折り曲げ加工してプリント基板への取り付け角度を変えるというような製造コストの増大する製造方法は避ける必要がある。
【0011】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、プリント基板への取り付け角度を変えることなく、図7のような法線方向Hから下の領域のみを照らす特性を持つ発光ダイオード光源、ならびにその光源に使用する発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1に、電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線などを有し、これらを透光性樹脂で封止する樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、該樹脂モールドは発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とし、これにより発光素子からの光の大部分は出射面から出射され、つまりは発光ダイオードの出射面側方に向けて一定方向に指向する発光ダイオードを実現することができる。なお反射面は大部分の光が全反射するように設定されるが、反射面への入射角が臨界角より大きくなる一部の光、つまり反射面に直交する傾向の一部の光は反射面で全反射せずに反射面から樹脂モールドの外に出射する。
【0013】
第2に、前記反射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線よりも外側に張り出した面であることを特徴とし、これにより反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合を小さくすることが可能となり、出射面方向の一定方向に指向し、他の方向に漏れる光の割合が少ない発光ダイオードを実現することができる。
【0014】
第3に、主として樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴とし、これにより、発光素子中心を通って発光素子法線方向に進む光も存在するため真正面から見ても明るく感じ、また同時に出射面方向の側方に向かう一定方向に指向する光も存在することから、本発明による発光ダイオードを用いて図6に示すような表示灯や看板などの光源を製作した場合、遠くからも認知でき、同時に下から見る人にとっても明るく感じる光源を実現することができる。
【0015】
第4に、前記反射面に密接した反射膜を具備していることを特徴とし、これにより、反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合がさらに小さい発光ダイオードを実現することができる。
【0016】
第5に、本発明による発光ダイオードを複数並設するのに、出射面の向きをそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴し、これにより、出射面方向の一定方向に指向した発光ダイオード光源を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂モールドに設けられた反射面と出射面により、出射光を出射面方向の側方に向かう一定方向に指向した発光ダイオードを実現することができる。また本発明による発光ダイオードを用いて表示灯や看板などに用いる光源を製作する場合、プリント基板への取り付け角度を変えることなく、図6に示すように、下方から表示灯や看板などを見ても明るく感じる光源を提供するこが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図2】図1に示す発光ダイオードの正面図である。
【図3】図1に示す発光ダイオードの平面図である。
【図4】図1に示す発光ダイオードの光の進行方向を側面図に示したものである。
【図5】図1に示す発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図6】図1に示す発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図7】地上の人と表示灯や看板、および理想的なその光との関係を表す図である。
【図8】実施例に係る発光ダイオードの反射面での光の挙動を説明する図である。
【図9】実施例に係る発光ダイオードの出射面での光の挙動を説明する図である。
【図10】本発明の第二実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図11】図10に示す発光ダイオードの正面図である。
【図12】図10に示す発光ダイオードの平面図である。
【図13】従来の発光ダイオードを示す図である。
【図14】従来の発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図15】従来の発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図16】従来技術を用いた表示灯や看板およびその光と地上の人との関係を表す図である。
【図17】従来の発光ダイオードを用いた発光ダイオード光源を表す図である。
【図18】従来技術を用いた表示灯や看板およびその光と地上の人との関係を表す図である。
【図19】従来の発光ダイオードを示す図である。
【図20】従来の発光ダイオードの指向性を表す図である。
【図21】本発明の第三実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図22】本発明の第四実施例に係る発光ダイオードの側面図である。
【図23】図22に示す発光ダイオードの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は本発明に係る発光ダイオードの一実施例を示した側面図、図2は本発明に係る発光ダイオードの第一の実施例を示した正面図であり一部を断面表示したものである。また図3は本発明に係る発光ダイオードの第一の実施例を示した平面図である。この発光ダイオード1は、従来の発光ダイオードと同様に、リード端子2aの先端部に固着された発光素子3が金属細線4を介して他端のリード端子2bに接続され、発光素子を含むリード端子端部は透光性樹脂で封止され、樹脂モールド5を形成している。該樹脂モールド5は発光素子3中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面(図2のX−X断面視)での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点15が発光素子表面法線M上の点(発光素子3の垂直方向上方延長線上の点)近傍にあって、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の点16bに至る面で出射面5bを形成している。
【0020】
反射面5aは、頂点15と反射面側の裾部の点16aを結んだ仮想的な直線Aよりも内側に窪んだ凹面で形成されている。また出射面5bは、頂点15と前記出射面側の裾部の点16bを結んだ仮想的な直線Bよりも外側に張り出した凸面で形成されている。そしてこの発光ダイオード1の樹脂モールド5の形状は図2で明らかなように、頂点15は横長の稜線状に形成され、反射面5aが羽子板状に矩形形成された扁平形態にされたことを特徴としており、図3の平面視で見るように樹脂モールド5の裾部は四角状に形成されている。
【0021】
図4にこの発光ダイオード1の発光素子3から放たれた光の進み方を示す。発光素子3から反射面5a側に放出された光は、反射面5aで全反射されたのち、出射面5bに到達し、屈折して樹脂モールド5の外に照射され、また発光素子3から出射面5b側に放出された光は、出射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に照射される。このときに反射面5aが羽子板状に矩形形成された扁平形態にされているので反射面5aでの光の全反射を効率的にできる。反射面5aは、光の全反射を効率的に行えるように設定されるのであるが、反射面5aと発光素子3との位置関係により発光素子3から発するすべての光が全反射できない場合もあり、その場合は、例えば、図4に示す反射面5aに直交する傾向の光のように反射面5aより樹脂モールド5の外に照射される光も存在する。
【0022】
図5に、図1〜3に示す形態の本発明による発光ダイオードの指向特性を示す。この図に示すように、本発明による発光ダイオードの指向特性としては、角度の定義を発光素子3法線方向を0度として、反射面5a方向をプラス側、出射面5b方向をマイナス側とすると概ね0度からマイナス側のみを照らす特性を持つ。なお若干の光が反射面5aで全反射できずプラス側にも進むが、この光の割合は小さい。従って、反射面5aに入射した光の概ね大半の光が全反射することになる。
【0023】
図6は本発明による発光ダイオードを用いた光源の例である。ここでは複数個の本発明による発光ダイオード1が反射面5aを上側に向けてプリント基板6側面に装着されている。これら発光ダイオードのリード端子には図示していない電源供給装置により電力が供給されて面状に発光する光源を構成している。この発光ダイオード1の指向特性は図5に示すものであるため、リード端子を折り曲げずにプリント基板6に装着しても、水平方向から斜め下方に向けて光は放たれる。すなわち、樹脂モールドに設けられた反射面と出射面により、プリント基板6の法線方向から法線に対して照明方向を求められる下方向の片側に概ね光を照射して、その反対側の上方には光をほとんど照射しないという特徴を有する
出射光を出射面方向の側方に向かう一定方向に指向した発光ダイオードを実現することができる。そのため、この光源を表示灯や看板に用いた場合には、図7に示す理想的な場合のように人の目に届かない上側にはほとんど光を放たず、人のいる下側の広い範囲を照らすことが可能となる。また、水平方向へ放たれる光も存在するため、遠く離れたところにいる人の目に届く光を発することが可能となる。
【0024】
ここで反射面5aについて詳細に述べる。反射面5aで全反射せずに樹脂モールド5の外に照射される光は無駄となるため、反射面5aではなるべく多くの光を全反射させることが好ましい。反射面5aの形状については、頂点15と裾部の点16aを結んだ仮想的な直線Aを基準とすると、1)仮想的な直線Aより膨らんだ面を反射面とする場合、2)仮想的な直線Aを反射面とした場合、3)仮想的な直線Aより窪ませた面を反射面とする場合の3種類が考えられる。以下にこの3つの場合での反射面での光の挙動について述べる。図8(a)は仮想的な直線Aより膨らんだ凸面を反射面5aとする場合、図8(b)は仮想的な直線Aに沿う平坦面を反射面5aとする場合、図8(c)は仮想的な直線Aより窪ませた凹面を反射面5aとする場合の光の進行を示した図である。どの形状であっても、反射面5aで全反射する光は存在し、全体として反射面5aから出射される光が少ないという特性をもつ発光ダイオードが実現するが、発光素子3から同じ方向に出射された光であっても図8(c)の窪ませた凹面を反射面5aとした場合の方が、図8(a)の膨らんだ凸面を反射面5aとする場合と比較して、反射面5aへの入射角が大きくなるため、全反射する光が多くなる。つまりは図8(c)の窪ませた凹面を反射面5aとするほうが無駄になる光が少なくなり、反射面形状としては好ましい。図8(c)の反射面は円弧状に湾曲した構成になっているが、複数本の直線または複数本の曲線、またはその組み合わせで屈曲した形状に構成しても良い。
【0025】
また出射面5bの形状については、図9(a)または図9(b)のように頂点15と裾部の点16bを結んだ仮想的な直線Bより膨らんだ凸面形状を取ることが好ましい。図9(c)のように直線Bに沿う平坦面を反射面5bとする場合、反射面5aで全反射した光は反射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に放出されるが、発光素子3から直接、出射面5bに入射する光の入射角が大きくなるため、出射面5bで全反射して無駄となる光が生じる。図9(a)の出射面は円弧状に湾曲した構成、図9(b)の出射面は3本の直線で構成されているが、複数本の直線、または複数本の曲線、またはその組み合わせで屈曲した形状に構成しても良い。
【0026】
以上は本発明による発光ダイオードの側面形状について述べてきたが、正面形状については、通常の発光ダイオードと同様に、必要な光の広がりに応じて樹脂モールドの形状を決めることが可能である。図10は本発明による第二実施例の側面図、図11は本発明による第二実施例の正面図、図12は本発明による第二実施例の平面図を示す。図10に示す側面形状は図1に示す実施例の側面形状と同じ特徴をもつ形状であり、樹脂モールド5は発光素子3の略上方の頂部を頂点15とした凸形状となっており、頂点15から一方の裾部の点16aに至る面で反射面5aを、頂点15からもう一方の裾部の点16bに至る面で出射面5bを形成している。したがって光の進み方としては、発光素子3から反射面5a側に放出された光は、反射面5aで全反射されたのち、出射面5bに到達し、屈折して樹脂モールド5の外に照射され、また発光素子3から出射面5b側に放出された光は、出射面5bで屈折して樹脂モールド5の外に照射され、出射面方向の一定方向に指向する光を放出する発光ダイオードとなる。図11に示す正面図では、樹脂モールド5は頂点15を頂部として左右になだらかに下降する形態の放物線状に湾曲した外形線をもつ、発光素子表面の法線を基準線とした対称形を成している。この樹脂モールド5は正面から見ると集束レンズの効果を持つため、発光素子から放出された光は、樹脂モールド表面で屈折し、発光素子表面の法線の略平行方向に集束された光となる。
【0027】
この場合も、表示灯や看板の光源に用いた場合は、図7に示すような特性を得ることが可能であるが、横方向(地上で表示灯や看板を見る人にとって、光源面に対して平行方向)へは、発光ダイオード1と比較して集束度が大きくなるため照射範囲は狭くなり、その一方で、照射範囲内での光の放射照度としては大きくなる。このように、表示灯や看板の用途、必要な明るさ、プリント基板へ発光ダイオードを装着するときの間隔などを考慮し、必要な横方向の広がりに応じて正面の断面形状を採用することが可能である。
【0028】
図21は本発明による別実施例であり、樹脂モールドの形状5などは図1に示す第一実施例と同じ特徴を持つが、反射面5aに密着して配設された反射膜17が具備されることにより、反射膜17が無い場合には反射面5aにて全反射せずに反射面5aから樹脂モールド5の外に放出されていた光も含めて、反射面5aおよび反射膜17で反射することができ、有効な出射面方向の光を増やすことができる。この場合の反射膜は、アルミニウム、銀などの高反射率金属の蒸着、化学的被着または箔の接着などの手段により反射面5aに具備することができる。さらに反射膜17としては高反射率、つまり透過率の小さいものが選定され、反射面5a方向に漏れる光も遮蔽されて少なくなることから、コンサートホールに設置する足元灯のように床面は照らす必要があるが上方には光を漏らしたくない用途にも有効である。反射膜17は反射面5a全体を覆う形で具備しても良いし、反射面5aのうち、発光素子3からの光の入射角が臨界角以下で反射膜17無しでは全反射できない領域のみに部分的に反射膜17を具備しても良い。
【0029】
また図1はリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向に平行で、発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面を記載したものであるが、リード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向と反射面5a、出射面5bの位置関係は図1に示す第一の実施例に限定されたものではなく、例えば、図21および図22の本発明に関わる第四の実施例の側面図及び正面図に示すようにリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向が反射面5a、出射面5bを基準にして90度回転した構成とすることも可能であり、光が必要な方向と発光ダイオードを設置する基板の仕様を勘案してリード端子2aと他端のリード端子2bの並び方向と反射面5a、出射面5bの向きを設定することが可能である。
【実施例1】
【0030】
本発明による発光ダイオードは第1に、電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線、樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とし、これにより発光素子からの光の大部分は出射面から出射され、一定方向に指向するという特徴をもった発光ダイオードである。
【0031】
本発明による発光ダイオードは第2に、前記反射面が発光素子上方の頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線より張り出した面であることを特徴とし、これにより反射面で全反射されずに反射面から漏れる光の割合を小さくすることが可能となり、出射面方向の一定方向に指向し、他の方向に漏れる光の割合が少ないという特徴をもった発光ダイオードである。
【0032】
本発明による発光ダイオードは第3に、主として、樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴としている発光ダイオードである。本発明による第3の発光ダイオードは、発光素子法線方向に進む光も存在するため真正面から見ても明るく感じ、また同時に出射面方向の一定方向に指向する光も存在することから、本発明による発光ダイオードを用いて表示灯や看板などの光源を製作すると、遠くからも認知でき、同時に下から見る人にとっても明るく感じる光源を実現することができる。
【0033】
本発明による発光ダイオードは第4に、反射面に密接して配設された反射膜を具備していることを特徴とする発光ダイオードである。本発明による第4の発光ダイオードは、反射面および反射面に密接して具備された反射膜によりさらに効果的に光を反射することができ、有効な出射面方向の光を増やすことができる。
【0034】
第5に示す発光ダイオード光源は、本発明による発光ダイオードを出射面の向きをそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴とする発光ダイオード光源であり、出射面方向の一定方向に指向する発光ダイオードの光源を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による発光ダイオードは、一定方向に指向することを求められる照明用光源に使用可能である。表示灯や看板の他にも、イカ釣り漁船などに使用される集魚灯は、船上に設置して海水面を照らすことが要求されることから、本発明による発光ダイオードが利用できる。また、パトライト、屋外照明も高所に設置される場合が多いため、本発明による発光ダイオードが利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1、10、18、19、21、22、 発光ダイオード
2a、2b リード端子
3 発光素子
4 金属細線
5 樹脂モールド
5a 樹脂モールド反射面
5b 樹脂モールド出射面
5c 樹脂モールド底面
6 プリント基板
7 高所に設置された表示灯または看板
8 地上の人
11、31、32 発光ダイオード光源
15 頂点
16a、16b 裾部の点
17 反射膜
A、B 仮想的な直線
C 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線などを有し、これらを透光性樹脂で封止する樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、該樹脂モールドは発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光の大部分を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
請求項1の発光ダイオードであって、前記反射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ凹面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線よりも外側に張り出した凸面であることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項3】
請求項1の発光ダイオードであって、主として、樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項4】
請求項1の発光ダイオードであって、反射面に密接した反射膜を具備していることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項5】
請求項1の発光ダイオードを複数並設するのに、出射面の向きを同一方向にそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴とする発光ダイオード光源。
【請求項1】
電源供給用のリード端子、発光素子、発光素子とリード端子を結ぶ金属細線などを有し、これらを透光性樹脂で封止する樹脂モールドからなる発光ダイオードであって、該樹脂モールドは発光素子中心を通って樹脂モールド底面に垂直な面での断面形状が凸形状であり、凸形状の頂点が発光素子表面法線上の点近傍にあって、凸形状を構成する二つの稜線のうち、一方が発光素子からの光の大部分を全反射させる反射面を形成し、もう一方の面が前記反射面で反射した光と発光素子から直接到達した光を樹脂モールドの外に出射させる出射面を形成していることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
請求項1の発光ダイオードであって、前記反射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ直線よりも内側に窪んだ凹面で形成され、前記出射面が発光素子上方の略頂部と発光素子側方の樹脂モールド裾部を結んだ線よりも外側に張り出した凸面であることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項3】
請求項1の発光ダイオードであって、主として、樹脂モールド底面法線方向を含んだ前記出射面方向に出射し、反射面で全反射できなかった光を除いて反射面側には光を出射しないことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項4】
請求項1の発光ダイオードであって、反射面に密接した反射膜を具備していることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項5】
請求項1の発光ダイオードを複数並設するのに、出射面の向きを同一方向にそろえてプリント基板上に装着されていることを特徴とする発光ダイオード光源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−171412(P2010−171412A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291679(P2009−291679)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(391039416)島根電工株式会社 (4)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(506330667)株式会社トリコン (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(391039416)島根電工株式会社 (4)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(506330667)株式会社トリコン (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]