説明

発光ダイオード用レンズ及び発光ダイオード光源装置

【課題】 耐熱性、耐紫外線性などの耐候性、経時安定性にも優れ、LED光源装置からの光を安定した色調で外部に放出できるLED用レンズ及び耐熱性、耐紫外線性などの耐候性、経時安定性に優れ、安定した色調で発光することができるLED光源装置を得る。
【解決手段】 レンズ付LED光源装置2のレンズとして使用されるLED用レンズ1であって、レンズ体11が耐熱性及び耐紫外線性を有する素材により形成されると共に、耐熱性及び耐紫外線性を有する素材を基材とする蛍光体層12がレンズ体11のLED光源装置側に設けられたLED用レンズ1及びこのLED用レンズ1を用いたLED光源装置2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード用レンズ及び発光ダイオード光源装置に関し、より詳細には、レンズ付発光ダイオード光源装置のレンズとして使用される発光ダイオード用レンズであって、蛍光体層を有する発光ダイオード用レンズ及びこれを使用した発光ダイオード光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、LEDと略す)は、LEDダイ(発光素子)に電流を流すことにより、LEDダイそのものが発光する製品であり、交通信号機、ストップランプ、ディスプレイ、一般用照明、自動車用部品(パネル表示器、車内灯等)などに使用されており、最近では、所謂、高出力LEDが開発され、例えば図2に示すような高出力LED光源装置が開発されている。
【0003】
図2に示す高出力LED光源装置は、所謂、レンズ付樹脂封止型LED光源装置であり、図中、1’はLED用レンズ、2’はLED光源装置である。LED用レンズ1’は、透明素材によって、底面に鍔部11aを有する略ドーム形状に成形されたものである。LED光源装置2’は、遮光性素材からなり、上面が開口し、その開口部21aの下方側壁に段部21bが設けられた筐体21を備え、筐体21の底面には、凹部22aを有するヒートシンク22が組み込まれている。そして、ヒートシンク22の凹部22aの上面に銀ペースト等によりLEDダイ24が接着され、LEDダイ24の表面電極は筐体21の側壁から挿入された電極23に導電性ワイヤ25によって接続されている。LEDダイ24は、コーティング部4によって覆われている。そして、筐体21内には、樹脂モールド26がLED用レンズ1’の下面との間に空隙が生じないように充填され、筐体21の段部21bの上面には、LED用レンズ1’の底面が接着されている。
【0004】
コーティング部4は、エポキシ樹脂などの透光性樹脂に蛍光体が分散したものである。この蛍光体は、LEDダイが発生した光の波長を変換して、LEDダイの発光とは異なる波長の光を発光させるものであり、例えば一般照明用に使用される白色LED光源装置には、青色LEDダイに対してYAG蛍光体、紫外線LEDダイに対してR,G,B(赤、緑、青色)蛍光体が使用されている。
【0005】
このようなLED光源装置の封止材料、レンズ素材として、従来より、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、光学ナイロン、エポキシ樹脂、環状オレフィン共重合体などが使用されているが、これらの材料は、光透過特性が経時的に劣化し易いという問題があり、例えばこれらの中でも汎用されているエポキシ樹脂は、熱、紫外線による劣化が激しく、150℃、700時間の加熱試験によって、茶色乃至は黄色に変色してしまう。このような変色が生じると、安定した色調の光が得られないことから、エポキシ樹脂などに代わる耐熱性、耐紫外線性などに優れ、光透過性の経時的安定に優れる透光性素材が望まれていた。LEDダイは、電流を投入すればするほど、発光量も比例的に向上するが、その一方で発熱量も大幅に上昇することから、特に、高出力LEDダイについては、安定した色調の光を得るために、封止材料、レンズ素材に使用する材料が耐熱性、耐紫外線性に優れることが重要であった。
【0006】
そこで、このような要望に応えて、種々の技術が提案されており、例えば特許文献1には、レンズ素材として、シリコーン材料を使用することが提案されている。
【特許文献1】特開2000−150968号公報
【0007】
しかしながら、図2に示したように、蛍光体によってLEDダイの発光色を他の色に変換するLED光源装置の場合、更に、蛍光体の劣化によって、色調がずれたり、蛍光体の黒ずみによって光の外部への放出率が低下する場合があるという問題点もあった。特に、高出力LED装置の場合、上述したように発熱量が大きく、蛍光体の劣化は更に激しくなるため、蛍光体の安定性を高める技術が望まれていた。また、白色光源装置の場合、色調のずれなどが特に目立つため、色調の安定化が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性、耐紫外線性に優れ、安定した色調で発光するLED光源装置を得ることができるLED用レンズ、及びこのLED用レンズを用いることによって、耐熱性、耐紫外線性に優れ、安定した色調で発光することができるLED光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、レンズ付樹脂封止型LED光源装置の封止材兼レンズとして用いられるレンズ体の素材として、シリコーンレジン、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性、耐紫外線性に優れる透光性樹脂を使用すると共に、耐熱性、耐紫外線性に優れる透光性樹脂を基材とする蛍光体層をこのレンズ体の下面側(LED装置側)に設けることによって、蛍光体の安定性も向上させることができ、耐熱性、耐紫外線性に優れるLED用レンズが得られ、これによってLEDダイから発光された光を安定した色調で外部に放出することが可能となることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、(1)レンズ付LED光源装置のレンズとして使用されるLED用レンズであって、レンズ体が耐熱性及び耐紫外線性を有する素材により形成されると共に、耐熱性及び耐紫外線性を有する素材を基材とする蛍光体層が上記レンズ体のLED光源置側に設けられたことを特徴とするLED用レンズ、及び(2)上記(1)記載のLED用レンズを用いたことを特徴とするLED光源装置を提供する。
【0011】
ここで、上記LED用レンズとしては、上記レンズ体が上記LED光源装置に取り付けたときに該装置側となる面に平面部を有し、上記蛍光体層が上記レンズ体の上記平面部に積層されたものであると、より好適であり、また、上記レンズ体の上記素材が、350nm〜800nmの領域で80%以上の透過率を有するシリコーンレジン、シリコーンゴム及び/又はフッ素樹脂であると、より好適である。更に、上記レンズ体の表面がしぼ面又は梨子地面であったり、上記レンズ体が拡散材を含有したものであると、より好適である。
【0012】
上記LED用レンズの蛍光体層は、上記レンズ体と一体成形されたものであってもよいが、例えば上記レンズ体とは別に成形した上記蛍光体層を上記レンズ体に一体化したものなどのように、別々に成形された上記レンズ体と上記蛍光体層とが一体化したものであっても、より好適である。この場合、上記レンズ体の素材と上記蛍光体層の基材とが、シリコーンレジン又はシリコーンゴムとフッ素樹脂との組み合わせからなるものであれば、フッ素樹脂にシリコーンレジン又はシリコーンゴムが架橋接着したものであると、更に好適である。
【0013】
更に、本発明のLED用レンズに設けられた上記蛍光体層は、1層であってもよいが、例えば、蛍光体濃度が異なる層が2層以上積層されたものであったり、1層目の蛍光体層に含有される蛍光体と2層目に含有される蛍光体とでは種類や組み合わせが異なるというように、2層以上の蛍光体層を有するものであっても、より好適である。
【0014】
また更に、上記LED用レンズとしては、LED(ダイ)の発光スペクトルの主ピークが350nm〜570nmの範囲内に設定された発光ダイオード光源装置に用いられるものであれば、より好適である。
【0015】
そして、上記LED用レンズを上記発光ダイオード装置に取り付けたときに、上記蛍光体層よりも外側となる部分、即ち、上記LED用レンズにおいて、上記レンズ体側が上側としたとき、上記蛍光体層の上面上及び上面よりも上方の部分、上記蛍光体層の側面上及びそれよりも外方の部分の少なくともいずれかの部分に、紫外線吸収材を含有するものであると、更に好適である。なお、このように紫外線吸収材を含有させた構成の場合、例えばその構成が、レンズ体と蛍光体層との間に紫外線吸収材を含有する紫外線吸収層を介装させた構成であれば、紫外線吸収層の直径がレンズ体の下面の直径と同等であるか、レンズ体の下面の直径よりも大きくなるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性、耐紫外線性などの耐候性、経時安定性にも優れ、LED光源装置からの光を安定した色調で外部に放出できるLED用レンズ及び耐熱性、耐紫外線性などの耐候性、経時安定性に優れ、安定した色調で発光することができるLED光源装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を用いて更に詳しく説明する。図1は、本発明のLED用レンズ及びLED光源装置を説明するために、LED光源装置の一構成例を示した概略縦断面図であり、本発明のLED用レンズと、これを取り付ける前の高出力LED光源装置を示している。図1において、1はLED用レンズ、2はLED光源装置である。LED用レンズ1は、レンズ付樹脂封止型のLED光源装置2の封止材としての機能とレンズとしての機能を兼ねている。LED用レンズ1は、レンズ体11と、このレンズ体11の下面側に設けられた蛍光体層12とを備えている。レンズ体11は、耐熱性及び耐紫外線性を有する透光性樹脂素材によって、底面(LED光源装置2側)に鍔部11aを形成する平面部11bを備えた略ドーム形状となるように形成されている。蛍光体層12は、耐熱性及び耐紫外線性を有する透光性樹脂素材を基材とし、この基材中に蛍光体が分散したものである。
【0018】
LED光源装置2は、遮光性素材からなり、上面が開口した筐体21を備え、筐体21の開口部21aの下方側壁には、LED用レンズ1の蛍光体層12の下面周縁部12aが当接する段部21bが設けられている。この筐体21の底面は、凹部22aを有するヒートシンク22によって形成されている。そして、筐体21の側壁には、電極23の先端側23aが挿通されており、ヒートシンク22の凹部22aの上面にはLEDダイ(発光素子)24が載置されている。LEDダイ24は、ヒートシンク22の凹部22aの上面に設置されたシリコン基板上に銀ペースト等により接着される。表面電極は、導電性ワイヤ25によって電極23と電気的に接続されLEDダイに電流を流している。ヒートシンク22は、電気伝導度が高い銅などによって構成されており、発光により発生する余分な熱を吸収し、放散する。
【0019】
そして、筐体21内には、シリコーンゲル、シリコーンゴム等の透明弾性材料からなる樹脂モールド26がLED用レンズ1の下面(蛍光体層12の下面)との間に空隙が生じないように充填されている。LED光源装置2は、筐体21の段部21bの上面に、LED用レンズ1の蛍光体層12の下面周縁部12aを当接させ、常法により接着することによって、LED用レンズ1を取り付けたものである。なお、本発明のLED用レンズ、LED光源装置の構造は、図1の構成に限定されるものではなく、例えば図1のLED用レンズのレンズ体は、鍔部を有する構成となっているが、本発明のレンズ体は、鍔部を有さないドーム形状のものであってもよい。また、例えば図1のLED用レンズの蛍光体層は、レンズ体の下面部(平面部)よりも大径であり、LED光源装置の筐体の段部に嵌合するように、段部の径と同じ大きさとなっているが、本発明の蛍光体層は、筐体の開口部分を覆うことができ、レンズ体の底面より小径とならない限り、適宜大きさとすることができる。
【0020】
上記LED用レンズは、蛍光体層とレンズ体とを一体化することにより、蛍光体層とレンズ体との間に空気層が生じることを排除することができるため、3〜6%の輝度向上を図ることが可能となる。また、例えば、金型で成形された蛍光体シートを接着させて蛍光体層を形成すると、蛍光体層の寸法精度が高く、寸法のバラツキによる色調ムラを抑えることも可能となる。更に、LEDダイの波長ばらつきに合わせて、蛍光体層を形成することにより、安定した色調を出すことが可能となる。
【0021】
ここで、上記LED用レンズにおいて、耐熱性及び耐紫外線性を有する上記レンズ体の素材は、このような特性を有する透光性素材であれば、その種類が特に制限されるものではないが、レンズ体の素材は、光透過性に優れている透明樹脂であることが望ましいことを考慮すれば、350nm〜800nmの波長領域で80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の透過率を有するシリコーンレジン、シリコーンゴム及び/又はフッ素樹脂であると、より好適である。より具体的には、シリコーンレジン及びシリコーンゴムとしては、例えば加熱などによって硬化する付加反応硬化型シリコーンレジン組成物、縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物、過酸化物硬化型シリコーンレジン組成物などの硬化物が好適であり、より具体的には、有機基としてメチル基、フェニル基及び1,1,1−トリフルオロプロピル基から選ばれる1種又は2種以上、特にメチル基、フェニル基又はその両方を有するオルガノポリシロキサンを含有する付加反応硬化型シリコーンレジン組成物、縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物、過酸化物硬化型シリコーンレジン組成物などの硬化物がより好ましい。
【0022】
このようなシリコーンレジン組成物としては、市販品を使用し得、例えば付加反応硬化型のものとして信越化学工業(株)製KJR9022,9050,9031,632、GE東芝シリコーン(株)製XE14−907、東レダウコーニングシリコーン(株)製SR7010などを用いることができる。また、縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物としてSR−2410,SE−9140(東レダウコーニングシリコーン(株)製)などを用いることができる。
【0023】
また、本発明において、後述するように、フッ素樹脂に架橋接着させる場合、シリコーンレジン組成物として、付加反応硬化型シリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物を使用するのであれば、該シリコーンレジン組成物が、過酸化物を少量含有しているものであることが好ましい。この過酸化物の種類は、特に制限されるものではなく、無機過酸化物、有機過酸化物のいずれも使用することが可能であるが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどに代表されるジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシへキサン、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジブチルクミルパーオキサイドなどに代表されるジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレートなどに代表されるアルキルパーエステル類、その他にパーオキシケタール類、パーカーボネート類等の有機過酸化物がより好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0024】
このような過酸化物を含有する付加反応硬化型シリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物は、過酸化物を含有していないシリコーンレジン組成物、例えば、上述した市販の付加反応硬化型のシリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型のシリコーンレジン組成物に過酸化物を添加して混合することにより調製可能である。なお、過酸化物の添加量は、シリコーンレジン組成物全量に対して、好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%となるように添加すると好適である。過酸化物の添加量が少なすぎると、目的とする接着力の向上が得られ難くなる場合があり、多すぎると、シリコーンレジン、シリコーンゴムの部分が脆くなり易くなる場合がある。
【0025】
また、本発明において、後述するように、フッ素樹脂と架橋接着させる場合、シリコーンレジン組成物として、付加反応硬化型シリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型シリコーンレジン組成物を使用する場合、反応性ラジカルを発生する化合物を含有しているものも好ましい。このような化合物の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過硫化物等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上の組み合わせで添加することができる。
【0026】
このような化合物を含有する付加反応硬化型のシリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型のシリコーンレジン組成物は、反応性ラジカルを発生する化合物を含有していないシリコーンレジン組成物、例えば、上述した市販の付加反応硬化型のシリコーンレジン組成物又は縮合反応硬化型のシリコーンレジン組成物に反応性ラジカルを発生する化合物を添加して混合することにより調製可能である。なお、反応性ラジカルを発生する化合物の添加量は、シリコーンレジン組成物全量に対して、好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%となるように添加すると好適である。添加量が少なすぎると、目的とする接着力の向上が得られ難くなる場合があり、多すぎると、レンズの強度に影響が生じる場合がある。
【0027】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、メックスフロン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン−アルキルビニルエーテル共重合体、サイトップ、テフロンAF等が挙げられ、これらは1種単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明のレンズ体は、その製造方法が特に制限されるものではないが、例えば蛍光体層とは別に成形する場合、常法に従って、硬化前の上記素材を成形金型などに流し入れて、硬化、成形することによって製造される。ここで、本発明のレンズ体は、表面が平坦なものであってもよいが、表面に細かいちぢれ、しわを有するしぼ面、なしの実の皮の感じを出した梨子地面とすると、光を拡散すると共に、蛍光体の外観色を見え難くすることができるので、より好適である。ここで、上記レンズ体の表面にしぼ面加工又は梨子地面加工する方法としては、例えばサンドブラスト処理、ビーズブラスト処理、ケミカルエッチング処理などの方法が挙げられる。
【0029】
また、上記レンズ体が拡散材を含有するものであっても、同様に光を拡散すると共に、蛍光体の外観色を見え難くすることができるので、より好適である。拡散材としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。なお、レンズ体に拡散材が含有される場合、その含有量は、特に制限されるものではないが、通常、レンズ体全量に対して好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは1〜3質量%とすると好適である。拡散材の含有量が多すぎると、明るさが暗くなる場合があり、少なすぎると所期の効果が得られ難くなる場合がある。
【0030】
本発明の蛍光体層は、上述したように、蛍光体を透光性樹脂素材からなる基材中に分散させたものであり、基材は、レンズ体の素材と同じであっても、異なっていてもよく、レンズ体の好適な素材として例示した350nm〜800nmの波長領域で80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の透過率を有するシリコーンレジン、シリコーンゴム及び/又はフッ素樹脂の他にも、例えば信越化学工業(株)製KE951等のような半透明のシリコーンレジン、シリコーンゴム及び/又はフッ素樹脂等も好適に使用できる。また、レンズ体を成形する際に、レンズ体とは別に、硬化前の上記透光性樹脂からなる基材に蛍光体を分散させ、シート状又はフィルム状に成形し、所望の大きさの円形となるように切り取り、レンズ体の下面に適宜手段で積層したものであってもよい。この場合、上述したように、基材となる透光性基材は、レンズ体の素材と同じであってもよく、異なっていてもよいが、シリコーンレジン又はシリコーンゴムとフッ素樹脂との組み合わせの場合、レンズ体の素材をシリコーンレジン又はシリコーンゴム、蛍光体層の基材をフッ素樹脂とすると、より好適である。
【0031】
本発明の蛍光体層に含まれる蛍光体は、LEDダイが発生した光の波長を変換することができるものであれば、その種類は特に制限されるものではなく、使用するLED装置のLEDダイの種類、目的とする色調に合わせて適宜選定することができ、例えば、YAG系蛍光体、RGB蛍光体(赤色YS:Eu、緑色ZnS:Cu、Al、青色(Ba、Mg、青色Al1017:Eu)、CaS:Eu,SrS:Eu等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの蛍光体は、例えば目的とする色調が白色であれば、青色LEDダイ(INGaN)に対してYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、紫外線LEDダイ(INGaN)に対してR,G,B(赤,緑,青色)蛍光体の組み合わせ、また、目的とする色調が白色であれば、YAG蛍光体との組み合わせが好適である。
【0032】
本発明の蛍光体層における蛍光体の含有量は、特に制限されるものではないが、例えば蛍光体層をレンズ体とは別に成形する場合、蛍光体層全量に対して蛍光体が好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは20〜50質量%となるように、上基材中に分散させると好適である。蛍光体の含有量が多すぎると、脆くなり易くなる場合があり、少なすぎると所望の色調が出難くなる場合がある。
【0033】
蛍光体層の厚みは、均一であっても不均一であってもよい。厚さが均一な蛍光体層は、生産性に優れ、一方、厚さが不均一な蛍光体層は、LED直下部を厚くすることにより直下部の色調と、周辺部の色調の色むらを抑えることができる。本発明の蛍光体層の層厚さは、特に制限されるものではないが、例えば蛍光体層をレンズ体とは別に成形する場合、蛍光体層の厚さ(平均厚さ)は、好ましくは100〜1000μm、より好ましくは100〜500μm、更に好ましくは100〜400μmとすると好適である。蛍光体層が厚すぎると、寸法が大きくなり過ぎる場合があり、薄すぎると成形時に割れてしまったり、寸法精度が悪くなるという事態が生じ易くなる場合がある。
【0034】
上記LED用レンズの蛍光体層は、上述したように、上記レンズ体と一体成形されたものであってもよいが、例えば蛍光体層材料を予めシート状又はフィルム状に成形し、この成形体から所望の大きさの円形に切り取った蛍光体層を、別に成形したレンズ体に接着して積層したもの、予め成形した蛍光体層にレンズ体素材を硬化、成形時に接着させたもの、予め成形したレンズ体の下面に硬化前の蛍光体層を塗布したり、流し込むなどした状態とし、この状態で蛍光体層を硬化させて、レンズ体に接着させたものなどのように、別々に成形された上記レンズ体と上記蛍光体層とを一体化したものであると、蛍光体層中の蛍光体の濃度、蛍光体層の厚さの調整が容易になるので、より好適である。
【0035】
この場合、上記レンズ体の素材と上記蛍光体層の基材が、上記シリコーンレジン、シリコーンゴムと上記フッ素樹脂との組み合わせからなるものであれば、特に、耐熱性、耐紫外線性に優れるので、より効果的であるが、この場合、例えば接着剤によって一体化しようとすると、本発明の目的を損なわないような接着剤を選定しなければならず、その選定が困難な場合がある。また、加熱接着では、十分な接着強度が得られない場合がある。これに対して、フッ素樹脂にシリコーンレジン、シリコーンゴムを架橋接着させたものであると、接着剤を使用することなく、上記レンズ体と上記蛍光体層とを十分な接着力で一体化することができるので、更に好適である。
【0036】
より具体的には、例えば蛍光体層の基材をフッ素樹脂とし、レンズ体の素材をシリコーン樹脂とする場合であれば、予め円形シート状(フィルム状)に成形した蛍光体層(フッ素樹脂)の接着面に表面処理を施す。一方、レンズ体として成形される未硬化のシリコーンレジン組成物を所定の成形金型などに流し込み、その上面(レンズ体としては下面)に蛍光体層の表面処理面が接着面となるように積層し、シリコーンレジン組成物を架橋接着させて、その硬化、成形物であるレンズ体をフッ素樹脂を基材とする蛍光体層に接着する。一方、例えば蛍光体層の基材をシリコーンレジン、シリコーンゴムとし、レンズ体の素材をフッ素樹脂とする場合であれば、予めフッ素樹脂で成形しておいたレンズ体の下面を表面処理しておき、この面に硬化前の蛍光体層を積層し、シリコーンレジン組成物を架橋接着させて、その硬化、成形物である蛍光体層をフッ素樹脂を素材とするレンズ体に接着する。以下に、フッ素樹脂にシリコーンレジン、シリコーンゴムを架橋接着させる方法について、より詳細に説明する。
【0037】
表面処理としては、上記架橋接着を可能とする処理方法であれば、その種類は特に制限されるものではなく、例えばUV処理、プラズマ放電処理やコロナ放電処理等の放電処理、湿式法の金属ナトリウム/ナフタレン液処理などが挙げられる。これらの処理は、公知の方法によって行うことができる。例えば、金属ナトリウム/ナフタレン液としてテトラH(商品名、潤工社製)を使用して、その常法に準じて接着面を処理することによって、接着面に金属ナトリウム/ナフタレン液処理を施すことができる。
【0038】
また、表面処理としてプライマー処理も好適である。プライマー処理は常法に準じて行うことができる。プライマー処理を施す場合、表面処理を行っていないフッ素樹脂の表面を処理することもできるが、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを予め施したフッ素樹脂の表面を更にプライマー処理すると、より効果的である。より具体的には、上述したようにコロナ放電処理、金属ナトリウム/ナフタレン液処理などを施したETFEなどのフッ素樹脂の表面に、例えば、シリコーン系プライマー(信越化学工業(株)製FES−1)を刷毛等で薄く塗った後、室温又は50℃程度の恒温槽で乾燥後、シリコーンレジン組成物と架橋接着させるとより効果が大きい。
【0039】
上記のように接着面に表面処理を施したフッ素樹脂上に、シリコーンレジン組成物を積層して架橋接着するものであり、例えば表面処理を施したフッ素樹脂上に、未硬化シリコーンレジン組成物を密着させて加熱硬化させることによって、その硬化物であるシリコーンレジン、シリコーンゴムが硬化過程でフッ素樹脂上に接着して、フッ素樹脂とシリコーンレジン、シリコーンゴムとが一体化したLED用レンズが製造される。
【0040】
フッ素樹脂にシリコーンレジン組成物を架橋接着する方法としては、例えば、レンズ体の素材をシリコーンレジン、シリコーンゴムとし、蛍光体層の基材をフッ素樹脂とするのであれば、以下の方法で実施できる。即ち、所定の温度に加熱されたレンズ体用金型内に、必要に応じて過酸化物又は反応性ラジカルを発生する化合物、拡散材などを添加したシリコーンレジン組成物を流し込み、フッ素樹脂を基材とし、表面処理が施された蛍光体層を載せる。架橋接着は金型内を減圧状態にしなくとも可能であるが、減圧ポンプで金型内を10kPa以下とすることが好ましく、100Pa〜10kPaがより好ましい。減圧度が不足するとフッ素樹脂とシリコーンレジン組成物間に存在している空気が抜けきらず、接着不良となる場合がある。また、成形圧力は3〜50MPaが好ましく、5〜30MPaがより好ましい。成形圧力が小さすぎると材料のフロー不足、表面平滑性が悪くなる場合がある。
【0041】
架橋接着の温度と時間は、シリコーンレジン組成物の種類、過酸化物又は反応性ラジカルを発生する化合物の種類などによって任意に選択されるが、架橋温度は80〜250℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。架橋温度が低すぎると、架橋不足になり、接着力も低下する場合があり、高すぎるとシリコーンレジン、シリコーンゴムのスコーチが生じる場合がある。また、成形時間(架橋時間)は2〜60分が好ましく、5〜60分がより好ましい。成形時間が短すぎると、架橋不足、接着不足がおこる場合がある。成形物は、架橋接着成形後、熱オーブン等を用いて2次架橋(アフターキュア)することも好ましい。なお、過酸化物を含有するシリコーン樹脂組成物を用いた場合、金型内で過酸化物の90%以上が分解するように架橋接着できれば、2次架橋による特別な変化はない。
【0042】
更に、本発明のLED用レンズの有する上記蛍光体層は、1層であってもよいが、2層以上の蛍光体層を有するものであれば、例えば蛍光体濃度を変えたものを積層すれば、各層における波長の変換率が異なるので、2段階以上の変換率で変換させることができ、より安定した色調を得ることができる。一方、含有する蛍光体の種類が異なる蛍光体層を積層すれば、一の層に含有される蛍光体から発光される光により、他の層の蛍光体が励起されることによって、蛍光体の波長の変換を2段階で行う(2段階発光させる)ことができるので、より安定した色調を得ることができる。なお、この場合、各層に含有される蛍光体は、1種単独であってもよいが、2種以上であってもよい。
【0043】
また更に、上記LED用レンズとしては、LEDダイの発光スペクトルの主ピークが350nm〜570nm、より好ましくは360〜500nm、更に好ましくは380〜480nmの範囲内に設定された発光ダイオード光源装置に用いられるものが、より好適である。より具体的には、例えばINGaN系、ZnCdSe系、AlGaN系、ZnS系、ZnO系などのLEDダイに使用されるレンズが挙げられる。
【0044】
そして、上記LED用レンズが、更に、上記蛍光体層の外側(LED装置としたときの外側)に紫外線吸収材を含有するものであると、変換されなかった紫外線がLED光源装置の外部にもれることを防止することができ、例えば漏れ出た紫外線によって車の部品に使われているアクリル樹脂、ABS樹脂等が劣化する可能性を有効に防止することができるので、例えば車用の表示器、車内灯として用いられるLED光源装置に取り付けるLED用レンズとして使用する場合に、特に有用である。
【0045】
紫外線吸収材は、蛍光体層より外側に含有されている限り、その含有形態、含有される位置、含有させる方法は、特に制限されるものではなく、例えばレンズ体内に分散させてもよく、また、紫外線吸収材を上記透光性樹脂に分散させた紫外線吸収層を蛍光体層とレンズ体との間に介装させてもよく、更に、レンズ体表面を上記紫外線吸収材でコーティングしてもよい。ここで、紫外線吸収材は、その種類が特に制限されるものではなく、例えば、超微粒子酸化亜鉛、酸化チタン、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダート・アミン系等の紫外線吸収材などを挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。紫外線吸収材の含有量は、特に制限されるものではなく、例えばレンズ体全量に対して、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%とすると、好適である。
【0046】
本発明のLED用レンズは、その製造方法が特に制限されるものではなく、例えば別々に成形したレンズ体と蛍光体層とを一体化するのであれば、各樹脂の常法に準じて所定の形状に成形したレンズ体と蛍光体層とを、例えばシリコーン系接着剤などの接着剤を使用して接着するか、又は上述した架橋接着などにより一体化することができる。一方、レンズ体と蛍光体層とを一体成形するのであれば、例えば2色成形によりレンズ部又は蛍光体層部を成形後、蛍光体層部またはレンズ部を一体成形するなどしても良い。
【0047】
本発明のLED光源装置は、LEDダイを収容した筐体に、上記LED用レンズ体を取り付けたものであり、LEDダイの種類は、上述したLEDダイが好適に使用される。本発明の場合、特に高出力LED光源装置、白色LED光源装置として有用である。なお、筐体へのLED用レンズの取り付け方法は、特に制限されるものではなく、例えば適宜接着剤を使用して接着するなどの適宜手段によって取り付けることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
レンズ金型へ信越化学工業(株)製シリコーンレジンKJR632を定量充填し、170℃×30分の条件でコンプレッション成形し、φ10の凸レンズ(レンズ体)を成形した。蛍光体シートは、0.3mm厚で所望の色調が出るように蛍光体の濃度を調整した材料(KJR632にYAG蛍光体を材料全量の20質量%となるように加え、分散させ調合した。)を金型を用いて、170℃×30分の条件で加熱硬化させ、成形した。別々に成形したレンズ体と蛍光体シートをシリコーン系接着剤(東レダウコーニングシリコーン(株)製SE9186L)を用いて接着し、プレスを用いて加圧し、レンズ体からはみ出した蛍光体シートをレンズ外周に沿って仕上げ、レンズ体の下面(底面)に蛍光体層が積層された蛍光体層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。この蛍光体層付きレンズを、青色LEDのパッケージに用いてレンズ付き白色LED(LED光源装置)とした。
【0050】
[実施例2]
ユニマテック(株)製フッ素樹脂メックスフロンE−PDをレンズ金型へ成形温度280℃で射出し、φ10の凸レンズ(レンズ体)を成形した。旭硝子(株)製ルミフロンにYAG蛍光体を材料全量の20質量%となるように添加し、コーターで塗布し、溶剤を蒸発させ乾燥し、厚さ100μmの蛍光体シートを作成した。別々に成形したレンズ体と蛍光体シートをプラズマ処理し、蛍光体を含有しないルミフロンを接着剤として用いて乾燥させ、レンズ体の底面と蛍光体シートの接着を行ない、レンズ体に蛍光体層が積層された蛍光体層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。この蛍光体層付きレンズを、青色LEDのパッケージに用いてレンズ付き白色LED(LED光源装置)とした。
【0051】
[実施例3]
レンズ金型へ信越化学工業(株)製シリコーンレジンKJR632を定量充填し、170℃×30分の条件でコンプレッション成形し、φ10の凸レンズ(レンズ体)を成形した。旭硝子(株)製サイトップにYAG蛍光体を材料全量の20質量%となるように添加し、コーターで塗布、乾燥を3回繰り返し、厚さ100μmの蛍光体シートを作成した。別々に成形したレンズ体と蛍光体シートをプラズマ処理した後、シリコーン製プライマー(信越化学工業(株)製FES−1)を塗布し、室温で乾燥させた。接着剤としてGE東芝シリコーン(株)製XE14−907に東レダウコーニングシリコーン(株)製RC−4を1質量%添加した組成物を用い、170℃×10分の条件でコンプレッション成形し、レンズ体の底面と蛍光体シートを接着させてレンズ体に蛍光体層が積層した蛍光体層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。この蛍光体層付きレンズを、青色LEDのパッケージに用いてレンズ付き白色LED(LED光源装置)とした。
【0052】
[実施例4]
実施例1において、凸レンズとして、サンドブラスト100番の処理を行なった金型に、信越化学工業(株)製シリコーンレジンKJR632を定量充填し、170℃×30分の条件でコンプレッション成形し、梨子地面を有するφ10の凸レンズを成形した以外は、実施例1と同様にして、蛍光体層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。この蛍光体層付きレンズを、青色LEDのパッケージに用いてレンズ付き白色LED(LED光源装置)とした。
【0053】
[実施例5]
信越化学工業(株)製KE951(過酸化物C−8Aを0.7質量%添加済み)にYAG蛍光体を材料全量の20質量%となるようにオープンロールにより分散させた材料を、金型を用いて170℃×10分の条件でコンプレッション成形により厚み300μmの蛍光体シートを成形した。この蛍光体シート表面にシリコーン製プライマー(信越化学工業(株)製FES−1)を塗布し、室温で乾燥させた。レンズ金型へ信越化学工業(株)製シリコーンレジンKJR632を定量充填し、その上へ蛍光体シートを気泡が入らないように載せ、170℃×30分の条件でコンプレッション成形し、蛍光体層とレンズ体が一体成形された蛍光体層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。
【0054】
[実施例6]
信越化学工業(株)製KE951(過酸化物C−8Aを0.7質量%添加済み)にYAG蛍光体を材料全量の20質量%となるようにオープンロールにより分散させた材料を、金型を用いて170℃×10分の条件でコンプレッション成形により厚み300μmの蛍光体シートを成形した。この蛍光体シート表面にシリコーン製プライマー(信越化学工業(株)製FES−1)を塗布し、室温で乾燥させた。紫外線吸収層として信越化学工業(株)製KE951(過酸化物C−8Aを0.7質量%添加済み)に住友大阪セメント(株)製の超微粒子酸化亜鉛を1質量%添加し、オープンロールにより分散させ、金型を用いて170℃×10分の条件でコンプレッション成形により、厚み300μmの紫外線吸収シートを作成した。この紫外線吸収シートの両面にシリコーン製プライマー(信越化学工業(株)製FES−1)を塗布し、室温で乾燥させた。レンズ金型へ信越化学工業(株)製シリコーンレジンKJR632を定量充填し、その上へ紫外線吸収シートを気泡が入らないように載せ、更にその上へシリコーン接着剤(信越化学工業(株)製KE1825)を塗布し、蛍光体シートを載せ、170℃×30分の条件でコンプレッション成形し、φ10のレンズ体を成形すると共に、紫外線吸収シート、蛍光体シートを接着させ、蛍光体層、紫外線吸収層付きレンズ(LED用レンズ)を得た。
【0055】
上記実施例のLED用レンズによれば、いずれも耐熱性、耐紫外線性に優れ、安定した色調で発光するLED光源装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のLED用レンズの用途は、特に制限されるものではなく、例えば交通信号機の青色表示器、黄色表示器、赤色表示器、ストップランプ、ディスプレイなどの各色表示器、一般用照明用の光源装置、自動車内の各種表示器、車内灯等の自動車用部品などとして使用されるLED光源装置用レンズとして好適に使用することができ、中でも高出力LED光源装置用レンズとして使用すると、より効果的であり、その中でも、特に一般照明用白色光源、各種用途の白色表示器などとして使用される白色LED光源装置用レンズとしてより有用である。そして、本発明のLED光源装置は、交通信号機、ディスプレイ、一般用照明用、自動車用部品等の各種光源装置として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一構成例を説明するLED光源装置の概略断面図である。
【図2】従来のLED光源装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1、1’ LED用レンズ
2、2’ LED光源装置
11 レンズ体
11b 平面部
12 蛍光体層
24 LEDダイ(発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ付発光ダイオード光源装置のレンズとして使用される発光ダイオード用レンズであって、レンズ体が耐熱性及び耐紫外線性を有する素材により形成されると共に、耐熱性及び耐紫外線性を有する素材を基材とする蛍光体層が上記レンズ体の発光ダイオード光源装置側に設けられたことを特徴とする発光ダイオード用レンズ。
【請求項2】
上記レンズ体が上記発光ダイオード光源装置に取り付けたときに該装置側となる面に平面部を有し、上記蛍光体層が上記レンズ体の上記平面部に積層された請求項1記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項3】
上記レンズ体の上記素材が、350nm〜800nmの波長領域で80%以上の透過率を有するシリコーンレジン、シリコーンゴム及び/又はフッ素樹脂である請求項1又は2記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項4】
上記レンズ体の表面がしぼ面又は梨子地面である請求項1、2又は3記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項5】
上記レンズ体が拡散材を含有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項6】
別々に成形された上記レンズ体と上記蛍光体層とが一体化した請求項1乃至5のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項7】
上記レンズ体の素材と上記蛍光体層の基材とが、シリコーンレジン又はシリコーンゴムとフッ素樹脂との組み合わせからなり、フッ素樹脂にシリコーンレジン又はシリコーンゴムが架橋接着した請求項6記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項8】
2層以上の上記蛍光体層を有する請求項1乃至7のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項9】
発光ダイオードの発光スペクトルの主ピークが350nm〜570nmの範囲内に設定された発光ダイオード光源装置に用いられる請求項1乃至8のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項10】
上記発光ダイオード光源装置に取り付けたときに上記蛍光体層よりも外側となる部分に、紫外線吸収材を含有する請求項1乃至9のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の発光ダイオード用レンズを用いたことを特徴とする発光ダイオード光源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−237191(P2006−237191A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48335(P2005−48335)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】