説明

発光パネル、発光パネルを用いた発光装置および発光パネルの作製方法

【課題】クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供する。または、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルの作製方法を提供する。
【解決手段】一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁を有し、隔壁の側面と重なる部分に発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を含み、第2の電極の隔壁の側面と重なる部分の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネル、発光パネルを用いた発光装置および発光パネルの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、電子ブックなどの普及が進み、生活の中で表示装置を使用する時間が長くなっている。これらの電子機器が身辺に置かれるようになった結果、従来は紙と文具が用いられてきたような単純な用途にも、これらの電子機器が用いられるようになってきた。具体的には、従来は手帳を用いて行っていたスケジュール管理、住所録、メモ等が、スマートフォンに代表される多機能な電子機器を用いて行われるようになってきた。
【0003】
これらの電子機器の多くには、表示素子がマトリクス状に配置された表示パネルが用いられる。表示素子としては、光の透過を制御する素子(例えば、液晶表示素子)や、光の反射を制御する素子(例えば、電気泳動方式を用いる素子)や、自ら光を発する発光素子等が用いられている。
【0004】
また、一対の電極の間に膜状に広がる発光性の有機化合物を含む層(EL層ともいう)を備える発光素子が知られている。このような発光素子は例えば有機EL素子と呼ばれ、一対の電極間に電圧を印加すると、発光性の有機化合物を含む層から発光が得られる。そして、有機EL素子を照明や、表示に用いる発光装置が知られている。有機EL素子を用いた発光装置の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−324673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書では、発光素子が互いに隣接して設けられたものを発光パネルという。特に、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を備える発光素子が互いに隣接して設けられた発光パネルを、ELパネルという。ELパネルは表示装置の他、照明装置への応用が検討されている。
【0007】
異なる色を呈する光を発する発光素子が高精細に配置された多色のELパネルは、作製が困難である。例えば、シャドーマスク(メタルマスクともいう)を用いて、異なる色を呈する光を発する発光素子をマトリクス状に形成する方法が知られているが、高精細なELパネルの作製には不向きである。
【0008】
他の方法としては、白色を呈する光を発する発光素子に重ねてカラーフィルタを設けた発光モジュールを、高精細に配置する方法が知られている。例えば、フォトリソグラフィ法を用いて高精細な第1の電極を、マトリクス状に複数形成し、該第1の電極とそれと重なる第2の電極の間に白色を呈する光を発する層を設けて、白色を呈する光を発する高精細な発光素子をマトリクス状に配置する。次いで、当該発光素子の各々に、赤色、緑色または青色等を呈する光を透過するカラーフィルタを重ねて設けて、発光色が異なる複数の発光モジュールを備える発光パネルを作製する方法がある。
【0009】
しかし、第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子が隣接して設けられた発光パネルにおいて、一の発光素子に与えた電力が隣接する他の発光素子に分配されて、意図せず他の発光素子が発光してしまう現象(所謂クロストーク現象)が生じてしまう場合がある。このようなクロストーク現象が生じる発光パネルが適用された表示装置は高精細な画像の表示ができない。または、多色の発光パネルにおいて所望の色を呈する光が得られなくなってしまうという問題が生じる。
【0010】
なお、断面が逆テーパ状の絶縁性の隔壁を隣接する複数の発光素子の間に設けて、第1の電極だけでなく、発光性の有機化合物を含む層と第2の電極を分断する構成が、例えばパッシブマトリクス型の発光パネルに用いられている。当該隔壁が間に設けられた2つの画素においては、クロストークの発生を防ぐことができる。しかし、断面が逆テーパ状の隔壁が発光素子を囲むように設けられると、第2の電極が隣接する第2の電極から電気的に孤立し、孤立した第2の電極に電力を供給できなくなってしまう。このような理由から、断面が逆テーパ状の隔壁の配置は隣接する発光素子の第2の電極が少なくとも一方向に連続するような配置に限定される。その結果、第2の電極が連続する画素の方向においては、クロストークが発生してしまう場合がある。
【0011】
本発明の一態様は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供することを課題の一とする。または、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルの作製方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子が隣接して設けられた発光パネルの構成であって、一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁と第2の電極との間に発光性の有機化合物を含む層が挟持される構成に着目した。また、当該発光性の有機化合物を含む層を介して、一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の第2の電極の一部分間を流れる電流に着目した。
【0013】
そして、発光性の有機化合物を含む層が、絶縁性の隔壁の側面と重なる部分に、第1の電極と接する部分の厚さAより薄い厚さAの部分を含み、且つ隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成に想到し、上記課題の解決に至った。好ましくは、厚さAが厚さAの1/2より薄い。
【0014】
すなわち、本発明の一態様は、基板上に一方の発光素子と他方の発光素子が隣接して設けられた発光パネルであって、一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、当該2つの第1の電極を隔てる隔壁と、当該2つの第1の電極および隔壁に重なる第2の電極と、当該2つの第1の電極および隔壁と接して、第2の電極との間に挟持される発光性の有機化合物を含む層と、を有する。加えて、発光性の有機化合物を含む層が、隔壁の側面と重なる部分に、第1の電極と重なる部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を含み、且つ隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい発光パネルである。
【0015】
上記本発明の一態様の発光パネルは、一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁を有し、発光性の有機化合物を含む層が、隔壁の側面と重なる部分に、第1の電極と接する部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を含み、第2の電極の隔壁の側面と重なる部分の厚さBと、第1の電極と重なる部分の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を有する。なお、本明細書において一の層の隔壁の側面と重なる部分の厚さとは、一の層の当該隔壁の側面に対し鉛直な方向についての厚さをいう。
【0016】
これにより、一方の発光素子と他方の発光素子の間に設けられた隔壁に重なる発光性の有機化合物を含む層の厚さを薄くして、電気抵抗を高くでき、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある当該発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。特に、発光性の有機化合物を含む層が、隔壁の側面と重なる部分に、第1の電極と接する部分の厚さの1/2より薄い部分を含む構成においてその効果が顕著となり、その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0017】
また、本発明の一態様は、絶縁性の隔壁が基板に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を有する上述の発光パネルである。
【0018】
上記本発明の一態様の発光パネルは、発光性の有機化合物を含む層の隔壁の側面と重なる部分の厚さを、第1の電極と接する部分の厚さAの1/2より薄くできる。これにより、発光性の有機化合物を含む層の隔壁の側面と重なる部分に、導電性が抑制された領域が形成され、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0019】
また、本発明の一態様は、第2の電極が、隔壁の側面と重なる部分に、厚さが、第1の電極と重なる部分より厚い部分を含む発光パネルである。
【0020】
上記本発明の一態様の発光パネルは、第2の電極が、隔壁と重なる部分に、厚さが厚い部分を含む。これにより、隔壁と重なる部分に、導電性が高められた領域が形成され、面状に拡がる第2の電極の導電性を高める効果、所謂補助配線としての効果を奏する。その結果、第2の電極の電気抵抗に起因する電圧降下を抑制して、電流が不均一に流れる現象を防止し、均一な発光が得られる発光パネルを提供できる。
【0021】
また、本発明の一態様は、正孔輸送性の高い物質および該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む電荷発生領域と、発光ユニットと、を備える発光性の有機化合物を含む層を有し、電荷発生領域は発光ユニットと第1の電極の間に設けられている、上述の発光パネルである。
【0022】
上記本発明の一態様の発光パネルは、正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む電荷発生領域を備える。また、電荷発生領域の隔壁の側面と重なる部分の厚さが薄い。これにより、導電性が抑制され、当該電荷発生領域を介して一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の発光ユニットの間に流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0023】
また、本発明の一態様は、電子輸送性の高い物質および該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーと、発光ユニットと、を備える発光性の有機化合物を含む層を有し、電子注入バッファーは発光ユニットと第1の電極の間に設けられている、上述の発光パネルである。
【0024】
上記本発明の一態様の発光パネルは、電子輸送性の高い物質および該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーを備える。また、電子注入バッファーの隔壁の側面と重なる部分の厚さが薄い。これにより、導電性が抑制され、当該電子注入バッファーを介して一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の発光ユニットの間に流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0025】
また、本発明の一態様は、複数の発光ユニットと、発光ユニットに挟まれた中間層と、を備える発光性の有機化合物を含む層を有し、中間層が電子輸送性の高い物質と該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーを備える上述の発光パネルである。
【0026】
上記本発明の一態様の発光パネルは、発光ユニットに挟まれた中間層を有し、その中間層は電子輸送性が高い物質と該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーを備える。これにより、一中間層に設けられた電子注入バッファーの隔壁の側面と重なる部分の厚さが薄くなり、導電性が抑制されるため、中間層に設けられた電子注入バッファーを介して一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の発光ユニットの間に流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0027】
また、本発明の一態様は、上述の発光パネルを備える発光装置である。
【0028】
上記本発明の一態様の発光装置は、一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、当該2つの第1の電極を隔てる隔壁と、当該2つの第1の電極および隔壁と接して、当該2つの第1の電極と第2の電極の間に挟持される発光性の有機化合物を含む層と、を有する。加えて、発光性の有機化合物を含む層が、第1の電極と接する部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を隔壁の側面と重なる部分に含み、且つ第2の電極の隔壁の側面と重なる部分の厚さBと、第2の電極の第1の電極と重なる部分の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を有して、クロストークが低減された発光パネルを備える。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光装置を提供できる。
【0029】
また、本発明の一態様は、基板上に隣接する2つの第1の電極と、基板に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を備えて2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁と、を形成する第1のステップと、基板に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法を用いて、発光性の有機化合物を含む層を形成する際に、発光性の有機化合物を含む層の隔壁の側面と重なる部分の厚さAが、発光性の有機化合物を含む層の第1の電極と重なる部分の厚さAの1/2より薄くなるように形成する第2のステップと、隔壁の側面に堆積する成膜方法を用いて第2の電極を形成する際に、第2の電極の第1の電極と重なる部分の厚さBに対する、第2の電極の隔壁の側面と重なる部分の厚さBの比(B/B)が、(A/A)より大きくなるように形成する第3のステップと、を有する発光パネルの作製方法である。
【0030】
上記本発明の一態様の発光パネルの作製方法によれば、2つの第1の電極と、2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁を形成できる。そして、発光性の有機化合物を含む層が、隔壁の側面と重なる部分に、第1の電極と重なる部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を形成できる。また、第2の電極の隔壁の側面と重なる部分の厚さBと、第1の電極と重なる部分の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きくできる。
【0031】
これにより、一方の発光素子と他方の発光素子の間に設けられた隔壁に重なる発光性の有機化合物を含む層の厚さを薄くして、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルの作製方法を提供できる。
【0032】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0033】
また、本明細書において、一対の電極に挟持された発光性の有機化合物を含む層において、電子と正孔が再結合する領域を1つ含む層または積層体を発光ユニットという。
【0034】
また、本明細書において、少なくとも電荷発生領域を有し、陰極側に隣接する層に正孔を注入し、陽極側に隣接する層に電子を注入する層を中間層という。例えば、発光性の有機化合物を含む層が、複数の発光ユニットを備える場合、発光ユニットの間には中間層が設けられる。
【0035】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0036】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様によれば、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。または、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルの作製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係る発光パネルの構成を説明する図。
【図2】実施の形態に係る発光パネルの構成を説明する図。
【図3】実施の形態に係る発光パネルの作製方法を説明する図。
【図4】実施の形態に係る発光パネルの作製方法を説明する図。
【図5】実施の形態に係る発光素子の構成を説明する図。
【図6】実施の形態に係る発光装置の構成を説明する図。
【図7】実施の形態に係る発光装置の構成を説明する図。
【図8】実施例に係る発光パネルの構成を説明する図。
【図9】実施例に係る発光パネルおよび比較例に係る比較パネルの発光状態を説明する図。
【図10】実施例に係る発光パネルおよび比較例に係る比較パネルの発光状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備える発光パネルについて図1および図2を参照して説明する。具体的には、表示装置に適用可能なELパネルについて説明する。
【0041】
本発明の一態様のELパネルの構成を図1に示す。図1(A)は本発明の一態様のELパネル190の上面図であり、図1(B)は図1(A)の切断線J−Kにおける断面図である。
【0042】
図1(A)に例示するELパネル190は、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bとの間に隔壁140を有する。また、図1(B)に示すように、ELパネル190は基板100に設けられた絶縁層107上に一方の発光素子150aと他方の発光素子150bを有する。さらに、ELパネル190は、第2の電極と、一方の発光素子150aの第1の電極151a及び他方の発光素子150bの第1の電極151bに挟持された、発光性の有機化合物を含む層153を有する。
【0043】
一方の発光素子150aは第1の電極151aと、第2の電極の一部分152aと、発光性の有機化合物を含む層の一部分153aと、を有し、他方の発光素子150bは第1の電極151bと、第2の電極の一部分152bと、発光性の有機化合物を含む層の一部分153bと、を有する。
【0044】
第1の電極151aと第1の電極151bは、絶縁層107上に形成された島状の導電層であり、基板100と絶縁層107の間に設けられた電極106a、または電極106bと電気的に接続されている。なお、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bに適用可能な発光素子の構成は実施の形態3において詳細に説明する。
【0045】
隔壁140は、第1の電極151aと第1の電極151bの端部を覆い、第1の電極151aと重なる開口部と、第1の電極151bと重なる開口部を有する。隔壁140の側面は基板100に対し角度θを有する。また、隔壁140の端部を角度θより小さい角で第1の電極151aと接するように形成すると、隔壁140の端部における第1の電極151aと第2の電極152aの短絡を防ぐことができるため、好ましい。
【0046】
隔壁140は絶縁性であり、有機絶縁材料または無機絶縁材料である。特に感光性の樹脂材料を用いると、第1の電極上に形成する開口部の側面の角度を容易に調整できるため好ましい。
【0047】
隔壁140の側面上には発光性の有機化合物を含む層の一部分153cが形成され、発光性の有機化合物を含む層の一部分153c上には第2の電極の一部分152cが形成されている。
【0048】
隔壁140上に形成される第2の電極の一部分152cは、一方の発光素子150aの第2の電極の一部分152aと、他方の発光素子150bの第2の電極の一部分152bを電気的に接続している。
【0049】
隔壁140の側面上に形成される発光性の有機化合物を含む層の一部分153cの厚さは他の部分よりも薄いため、当該発光性の有機化合物を含む層の電気抵抗は隔壁140の側面において他の領域より高い。電気抵抗が高い領域が隔壁140の側面に沿って形成されるため、発光性の有機化合物を含む層153cを介して一方の発光素子と他方の発光素子の間を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0050】
本発明の一態様の側面の角度が異なる隔壁の形態を図2に例示する。側面の角度が異なる隔壁の各々について、以下に説明する。
【0051】
<隔壁の形態1.>
本発明の一態様の隔壁の形態を図2(A)に示す。図2(A)に示す隔壁140aは、一方の発光素子150aの第1の電極151aと、他方の発光素子150bの第1の電極151bの端部を覆い、第1の電極151aと重なる開口部と、第1の電極151bと重なる開口部を有する。隔壁140aの側面は基板100に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を有し、具体的にはおよそ65°の角度θを有する。
【0052】
隔壁140aの側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さAは、第1の電極151aと接する部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さAの1/2に比べ薄い。
【0053】
また、隔壁140aの側面と重なる部分の第2の電極152の厚さBと第1の電極151aと重なる部分の第2の電極152の厚さBから求めた比(B/B)は、(A/A)より大きく、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの第2の電極の一部分は隔壁140aの側面上に形成される第2の電極の一部分を介して互いに電気的に接続される。
【0054】
以上の構成により、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間に設けられた隔壁140aの側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さを薄くして、電気抵抗を高くでき、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間にある発光性の有機化合物を含む層153を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。また、面状に広がる第2の電極152が、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bを電気的に接続しているため、第1の電極を選択して電圧を印加することにより、それぞれの発光素子を駆動できる。
【0055】
<隔壁の形態2.>
本発明の一態様の隔壁の形態を図2(B)に示す。図2(B)に示す隔壁140bは、一方の発光素子150aの第1の電極151aと、他方の発光素子150bの第1の電極151bの端部を覆い、第1の電極151aと重なる開口部と、第1の電極151bと重なる開口部を有する。隔壁140bの側面は基板100に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を有し、具体的にはおよそ90°の角度θを有する。
【0056】
隔壁140bの側面には発光性の有機化合物を含む層が形成されないため、一方の発光素子150aの発光性の有機化合物を含む層153aと他方の発光素子150bの発光性の有機化合物を含む層153bは、隔壁140bにより分断される。
【0057】
また、隔壁140bの側面と重なる部分には第2の電極152が形成され、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの第2の電極の一部分が隔壁140bの側面上に形成される第2の電極の一部分を介して電気的に接続される。
【0058】
これにより、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。また、面状に広がる第2の電極152が一方の発光素子150aと他方の発光素子150bを電気的に接続しているため、第1の電極を選択して電圧を印加することにより、それぞれの発光素子を駆動できる。
【0059】
<隔壁の形態3.>
本発明の一態様の隔壁の形態を図2(C)に示す。図2(C)に示す隔壁140cは、一方の発光素子150aの第1の電極151aと、他方の発光素子150bの第1の電極151bの端部を覆い、第1の電極151aと重なる開口部と、第1の電極151bと重なる開口部を有する。隔壁140cの側面は基板100に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を有し、具体的には100°の角度θを有する。なお、図2(C)に示すように、隔壁140cの脚部とその上部の間に、上部の幅および脚部の幅より狭い部分を設けることで、第1の電極と第2の電極が短絡する現象を防止できるため好ましい。
【0060】
隔壁140cの側面には発光性の有機化合物を含む層が形成されないため、一方の発光素子150aの発光性の有機化合物を含む層153aと他方の発光素子150bの発光性の有機化合物を含む層153bは、隔壁140cにより分断される。
【0061】
また、隔壁140cの側面と重なる部分には第2の電極152が形成され、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの第2の電極の一部分が隔壁140cの側面上に形成される第2の電極の一部分を介して電気的に接続される。
【0062】
これにより、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。また、面状に広がる第2の電極152が一方の発光素子150aと他方の発光素子150bを電気的に接続しているため、第1の電極を選択して電圧を印加することにより、それぞれの発光素子を駆動できる。
【0063】
上記本発明の一態様の発光パネルは、一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁を有し、当該隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を有する。
【0064】
これにより、一方の発光素子と他方の発光素子の間に設けられた隔壁の側面に重なる発光性の有機化合物を含む層の厚さを薄くして、電気抵抗を高くでき、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。特に、隔壁の側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さが第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さの1/2より薄くなると、その効果が顕著となり、その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0065】
なお、発光素子が狭い間隔で配置された発光パネルは開口率が高まり、開口率が低いものに比べて、駆動電圧を低減できるため消費電力を低減できる。また、発光素子が狭い間隔で配置された発光パネルを表示装置に用いると、高精細な画像を表示することが可能になる。しかしながら、一方の発光素子と他方の発光素子の間隔が小さいほど、クロストーク現象は発生し易い。すなわち、高開口率の発光パネルや、高精細な発光パネルほど、クロストーク現象が発生し易くなる。具体的には、隣接する発光素子の間隔が7μm以下であると発生し易くなる。また、一インチあたり350以上の画素を含む(水平解像度が350ppi(pixels per inch))場合にクロストーク現象が発生し易くなり、特に400ppi以上の場合に顕著となる。
【0066】
本発明の一態様の発光パネルは、このような高開口率な発光パネルや、高精細な発光パネルであっても、クロストーク現象の発生を抑制できる。なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0067】
(実施の形態2)
本実施の形態では、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備える発光パネルの作製方法について図3を参照して説明する。
【0068】
<第1のステップ>
基板100の絶縁表面上に電極106aを含む配線層を形成し、電極106aを含む配線層上に絶縁層107を形成する。次いで絶縁層107に、電極106aに達する開口部を形成し、第1の電極となる導電膜を成膜して電極106aと電気的に接続する。次いで、導電膜を島状に加工して、第1の電極151a、第1の電極151bを形成する。
【0069】
次いで、絶縁性の隔壁140aを形成する。隔壁140aは、第1の電極151aと第1の電極151bの端部を覆い、第1の電極151aと重なる開口部と、第1の電極151bと重なる開口部を有するように形成する。また、隔壁140aの側面が基板100に対し55°以上100°以下の角度θを備えるように形成する。
【0070】
隔壁140aの側面の角度θを調整する方法としては、例えばポジ型のフォトレジストを用いて、ポジ型のフォトレジストの露光条件を適宜調節することにより、55°以上およそ90°以下の範囲で、側面の角度θを調節して隔壁を形成できる。
【0071】
または、ネガ型のフォトレジストを用いることができ、マスクギャップを適宜調整することにより、およそ90°以上100°以下の範囲で、側面の角度θを調節して隔壁を形成できる。
【0072】
なお、絶縁性の隔壁140aの側面の角度θを調節する方法はこれに限定されず、エッチング法、アッシング法など、既知の方法を単独で、または組み合わせて適用できる(図3(A)参照)。
【0073】
<第2のステップ>
次いで、発光性の有機化合物を含む層153を、一方の発光素子150aの第1の電極151aと他方の発光素子150bの第1の電極151bおよび絶縁性の隔壁140aの上部に接して形成する。ここで、該2つの第1の電極に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法191を用いて、発光性の有機化合物を含む層153を形成する。第1の電極に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法191を用いると、隔壁の側面と比較して、第1の電極の表面に優先的に成膜できる。
【0074】
第1の電極に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法としては、第1の電極の表面に堆積する速度に比べて、第1の電極の表面と鉛直に交差する平面に堆積する速度が1/10以下である成膜方法が好ましい。第1の電極に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法191として、抵抗加熱法をその例に挙げることができる。
【0075】
なお、絶縁性の隔壁140aの側面が基板100に対し55°以上100°以下の角度θを備えるため、第1の電極151aに鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法191を用いて発光性の有機化合物を含む層153を形成すると、隔壁140aの側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さAは、第1の電極151aと接する部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さAの1/2に比べ薄い(図3(B)参照)。
【0076】
これにより、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間に設けられた隔壁140aの側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さを薄くし、電気抵抗を高くできるため、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間にある発光性の有機化合物を含む層153を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0077】
<第3のステップ>
次いで、第2の電極152を形成する。第2の電極152は、第1の電極151a、第1の電極151bおよび絶縁性の隔壁140aと重なり、且つ発光性の有機化合物を含む層153と接するように形成する。なお、第2の電極152は、発光性の有機化合物を含む層153の上だけでなく、絶縁性の隔壁140aの側面にも充分な速度で堆積する成膜方法192を用いる。絶縁性の隔壁140aの側面にも堆積する成膜方法192を用いると、隔壁140aの側面にも第2の電極152が形成され、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの第2の電極を電気的に接続できる。
【0078】
絶縁性の隔壁140aの側面にも堆積する成膜方法192としては、第1の電極が設けられた基板と鉛直に交差する平面に堆積する速度が、基板と平行な表面に堆積する速度に対して1/2以上1以下である成膜方法が好ましい。堆積する速度の比が1/2より小さいと、隔壁の側面に重なる部分の第2の電極の厚さを厚くすることが困難になり、1より大きいと第1の電極に重なる部分の第2の電極の成膜速度が遅くなってしまう。隔壁140aの側面にも堆積する成膜方法192としては、スパッタリング法をその例に挙げることができる(図3(C)参照)。
【0079】
なお、絶縁性の隔壁140aの側面にも堆積する成膜方法192を用いて第2の電極152を形成すると、隔壁140aの側面に重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)を(A/A)より大きくできる。その結果、隔壁140aの側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さを薄くして、電気抵抗を高くしながらも、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの第2の電極を電気的に接続できる。
【0080】
<発光パネルの作製方法の変形例>
本発明の一態様の発光パネルの作製方法の変形例を、図4を参照して説明する。
【0081】
上述の第1のステップにより、絶縁性の隔壁140aの側面を、基板100に対し55°以上、100°以下の角度θとなるように形成する。
【0082】
次いで、上述の第2のステップにより、発光性の有機化合物を含む層153を形成する。これにより、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間に設けられた隔壁140aの側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層153の厚さを薄く、電気抵抗を高くして、一方の発光素子150aと他方の発光素子150bの間にある発光性の有機化合物を含む層153を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0083】
次いで、本変形例では第3のステップとして、第2の電極152を、絶縁性の隔壁140aの側面に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法193を用いて成膜する。
【0084】
例えば、基板に対し60°の角度θをなす隔壁の一方の側の側面にBの厚さの第2の電極を成膜すると、第1の電極上の第2の電極の厚さBはB×cos60°となり、Bのおよそ1/2倍となる(図4(C)参照)。このように、指向性を有する成膜方法を隔壁の側面に向けると、隔壁の側面に優先して堆積できる。
【0085】
本変形例では、指向性を有する成膜方法193を用いて隔壁140aの一方(左側)の側面に成膜を行う(図4(A)参照)。続いて、指向性を有する成膜方法194を用いて隔壁140aの他方(右側)の側面に成膜を行う(図4(B)参照)。なお、第2の電極152中にある点線は、成膜方法193を用いて形成された部分を表している。この方法によれば、第1の電極上より優先して隔壁140aの両側面に第2の電極152を堆積できる。
【0086】
なお、隔壁の側面が基板に対し60°の角度θを有するとき、両側面に成膜を行うと、第1の電極151aまたは第1の電極151b上の第2の電極152の厚さBは、側面と重なる部分の厚さBと、およそ等しくなる。
【0087】
そして、絶縁性の隔壁140aの側面を基板100に対し60°より大きく90°より小さい角度θとなるように形成し、当該側面に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法を用いて成膜すると、隔壁140aの側面に重なる部分の第2の電極を、第1の電極と重なる部分より厚く成膜できる。
【0088】
上記の本発明の一態様の発光パネルは、隔壁の側面と重なる部分において第2の電極の厚さが厚い。これにより、第2の電極の隔壁の側面と重なる部分に、導電性が高められた領域が形成され、面状に拡がる第2の電極の導電性を高める効果、所謂補助配線としての効果を奏する。その結果、第2の電極の電気抵抗に起因する電圧降下を抑制して、電流が不均一に流れる現象を防止し、均一な発光が得られる発光パネルを提供できる。
【0089】
上記本発明の一態様の発光パネルの作製方法によれば、一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極と、2つの第1の電極を隔てる絶縁性の隔壁を形成できる。そして、当該隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAを、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄くできる。また、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)を(A/A)より大きくできる。
【0090】
これにより、一方の発光素子と他方の発光素子の間に設けられた隔壁の側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さを薄くして、電気抵抗を高くでき、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。特に、隔壁の側面に重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さが第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さの1/2より薄くなると、その効果が顕著となり、その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルの作製方法を提供できる。
【0091】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0092】
(実施の形態3)
本発明の一態様の発光パネルには、様々な構成の発光性の有機化合物を含む層を用いることができる。本実施の形態では、本発明の一態様の発光パネルに用いることができる一対の電極に挟持された発光性の有機化合物を含む層の構成の一例について図5を参照して説明する。
【0093】
本実施の形態で説明する発光性の有機化合物を含む層を構成する層において、特に電気抵抗が低い領域になりやすい層は、正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む電荷発生層および/または電子輸送性の高い物質と該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーである。いずれの層もキャリアを生成する物質(具体的にはアクセプター性物質またはドナー性物質)を含むことで、電気抵抗が低減されるからである。
【0094】
一方の発光素子の第1の電極と、他方の発光素子の第1の電極が互いに分離されていても、このように電気抵抗が低減された層が、発光ユニットよりも第1の電極側に設けられると、当該電気抵抗が低減された層を介して、一方の発光素子の第1の電極から他方の発光素子に、または他方の発光素子の第1の電極から一方の発光素子に電流が流れ、クロストークが発生してしまう。
【0095】
よって、本発明の一態様には、一方の発光素子と他方の発光素子の間に設けられた隔壁の側面に重なる部分の正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む電荷発生層、および/または電子輸送性の高い物質と該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーの厚さが、他の部分より薄い構成も含まれる。このような構成とすることにより、電荷発生層や電子注入バッファーに代表される層の電気抵抗を高くすることができ、一方の発光素子と他方の発光素子の間にある発光性の有機化合物を含む層を流れる電流を抑制できる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0096】
また、上述の電荷発生層や電子注入バッファーに代表される電気抵抗が低い領域の厚さは、薄い方が好ましい。具体的には、電気抵抗が低い領域の厚さは、第1の電極と重なる部分において100nm以下が好適であり、特に10nm以下が好ましい。
【0097】
このような構成とすると、電気抵抗が低い領域の厚さは、絶縁性の隔壁の側面と重なる部分において50nm以下、特に好ましくは5nm以下となる。その結果、当該隔壁の側面に電気抵抗が高められた部分が形成される。特に厚さが5nm以下になると、層が広がる方向において層が分断されて不連続になり、電気抵抗が急激に高まる。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光パネルを提供できる。
【0098】
本実施の形態で例示する発光素子は、第1の電極、第2の電極および第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層(以下EL層という)を備える。第1の電極または第2の電極のいずれか一方は陽極、他方が陰極として機能する。EL層は第1の電極と第2の電極の間に設けられ、該EL層の構成は第1の電極と第2の電極の材質に合わせて適宜選択すればよい。以下に発光素子の構成の一例を例示するが、発光素子の構成がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0099】
<発光素子の構成例1.>
発光素子の構成の一例を図5(A)に示す。図5(A)に示す発光素子は、陽極1101と陰極1102の間にEL層が挟まれている。
【0100】
陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層に陽極1101の側から正孔が注入され、陰極1102の側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0101】
本明細書においては、両端から注入された電子と正孔が再結合する領域を1つ有する層または積層体を発光ユニットという。よって、当該発光素子の構成例1は発光ユニットを1つ備えるということができる。
【0102】
発光ユニット1103は、少なくとも発光物質を含む発光層を1つ以上備えていればよく、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えば正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔輸送性に乏しい(ブロッキングする)物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子および正孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。
【0103】
発光ユニット1103の具体的な構成の一例を図5(B)に示す。図5(B)に示す発光ユニット1103は、正孔注入層1113、正孔輸送層1114、発光層1115、電子輸送層1116、並びに電子注入層1117が陽極1101側からこの順に積層されている。
【0104】
<発光素子の構成例2.>
発光素子の構成の他の一例を図5(C)に示す。図5(C)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間に発光ユニット1103を含むEL層が挟まれている。さらに、陰極1102と発光ユニット1103との間には中間層1104が設けられている。なお、当該発光素子の構成例2の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1が備える発光ユニットと同様の構成が適用可能であり、詳細については、発光素子の構成例1の記載を参酌できる。
【0105】
中間層1104は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、第1の電荷発生領域1104c、電子リレー層1104b、および電子注入バッファー1104aが陰極1102側から順次積層された構造を適用することができる。
【0106】
中間層1104における電子と正孔の挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、第1の電荷発生領域1104cにおいて、正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102へ移動し、電子は電子リレー層1104bへ移動する。電子リレー層1104bは電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域1104cで生じた電子を電子注入バッファー1104aに速やかに受け渡す。電子注入バッファー1104aは発光ユニット1103に電子を注入する障壁を緩和し、発光ユニット1103への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域1104cで発生した電子は、電子リレー層1104bと電子注入バッファー1104aを経て、発光ユニット1103のLUMO準位に注入される。
【0107】
また、電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cを構成する物質と電子注入バッファー1104aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
【0108】
当該発光素子の構成例2の陰極に用いることができる材料の選択の幅は、構成例1の陰極に用いることができる材料の選択の幅に比べて、広い。なぜなら、構成例2の陰極は中間層が発生する正孔を受け取ればよく、仕事関数が比較的大きな材料を適用できるからである。
【0109】
<発光素子の構成例3.>
発光素子の構成の他の一例を図5(D)に示す。図5(D)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間に2つの発光ユニットが設けられたEL層を備えている。さらに、第1の発光ユニット1103aと、第2の発光ユニット1103bとの間には中間層1104が設けられている。
【0110】
なお、陽極と陰極の間に設ける発光ユニットの数は2つに限定されない。図5(E)に例示する発光素子は、発光ユニット1103が複数積層された構造、所謂、タンデム型の発光素子の構成を備える。但し、例えば陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層の発光ユニット1103を設ける場合には、m(mは自然数、1以上(n−1)以下)番目の発光ユニットと、(m+1)番目の発光ユニットとの間に、それぞれ中間層1104を設ける構成とする。
【0111】
また、当該発光素子の構成例3の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1と同様の構成を適用することが可能であり、また当該発光素子の構成例3の中間層1104には、上述の発光素子の構成例2と同様の構成が適用可能である。よって、詳細については、発光素子の構成例1、または発光素子の構成例2の記載を参酌できる。
【0112】
発光ユニットの間に設けられた中間層1104における電子と正孔の挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、中間層1104において正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102側に設けられた発光ユニットへ移動し、電子は陽極側に設けられた発光ユニットへ移動する。陰極側に設けられた発光ユニットに注入された正孔は、陰極側から注入された電子と再結合し、当該発光ユニットに含まれる発光物質が発光する。また、陽極側に設けられた発光ユニットに注入された電子は、陽極側から注入された正孔と再結合し、当該発光ユニットに含まれる発光物質が発光する。よって、中間層1104において発生した正孔と電子は、それぞれ異なる発光ユニットにおいて発光に至る。
【0113】
なお、発光ユニット同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成される場合は、発光ユニット同士を接して設けることができる。具体的には、発光ユニットの一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の第1の電荷発生領域として機能するため、発光ユニット同士を接して設けることができる。
【0114】
発光素子の構成例1乃至構成例3は、互いに組み合わせて用いることができる。例えば、発光素子の構成例3の陰極と発光ユニットの間に中間層を設けることもできる。
【0115】
<発光素子に用いることができる材料>
次に、上述した構成を備える発光素子に用いることができる具体的な材料について、陽極、陰極、並びにEL層の順に説明する。
【0116】
<陽極に用いることができる材料>
陽極1101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。
【0117】
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、インジウム−亜鉛酸化物膜は、酸化インジウムに対し1wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウム膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5wt%以上5wt%以下、酸化亜鉛を0.1wt%以上1wt%以下含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
【0118】
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。
【0119】
但し、陽極1101と接して第2の電荷発生領域を設ける場合には、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いることができる。具体的には、仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。第2の電荷発生領域を構成する材料については、第1の電荷発生領域と共に後述する。
【0120】
<陰極に用いることができる材料>
陰極1102に接して第1の電荷発生領域1104cを、発光ユニット1103との間に設ける場合、陰極1102は仕事関数の大小に関わらず様々な導電性材料を用いることができる。
【0121】
なお、陰極1102および陽極1101のうち少なくとも一方を、可視光を透過する導電膜を用いて形成する。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm以上30nm以下程度)の金属薄膜を用いることもできる。
【0122】
<EL層に用いることができる材料>
上述した発光ユニット1103を構成する各層に用いることができる材料について、以下に具体例を示す。
【0123】
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0124】
なお、第2の電荷発生領域を用いて正孔注入層を形成してもよい。正孔注入層に第2の電荷発生領域を用いると、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いることができるのは前述の通りである。第2の電荷発生領域を構成する材料については第1の電荷発生領域と共に後述する。
【0125】
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層は、単層に限られず正孔輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子よりも正孔の輸送性の高い物質であればよく、特に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0126】
正孔輸送性の高い物質としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。または、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)などが挙げられる。または、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、などのカルバゾール誘導体が挙げられる。
【0127】
これ以外にも、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を正孔輸送層に用いることができる。
【0128】
<発光層>
発光層は、発光物質を含む層である。発光層は、単層に限られず発光物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。発光物質は蛍光性化合物や、燐光性化合物を用いることができる。発光物質に燐光性化合物を用いると、発光素子の発光効率を高められるため好ましい。
【0129】
発光物質として用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、SD1(商品名;SFC Co., Ltd製)などが挙げられる。
【0130】
発光物質として用いることができる燐光性化合物としては、例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)(acac)])、ビス{2−[4’−(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p−PF−ph)(acac)])、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)(acac)])、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(btp)(acac)])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])などが挙げられる。
【0131】
発光物質は、ホスト材料に分散させて用いるのが好ましい。ホスト材料としては、その励起エネルギーが、発光物質の励起エネルギーよりも大きなものが好ましい。
【0132】
ホスト材料として用いることができる材料としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)、などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)などのカルバゾール誘導体を用いることができる。または、PVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性の高い物質を用いることができる。または、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体を用いることができる。または、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))、などのオキサゾール系やチアゾール系配位子を有する金属錯体を用いることができる。または、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの電子輸送性の高い物質を用いることができる。
【0133】
<電子輸送層>
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層は、単層に限られず電子輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。正孔よりも電子の輸送性の高い物質であればよく、特に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0134】
電子輸送性の高い物質としては、例えばAlq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、BAlq(略称)などのキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。または、Zn(BOX)(略称)、Zn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系や、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。または、PBD(略称)、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称)、BPhen(略称)、BCP(略称)、2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:DBTBIm−II)などが挙げられる。
【0135】
これ以外にも、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)、などの高分子化合物を電子輸送層に用いることができる。
【0136】
<電子注入層>
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層は、単層に限られず電子注入性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子注入層を設ける構成とすることで陰極1102からの電子の注入効率が高まり、発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0137】
電子注入性の高い物質としては、例えばリチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの化合物が挙げられる。また電子輸送性を有する物質中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属または、マグネシウム(Mg)、またはそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることもできる。
【0138】
<電荷発生領域に用いることができる材料>
第1の電荷発生領域1104c、および第2の電荷発生領域は、正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む領域である。なお、電荷発生領域は、同一膜中に正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含有する場合だけでなく、正孔輸送性の高い物質を含む層とアクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。但し、第1の電荷発生領域を陰極側に設ける積層構造の場合には、正孔輸送性の高い物質を含む層が陰極1102と接する構造となり、第2の電荷発生領域を陽極側に設ける積層構造の場合には、アクセプター性物質を含む層が陽極1101と接する構造となる。
【0139】
なお、電荷発生領域において、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
【0140】
電荷発生領域に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0141】
また、電荷発生領域に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0142】
<電子リレー層に用いることができる材料>
電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cにおいてアクセプター性物質がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層1104bは、電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、第1の電荷発生領域1104cにおけるアクセプター性物質のアクセプター準位と、当該電子リレー層が接する発光ユニット1103のLUMO準位との間に位置する。具体的には、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下とするのが好ましい。
【0143】
電子リレー層1104bに用いる物質としては、例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層1104bに用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層1104bにおける電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
【0144】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0145】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0146】
その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8,ペンタデカフルオロオクチル−1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を電子リレー層1104bに用いることができる。
【0147】
<電子注入バッファーに用いることができる材料>
電子注入バッファー1104aは、第1の電荷発生領域1104cから発光ユニット1103への電子の注入を容易にする層である。電子注入バッファー1104aを第1の電荷発生領域1104cと発光ユニット1103の間に設けることにより、両者の注入障壁を緩和することができる。
【0148】
電子注入バッファー1104aには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0149】
また、電子注入バッファー1104aが、電子輸送性の高い物質と該電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した発光ユニット1103の一部に形成することができる電子輸送層の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0150】
<発光素子の作製方法>
発光素子の作製方法の一態様について説明する。第1の電極上にこれらの層を適宜組み合わせてEL層を形成する。EL層は、それに用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法などを選んで用いればよい。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。EL層上に第2の電極を形成し、発光素子を作製する。
【0151】
以上のような材料を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製することができる。この発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られ、その発光色は発光物質の種類を変えることにより選択できる。
【0152】
また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて、例えば白色発光を得ることもできる。白色発光を得る場合には、例えば、発光物質を含む層を少なくとも2つ備える構成とし、それぞれの層を互いに補色の関係にある色を呈する光を発するように構成すればよい。具体的な補色の関係としては、例えば青色と黄色、あるいは青緑色と赤色等が挙げられる。
【0153】
さらに、演色性の良い白色発光を得る場合には、発光スペクトルが可視光全域に拡がるものとする必要があり、例えば、青色、緑色、赤色を呈する光を発する層を備える構成とすればよい。
【0154】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0155】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光パネルを用いた発光装置について図6を参照して説明する。具体的には、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備え、発光が第2の電極側に取り出されるアクティブマトリクス型およびパッシブマトリクス型の発光装置(トップエミッション方式ともいう)について説明する。
【0156】
<アクティブマトリクス型の発光装置>
アクティブマトリクス型の発光装置に適用した場合の構成を図6に示す。なお、図6(A)は、発光装置の上面図、図6(B)は図6(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。
【0157】
アクティブマトリクス型の発光装置1400は、駆動回路部(ソース側駆動回路)1401、画素部1402、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1403、封止基板1404、シール材1405を備える(図6(A)参照)。なお、シール材1405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0158】
発光装置1400は外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1409を介して、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、FPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCまたはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0159】
次に、発光装置1400の構成について図6(B)に示す断面図を用いて説明する。発光装置1400は、素子基板1410上に図示されたソース側駆動回路1401を含む駆動回路部および、図示された画素を含む画素部1402を備える。また、ソース側駆動回路1401およびゲート側駆動回路1403に入力される信号を伝送するための引き回し配線1408を備える。
【0160】
なお、本実施の形態ではソース側駆動回路1401がnチャネル型トランジスタ1423とpチャネル型トランジスタ1424とを組み合わせたCMOS回路を含む構成について例示するが、駆動回路はこの構成に限定されず、種々のCMOS回路、PMOS回路またはNMOS回路で構成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0161】
<トランジスタの構成>
なお、トランジスタのチャネルが形成される領域には、さまざまな半導体を用いることができる。具体的には、アモルファスシリコン、ポリシリコンの他、酸化物半導体などを用いることができる。
【0162】
また、トランジスタのチャネルが形成される領域に、単結晶半導体を用いることができる。単結晶半導体をチャネル形成領域に用いると、トランジスタサイズを微細化することが可能となるため、表示部において画素をさらに高精細化することができる。
【0163】
半導体層を構成する単結晶半導体としては、代表的には、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板、化合物半導体基板(SiC基板、サファイア基板、GaN基板等)などの半導体基板を用いることができる。好適には、絶縁表面上に単結晶半導体層が設けられたSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることができる。
【0164】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体層を形成する方法等を用いることができる。
【0165】
本実施の形態では、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、または素子基板1410上のどちらか一方に絶縁層を形成する。単結晶半導体基板と素子基板1410を、絶縁層を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体層として単結晶半導体層を素子基板1410上に形成する。なお、素子基板1410としては、ガラス基板を用いることができる。
【0166】
また、半導体基板に絶縁分離領域を形成し、絶縁分離された半導体領域を用いてトランジスタ1411、1412を形成してもよい。
【0167】
単結晶半導体をチャネル形成領域として用いることで、結晶粒界における結合の欠陥に起因する、トランジスタのしきい値電圧等の電気的特性のばらつきを軽減できるため、本発明の一態様の表示装置は、各画素にしきい値電圧補償用の回路を配置しなくても正常に発光素子を動作させることができる。したがって、一画素における回路要素を削減することが可能となるため、レイアウトの自由度が向上する。よって、表示装置の高精細化を図ることができる。例えば、マトリクス状に配置された複数の画素を一インチあたり350以上含む(水平解像度が350ppi(pixels per inch)以上である)、さらに好ましくは400以上含む(水平解像度が400ppi以上である)構成とすることが可能となる。
【0168】
さらに、単結晶半導体をチャネル形成領域として用いたトランジスタは、高い電流駆動能力を維持したまま、微細化が可能である。該微細なトランジスタを用いることで表示に寄与しない回路部の面積を縮小することができるため、表示部においては表示面積が拡大し、かつ表示装置の狭額縁化が達成できる。
【0169】
<画素部の構成>
また、画素部1402は複数の画素を備える。画素は発光素子1418と、発光素子1418の第1の電極1413にドレイン電極が接続された電流制御用トランジスタ1412と、スイッチング用トランジスタ1411と、を有する。画素部1402には、例えば実施の形態1で例示した構成を適用できる。
【0170】
発光パネルに設けられた発光素子1418は、第1の電極1413と、第2の電極1417と、発光性の有機化合物を含む層1416と、を有する。なお、隔壁1414が第1の電極1413の端部を覆って形成されている。
【0171】
隔壁1414の上端部または下端部には、曲率を有する曲面が形成されるようにする。隔壁1414は、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。例えば、隔壁1414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、隔壁1414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。ここでは、ポジ型の感光性ポリイミド膜を用いることにより形成する。
【0172】
なお、隔壁を遮光性とすると、発光パネルに設けられた反射性の膜による外光の反射を抑制できる。発光素子1418の外側に延在する反射膜が、外光を反射すると発光装置のコントラストが低下してしまうため、鮮やかな発光を得られない。隔壁を遮光性とする場合は、黒色に着色した樹脂層を用いて形成できる。
【0173】
発光素子1418の構成としては、例えば実施の形態3で例示した発光素子の構成を適用できる。
【0174】
具体的には、発光性の有機化合物を含む層1416に白色を呈する光を発する構成を適用できる。
【0175】
また、カラーフィルタ1434を発光素子1418と重なる位置に設けることができる。また、遮光性の膜1435(ブラックマトリクスともいう)を隣接する発光素子の間の隔壁に重ねて設けることができる。なお、カラーフィルタ1434および遮光性の膜1435は、いずれも封止基板1404に設けることができる。
【0176】
また、発光素子1418の第1の電極1413と第2の電極1417を用いて、微小共振器(マイクロキャビティともいう)を構成できる。例えば、第1の電極1413に発光性の有機化合物を含む層1416が発する光を反射する導電膜を用い、第2の電極1417に、当該光の一部を反射し、一部を透過する半透過・半反射性の導電膜を用いて構成できる。
【0177】
また、光学調整層を第1の電極と第2の電極の間に設けることができる。光学調整層は反射性の第1の電極1413と半透過・半反射性の第2の電極1417の間の光学距離を調整する層であり、光学調整層の厚さを調整することにより、第2の電極1417から優先的に取り出す光の波長を調整できる。
【0178】
光学調整層に用いることができる材料としては、発光性の有機化合物を含む層を適用できる。例えば、電荷発生領域を用いて、その厚さを調整してもよい。特に正孔輸送性の高い物質と該正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含む領域を光学調整層に用いると、光学調整層が厚い構成であっても駆動電圧の上昇を抑制できるため好ましい。
【0179】
また、光学調整層に用いることができる他の材料としては、発光性の有機化合物を含む層1416が発する光を透過する透光性の導電膜を適用できる。例えば、反射性の導電膜の表面に該透光性を有する導電膜を積層して、第1の電極1413を構成できる。この構成によれば、隣接する第1の電極の光学調整層の厚さを変えることが容易であるため好ましい。
【0180】
<封止構造>
本実施の形態で例示する発光装置1400は、素子基板1410、封止基板1404、およびシール材1405で囲まれた空間1407に、本発明の一態様の発光パネルに設けられた発光素子1418を封止する構造になっている。なお、空間1407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材1405で充填される場合もある。また、乾燥剤など不純物の吸着材を設けても良い。
【0181】
シール材1405および封止基板1404は、大気中の不純物(例えば水分や酸素)をできるだけ透過しない材料であることが望ましい。シール材1405にはエポキシ系樹脂や、ガラスフリット等を用いることができる。
【0182】
封止基板1404に用いることができる材料としては、ガラス基板や石英基板の他、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板や、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)等をその例に挙げることができる。
【0183】
隔壁1414上にスペーサ1433を設けることができる。スペーサ1433は球状であっても、柱状であってもよく、湾曲した上面を有していてもよい。また、スペーサ1433は電気的に絶縁している材料を用いて形成してもよい。スペーサ1433を隔壁1414上に設けると、外力が加わり撓んだ封止基板1404が発光素子1418を傷つける現象を防止できる。
【0184】
上述した本発明の一態様のアクティブマトリクス型の発光装置は、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備える本発明の一態様の発光パネルを搭載する。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光装置を提供できる。
【0185】
(実施の形態5)
本実施の形態では、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備える本発明の一態様の発光パネルを搭載した発光装置の一例について、図7を用いて説明する。
【0186】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0187】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0188】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0189】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0190】
図7(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0191】
図7(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図7(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図7(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図7(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0192】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0193】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0194】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0195】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0196】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0197】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、または筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0198】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0199】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0200】
図7(E)は、照明装置の一例を示している。照明装置7500は、筐体7501に光源として本発明の一態様の発光装置7503a〜7503dが組み込まれている。照明装置7500は、天井や壁等に取り付けることが可能である。
【0201】
また、本発明の一態様の発光装置は、発光パネルが薄膜状であるため、曲面を有する基体に貼り付けることで、曲面を有する発光装置とすることができる。また、その発光装置を、曲面を有する筐体に配置することで、曲面を有する電子機器または照明装置を実現することができる。
【0202】
上述した本発明の一態様の発光装置は、隔壁の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAが、第1の電極と接する部分の発光性の有機化合物を含む層の厚さAの1/2より薄く、隔壁の側面と重なる部分の第2の電極の厚さBと、第1の電極と重なる部分の第2の電極の厚さBから求めた比(B/B)が(A/A)より大きい構成を備える本発明の一態様の発光パネルを搭載する。その結果、クロストーク現象の発生が抑制された発光装置を提供できる。
【0203】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0204】
<発光パネルの構成>
本実施例で例示する発光パネルの構造を図8に示す。発光パネル290はガラス製の基板200上に層間膜207を介して一方の発光素子250aと、他方の発光素子250bが形成されている。また、隔壁240が、一方の発光素子250aの第1の電極251aと他方の発光素子250bの第1の電極251bの間に形成されている(図8(A)参照)。
【0205】
基板200としてSOI基板を用いた。SOI基板は、厚さ0.7mmの無アルカリガラスの表面に成膜された厚さ100nmの酸化珪素膜上に、厚さ50nmの単結晶シリコン層を形成して用いた。なお、基板200には、該単結晶シリコン層を用いてトランジスタ(図示しない)が形成されている。トランジスタは該単結晶シリコン層をチャネル形成領域に備え、40nmの酸化窒化珪素膜をゲート絶縁膜に、30nmの窒化タンタル層と370nmのタングステン層の積層体をゲート電極に備える。また、単結晶シリコン層のチャネル形成領域を挟む領域に形成された不純物が添加された領域を、ソース電極およびドレイン電極とする。該トランジスタは50nmの酸化窒化珪素膜を封止膜に備え、さらにその上に280nmの窒化酸化珪素膜と600nmの酸化窒化珪素膜を絶縁膜に備える。
【0206】
該絶縁膜上には、100nmのチタン層と、900nmのアルミニウム層と、100nmのチタン層と、がこの順に積層された配線層が設けられている。また、厚さが1.4μmのポリイミド膜が層間膜207として該配線層を覆って形成されている(図8(A)参照)。
【0207】
一方の発光素子250aの第1の電極251aは、200nmのアルミニウム−チタン合金膜とその上に厚さ6nmのチタン膜を積層した積層体を反射電極とし、その上に光学調整層として厚さ90nmの酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)膜が積層されている。
【0208】
また、他方の発光素子250bの第1の電極251bは、200nmのアルミニウム−チタン合金膜とその上に厚さ6nmのチタン膜が積層されている。
【0209】
隔壁240は、第1の電極251aと第1の電極251bに重なる開口部を有し、第1の電極251aと第1の電極251bの端部を覆う厚さ1.4μmのポリイミド膜で形成されている。
【0210】
<発光性の有機化合物を含む層の構成>
図8(C)に発光性の有機化合物を含む層253の構成を示す。発光性の有機化合物を含む層253は、中間層(1504)を挟んで2つのEL層(第1のEL層1503aと第2のEL層1503b)が設けられた構造(タンデム構造ともいう)を備える。
【0211】
第1のEL層1503aは、第1の電極251上に正孔注入層1511、第1の正孔輸送層1512、第1の発光層1513、第1の電子輸送層1514a、および第2の電子輸送層1514bをこの順に備える。
【0212】
中間層1504は、電子輸送層1514b上に、電子注入バッファー1504a、電子リレー層1504b、および電荷発生領域1504cをこの順に備える。
【0213】
第2のEL層1503bは、中間層1504上に、第2の正孔輸送層1522、第2の発光層1523a、第3の発光層1523b、第3の電子輸送層1524a、第4の電子輸送層1524b、および電子注入層1525をこの順に備える。
【0214】
上記のEL層を構成する材料の詳細を表1に示す。
【表1】

【0215】
第2の電極252は、15nmの銀・マグネシウム合金膜上に70nmのインジウム錫酸化物(ITOともいう)を積層した導電膜を用いた。銀・マグネシウム合金膜は重量比10:1(=Ag:Mg)で共蒸着して形成した。
【0216】
また、本実施例で用いる一部の有機化合物の構造式を以下に示す。
【0217】
【化1】

【0218】
【化2】

【0219】
(発光パネルの作製)
次に、発光パネル290の作製方法について説明する。
【0220】
まず、ガラス基板上に厚さ100nmの酸化珪素膜を形成し、その上に単結晶シリコン層を形成して、SOI基板を形成する。単結晶シリコン層が形成されたSOI基板上に、トランジスタを形成する方法としては、既知の方法を用いることができる。
【0221】
次いで、層間膜207にスパッタリング法を用いて反射膜を形成した。本実施例では、アルミニウム−チタン合金膜200nmとその上にチタン膜6nmを積層した積層膜を反射膜に用いた。
【0222】
次に、該積層膜上に光学調整層となる酸化珪素を含むインジウムスズ酸化物(略称:ITSO)膜を必要に応じて所望の膜厚となるようにスパッタリング法にて成膜し、一方の発光素子250aの第1の電極251aおよび他方の発光素子250bの第1の電極251bを形成した。
【0223】
次に、一方の発光素子250aおよび他方の発光素子250bの第1の電極上に開口部を有する隔壁240を形成した。ポジ型の感光性のポリイミドを塗布し、フォトマスクを介して露光し、不要な部分を現像により除去し、その後、焼成して隔壁240を形成した。なお、焼成はあらかじめ250℃に設定された焼成炉に基板を投入し、焼成炉を降温することなく焼成後の基板を取り出した。
【0224】
次に、反射膜が形成された面を下方に向けて、ガラス製の基板200を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した。
【0225】
次に、正孔注入層1511を第1の電極上に形成した。正孔注入層1511は9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデンとを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む層を用いた。複合材料を含む層の膜厚は20nmとし、PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で2:1(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源を用いて、複数の材料を同時に蒸着する方法を指す。
【0226】
次に、正孔輸送層1512を正孔注入層1511上に形成した。正孔輸送層1512は抵抗加熱を用いた蒸着法により、PCzPAを20nmの膜厚となるように成膜した。
【0227】
次に、第1の発光層1513を正孔輸送層1512上に形成した。第1の発光層1513は9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称CzPA)およびN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称1,6−mMemFLPAPrn)を30nmの膜厚となるように共蒸着して形成した。CzPAおよび1,6−mMemFLPAPrnの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6−mMemFLPAPrn)となるように蒸着レートを調整した。
【0228】
次に、電子輸送層を第1の発光層1513上に形成した。電子輸送層は、第1の電子輸送層1514aと第2の電子輸送層1514bからなる。なお、第1の電子輸送層1514aとしてCzPAを5nm、その上に第2の電子輸送層1514bとしてバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nmの膜厚となるように成膜した。
【0229】
次に、電子注入バッファー1504aを電子輸送層1514上に形成した。電子注入バッファー1504aは、カルシウムを1nmの膜厚となるように成膜した。
【0230】
次に、電子リレー層1504bを電子注入バッファー1504a上に形成した。電子リレー層1504bは、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜した。
【0231】
次に、電荷発生領域1504cを電子リレー層1504b上に形成した。電荷発生領域1504cは、PCzPAと酸化モリブデンとを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む層を用いた。複合材料を含む層の膜厚は30nmとし、PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で2:1(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0232】
次に、正孔輸送層1522を電荷発生領域1504c上に形成した。正孔輸送層1522は抵抗加熱を用いた蒸着法により、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜した。
【0233】
次に、第2の発光層1523aを正孔輸送層1522上に形成した。第2の発光層1523aは2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称2mDBTPDBq−II)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称PCBA1BP)および(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2acac)を20nmの膜厚となるように共蒸着して形成した。2mDBTPDBq−II、PCBA1BPおよびIr(mppm)2acacの重量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTPDBq−II:PCBA1BP:Ir(mppm)2acac)となるように蒸着レートを調整した。
【0234】
次に、第3の発光層1523bを第2の発光層1523a上に形成した。第3の発光層1523bは2mDBTPDBq−IIおよび(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2dpm)を20nmの膜厚となるように共蒸着して形成した。2mDBTPDBq−IIおよびIr(tppr)2dpmの重量比は、1:0.02(=2mDBTPDBq−II:Ir(tppr)2dpm)となるように蒸着レートを調整した。
【0235】
次に、電子輸送層を第3の発光層1523b上に形成した。電子輸送層は、第3の電子輸送層1524aと第4の電子輸送層1524bからなる。なお、第3の電子輸送層1524aとして2mDBTPDBq−IIを15nm、その上に第4の電子輸送層1524bとしてBPhenを15nmの膜厚となるように成膜した。
【0236】
次に、電子注入層1525を第4の電子輸送層1524b上に形成した。電子注入層1525としてフッ化リチウム(LiF)を、1nmの膜厚となるように蒸着した。
【0237】
最後に、第2の電極252を電子注入層1525上に形成した。第2の電極252は、抵抗加熱を用いた蒸着法により、銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)を10nmの膜厚となるように共蒸着し、さらにインジウム錫酸化物(略称:ITO)を70nmの膜厚となるようにスパッタリング法を用いて形成して、発光パネル290を作製した。AgとMgの体積比は、10:1(=Ag:Mg)となるように蒸着レートを調整した。
【0238】
以上により得られた発光パネル290を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した。
【0239】
次いで、この発光素子がマトリクス状に配設された発光パネル290から、一方の発光素子250aを含む列のみを駆動して、隣接する発光素子へのクロストークを確認した結果を示す。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0240】
<評価結果>
隔壁240の側面と重なる部分の発光性の有機化合物を含む層253の厚さAが、第1の電極251aと接する部分の発光性の有機化合物を含む層253の厚さAの1/2より薄く、その厚さの比(A/A)は42%であった(図8(B)参照)。
【0241】
また、隔壁240の側面と重なる部分の第2の電極252の厚さBと、第1の電極251aと重なる部分の第2の電極252の厚さBから求めた比(B/B)が58%であり、(A/A)に相当する42%より大きかった。
【0242】
なお、基板200に対する隔壁240の側面の角度は、56°であった。
【0243】
本実施例で作製した発光パネルの発光状態を、光学顕微鏡とCCDカメラを用いて観察した結果を図9(A)に示す。図には画像信号により選択され、駆動回路により電力が供給された一行の青色の画素と一列の青色の画素が、交差する部分が示されている。なお、青色の画素の左側には赤色の画素が配置され、右側には緑色の画素が配置されている。図9(A)から、選択された青色の画素に隣接する赤色または緑色の画素は、ほとんど発光しておらず、クロストーク現象の発生が抑制されていた。
【0244】
また、図9(A)に示す切断線A1−B1においてCCDカメラが捉えた明るさを、その位置に対しプロットしたものを図10に実線で示す。なお、横軸の位置情報は、CCDカメラの画素を単位とする相対的な値である。また、CCDカメラが捉える明るさは、黒を0、白を255に段階的に分別して数値化した。
【0245】
相対的な位置(100)から(123)にかけての観測した明るさは、青色の画素に対応するものである。また、(83)から(93)にかけて観測した明るさは赤色の画素、(123)から(133)にかけて観測した明るさは緑色の画素に対応するものである。このプロットから、クロストーク現象が抑制されていることが確認できる。
【0246】
(比較例)
<比較パネルの構成>
本比較例で例示する比較パネルは、隔壁の構成を除いて上述の発光パネルと同じ構成を有する。具体的には、隔壁の側面の形態を除いて、基板、層間膜、一方の発光素子、他方の発光素子の構成は同様である。よって、構成を同じくする部分の詳細については、上述の発光パネルの記載を参酌することができる。
【0247】
比較パネルの隔壁の構成について説明する。隔壁は、一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の第1の電極に重なる開口部を有し、一方の発光素子の第1の電極と他方の発光素子の第1の電極の端部を覆う厚さ1.4μmのポリイミド膜で形成されている。
【0248】
比較パネルの隔壁の作製方法について説明する。ポジ型の感光性のポリイミドを塗布し、フォトマスクを介して露光し、不要な部分を現像により除去した。次いで、フォトマスクを用いずに露光して、その後焼成して隔壁を形成した。このような方法を用いることで、隔壁が第1の電極に接する部分における隔壁の側面と基板のなす角度を、なだらかな角度にすることができる。なお、焼成はあらかじめ250℃に設定された焼成炉に基板を投入し、焼成炉を降温することなく焼成後の基板を取り出した。具体的には35°程度の角度で接するように形成できる。
【0249】
<比較結果>
本比較例で作製した比較パネルの発光状態を、光学顕微鏡とCCDカメラを用いて観察した結果を図9(B)に示す。図には画像信号により選択され、駆動回路により電力が供給された一行の青色の画素と一列の青色の画素が、交差する部分が示されている。なお、青色の画素の左側には赤色の画素が配置され、右側には緑色の画素が配置されている。図9(B)から、選択された青色の画素に隣接する赤色および緑色の画素が発光して、クロストーク現象が発生していることが確認できた。
【0250】
また、図9(B)に示す切断線A2−B2においてCCDカメラが捉えた明るさを、その位置に対しプロットしたものを図10に破線で示す。なお、横軸の位置情報は、CCDカメラの画素を単位とする相対的な値である。
【0251】
相対的な位置(100)から(123)にかけての観測した明るさは、青色の画素に対応するものである。しかし、(81)から(97)にかけて観測した明るさは赤色の画素によるものであり、(124)から(134)にかけて観測した明るさは緑色の画素によるものであり、青色の画素を選択したにもかかわらず、いずれも無視できない明るさで発光しており、クロストーク現象が発生していることが確認できた。
【0252】
(参考例)
本参考例では、実施例で用いた材料について説明する。
【0253】
<1,6mMemFLPAPrnの合成例>
N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)を合成する例を示す。
【0254】
[ステップ1:3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン(略称:mMemFLPA)の合成法]
【0255】
9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレン3.2g(8.1mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド2.3g(24.1mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン40.0mL、m−トルイジン0.9mL(8.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)44.5mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして2.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:1)により精製し、トルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の白色固体2.8gを、収率82%で得た。上記ステップ1の合成スキームを下記(J−1)に示す。
【0256】
【化3】

【0257】
[ステップ2:N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)の合成法]
【0258】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)、3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン1.4g(3.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.1mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン21.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)34.9mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして3.0時間攪拌した。攪拌後、トルエンを400mL加えて加熱し、熱いまま、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮し得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の黄色固体を1.2g、収率67%で得た。
【0259】
得られた黄色固体1.0gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、317℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体1.0gを、収率93%で得た。上記ステップ2の合成スキームを下記(J−2)に示す。
【0260】
【化4】

【0261】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)であることを確認した。
【0262】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl,300MHz):δ=2.21(s,6H)、6.67(d,J=7.2Hz,2H)、6.74(d,J=7.2Hz,2H)、7.17−7.23(m,34H)、7.62(d,J=7.8Hz,4H)、7.74(d,J=7.8Hz,2H)、7.86(d,J=9.0Hz,2H)、8.04(d,J=8.7Hz,4H)
【0263】
<2mDBTPDBq−IIの合成例>
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)を合成する例を示す。
【0264】
[2mDBTPDBq−IIの合成]
2mDBTPDBq−IIの合成スキームを(C−1)に示す。
【0265】
【化5】

【0266】
2L三口フラスコに2−クロロジベンゾ[f,h]キノキサリン5.3g(20mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸6.1g(20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)460mg(0.4mmol)、トルエン300mL、エタノール20mL、2Mの炭酸カリウム水溶液20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物を窒素気流下、100℃で7.5時間攪拌した。室温まで冷ました後、得られた混合物を濾過して白色の濾物を得た。得られた濾物を水、エタノールの順で洗浄した後、乾燥させた。得られた固体を約600mLの熱トルエンに溶かし、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過し、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。クロマトグラフィーは、熱トルエンを展開溶媒に用いて行った。ここで得られた固体にアセトンとエタノールを加えて超音波を照射した後、生じた懸濁物を濾取して乾燥させたところ、目的物の白色粉末を収量7.85g、収率80%で得た。
【0267】
上記目的物は、熱トルエンには比較的可溶であったが、冷めると析出しやすい材料であった。また、アセトン、エタノールなど他の有機溶剤には難溶であった。そのため、この溶解性の差を利用して、上記の様に、簡便な方法で収率よく合成することができた。具体的には、反応終了後、室温に戻して析出させた固体を濾取することで、大部分の不純物を簡便に除くことができた。また、熱トルエンを展開溶媒とした、カラムクロマトグラフィーにより、析出しやすい目的物も簡便に精製することができた。
【0268】
得られた白色粉末4.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を300℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を3.5g、収率88%で得た。
【0269】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)であることを確認した。
【0270】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.45−7.52(m,2H),7.59−7.65(m,2H),7.71−7.91(m,7H),8.20−8.25(m,2H),8.41(d,J=7.8Hz,1H),8.65(d,J=7.5Hz,2H),8.77−8.78(m,1H),9.23(dd,J=7.2Hz,1.5Hz,1H),9.42(dd,J=7.8Hz,1.5Hz,1H),9.48(s,1H)。
【0271】
<[Ir(mppm)(acac)]の合成例>
(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])を合成する例を示す。
【0272】
[ステップ1;4−メチル−6−フェニルピリミジン(略称:Hmppm)の合成]
まず、4−クロロ−6−メチルピリミジン4.90gとフェニルボロン酸4.80g、炭酸ナトリウム4.03g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.16g、水20mL、アセトニトリル10mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。ここでさらにフェニルボロン酸2.28g、炭酸ナトリウム2.02g、Pd(PPhCl0.082g、水5mL、アセトニトリル10mLをフラスコに入れ、再度マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。その後この溶液に水を加え、ジクロロメタンにて抽出した。得られた抽出液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のピリミジン誘導体Hmppmを得た(橙色油状物、収率46%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。以下にステップ1の合成スキーム(b−1)を示す。
【0273】
【化6】

【0274】
[ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(mppm)Cl])の合成]
次に、2−エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ1で得たHmppm1.51g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)1.26gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで洗浄し、濾過することにより複核錯体[Ir(mppm)Cl]を得た(暗緑色粉末、収率77%)。以下にステップ2の合成スキーム(b−2)を示す。
【0275】
【化7】

【0276】
[ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])の合成]
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(mppm)Cl]1.84g、アセチルアセトン0.48g、炭酸ナトリウム1.73gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をジクロロメタンに溶解して濾過し、不溶物を除去した。得られた濾液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その後、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶化することにより、目的物を黄色粉末として得た(収率44%)。以下にステップ3の合成スキーム(b−3)を示す。
【0277】
【化8】

【0278】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、この化合物が目的物である(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])が得られたことがわかった。
【0279】
H−NMR.δ(CDCl):1.78(s,6H),2.81(s,6H),5.24(s,1H),6.37(d,2H),6.77(t,2H),6.85(t,2H),7.61−7.63(m,4H),8.97(s,2H).
【符号の説明】
【0280】
100 基板
106a 電極
106b 電極
107 絶縁層
140 隔壁
140a 隔壁
140b 隔壁
140c 隔壁
150a 発光素子
150b 発光素子
151a 第1の電極
151b 第1の電極
152 第2の電極
152a 第2の電極
152b 第2の電極
152c 第2の電極
153 発光性の有機化合物を含む層
153a 発光性の有機化合物を含む層
153b 発光性の有機化合物を含む層
153c 発光性の有機化合物を含む層
190 ELパネル
191 成膜方法
192 成膜方法
193 成膜方法
194 成膜方法
200 基板
207 層間膜
240 隔壁
250a 発光素子
250b 発光素子
251a 第1の電極
251b 第1の電極
252 第2の電極
253 発光性の有機化合物を含む層
290 発光パネル
1101 陽極
1102 陰極
1103 発光ユニット
1103a 発光ユニット
1103b 発光ユニット
1104 中間層
1104a 電子注入バッファー
1104b 電子リレー層
1104c 電荷発生領域
1113 正孔注入層
1114 正孔輸送層
1115 発光層
1116 電子輸送層
1117 電子注入層
1400 発光装置
1401 ソース側駆動回路
1402 画素部
1403 ゲート側駆動回路
1404 封止基板
1405 シール材
1407 空間
1408 配線
1409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
1410 素子基板
1411 スイッチング用トランジスタ
1412 電流制御用トランジスタ
1413 第1の電極
1414 隔壁
1416 発光性の有機化合物を含む層
1417 第2の電極
1418 発光素子
1423 nチャネル型トランジスタ
1424 pチャネル型トランジスタ
1433 スペーサ
1434 カラーフィルタ
1435 遮光性の膜
1503a EL層
1503b EL層
1504 中間層
1504a 電子注入バッファー
1504b 電子リレー層
1504c 電荷発生領域
1511 正孔注入層
1512 正孔輸送層
1512a 正孔輸送層
1513 発光層
1514 電子輸送層
1514a 電子輸送層
1514b 電子輸送層
1521 正孔輸送層
1522 正孔輸送層
1523a 発光層
1523b 発光層
1524a 電子輸送層
1524b 電子輸送層
1525 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7500 照明装置
7501 筐体
7503a〜7503d 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に隣接する2つの第1の電極と、
2つの前記第1の電極と重なる第2の電極と、
2つの前記第1の電極のそれぞれと前記第2の電極に挟持される発光性の有機化合物を含む層と、を備える2つの発光素子と、
2つの前記第1の電極の間に互いを隔てる絶縁性の隔壁と、を有し、
前記第1の電極と前記第2の電極のいずれか一方は、前記発光性の有機化合物を含む層が発する光に対して透光性を有し、
前記発光性の有機化合物を含む層は、前記隔壁と重なる部分に、前記第1の電極と重なる部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を備え、
前記第2の電極の前記第1の電極と重なる部分の厚さBに対する、前記第2の電極の前記隔壁と重なる部分の厚さBの比(B/B)が、(A/A)に比べて大きい、発光パネル。
【請求項2】
前記絶縁性の隔壁が基板に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を有する請求項1記載の発光パネル。
【請求項3】
前記第2の電極が、前記隔壁の側面と重なる部分に、厚さが前記第1の電極と重なる部分より厚い部分を含む、請求項1または請求項2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記発光性の有機化合物を含む層は、発光ユニットと電荷発生層と、を含み、
前記電荷発生層は、正孔輸送性の高い物質と前記正孔輸送性の高い物質に対するアクセプター性物質を含んで、前記発光ユニットと前記第1の電極の間に設けられる、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の発光パネル。
【請求項5】
前記発光性の有機化合物を含む層が、発光ユニットと電子注入バッファーと、を含み、
前記電子注入バッファーは、電子輸送性の高い物質と前記電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含んで、前記発光ユニットと前記第1の電極の間に設けられる、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の発光パネル。
【請求項6】
前記発光性の有機化合物を含む層が、複数の発光ユニットと中間層を有し、
前記中間層が、電子輸送性の高い物質と前記電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質を含む電子注入バッファーを備えて、前記発光ユニットの間に挟まれる、請求項4乃至請求項5のいずれか一に記載の発光パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の発光パネルを備える発光装置。
【請求項8】
基板上に隣接する2つの第1の電極と、前記基板に対し55°以上100°以下の角度をなす側面を備えて2つの前記第1の電極を隔てる隔壁と、を形成する第1のステップと、
前記基板に鉛直な方向に堆積する指向性を有する成膜方法を用いて、
前記隔壁の側面と重なる部分に、前記第1の電極と重なる部分の厚さAの1/2より薄い厚さAの部分を備えるように、前記発光性の有機化合物を含む層を形成する第2のステップと、
前記隔壁の側面に堆積する成膜方法を用いて第2の電極を形成する際に、前記第2の電極の前記第1の電極と重なる部分の厚さBに対する、前記第2の電極の前記隔壁と重なる部分の厚さBの比(B/B)が、(A/A)より大きくなるように形成する第3のステップと、を有する発光パネルの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30476(P2013−30476A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140440(P2012−140440)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】