説明

発光パネル及び発光パネルの製造方法

【課題】上側配線の下側配線との交差部分における断線を減らし歩留まりを向上させる。
【解決手段】基板2の上部に形成された下部配線Ldと、下部配線Ldを被覆する絶縁層31と、絶縁層31の上部に、下部配線Ldと交差するように形成された上部配線Laと、下部配線Ld及び上部配線Laと接続された画素トランジスタ11〜13と、画素トランジスタ11〜13により電力が供給される有機EL素子40と、を備える発光パネル10である。絶縁層31の上面であって下部配線Ldの上部には、下部配線Ldに沿った突条が形成され、上部配線Laは、少なくとも突条の傾斜面31Bにおいて幅が変化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネル及び発光パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)はカソード電極とアノード電極との間に例えば電子注入層、発光層、正孔注入層が介在した積層構造を為している。アノード電極とカソード電極の間に順バイアス電圧が印加されると、電子注入層から発光層に電子が注入され、正孔注入層から発光層に正孔が注入され、発光層内で電子と正孔が再結合を引き起こして発光層が発光する。
【0003】
発光層や正孔注入層は有機化合物からなり、これらの材料を溶媒に溶かした有機化合物溶液を各画素の電極上に塗布し、乾燥させることで形成される。カラーディスプレイにおいては、混色を防ぐため、隣接する画素の間に隔壁を形成し、有機化合物溶液の混合を防止している。
【0004】
アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイパネルにおいては、各画素にスイッチング素子が配置され、縦横に配置された走査線や信号線、共通電源線等とスイッチング素子とを接続し、各画素に設けられた有機EL素子に供給する電流を制御する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−234391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スイッチング素子と接続される走査線や共通電源線といった配線が、絶縁膜を介して走査線等の配線と交差する場所において、下側配線の厚さによる絶縁膜の段差により、上側配線と絶縁膜との密着性が低下する。すると、上側配線となる金属層をパターニングするための現像液やフォトレジストの剥離液等が上側配線と絶縁膜との境界線から浸み込み、断線することにより歩留まりが低下するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、上側配線の下側配線との交差部分における断線を減らし歩留まりを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、基板の上部に形成された第一配線と、前記第一配線及び前記第一配線の周辺領域を被覆し、前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて傾斜面を有する絶縁層と、前記絶縁層の上部に、前記第一配線と交差するように形成され、前記傾斜面において前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて幅が漸次狭くなるように形成された第二配線と、を備えることを特徴とする発光パネルが提供される。
【0009】
前記第一配線の側面の上方において、前記第二配線の幅が漸次変化していることが好ましい。
前記第一配線及び前記第二配線と接続された画素トランジスタと、前記画素トランジスタにより電力が供給される発光素子と、を備えることが好ましい。
前記第一配線は、前記画素トランジスタのゲート電極と共通の金属層で形成され、前記第二配線は、前記画素トランジスタのソース・ドレイン電極と共通の金属層で形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様によれば、基板上に第一配線を形成し、前記第一配線及び前記第一配線の周辺領域を被覆し、前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて傾斜するような絶縁層を形成し、前記絶縁層の上部に、前記第一配線と交差するとともに、前記傾斜面において前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて幅が漸次狭くなるように第二配線を形成することを特徴とする発光パネルの製造方法が提供される。
【0011】
前記第一配線及び前記第二配線と接続される画素トランジスタ及び前記画素トランジスタにより電力が供給される発光素子を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上側配線の下側配線との交差部分における断線を減らし歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機ELディスプレイパネル10の模式的な平面図である。
【図2】有機ELディスプレイパネル10における1つの画素PXの回路図である。
【図3】1つの画素PXを示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図3のV−V矢視断面図である。
【図6】図3のVI−VI矢視断面図である。
【図7】図1のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図3のVIII部において交差している信号線Ldと共通電源線Laとの位置関係を示すための模式的な斜視図である。
【図9】図8のIX矢視図である。
【図10】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図11】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図12】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図13】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図14】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図15】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図16】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【図17】図6と同じ断面における有機ELディスプレイパネル10の製造工程について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)という用語をELと略称する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機ELディスプレイパネル10の模式的な平面図である。この有機ELディスプレイパネル10においては、赤、青及び緑の画素PXによって1ドットの画素が構成され、このような画素が表示領域全域にマトリクス状に配列されている。図1の横方向の配列に着目すると赤の画素PX、青の画素PX、緑の画素PXの順に繰り返し配列され、図1の縦方向の配列に着目すると同じ色が一列に配列されている。
【0016】
この有機ELディスプレイパネル10においては、画素PXに各種の信号を出力するために、複数の信号線Ld、走査線Ls、及び共通電源線Laが設けられている。走査線Lsと、信号線Ldとは、互いに直交する方向に延在している。図1の縦方向に信号線Ldが、横方向に走査線Ls及び共通電源線Laが延在している。
信号線Ld、走査線Ls、及び共通電源線Laの端部には、それぞれ端子PLd、PLs、PLaが設けられている。また、画素PXに共通するカソードCの端子PLcが設けられている。
【0017】
図2は、有機ELディスプレイパネル10の1つの画素PXにおけるスイッチング素子の回路図である。画素PXは、3つのnチャネル型トランジスタ11、12、13、キャパシタCSと、を有する画素回路PC及び有機EL素子40を有する。3つのnチャネル型トランジスタ11、12、13及びキャパシタCSは、信号線Ld及び走査線Lsの入力信号に応じて共通電源線Laから供給される電力を有機EL素子40に供給する。
【0018】
図3は1つの画素PXを示す平面図であり、図4は図3のIV−IV矢視断面図であり、図5は図3のV−V矢視断面図であり、図6は図3のVI−VI矢視断面図であり、図7は図3のVII−VII矢視断面図である。なお、図1と図3の縦横方向は対応している。
【0019】
図3〜図7に示すように、透明な絶縁基板2の上に、キャパシタCSの第一電極CS1が設けられている。第一電極CS1は透明な導電性膜からなる。このような第一電極CS1は、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)を成膜し、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成することができる。
【0020】
また、絶縁基板2の上には、トランジスタ11、12、13のゲート電極11G、12G、13G、及び信号線Ldが設けられている。なお、図3に示すように、ゲート電極11G、12Gは一体に形成されている。また、ゲート電極13Gは、図3、図4に示すように、一部で第一電極CS1と重なるように形成されている。
ゲート電極11G、12G、13G、信号線Ldは、例えばAl、AlTi、AlTiNd、MoNb等の金属薄膜(ゲートメタル)をパターニングすることで形成される。
【0021】
ゲート電極11G、12G、13G、第一電極CS1、信号線Ldは共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。ゲート絶縁膜31はSiO、SiN、SiON等の無機絶縁体をCVD法もしくはスパッタ法で成膜することにより形成することができる。
【0022】
ゲート絶縁膜31には、図4に示すように、第一電極CS1の上部であってトランジスタ11のソース電極11Sと重なる部分にコンタクトホール31aが形成されている。また、図5に示すように、信号線Ldの上部であってトランジスタ12のドレイン電極12Dと重なる部分にコンタクトホール31bが形成されている。同様に、図3に示すように、トランジスタ12のゲート電極12Gの上部であって走査線Lsと重なる部分にコンタクトホール31cが形成されている。
【0023】
図3〜図7に示すように、ゲート絶縁膜31の上面には、半導体膜21、チャネル保護膜22、n型半導体膜23が順に形成されている。また、n型半導体膜23の上面には、トランジスタ11、12、13のソース電極11S、12S、13S及びドレイン電極11D、12D、13D、走査線Ls及び共通電源線Laが設けられている。ソース電極11S、12S、13S及びドレイン電極11D、12D、13D、走査線Ls及び共通電源線Laは、共通の金属層(ドレインメタル)からなる。
【0024】
半導体膜21は、ソース電極11S、12S、13S、ドレイン電極11D、12D、13D、走査線Ls、共通電源線Laが形成される領域、及び、ゲート電極11G、12G、13Gの上方に形成されている。半導体膜21はアモルファスシリコン(a−Si)等を成膜しパターニングしてなる。
【0025】
チャネル保護膜22は半導体膜21の上部であって、ゲート電極11G、12G、13Gの上方に形成されている。チャネル保護膜22は、SiO、SiN、SiON等の無機絶縁体を成膜しパターニングしてなる。
n型半導体膜23は、半導体膜21の上面に形成されるとともに、一部がチャネル保護膜22と重なるように設けられている。
【0026】
共通電源線Laはマトリクス状に配列される画素電極41の間に、横方向に形成されている。また、共通電源線Laはトランジスタ11、13のドレイン電極11D、13Dと一体に形成されている。ドレイン電極11D、13Dは、一部がゲート電極11G、13Gと重なるように形成されている。
【0027】
走査線Lsは、マトリクス状に配列される画素電極41の間に、共通電源線Laと平行に横方向に形成されている。また、走査線Lsの一部はゲート電極12Gとが重なる位置に形成されている。走査線Lsの一部がコンタクトホール31c内に形成されることで、走査線Lsとゲート電極12Gとが導通する。
【0028】
図8は図3のVIII部において交差している信号線Ldと共通電源線Laとの位置関係を示すための模式的な斜視図であり、図9は図8のIX矢視図である。図8、図9に示すように、絶縁基板2の上部に設けられた信号線Ldをゲート絶縁膜31が被覆している。ゲート絶縁膜31の上部には、信号線Ldと交差するように共通電源線Laが設けられている。
【0029】
図8、図9に示すように、ゲート絶縁膜31は、下部に信号線Ldがある部分に沿って隆起している。ゲート絶縁膜31は、概ね、信号線Ldがない平坦面31Aから、信号線Ld上の平坦面31Cにかけて傾斜面31Bにより連続しており、傾斜面31B及び平坦面31Cにより信号線Ldに沿った突条が形成されている。なお、傾斜面31Bは、平坦面31A及び平坦面31Cと連続した曲面であってもよい。
共通電源線Laはゲート絶縁膜31の隆起部分を乗り越えるように、平坦面31A、傾斜面31B、平坦面31C上に連続して形成されている。
【0030】
図8に示すように、共通電源線Laは、平坦面31C上において、平坦面31A上よりも幅が広く形成されている。このため、共通電源線Laは、傾斜面31Bにおいて、平坦面31A側ほど幅が狭く、平坦面31C側ほど幅が広くなっている。
また、共通電源線Laは、平坦面31Aから傾斜面31Bに向かう方向において、傾斜面31Bの手前から幅が広くなりはじめている。このため、図8、図9に示すように、共通電源線Laの幅が変化している部分の、信号線Ldの幅方向の長さは、突条の幅よりも長い。
また、共通電源線Laは、平坦面31Cから傾斜面31Bに向かう方向において、傾斜面31Bの手前から幅が狭くなりはじめている。このため、図8、図9に示すように、共通電源線Laの最も幅が広い部分の、信号線Ldの幅方向の長さは、信号線の幅よりも短い。
なお、信号線Ldと走査線Laとの交差部分も同様の構造である。
【0031】
ここで、共通電源線La(又は、走査線Ls)の幅が均一である場合、信号線Ldの厚さによるゲート絶縁膜31の段差により、共通電源線La(又は、走査線Ls)とゲート絶縁膜31との境界線の勾配が急峻になり、ゲート絶縁膜31との密着性が低下する。つまり、共通電源線La(又は、走査線Ls)の幅が均一である場合、共通電源線La(又は、走査線Ls)とゲート絶縁膜31との境界線の勾配(境界線と水平面との間の角度)は、ゲート絶縁膜31の傾斜(傾斜角)と一致する。すると、走査線Lsや共通電源線Laとなる金属層(ドレインメタル層)をパターニングするための現像液やフォトレジストの剥離液等がゲート絶縁膜31との境界線から浸み込み、断線することにより歩留まりが低下するおそれがある。
【0032】
これに対して、本実施形態においては、図8に示すように、共通電源線La(又は、走査線Ls)の幅が変化している部分がゲート絶縁膜31の傾斜面31Bに追従する。このため、共通電源線La(又は、走査線Ls)の幅が均一である部分により傾斜面31Bに追従させる場合よりも、共通電源線La(又は、走査線Ls)とゲート絶縁膜31との境界線の勾配が緩やかになる。つまり、本実施形態における、共通電源線La(又は、走査線Ls)とゲート絶縁膜31との境界線の勾配(境界線と水平面との間の角度)は、ゲート絶縁膜31の傾斜(傾斜角)よりも小さくなる。よって、ゲート絶縁膜31との密着性が改善され、歩留まりが向上する。
【0033】
ソース電極11Sは一端がゲート電極11G、他端が第一電極CS1と重なるように形成されている。図4に示すように、ソース電極11Sの一部がコンタクトホール31a内に形成されることで、ソース電極11Sと第一電極CS1とが導通する。
ドレイン電極12Dは一部が信号線Ldと重なるように形成されている。図5に示すように、ドレイン電極12Dの一部がコンタクトホール31b内に形成されることで、ドレイン電極12Dと信号線Ldとが導通する。
【0034】
ソース電極12S、13Sは、一部がゲート電極12G、13Gの上方に重なるように形成されている。
ソース電極12S、13Sの上部には、一部にキャパシタCSの第二電極CS2が重なるように形成される。なお、第二電極CS2は有機EL素子40の画素電極41を兼ねている。
【0035】
画素電極41は透明な導電性膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成される。このような導電性膜としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)を用いることができる。
有機EL素子40の画素電極41はキャパシタCSの第二電極CS2を兼ねており、マトリクス状に配列されている。
【0036】
半導体膜21、チャネル保護膜22、n型半導体膜23、ソース電極11S、12S、13S、ドレイン電極11D、12D、13D、第二電極CS2(画素電極41)、走査線Ls及び共通電源線Laは、共通の層間絶縁膜32によって被覆されている。層間絶縁膜32はSiO、SiN、SiON等の無機絶縁体をCVD法もしくはスパッタ法で成膜することにより形成することができる。
【0037】
また、層間絶縁膜32には、図4、図6に示すように、画素電極41の少なくとも一部を露出させる開口部33が形成されている。開口部33が形成されることにより層間絶縁膜32は画素電極41の間を縫うように網目状に形成されるとともに画素電極41の一部外縁部に重なり、画素電極41を囲繞している。
【0038】
画素電極41の外縁部、及び、走査線Ls、補助共通電源線sLaは、共通の層間絶縁膜32により被覆されている。
なお、絶縁基板2から層間絶縁膜32までの積層構造がトランジスタアレイパネル100である。
【0039】
層間絶縁膜32の上部には、網目状の隔壁6が形成されている。隔壁6の開口8からは少なくとも一部の画素電極41が露出している。
隔壁6は、例えばポリイミド等のポジ型の感光性樹脂により形成されたものであり、トランジスタ11、12、13の各電極、信号線Ld、走査線Ls、共通電源線La、よりも十分に厚い。隔壁6は、感光性樹脂をトランジスタアレイパネル100上に塗布し、フォトマスクを用いてパターニングすることで形成される。
【0040】
開口8、開口部33より露出された画素電極41及び隔壁6には、正孔注入層42が設けられている。正孔注入層42は、画素電極41から担体輸送層43に向けて正孔を注入する機能を有する。この正孔注入層42は、遷移金属酸化物である酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化チタン等をスパッタリングすることで形成することができる。特に酸化モリブデンであることが好ましい。
【0041】
正孔注入層42の上部であって開口8、開口部33内には、担体輸送層43、発光層44が順に形成されている。担体輸送層43は、導電性高分子であるPEDOT及びドーパントであるPSSからなり、発光層44は、ポリフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料等の共役ポリマーからなる。サブピクセルが赤の場合には発光層44が赤色に発光し、サブピクセルが緑の場合には発光層44が緑色に発光し、サブピクセルが青の場合には発光層44が青色に発光するように、それぞれの材料を設定する。この担体輸送層43、発光層44の積層構造が有機EL層である。
【0042】
担体輸送層43及び発光層44は、湿式塗布法(例えば、インクジェットプリント法)によって成膜される。この場合、担体輸送層43となるPEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液を画素電極41に塗布して成膜し、その後、発光層44となる共役ポリマー発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布して成膜する。なお、厚膜の隔壁6が設けられるので、隣り合う画素電極41に塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合うことを防止することができる。
【0043】
なお、発光層44の上にさらに電子輸送層を設けても良い。また、有機EL層は画素電極41の上に形成された発光層、電子輸送層からなる二層構造であっても良いし、担体輸送層と発光層との組合せは任意に設定できる。また、これらの層構造において適切な層間に担体輸送を制限するインタレイヤ層が介在した積層構造であってもよいし、その他の積層構造であってもよい。
【0044】
担体輸送層43及び発光層44が形成されていない正孔注入層42の上部、及び、発光層44の上部には、有機EL素子40のカソードCの一部となる電子注入層45ががべた一面に成膜されている。電子注入層45は、画素電極41よりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属、または希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金より1〜10nmの厚さに形成されている。あるいは、電子注入層45は、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良い。
【0045】
電子注入層45の上部には、例えばアルミニウム、クロム、銀やパラジウム銀系の合金等の導電性材料を気相成長法によって成膜されたカソードCの一部となる対向電極(第2電極)46が形成されている。
画素電極41、正孔注入層42、有機EL層(担体輸送層43及び発光層44)、電子注入層45、対向電極46の順に積層されたものが有機EL素子40である。
【0046】
対向電極46は、図7に示すように、トランジスタアレイパネル100の外周部において、層間絶縁膜32に設けられたコンタクトホール32eを介して、ゲート絶縁膜31上に半導体膜21、n型半導体膜23を介して形成された配線26と接続されている。配線26は、ソース電極11S、12S、13S及びドレイン電極11D、12D、13D、走査線Ls及び共通電源線Laと共通の金属層からなる。
【0047】
配線26は、ゲート絶縁膜31に形成されたコンタクトホール31dを介して、絶縁基板2上に形成されたパッド層14Pと接続されている。パッド層14Pは、ゲート電極11G、12G、13G、信号線Ldと同様に、ゲートメタルをパターニングすることで形成される。
また、配線26は、コンタクトホール31d内において層間絶縁膜32に形成されたコンタクトホール32fを介して、パッド層39と接続されている。パッド層39は、例えばAl、AlTi、AlTiNd等、少なくともAlを含む合金、銅または銀、および銅または銀を含む合金のいずれかからなり、例えばスパッタ法で厚さ約200〜500nmの金属膜を成膜した後、感光性レジストを用いてエッチングすることで形成することができる。
パッド層39は、コンタクトホール32f内において層間絶縁膜32に形成されたコンタクトホール33bにより露出されている。この露出部分により外部配線と接続される。
【0048】
上記の有機EL素子40が形成されたトランジスタアレイパネル100には、図4〜図7に示すように、対向電極46の上面にパッシベーション膜47が形成される。パッシベーション膜47は、例えばアルミナ(Al)、SiAlON等をスパッタリングすることにより成膜することができる。
【0049】
パッシベーション膜47の上面には封止材3が塗布され、封止材3により絶縁基板2と対向基板9とを接合することで有機EL素子40が封止され、有機ELディスプレイパネル10が形成される。有機EL素子40はボトムエミッション型の発光構造を有するので、有機EL層42で発光した光は、画素電極41及び絶縁基板2を介して、絶縁基板2の他面側(図4〜図7の下方)に放射される。
【0050】
次に、有機ELディスプレイパネル10の製造工程について図10〜図17を用いて説明する。
まず、図10に示すように、透明電極膜を成膜し、パターニングすることで第一電極CS1を形成する。
次に、図11に示すように、Al、AlTi、AlTiNd等の金属によりゲートメタル層を形成し、パターニングすることによりゲート電極11G、12G、13G、第一電極CS1、信号線Ld、パッド層14Pを形成する。
【0051】
次に、図12に示すように、ゲート絶縁膜31、半導体膜21を順にべた一面に形成する。次に、半導体膜21の上部にSiO、SiN、SiON等の無機絶縁体を成膜し、パターニングすることでチャネル保護膜22を形成する。
【0052】
次に、図13に示すように、n型半導体膜23をべた一面に形成する。次に、ドライエッチングを行うことによりゲート絶縁膜31にコンタクトホール31a〜31cを形成する。
【0053】
次に、ドレインメタル層をべた一面に形成し、図14に示すように、半導体膜21及びn型半導体膜23とともにパターニングすることで、ソース電極11S、12S、13S、ドレイン電極11D、12D、13D、走査線Ls、共通電源線La、配線26を形成する。
【0054】
次に、図15に示すように、透明電極膜を成膜し、パターニングすることで、第二電極CS2(画素電極41)を形成する。
【0055】
次に、図16に示すように、層間絶縁膜32をべた一面に形成し、パターニングするとともに、ドライエッチングを行うことにより、開口部33、コンタクトホール32e、32fを形成する。
【0056】
次に、図17に示すように、ポリイミド系等のポジ型の感光性樹脂材料を塗布し、露光・現像処理を行うことで隔壁6を形成する。
【0057】
その後、正孔注入層42、担体輸送層43、発光層44、電子注入層45、対向電極46、パッシベーション膜47を順に形成し、封止材3を塗布し対向基板9と接合する。以上により、有機ELディスプレイパネル10が完成する。
【0058】
以上の実施形態においては、ゲート絶縁膜31の傾斜面31Bにおいて走査線Ls及び共通電源線Laの幅を変化させることで、走査線Ls及び共通電源線Laとゲート絶縁膜31との境界線の勾配を緩やかにする。このため、ゲート絶縁膜31との密着性を改善し、走査線Ls及び共通電源線Laの断線を減らし、歩留まりを向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。例えば、上記実施形態においては、信号線Ldの上部に設けられる走査線Ls及び共通電源線Laについて適用したが、走査線Ls及び共通電源線Laの上側にさらに配線を設けて本発明を適用してもよい。また、上記実施形態においては、ELディスプレイパネルのような表示装置について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばプリンタヘッド等の露光装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
CS キャパシタ
CS1 第一電極
CS2 第二電極
Ld 信号線(下部配線)
Ls 走査線(上部配線)
La 共通電源線(上部配線)
PX 画素
PLd、PLs、PLa 端子
2 基板
3 封止材
6 隔壁
8 開口
9 対向基板
10 有機ELディスプレイパネル
11、12、13 トランジスタ
11D、12D、13D ドレイン電極
11G、12G、13G ゲート電極
11S、12S、13S ソース電極
14P パッド層
21 半導体膜
22 チャネル保護膜
23 n型半導体膜
24 走査線接続層
25a、25b、25c、25d 導電層
26 配線
31 ゲート絶縁膜
31a〜31c、32e、32f コンタクトホール
32 層間絶縁膜
33 開口部
40 有機EL素子
41 画素電極(第二電極)
42 正孔注入層
43 担体輸送層
44 発光層
45 電子注入層
46 対向電極
47 パッシベーション膜
100 トランジスタアレイパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上部に形成された第一配線と、
前記第一配線及び前記第一配線の周辺領域を被覆し、前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて傾斜面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の上部に、前記第一配線と交差するように形成され、前記傾斜面において前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて幅が漸次狭くなるように形成された第二配線と、
を備えることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記第一配線の側面の上方において、前記第二配線の幅が漸次変化していることを特徴とする請求項1に記載の発光パネル。
【請求項3】
前記第一配線及び前記第二配線と接続された画素トランジスタと、
前記画素トランジスタにより電力が供給される発光素子と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記第一配線は、前記画素トランジスタのゲート電極と共通の金属層で形成され、
前記第二配線は、前記画素トランジスタのソース・ドレイン電極と共通の金属層で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光パネル。
【請求項5】
基板上に第一配線を形成し、
前記第一配線及び前記第一配線の周辺領域を被覆し、前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて傾斜するような絶縁層を形成し、
前記絶縁層の上部に、前記第一配線と交差するとともに、前記傾斜面において前記第一配線上部から前記周辺領域上部にかけて幅が漸次狭くなるように第二配線を形成することを特徴とする発光パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第一配線及び前記第二配線と接続される画素トランジスタ及び前記画素トランジスタにより電力が供給される発光素子を形成することを特徴とする請求項5に記載の発光パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−58664(P2012−58664A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204334(P2010−204334)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】