発光モジュールおよび車両用灯具
【課題】温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現する。
【解決手段】発光モジュール10は、LED12が実装されているLEDパッケージ14と、LED12と直列に接続されているとともに、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器16と、を備える。抵抗器16は、正の温度係数を有する。抵抗器16は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であってもよい。抵抗器16は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であってもよい。
【解決手段】発光モジュール10は、LED12が実装されているLEDパッケージ14と、LED12と直列に接続されているとともに、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器16と、を備える。抵抗器16は、正の温度係数を有する。抵抗器16は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であってもよい。抵抗器16は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールおよびそれを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードなどの半導体発光素子を利用した車両用灯具が知られている。発光ダイオード(以下、適宜「LED」と称す。)は、使用される雰囲気温度によって抵抗が変わるため、一定の明るさを維持しようとする場合、雰囲気温度に応じた電圧や電流の制御が必要となる。特に、車両用前照灯の灯室内の温度は、例えば車両のエンジンルーム等からの輻射熱により、大きく上昇する場合がある。
【0003】
そこで、車両用灯具に用いる光を発生する半導体発光素子と、予め設定された電流を半導体発光素子に供給し、車両用灯具の温度に基づき、電流を変化させる電流制御部とを備える車両用灯具が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発光ダイオードは、一般的に負の温度係数を抵抗成分に持つ。そのため、定電圧駆動により発光ダイオードの発光を制御しようとすると、温度の変化とともに駆動電流が大きく変化し、明るさが一定とならない。一方、定電流駆動により発光ダイオードの発光を制御しようとすると、電気回路からなる制御回路(安定器)が必要となり、装置の大型化やコストの増大を招くことにもなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、発光ダイオードが実装されているLEDパッケージと、発光ダイオードと直列に接続されているとともに、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器と、を備える。抵抗器は、正の温度係数を有する。
【0008】
この態様によると、温度変化により発光ダイオードの抵抗が減少(増加)しても、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器の抵抗は増加(減少)する。その結果、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。そのため、発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。
【0009】
抵抗器は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であってもよい。
【0010】
抵抗器は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であってもよい。回路を構成する抵抗器は、場合によって正の温度係数を有するものもあるが、その値は非常に小さい。そして、大きな値の正の温度係数を有する抵抗器を回路に用いることは避けられている。しかしながら、一般的に回路への使用が避けられるほど大きな値の正の温度係数を有する抵抗器と、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDと組み合わせることで、温度変化によるLEDパッケージの抵抗の変化をより緩和できる。
【0011】
なお、発光モジュールが備える正の温度係数を有する抵抗器は、1つであっても複数であってもよい。また、複数の抵抗器を組み合わせる場合、同じ種類の抵抗器を組み合わせてもよいし、異なる種類の抵抗器を組み合わせてもよい。
【0012】
発光モジュール内の全てのLEDチップへの投入電力の合計をJ[W]としたとき、発光モジュール内にある全ての抵抗器への投入電力の合計が0.2×J[W]以上であってもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、車両に用いられる車両用灯具であって、上述の発光モジュールと、発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、発光モジュールおよび光学部材を収容する灯体と、を備える。LEDパッケージおよび抵抗器は、灯体の内部で同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されている。
【0014】
この態様によると、温度の変化に対して明るさの変動の少ない車両用灯具を実現できる。
【0015】
LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を放熱する放熱部材を更に備えてもよい。抵抗器は、放熱部材に搭載されていてもよい。これにより、LEDパッケージと抵抗器の温度変化自体が抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0016】
本発明のさらに別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、車両に用いられる車両用灯具であって、発光モジュールと、発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、LEDパッケージおよび光学部材を収容する灯体と、LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を灯体の外部へ放熱する放熱部材を更に備える。抵抗器は、放熱部材のうち灯体の外部に露出している領域に搭載されている。
【0017】
この態様によると、LEDパッケージと抵抗器の温度変化自体が更に抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的なLEDを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を示した図である。
【図2】一般的なLEDの電圧−電流特性の温度依存性を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。
【図4】本実施の形態に係る発光モジュールを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を例示した図である。
【図5】表1に示した金属材料の体積抵抗率と温度係数との関係を示した図である。
【図6】実施例1に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図7】実施例2に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図8】実施例3に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図9】実施例4に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図10】実施例3に係るステンレス材料からなる抵抗器がある発光モジュールとそれがない発光モジュールを定電圧駆動した場合の雰囲気温度と電流値との関係を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る発光モジュールの変形例の概略構成を示す斜視図である。
【図12】一定電圧で駆動した場合の電流値の温度依存性を示す図である。
【図13】図12に示す温度−20℃の場合の電流値を100%として規格化した図である。
【図14】本実施の形態に係る発光モジュールのV−I特性を説明するための図である。
【図15】第3の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図16】第4の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図17】第5の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図18】第6の実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
一般的に、LEDは、負の温度係数を抵抗成分に持つ。図1は、一般的なLEDを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を示した図である。図1に示すように、雰囲気温度の上昇とともにLEDの駆動電圧が低下することがわかる。図2は、一般的なLEDの電圧−電流特性の温度依存性を示す図である。図2に示すように、雰囲気温度がT0、T1、T2のように上昇するにつれて、電圧の変化に対する電流の変化が大きくなることがわかる。このような特性から、一般的なLEDを定電流駆動するためには、制御回路のような安定器が別途必要である。
【0023】
換言すれば、定電圧駆動した場合の電流の温度依存性が少なければ、このような制御回路を簡素化または省略できることになる。そこで、本発明者は、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDに対して正の温度係数を有する抵抗器を直列に接続することで、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現できることに想到した。
【0024】
(第1の実施の形態)
図3は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。発光モジュール10は、LED12が実装されているLEDパッケージ14と、抵抗器16とを備える。本実施の形態に係るLED12は、複数のチップを含んでいる。LEDパッケージ14は、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板18と、熱伝導性絶縁基板18に形成されている配線パターン20と、ツェナーダイオード22とを有する。
【0025】
抵抗器16は、LED12と直列に接続されている。また、抵抗器16は、LEDパッケージ14の配線パターン20上にフリップチップ実装されている。そのため、抵抗器16は、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されていることになる。ツェナーダイオード22は、LED12と並列に配置されており、LED12に過剰な電圧がかからないようにする保護素子として機能する。本実施の形態に係る抵抗器16は、正の温度係数を有する。なお、LEDチップは、VC(垂直)チップであってもよい。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る発光モジュールを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を例示した図である。本実施の形態に係る発光モジュールは、温度変化によりLED12の抵抗が減少(増加)しても、LED12の温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器16の抵抗は増加(減少)する。したがって、使用するLEDに応じて、抵抗器の材質や構成を適切に設計することで、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。
【0027】
そのため、図4に示すように、本実施の形態に係る発光モジュールは、LEDのみの発光モジュールと比較して、電圧の温度依存性が少ない。換言すれば、本実施の形態に係る発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。つまり、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを、簡易な制御回路を使用し、あるいは、制御回路などを使用せずに実現できる。
【0028】
また、通常は、制御回路の寿命はLEDチップの寿命よりも短いため、発光モジュール全体の寿命は制御回路の寿命に依存してしまう。しかしながら、制御回路を使用せずに発光モジュールを構成できれば、LEDチップ本来の寿命まで発光モジュールや発光モジュールを備えた灯具の寿命を延ばすことができる。
【0029】
表1は、正の温度係数を有する金属材料の体積抵抗率と温度係数の数値を例示したものである。図5は、表1に示した金属材料の体積抵抗率と温度係数との関係を示した図である。なお、体積抵抗率は0℃の数値を示し、温度係数は、0℃〜100℃(ΔT=100℃)の間の数値である。
【0030】
【表1】
【0031】
本実施の形態の抵抗器16は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であるとよい。より好ましくは、0℃における体積抵抗率が3×10−8[Ω・m]以上であるとよい。
【0032】
また、本実施の形態に係る抵抗器16は、0℃〜100℃の間で正の温度係数を有していればよい。より好ましくは、抵抗器16は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であるとよい。これにより、温度変化によるLEDパッケージ14の抵抗の変化をより緩和できる。以下に、材料の異なる抵抗器を搭載した各種LEDパッケージで構成されている発光モジュールにおいて、雰囲気温度と、LED12および抵抗器16に発生する電圧との関係を詳述する。
【0033】
[実施例1]
図6は、実施例1に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例1に係る発光モジュールでは、室温25℃で、主にアルミニウムからなる5.4Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ3個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にアルミニウムの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に3.36V、80℃の時に4.41Vであり、この時の電圧差=1.04Vである。LEDチップ3個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に10.13V、80℃の時に9.14Vであり、この時の電圧差=−0.98Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に13.49V、80℃の時に13.55Vであり、この時の電圧差=0.06Vである。
【0034】
[実施例2]
図7は、実施例2に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例2に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にタングステンからなる5.7Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ2個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にタングステンの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に3.11V、80℃の時に4.67Vであり、この時の電圧差=1.56Vである。LEDチップ2個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に6.75V、80℃の時に6.09Vであり、この時の電圧差=−0.66Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に9.86V、80℃の時に10.76Vであり、この時の電圧差=0.90Vである。
【0035】
[実施例3]
図8は、実施例3に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例3に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にステンレス材料からなる0.64Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ1個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にステンレス材料の抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に0.43V、80℃の時に0.47Vであり、この時の電圧差=0.04Vである。LEDチップ1個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に3.38V、80℃の時に3.05Vであり、この時の電圧差=−0.33Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に3.81V、80℃の時に3.52Vであり、この時の電圧差=−0.29Vである。
【0036】
[実施例4]
図9は、実施例4に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例4に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にニッケルからなる9.29Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ6個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にニッケルの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に4.93V、80℃の時に8.38Vであり、この時の電圧差=3.45Vである。LEDチップ6個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に20.25V、80℃の時に18.28Vであり、この時の電圧差=−1.97Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に25.18V、80℃の時に26.66Vであり、この時の電圧差=1.48Vである。
【0037】
実施例1〜4に示すように、正の温度係数を有する抵抗器をLEDと直列に接続することで、LED単体の場合と比較して、雰囲気温度の変化に対する電圧の変動が抑制される。また、例えば実施例1では、雰囲気温度の変化ΔT=100℃の範囲で電圧の変動はわずかである。そのため、実施例1に係る発光モジュールを制御回路を用いずに定電圧駆動しても、雰囲気温度の変化に対して明るさの変動は少ない。
【0038】
特に、本実施の形態に係る発光モジュールは、−20℃から80℃のΔT=100℃の範囲内において一定電流を流した時に、抵抗器およびLEDで発生する最大の電圧差が、−0.3V以上1.5V以下の範囲内で変化するように構成されているとよい。これにより、発光モジュールは、自動車のバッテリなどにより直接定電圧駆動されることが可能となる。
【0039】
図10は、実施例3に係るステンレス材料からなる抵抗器がある発光モジュールとそれがない発光モジュールを定電圧駆動した場合の雰囲気温度と電流値との関係を示す図である。図10に示すように、LEDのみの発光モジュールを定電圧駆動した時の電流最小値は393mA、電流最大値は1190mAであり、その差は797mAである。一方、抵抗器がある発光モジュールを定電圧駆動した時の電流最小値は628mA、電流最大値は746mAであり、その差は118mAである。よって、抵抗器がLEDに直列に接続されている発光モジュールは、定電圧駆動した際の電流変化を抑制できる。
【0040】
図11は、本実施の形態に係る発光モジュールの変形例の概略構成を示す斜視図である。図11に示す発光モジュール24は、LEDパッケージ25に外部から給電するための給電端子26に抵抗器28が組み込まれている構成である。このように構成された発光モジュール24であっても、LEDパッケージ25上に抵抗器28が位置しており、LEDの温度に追従しやすい。また、抵抗器を給電端子に設けることで、種々のLEDパッケージとの組合せが可能となる。
【0041】
(第2の実施の形態)
以下では、抵抗器の材料として針金(鋼)、SUS304、ニクロム線を用いた発光モジュールを定電圧駆動した場合に、LEDに流れる電流の雰囲気温度依存性を説明する。なお、本実施の形態で用いるLEDは、発光効率が50lm/W程度のものであり、前述の材料を用いた抵抗器と直列に接続されている。
【0042】
LEDに流れる電流の温度特性の測定は、熱抵抗測定器を用いて行った。測定の際の雰囲気温度は、−20℃、30℃、80℃である。測定の際の印加電圧は13.2V、印加時間は15分である。また、抵抗器に用いられた材料は表2に示す通りである。
【0043】
【表2】
【0044】
図12は、一定電圧(13.2V)で駆動した場合の電流値の温度依存性を示す図である。図13は、図12に示す温度−20℃の場合の電流値を100%として規格化した図である。抵抗器が針金(鋼)の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.66A、80℃の時のIf=0.51Aであり、温度が100℃上昇すると約23%減少する。抵抗器がSUS304の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.67A、80℃の時のIf=0.71Aであり、温度が100℃上昇すると約6%減少する。抵抗器がニクロム線の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.66A、80℃の時のIf=0.72Aであり、温度が100℃上昇すると約10%増加する。
【0045】
したがって、各発光モジュールにおいて−20℃の時の電流値を100%とすると、抵抗器として針金、SUS304、ニクロム線を適宜組み合わすことによって、80℃の時の電流を10%の増加から23%の減少の間で制御できる。これは、発光モジュールを定電圧駆動する場合、−20℃〜80℃の雰囲気温度において、電流の変動を計算上ほぼ一定(±1%以下)にできることを意味している。
【0046】
次に、LEDに抵抗器を直列に接続した場合の発光効率について説明する。図14は、本実施の形態に係る発光モジュールのV−I特性を説明するための図である。図14に示すように、LEDのみの電力は4.83W(0.7A×6.9V)である。一方、このLEDに針金(鋼)を直列に接続した場合の電力は10.15W(0.7A×14.5V)となる。使用するLEDの発光効率が50lm/Wとすると、得られる光束は、241lm(50lm/W×4.83W)となる。これと同様の光束が、LEDと針金(鋼)とを直列に接続した発光モジュールにおいても得られているとすると、発光効率は241[lm]/10.15[W]≒24lm/Wである。このように、発光効率は低下するが、光束や輝度は抵抗器の有無で変化しない。
【0047】
本実施の形態に係るLEDチップの大きさは1×1mmである。また、使用したLEDチップ数は2個である。LEDチップ2個と抵抗器を直列に接続した発光モジュールにおいて、光束が不足する場合は、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを複数並列にした並列回路としてもよい。このように構成された発光モジュールは、全体の発光効率は約24lm/Wであるが、光束を複数倍にできる。
【0048】
(第3の実施の形態)
以下の各実施の形態では、上述の発光モジュールを用いた車両用灯具について説明する。上述の発光モジュールを用いることが好適な車両用灯具は、HL(ヘッドランプ)やDRL(デイランニングランプ)である。HLやDRLは、その設置位置がエンジンに近いため、例えばRCL(リアコンビネーションランプ)と比較して、周囲温度の変化が大きく、灯具内の光源への熱の影響が大きい。そのため、HLやDRLの光源として、周囲温度の変化に対して明るさの変動の少ない上述の発光モジュールを使用することで、従来のHLやDRLと比較して安定した照射性能を簡易な構成で実現することができる。
【0049】
また、HLで使用する発光モジュールは白色LEDが一般的であり、DRLで使用する発光モジュールは白色、青色、緑色のLEDが一般的であり、点灯には1つの灯具あたり、大きな電力(例えば10W以上)が印加させる。一方、RCLで使用する発光モジュールは赤色LEDが一般的であり、点灯には1つの灯具あたり、比較的小さな電力(例えば5W程度)が印加される。また、HLやDRLは、長時間の連続点灯が通常である。一方、RCLは、瞬間的に短時間の点灯が通常である。
【0050】
そのため、HLやDRLは、RCLと比較して、光源での発熱量が大きく、温度が上昇しやすい。そのため、HLやDRLの光源として、周囲温度の変化に対して明るさの変動の少ない上述の発光モジュールを使用することで、従来のHLやDRLと比較して安定した照射性能を簡易な構成で実現することができる。
【0051】
以下の各実施の形態では、上述の実施の形態に係る発光モジュールを使用することが好適な車両用灯具としてHLを一例に説明する。図15は、第3の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。第3の実施の形態に係る車両用灯具30は、灯具ボディ32と、灯具ボディ32の前端開口部に取り付けられたアウターレンズ34とで形成された灯室内に、光源としてのLEDパッケージ35を含む灯具ユニット36が収容された構成である。また、灯具ユニット36は、不図示のブラケットなどにより灯室内に固定されている。
【0052】
灯具ユニット36は、反射型のプロジェクタ型灯具ユニットであり、LEDパッケージ35と、LEDパッケージ35からの光を車両前方へ反射するリフレクタ38とを備える。また、灯具ユニット36は、ブラケットに固定されたシェード40と、シェード40に保持された投影レンズ42とを備える。
【0053】
LEDパッケージ35は、例えばLEDチップからなるLED35aと、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板35bとを備える。LED35aは、熱伝導性絶縁基板35b上に配置されている。LEDパッケージ35は、その照射軸が灯具ユニット36の照射方向(図15中左方向)と略垂直となる略鉛直上方に向けられた状態で、シェード40上に載置されている。なお、LEDパッケージ35の照射軸は、その形状や前方に照射される配光に応じて調整可能である。また、LEDパッケージ35は、複数のLED35aを設けた構成であってもよい。
【0054】
シェード40上には、LEDパッケージ35の他に抵抗器44が搭載されている。抵抗器44は、不図示の配線によりLEDパッケージ35のLED35aと直列に接続されている。抵抗器44は、前述の各実施の形態に示したように正の温度係数を有している。本実施の形態では、LEDパッケージ35と抵抗器44とで発光モジュールを構成している。
【0055】
リフレクタ38は、例えば回転楕円面の一部で構成された反射面が内側に形成された反射部材であり、その一端がシェード40に固定されている。また、シェード40は、略水平に配置された平面部40aを有しており、この平面部40aよりも前方領域は下方に凹状に湾曲された湾曲部40bとして構成され、LEDパッケージ35から出射した光を反射しないようになっている。リフレクタ38は、その第1焦点がLEDパッケージ35近傍に位置し、そしてその第2焦点がシェード40の平面部40aと湾曲部40bとが成す稜線40c近傍に位置するように設計配置されている。
【0056】
投影レンズ42は、リフレクタ38の反射面にて反射した光を灯具前方に投影する、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸上に配置され、シェード40の車両前方側先端部にて固定されている。投影レンズ42の後方焦点は、例えばリフレクタ38の第2焦点と略一致するように構成されている。また、投影レンズ42は、その後側焦点を含む後側焦点面上の像を、灯具前方に配置された鉛直仮想スクリーン上に反転像として投影するように構成されている。
【0057】
LEDパッケージ35のLED35aから出射した光は、リフレクタ38の反射面にて反射され、第2焦点を通って投影レンズ42に入射する。投影レンズ42に入射した光は、投影レンズ42で集光されて略平行な光として前方に照射される。また、シェード40の稜線40cを境界線として、一部の光が平面部40aにて反射し、光が選択的にカットされて車両前方に投影される配光パターンに斜めカットオフラインが形成される。
【0058】
上述のように本実施の形態に係る車両用灯具30は、LEDパッケージ35と、LEDパッケージ35から出射された光を車両前方に照射するためのリフレクタ38や投影レンズ42と、灯具ユニット36を収容する灯具ボディ32と、を備える。また、LEDパッケージ35および抵抗器44は、灯具ボディ32やアウターレンズ34などの灯体の内部の灯室内に設けられており、同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されていることになる。
【0059】
また、本実施の形態に係るシェード40は、LEDパッケージ35を支持するとともに、LEDパッケージ35の熱を放熱する放熱部材としても機能する。そして、抵抗器44は、LEDパッケージ35と同じシェード40上に搭載されている。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0060】
また、本実施の形態に係る発光モジュールは、負の温度係数を有するLED35aと正の温度係数を有する抵抗器44とが直列に接続されているため、温度の変化に対する抵抗の変動が抑制される。したがって、発光モジュールを定電圧で駆動しても明るさの変動の少ない車両用灯具を実現できる。また、発光モジュールを定電圧で駆動できることにより、自動車のバッテリを電源として用いることも可能となる。
【0061】
(第4の実施の形態)
図16は、第4の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。以下の説明では、第3の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第4の実施の形態に係る車両用灯具は、放熱部材としても機能するシェードの形状が異なる以外は第3の実施の形態に係る車両用灯具と同様である。
【0062】
本実施の形態に係る車両用灯具50においては、シェード52の後端(車両後方側)が灯具ボディ32に形成されている開口部32aから露出している。そのため、LEDパッケージ35や抵抗器44で発生する熱を効率よく車両用灯具50の外部へ放出することができる。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が更に抑制され、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0063】
(第5の実施の形態)
図17は、第5の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。以下の説明では、第4の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第5の実施の形態に係る車両用灯具は、抵抗器が灯室外に配置されている以外は第4の実施の形態に係る車両用灯具と同様である。
【0064】
本実施の形態に係る車両用灯具60においては、シェード52の後端(車両後方側)が灯具ボディ32に形成されている開口部32aから露出している。また、抵抗器44は、シェード52の露出部52aに搭載されている。そのため、LEDパッケージ35や抵抗器44で発生する熱を効率よく車両用灯具60の外部へ放出することができる。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が更に抑制され、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0065】
(第6の実施の形態)
図18は、第6の実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。発光モジュール110は、LED12が実装されているLEDパッケージ114と、4つの抵抗器16とを備える。本実施の形態に係るLED12は、4のチップを含んでおり、各チップは電気的に並列接続されている。LEDパッケージ114は、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板18と、熱伝導性絶縁基板18に形成されている配線パターン120と、ツェナーダイオード22とを有する。
【0066】
各抵抗器16は、LED12の各チップと直列に接続されている。つまり、本実施の形態に係るLEDパッケージ114は、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを4つ並列にした並列回路である。また、各抵抗器16は、LEDパッケージ114の配線パターン120上にフリップチップ実装されている。そのため、各抵抗器16は、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されていることになる。ツェナーダイオード22は、LED12と並列に配置されており、LED12に過剰な電圧がかからないようにする保護素子として機能する。
【0067】
次に、このように、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを複数並列にした並列回路を備えるLEDパッケージ114の効果について詳述する。
複数のLEDチップ、例えば4つのLEDチップ、を直列に接続したLEDの場合、LEDを光らせるためには13V程度の電圧が必要となる。一方、車両のバッテリー電圧は、通常13.5V程度であり、電圧が安定していればLEDを発光させることが可能である。しかしながら、バッテリー電圧は、諸要因によって10〜16V程度の範囲で変動する。そのため、バッテリー電圧が13Vを下回るとLEDを光らせることができなくなる。更に、LEDチップと直列に接続されている抵抗器での電圧降下を考慮すると、LEDチップへの印加電圧の確保が困難となる。
【0068】
本実施の形態に係るLEDパッケージ14は、各LEDチップを並列に配置し、LEDチップ毎に抵抗器が直列に接続されているため、1つのLEDチップと1つの抵抗器をユニットとして、このユニット毎にバッテリー電圧を印加できる。1つのLEDチップを発光させるための電圧は13Vも必要ないため、バッテリー電圧が変動しても(低下しても)LEDを発光させることができる。また、抵抗器16の抵抗値を調整することで、LEDチップに印加される電圧を最適化することができる。
【0069】
このように、本実施の形態に係る発光モジュール110によれば、バッテリー電圧の変動に対して、LEDチップへの印加電圧を必要十分に確保できる。
【0070】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0071】
例えば、上述の各車両用灯具では、光学系としてリフレクタと投影レンズを組み合わせたものを採用しているが、パラボラ反射鏡を用いたパラボラ光学系を採用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 発光モジュール、 12 LED、 14 LEDパッケージ、 16 抵抗器、 18 熱伝導性絶縁基板、 20 配線パターン、 22 ツェナーダイオード、 24 発光モジュール、 25 LEDパッケージ、 26 給電端子、 28 抵抗器、 30 車両用灯具、 32 灯具ボディ、 32a 開口部、 34 アウターレンズ、 35 LEDパッケージ、 35a LED、 35b 熱伝導性絶縁基板、 36 灯具ユニット、 38 リフレクタ、 40 シェード、 42 投影レンズ、 44 抵抗器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールおよびそれを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードなどの半導体発光素子を利用した車両用灯具が知られている。発光ダイオード(以下、適宜「LED」と称す。)は、使用される雰囲気温度によって抵抗が変わるため、一定の明るさを維持しようとする場合、雰囲気温度に応じた電圧や電流の制御が必要となる。特に、車両用前照灯の灯室内の温度は、例えば車両のエンジンルーム等からの輻射熱により、大きく上昇する場合がある。
【0003】
そこで、車両用灯具に用いる光を発生する半導体発光素子と、予め設定された電流を半導体発光素子に供給し、車両用灯具の温度に基づき、電流を変化させる電流制御部とを備える車両用灯具が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発光ダイオードは、一般的に負の温度係数を抵抗成分に持つ。そのため、定電圧駆動により発光ダイオードの発光を制御しようとすると、温度の変化とともに駆動電流が大きく変化し、明るさが一定とならない。一方、定電流駆動により発光ダイオードの発光を制御しようとすると、電気回路からなる制御回路(安定器)が必要となり、装置の大型化やコストの増大を招くことにもなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、発光ダイオードが実装されているLEDパッケージと、発光ダイオードと直列に接続されているとともに、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器と、を備える。抵抗器は、正の温度係数を有する。
【0008】
この態様によると、温度変化により発光ダイオードの抵抗が減少(増加)しても、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器の抵抗は増加(減少)する。その結果、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。そのため、発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。
【0009】
抵抗器は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であってもよい。
【0010】
抵抗器は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であってもよい。回路を構成する抵抗器は、場合によって正の温度係数を有するものもあるが、その値は非常に小さい。そして、大きな値の正の温度係数を有する抵抗器を回路に用いることは避けられている。しかしながら、一般的に回路への使用が避けられるほど大きな値の正の温度係数を有する抵抗器と、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDと組み合わせることで、温度変化によるLEDパッケージの抵抗の変化をより緩和できる。
【0011】
なお、発光モジュールが備える正の温度係数を有する抵抗器は、1つであっても複数であってもよい。また、複数の抵抗器を組み合わせる場合、同じ種類の抵抗器を組み合わせてもよいし、異なる種類の抵抗器を組み合わせてもよい。
【0012】
発光モジュール内の全てのLEDチップへの投入電力の合計をJ[W]としたとき、発光モジュール内にある全ての抵抗器への投入電力の合計が0.2×J[W]以上であってもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、車両に用いられる車両用灯具であって、上述の発光モジュールと、発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、発光モジュールおよび光学部材を収容する灯体と、を備える。LEDパッケージおよび抵抗器は、灯体の内部で同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されている。
【0014】
この態様によると、温度の変化に対して明るさの変動の少ない車両用灯具を実現できる。
【0015】
LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を放熱する放熱部材を更に備えてもよい。抵抗器は、放熱部材に搭載されていてもよい。これにより、LEDパッケージと抵抗器の温度変化自体が抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0016】
本発明のさらに別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、車両に用いられる車両用灯具であって、発光モジュールと、発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、LEDパッケージおよび光学部材を収容する灯体と、LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を灯体の外部へ放熱する放熱部材を更に備える。抵抗器は、放熱部材のうち灯体の外部に露出している領域に搭載されている。
【0017】
この態様によると、LEDパッケージと抵抗器の温度変化自体が更に抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的なLEDを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を示した図である。
【図2】一般的なLEDの電圧−電流特性の温度依存性を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。
【図4】本実施の形態に係る発光モジュールを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を例示した図である。
【図5】表1に示した金属材料の体積抵抗率と温度係数との関係を示した図である。
【図6】実施例1に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図7】実施例2に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図8】実施例3に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図9】実施例4に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。
【図10】実施例3に係るステンレス材料からなる抵抗器がある発光モジュールとそれがない発光モジュールを定電圧駆動した場合の雰囲気温度と電流値との関係を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る発光モジュールの変形例の概略構成を示す斜視図である。
【図12】一定電圧で駆動した場合の電流値の温度依存性を示す図である。
【図13】図12に示す温度−20℃の場合の電流値を100%として規格化した図である。
【図14】本実施の形態に係る発光モジュールのV−I特性を説明するための図である。
【図15】第3の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図16】第4の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図17】第5の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図18】第6の実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
一般的に、LEDは、負の温度係数を抵抗成分に持つ。図1は、一般的なLEDを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を示した図である。図1に示すように、雰囲気温度の上昇とともにLEDの駆動電圧が低下することがわかる。図2は、一般的なLEDの電圧−電流特性の温度依存性を示す図である。図2に示すように、雰囲気温度がT0、T1、T2のように上昇するにつれて、電圧の変化に対する電流の変化が大きくなることがわかる。このような特性から、一般的なLEDを定電流駆動するためには、制御回路のような安定器が別途必要である。
【0023】
換言すれば、定電圧駆動した場合の電流の温度依存性が少なければ、このような制御回路を簡素化または省略できることになる。そこで、本発明者は、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDに対して正の温度係数を有する抵抗器を直列に接続することで、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現できることに想到した。
【0024】
(第1の実施の形態)
図3は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。発光モジュール10は、LED12が実装されているLEDパッケージ14と、抵抗器16とを備える。本実施の形態に係るLED12は、複数のチップを含んでいる。LEDパッケージ14は、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板18と、熱伝導性絶縁基板18に形成されている配線パターン20と、ツェナーダイオード22とを有する。
【0025】
抵抗器16は、LED12と直列に接続されている。また、抵抗器16は、LEDパッケージ14の配線パターン20上にフリップチップ実装されている。そのため、抵抗器16は、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されていることになる。ツェナーダイオード22は、LED12と並列に配置されており、LED12に過剰な電圧がかからないようにする保護素子として機能する。本実施の形態に係る抵抗器16は、正の温度係数を有する。なお、LEDチップは、VC(垂直)チップであってもよい。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る発光モジュールを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を例示した図である。本実施の形態に係る発光モジュールは、温度変化によりLED12の抵抗が減少(増加)しても、LED12の温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器16の抵抗は増加(減少)する。したがって、使用するLEDに応じて、抵抗器の材質や構成を適切に設計することで、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。
【0027】
そのため、図4に示すように、本実施の形態に係る発光モジュールは、LEDのみの発光モジュールと比較して、電圧の温度依存性が少ない。換言すれば、本実施の形態に係る発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。つまり、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを、簡易な制御回路を使用し、あるいは、制御回路などを使用せずに実現できる。
【0028】
また、通常は、制御回路の寿命はLEDチップの寿命よりも短いため、発光モジュール全体の寿命は制御回路の寿命に依存してしまう。しかしながら、制御回路を使用せずに発光モジュールを構成できれば、LEDチップ本来の寿命まで発光モジュールや発光モジュールを備えた灯具の寿命を延ばすことができる。
【0029】
表1は、正の温度係数を有する金属材料の体積抵抗率と温度係数の数値を例示したものである。図5は、表1に示した金属材料の体積抵抗率と温度係数との関係を示した図である。なお、体積抵抗率は0℃の数値を示し、温度係数は、0℃〜100℃(ΔT=100℃)の間の数値である。
【0030】
【表1】
【0031】
本実施の形態の抵抗器16は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であるとよい。より好ましくは、0℃における体積抵抗率が3×10−8[Ω・m]以上であるとよい。
【0032】
また、本実施の形態に係る抵抗器16は、0℃〜100℃の間で正の温度係数を有していればよい。より好ましくは、抵抗器16は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であるとよい。これにより、温度変化によるLEDパッケージ14の抵抗の変化をより緩和できる。以下に、材料の異なる抵抗器を搭載した各種LEDパッケージで構成されている発光モジュールにおいて、雰囲気温度と、LED12および抵抗器16に発生する電圧との関係を詳述する。
【0033】
[実施例1]
図6は、実施例1に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例1に係る発光モジュールでは、室温25℃で、主にアルミニウムからなる5.4Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ3個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にアルミニウムの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に3.36V、80℃の時に4.41Vであり、この時の電圧差=1.04Vである。LEDチップ3個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に10.13V、80℃の時に9.14Vであり、この時の電圧差=−0.98Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に13.49V、80℃の時に13.55Vであり、この時の電圧差=0.06Vである。
【0034】
[実施例2]
図7は、実施例2に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例2に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にタングステンからなる5.7Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ2個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にタングステンの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に3.11V、80℃の時に4.67Vであり、この時の電圧差=1.56Vである。LEDチップ2個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に6.75V、80℃の時に6.09Vであり、この時の電圧差=−0.66Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に9.86V、80℃の時に10.76Vであり、この時の電圧差=0.90Vである。
【0035】
[実施例3]
図8は、実施例3に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例3に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にステンレス材料からなる0.64Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ1個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にステンレス材料の抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に0.43V、80℃の時に0.47Vであり、この時の電圧差=0.04Vである。LEDチップ1個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に3.38V、80℃の時に3.05Vであり、この時の電圧差=−0.33Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に3.81V、80℃の時に3.52Vであり、この時の電圧差=−0.29Vである。
【0036】
[実施例4]
図9は、実施例4に係る発光モジュールにおける雰囲気温度と、LEDに発生する電圧、抵抗器に発生する電圧、LEDおよび抵抗器に発生する合計電圧、との関係を示す図である。実施例4に係る発光モジュールは、室温25℃で、主にニッケルからなる9.29Ωの抵抗を有する抵抗器を、LEDチップ6個からなるLEDと直列に接続し、0.7Aの電流を流した。このように電流を一定にした場合にニッケルの抵抗器に発生する電圧は、−20℃の時に4.93V、80℃の時に8.38Vであり、この時の電圧差=3.45Vである。LEDチップ6個からなるLEDに発生する電圧は、−20℃の時に20.25V、80℃の時に18.28Vであり、この時の電圧差=−1.97Vである。抵抗器およびLEDの合計電圧は、−20℃の時に25.18V、80℃の時に26.66Vであり、この時の電圧差=1.48Vである。
【0037】
実施例1〜4に示すように、正の温度係数を有する抵抗器をLEDと直列に接続することで、LED単体の場合と比較して、雰囲気温度の変化に対する電圧の変動が抑制される。また、例えば実施例1では、雰囲気温度の変化ΔT=100℃の範囲で電圧の変動はわずかである。そのため、実施例1に係る発光モジュールを制御回路を用いずに定電圧駆動しても、雰囲気温度の変化に対して明るさの変動は少ない。
【0038】
特に、本実施の形態に係る発光モジュールは、−20℃から80℃のΔT=100℃の範囲内において一定電流を流した時に、抵抗器およびLEDで発生する最大の電圧差が、−0.3V以上1.5V以下の範囲内で変化するように構成されているとよい。これにより、発光モジュールは、自動車のバッテリなどにより直接定電圧駆動されることが可能となる。
【0039】
図10は、実施例3に係るステンレス材料からなる抵抗器がある発光モジュールとそれがない発光モジュールを定電圧駆動した場合の雰囲気温度と電流値との関係を示す図である。図10に示すように、LEDのみの発光モジュールを定電圧駆動した時の電流最小値は393mA、電流最大値は1190mAであり、その差は797mAである。一方、抵抗器がある発光モジュールを定電圧駆動した時の電流最小値は628mA、電流最大値は746mAであり、その差は118mAである。よって、抵抗器がLEDに直列に接続されている発光モジュールは、定電圧駆動した際の電流変化を抑制できる。
【0040】
図11は、本実施の形態に係る発光モジュールの変形例の概略構成を示す斜視図である。図11に示す発光モジュール24は、LEDパッケージ25に外部から給電するための給電端子26に抵抗器28が組み込まれている構成である。このように構成された発光モジュール24であっても、LEDパッケージ25上に抵抗器28が位置しており、LEDの温度に追従しやすい。また、抵抗器を給電端子に設けることで、種々のLEDパッケージとの組合せが可能となる。
【0041】
(第2の実施の形態)
以下では、抵抗器の材料として針金(鋼)、SUS304、ニクロム線を用いた発光モジュールを定電圧駆動した場合に、LEDに流れる電流の雰囲気温度依存性を説明する。なお、本実施の形態で用いるLEDは、発光効率が50lm/W程度のものであり、前述の材料を用いた抵抗器と直列に接続されている。
【0042】
LEDに流れる電流の温度特性の測定は、熱抵抗測定器を用いて行った。測定の際の雰囲気温度は、−20℃、30℃、80℃である。測定の際の印加電圧は13.2V、印加時間は15分である。また、抵抗器に用いられた材料は表2に示す通りである。
【0043】
【表2】
【0044】
図12は、一定電圧(13.2V)で駆動した場合の電流値の温度依存性を示す図である。図13は、図12に示す温度−20℃の場合の電流値を100%として規格化した図である。抵抗器が針金(鋼)の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.66A、80℃の時のIf=0.51Aであり、温度が100℃上昇すると約23%減少する。抵抗器がSUS304の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.67A、80℃の時のIf=0.71Aであり、温度が100℃上昇すると約6%減少する。抵抗器がニクロム線の場合、LEDに流れる電流は、−20℃の時の順方向電流If=0.66A、80℃の時のIf=0.72Aであり、温度が100℃上昇すると約10%増加する。
【0045】
したがって、各発光モジュールにおいて−20℃の時の電流値を100%とすると、抵抗器として針金、SUS304、ニクロム線を適宜組み合わすことによって、80℃の時の電流を10%の増加から23%の減少の間で制御できる。これは、発光モジュールを定電圧駆動する場合、−20℃〜80℃の雰囲気温度において、電流の変動を計算上ほぼ一定(±1%以下)にできることを意味している。
【0046】
次に、LEDに抵抗器を直列に接続した場合の発光効率について説明する。図14は、本実施の形態に係る発光モジュールのV−I特性を説明するための図である。図14に示すように、LEDのみの電力は4.83W(0.7A×6.9V)である。一方、このLEDに針金(鋼)を直列に接続した場合の電力は10.15W(0.7A×14.5V)となる。使用するLEDの発光効率が50lm/Wとすると、得られる光束は、241lm(50lm/W×4.83W)となる。これと同様の光束が、LEDと針金(鋼)とを直列に接続した発光モジュールにおいても得られているとすると、発光効率は241[lm]/10.15[W]≒24lm/Wである。このように、発光効率は低下するが、光束や輝度は抵抗器の有無で変化しない。
【0047】
本実施の形態に係るLEDチップの大きさは1×1mmである。また、使用したLEDチップ数は2個である。LEDチップ2個と抵抗器を直列に接続した発光モジュールにおいて、光束が不足する場合は、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを複数並列にした並列回路としてもよい。このように構成された発光モジュールは、全体の発光効率は約24lm/Wであるが、光束を複数倍にできる。
【0048】
(第3の実施の形態)
以下の各実施の形態では、上述の発光モジュールを用いた車両用灯具について説明する。上述の発光モジュールを用いることが好適な車両用灯具は、HL(ヘッドランプ)やDRL(デイランニングランプ)である。HLやDRLは、その設置位置がエンジンに近いため、例えばRCL(リアコンビネーションランプ)と比較して、周囲温度の変化が大きく、灯具内の光源への熱の影響が大きい。そのため、HLやDRLの光源として、周囲温度の変化に対して明るさの変動の少ない上述の発光モジュールを使用することで、従来のHLやDRLと比較して安定した照射性能を簡易な構成で実現することができる。
【0049】
また、HLで使用する発光モジュールは白色LEDが一般的であり、DRLで使用する発光モジュールは白色、青色、緑色のLEDが一般的であり、点灯には1つの灯具あたり、大きな電力(例えば10W以上)が印加させる。一方、RCLで使用する発光モジュールは赤色LEDが一般的であり、点灯には1つの灯具あたり、比較的小さな電力(例えば5W程度)が印加される。また、HLやDRLは、長時間の連続点灯が通常である。一方、RCLは、瞬間的に短時間の点灯が通常である。
【0050】
そのため、HLやDRLは、RCLと比較して、光源での発熱量が大きく、温度が上昇しやすい。そのため、HLやDRLの光源として、周囲温度の変化に対して明るさの変動の少ない上述の発光モジュールを使用することで、従来のHLやDRLと比較して安定した照射性能を簡易な構成で実現することができる。
【0051】
以下の各実施の形態では、上述の実施の形態に係る発光モジュールを使用することが好適な車両用灯具としてHLを一例に説明する。図15は、第3の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。第3の実施の形態に係る車両用灯具30は、灯具ボディ32と、灯具ボディ32の前端開口部に取り付けられたアウターレンズ34とで形成された灯室内に、光源としてのLEDパッケージ35を含む灯具ユニット36が収容された構成である。また、灯具ユニット36は、不図示のブラケットなどにより灯室内に固定されている。
【0052】
灯具ユニット36は、反射型のプロジェクタ型灯具ユニットであり、LEDパッケージ35と、LEDパッケージ35からの光を車両前方へ反射するリフレクタ38とを備える。また、灯具ユニット36は、ブラケットに固定されたシェード40と、シェード40に保持された投影レンズ42とを備える。
【0053】
LEDパッケージ35は、例えばLEDチップからなるLED35aと、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板35bとを備える。LED35aは、熱伝導性絶縁基板35b上に配置されている。LEDパッケージ35は、その照射軸が灯具ユニット36の照射方向(図15中左方向)と略垂直となる略鉛直上方に向けられた状態で、シェード40上に載置されている。なお、LEDパッケージ35の照射軸は、その形状や前方に照射される配光に応じて調整可能である。また、LEDパッケージ35は、複数のLED35aを設けた構成であってもよい。
【0054】
シェード40上には、LEDパッケージ35の他に抵抗器44が搭載されている。抵抗器44は、不図示の配線によりLEDパッケージ35のLED35aと直列に接続されている。抵抗器44は、前述の各実施の形態に示したように正の温度係数を有している。本実施の形態では、LEDパッケージ35と抵抗器44とで発光モジュールを構成している。
【0055】
リフレクタ38は、例えば回転楕円面の一部で構成された反射面が内側に形成された反射部材であり、その一端がシェード40に固定されている。また、シェード40は、略水平に配置された平面部40aを有しており、この平面部40aよりも前方領域は下方に凹状に湾曲された湾曲部40bとして構成され、LEDパッケージ35から出射した光を反射しないようになっている。リフレクタ38は、その第1焦点がLEDパッケージ35近傍に位置し、そしてその第2焦点がシェード40の平面部40aと湾曲部40bとが成す稜線40c近傍に位置するように設計配置されている。
【0056】
投影レンズ42は、リフレクタ38の反射面にて反射した光を灯具前方に投影する、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸上に配置され、シェード40の車両前方側先端部にて固定されている。投影レンズ42の後方焦点は、例えばリフレクタ38の第2焦点と略一致するように構成されている。また、投影レンズ42は、その後側焦点を含む後側焦点面上の像を、灯具前方に配置された鉛直仮想スクリーン上に反転像として投影するように構成されている。
【0057】
LEDパッケージ35のLED35aから出射した光は、リフレクタ38の反射面にて反射され、第2焦点を通って投影レンズ42に入射する。投影レンズ42に入射した光は、投影レンズ42で集光されて略平行な光として前方に照射される。また、シェード40の稜線40cを境界線として、一部の光が平面部40aにて反射し、光が選択的にカットされて車両前方に投影される配光パターンに斜めカットオフラインが形成される。
【0058】
上述のように本実施の形態に係る車両用灯具30は、LEDパッケージ35と、LEDパッケージ35から出射された光を車両前方に照射するためのリフレクタ38や投影レンズ42と、灯具ユニット36を収容する灯具ボディ32と、を備える。また、LEDパッケージ35および抵抗器44は、灯具ボディ32やアウターレンズ34などの灯体の内部の灯室内に設けられており、同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されていることになる。
【0059】
また、本実施の形態に係るシェード40は、LEDパッケージ35を支持するとともに、LEDパッケージ35の熱を放熱する放熱部材としても機能する。そして、抵抗器44は、LEDパッケージ35と同じシェード40上に搭載されている。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が抑制されるため、雰囲気温度が変化しても、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0060】
また、本実施の形態に係る発光モジュールは、負の温度係数を有するLED35aと正の温度係数を有する抵抗器44とが直列に接続されているため、温度の変化に対する抵抗の変動が抑制される。したがって、発光モジュールを定電圧で駆動しても明るさの変動の少ない車両用灯具を実現できる。また、発光モジュールを定電圧で駆動できることにより、自動車のバッテリを電源として用いることも可能となる。
【0061】
(第4の実施の形態)
図16は、第4の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。以下の説明では、第3の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第4の実施の形態に係る車両用灯具は、放熱部材としても機能するシェードの形状が異なる以外は第3の実施の形態に係る車両用灯具と同様である。
【0062】
本実施の形態に係る車両用灯具50においては、シェード52の後端(車両後方側)が灯具ボディ32に形成されている開口部32aから露出している。そのため、LEDパッケージ35や抵抗器44で発生する熱を効率よく車両用灯具50の外部へ放出することができる。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が更に抑制され、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0063】
(第5の実施の形態)
図17は、第5の実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。以下の説明では、第4の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第5の実施の形態に係る車両用灯具は、抵抗器が灯室外に配置されている以外は第4の実施の形態に係る車両用灯具と同様である。
【0064】
本実施の形態に係る車両用灯具60においては、シェード52の後端(車両後方側)が灯具ボディ32に形成されている開口部32aから露出している。また、抵抗器44は、シェード52の露出部52aに搭載されている。そのため、LEDパッケージ35や抵抗器44で発生する熱を効率よく車両用灯具60の外部へ放出することができる。これにより、LEDパッケージ35と抵抗器44の温度変化自体が更に抑制され、明るさの変動がより少ない車両用灯具を実現できる。
【0065】
(第6の実施の形態)
図18は、第6の実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。発光モジュール110は、LED12が実装されているLEDパッケージ114と、4つの抵抗器16とを備える。本実施の形態に係るLED12は、4のチップを含んでおり、各チップは電気的に並列接続されている。LEDパッケージ114は、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板18と、熱伝導性絶縁基板18に形成されている配線パターン120と、ツェナーダイオード22とを有する。
【0066】
各抵抗器16は、LED12の各チップと直列に接続されている。つまり、本実施の形態に係るLEDパッケージ114は、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを4つ並列にした並列回路である。また、各抵抗器16は、LEDパッケージ114の配線パターン120上にフリップチップ実装されている。そのため、各抵抗器16は、LEDパッケージ14の温度変化の影響を受ける場所に配置されていることになる。ツェナーダイオード22は、LED12と並列に配置されており、LED12に過剰な電圧がかからないようにする保護素子として機能する。
【0067】
次に、このように、LEDチップと抵抗器を直列に接続したユニットを複数並列にした並列回路を備えるLEDパッケージ114の効果について詳述する。
複数のLEDチップ、例えば4つのLEDチップ、を直列に接続したLEDの場合、LEDを光らせるためには13V程度の電圧が必要となる。一方、車両のバッテリー電圧は、通常13.5V程度であり、電圧が安定していればLEDを発光させることが可能である。しかしながら、バッテリー電圧は、諸要因によって10〜16V程度の範囲で変動する。そのため、バッテリー電圧が13Vを下回るとLEDを光らせることができなくなる。更に、LEDチップと直列に接続されている抵抗器での電圧降下を考慮すると、LEDチップへの印加電圧の確保が困難となる。
【0068】
本実施の形態に係るLEDパッケージ14は、各LEDチップを並列に配置し、LEDチップ毎に抵抗器が直列に接続されているため、1つのLEDチップと1つの抵抗器をユニットとして、このユニット毎にバッテリー電圧を印加できる。1つのLEDチップを発光させるための電圧は13Vも必要ないため、バッテリー電圧が変動しても(低下しても)LEDを発光させることができる。また、抵抗器16の抵抗値を調整することで、LEDチップに印加される電圧を最適化することができる。
【0069】
このように、本実施の形態に係る発光モジュール110によれば、バッテリー電圧の変動に対して、LEDチップへの印加電圧を必要十分に確保できる。
【0070】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0071】
例えば、上述の各車両用灯具では、光学系としてリフレクタと投影レンズを組み合わせたものを採用しているが、パラボラ反射鏡を用いたパラボラ光学系を採用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 発光モジュール、 12 LED、 14 LEDパッケージ、 16 抵抗器、 18 熱伝導性絶縁基板、 20 配線パターン、 22 ツェナーダイオード、 24 発光モジュール、 25 LEDパッケージ、 26 給電端子、 28 抵抗器、 30 車両用灯具、 32 灯具ボディ、 32a 開口部、 34 アウターレンズ、 35 LEDパッケージ、 35a LED、 35b 熱伝導性絶縁基板、 36 灯具ユニット、 38 リフレクタ、 40 シェード、 42 投影レンズ、 44 抵抗器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードが実装されているLEDパッケージと、
前記発光ダイオードと直列に接続されているとともに、前記LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器と、を備え、
前記抵抗器は、正の温度係数を有することを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記抵抗器は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記抵抗器は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
発光モジュール内の全てのLEDチップへの投入電力の合計をJ[W]としたとき、発光モジュール内にある全ての抵抗器への投入電力の合計が0.2×J[W]以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
車両に用いられる車両用灯具であって、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
前記発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、
前記発光モジュールおよび前記光学部材を収容する灯体と、を備え、
前記LEDパッケージおよび前記抵抗器は、前記灯体の内部で同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
前記LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を放熱する放熱部材を更に備え、
前記抵抗器は、前記放熱部材に搭載されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項1】
発光ダイオードが実装されているLEDパッケージと、
前記発光ダイオードと直列に接続されているとともに、前記LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器と、を備え、
前記抵抗器は、正の温度係数を有することを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記抵抗器は、0℃における体積抵抗率が2×10−8[Ω・m]以上であることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記抵抗器は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10−3/℃]以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
発光モジュール内の全てのLEDチップへの投入電力の合計をJ[W]としたとき、発光モジュール内にある全ての抵抗器への投入電力の合計が0.2×J[W]以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
車両に用いられる車両用灯具であって、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
前記発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、
前記発光モジュールおよび前記光学部材を収容する灯体と、を備え、
前記LEDパッケージおよび前記抵抗器は、前記灯体の内部で同じ雰囲気となる領域にそれぞれ配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
前記LEDパッケージを支持するとともに、該LEDパッケージの熱を放熱する放熱部材を更に備え、
前記抵抗器は、前記放熱部材に搭載されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−104689(P2012−104689A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252636(P2010−252636)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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