説明

発光体を有するシリコン成形部材

本発明の対象は、多数の発光体をシリコーンマトリックス中に封入して含有する成形部材であり、この場合このシリコーンマトリックスは、内部の軟質のシリコーンマトリックスAから形成されており、このシリコーンマトリックスAは、1つ以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBによって包囲されており、シリコーンマトリックスBは、場合によってはトップコートCで被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の発光体をシリコンマトリックス中に封入して含む、発光体を有するシリコン成形部材に関する。
【0002】
LED発光体(LED=Light Emitting Diode)または発光ダイオードとも呼ばれる発光体は、光を放出する電子構造素子である。LED技術は、電磁スペクトルの幅広い範囲に亘って発光体を使用することを示し、この場合個々のLED発光体は、極めて特異的に狭いスペクトル範囲内で発光する。これは、例えば化学反応および生物学的プロセスを開始させるために、LED発光体を多数の使用にとって魅力的なものにする。更に、利点は、僅かな熱放出量、高い光収量および長い寿命にある。
【0003】
環境への影響からの保護のために、個々の発光ダイオードをシリコーンでカプセル化することは、公知である。米国特許第6916889号明細書B2の記載から、LEDsのカプセル化のために架橋可能なエポキシ官能性シリコーン樹脂を使用することは、公知である。WO 2006/055196A1には、光重合可能なシリコーンでのLED発光体のカプセル化の特許保護が請求されている。欧州特許出願公開第1684363号明細書A2には、LEDsを架橋可能なシリコーンでカプセル化することが記載されており、この場合には、第1の工程でLEDチップは、架橋されたシリコーンゴムでカプセル化され、引続き架橋されたシリコーン樹脂からなる第2の層が施こされる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3019239号明細書A1には、個々の半導体構造素子を2つの層で包囲することが記載されており、該層の中の1つの層は、硬質プラスチックからなる。具体的には、シリコーンまたはエポキシ樹脂からなる第1の軟質層およびシリコーン、エポキシ樹脂または熱可塑性樹脂からなる第2の硬質層で包囲することが記載されている。米国特許第2005/0130336号明細書A1では、個々のLEDsは、硬質の透明なレンズ状材料でカプセル化され、その際形成される、カプセルとLEDとの間の空隙は、軟質材料、例えば液状シリコーンを有する針状物で充填される。同様の措置は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19945675号明細書A1に記載されており、この場合個々のLEDチップは、光学的エポキシ樹脂レンズでカプセル化され、空隙は、液状またはゼラチン状のシリコーンで充填される。欧州特許出願公開第1657758号明細書A2には、1つ以上のLEDsを担体上に施こし、全ての個々のLEDに内側の軟質レンズおよび外側の硬質レンズを装備させることが記載されている。担体、軟質レンズおよび硬質レンズは、シリコーンから形成されていてよい。
【0004】
個々のLEDチップスをカプセル化する際の欠点は、この場合に推し進めるべき高い装置的費用および処理技術的費用にある。従って、実際には、環境の影響に対して有効に保護されているLEDチップスが得られるが、しかし、導電体と結合されかつ接続線を備えた多数のLEDチップスを使用する場合には、導電体および接続線は、依然として保護されずに環境の影響に晒されている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005050947号明細書A1には、多数のLEDチップスが相互に結合されておりかつプラスチックケーシングまたはガラスケーシング中に封入されている発光素子が記載されており、この場合このケーシングは、不活性材料、例えばシリコーンで充填されている。米国特許第2003/0042844号明細書A1では、多数のLEDチップスがトラフ状の枠の底上に配置されており、このトラフには、エポキシ樹脂が流し込まれている。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3827083号明細書A1の記載から、表面的な放射を得ることは、公知であり、この場合、多数のLEDsは、透明な取り付け板上に施されており、注型金型により全てのLED上に反射体の形成のためのシリコーン樹脂が注型され、最終的に反射体は、反射性材料で被覆される。ドイツ連邦共和国実用新案登録第202006001561号明細書U1の記載から、ホース状の発光テープは、公知であり、この場合ケーブルを介して結合された多数の発光ダイオードは、シリコーンチューブ中に封入されている。
【0006】
記載された成形体の場合、例えばトラフ状の成形体またはLEDsで充填されたガラス容器の場合には、なかんずく前記成形体の費用のかかる製造および成形体の離型に関連する僅かな柔軟性は、欠点である。また、発光体間の導電性の結合素子または接続線の不十分な保護は、欠点である。
【0007】
殊に、LEDsを基礎とする発光体を、異なる使用範囲での使用を可能にする形で提供するという課題が課された。この材料は、物理的、化学的または生物学的な環境の影響であろうような多種多様の環境の影響に長時間に亘って有効に耐えるように調達されるはずである。更に、前記材料は、簡単な方法により任意の形状および寸法の可撓性の成形部材を得ることができるように選択されるはずである。もう1つの課題は、個別の発光体だけでなく、発光体と接続線との間の電気的接続を電流源で有効に保護することにあった。更に、課題は、成形体の内側での分散損失を最小化することであった。
【0008】
本発明の対象は、多数の発光体をシリコーンマトリックス中に封入して含有する成形部材であり、この場合このシリコーンマトリックスは、内側の軟質のシリコーンマトリックスAから形成されており、このシリコーンマトリックスAは、1つ以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBによって包囲されており、シリコーンマトリックスBは、場合によってはトップコートCで被覆されている。
【0009】
発光体を有するシリコン成形部材の形状は、任意であり、それぞれの使用に適合されている。この発光体を有するシリコン成形部材は、ホースの形で存在することができるか、管、テープ、板として存在することができるか、またはマットの形で存在することができる。好ましいのは、多数の発光体、殊に多数のLEDsが装備されたホースまたはテープであり、この場合前記発光体は、特に好ましい実施態様で周囲空間を完全に均一に照明するように互いにずれて配置されている(例えば、捩れている)。
【0010】
適した発光体は、任意の放射線放出構造素子、例えばフィラメントグローランプ、ハロゲン灯、低圧放電灯、高圧放電灯、蛍光発光体、ネオン発光体、ならびにフローインジェクション−ルミネセンスランプ、特に有機または無機の半導体の放射線放出半導体構造素子、所謂LEDsである。LEDsは、既にプラスチック、大抵の場合シリコーン、でカプセル化されたダイオードであるかまたはカプセル化されていないダイオードである。
【0011】
適したLED発光体は、赤外範囲内、可視範囲内またはUV範囲内で放射するLED発光体である。この選択は、意図される用途に依存する。マトリックス中に封入されたLED発光体は、均一な波長で放出することができる。しかし、LED発光体は、異なる放射特性で互いに結合されてもよい。
【0012】
一般に、多数の発光体、殊にLEDsは、互いに導電的に結合され、直列および/または並列で接続されている。発光体装置は、センサーと結合されていてもよいし、測定/制御装置と結合されていてもよい。発光体の数および発光体の互いの配置は、発光体の用途に依存する。LED発光体は、連続的にかまたはパルス的に動作されてよい。
【0013】
発光体間の導電的結合を含む発光体装置および特に発光体装置の接続部は、内側のシリコーンマトリックスA中に完全に封入されており、この内側のシリコーンマトリックスAは、外側のシリコーンマトリックスBによって包囲されている。前記成形部材は、発光体とシリコーンマトリックスAとの間またはシリコーンマトリックスAとシリコーンマトリックスBとの間に他の媒体、例えば空気または水が存在しないことを示す。
【0014】
成形部材のシリコーンマトリックスAおよびシリコーンマトリックスBの形のシリコーンマトリックスは、高度に透明であり、この場合透過率は、290〜1200nmの波長の範囲内で50%を上廻る。
【0015】
好ましいのは、300〜800nmの波長範囲内で85%を上廻る透過率である。特に好ましいのは、380〜750nmの波長範囲内で90%を上廻る透過率である。
【0016】
シリコーンマトリックスAは、発光体に向かって最適化されており、電子構造部材のための保護機能(衝撃吸収)と共に光収量を最適化し(屈折率の適合)、および熱導出を簡易化する。更に、発光体が持続的に発光体の全動作時間中にシリコーンマトリックスによって堅固に包囲されたままであり、拡散する光散乱効果をまねく空気および水の封入が阻止されることは、重要である。
【0017】
内側のシリコーンマトリックスAは、10以下のショアーA硬度(DIN 53505/ISO 868)で軟質であり、或いは液状シリコーン油が問題である場合には、1〜100×106mPa.sの平均粘度(23℃および1013ミリバール)である。特に、ショアーA硬度は、5未満であり、或いは平均粘度(23℃および1013ミリバール)は、10〜10×106mPa.sである。
【0018】
内側のシリコーンマトリックスAに適した材料は、一般にn>2の鎖長を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンであるシリコーン油である。
【0019】
アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基によって、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてもよいし、分枝鎖状シリコーン油の場合には、トリアルキルシロキシ基によって置換されていてもよい。例は、メチルシリコーン油(CH33SiO[−Si(CH32O]n−Si(CH33、メチルフェニルシリコーン油それぞれn’+n’’>2を有する(CH33SiO[−Si(CH32O]n−[−Si(C652O]n−Si(CH33または(CH33SiO[−Si(CH32O]n−[−Si(CH3)(C65)O]n−Si(CH33、分枝鎖状メチルシリコーン油(CH33SiO[−Si(CH3)(OSi(CH33O]n−Si(CH33、分枝鎖状メチルフェニルシリコーン油(CH33SiO[−Si(C65)(OSi(CH33)O]n−Si(CH33である。アリール基の導入およびアルキル基とアリール基との比の調節により、当業者であれば、公知の方法でシリコーンマトリックスの屈折率を発光体に適合させることができる。更に、特に末端基には、官能化された("停止されていない")ポリジメチルシロキサン油が使用されてもよい。このようなシリコーン油は、市場で入手することができ、公知方法で製造可能である。商業的に入手可能なシリコーン油の例は、Wacker Chemie AG社のWacker Siliconoeleである。
【0020】
内側のシリコーンマトリックスAには、シリコーンゲルも適している。シリコーンゲルは、室温で触媒存在下で架橋する、注型可能な2つの成分から製造される。前記成分の1つは、一般に1〜4個のC原子を有する、一般にn≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。同様に、シロキサン鎖中の基Rは、部分的に重合可能な基によって置換されていてよく、また末端基の基Rと組み合わせて重合可能な基によって置換されていてよい。好ましくは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンが使用される。
【0021】
第2の成分は、Si−H官能性架橋剤を含有する。通常使用されるポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、ジアルキルポリシロキサンとm≧0、n≧0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。架橋触媒としては、微少量の白金有機化合物が含有されている。前記成分を混合することによって、架橋反応は、開始され、ゲルが形成される。
【0022】
この架橋反応は、熱の作用によっておよび/または電磁線、特にUV線によって促進されうる。この場合、UV−LEDsそれ自体は、ゲルの架橋反応を誘発することができる。シリコーンゲルは、特に有利に50未満のショアー硬度00(DIN 53505/ISO 868)を有する軟質材料、多くの場合に有利には、10mm/10のDIN ISO 2137による侵入値(Penetraionswert)(底面が四分の一の円錐体9.38gおよび作用時間3秒間)を有する軟質材料である。適したシリコーンゲルは、例えばWacker Chemie AG社, Muenchen在の商品名WACKER SilGel(登録商標)で市場で入手可能である。
【0023】
内側のシリコーンマトリックスAには、記載されたシリコーン油およびシリコーンゲルが有利である。
【0024】
シリコーンマトリックスAの記載された組成は、共用されるLEDsの放射特性によって依存し、相応する波長範囲内で最適な透明度を必然的に引き起こすシリコーン材料が使用される。この場合、内側のシリコーンマトリックスAと発光体との間で持続的な接触が与えられていることは、重要である。それというのも、場合による層間剥離現象は、それに付随して現れる明らかに減少された光収量のために望ましくないからである。このために、内側のシリコーンマトリックスAのための材料としては、粘着系または高い表面接着性を有する材料が好ましい。シリコーンマトリックスAのための材料は、添加剤の添加により最適化されてもよい。このための例は、光波長に適合させるための発光添加剤、屈折率を変更するため、光収量を最適化するため(例えば、発光体から放出される光の均一な散乱を外向きに生じさせる反射粒子を使用しながら)および熱導出を最適化するための金属粒子または金属酸化物または類似のマイクロ粒子である。機械的性質および流動学的性質を調節するために、場合によってはなお微少量の高分散性珪酸またはシリコーンエラストマーマトリックスを強化する充填剤、例えばMT単位、MQ単位またはDT単位からなるシリコーン樹脂粒子が使用されてよい。内側のシリコーンマトリックスAの層厚は、相応する使用に適合され、一般に0.5〜50mm、有利に1〜20mmである。
【0025】
外側のシリコーンマトリックスBは、殊に機械的強度、化学的耐性、生物学的耐性、物理的耐性(防汚性、耐引掻性)に関連して必要な透明度を維持しながら相応する使用に適合されている。
【0026】
外側のシリコーンマトリックスBは、記載されたシリコーン油およびシリコーンゲル上にまで、内側のシリコーンマトリックスAと同じシリコーンタイプからなることができ、この場合には、外側のシリコーンマトリックスBのショアーA硬度が10を上廻り、内側のシリコーンマトリックスAが同様に標準条件(23/50 DIN 50014)で固体のシリコーンタイプからなる場合には、内側のシリコーンマトリックスAのショアーA硬度と外側のシリコーンマトリックスBのショアーA硬度との差がショアー硬度の測定点少なくとも5個所、有利に少なくとも10個所、殊に少なくとも20個所であることは、相違する。
【0027】
シリコーンマトリックスBにとって好ましいシリコーン、場合によってはシリコーンマトリックスAにとっても記載された条件(僅かなショアーA硬度)下で使用可能なシリコーンは、架橋されたシリコーンゴムであり、このシリコーンゴムは、縮合反応または付加反応によって架橋するかまたはラジカル的に架橋する。架橋反応は、カチオン的に相応する触媒を用いて開始されうるか、またはラジカル的に過酸化物を用いて開始されうるか、或いは放射線、殊にUV線によって開始されうるか、または熱的に開始されうる。架橋されたシリコーンゴムを生じる系は、特に1成分系または2成分系として市場で入手可能であり、しかし多成分系としても市場で入手可能である。シリコーンハイブリッドポリマーも適している。
【0028】
縮合架橋するシリコーンゴム系は、
a)縮合能を有する末端基を有するオルガノポリシロキサン、
b)場合によっては分子1個当たり珪素に結合した少なくとも3個の加水分解可能な基を有する有機珪素化合物ならびに
c)縮合触媒を含有する。
【0029】
縮合反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する1成分系、所謂RTV−1−シリコーンゴムである。RTV−1−シリコーンゴムは、触媒の存在下で縮合下に室温で架橋する、縮合能を有する末端基を有するオルガノポリシロキサンである。最も一般的に使用されているのは、n>2の鎖長を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンである。アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてよく、この場合アルキル−(アリール)基Rは、部分的に縮合架橋能を有する基、例えばアルコール基、アセテート基、アミン基またはオキシム基によって交換されている。架橋は、適した触媒、例えば錫触媒またはチタン触媒により促進される。適したRTV−1−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)Aシリーズ、EシリーズまたはNシリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0030】
縮合反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する2成分系、所謂RTV−2−シリコーンゴムである。RTV−2−シリコーンゴムは、ヒドロキシ基で数回置換されたオルガノポリシロキサンを珪酸エステルの存在下で縮合架橋することにより得られる。架橋剤としては、アルコキシ基、オキシム基、アミン基またはアセテート基を有するアルキルシランが使用されてもよく、このアルキルシランは、適した縮合触媒、例えば錫触媒またはチタン触媒の存在下でヒドロキシ基を末端に有するポリジアルキルシロキサンと架橋する。適した縮合架橋性RTV−2−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)RTシリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0031】
RTV−1−シリコーンゴム中およびRTV−2−シリコーンゴム中に含有されているポリジアルキルシロキサンの例は、n>2の鎖長を有する式(OH)R2SiO[−SiR2O]n−SiR2(OH)のポリジアルキルシロキサンであり、この場合アルキル基Rは、同一でも異なっていてもよく、一般に1〜4個のC原子を含有し、および場合によっては置換されていてよい。アルキル基Rは、部分的に別の基、特に場合によっては置換されているアリール基によって置換されていてもよい。特に、ポリジアルキルシロキサンは、末端のOH基を含有し、このOH基は、珪酸エステルまたは系アルキルシラン/錫(チタン)触媒と室温で架橋する。
【0032】
RTV−1−シリコーンゴム中およびRTV−2−シリコーンゴム中に含有されている、加水分解可能な基を有するアルキルシランの例は、aが1〜3(有利に1)であり、かつXがR’’(アルコキシ架橋剤)、C(O)R’’(アセテート架橋剤)、N=CR’’(オキシム架橋剤)またはNR’’2(アミン架橋剤)を意味する式RSi(OX)4-aのアルキルシランであり、この場合R’’は、1〜6個の炭素原子を有する1価炭化水素基を表わす。
【0033】
付加架橋するシリコーンゴム系は、
a)脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基を有する有機珪素化合物、
b)場合によってはSi結合した水素原子を有する有機珪素化合物またはa)およびb)の代わりに、
c)脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基およびSi結合した水素原子を有する有機珪素化合物、
d)脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付着を促進する触媒および
e)場合によっては脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付着を室温で遅延させる薬剤を含有する。
【0034】
付加反応によって架橋する、適した架橋されたシリコーンゴムは、室温で架橋する2成分系、所謂付加架橋性RTV−2−シリコーンゴムである。付加架橋性RTV−2−シリコーンゴムは、ポリエチレン系不飽和基、特にビニル基、によって置換されたオルガノポリシロキサンと、Si−H基で数回置換されたオルガノポリシロキサンとを、白金触媒の存在下でPt触媒で促進させて架橋することによって得られる。
【0035】
特に、前記成分の1つは、一般にアルキル基中に1〜4個のC原子を有する、n≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。同様に、シロキサン鎖中の基Rは、部分的に重合可能な基によって置換されていてよく、また末端基の基Rと組み合わせて重合可能な基によって置換されていてよい。好ましくは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンが使用される。
【0036】
第2の成分は、Si−H官能性架橋剤を含有する。通常使用されるポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、ジアルキルポリシロキサンとm≧0、n≧0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。
【0037】
架橋触媒としては、微少量の白金有機化合物が含有されている。
【0038】
適したRTV−シリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)RTまたはELASTOSIL(登録商標)LR(LSRシリコーンゴム)またはSEMICOSIL(登録商標)シリーズの相応するタイプは、市場で入手可能である。
【0039】
ラジカル架橋する適したシリコーンゴムまたは付加反応によって架橋する適したシリコーンゴムは、温度の上昇の際に架橋する固体シリコーンゴム(HTV)である。
【0040】
付加架橋性HTV−2−シリコーンゴムは、ポリエチレン系不飽和基、特にビニル基、によって置換されたオルガノポリシロキサンと、Si−H基で数回置換されたオルガノポリシロキサンとを、白金触媒の存在下で架橋することによって得られる。
【0041】
特に、過酸化的に架橋するかまたは付加架橋するHTVシリコーンゴムの成分の1つは、一般にアルキル基中に1〜4個のC原子を有する、n≧0を有する構造式R3SiO[−SiR2O]n−SiR3のジアルキルポリシロキサンからなり、この場合アルキル基は、全体的または部分的にアリール基、例えばフェニル基によって置換されていてよく、末位の基Rの1端または両端で重合可能な基、例えばビニル基によって置換されている。しかし、側位にビニル基を有するポリマーまたは側位および末位にビニル基を有するポリマーが使用されてもよい。好ましいのは、構造式CH2=CH2−R2SiO[−SiR2O]n−SiR2−CH2=CH2のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンならびになお側位にビニル基を有する前記構造式のビニル末端封鎖されたポリジメチルシロキサンである。付加架橋性HTVシリコーンゴムの場合、第2の成分は、ジアルキルポリシロキサンとm≧0、n≧0を有する一般式R'3SiO[−SiR2O]n−[SiHRO]m−SiR'3を有するポリアルキルハイドロジェンシロキサンとからなるコポリマーであり、但し、この場合には、少なくとも2個のSiH基が含有されていなければならず、その際R’は、HまたはRの意味を有することができる。それに応じて、側位のSiH基および末位のSiH基を有する架橋剤が存在し、一方で、末位にSiH基だけを有する、R’=Hを有するシロキサンも鎖長延長に使用される。架橋触媒としては、白金触媒が使用される。
【0042】
HTVシリコーンゴムは、1成分系としても加工され、この場合架橋反応は、温度上昇によって架橋触媒としての過酸化物、例えばアシル過酸化物、アルキル過酸化物またはアリール過酸化物の存在下で誘発される。過酸化物架橋性のHTVシリコーンゴムは、場合によってはエチレン系不飽和基、特にビニル基で数回置換されたオルガノポリシロキサンを架橋することによって得られる。適したHTVシリコーンゴム、例えばWacker Chemie AG社の相応するELASTOSIL(登録商標)RタイプまたはELASTOSIL(登録商標)Rプラスタイプは、市場で入手可能である。
【0043】
その上、最近、なお特殊なHTVシリコーンゴムおよびRTV−1−シリコーンゴムが市場で入手可能であり、これらのシリコーンゴムは、前記の付加反応により、特殊な白金錯体または白金/抑制剤系を熱的および/または光化学的に活性化し、それによって架橋反応を促進させることにより架橋される。この種の系は、例えばWacker Chremie AG社のELASTOSIL(登録商標)Rタイプ、ELASTOSIL(登録商標)RTタイプおよびSemicosil(登録商標)タイプとして入手可能である。
【0044】
また、適した材料は、シリコーンハイブリッドポリマーである。シリコーンハイブリッドポリマーは、有機ポリマーブロック、例えばポリウレタン、ポリ尿素またはポリビニルエステルと一般に上記種のポリジアルキルシロキサンを基礎とするシリコーンブロックとのコポリマーまたはグラフトコポリマーである。例えば、熱可塑性シリコーンハイブリッドポリマーは、欧州特許第1412416号明細書B1および欧州特許第1489129号明細書B1に記載されており、これらの関連する開示は、本願の対象でもある。この種のシリコーンハイブリッドポリマーは、熱可塑性シリコーンエラストマー(TPSE)と呼称され、例えばWacker Chemie AG社の相応するGENIOMER(登録商標)タイプとして市場で入手可能である。
【0045】
シリコーン樹脂は、同様に外側のシリコーンマトリックスBに適した材料である。一般に、シリコーン樹脂は、
bが0、1、2または3であり、
cが0、1、2または3である一般式Rb(RO)cSiO(4-b-c)/2の単位を含有し、但し、この場合b+cは、3以下であり、Rは、高度に架橋された有機珪素網状組織を形成する上記の意味を有する。適したシリコーン樹脂は、例えばWacker Chemie AG社の相応するSILRES(登録商標)タイプで市場で入手可能である。
【0046】
また、最後に、ラジカル形成剤またはカチオン光開始剤で硬化される、放射線硬化性アクリル官能性シリコーン、放射線硬化性エポキシ官能性シリコーンまたは放射線硬化性ビニルエーテル官能性シリコーンは、シリコーンマトリックスBに適している。
【0047】
外側のシリコーンマトリックスBに好ましい材料は、記載されたRTV−2−シリコーンゴム、HTVシリコーンゴムおよびシリコーンハイブリッドポリマーである。
【0048】
シリコーンマトリックスBの性質は、添加剤での変性によって最適化されてよい。殺生剤、例えば除藻剤、殺菌剤または殺真菌剤の使用による例。硬度は、充填剤の添加によって調節されることができ、その際、充填剤を選択する場合には、透明度は制限されることがないので、シリコーン樹脂粒子またはナノ粒子を基礎とする充填剤が有利であることを留意すべきである。
【0049】
内側のシリコーンマトリックスAは、1つ以上の外側のシリコーンマトリックスBによって包囲されていてよい。外側のシリコーンマトリックスBの層厚は、幾つのシリコーンマトリックスBが形成されるのかに依存し、および発光体を有するシリコン成形部材の使用に依存し、一般に0.1〜50mmである。
【0050】
発光体を有するシリコン成形部材は、場合によってはなおシリコーンマトリックスB上または最も外側のシリコーンマトリックスB上に塗布されている、トップコートCが設けられていてもよい。このトップコートは、耐引掻性および/または防汚性および/または静電防止特性を改善するために使用される。好ましくは、トップコートCとして前記のシリコーン樹脂が使用される。
【0051】
シリコーン、その化学特性、調製および使用特性についての詳細な概要は、例えばWinnacker/Kuechler, "Chemische Technik: Prozesse und Produkte, Band 5: Organische Zwischenverbindungen, Polymere", 第1095〜1213頁, Wiley-VCH Weinheim (2005) に明らかにされている。内側のシリコーンマトリックスAの製造は、発光体を有するシリコン成形部材の形状に応じて、例えば充填、注型またはトランスファー成形により行なうことができる。シリコーンマトリックスBの製造は、発光体を有するシリコン成形部材の形状に応じて、例えば注型、押出、流し込み成形、圧縮成形または射出成形により行なうことができる。トップコートでの場合による被覆は、例えば浸漬、注型、刷毛塗りまたは吹き付け塗りのような被覆により行なうことができる。
【0052】
チューブ状の成形部材の製造のためには、例えばLEDチェーンを装備したシリコーンゴムチューブ(シリコーンマトリックスB)は、真空下で気泡なしにシリコーンマトリックスAとしてのシリコーンゲルで充填され、その後にこのシリコーンゲルは、架橋され、引続きこうして得られたLEDシリコーンマトリックスチューブは、RTV−シリコーンゴムで閉鎖されるように行なうことができる。また、チューブ状の発光体を有するシリコン成形部材を製造する場合には、シリコーンゲルの代わりにシリコーン油をシリコーンマトリックスAとして注入するようにして行なうことができる。残りの工程は、シリコーンゲルを用いる方法と同様に実施される。更に、チューブ状の成形部材を製造するための他の選択可能な方法は、押出法の後にシリコーンゲルをシリコーンマトリックスAとして加工し、HTVシリコーンゴムをシリコーンマトリックスBとして加工することにある。
【0053】
平面状の発光体を有するシリコン成形部材の製造のために、シリコーンマトリックスBとしてHTVシリコーンゴムは、圧縮成形またはトランスファー成形により加工され、半外殻体に変わる。この半外殻体中には、市販のLEDチェーンまたはLEDsを装備した市販のプラスチックストリップが任意の配置で置かれる。引続き、シリコーンゲルは、LEDsがシリコーンマトリックスAを形成するシリコーンゲルによって完全に包囲されているように注型される。シリコーンゲルは、架橋され、脱ガスされ、成形部材は、半外殻体と同じ材料からなる蓋板で密閉される。
【0054】
他の選択可能な方法によれば、このために、圧縮成形またはトランスファー成形により、板がHTVシリコーンゴムから完成され、次にこの板の縁部には、安定したRTV−シリコーンゴムが備えられ、引続きこのRTV−シリコーンゴムは、架橋されて堅固なウェブに変わり、半外殻体の幾何学的形状が得られる。残りの工程は、上記方法に対応する。
【0055】
更に、平面状部材を製造するための他の選択可能な方法は、射出成形法により加工し、LSRシリコーンゴムを半外殻体または板の製造に使用することにある。
【0056】
シリコーンハイブリッドポリマーを使用する場合には、押出機に発光体チェーンが装入されることができ、シリコーンハイブリッドポリマーを押し出して該チェーンを包囲する成形部材に変えることができ、この場合には、同時にチェーンとシリコーンハイブリッド成形部材との中間空間は、シリコーン油で充填される。
【0057】
本発明による発光体を有するシリコン成形部材は、使用の多様性のために魅力的なものである。従って、一般にそれぞれの発光ユニットは、保護された形で種々の用途にもたらすことができる。
【0058】
LEDを有するシリコン成形部材を製造する場合、本質的な利点は、シリコーンでのLEDsのカプセル化を未然に省略することができ、カプセル化されていないLEDsを発光体として加工することができることにある。
【0059】
3つの主要な使用領域は、装飾の範囲内での純粋な照明、化学反応または生物学的反応の初期化および困難な条件下での標識である。
【0060】
装飾の範囲内で考えられうる用途は、照明される装飾継目として照明装飾の全ての形の照明されるスケートリンク、絨毯に織り込まれたLEDを有するシリコン成形部材、水族館、サウナ、プール/浴槽の照明である。生命および健康を保護するための使用は、救命胴衣内、絨毯の縁部、運動器具中および運動器具上および自動車内で可能である。
【0061】
化学反応および/または生物学的反応は、例えば光の特殊な波長によって紫外領域、可視領域または赤外領域で開始されうる。適当なLED発光体をシリコーンマトリックス中に包囲した場合には、植物または果実の生長反応は、温室内または暗室内で開始されうるか、植物および微生物の殺生は、例えば皮膚学的UVチョッキ、皮膚学的UV蓋または反応混合物の簡単な加熱によって開始されうる。これは、シリコーン体の高度な不活性によって、酸性媒体、塩基性媒体、塩媒体、機械的に負荷された媒体および滅菌された媒体中で実施されうる。
【0062】
導体原理の範囲内の標識は、船舶の照明および港湾の照明で、水中でも、滑走路の誘導灯として、精製工場内でのチューブ、管またはケーブルの目印として、蝶番のアタッチメントとして、および映画のスクリーンで実施されてよい。
【0063】
好ましくは、本発明による発光体を有するシリコン成形部材は、湿った条件下で使用されるかまたは直接液体中に使用される。特に好ましいのは、UV−LEDsを装備し、かつ水性媒体中で植物性質量を照明するため、または水の殺菌のために調達される発光体を有するシリコン成形部材である。
【0064】
特殊な波長の発光体を有するシリコン成形部材、殊にLEDを有するシリコン成形部材をバイオマスの製造のため、殊に藻類の栽培のためのバイオ反応に導入する場合には、光の侵入深さおよび明暗領域を形成させる光のパルスによって藻類の生長は、著しく高めることができる。更に、UV−LEDを有するシリコン成形部材は、水が充填された容器の殺菌、例えば医療機器、乳化装置、管およびチューブ内の殺菌のために調達されることができる。ソーラーセルと組み合わせて、持ち運び可能な飲料水処理装置の準備が可能である。
【0065】
発光体を有するシリコン成形部材を用いると、多種多様な該基の影響に対するシリコーンの耐性のために汎用的に使用可能である放射体が提供される。内側のシリコーンマトリックスAおよび少なくとも1つの外側のシリコーンマトリックスBを基礎とするモジュール構造の大きな利点は、成形部材を光収量および耐性に関連して最適化することができることにある。内側の層は、光収量、熱導出および衝撃吸収に関連して最適化されている一方で、外側のシリコーンマトリックスBは、機械的強度、化学的耐性、生物学的耐性、物理的耐性(防汚性、耐引掻性)に関連して必要な透明度を維持しながら最適化されている。これは、単層構造を用いた場合には、この場合に生じる、必要とされる添加剤の間での相互作用のために前記の品質の点で実現されないであろう。それというのも、発光体の隣接部でのシリコーン含量に対する要件プロフィールは、周囲媒体と接触するシリコーン含量に対する要件プロフィールと全く異なるからである。
【実施例】
【0066】
例1:
押出法により、50のショアーA硬度、12mmの外径および2mmの肉厚を有する、硬度に透明な付加架橋された固体シリコーンゴム(ELASTOSIL(登録商標)Rプラス4305/50, Wacker Chemie AG)から製造された、長さ約1mのシリコーンチューブを、真空室内に垂直方向に懸吊し、この場合このチューブの下端部は、シリコーン栓で密に閉鎖した。引続き、注意深く、400nmの好ましい波長の12Vの光の電圧で120°の放出角度およびそれぞれ100medの明度で放出する、60個のLEDsを備えた長さ1mのLEDモジュールストリップ(LEDI社.de, Dessau)を、接続ケーブルとLEDモジュールストリップが先に設けられたプラグとがチューブの上端部から突き出すようにシリコーンチューブ中に導入した。
【0067】
次に、この装置に約1000mPa.sの混合粘度(23℃および1013ミリバールで)を有する室温で加硫する付加架橋性のシリコーンエラストマー混合物(WACKER SilGel(登録商標)612 A/B)を流し込み、室温で24時間で約300mm/10の侵入値(DIN ISO 2137)を有するシリコーンゲルに架橋した。このために、最初、シリコーン流し込み材料の2つの成分を注意深く1:1の比で混合した。引続き、こうして得られた混合物をシリコーンチューブ/LEDストリップ装置と一緒に真空室内で30分間50ミリバール未満の真空に排気し、後に加硫物中で支障のある気泡形成をまねきうる吸収された空気を除去した。
【0068】
脱ガスされたシリコーン注型材料を注意深く真空中で、LEDストリップを含むシリコーンチューブ中に充填し、真空中で室温で24時間加硫した。その後に、さらにシリコーンゲル中にカプセル化されたLEDストリップを含むシリコーンチューブを、加硫室から取り出した。最終的に、冒頭に記載されたシリコーン栓を取り除き、シリコーンチューブの両端を安定した粘着性シリコーンゴム(Wacker Chemie AG社のSemicosil(登録商標)989/1K)で封印した。この場合この粘着性シリコーンゴムは、130℃で55のショアーA硬度を有する透明ないし不透明な加硫物に変わる。
【0069】
例2:
例1と同様に実施するが、しかし、次の点が異なる:外側のマトリックス材料Bとして、40のショアーA硬度を有するシリコーンチューブを使用した(ELASTOSIL(登録商標)Rプラス4305/40, Wacker Chemie AG)。
【0070】
内側のマトリックス材料Aとして100000mPa.sの粘度(23℃および1013ミリバールで)を有する、ジメチルシロキシ単位とトリメチルシロキシ単位とからなるシリコーン油(WACKER(登録商標)シリコーン油AK100000)を使用した。シリコーン油をカニューレによって"液面下で下方から上向きに"注入し、気泡の取り込みを阻止した。引続き、場合による空気の封入をシリコーン油で充填されたチューブの排気によって50ミリバールで10分間除去した。シリコーンチューブの端部を、熱硬化する1成分系のシリコーンゴムの代わりに、室温で空気湿度によって35のショアーA硬度を有する透明ないし不透明な加硫物に架橋する安定した粘着性RTV−1−シリコーンゴム(Wacker Chemie AG社のELASTOSIL(登録商標)E 47)で閉鎖した。
【0071】
例3:
例1と同様に実施するが、しかし、この場合には、固体シリコーンゴムからなるシリコーンチューブの代わりに、押出により熱可塑性シリコーンエラストマーから製造された、50のショアーA硬度を有するチューブを使用した。このために使用された、硬度に透明な熱可塑性の尿素基含有基礎材料は、92質量%のシロキサン含量、約120000g/molの質量平均分子量Mw、約120°の軟化点、約100000Pa.sの170℃での溶融粘度を有し、Wacker Chemie AG社によってGENIOMER(登録商標)140の商品名で入手可能である。更に、チューブの両端をシリコーンゲルでの注型後に1成分系の熱硬化性シリコーンで閉鎖するのではなく、室温で空気湿分によって35のショアーA硬度を有する透明ないし不透明の加硫物に架橋する、安定した粘着性RTV−1−シリコーンゴム(ELASTOSIL(登録商標)E 47, Wacker Chemie AG)で閉鎖した。
【0072】
例4:
例3と同様に実施するが、しかし、この場合には、例3で内側のシリコーンマトリックスAとして使用されたシリコーンゲルの代わりに、1000mPa.sの粘度(23℃および1013ミリバールで)を有する、ジメチルシロキシ単位とトリメチルシロキシ単位とからなるシリコーン油(WACKER(登録商標) Siliconoel AK 1000)を使用した。
【0073】
例5:
例1と同様に実施するが、しかし、この場合には、例1に記載された注型材料の代わりに、内側のシリコーンマトリックスAのために軟質のシリコーンゲルに架橋するUV活性化可能なシリコーン注型材料(Wacker Chemie AG社のSemicosil(登録商標)912 UV)を使用した。この2成分系材料は、双方の成分を9:1の比で混合した後に1000mPa.sの混合粘度(23℃および1013ミリバールで)を有し、および約70mm/10の侵入値(底面が四分の一の円錐体9.38g)を有するゲル状の軟質加硫物を生じた。例1とは異なり、UV活性化可能なシリコーン注型材料は、Hoehnle社のUVAキューブ中での5秒間の露光(放射強さ:140mW/cm2)および引続く室温でUV照射なしの放置によって加硫された。この材料は、5秒後にシリコーンゲルに架橋された。
【0074】
例6:
双方の成分を9:1の比で混合した後に約18000mPa.sの混合粘度を有しかつ5分間で165℃で澄明で透明な加硫物に架橋する、流し込み成形法(注型能を有する室温で加硫可能な2成分系混合物(ELASTOSIL(登録商標)LR 7661 A/B, Wacker Chemie AG)を使用した)により製造された、50のショアーA硬度を有するシリコーンエラストマーからなる透明な半外殻体(外側寸法:1000×5000×20;肉厚:10mm;深部の高さ:10mm)を、深部が上向きになるように真空室内に平らに置いた。引続き、均一な間隔で並存してそれぞれ50cmの長さで互いに平行に接続された、例1に記載のタイプのLEDモジュールを、接続ケーブルがLEDモジュールに備えられたプラグと共に半外殻体の隣に存在するように半外殻体の深部中に置いた。
【0075】
この装置は、例1に記載された、ゲルに架橋される2成分系シリコーン(WACKER Sil-Gel(登録商標)612 A/B)に上記の記載と同様に注型された。この場合、半外殻体は、完全に注型材料で充填され、かつLEDストリップは、完全に注型材料によって包囲されていることに注目すべきである。カプセル化材料を真空中で室温で加硫した後、半外殻体を真空室から取り出した。引続き、半外殻体の上端部に、室温で空気湿分によって35のショアーA硬度を有する透明ないし半透明の加硫物に架橋する安定した粘着性RTV−1−シリコーンゴム(ELASTOSIL(登録商標)E 47, Wacker Chemie AG)を刷毛塗りした。その後に、寸法1000×500×10mmを有する、半外殻体と同じシリコーンエラストマーからなる透明な板を同一平面上に置いた。封入された空気を気泡の側方からの抹消によって取り除き、室温で24時間加硫を行なった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の発光体をシリコーンマトリックス中に封入して含有する、発光体を有するシリコン成形部材であって、この場合このシリコーンマトリックスは、内側の軟質のシリコーンマトリックスAから形成されており、このシリコーンマトリックスAは、1つ以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBによって包囲されている、発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項2】
発光体としてLED発光体を備えている、請求項1記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項3】
多数の発光体が、互いに導電的に結合され、直列および/または並列で接続されている、請求項1または2記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項4】
発光体が均一な波長で放出する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項5】
発光体が異なる放射特性で互いに組み合わされている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項6】
内側のシリコーンマトリックスAが10個所以内のショアー硬度の測定点を有するショアーA硬度または1〜100×106mPa.sの粘度(23℃および1013ミリバールで)を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項7】
外側のシリコーンマトリックスBのショアーA硬度が10個所を上廻るショアー硬度の測定点を有し、内側のシリコーンマトリックスAが同様に標準条件で固体のシリコーンタイプからなる場合には、内側のシリコーンマトリックスAのショアーA硬度と外側のシリコーンマトリックスBのショアーA硬度との差が少なくとも5個所のショアー硬度の測定点を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項8】
内側のシリコーンマトリックスAにシリコーン油またはシリコーンゲルが使用されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項9】
外側のシリコーンマトリックスBにRTV−2−シリコーンゴムまたはHTVシリコーンゴムまたはシリコーンハイブリッドポリマーが使用されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項10】
発光体を有するシリコン成形部材がなおトップコートを装備している、請求項1から9までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項11】
前記成形部材がチューブ、管、テープ、板の形、またはマットの形で存在する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項12】
前記発光体は、この発光体が周囲空間を完全に均一に照明するように互いにずれて配置されている、請求項1から11でのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の製造法において、発光体を有するシリコン成形部材に内側の軟質シリコーンマトリックスAを装備し、1つ以上のよりいっそう硬質のシリコーンマトリックスBで包囲することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の製造法。
【請求項14】
露光のための請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の使用。
【請求項15】
化学反応または生物学的反応を開始させるための請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の使用。
【請求項16】
水を殺菌するための請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の使用。
【請求項17】
バイオマスの製造のため、殊に藻類の栽培のためのバイオ反応への請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の使用。
【請求項18】
ソーラーセルと組み合わせた、持ち運び可能な飲料水処理装置の準備のための請求項1から12までのいずれか1項に記載の発光体を有するシリコン成形部材の使用。

【公表番号】特表2010−529645(P2010−529645A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509829(P2010−509829)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056665
【国際公開番号】WO2008/145718
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】