説明

発光素子、発光装置並びに電子機器

【課題】低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを課題とする。また、消費電力の低減された発光装置および電子機器を提供することを課題とする。また、低コストで作製可能な発光装置および電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】一対の電極間に、正孔をキャリアとする硫化物でなるp型半導体層、及び電子をキャリアとする硫化物でなるn型半導体層を有し、p型半導体層またはn型半導体層の少なくとも一方に、発光中心となる元素が含まれている発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子に関する。また、発光素子を有する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、携帯電話、デジタルカメラ等における表示装置は、平面的で薄型の表示装置が求められており、この要求を満たすための表示装置として、自発光型である発光素子を利用した表示装置が注目されている。自発光型の発光素子の一つとして、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)を利用する発光素子があり、この発光素子は、発光材料を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、発光材料からの発光を得ることができるものである。
【0003】
このような自発光型の発光素子は、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
さらに、このような自発光型の発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形成することにより、面発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0006】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。前者は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有し、後者は、蛍光材料の薄膜からなる発光層を有している点に違いがある。しかし、そのメカニズムは共通しており、高電界で加速された電子による母体材料又は発光中心の衝突励起により発光が得られる。よって、一般的な無機EL素子で発光を得るためには高い電界が必要であり、発光素子に数百Vの電圧を印加する必要がある。例えば、近年フルカラーディスプレイに必要とされる高輝度の青色発光の無機EL素子が開発されたが、100〜200Vの駆動電圧が必要である(例えば、技術文献1)。そのため、無機EL素子は消費電力が大きく、中小型サイズのディスプレイ、例えば、携帯電話等のディスプレイには採用することが難しかった。
【非特許文献1】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、Vol.38、p.L1291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを課題とする。また、消費電力の低減された発光装置および電子機器を提供することを課題とする。また、低コストで作製可能な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一は、一対の電極間に、正孔をキャリアとする硫化物でなるp型半導体層、及び電子をキャリアとする硫化物でなるn型半導体層を有し、p型半導体層またはn型半導体層の少なくとも一方に、発光中心となる元素が含まれていることを特徴とする発光素子である。
【0009】
上記構成において、発光中心となる元素は、銅、銀、金のいずれかであることを特徴とする発光素子である。
【0010】
上記構成において、発光中心を含む層は、さらに、マンガン、銅、サマリウム、テルビウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、セリウム、プラセオジウムのいずれかを含むことが好ましい。
【0011】
上記構成において、p型半導体層は、アクセプター準位を形成する不純物元素を含むことを特徴とする。
【0012】
上記構成において、p型半導体層は、ハロゲン元素を含むことを特徴とする。
【0013】
上記構成において、p型半導体層は、CuSを母体材料とすることを特徴とする。
【0014】
上記構成において、p型半導体層は、ZnSとCuSの混合物を母体材料とすることを特徴とする。
【0015】
上記構成において、p型半導体層は、Cuを過剰にドープしたZnSでなることを特徴とする。
【0016】
上記構成において、p型半導体層は、Agを過剰にドープしたZnSでなることを特徴とする。
【0017】
上記構成において、n型半導体層はドナー準位を形成する不純物元素を含むZnSでなることを特徴とする。
【0018】
上記構成において、n型半導体層は、ZnSを母体材料とすることを特徴とする。
【0019】
上記構成において、n型半導体層はCu又はAgを含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を範疇に含む。また、発光素子が形成されたパネルにコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0021】
また、本発明の発光素子を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるものとする。したがって、本発明の電子機器は、表示部を有し、表示部は、上述した発光素子と発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の発光素子は、低電圧駆動が可能である。
【0023】
また、本発明の発光装置は、低電圧駆動が可能な発光素子を有しているため、消費電力が低減することができる。また、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、低コストで発光装置を作製することができる。
【0024】
また、本発明の電子機器は、低電圧駆動が可能な発光素子を有しているため、消費電力を低減することができる。また、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る薄膜型発光素子について図1を用いて説明する。
【0027】
本実施の形態で示す発光素子は、基板100の上に、第1の電極101と第2の電極104を有し、第1の電極101と第2の電極104との間に、p型半導体層102とn型半導体層103とを有する素子構成である。なお、本実施の形態では、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極104は陰極として機能するものとして以下説明をする。
【0028】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えば、ガラス、石英又はプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでも用いることができる。
【0029】
第1の電極101及び第2の電極104は、金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリングにより成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。この他、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン:TiN)等用いることができる。なお、第1の電極101または第2の電極104を、透光性を有する電極とする場合、可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極として用いることができる。なお、スパッタリング以外にも、真空蒸着、CVD、ゾル−ゲル法を用いて電極を作製することもできる。
【0030】
ただし、発光は、第1の電極101もしくは第2の電極104を通って外部に取り出されるため、第1の電極101および第2の電極104のうち、少なくとも一方は透光性を有する材料で形成されている必要がある。また、第2の電極104よりも第1の電極101の方が仕事関数が大きくなるように材料を選択することが好ましい。
【0031】
p型半導体層102を構成する材料は、正孔をキャリアとする硫化物の材料である。例えば、硫化銅(CuS)、あるいは硫化亜鉛(ZnS)と硫化銅の混合物を用いることができる。また、ZnSにアクセプターとなる不純物元素であるリチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、又はインジウム(In)をドープしたものを用いることもできる。さらに、ZnSにCu、又はAgを過剰にドープしたものを用いることもできる。
【0032】
n型半導体層103を構成する材料は、電子をキャリアとする硫化物の材料である。例えば、ZnS、硫化ガリウム(Ga)が用いられる。また、ZnSにドナーとなる不純物元素であるフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、又はアンチモン(Sb)をドープしたものを用いることもできる。
【0033】
本発明では、p型半導体層102又はn型半導体層103のいずれか又は両方の層より発光を得るため、p型半導体層102又はn型半導体層103のいずれか又は両方に発光中心を含む必要がある。発光中心としては、Cu、Ag、又はAu等を添加することができる。なお、p型半導体層102から発光を得る場合は、ハロゲン元素を添加してもよい。
【0034】
また、発光中心として、マンガン(Mn)、銅(Cu)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、又はプラセオジウム(Pr)等を添加してもよい。これら発光中心の添加により、金属イオンの内殻電子遷移を利用した発光を得ることができる。なお、発光中心の添加には、金属元素単体のみならず、電荷補償のため、フッ素(F)又は塩素(Cl)などのハロゲン元素が添加されていてもよい。
【0035】
本発明に係る半導体材料において、不純物元素をドープした材料を用いる場合には、固相反応、すなわち、硫化物及び不純物元素を秤量し、乳鉢で混合、電気炉で加熱して反応させる方法により、硫化物に不純物元素を含有させる。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が高すぎる場合は硫化物が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。
【0036】
また、発光中心を含む半導体材料において、固相反応を利用する場合の不純物元素としては、発光中心を含む化合物を用いてもよい。この場合、不純物元素が拡散されやすく、固相反応が進みやすくなるため、均一な発光中心を含む半導体材料を得ることができる。さらに、余分な不純物元素が入らないため、純度の高い発光材料が得ることができる。例えば、フッ化銅(CuF)、塩化銅(CuCl)、ヨウ化銅(CuI)、臭化銅(CuBr)、窒化銅(Cu3N)、リン化銅(CuP)、フッ化銀(CuF)、塩化銀(CuCl)、ヨウ化銀(CuI)、臭化銀(CuBr)、塩化金(AuCl)、又は臭化金(AuBr)等を用いることができる。
【0037】
p型半導体層102及びn型半導体層103を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。膜厚は特に限定されることはないが、好ましくは、10〜1000nmの範囲である。
【0038】
本発明の発光素子は、直流駆動により、p型半導体層102又はn型半導体層103より発光を得ることができるが、高電界により加速されたホットエレクトロンを必要としないため、低駆動電圧で動作可能な発光素子を得ることができる。また、低駆動電圧で発光可能なため、消費電力も低減された発光素子を得ることができる。
【0039】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0040】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について図2を用いて説明する。
【0041】
本実施の形態で示す発光装置は、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置である。図2には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。
【0042】
図2において、基板951上には、電極952と電極956との間には半導体層955が設けられている。なお、半導体層955は実施の形態1で示したp型半導体層及びn型半導体層の積層、若しくはp型半導体とn型半導体の混合層を含んでいる。
【0043】
電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0044】
また、本発明の発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【0045】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0046】
本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明する。本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0047】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0048】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0049】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0050】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0051】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0052】
第1の電極613上には、p型半導体層及びn型半導体層を含む半導体層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。第1の電極613および第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、半導体層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。
【0053】
なお、第1の電極613、p型半導体層及びn型半導体層を含む半導体層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0054】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0055】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー(登録商標)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0056】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0057】
本発明の発光装置は、実施の形態1で示した発光素子を有するため、低駆動電圧で動作が可能である。また、高い発光効率を実現することができる。よって、消費電力を低減された発光装置を得ることができる。
【0058】
また、本発明の発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【0059】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、実施の形態1で示した発光素子を有する。よって、駆動電圧の低減された発光素子を有するため、消費電極の低減された電子機器を提供することが可能である。
【0060】
本発明の発光装置を用いて作製された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図4に示す。
【0061】
図4(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、このテレビ装置は画質の劣化が低減され、低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビ装置において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体9101や支持台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0062】
図4(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特徴を有するため、このコンピュータは画質の劣化が低減され、低消費電力化が図られている。このような特徴により、コンピュータにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、環境に適合した製品を提供することができる。また、持ち運ぶことも可能となり、持ち運ぶときの外部からの衝撃に対する耐性の高い表示部を有しているコンピュータを提供することができる。
【0063】
図4(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9403も同様の特徴を有するため、この携帯電話は画質の劣化が低減され、低消費電力化が図られている。このような特徴により、携帯電話において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯時に外部からの衝撃に対する耐性の高い表示部を有している製品を提供することができる。
【0064】
図4(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低く、外部からの衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、このカメラは画質の劣化が低減され、低消費電力化が図られている。このような特徴により、カメラにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯時に外部からの衝撃に対する耐性の高い表示部を有している製品を提供することができる。
【0065】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。
【0066】
また、本発明の発光装置は、発光効率の高い発光素子を有しており、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を照明装置として用いる一態様を、図5を用いて説明する。
【0067】
図5は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図5に示した液晶表示装置は、筐体501、液晶層502、バックライト503、筐体504を有し、液晶層502は、ドライバIC505と接続されている。また、バックライト503は、本発明の発光装置が用いられおり、端子506により、電流が供給されている。
【0068】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、発光装置は薄型で低消費電力であるため、表示装置の薄型化、低消費電力化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光装置を説明する図。
【図3】本発明の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の電子機器を説明する図。
【図5】本発明の電子機器を説明する図。
【符号の説明】
【0070】
100 基板
101 第1の電極
102 p型半導体層
103 n型半導体層
104 第2の電極
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 半導体層
956 電極
601 駆動回路部(ソース側駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 引き回し配線
609 FPC
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 半導体層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部
501 筐体
502 液晶層
503 バックライト
504 筐体
505 ドライバIC
506 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、正孔をキャリアとする硫化物でなるp型半導体層、及び電子をキャリアとする硫化物でなるn型半導体層を有し、
前記p型半導体層または前記n型半導体層の少なくとも一方に、発光中心となる元素が含まれていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記発光中心となる元素は、銅、銀、金のいずれかであることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記発光中心を含む層は、さらに、マンガン、サマリウム、テルビウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、セリウム、プラセオジウムのいずれかを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記p型半導体層は、アクセプター準位を形成する不純物元素を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記p型半導体層は、ハロゲン元素を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記p型半導体層は、CuSを母体材料とすることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記p型半導体層は、ZnSとCuSの混合物を母体材料とすることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記p型半導体層は、CuをドープしたZnSでなることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記p型半導体層は、AgをドープしたZnSでなることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記n型半導体層は、ドナー準位を形成する不純物元素を含むZnSでなることを特徴とする発光素子。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記n型半導体層は、ZnSを母体材料とすることを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記n型半導体層は、Cu又はAgを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一に記載の発光素子を有することを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項13に記載の発光装置を表示部に用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242603(P2007−242603A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28685(P2007−28685)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】