説明

発光素子用材料及び発光素子

【課題】発光素子の低駆動電圧化と発光効率及び耐久性向上に適した発光素子用材料を提供すること。
【解決手段】含有量が0.5質量%より多く10質量%以下の不純物を含む発光素子用材料であって、該不純物が下記の[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する、発光素子用材料。
[I]発光素子用材料のイオン化ポテンシャルIp(1)と、不純物のイオン化ポテンシャルIp(2)とが、Ip(1)≦Ip(2)である。
[II]発光素子用材料の電子親和力Ea(1)と、不純物の電子親和力Ea(2)とが、Ea(1)≧Ea(2)である。
[III]発光素子用材料の三重項状態の励起エネルギーT1(1)と、不純物の三重項状態の励起エネルギーT1(2)とが、T1(1)≦T1(2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用材料及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として、電流を通じることによって励起され発光する有機薄膜を用いた有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから、近年活発な研究開発が行われている。一般に有機電界発光素子は、発光層を含む有機層及び該層を挟んだ一対の電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。例えば、燐光発光材料と白金錯体などを用い、発光効率及び耐久性に優れる有機電界発光素子が研究されている。また、発光材料をホスト材料中にドープした発光層を用いるドープ型素子が広く採用されている。
【0004】
有機化合物の合成方法としては、触媒存在下に、異種の原料化合物を結合させて目的とする有機化合物を得るクロスカップリング反応があるが、クロスカップリング反応では同種の原料化合物同士が反応したホモカップリング体が副生することが知られている。(特許文献1参照)。有機電界発光素子材料として用いられる多くの有機化合物も、クロスカップリング反応により得ることができる(特許文献2参照)。
クロスカップリング反応により得る有機化合物(クロスカップリング体)を有機電界発光素子用材料とする場合、副生物のホモカップリング体は不純物であり、素子性能を悪化させる原因と考えられ、その含有量を低減することが望まれてきた。例えば、特許文献3には、素子の耐久性の向上を目的として、クロスカップリング反応により生じうる、ホモカップリング体を含む不純物の含有量を0.5質量%以下とした有機化合物層を含む発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−67595号公報
【特許文献2】特開2009−167175号公報
【特許文献3】特開2002−373786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3では、ホモカップリング体を含む不純物の含有量を0.5質量%以下とするために、クロマトグラフィーと再結晶法による精製を繰り返し行っている。一般に、精製工程を繰り返すことは、材料の製造コストを上昇させることになる。
これに対して、本発明者らは、特定の不純物、特にクロスカップリング体に対して特定のホモカップリング体が共存していても、有機電界発光素子の素子性能(駆動電圧、発光効率、耐久性など)に影響を与えない条件を見出した。これにより、製造負荷が小さく、高性能を維持できる発光素子用材料を提供することができる。
即ち、本発明の目的は、不純物が含まれていても素子性能への影響が小さい発光素子用材料を提供することである。
また、本発明の他の目的は、該発光素子用材料を用い、発光素子を提供することである。更に、本発明の他の目的は、該発光素子を用いた照明装置及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記の手段により解決される。
(1)
含有量が0.5質量%より多く10質量%以下の不純物を含む発光素子用材料であって、該不純物が下記の[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する、発光素子用材料。
[I]発光素子用材料のイオン化ポテンシャルIp(1)と、不純物のイオン化ポテンシャルIp(2)とが、Ip(1)≦Ip(2)である。
[II]発光素子用材料の電子親和力Ea(1)と、不純物の電子親和力Ea(2)とが、Ea(1)≧Ea(2)である。
[III]発光素子用材料の三重項状態の励起エネルギーT1(1)と、不純物の三重項状態の励起エネルギーT1(2)とが、T1(1)≦T1(2)である。
(2)
前記発光素子用材料が下記一般式(1−1)で表され、前記不純物が下記一般式(1−2)で表される、上記(1)に記載の発光素子用材料。
(1−1):(A1)n1−(B1)
(1−2):(A1)−(A1)
(式中、n1は、1〜10の整数を表す。A1は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。B1は、置換基を有していてもよいn1価の、炭素数6〜30のアリール構造又は炭素数2〜30のヘテロアリール構造を表す。ただし、A1とB1は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、シリル基、カルボキシル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
(3)
前記一般式(1−1)で表される発光素子用材料が下記一般式(2−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記一般式(1−2)で表される不純物が下記一般式(2−2)で表されるホモカップリング体である上記(2)に記載の発光素子用材料。
(2−1):(A2)n2−(B2)
(2−2):(A2)−(A2)
(式中、n2は1〜6の整数を表す。A2は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表す。B2は、置換基を有していてもよいn2価の、炭素数6〜15のアリール構造又は炭素数3〜15のヘテロアリール構造を表す。ただし、A2とB2は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
(4)
前記クロスカップリング体が下記一般式(3−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記ホモカップリング体が下記一般式(3−2)で表されるホモカップリング体である上記(3)に記載の発光素子用材料。
(3−1):(A3)n3−(B3)
(3−2):(A3)−(A3)
(式中、n3は1〜6の整数を表す。A3は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基を表す。B3は、置換基を有していてもよいn3価の炭素数6〜15のアリール構造を表す。ただし、A3とB3は同一ではない。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルバゾリル基、インドリル基、ジアリールアミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
(5)
前記クロスカップリング体が下記一般式(4−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記ホモカップリング体が下記一般式(4−2)で表されるホモカップリング体である上記(3)又は(4)に記載の発光素子用材料。
【化1】

(式中、n4は1〜5の整数を表す。R4a及びR4bは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。ただし、R4aとR4bは同一ではない。na及びnbはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。R4a又はR4bが複数存在する場合、該複数のR4a又はR4bは同一でも異なっていてもよい。)
(6)
少なくとも一層の有機層を有する発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層に上記(1)〜(5)のいずれか一項記載の発光素子用材料を含む発光素子。
(7)
前記有機層が、一対の電極間に挟持され、該電極間に電圧を印加することにより発光する有機電界発光素子である、上記(6)に記載の発光素子。
(8)
前記有機層が、塗布法により形成された層である、上記(6)又は(7)に記載の発光素子。
(9)
上記(6)〜(8)のいずれか一項記載の発光素子を有する照明装置。
(10)
上記(6)〜(8)のいずれか一項記載の発光素子を有する表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定量の不純物が含まれるものの発光素子の性能に影響を与えない発光素子用材料を提供することができる。特に、クロスカップリング体に対してホモカップリング体が含まれるものの発光素子の性能に影響を与えない発光素子用材料を提供することができる。該発光素子用材料により、駆動電圧が低く、発光効率及び耐久性に優れる発光素子を提供することができる。本発明の発光素子に用いる材料は、精製工程のコストダウンが可能な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る一般式の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
[発光素子用材料]
本発明の発光素子用材料は、含有量が0.5質量%より多く10質量%以下の不純物を含む発光素子用材料であって、該不純物が下記の[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する。
[I]発光素子用材料のイオン化ポテンシャルIp(1)と、不純物のイオン化ポテンシャルIp(2)とが、Ip(1)≦Ip(2)である。
[II]発光素子用材料の電子親和力Ea(1)と、不純物の電子親和力Ea(2)とが、Ea(1)≧Ea(2)である。
[III]発光素子用材料の三重項状態の励起エネルギーT1(1)と、不純物の三重項状態の励起エネルギーT1(2)とが、T1(1)≦T1(2)である。
【0012】
発光素子用材料において、不純物は前述の特許文献2にも記載されているように従来は素子性能に悪影響を与えるものと考えられ、その含有量をできる限り減らすことがよいとされてきた。
しかしながら、上記の[I]〜[III]のいずれか2つの条件を満足する不純物の場合、発光素子用材料中に0.5質量%より多くても10質量%以下であれば、素子性能(低駆動電圧、発光効率、耐久性)へ悪影響を与えず、良好な性能を維持できることを本発明者らは見出した。したがって、本発明の発光素子用材料の製造過程において、不純物を低減させるために過度の精製工程が必要となくなるので、精製工程のコストダウンを図ることができる。
上記条件[I]〜[III]については、素子性能(低駆動電圧、発光効率、耐久性)へ悪影響を与えず、良好な性能を維持する観点から、本発明の発光素子材料は3つ全ての条件を満足することがより好ましい。また、本発明の発光素子用材料が、後述の発光層に用いられる場合には、上記条件[I]〜[III]のうち、少なくとも[III]を満たすことが好ましく、[I]及び[III]、若しくは、[II]及び[III]を満たすことがより好ましく、発光層以外に用いられる場合には、上記条件[I]〜[III]のうち、少なくとも[I]と[II]を満たすことが好ましい。
【0013】
素子性能(低駆動電圧、発光効率、耐久性)に与える不純物の影響が少ないという観点から、発光素子用材料が一般式(1−1)で表されるものであって、該発光素子用材料中に0.5質量%より多く10質量%以下含まれ、かつ前記[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する不純物が下記一般式(1−2)で表される場合が好ましい。
(1−1):(A1)n1−(B1)
(1−2):(A1)−(A1)
(式中、n1は、1〜10の整数を表す。A1は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。B1は、置換基を有していてもよいn1価の、炭素数6〜30のアリール構造又は炭素数2〜30のヘテロアリール構造を表す。ただし、A1とB1は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、シリル基、カルボキシル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
特に、一般式(1−1)で表される発光素子用材料が、下記一般式(1−4)で表される化合物と下記一般式(1−5)で表される化合物とのクロスカップリング反応により得ることのできるクロスカップリング体であり、一般式(1−2)で表される不純物が該クロスカップリング反応により副生するホモカップリング体であることが好ましい。
(1−4):(A1)−(X1)
(1−5):(B1)−(X2)
(式中、A1及びB1は、それぞれ一般式(1−1)のA1及びB1に相当する基を表す。X1及びX2は、ハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基を表す。)
クロスカップリング反応においては、目的とする一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体の他、前記一般式(1−2)で表される化合物(ホモカップリング体)などが副生する。これらのホモカップリング体は、前述の特許文献2に記載されているように従来は素子性能に悪影響を与えるものと考えられ、その含有量をできる限り減らすことがよいとされてきた。
しかしながら、前述のように、一般式(1−2)で表されるホモカップリング体と一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体が、上記[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する場合、一般式(1−2)で表されるホモカップリング体の含有量が、一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体に対して0.5質量%より多くても10質量%以下であれば、素子性能(低駆動電圧、発光効率、耐久性)へ悪影響を与えず、良好な性能を維持できる。
このような本発明の発光素子材料は、一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体を得るクロスカップリング反応において、一般式(1−2)で表されるホモカップリング体を選択的に副生させることで、本発明の発光素子用材料を得ることができる。本発明の発光素子用材料の製造過程において、一般式(1−2)で表されるホモカップリング体を低減させるために過度の精製工程が必要となくなるので、精製工程のコストダウンを図ることができる。
【0015】
一般式(1−1)及び(1−2)について説明する。
n1は1〜10の整数を表す。n1は1〜6が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。
A1は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。
アリール基の炭素数は、6〜15であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、トリフェニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基などが挙げられる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基であり、より好ましくはフェニル基である。
ヘテロアリール基の炭素数は、2〜18であることがより好ましく、2〜12であることが特に好ましい。ヘテロアリール基のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基としては、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピペリジル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。好ましくは、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピペリジル基、インドリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基であり、より好ましくはピリジル基、フリル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、アゼピニル基であり、更に好ましくはピリジル基である。
【0016】
B1は、置換基を有していてもよいn1価の、炭素数6〜30のアリール構造又は炭素数2〜30のヘテロアリール構造を表す。
アリール構造の炭素数は、6〜15であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。アリール構造としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、トリフェニル、フェナントリルなどが挙げられる。好ましくは、フェニル、ナフチル、ビフェニルであり、より好ましくはフェニル基である。
ヘテロアリール構造の炭素数は、2〜18であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。ヘテロアリール構造のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリールとしては、イミダゾール、ピリジン、キノリン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピペリジン、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、インドール、カルバゾール、アゼピンなどが挙げられる。好ましくは、ピリジン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ピペリジン、インドール、カルバゾール、アゼピンであり、より好ましくは、ピリジン、チオフェン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランであり、さらに好ましくはピリジンである。
A1とB1は同一ではない。
【0017】
A1及びB1が有してもよい置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、シリル基、カルボキシル基、又はシアノ基である。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。好ましくは、フッ素原子である。
置換基としてのアルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル、エチル、tert−ブチルであり、より好ましくはtert−ブチルである。
置換基としてのアルケニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜10が特に好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。好ましくはビニル基、アリル基であり、より好ましくはビニル基である。
置換基としてのアリール基の炭素数は、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12が特に好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、トリフェニル基、フェナントリル基などが挙げられる。好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、フェナントリル基であり、より好ましくはフェニル基である。
置換基としてのヘテロアリール基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜12がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基としては、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、インドリル基、アゼピニル基などが挙げられる。好ましくは、カルバゾリル基、インドリル基、アゼピニル基であり、より好ましくはカルバゾリル基である。
置換基としてのアルコキシ基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。好ましくはメトキシ基、tert−ブトキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。
【0018】
前記置換基は、更に置換基を有してもよく、該更なる置換基としては、前記のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、シリル基、カルボキシル基、シアノ基が挙げられる。更なる置換基としては、アルキル基及びアリール基が好ましく、tert−ブチル基、フェニル基がより好ましい。
【0019】
A1及びB1が有してもよい置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基、シアノ基が好ましく、アリール基、カルバゾリル基、インドリル基、ジアリールアミノ基、シリル基、シアノ基がより好ましく、フェニル基、カルバゾリル基、シアノ基が特に好ましい。
A1とB1は、それぞれ独立に、複数有していてもよい。A1は1〜3個の置換基を有していることが好ましく、1個の置換基を有していることがより好ましい。B1は1〜3個の置換基を有していることが好ましく、1〜2個の置換基を有していることがより好ましい。A1とB1はそれぞれ置換基を複数有する場合には、該複数の置換基同士は同一でも異なっていてもよい。
【0020】
A1は、好ましくは置換基を有してもよいアリール基であり、より好ましくは、フェナントリル基又はカルバゾリル基を有するフェニル基であり、特に好ましくはカルバゾリル基を有するフェニル基である。
B1は、好ましくは置換基を有してもよいアリール構造であり、より好ましくは、フェニル基、カルバゾリル基及び/又はシアノ基を有するフェニルであり、特に好ましくはカルバゾリル基を有するフェニルである。
【0021】
前記一般式(1−1)で表される発光素子用材料及び前記一般式(1−2)で表される不純物は、それぞれ、下記一般式(2−1)で表されるクロスカップリング及び前記ホモカップリング体が下記一般式(2−2)で表されるホモカップリング体であることが好ましい。
(2−1):(A2)n2−(B2)
(2−2):(A2)−(A2)
(式中、n2は1〜6の整数を表す。A2は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表す。B2は、置換基を有していてもよいn2価の、炭素数6〜15のアリール構造又は炭素数3〜15のヘテロアリール構造を表す。ただし、A2とB2は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【0022】
一般式(2−1)及び(2−2)について説明する。
n2は1〜6の整数を表す。n2は1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。
A2は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表す。
B2は、置換基を有していてもよいn2価の、炭素数6〜15のアリール構造又は炭素数3〜15のヘテロアリール構造を表す。
A2が表すアリール基及びヘテロアリール基、並びにB2が表すアリール構造及びヘテロアリール構造の具体例及び好ましい例は、それぞれ、一般式(1−1)及び(1−2)のA1が表すアリール基及びヘテロアリール基、並びにB1が表すアリール構造及びヘテロアリール構造と同じである。
A2及びB2が有してもよい置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基、又はシアノ基である。各基の具体例及び好ましい範囲は、一般式(1−1)及び(1−2)のA1及びB1が有してもよい置換基として挙げたものと同じである。また、A2及びB2が有してもよい置換基の好ましい例は、一般式(1−1)及び(1−2)のA1及びB1と同じである。
A2とB2は同一ではない。
【0023】
前記一般式(1−1)又は(1−2)で表されるクロスカップリング体及び前記一般式(1−2)又は(2−2)で表されるホモカップリング体は、それぞれ、下記一般式(3−1)で表されるクロスカップリング及び前記ホモカップリング体が下記一般式(3−2)で表されるホモカップリング体であることが好ましい。
(3−1):(A3)n3−(B3)
(3−2):(A3)−(A3)
(式中、n3は1〜6の整数を表す。A3は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基を表す。B3は、置換基を有していてもよいn3価の炭素数6〜15のアリール構造を表す。ただし、A3とB3は同一ではない。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルバゾリル基、インドリル基、ジアリールアミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【0024】
一般式(3−1)及び(3−2)について説明する。
n3は1〜6の整数を表す。n3は1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。
A3は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表す。
B3は、置換基を有していてもよいn3価の、炭素数6〜15のアリール構造又は炭素数3〜15のヘテロアリール構造を表す。
A3が表すアリール基及びヘテロアリール基、並びにB3が表すアリール構造及びヘテロアリール構造の具体例及び好ましい例は、それぞれ、一般式(1−1)及び(1−2)のA1が表すアリール基及びヘテロアリール基、並びにB1が表すアリール構造及びヘテロアリール構造と同じである。
A3及びB3が有してもよい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルバゾリル基、インドリル基、ジアリールアミノ基、シリル基、又はシアノ基である。アルキル基及びアリール基の具体例及び好ましい範囲は、一般式(1−1)及び(1−2)のA1及びB1が有してもよい置換基として挙げたアルキル基及びアリール基と同じである。A3及びB3が有してもよい置換基としては、フェニル基、カルバゾリル基、シアノ基がより好ましい。
A3とB3は同一ではない。
【0025】
前記一般式(1−1)〜(3−1)で表されるクロスカップリング体及び前記一般式(1−2)〜(3−2)で表されるホモカップリング体は、それぞれ、下記一般式(4−1)で表されるクロスカップリング及び前記ホモカップリング体が下記一般式(4−2)で表されるホモカップリング体であることが好ましい。
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、n4は1〜5の整数を表す。R4a及びR4bは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である。ただし、R4aとR4bは同一ではない。na及びnbはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。R4a又はR4bが複数存在する場合、該複数のR4a又はR4bは同一でも異なっていてもよい。)
【0028】
一般式(4−1)及び(4−2)について説明する。
n4は1〜5の整数を表す。n4は1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。
4a及びR4bは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基である。
4aは無置換のカルバゾリル基が好ましい。
4bは置換基を有するフェニル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、シアノ基が好ましく、置換基を有してもよいカルバゾリル基、シアノ基がより好ましい。
前記置換基としては、tert−ブチル基、フェニル基が好ましい。
na及びnbはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。naは1〜2が好ましく、1がより好ましい。nbは1〜3個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
n4=1の場合、R4aとR4bは同一ではない。R4a又はR4bが複数存在する場合、該複数のR4a又はR4bは同一でも異なっていてもよい。
【0029】
前記一般式(4−1)で表されるクロスカップリング体及び前記一般式(4−2)で表されるホモカップリング体は、それぞれ、下記一般式(5−1)で表されるクロスカップリング及び前記ホモカップリング体が下記一般式(5−2)で表されるホモカップリング体であることが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、R51は、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を表す。R52及びR53は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。前記置換基は、アルキル基又はアリール基を表す。ただし、R52及びR53は同時に水素原子となることはない。R52及びR53のいずれか一方が水素原子の場合、他方はR51と同一ではない。)
【0032】
一般式(5−1)及び(5−2)について説明する。
51は、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を表す。好ましくは、無置換のカルバゾリル基である。
52及びR53は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。水素原子、置換基を有するフェニル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基又はシアノ基が好ましく、水素原子、置換基を有してもよいカルバゾリル基、シアノ基がより好ましい。
前記置換基は、アルキル基又はアリール基を表し、tert−ブチル基、フェニル基が好ましい。
52及びR53は同時に水素原子となることはなく、R52及びR53のいずれか一方が水素原子の場合、他方はR51と同一ではない。
【0033】
次に、前述の[I]〜[III]の条件について説明する。
[I]本発明の発光素子用材料の一態様においては、該発光素子用材料に含有される、一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体のイオン化ポテンシャルIp(1)と、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体のイオン化ポテンシャルIp(2)とが、Ip(1)≦Ip(2)を満たす。
あるイオン化ポテンシャル(Ip)の材料に、少量の比較的Ipの小さい材料が含まれると、該材料内を通過する正孔(ホール)の移動を妨げ、あるIpの材料のみを用いた場合に期待される発光特性を再現することが困難であるが、本態様では、前記Ip(1)≦Ip(2)を満足させることにより、期待される発光特性を得ることができる。更に、Ip(1)とIp(2)の違いが小さいほうが、正孔の移動に与える影響がより小さい理由から、Ip(2)−Ip(1)が0eV以上1.0eV以下であることが好ましく、0eV以上0.5eV以下であることがより好ましく、0eV以上0.2eV以下であることが更に好ましく、0eV以上0.1eV以下であることが特に好ましい。
イオン化ポテンシャルの測定は、理研計器株式会社製の大気中光電子分光(PES)装置AC−2/AC−3を用いて、適当な基板上に蒸着法・塗布法などによって形成された薄膜や、粉末や結晶などの固体状態の材料で行うことができる。また、紫外線光電子分光分析(UPS)や光電子収量分析(PYS)などを用いても測定でき、サイクリックボルタンメトリー(CV)の酸化電位や、量子化学計算によるHOMO(最高被占有分子軌道)の準位で比較することもできる。
【0034】
[II]本発明の発光素子用材料の一態様においては、該発光素子用材料に含有される、一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体の電子親和力Ea(1)と、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体の電子親和力Ea(2)とが、Ea(1)≧Ea(2)を満たす。
ある電子親和力(Ea)の材料に、少量の比較的Eaの大きな材料が含まれると、該材料内を通過する電子の移動を妨げ、あるEaの材料のみを用いた場合に期待される発光特性を再現することが困難であるが、本態様では、前記Ea(1)≧Ea(2)を満足させることにより、期待される発光特性を得ることができる。更に、Ea(1)とEa(2)の違いが小さいほうが、電子の移動に与える影響がより小さい理由から、Ea(1)−Ea(2)が0eV以上1.0eV以下であることが好ましく、0eV以上0.5eV以下であることがより好ましく、0eV以上0.2eV以下であることが更に好ましく、0eV以上0.1eV以下であることが特に好ましい。
電子親和力は、材料の吸収スペクトルの短波長端に相当するエネルギー準位Egと、前述のIpから、Ea=Ip−Egの計算式で求められる。また、逆光電子分光(IPES)を用いても測定でき、サイクリックボルタンメトリー(CV)の還元電位や、量子化学計算によるLUMO(最低空軌道)の準位で比較することもできる。
【0035】
[III]本発明の発光素子用材料の一態様においては、該発光素子用材料に含有される、一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体の励起エネルギーT1(1)と、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体の励起エネルギーT1(2)とが、T1(1)≦T1(2)を満たす。
ある三重項状態の励起エネルギーT1の材料に、少量の比較的T1の小さな材料が含まれると、電荷再結合により発光素子内で生成する励起子を失活して、あるT1の材料のみを用いた場合に期待される発光特性を再現することが困難であるが、本態様では、前記T1(1)≦T1(2)を満足させることにより、期待される発光特性を得ることができる。更に、T1(1)とT1(2)の違いが大きいほうが、励起子の失活に与える影響がより小さい理由から、T1(2)−T1(1)が0eV以上0.1eV以下であることが好ましく、0eV以上1.0eV以下であることがより好ましい。
三重項状態の励起エネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0036】
上記[I]〜[III]の条件を満足させるためには、副生するホモカップリング体のIp、Ea、T1が上記の条件を満たすように、クロスカップリング反応に用いる材料を選択する。特に、パラジウム触媒等を用いて有機ホウ素化合物とハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせる鈴木カップリングの場合には、ホウ素を含む材料から副生するホモカップリング体が、上記の条件を満たすように、材料を選択する。
【0037】
本発明の発光素子用材料において、一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体に対して、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体であって上記[I]〜[III]のいずれか少なくとも1つを満足するホモカップリング体の含有量は0.5質量%より多く10質量%以下である。素子性能の変動を抑える観点から、該含有量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。一方、材料精製を過度に実施すると製造コストが上昇するため、前記ホモカップリング体の含有量は0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましい。
【0038】
材料精製のコスト削減の観点から、一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体に対して、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体であって上記[I]〜[III]のいずれも満足しないホモカップリング体の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0039】
以下に、一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体と、それに対応する一般式(1−2)で表されるホモカップリング体を与える、クロスカップリングの反応例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。式中、Ax,Ayはカップリング反応により結合が生成する場所を表し、反応前はハロゲン原子や置換スルホネートなどか、又は、金属原子を含む基を表す。
【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
[クロスカップリング反応]
本発明に係る一般式(1−1)〜(5−1)で表されるクロスカップリング体は、クロスカップリング反応により得ることができる。
例えば、一般式(1−1)で表されるクロスカップリング体の場合、下記一般式(1−4)で表される化合物と下記一般式(1−5)で表される化合物とのクロスカップリング反応により得ることができる。
(1−4):(A1)−(X1)
(1−5):(B1)−(X2)
(式中、A1及びB1は、それぞれ一般式(1−1)のA1及びB1に相当する基を表す。X1及びX2は、ハロゲン原子や置換スルホネートなどか、あるいは、金属原子を含む基を表す。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を用いることができ、置換スルホネートとしては、メタンスルホネート(メシレート)、トリフルオトメタンスルホネート(トリフレート)、ノナフルオロブタンスルホネート(ノナフレート)、フェニルスルホネート、p−トルエンスルホネート(トシレート)などを用いることができる。
金属原子を含む基をもつ化合物としては、Mgを含むグリニヤール試薬、Bを含む有機ホウ素化合物、Siを含む有機ケイ素化合物、Snを含む有機スズ化合物、Znを含む有機亜鉛化合物などを用いることができる。
【0044】
カップリング反応の反応条件はChem.Rev.,1995,95,2457−2483.、あるいは、”Metal−Catalyzed Cross−Coupling Reactions, 2nd, Completely Revised AND Enlarged Edition”(A. Meijere (Editor), F. Diederich (Editor), Wiley−VCH、 2版,2004)等に記載の条件を用いることができる。反応の好ましい条件を以下に説明する。
触媒としては、遷移金属を用いることができ、特に、パラジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銅などの金属を用いることができ、これらの金属の単体や無機塩、あるいは、適当な配位子を有する有機金属錯体の形で反応に供される。
パラジウム触媒としては、2価のパラジウム塩若しくは、0価のパラジウム塩が用いられる。2価のパラジウムとしては、酢酸パラジウム、ジクロロビストルフェニルホスフィンパラジウム等、0価のパラジウムとしては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等が挙げられる。好ましくは、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。
反応時の溶媒としては、特に限定されないが、水;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。このうち好ましくは、水、芳香族炭化水素類、エーテル類である。これらの溶媒は、2種類以上混合して使用しても構わない。
反応温度は、反応の温度は特に限定されず、通常は、0℃〜溶媒の沸点の間で行われるが、生成物の分解等が起こらない場合は、反応速度向上の為に、溶媒の沸点付近の温度で反応させることが好ましい。
上記反応は、必要に応じて更に配位子を加えて反応を行っても良い。配位子としては、ホスフィン配位子、カルベン配位子等が挙げられる。その中でもホスフィン配位子が好ましい。
上記配位子の使用量は、通常、使用するパラジウム触媒に対して、0.5〜20モル倍量用いられ、好ましくは1〜10モル倍量であり、更に好ましくは1〜5モル倍量である。
上記反応に使用する塩基としては特に限定されないが、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム等のアルカリ土類金属重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩などが挙げられる。そのなかでも、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、リン酸塩が好ましい。
塩基の使用量としては、通常、化合物(1−4)に対して、0.1〜50モル倍量用いられ、好ましくは、1〜20モル倍量であり、更に好ましくは2〜10モル倍量である。
【0045】
その他、WO2007/021107やTetrahedron Letters,Vol.33,Issue 20,May 12,1992,pages 2773−2776等に記載の方法で行うことができる。
【0046】
クロスカップリング反応において、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体を選択的に副生させるために、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体を与える材料を、クロスカップリング反応において対となる材料に対して等量以上、好ましくは1.1〜10倍当量、より好ましくは1.1〜2倍当量、更に好ましくは1.1〜1.2倍当量用いる。あるいは、一般式(1−2)〜(5−2)で表されるホモカップリング体を与える材料として、有機ホウ素化合物などの金属原子を含む基を有する材料を選択することが好ましい。
【0047】
クロスカップリング反応後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行ってもよい。精製により発光素子の性能を変化させる不純物含有量を許容量以下に低減することができる。
【0048】
[発光素子]
本発明の発光素子は、少なくとも一層の有機層を有する発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層に本発明の発光素子用材料を含む。
有機層中の本発明の発光素子用材料の含有量は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、99質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。また、発光層として用いる場合には、発光材料と共に用いることができるが、発光材料以外の発光素子用材料の含有量は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、99質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
本発明の発光素子の態様は限定されないが、有機電界発光素子、発光性有機電界効果トランジスタなどが挙げられる。
好ましくは、一対の電極間に有機層が挟持され、該電極間に電圧を印加することにより発光する有機電界発光素子であることが好ましい。
【0050】
[有機電界発光素子]
有機電界発光素子においては、有機層の少なくとも一層は発光層であり、更に複数の有機層を有することができる。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、基板2上に、一対の電極(陽極3及び陰極9)を有し、該一対の電極間に発光層6を有する。具体的には、陽極3と陰極9との間に、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8をこの順に有する。
素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
【0051】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。前記陽極上又は陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、陽極又は陰極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0053】
有機電界発光素子において、本発明の発光素子用材料は有機層のいずれの層に含有されてもよい。好ましくは正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層のいずれかに用いる場合であり、より好ましくは正孔輸送層、発光層、電子輸送層に用いる場合であり、更に好ましくは発光層に用いる場合である。
本発明の発光素子用材料を発光層中含有させる場合、本発明の発光素子用材料は発光層の全質量に対して10〜99質量%含ませることが好ましく、40〜95質量%含ませることがより好ましく、70〜90質量%含ませることが更に好ましい。
また、本発明の発光素子用材料を発光層以外の層に含有させる場合は、60〜100質量%含ませることが好ましく、70〜100質量%含ませることがより好ましく、85〜100質量%含まれせることがより好ましい。
【0054】
<基板>
基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0055】
<有機層>−有機層の形成−
有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、溶液塗布などの湿式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0056】
(発光層)
<発光材料>
本発明の有機電界発光素子の発光層における発光材料は、燐光発光材料であることが好ましく、イリジウム錯体及び白金錯体であることが好ましい。
【0057】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜40質量%含有されることが更に好ましい。
発光層中の燐光発光材料は、発光層中に耐久性、発光色相の観点から1質量%〜30質量%含有されることが好ましく、2質量%〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0058】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0059】
発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。
ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は、複数の層からなっていてもよく、発光層が複数の層からなる場合に、それぞれの発光色は同じでも異なっていてもよい。
【0060】
<ホスト材料>
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物を含有していても良い。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0061】
発光層において、ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0062】
ホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0063】
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0064】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0065】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0066】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0067】
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0068】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0069】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0070】
<保護層>
有機発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0071】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0072】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0073】
本発明の有機電界発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0074】
本発明の有機電界発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0075】
本発明における有機電界発光素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0076】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、17%以上が特に好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜300cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0077】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0078】
本発明の有機電界発光素子は、350nm以上700nm以下に発光極大波長(発光スペクトルの最大強度波長)を有するものが好ましく、より好ましくは400nm以上650nm以下、更に青色発光素子として好ましくは400nm以上520nm以下、特に好ましくは400nm以上470nm以下であり、緑色発光素子として好ましくは470nm以上520nm以下、特に好ましくは490nm以上510nm以下であり、赤色発光素子として好ましくは550nm以上650nm以下、特に好ましくは590nm以上630nm以下である。
【0079】
(本発明の有機電界発光素子の用途)
本発明の有機電界発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0080】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0081】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0082】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0083】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0085】
<実施例1>
[合成例]
[クロスカップリング体4の合成]
以下の合成ルート1〜3により、中間体1、中間体2、中間体3、クロスカップリング体4を合成した。ここで、中間体1は、WO2006/062062の100頁に記載の方法で合成し、中間体2は、WO2006/062062の102頁に記載の方法で合成した。中間体3は、WO2006/070185の28頁に記載のtert−ブチルカルバゾールから、中間体1−1と同様の方法で合成した。
中間体2(28.7g、0.1モル)、中間体3(37.8g、0.1モル)、酢酸パラジウム(0.22g、1ミリモル)、トリフェニルホスフィン(1.05g、4ミリモル)、炭酸ナトリウム(31.8g、0.3モル)、THF(テトラヒドロフラン)(200mL)、水(200mL)を窒素雰囲気下、4時間加熱還流し、室温に冷却後、水層を除去し、水と飽和食塩水で有機層を洗浄後、THFを留去して濃縮した溶液に、ヘキサンとアセトニトリルを加えたのち、析出物をろ過し、アセトニトリルで洗浄後、減圧下で乾燥して、クロスカップリング体4を得た。収量49.4g、収率91%。HPLC面積97.8%(クロスカップリング体4に対してホモカップリング体4−aの含有量は1.4質量%であった)。
【0086】
得られたクロスカップリング体4のNMRデータを以下に示す。δ(ppm、重DMSO中)8.30(s、1H)、8.24(d、3H)、8.06(d、2H)、7.96(t、2H)、7.79(dt、2H)、7.66(d、2H)、7.52−5.39(m、8H)、7.29(t、2H)、7.27(t、1H)、1.41(s、18H)
【0087】
【化7】

【0088】
[ホモカップリング体4−aの合成]
下記の反応でホモカップリング体4−aを合成した。中間体1と中間体2を用いることにより、上述のクロスカップリング体4の合成と同じ方法で、ホモカップリング体4−aを合成した。
【0089】
得られたホモカップリング体4−aのNMRデータを以下に示す。δ(ppm、重DMSO中)8.26(d、4H)、8.07(s、2H)、7.97(d、2H)、7.80(t、2H)、7.67(d、2H)、7.49(d、4H)、7.44(t、4H)、7.30(t、4H)
【0090】
【化8】

【0091】
[ホモカップリング体4−bの合成]
下記の反応でホモカップリング体4−bを合成した。中間体4は、中間体3から、中間体2と同様の方法で合成した。
中間体3と中間体4を用いることにより、上述のクロスカップリング体4の合成と同じ方法で、ホモカップリング体4−bを合成した。
【0092】
得られたホモカップリング体4−bのNMRデータを以下に示す。δ(ppm、重DMSO中)8.28(d、2H)、8.24(s、2H)、8.05(s、2H)、7.95(d、2H)、7.79(t、2H)、7.66(d、2H)、7.51(dd、2H)、7.48(d、2H)、7.42(d、2H)、7.41(t、2H)、7.27(t、2H)、1.41(s、18H)
【0093】
【化9】

【0094】
[クロスカップリング体6の合成]
以下の合成ルート4によりクロスカップリング体6を合成した。ここで、中間体5は、J.Am.Chem.Soc.,1986,108(19),pp.5991−5997に記載の方法にしたがって、カルバゾールとブロモフルオロベンゾニトリルから合成した。
中間体2と中間体5を用いることにより、上述のクロスカップリング体4の合成と同じ方法で、クロスカップリング体6を合成した。クロスカップリング体6に対してホモカップリング体6−aの含有量は1.5質量%であった
【0095】
得られたクロスカップリング体6のNMRデータを以下に示す。δ(ppm、重クロロホルム中)8.16(d、4H)、8.12(s、1H)、8.00(s、1H)、7.91(s、1H)、7.85(s、1H)、7.76(t、1H)、7.72(d、1H)、7.69(d、1H)、7.48−7.41(m、8H)、7.38−7.29(m、4H)
【0096】
【化10】

【0097】
[ホモカップリング体6−a及び6−bの合成]
ホモカップリング体6−aは、ホモカップリング体4−aと同様に合成した。
ホモカップリング体6−bは下記の方法で合成した。中間体6は、WO 2006/062062の100頁に記載の方法で中間体5から合成した。
中間体5と中間体6を用いることにより、上述のクロスカップリング体4の合成と同じ方法で、ホモカップリング体6−bを合成することができる。
【0098】
得られたホモカップリング体6−bのNMRデータを以下に示す。δ(ppm、重DMSO中)8.62(s、2H)、8.61(s、2H)、8.26(s、2H)、8.26(d、4H)、7.54(d、4H)、7.46(d、4H)、7.33(d、4H)
【0099】
【化11】

【0100】
[クロスカップリング体10の合成]
以下の合成ルート5によりクロスカップリング体10を、特開2007−266598号公報の段落[0080]に記載の方法で合成した。
【0101】
【化12】

【0102】
合成後のクロスカップリング体10に対するホモカップリング体10−aの含有量は2質量%であった。また、得られたクロスカップリング体10のNMRデータを以下に示す。
δ(ppm、重クロロホルム中)7.33(m、2H)、7.43−7.50(m、4H)、7.54−7.62(m、6H)、7.64−7.74(m、7H)、7.82−7.85(m、2H)
【0103】
[ホモカップリング体10−aの合成]
ホモカップリング体10−aは、Chemical&Pharmaceutical Bulletin,1982,vol.30,#7,p.2369−2379に記載の方法により合成した。
【0104】
[クロスカップリング体12の合成]
クロスカップリング体12は、以下の合成ルート6〜8により合成した。
【0105】
【化13】

【0106】
合成ルート8において、合成後のクロスカップリング体12に対するホモカップリング体12−aの含有量は1質量%であった。得られたクロスカップリング体12のNMRデータを以下に示す。
δ(ppm、重DMSO中)9.17(s、1H)、9.08(d、1H)、8.92(s、1H)、8.90−8.81(m、3H)、8.31(s、1H)、8.17(s、1H)、8.13(s、1H)、8.00(d、1H)、7.93(d、2H)、7.97(t、2H)、7.81(d、2H)、7.79−7.75(m、7H)、7.70(t、1H)、7.66(t、1H)、7.50(t、2H)、7.40(t、1H)
【0107】
[ホモカップリング体12−aの合成]
ホモカップリング体12−aは、中間体7とその前駆体の臭化物の鈴木カップリングにより合成した。ホモカップリング体12−aのNMRデータを以下に示す。
δ(ppm、重クロロホルム中)8.94(s、2H)、8.80−8.74(m、4H)、8.73−8.68(m、6H)、8.12(s、2H)、8.00(d、2H)、7.87(d、2H)、7.79(d、2H)、7.72−7.67(m、10H)
【0108】
[クロスカップリング体の精製]
クロスカップリング体4は、以下の合成ルート9により合成した。
【0109】
【化14】

【0110】
中間体1(12.0g、0.037モル)、中間体4(12.8g、0.037モル)、酢酸パラジウム(0.21g、0.9ミリモル)、トリフェニルホスフィン(0.98g、4ミリモル)、炭酸ナトリウム(19.8g、0.19モル)、DME(ジメチルエーテル)(370mL)、水(370mL)を窒素雰囲気下、4時間加熱還流し、室温に冷却後、水層を除去し、イソプロパノール200mLを加えて、析出した灰色粉末を濾別した。得られた粉末をトルエンに溶解し、シリカゲルのカラムで濾過した溶液を、約50mLまで濃縮後、イソプロパノールを加えて晶析し、析出した灰色粉末を濾別した。減圧下で乾燥して、クロスカップリング体4を得た。収量16.8g、収率84%。HPLC面積97.4%(クロスカップリング体4に対してホモカップリング体4−aの含有量は0.9質量%、ホモカップリング体4−bの含有量は1.3質量%であり、その他の不純物が全て、0.5質量%以下であった)。
この合成粗体を、トルエンに溶解し、イソプロパノールで晶析する操作を更に2回繰り返し、最後に、0.54Paの減圧条件下、270℃で昇華精製を行った。得られた材料の各晶析後、及び昇華精製後の純度を以下の表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
以上のように、クロスカップリング体に含まれる不純物を0.5質量%未満にするには、晶析工程を繰り返さなくてはならず、過度の精製工程の追加は、材料の製造コストを上昇させる。
【0113】
上記のように合成したクロスカップリング体4、6、10及び12と、ホモカップリング体4−a、4−b、6−a、6−b、10−a及び12−aとのイオン化ポテンシャル、電子親和力及び三重項状態の励起エネルギーを以下のように調べた。
クロスカップリング体(例示化合物4、6、10及び12)については、ホモカップリング体の影響を排除するために、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華精製を繰り返し、クロスカップリング体の含有量が99.9質量%以上の化合物を得た。
得られた、クロスカップリング体、ホモカップリング体について、それぞれについて、石英基板上に真空蒸着法によって、膜厚50nmの薄膜にし、イオン化ポテンシャルIp、電子親和力Ea及び三重項状態の励起エネルギーTを測定した。
イオン化ポテンシャルIpは、理研計器株式会社製の大気中光電子分光(PES)装置AC−2を用いて測定した。
電子親和力Eaは、分光光度計U−3310(日立ハイテクノロジーズ)を用いて、石英基板上の薄膜の吸収スペクトルの短波長端に相当するエネルギー準位Egと、前述のIpから、Ea=Ip−Egの計算式で求めた。
三重項状態の励起エネルギーTは、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定し、得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めた。
測定結果を以下の表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
表2中、Ipの欄の(○)は、クロスカップリング体のイオン化ポテンシャルIp(1)に対してホモカップリング体のイオン化ポテンシャルIp(2)がIp(1)≦Ip(2)を満たしていることを表し、(×)はIp(1)≦Ip(2)を満たしていないことを表す。
Eaの欄の(○)は、クロスカップリング体の電子親和力Ea(1)に対してホモカップリング体の電子親和力Ea(2)がEa(1)≧Ea(2)を満たしていることを表し、(×)はEa(1)≧Ea(2)を満たしていないことを表す。
1の欄の(○)は、クロスカップリング体の三重項状態の励起エネルギーT1(1)に対してホモカップリング体の三重項状態の励起エネルギーT1(2)がT1(1)≦T1(2)を満たしていることを表し、(×)はT1(1)≦T1(2)を満たしていないことを表す。
【0116】
<実施例2>
[素子の作製]
厚み0.7mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:NPD:膜厚40nm
第2層:材料X及び発光材料(質量比90:10):膜厚30nm
第3層:CBP:膜厚5nm
第4層:BAlq:膜厚45nm
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム70nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、表3に記載の各有機電界発光素子を得た。
これらの素子を発光させた結果、各素子とも発光材料に由来する発光が得られた。
なお、ホモカップリング体の影響を調べるために、材料X中のホモカップリング体の含有量は、単品のホモカップリング体を添加することにより調製した。表3に、例示化合物に対するホモカップリング体の含有量(質量%)を示す。
【0117】
(有機電界発光素子の性能評価)
得られた各素子に対し、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性を測定して素子の性能を評価した。なお、各種測定は以下のように行なった。結果を表3に示す。
(a)駆動電圧
各素子を(株)島津製作所製の発光スペクトル測定システム(ELS1500)にセットし、これらの輝度が1000 cd/m時の印加電圧を測定した。比較例1の駆動電圧を基準値として以下の基準で評価した。
◎:基準値に対して駆動電圧が変らない。
○:基準値に対して駆動電圧が0%超5%以下高く変化した。
△:基準値に対して駆動電圧が5%超15%以下高く変化した。
×:基準値に対して駆動電圧が15%超高く変化した。
(b)外部量子効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出した。比較例1の外部量子効率を基準値として以下の基準で評価した。
◎:基準値に対して外部量子効率が変らない。
○:基準値に対して外部量子効率が0%超5%以下低下した。
△:基準値に対して外部量子効率が5%超15%以下低下した。
×:基準値に対して外部量子効率が15%超低下した。
(c)初期輝度減衰時間(駆動耐久性)
各素子を輝度が5000cd/mになるように直流電圧を印加し、輝度が4000cd/mになるまでの時間を測定した。この輝度半減時間を駆動耐久性評価の指標とした。比較例1の減衰時間を基準値として以下の基準で評価した。
◎:基準値に対して減衰時間が変らない。
○:基準値に対して減衰時間が0%超5%以下短くなった。
△:基準値に対して減衰時間が5%超15%以下短くなった。
×:基準値に対して減衰時間が15%超短くなった。
【0118】
【表3】

【0119】
表3より、特定のクロスカップリング体(例示化合物)に対して、イオン化ポテンシャル、電子親和力及び/又は三重項状態の励起エネルギーが特定の関係にあるホモカップリング体を0.5質量%より多く10質量%以下含む材料を用いた素子は、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性の変動量が小さくなっていることが分かる。この材料は、ホモカップリング体を精製する工程を過度に行わなくてすむため、精製コスト及び負荷を抑えることができる。
【0120】
<実施例3>
[素子の作製]
実施例2の素子の作製において、材料Xを表4のものに変えた以外は、同様にして素子を作製し、比較例2及び3、及び参考例1を基準として駆動電圧、外部量子効率及び初期輝度減衰時間を評価した。評価結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
表4より、特定のクロスカップリング体(例示化合物)に対して、イオン化ポテンシャル、電子親和力及び/又は三重項状態の励起エネルギーが特定の関係にあるホモカップリング体を0.5質量%より多く10質量%以下含む材料を用いた素子は、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性の変動量が小さくなっていることが分かる。この材料は、ホモカップリング体を精製する工程を過度に行わなくてすむため、精製コスト及び負荷を抑えることができる。
【0123】
<実施例4>
[素子の作製]
厚み0.7mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:NPD:膜厚40nm
第2層:CBP及び発光材料(質量比90:10):膜厚30nm
第3層:材料X:膜厚5nm
第4層:BAlq:膜厚45nm
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム70nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、表5に記載の各有機電界発光素子を得た。
これらの素子を発光させた結果、各素子とも発光材料に由来する発光が得られた。
なお、ホモカップリング体の影響を調べるために、材料X中のホモカップリング体の含有量は、単品のホモカップリング体を添加することにより調製した。表5に、例示化合物に対するホモカップリング体の含有量(質量%)を示す。
得られた各素子について、比較例4及び参考例2を基準として駆動電圧、外部量子効率及び初期輝度減衰時間を評価した。評価結果を表5に示す。
【0124】
【表5】

【0125】
表5より、特定のクロスカップリング体(例示化合物)に対して、イオン化ポテンシャル、電子親和力及び/又は三重項状態の励起エネルギーが特定の関係にあるホモカップリング体を0.5質量%より多く10質量%以下含む材料を用いた素子は、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性の変動量が小さくなっていることが分かる。この材料は、ホモカップリング体を精製する工程を過度に行わなくてすむため、精製コスト及び負荷を抑えることができる。
【0126】
<実施例5>
[素子の作製]
厚み0.7mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:材料X:膜厚40nm
第2層:CBP及び発光材料(質量比90:10):膜厚30nm
第3層:CBP:膜厚5nm
第4層:BAlq:膜厚45nm
この上に、フッ化リチウム1nm及び金属アルミニウム70nmをこの順に蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、表6に記載の各有機電界発光素子を得た。
これらの素子を発光させた結果、各素子とも発光材料に由来する発光が得られた。
なお、ホモカップリング体の影響を調べるために、材料X中のホモカップリング体の含有量は、単品のホモカップリング体を添加することにより調製した。表6に、例示化合物に対するホモカップリング体の含有量(質量%)を示す。
得られた各素子について、比較例5を基準として駆動電圧、外部量子効率及び初期輝度減衰時間を評価した。評価結果を表6に示す。
【0127】
【表6】

【0128】
表6より、特定のクロスカップリング体(例示化合物)に対して、イオン化ポテンシャル、電子親和力及び/又は三重項状態の励起エネルギーが特定の関係にあるホモカップリング体を0.5質量%より多く10質量%以下含む材料を用いた素子は、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性の変動量が小さくなっていることが分かる。この材料は、ホモカップリング体を精製する工程を過度に行わなくてすむため、精製コスト及び負荷を抑えることができる。
【0129】
<実施例6>
[素子の作製]
0.7mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。これにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)を純水で70%に希釈した溶液をスピンコーターで塗布し、50nmの正孔輸送層を設けた。材料X及び発光材料(質量比95:5)を溶解したメチレンクロライド溶液をスピンコーターで塗布し、30nmの発光層を得た。この上に、BAlqを40nm蒸着した。この有機化合物層の上に、蒸着装置内で陰極バッファー層としてフッ化リチウム1nm及び陰極としてアルミニウム70nmを蒸着した。これを大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、表7に示す各有機電界発光素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を有機EL素子に印加して発光させた結果、発光材料に由来する発光が得られた。
なお、ホモカップリング体の影響を調べるために、材料X中のホモカップリング体の含有量は、単品のホモカップリング体を添加することにより調製した。表7に、例示化合物に対するホモカップリング体の含有量(質量%)を示す。
得られた各素子について、比較例6を基準として駆動電圧、外部量子効率及び初期輝度減衰時間を評価した。評価結果を表7に示す。
【0130】
【表7】

【0131】
表7より、特定のクロスカップリング体(例示化合物)に対して、イオン化ポテンシャル、電子親和力及び/又は三重項状態の励起エネルギーが特定の関係にあるホモカップリング体を0.5質量%より多く10質量%以下含む材料を用いた素子は、駆動電圧、外部量子効率及び駆動耐久性の変動量が小さくなっていることが分かる。この材料は、ホモカップリング体を精製する工程を過度に行わなくてすむため、精製コスト及び負荷を抑えることができる。
【0132】
以下に、実施例で用いた化合物を示す。
【0133】
【化14】

【符号の説明】
【0134】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有量が0.5質量%より多く10質量%以下の不純物を含む発光素子用材料であって、該不純物が下記の[I]〜[III]のいずれか2つ以上の条件を満足する、発光素子用材料。
[I]発光素子用材料のイオン化ポテンシャルIp(1)と、不純物のイオン化ポテンシャルIp(2)とが、Ip(1)≦Ip(2)である。
[II]発光素子用材料の電子親和力Ea(1)と、不純物の電子親和力Ea(2)とが、Ea(1)≧Ea(2)である。
[III]発光素子用材料の三重項状態の励起エネルギーT1(1)と、不純物の三重項状態の励起エネルギーT1(2)とが、T1(1)≦T1(2)である。
【請求項2】
前記発光素子用材料が下記一般式(1−1)で表され、前記不純物が下記一般式(1−2)で表される、請求項1に記載の発光素子用材料。
(1−1):(A1)n1−(B1)
(1−2):(A1)−(A1)
(式中、n1は、1〜10の整数を表す。A1は、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数2〜30のヘテロアリール基を表す。B1は、置換基を有していてもよいn1価の、炭素数6〜30のアリール構造又は炭素数2〜30のヘテロアリール構造を表す。ただし、A1とB1は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、シリル基、カルボキシル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(1−1)で表される発光素子用材料が下記一般式(2−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記一般式(1−2)で表される不純物が下記一般式(2−2)で表されるホモカップリング体である請求項2に記載の発光素子用材料。
(2−1):(A2)n2−(B2)
(2−2):(A2)−(A2)
(式中、n2は1〜6の整数を表す。A2は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基又は炭素数4〜15のヘテロアリール基を表す。B2は、置換基を有していてもよいn2価の、炭素数6〜15のアリール構造又は炭素数3〜15のヘテロアリール構造を表す。ただし、A2とB2は同一ではない。前記置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記クロスカップリング体が下記一般式(3−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記ホモカップリング体が下記一般式(3−2)で表されるホモカップリング体である請求項3に記載の発光素子用材料。
(3−1):(A3)n3−(B3)
(3−2):(A3)−(A3)
(式中、n3は1〜6の整数を表す。A3は、置換基を有してもよい、炭素数6〜15のアリール基を表す。B3は、置換基を有していてもよいn3価の炭素数6〜15のアリール構造を表す。ただし、A3とB3は同一ではない。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、カルバゾリル基、インドリル基、ジアリールアミノ基、シリル基、又はシアノ基であり、各基は更にこれらの置換基により置換されていてもよい。置換基が複数存在する場合に該置換基は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記クロスカップリング体が下記一般式(4−1)で表されるクロスカップリング体であり、前記ホモカップリング体が下記一般式(4−2)で表されるホモカップリング体である請求項3又は4に記載の発光素子用材料。
【化1】

(式中、n4は1〜5の整数を表す。R4a及びR4bは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又はシアノ基を表す。前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。ただし、R4aとR4bは同一ではない。na及びnbはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。R4a又はR4bが複数存在する場合、該複数のR4a又はR4bは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
少なくとも一層の有機層を有する発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層に請求項1〜5のいずれか一項記載の発光素子用材料を含む発光素子。
【請求項7】
前記有機層が、一対の電極間に挟持され、該電極間に電圧を印加することにより発光する有機電界発光素子である、請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記有機層が、塗布法により形成された層である、請求項6又は7に記載の発光素子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項記載の発光素子を有する照明装置。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか一項記載の発光素子を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−33892(P2012−33892A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133491(P2011−133491)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】