説明

発光素子

【課題】 光取り出し効率を向上した発光素子を提供する。
【解決手段】 本発明の発光素子は、基板2と、基板2の第1主面2Aに、平面視して、格子状に引いた仮想直線5同士の交点位置に重なるように配置された複数の第1突起3a、および第1突起3aと重ならない位置に配置された、基板2と異なる材料からなる第2突起3bを有する突起群3と、突起群3を埋めるように基板2の第1主面2A上に設けられた光半導体層4とを有する。このように基板2上に第2突起3bを有していることから、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を用いた発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体層を基板上に積層させる方法が種々提案されている。特に、発光素子や受光素子に用いられる半導体層を基板上に結晶成長させる場合には、半導体層の結晶品質を向上させる必要があった。
【0003】
そこで、基板上に光半導体層を結晶成長させる技術として、例えば、基板上に凹凸を設けることによって、基板上に成長させる光半導体層の結晶性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された半導体層を成長させる技術を用いて製造された発光素子は、規則的に凹凸が基板に設けられているのみでは、光半導体層内で発光した光が基板側に取り出されにくいことがあった。その結果、発光素子の光取り出し効率を向上させることが困難だった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光取り出し効率を向上させることが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる発光素子は、基板と、該基板の主面に、平面視して、格子状に引いた仮想直線同士の交点位置に重なるように配置された複数の第1突起、および該第1突起と重ならない位置に配置された、前記基板と異なる材料からなる第2突起を有する突起群と、該突起群を埋めるように前記基板の前記主面上に設けられた光半導体層とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる発光素子は、上述のように、基板上に第2突起を有していることから、光半導体層で発光した光が第2突起からも取り出されやすくなり、発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子を示す斜視図である。
【図2】図1の発光素子を切断した断面図であり、A−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図3】図1の発光素子における基板を平面視した平面図であり、点線は基板上に引かれる仮想直線を示している。
【図4】本発明の一実施形態の変形例にかかる発光素子における基板を平面視した平面図であり、(a)は基板上に引かれる仮想直線を示し、(b)は直線状領域を示している。
【図5】本発明の一実施形態の変形例にかかる発光素子を示しており、(a)はかかる発光素子における基板を平面視した平面図であり、(b)は発光素子においてA−A’線で切断した断面の断面図である。
【図6】従来例の発光素子を示しており、(a)はかかる発光素子における基板を平面視した平面図であり、(b)は発光素子においてB−B’線で切断した断面の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図8】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の変形例の一工程を示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の変形例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。
【0011】
なお、本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【0012】
<発光素子>
図1は本発明の実施の形態の一例の発光素子1の斜視図を示し、図2は図1に示す発光素子1の断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。発光素子1は、図1および図2に示すように、基板2、突起群3および光半導体層4から構成されている。
【0013】
基板2は、光半導体層4を成長させることが可能な材料から構成されている。基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛または二ホウ化ジルコニウムなどを用いることができる。基板2の厚みとしては、例えば1μm以上1500μm以下程度である。ここで基板2の厚みは、基板2の第1主面2Aから第2主面2Bまでの厚みを指す。
【0014】
本例においては、光半導体層4で発光した光が基板2側から取り出されることから、光半導体層4で発光した光の波長における基板2の透過率を考慮して、基板2に用いる材料を選択すればよい。また本例において、基板2は、光半導体層4で発光した光を透過しやすい透光性の材料であるサファイアで形成されている。基板2としてサファイアを用いた場合には、結晶を成長させる結晶成長面として、例えばA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0015】
基板2は、第1主面2Aに突起群3を有している。突起群3は、第1突起3aおよび第2突起3bを有している。なお、基板2の第1主面2Aは、基板2の突起群3が設けられ
ていない主面を含む仮想平面を指す。
【0016】
第1突起3aは、基板2の第1主面2A上に複数設けられている。第1突起3aは、基板2の第1主面2Aから頂部までの高さが、例えば0.2μm以上5μm以下に設定されて
いる。第1突起3aの幅は、例えば0.5μm以上50μm以下に設定されている。複数の第
1突起3a同士は、例えば0.5μm以上20μm以下の間隔を開けて配置されている。
【0017】
第1突起3aは、例えば四角柱状もしくは六角柱状などの多角柱状、四角錘状もしくは六角錘状などの多角錘状または円柱状の形状に設定することができる。第1突起3aとして多角錘状の形状を用いた場合には、第1突起3aの側面が基板2の第1主面2Aに対して傾斜することになり、光半導体層4で発光した光を第1突起3aの側面で反射されにくくすることができる。本例においては、第1突起3aは六角柱状のものが設けられている。
【0018】
第1突起3aは、図3(a)に示すように、格子状に引いた仮想直線5同士の交点位置に重なるように複数配置されている。格子状に引いた仮想直線5は、x軸方向およびy軸方向にそれぞれ等間隔となっており、その間隔は例えばそれぞれ1μm以上25μm以下となるように設定されている。具体的には、x軸方向に平行な仮想直線5同士の間隔h1、およびy軸方向に平行な仮想直線5同士の間隔h2が、それぞれで等間隔となるように設定されている。このように引かれた仮想直線5で構成される格子によって囲まれる四角形状の領域Rhは、例えば、正方形状、長方形状、台形状、平行四辺形状またはひし形状となるように設定することができる。
【0019】
一方、格子状に引いた仮想直線5は、x軸方向に平行な仮想直線5同士の間隔h1およびy軸方向に平行な仮想直線5同士の間隔h2が互いに異なるように設定されていてもよい。具体的には、x軸方向に平行な仮想直線5が、y軸の一方向に向かうにつれて間隔h1が徐々に小さくなるように設定されていたり、あるいは徐々に大きくなるように設定されていたりしてもよい。このように仮想直線5の間隔h1および間隔h2が互いに異なるように設定することにより、格子によって囲まれる四角形状の領域Rhの形状を容易に変えることができる。
【0020】
第1突起3aは、格子状に引いた仮想直線5同士の交点位置の全てに配置されていてもよく、交点位置の一部に配置されていてもよい。本例では、第1突起3aが六角柱状となるように設けられていることから、それぞれの第1突起3aの六角柱の側面同士が向かい合うように交点位置の一部に配置されている。なお、第1突起3aは、平面視して、仮想直線5同士の交点位置と重なるように配置されていればよい。
【0021】
第1突起3aの材料は、例えば基板2と同じ材料またはチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブもしくはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料を用いることができる。具体的な材料としては、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタンまたは窒化マグネシウムなどを用いることができる。
【0022】
第2突起3bは、図3に示すように、基板2を平面視して、第1突起3aと重ならない位置であって基板2の第1主面2A上に配置されている。すなわち、第2突起3bは、基板2の第1主面2Aにおいて、第1突起3aと異なる位置に配置されている。
【0023】
第2突起3bは、基板2と異なる材料であればよく、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム
、スカンジウム、ネオジウム、ニオブもしくはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料を用いることができる。具体的な材料としては、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタンまたは窒化マグネシウムなどを用いることができる。
【0024】
第2突起3bは、多角形柱状もしくは円柱状などの柱状、多角錘状もしくは円錘状などの錘状、または多角錘台状もしくは円錐台状などの錘台状などを用いることができる。第2突起3bは、第1突起3aの底面よりも小さい底面となるように形成してもよい。
【0025】
基板2上には、図2に示すように、突起群3を埋めるように光半導体層4が設けられている。光半導体層4は、第1半導体層4a、発光層4bおよび第2半導体層4cを順次積層することにより構成されている。光半導体層4は、全体の厚みを例えば0.1μm以上10
μm以下として形成することができる。
【0026】
III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウム
またはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。
【0027】
第1半導体層4aは、基板2上に設けられている。第1半導体層4aは、厚みが1μm以上10μm以下に設定されている。
【0028】
発光層4bは、第1半導体層4a上に設けられている。発光層4bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層からなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムとの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層4bは、例えば350n
m以上600nm以下の波長の光を発光することができる。
【0029】
第2半導体層4cは、発光層4b上に設けられている。第2半導体層4cは、電子または正孔のどちらかを多数キャリアとすることにより、第1半導体層4aとは逆導電型を示すように設定されている。半導体層に導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムまたはシリコンを不純物として添加する方法を用いることができる。
【0030】
第1電極層6は第1半導体層4a上に、第2電極層7は第2半導体層4c上に、それぞれ設けられている。第1電極層6および第2電極層7によって、光半導体層4に電圧が印加される。
【0031】
第1電極層6および第2電極層7の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属、または酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、もしくは銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。
【0032】
第1電極層6および第2電極層7は、例えばスパッタリング法または蒸着法などの積層方法などを用いて形成することができる。また、第1電極層6および第2電極層7として、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数回積層して設けてもよい。
【0033】
本例においては、光半導体層4で発光した光を基板2側から取り出すことから、第2電極層7として反射性電極材料を用いてもよい。第2電極層7として反射性電極材料を用い
た場合には、光半導体層4で発光した光を基板2側に反射しやすくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【0034】
以上のようにして、本例の発光素子1が構成される。すなわち、本例の発光素子1は、基板2、第1突起3a、第2突起3bおよび光半導体層4によって構成されている。
【0035】
一方、図6に示すように、規則的に格子状に第1突起を配置したのみの基板からなる発光素子の場合は、第1突起が規則的に配置されていることから、光半導体層で発光した光が、基板との間で反射を繰り返して基板に対して平面方向に進んだ際に、第1突起が存在していない経路を通ると、基板側に取り出されにくく、発光素子の光取り出し効率を向上することが困難であった。なお、図6(a)は基板を平面視した平面図、図6(b)は発光素子を図6(a)のB−B’線で厚み方向に切断した断面図をそれぞれ示している。
【0036】
本例の発光素子1は、図3に示すように、基板2の第1主面2Aに、第1突起3aと第2突起3bとを有しており、第1突起3aが格子状に引いた仮想直線5同士の交点位置と重なるとともに、第2突起3bが第1突起3aと重ならない位置に配置されている。
【0037】
本例の発光素子1においては、このように第2突起3bが第1突起3aと重ならない位置に配置されていることから、光半導体層4で発光した光が、基板2と光半導体層4との間で反射を繰り返しながら基板に対して平面方向に進んだ際に、第2突起2bに入射しやすくなる。そして、第2突起3bに入射した光は、第2突起3bから基板2に入射して、基板2側に取り出される。その結果、基板2に入射する、光半導体層4で発光した光が多くなるため、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0038】
(発光素子の各種変形例)
以下、本発明の発光素子1の変形例について説明をする。なお、上述の発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
(変形例1)
第2突起3bは、図4に示すように、仮想直線5と重ならない位置に配置されている。ここで、図4は基板2を平面視したときの平面図を示している。なお、図4(a)においては、基板2上に引かれる格子状の仮想直線5を示している。このように第2突起3bが仮想直線5と重ならない位置に配置されると、第1突起3aが存在しない2つの直線状領域8同士が交差する位置に配置されることとなる。ここで、図4(b)は、基板2上の直線上領域8の例を示している。第2突起3bは、底面が格子によって囲まれる四角形の領域よりも小さくなるように設定することができ、例えば0.5μm以上20μm以下とな
るように設定することができる。
【0040】
これにより、光半導体層4で発光した光のうち、直線状領域8で基板2と光半導体層4との間で反射を繰り返している光を、第2突起3bによって基板2側に入射しやすくすることができる。その結果、光半導体層4と基板2との間で反射を繰り返して基板2側に取り出されなかった光が基板2側に取り出されやすくなり、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0041】
(変形例2)
第1突起3aは、図5に示すように、上面3Aを有するとともに、基板2と同じ材料から構成されている。ここで、図5(a)は、基板2を平面視したときの平面図を示しており、図5(b)は発光素子1を図5(a)のA−A’線で切断したときの断面図を示している。第1突起3aは、図5(b)に示すように、基板2と一体的に設けられている。このようにして第1突起3aが設けられている場合には、光半導体層4を第1突起3aの上
面3Aから結晶成長させることができる。第1突起3aの上面3Aは、面積が例えば0.5
μm以上10μm以下となるように設定されている。
【0042】
第1突起3a上に、光半導体層4を結晶成長させる方法としては、光半導体層4の厚み方向と垂直な方向である横方向に結晶成長させる横方向成長法などを用いることができる。このように第1突起3aに光半導体層4を横方向成長により結晶成長させた場合には、第1突起3aの上面3Aから厚み方向に延びる転位を減らすことができるため、光半導体層4の結晶性を向上させることができる。
【0043】
(変形例3)
第2突起3bは、光半導体層4の屈折率よりも小さい屈折率を持つ材料から構成されている。本例では、基板2としてサファイア(屈折率 1.65)を、および光半導体層4として窒化ガリウム系化合物(屈折率 約2.4)を用いることから、第2突起3bとして、屈
折率が例えば1.75以上2.30以下の材料を用いることができる。
【0044】
このような第2突起3bの材料としては、例えば、酸化マグネシウム(屈折率 約1.68以上1.80以下)、二酸化ジルコニウム(屈折率 約1.78以上2.00以下)、フッ化カルシウム(屈折率 約1.50以上2.10以下)、酸化ハフニウム(屈折率 約1.90以上2.10以下)、酸化イットリウム(屈折率 約1.80以上1.90以下)などを用いることができる
第2突起3bが、基板2と光半導体層4との間の屈折率を持つ材料によって構成されていることから、第2突起3bと光半導体層4との屈折率差を基板2と光半導体層4との屈折率差よりも小さくすることができる。そのため、光半導体層4と第2突起3bとの界面における臨界角を、光半導体層4と基板2との界面における臨界角よりも大きくすることができ、光半導体層4で発光した光を、光半導体層4と第2突起3bとの界面で反射されにくくすることができる。
【0045】
さらに、第2突起3bとして、多角錘状もしくは円錐状などの錘状、または多角錘台状もしくは円錐台状などの錘台状のものを用いることにより、第2突起3bの側面を基板2の第1主面2Aに対して傾斜させることができる。これにより、光半導体層4で発光した光を、第2突起3bに入射させやすくすることができ、発光素子1の光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0046】
<発光素子の製造方法>
図7−図14は、それぞれ発光素子1の製造工程の一部を示す断面図であり、いずれも図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。上述の発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
(基板を加工する工程)
基板2の第1主面2Aに、第1突起3aを形成する方法を、図7を参照しつつ説明する。なお、基板2としては、半導体を結晶成長させることが可能な材料を用いればよい。基板2は、例えばサファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化シリコン、窒化インジウムまたはシリコンカーバイドなどを用いることができる。本例において、基板2としてサファイアを用いた場合について説明する。
【0048】
基板2の上面2A’としては、例えば基板2の結晶面が揃っているものを用いることができる。基板2がサファイアの場合であれば、基板2の結晶面としては、例えばサファイアのA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0049】
図7に示すように、基板2の上面2A’上に、基板2の上面2A’の一部が露出する露出領域9と上面2A’の他の部分を被覆する被覆領域10とを有するマスクパターン11を形
成する。マスクパターン11の被覆領域10は、平面視形状を、例えば基板2の第1主面2A上に形成する第1突起3aの底面形状に設定すればよい。そのため、被覆領域10の幅は、第1突起3aの底面の寸法に設定すればよく、例えば0.5μm以上50μm以下に設定され
る。
【0050】
マスクパターン11としては、後に容易に除去することができる材料を選択することができ、例えば酸化シリコンなどの酸化物またはチタンなどの金属を用いることができる。マスクパターン11の膜厚は、エッチングによって基板2の一部を除去する場合であれば、基板2のエッチングレートとマスクパターン11のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができ、例えば200nm以上3500nm以下に設定することができる。
【0051】
マスクパターン11は、マスク材料をスパッタリング法または蒸着法などの真空積層法を用いることによって基板2上に積層膜を積層し、露出領域9および被覆領域10をパターニングすることによって形成することができる。この際、基板2としてサファイアを用いてドライエッチングを行なう場合であれば、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして用いることができるが、この場合には、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いてもよい。
【0052】
次に、図8に示すように、基板2の上面2A’の一部を露出させた露出領域9からエッチング法などで、基板2の一部を厚み方向へ除去する。基板2の一部を除去する方法としては、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどのエッチング法を用いることができる。ここで、基板2の上面2A’に、結晶が揃った平坦な結晶面を用いた場合は、第1第1突起3aの上面3Aがマスクパターン11の被覆領域10で覆われているものになることから、基板2の一部を除去する工程の際に、マスクパターン11の被覆領域10で覆われた基板2の上面2A’(第1突起3aの上面3A)の平坦性を維持することができる。
【0053】
基板2としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングにより基板2の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行なうことによって、生産性を向上させることができる。その後、マスクパターン11を基板2から除去することによって、図9に示すように、基板2の第1主面2Aに複数の第1突起3aを基板2と一体的に設けることができる。
【0054】
本例において、上面2A’が平坦な基板2を用いた場合について説明したが、上面2A’の平坦性の低い基板2を用いてもよい。この場合、第1突起3aを基板2に設けてマスクパターン11を除去した後、第1突起3aの上面3Aを研磨する工程を設けてもよい。このようにマスクパターン11を除去した後に第1突起3aの上面3Aを研磨することにより、第1突起3aの上面3Aに残留した、例えばマスクパターン11の一部または剥離剤などの付着物を除去するとともに、この上面3Aを平坦化することができる。
【0055】
さらに、マスクパターン11を除去する工程に代えて、マスクパターン11の上方から第1突起3aの上面3Aまで研磨する工程としてもよい。この場合には、マスクパターン11を除去する工程と第1突起3aの上面3Aを平坦化する工程とを続けて行なうことができ、生産性を向上することができる。
【0056】
(第2突起を形成する工程)
次に、基板2の第1主面2Aに第2突起3bを形成する。第2突起3bは、基板2と異なる材料であればよく、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブもしくはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む無機材料を用いることができる。具体的な材料としては、酸化ジルコニウム、
酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタンまたは窒化マグネシウムなどを用いることができる。
【0057】
このように第2突起3bを無機材料の中でも非晶質の材料で形成することにより、第1突起3aから光半導体層4を成長させつつ、第2突起3bから光半導体層4が成長するのを抑制することができる。
【0058】
第2突起3bを形成するには、まず第2突起3bとなる材料を堆積させた堆積層12を基板2上に形成する。堆積層12は、例えばスパッタリング法、蒸着法またはスピンコート法などを用いて堆積した後、パターニングすることによって形成される。堆積層12の厚みは、第2突起3bとなる高さに設定すればよく、例えば0.02μm以上5μm以下となるように設定する。
【0059】
具体的には、基板2の第1主面2Aに、図10に示すように、堆積層12となる材料をスパッタリング法により堆積させる。その後、堆積膜12を、図11に示すように、一般的なエッチング法またはフォトリソグラフィ法を用いて、第2突起3bを形成する。
【0060】
本例において、第2突起3bは、図2に示すように、第1突起3a同士の間に位置するように設けられている。すなわち、第2突起3bは、平面視して、格子状に引かれた仮想直線5同士の交点位置に配置された第1突起3aと重ならないように設けられる。第2突起3bは、基板2を平面視して、第1突起3aが設けられていない第1主面2Aに対して、面積の占有割合が例えば10%以上90%以下となるように配置されている。
【0061】
(光半導体層を成長させる工程)
次に、図12に示すように、基板2上に光半導体層4を成長させる。なお、光半導体層4は、図12に示すように、その中に第1突起3aを埋めるように基板2上に結晶成長されている。
【0062】
光半導体層4としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。本例において
は、光半導体層4は窒化ガリウムが用いられている。基板2の上面2Aに光半導体層4を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル法、有機金属エピタキシャル法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0063】
光半導体層4を成長させる方法としては、例えば、光半導体層4を、第1主面2に対して垂直である垂直方向よりも第1主面2Aと平行な平面方向に成長しやすくした横方向成長を用いることができる。具体的には、光半導体層4のそれぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整することにより、光半導体層4を横方向成長させることができる。
【0064】
基板2上に光半導体層4として窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるには、窒化ガリウムの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。成長温度としては、例えば350℃以上1500℃以下に設定することができる。基板2上に窒化ガリウム
からなる第1半導体層3aの低温バッファ層を設ける場合には、成長温度として例えば350℃以上800℃以下に設定することができる。
【0065】
このようにして光半導体層4を基板2上に成長させることにより、発光素子1を製造することができる。
【0066】
(発光素子の製造方法の変形例)
光半導体層4を結晶成長させる工程の前に、図13および図14に示すように、第1突起3
aの上面3Aに、上面4Aに対して傾斜した結晶側面13aを有する結晶体13を成長させる工程を有してもよい。
【0067】
結晶体13は、光半導体層4として窒化ガリウムを用いた場合であれば、第1突起3aの上面3Aに対して傾斜した結晶側面13aを有する結晶体を形成する方法としては、例えば20kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させれば
よい。このような条件で結晶成長させることにより、図13に示すように、基板2の第1突起3aの上面3Aに結晶体13を成長させることができる。結晶体13の結晶側面13aは、サファイアからなる基板2の第1突起3aの上面3Aがc面である場合に、例えば{1−101}面とすることができる。
【0068】
その後、図14に示すように、結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させる。結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させることにより、それぞれの第1突起3aの上面3Aから延びる転位同士を結合させて、光半導体層4の厚み方向に延びる転位の数を少なくすることができる。
【0069】
このように光半導体層4の厚み方向に延びる転位の数を少なくすることにより、光半導体層4の結晶品質を向上させることができ、光半導体層4の発光効率を向上させることができる。また、光半導体層4の第1半導体層4aにおいて、転位を結合させた場合には、発光層4bに延在する転位を少なくすることができるため、発光層4bで発光する領域を広げることができる。
【0070】
さらに、結晶側面13a形成時の温度以上に設定した高温状態および結晶側面13a形成時の圧力以下に設定した低圧力状態にして結晶成長させることにより、光半導体層4を横方向成長させることができる。
【0071】
このようにして結晶体13を成長させて光半導体層4を成長させることにより、発光素子1の発光効率を向上させることができ、発光素子1から取り出される光を多くすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 発光素子
2 基板
2A 第1主面
2B 第2主面
2’ 上面
3 突起群
3a 第1突起
3A 上面
3b 第2突起
4 光半導体層
4a 第1半導体層
4b 発光層
4c 第2半導体層
5 仮想直線
6 第1電極
7 第2電極
8 直線状領域
9 露出領域
10 被覆領域
11 マスクパターン
12 堆積層
13 結晶体
13a 結晶側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板の主面に、平面視して、格子状に引いた仮想直線同士の交点位置に重なるように配置された複数の第1突起、および該第1突起と重ならない位置に配置された、前記基板と異なる材料からなる第2突起を有する突起群と、
該突起群を埋めるように前記基板の前記主面上に設けられた光半導体層と
を有する発光素子。
【請求項2】
前記第2突起は、前記仮想直線と重ならない位置に配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1突起は、上面を有するとともに、前記基板と同じ材料からなる請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第2突起は、前記光半導体層の屈折率よりも小さい屈折率を持つ請求項1−3のいずれかに記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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