説明

発光装置および光ファイバ

【課題】点光源として利用できる発光装置であって、蛍光体を含む光ファイバ内における発光に寄与しない散乱光の光量を少なくした発光装置および、励起光を所望の波長の光に効率よく変換できる光ファイバを提供する。
【解決手段】発光装置に含まれる光ファイバは、コア領域とクラッド領域との間に発光領域を形成し、クラッド領域の外側に反射膜を形成された構造からなる。光ファイバのコア領域と発光領域との境界における散乱光は、コア領域とクラッド領域との境界、およびクラッド領域と反射膜との境界によって反射され、再び発光領域に照射される。したがって、該散乱光を発光領域の蛍光体の励起光として効率よく利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および光ファイバに関し、さらに詳しくは、点光源として利用できる発光装置と、励起光を所望の波長の光に効率よく変換できる光ファイバとに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体に励起光を照射して得られる発光を利用した照明装置は、優れた蛍光体や励起光源の開発によって、蛍光灯やハロゲンランプやHID(High intensity discharge)ランプといった照明にとってかわる可能性がでてきており注目を浴びている。
【0003】
また、そのような照明装置を応用し、光ファイバを用いることで、光源部分と照明光を発する蛍光体を含有した波長変換部材とを分離した点光源も開発されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−205195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光体に照射された励起光は、蛍光体を励起する場合と蛍光体表面で散乱する場合とがある。また、蛍光体に到達することなく光ファイバの側面から漏れ出す励起光も存在する。発光装置の発光効率を向上させるうえで、発光に寄与しない散乱光や励起光の光量をなるべく少なくすることが望まれる。
【0005】
光ファイバを用いた発光装置を点光源として使用する場合においても、発光に寄与しない上述した散乱光の光量をなるべく少なくすることが望ましい。特許文献1の点光源では、励起光源から射出された励起光を被覆部材に混合されている蛍光物質を含む波長変換部材に伝送して励起光を効率よく波長変換している。しかし、波長変換部材内で散乱して蛍光体を励起せず発光に寄与しない励起光を少なくすることができたならば、さらに発光効率を上げることができる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、点光源として利用できる発光装置であって、蛍光体を含む光ファイバ内における発光に寄与しない散乱光の光量を少なくした発光装置および、励起光を所望の波長の光に効率よく変換できる光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、励起光を射出する励起光源と光ファイバとを含む発光装置であって、光ファイバは、コア領域の外側にクラッド領域が形成され、クラッド領域の外側に反射膜が形成されるとともに、蛍光体を含む発光領域がコア領域とクラッド領域の間に少なくとも部分的にコア領域に接して形成され、コア領域はクラッド領域より屈折率が大きい発光装置に関する。
【0008】
また、本発明の発光装置において、反射膜に銀および/もしくは銀合金を含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明の発光装置において、コア領域およびクラッド領域を構成する材料が、樹脂であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の発光装置において、コア領域を構成する材料に、ポリメチルメタクリレートを含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の発光装置において、クラッド領域を構成する材料に、フッ素系樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の発光装置において、発光領域が、波長380〜480nmの励起光を吸収することによって波長450〜700nmの光を放出する希土類付活酸化物、希土類付活窒化物、半導体ナノ粒子から選択される1以上の蛍光体を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、コア領域の外側にクラッド領域が形成され、クラッド領域の外側に反射膜が形成されるとともに、蛍光体を含む発光領域がコア領域とクラッド領域の間に少なくとも部分的に接して形成され、蛍光体は、波長380〜480nmの励起光を吸収することによって、波長450〜700nmの光を放出し、コア領域はクラッド領域より屈折率が大きい光ファイバに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために創出されたもので、光ファイバのコア領域と発光領域との境界における散乱光は、コア領域とクラッド領域との境界、およびクラッド領域と反射膜との境界によって反射され、再び発光領域に照射されることが可能となる。すると、該散乱光を発光領域の蛍光体の励起光として効率よく利用することができる。したがって、本発明の発光装置は、蛍光体を励起せず発光に寄与しない散乱光の光量を少なくすることができ、励起光源からの励起光を効率的に活用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本願の図面において、同一の符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、図面における長さ、大きさ、幅などの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法を表してはいない。
【0016】
本発明において、「屈折率」は、例えばファイバ状に加工する前のコアおよびクラッド原料について、臨界角法を用いて算出し、具体的にはアッベ屈折計(アタゴ社製)を用いて測定することができる。
【0017】
また、蛍光体における発光のピーク波長、発光スペクトルおよび吸収する励起光の測定については、該蛍光体に対して、積分球を用いて全光束発光スペクトル測定および光吸収スペクトル測定を行なうことで算出することができる(参考文献:照明学会誌 第83巻 第2号 平成11年 p87−93、NBS標準蛍光体の量子効率の測定、大久保和明 他著)。また、蛍光体の光の波長および発光装置の励起光の波長の測定には、例えば、分光光度計(堀場製作所製)を用いることができる。
【0018】
〔発光装置〕
図1は、本発明の発光装置の一実施形態の概略を示した側面図である。図1に示すように、本発明の発光装置10は、光ファイバ1と励起光を射出する励起光源6とを備えて構成される。励起光源6から射出される励起光は、光ファイバ1の一端面から光ファイバ1の内部に入射する。そして、励起光は、光ファイバ1の内部で波長を変換されて、入射した側と反対方向に光経路8に示すように伝播し、光ファイバ1の他一端面(以下、終端ともいう)から射出する。光ファイバ1の内部は蛍光体を含み、励起光の波長を変換し、用途にあった波長の光を発することができる。励起光源6と光ファイバ1との間にレンズ7を備えて、レンズ7で励起光を集光し、細い光にすることで効率よく励起光を光ファイバ6に入射させることが好ましい。本発明の発光装置10は、励起光源6から射出される光の波長が設定され、該蛍光体を適宜数種類混合されることで用途にあった波長の光を発する点光源になりうる。したがって発光装置10は、例えば、数種類の蛍光体を適宜組み合わせて、蛍光体が発する蛍光の色を混合することで自然光に近い点光源ともなり得る。また、発光装置10において、光ファイバ1の内部に入射した励起光は、ほとんど光ファイバ1の端面以外の側面から漏れ出すことがないため、該励起光を効率よく利用することが可能である。
【0019】
また、発光装置10の励起光源6は、発光ダイオード、半導体レーザ、管球光源などを用いることができる。しかし、細い光を放射可能なことから、半導体レーザを用いることが好ましい。半導体レーザとしては、例えば、窒化ガリウム系化合物半導体を含むものを挙げることができる。窒化ガリウム系化合物とは、GaN、AlGaN、InGaNまたはInAlGaNなどを挙げることができる。励起光源6から射出する励起光の波長は380〜480nmが好ましい。該波長が、480nmよりも大きい場合には励起光のエネルギが小さいため蛍光体を励起することができない傾向にあり、380nmよりも小さい場合には光ファイバ1を劣化させ、光ファイバ1の信頼性が低下するという問題が生ずるためである。
【0020】
〔光ファイバの構成〕
図2は、図1のII−II線に沿った光ファイバ1の詳細な断面図である。また、図3は、図2のIII−III線に沿った光ファイバ1の断面図である。図2における光ファイバ1は、図1における光ファイバ1より詳細に構造を記載している。まず、図2に基づいて、本発明の好ましい光ファイバ1の構造について説明する。光ファイバ1は、コア領域2と、コア領域2の外側に形成されたクラッド領域4と、コア領域2とクラッド領域4との間にコア領域2に接するかたちで形成された発光領域3と、クラッド領域4の外側に形成された反射膜5とからなる。図2に示されるように、コア領域2の断面は円形であることが好ましい。そして、クラッド領域4の外周は、コア領域2の外周と同心円状に形成されていることが好ましい。クラッド領域4の屈折率はコア領域2の屈折率よりも小さい。また、反射膜5はクラッド領域4より反射率が高い。コア領域2のコア径は、例えば1mmであり、クラッド領域4のクラッド径は、例えば2mmである。反射膜5は、例えば、1μm〜0.1mmの厚さを有することが好ましい。光ファイバ1を保護するため、反射膜5の外側に樹脂などの被膜を設けてもよい。
【0021】
ここで、発光領域3とは、励起光の波長を変換し所望の波長の光を放出することができる領域のことをいい、発光領域3には蛍光体を含む。発光領域3は、透明性の高い樹脂などからなる支持体に、蛍光体を封入して形成されたものが好ましい。支持体に含まれる蛍光体の分量は、励起光の波長と光ファイバ1から射出する所望の光の波長とに合わせて設定することができる。また、青色光を発光する蛍光体、黄色光を発光する蛍光体、および赤色光を発光する蛍光体などを適宜、発光領域3中に混合して分散することによって、光ファイバの終端から例えば白色光を発することも可能である。
【0022】
本発明において、発光領域3は、コア領域2と少なくとも部分的に接して形成される。例えば図2に示すように、発光領域3は、コア領域2を覆うように形成される。発光領域3は、コア領域2を全て覆うように形成されてもよいが、図2に示すように、コア領域2を一部覆うように形成されることが好ましい。励起光は伝播しながら発光領域3に一部吸収されるため、発光領域3がコア領域2を全て覆うように形成されると、伝播方向に向かうにしたがって徐々に励起光量が弱くなる。すると、必然的に該励起光量を吸収して発光する発光量も弱くなるためである。また、励起光と光ファイバ1の発光領域3との間に遠い距離を有したとしても、コア領域2を一部覆うように形成することで、発光領域3に吸収される光量を調整できる。これにより光ファイバ1が伝送する光の強度の低下を最小限に抑えることができるためである。発光領域3の形態および形成部位は、励起光と光ファイバ1が射出する光の波長と発光量との関係を鑑みて決定する。
【0023】
次に図3に基づいて、さらに光ファイバ1の側面からみた断面について説明する。図3に示すように、発光領域3は、コア領域2の長手方向に対して少なくともコア領域2の一部に接するように形成されていればよい。コア領域2とクラッド領域4との間に発光領域3が形成されている部分と形成されていない部分とを適宜設けることで、伝播方向に対する光の散乱状態(発光強度)を制御することができる。発光領域3に含まれる蛍光体の種類や大きさによって、励起光が散乱する量や方向が異なるため、伝播方向に対する光の散乱状態(発光強度)を制御できることは必要である。
【0024】
図4は、本発明における光ファイバの別の一実施形態の斜視図である。光ファイバ21は、長手方向に対して、芯状のコア領域22が鞘状の発光領域23で覆われた領域と、芯状のコア領域22が発光領域23に覆われず直接クラッド領域24に覆われている領域とがある。また、芯状のコア領域22が鞘状の発光領域23で覆われた領域は、図4に示すように形成された箇所によって大きさが異なってもよいし、コア領域22の長手方向に対して、等間隔に等しい大きさの鞘状の発光領域23が形成されても良い。また、図4において図示はしないが、発光領域23は反射膜25と接する部分を有しても良い。
【0025】
図5は、本発明における光ファイバの別の一実施形態の斜視図である。光ファイバ31のコア領域32は楕円球状の発光領域33と接している。このとき、発光領域33は、コア領域32に均等の間隔で形成されてもよいし、無作為の間隔で形成されてもよい。また、楕円球状の発光領域33の大きさは統一される必要はない。その他、発光領域がコア領域にスパイラル形状で巻きついた形態でも良い。つまり、本発明の光ファイバにおいて、発光領域の形成部位は光ファイバから射出する光の所望の波長、励起光源から光ファイバ内部の発光領域の蛍光体への距離、光ファイバが射出する光の波長などに応じて決定される。
【0026】
なお、上述した図に示してはいないが、コア領域と発光領域との間に発光領域からの発光を妨げない程度の薄い層を挟んでも良い。該薄い膜を挟むことによって屈折率を変化させ、コア領域22から発光領域23へ入射する光の方向を制御することができるなどの効果がある。
【0027】
また、本発明の光ファイバは、励起光および蛍光を低損失で伝送するために、コア領域22およびクラッド領域24が共に波長380〜700nm、更に好ましくは400〜670nmの光を透過することが好ましい。該光ファイバが透過する光の波長380nm未満であれば、終端から射出される該光が人間の目に悪影響を与え、該光ファイバが透過する光の波長700nmを越える場合であれば、例えば光ファイバに熱を保持させる場合があるため、光ファイバの性質を劣化させ、光ファイバの信頼性が低下する虞があるためである。
【0028】
〔光ファイバ内の光の進路〕
図6は、本発明の光ファイバにおける光伝播の様子を模式的に示した断面図である。以下、図6を用いて本発明における光ファイバ41内の光の進路について具体的に説明する。
【0029】
コア領域42に入射した励起光λ1は、コア領域42と発光領域43との境界の点Aで、発光領域43中の蛍光体を励起する光と発光領域43中の蛍光体を励起せずに散乱する光とに分かれる。したがって、点Aからは励起された蛍光体からの発光による蛍光λ2と蛍光体を励起せずに散乱した散乱光λ3とが発せられる。蛍光λ2はコア領域42とクラッド領域44との境界の点Fに向かって進む。蛍光λ2は、点Fにおけるクラッド領域44への入射角が臨界角以上であれば点Fで全反射し、その後、光ファイバ41内で反射を適宜繰り返して光ファイバ41の終端から射出する。また散乱光λ3はコア領域42とクラッド領域44との境界の点Bに向かって進む。点Bにおいて、散乱光λ3のクラッド領域44への入射角が臨界角未満であれば、点Bで屈折してクラッド領域44内を直進する光λ3’と、点Bで反射する散乱光λ3とに分かれる。クラッド領域44内を直進する光λ3’は、クラッド領域44と反射膜45との境界の点Dで反射し、クラッド領域44とコア領域42との境界の点Eに向かって進み、再びコア領域42に戻る。点Bで反射する散乱光λ3は、コア領域42と発光領域43との境界の点Cで、励起された蛍光体からの発光による蛍光λ4と蛍光体を励起せずに散乱した散乱光λ5とに分かれる。
【0030】
上述したように、コア領域42とクラッド領域44との境界の点Bにおいて、散乱光λ3の一部の光λ3’は屈折しクラッド領域44の中を直進する。つまり、散乱光λ3の一部である光λ3’は、コア領域42の中に留まらず、クラッド領域44に漏れてしまう。本発明によると、クラッド領域44に漏れた一部の光λ3’を再びコア領域42に戻すため、クラッド領域44と反射膜45との境界の点Dで該一部の光λ3’を反射させることができる。点Dで反射した光λ3’は、クラッド領域44とコア領域42との境界の点Eにおいて屈折し、コア領域42に戻され、発光領域43の蛍光体の励起に寄与することができる。その結果、励起光を効率よく活用することができる。
【0031】
本発明の光ファイバ41の中では、上述したような光の散乱、屈折、反射および励起された蛍光体からの発光を繰り返す。本発明の光ファイバ41によると、コア領域42を伝送する光の損失を小さく抑えることができ、蛍光体を励起しない光量を少なくすることが可能になる。このように、光ファイバ41は、コア領域42とクラッド領域44との境界およびクラッド領域44と反射膜45との境界において、入射した光が反射されるような構造を実現している。
【0032】
なお、励起光で励起された蛍光体から射出される蛍光も、上述した励起光と同様の散乱、屈折、反射を繰り返すので、励起光の伝播方向と同方向に伝播していく。
【0033】
〔コア領域およびクラッド領域の材料〕
光ファイバを構成するコア領域およびクラッド領域の材料としては、上述したように本発明における励起光・蛍光の両波長領域にわたる380〜700nmの伝送損失が低いという条件が求められる。具体的には、従来用いられているガラス材料および樹脂材料の中から当該条件に見合うものを適宜選択して用いることができる。ただし、本発明においては、該樹脂材料を用いることが好ましい。
【0034】
可視光の伝搬する光ファイバを構成する該ガラス材料としては、具体的に石英ガラスやフッ化物、テルライトなどの多成分ガラスが用いられる。しかし、該ガラス材料は、該樹脂材料と比較して概して可視光の伝送が低損失である反面、加工性に劣り生産コストが高いという欠点を有する。
【0035】
一方、該樹脂材料は、加工性に富み、光ファイバを構成する材料として用いた場合には生産コストを低くできる利点がある。そして、本発明の発光装置は長距離伝送を必要としないため、コア領域およびクラッド領域の材料として該樹脂材料を選択したとしても、該樹脂材料が、該ガラス材料より光ファイバにおける伝送する可視光の損失が高いことは、殆ど問題にならない。なお、本発明において樹脂材料とは、天然樹脂および合成樹脂を含む概念であり、合成樹脂のなかにはプラスチックも含むものとする。
【0036】
コア領域の材料としては、該樹脂材料のなかでもポリメチルメタクリレート(以下、PMMAともいう)を用いることが好ましい。PMMAは、透明性、耐候性および硬度に優れており、加工がしやすく、屈折率の調整が容易であり、可視光の伝送損失が他のプラスチック材料に比べて低いという利点があるためである。屈折率の制御や加工性を改善するために他のプラスチック材料と混合して用いてもよく、混合材料としてはポリカーボネート系ポリマー、フッ素系ポリマー、重水素化ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーンポリマーなどを用いることができる。なお、コア領域の屈折率は、例えば1.48〜1.69に設定することが好ましい。
【0037】
クラッド領域の材料としてコア領域の材料よりも屈折率が小さい材料、例えば、フッ素系樹脂を用いることが好ましい。クラッド領域にフッ素系樹脂を用いることは、PMMAより屈折率が低く可視光の伝送損失も十分低いこと、またコア領域と同じくプラスチック材料であるため親和性が高いという利点があるためである。フッ素系樹脂の具体例としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、トリフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体、(メタ)アクリル酸フッ素化エステルポリマー、ポリメタクリル酸トリフルオロエスエテル、ポリメタクリル酸ヘキサフルオロ2−プロピル、ポリメタクリル酸パープルオロt−ブチル、ポリメタクリル酸パープルオロi−プロピルなどを挙げることができる。なお、クラッド領域の材料として、フッ素系樹脂以外では、例えば、ポリ4−メチルペンテン−1を用いることできる。なお、クラッド領域の屈折率は、例えば1.30〜1.45に設定することが好ましい。
【0038】
〔発光領域の材料〕
発光領域に含まれる蛍光体は、半導体レーザ素子または発光ダイオードなどの励起光源から放射される励起光を吸収して、蛍光を発光することができるものである。
【0039】
上述のように、目視による人体への影響や、プラスチックファイバの劣化を抑止するためには、励起光の波長は380nmより長いことが好ましく、更には400nmより長いことが好ましい。このような励起光波長で効率的に励起される蛍光体として、例えば、(Sr,Ba,Ca)Al24:Eu2+,Y3(Al,Ga)512:Ce3+,Y23:Sm3+などの希土類付活酸化物蛍光体およびCaSiAlN3:Eu2+,CaxSi12-(m+n)Al(m+n)n16-n:Eu2+,Si6-zAlzz8-z:Eu2+,M1-aCeaAl(Si6-zAlz)N10-zz,(Sr,Ba)Si222:Eu2+,Si5AlON3:Eu2+,LaAl(Si5Al)N9O:Ce3+などの希土類付活窒化物蛍光体を用いることが好ましい。なお、本発明の希土類付活窒化物蛍光体は、その結晶構造に酸素Oを有するものをも含む概念である。したがって、一般的に希土類付活酸窒化物蛍光体とも称される蛍光体も、本発明では希土類付活窒化物蛍光体として統一する。また、「希土類付活」とは、蛍光体を構成する母体結晶に対して希土類元素を付活剤として添加したことを示す。
【0040】
また、本発明の蛍光体として、InN,InP,ZnTe,CdSeなどの半導体ナノ粒子蛍光体を用いることもできる。本発明において、半導体ナノ粒子蛍光体とは、半導体からなるナノメートルオーダの粒径を有する蛍光体をいう。上述した希土類付活酸化物蛍光体、希土類付活窒化物蛍光体および半導体ナノ粒子蛍光体は、波長380〜480nmの励起光を吸収することによって、波長450〜700nmの可視光を効率よく放出する。また、発光領域に含まれる蛍光体は、単一の種類であっても、複数の種類を混合したものであってもよい。
【0041】
希土類付活酸化物および希土類付活窒化物蛍光体については、粒径は0.1μm〜10μm程度のものを用いることが好ましい。これよりも粒径が大きいと媒質中で沈殿を生じやすく、樹脂などの支持体への均一な分散が難しくなる傾向にある。また、これよりも粒径が小さいと、表面欠陥が増大して発光効率が低下する傾向にある。
【0042】
半導体ナノ粒子蛍光体については、量子サイズ効果によって粒径が発光波長を決定するため、所望の波長に応じた粒径が適宜選択される。例えば、InPからなる半導体ナノ粒子蛍光体の場合は、ピーク波長が450nmの青色光を呈する該半導体ナノ粒子蛍光体の粒径は1.8nmとなり、ピーク波長が550nmの緑色光を呈する該蛍光体の粒径は2.4nmとなり、ピーク波長が650nmの赤色光を呈する該蛍光体の粒径は3nmとなる。
【0043】
発光領域は、透明性の高い樹脂などからなる支持体に、蛍光体を封入して形成されたものであることが好ましい。発光領域の成型が容易になるためである。透明性の高い樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。また、励起光をコア領域2から入射せしめるために、発光領域3の屈折率はコア領域2と略同じであることが好ましい。支持体と蛍光体との比率は、励起光源から発せられる励起光の大部分を蛍光体で吸収するように発光領域における蛍光体の充填度を調整することが好ましい。
【0044】
〔反射膜の材料〕
反射膜の材料としては、反射率の高い例えば銀や銀合金といったものが適している。銀合金の具体例としては、AgAu、AgPt、AgPd、AgAlあるいはこれらを更に合金化したものなどを挙げることができる。合金比率は、反射率や被覆の際の加工性に鑑みて、適宜調整してよい。
【0045】
なお、本発明の発光装置において、コア領域とクラッド領域と反射膜とは必ずしも単一の材料のみから構成される必要はない。
【0046】
〔発光装置の製造〕
図1に示すような本発明の発光装置は、例えば励起光源6とレンズ7と光ファイバ1とを適宜組み合わせることで製造することができる。
【0047】
図2に示すような光ファイバ1の製造方法は、コア領域2の材料、クラッド領域4の材料および発光領域3の材料を引き伸ばし、ファイバ形状とする一般的な手法を用いることができる。また、反射膜5の形成については、このとき反射膜5の材料を上述した他の材料と一緒に引き伸ばすことで行なっても良いし、後で形成しても良い。
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例において、屈折率の測定には、アッベ屈折計(アタゴ社製)を用い、励起光および蛍光体の波長の測定には、蛍光分光測定装置(堀場製作所製)を用いた。
【0050】
<実施例1>
図1および図2に基づいて本実施例の発光装置について説明する。
【0051】
本実施例において、図1に示すような発光装置10を製造した。発光装置10は、励起光源6からの励起光をレンズ7により集光して光ファイバ1内に入射する構成とした。図2に示すような光ファイバ1は、コア領域2に屈折率1.51のPMMA、クラッド領域4に屈折率1.40のフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、反射膜5に反射率の高いAgを用いた。また、発光領域3として発光中心としてEu2+を付活したSrAl24からなる蛍光体をコア領域2と同じPMMAに封入したものを用いた。該光ファイバ1は、コア領域2の材料、クラッド領域4の材料、発光領域3の材料および反射膜5の材料を引き伸ばし、ファイバ形状とする一般的な手法を用いて作製した。発光領域3はコア領域2の一部と接し覆うように形成された。発光装置10の励起光源6としては、波長405nmの光を発するGaN系レーザを使用した。
【0052】
本実施例の発光装置10において、励起光源6から射出した励起光は光ファイバ1内に入射し、入射した光は蛍光体によって散乱した光と蛍光体によって発光した蛍光とに分けられるが、双方の光が光ファイバ1内の終端に向かって伝播することができた。以上より、発光効率の高い緑色の点光源としての発光装置10を得ることができた。
【0053】
<実施例2>
図1および図2に基づいて別の実施例の発光装置について説明する。
【0054】
本実施例において、図1に示すような発光装置10を製造した。発光装置10は、励起光源6からの励起光をレンズ7により集光して光ファイバ1内に入射する構成とした。図2に示すような光ファイバ1は、コア領域2に屈折率1.51のPMMA、クラッド領域4に屈折率1.39のトリフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体、反射膜5に反射率の高いAgPt合金を用いた。また、発光領域として発光中心としてSm3+を付活したY23からなる蛍光体をコア領域2と同じPMMAに封入したものを用いた。該光ファイバ1は、コア領域2の材料、クラッド領域4の材料、発光領域3の材料および反射膜5の材料を引き伸ばし、ファイバ形状とする一般的な手法を用いて作製した。発光領域3はコア領域2の一部と接し覆うように形成された。発光装置10の励起光源6としては、波長405nmの光を発するGaN系レーザを使用した。
【0055】
本実施例の発光装置10において、励起光源6から射出した励起光は光ファイバ1内に入射し、入射した光は蛍光体によって散乱した光と蛍光体によって発光した蛍光とに分けられるが、双方の光が光ファイバ1内の終端に向かって伝播することができた。以上より、発光効率の高い赤色の点光源としての発光装置10を得ることができた。
【0056】
<実施例3>
本実施例では、光ファイバ1のコア領域2に屈折率1.50のPMMA/ポリカーボネート重合体、クラッド領域4に屈折率1.40の全フッ素化ポリマー、反射膜5にAgPd合金を用いた。また、発光領域として、Eu2+を付活したCaSiAlN3からなる赤色光を呈する希土類付活窒化物蛍光体と、Eu2+を付活したSi5AlON7からなる緑色光を呈する希土類付活窒化物蛍光体と、Ce3+を付活したLaAl(Si5Al)N9Oからなる青色光を呈する希土類付活窒化物蛍光体と、を混合し、コア領域2と同じPMMAに封入したものを用いた。その他は実施例1の場合と同様にして、本実施例の発光装置10を作製した。
【0057】
本実施例の発光装置10において、励起光源6から射出した励起光は光ファイバ1内に入射し、入射した光は蛍光体によって散乱した光と蛍光体によって発光した蛍光とに分けられるが、双方の光が光ファイバ1内の終端に向かって伝播することができた。以上より、発光効率の高い白色の点光源としての発光装置10を得ることができた。
【0058】
<実施例4>
本実施例においては、実施例3における発光領域3に含有させる蛍光体を、Eu2+を付活したCaSiAlN3からなる赤色光を呈する希土類付活窒化物蛍光体、およびEu2+を付活したSi5AlON7からなる緑色光を呈する希土類付活窒化物蛍光体の2種類とし、励起光源6として、波長450nmの光を発するInGaN系発光ダイオードを使用した。発光領域3の蛍光体含有量およびコア領域2に接して形成される面積を実施例3の場合よりも少なくし、光ファイバ1の終端から伝搬した青色光である励起光の一部が射出するようにした。その結果、赤および緑色蛍光体からの発光と青色光である励起光が混合されて、白色の点光源としての発光装置10を得ることができた。
【0059】
本実施例において、励起光源6に発光ダイオードを用いたのは、青色の励起光を白色光を構成する成分としても用いるために、安全性の高い非コヒーレント光としたためであった。なお、励起光源6として、該InGaN系発光ダイオードの代わりに半導体レーザを用いる場合でも、光ファイバ1の終端から射出されるまでに十分散乱されていればコヒーレンシーは十分低下しているため、視認しても安全な白色光成分として用いることができた。
【0060】
<実施例5>
本実施例では、光ファイバ1の発光領域として、ピーク波長が450nmである青色光を呈する、粒径1.8nmのInP半導体ナノ粒子蛍光体と、ピーク波長が550nmである緑色光を呈する、粒径2.4nmのInP半導体ナノ粒子蛍光体と、ピーク波長が650nmである赤色光を呈する、粒径3nmのInP半導体ナノ粒子蛍光体と、を混合し、コア領域2と同じPMMAに封入したものを用いた。その他は実施例1の場合と同様にして、本実施例の発光装置10を作成した。
【0061】
本実施例の発光装置10において、励起光源6から射出した励起光は光ファイバ1内に入射し、入射した光は蛍光体によって散乱した光と蛍光体によって発光した蛍光とに分けられるが、双方の光が光ファイバ1内の終端に向かって伝播することができた。以上より、発光効率の高い白色の点光源としての発光装置10を得ることができた。
【0062】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の発光装置の一実施形態の概略を示した側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った光ファイバ1の詳細な断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った光ファイバ1の断面図である。
【図4】本発明における光ファイバの別の一実施形態の斜視図である。
【図5】本発明における光ファイバの別の一実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の光ファイバにおける光伝播の様子を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1,21,31,41 光ファイバ、2,22,32,42 コア領域、3,23,33,43 発光領域、4,24,34,44 クラッド領域、5,25,35,45 反射膜、6 励起光源、7 レンズ、8 光経路、10 発光装置、λ1 励起光、λ2,λ4 蛍光、λ3,λ5 散乱光、λ3’ 光、A,B,C,D,E,F 点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を射出する励起光源と光ファイバとを含む発光装置であって、
前記光ファイバは、コア領域の外側にクラッド領域が形成され、前記クラッド領域の外側に反射膜が形成されるとともに、
蛍光体を含む発光領域が前記コア領域と前記クラッド領域の間に少なくとも部分的に前記コア領域に接して形成され、前記コア領域は前記クラッド領域より屈折率が大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記反射膜に銀および/もしくは銀合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記コア領域および前記クラッド領域を構成する材料が、樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記コア領域を構成する材料に、ポリメチルメタクリレートを含むことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記クラッド領域を構成する材料に、フッ素系樹脂を含むことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光領域は、波長380〜480nmの前記励起光を吸収することによって波長450〜700nmの光を放出する希土類付活酸化物、希土類付活窒化物および半導体ナノ粒子から選択される1以上の蛍光体を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
コア領域の外側にクラッド領域が形成され、前記クラッド領域の外側に反射膜が形成されるとともに、
蛍光体を含む発光領域が前記コア領域と前記クラッド領域の間に少なくとも部分的に接して形成され、
前記蛍光体は、波長380〜480nmの励起光を吸収することによって、波長450〜700nmの光を放出し、
前記コア領域は前記クラッド領域より屈折率が大きいことを特徴とする光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−293691(P2008−293691A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135538(P2007−135538)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】