説明

発光装置の製造方法および発光装置

【課題】蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填した基体に、振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底部付近に略均一な厚さの層状に配置することで、色度のばらつきを抑えつつ、信頼性の低下を抑止することが可能な発光装置の製造方法および発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置1は、パッケージ3に設けられた凹部31に発光素子2が搭載され、この凹部31に蛍光体51を含有した透光性樹脂材52を充填して樹脂封止部5が形成されている、この透光性樹脂材52を凹部31に充填したときに、パッケージ3の底面311を加熱する。そして、パッケージ3の周囲側面34を冷却する。そうすることで、凹部31内に充填された透光性樹脂材に対流が発生するので、傾斜面Sに付着した蛍光体51を沈降させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部を搭載部とした基体に発光素子が搭載され、凹部に発光素子を封止する蛍光体を含有した透光性樹脂材を硬化させた樹脂封止部が形成された発光装置の製造方法および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を封止する樹脂封止部に蛍光体を含有させた発光装置が知られている。蛍光体は、発光素子からの光により励起されて波長変換された光を発する。外部への光は、発光素子からの光と、蛍光体により波長変換された光とが混色したものとなる。従って、蛍光体を樹脂封止部へ含有させることで、発光素子が発する光とは異なる所望とする光を得ることができる。
【0003】
このような樹脂封止部に蛍光体を含有した発光装置として特許文献1の発光ダイオード素子が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の発光ダイオード素子は、金属板からなる正負一対の電極と、反射カップ形状を有するパッケージと、電極に電気的に接続されたLEDチップ(発光素子)と、このLEDチップを封止する透光性樹脂材と、透光性樹脂材の底面付近に略均一な厚さの層状に配置された蛍光物質(蛍光体)とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−245020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体は、液状の透光性樹脂材に含有された状態でパッケージに充填される。蛍光体は、自重で透光性樹脂材を沈降するが、蛍光体を含有した透光性樹脂材をパッケージに充填した状態で単に放置しただけでは、特許文献1のように光出射方向に向かうに従って開口面積が徐々に拡がるような反射カップ形状をした凹部が設けられたパッケージでは、傾斜面に蛍光体が付着してしまうと、蛍光体が底面まで沈降しなくなってしまう。
【0007】
特許文献1には、蛍光体の沈殿に際して、パッケージに振動を与えることで対処することが記載されている。パッケージに振動を与えれば、傾斜面に付着してしまった蛍光体も、揺動により移動が始まり底面まで沈降するものと思われる。この振動により蛍光体による層の厚さを均一にできるので、色度ばらつきが改善できる。
【0008】
しかし、パッケージに振動を与えると、発光素子と金属板からなる電極との接合強度が低下したり、サイドビュー型発光装置では、パッケージと金属板との接合強度が低下したりする。また発光素子と電極との間を導通接合しているワイヤに振動がかかることでワイヤネック部やワイヤと基板との接合部の接合強度が低下して断線する可能性がある。
【0009】
そこで本発明は、蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填した基体に振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底面付近に略均一な厚さの層状に配置することで、色度のばらつきを抑えつつ、信頼性の低下を抑止することが可能な発光装置の製造方法および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発光装置の製造方法は、基体に設けられた凹部に発光素子を搭載する搭載工程と、前記凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して樹脂封止部を形成する封止工程と、前記基体の底面の一部または全部を加熱する加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の発光装置は、凹部が設けられた基体と、前記凹部に搭載される発光素子と、前記凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して硬化させることで、前記発光素子を封止する樹脂封止部とを備え、前記基体の底面であって、前記凹部が位置する底面を加熱領域とし、前記加熱領域の周囲部分は非加熱領域として切り欠かれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、充填された樹脂封止材に含有された蛍光体が基体の凹部の内周壁面に付着しても、剥がして沈降させることができるので、基体に振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底部付近に略均一な厚さの層状に配置することができる。従って、本発明は、色度のばらつきを抑えつつ、信頼性の低下を抑止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1において発光装置の一例を示す斜視図
【図2】図1に示す発光装置の断面図
【図3】(A)から(C)は、図1に示す発光装置の製造方法の各工程を説明するための図
【図4】図1に示す発光装置をヒートブロックで加熱している状態を示す断面図
【図5】対流のシミュレーション結果を示す図
【図6】本発明の実施の形態2に係る発光装置を、パッケージに設けられた凹部の開口側から見た斜視図
【図7】図6に示す発光装置を、パッケージの底面側から見た斜視図
【図8】図6に示す発光装置をヒートブロックで加熱している状態を示す断面図
【図9】パッケージを冷却するウォータジャケットを示す図、(A)は実施の形態1に係る発光装置に装着されたウォータジャケットを示す断面図、(B)は実施の形態2に係る発光装置に装着されたウォータジャケットを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願の第1の発明は、基体に設けられた凹部に発光素子を搭載する搭載工程と、凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して樹脂封止部を形成する封止工程と、基体の底面の一部または全部を加熱する加熱工程とを含むことを特徴としたものである。
【0015】
本発明の発光装置の製造方法は、基体の底面の一部または全部を加熱することで、凹部に充填された樹脂封止材が加熱されて対流を発生させることを特徴としている。この対流は、樹脂封止材の下部から上部へ上昇し、基体に設けられた凹部の内周壁面に沿って下降する。従って、樹脂封止材の充填の際に凹部の内周壁面に付着した蛍光体は、この対流する樹脂封止材の下降により内周壁面から剥がされる。そして、蛍光体は、沈降して凹部に充填された透光性樹脂材の底部付近に、略均一な厚さの層状となって蓄積するので、振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底部付近に略均一な厚さの層状に配置することができる。
【0016】
本願の第2の発明は、第1の発明において、加熱工程では、基体の底面を加熱しつつ、基体の周囲側面の一部または全部を冷却することを特徴としたものである。
【0017】
第2の発明においては、加熱を開始すると透光性樹脂材の対流が発生するが対流が一巡すると透光性樹脂材の上部と下部とで温度差が少なくなるので対流が持続しにくくなる。基体の周囲側面の一部または全部を冷却することで、透光性樹脂材の上部が冷却されるので、継続的に循環する対流を発生させることができる。従って、蛍光体の付着の解除に時間を要する場合でも蛍光体を凹部の内周壁面から引き剥がすことができる。
【0018】
本願の第3の発明は、第1または第2の発明において、加熱工程では、基体の底面であって、凹部が位置する底面を加熱することを特徴としたものである。
【0019】
第3の発明においては、基体の底面の加熱を凹部が位置する場所とすることで、より効率よく加熱を透光性樹脂材へ伝熱させることができる。
【0020】
本願の第4の発明は、凹部が設けられた基体と、凹部に搭載される発光素子と、凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して硬化させることで、発光素子を封止する樹脂封止部とを備え、基体の底面であって、凹部が位置する底面を加熱領域とし、加熱領域の周囲部分は非加熱領域として切り欠かれていることを特徴としたものである。
【0021】
本発明の発光装置は、基体の底面のうち、凹部が位置する底面を加熱領域とし、加熱領域の周囲部分を非加熱領域とすると共に、非加熱領域の部分は切り欠かれている。従って、加熱領域を加熱することで基体を介して凹部の底面側から凹部内の透光性樹脂材へ効率よく伝熱させると共に、凹部の底面以外へ伝えにくくすることができる。透光性樹脂材への熱により凹部に充填された樹脂封止材に対流が発生する。この対流は、樹脂封止材の下部から上部へ上昇し、基体に設けられた凹部の内周壁面に沿って下降する。従って、樹脂封止材の充填の際に凹部の内周壁面に付着した蛍光体は、この対流する樹脂封止材の下降により内周壁面から剥がされる。そして、蛍光体は、沈降して凹部に充填された透光性樹脂材の底部付近に、略均一な厚さの層状となって蓄積するので、振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底部付近に略均一な厚さの層状に配置することができる。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る発光装置およびその製造方法について図面に基づいて説明する。
【0023】
まず、発光装置の構成を、図1および図2に基づいて説明するが、この発光装置は、従来の発光装置と同じ構成のものである。図1は、本発明の実施の形態1において発光装置の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す発光装置の断面図である。
【0024】
図1に示すように、発光装置1は、表面実装用のもので、光源である発光素子2と、基体であるパッケージ3と、発光素子2が搭載されるリードフレーム4と、発光素子2を封止する樹脂封止部5とを備えている。
【0025】
発光素子2は、半導体層を積層して形成された発光ダイオードである。例えば、発光素子2は、サファイアなどの絶縁性基板と、n層、発光層、およびp層とで形成される半導体層と、発光層およびp層をエッチングすることで露出したn層に積層されたn電極と、p層上に積層されたp電極とを備えた青色発光素子とすることができる。この発光素子2の電源は、n電極とp電極に接続されるワイヤ21,22(図1参照)により供給される。
【0026】
パッケージ3は、モールド製で、外形が直方体状に形成され、発光素子2を搭載するための凹部31が設けられている。発光素子2は、この凹部31の底面311を搭載部として搭載されている。凹部31の内周壁面312は、発光素子2からの光が進行する方向に向かって徐々に直径が拡がるような傾斜面Sに形成されている。また、このパッケージ3の裏面となる底面32には、パッケージ3を金型で成形の際に成形樹脂を金型のキャビティに注入するためのゲート痕である窪み33ができている。
【0027】
リードフレーム4は、発光素子2が搭載される搭載板41と、発光素子2のn電極およびp電極にワイヤ21,22を介して接続される端子板42,43とで形成されている。
【0028】
端子板42,43は、ワイヤ21,22に接続される基端側から互いに反対方向へ延び、パッケージ3の側面34から底面32に沿って断面コ字状に屈曲した形状に形成されている。
【0029】
樹脂封止部5は、粒状体である蛍光体51を含有させた液状の透光性樹脂材であるシリコーン樹脂を硬化させることで形成されている。透光性樹脂材としてはシリコーン樹脂の他に、エポキシ樹脂を採用することができるが、発光素子2からの紫外線や熱などに劣化が心配されるようであれば、透光性樹脂材をシリコーン樹脂とするのが望ましい。
【0030】
蛍光体51は、発光素子2からの光に励起されて波長変換した光を発光するものである。本実施の形態1では、発光素子2が青色に発光する青色発光素子なので、蛍光体51として青色の補色となる黄色に発光するものとすれば、青色と黄色とが混色して白色に発光させることができる。蛍光体としては、珪酸塩蛍光体やYAG系蛍光体を使用することができる。
【0031】
以上のように構成された発光装置の製造方法について、図3および図4に基づいて説明する。図3(A)から同図(C)は、図1に示す発光装置の製造方法の各工程を説明するための図である。図4は、図1に示す発光装置をヒートブロックで加熱している状態を示す断面図である。なお、製造方法を説明するにあたって、リードフレーム4にパッケージ3を成形する成形工程が完了したものとして説明する。
【0032】
図3(A)に示すように、まず、基体となるパッケージ3を準備する。このパッケージ3は、リードフレーム4が互いに反対方向に向かって突出した状態で、多数個取りするために他のパッケージ3共々、図示しないリードフレーム枠に接続されている。
【0033】
図3(B)に示すように、パッケージ3を準備すると、次に搭載工程を行う。この搭載工程は、パッケージ3に設けられた凹部31に発光素子2を搭載するダイボンド工程と、発光素子2のn電極およびp電極を端子板42,43にワイヤ21,22により接続するワイヤボンド工程とが行われる。
【0034】
搭載工程が完了すると、次に図3(C)に示すように、封止工程を行う。封止工程では、まず、蛍光体51を含有した透光性樹脂材52を、ノズルNからポッティングにてパッケージ3の凹部31へ充填する。
【0035】
このとき、図4に示すように、パッケージ3の底面32をヒートブロックHで加熱すると共に、パッケージ3の側面34に空気を吹き付けることで冷却する加熱工程を行う。ヒートブロックHによる加熱により凹部31の底面311と接する透光性樹脂材が加熱され温度が上昇することで、凹部31内の透光性樹脂材52の上部と温度差ができる。この温度差により凹部31内の透光性樹脂材52に対流が発生する。
【0036】
対流は、凹部31の透光性樹脂材52の底部から上部へ向かって上昇し、そして、凹部31の傾斜面Sに沿って下降する流れとなる。このとき傾斜面Sに付着して沈降が抑止された蛍光体51に対しては、この透光性樹脂材52の下降が沈降を再開させるための応力として作用する。従って、傾斜面Sに付着した蛍光体51は、傾斜面Sから剥がされることで沈降して凹部31に充填された透光性樹脂材の底部付近に、略均一な厚さの層状となって蓄積される。
【0037】
透光性樹脂材の対流により全体が均一な温度となろうとするが、パッケージ3の側面34に空気を吹き付けることでパッケージ3の側面34が冷却されるので、凹部31の傾斜面Sと接する透光性樹脂材52が冷却されることで、透光性樹脂材の上部と下部との温度差が保たれ、対流が継続的に発生する。
【0038】
このように、パッケージ3の底面32を加熱しつつ、側面34を冷却することで、傾斜面Sに付着した蛍光体51を沈殿させることができるので、パッケージ3に振動を与えることなく、色度のばらつきを抑えつつ、信頼性の低下を抑止することが可能である。
【0039】
また、透光性樹脂材52の上部と下部との間に温度差があるものの、透光性樹脂材52全体の温度が上昇することで、透光性樹脂材52の粘性が低下するので、蛍光体51が移動しやすくなることが期待できる。
【0040】
パッケージ3の側面34に対する空気の吹き付けは、パッケージ3の4つの側面のうちの一方向からだけでもよいが、全部の側面が均等に冷却されるように吹き付けた方が、凹部31の傾斜面Sと接する透光性樹脂材52を均等に冷却することができるので望ましい。また、冷却は側面34全体としてもよいし、パッケージ3の上部の周囲面のみをピンポイントで冷却するようにしてもよい。
【0041】
蛍光体51が凹部31の底面311に、層状に沈殿すると、冷却を停止し、全体の温度を上昇させて、透光性樹脂材52を硬化させ、樹脂封止部5を形成する。そして、リードフレーム4をリードフレーム枠から切断して切り離すと共に、折り曲げることで、図1および図2に示す発光装置1とする。
【0042】
ここで、透光性樹脂材52を加熱したときの対流のシミュレーションを行った結果を図5に示す。図5は、対流のシミュレーション結果を示す図である。
【0043】
モデルとして、熱伝導率を、パッケージ3は0.363W/(m・K)、リードフレーム4(端子板42,43)は262W/(m・K)、発光素子2は27.2W/(m・K)、透光性樹脂材52は0.2W/(m・K)と設定した。また、透光性樹脂材52の粘性係数を0.16Pa・sと設定した。そして、ヒートブロック温度を70℃、雰囲気温度を25℃、冷却のための風速を1mとし、加熱開始から40秒後の状態を解析した。
【0044】
図5からも明らかなように、ヒートブロックHにより加熱された透光性樹脂材52は、発光素子2の上方へ上昇し、透光性樹脂材52の上面に沿うように周囲へ拡がり、凹部31の傾斜面Sに沿って下降している。従って、透光性樹脂材52は、傾斜面Sに付着した蛍光体51に対して、蛍光体51の上側を押すような流れになるため、蛍光体51を傾斜面Sから引き離し、凹部31の底面311へ向かわせることができる。
【0045】
なお、本実施の形態1では、パッケージ3を加熱しながら冷却を行っているが、加熱のみでもよい。しかし、加熱のみとした場合には、初期段階で透光性樹脂材52の対流が一巡すると、透光性樹脂材52全体に伝熱してしまい、透光性樹脂材52が図5に示すような循環するような対流となりにくい。更なる対流を起こすためには更に透光性樹脂材52の下部を加熱して高温とし、透光性樹脂材52の上部と下部とでの温度差を確保する必要があるが、温度差を大きくしにくい面がある。従って、加熱の初期段階で蛍光体51の付着を解除できれば加熱のみとすることができるが、ある程度の時間が必要となる場合には、パッケージ3の底面32を加熱しながら、側面34を冷却するのが望ましい。
【0046】
また、パッケージ3を冷却する空気は、単に送風するだけでなく、冷気とすると送風する空気を冷却するための冷却装置が必要となるが、更にパッケージ3の冷却を促進させることができるので望ましい。
【0047】
また、本実施の形態1に係る発光装置1は、パッケージ3の底面32に窪み33が設けられているが、窪みがなく平坦な底面であってもよい。この場合には、ヒートブロックHにより加熱は底面32全部に及ぶことになる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る発光装置を、図6から図8に基づいて説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る発光装置を、パッケージに設けられた凹部の開口側から見た斜視図である。図7は、図6に示す発光装置を、パッケージの底面側から見た斜視図である。図8は、図6に示す発光装置をヒートブロックで加熱している状態を示す断面図である。なお、図6から図8においては、図1および図2と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6および図7に示すように、本実施の形態2に係る発光装置1xには、パッケージ3xの底面32xの周縁部が底面視して矩形状に切り欠かれていることで、環状凹部35が設けられている。従って、図8に示すように、パッケージ3xの底面32xに設けられた環状凹部35の残余がヒートブロックHの当接面となるので、ヒートブロックHから熱が伝わる加熱領域A1となる。また、環状凹部35は、ヒートブロックHと接触しないので、ヒートブロックHから加熱されない非加熱領域A2となる。この環状凹部35は、凹部31が設けられていない底面311の位置に設けられている。
【0050】
このようにパッケージ3xに環状凹部35が設けられていることで、ヒートブロックHはパッケージ3xの底面32xの中央部分の一部と接することになるので、熱は加熱領域A1から凹部31の底面311へは伝熱しやすいが、余り加熱したくない凹部31の底面311以外、特に冷却させたい傾斜面S側へは伝わりにくい。従って、樹脂封止材の温度差を得やすく、循環速度の速い対流を発生させやすいので、傾斜面Sに強固に付着した蛍光体51も剥がして沈降させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態2では、パッケージ3xに凹部31が1つ設けられた発光装置1xを例に説明したが、凹部31が複数設けられた発光装置としてもよい。例えば、凹部31が列状に配置された発光装置や、マトリクス状に配置された発光装置などである。この場合には、凹部31が設けられた位置に対応させて加熱領域を設定し、その周囲部分を非加熱領域として切り欠くことで、ヒートブロックHからの熱は、凹部31内の樹脂封止材へ効率よく伝わると共に加熱させたくない凹部31の傾斜面S側には伝えにくくすることができる。
【0052】
更に、パッケージ3に対して送風することで空冷とする以外に、凹部31に透光性樹脂材52を充填したパッケージ3に上側から被せるウォータジャケットを準備することで水冷としてもよい。
【0053】
ここで、基体であるパッケージ3を冷却する手段として、ウォータジャケットを用いた場合を、図9に基づいて説明する。図9は、パッケージを冷却するウォータジャケットを示す図であり、(A)は実施の形態1に係る発光装置に装着されたウォータジャケットを示す断面図、(B)は実施の形態2に係る発光装置に装着されたウォータジャケットを示す断面図である。
【0054】
図9(A)に示すように、実施の形態1に係る発光装置1を冷却するウォータジャケットW1は、発光装置1の上方から被せるように装着するために、断面コ字状となる凹部W1xが設けられている。ウォータジャケットW1には、内部の水を循環させるための循環手段W1yが設けられている。
【0055】
また、図9(B)に示すように、実施の形態2に係る発光装置1xを冷却するウォータジャケットW2は、発光装置1xの側方からスライドさせて被せるように装着するために、発光装置1xが収納可能な溝部W2xが設けられている。そして、溝部W2xの下端には、発光装置1xの環状凹部35に対応するように、内側に突出した縁部W2yが設けられている。また、ウォータジャケットW2には、内部の水を循環させるための循環手段W2zが設けられている。
【0056】
このウォータジャケットW1,W2は、発光装置1,1xに接しないように保持手段(図示せず)により保持されている。発光装置1,1xにウォータジャケットW1,W2が接した状態で冷却すると、パッケージ3とウォータジャケットW1,W2との間に空気層が介在しないため冷却効果は高いが、結露が発生して凹部31内に充填された硬化前の透光性樹脂材52の表面に水分が付着してしまうおそれがある。透光性樹脂材52が水分を含んでしまうと、透光性樹脂材52を硬化させるときに、ボイドと呼ばれる空洞部ができたり、硬化せずにゲル状態のまま残ってしまったりするおそれがある。従って、本実施の形態では、ウォータジャケットW1,W2を、発光装置1,1xに接しないように配置している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填した基体に、振動を与えることなく、蛍光体を透光性樹脂材の底部付近に略均一な厚さの層状に配置することで、色度のばらつきを抑えつつ、信頼性の低下を抑止することが可能なので、凹部を搭載部とした基体に発光素子が搭載され、凹部に発光素子を封止する蛍光体を含有した透光性樹脂材を硬化させた樹脂封止部が形成された発光装置の製造方法および発光装置に好適である。
【符号の説明】
【0058】
1,1x 発光装置
2 発光素子
21,22 ワイヤ
3,3x パッケージ
31 凹部
311 底面
312 内周壁面
32,32x 底面
33 窪み
34 側面
35 環状凹部
4 リードフレーム
41 搭載板
42,43 端子板
5 樹脂封止部
51 蛍光体
52 透光性樹脂材
S 傾斜面
H ヒートブロック
N ノズル
W1,W2 ウォータジャケット
W1x 凹部
W2x 溝部
W1y,W2z 循環手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に設けられた凹部に発光素子を搭載する搭載工程と、
前記凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して樹脂封止部を形成する封止工程と、
前記基体の底面の一部または全部を加熱する加熱工程とを含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記基体の底面を加熱しつつ、前記基体の周囲側面の一部または全部を冷却することを特徴とする請求項1記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記基体の底面であって、前記凹部が位置する底面を加熱することを特徴とする請求項1または2記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
凹部が設けられた基体と、
前記凹部に搭載される発光素子と、
前記凹部に蛍光体を含有した透光性樹脂材を充填して硬化させることで、前記発光素子を封止する樹脂封止部とを備え、
前記基体の底面であって、前記凹部が位置する底面を加熱領域とし、前記加熱領域の周囲部分は非加熱領域として切り欠かれていることを特徴とする発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−23460(P2011−23460A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165658(P2009−165658)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】