説明

発光装置及び発光装置の製造方法

【課題】装置の使用時に発光効率が低下することがなく、LED素子へ大きな電流を流して光量を増大させることができ、かつ、良好な演色性の白色光を得ることのできる発光装置及びその製造方法を提供する。また、LED素子にて生じた熱をスムースに基板へ伝えることのできる発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】紫外、青色、緑色及び赤色の各LED素子が柱状結晶を有するAuSn系合金層を介して搭載され、BとAlの少なくとも一方及びNがドープされたSiC蛍光基板10を備え、発光装置1の各部材を無機材料とすることにより耐熱性を向上させるとともに、SiC蛍光基板10のブロードな発光と青色、緑色及び赤色の各LED素子の発光の組合せにより良好な演色性の白色光を得ることができ、AuSn系合金層によりスムースな熱伝達が実現された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子を備え、白色光を発する発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子と蛍光体との組合せにより、白色光を発する発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発光装置は、300〜470nmの光を発するLED素子を備え、この光により励起される蛍光体によって部分的に又は完全により長波長の光に変換されることにより、白色光を生成している。尚、蛍光体は、LED素子を封止する封止樹脂に分散されている。
また、赤色LED素子、緑色LED素子及び青色LED素子の組合せにより、白色光を生成可能な発光装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2003−535478号公報
【特許文献2】特開2008−085324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発光装置では、封止樹脂中の蛍光体の耐熱性が低く、装置の使用時に発光装置の温度が上昇すると発光効率が低下する。また、LED素子の発熱量が制限されるので、LED素子へ大きな電流を流して光量を増大させることは困難である。
ここで、特許文献2に記載の発光装置のように、蛍光体を用いずに赤色、緑色及び青色の各LED素子により白色光を得ることが考えられる。しかしながら、各LED素子の半値幅は蛍光体と比べて極めて小さく、得られる白色光の演色性が低くなってしまう。
さらに、LED素子の発熱量が制限されない場合、各LED素子で発生した熱を、スムースに各LED素子を搭載する基板へ伝える必要が生じる。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の使用時に発光効率が低下することがなく、LED素子へ大きな電流を流して光量を増大させることができ、かつ、良好な演色性の白色光を得ることのできる発光装置及びその製造方法を提供することにある。また、他の目的とすることろは、LED素子にて生じた熱をスムースに基板へ伝えることのできる発光装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明では、
紫外光を発する第1LED素子と、
可視光を発する第2LED素子と、
前記第1LED素子及び前記第2LED素子が搭載され、B及びAlの少なくとも一方と、Nと、がドープされたSiCからなり、前記第1LED素子から発せられる光により励起されると可視光を発する基板と、
前記基板と前記第1LED素子及び前記第2LED素子とを接合し、前記基板に対して略垂直な方向へ伸びる柱状結晶を有するAuSn系合金層と、を備えた発光装置が提供される。
【0006】
また、前記目的を達成するため、本発明では、
紫外光を発する第1LED素子と、
可視光を発する第2LED素子と、
B及びAlの少なくとも一方と、Nと、がドープされ、前記第1LED素子から発せられる光により励起されると可視光を発するSiC蛍光板と、
前記第1LED素子及び前記第2LED素子が搭載され、無機材料からなる基板と、
前記基板と前記第1LED素子及び前記第2LED素子とを接合し、前記基板に対して略垂直な方向へ伸びる柱状結晶を有するAuSn系合金層と、を備えた発光装置が提供される。
【0007】
また、上記発光装置において、
前記基板を収容し、無機材料からなる筐体を備えてもよい。
【0008】
また、上記発光装置において、
前記第1LED素子のピーク波長は、408nm以下であり、
前記第2LED素子のピーク波長は、408nmを超えることが好ましい。
【0009】
また、上記発光装置において、
前記第2LED素子は、青色LED素子、緑色LED素子及び赤色LED素子の3種のLED素子であってもよい。
【0010】
また、前記目的を達成するため、本発明では、上記発光装置を製造するにあたり、
前記基板の搭載面にSn膜を形成するSn膜形成工程と、
第1LED素子及び第2LED素子の非搭載面にAu膜を形成するAu膜形成工程と、
前記基板の前記搭載面に形成された前記Sn膜の表面に、前記第1LED素子及び前記第2LED素子に形成された前記Au膜を接触させる接触工程と、
前記Sn膜と前記Au膜を接触させた状態で、水素ガスと窒素ガスの混合ガスからなるフォーミングガスの雰囲気中にて前記基板を加熱し、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に接合する接合工程と、を含む発光装置の製造方法が提供される。
【0011】
また、上記発光装置の製造方法において、
前記接触工程にて、前記基板の前記搭載面を上方とし前記第1LED素子及び第2LED素子の非搭載面を下方にして、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に載置することにより前記Sn膜と前記Au膜を接触させ、
前記接合工程にて、前記第1LED素子及び前記第2LED素子が前記基板に載置された状態で、前記基板を加熱して、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に接合することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SiC蛍光板は高い耐熱性を有するので、装置の使用時に従来のように発光効率が低下することはないし、装置自体の耐熱性が向上するので、LED素子へ大きな電流を流して光量を増大させることが可能となる。さらにまた、SiC蛍光板は、第1LED素子から発せられた光により励起されると、LED素子等と比べて半値幅の大きな光を発するので、良好な演色性の白色光を得ることができる。さらにまた、基板と各LED素子が柱状結晶を有するAuSn系合金層によって接合されるので、各LED素子にて生じた熱をスムースに基板へ伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示す発光装置の外観斜視図である。
図1に示すように、発光装置1は、一端に開口2aが形成された円筒状の筐体2と、この開口2aを閉塞するレンズ3と、筐体2の他端に形成される端子部4と、筐体2内に配置され紫外LED素子と可視LED素子を搭載したSiC製のSiC蛍光基板10と、を有している。本実施形態においては、筐体2の一端側を上方向、他端側を下方向として説明する。筐体2には、端子部4から電力が供給される複数種類のLED素子が収容されており、LED素子から発せられる紫外光によりSiC蛍光基板10が励起されて発光するようになっている。尚、LED素子から発せられた青色光、緑色光及び赤色光は、波長変換されることなくレンズ3を透過する。
【0014】
図2は、発光装置の概略縦断面図である。
図2に示すように、筐体2は、無機材料からなり、下端が閉塞され、この閉塞部分が底部2bをなしている。筐体2は、セラミックからなり、本実施形態においてAlNである。底部2bには、紫外LED素子11、青色LED素子12、緑色LED素子13及び赤色LED素子14を搭載するSiC蛍光基板10が固定される。SiC蛍光基板10の固定方法は任意であるが、本実施形態においては、SiC蛍光基板10は底部2bと螺合するねじ5により固定されている。本実施形態においては、SiC蛍光体基板10は、底部2bと離隔して設けられ、底部2bと対抗する面に各LED素子11,12,13,14が搭載されている。筐体2の開口2aの部分は、段状に形成されており、レンズ3が段状部に固定されている。また、筐体2は、底部2bから下方へ突出するフランジ2cを有している。本実施形態においては、フランジ2cは、周方向に亘って形成されている。
【0015】
端子部4は、無機材料からなり、電力を供給する所定のソケットに対して螺合可能に構成される。端子部4は、筐体2のフランジ2cの内周面に固定される円筒部4aと、円筒部4aの下端と連続的に形成され下方へ向かって窄む傾斜部4bと、傾斜部4bの下端に設けられ外面に雄ねじが形成される第1電極部4cと、第1電極部4cの下端と連続的に形成され径方向内側へ延びる絶縁部4dと、絶縁部4dの径方向内側を閉塞する第2電極4eと、を有している。円筒部4a、傾斜部4b及び絶縁部4dは絶縁性を有するセラミックからなり、第1電極4c及び第2電極4eは導電性を有する金属からなる。円筒部4a、傾斜部4b及び絶縁部4dは、筐体2と同じ材料とすることが好ましい。第1電極4c及び第2電極4eは、内部導線6によりねじ5と電気的に接続されている。本実施形態においては、ねじ5は、導電性の金属からなり、SiC蛍光基板10と螺合すると、SiC蛍光基板10の配線パターンと電気的に接続されるようになっている。
【0016】
レンズ3は、ガラスからなり、出射面が上方へ凸の形状を呈して筐体2から出射される光を集光する。ここで、ガラスは、透過する光に紫外光が含まれる場合、単体で例えば70%以上の紫外光をカットする。また、本実施形態においては、レンズ3の筐体2の内側の面に、後述する紫外LED素子11から発せられた光を反射し無機材料からなる多層反射膜(DBR膜)が形成されている。多層反射膜は、例えばSiO/TiOの構成とすることができる。尚、多層反射膜でなく、紫外光に対してガラスよりも反射率の高い無機材料を、レンズ3のガラスの内側の面に塗布してもよい。
【0017】
SiC蛍光基板10は、6層ごとに周期的な構造をとる6H型のSiC結晶からなる。SiC蛍光基板10は、ドナー不純物としてNを含むとともに、アクセプタ不純物としてAl及びBを含んでいる。SiC蛍光基板10には、Alが例えば2×1018cm−3、Bが例えば1×1019cm−3、Nが例えば1.5×1019cm−3の濃度でドープされている。尚、Al、B及びNの濃度は任意であるが、SiC蛍光基板10を励起させて発光させるには、AlとBの濃度の和が、Nの濃度よりも小さくなければならない。SiC蛍光基板10は、紫外光により励起されると、ドナーとアクセプタの再結合により蛍光を生じる。この蛍光は、LED素子から発せられる光と比べると、極めて大きな半値幅を有している。SiC蛍光基板10の製造方法は任意であるが、例えば昇華法、化学気相成長法によってSiC結晶を成長させて製造することができる。このとき、結晶成長中の雰囲気における窒素ガス(N)の分圧を適度に調整することにより、SiC蛍光基板10における窒素濃度を任意に設定することができる。一方、Al及びBを単体で、または、Al化合物及びB化合物を原料に対して適量混合させることにより、SiC蛍光基板10におけるAl濃度及びB濃度を任意に設定することができる。
【0018】
図3はSiC蛍光基板の拡大図であり、(a)は一部縦断面図、(b)は一部平面図である。
図3(a)に示すように、SiC蛍光基板3は、各LED素子の搭載面及び搭載面と反対側の面に所定の周期構造が形成されている。周期構造は多数の略円錐状の凸部10eによって構成されており、各凸部10eがSiC蛍光基板3の搭載面に沿った方向に周期的に配列されている。尚、各凸部10eを三角錐、四角錐のような多角錘形状としてもよいし、周期構造を設けるか否かも任意である。
【0019】
図3(b)に示すように、各凸部10eは、平面視にて、所定の周期で三角格子状に整列して形成される。各凸部10eの平均周期は、任意であるが、本実施形態では200nmとされている。なお、平均周期は、互いに隣接する凸部10eの平均ピーク間距離で定義される。各凸部10eは、略円錐状に形成され、平均的なボトム直径が150nmであり、平均高さが400nmとなっている。このように、紫外LED素子11が発する光の光学波長に対して十分に小さな周期構造を形成することにより、SiC蛍光基板10の表面にて光が反射することが防止できる。従って、各紫外LED素子11から発せられる近紫外光をSiC蛍光基板10へ効率よく入射させるとともに、近紫外光が波長変換された白色光をSiC蛍光基板10から効率よく出射させることができる。
【0020】
図4は、SiC蛍光基板の模式平面図である。
図4に示すように、SiC蛍光基板10は、平面視にて正方形状に形成され、各LED素子11,12,13,14が前後方向及び左右方向に所定の間隔をおいて搭載されている。各LED素子11,12,13,14は、SiC蛍光基板10に対して略垂直な方向へ伸びる柱状結晶を有するAuSn系合金層10cによりSiC蛍光基板10に接合されている。本実施形態においては、各LED素子11,12,13,14は、平面視にて約350μm角に形成され、各LED素子11,12,13,14同士の間隔は約20μmとなっている。本実施形態においては、各LED素子11,12,13,14は、封止されていない。また、本実施形態においては、SiC蛍光基板10には、7列及び7行で計49個の各LED素子11,12,13,14が搭載される。詳しくは、紫外LED素子11が41個、青色LED素子12が2個、緑色LED素子13が4個、赤色LED素子14が2個となっている。
【0021】
第1LED素子としての紫外LED素子11は例えばピーク波長が380nmの光を発し、第2LED素子としての青色LED素子12は例えばピーク波長が450nmの光を発し、第2LED素子としての緑色LED素子13は例えばピーク波長が550nmの光を発し、第2LED素子としての赤色LED素子14は例えばピーク波長が650nmの光を発する。尚、各LED素子11,12,13,14は、材質が特に限定されることはなく、例えば、AlINGaN、AlGaN、InGaN、GaN、ZnSe、GaP、GaAsP、AlGaInP、AlGaAs等の材料を用いることができる。
【0022】
SiC蛍光基板10は、絶縁性の無機材料からなり、表面に配線パターン10aが形成されている。また、SiC蛍光基板10は、4つの角部にてねじ5により筐体2に締結されている。4つのねじ5のうち、対角に位置する2つのねじ5に配線パターン10aが電気的に接続されている。
【0023】
図5は、LED素子のSiC蛍光基板への搭載方法の一例を示す説明図であり、(a)はLED素子を搭載する前のSiC蛍光基板の平面図、(b)はLED素子を搭載する際のSiC蛍光基板の側面図、(c)はLED素子を搭載した後のSiC蛍光基板の側面図である。尚、図5は、説明のためにSiC蛍光基板の一部分を図示している。
発光装置の製造にあたり、SiC蛍光基板10の搭載面にSn膜10bを形成するSn膜形成工程と、各LED素子11,12,13,14の非搭載面にAu膜11aを形成するAu膜形成工程と、SiC蛍光基板10の搭載面に形成されたSn膜10bの表面に、各LED素子11,12,13,14に形成されたAu膜11aを接触させる接触工程と、Sn膜10bとAu膜11aを接触させた状態で、水素ガスと窒素ガスの混合ガスからなるフォーミングガスの雰囲気中にてSiC蛍光基板10を加熱し、各LED素子11,12,13,14をSiC蛍光基板10に接合する接合工程と、により、SiC蛍光基板10へ各LED素子11,12,13,14が搭載される。本実施形態においては、接触工程にて、SiC蛍光基板10の搭載面を上方とし、各LED素子11,12,13,14の非搭載面を下方にして、各LED素子11,12,13,14をSiC蛍光基板10に載置することによりSn膜10bとAu膜11aが接触し、接合工程にて、各LED素子11,12,13,14がSiC蛍光基板10に載置された状態で、SiC蛍光基板10を加熱して、各LED素子11,12,13,14がSiC蛍光基板10に接合される。
【0024】
具体的に、まず、所定のアクセプタ及びドナーがドープされた複数のSiC蛍光基板10を含むSiCウェハを準備する。このSiCウェハは、例えばダイシング等により分割することで、複数のSiC蛍光基板10に切り分けられる。図5(a)に示すように、SiCウェハのSiC蛍光基板10をなす部分に、例えばAuからなる配線パターン10aが形成され、搭載面における各LED素子11の電気接続位置にはSn膜10bが形成される。このSn膜10bは、例えばEB蒸着法(電子ビーム蒸着法)によって形成され、その膜厚は、1〜8μmであり、一例としては3μmである。尚、図5(a)においては、フリップチップ型の各LED素子11を図示している。
【0025】
一方、図5(b)に示すように、各LED素子11の被搭載面としての一対の電極には、Au膜11aが形成される。このAu膜11aは、例えばEB蒸着法によって形成され、その膜厚は、0.1〜1.0μmであり、一例としては0.2μmである。そして、図5(b)中の矢印に示すように、SiC蛍光基板10のSn膜10b上に、Au膜11aを下方として各LED素子11を載置する。
【0026】
この後、各LED素子11,12,13,14が載置されたSiC蛍光基板10を熱処理容器内に配置する。そして、SiC蛍光基板10を、水素ガスと窒素ガスの混合ガスよりなるフォーミングガスが流動する雰囲気において加熱することにより、SnとAuが合金化されてなるAuSn系合金層10cが形成される。このフォーミングガスは、水素ガスの含有割合が10%未満であり、一例としては5%である。また、フォーミングガスの流量は、50〜350cc/minであり、一例としては300cc/minである。また、熱処理条件は、加熱温度が250〜350℃、処理時間が1〜20分であり、一例としては、加熱温度300℃、処理時間10分である。これにより、図5(c)に示すように、各LEDチップ11は、AuSn系合金層層10cによりSiC蛍光基板10に接合される。尚、本実施形態においては、各LED素子11,12,13,14の自重によってAuSn系合金層層10cが形成されるが、例えば10〜50g/cmの圧力で各LED素子11,12,13,14を加圧してもよい。この後、SiCウェハをダイシング等により分割して複数のSiC蛍光基板10に分割した後、SiC蛍光基板10を筐体2の底部2bにねじ5を用いて固定する。そして、筐体2の開口2aにレンズ3を配置し、筐体2のフランジ2cに端子部4を接続するとともに、内部導線6によりSiC蛍光基板10と各電極部4c,4eを電気的に接続することにより、発光装置1が完成する。
【0027】
このように各LED素子11,12,13,14をSiC蛍光基板10に接合する場合、SiC蛍光基板10及び各LEDチップ11,12,13,14にAuSn合金による合金膜を予め形成する必要はない。また、各LED素子11,12,13,14が自重によりSiC蛍光基板10に接合されることになるので、各LED素子11,12,13,14を必ずしも加圧する必要はないし、加圧の不均一性に起因する弊害を抑制することができる。さらには、AuSn系合金層10cには柱状結晶が形成されるようになるので、各LED素子11,12,13,14は電流に対する高い発光効率を得ることができ、AuSn系合金層10cによる接合部に優れた耐熱性及び熱伝導性が付与される。
【0028】
以上のように構成された発光装置1では、端子部4を外部のソケットへ螺合することにより、AuSn系合金層10c等を介して各LED素子11,12,13,14へ電力を供給可能な状態となる。そして、各LED素子11,12,13,14に電流を印加すると、各LED素子11,12,13,14が効率良く発光し、各LED素子11,12,13,14から所定波長の光が発せられる。
【0029】
紫外LED素子11からSiC蛍光基板10側へ発せられた紫外光は、搭載面からSiC蛍光基板10へ入射し、SiC蛍光基板10に吸収されて白色に変換された後、SiC蛍光基板10から出射する。SiC蛍光基板10から出射した白色光は、レンズ3を透過して筐体2の外部へ放射される。尚、紫外LED素子11から波長変換されることなくレンズ3へ入射した紫外光は、レンズ3の多層反射膜によりSiC蛍光基板10側へ反射された後、SiC蛍光基板10へ入射し、SiC蛍光基板10に吸収されて白色に変換された後、SiC蛍光基板10から出射する。
【0030】
ここで、SiC蛍光基板10の搭載面及び搭載面と反対側の面に周期構造が形成されていることから、SiC蛍光基板10内へ紫外光が効率よく入射するとともに、白色光がSiC蛍光基板10から効率よく出射する。また、SiC蛍光基板10内においては、紫外光を励起光としてドナー・アクセプタ・ペアによって発光している。本実施形態においては、アクセプタとしてAlとBがドープされており、緑色領域にピーク波長を有する青色領域から赤色領域にかけてのブロードな波長の発光により純白色の発光が得られることになる。この純白色の発光のみであっても、青色LED素子と黄色蛍光体を組み合わせた従来の発光装置よりも高い演色性の白色光を得ることができる。本実施形態の発光装置1は、LED素子を用いて、従来のハロゲンランプの代替品の照明装置として利用することができる。
【0031】
また、紫外LED素子11を除く各LED素子12,13,14から発せられた可視光(本実施形態においては、青色光、緑色光及び赤色光)は、SiC蛍光基板10へ入射し、波長変換されることなくSiC蛍光基板10の表面から出射する。これは、SiC蛍光基板10は、408nm以下の波長の光で励起され、408nmを超える波長の光に対しては透明であることによる。SiC蛍光基板10から出射した可視光は、レンズ3を透過して筐体2の外部へ放射される。
【0032】
このように、各LED素子11,12,13,14へ通電すると、SiC蛍光板3の蛍光による白色光と、SiC蛍光板3を透過した青色光、緑色光及び赤色光と、の混合光が外部へ放出される。従って、SiC蛍光板3の純白色の蛍光に加えて、青色成分、緑色成分及び赤色成分を青色LED素子12、緑色LED素子13及び赤色LED素子14で補うことができ、極めて高い演色性を有する白色光を得ることができる。
【0033】
また、レンズ3が紫外光をカットするようにしたので、紫外光が筐体2の外へ放射されることはない。さらに、レンズ3により紫外光が筐体2内へ反射されるようにしたので、紫外光を筐体2内へ閉じ込めて、SiC蛍光基板10の励起を効率良く行うことができる。
【0034】
また、本実施形態においては、可視光を発する各LED素子12,13,14のうち、緑色LED素子13の数を、青色LED素子12及び赤色LED素子14の数よりも多くしたので、出射する白色光を利用者に対してより明るく感じさせることができる。これは、人間の視感度は、緑色領域で最も高いからである。
【0035】
また、各LED素子11,12,13,14が発光した際には、各LED素子11,12,13,14が発熱する。本実施形態の発光装置1では、AuSn系合金層10cにより各LED素子11,12,13,14とSiC蛍光基板10が接続されているので、各LED素子11,12,13,14で発生した熱がスムースにSiC蛍光基板10へ伝達される。SiC蛍光基板10へ伝達された熱は、SiC蛍光基板10から筐体2へ伝達されて外気へ放散される。
【0036】
また、筐体2、レンズ3、端子部4、SiC蛍光基板10等が無機材料により構成されているので、LED素子を蛍光体含有樹脂で封止したり、樹脂製のレンズを有する従来の発光装置と比べ、耐熱性を飛躍的に向上することができる。従って、従来必要とされていた放熱機構を省略したり、各LED素子11,12,13,14へ流す電流を増大させて発光量を増大させたりすることができ、実用に際して極めて有利である。尚、耐熱性の観点からは、発光装置1に樹脂を一切使わない構成とすることが好ましい。
【0037】
尚、前記実施形態においては、レンズ3が紫外光を反射する反射膜を形成したものを示したが、レンズ3は紫外カット膜を有するものであってもよい。紫外カット膜は、例えば無機ポリマーに無機紫外吸収剤を含有させてなり、レンズ3の少なくとも一方の面に形成してもよいし、合わせガラスの中間の膜としてもよい。尚、レンズ3は、筐体2から発せられる可視光に対して透過性を有していれば、ガラス以外の無機材料から形成してもよい。この場合も、レンズ3を、紫外成分を吸収する材料、紫外成分を反射する構造等を用いることにより、紫外光の少なくとも一部をカットすることが望ましい。
【0038】
例えば、レンズ3を、ドナー不純物としてNを含むとともに、アクセプタ不純物としてAl及びBを含むSiC蛍光板としてもよい。レンズ3をSiC蛍光板とすることにより、レンズ3により紫外光を吸収しつつ、レンズ3から可視光を放出することができる。この場合、レンズ3のSiC蛍光板の両面に、SiC蛍光基板10と同様に周期構造を形成することが望ましい。また、例えば、SiC蛍光基板10にはB及びNをドープして黄色光を生じさせるとともにレンズ3のSiC蛍光板にはAl及びNをドープして青色光を生じさせたり、この逆に、SiC蛍光基板10にAl及びNをドープしてレンズ3のSiC蛍光板にはB及びNをドープするなど、SiC蛍光基板10とレンズ3とが異なる波長で発光するようにしてもよい。
【0039】
また、前記実施形態においては、第1LED素子及び第2LED素子がSiC蛍光基板に搭載されるものを示したが、例えば図6に示すように、SiC蛍光板を基板以外の箇所に設け、SiC以外の無機材料からなる基板に各LED素子を搭載するようにしてもよい。この構成の場合も、各LED素子にて生じた熱は、基板へスムースに伝達される。図6の発光装置101は、各LED素子11,12,13,14がAlNからなる基板110に搭載され、筐体2の開口2aにSiC蛍光板103が設けられている。SiC蛍光板103は、B及びAlの少なくとも一方と、Nと、がドープされ、紫外LED素子11から発せられる光により励起されると可視光を発する。
【0040】
また、前記実施形態においては、ソケットに端子部4を螺合させる発光装置1を示したが、例えば図7から図9に示すように、車両200用のヘッドライト200aの発光装置201とすることもできる。図7の車両200は、自動車車両であり、前部にヘッドライト200aを備えている。図8に示すヘッドライト200a用の発光装置201は、筐体2の下部に端子部が設けられておらず、筐体2の底部2bにヒートシンク8が接続されている。また、筐体2の上部には、開口2aから出射した光を反射させる反射鏡9が設けられている。図9に示すように、反射鏡9にて反射された白色光は、レンズ220によって所定方向へ集光されるようになっている。この発光装置201では、耐熱温度が高いことから、従来の樹脂封止タイプのLEDヘッドライトと比較して、ヒートシンク8を小型とすることができる。また、ヒートシンク8を設けない構成としても支障はないし、自動車車体の所定箇所に発光装置201を接続して車体自体を放熱部材として利用することも可能である。
【0041】
また、前記実施形態においては、筐体2及び端子部4をAlNから形成したものを示したが、無機材料であれば材質は任意であり、例えば、Si、SiC等を用いてもよいし、アクセプタ不純物及びドナー不純物がドープされた波長変換SiCを用いることも可能である。また、例えば、図10及び図11に示すように、筐体302,402が可視光に対して透明なガラスからなる発光装置301,401としてもよい。
【0042】
図10の発光装置301は、LEDランプであり、ガラスの筐体302が略球形に形成されるとともに、端子部4が従来の白熱電球と同様に構成され、端子部4とSiC蛍光基板10とは内部導線306により電気的に接続されている。この発光装置301では、SiC蛍光基板10は、筐体302の中心側に配置され、各LED素子11,12,13,14の搭載面及び搭載面と反対側の面に前述の周期構造が形成されている。また、SiC蛍光基板10は、端子部4から延び無機材料からなる支持部305により支持されている。
【0043】
図11の発光装置401は、LEDランプであり、ガラスの筐体402が略半球形に形成されるとともに筐体402の開口を閉塞する平板状のガラスのレンズ403が設けられ、端子部4が従来のハロゲンランプと同様に構成され、端子部4とSiC蛍光基板10とは内部導線406により電気的に接続されている。この発光装置401では、SiC蛍光基板10は、筐体402の中心側に配置され、各LED素子11,12,13,14の搭載面及び搭載面と反対側の面に前述の周期構造が形成されている。
【0044】
図10及び図11の発光装置301,401では、各LED素子11,12,13,14をSiC蛍光基板10に片面実装したものを図示しているが、両面実装としてもよい。また、図10及び図11の発光装置301,401においても、筐体302,402やレンズ403に紫外光を反射させる反射膜を設けたり、紫外光を吸収する紫外カット膜を設けることが好ましい。さらに、筐体302,402やレンズ403を、アクセプタ不純物及びドナー不純物がドープされた波長変換SiCとしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態においては、各LED素子11がフリップチップ接合されるものを示したが、例えば図12に示すようにワイヤ11bを用いたフェイスアップ接合であってもよく、各LED素子11,12,13,14の実装形態は任意である。フェイスアップ接合とする場合、図12(a)に示すように、SiC蛍光基板10にSn膜10bを形成しておくとともに、図12(b)に示すように、各LED素子11の被搭載面にAu膜11aを形成しておき、図12(c)に示すように、AuSn系合金層10cにより各LED素子11をSiC蛍光基板10へ接合すればよい。この構成であっても、各LED素子11にて生じた熱をSiC蛍光基板10にスムースに伝達することができる。
【0046】
また、例えば、図13(a)及び(b)に示すように、SiC蛍光基板510に、主回路パターン510aとともに、交流を直流に整流する整流回路510bを設けてもよい。図13(a)に示すSiC蛍光基板510と、図13(b)に示すSiC蛍光基板510は、それぞれLEDランプに用いられる。
図13(a)では、計21個のLED素子がSiC蛍光基板510に搭載され、ワイヤボンディングを用いて直列に接続された3つのLED素子を単位とする回路が、7つ並列に設けられている。電源として交流12Vが用いられ、各LED素子には約4Vの電圧が印加される。
図13(b)では、計33個のLED素子がSiC蛍光基板510に搭載され、全LED素子がワイヤボンディングを用いて直列に接続されている。電源として交流100Vが用いられ、各LED素子には約3Vの電圧が印加される。
【0047】
また、前記実施形態においては、紫外LED素子11が41個、青色LED素子12が2個、緑色LED素子13が4個、赤色LED素子14が2個の例を示したが、各LED素子11,12,13,14の数は任意に設定できる。また、青色LED素子12、緑色LED素子13及び赤色LED素子14を全て備える必要はなく、例えば、暖色系の白色を得るのであれば青色LED素子12を設けずに赤色LED14の割合を多くし、寒色系の白色を得るのであれば赤色LED素子14を設けずに青色LED14の割合を多くすればよい。すなわち、第1LED素子として紫外光を発するLED素子を用い、第2LED素子として可視光を発するLED素子を用いれば、各LED素子の発光波長は任意である。ただし、SiC蛍光板3が408nm以下の光により励起されるので、第1LED素子のピーク波長は408nm以下で、第2LED素子のピーク波長が408nmを超えるようにすることが望ましい。
【0048】
また、前記実施形態においては、各LED素子11,12,13,14が封止されていないものを示したが、透明ガラス等の無機材料で封止されるようにしてもよい。この場合も、封止材の無機材料であるので、発光装置1の耐熱性が損なわれることはない。
【0049】
また、前記実施形態においては、SiC蛍光基板10にアクセプタとしてAl及びBをドープしたものを示したが、アクセプタとしてAlとBの一方をドープしたものであってもよい。アクセプタがAlのみでドナーがNの場合は、青色領域にピーク波長を有する蛍光を発し、アクセプタがBのみでドナーがNの場合は、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発することになる。すなわち、暖色系の白色を得るのであれば、アクセプタをBのみとすると好適であり、寒色系の白色を得るのであれば、アクセプタをAlのみとすると好適である。その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示す発光装置の外観斜視図である。
【図2】図2は、発光装置の概略縦断面図である。
【図3】図3はSiC蛍光基板の拡大図であり、(a)は一部縦断面図、(b)は一部平面図である。
【図4】図4は、SiC蛍光基板の模式平面図である。
【図5】図5はLED素子のSiC蛍光基板への搭載方法の一例を示す説明図であり、(a)はLED素子を搭載する前のSiC蛍光基板の平面図、(b)はLED素子を搭載する際のSiC蛍光基板の側面図、(c)はLED素子を搭載した後のSiC蛍光基板の側面図である。
【図6】図6は、変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図7】図7は、自動車車両の前部の外観図である。
【図8】図8は、変形例を示す発光装置の概略縦断面図である。
【図9】図9は、変形例を示すヘッドライトの内部構造を示す説明図である。
【図10】図10は、変形例を示す発光装置の概略側面図である。
【図11】図11は、変形例を示す発光装置の概略側面図である。
【図12】図12はLED素子のSiC蛍光基板への搭載方法の他の例を示す説明図であり、(a)はLED素子を搭載する前のSiC蛍光基板の平面図、(b)はLED素子を搭載する際のSiC蛍光基板の側面図、(c)はLED素子を搭載した後のSiC蛍光基板の側面図である。
【図13】図13は、変形例を示す搭載基板の平面図であり、(a)は3つのLED素子が直列に接続された回路が7つ並列に接続されているもの、(b)は全てのLED素子が直列に接続されているものである。
【符号の説明】
【0051】
1 発光装置
2 筐体
2a 開口
2b 底部
2c フランジ
3 レンズ
4 端子部
4a 円筒部
4b 傾斜部
4c 第1電極
4d 絶縁部
4e 第2電極
5 ねじ
6 内部導線
7 レンズ
8 ヒートシンク
9 反射鏡
10 SiC蛍光基板
10a 配線パターン
10b Sn膜
10c AuSn系合金層
10e 凸部
11 紫外LED素子
11a Au膜
12 青色LED素子
13 緑色LED素子
14 赤色LED素子
101 発光装置
103 SiC蛍光板
110 基板
200 車両
200a ヘッドライト
201 発光装置
220 レンズ
301 発光装置
302 筐体
305 支持部
306 内部導線
401 発光装置
402 筐体
403 レンズ
405 支持部
406 内部導線
510 SiC蛍光基板
510a 主回路パターン
510b 整流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を発する第1LED素子と、
可視光を発する第2LED素子と、
前記第1LED素子及び前記第2LED素子が搭載され、B及びAlの少なくとも一方と、Nと、がドープされたSiCからなり、前記第1LED素子から発せられる光により励起されると可視光を発する基板と、
前記基板と前記第1LED素子及び前記第2LED素子とを接合し、前記基板に対して略垂直な方向へ伸びる柱状結晶を有するAuSn系合金層と、を備えた発光装置。
【請求項2】
紫外光を発する第1LED素子と、
可視光を発する第2LED素子と、
B及びAlの少なくとも一方と、Nと、がドープされ、前記第1LED素子から発せられる光により励起されると可視光を発するSiC蛍光板と、
前記第1LED素子及び前記第2LED素子が搭載され、無機材料からなる基板と、
前記基板と前記第1LED素子及び前記第2LED素子とを接合し、前記基板に対して略垂直な方向へ伸びる柱状結晶を有するAuSn系合金層と、を備えた発光装置。
【請求項3】
前記基板を収容し、無機材料からなる筐体を備えた請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1LED素子のピーク波長は、408nm以下であり、
前記第2LED素子のピーク波長は、408nmを超える請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第2LED素子は、青色LED素子、緑色LED素子及び赤色LED素子の3種のLED素子である請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置を製造するにあたり、
前記基板の搭載面にSn膜を形成するSn膜形成工程と、
第1LED素子及び第2LED素子の非搭載面にAu膜を形成するAu膜形成工程と、
前記基板の前記搭載面に形成された前記Sn膜の表面に、前記第1LED素子及び前記第2LED素子に形成された前記Au膜を接触させる接触工程と、
前記Sn膜と前記Au膜を接触させた状態で、水素ガスと窒素ガスの混合ガスからなるフォーミングガスの雰囲気中にて前記基板を加熱し、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に接合する接合工程と、を含む発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記接触工程にて、前記基板の前記搭載面を上方とし前記第1LED素子及び第2LED素子の非搭載面を下方にして、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に載置することにより前記Sn膜と前記Au膜を接触させ、
前記接合工程にて、前記第1LED素子及び前記第2LED素子が前記基板に載置された状態で、前記基板を加熱して、前記第1LED素子及び前記第2LED素子を前記基板に接合する請求項6に記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−27645(P2010−27645A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183557(P2008−183557)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】