説明

発光装置及び発光装置の製造方法

【課題】製造工程を単純化できると共に、光の減衰を抑えることを可能にした発光装置を提供する。
【解決手段】面発光の発光ダイオード3をセラミック基板2上に載置し、発光ダイオード3の周囲の端面からほぼ垂直に立つ形状で樹脂6を塗布し、樹脂6の発光ダイオード3に向かう側面に光反射剤7を吹き付ける。発光ダイオード3の周囲に光反射剤7で覆われた樹脂があるために、発光ダイオード3から出射した光が光反射剤7により最短の位置で反射する。これにより、発光ダイオード3から出射した光の減衰を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に発光素子を実装した発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子である発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)は、安価で長寿命な素子として注目され、各種のインジケータ、光源、平面型表示装置、液晶ディスプレイのバックライト等に広く使用されている。
【0003】
発光素子から出射される光を最大限利用するために、点光源の発光素子の周囲に反射部を設け、発光素子から側面ないし背面方向に出射された光をできるだけ発光装置の正面方向へ向けて照射できるようにした発光装置が知られている(例えば特許文献1)。このような発光装置は、一般的に、発光素子を収納するための凹部を実装基板に形成し、この凹部内に発光素子を実装して、凹部の側壁部等で発光素子から出射された光を反射できるようにしている。また、このような発光装置は、反射面を鏡面状に研磨した金属性リフレクターや、リング状をなす躯体の反射面に蒸着法又はメッキ法により金属薄膜を形成したリフレクターを接合して、発光素子から発せられる光の減衰を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4193446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、発光素子を収納するための凹部を実装基板に形成し、この凹部内に点光源の発光素子を実装し、凹部内に反射部を設けるように発光装置を構成すると、製造工程が複雑になり、高価になる。
【0006】
これに対して、発光素子として面発光のものを用い、基板上に面発光の発光素子を直接実装し、この面発光の発光素子の周囲を囲むように枠体を実装するような構成とすれば、発光素子を収納するための凹部を形成したり、この凹部内に反射部を設けたりする必要がなくなり、製造工程が単純化し、コストダウンが図れる。
【0007】
ところが、基板上に面発光の発光素子を直接実装し、この面発光の発光素子の周囲を囲むように枠体を実装する構成では、発光素子と枠体の間に隙間が生じ、その隙間に発光素子から斜め横方向に出射した光が入り込んで吸収されるため、発光素子から出射した光の減衰が大きく、所定の発光強度を得ることが難しくなる。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、製造工程を単純化できると共に、光の減衰を抑えることを可能にした発光装置及び発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基板上に載置された発光素子と、発光素子の周囲に塗布された樹脂と、樹脂の発光素子に向かう側面に吹き付けられた光反射剤とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る発光装置の製造方法は、発光素子を基板上に載置する工程と、発光素子の周囲の端面から垂直に立つ形状で樹脂を塗布する工程と、樹脂の発光素子に向かう側面に光反射剤を吹き付ける工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光素子の周囲に光反射剤で覆われた樹脂が設けられているために、発光素子から斜め横方向に出射した光が光反射剤により最短の位置で反射する。これにより、発光素子から出射した光の減衰を最小限に抑えることができる。
また、本発明によれば、光反射剤が必要な箇所のみに吹き付けるので、光反射剤を混練した樹脂に比べて、光反射剤の使用効率がよくなり、光反射剤の無駄を最小にすることができる。
さらに、本発明によれば、凹部を実装基板に形成することなく、基板に発光素子を実装できるため、製造工程を単純化できると共に、使用する部材が市場から入手でき、一般的な半導体の製造方法により製造できるため、安価で、発光効率のよい発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態として発光装置の平面図及び断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態として発光装置の光行路の説明図である。
【図3】本発明の発光装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】枠体が金属の場合の発光装置の平面図である。
【図5】光反射剤を吹き付ける処理の一例の説明図である。
【図6】光反射剤を吹き付ける処理の他の例の説明図である。
【図7】光反射剤をマスクを使用して吹き付ける処理の説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態として発光装置の平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1(A)は本発明の第1の実施の形態として発光装置の平面図であり、図1(B)はそのA−A断面図である。また、図1(C)は、図1(B)における発光ダイオード3と枠体4との間隙部(C部)を拡大して示すものである。
【0014】
図1(A)〜図1(C)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1は、セラミック基板2上に載置された発光ダイオード3と、発光ダイオード3の周囲を取り囲む枠体4と、発光ダイオード3と枠体4との間隙に発光ダイオード3の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状で塗布された樹脂6と、樹脂6の発光ダイオード3に向かう側面に吹き付けられた光反射剤7とから構成される。
【0015】
セラミック基板2には、金ワイヤ5を介して、電極12が施されている。発光ダイオード3は、面発光する発光ダイオードである。枠体4は、発光ダイオード3の形状に対応する開口部4aを有している。枠体4の厚さは、製造時や実装時のばらつきを考慮して、発光ダイオード3の厚さよりも若干厚く形成されている。具体的には、枠体4の厚さは、発光ダイオード3の厚さより、50μm程度厚い寸法とされている。樹脂6は、発光ダイオード3と枠体4との間隙を埋めて硬化するものである。光反射剤7は、可視光の光を反射する反射剤である。
【0016】
なお、ここでは、基板としてセラミック基板2を使用しているが、基板としては、リードフレームや、FR4(Flame Retardant Type 4)などの樹脂基板や、アルミナセラミックに代表されるセラミック基板など、一般的に半導体の基板として使用されるものであれば、どのようなものを用いても良い。
【0017】
また、ここでは、発光素子として面発光する発光ダイオード3を用いているが、面発光の素子であればいかなる素子でも使用できる。
【0018】
また、枠体4は、金属製、セラミック製または、プラスティック製など、どのような素材のものを用いても良い。但し、枠体4として金属製のものを用いる場合には、セラミック基板2の電極12と電気的に接触しないような処理を行う必要がある。
【0019】
樹脂6は、シリコーン系やエポキシ系、又は、両者を混合した樹脂が望ましい。さらに、本発明の発光装置を製造する上で、熱履歴をできるだけ少なくするために、樹脂6としては、加熱硬化型よりも紫外線などの光にて硬化する光硬化型が望ましい。また、発光ダイオード3端面からほぼ垂直に立つような形状を形成するために、樹脂6としては、比較的高い粘度(数10Pa・s以上)のものを用いることが望ましい。
【0020】
光反射剤7は、可視光の反射率がよい炭酸カルシウム、シリカ、二酸化ケイ素、シリコーン、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタンマグネシウム、マイカ(雲母)、タルクなどを粒子化したもの、又は、ガラスフィラーなどを使用する。その中でも、比較的安価で手に入りやすいシリカや二酸化ケイ素を粒子化したものが望ましい。
【0021】
図1(A)〜図1(C)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1では、セラミック基板2上に面発光の発光ダイオード3が直接載置され、さらに、セラミック基板2上に、発光ダイオード3の周囲を取り囲むように、枠体4が実装される。そして、発光ダイオード3と枠体4との間に生じた隙間に、樹脂6が塗布される。
【0022】
前述したように、本発明の第1の実施の形態として発光装置1では、枠体4の厚さは発光ダイオード3の厚さよりも若干厚くなっている。樹脂6は、この枠体4の厚さに合わせて塗布される。
【0023】
このように、枠体4の厚さに合わせて樹脂6を塗布すると、図1(C)に示すように、樹脂6は、発光ダイオード3の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状で塗布されることになる。樹脂6がこのように塗布されたら、樹脂6の発光ダイオード3に向かう側面に、光反射剤7が吹き付けられる。これにより、図2に示すように、発光ダイオード3から水平方向に出射した光Lは、樹脂6の光反射剤7で覆われた面で、発光ダイオード3の中心に向かって反射され、光の減衰を最小限に抑えることができる。
【0024】
次に、本発明の発光装置1の製造方法を図3を参照して詳細に説明する。図3に本発明の発光装置の製造方法としてフローチャートを示している。
【0025】
図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る発光装置1の製造工程では、先ず、セラミック基板2上の所定位置に発光ダイオード3を銀ペーストなどの導電性接着剤などで実装する(ステップS1)。次の工程では、セラミック基板2上に実装された発光ダイオード3とセラミック基板2上の電極12間にワイヤボンディング接続をして電気的に接続をする(ステップS2)。次の工程では、セラミック基板2上の発光ダイオード3の周りを覆うようにして、枠体4をセラミック基板2上に接着剤などを使用して実装する(ステップS3)。
【0026】
発光ダイオード3と枠体4とがセラミック基板2上に取り付けられたら、次の工程では、発光ダイオード3と枠体4の間の隙間に、樹脂6を発光ダイオード3の側面から枠体4の高さまで塗布し、隙間を埋める(ステップS4)。そして、次の工程では、塗布した樹脂6の発光ダイオード3側面に接する4つの樹脂6の表面に、光反射剤7を吹き付ける(ステップS5)。次の工程では、塗布した樹脂6を硬化させ、吹き付けた光反射剤7を樹脂6に接着させるために、ある一定の温度である一定の時間ほど発光装置を加熱する(ステップS6)。これらの工程により、図1に示したように発光装置1が製造される。
【0027】
ステップS3の工程で、枠体4をセラミック基板2に実装する際に、枠体4として金属製のものを用いた場合には、セラミック基板2の電極12と電気的に接触しないような処理を行う必要がある。具体的な処理としては、枠体4が金属製の場合、セラミック基板2に接する面に、電気的な絶縁処理を行う。又は、枠体4が金属製の場合、以下のように、電極退避部11を形成する。
【0028】
図4は、枠体4が金属製の場合の発光装置1の平面図であり、図4(B)はそのB−B断面図である。また、図4(C)は、図4(B)における発光ダイオード3と枠体4との間隙部(D部)を拡大して示すものである。
【0029】
図4(C)に示すように、枠体4が金属製の場合には、枠体4をセラミック基板2上に配置すると、セラミック基板2に施されている電極12が枠体4と対向する部分では、電極12が枠体4と接触し、電気的に導通してしまう可能性がある。そこで、図4(C)に示すように、枠体4と電極12とが対向する箇所に、電極退避部11が形成される。これにより、枠体4として金属製のものを用いても、枠体4と電極12とが電気的に導通することが防止できる。
【0030】
また、ステップS5の工程で、光反射剤7を吹き付ける処理は、例えば、図5に示すように、噴射出口が2つある噴射ノズル8を用いて、樹脂6の発光ダイオード3の側面に接する4つの樹脂表面に、光反射剤7を吹き付ける。このような噴射出口が2つある噴射ノズル8を用いると、樹脂6の表面に光反射剤7を効率的に吹き付けることができる。
【0031】
なお、図6に示すように、噴射出口が1つの噴射ノズル8aを用いて、樹脂6の表面に光反射剤7を吹き付けるようにしても良い。
【0032】
また、ステップS5の工程で、光反射剤7を吹き付ける処理を行う際に、発光ダイオード3の発光面に光反射剤7が付着してしまうおそれがある。そこで、発光ダイオード3の発光面に光反射剤7が付着することを防止するために、マスクを使用する方法がある。
【0033】
図7は、発光ダイオード3の発光面に光反射剤7が付着する際に、マスクを使用する方法を示すものである。
【0034】
図7において、最初の工程では、発光ダイオード3の発光面に対応する形状のマスク10を用意し、図7(A)に示すように、発光ダイオード3の発光面にマスク10を載置する。
【0035】
次の工程では、図7(B)に示すように、樹脂6の発光ダイオード3に向かう側面に、噴射ノズル8aを用いて光反射剤7を吹き付ける。なお、この例では、一方向の噴射ノズル8aを用いているが、勿論、二方向の噴射ノズル8を用いても良い(図5参照)。
【0036】
樹脂6の発光ダイオード3に向かう側面に光反射剤7が吹き付けられたら、次の工程では、図7(C)に示すように、発光ダイオード3上にあるマスク10を取り外す。このように、マスク10を用いると、噴射ノズル8aからの光反射剤7が散乱しても、発光ダイオード3の発光面には光反射剤7は付着しない。
【0037】
さらに、噴射ノズルを用いて光反射剤7を吹き付ける方法では、セラミック基板2を若干傾けて吹き付けを行うと、セラミック基板2を傾けないで吹きつけを行う場合よりも容易に、樹脂6の表面に光反射剤7を吹き付けることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
図8(A)は本発明の第2の実施の形態として発光装置の平面図であり、図8(B)はそのA−A断面図である。また、図8(C)は、図8(B)における発光ダイオード103の周囲を拡大して示すものである。
【0039】
図8(A)〜図8(C)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置101は、セラミック基板102上に載置された面発光の発光ダイオード103と、発光ダイオード103の周囲に、セラミック基板102上から、発光ダイオード103の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状で塗布された樹脂106と、樹脂106の発光ダイオード103に向かう側面に吹き付けられた光反射剤107とから構成される。セラミック基板102には、金ワイヤ105を介して、電極112が施されている。
【0040】
前述の第1の実施形態は、発光ダイオード3の周囲を取り囲む枠体4を設け、発光ダイオード3と枠体4との間隙に発光ダイオード3の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状で樹脂6を塗布していたのに対して、この第2の実施形態は、枠体が設けられず、発光ダイオード103の周囲を、セラミック基板102上から塗布された樹脂106で覆っている。樹脂106の粘度が十分高い(数100Pa・s以上)場合は、枠体がなくても、発光ダイオード103の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状の樹脂106が形成できる。他の構成については、前述の第1の実施形態と同様である。本発明の第2の実施形態では、枠体を必要としないので、さらにコストダウンを図ることができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、実施形態においては、樹脂6が発光ダイオード3の周囲の端面からほぼ垂直に立つような形状で塗布されていたが、これに限定される必要はなく、樹脂6が発光ダイオード3の周囲近傍に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0042】
1:発光装置
2:セラミック基板
3:発光ダイオード
4:枠体
5:金ワイヤ
6:樹脂
7:光反射剤
8:噴射ノズル
10:マスク
11:電極退避部
12:電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に載置された発光素子と、
前記発光素子の周囲に配置された樹脂と、
前記樹脂の前記発光素子に向かう側面に吹き付けられた光反射剤と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記樹脂は、前記発光素子の端面から垂直に立つ形状となるように塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子の周辺を、前記発光素子の厚さより厚い枠体で取り囲み、
前記樹脂が、前記発光素子と前記枠体との間隙に前記枠体の厚さに合わせて塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子の周囲に、前記基板上から、前記発光素子の厚さより厚くなるように前記樹脂が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、面発光の発光素子であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記樹脂は、シリコーン系やエポキシ系、又は、両者を混合した樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記光反射剤は、炭酸カルシウム、シリカ、二酸化ケイ素、シリコーン、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタンマグネシウム、マイカ、タルクを粒子化したもの、又はガラスフィラーからなるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
発光素子を基板上に載置する工程と、
前記発光素子の周囲の端面から垂直に立つ形状で樹脂を塗布する工程と、
前記樹脂の前記発光素子に向かう側面に光反射剤を吹き付ける工程と
を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134278(P2012−134278A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284233(P2010−284233)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】