説明

発光装置及び電子機器

【課題】発光素子に対する温度の影響を極力排除し、かつ、構成の簡易な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、基板(12)と、前記基板上に形成される複数の発光素子(8)と、前記複数の発光素子の各々を駆動する複数の駆動回路(11)と、を備え、前記複数の駆動回路の各々は、少なくとも前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を含み、前記複数の駆動回路は、前記基板上で前記複数の発光素子を挟み込むように、当該基板上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、すなわち有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機発光層を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機EL素子は、これら画素電極及び対向電極間に所定の電流が供給されることによって発光する。
【0003】
このような有機EL素子を含む発光装置は、例えば、タンデム方式や4サイクル方式等のラインプリンタ等の画像形成装置用のプリンタヘッドに利用される。ここで画像形成装置とは、例えば前記のプリンタヘッドに加えて、感光体ドラム等の像担持体、帯電器、現像器、及び転写器等を備える。像担持体は、帯電器によって帯電された後、プリンタヘッドの一部を構成する有機EL素子から発した光に曝される。この露光によって、像担持体の表面には静電潜像が形成される。この後、当該静電潜像は、現像器から供給されるトナーによって現像され、このトナーが転写器によって紙等の被転写媒体に転写される。これにより、被転写媒体上には、所望の画像が形成されることになる。
【0004】
このような画像形成装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2007−66952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような画像形成装置におけるプリンタヘッド、即ち発光装置は、一般に、その温度に応じて発光状態が変化する特性をもつ。例えば、前記有機EL素子において、輝度特性、あるいは電流特性が異なる場合がある。また、例えば、前記の両電極間に電圧が印加されて発光が開始されてから、その輝度が所定値に達するまでの時間は、前記有機発光層の温度が低いと長く、高いと短い。したがって、例えば、前記画像形成装置において同階調の画像を形成しようとしても、運転開始直後の時点とその後一定時間経過した時点とにおいて形成した被転写媒体上の画像の階調が異なる、といった不具合が発生しうることになる。前者の時点では未だ有機発光層は冷えており、後者の時点では暖められているからである。
なお、前述の有機EL素子は、温度に応じた発光状態の変化が、他の発光素子に比べて、顕著であるため、上述の問題はより深刻となる。
【0006】
前述の特許文献1では、このような不具合に対処するべく、「各発光素子を加熱する加熱手段」を備えている(特許文献1の〔請求項1〕、〔図2〕等)。これによれば、各発光素子は、加熱手段によって所定の温度となるよう暖められることになるから、たしかに、前記の不具合を一定程度解消することは可能である。
しかしながら、かかる手段では、「加熱手段」それ自体を別途に設ける必要が生じ、更には、この加熱手段が発熱するのに必要なエネルギを供給するための手段等もまた、別途に設ける必要がある。このように、特許文献1の開示の技術によれば、総じて、発光装置の構成が複雑化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、発光素子に対する温度の影響を極力排除し、かつ、構成の簡易な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の観点に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に形成される複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々を駆動する複数の駆動回路と、を備え、前記複数の駆動回路の各々は、少なくとも前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を含み、前記複数の駆動回路は、前記基板上で前記複数の発光素子を挟み込むように、当該基板上に形成される。
【0009】
本発明によれば、まず、発熱素子を含む駆動回路が備えられているので、従来のように、発光素子を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置の構成は極めて簡易化される。
なお、「発熱素子」とは、具体的には例えば、発光素子の定電流源となる薄膜トランジスタ等、発光素子の駆動に不可欠的回路要素が該当しうる。この場合、発熱を目的とする素子と、発光素子を駆動するのに必要な素子とが兼用されることによって、構成の更なる簡易化を達成することができる。ただし、場合によっては、発熱それ自体を目的とする素子を設けるのでもよい。また、発熱素子の数は、1つの駆動回路につき1つあればよいが、2つ以上あってもよい。
また、本発明では、そのような駆動回路が複数の発光素子を「挟み込む」ように配置されているので、当該発光素子の周囲の温度は比較的安定し、その結果、当該発光素子の温度自体も比較的安定する。よって、その発光状態も所定の状態で維持され得ることになる。したがって、本発明に係る発光装置は、周囲の環境温度、当該発光装置の運用時間、あるいは複数の発光素子それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
なお、「挟み込む」の中には、「取り囲む」も含まれる。
また、本発明において、発熱素子が、発光素子の発熱量に「応じた」熱を発するというのは、発熱素子及び発光素子の単位時間当たりの発熱量が略同じである場合等を含むが、それに限られない。例えば、発熱素子の発熱量が、発光素子のそれより少ない場合も、あるいは多い場合も含まれる。効果の側面からいえば、本発明は、発光素子が温度に応じてその輝度を変化させる不具合を払拭することに目的を一つの置くのだから、前記の「応じた」も、究極的には、かかる観点からその限界が論じられなければならない。
【0010】
この発明の発光装置では、前記発光素子が発光する際には、前記発熱素子における発熱は抑制され、前記発光素子が発光しない際には、前記発熱素子における発熱が促進されるように、これら発光素子及び発熱素子を制御する制御手段を更に備える、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子及び発熱素子それぞれにおける発熱はいわば相補的に行われることになるから、前述した本発明に係る効果がより実効的に享受され得る。これは以下の事情による。
発光素子はその発光時に主に発熱するが、その際、当該発光素子及びその周囲の温度の上昇も見込まれることになる。一方、非発光時には発熱は抑制され、それにより、前記温度の低下が見込まれる。これが繰り返されれば、好まざる温度むらが生じるおそれがあり、発光素子周囲の温度を安定的に維持することは困難となる。しかるに、本態様では、発光素子が非発光の際には、発熱素子における発熱が促進されるのである。したがって、発光素子周囲の温度は一定の状態に維持され易いのである。
なお、本態様にいう「抑制」及び「促進」とは、例えば発熱素子が薄膜トランジスタであるとするならば、前者の「抑制」は当該薄膜トランジスタのドレイン・ソース間電圧を比較的低く設定すること、後者の「促進」は同電圧を比較的高く設定すること、等々の操作が、具体的には該当し得る。
【0011】
また、前記発光装置では、前記複数の駆動回路の各々は、当該各々が発する熱の影響が及ぶ第1領域の中心の位置が、前記複数の発光素子の各々が発する熱の影響が及ぶ第2領域の中心の位置に一致するように、前記基板上に形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、複数の発光素子全体の温度の安定がより実効的に達成される。これは、前記第1領域の中心と前記第2領域の中心とが一致するようになっているため、複数の発光素子が、複数の駆動回路から発生する熱を比較的均等に受けうるからである。
【0012】
また、前記発光装置では、前記複数の発光素子は、基準直線に沿うようにして配置され、前記複数の駆動回路は、少なくとも第1及び第2の駆動回路群に区分され、これら第1及び第2の駆動回路群は、その各々が前記基準直線に沿うように並び、かつ、前記基準直線を挟んで対向するように配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子及び駆動回路の基板上における最も好適な配置態様の1つが提供される。特に、本態様に係る配置態様では、例えば、前記基板が略長方形状をもち、前記基準直線が当該略長方形状の長手方向に沿って延びる、という形態であれば、なお好ましい。この場合、そのような基板は、プリンタヘッドに好適に利用される。
【0013】
この態様では、前記複数の駆動回路の中には、前記発光素子を駆動する駆動回路に加えて、前記発光素子を駆動しないダミー駆動回路が含まれ、前記ダミー駆動回路は、前記基板の面に沿って見て、前記第1の駆動回路群の両端のそれぞれ、及び、前記第2の駆動回路群の両端のそれぞれ、に配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、ダミー駆動回路が備えられることから、基準直線に沿って並ぶ複数の発光素子の両端付近に位置する発光素子も、駆動回路が発する熱を受けることが可能になる。つまり、当該ダミー駆動回路がない場合に比べて、本態様によれば、複数の発光素子の全体の温度の安定がより実効的に達成される。
【0014】
あるいは、前記の態様では、前記複数の発光素子は、前記基準直線に沿って見て、千鳥足状に並べられている、ように構成してもよい。
この態様によれば、複数の発光素子の基板上における最も好適な配置態様の1つが提供される。
なお、この態様から明らかなように、前述の、複数の発光素子が「基準直線に沿うようにして配置」の中には、様々な具体的態様が含まれ得る。単純に、当該基準直線上に乗るように、複数の発光素子が一直線に並ぶ、という態様は勿論、前記の「千鳥足状」のほか、一定のパターンが繰り返し並ぶような場合も、場合により、「基準直線に沿うように」に含まれるのである。
【0015】
また、前記発光装置では、前記基板の上には、少なくとも前記発光素子及び前記発熱素子を覆うように熱伝導層が更に備えられる、ように構成してもよい。
この態様によれば、発熱素子で生じた熱が、発光素子に至り易くなるため、前述した本発明に係る効果がより実効的に奏される。
【0016】
この態様では、 前記熱伝導層は、ガラスの熱伝導率よりも大きい熱伝導率をもつ、ように構成すると好ましい。
これによれば、発熱素子及び発光素子間の熱の流通がより容易になる。なお、このような性質を備える「熱伝導層」としては、具体的には例えば、アルミニウム、カルシウム、MgAg合金等々から作られ得る。
【0017】
なお、この態様において、前記発光素子が、画素電極及びこれに対向する対向電極並びにこれら電極間に挟まれる発光機能層を含む有機EL素子を含む場合においては、前記熱伝導層は、前記対向電極を含む層がそれに該当する、という構成を採用するのが好ましい。
これによれば、1つの要素が2つの機能を兼ね備えることになるので、発光装置の構成の簡易化がより促進される。
【0018】
一方、本発明の第2の観点に係る発光装置は、上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に形成される発光素子と、前記発光素子を駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記発光素子に直列に接続される第1トランジスタと、前記発光素子及び前記第1トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される第2トランジスタと、を含む。
【0019】
本発明によれば、第2トランジスタには、例えばそのゲートへの制御信号に応じて、発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるので、その場合、当該第2トランジスタは比較的活発に発熱する。
このようなことから、まず、本発明によれば、前記第2トランジスタが発光素子を加熱することが可能であるので、従来のように、発光素子を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置の構成は極めて簡易化される。
また、発光素子は第2トランジスタの熱を受け得ることから、その温度が比較的安定的に維持され得る。よって、その発光状態も所定の状態に維持され得ることになる。したがって、本発明に係る発光装置は、周囲の環境温度、当該発光装置の運用時間、あるいは複数の発光素子それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
なお、前述の本発明の第1の観点に係る発光装置にいう「駆動回路」は、本発明の第2の観点に係る発光装置にいう「駆動回路」を含み得る。この場合、本発明の第1の観点に係る発光装置にいう「発熱素子」は、ここでいう「第2トランジスタ」を含み得、あるいはそれに加えて前記の「第1トランジスタ」をも含み得る。
【0020】
この発明の発光装置では、前記第1トランジスタのゲートには、前記発光素子に電流を流すかどうかを決める第1信号が入力され、前記第2トランジスタのゲートには、当該第2トランジスタに電流を流すかどうかを決める第2信号が入力され、前記第1信号及び前記第2信号は、相補的にON又はOFFとなる、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光素子及び第2トランジスタそれぞれにおける発熱はいわば相補的に行われることになるから、前述した本発明に係る効果がより実効的に享受され得る。これは以下の事情による。
発光素子はその発光時に主に発熱するが、その際、当該発光素子及びその周囲の温度の上昇も見込まれることになる。一方、非発光時には発熱は抑制され、それにより、前記温度の低下が見込まれる。これが繰り返されれば、好まざる温度むらが生じるおそれがあり、発光素子周囲の温度を安定的に維持することは困難となる。しかるに、本態様では、発光素子が非発光の際には、第2トランジスタにおける発熱が促進されるのである。したがって、発光素子周囲の温度は一定の状態に維持され易いのである。
なお、いまの説明からも自ずと明らかなように、本発明にいう「ON」とは、第1信号が、発光素子に電流を流し得るようなレベルになること、又は、第2信号が、第2トランジスタに電流を流し得るようなレベルになること、をいう。「OFF」とは、いま述べた各場合の逆である。
【0021】
一方、本発明の第3の観点に係る発光装置は、上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に形成される発光素子と、前記発光素子を駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記発光素子と直列に接続され、当該発光素子の電流源として機能する第3トランジスタと、前記発光素子とは並列に、かつ、前記第3トランジスタとは直列に接続され、前記第3トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決める第4トランジスタと、を含む。
【0022】
本発明によれば、第3トランジスタは電流源として機能するので、当該第3トランジスタは殆ど常に発熱する。ただ、第4トランジスタの挙動に応じて、第3トランジスタの電流が発光素子に流れる場合には、発光素子の発熱が主に活発になる。
このようなことから、まず、本発明によれば、前記第3トランジスタが発光素子を加熱することが可能であるので、従来のように、発光素子を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置の構成は極めて簡易化される。
また、発光素子はその非発光時において第3トランジスタの熱を受け得ることから、その温度が比較的安定的に維持され得る。よって、その発光状態も所定の状態に維持され得ることになる。したがって、本発明に係る発光装置は、周囲の環境温度、当該発光装置の運用時間、あるいは複数の発光素子それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
なお、前述の本発明の第1の観点に係る発光装置にいう「駆動回路」は、本発明の第3の観点に係る発光装置にいう「駆動回路」を含み得る。この場合、本発明の第1の観点に係る発光装置にいう「発熱素子」は、ここでいう「第3トランジスタ」を含み得、あるいはそれに加えて前記の「第4トランジスタ」をも含み得る。
【0023】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の電子機器は、上述した各種の発光装置、即ち温度の影響を受けずに発光輝度を維持し得る発光装置を備えているので、殆ど常に、高品質な画像を形成することが可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図4を参照しながら説明する。なお、これらの図面及びそれ以外の図面で以下に参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
図1は、発光装置10を光ヘッド(発光装置)として用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、この画像形成装置は、発光装置10、集束性レンズアレイ15、感光体ドラム110、及び制御部CUを含む。
【0025】
このうち発光装置10は、図1中長手方向に沿って配列された複数の有機EL素子(発光素子)を備える。これら有機EL素子の各々は、図1中下方に向けて光を出射する(図中破線参照)。この光は、すぐ後に述べる集束性レンズアレイ15に入射する。なお、この発光装置10についてのより詳細な構成については、後に改めて述べる。
【0026】
集束性レンズアレイ15は発光装置10と感光体ドラム110との間に配置される。集束性レンズアレイ15は、各々の光軸を発光装置10に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。発光装置10の各有機EL素子からの出射光は集束性レンズアレイ15の各屈折率分布型レンズを透過したうえで感光体ドラム110の外表面に到達する。
なお、この集束性レンズアレイ15としては、具体的には例えば、日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)を用いることができる(セルフォック:SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。これを用いれば、発光装置10からの光は、感光体ドラム110の上で、正立等倍結像する。
【0027】
感光体ドラム110は略円柱形状をもつ。その中心軸には、回転軸が備えられている。感光体ドラム110は、この回転軸を中心として記録材(被転写媒体)が搬送される方向である副走査方向に回転する(図中の矢印参照)。なお、回転軸の延在方向は、主走査方向に一致する。
このような感光体ドラム110及び前記の発光装置10は、当該感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の各有機EL素子の発光タイミングとの間に所定の関係が成立するように、制御される。例えば、主走査方向に沿っては、形成しようとする画像の1ライン分の明暗に応じて、各有機EL素子の発光・非発光が制御され、副走査方向に沿っては、1ライン分の画像に関する感光工程が完了した後に感光体ドラムが所定の角度だけ回転するように、当該感光体ドラムの回転が制御される。このようにして、感光ドラム110の外表面には、所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0028】
制御部CUは、いずれも図示しない、CPU(Central Process Unit)、必要な情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、及び当該画像形成装置を運用する上で必要なプラグラム等を格納するROM(Read Only Memory)等を備える。前述の感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の発光タイミングとの同期も、この制御部CUによってはかられる。
また、この制御部CUは、後述するように、複数の有機EL素子の各々の発光タイミングと、発熱用トランジスタにおける電流印加タイミングとの関係設定に係る制御等をも行う。
そのほか、当該制御部CUは、本実施形態に係る画像形成装置を構成する各種要素が調和的に動作するように、当該各種要素の動作を司る。
【0029】
前述の発光装置10は、より詳細には、図2に示すような構造を持つ。図2において、発光装置10は、素子基板7及びカバー基板12を備えている。このうち素子基板7は、同図に示すように、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。この素子基板7は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
【0030】
この素子基板7の上には、複数の有機EL素子8及び複数の駆動回路11等が形成されている。なお、図2において示されている有機EL素子8の数、及び、駆動回路11の数は、単なる一例を示しているに過ぎない。これらを実際にいくつか設けるかは、本発明の本質に全く関わらない。したがって、この図2及び後に参照する図5乃至図10等の各図面において示されている、有機EL素子8の数及び駆動回路11の数は、図面の見易さや紙面の大きさ等の都合によって定められているのであって、実際の装置を必ずしも反映するものではない。
【0031】
有機EL素子8は、相互に対向する2つの電極、及び、これら2つの電極間に少なくとも有機発光層を含む発光機能層を備えている(いずれも図2において不図示)。前記2つの電極のうち一方の電極には、共通線16が接続され、他方の電極には駆動素子を介して電源線が接続される(このうち駆動素子及び電源線については図2において不図示。これらについては、すぐ後に図3を参照して説明する。)。
また、発光機能層に含まれる有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。発光機能層は、前記有機発光層のほか、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
本実施形態において、この有機EL素子8は、図2に示すように、素子基板7の長手方向に延びる直線に沿うように、千鳥足状に配列されている。ここで「直線」とは、図2においてはたまたま、共通線16がそれになぞらえられる。また、「千鳥足状」に配列されるとは、端から順番に有機EL素子に1,2,3,…と番号を振るとするなら、奇数番目は当該直線を基準として図2中上側、偶数番目は当該直線を基準として図2中下側に配置される、というような配列、を含意する。ちなみに、このような場合であっても、本発明にいう「複数の発光素子」が、「直線に沿うように」配列されている、ということの範疇に入るものとする。
【0032】
駆動回路11は、有機EL素子8を駆動する。より詳しくは、図3に示すように、駆動回路11は、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとを備えている。
このうち駆動用トランジスタTdr1は、前述で「駆動素子」と述べたものに該当し、有機EL素子8と電源線Velとの間に介在して、電源線から有機EL素子8への通電の有無及び程度を制御する。その通電は、駆動用トランジスタTdr1のゲートに入力される発光信号Data1のレベルに応じる。
【0033】
一方、発熱用トランジスタTconは、前述の有機EL素子8及び駆動用トランジスタTdr1と並列に接続されている。すなわち、発熱用トランジスタTconのソースは電源線Velに接続され、そのドレインは有機EL素子8を構成する両電極のうち駆動用トランジスタTdr1が接続されていない方の電極に接続されている。また、発熱用トランジスタTconのゲートは、発熱信号X Dataが供給される制御線に接続されている。
【0034】
このような発熱用トランジスタTconは、前記発熱信号X Dataのレベルに応じて、有機EL素子8で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流される。
これをよりよく実現するため、具体的には例えば、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconの特性は、各々のゲートに同レベルの信号が供給されたときに流れる電流Ioled及びIconの各値がほぼ同じになるように設定されていると好ましい。あるいは、駆動用トランジスタTdr1の発熱を考慮に入れるなら、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。あるいは、電流Ioledの一部は光エネルギに変換され、それは発熱には寄与しないこと、そして、その場合における有機EL素子8と発熱用トランジスタTconとの熱エネルギを等価にすること、をも考慮に入れるなら、やはり、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。
【0035】
また、駆動回路11は、例えば図4に示すようなタイミングチャートに従って動作する。なお、この場合、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとは、それぞれ飽和領域において使用されることが前提とされている。
図4において、発光信号Data1は一定周期をもつ矩形波状の信号である。他方、発熱信号X Dataは、発光信号Data1がLレベルのときHレベルとなり、HレベルのときLレベルとなるような、矩形波状の信号である。発光信号Data1が、Lレベルにあるとき、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr1の飽和電流たる電流Ioledが流れる。したがって、この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。他方、発熱信号X DataがLレベルにあるとき、有機EL素子8には電流が流れず、発熱用トランジスタTconをその飽和電流たる電流Iconが流れる。したがって、この際、発熱用トランジスタTconは発熱する。
ここで、発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、上述のように相補的であるから、有機EL素子8が発熱する時には発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8が発熱しない時には発熱用トランジスタTconは発熱する、という関係が成立する。
なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図4において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0036】
なお、前述の発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、図1の制御部CUによって発せられる。
また、図3に示す駆動回路11において、発熱するのは発熱用トランジスタTconのみに限られない。すなわち、駆動用トランジスタTdr1もまた、電流が流れれば当然発熱する。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の発熱用トランジスタTconのみならず、駆動用トランジスタTdr1もまた、その該当性を有する。
【0037】
以上のような回路構成をもつ駆動回路11は、図2に示すように、前述の千鳥足状に配列された複数の有機EL素子8を挟み込むように配列される。より具体的には、これら複数の駆動回路11は、図2では上側に位置する第1の駆動回路群11aと、下側に位置する第2の駆動回路群11bとに分かたれて配置される。これら第1及び第2の駆動回路群11a及び11bは、ともに共通線16に沿って並び、かつ、両者が当該共通線16及び複数の有機EL素子8の双方を共に挟んで対向するように配置される。
【0038】
また、複数の駆動回路11は、図2に示すように、ダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えている。これら4つのダミー駆動回路11D1乃至11D4のうち、ダミー駆動回路11D1は、第1の駆動回路群11a中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D2は、同最右端に位置づけられている。また、ダミー駆動回路11D3は、第2の駆動回路群11b中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D4は、同最右端に位置づけられている。
ここでダミー駆動回路11D1乃至11D4とは、図3でいえば、有機EL素子8、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconのうち、例えば最前者のみを備えていない回路構成を持つ駆動回路である。つまり、かかるダミー駆動回路11D1乃至11D4では、発熱信号X Dataのレベルに応じて、主に、発熱用トランジスタTconによる発熱のみが生じるのである。
なお、ダミー駆動回路11D1乃至11D4は、場合により、有機EL素子8に加えて、駆動用トランジスタTdr1の設置を省略した回路構成を備えていてもよい。
【0039】
図2に示すカバー基板12は、素子基板7と同様、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。ただし、このカバー基板12は、素子基板7に比べて、その平面視した場合の面積が一回り小さい。カバー基板12は、素子基板7上の有機EL素子8及び駆動回路11を覆うように設置されるが、前者の面積が後者のそれよりも一回り小さいため、素子基板7には余剰の領域が生じる。この領域には、例えば前記駆動回路11に電源等を供給する入出力端子等が設けられる。
このカバー基板12は、有機EL素子8に対して水分が浸入することを防止する機能をもつ。なお、このような機能は素子基板7においてもまた果たしえる。結局、有機EL素子8は、図2の紙面を貫く方向に沿って、素子基板7及びカバー基板12双方によって挟み込まれる状態におかれることで、水分、あるいはその他の埃等の進入という観点からみて、ほぼ完全に封止される。
このようなカバー基板12は、例えばガラス、あるいは適当な金属材料から作られる。
【0040】
なお、これら素子基板7及びカバー基板12からなる、発光装置10全体の大きさは、例えば、その長さ(図2でいえばその左右方向の長さ)が330〜350mm、幅(図2でいえばその上下方向の長さ)が10〜30mm、厚さ(図2でいえばその紙面垂直方向の長さ)が1〜5mm、等とされて好適である。この具体例によれば、前記記録材(被転写媒体)のサイズが“A3サイズ”である場合にも対応可能である。
【0041】
以下では、以上のような構成を備える発光装置10の作用効果について、既に参照した図面に加えて、図5及び図6を参照しながら説明する。
発光装置10は、上述のように、複数の有機EL素子8と、これら各々に対応する、発熱用トランジスタTconを含む駆動回路11を複数備えている。そして、これも上述のように、有機EL素子8の発光時(即ち、発熱時)は、発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8の非発光時は、発熱用トランジスタTconは発熱する。
【0042】
このようにして有機EL素子8及び駆動回路11によって発せられた熱は、周囲に輻射され、また、素子基板7の表面及び内部を伝導する。したがって、これら有機EL素子8及び駆動回路11から熱が発せられる場合においては、その熱の影響が及ぶ領域(以下、これを「加熱領域」ということがある。)が、例えば概ね図5に示すように画定され得る。すなわち、図5においては、有機EL素子8に関しては加熱領域RD1が、同図中上段及び下段に位置する第1及び第2の駆動回路群それぞれに関しては加熱領域RC1及びRC2が、それぞれ画定されている(前者は図中破線参照、後者は図中一点鎖線参照。)。ちなみに、後者の加熱領域RC1及びRC2の画定に当たっては、ダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在も当然考慮に入れられている。
ここで、これらの加熱領域RD1、RC1及びRC2については更に、それぞれ、その中心位置を定めることができる。すなわち、加熱領域RD1に関しては中心CD1が、加熱領域RC1及びRC2に関しては中心CC1及びCC2が定められ得る(以下、これら中心CD1、CC1及びCC2をそれぞれ、発熱中心CD1、CC1及びCC2と呼ぶことがある。)。
このような発熱中心CD1、CC1及びCC2は、それぞれ、有機EL素子8及び駆動回路11によって発せられた熱が周囲に影響を及ぼす際の、いわば“震源地”とみることができる。特に、駆動回路11に関する発熱中心CC1及びCC2については、発熱中心CC1から一定距離Dだけ遠ざかった地点と、発熱中心CC2から同一の距離Dだけ遠ざかった地点とにおいては、ほぼ同じだけの熱量を受けるであろう、という推測が働くという意味において、特別の意義を有するといえる。
【0043】
そして、実は、本実施形態に係る有機EL素子8及び駆動回路11は、図5に示すように、前記発熱中心CD1と、前記発熱中心CC1及びCC2を結ぶ線分の中間点とが一致するように、その素子基板7上の配置が定められている。なお、後者の「中間点」とは、複数の駆動回路11の全体を見渡した場合における加熱領域(即ち、加熱領域RC1及びRC2を合したかの如き領域)に関する中心、とも言い換えることができる。
【0044】
このような構成によると、有機EL素子8の周囲の温度は極めて安定する。というのも、複数の有機EL素子8を一体としてみれば、これは、図5中上段に位置する第1の駆動回路群11aからも、同図中下段に位置する第2の駆動回路群11bからも、同じだけの熱量を受け得る場所に位置することになるからである。
【0045】
より具体的に説明すると、図5では、前記の加熱領域RD1、RC1及びRC2が画定され得る結果、当該の発光素子10全体の観点からみた温度安定領域RTPが画定され得る(図中その内部にハッチングをかけた破線の囲み参照)。この温度安定領域RTPは、以下のような背景を持つ。
(1) 複数の有機EL素子8の各々は、画像形成装置の運用期間中、発光及び未発光(消灯)を繰り返すが、前者の場合、当該各々の周囲(即ち、加熱領域RD1の範囲)の温度は上昇し、後者の場合、当該温度は低下する。
(2) もっとも、この後者の場合、本実施形態では、発熱用トランジスタTconが発熱するので、加熱領域RC1及びRC2に含まれる範囲においては、前記の温度の低下分が補われるように、熱の供給が行われる。
(3) 上記の(1)及び(2)は適宜繰り返されることになるが、それによれば、温度が一定の範囲からは外れない安定した領域が生まれる。
(3´) なお、有機EL素子8の発光を安定させるという観点からみれば、直接には関係ない事項ではあるが、発熱用トランジスタTconが発熱しない時、この発熱用トランジスタTconは有機EL素子の発熱の影響を受ける。そうすると、当該発熱用トランジスタTconを含む一定の領域もまた、温度が一定の範囲からは外れない。
(4) 以上の(3)及び(3´)によって規定される領域が、温度安定領域RTPである。
(5) この温度安定領域RTPは、本実施形態において、前記の発熱中心CD1(あるいは、前記の発熱中心CC1及びCC2を結ぶ線分の中間点)を中心にもつ。
【0046】
そして、本実施形態においては、このような温度安定領域RTPは、図5に示すように、複数の有機EL素子8全体を好適に包み込むような範囲をもつ。
このようにして、本実施形態によれば、有機EL素子8の周囲の温度は極めて安定するから、当該有機EL素子8それ自体の温度もまた安定し、もって、その発光状態も常に所定の状態に維持され得ることになる。
したがって、本実施形態に係る発光装置10は、周囲の環境温度、当該発光装置10の運用時間、あるいは複数の有機EL素子8それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
よってまた、本実施形態に係る画像形成装置は、殆ど常に、品質の安定した画像を形成することが可能になる。
【0047】
このような本実施形態に係る作用効果は、比較例たる図6との対比によって、より明瞭に把握される。
すなわち、図6においては、図5と同様、複数の有機EL素子81及び82が千鳥足状に配列されてはいるが、これら各々を駆動するための駆動回路111及び112が、素子基板7の図中上側の一辺に沿うように偏って配置されている。なお、前記のうち符号81(図中上段)及び82(図中下段)の別は、それぞれ、符号111(図中下段)及び112(図中上段)の別に一応、対応している。ただし、これらの符号の区分に特別重要な意義はない。これら各別の符号は、図示するような段違いに並ぶ各駆動回路と各有機EL素子との対応関係を明示しようの意図の下、用いられているに過ぎない。
【0048】
このような駆動回路111及び112、並びに、有機EL素子81及び82を備える比較例では、それら各々に関し、前述の図5と同様、加熱領域Ra及びRbが画定され得る。また、これら加熱領域Ra及びRb各々に関する発熱中心Ca及びCbもまた定められ得る。
ここで、これらの発熱中心Caと発熱中心Cbとは、駆動回路111及び112が素子基板7の一辺に沿うように形成されているのであるから、明らかに一致し得ない。したがって、当該の発光装置では、その全体的観点から見た発熱中心Ccは、前記の発熱中心Ca及びCbとは別に、定められる。この発熱中心Ccは、前述の発熱中心Ca及びCb間を結ぶ線分の中間点である。
また、この図6において、前記の図5における温度安定領域RTPと同様の考え方に基づく背景をもつ温度安定領域を画定しようとすれば、当該領域はこの発熱中心Ccを中心とすることになる。図6では、当該領域が温度安定領域“RTC”として画定され、図示されている。
【0049】
この温度安定領域RTCをみるとわかるように、その境界線は、図6において、図中上段に位置する有機EL素子81の各々を貫くように走っている。また、図中下段の有機EL素子82は、温度安定領域RTCの範囲内には含まれない。
つまり、これでは、当該有機EL素子81及び82の温度は安定しないのである。
【0050】
本実施形態においては、このような不具合が発生しないのである。
【0051】
以上に加えて、本実施形態の発光装置10では、以下のような効果もまた奏される。
(1) 本実施形態の発光装置10は、前述のようにダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えていることから、これがない場合に比べて、有機EL素子8の温度を安定させる効果が更に実効的に奏される。なぜなら、これらダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在によって、直線に沿って並ぶ複数の有機EL素子8の両端付近に位置する有機EL素子8もまた、発熱用トランジスタTconが発する熱を安定的に受けることが可能になるからである(図5参照)。
【0052】
(2) 本実施形態の発光装置10は、有機EL素子8を駆動するための駆動回路11それ自体が発熱源となって、当該有機EL素子8を加熱する。すなわち、本実施形態によれば、従来のように、有機EL素子8を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置10の構成は極めて簡易化されるのである。
【0053】
なお、かかる観点からすれば、前述の図6に示す構成もまた、いま述べた効果の恩恵は受けている。つまり、図6に示す構成でも、有機EL素子81及び82の非発光時における発熱源は駆動回路111及び112なのであり、前記加熱手段等を特別に設ける必要がない。このように、図6に示す構成のようなものも、そのような意味において、本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
<変形例1>
(1) 上述した実施形態では、複数の有機EL素子8が共通線16に沿うようにして千鳥足状に配列されているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば図7に示すように、発光装置10Aは、有機EL素子8が一直線に並ぶように配列される構造を備えていてもよい。なお、この場合、上述の実施形態における真っ直ぐに延びる共通線16に代えて、ジグザグに折れ曲がった共通線16Aが備えられている。
【0055】
このような形態によっても、前述した実施形態によって奏された各種の作用効果と本質的に相違のない作用効果が奏されることに変わりない。
実際、このような発光装置10Aにおいては、図8に示すように、有機EL素子8に関する加熱領域RD2、並びに、駆動回路11に関する加熱領域RC3及びRC4の各形状と、上で参照した図5における加熱領域RD1、RC1及びRC2の各形状とは、広狭等の差はあれ殆ど同じである。また、加熱領域RD2、RC3及びRC4間の配置関係も、図5における加熱領域RD1、RC1及びRC2間の配置関係と殆ど同じである。
また、これにより当然ながら、これら加熱領域RD2、RC3及びRC4それぞれに関する発熱中心CD2、CC3及びCC4間の配置関係は、図5における発熱中心CD1、CC1及びCC2間の配置関係と殆ど同じである。
このようなことから、発光装置10Aの場合でも、有機EL素子8及び駆動回路11は、発熱中心CD2と、発熱中心CC3及びCC4を結ぶ線分の中間点とが一致するように、その素子基板7上の配置が定められ得、また、図7及び図8では実際にそのように定められているのである。
【0056】
<変形例2>
(2) あるいは、本発明に係る「発光素子」は、例えば図9に示すような態様でもって配置されていてもよい。
この図9に示す発光装置10Bにおいて、複数の有機EL素子8は、その一組一組が4つの有機EL素子8からなる各組に区分けされ得る。そして、これら各組は、前記4つの有機EL素子8が所定の態様に従って並ぶ一定のパターンを含む。ここで所定の態様とは、図9の場合、4つの有機EL素子8が、素子基板7の長手方向を基準にしてみて「斜め」に並ぶことである。発光装置10Bは、このようなパターンの複数が素子基板7の長手方向に沿って並べられる構造をもつ。
なお、この場合、上述の実施形態における真っ直ぐに延びる共通線16に代えて、ジグザグに折れ曲がった共通線16Bが備えられている。
【0057】
このような形態によっても、前述した実施形態によって奏された各種の作用効果と本質的に相違のない作用効果が奏されることに変わりない。
実際、このような発光装置10Bにおいても、前述の図5及び図8に示すのと同様な加熱領域、及び、発熱中心を定義することは可能である。
ただし、図10においては、もう少し詳細な加熱領域及び発熱中心の定義例が示されている。すなわち、この図10においては、有機EL素子8に関する加熱領域は、前記のパターンの各々について定められている。図10では、パターンが4つ並べられているので、加熱領域は、RD4,RD5,RD6及びRD7の4つである。そして、これら4つの加熱領域RD4,RD5,RD6及びRD7各々に関し、発熱中心CD4,CD5,CD6及びCD7が定められ得る。一方、駆動回路11に関する加熱領域RC5及びRC6、並びに、発熱中心CC5及びCC6は、前述の図5及び図8と殆ど同様である。
そして、このような場合であっても、有機EL素子8及び駆動回路11は、有機EL素子8全体を見渡した場合における加熱領域に関する中心と、駆動回路11全体を見渡した場合における加熱領域に関する中心とが一致するように、その素子基板7上における配置を定められ得る。なお、図10では、前者の「中心」については、発熱中心CD4及びCD7間(又はCD5及びCD6間)を結ぶ線分の中間点、即ち同図中符号“CE”が付された点がそれに該当し、後者の「中心」については、発熱中心CC5及びCC6間を結ぶ線分の中間点、即ちこれもやはり符号“CE“が付された点がそれに該当することになる。要するに、図10では既に、これら2種の中心ないしは中間点が一致するように、有機EL素子8及び駆動回路11の素子基板7上における配置位置は決定されているのである。
【0058】
なお、図10に関連させて、これまでの説明上現れた「加熱領域」及び「発熱中心」に関する一般的な注意をここに記す。
(1) 加熱領域とは、既に述べたように、有機EL素子8、あるいは駆動回路11から熱が発せられる場合において、その熱の影響が及ぶ領域を意味するが、その定義上、当該加熱領域がどのような形状でどの程度の大きさ(面積)をもつことになるか等は、一義的には決定され得ない。どのような加熱領域が設定されるかは、前記の「熱の影響」として、その量的上限等をどこに設定するかにかかっている(なお、当該上限を低く設定すればする程、加熱領域は広がる、と一般的にはいえる。)。また、1個の素子基板の上で、いくつの加熱領域が設定されるかもまた、一義的には決定され得ない。この点は、前記の「熱の影響」の評価とも関連するが、もし前記上限を相当程度低く設定するなら、例えば図2中上下の第1及び第2の駆動回路11a及び11b各々に関して加熱領域を設定しようとしても、それらは結局、両者に共通の領域が殆どである、ということにもなり得る。したがって、そのような場合には、第1及び第2の駆動回路11a及び11bを一体として1つの加熱領域を定義することもできるのである。
なお、本発明にいう「第1領域」とは、「複数の駆動回路」の「各々が発する熱の影響」が総体として及ぶ領域の全体を意味するから、いま述べたような意味における“1つの加熱領域”が、当該「第1領域」への該当性を有すると解釈することもできるし、前述した加熱領域RC1及びRC2を合したかの如き領域が、当該「第1領域」への該当性を有すると解釈することもできる。
【0059】
(2) 発熱中心とは、上述のように定められた加熱領域に応じて定められるものであるから、その具体的な位置及び数も、やはり一義的には決定され得ない。
なお、発熱中心の位置は、多くの場合、前記加熱領域を一種の幾何学的形状とみなしたときに、その重心が占める位置に一致する、ということはいえる。実際、上述した発熱中心CD1、CD2、CC1乃至CC6はすべてそうである。
しかし、このようなことが成立するのは、各有機EL素子8のすべて、あるいは各駆動回路11のすべてが、例えば一定時間内の平均で概ね同等の発熱を行うと仮定した場合である。そのような場合以外の場合、例えば、稀有な例とは考えられるが、図2中左側の有機EL素子8の発光頻度の方が同右側のそれよりも大きい、等という場合は、発熱中心は、同左側に移動する可能性がある(もっとも、この場合、加熱領域の形状そのものが変更する可能性がある。)。
本発明にいう「第1領域の中心」あるいは「第2領域の中心」とは、いま述べたような「加熱領域」あるいは「発熱中心」に関する事情が勘案された上で、解釈される。なお、これらの「中心」と、実施形態中用いられている「発熱中心」とは、上述の実施形態に関する説明からも既に明らかなように、必ずしも一致しない。
【0060】
<変形例3>
上述の実施形態では、駆動回路11は、図3を参照して説明したように、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconを含む形態となっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、駆動回路は、図11に示すように構成され得る。この図11において、駆動回路11Aは、駆動用トランジスタTdr2及びスイッチングトランジスタTswを含む。
【0061】
このうち駆動用トランジスタTdr2は、有機EL素子8と直列に接続される。より詳細には、この駆動用トランジスタTdr2は、そのソースが電源線Velに接続され、そのドレインが有機EL素子8に接続される。
かかる駆動用トランジスタTdr2は、その飽和領域において使用され、定電流源として機能する。そのゲートには基準信号Vrefが入力され、当該駆動用トランジスタTdr2は、この基準信号Vrefのレベルに応じた電流を生成する。
なお、この基準信号Vrefのレベルは、例えば図2等に示す複数の有機EL素子8の各々の間における発光特性の相違に基づいて、当該各々に関し固有に定められ得る。この場合、複数の有機EL素子8それぞれに対応する各基準信号Vrefは、前記の発光特性の相違を打ち消すように調整されていると好ましい。換言すれば、前記の発光特性の相違があるにもかかわらず、全ての有機EL素子8が同程度の輝度で発光するような、各有機EL素子8に固有の電流Ioledの値が定まるように、各基準信号Vrefが定められているとよい。
また、図11において、駆動用トランジスタTdr2は常時定電流源として機能することから、有機EL素子8の発光の如何に関わらず、殆ど常に発熱するということになる。
【0062】
一方、スイッチングトランジスタTswは、有機EL素子8とは並列に、かつ、駆動用トランジスタTdr2とは直列に接続される。
かかるスイッチングトランジスタTswは、その線形領域において使用され、駆動用トランジスタTdr2に流れる電流を、有機EL素子8に流すかどうかを決める。この決定は、制御信号Data2のレベルに応じる。つまり、スイッチングトランジスタTswは、制御信号Data2のレベルに応じて、ON状態又はOFF状態をとる。
なお、一般に、薄膜トランジスタで観測される抵抗値と、有機EL素子で観測される抵抗値とは、前者が後者よりも遥かに小さいため、前述のような回路構成において、スイッチングトランジスタTswがONとなれば、駆動用トランジスタTdr2で生成された電流は、有機EL素子8の側には殆ど流れず、スイッチングとランジスタTswの側にその大部分が流れる、ということが言い得る。
【0063】
このような駆動回路11Aは、例えば図12に示すようなタイミングチャートに従って動作する。
この図12において、制御信号Data2は、Hレベル及びLレベルを一定周期で繰り返す矩形波状の信号である。スイッチングトランジスタTswは、かかる制御信号Data2がHレベルにある場合にONとなり、Lレベルにある場合にOFFとなる。
したがって、後者の場合には、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Ioledが流れる。この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。なお、上で一般論として言及した薄膜トランジスタと有機EL素子との抵抗値に関する知見に従えば、両者が直列に接続されていて同じ電流が流れている状況においては、有機EL素子の発する熱量の方が、薄膜トランジスタの発する熱量よりも遥かに大きくなる、ということが言い得る。したがって、有機EL素子8が発光している場合においては、これと駆動用トランジスタTdr2との相対的な関係からいえば、前者のみが発熱し、後者は発熱していない、ということも言い得る。
他方、前者の場合(即ち、スイッチングトランジスタTswがONの場合)には、有機EL素子8には電流が流れない。ただ、この場合においても、定電流源たる駆動用トランジスタTdr2は発熱しているので、この未発光状態にある有機EL素子8は、当該駆動用トランジスタTdr2から発せられた熱を受けることになる。
【0064】
なお、前述の制御信号Data2は、図1の制御部CUによって発せられる。
また、図11に示す駆動回路11Aにおいて、発熱するのは駆動用トランジスタTdr2のみに限られない。すなわち、スイッチングトランジスタTswもまた、電流が流れれば当然発熱する(この場合の「電流」とは、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Iconである。つまり、Icon≒Ioledである。)。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の駆動用トランジスタTdr2のみならず、スイッチングトランジスタTswもまた、その該当性を有する。なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図12において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0065】
このような形態となる駆動回路11Aであっても、上述した実施形態とによって奏された各種の作用効果と本質的に相違のない作用効果が奏されることは明白である。
しかも、このような形態によれば、図3に示す駆動回路11においては必要であった信号X Data(図4参照)が必要なくなるので、その分、制御が容易になるという利点も得られる。
【0066】
<変形例4>
上述の実施形態では、主に、素子基板7の表面に沿った平面的に広がる熱の影響に関して着目しているが、前記有機EL素子8や、駆動素子(これは、図3でいえば駆動用トランジスタ“Tdr1”、図11でいえば駆動用トランジスタ“Tdr2”、にそれぞれ該当する。以下同じ。)を含む駆動回路11等は、実際上、素子基板7上の積層構造物の一部を構成するように、形成されるものであるから、当該積層構造物の積層方向に沿った立体的な観点からみた熱の流れについて勘案することが好ましい。
【0067】
そのためには、例えば図13に示すような構成を備えることが好適である。ここで図13は、素子基板7上に形成される、有機EL素子8等を含む積層構造物50の1画素分の断面図である。
この図13において、当該積層構造物50は、素子基板7から順に、半導体層1、ゲート絶縁膜300、ゲートメタル3、第1層間絶縁膜301、信号線6及び中継線61、第2層間絶縁膜302、画素電極13、第3層間絶縁膜303、発光機能層18、及び対向電極5を含む。
【0068】
このうち、駆動素子9は、半導体層1、ゲート絶縁膜300、及びゲートメタル3を含む。半導体層1におけるソース領域には、コンタクトホール361を介して信号線6が接続されており、ドレイン領域には、コンタクトホール362を介して中継線61が接続されている。なお、コンタクトホール361及び362は、いずれも第1層間絶縁膜301を貫通するようにして形成されている。
また、有機EL素子8は、画素電極13、発光機能層18及び対向電極5を含む。このうち画素電極13は、コンタクトホール363を介して、前述の中継線61に接続されている。これにより、画素電極13は、駆動素子9に電気的に接続される。なお、コンタクトホール363は、第2層間絶縁膜302を貫通するようにして形成されている。
かかる有機EL素子8は光Lを発する。光Lは、図示するように、発光機能層18から発し、積層構造物50及び素子基板7を透過しながら図中下側に向かって進行する(図1も参照)。なお、第3層間絶縁膜303は、画素電極13の一部を覆うことで、光Lの発光領域を規制する機能をもつ。
【0069】
このような積層構造物50を構成する要素中、特徴的なのは対向電極5である。この対向電極5は、図13に示すように、有機EL素子8の発光機能層18に電圧を印加するために、画素電極9に対向させられるように配置されているが、当該対向電極5はまた、駆動素子9を図中上側から覆うようにも配置されている。そして、かかる対向電極5は、例えば好適には、アルミニウム等の単体の金属、あるいはMgAg等の合金等、少なくともガラスの熱伝導率よりも大きい熱伝導率をもつ材料によって作られている。
【0070】
このような対向電極5は、駆動素子9及び有機EL素子8間の熱伝導を助ける熱伝導層としての機能を担う。すなわち、駆動素子9から発せられた熱(なお、図3の駆動用トランジスタ“Tdr1”も、本発明にいう「発熱素子」への該当性を有することについては、既に述べた。)は、積層構造物50中の各層の積層方向に沿って伝導した後、対向電極5内部を伝道し、有機EL素子8に至る(図13中、符号HRを付した破線参照)。この場合、対向電極5が、駆動素子9を覆うように形成されていること、及び、比較的熱伝導率の大きい材料から作られていることによって、駆動素子9及び有機EL素子8間の熱伝導は比較的速やかに実現される。特に、当該積層構造物50のサイズが、通常、前記の積層方向に沿った長さ(即ち、積層構造物50の厚さ)で概ね数μm程度、駆動素子9及び有機EL素子8間の図中左右方向に沿った長さで概ね数十μm程度であることから、後者の方向に沿って対向電極5が設けられることの意義は大きい。これがない場合には、前者に係る熱伝導は比較的速やかになされるが、後者に係る熱伝導は比較的時間がかかってしまう、ということが生じ得るからである。対向電極5があれば、後者に係る熱伝導もまた比較的速やかに実現されるのである。
【0071】
このようなことから、有機EL素子8には、駆動素子9から発した熱の影響が速やかに及ぼされ得ることになり、当該有機EL素子8の温度の維持は、より好適に行われ得ることになる。
このように、この変形例では、平面的な熱の広がりに加えて、立体的な構造を勘案した上での熱の広がりにも配慮がなされることで、有機EL素子8の温度の安定がより実効的に達成される。
【0072】
なお、上記においては、対向電極5が駆動素子9を覆う例について説明している。ここで駆動素子9とは、既に述べたように、図3でいえば駆動用トランジスタ“Tdr1”、図11でいえば駆動用トランジスタ“Tdr2”、にそれぞれ該当するが、当該対向電極5は、これに加えて、又は、これとは別に、図3でいう発熱用トランジスタTcon又は図11でいうスイッチングトランジスタTswを覆うように備えられてよいことは当然である(ただし、不図示)。特に、図3に関しては、上述のように、有機EL素子8が非発光の時、発熱用トランジスタTconが発熱することから、対向電極5が当該発熱用トランジスタTconを覆う形態の方がより好ましいということができる。
さらにいえば、本発明にいう「熱伝導層」は、「少なくとも」、「発光素子」及び「発熱素子」を覆うように形成されていればよいのであるが、その熱伝導層の一例たる前記の対向電極は、有機EL素子8及び駆動回路11が配列された領域のほぼすべてを覆うような連続した形状をもって形成されてもよい(即ち、対向電極は、当該領域を覆うような、いわゆるベタ状に形成されてよい。)。なお、かかる対向電極の形状は、これを平面視すれば、図2、図7及び図9の各図に示すカバー基板12とほぼ同様の長方形状になり、かつ、当該カバー基板12の配置位置とほぼ同じ位置に配置される、と考えられ得る(つまり、当該対向電極を図示するとすれば、前記各図の符号“12”が指示する長方形とほぼ同じ長方形が当該各図に描かれる、ということである。)。
【0073】
また、上記では、有機EL素子8を構成する対向電極5が、併せて熱伝導層の機能をももつ場合について説明しているが、場合によっては、有機EL素子の電極として機能する層と、熱伝導の機能をもつ層とを別個に設けるのであってもよい。ただ、前者の場合であれば、1つの要素が2つの機能を兼ね備えることになるので、発光装置の構成の簡易化がより促進される。その意味で、前者の方がより有利である。
【0074】
以上述べた各種の変形例1乃至4のほか、本発明は、下記のような変形例をも含む。
(1) 上述した各実施形態に係る発光装置は、ボトムエミッションタイプであるが(図1及び図13参照)、本発明に係る発光装置は、トップエミッションタイプであってもよい。あるいは、デュアルエミッションタイプであってもよい。
(2) 上述した各実施形態に係る発光装置は、有機EL装置であるが、本発明に係る発光装置は、無機EL装置であってもよい。
【0075】
<応用>
次に、本発明に係る発光装置を適用した応用例について説明する。
<面発光装置>
以上の各態様に係る発光装置は、例えば図14に示すように、マイクロレンズアレイとともに組み合わせられ得る。この図14において、マイクロレンズMLの1つ1つには、前述した発光装置10が対応している。このような配置関係をとることにより、各発光装置10から発せられた光は、マイクロレンズMLによって適当に収束され得る。そして、これらが集合した形態たる図14に示す構造によれば、比較的面積の大きい面発光装置が提供され得る。
【0076】
<画像形成装置>
以上の各態様に係る発光装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして利用され得る。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分及びファクシミリの印刷部分がある。図15は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0077】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yは、以上に例示した何れかの態様に係る発光装置10である。
【0078】
図15に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122とが設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0079】
この中間転写ベルト120の周囲には、外周面に感光層を有する4個の感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが互いに所定の間隔をおいて配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0080】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子Pによって感光体ドラムに光を照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0081】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされ、この結果としてフルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0082】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0083】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。図16は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図16に示す画像形成装置において、感光体ドラム165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0084】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ167は、以上に例示した各態様の発光装置10であり、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、これらの発光素子Pから感光体ドラム165に光を照射することにより行う。
【0085】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0086】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166及びテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0087】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、有機アレイ167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、有機アレイ167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム165が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0088】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近及び離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0089】
以上のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再び定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0090】
図15及び図16に例示した画像形成装置は、発光素子を露光手段として利用しているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。なお、以上に例示した以外の電子写真方式の画像形成装置にも本発明の発光装置を採用することができる。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも本発明に係る発光装置を応用することが可能である。
【0091】
また、本発明に係る発光装置は、上述のような「画像形成装置」に、その適用範囲は限定されない。例えば、前記画像形成装置等の電子機器以外の各種の電子機器における照明装置としても、本発明に係る発光装置は採用される。このような電子機器としては、例えば、ファクシミリ、複写機、複合機、プリンタなどが挙げられる。これらの電子機器には、複数の発光素子を面状に配列した発光装置が好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の発光装置を光ヘッドとして含む画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の発光装置の平面図であって、特に素子基板上に配列された有機EL素子及びその駆動回路の配列態様例を示す図である。
【図3】図2の駆動回路の回路構成例を示す図である。
【図4】図3の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図5】図2の素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図6】図5の比較例としての素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図7】図2と同趣旨の図であって、同図とは別の配置態様例を示す図である。
【図8】図7の素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図9】図2と同趣旨の図であって、同図及び図7とは別の配置態様例を示す図である。
【図10】図9の素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図11】図3と同趣旨の図であって、同図とは別の回路構成例を示す図である。
【図12】図11の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図13】図1の発光装置の断面図であって、特に素子基板上に形成された有機EL素子等を含む積層構造物の断面図である。
【図14】図2の発光装置をマイクロレンズアレイに組み込んだ応用例を示す平面図である。
【図15】画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図16】画像形成装置の別例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10,10A,10B……発光装置、7……素子基板、12……カバー基板、8……有機EL素子(発光素子)、9……駆動素子、Tdr1、Tdr2……駆動用トランジスタ、Tcon……発熱用トランジスタ、Tsw……スイッチングトランジスタ、11、11A……駆動回路、11D1〜11D4……ダミー駆動回路、11a……第1の駆動回路群、11b……第2の駆動回路群、16、16A、16B……共通線、RC1〜RC6,Ra……(駆動回路の)加熱領域、RD1〜RD7,Rb……(有機EL素子の)加熱領域、RTP,RTC……温度安定領域、CC1〜CC6,Ca……(駆動回路の)発熱中心、CD1〜CD7,Cb……(有機EL素子の)発熱中心、CE,Cc……(発光装置全体の観点からみた)発熱中心、1……半導体層、3……走査線、6……信号線、361,362,363……コンタクトホール、13……画素電極、5……対向電極、18……発光機能層、300……ゲート絶縁膜、301〜303……第1〜第3層間絶縁膜、L……光、HR……熱伝導路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々を駆動する複数の駆動回路と、
を備え、
前記複数の駆動回路の各々は、
少なくとも前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を含み、
前記複数の駆動回路は、
前記基板上で前記複数の発光素子を挟み込むように、当該基板上に形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子が発光する際には、前記発熱素子における発熱は抑制され、
前記発光素子が発光しない際には、前記発熱素子における発熱が促進されるように、
これら発光素子及び発熱素子を制御する制御手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記複数の駆動回路の各々は、
当該各々が発する熱の影響が及ぶ第1領域の中心の位置が、
前記複数の発光素子の各々が発する熱の影響が及ぶ第2領域の中心の位置に一致するように、
前記基板上に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、基準直線に沿うようにして配置され、
前記複数の駆動回路は、少なくとも第1及び第2の駆動回路群に区分され、
これら第1及び第2の駆動回路群は、
その各々が前記基準直線に沿うように並び、かつ、前記基準直線を挟んで対向するように配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の駆動回路の中には、前記発光素子を駆動する駆動回路に加えて、
前記発光素子を駆動しないダミー駆動回路が含まれ、
前記ダミー駆動回路は、
前記基板の面に沿って見て、
前記第1の駆動回路群の両端のそれぞれ、及び、
前記第2の駆動回路群の両端のそれぞれ、
に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子は、前記基準直線に沿って見て、千鳥足状に並べられている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板の上には、
少なくとも前記発光素子及び前記発熱素子を覆うように熱伝導層が更に備えられる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記熱伝導層は、ガラスの熱伝導率よりも大きい熱伝導率をもつ、
ことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成される発光素子と、
前記発光素子を駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記発光素子に直列に接続される第1トランジスタと、
前記発光素子及び前記第1トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される第2トランジスタと、
を含む、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
前記第1トランジスタのゲートには、前記発光素子に電流を流すかどうかを決める第1信号が入力され、
前記第2トランジスタのゲートには、当該第2トランジスタに電流を流すかどうかを決める第2信号が入力され、
前記第1信号及び前記第2信号は、相補的にON又はOFFとなる、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成される発光素子と、
前記発光素子を駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記発光素子と直列に接続され、当該発光素子の電流源として機能する第3トランジスタと、
前記発光素子とは並列に、かつ、前記第3トランジスタとは直列に接続され、前記第3トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決める第4トランジスタと、
を含む、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−111212(P2009−111212A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282892(P2007−282892)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】