説明

発光装置

【課題】光取り出し面側からの外部接続が容易で、且つ、光取り出し効率の低下を抑制しつつ、より一層の長寿命化を図れる発光装置を提供する。
【解決手段】第2のガラス基板を用いて形成されてベース基板20の上記一面側で有機EL素子ユニット1よりも離れて配置されベース基板20に対向するパッケージ用基板50と、ベース基板20とパッケージ用基板50との間に介在して有機EL素子ユニット1を囲む枠状のスペーサ部60とを備え、各導体パターン22,24それぞれの一部が、スペーサ部60よりも外側にあり、スペーサ部60が、少なくとも一部がフリットガラスを用いて形成されベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれに全周に亘って接合されている。有機EL素子ユニット1に設けた凹凸構造部19の表面とパッケージ用基板50との間には、空間70が存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)を利用した発光装置が各所で研究開発されている。
【0003】
有機EL素子としては、例えば、透光性基板(透明基板)の一表面側に、陽極となる透明電極、ホール輸送層、発光層(有機発光層)、電子注入層、陰極となる電極の積層構造を備えたものが知られている。この種の有機EL素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加することによって発光層で発光した光が、透明電極および透光性基板を通して取り出される。
【0004】
有機EL素子は、自発光型の発光素子であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること、などの特徴を有するものであり、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイなどの発光体など)や、光源(例えば、液晶表示機器のバックライトや照明光源など)としての適用が期待されており、一部では既に実用化されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途に有機EL素子を応用展開するために、より高効率・長寿命・高輝度の有機EL素子の開発が望まれている。
【0006】
長寿命化を図り且つ光取り出し面側からの外部接続を容易とすることを目的とした発光装置の一例として、透光性を有する第1の基板と、第1の基板の一表面側に形成された有機EL素子(素子部)と、有機EL素子を挟むように第1の基板に対向配置され、有機EL素子の第1の電極および第2の電極それぞれに電気的に接続される外部接続用の第1の電極端子および第2の電極端子を有する第2の基板と、有機EL素子を囲むように第1の基板と第2の基板との間に形成された枠状の封止部と、第1の電極と第1の電極端子とを接続する第1の接続部と、第2の電極と第2の電極端子とを接続する第2の接続部とを備え、第1の接続部および第2の接続部を封止部の外側に配置した発光装置が提案されている(特許文献1)。ここで、封止部は、エポキシ樹脂などの封止樹脂により形成されており、第1の接続部および第2の接続部は、めっき層やクリーム半田により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−186618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発光装置では、第1の基板と第2の基板とを接合して有機EL素子を囲む封止部が、エポキシ樹脂などの封止樹脂により形成されているので、気密性が不十分であり、外部から侵入する水分やガス(例えば、酸素、クリーム半田から発生するガスなど)の影響で寿命が短くなってしまう。上記特許文献1には、第1の基板と第2の基板と封止部とで囲まれた空間を不活性ガス雰囲気とすることや、有機EL素子をポリイミドなどの保護膜で覆い、保護膜を被覆するように封止部を形成した構造も提案されているが、外部からの水分やガスが有機EL素子へ到達するのをより確実に防止することが可能な発光装置の開発が望まれている。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、光取り出し面側からの外部接続が容易で、且つ、光取り出し効率の低下を抑制しつつ、より一層の長寿命化を図れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された配線層が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子ユニットと、第1のガラス基板を用いて形成されて前記有機EL素子ユニットの前記有機EL素子側に対向配置され前記有機EL素子ユニットに対向する一面側の周部に前記各配線層それぞれに電気的に接続される複数の外部接続用の導体パターンを有するベース基板と、前記有機EL素子ユニットと前記ベース基板との間で前記有機EL素子を囲み且つ前記各配線層の一部と前記各導体パターンとを囲まないように配置され前記有機EL素子ユニットおよび前記ベース基板それぞれに全周に亘って接合された枠体と、前記各配線層の前記一部と前記各導体パターンとをそれぞれ電気的に接続する導電性ペーストからなる複数の接続部と、第2のガラス基板を用いて形成されて前記ベース基板の前記一面側で前記有機EL素子ユニットよりも離れて配置され前記ベース基板に対向するパッケージ用基板と、前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間に介在して前記有機EL素子ユニットを囲む枠状のスペーサ部とを備え、前記各導体パターンそれぞれの一部が、前記スペーサ部よりも外側にあり、前記スペーサ部は、少なくとも一部がフリットガラスを用いて形成され前記ベース基板および前記パッケージ用基板それぞれに全周に亘って接合されてなり、前記有機EL素子ユニットは、前記プラスチックフィルムの他表面側に設けられ前記発光層から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記有機EL素子ユニットと前記ベース基板と前記枠体とで囲まれた空間に封止用の液体が封入されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記有機EL素子ユニットを複数備えるとともに、前記複数の前記有機EL素子ユニットが前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間で互いに重なるように配置され、前記ベース基板から遠い側の前記有機EL素子ユニットの前記配線層は、前記前記ベース基板に近い側の前記有機EL素子ユニットの前記プラスチックフィルムの厚み方向に貫設された貫通配線と導電性ペーストにより接続され、前記各貫通配線は、前記ベース基板から遠い側の前記有機EL素子ユニットの前記配線層に対応付けられた前記各導体パターンと導電性ペーストにより接続されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、光取り出し面側からの外部接続が容易で、且つ、光取り出し効率の低下を抑制しつつ、より一層の長寿命化を図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の発光装置の概略断面図である。
【図2】同上の発光装置の概略分解斜視図である。
【図3】実施形態2の発光装置の概略断面図である。
【図4】同上の発光装置の概略分解斜視図である。
【図5】実施形態3の発光装置の概略断面図である。
【図6】同上の発光装置の概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0016】
発光装置Aは、有機EL素子11および有機EL素子11の陽極12、陰極14それぞれに電気的に接続された配線層15,17が透明なプラスチックフィルム10の一表面側に形成された有機EL素子ユニット1を備えている。なお、本実施形態では、陽極12と陰極14とが厚み方向に離間した一対の電極を構成している。
【0017】
また、発光装置Aは、第1のガラス基板を用いて形成されて有機EL素子ユニット1の有機EL素子11側に対向配置されるベース基板20を備えている。このベース基板20は、有機EL素子ユニット1に対向する一面側の周部に、各配線層15,17それぞれに電気的に接続される外部接続用の導体パターン22,24が形成されている。
【0018】
また、発光装置Aは、有機EL素子ユニット1とベース基板20との間に介在し有機EL素子ユニット1およびベース基板20それぞれに全周に亘って接合された枠体30を備えている。この枠体30は、有機EL素子11を囲み且つ各配線層15,17の一部と各導体パターン22,24とを囲まないように配置されている。
【0019】
また、発光装置Aは、各配線層15,17の上記一部と各導体パターン22,24とをそれぞれ電気的に接続する導電性ペーストからなる接続部42,44を備えている。
【0020】
また、発光装置Aは、第2のガラス基板を用いて形成されてベース基板20の上記一面側で有機EL素子ユニット1よりも離れて配置されベース基板20に対向するパッケージ用基板50と、ベース基板20とパッケージ用基板50との間に介在して有機EL素子ユニット1を囲む枠状のスペーサ部60とを備えている。なお、本実施形態では、ベース基板20とパッケージ用基板50とスペーサ部60とで、有機EL素子ユニット1が収納された気密なパッケージを構成している。
【0021】
本実施形態の発光装置Aでは、各導体パターン22,24それぞれの一部が、スペーサ部60よりも外側にあり、スペーサ部60が、フリットガラスを用いて形成されベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれに全周に亘って接合されている。
【0022】
また、有機EL素子ユニット1は、プラスチックフィルム10の他表面側に設けられ有機EL素子11から放射された光の上記他表面での反射を抑制する凹凸構造部19を備えている。ここにおいて、凹凸構造部19の表面とパッケージ用基板50との間には、空間70が存在している。
【0023】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0024】
有機EL素子11は、陽極12と陰極14との間に介在する有機EL層13が、陽極12側から順に、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。ここにおいて、有機EL素子11は、陽極12をプラスチックフィルム10の上記一表面側に積層してあり、陽極12におけるプラスチックフィルム10側とは反対側で、陰極14が陽極12に対向している。なお、陽極12と陰極14との位置関係は逆でもよい。
【0025】
本実施形態における有機EL素子ユニット1では、有機EL素子11の陽極12を透明電極により構成するとともに陰極14を発光層からの光を反射する電極により構成してあり、プラスチックフィルム10の上記他表面側から光を取り出すようになっている。
【0026】
上述の有機EL層13の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0027】
陽極12は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極12の電極材料としては、例えば、ITO、酸化スズ、酸化亜鉛、IZO、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極12は、プラスチックフィルム10の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0028】
なお、陽極12のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極12の膜厚は、陽極12の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0029】
また、陰極14は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極14の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。また、陰極14側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0030】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0031】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極12との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0032】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0033】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0034】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、Siなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0035】
プラスチックフィルム10のプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)を採用しているが、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。なお、PETは、非常に安価で安全性の高いプラスチック材料である。また、PENは、PETと比べて、屈折率が高く耐熱性も良好であるが、高価である。
【0036】
上述のプラスチックフィルム10は、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きく、有機EL素子11の発光層および陽極12との屈折率差を小さくすることができる。したがって、有機EL素子ユニット1の光取り出し効率を向上できる。
【0037】
また、有機EL素子11をプラスチックフィルム10ではなく、ガラス基板に形成することも考えられるが、ガラス基板に有機EL素子11を形成する場合には、当該ガラス基板において有機EL素子11を形成する表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなる。なお、プラスチックフィルム10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。ここにおいて、プラスチックフィルム10は、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができる。
【0038】
プラスチックフィルム10は、平面視形状が矩形状に形成されている。そして、有機EL素子ユニット1は、プラスチックフィルム10の上記一表面側において、長手方向の一端部に、陽極12に電気的に接続された2つの配線層15(以下、第1の配線層15と称する)が形成され、他端部に、陰極14に電気的に接続された2つの配線層17(以下、第2の配線層17と称する)が形成されている。なお、プラスチックフィルム10の平面視形状は、矩形状としてあるが、これに限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。また、第1の配線層15および第2の配線層17それぞれの数は特に限定するものではない。
【0039】
有機EL素子ユニット1は、第1の配線層15の材料を陽極12と同じ材料とし、第1の配線層15を陽極12と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。また、第2の配線層17の材料を陰極14と同じ材料としてあり、第2の配線層17を陰極14と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。また、各配線層15,17は、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0040】
ベース基板20は、第1のガラス基板として、例えば、無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、青ソーダガラス基板などを用いてもよい。
【0041】
また、ベース基板20は、陽極12に対応付けられた導体パターン22(以下、第1の導体パターン22と称する)と、陰極14に対応付けられた導体パターン24(以下、第2の導体パターン24と称する)が同一材料により同一厚さで形成されている。
【0042】
ベース基板20は、平面視形状を矩形状としてあるが、矩形状に限らず、これに限らず、例えば、有機EL素子ユニット1の平面形状に応じて適宜変更してもよく、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0043】
ベース基板20の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きなサイズに設定してあり、各導体パターン22,24の大部分が有機EL素子ユニット1の投影領域の外側に位置するようにしてある。ここで、各導体パターン22,24は、平面視形状が長方形状に形成されており、長手方向の一端部が有機EL素子ユニット1の投影領域内に位置し、長手方向の他端部がスペーサ部60よりも外側に位置している。各導体パターン22,24は、スパッタ法や蒸着法などのドライプロセスで成膜することが好ましい。なお、各導体パターン22,24の平面視形状は特に限定するものではない。
【0044】
枠体30は、高粘度の紫外線硬化型の樹脂(例えば、紫外線硬化型のエポキシ樹脂など)や、高粘度の熱硬化型の樹脂(例えば、紫外線硬化型のエポキシ樹脂など)により形成してある。ここで、発光装置Aの製造時には、ベース基板20と有機EL素子ユニット1とを重ね合わせる前に、ベース基板20における枠体30の配置予定領域に上述の樹脂をディスペンサ(例えば、ディスペンサロボット)などにより塗布しておけばよい
枠体30とベース基板20および有機ELユニット1との接合時には、紫外線照射や部分加熱が有効である。
【0045】
接続部42,44は、上述のように導電性ペーストにより形成してある。ここで、発光装置Aの製造時には、ベース基板20の各導体パターン22,24の上記一端部上に導電性ペーストをディスペンサ(例えば、ディスペンサロボット)などにより供給し、その後、ベース基板20と有機EL素子ユニット1とを重ね合わせて接続部42,44を導体パターン22,24および配線層15,17それぞれと接合することにより、導体パターン22,24と配線層15,17とを接続部42,44を介して電気的に接続する。この接合時には、紫外線照射の他、レーザ光による局所加熱が有効である。また、この接合後には、パッケージ用基板50およびスペーサ部60を配置する前に、常温で放置するか、加熱した状態で放置して、導電性ペーストからの出ガスを外部へ放出させればよい。導電性ペーストは、導電フィラーとバインダーとからなる。導電フィラーとしては、金粉、銀粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、メッキ粉、カーボン粉、グラファイト粉、半田粒子などを用いることができる。バインダーとしては、エポキシ樹脂、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミド、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの有機バインダーを用いることができる。ここにおいて、バインダーからの出ガスによる有機EL素子11の劣化を防ぐために、無溶剤型のバインダーを用いることが望ましい。
【0046】
パッケージ用基板50は、第2のガラス基板として、例えば、無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、青ソーダガラス基板などを用いてもよい。ただし、パッケージ用基板50としては、ベース基板20と熱膨張係数が同じ材料により形成されたものが好ましい。
【0047】
パッケージ用基板50は、平面視形状を矩形状としてあるが、矩形状に限らず、これに限らず、例えば、有機EL素子ユニット1やベース基板1の平面形状に応じて適宜変更してもよく、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0048】
パッケージ用基板50の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きく且つベース基板20の平面サイズよりも小さなサイズに設定してあり、発光装置Aの光取り出し面側から見てベース基板20の各導体パターン22,24の一部を視認できるようになっている。要するに、各導体パターン22,24の一部がパッケージ用基板50の投影領域の外側に位置している。したがって、発光装置Aの光取り出し面側から、各導体パターン22,24へ電線などを接続する(外部接続する)ことが容易になる。
【0049】
スペーサ部60は、パッケージ用基板50の外周縁に沿った枠状に形成することが好ましく、本実施形態では、矩形枠状に形成してある。なお、パッケージ用基板50と有機EL素子ユニット1との平面視形状が相違する場合には、いずれか一方の外周線に沿った形状としてもよい。
【0050】
スペーサ部60は、フリットガラスを用いて形成してある。ここで、発光装置Aの製造時には、パッケージ用基板50上にスペーサ部60を配置し、ベース基板20とパッケージ用基板50とでスペーサ部60を挟みこんでから、スペーサ部60をレーザ光などにより加熱してベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれと接合すればよい。この場合、フリットガラスがレーザ光により加熱されやすいように適宜の不純物をフリットガラスに添加しておいてもよい。なお、加熱は、レーザ光に限らず、例えば、赤外線により行ってもよい。
【0051】
スペーサ部60は、フリットガラスのみを用いて形成する場合に限らず、例えば、合金からなる枠部材と、当該枠部材におけるベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれとの対向面に形成されたフリットガラスとを用いて形成してもよい。ここにおいて、枠部材の材料である合金としては、熱膨張係数がベース基板20およびパッケージ用基板50の熱膨張係数に近いコバール(Kovar)を用いることが好ましいが、コバールに限らず、例えば、42合金などを用いてもよい。コバールは、鉄にニッケル、コバルトを配合した合金であり、常温付近での熱膨張係数が、金属の中で低いものの一つで、無アルカリガラス、青ソーダガラス、硼珪酸ガラスなどの熱膨張係数に近い値を有している。コバールの成分比の一例は、重量%で、ニッケル:29重量%、コバルト:17重量%、シリコン:0.2重量%、マンガン:0.3重量%、鉄:53.5重量%である。コバールの成分比は、特に限定するものではなく、コバールの熱膨張係数が、ベース基板20およびパッケージ用基板50の熱膨張係数に揃うように適宜成分比のものを採用すればよい。また、この場合のフリットガラスとしては、熱膨張係数を合金の熱膨張係数に揃えることができる材料を採用することが好ましい。ここで、合金がコバールの場合には、フリットガラスの材料として、コバールガラスを用いることが好ましい。また、スペーサ部60の形成にあたっては、例えば、コバールなどの合金からなる板材の厚み方向の両面に、フリットガラスを所定パターン(本実施形態では、矩形枠状のパターン)となるように塗布し、乾燥、焼成後、プレス抜き加工を行うことにより、スペーサ部60を形成することができる。
【0052】
上述の説明から分かるように、本実施形態では、ベース基板20とパッケージ用基板50とスペーサ部60との線膨張係数を揃えてある。ここにおいて、熱膨張係数を揃えるとは、完全に一致させることに限らず、略同一であることを意味し、熱膨張係数差ができるだけ小さくなるように材料を選択することを趣旨としている。
【0053】
本実施形態の発光装置Aの製造にあたっては、ベース基板20と有機EL素子ユニット1とを枠体30を介して対向配置する前に、ベース基板20の上記一面側に枠体30を形成するとともに、ディスペンサなどを用いて導体パターン22,24上に接続部42,44を形成する。その後、有機EL素子ユニット1とベース基板20とを重ね合わせてから、枠体30をベース基板20および有機EL素子ユニット1それぞれと接合させる。続いて、接続部42,44を導体パターン22,24および配線層15,17それぞれと接合させることで電気的に接続し、その後、接続部42,44からの出ガスを外部へ放出させる。その後、パッケージ用基板50における光取り出し面側とは反対側にスペーサ部60を配置し、続いて、所定雰囲気(例えば、ドライ窒素雰囲気のような不活性ガス雰囲気、真空雰囲気など)中においてベース基板20とパッケージ用基板50とでスペーサ部60を挟み込み、ベース基板20側もしくはパッケージ用基板50側からレーザ光を照射してスペーサ部60を加熱することでフリットガラスを溶融させスペーサ部60をベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれと接合させる。なお、本実施形態の発光装置Aでは、封止代を1mm程度にしながらも気密性を確保することができる。また、レーザ光の光源としては、例えば、YAGレーザなどを用いればよい。
【0054】
スペーサ部60として、上述の枠部材を備えたものを用いれば、フリットガラスが溶融した時もベース基板20とパッケージ用基板50との間隔を安定して保つことができて気密封止することができるから、ベース基板20とパッケージ用基板50とスペーサ部60とで構成されるパッケージの気密性を高めることができ、有機EL素子11の発光部の大面積化を図りながらも有機EL素子11の長寿命化を図れる。また、スペーサ部60として、上述の枠部材を備えたものを用いれば、ベース基板20とパッケージ用基板50との間の距離の設計自由度が高くなる。なお、枠部材は、断面矩形状に限らず、断面環状のものを用いてもよい。
【0055】
また、本実施形態の発光装置Aは、上述のように、有機EL素子ユニット1が凹凸構造部19を備え、凹凸構造部19とパッケージ用基板50との間に空間70が存在している。しかして、有機EL素子11の発光層から放射されパッケージ用基板50まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0056】
ここにおいて、有機EL素子11の発光層およびプラスチックフィルム10それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気や不活性ガスの屈折率に比べて大きい。したがって、上述の凹凸構造部19が設けられずにプラスチックフィルム10とパッケージ用基板50との間の空間が空気雰囲気や不活性ガス雰囲気となっている場合には、プラスチックフィルム10からなる第1の媒質と空気もしくは不活性ガスからなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層13またはプラスチックフィルム10内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0057】
これに対して、本実施形態では、プラスチックフィルム10の上記他表面側に凹凸構造部19を設けてあるので、有機EL素子ユニット1の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0058】
凹凸構造部19は、多数の突起19aがプラスチックフィルム10の上記一表面に平行な2次元面内で周期的に配列された2次元周期構造を有している。図1に示した例では、突起19aを四角錐状の形状としてあるが、突起19aの形状は、四角錐状以外の錐状(例えば、三角錐状、六角錐状、円錐状など)でもよいし、半球状でもよいし、これら以外の形状でもよい。
【0059】
ここで、当該2次元周期構造の周期Pは、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0060】
周期Pを例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期Pを例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期Pをλ/4〜λの範囲で設定した場合には、凹凸構造部付近の有効屈折率がプラスチックフィルム10の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、プラスチックフィルム10と空間70との間に、凹凸構造部19の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、有機EL素子ユニット1の光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期Pの上限としては、1000λまで適用可能である。また、凹凸構造部19は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期Pが1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で凹凸構造部19における占有率の最も大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。
【0061】
凹凸構造部19は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成してあるが、これに限るものではない。例えば、プラスチックフィルム10の上記他表面に凹凸構造部19をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよい。なお、インプリント法は、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)に限らず、光インプリント法(光ナノインプリント法)を採用してもよい。
【0062】
凹凸構造部19については、表面に傷が付くのを防止するためのハードコートを施すか、あるいは、硬度が十分に高いプリズムシートを用いるか、あるいは、硬化後の硬度が十分に高い透明材料を用いることが望ましい。ハードコートを施すためのハードコート剤としては、例えば、東洋インキ製のTYZシリーズ(〔平成21年12月22日検索〕、インターネット<URL:http://www.toyoink.co.jp/products/lioduras/index.html>)などの高屈折率タイプ(屈折率が1.63〜1.74程度)のハードコート剤を採用することができる。なお、TYZシリーズは、エポキシ樹脂などにフィラーとしてジルコニアを混入させた紫外線硬化型のハードコート剤である。
【0063】
本実施形態の発光装置Aは、凹凸構造部19の表面とパッケージ用基板50との間に空間70が存在することが重要である。仮に、凹凸構造部19の表面が、当該凹凸構造部19とパッケージ用基板50との界面であるとすると、パッケージ用基板50と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、本実施形態では、有機EL素子11の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の不活性ガスとパッケージ用基板50との界面、パッケージ用基板50と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。
【0064】
以上説明した本実施形態の発光装置Aは、第2のガラス基板を用いて形成されてベース基板20の上記一面側で有機EL素子ユニット1よりも離れて配置されベース基板20に対向するパッケージ用基板50と、ベース基板20とパッケージ用基板50との間に介在して有機EL素子ユニット1を囲む枠状のスペーサ部60とを備え、各導体パターン22,24それぞれの一部が、スペーサ部60よりも外側にあり、スペーサ部60が、少なくとも一部がフリットガラスを用いて形成されベース基板20およびパッケージ用基板50それぞれに全周に亘って接合されているので、耐湿性を高めることができて、より一層の長寿命化を図れる。
【0065】
また、本実施形態の発光装置Aは、有機EL素子ユニット1が、凹凸構造部19を備え、凹凸構造部19の表面とパッケージ用基板50との間に空間70が存在しているので、有機EL素子11の発光層から放射されパッケージ用基板50まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0066】
しかして、本実施形態の発光装置Aでは、光取り出し面側からの外部接続が容易で、且つ、光取り出し効率の低下を抑制しつつ、より一層の長寿命化を図れる。
【0067】
ところで、本実施形態の発光装置Aでは、パッケージ用基板50を光が透過する際にフレネル反射による損失(フレネルロス)が生じる。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、パッケージ用基板50を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。フレネルロスを抑制する手段としては、例えば、パッケージ用基板50の厚み方向の少なくとも一面に、単層もしくは多層の誘電体膜からなるアンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)を設けることが考えられる。ここにおいて、AR膜を例えば屈折率nが1.38のフッ化マグネシウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.38)=99.6nmとすればよい。同様に、AR膜を例えば屈折率nが1.58の酸化アルミニウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、AR膜は、厚さが99.6nmのフッ化マグネシウム膜と厚さが87.0nmの酸化アルミニウム膜との積層膜(2層AR膜)としてもよい。なお、誘電体膜の材料は、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム以外の材料を採用してもよい。
【0068】
本実施形態の発光装置Aでは、パッケージ用基板50の厚み方向の少なくとも一面、好ましくは両面にAR膜を設けることにより、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0069】
また、フレネルロスを抑制する他の手段としては、パッケージ用基板50の厚み方向の少なくとも一面側にモスアイ(蛾の目)構造を設けることが考えられる。モスアイ構造は、先細り状の微細突起が2次元アレイ状に配列されて2次元周期構造を有しており、多数の微細突起と隣り合う微細突起間に入り込んだ媒質(例えば、空気)とで反射防止部が構成されることとなる。ここにおいて、パッケージ用基板50をナノインプリント法により加工してモスアイ構造を形成した場合には、微細突起の屈折率がパッケージ用基板50の屈折率と同じとなる。この場合、反射防止部の有効屈折率は、当該反射防止部の厚さ方向においてパッケージ用基板50の屈折率(=1.51)と媒質の屈折率(=1)との間で連続的に変化し、フレネルロスの原因となる屈折率界面がなくなった状態が擬似的に得られる。したがって、モスアイ構造では、AR膜に比べて、波長や入射角に対する依存性を小さくでき、かつ、反射率も小さくすることができる。
【0070】
モスアイ構造における微細突起の高さおよび微細突起の周期は、例えば、それぞれ200nm、100nmに設定すればよいが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0071】
上述のモスアイ構造は、例えば、ナノインプリント法により形成することができるが、ナノプリント法以外の方法(例えば、レーザ加工技術)で形成してもよい。また、モスアイ構造は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のモスアイ型無反射フィルムにより構成してもよい。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態の発光装置Aの基本構成は実施形態1と略同じであり、図3および図4に示すように、有機EL素子ユニット1とベース基板20と枠体30とで囲まれた空間に、封止用の液体(例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイルなど)90を封入してある点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態の発光装置Aの製造方法は実施形態1と略同じであり、ベース基板20の上記一面上に枠体30を設けた後で、ベース基板20と枠体30とで囲まれる空間に液体90を注入すればよい。
【0074】
本実施形態の発光装置Aでは、有機EL素子11で発生した熱を、液体90を介して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子11の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子11へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。
【0075】
(実施形態3)
本実施形態の発光装置Aの基本構成は実施形態1と略同じであり、図5および図6に示すように、有機EL素子ユニット1を2つ備えている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。ただし、図5および図6では、2つの有機EL素子ユニット1の区別をするために、A,Bを付記した符号を括弧内に記載してある。
【0076】
本実施形態では、複数(図示例では、2つ)の有機EL素子ユニット1が、ベース基板20とパッケージ用基板50との間で互いに重なるように配置されている。なお、有機EL素子ユニット1の数は2つに限らず、3つ以上でもよい。
【0077】
ベース基板20の厚み方向において隣り合う有機EL素子ユニット1同士の間には、ベース基板20と有機EL素子ユニット1(1A)との間に介在する枠体30と同じ形状の枠体30が介在しており、枠体30が両側の有機EL素子ユニット1に接合されている。
【0078】
ベース基板20から遠い側の有機EL素子ユニット1(1B)の配線層15,17は、ベース基板20に近い側の有機EL素子ユニット1(1A)のプラスチックフィルム10の厚み方向に貫設されたスルーホール配線からなる貫通配線16,18と導電性ペーストからなる接続部42,44により電気的に接続されている。また、各貫通配線16,18は、ベース基板20から遠い側の有機EL素子ユニット1(1B)の配線層15,17に対応付けられた各導体パターン22(22B),24(24B)と導電性ペーストからなる接続部42,44により接続されている。このように貫通配線16,18および導電性ペーストからなる接続部42,44を利用することにより、ボンディングワイヤによる結線が不要となるので、複数の有機EL素子ユニット1を重ねて配置する場合の低背化を図れる。
【0079】
また、ベース基板20に最も近い有機EL素子ユニット1(1A)以外の有機EL素子ユニット1(1B)については、陽極12だけでなく、陰極14も透光性を有するように材料を選択してある。
【0080】
本実施形態の発光装置Aでは、複数の有機ELユニット1全ての発光色を同じに設定しておけば、高輝度点灯させる場合の長寿命化を図れる。
【0081】
また、本実施形態の発光装置Aでは、有機EL素子ユニット1ごとに発光層の材料を変えて発光色が異なるように設計しておけば、調色が可能となる。本実施形態の発光装置Aの調色制御を行う場合には、例えば、図示しない操作部の操作により設定された混色光の色に応じて各有機EL素子ユニット1の光出力比を制御する制御回路を別途に設ければよい。
【符号の説明】
【0082】
A 発光装置
1 有機EL素子ユニット
10 プラスチックフィルム
11 有機EL素子
12 陽極
13 有機EL層
14 陰極
15 配線層
16 貫通配線
17 配線層
18 貫通配線
19 凹凸構造部
20 ベース基板
22 導体パターン
24 導体パターン
30 枠体
42 接続部
44 接続部
50 パッケージ用基板
60 スペーサ部
70 空間
90 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された配線層が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子ユニットと、第1のガラス基板を用いて形成されて前記有機EL素子ユニットの前記有機EL素子側に対向配置され前記有機EL素子ユニットに対向する一面側の周部に前記各配線層それぞれに電気的に接続される複数の外部接続用の導体パターンを有するベース基板と、前記有機EL素子ユニットと前記ベース基板との間で前記有機EL素子を囲み且つ前記各配線層の一部と前記各導体パターンとを囲まないように配置され前記有機EL素子ユニットおよび前記ベース基板それぞれに全周に亘って接合された枠体と、前記各配線層の前記一部と前記各導体パターンとをそれぞれ電気的に接続する導電性ペーストからなる複数の接続部と、第2のガラス基板を用いて形成されて前記ベース基板の前記一面側で前記有機EL素子ユニットよりも離れて配置され前記ベース基板に対向するパッケージ用基板と、前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間に介在して前記有機EL素子ユニットを囲む枠状のスペーサ部とを備え、前記各導体パターンそれぞれの一部が、前記スペーサ部よりも外側にあり、前記スペーサ部は、少なくとも一部がフリットガラスを用いて形成され前記ベース基板および前記パッケージ用基板それぞれに全周に亘って接合されてなり、前記有機EL素子ユニットは、前記プラスチックフィルムの他表面側に設けられ前記発光層から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記有機EL素子ユニットと前記ベース基板と前記枠体とで囲まれた空間に封止用の液体が封入されてなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記有機EL素子ユニットを複数備えるとともに、前記複数の前記有機EL素子ユニットが前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間で互いに重なるように配置され、前記ベース基板から遠い側の前記有機EL素子ユニットの前記配線層は、前記前記ベース基板に近い側の前記有機EL素子ユニットの前記プラスチックフィルムの厚み方向に貫設された貫通配線と導電性ペーストにより接続され、前記各貫通配線は、前記ベース基板から遠い側の前記有機EL素子ユニットの前記配線層に対応付けられた前記各導体パターンと導電性ペーストにより接続されてなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−165579(P2011−165579A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29329(P2010−29329)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】