説明

発光装置

【課題】温度変化による光色の変化を抑制した発光装置を提供する。
【解決手段】LEDチップ20を覆うように、蛍光体粒子40aを含有した樹脂からなる色変換層40が形成され、色変換層40を隙間なく覆うように、被覆層50が形成されている。色変換層40を形成する樹脂は、圧力を受けて収縮する樹脂であり、被覆層50を形成する材料は、色変換層40を形成する樹脂よりも硬度が高く、且つ温度上昇によって膨張する材料である。発光装置1の温度が上昇すると、蛍光体粒子40aの量子効率は低下する。一方、温度上昇によって色変換層40は圧縮されるので、蛍光体粒子40a間の間隔は狭くなり、LEDチップ20から放射された光は蛍光体粒子40aに吸収されやすくなる。よって、蛍光体粒子40aの量子効率の低下が補償され、発光装置1から放射される光の色が変化しくにい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に実装された発光素子と、発光素子から放射された光により励起されて発光素子とは異なる波長の光を放射する蛍光体粒子を含有した色変換層とを備えた発光装置がある。この発光装置では、発光素子から放射される光と蛍光体粒子から放射される光とを混合した光が得られるので、発光素子と蛍光体粒子とを適宜選択することで、所望の色の光を得ることができる。例えば特許文献1には、発光素子として青色光を放射する青色LED(発光ダイオード)チップを用い、蛍光体粒子として青色LEDチップから放射された光を吸収して黄色の光を放射する例えばYAG系の黄色蛍光体を用いた発光装置が開示されている。この発光装置では、青色と黄色とを混色させることにより白色の光を放射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような発光装置を使用すると、発光素子からの熱や波長変換に伴って生じる熱などによって、発光装置の温度は上昇する。一方、蛍光体粒子の量子効率(蛍光体粒子が吸収する光量子の数と、蛍光体粒子から放射される光量子の数との比)は、温度上昇によって低下する。また、色変換層は温度上昇によって膨張するので、蛍光体粒子の間隔が広くなり、発光素子から放射された光は蛍光体粒子に吸収されにくくなる。すなわち、このような発光装置では、温度上昇によって発光装置から放射される光の色が変化してしまい、色度がずれてしまうという課題があった。例えば、青色LEDチップと黄色蛍光体を用いた発光装置の場合には、発光装置の温度が高くなると黄色蛍光体の量子効率が低下し、また、黄色蛍光体の間隔が広くなる。よって、相対的に青色の光の比率が高くなり、色度が青色側にずれてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、温度変化による光色の変化を抑制した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、第1の発明の発光装置は、実装基板と、実装基板に実装された発光素子と、発光素子から放射された光によって励起されて発光素子とは異なる波長の光を放射する蛍光体粒子を分散させた透光性樹脂からなり、発光素子の光取り出し面を覆うように実装基板に配設された色変換部と、透光性材料からなり色変換部を覆うように実装基板に配設された被覆部とを備え、被覆部は、色変換部を構成する樹脂よりも体積弾性率が大きく且つ線膨張率が大きな材料からなり、色変換部の外側の面を隙間なく覆うよう構成され、色変換部は、圧縮性を有する樹脂から形成され、被覆部が熱膨張するときに、この被覆部から内向きの圧力が印加されるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2の発明の発光装置は、第1の発明の発光装置において、色変換部を構成する樹脂は、ゲル状の樹脂であることを特徴とする。
【0008】
第3の発明の発光装置は、第1または第2の発明の発光装置において、色変換部を構成する樹脂及び被覆部を構成する材料は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂から選択されることを特徴とする。
【0009】
第4の発明の発光装置は、第1〜第3のいずれか一つの発明の発光装置において、被覆部を隙間なく覆うように、ガラスまたは透光性を有し被覆部を形成する材料よりも体積弾性率が大きな樹脂からなる外壁部を形成したことを特徴とする。
【0010】
第5の発明の発光装置は、第1〜第4のいずれか一つの発明の発光装置において、発光素子と色変換部との間に、発光素子を覆うように、ガラスまたは透光性を有し色変換部を形成する樹脂よりも体積弾性率が大きな樹脂からなる内壁部を形成したことを特徴とする。
【0011】
第6の発明の発光装置は、第1〜第5のいずれか一つの発明の発光装置において、発光素子と色変換部との間に、隙間を設けたことを特徴とする。
【0012】
第7の発明の発光装置は、第1〜第6のいずれか一つの発明の発光装置において、色変換部は多層構造であって、この色変換部の各層には、それぞれ異なる種類の蛍光体粒子が含有されていることを特徴とする。
【0013】
第8の発明の発光装置は、第7の発明の発光装置において、色変換部の各層に含有される蛍光体粒子は、発光素子に近い層に含有された蛍光体粒子の方が、発光素子から遠い層に含有された蛍光体粒子よりも、波長の長い光を放射するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、温度変化による光色の変化を抑制した発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、温度が上昇したときの状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態の第1の変更例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態の第2の変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。以下の説明では、図1における上下左右を上下左右の向きと規定し、手前に向かう向きを前向きと規定する。
【0017】
本実施形態の発光装置1は、図1に示すように、実装基板10と、実装基板10の上面に実装されて、上面及び前後左右の側面から光を放射するLEDチップ(発光素子)20と、実装基板10の上面に配設されて、LEDチップ20の光取り出し面(上面及び前後左右の側面)を、LEDチップ20との間に隙間が生じないように覆う色変換層(色変換部)30と、実装基板10の上面に配設されて、色変換層30の上面及び前後左右の側面を、色変換層30との間に隙間が生じないように覆う被覆層(被覆部)40とを備える。
【0018】
実装基板10は、例えば銅やアルミニウムなどの放熱性の高い金属からなる金属板の上に、絶縁層を形成してなり、絶縁層の上面には、一対の金属製のリードパターン(図示せず)が形成されている。
【0019】
LEDチップ20には、金属製のカソード電極及びアノード電極(図示せず)が形成されており、この両電極は、それぞれボンディングワイヤ(図示せず)を介して、実装基板10上に形成された一対のリードパターンと電気的に接続されている。
【0020】
色変換層30は、LEDチップ20から放射された光を吸収してLEDチップ20とは異なる波長の光を放射する蛍光体粒子30aを分散させた透光性樹脂からなり、LEDチップ20の光取り出し面を隙間なく覆っている。色変換層30を形成する樹脂は、外部から圧力が印加されたときに圧縮される性質を有し、例えばゲル状の樹脂やゴム弾性を有する樹脂が用いられる。この材料としては、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂などが用いられる。
【0021】
被覆層40は、透光性材料から色変換層30を覆うよう形成され、色変換層30の外側の面(上面及び前後左右の面)で色変換層30に隙間なく接している。つまり、上述の色変換層30は、実装基板10とLEDチップ20と被覆層40とで、上下左右全ての面が隙間なく囲まれている。この被覆層40を形成する透光性材料は、色変換層30を形成する透光性樹脂よりも体積弾性率が大きな材料であって、且つ線膨張率が大きな材料が用いられる。この材料としては、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂などが用いられる。
【0022】
以上の構成からなる本実施形態の発光装置1では、LEDチップ20から放射された光の一部が、色変換層30に含有された蛍光体粒子30aによって、異なる色の光に変換される。よって、発光装置1からは、LEDチップ20からの光と蛍光体粒子30aからの光とが混合された色の光が放射される。例えば、LEDチップ20として、波長が450nm程度の青色の光を放射する青色LEDチップを用い、蛍光体粒子30aとして、青色の光を吸収して黄色の光を放射する例えばYAG系の黄色蛍光体を用いれば、白色の光を得ることができる。なお、蛍光体粒子30aとして赤色蛍光体と緑色蛍光体とを用いても、白色の光を得ることができる。
【0023】
ここで、本実施形態の発光装置1を使用すると、発光装置1からの熱や波長変換に伴って生じる熱によって、色変換層30及び被覆層40の温度が上昇する。これにより、色変換層30に含有された蛍光体粒子30aの量子効率は、低下する。
【0024】
一方、本実施形態の発光装置1を使用すると、被覆層40は温度上昇によって膨張(体積が増加)し、実装基板10、LEDチップ20、及び被覆層40に囲まれた色変換層30は、被覆層40からの内向きの圧力(図2の白抜き矢印)を受けて圧縮される。よって、図2に示すように、色変換層30に含有された蛍光体粒子30aの粒子間隔が狭くなり、LEDチップ20から放射された光は蛍光体粒子30aに吸収されやすくなる。従って、色変換層30全体で見ると、変換効率(LEDチップ20から放射された光のうちで、色変換層30によって波長が変換される光の割合)は上昇することになる。
【0025】
つまり、本実施形態の発光装置1では、温度上昇によって蛍光体粒子30aの量子効率が低下する一方、色変換層30が圧縮されることによって色変換層30全体で見たときの変換効率は上昇する。よって、予め蛍光体粒子30aの分布や色変換層30の厚さを適宜設定しておくことで、発光装置1の温度によらずに、ほぼ一定の色の光を得ることができる。なお、蛍光体粒子30aの分布や色変換層30の厚さなどの最適値は、使用する蛍光体粒子30aの種類や発光装置1からの発熱量などによって異なるので、蛍光体粒子30aの種類などの各種の条件に応じて、適切に設定すればよい。
【0026】
ここで、色変換層30を形成する透光性樹脂がゲル状の場合には、色変換層30は変形しやすい。よって、この場合には、色変換層30が圧縮されるときに割れなどが起こりにくいという効果がある。
【0027】
次に、本実施形態の第1の変更例を図3に示す。この変更例では、実装基板10、LEDチップ20、被覆層40の構成は上記実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0028】
この変更例では、色変換層30を、LEDチップ20の光取り出し面方向に積層した複数の層(第1の色変換層31と第2の色変換層32)で構成している。そして、LEDチップ20に近い側の第1の色変換層31に、相対的に波長の長い光を放射する長波長蛍光体粒子31aを含有させ、LEDチップ20から遠い側の第2の色変換層32に、長波長蛍光体粒子31aよりも短い波長の光を放射する短波長蛍光体粒子32aを含有させている。例えば、LEDチップ20として青色の光を放射する青色LEDチップを用い、長波長蛍光体粒子31aとして、青色の光を吸収して赤色の光を放射する赤色蛍光体を用い、短波長蛍光体粒子32aとして、青色の光を吸収して緑色の光を放射する緑色蛍光体を用いれば、白色の光を得ることができる。
【0029】
ここで、この変更例では、長波長蛍光体粒子31aと短波長蛍光体粒子32aとを異なる層に含有させている。これにより、各層を構成する樹脂材料の硬さや膨張率を、各層に含有された蛍光体粒子31a,32aの特性に応じて選択することができる。つまり、各層に含有された蛍光体粒子31a,32aが、温度上昇に応じてどの程度量子効率が低下するのかを考慮して、各層を構成する樹脂材料の種類などを調整することができる。よって、複数種類の蛍光体粒子を用いる場合であっても、装置の温度上昇によらずに所望の色の光を得ることができる。
【0030】
また、この変更例では、LEDチップ20に近い側の第1の色変換層31に長波長蛍光体粒子31aを含有させ、LEDチップ20から遠い側の第2の色変換層32に短波長蛍光体粒子32aを含有させている。蛍光体粒子は、一般に自身の発光波長よりも短い波長の光を吸収する。よって、この変更例のような構成とすることで、短波長蛍光体粒子32aから放射された光が長波長蛍光体粒子31aに吸収されるおそれが小さくなっている。すなわち、LEDチップ20から放射された光が複数の蛍光体31a,32aによって複数回吸収されるおそれが小さくなるので、発光装置1の発光効率を向上させることができる。
【0031】
なお、色変換層30の層の数は2層に限らず、3層以上としてもよい。
【0032】
本実施形態の第2の変更例を、図4に示す。この変更例では、LEDチップ20と色変換層30との間に内壁層(内壁部)50を設け、被覆層40の外側に外壁層(外壁部)60を設けている。また、LEDチップ20と内壁層50との間に、隙間70を形成している。なお、実装基板10、LEDチップ20、色変換層30、被覆層40の構成は上記実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0033】
内壁層50は、例えば透明ガラス材料などから、LEDチップ20の外側(光取り出し面側)を覆い、色変換層30の内側の面に隙間なく接するよう形成されている。この内壁層50を設けることで、色変換層30や被覆層40が熱膨張するときの圧力がLEDチップ20に伝わりにくくなっており、例えばLEDチップ20が上記の圧力を受けて変形するなどのおそれが小さくなっている。なお、この内壁層50を形成する透光性材料は、色変換層30を形成する透光性樹脂よりも体積弾性率が大きな材料であればよく、ガラスに限らず体積弾性率の大きな透光性樹脂などであってもよい。
【0034】
外壁層60は、例えば透明ガラス材料などから、被覆層40の外側を隙間なく覆うように形成されている。この外壁層60を設けることで、被覆層40は外側に膨張しにくくなっている。よって、被覆層40が熱膨張するときの内向きの圧力が色変換層30に効果的に伝わるので、色変換層30が圧縮されやすくなっている。なお、この外壁層60を形成する透光性材料は、被覆層40を形成する透光性材料よりも体積弾性率が大きな材料であればよく、ガラスに限らず体積弾性率の大きな透光性樹脂などであってもよい。
【0035】
LEDチップ20と内壁層50との間には、隙間70が形成されている。これにより、色変換層30や被覆層40が熱膨張するときの圧力がLEDチップ20に伝わりにくくなっている。なお、LEDチップ20と内壁層50との間に隙間70を形成する代わりに、内壁層50と色変換層30との間に隙間を形成しても、被覆層40などからの圧力がLEDチップ20に伝わるのを防ぐ効果がある。
【0036】
この第2の変更例では、図1に示す実施形態に内壁層50と外壁層60と隙間70とをすべて追加した構成となっているが、内壁層50だけを追加してもよいし、外壁層60だけを追加してもよいし、隙間70だけを、LEDチップ20と色変換層30との間に追加してもよい。また、第1の変更例のように、色変換層30を複数の層から形成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 実装基板
20 LEDチップ
30 色変換層
40 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、前記実装基板に実装された発光素子と、前記発光素子から放射された光によって励起されて前記発光素子とは異なる波長の光を放射する蛍光体粒子を分散させた透光性樹脂からなり、前記発光素子の光取り出し面を覆うように前記実装基板に配設された色変換部と、透光性材料からなり前記色変換部を覆うように前記実装基板に配設された被覆部とを備え、
前記被覆部は、前記色変換部を構成する樹脂よりも体積弾性率が大きく且つ線膨張率が大きな材料からなり、前記色変換部の外側の面を隙間なく覆うよう構成され、
前記色変換部は、圧縮性を有する樹脂から形成され、前記被覆部が熱膨張するときに、この被覆部から内向きの圧力が印加されるよう構成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記色変換部を構成する樹脂は、ゲル状の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記色変換部を構成する樹脂及び前記被覆部を構成する材料は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂から選択されることを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記被覆部を隙間なく覆うように、ガラスまたは透光性を有し前記被覆部を形成する材料よりも体積弾性率が大きな樹脂からなる外壁部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子と前記色変換部との間に、前記発光素子を覆うように、ガラスまたは透光性を有し前記色変換部を形成する樹脂よりも体積弾性率が大きな樹脂からなる内壁部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子と前記色変換部との間に、隙間を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の発光装置。
【請求項7】
前記色変換部は多層構造であって、この色変換部の各層には、それぞれ異なる種類の蛍光体粒子が含有されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の発光装置。
【請求項8】
前記色変換部の各層に含有される蛍光体粒子は、前記発光素子に近い層に含有された蛍光体粒子の方が、前記発光素子から遠い層に含有された蛍光体粒子よりも、波長の長い光を放射するものであることを特徴とする請求項7記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−171585(P2011−171585A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35074(P2010−35074)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】