説明

発光装置

【課題】 取り出される光の色温度を良好に維持することが可能な発光装置を提供すること。
【解決手段】 発光装置1であって、基板2と、基板2上に設けられた発光素子3と、基板2上に発光素子3を取り囲むように設けられた多孔質枠体4と、基板2上の多孔質枠体4で囲まれた領域に発光素子3を覆うように設けられ、一部が多孔質枠体4内に浸入した封止部材5と、多孔質枠体4に発光素子3と間を空けて設けられた波長変換部材6と、波長変換部材6の上面から多孔質枠体4の上部にかけて設けられ、一部が多孔質枠体4内に浸入しているとともに、多孔質枠体4内で封止部材5と間を空けて設けられた接着材7とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオードを始めとする発光素子を有する発光装置の開発が進められている。当該発光装置は、消費電力または製品寿命に関して注目されている。なお、発光装置として、発光素子から発せられる光を波長変換部材で特定の波長帯の光に変換して、外部に取り出すものがある(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−49172号公報
【特許文献2】特開2009−70870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置の開発において、発光素子の発光する光に起因して発生する熱が、波長変換部材の特定箇所に集中すると、外部に取り出される光の色温度が大きく変化する虞がある。
【0005】
本発明は、取り出される光の色温度を良好に維持することが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る発光装置は、基板と、前記基板上に設けられた発光素子と、前記基板上に前記発光素子を取り囲むように設けられた多孔質枠体と、前記基板上の前記多孔質枠体で囲まれた領域に前記発光素子を覆うように設けられ、一部が前記多孔質枠体内に浸入した封止部材と、前記多孔質枠体に支持された、前記発光素子と間を空けて設けられた波長変換部材と、前記波長変換部材の上面から前記多孔質枠体の上部にかけて設けられ、一部が前記多孔質枠体内に浸入しているとともに、前記多孔質枠体内で前記封止部材と間を空けて設けられた接着材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取り出される光の色温度を良好に維持することが可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る発光装置の概観を示す断面斜視図である。
【図2】本実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図3】本実施形態に係る発光装置の一部を拡大した断面図である。
【図4】本実施形態に係る発光装置の平面図である。
【図5】本実施形態に係る多孔質枠体の一部を拡大した断面図である。
【図6】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【図7】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【図8】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【図9】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【図10】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【図11】本実施形態に係る発光装置の製造工程を示す、発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる発光装置の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されないものである。
【0010】
<発光装置の概略構成>
図1は、本実施形態に係る発光装置の概観を示す断面斜視図であって、発光装置の一部を切り取って示している。また、図2は、図1に示す発光装置のX−X’線に沿った断面図である。また、図3は、図2に示す発光装置の一部Aを拡大した断面図である。また、図4は、発光装置の平面図であって、波長変換部材および接着材を取り除いた状態を示している。なお、図1から図3において、多孔質枠体内の丸が、模式的に示した気孔bを示している。図5は、多孔質枠体の一部を拡大した断面図である。
【0011】
本実施形態に係る発光装置1は、基板2と、基板2上に設けられた発光素子3と、基板2上に発光素子3を取り囲むように設けられた多孔質枠体4と、基板2上の多孔質枠体4で囲まれた領域に発光素子3を覆うように設けられ、一部が多孔質枠体4内に浸入した封止部材5と、多孔質枠体4に支持された、発光素子3と間を空けて設けられた波長変換部材6と、波長変換部材6の上面から多孔質枠体4の上部にかけて設けられ、一部が多孔質枠体4内に浸入しているとともに、多孔質枠体4内で封止部材5と間を空けて設けられた接着材7とを備えている。なお、発光素子3は、発光ダイオードであって、半導体を用いたpn接合中の電子と正孔とが再結合することによって、外部に向かって光を放出することができる。
【0012】
基板2は、絶縁性の基板であって、例えばアルミナまたはムライト等のセラミック材料、あるいはガラスセラミック材料等から構成される。または、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料から構成される。また、基板2としては、基板2の熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂を用いることもできる。
【0013】
基板2には、基板2の内外を電気的に導通する配線導体(図示せず)が形成されている。配線導体は、例えばタングステン、モリブデン、マンガンまたは銅等の導電材料からなる。配線導体は、例えばタングステン等の粉末に有機溶剤を添加して得た金属ペーストを、基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、この複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することによって得られる。なお、基板2の内外に露出する配線導体の表面には、酸化防止のために、例えばニッケルまたは金等の鍍金層が被着されている。
【0014】
また、基板2の上面には、基板2の上方に効率良く光を反射させるために、配線導体および鍍金層と間を空けて、例えばアルミニウム、銀、金、銅またはプラチナ等の金属からなる金属反射層を形成する。
【0015】
発光素子3は、基板2の上に実装される。具体的には、発光素子3は、基板2上に形成される配線導体の表面に被着する鍍金層上に、例えばろう材または半田を介して電気的に接続される。
【0016】
発光素子3は、透光性基体(図示せず)と、透光性基体上に形成された光半導体層(図示せず)とを有している。透光性基体は、その上に有機金属気相成長法または分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、光半導体層を成長させることが可能なものであればよい。透光性基体に用いられる材料としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウム等を挙げることができる。なお、透光性基体の厚みは、例えば50
μm以上1000μm以下である。
【0017】
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とを含んで構成されている。第1半導体層、発光層および第2半導体層は、例えばIII族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウ
ムヒ素等のIII−V族半導体、あるいは、窒化ガリウム、窒化アルミニウムまたは窒化イ
ンジウム等のIII族窒化物半導体などを用いることができる。なお、第1半導体層の厚み
は、例えば1μm以上5μm以下であって、発光層の厚みは、例えば25nm以上150nm以下であって、第2半導体層の厚みは、例えば50nm以上600nm以下である。また、このように構成された発光素子3では、例えば370nm以上420nm以下の波長範囲の励起光を発する素子として用いることができる。
【0018】
多孔質枠体4は、多孔質のセラミック材料から成り、基板2の上面に配置して例えば一体焼成して、基板2と多孔質枠体4とを接続することができる。また、基板2の上面に、例えばろう材または半田を介して接着することによって接続することもできる。多孔質枠体4は、基板2上の発光素子3を取り囲むように設けられている。なお、平面視して、多孔質枠体4の内壁面の形状を円形とすると、発光素子3が発光する光を全方向に満遍なく反射させて外部に均一に放出することができる。
【0019】
また、多孔質枠体4は、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等のセラミック材料を所望の形状に形成して焼結された多孔質材料から構成される。そして、多孔質枠体4には、多数の気孔bが設けられている。なお、多孔質枠体4の気孔率は、例えば25%以上50%以下に設定されている。また、多孔質枠体4に設けられた多数の気孔bの直径は、例えば0.1μm以上1.5μm以下の大きさに設定されている。なお、多孔質枠体4の熱伝導率は、例えば5W(m・K)以上200W(m・K)以下に設定されている。
【0020】
多孔質枠体4は、発光素子3からの光または波長変換部材6にて反射された光を多孔質枠体4の表面で拡散反射する機能を有している。それによって、発光素子3から発せられる光を波長変換部材6の一部に集中しにくくすることができる。仮に、波長変換部材6の一部に光が集中すると、波長変換部材6の光が集中した箇所では温度が上昇することとなり、それによって波長変換部材6の波長変換効率が低下したり、波長変換部材6の透過率または機械的強度が劣化したりする虞がある。そこで、発光素子3の発する光を拡散反射することができる多孔質枠体4を発光素子3の周囲に設けることで、波長変換部材6の特定個所に光が集中するのを抑制することができ、波長変換部材6の波長変換効率を長期にわたって良好に維持することができる。さらに、波長変換部材6の透過率または機械的強度を長期にわたって良好に維持することができる。
【0021】
また、多孔質枠体4の内壁面によって囲まれる領域に対して、その内壁面は、断面視して下部から上部に向かって内壁面間の幅が広くなるように傾斜している。さらに、多孔質枠体4の上端内側には段差4aが設けられている。多孔質枠体4の段差4aは、その横面(通常は水平面に相当する)で波長変換部材6を支持するためのものである。ここでの段差4aは、多孔質枠体4の上部の一部を内側に向けて切り欠いたものである。
【0022】
また、多孔質枠体4の内壁面の傾斜角度は、基板2の上面に対して、例えば55度以上70度以下の角度に設定されている。また、多孔質枠体4の内壁面の表面粗さは、算術平均粗さRaで、例えば1μm以上3μm以下に設定されている。
【0023】
多孔質枠体4で囲まれる領域には、発光素子3を内部に封止するようにして、光透過性の封止部材5が充填されている。多孔質枠体4は、多孔質枠体4の表面を含めて多数の気
孔bが設けられているので、封止部材5の一部が多孔質枠体4の表面から内部に浸入して固定される。そして、封止部材5の一部が多孔質枠体4内に浸入して固着することで、アンカー効果によって、封止部材5と多孔質枠体4とが強固に接合されている。
【0024】
封止部材5は、発光素子3を封止するとともに、発光素子3から発せられる光を透過させる機能を備えている。封止部材5は、多孔質枠体4の内方に発光素子3を収容した状態で、多孔質枠体4で囲まれた領域において、段差4aの高さ位置よりも低い位置まで充填される。封止部材5は、発光素子3が発する光に起因した熱を吸収し、封止部材5全体に熱を伝える。仮に、封止部材5内の特定箇所に熱が集中すると、封止部材5の部分的な熱膨張が発生して、封止部材5が基板2および多孔質枠体4から剥離する虞が生じやすくなる。また、封止部材5内にて熱集中が起きると、発光素子3が高温となり発光素子3の発する光の波長が変化して、発光素子3の発光色が所望する光色から大きく外れる虞が生じやすくなる。なお、封止部材5は、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂が用いられる。なお、封止部材5の熱伝導率は、例えば0.14W/(m・K)以上0.21W/(m・K)以下に設定されている。
【0025】
封止部材5の一部が多孔質枠体4の内壁面から多孔質枠体4の内部に浸入している浸入領域S1は、多孔質枠体4の内壁面の全周にわたって連続して設けられている。浸入領域S1は、多孔質枠体4の内壁面から多孔質枠体4の内部に向かって、断面視して例えば0.5mm以上2mm以下に設定されている。浸入領域S1に浸入した封止部材5の含浸量は、例えば3mm以上180mm以下に設定されている。
【0026】
発光素子3が発した熱は、封止部材5を介して浸入領域S1にまで伝わる。そして、浸入領域S1から多孔質枠体4内に伝わり、気孔bが多数存在する多孔質枠体4内を介して多孔質枠体4の側面から外部に向かって放熱することができる。その結果、封止部材5内に熱がこもって発光素子3の電気的特性が変化するのを抑制することができ、所望する量の光を発光素子3から波長変換部材6に向かって放射することができる。
【0027】
波長変換部材6は、発光素子3から発せられる光が内部に入射して、内部に含有されている蛍光体が励起されて、光を発するものである。ここで、波長変換部材6は、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の樹脂材料からなり、その樹脂材料中に、例えば430nm以上490nm以下の蛍光を発する青色蛍光体、例えば500nm以上560nm以下の蛍光を発する緑色蛍光体、例えば540nm以上600nm以下の蛍光を発する黄色蛍光体、例えば590nm以上700nm以下の蛍光を発する赤色蛍光体が含有されている。また、蛍光体は、波長変換部材6中に均一に分散するようにして含有されている。なお、波長変換部材6の熱伝導率は、例えば0.1W/(m・K)以上0.3W/(m・K)以下に設定されている。
【0028】
波長変換部材6は、多孔質枠体4上に支持されて、発光素子3と間を空けて設けられている。また、波長変換部材6の端部は多孔質枠体4の段差4a上に位置しており、多孔質枠体4によって波長変換部材6の端部側面が囲まれている。
【0029】
波長変換部材6は、平面視して円状であって、波長変換部材6の直径が例えば2mm以上20mm以下に設定されている。また、波長変換部材6の厚みは、例えば0.7mm以上3mm以下に設定されており、且つ厚みを一定にして設定されている。ここで、厚みが一定とは、厚みの誤差が0.5μm以下のものを含む。波長変換部材6の厚みを一定にすることにより、波長変換部材6にて励起される光の量を一様になるように調整することができ、波長変換部材6における輝度むらを抑制することができる。
【0030】
多孔質枠体4の段差4a上に、波長変換部材6の端部が接着材7を介して多孔質枠体4
の上部に固定される。接着材7は、波長変換部材6の上面から多孔質枠体4の上部にかけて設けられている。接着材7は、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性の絶縁樹脂が用いられる。なお、接着材7の熱伝導率は、例えば0.14W/(m・K)以上4W/(m・K)以下に設定されている。
【0031】
波長変換部材6と多孔質枠体4の段差4aの内壁面との間には、隙間SPが設けられており、接着材7の一部は隙間SPに入り込んでいる。そして、隙間SPに入り込んだ接着材7は、波長変換部材6の側面と多孔質枠体4の内壁面との間に介在して両者を接着することとなる。
【0032】
接着材7は、平面視して波長変換部材6の外周に沿って連続して形成されている。また、波長変換部材6と多孔質枠体4との間の隙間SPは、波長変換部材6の外周に沿って設けられている。そして、接着材7は、波長変換部材6の外周に沿って設けられた隙間SPに充填されて、波長変換部材6と多孔質枠体4とを強固に接続している。断面視して、波長変換部材6の側面から多孔質枠体4の内壁面にまで被着することで、接着材7が被着する面積を大きくし、接着材7を介して波長変換部材6と多孔質枠体4を強固に接続することができる。その結果、波長変換部材6と多孔質枠体4の接続強度を向上させることができ、波長変換部材6の撓みが抑制される。そして、発光素子3と波長変換部材6との間の光学距離が変動するのを効果的に抑制することができる。
【0033】
また、接着材7は、一部が多孔質枠体4の上部から内部に浸入している。すなわち、多孔質枠体4は、多孔質枠体4の表面を含めて多数の気孔bが設けられているため、接着材7の一部が多孔質枠体4内に浸入して固定される。そして、接着材7の一部が多孔質枠体4内に浸入して固着することで、アンカー効果によって、接着材7と多孔質枠体4とが強固に接合されている。
【0034】
接着材7の一部が多孔質枠体4の上部から多孔質枠体4の内部に向かって浸入している浸入領域S2は、段差4aの内面のうち横面から多孔質枠体4の下面に向かって、また段差4aの内面のうち縦面(通常は垂直面)から多孔質枠体4の外側面に向かって、好ましくはそれらの両方に設けられ、多孔質枠体4の段差4aの内面の全周にわたって連続して設けられている。浸入領域S2は、多孔質枠体4の表面から多孔質枠体4の内部に向かって、断面視して例えば0.5mm以上2mm以下に設定されている。浸入領域S2に浸入した接着材7の含浸量は、例えば3mm以上120mm以下に設定されている。
【0035】
浸入領域S2は浸入領域S1から離れて位置しており、多孔質枠体4内では封止部材5と接着材7とは接続されずに離れて配置されている。また、多孔質枠体4は、内部に多数の気孔bが存在するため、発光素子3から多孔質枠体4内の浸入領域S1に位置する封止部材5に伝わった熱は、浸入領域S1と浸入領域S2との間に位置する多孔質枠体4内の空気が含まれた気孔bで浸入領域S1から浸入領域S2への断熱性が保持されるため、浸入領域S1から浸入領域S2に伝わりにくい。その結果、多孔質枠体4内で封止部材5に伝わった熱は、多孔質枠体4内の接着材7に伝わりにくく、多孔質枠体4の側面から外部に向かって放熱され、接着材7の温度が高温になるのを抑制することができる。そして、接着材7の温度が高くなるのを抑制することによって、接着材7から波長変換部材6に伝わる熱を低減することができ、従って、波長変換部材6が高温になるのを抑制することができる。波長変換部材6が高温になると、発光素子3の発する励起光によって励起される光の色温度が変化して、所望する色温度の光色になりにくくなるが、波長変換部材6の温度が高温になるのを抑制することで、所望する光色の光を安定して取り出すことができる。
【0036】
また、接着材7から波長変換部材6に伝わる熱量を少なくすることで、波長変換部材6
の波長変換効率が低下したり、波長変換部材6の透過率または機械的強度が劣化したりするのを抑制することができ、波長変換部材6の波長変換効率を長期にわたって良好に維持することができる。さらに、波長変換部材6の透過率または機械的強度を長期にわたって良好に維持することができる。
【0037】
接着材7の熱伝導率は、波長変換部材6の熱伝導率よりも大きく設定してもよい。接着材7の熱伝導率を、波長変換部材6の熱伝導率よりも大きくすることで、発光素子3から封止部材5を介して、封止部材5の上方から波長変換部材6に伝わる熱を接着材7に伝達しやすくすることができる。波長変換部材6から接着材7に伝わった熱は、浸入領域S2と浸入領域S1とが離れているため、接着材7から封止部材5に伝わりにくく、多孔質枠体4の側面から外部に向かって放熱され、波長変換部材6の温度が上昇するのを抑制することができる。波長変換部材6には、発光素子3が発する光を蛍光体によって波長変換する際の変換損失に起因した熱が発生し、この熱によって波長変換部材6の温度が上昇する。その熱を波長変換部材6から接着材7に吸収しやすくすることで、波長変換部材6が高温になるのを抑制することができる。
【0038】
本実施形態によれば、発光素子3の発する光を気孔bによって凹凸が存在する多孔質枠体4の内壁面によって拡散させて、波長変換部材6の下面に対して分散した光を到達させることができ、波長変換部材6の特定箇所が高温になるのを抑制して、外部に取り出される光の色温度のばらつきを抑制することができる。特に、長時間、波長変換部材6の特定箇所の温度が上昇し続けることがあると、波長変換部材6から外部に取り出される光の色温度が変化する虞がある。これに対して、本実施形態によれば、波長変換部材6の特定箇所が高温になるのを抑制することにより、外部に取り出される光の色温度を良好に維持することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、多孔質枠体4内に浸入した封止部材5の浸入領域S1と接着材7の浸入領域S2とを離して形成することで、発光素子3の発した熱を多孔質枠体4内の気孔bを介して多孔質枠体4外に向かって放熱することによって波長変換部材6に伝わる温度を抑制することができ、発光素子3の発光する光に起因して発生する熱を波長変換部材6の特定箇所に集中しにくくすることができる。その結果、外部に取り出される光の色温度が大きく変化するのを効果的に抑えることができ、取り出される光の色温度を良好に維持することが可能な発光装置1を提供することができる。
【0040】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0041】
<発光装置の製造方法>
ここで、図1に示す発光装置1の製造方法を説明する。図6から図11が、発光装置の製造工程を示す発光装置の断面図であって、図2に示す断面に相当する。
【0042】
まず、基板2を準備する。基板2が、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等の原料粉末に、有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して混合物を得る。そして、混合物から複数のグリーンシートを作製する。
【0043】
また、タングステンまたはモリブデン等の高融点金属粉末を準備し、この粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して金属ペーストを得る。そして、基板2となるセラミックグリーンシートに配線導体となるメタライズパターンおよび必要に応じて多孔質枠体4を接合するためのメタライズパターンをそれぞれ所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層した状態で焼成することで、基板2を準備することが
できる。
【0044】
一方で、多孔質枠体4を準備する。多孔質枠体4は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウム等のセラミック材料を準備する。そして、多孔質枠体4の型枠内に、セラミック材料を充填して乾燥させた後に、焼成することで多孔質枠体4を準備することができる。この多孔質枠体4にも、基板2を接合する面に必要に応じてメタライズパターンを形成しておく。
【0045】
次に、図6に示すように、基板2上に、多孔質枠体4を、両者のメタライズパターン同士を例えば半田を介して接合することによって設ける。そして、図7に示すように、基板2の上面であって多孔質枠体4で囲まれた領域に発光素子3を実装する。
【0046】
そして、図8に示すように、基板2上の多孔質枠体4で囲まれた領域に、例えば封止部材5としてのシリコーン樹脂を充填する。このときは、多孔質枠体4内には、封止部材5が浸入していない。さらに、多孔質枠体4で囲まれる領域にシリコーン樹脂を充填して、例えば1分以上の時間を経過させることで、未硬化のシリコーン樹脂の一部を多孔質枠体4の内壁面から多孔質枠体4内の内部に向かって浸入させる。その後、例えば150℃以上の温度にシリコーン樹脂を熱して、シリコーン樹脂を硬化させることで、封止部材5を形成して発光素子3を封止する。このようにして、図9に示すように、浸入領域S1が形成された多孔質枠体4を設けることができる。
【0047】
次に、波長変換部材6を準備する。波長変換部材6は、未硬化の樹脂に蛍光体を混合して、例えばドクターブレード法、ダイコーター法、押し出し法、スピンコート法またはディップ法等のシート成形技術を用いて作製することができる。また、波長変換部材6は、未硬化の波長変換部材6を型枠に充填し、硬化して取り出すことによっても得ることができる。
【0048】
そして、図10に示すように、準備した波長変換部材6を多孔質枠体4の段差4a上に、接着材7としてのシリコーン樹脂を介して接着する。このときは、多孔質枠体4内には、接着材7が浸入していない。さらに、波長変換部材6を多孔質枠体4に接着材7を介して接着した状態で、例えば1分以上の時間を経過させることで、未硬化のシリコーン樹脂を多孔質枠体4内に浸入させる。その後、例えば150℃以上であって封止部材5が破壊されない360℃以下の温度にシリコーン樹脂を熱して、シリコーン樹脂を硬化させる。このようにして、図11に示すように、浸入領域S2が形成された多孔質枠体4を設けることができ、発光装置1を製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 発光装置
2 基板
3 発光素子
4 多孔質枠体
4a 段差
5 封止部材
6 波長変換部材
7 接着材
SP 隙間
S1 浸入領域
S2 浸入領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた発光素子と、
前記基板上に前記発光素子を取り囲むように設けられた多孔質枠体と、
前記基板上の前記多孔質枠体で囲まれた領域に前記発光素子を覆うように設けられ、一部が前記多孔質枠体内に浸入した封止部材と、
前記多孔質枠体に前記発光素子と間を空けて設けられた波長変換部材と、
前記波長変換部材の上面から前記多孔質枠体の上部にかけて設けられ、一部が前記多孔質枠体内に浸入しているとともに、前記多孔質枠体内で前記封止部材と間を空けて設けられた接着材とを備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記多孔質枠体は、前記封止部材と前記接着材との間に気孔を有していることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光装置であって、
前記波長変換部材と前記多孔質枠体との間に隙間が設けられており、前記接着材の一部は前記隙間に入り込んでいることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−227363(P2012−227363A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93801(P2011−93801)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】