説明

発光計測装置

【課題】装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に資料を分注する分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが分注ノズルと共上がりすることがない発光計測装置を提供すること。
【解決手段】発光用試薬を収容し、開口部60を封止材Sで封緘した有底の光計測用チューブ6を立てた状態で装着する装着部3と、昇降可能に設けられ、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズル4と、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器5とから構成され、光計測用チューブ6の封止材Sを貫通した分注ノズル4を上昇させる際に、光計測用チューブ6が共上がりするのを防止するための光計測用チューブ6の外周部61を挟持する挟持機構20から構成した共上がり防止手段2を装着部3に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光計測装置に関し、特に、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測し、試料に含まれる発光体の数量を調べる発光計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中に浮遊する細菌、真菌等の微生物、化学物質、微粒子等の被検出物を、捕集、収集して、単位体積当たりの被検出物数を算出する方法、特に、無菌製剤の製造環境や食品関係の製造環境における空中浮遊菌の菌数を算出する方法として、本件出願人が先に提案した、空中浮遊菌の生菌に由来するアデノシン三リン酸(以下、「ATP」という。)の量を、生物発光反応による発光量を計測することにより求め、これに基づいて空中浮遊菌の菌数を算出する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この空中浮遊菌の菌数の算出する方法に用いられる装置としては、被検出物としての空中浮遊菌を、捕集皿に充填したゼラチン及びグリセロールを含むゲル状の捕集担体に付着させて捕集し、空中浮遊菌が付着した捕集担体が充填されている捕集皿を被検出物収集容器に取り付け、この被検出物収集容器を加熱することにより捕集担体をゲルからゾルに相を転移し、ゾル化した試料に含まれる空中浮遊菌をフィルタで漉し取ることによって収集する被検出物の収集装置と、収集した空中浮遊菌からATPを抽出し、分注ノズルによって試料として吸引された試料を、内部に発光用試薬が収容された光計測用チューブ内に分注することにより、発光用試薬を発光させ、発光用試薬の発光量を光検出器によって計測するようにした発光計測装置とからなる装置が提案され、実用化されている(例えば、発光計測装置に関して、特許文献2参照)。
この発光量計測装置に用いられる光検出器は、光電子増倍管とコンパレータを組み合わせ、光電子増倍管に入射する光の1光子あたり1パルスを出力するフォトンカウンティング方式によって、発光試薬の発光量をパルスの発生数(単位はcps:Count Per Seconds)として計測するもので、これによって、単位体積当たりの被検出物数を算出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139115号公報
【特許文献2】特開2008−268019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記空中浮遊菌の菌数を算出する方法に用いる発光計測装置(被検出物の収集装置と一体構造となっているものも含む(以下、同じ。))は、図7〜図8に示すように、発光用試薬を収容し、開口部60を封止材Sで封緘した有底の光計測用チューブ6を立てた状態で装着する装着部3と、昇降可能に設けられ、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズル4と、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器5とから構成されている。
そして、光計測用チューブ6を装着部3に装着する際には、人手による作業で装着されることとなるため、コンタミネーションを防止する観点から片手で簡単に設置できるように構成する必要があるとともに、光計測用チューブ6の外周部61と装着部3に開口した挿入孔30の内周面とが接触することによって生じる静電気の発生を低減させる必要性から、装着部3の挿入孔30の内径は、光計測用チューブ6の外径よりも0.5mm程度大きく構成している。
これによって、光計測用チューブ6は、装着部3に保持、固定されることなく挿入孔30に挿入されているだけの状態となっている。
このため、図8に示すように、光計測用チューブ6内の発光用試薬に試料を分注した後、分注ノズル4を上昇させて、光計測用チューブ6から引き抜く際に、分注ノズル4を貫通する際に空いた封止材Sの貫通孔から内部に向かって垂れ下がる封止材Sと分注ノズルの外周部とが接触し、摩擦によって、光計測用チューブが分注ノズル4と共上がりする場合がある。
そして、光の強度は、発光点からの距離の2乗で減衰するため、光計測用チューブ6が共上がりすると光検出器5による正確な発光量の計測を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に資料を分注する分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが分注ノズルと共上がりすることがない発光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本第1発明の発光計測装置は、発光用試薬を収容し、開口部を封止材で封緘した有底の光計測用チューブを立てた状態で装着する装着部と、昇降可能に設けられ、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズルと、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器とからなる発光計測装置において、光計測用チューブの封止材を貫通した分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが共上がりするのを防止する共上がり防止手段を備えてなり、該共上がり防止手段が、装着部に配設した、光計測用チューブの外周部を挟持する挟持機構からなることを特徴とする。
【0008】
また、同じ目的を達成するため本第2発明の発光計測装置は、発光用試薬を収容し、開口部を封止材で封緘した有底の光計測用チューブを立てた状態で装着する装着部と、昇降可能に設けられ、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズルと、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器とからなる発光計測装置において、光計測用チューブの封止材を貫通した分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが共上がりするのを防止する共上がり防止手段を備えてなり、該共上がり防止手段が、分注ノズルに設けられた固定環と、該固定環にコイルバネを介して取り付けられ、分注ノズルに沿って移動可能とされ、分注ノズルを下降させた際に光計測用チューブの開口部の端縁を押圧する移動環と、コイルバネが無負荷のときに移動環の上方位置から下方位置にかけて縮径する分注ノズルのテーパー部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本第1発明の発光計測装置によれば、光計測用チューブの封止材を貫通した分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが共上がりするのを防止する共上がり防止手段を備えてなり、この共上がり防止手段が、装着部に配設した、光計測用チューブの外周部を挟持する挟持機構からなることにより、分注ノズルを上昇させて、光計測用チューブから引き抜く際に、光計測用チューブの開口部を封緘している封止材の貫通部分と分注ノズルの外周部との間で摩擦が生じても、光計測用チューブは、挟持機構によって装着部に固定されており共上がりを有効に防止することができる。
【0010】
また、本第2発明の発光計測装置によれば、共上がり防止手段が、分注ノズルに設けられた固定環と、該固定環にコイルバネを介して取り付けられ、分注ノズルに沿って移動可能とされ、分注ノズルを下降させた際に光計測用チューブの開口部の端縁を押圧する移動環と、コイルバネが無負荷のときに移動環の上方位置から下方位置にかけて縮径する分注ノズルのテーパー部とからなることにより、分注ノズルを下降させ、封止材を貫通させるときに、移動環がコイルバネから負荷を受けて光計測用チューブの開口部の端縁を押圧した状態となり、この状態のまま、分注ノズルを上昇させることによって、分注ノズルが貫通して内部に垂れ下がった封止材の部分を分注ノズルが通過し始めるときには、光計測用チューブの開口部の端縁を押圧した状態で、その後、テーパー部が貫通した封止材の貫通部分を通過していくこととなって、分注ノズルの外周面は、内部に垂れ下がった封止材の部分と隙間が生じて、接触箇所がなくなり、摩擦による共上がりを確実に防止することができるとともに、人手による作業は、光計測用チューブの装着のみで、コンタミネーションのリスクを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本第1発明の発光計測装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】同装置の光計測チューブの装着部及び共上がり防止手段を示す一部断面の切り欠き図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】同装置に光計測チューブを装着し、試料を分注する際の作動状態を示し、(a)は光計測チューブを装着部に装着した状態を、(b)は分注ノズルを下降させ光計測チューブの封止材を貫通し、光計測チューブ内に試料を分注する状態を、(c)は分注ノズルが装着部から離間した定位置に戻った状態を示す。
【図4】本第2発明の発光計測装置の一実施例を示す概略図である。
【図5】同装置に光計測チューブを装着し、試料を分注する際の作動状態を示し、(a)は光計測チューブを装着部に装着した状態を、(b)は分注ノズルを下降させ、光計測チューブの封止材を貫通し、移動環が光計測チューブの開口部の端縁に当接した状態を、(c)はさらに分注ノズルを下降させ、移動環が光計測チューブの開口部の端縁を押圧し、光計測チューブ内に試料を分注する状態を、(d)は、移動環が光計測チューブの開口部の端縁に対する押圧が解除されつつ、分注ノズルを上昇させている状態を、(e)は分注ノズルが装着部から離間した定位置に戻った状態を示す。
【図6】図5における、共上がり防止手段の作動を詳細に説明する概略図で、(a)は移動環が光計測チューブの開口部の端縁に当接するとともに、分注ノズルの先端の小径部が光計測チューブの封止材を貫通した状態を、(b)はさらに分注ノズルを下降させ、移動環が光計測チューブの開口部の端縁を押圧するとともに、垂れ下がった封止材にテーパー部が当接している状態を、(c)は分注ノズルを上昇させ、移動環が光計測チューブの開口部の端縁に対する押圧が解除されつつ、垂れ下がった封止材とテーパー部に隙間が生じている状態を、(d)は移動環が端縁から離れ、垂れ下がった封止材と分注ノズルとが完全に離間した状態を示す。
【図7】従来の光計測装置の光計測チューブの装着部を示す一部断面の切り欠き図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】同装置に光計測チューブを装着し、試料を分注する際の作動状態を示し、(a)は光計測チューブを装着部に装着した状態を、(b)は分注ノズルを下降させ光計測チューブの封止材を貫通し、光計測チューブ内に試料を分注する状態を、(c)は分注ノズルが装着部から上昇させる際に、光計測チューブが共上がりした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の発光計測装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本第1明の発光計測装置の一実施例を示す。
この発光計測装置1は、発光用試薬を収容し、開口部60を封止材Sで封緘した有底の光計測用チューブ6を立てた状態で装着する装着部3と、昇降可能に設けられ、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズル4と、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器5とから構成され、分注ノズル4の作動させるアクチュエータAの制御や、光検出器5への高電圧の(High Voltage:HV)印加を制御する制御手段C1と、光検出器5によって計測した発光試薬の発光量を記憶する記憶手段C2と、表示部Dとを有する制御装置Cを備えている。
そして、光計測用チューブ6の封止材Sを貫通した分注ノズル4を上昇させる際に、光計測用チューブ6が共上がりするのを防止するための光計測用チューブ6の外周部61を挟持する挟持機構20から構成した共上がり防止手段2を装着部3に配設するようにしている。
【0014】
装着部3は、光計測用チューブ6の外径よりも若干大径の挿入孔30を開口した筒形状で、下端縁を光検出器5が配設されるケーシングに固定されている。
また、挿入孔30の下方は、半球形状や、図2に示すような円錐形状に形成し、発光して錯乱した光を光検出器5の入射窓に誘導するようにしている。
挿入孔30の下方を円錐形状にしたときの反射面角度αは30〜70°(好ましくは45°)とする。
【0015】
挟持機構20は、図2に示すように、光計測用チューブ6の外周部61の略半分を保持する、装着部3に固定して設けた固定片20Aと、光計測用チューブ6の外周部61の残りの略半分を保持する、固定片20Aに可動に設けた可動片20Bと、固定片20Aに対して可動片20Bを押圧した状態に保持する突起部21aを有する操作片21とから構成されている。
固定片20Aは、装着部3の挿入孔30と略同径の半径とした挟持面を有し、ボルト、ビス等の締結手段で装着部3の上面に固定するようにしている。
可動片20Bも、固定片20Aと略同様の形状で、座ぐり部を有する取付孔を介して、六角穴付きボルト等の締結手段23によって、固定片20Aと接触する取付面との間で、密着と所定の隙間とを有することが可能なように取り付けられている。
また、固定片20Aに対して可動片20Bを離間させる方向に付勢する付勢手段22を設けることができる。
本実施例においては、可動片20Bは、付勢手段22を介して固定片20Aと接続され、常時は、固定片20Aから離間する方向に付勢されている。
この付勢手段22は、図2(a)に示すように、締結手段23のネジ部に嵌挿され、固定片20Aと可動片20Bとの間に配設することによって、可動片20Bを固定片20Aから離間させる方向に付勢する。
【0016】
そして、可動片20Bは、装着部3に固定されるフランジ21cに枢軸21bを介して揺動自在に枢着される操作片21の突起部21aが可動片20Bの周面を押圧することによって固定片20A側に押圧されるように構成されている。
操作片21の突起部21aの可動片20Bの当接箇所は、図2(a)に示すように、外周が180°の円弧(半円形状)となる可動片20Bの外周の中心部分(端から90°の位置)から30〜60°ずれた位置となるようにしている。
これによって、固定片20A及び可動片20Bの挟持面から光計測用チューブ6の外周部61に対する押圧力は4方向に分散して、確実に光計測用チューブ6を挟持することができる。
【0017】
操作片21による、押圧を解除している状態では、可動片20Bの取付面は、固定片20Aの取付面から離間しており、対向する挟持面間によって形成される面積は、装着部3の挿入孔30の開口面積と等しいか、それ以上の大きさを有し、光計測用チューブ6を装着部3の挿入孔30に片手で簡単に装着することができるとともに、挟持機構20の挟持面との接触を最小限に抑え、静電気の発生を抑制することができる。
また、装着後も片手で簡単に操作片21を操作して光計測用チューブ6を装着部3に固定することができる。
これによって、装着時の人手による作業の際に、両手を使うことなく片手で全ての操作を行うことができ、コンタミネーションのリスクを低減することができる。
【0018】
次に、この発光計測装置1によって、ATP法によって単位体積当たりの空中浮遊菌数を計測する方法、特に、発光計測装置1の装着部3に装着した光計測用チューブ6に試料を分注する際の手順を説明する。
【0019】
まず、分注ノズル4を装着部3から離れた上方位置で停止させ、シャッターユニット等の遮光対策を施した発光計測装置1の装着部3の上面に配設され、可動片20Bが固定片20Aから離間した状態(挟持機構20の操作片21によって可動片20Bが押圧されていない状態)の挟持機構20の挟持面間及び装着部3の挿入孔30に、人手によって開口部60を封止材Sで封緘した光計測用チューブ6を立てた状態に装着する。
このとき、可動片20Bが固定片20Aから離間して隙間があるため光計測用チューブ6の外周部61の挟持機構20に対する擦れ量を少なくすることができ、発光計測では計測結果に大きな影響を及ぼすこととなる静電気の影響を大幅に低減することができる。
【0020】
この状態から、共上がり防止手段2である挟持機構20の操作片21を操作し、操作片21の突起部21aによって可動片20Bを固定片20A側に押圧して固定する(図3(a)参照)。
これらの作業は、人手によって行うものであるが、全ての作業を片手で行うことができるため、コンタミネーションのリスクを低減することができる。
【0021】
次に、従来例と同様に、目的の空中浮遊菌から抽出したATPを試料として吸引している分注ノズル4を、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する(図3(b)参照)。
【0022】
そして、光計測用チューブ6の封止材Sを貫通した分注ノズル4を上昇させる。このとき、光計測用チューブ6の外周部61は、挟持機構20の固定片20A及び可動片20Bの挟持面で挟持されており、封止材Sの貫通部分と分注ノズル4の外周部との間で摩擦が生じても、光計測用チューブ6は、挟持機構20によって装着部3に固定されており、共上がりすることがない(図3(c)参照)。
【0023】
その後、光電子増倍管とコンパレータを組み合わせた光検出器5を、制御装置Cによって操作し、光電子増倍管に入射する光の1光子あたり1パルスを出力するフォトンカウンティング方式によって、発光試薬の発光量をパルスの発生数として計数し、単位体積当たりの空中浮遊菌数を算出する。
【実施例2】
【0024】
図4〜図6に、本第2発明の発光計測装置の一実施例を示す。
この発光計測装置1は、第1実施例と同様、発光用試薬を収容し、開口部60を封止材Sで封緘した有底の光計測用チューブ6を立てた状態で装着する装着部3と、昇降可能に設けられ、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズル4と、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器5とから構成されており、光計測用チューブ6の封止材Sを貫通した分注ノズル4を上昇させる際に、光計測用チューブ6が共上がりするのを防止するための共上がり防止手段2が、分注ノズル4に設けられた固定環25と、固定環25にコイルバネ27を介して取り付けられ、分注ノズル4に沿って移動可能とされ、分注ノズル4を下降させた際に光計測用チューブ6の開口部60の端縁60aを押圧する移動環26と、コイルバネ27が無負荷のときに移動環26の上方位置から下方位置にかけて縮径する分注ノズル4のテーパー部28とから構成するようにしている。
【0025】
固定環25は、分注ノズル4を削り出しで成形する場合、一体に成形することができるほか、別途成形した環状部材を分注ノズル4の外周部の適所に溶接等の固着手段によって取り付けても構わない。
【0026】
移動環26は、分注ノズル4の外周部と所定の隙間を開けて挿通され、固定環25とはコイルバネ27を介して接続される。
移動環26は、分注ノズル4が光計測用チューブ6から離れた位置にあるときに(光計測用チューブ6の上方で停止しているとき)分注ノズル4から抜け落ちることがないように、取り付けられている。
本実施例においては、コイルバネ27の両端面を固定環25及び移動環26の対向面に溶接等の固着手段で固定するようにしている。
【0027】
分注ノズル4のテーパー部28は、コイルバネ27が無負荷のときに移動環26の上方位置から下方位置にかけて縮径するように構成され、コイルバネ27の負荷によって、移動環26が光計測用チューブ6の開口部60の端縁を押圧しているときに、分注ノズル4を貫通する際に空いた封止材Sの貫通孔から内部に向かって垂れ下がる封止材Saと接触し、分注ノズル4を上昇させるときに、垂れ下がる封止材Saから離間し、コイルバネ27が無負荷のときには、垂れ下がる封止材Saと分注ノズル4との接触箇所がなく摩擦による共上がりをおこすことがない箇所に形成されている。
【0028】
次に、この発光計測装置1によって、ATP法によって単位体積当たりの空中浮遊菌数を計測する方法、特に、発光計測装置1の装着部3に装着した光計測用チューブ6に試料を分注する際の手順を説明する。
【0029】
まず、実施例1と同様に、分注ノズル4を装着部3から離れた上方位置で停止させ、シャッターユニット等の遮光対策を施した発光計測装置1の装着部3の挿入孔30に、人手によって開口部60を封止材Sで封緘した光計測用チューブ6を立てた状態に装着する。
このとき、挿入孔30の内径は光計測用チューブ6の内径よりも若干大径(約0.5mm大径)となるようにして、光計測用チューブ6の外周部61の挿入孔30に対する擦れ量を少なくして、静電気の影響を低減している(図5(a)参照)。
【0030】
次に、目的の空中浮遊菌から抽出したATPを試料として吸引している分注ノズル4を、装着部3に装着された光計測用チューブ6の封止材Sを貫通して、発光用試薬に試料を分注する(図5(b)〜図5(c)参照)。
そして、光計測用チューブ6の封止材Sを貫通した分注ノズル4を上昇させる(図5(d)〜図5(e)参照)。
【0031】
次に、分注ノズル4による光計測用チューブ6の封止材Sの貫通から引き抜く際の共上がり防止手段2の作動を詳細に説明する。
まず、分注ノズル4の尖頭状の先端が封止材Sを突き破って、光計測用チューブ6の内部に貫通され、無負荷状態の移動環26が、光計測用チューブ6の開口部60の端縁に当接する(図6(a)参照)。このとき、封止材Sには分注ノズル4の先端の小径部4aと略同径の貫通孔が開口される。
さらに、分注ノズル4を下降させることによって、移動環26はコイルバネ27によって負荷を受け、光計測用チューブ6の開口部60の端縁を押圧するとともに、テーパー部28が、分注ノズル4が貫通される際に空いた封止材Sの貫通孔から内部に向かって垂れ下がる封止材Saと当接する(図6(b))。
このとき、封止材Sの貫通孔は、分注ノズル4の先端の小径部4aによって開口された大きさよりも大きくなっている。
【0032】
この状態で、分注ノズル4から光計測用チューブ6内の発光用試薬に試料を分注する。なお、分注ノズル4は、分注ノズル4の大径部4bが光計測用チューブ6内に貫通するまで下降させてから試料を分注するようにしても構わない。
【0033】
次に、試料の分注が完了した分注ノズル4を、光計測用チューブ6から上昇させる。
このとき、光計測用チューブ6の開口部60の端縁は、コイルバネ27から負荷を受けている状態の移動環26によって押圧されており、貫通孔から内部に向かって垂れ下がる封止材Saと分注ノズル4のテーパー部とが当接している状態のときでも、光計測用チューブ6が共上がりすることがなく、さらに分注ノズル4を上昇させることによって、コイルバネ27による負荷が減少又はなくなり、移動環26による開口部60の端縁60aへの押圧が解除されて、テーパー部28及び分注ノズル4の先端の小径部が、内部に向かって垂れ下がる封止材Saを通過することとなるが、貫通孔は、分注ノズル4の先端の小径部によって開口された大きさよりも大きくなっているために、分注ノズル4の外周部と内部に向かって垂れ下がる封止材Saとは接触することがなく、光計測用チューブ6が分注ノズル4と共上がりすることがない(図6(c)〜図6(d))。
【0034】
その後、第1実施例と同様に、光電子増倍管とコンパレータを組み合わせた光検出器5を、制御装置Cによって操作し、光電子増倍管に入射する光の1光子あたり1パルスを出力するフォトンカウンティング方式によって、発光試薬の発光量をパルスの発生数として計数し、単位体積当たりの空中浮遊菌数を算出する。
【0035】
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、上記第1実施例と同様である。
【0036】
以上、本発明の発光計測装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の発光計測装置は、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に資料を分注する分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが分注ノズルと共上がりすることがないという特性を有するとともに、光計測用チューブの装着に際し、コンタミネーションのリスク低減と静電気の発生を抑制することができることから、捕集装置によって捕集した空気中に浮遊する細菌、真菌等の微生物、化学物質、微粒子等の被検出物に含まれる菌数を計測するための発光計測装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 発光計測装置
2 共上がり防止手段
20 挟持機構
25 固定環
26 移動環
27 コイルバネ
28 テーパー部
3 装着部
30 挿入孔
4 分注ノズル
5 光検出器
6 光計測用チューブ
60 開口部
60a 端縁
61 外周部
S 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光用試薬を収容し、開口部を封止材で封緘した有底の光計測用チューブを立てた状態で装着する装着部と、昇降可能に設けられ、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズルと、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器とからなる発光計測装置において、光計測用チューブの封止材を貫通した分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが共上がりするのを防止する共上がり防止手段を備えてなり、該共上がり防止手段が、装着部に配設した、光計測用チューブの外周部を挟持する挟持機構からなることを特徴とする発光計測装置。
【請求項2】
発光用試薬を収容し、開口部を封止材で封緘した有底の光計測用チューブを立てた状態で装着する装着部と、昇降可能に設けられ、装着部に装着された光計測用チューブの封止材を貫通して、発光用試薬に試料を分注する分注ノズルと、試料を分注した発光用試薬の発光量を計測する光検出器とからなる発光計測装置において、光計測用チューブの封止材を貫通した分注ノズルを上昇させる際に、光計測用チューブが共上がりするのを防止する共上がり防止手段を備えてなり、該共上がり防止手段が、分注ノズルに設けられた固定環と、該固定環にコイルバネを介して取り付けられ、分注ノズルに沿って移動可能とされ、分注ノズルを下降させた際に光計測用チューブの開口部の端縁を押圧する移動環と、コイルバネが無負荷のときに移動環の上方位置から下方位置にかけて縮径する分注ノズルのテーパー部とからなることを特徴とする発光計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−220320(P2012−220320A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85607(P2011−85607)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】