説明

発振器

【課題】フロア雑音または位相雑音を抑えることができ、かつ分周器の分周比の設定に手間がかからない発振器を提供すること。
【解決手段】周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音または位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音または位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、を備えるように発振器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数シンセサイザと分周器とを備えた発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
低雑音、低周波数の基準信号源として例えば水晶発振器が用いられる場合が有り、この水晶発振器の周波数は固定されている。そこで、多様な機種に対応するために水晶発振器からの出力を基準信号とする周波数シンセサイザを構成し、この周波数シンセサイザの後段に分周器を設けて、発振器を構成する場合が有る。
【0003】
例えば分周器は複数段に設けられ、周波数シンセサイザの出力信号が順次分周され、後段側に出力される。そして、周波数シンセサイザの出力と、夫々の分周器の分周比の組み合わせとにより、所望の周波数信号を取り出している。
【0004】
ところで、各分周器の分周比によって、当該分周器から出力される信号の位相雑音特性及びフロア雑音特性は変化する。そこで、上記の発振器の製造時には製造者が、周波数シンセサイザが出力可能な周波数範囲、各分周器の許容入力周波数範囲を考慮しながら、出力信号の位相雑音及びフロア雑音ができるだけ抑えられ、なおかつ発振器から所望の周波数信号を出力できるように各分周器の分周比の設定と、周波数シンセサイザからの出力周波数の設定とを行っていた。しかし、各機種で要求される周波数に応じて、このように人力で設定を行うことは手間と時間がかかる。分周器が複数設けられる場合について説明してきたが、1個の場合も同様の問題が起こる。
【0005】
特許文献1には、フロア雑音を改善するための位相同期発振器について記載されており、この位相同期発振器は複数段に接続された分周器を備えている。しかし、この分周器は帰還側に設けられており、また分周比の設定を行うときの上記のような問題については記載されておらず、この問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開平6−152393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、フロア雑音または位相雑音を抑えることができ、かつ分周器の分周比の設定に手間がかからない発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発振器は、
周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の発振器は、周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号の位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号の位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の他の発振器は、
周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音の大きさ及び位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音及び位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記の発振器において、
前記複数の分周器に代えて1個の分周器を用い、
前記分周特性データは、複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎にフロア雑音及び位相雑音の少なくとも一方の大きさを書き込んだデータであることに代えて、前記1個の分周器について入力周波数と分周比との組み合わせ毎にフロア雑音及び位相雑音の少なくとも一方の大きさを書き込んだデータであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発振器は、複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音または位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部を備えており、この分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音または位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する。従ってフロア雑音または位相雑音を抑え、かつ分周比の設定に要する手間及び時間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る発振器のブロック図である。
【図2】前記発振器が備える記憶部の構成図である。
【図3】分周比が決定される工程を示したフローチャートである。
【図4】分周比が決定される他の工程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である発振器1の構成について図1を参照しながら説明する。発振器1は周波数シンセサイザ10を備えており、周波数シンセサイザ10は、水晶発振器11と回路12とVCO13とにより構成されている。水晶発振器11の出力は例えば10MHzである。水晶発振器11の後段には、PLLPhase Locked Loop)を構成するための前記回路12が設けられている。この回路12はその後段に設けられたVCO(電圧制御発振回路)13に制御信号を出力し、当該回路12にはVCO13からのフィードバック信号が入力される。VCO13の後段には分周器21、分周器22が前段側からこの順に接続され、VCO13の出力信号は分周器21、22により順次分周されて出力される。
【0015】
この発振器1は例えばコンピュータからなる制御部3を備えている。制御部3には各種演算を行うCPU31が設けられており、周波数シンセサイザ10及び分周器21、22に制御信号を出力し、周波数シンセサイザ10の出力周波数が制御され、分周器21、分周器22の分周比が設定される。選択部を構成するプログラム32は、後述のように各種の判定を行い、分周器21、22の分周比を決定できるようにステップ群が組まれている。図中33はバスであり、34は記憶部である。
【0016】
図中42はデジタル−アナログ変換回路であり、制御部3からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。そして、変換された信号が分周器21、22の制御端子に入力され、その入力信号に応じて分周器21、22の分周比が決定される。制御部3からのデジタル信号の出力値及び変換されたアナログ信号の出力値は、分周器21、22の仕様に応じて設定される。
【0017】
図2は記憶部34に格納されているデータを示している。図2に示すように記憶部34には、VCO13の出力周波数(=分周器21への入力周波数)と、分周器21の分周比と、分周器21からの出力周波数(=分周器22への入力周波数)と、分周器21からの出力信号の位相雑音及びフロア雑音の値と、分周器22の分周比と、分周器22からの出力周波数と、分周器22からの出力信号の位相雑音及びフロア雑音の値と、が対応付けられたテーブル35が記憶されている。分周器21、22について夫々予め実験やシミュレーションを行ってその特性を調べておくことで、分周器ごとにこのような入力周波数と分周比と出力信号の位相雑音及びフロア雑音の値との対応関係(分周特性データ)が設定されている。
【0018】
図2では分周器22からの出力が4.464MHzであるデータのみ示しているが、実際には4.464MHz以外のデータも記憶されており、ユーザが発振器1からの出力周波数を任意に選択できるようになっている。このテーブル35には分周器21の分周比が2、4または8に設定されたときのデータが記憶されており、分周器21の分周比は、この2、4または8の中から決定される。テーブル35には分周器22の分周比が2、4、8、16、32に設定されたときのデータが記憶されており、分周器22の分周比は、この2、4、8、16、32の中から決定される。
【0019】
分周器21の出力の位相雑音及びフロア雑音の各値には、適正度合いを表すレベル数が設定されており、記憶部34のテーブル36には、これらの位相雑音及びフロア雑音の各値とレベル数との対応が記憶されている。レベル数が低いほど良好であり、位相雑音について見ると、分周比が夫々8、4、2であるときの−111.3dBc/Hzはレベル1、−105.3dBc/Hzはレベル2、−74.7dBc/Hzはレベル3である。フロア雑音についてみると、分周比が夫々8、4、2であるときの−145.0dBc/Hzはレベル1、−144.7dBc/Hzはレベル2、−139.6dBc/Hzはレベル3である。
【0020】
分周器22の出力の位相雑音及びフロア雑音の各値についても分周器21と同様に適正度合いを表すレベル数が設定されており、記憶部34のテーブル37には、各雑音の値とレベル数との対応が記憶されている。位相雑音について見ると分周比が夫々32、16、8、4、2であるときの−123.2dBc/Hzはレベル1、−117.3dBc/Hzはレベル2、−110.8dBc/Hzはレベル3、−105.2dBc/Hzはレベル4、−98.2はレベル5である。フロア雑音について見ると、分周比が夫々8、4、16、2、32であるときの−154.9dBc/Hzはレベル1、−154.4dBc/Hzはレベル2、−153.3dBc/Hzはレベル3、−152.3dBc/Hzはレベル4、−148.8dBc/Hzはレベル5である。
【0021】
また、記憶部34には分周器21、22への許容入力周波数範囲が各々記憶されており、この許容入力周波数範囲は、例えば各々50MHz〜1GHzとして設定されている。さらに記憶部34にはVCO13の出力可能な周波数範囲が記憶されており、この周波数範囲は例えば350MHz〜1GHzとして設定されている。
【0022】
また、制御部3は、入力部41を備えている。既述のテーブル35の各値、各分周器21、22から出力される各雑音のレベル数の設定、分周器21、22への許容入力周波数範囲及びVCO13が出力可能範囲の設定は、この入力部41より行うことができる。また、発振器1のユーザは、この入力部41を介してフロア雑音が最適に抑えられるように設定するか、位相雑音が最適に抑えられるように設定するかを選択することができる。
【0023】
続いて、ユーザがフロア雑音が最適に抑えられるように選択を行った場合に分周器21、22の分周比が決定されるプロセスについて、図3のフローを参照しながら説明する。先ずユーザが、入力部41から発振器1の出力周波数、即ち分周器22から出力される周波数を決定する(ステップS1)。
【0024】
テーブル35から、決定された出力周波数に対応する分周器22の分周比のうち、例えば最も小さい値のものが選択され(ステップS2)、さらに選択された分周比に対応する分周器22出力の位相雑音値を読み出す。そして、テーブル37の対応関係に基づいて、読み出された位相雑音値のレベルが、最も好ましいレベル1であるか否か判定される(ステップS3)。
【0025】
ステップS3でレベル1ではないと判定された場合は、ステップS2に戻り、直近に選択された分周比の次に大きいものが改めて選択され、ステップS3で対応する分周器22出力のフロア雑音値がレベル1であるか否かが判定される。このように分周器22の分周比のうち、小さいものから大きいものに向けて対応する前記フロア雑音値のレベルが1であるか否かの判定が順次行われる。
【0026】
ステップS3でレベル1であると判定されると、その分周比に対応する分周器22への入力周波数がテーブル35から読み出され、この入力周波数が分周器22への許容入力周波数範囲に含まれるか否かが判定される(ステップS4)。
【0027】
ステップS4で、入力可能な周波数範囲に含まれないと判定された場合には、ステップS2に戻り、決定された出力周波数に対応する分周器22の分周比のうち、改めて最も小さい値のものが選択され、続くステップS3では、選択された分周比に対応する分周器22出力の位相雑音のレベル数がレベル2であるか否か判定される。レベル2ではないと判定される場合には、ステップS2に戻って、直近に選択された分周比の次に大きいものが改めて選択される。
【0028】
このようにステップS4が行われた後に繰り返しステップS2が行われるときは、分周器22の分周比は改めて最も低い値のものから順に選択され、ステップS3では直近に判定したレベル数よりも1つ大きいレベル数であるか否かが判定される。即ち、ステップS3で前記出力周波数がレベル2であるか否かの判定を行った後、再びステップS4でその出力周波数に対応する入力周波数が許容範囲外であると判定された場合、再度行われるステップS3では、出力周波数がレベル3であるか否かの判定が行われる。このように、分周器22出力のフロア雑音がより好ましい分周比から順に、当該分周比に対応する分周器22への入力周波数が入力許容周波数範囲に含まれるか否かが判定されていく。
【0029】
ステップS4で分周器22への入力周波数が入力許容周波数範囲に含まれると判定された場合、テーブル35からステップS2で選択された分周器22に対応する分周器21の分周比のうち、例えば最も小さい値のものが選択される(ステップS5)。そして、選択された分周比に対応する分周器21の出力のフロア雑音値が読み出され、テーブル36の対応関係に基づいて、そのフロア雑音値が最も好ましいレベル1であるか否か判定される(ステップS6)。
【0030】
レベル1ではないと判定された場合は、ステップS5に戻り、直近に選択された分周比の次に大きいものが改めて選択され、ステップS6で対応する分周器21出力のフロア雑音値がレベル1であるか否かが判定される。このように分周器21の分周比のうち、小さいものから大きいものに向けて、対応する前記フロア雑音値のレベルが1であるか否かの判定が順次行われる。
【0031】
ステップS5でレベル1であると判定されると、そのように判定された出力周波数に対応する分周器21への入力周波数がテーブル35から読み出され、この入力周波数が分周器21への入力許容周波数範囲に含まれるか否かが判定される(ステップS7)。
【0032】
ステップS7で、入力許容周波数範囲に含まれないと判定された場合には、ステップS5に戻り、決定された出力周波数に対応する分周器21の分周比のうち、最も小さい値のものが改めて選択され、続くステップS6では、選択された分周比に対応する分周器21出力の位相雑音のレベル数がレベル2であるか否か判定される。レベル2ではないと判定される場合には、再度ステップS5に戻って、直近に選択された分周比の次に大きいものが改めて選択される。
【0033】
このように、ステップS7が行われた後に繰り返しステップS5が行われるときは、分周器21の分周比は最も低い値のものから順に選択されてゆき、ステップS6では直近に判定したレベル数よりも1つ大きいレベル数であるか否かが判定される。そうして、分周器22の入力周波数範囲の適正を判定する場合と同様に、分周器21出力のフロア雑音がより好ましい分周比から順に、当該分周比に対応する分周器21への入力周波数が、入力周波数許容範囲に含まれるか否かが判定される。
【0034】
ステップS7で、分周器21への入力周波数が入力許容周波数範囲に含まれると判定された場合、ステップS2、S5で選択された分周器21、22の分周比に対応するVCO13の出力周波数がテーブル35から読み出され、この出力周波数が、VCO13の出力可能な周波数範囲に含まれているか否かが判定される(ステップS8)。
【0035】
ステップS8で、VCO13の出力可能な周波数範囲に含まれていると判定された場合は、ステップS2、S5で夫々選択された値に分周器21、22の分周比が決定される(ステップS9)。また、発振器1の動作時には、VCO13から決定された分周比に対応した周波数が出力されるように周波数シンセサイザ10が制御される。
【0036】
ステップS8でVCO13の出力可能な周波数範囲に含まれていないと判定された場合は、例えばステップS2に戻り、繰り返し上記のフローが実施される。既述のようにステップS3、S6では、判定の基準が引き下げられ、フロア雑音のレベルが、直近に判定したレベルよりも一つ大きいレベルか否かについて判定される。
【0037】
ユーザが、フロア雑音が最適に抑えられるように選択を行った場合には、ステップS3、S6において、選択された分周比に対応するフロア雑音のレベルについて判定する代わりに選択された分周比に対応する位相雑音のレベルについて判定が行われる。このような違いを除いては上記のフローと同様に分周器21、22の分周比及びVCOの出力周波数が決定される。
【0038】
分周器22からの出力が4.464MHzに設定され、ユーザがフロア雑音を最適に抑えるように選択した場合、図3に示した各データと上記のフローに従い、VCO13の出力は571.392MHz、分周器21の分周比は8、分周器22の分周比は16として夫々決定される。また、ユーザが位相雑音を最適に抑えるように選択した場合、図3に示した各データと上記のフローに従い、VCO13の出力は1142.784MHz、分周器21の分周比は8、分周器22の分周比は32として決定される。
【0039】
また、位相雑音及びフロア雑音の両方が抑えられるように分周器21、22の分周比及びVCOの出力周波数を決定することもできる。図4は、そのようなフローを示しており、図3のフローとの差異点を中心に説明する。先ず、ユーザは、予め入力部41から、分周器21、22から出力される位相雑音及びフロア雑音の各レベルの許容範囲を設定しておく。
【0040】
ステップS1で発振器1の出力周波数を決定した後、ステップS2では上記のフローと同様に、分周器22について最も低い分周比が初めに選択される。そして、ステップS2で選択された分周比に対応するフロア雑音のレベルが、上記のようにユーザが設定した許容範囲に含まれるか否かが判定される(ステップS21)。
【0041】
ステップS21で許容範囲に含まれないと判定された場合にはステップS2に戻って前記分周比が改めて選択される。分周比を改めて選択し直す場合は、図3のフローとは異なり、直近に設定された分周比の次に大きいものが選択される。ステップS21で許容範囲に含まれると判定された場合は、続いて、ステップS2で選択された分周比に対応する位相雑音値のレベルが、設定された許容周波数範囲に含まれるか否かが判定される(ステップS22)。
【0042】
ステップS22で許容範囲に含まれないと判定された場合にはステップS2に戻って分周比が改めて選択される。ステップS22で許容範囲に含まれると判定された場合には図3のフローと同様にステップS4が実施され、選択された分周器22の分周比に対応した入力周波数が許容範囲か否か判定される。ステップS4で許容範囲に含まれないと判定された場合はステップS2に戻って分周比が改めて選択される。ステップS4で許容範囲に含まれると判定された場合には、ステップS5で、ステップS2と同様に分周器21について最も低い分周比が選択される。そして、ステップS5で選択された分周比に対応するフロア雑音値のレベルが、ユーザが設定した許容範囲に含まれるか否かが判定される(ステップS23)。
【0043】
ステップS23で許容範囲に含まれないと判定された場合にはステップS5に戻って分周比が改めて設定される。ステップS2と同様、ステップS5で改めて分周比が選択される場合には直近に選択した分周比の次に大きい分周比が選択される。ステップS23で許容範囲に含まれると判定された場合には、ステップS5で選択された分周比に対応する位相雑音値のレベルが、ユーザが設定した許容範囲に含まれるか否かが判定される(ステップ24)。ステップS24で許容範囲に含まれないと判定された場合にはS5に戻って分周比が改めて設定される。許容範囲に含まれると判定された場合には、図3のフローと同様にステップS7が実施され、ステップS5で選択された分周比に対応した入力周波数が許容範囲か否か判定される。
【0044】
ステップS7で許容範囲に含まれないと判定された場合はステップS5に戻って分周比が改めて選択される。ステップS7で許容範囲に含まれると判定された場合には、図3のフローと同様にステップS8が実施され、VCO13の出力可能範囲であるか否かが判定される。そして、ステップS8でVCO13の出力可能範囲ではないと判定された場合には、ステップS2に戻って分周器22の分周比が改めて選択される。VCO13の出力可能範囲であると判定された場合には分周比がステップS2、S5で選択された分周比に決定される。
【0045】
この発振器10によれば、分周器21、22への入力許容周波数範囲及びVCO13の出力可能周波数範囲に基づいて、最終段の分周器22からの出力信号の位相雑音及び/またはフロア雑音が良好に抑えられるように分周器21、22の分周比及びVCO13の出力が自動で決定される。従って、これら分周比及びVCO13の出力を決定するために要する手間や時間を抑えることができる。
【0046】
本例では2つの分周器が縦続に接続されているが、このように接続する分周器の数としては2個に限られず、3個以上設けてもよいし、1個でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 発振器
10 周波数数シンセサイザ
11 水晶発振器
13 VCO
21 分周器
22 分周器
3 制御部
31 CPU
32 プログラム
34 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項2】
周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号の位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号の位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項3】
周波数シンセサイザと、
この周波数シンセサイザの出力信号を順次分周する複数の分周器と、
前記複数の分周器における最終段の分周器から目的とする周波数が得られるように、当該複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎に、各段の分周器の出力信号のフロア雑音の大きさ及び位相雑音の大きさを記載した分周特性データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている分周特性データに基づいて、各分周器の許容入力周波数の範囲内でありかつ最終段の分周器からの出力信号のフロア雑音及び位相雑音が良好な入力周波数と分周比との組み合わせを判断して選択する選択部と、
各分周器を、前記選択部で選択され組み合わせに応じた分周比に設定するための制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載された発振器において、
前記複数の分周器に代えて1個の分周器を用い、
前記分周特性データは、複数の分周器の各々について、入力周波数と分周比との組み合わせを複数設定すると共に各組み合わせ毎にフロア雑音及び位相雑音の少なくとも一方の大きさを書き込んだデータであることに代えて、前記1個の分周器について入力周波数と分周比との組み合わせ毎にフロア雑音及び位相雑音の少なくとも一方の大きさを書き込んだデータであることを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188303(P2011−188303A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52235(P2010−52235)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】