説明

発振回路

【課題】発振回路において、起動時間を有効に短縮できる発振回路を提供する。
【解決手段】本発明の発振回路は、振動子とこの振動子を駆動する第1の電圧信号とこの第1の電源電圧信号よりも高い電圧により振動子を駆動する第2の電圧信号と前記振動子の振幅を増幅するための増幅回路とを有する発振回路において、前記第1の電圧信号によって前記振動子の駆動を開始し、その後に前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替える切り替え信号を発生する切り替え信号発生回路を備える。これにより、振動子を安定して駆動するまでの起動時間を有効に短縮した発振回路を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動子を有する発振回路に関し、特に発振回路の起動時間の短縮に関する。
【背景技術】
【0002】
発振回路は、時計、コンピュータ、携帯情報端末等に広く利用されている。また、クロック源として以外にも、たとえば振動型ジャイロセンサなどに用いられる。
【0003】
振動型ジャイロセンサは、振動子を用いて角速度を検出する物理量センサであり、他の方式に比べて小型化に有利であることから、車載用カーナビゲーションシステムやカメラ等の手振れ検出の用途に用いられており、今後、携帯情報端末や携帯ゲーム機器などへの応用が期待されている。
【0004】
振動型ジャイロセンサは、振動子を発振させておき、回転時に振動子の脚にかかるコリオリ力を検出することで角速度を測定するものである。このような発振回路を含む装置においては、発振回路の起動時間は、装置の起動時間につながるため、非常に重要である。
【0005】
また、発振回路を用いた電子機器では一般に消費電力の低減が必要とされており、バッテリーで動作する携帯型の機器については特に重要である。したがって、発振回路を持つ装置が携帯型機器に搭載される場合には、その消費電力を抑えるため、通常は発振を停止させておき、必要なときにだけ起動させるという手法がとられる。このような間欠動作の場合、必要なときにすばやく発振状態になることを要求されるため、発振回路の起動時間短縮が特に重要となる。
【0006】
間欠動作をさせる発振回路の場合、待機時に振動子を微小振動させておくことで再起動時間を短縮するという方式が存在する。しかしこの方式では、待機時にも電力を消費してしまう。したがって、待機時には振動子を停止させておくことが望ましい。
【0007】
また、発振回路の起動時間短縮の手段として、特許文献1に示される、昇圧回路を用いた方式が知られている。電源投入後、この発振回路は外部より供給される電源電圧を、電源電圧昇圧手段により昇圧し、この昇圧電圧を発振回路の電源電圧として用いている。そして、一定時間経過後に、電源電圧昇圧手段により昇圧された昇圧電圧より低い通常の電源電圧を発振回路の電源電圧として用いている。これにより、振動子に印加される電界が強くなり、発振の成長を促進するため、起動時間が短縮される。
【0008】
【特許文献1】特開平5―259738号公報(第4頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発振回路では、電源投入から電源電圧昇圧手段により昇圧された昇圧電圧が安定するまでの間に、発振回路の振動子に全く電界を印加していない一定時間が存在する。これは、昇圧電圧が安定する前に昇圧電圧を振動子に印加してしまうと、昇圧電圧が安定するまでにより多くの時間を必要とするため、あえて昇圧電圧が安定する一定時間の間は振動子を駆動しないようにしている。しかし、このような構成では、昇圧電圧が安定するまでの一定時間は、振動子が全く駆動していないので、起動時間を有効に短縮できないという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解決するためになされたものであり、起動
時間を有効に短縮できる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる発振回路は、振動子と、この振動子を駆動する第1の電圧信号と、この第1の電圧信号よりも高い電圧により前記振動子を駆動する第2の電圧信号と、前記振動子の振幅を増幅するための増幅回路と、を有する発振回路において、前記第1の電圧信号によって前記振動子の駆動を開始し、その後に前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替える切り替え信号発生回路を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、電源投入直後からまず低い電圧の第1の電圧信号によって振動子を駆動し、その後に第1の電圧信号よりも高い電圧の第2の電圧信号に切り替えるので、高い電圧で発振を開始する場合に起こる発振条件の変化を抑制し、安定した状態で発振成長を開始できるため、起動時間を有効に短縮することができる。
【0013】
また、切り替え信号発生回路は、前記振動子の発振状態を監視する監視回路を有し、この監視回路は、前記振動子の振幅が安定する前の所定の振幅状態に到達したことを検知し、前記切り替え信号発生回路によって前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、前記振動子の起動するたびに発振の成長の様子が変わっても、最適なタイミングで前記第1の電圧信号から前期第2の電圧信号へ切り替えることが出来る。
【0015】
また、切り替え信号発生回路は、タイマを有し、前記振動子の発振開始から一定時間を経過したときに、切り替え信号を発生し、前期第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替えることを特徴とする。この構成によれば、切り替え信号発生回路の構成を単純化できる。
【0016】
また、前記切り替え信号発生回路は監視回路を有し、前記発振状態が所定の振幅状態であることを前記監視回路が判断したとき、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号へ再度切り替えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、発振成長終了後の定常状態において、振動子と増幅回路とを備えた発振ループでの消費電力を抑えることが可能となる。
【0018】
また、前記振動子と前記増幅回路とを備えた発振ループに自動利得制御回路を有し、前記自動利得制御回路は、前記第2の電源供給回路から前記第1の電源供給回路への切り替えと同時に、または、前記第2の電源供給回路から前記第1の電源供給回路へ切り替えた後に、自動利得制御を行うことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、正弦波発振する発振回路、または、発振振幅を所望の値に設定した発振回路が実現できる。これにより、振動型ジャイロセンサ等の装置への利用が可能となる。
【0020】
また、前記第1の電圧信号および前記第2の電圧信号を生成するときに、前記増幅回路に電源電圧を供給する、第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路を有し、前記第2の電源供給回路は昇圧回路を備え、この昇圧回路から生成される昇圧電圧は、前記第1の電源供給回路から供給される第1の電源電圧を用いて生成されること特徴とする。
【0021】
この構成によれば、外部電源が1つ不要となり、単一の電源で動作が可能となる。また
、1つの外部電源のみで起動時間が短縮できる。
【0022】
また、前記第1の電源供給回路は参照電圧生成回路を備え、前記第2の電源供給回路を用いて、参照電圧を生成することを特徴とする。この構成によれば、1つの外部電源のみで定常状態での消費電力を低減できる。
【0023】
また、前記増幅回路は、第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路から生成されるそれぞれの電源電圧により動作する第1の増幅回路及び第2の増幅回路を備え、前記第1の電圧信号及び前記第2の電圧信号は、それぞれに前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路から出力されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第1の電圧信号を増幅する増幅回路と、第2の電圧信号を増幅する増幅回路とが分離されるため、それぞれに最適な回路設計や電源制御をすることができ、設計や低消費電力化がしやすくなる。
【0025】
また、前記第1の増幅回路と前記第2の増幅回路の出力側に、前記第1の電圧信号と前記第2の電圧信号とを切り替える出力信号切り替え回路を備えることを特徴とする。この構成によれば、前記第1の電圧信号と前記第2の電圧信号とを、簡単な回路で切り替えることが出来る。
【0026】
また、前記第2の増幅回路は、前記第1の増幅回路よりも高耐圧であることを特徴とする。この構成によれば、前記第1の増幅回路と、前記第2の増幅回路のそれぞれについて、扱う電圧の高低に応じて適した回路構成やトランジスタ、抵抗等を使用できるため、前記第1の増幅回路と前記第2の増幅回路の設計の自由度が上がる。
【0027】
また、前記第2の増幅回路は、インバータを有することを特徴とする。また、前記インバータの論理閾値は、前記第1の電源供給回路から供給される第1の電源電圧とGNDとの間の電圧に設定されていることを特徴とする。この構成によれば、前記第2の増幅回路が簡単に構成でき、さらに前記第2の増幅回路に入力される信号に直流バイアスをかける必要が無くなるため、回路が簡略化できる。
【0028】
また、前記第2の増幅回路は、前記インバータの入力側に前記インバータの入力電圧を切り替える入力電圧切り替え回路を備え、この入力電圧切り替え回路によって前記入力電圧を固定することができることを特徴とする。この構成によれば、前記第2の増幅回路を使用しない時、前記インバータの入力電圧を固定することで、前記インバータの貫通電流による電力消費を抑えることができる。
【0029】
また、前記出力信号切り替え回路によって、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号に切り替えられた後に、前記第2の電圧信号を出力していた前記第2の増幅回路への電源供給をカットすることを特徴とする。この構成によれば、前記第2の増幅回路を使用しないときの消費電力を抑えることができる。
【0030】
また、前記振動子の発振開始直後は前記第2の増幅回路に電源電圧を供給せず、前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号に切り替わる際に、前記第2の増幅回路に電源電圧を供給することを特徴とする。この構成によれば、前記第2の増幅回路を使用しないときの消費電力を抑えることが出来る。
【0031】
また、前記増幅回路は、使用する電源供給回路として、前記第1の電源供給回路と前記第2の電源供給回路とを切り替えることを特徴とする。この構成によれば、単一の増幅回路によって、第1の電圧信号と第2の電圧信号とを出力できる。
【0032】
また、前記振動子は、水晶振動子であることを特徴とする。この構成によれば、Q値が高いために発振成長が遅い水晶振動子を用いた発振器について、起動時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、振動子を安定して駆動するまでの起動時間を有効に短縮した発振回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について図1〜4を用いて説明する。図1は、本発明にかかる発振回路の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、発振回路は、発振ループ1、制御信号生成ブロック2、および本発明の切り替え信号発生回路である電源切替スイッチ30、本発明の第1の電源供給回路である第1電源31と第2の電源供給回路である第2電源32を備える。第2電源32は、第1電源31よりも高い電圧とする。
【0035】
発振ループ1は、振動子11、電流電圧変換回路12、増幅回路13、および自動利得制御回路14を備え、振動子11の共振周波数信号を増幅回路13、自動利得制御回路14で増幅することで発振を得る。なお、異常発振を防ぐために、発振ループ1にフィルタを入れてもよい。制御信号生成ブロック2は、第1電源31と第2電源32とを切り替えるための信号を生成する。
【0036】
ここで、増幅回路13に第1電源31から電源電圧を供給したときに発生する信号を第1の電圧信号21aとし、増幅回路13に第2電源32から電源電圧を供給したときに発生する信号を第2の電圧信号21bとする。また、第2の電圧信号21bは、第1の電圧信号21aよりも高い電圧信号である。振動子の駆動開始は、まず低い電圧の第1の電圧信号21aで駆動し、その後に高い電圧の第2の電圧信号21bに切り替える。この切り替えは、電源切替スイッチ30によって第1電源31から第2電源32へ切り替えることによって行われる。
【0037】
まず、第1電源31から第2電源32への切り替えについて説明する。ここでは、振動子11は、まず第1の電圧信号21aにより励振される。この第1の電圧信号21aの振幅が一定値を超えたときを、第1電源31から第2電源32への切り替えのタイミングとしている。まず、整流回路21によって第1の電圧信号21aの振幅情報を得て、これと基準電圧Vaを比較回路22で比較する。したがって、基準電圧Vaを越えた時点で後述する本発明の監視回路である駆動電圧監視回路23からの出力信号20aが切り替わる。
【0038】
続いて、この出力信号20aが制御信号生成回路20を経由して電源切替スイッチ30を制御することで、増幅回路13の電源電圧を、第1電源31から第2電源32に切り替える。
【0039】
次に、第2電源32から第1電源31への切り替えについて説明する。ここでは、振動子11の駆動電流を電流電圧変換回路12で電圧に変換した信号26aを用いて、切り替えのタイミングを生成する。この信号26aは、振動子11の駆動電流に比例する。この比例係数をRとする。
【0040】
信号26aの振幅が一定値を超えたときを、発振が充分に成長したと判断し、第2電源32から第1電源31への切り替えのタイミングとしている。まず、整流回路26によっ
て駆動電圧信号26aの振幅情報を得て、これと基準電圧Vbを比較回路27で比較する。
【0041】
したがって、基準電圧Vbを越えた時点で後述する本発明の監視回路である駆動電流監視回路28からの出力信号20bが切り替わる。続いて、この信号が制御信号生成回路20を経由して電源切替スイッチ30を制御することで、増幅回路13の電源電圧を、第2電源32から第1電源31に切り替える。
【0042】
次に、電源投入から発振安定までの流れを、図1、4を用いて順を追って説明する。なお、図4の図中の矢印は、波形の変化の因果関係を示している。図4(a)を例にとって説明する。第1の電圧信号21aの振幅が閾値Vaを超えると駆動電圧監視回路23からの出力信号20aが切り替わり、制御信号生成回路20からの出力信号20cが切り替わる。これにより電源電圧が、電源切替スイッチ30によって第1電源31の電源電圧VDDから第2電源32の電源電圧VDD2に切り替えられる、という流れを示している。
【0043】
制御信号生成回路20では、駆動電圧監視回路23および駆動電流監視回路28からの信号を基に、電源切替スイッチ30を制御する出力信号20cを生成する。電源投入直後は、振動子11はまだほとんど振動しておらず、駆動電圧振幅、駆動電流振幅ともに小さいので、駆動電圧監視回路23および駆動電流監視回路28の出力はともにLレベルである。
【0044】
これにより制御信号出力回路20の出力信号20cもLレベルとなり、電源切替スイッチ30では第1電源31が有効となる。したがって、電源投入直後は、電源切替スイッチ30により増幅回路13の電源電圧30aが、第1電源の電圧となる。
【0045】
まず、振動子の駆動電圧振幅が成長して基準電圧の閾値Vaを越える(図4(a))。すると駆動電圧監視回路23の出力信号20aがHレベルとなり、制御信号生成回路20の出力信号20cがHレベルとなる。これにより、電源切替スイッチ30で第2電源32が有効となり、振動子11は、第2の電圧信号21bで励振される。この段階では、振動子11の駆動電流振幅は未だ成長していないため、駆動電流監視回路28の出力信号20bはLレベルのままである。
【0046】
振動子11の駆動電流振幅が更に成長し(図4(b))、信号26aの振幅が基準電圧の閾値Vbを越えたとき、振動子11は充分発振している状態とみなす。すると、これ以上発振成長を促進する必要がなくなるため、第1電源31へ切り替える必要がある。このとき、駆動電流監視回路28の出力信号20bがHレベルになり、これにより制御信号生成回路20の出力信号20cがLレベルとなる。しがたって、電源切り替えスイッチ30では第1電源31が有効となる(図4(c))。
【0047】
第2電源32により増幅回路13を動作させる際には、発振成長をさらに促進するため、第1電源31により動作させるときよりも、増幅回路13の利得を上げてもよい。
【0048】
この後、自動利得制御回路14が有効になることで、発振ループ1のループゲインを制御し、振動子11の発振レベルを適正値に安定させる(図4(d))。
【0049】
自動利得制御を行う場合は、信号26aが所望の振幅以上になった状態で、第1の電圧信号21a、第2の電圧信号21b、信号26aのいずれかの振幅情報により、自動利得制御回路14の利得を制御する。
【0050】
このとき、増幅回路13を駆動する電源を第2電源32から第1電源31に戻すのと同
時、またはその後に自動利得制御をかけることで、自動利得制御中に電源が切り替わることが無くなり、自動利得制御を安定して行うことができる。また、構成によれば、正弦波発振する発振回路、または、発振振幅を所望の値に設定した発振回路が実現できる。これにより、振動型ジャイロセンサ等の装置への利用が可能となる。
【0051】
以上から、振動子11を発振させる際には、まず振動子11の駆動電圧である第1の電圧信号21aが成長し、その後に信号26aが成長する。したがって、前述の制御信号生成回路20を用いることで、増幅回路13を駆動する電源が、電源投入直後にまず第1電源31、その後に第2電源32、そして再び第1電源31、と順に切り替わる。第2電源32が増幅回路13に供給されている期間は、振動子11により高い電圧を印加することができるため、発振成長が促進され、発振回路としての起動時間が短縮できるという効果がある。
【0052】
このように、まず低い電圧である第1電源31によって振動子11の駆動を開始し、その後に第1電源31よりも高い電圧の第2電源32に切り替えて振動子11を駆動することにより以下の効果がある。
【0053】
振動子11が発振を開始する時の発振ループ1の信号経路の発振条件は、発振が安定した定常状態における発振条件と同じであるため、起動回路による発振条件ずれのために発振周波数がずれるのを抑えることが出来る。
【0054】
たとえば特許文献1に記載の構成のように、発振開始の段階において、定常時と異なる条件の発振回路を使用する場合、電源電圧の違いによる増幅回路13の利得や位相遅れの変化から、意図しない周波数で発振することがある。この場合、発振が充分に成長した後に電源電圧を定常時の値に変更すると、その時点で発振条件が変化する。
【0055】
つまり、電源電圧が切り替えられた段階から、それまで発振した周波数と異なる周波数で改めて起動を開始することとなり、起動時間を短縮するという目的を達することができないばかりか、寧ろ起動時間を延ばしてしまう。この現象は、振動子11として、水晶のようにQの高いものを使う場合に、より顕著となる。
【0056】
またこの現象は、振動子11の発振周波数が高い場合に、より顕著となる。なぜなら、増幅回路は一般に、高周波では利得や位相遅れが不安定になりやすく、特性のばらつきや、電源電圧による特性変化などが大きいからである。
【0057】
なお、本実施形態では振動子11の駆動電圧信号である、第1の電圧信号21aおよび第2の電圧信号21b、ないし駆動電流信号26aを基に、第1電源31と、第2電源32との切り替えを行う形態を示した。第1電源31から第2電源32への切り替えの別の形態として、発振の成長する時間が概ね把握されている場合には、タイマを使用し、発振開始からの時間で、第1電源31から第2電源32への切り替えを行ってもよい。この構成の場合、比較回路22が不要となるので、制御信号生成ブロック2の構成が簡単になるという利点がある。
【0058】
図1では、第1電源31および第2電源32として、独立した単一の外部電源を用いているが、それらの代わりに、単一の外部電源から生成した昇圧電圧や単一の外部電源から生成した参照電圧などを組み合わせて用いることもできる。ここで、参照電圧とは、外部の電源電圧から、レギュレータ回路や抵抗分割回路などで生成した、元の外部電源電圧よりも低い、安定した直流電圧のことを指す。
【0059】
この組み合わせについて、図1以外にとりうる構成を、図2、3として示した。図1は
第1電源31と第2電源32を組み合わせた場合を示している。図2は第1電源31と、昇圧回路33を用いて第1電源31から生成した昇圧電圧と、を組み合わせた場合を示している。図3は参照電圧生成回路34を用いて第2電源32から生成した参照電圧と、第2電源32と、を組み合わせた場合を示している。
【0060】
また、図示していないが、第1電源31または第2電源32から生成した参照電圧と第1電源31または第2電源32から生成した昇圧電圧をそれぞれに組み合わせて構成してもよい。なお、図2において、図中では第2電源32を昇圧回路33に対応させているが、第1電源31と昇圧回路33をあわせて第2電源32としてもよい。
【0061】
図1に示した、第1電源31と第2電源32の場合は、回路構成が単純になるという効果がある。また、図2に示した昇圧電圧を用いる場合は、1つの外部電源のみで起動時間が短縮されるという効果がある。また、図3に示した参照電圧を用いる場合は、1つの外部電源のみで定常状態での消費電力を低減できるという効果がある。
【0062】
さらに、昇圧回路33を第2電源として使用する場合、発振開始後、増幅回路13の電源が昇圧回路33に切り替えられる前に、昇圧も開始することが望ましい。これにより、発振開始初期の、第2電源が使用されていない間に昇圧を行うことができ、昇圧にかかる待ち時間の影響を低減することができる。
【0063】
また、発振回路が完全に起動し、発振回路が第1電源31により動作する状態になったあとは、昇圧回路33を停止させることが望ましい。これにより、定常状態における消費電流を低減することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、図5、図6(a)を用いて、振動子11を駆動する電源供給回路の切り替えに応じて増幅回路13の内部回路を切り替える第2の実施形態について説明する。増幅回路13には、第1電源31と第2電源32の両方が接続されている。増幅回路13は、制御信号生成回路20からの出力信号20cに応じて、第1の電圧信号21aと第2の電圧信号21bのどちらかを選択して出力する機能を有する。
【0065】
図中では第1電源31と第2電源32を増幅回路13の電源として使用した例を示したが、図1〜3の第1の実施形態で示したように、昇圧回路33や、参照電圧生成回路34を用いてもよい。
【0066】
図6(a)に、増幅回路13の内部構成の一例を示す。増幅回路13は、第1の電圧信号21aを出力するのに使用する第1の増幅回路61と、第2の電圧信号を出力するのに使用する第2の増幅回路62と、本発明の出力信号切り替え回路に相当し、出力を切り替えるスイッチ63とを有する。第1の増幅回路61は、入力信号を切り替えるスイッチ64aと、反転増幅回路65とを有する。反転増幅回路65は、第1電源31より供給される第1の電源電圧68を電源として動作する。
【0067】
一方、第2の増幅回路62は、本発明の入力電圧切り替え回路に相当し、入力信号を切り替えるスイッチ64bと、インバータ66とを有する。インバータ66は、第2電源32より供給される第2の電源電圧69を電源として動作する。このインバータ66を構成するデバイスは、第1の電源電圧68で動作する回路のデバイスよりも耐圧が高く、第2の電源電圧69に耐えられるものを用いる。この構成では、インバータ66以外の回路に用いるデバイスの耐圧を高くする必要が無く、回路設計が簡単になりコストダウンにつながる。
【0068】
インバータ66の入出力特性を図7に示す。通常、インバータの入出力特性は、図7の破線に示したように論理閾値電圧VTaが電源電圧の中心付近になるように設計されることが多い。しかし、第2の増幅回路62の前段の回路が第1電源31で動作している場合、インバータ66に入力される信号の基準電圧は、第2電源32で動作する第2の増幅回路62の基準電圧と異なる。
【0069】
従って、インバータ66の論理閾値電圧がVTaのように第2の電源電圧69の中心付近に設定されていると、インバータ66に入力される信号が論理閾値電圧を跨がず、信号が増幅されない。したがって、通常はインバータの入力信号が論理閾値電圧VTaを跨ぐように直流電圧をシフトさせる、直流バイアス回路が必要となる。
【0070】
しかし、インバータ66の入出力特性を、その論理閾値電圧VTbが第1の電源電圧68とGNDとの間になるように設計し、インバータに入力される信号が論理閾値電圧を跨ぐようにすることで、直流バイアス回路が不要となり、回路構成を簡単に出来る(図7の実線)。第1の増幅回路61内の反転増幅回路65は、第1の増幅回路61と第2の増幅回路62との位相を合わせるために使用される。
【0071】
(第3の実施形態)
図5、図6(b)を用いて、増幅回路13における内部構成の別の形態である第3の実施形態を説明する。増幅回路13は、第1の電圧信号21aを出力する時に使用する第1の増幅回路61と、第2の電圧信号21bを出力するときに使用する第2の増幅回路62と、本発明の出力信号切り替え回路に相当し、出力を切り替えるスイッチ63とを有する。
【0072】
第1の増幅回路61は、配線で構成されている。一方、第2の増幅回路62は、本発明の入力電圧切り替え回路に相当し、入力信号を切り替えるスイッチ64bと、反転増幅回路67と、インバータ66とを有する。
【0073】
第2の増幅回路62内の反転増幅回路67は、第1の増幅回路61と第2の増幅回路62との位相を合わせるために使用される。この構成では、図6(a)に示した構成よりもスイッチをひとつ減らすことが出来る。
【0074】
反転増幅回路67は、第1の電源電圧68によって動作することが望ましい。これにより、第2の電源電圧69に対応した素子を使用する部分が、インバータ66のみになり、異なる耐圧のトランジスタで演算増幅回路を設計する必要がなくなるため、トランジスタへの要求特性がゆるくなり、回路設計が容易になる。また、反転増幅回路67は、インバータで構成してもよい。この場合、回路構成が簡単になる。
【0075】
図5、図6(a)、図6(b)に示した第2、3の実施形態において、第2の増幅回路62が使用されないとき、スイッチ64bにより、インバータ66の入力電位を電源電圧に固定する。これにより、第2の増幅回路62が非使用の時間において、インバータ66の貫通電流を抑えることができ、消費電力を低減できる。
【0076】
また、第2の増幅回路62が非使用の時間において、インバータ66の電源を遮断することで、インバータ66による消費電力を低減することができる。
【0077】
本発明においては、起動時間を、電源投入から発振が安定するまでの時間とする。自動利得制御回路を持つ発振回路においては、電源投入から、発振が充分に成長し、自動利得制御回路が動作して発振波形が安定するまでの一連の動作に要する時間を、起動時間とする。
【0078】
以上で述べた振動子11は、水晶振動子でも良い。水晶振動子はQが高いため、一度発振してしまえば非常に安定であるが、そのかわり発振の成長が遅い。本発明によれば、水晶振動子の起動時間を効果的に短縮することが可能となる。
【0079】
なお、上記した実施形態の構成例は一例であり、本発明はこれらの構成例に限定されるものではなく、各種変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明における発振回路は、起動時間への要求の厳しい装置内での動作や、あるいは携帯情報端末などの消費電力低減が要求される装置内での間欠動作に適している。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態における発振回路のブロック図であり、2つの外部電源を用いる場合のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における発振回路のブロック図であり、1つの外部電源と、この外部電源から生成した昇圧電圧とを電源として用いる場合のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における発振回路のブロック図であり、1つの外部電源と、この外部電源から生成した参照電圧とを電源として用いる場合のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における発振の成長過程を示す波形の図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における発振回路のブロック図であり、増幅回路の内部回路を切り替える場合のブロック図である。
【図6(a)】本発明の第2の実施形態における増幅回路の内部構成を示す図である。
【図6(b)】本発明の第3の実施形態における増幅回路の内部構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における増幅回路内のインバータの入出力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 発振ループ
2 制御信号生成ブロック
11 振動子
12 電流電圧変換回路
13 増幅回路
14 自動利得制御回路
20 制御信号生成回路
20a 駆動電圧監視回路からの出力信号
20b 駆動電流監視回路からの出力信号
20c 制御信号生成回路からの出力信号
21、26 整流回路
21a 第1の電圧信号
21b 第2の電圧信号
22、27 比較回路
23 駆動電圧監視回路
26a 駆動電流に比例した信号
28 駆動電流監視回路
30 電源切替スイッチ
30a 増幅回路13の電源電圧
31 第1電源
32 第2電源
33 昇圧回路
34 参照電圧生成回路
61 第1の増幅回路
62 第2の増幅回路
63 出力切り替えスイッチ
64a、64b 入力切り替えスイッチ
65 反転増幅回路
66 インバータ
67 反転増幅回路
68 第1の電源電圧
69 第2の電源電圧
Va、Vb 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、この振動子を駆動する第1の電圧信号と、この第1の電圧信号よりも高い電圧により前記振動子を駆動する第2の電圧信号と、前記振動子の振幅を増幅するための増幅回路と、を有する発振回路において、
前記第1の電圧信号によって前記振動子の駆動を開始し、その後に前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替える切り替え信号を発生する切り替え信号発生回路を備えることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記切り替え信号発生回路は、前記振動子の発振状態を監視する監視回路を有し、
この監視回路は、前記振動子の振幅が安定する前の所定の振幅状態に到達したことを検知し、前記切り替え信号発生回路によって前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替えることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記切り替え信号発生回路は、タイマを有し、
前記振動子の発振開始から一定時間を経過したときに、切り替え信号を発生し、前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号へ切り替えることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項4】
前記切り替え信号発生回路は、前記振動子の発振状態を監視する監視回路を有し、
この監視回路は、前記発振状態の振幅が所定の状態であることを判断したとき、前記切り替え信号発生回路によって前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号へ再度切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記振動子と前記増幅回路とを備えた発振ループに自動利得制御回路を有し、この自動利得制御回路は、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号への切り替えと同時に、または、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号へ切り替えた後に、自動利得制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の発振回路。
【請求項6】
前記第1の電圧信号及び前記第2の電圧信号を生成するときに、前記増幅回路に電源電圧を供給する第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路を有し、
前記第2の電源供給回路は昇圧回路を備え
この昇圧回路から生成される昇圧電圧は、前記第1の電源供給回路から供給される第1の電源電圧を用いて生成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項7】
前記昇圧回路は、前記第2の電圧信号が使用される前に昇圧を開始することを特徴とする請求項6に記載の発振回路。
【請求項8】
前記昇圧回路は、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号へ切り替えられた後に昇圧を止めることを特徴とする請求項6または7に記載の発振回路。
【請求項9】
前記第1の電圧信号及び前記第2の電圧信号を生成するときに、前記増幅回路に電源電圧を供給する第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路を有し、
前記第1の電源供給回路は参照電圧生成回路を備え、
この参照電圧生成回路から生成される参照電圧は、前記第2の電源供給回路から供給される第2の電源電圧を用いて生成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項10】
前記増幅回路は、第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路から生成されるそれぞれ
の電源電圧により動作する第1の増幅回路及び第2の増幅回路を備え、
前記第1の電圧信号及び前記第2の電圧信号は、それぞれに前記第1の増幅回路及び前記第2の増幅回路から出力されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項11】
前記第1の増幅回路と前記第2の増幅回路の出力側に、前記第1の電圧信号と前記第2の電圧信号とを切り替える出力信号切り替え回路を備えることを特徴とする請求項10に記載の発振回路。
【請求項12】
前記第2の増幅回路は、前記第1の増幅回路よりも高耐圧であることを特徴とする請求項10または11に記載の発振回路。
【請求項13】
前記第2の増幅回路は、インバータを有することを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項14】
前記インバータの論理閾値は、前記第1の電源供給回路から供給される第1の電源電圧とGNDとの間の電圧に設定されていることを特徴とする請求項13に記載の発振回路。
【請求項15】
前記第2の増幅回路は、前記インバータの入力側に前記インバータの入力電圧を切り替える入力電圧切り替え回路を備え、この入力電圧切り替え回路によって前記入力電圧を固定することができることを特徴とする請求項13または14に記載の発振回路。
【請求項16】
前記出力信号切り替え回路によって、前記第2の電圧信号から前記第1の電圧信号に切り替えられた後に、前記第2の電圧信号を出力していた前記第2の増幅回路への電源供給をカットすることを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項17】
前記振動子の発振開始直後は前記第2の増幅回路に電源電圧を供給せず、前記第1の電圧信号から前記第2の電圧信号に切り替わる際に、前記第2の増幅回路に電源電圧を供給することを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項18】
前記第1の電圧信号及び前記第2の電圧信号を生成するときに、前記増幅回路に電源電圧を供給する第1の電源供給回路及び第2の電源供給回路を備え、
前記切り替え信号発生回路によって、前記第1の電源供給回路と前記第2の電源供給回路とを切り替えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の発振回路。
【請求項19】
前記振動子は、水晶振動子であることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−99257(P2008−99257A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229875(P2007−229875)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】