説明

発毛促進剤及びその製造方法

本発明は、発毛促進剤に関するものであり、より詳しくは副作用や毒性がなく、且つ、発毛促進及び育毛効果に優れる炭化松かさを用いた発毛促進剤に関するものである。本発明に係る発毛促進剤は、人体に対する副作用や毒性が全くなく、且つ発毛促進効果に優れると同時に、毛根を刺激して毛髪の発育に大きく作用することにより、脱毛及び白髪を予防する効果がある。また、発毛促進に優れたクリーム又は軟膏剤形態の発毛促進剤を提供して、治療期間をかなり短縮させることができ、頭皮の血流を増加させ成長期の毛髪を維持し、植物性製剤からなるため人体に全く副作用がなく、頭部にやさしく塗布するだけのため使用し易い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発毛促進剤及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは副作用や毒性がなく、且つ、発毛促進及び育毛効果に優れる炭化松かさを用いた発毛促進剤及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、脱毛は、男性ホルモンによる毛髪機能の低下、毛根部の新陳代謝機能の低下、頭部生理機能の低下、頭部皮下組織の末梢血管の血流量の減少、毛髪成長に異常を起こす局所血流障害、栄養不足、ストレス、薬物による副作用及び遺伝的原因などの様々な原因によって誘発されると言われている。
【0003】
毛髪や皮膚は、人間の臓器の機能や体の調子を表す重要な役割をする。又、毛髪は個人の美容的効果及び印象やイメージを決める役割をするもので、近年は、栄養の欠乏やインスタント食品の過多摂取などによって毛髪状態が損傷している人が増えている。
【0004】
毛髪は余分な血液により1日に0.3〜0.4mm程度成長するが、上記の様々な環境要因によって白髪や脱毛症状が現れる。
普通の成人男性の毛髪の場合は、4〜5年の成長期を経て、退行期-休止期の間に脱毛する。女性の場合は5〜6年の成長期を経て、退行期-休止期の間に脱毛する。
【0005】
脱毛症の形態は、脱毛の原因により分けられるが、遺伝型脱毛、脂漏性脱毛、円形脱毛症、栄養欠乏脱毛症、薬物副作用による脱毛症、真菌類による脱毛症、環境の変化に適応できず発生する脱毛症、神経性脱毛症など、その種類が非常に多い。
しかし、このような脱毛症の大部分は、脱毛初期に、頭皮が熱くなり、炎症突起ができ毛髪が細くなり、弾力を失うことから、脱毛が進行することになる。
【0006】
市販の発毛促進剤又は育毛剤は、塩化カルプロニウム、ミノキシジル及び各種抽出物などの血管拡張剤や、男性ホルモンの作用を抑制するためのエストロゲン、エストラジオールなどのホルモン剤、及びペンタデカン酸、フィナステライドなどの男性ホルモン活性抑制剤などを含有している。男性ホルモンの抑制のためのホルモン剤と男性ホルモン抑制剤は臨床効果が高くなかったり、若しくは男性機能を抑制する副作用などの問題点がある。又、各種抽出物を含有した発毛促進剤組成物は皮膚塗布時に皮膚異常などの問題点がある。
【0007】
又、近年、脱毛症の治療及び予防のための薬剤として、米国FDAの承認を受けたミノキシジル製剤並びに、5アルファ-還元酵素の作用を阻害してジヒドロテストステロンの生成を抑制する薬剤のフィナステライド(finasteride、製品名:proscar)を経口投与する方式の発毛促進剤が開発されて市販されているが、高価であり、且つ頭皮に直接塗布する場合には効果が落ちたり、経口投与する場合はその他の副作用が発生するなど、使用に制限があった。
そのために、皮膚異常、男性機能抑制などの副作用がないと共に脱毛防止効果に優れ、且つ使用し易い発毛促進剤の開発が要求され続けている実状にある。
【0008】
これにより、本発明者らは、脱毛の主要原因である毛胞の不純物と脂肪質を完全に除去し、毛胞細胞を迅速に再生させることによって、脱毛の防止はもちろん育毛の効果も極大化できる発毛促進剤を開発すべく研究を行ってきた。
【0009】
その結果、副作用発生の恐れがあるホルモン剤などの使用を排除し、人体に害がない天然物質を使用しつつ、使用感が良く、その効果も優れた発毛促進剤を開発して本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、人体に対して副作用や毒性がなく、且つ発毛効果及び育毛効果に優れた発毛促進剤及びその製造方法を提供することであって、天然物質である炭化された松かさ(以下、炭化松かさとする。)及び生薬剤抽出物を主材料とした発毛促進剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、炭化松かさ及び植物性オイルを有効成分として含む発毛促進剤を提供する。
本発明の発毛促進剤は、上記炭化松かさと植物性オイルを1:1ないし6:4の質量比で混合することにより製造することができる。
【0012】
上記植物性オイルは、ゴマ油、オリーブ油、エゴマ油、ヤシ油、ひまし油、豆油、又は種子油からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
上記発毛促進剤は、杏仁、ドングリ、紫草、ザクロ、翁草(オキナグサ)及び甘草からなる群より選択される少なくとも1つの生薬抽出物をさらに含むことができる。
上記生薬抽出物として、上記生薬材料を熱水、有機溶媒又はオイルで抽出した溶媒抽出液を使用し得る。
【0013】
上記紫草抽出物は、ゴマ油を100〜300℃の温度に加熱した後、ゴマ油に対し10〜30質量%の紫草を入れ、濃縮することにより製造することができる。
上記ザクロ抽出物は、ゴマ油に対し5〜25質量%のザクロを入れ、30〜50℃の温度で1〜30日間保存することにより得ることができる。
上記翁草抽出物は、翁草を100〜300℃に間接的に加熱して得た炭化物質に対し、ゴマ油を80〜90質量%で添加して混合することにより得ることができる。
上記溶媒抽出液は希釈、濃縮又は乾燥させた後に使用し得る。
【0014】
本発明の発毛促進剤は、上記炭化松かさと植物性オイル及び生薬抽出物を1:1:1ないし3:4:3の質量比で混合して製造することができる。
本発明の一実施例によると、上記炭化松かさ、植物性オイル、杏仁抽出物、ドングリ抽出物及び甘草抽出物は、10〜70:10〜50:5〜20:5〜20:10〜15の質量比で配合して使用し得る。
本発明の他の実施例によると、上記炭化松かさ、植物性オイル、杏仁抽出物、ドングリ抽出物、紫草抽出物及び甘草抽出物は、10〜70:5〜40:10〜30:5〜20:5〜20:5〜20の質量比で配合して使用し得る。
【0015】
又、本発明の発毛促進剤は、血行促進剤、局所刺激剤、毛胞復活剤、消炎殺菌剤などの補助剤をさらに含むことができる。
本発明で使用される炭化松かさは、選別した松かさを水洗・乾燥後密閉容器に入れ、100ないし300℃の温度で1〜8時間加熱して完全に燃焼させることにより得ることができる。
【0016】
本発明の又他の目的を達成するために、本発明は、炭化松かさを製造する段階と、ゴマ油を得る段階と、炭化松かさとゴマ油を配合する段階と、炭化松かさとゴマ油を含む混合物に賦形剤を加える段階とを含む発毛促進剤の製造方法を提供する。
上記発毛促進剤の製造方法は生薬抽出物を製造する段階をさらに含むことができる。
上記炭化松かさは、密閉容器の中で松かさを、100〜300℃で3〜10時間完全に燃焼させて得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発毛促進剤は、人体に対する副作用や毒性が全くなく、且つ発毛促進効果に優れると同時に、毛根を刺激して毛髪の発育に大きく作用することにより、脱毛及び白髪を予防する効果がある。また、発毛促進に優れたクリーム又は軟膏剤形態の発毛促進剤を提供して、治療期間を相当短縮させることができ、頭皮の血流量を増加させて成長期の毛髪を維持させ、且つ休止期の毛髪の再成長を促進させる発毛促進、及び育毛に非常に優れた効果を有する植物性製剤からなるため、人体に全く副作用がなく頭部にやさしく塗布するだけのため使用し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記のように、本発明の主成分として使用される松かさは、松の木に成る松の種であり、これについてさらに詳しく説明する。松の木は、韓国では、ソル(sol)、チャンソル(chamsol)、ソングモク(songmok)、ソルナム(solnamoo)、又はソオリナム(sohorinamu)とも呼ばれる。また、赤松とも呼ばれているが、これは松の樹皮が赤く、枝の先端にある芽の色も赤いためである。一方、中国では雌松、遼東赤松、短葉赤松と呼ばれている。この種の松の木は2枚の葉が一対をなす二葉性であり、これは、二髭松、二針松、二粒松などとも呼ばれていて、学術名はPinus densiflora Siebold et Zuccariniである。松の種子は芽が出る時、種皮に覆われた子葉(双葉)が土の上に出て来、子葉の数は4〜9枚程度であるが、6枚のものが大部分である。子葉の時期を過ぎた松の葉は2枚が一対となって向い合いながら出て来るが、その下部は2〜3mm程度の葉鞘の中に入っている。葉鞘は濃い茶色であるが、落ちることなく葉と一生を共にする。一方、松には雌花と雄花があり、この松花は4月下旬から5月上旬にかけて咲き、雄花は楕円形で、その長さが4〜9mmであり、おしべの先端部は半月形に広がり、花糸の下部に2つの葯がある。花粉には2枚の羽が付いている。一方、雌花は枝の先端側に2、3本ずつ付いており、最初は円形、或いは楕円形であり、その長さは5mm程度で、薄い紫色を帯びる。これは多数の雌花の集まりであるが、それを球果(cone)といい、本発明において言う松かさである。成熟した松かさは、多数の鱗片が集まったものであり、1つの鱗片には2つの胚珠が付いており、その後、2枚の羽の付いた種子となる。初春の受粉の前の幼い球果を球花ともいい、英語ではコーン(cone)の代わりによくストロビル(strobile)又はコネレット(conelet)と表現する。松かさの鱗片は、松かさの主軸に螺旋状に付き、先端は膨らんで太くなり、露出される部分は菱形に近くその中央部に突起がある。松かさが成熟すると、鱗片のすき間が広がって種子が松かさから地上に落ちて散らばる。
【0019】
上記炭化松かさの原料となる松かさは、様々な松の木から採取し得る。例えば、松かさの採取に用いられる松としては、forma aurescens、forma anguina、var globosa、forma pendula、forma aggregata、forma bi-aggergata、forma erectaなどがある。
【0020】
上記ゴマは、草丈が90〜150cmになる一年草であって、短い軟毛があり、長楕円状又は柳葉状の葉が向い合いながら生える。夏に薄い紫色又は白色であり、品種に応じて色の異なる種が入っている。種は8〜9月に実が熟する時、幹を切って束にして日干しする。日干しした幹をはたいて種を集め、その中から異物を除去する。種が黒色のものは薬に使用し、白色のものは油の原料に使用する。上記の乾燥した種から油を搾って使用するが、油は少し黄金色の色を帯び、香ばしい臭いがする。エーテル、クロロホルム、石油エーテルと混ざり、アルコールには若干混ざる。0〜5℃で冷ますと固まる。比重は約0.9であり、屈折率は約1.5である。酸価数は2以下、鹸化数は188〜195、ヨウ素価は103〜116である。油はオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、リグノセリン酸などのグリセリドを含有している。油の鹸化されていない部分は0.1〜1.3%であるが、これにはフィトステリン、d-セサミン、セサモール、セサモリン、ビタミンEがある。セサモールはフルフラールと濃塩酸によって赤色を呈し、この反応はゴマ油の鑑別に用いられる。ゴマの効能は従来の医書によっても広く知られている。特に、黒ゴマは性質が平(「平」とは、性質が温めすぎたり、冷やしすぎたりしないことを意味する)で、甘くて、毒がない(東医宝鑑;韓国の朝鮮時代の医書)。元気を出させ、太らせ、また骨髄と脳組織に栄養を与え、筋肉や骨を丈夫にし、五臓を保護する(本草綱目)。骨髄を強化し、精を補充し、寿命を延ばし、顔色を良くして若く見えるようにする。黒ゴマの油は血液の血小板の数を増やして血を迅速に凝固させる作用がある。従って、血小板減少性紫斑症、出血性血小板減少症、出血性疾患に用いることもある。
【0021】
上記杏仁は、鎮痛、消炎作用などがある生合成薬物の一種である杏の種(Armeniacae Semen)である。
【0022】
ドングリは、ブナ科に属するクヌギ(Quercus Acutissima Carruthers)の実であって、平安南道(北朝鮮の地名)を除いた韓国全域に自生する。地理的に日本、中国、満州、インドに分布しており、5月に花が咲き、果実は球形で、殼斗(cupule)は皿状で10月に熟する。ドングリは、他の果実類と異なり、しぶ味のあるタンニンを6〜9%含有していることが特徴である。このタンニンは抗酸化作用、抗腫よう作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用などの生理活性が知られている。
【0023】
紫草は、草丈が30〜70cmになる多年草であり、剛毛がある。柳葉状の葉が互いに交差して(cross each other)生える。初夏に、茎の先端と葉の部分に白色の5弁の小さな花が咲き、種に分化する。根(紫根、紫草根)は秋に採集して日干しする。花と根が赤黒い紫色を帯びている。根は赤色を帯びたナフトキノン誘導体、例えば、アセチルシコニン、シコニン、イソバレリルシコニン、β、β-ジメチルアクリルシコニン、テルアクリルシコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、α-メチル-n-ブチルシコニン、デオキシシコニン、アンヒドロアルカンニンと、アルカンナンを含有している。又、根には、アルカロイド、トリテルペンサポニン、L-ボルネシトール、イノシトール、ルテイン、ニトリル配糖体などが確認されている。地上部にはフェノールカルボン酸が含まれている。さらに紫草は坑菌や抗炎症作用がある。
【0024】
ザクロは、甘みが強い甘味系(sweet family)と酸味が強い酸味系(sour family)に分かれ、実と皮はいずれも高血圧と動脈硬化の予防に良く効き、婦人病及び腫れに効果がある。特に、赤痢に薬効が優れ、揮発性アルカロイドが入っていて寄生虫、特にサナダムシの駆除剤として用いられている。又、ブドウ糖の分解を促進させるクエン酸、
エネルギー代謝を活発にするために必要なビタミン(B1、B2、ナイアシン)、大部分の生理作用と密接な関係があるミネラルを含有している。葉は長楕円状の実と向い合いながら生える。花は赤色、濃紫色、白色など色々であり、実は丸くて表面は突起のようなものがあって粗く、熟すと割れる。幹と根の皮をむいて使用することもあるが、新鮮な皮であるほどアルカロイドの含有量が高い。根と幹の皮にはアルカロイド及びエラグタンニンが含有されており、アルカロイドとしては、ペレチエリン(pelletierine)、イソペレチエリン(iso-pelletierine)、メチルイソペレチエリン(methyl iso−pelletierine、またはメチルイソピペリジン)、プソイドペレチエリン(pseudopelletierine)がある。アルカロイド含有量は、木が育った海水と品種、部位により異なり、タンニンはエラグ酸とブドウ糖が配糖体のように結合した構造をしている。エラグタンニンは水中で分解されるとエラグ酸となる。その他に、ベツリン酸(betulic acid)は木の樹皮に、ウルソル酸(ursolic acid)は実及び葉に含有されている。木の樹皮にはマンニトール(mannitol)とエクイモル(equimol)が含有されている。花にはプニシン(punicin)という色素が、種にはプニカ酸(punicic acid)のグリセリドを主成分とする油が含有されている。果汁には転化糖と有機酸が含有されている。実の皮には粘液及びタンニンが含有されている。
【0025】
翁草は、多年草であって、根にアネモニンとタンニンを含有する。アネモニンは新鮮な根にはプロトアネモニンの形態で入っており、プロトアネモニンが空気中で重合するとアネモニンとなる。
【0026】
甘草は、マメ科(legumiinosae)に属する多年草木であって、外皮は赤褐色から暗褐色を帯びている。中国東北部、モンゴル地方、米国、アフリカ大陸に分布している生薬であり、その根と根茎は漢方薬として用いられる。蒸溜水、エタノール、エーテルで抽出した甘草抽出物は、酸化防止の効果に優れていることで知られ、抽出物の中には多量のフラボノイド(Flavonoid)成分が含まれており、30種類の化合物に分離することができる。甘草フラボノイドが有している効果のなかで現在までに確認されているものとして、抗酸化作用、ラジカル還元作用、坑菌作用、抗潰瘍作用、咳止め作用、抗変異原作用、抗ウイルス作用などがある。甘草の根に含まれた代表的な成分の1つであるグリチルリチンは、甘草の甘味成分であって白色から淡黄色の結晶として存在している。グリチルリチンは強い甘味成分以外にも様々な薬理効果を有している。
【0027】
本発明の発毛促進剤は、炭化松かさを主成分とし、植物性オイルと混合することにより製造することができる。又、上記発毛促進剤に、杏仁、ドングリ、紫草、ザクロ、翁草、及び甘草から抽出した生薬抽出物が添加でき、補助剤として血行促進剤、局所刺激剤、毛胞復活剤、消炎殺菌剤などがさらに追加できる。
【0028】
上記炭化松かさは、選別した松かさを水洗・乾燥し、上記乾燥された松かさを密閉容器の中で、100ないし300℃で3〜10時間完全に燃焼させた後、50ないし200メッシュのふるいにかけると炭化された松かさを得ることができる。
【0029】
上記生薬抽出物として、杏仁、ドングリ、甘草から選択された生薬材料を熱水、有機溶媒又はオイルで抽出した溶媒抽出液を使用し得る。又、これら溶媒抽出液を希釈、濃縮、又は乾燥して使用し得る。上記抽出は、常温又は加温下で溶剤によって抽出したり、ソックスレ(soxhlet)などの抽出器具を用いて抽出できる。上記抽出工程に用いられる有機溶媒は、特に限定されず、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコールなどの液状多価アルコール、エチルアセテートなどの低級アルキルエステルなどの公知の溶媒が例示できる。これら溶媒は1種又は2種以上混合して使用し得る。
【0030】
好ましくは、上記杏仁、ドングリ、甘草から選択された原料を60ないし120℃で1ないし8時間抽出し、抽出物を低温で12ないし60ブリックス(Brix)に濃縮して使用する。
【0031】
本発明の一実施例によると、上記紫草抽出物は、ゴマ油を100〜300℃の温度に加熱した後、これに、ゴマ油に対し10〜30質量%の紫草を入れ、濃縮して製造することができる。
【0032】
本発明の一実施例によると、上記ザクロ抽出物は、ゴマ油に対し5〜25質量%のザクロをゴマ油に入れ、30〜50℃で1〜30日間保存して得られる。
本発明の一実施例によると、上記翁草抽出物は、翁草を100〜300℃にの間接的に加熱し、得られた炭化物質に対しゴマ油を80〜90質量%で添加して混合することにより得られる。
【0033】
上記植物性オイルとして、ゴマ油、オリーブ油、エゴマ油、豆油、グレープシードオイル、ひまし油、ネナシカズラ油など種子油が好ましい。
本発明の一実施例によると、植物性オイルとしてゴマ油を使用する。
【0034】
ゴマ油は、黒ゴマ油又は白ゴマ油を使用し得る。ゴマ油は、多量の天然抗酸化物質を含有していて、長期間保存しても酸化のような変性が起きず、必須脂肪酸のリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が他の油に比べ多く含有されている。このような必須脂肪酸は細胞の老化及び白髪を予防するものと知られている。オリーブ油は、スペイン、イタリア、ギリシャなどの地中海沿岸地域で生産され、多量の天然抗酸化物質を含有している。
【0035】
好ましくは、本発明の発毛促進剤は、上記炭化松かさと植物性オイルを1:1ないし6:4の質量比で混合することにより製造することができる。
本発明の発毛促進剤は、上記炭化松かさと植物性オイル及び生薬抽出物を1:1:1ないし3:4:3の質量比で混合することにより製造することができる。
【0036】
又、本発明の発毛促進剤は、炭化松かさ、ゴマ油、杏仁抽出物、ドングリ抽出物、及び甘草抽出物を10〜70:10〜50:5〜20:5〜20:10〜15の質量比で混合して製造することによって、毛髪の健康と育毛及び発毛を促進し、発毛促進剤の酸化を防ぐことができる。製造方法はこれに限定されない。
【0037】
又、本発明の発毛促進剤は、炭化松かさ、ゴマ油、杏仁抽出物、ドングリ抽出物、紫草抽出物、及び甘草抽出物を10〜70:5〜40:10〜30:5〜20:5〜20:5〜20の質量比で混合して製造することによって、毛髪の健康と育毛及び発毛を促進し、発毛促進剤の酸化を防ぐことができる。製造方法はこれに限定されない。
【0038】
毛髪は、成長期、退行期、休止期というサイクルの間に生成し脱毛する。このサイクルにおいて、毛髪は成長期で育ち、退行期では成長が止まってしまうため脱毛が発生することになる。したがって、本発明の発毛促進剤はこのような退行期を延長させ、休止期にある毛髪に栄養を供給し成長初期の毛髪にかえすことによって、速い育毛と毛髪発育を促進して成長期の毛髪を保護し、育毛する役割をする。
【0039】
本発明の発毛促進剤は、公知の通常の剤形で製剤化できる。例えば、軟膏又はクリーム形態の局所塗布型製剤に製剤化できる。
【0040】
又、本発明は、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアジェル、ヘアリンス、エッセンスなどの毛髪や頭皮に使用する各種化粧料の形態で用いることができる。一般に、従来はヘアローション、ヘアクリーム、ヘアジェル、ヘアリンスには発毛促進剤が含有しておらず、単に美容的効果のみのため、このような化粧品は育毛効果及び発毛促進にほとんど役に立たない。しかし、本発明に係る発毛促進剤を各種ヘア化粧品の組成に含ませることにより、単に脱毛症がある男性や女性のみでなく、環境的要因やストレスによって弾力を失った毛髪にも栄養を供給して、さらに艶があり且つ弾力のある毛髪を維持させる機能性ヘア化粧品を製造することができる。
【0041】
又、本発明の発毛促進剤には、必要に応じて、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で、化粧品や医薬品などに一般的に用いられている添加成分、例えば、植物抽出物、油性成分、界面活性剤、アルコール類、脂肪酸類、防腐剤、酸化防止剤、色素、香料、紫外線吸収剤、粘度調節剤、キレート剤、pH調整剤、ビタミン類、錠剤などを配合できる。
【0042】
本発明の発毛促進用軟膏、又はクリーム形態の製剤は、炭化松かさとゴマ油および/または生薬抽出物が配合された混合物に有機酸、ワセリン及びその他賦形剤を適当に混合し、一般的なクリーム又は軟膏剤の形成方法を用いて製造することができる。本発明の発毛促進用軟膏又はクリーム形態の製剤は、炭化松かさ、植物性オイル、生薬抽出物のような有効成分を0.1ないし30質量%、さらに好ましくは5ないし20質量%を含むことが好ましい。上記有効成分の含有量が0.1質量%未満であれば育毛及び発毛効果が非常に低く、30質量%を超える場合は剤形化しにくく、超過投入に伴う上昇効果も大きくない。
【0043】
本発明の発毛促進剤のpHは、人体への安全性、発毛促進剤の中に含まれる成分の頭皮内への吸収性、変性防止、皮膚との親和性などを考慮して、4ないし7の範囲であることが好ましい。
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例によってより詳しく説明する。下記実施例は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【0045】
(実施例1)
在来種の松の松かさの中から、一定の大きさの松かさを選別した。選別した松かさを精製水で水洗した後、陰干した。松かさが完全に乾燥した後、この乾燥した松かさ1000gを完全に密閉された容器に入れた後、約300℃で約8時間加熱して完全に燃焼させた。完全に燃焼させた後、2時間放置して冷却させ、炭化松かさを得た。このように得られた炭化松かさを100メッシュのふるいにかけ、炭化松かさの粉末を約800g得た。
【0046】
ゴマは、異物が入らないように選別機で選別して洗浄した後、よく乾燥させた。乾燥完了後、それを煎り機で約160℃の温度で、水分を完全に蒸発させ煙が出る直前まで煎た。この煎られたゴマを破砕機で破砕し、圧搾器で圧搾・搾油してゴマ油を得た。
【0047】
炭化松かさ:ゴマ油を2:1の質量比で配合した配合物が30質量%含まれるように通常の賦形剤を付加し、通常のクリーム剤形の製法により発毛促進剤を製造した。
【0048】
(実施例2)
炭化松かさ:ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物を30:40:10:10:10の質量比で混合することを除いては実施例1と同様に製造した。
上記杏仁抽出液は、原料を選別した後、精製水を加えて約100℃で5時間抽出し、約55℃で約75ブリックスの固形成分含有量に濃縮して得た。ドングリ抽出液及び甘草抽出液もこのような方法により得た。
【0049】
(実施例3)
炭化松かさ:ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物を40:35:5:10:10の質量比で混合することを除き、実施例2と同様に製造した。
【0050】
(実施例4)
炭化松かさ:ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物:紫草抽出物を30:30:10:10:10:10の質量比で混合することを除き、実施例2と同様に製造した。
上記紫草抽出液は、原料を選別して精製水で洗浄した後、ゴマ油を250℃の温度まで加熱した後、紫草を入れ、3時間濃縮して得た。
【0051】
(実施例5)
炭化松かさ:ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物:ザクロ抽出物を30:40:5:5:10:10の質量比で混合することを除き、実施例2と同様に製造した。
上記ザクロ抽出物は、ゴマ油に対し15質量%のザクロを入れ、40℃の温度で20日間保存して得た。
【0052】
(実施例6)
炭化松かさ:ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物:翁草抽出物を40:30:10:5:5:10の質量比で混合することを除き、実施例2と同様に製造した。
上記翁草抽出物は、翁草を200℃に間接的に加熱し、得られた炭化物質に対し85質量%のゴマ油を加えて得た。
【0053】
(比較例1)
ゴマ油:杏仁抽出物:ドングリ抽出物:甘草抽出物を同一質量比で混合することを除き、実施例1と同様に製造した。
【0054】
(試験例1:発毛促進効果の試験(比較例との比較))
男性脱毛症患者20人を対象とし、実施例1〜6及び比較例1で製造された発毛促進剤を1日3回、各患者の脱毛した頭皮部位に塗布し、塗布部位の発毛状態を観察した。試験開始日から15日間隔で3ヶ月間観察した。発毛効果の評価は、塗布の部分を経時的にデジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトウェアを用いて、脱毛した頭皮部位の面積に対する毛の再生が認められた面積の比率(%)を計算して下記表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
(試験例2:発毛促進効果の試験)
発明の発毛促進剤の効果が男性のみに限定されるかどうか、及び効果が若い年齢層のみにあるかどうかを判断するために、第1群は30代後半の男性及び女性各10人を、第2群は40代後半の男性及び女性各10人を対象とし、各々3ヶ月間発毛促進効果の試験を行った。毎日、実施例2の方法で製造された発毛促進剤を頭皮に薄く塗布し、朝に温かい水で洗髪した後、脱毛部位に均一に塗布したことを除いては試験例1と同様の方法で発毛効果について調べた。その結果は第1群の結果を表2に、第2群の結果を表3に示した。
【0057】
臨床試験の対象者らは、研究開始前3ヶ月はミノキシジル製剤又は各種機能性製品を使用した経験がない者を選別し、円形脱毛症、休止期脱毛症、瘢痕性脱毛症、脂漏性脱毛症、栄養欠乏脱毛症、神経性脱毛症などの脱毛疾患がある患者を対象として行った。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
(試験例3:安全性の試験)
上記試験例1の発毛促進効果の試験において、試料塗布直後の患者の皮膚状態を観察して、以下の基準に基づいて被刺激性を評価した。その結果を下記表4に示す。
○:変化がない。
△:塗布部位の皮膚に軽微な紅斑が見える。
X:塗布部位の皮膚に明確な紅斑が見える。
【0061】
【表4】

【0062】
上記表1から分かるように、炭化松かさを含有する本発明の実施例1ないし6の発毛促進剤は、炭化松かさを含有しない比較例1の製剤に比べて優れた発毛促進効果を示し、12週間塗布した後、男性型脱毛症は80%を超える、円形脱毛症は90%を超える治療効果を得ることができた。又、上記表2及び表3から分かるように、本発明の一実施例の実施例2により製造された発毛促進剤を30代及び40代後半の男性と女性に各々実験した結果、80%以上の発毛効果のあった人が実験対象者全体の80%を超え、その他の実験対象者においても全員発毛効果があったことが分かる。
【0063】
又、表4に示されるように、本発明の実施例1ないし6の全ての製剤は皮膚に刺激を与えないことが分かる。
【0064】
従って、本発明は、発毛促進剤としても、脱毛症治療剤としても用いることができるのみでなく、その他に、毛髪関連の化粧品の組成として用いれば、一般人が用いる際にもさらに艶があり且つ弾力のある毛髪を作ることができるという機能がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化松かさ及び植物性オイルを有効成分として含む発毛促進剤。
【請求項2】
上記炭化松かさと植物性オイルとを1:1ないし6:4の質量比で混合して製造されることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項3】
上記植物性オイルは種子油であることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項4】
上記植物性オイルは、ゴマ油、オリーブ油、エゴマ油、ヤシ油、ひまし油、豆油、及びネナシカズラ油からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項5】
上記発毛促進剤は、杏仁、ドングリ、紫草、ザクロ、翁草、及び甘草の抽出物からなる群より選択される少なくとも1つの生薬抽出物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項6】
上記生薬抽出物は、上記生薬材料を熱水、有機溶媒又はオイルで抽出して製造された溶媒抽出液であることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項7】
上記溶媒抽出液は、希釈、濃縮又は乾燥した後使用されることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項8】
上記紫草抽出物は、ゴマ油を100〜300℃の温度に加熱した後、ゴマ油に対し10〜30質量%の紫草を入れて製造されることを特徴とする請求項6に記載の発毛促進剤。
【請求項9】
上記ザクロ抽出物は、ゴマ油に対し5〜25質量%のザクロを入れ、その混合物を30〜50℃の温度で1〜30日間保存して得られることを特徴とする請求項6に記載の発毛促進剤。
【請求項10】
上記翁草抽出物は、翁草を100〜300℃に間接的に加熱して得た炭化物質に対し、ゴマ油を80〜90質量%で添加して得られることを特徴とする請求項6に記載の発毛促進剤。
【請求項11】
炭化松かさと植物性オイル及び生薬抽出物は、1:1:1ないし3:4:3の質量比で混合して使用されることを特徴とする請求項6に記載の発毛促進剤。
【請求項12】
上記炭化松かさ、植物性オイル、杏仁抽出物、ドングリ抽出物及び甘草抽出物は、10〜70:10〜50:5〜20:5〜20:10〜15の質量比で配合されて使用されることを特徴とする請求項5に記載の発毛促進剤。
【請求項13】
上記炭化松かさ、植物性オイル、杏仁抽出物、ドングリ抽出物、紫草抽出物及び甘草抽出物は、10〜70:5〜40:10〜30:5〜20:5〜20:5〜20の質量比で配合されることを特徴とする請求項5に記載の発毛促進剤。
【請求項14】
上記炭化松かさは、選別された松かさを水洗・乾燥させた後、この乾燥させた材料を密閉容器の中で、100ないし300℃の温度で加熱して完全に燃焼させて得られることを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項15】
上記発毛促進剤は、血行促進剤、局所刺激剤、毛胞復活剤、消炎殺菌剤の中から選択される少なくとも1つの補助剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発毛促進剤。
【請求項16】
上記発毛促進剤は、局所塗布剤、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアジェル、ヘアリンス、又はエッセンス用の剤形を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の発毛促進剤。
【請求項17】
上記局所塗布剤は、軟膏又はクリームの形態であることを特徴とする請求項16に記載の発毛促進剤。
【請求項18】
炭化松かさを製造する段階と、
ゴマ油を得る段階と、
炭化松かさとゴマ油を配合する段階と、
炭化松かさとゴマ油の混合物に賦形剤を加える段階とを含むことを特徴とする発毛促進剤の製造方法。
【請求項19】
生薬抽出物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の発毛促進剤の製造方法。
【請求項20】
上記炭化松かさは、密閉容器の中で松かさを、100〜300℃で1〜8時間完全に燃焼させて得られることを特徴とする請求項18に記載の発毛促進剤の製造方法。


【公表番号】特表2009−518455(P2009−518455A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545467(P2008−545467)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000486
【国際公開番号】WO2007/069804
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508169410)
【Fターム(参考)】