説明

発泡シート及び発泡樹脂容器

【課題】発泡シートにおける表面抵抗率の部分的な増大を抑制し、発泡樹脂容器の帯電防止性能が損なわれることを抑制させることを目的としている。
【解決手段】樹脂組成物によってシート状に形成されており、シート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有し、前記発泡層がポリプロピレン系樹脂成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されており、シート表面における帯電を防止し得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シートであって、前記発泡層の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方と非イオン性帯電防止剤とが含有されていることを特徴とする発泡シートなどを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シート、及び、発泡樹脂容器に関し、より詳しくは、樹脂組成物によってシート状に形成されており、シート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有し、シート表面における帯電防止をし得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シート、及び、このような発泡シートが用いられてなる発泡樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物をシート状に発泡させた発泡シートは、軽量性と緩衝性とが求められる用途において広く用いられている。
特に樹脂発泡体によって容器形状が形成された発泡樹脂容器をシート成形によって作製する際の素材などとして広く用いられている。
なかでも、軽量性を発揮させつつ、求められる機能を表面に発揮させるために、発泡層の一面側又は両面側に表面層を形成させたタイプの発泡シートが広く用いられている。
【0003】
例えば、IC、LSIなどの半導体パッケージや半導体ベアチップなどといった半導体素子を搬送するための搬送容器には、内部に収容する半導体素子に静電気などによる電気的ダメージが加えられることを防止し得るようにこれらの半導体素子に接する表面に帯電防止性を付与することが求められていることから、このような容器の形成に前記のようなタイプの発泡シートが用いられるような場合には、発泡層の軽量性を活かしつつ前記表面層に帯電防止性を付与することが行われている。
その具体的な手法としては、表面抵抗率の値が、例えば、1×108Ω/□以下となるようにカーボンブラックなどの導電性成分を含有する樹脂組成物によって表面層を形成させることが行われている。
【0004】
ところで、表面層と発泡層とを有する発泡シートは、通常、押出し法などによって連続的に製造されており、例えば、下記特許文献1には、帯電防止剤を含む樹脂組成物によって形成された表面層を有する発泡シートが共押出しによって製造されることが記載されている。
しかし、このような製造方法によって発泡シートを作製する場合において、表面層と発泡層との押出し条件のミスマッチによって表面層が途切れた状態となったり、あるいは、絞り加工などによって発泡シートに容器形状を付与する際に表面層に破断が生じたりする場合がある。
【0005】
その場合、発泡層が表面に露出する状態となるが、通常、このようなタイプの発泡シートにおいては、発泡層にまで帯電防止の処方を行うことがなされていないためこの発泡層の露出領域において表面抵抗率の値を増大させることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−184181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、表面層の一部に途切れが生じて発泡層がシート表面に露出すること自体に対して十分な認識がなされておらず、したがって、その対策についても確立がなされていない。
すなわち、従来の発泡シートにおいては、表面抵抗率が部分的に増大されてしまうおそれを有しており、発泡樹脂容器に期待される帯電防止性能が発揮されないおそれを有する。
本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたもので、発泡シートにおける表面抵抗率の部分的な増大を抑制し、発泡樹脂容器の帯電防止性能が損なわれることを抑制させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発泡シートに係る本発明は、樹脂組成物によってシート状に形成されており、シート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有し、前記発泡層がポリプロピレン系樹脂成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されており、シート表面における帯電を防止し得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シートであって、前記発泡層の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方と非イオン性帯電防止剤とが含有されていることを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を解決するための発泡樹脂容器に係る本発明は、樹脂組成物によってシート状に形成され、シート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有する発泡シートが用いられており、しかも、前記発泡層がポリプロピレン系樹脂成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物によって形成され、シート表面における帯電を防止し得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シートが用いられており、該発泡シートが前記表面層を露出させた状態で用いられてなる発泡樹脂容器であって、前記発泡層の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方と非イオン性帯電防止剤とが含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物に非イオン性帯電防止剤を含有させた際における該非イオン性帯電防止剤の移行性を、前記ポリプロピレン系樹脂組成物に低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方をさらに含有させることで向上され得ることを見出してなされたものであり、本発明の発泡シートは、このような帯電防止剤の移行性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物で発泡層を形成させるため、仮に表面層の一部に破断が生じるなどして発泡層が表面露出するような事態になったとしても前記帯電防止剤がこの表面に移行して表面抵抗率の増大が抑制され得る。
したがって、発泡樹脂容器の帯電防止性能が損なわれることを抑制させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る発泡シートの構造を示す断面図。
【図2】発泡シートの製造方法に用いる装置構成を示す概略図。
【図3】合流金型の構造を示す断面図。
【図4】「縞立ち」の形成プロセスを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施形態として発泡シートの断面図である図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態における発泡シート1は、上面側と下面側とのそれぞれの表面を構成する表面層11、12とその間に形成された中間層20との3層の積層構造を有している。
【0013】
この表面層11、12は、いずれも非発泡状態となるように形成されている。
本実施形態の発泡シート1においては、図1における上側の表面層11(以下「第一非発泡層11」ともいう)と、下側の表面層12(以下「第二非発泡層12」ともいう)とは、必ずしも、その構成を一致させている必要はなく、それぞれの厚みを異ならせていても良い。
また、中間層20は、発泡状態に形成された発泡層である。
すなわち、本実施形態の発泡シート1は、この中間層20(以下「発泡層20」ともいう)を介してその両側に非発泡層を有する状態に形成されている。
本実施形態においては、この中間層20の厚みやその発泡倍率も特に限定するものではなく適宜選択が可能である。
【0014】
なお、前記表面層(非発泡層)の“非発泡状態”とは、完全に非発泡な状態である場合のみを意図するものではなく実質的に非発泡な状態となっていることを意図するものである。
例えば、体積で、5%以下程度であれば気泡を含有していても実質的に非発泡な状態であるということができ、本明細書中における“非発泡”との用語は、このような状態のものをも含む意図で用いている。
【0015】
本実施形態に係る発泡シート1が、半導体素子などを収容させるための発泡樹脂容器の形成に用いられるような場合においては、前記第一非発泡層11と前記第二非発泡層12の厚みは、厚くさせる方が発泡樹脂容器に優れた強度を付与させうる。
一方で、過度に前記第一非発泡層11と前記第二非発泡層12の厚みを厚くすると発泡樹脂容器に適度な緩衝性(クッション性)と軽量性とを付与することが困難となる。
このような観点においてこれら非発泡層の厚みは、それぞれ、50μm以上、150μm以下の範囲の内のいずれかであることが好ましく、60μm以上、100μm以下の範囲の内のいずれかであることが特に好ましい。
【0016】
一方で発泡層20の厚みや、その発泡倍率は、この発泡シート1が発泡樹脂容器の形成に用いられるような場合においては、発泡樹脂容器に求められる軽量性や強度などといった観点から適宜選択されうる。
この発泡層20の発泡倍率が高く、厚みが厚いほど発泡樹脂容器に優れた緩衝性が付与される一方で、発泡倍率を向上させて過度に発泡層20の厚みを厚くしたりすると発泡樹脂容器に十分な強度を付与させることが困難になるおそれがある。
【0017】
このような観点において発泡層20の厚みは、1.5mm以上、4.5mm以下のいずれかであることが好ましく、見掛け密度が0.18g/cm3以上、0.6g/cm3以下の範囲の内のいずれかとなる発泡倍率であることが好ましい。
【0018】
また、第一非発泡層11と第二非発泡層12とは、上記のようにそれぞれの厚みを異ならせていても、同一であっても良く、その形成に用いられる樹脂組成物も同一であっても、異なっていても良い。
さらに、前記発泡層20に用いられる樹脂組成物も前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12と成分を共通させてもよく異ならせていても良い。
【0019】
前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物は、一般的な帯電防止の処方がなされた発泡シートの形成に用いられている樹脂組成物を挙げることができる。
【0020】
例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂組成物が好適に用いられ得る。
なかでも、後述するように、発泡層20がポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されることから、この発泡層20の形成材料と親和性の高いポリオレフィン系樹脂がベースポリマーとして用いられることが好適であり、第一非発泡層11や第二非発泡層12の形成には、ポリオレフィン系樹脂がベースポリマーとして用いられたポリオレフィン系樹脂組成物が好適に用いられうる。
【0021】
前記ポリエチレン(PE)系樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、(高圧法)低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0022】
前記ポリプロピレン(PP)系樹脂としては、プロピレン成分のみからなるホモポリプロピレン樹脂、プロピレン成分以外にエチレンなどのオレフィン成分を含有するランダム共重合体やブロック共重合体が挙げられる。
特に、高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)樹脂は、ベースポリマーとして好適である。
この高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)樹脂は、例えば、Borealis社から、商品名「WB130HMS」、「WB135HMS」、及び「WB140HMS」、Basell社から、商品名「Pro−fax F814」、日本ポリプロ社から、商品名「FB3312」、「FB5100」、「FB7200」、及び「FB9100」として市販されているものが挙げられる。
なお、ポリプロピレン系樹脂として、共重合体が用いられる場合には、プロピレン以外のオレフィンを共重合体中に0.5質量%以上30質量%以下、特に好ましくは1質量%以上10質量%以下のいずれかの割合で含有させたものを用いることが望ましい。
この場合のオレフィン成分としては、エチレン、あるいは、炭素数4以上、10以下のα−オレフィンを挙げることができる。
【0023】
また、このポリオレフィン系樹脂組成物には、これら以外に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリブテン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂などのポリオレフィン系樹脂を前記ベース樹脂の一部として含有させうる。
【0024】
前記ポリスチレン系樹脂を用いる場合には、スチレン系単量体から選ばれる1種以上の重合体や、スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレンが挙げられる。
また、前記ビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートが挙げられる。
【0025】
また、本実施形態において非発泡層(表面層)11、12の形成に用いる樹脂組成物には、これらポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂以外のポリマー成分をベースポリマーとして使用することができ、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂とともにその他のポリマー成分を混合して用いることも可能である。
【0026】
前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物には、このようなポリマー成分に、帯電防止のための導電性成分としてカーボンブラックが含有されている。
このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラックなどと呼ばれる一般的なカーボンブラックを採用することができる。
このカーボンブラックは、高充填させることで非発泡層の抵抗を低減(導電性を向上)させることが可能になる反面、発泡シートや、該発泡シートを用いて形成される成形品に粉塵を発生させる原因ともなりうる。
したがって、非発泡層の形成に用いる樹脂組成物においては、カーボンブラックが、前記ベースポリマーを含め、全てのポリマー成分100質量部に対して、10質量部以上、30質量部以下の範囲の内のいずれかとなる割合で含有されていることが好ましく20質量部以上、30質量部以下の範囲の内のいずれかとなる割合で含有されていることが特に好ましい。
【0027】
なかでも、一次粒子径が30nm以上、40nm以下で、DBP吸油量が130cm3/100g以上、180cm3/100g以下のアセチレンブラックが好適である。
【0028】
なお、このようなカーボンブラックは、前記第一非発泡層11や前記第二非発泡層12の形成に用いられる樹脂組成物に、該樹脂組成物を非発泡な状態でシート化した時のシートの表面抵抗率が1×104Ω/□以上、1×108Ω/□以下の範囲の内のいずれかとなるように含有させることが好ましい。
すなわち、発泡シート1には、1×104Ω/□以上、1×108Ω/□以下の範囲の内のいずれかの表面抵抗率が付与されることが好ましい。
【0029】
さらには、非発泡層の形成に用いる樹脂組成物には、上記のようなカーボンブラックの一部、又は全部に代えて、他の導電性成分を加えることによって帯電防止性を付与するようにしてもよい。
このような成分としては、アンチモンをドープした酸化チタン粒子、酸化スズで表面処理された酸化チタン粒子などの導電性粒子が挙げられる。
さらには、発泡シートなどにおいて帯電防止剤として用いられている各種のものを用いることもできる。
【0030】
この帯電防止剤としては、例えば、低分子型帯電防止剤と呼ばれているものや、高分子型帯電防止剤と呼ばれているものなどが挙げられる。
該低分子型帯電防止剤としては、非イオン性帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤が挙げられる。
【0031】
前記非イオン性帯電防止剤としては、例えば、アルコール系帯電防止剤、エーテル系帯電防止剤、エステル系帯電防止剤、エステル・エーテル系帯電防止剤などが挙げられる。
さらに、前記非イオン性帯電防止剤としては、例えば、アミン系帯電防止剤や、アミド系帯電防止剤などの窒素含有型の帯電防止剤が挙げられる。
【0032】
アルコール系帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(又はポリエチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体などのポリアルキレンオキシドなどが挙げられる。
なお、前記アルコール型帯電防止剤において、アルキレンオキシドの重合度は、通常、1以上、300以下(例えば、5以上、200以下)であり、好ましくは10以上、150以下(例えば、10以上、100以下)である。
さらに好ましくは15以上、50以下程度である。
【0033】
エーテル系帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。
【0034】
エステル系帯電防止剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールと脂肪酸とのエステル等の多価アルコール脂肪酸エステル;が挙げられ、例えば、グリセリンモノステアリン酸エステルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0035】
エステル・エーテル系帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルが挙げられ、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0036】
窒素含有型の帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどの炭素数6以上、24以下程度のアルキル構造を分子中に有するポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンステアリン酸アミドなどの炭素数6以上、24以下程度の脂肪酸構造を分子中に有するポリオキシエチレン脂肪酸アミド;N−エタノールアルキルアミンなどのN−アルカノールアルキルアミンや、N,N−ジエタノールアルキルアミンなどのN,N−アルカノールアルキルアミンなどのアルカノールアルキルアミン;N−エタノールステアリン酸アミドなどのN−アルカノール脂肪酸アミドや、N,N−ジエタノールステアリン酸アミドなどのN,N−アルカノール脂肪酸アミドなどのアルカノール脂肪酸アミドが挙げられる。
【0037】
なお、前記非イオン性帯電防止剤を構成するアルキルや脂肪酸としては、通常、炭素数6以上、24以下程度のものが挙げられる。
脂肪酸については飽和脂肪酸(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数6以上、24以下の飽和脂肪酸;オレイン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0038】
また、アニオン系低分子型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩などが挙げられ、カチオン系低分子型帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられ、両性系低分子型帯電防止剤としては、アルキルベタインなどが挙げられる。
【0039】
なお、前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドなどのアイオノマーやその第四級アンモニウム塩や、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックのブロック共重合体)などのオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
【0040】
さらに、このような成分以外に第一非発泡層11や第二非発泡層12に用いる樹脂組成物には、一般的な樹脂シートの形成材料として用いられる添加剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、顔料、充填剤などをさらに含有させることができる。
【0041】
前記発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂成分と、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方を含むポリマー成分を非イオン性帯電防止剤ともに含有させている。
ポリプロピレン系樹脂成分は、前記非発泡層の形成材料として例示したようなポリプロピレン系樹脂を1種以上用いて構成することができる。
このポリプロピレン系樹脂としては、メルトフローレート:2.2g/10分以上、10g/10分以下、メルトテンション:10cN以上、平衡コンプライアンス:2.0×10-3Pa-1以上の特性を有するものが好適に用いられ得る。
また、発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂は、その「メルトテンション」が30cN以下であることが好ましく、「平衡コンプライアンス」が、1×10-2Pa-1以下であることが好ましい。
なお、この「メルトフローレート」、「メルトテンション」、「平衡コンプライアンス」については、実施例に記載の方法などにより求められる値を意図している。
【0042】
なお、本実施形態に係る樹脂発泡シート1を、後述するようなサーキュラーダイとマンドレルとを用いた一般的な製造方法で製造する場合に外観良好なものが得られやすい点において、前記発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂組成物には、高溶融張力ポリプロピレン樹脂(HMS−PP)をポリマー成分に占める割合が所定の割合となるように含有させることが好ましく、ポリマー成分に占める割合が20質量%以上50質量%未満となるように含有させることが好ましい。
【0043】
この発泡層20の形成に用いるHMS−PPとしては、電子線などの活性エネルギー線の照射によって分子内に自由末端長鎖分岐を形成させたり、化学架橋によって分子内に自由末端長鎖分岐を形成させたりして高い溶融張力(メルトテンション)が付与されたものが用いられ得る。
また、ポリエチレンブロックなどのオレフィンブロックを分子内に導入させて、オレフィンブロックとポリプロピレンブロックとのブロックコポリマー化によって高い溶融張力が付与されたものもHMS−PPとして用いられ得る。
【0044】
このHMS−PP以外に発泡層20の形成材料として採用されるポリプロピレン系樹脂としては、実質的にプロピレン成分のみからなるホモポリプロピレン樹脂(PP)が挙げられる。
【0045】
なお、ポリプロピレン系樹脂が、HMS−PPであるか、そうでないかについては、上記のような分子構造上の違いのみならず、通常、その溶融張力(メルトテンション)をもって判定することができる。
例えば、メルトテンションが、5cN以上であれば、HMS−PPであると判断しうる。
なお、このHMS−PPとしては、メルトマスフローレイト(MFR)が0.5g/10分以上、10g/10分以下で、メルトテンションが、10cN以上30cN以下のものが好適に採用され得る。
【0046】
なお、本明細書においては、ある程度のメルトテンションを有するようにオレフィンブロックが導入されたブロックコポリマーであっても、上記測定によるメルトテンションの値が、前記の値に及ばないものは、本実施形態においてポリプロピレン系樹脂組成物中の含有量を規定するHMS−PPとしては扱わないものとする。
以下において、「ブロックコポリマー」や「ブロックPP」との用語は、特段の記載がない限りにおいて、オレフィンブロックとポリプロピレンブロックとを有するブロックコポリマーの内のメルトテンションの値が、前記の値に及ばない(「HMS−PP」に該当しない)ものを意図して用いる。
【0047】
上記メルトテンションの値を示すHMS−PPの具体例としては、例えば、Borealis社から、商品名「WB130HMS」、「WB135HMS」、及び「WB140HMS」として市販されているものが挙げられる。
また、HMS−PPの具体例としては、Basell社から、商品名「Pro−fax F814」として市販されているものが挙げられる。
さらに、日本ポリプロ社から、商品名「FB3312」、「FB5100」、「FB7200」、及び「FB9100」として市販されているものもHMS−PPの具体例として挙げられる。
なかでも、化学架橋によって分子内に自由末端長鎖分岐を形成させたBorealis社の商品名「WB135HMS」などを採用することが発泡層20を押出し発泡によって形成させる際の発泡度の向上などを容易に図り得る上において好適である。
【0048】
このHMS−PPが、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有されているポリマー成分に20質量%以上50質量%未満となる割合で含有されることが発泡シート1の外観を良好なものとするのに有効であるのは、ポリマー成分全体に占めるHMS−PPの割合が50質量%以上になると、当該ポリプロピレン系樹脂組成物が、押出し発泡されて発泡シートが作製される際に“縞立ち”を発生させ易いためである。
【0049】
なお、HMS−PPの好ましい含有量の下限値が20質量%とされているのは、HMS−PPを、これを下回る含有量としようとすると、ポリプロピレン系樹脂組成物を良好な状態で発泡させることが難しくなって、押出し条件を狭くさせてしまうおそれを有するためである。
【0050】
このような観点において、全ポリマー成分におけるHMS−PPの含有量は、25質量%以上50質量%未満であることが好ましく30質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
また、本実施形態におけるポリプロピレン系樹脂組成物には、このHMS−PP以外にも、ブロックPPやホモPPを含有させることが好ましい。
【0051】
なお、発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂成分は、「メルトフローレート」、「メルトテンション」、「平衡コンプライアンス」の値が上記範囲内となるような特性を有するポリプロピレン系樹脂を選択して用いた場合でも、あるいは、複数種類のポリプロピレン系樹脂を混合して、その総合的な特性として、「メルトフローレート」、「メルトテンション」、「平衡コンプライアンス」が上記範囲となるように調整した場合でも、上記のような好ましい効果が得られる点については同じである。
【0052】
このようなポリプロピレン系樹脂とともに前記ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させるエチレン−α−オレフィン共重合体や低密度ポリエチレン樹脂は、非イオン性帯電防止剤のブリードアウトを促進させる成分として有効なものであり、その結晶化度が20%以上55%以下のものが好ましい。
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテンなどのα−オレフィンと、エチレンとの共重合体などが挙げられる。
このエチレン−α−オレフィン共重合体や低密度ポリエチレン樹脂は、発泡層を形成させるためのポリプロピレン系樹脂組成物に1種単独で含有させても良く、複数種を含有させても良い。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体の1種以上と低密度ポリエチレン樹脂の1種以上とを混合して非イオン性帯電防止剤のブリードアウト促進成分とすることも可能である。
【0053】
このエチレン−α−オレフィン共重合体や低密度ポリエチレン樹脂における結晶化度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」により測定することができる。
具体的には、SIIナノテクノロジー社製の示差走査熱量計(DSC)装置「DSC6220型」を用い、測定容器に試料を7mg充てんして、窒素ガス流量30ml/minのもと10℃/minの昇温冷却速度で昇温・冷却しながら、DSC曲線がベースラインから離れた点を結晶化、融解の開始点とし、再びベースラインに戻った点をこれらの終了点として結晶化熱量と融解熱量を測定し、結晶化度を次式により求めることができる。

結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ)/完全結晶の融解熱量(mJ))×100

(ただし、完全結晶融解熱量(理論値)は、285.7mJ/mgとする。)
【0054】
この発泡層の形成材料であるポリプロピレン系樹脂組成物には、上記のようなポリプロピレン系樹脂成分、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリマー成分を含有させることができる。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂組成物のポリマー成分を構成する上記以外のその他成分としては、ポリプロピレン系樹脂に相溶性の高いポリマーが好適であり、例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリブテン樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)が挙げられる。
なお、その他成分(ポリオレフィン系樹脂やポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー等)は、過剰に添加されることは好ましくなく、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリマー成分(ポリプロピレン系樹脂と当該その他成分との合計)に占める割合が10質量%以下とされることが好ましい。
【0055】
また、前記ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させる、非イオン性帯電防止剤としては、表面層の形成材料として例示したものを、この発泡層20においても用いうる。
【0056】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体や前記低密度ポエチレンは、非イオン性帯電防止剤の移行性を補助するものであり、例えば、表面層の一部に破断等が生じてこの発泡層20が表面に露出するようなことがあった場合に、その露出箇所において前記非イオン性帯電防止剤をブリードアウトさせて表面抵抗率が増大されることを抑制する作用を発泡シート1に付与するために重要な成分であり、発泡層20の形成に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物における、含有割合が少ない場合においては、上記のような効果を低下させることとなる。
一方で、過剰に配合させた場合には、非イオン性帯電防止剤の移行性が不十分となるおそれを低下させる一方で発泡層の発泡に影響を与えてしまい、発泡層の気泡形状(大きさや連続気泡の割合等)や発泡度が所望の値とならないおそれを有する。
【0057】
また、非イオン性帯電防止剤についても同様に、ポリプロピレン系樹脂組成物における含有割合が少ない場合においては、発泡層20が露出した場合の帯電防止が十分になされないおそれがある一方で、過剰に含有させると発泡層の形成に悪影響を与えるおそれを有する。
【0058】
このようなことから、ポリプロピレン系樹脂成分が、前記のような「メルトフローレート」、「メルトテンション」、「平衡コンプライアンス」の値を有するものである場合においては、該ポリプロピレン系樹脂成分100質量部に対する前記低密度ポリエチレン、前記エチレン−α−オレフィン共重合体の合計量の割合が5質量部以上35質量部以下であり、且つ前記非イオン性帯電防止剤の割合が0.2質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0059】
また、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて発泡層20を形成させるためには、通常、発泡のための成分が上記成分に加えてポリプロピレン系樹脂組成物に含有されることとなる。
【0060】
この発泡のための成分としては、例えば、少なくともベースポリマーの融点において気体状態となるガス成分や、該ガス成分によって気泡を形成させる際の核となる核剤や、少なくともベースポリマーの融点において熱分解を生じて気体が発生される熱分解型発泡剤などが挙げられる。
【0061】
前記ガス成分としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系ガス成分;窒素、二酸化炭素、アルゴン、水などが挙げられる。
なお、これらのガス成分は単独で使用されても複数併用されてもよい。
【0062】
前記核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物粒子などが挙げられる。
この核剤は、例えば、ポリオレフィン系樹脂に予め含有させたマスターバッチ方式で発泡層の形成材料に含有させることができ、前記核剤を5質量%以上、50質量%以下の範囲の内のいずれかのとなるようにポリオレフィン系樹脂に分散させたマスターバッチを用いることで、核剤をより効果的に使用することができる。
【0063】
さらに、加熱分解型の発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などが挙げられる。
この加熱分解型の発泡剤については、10質量%以上、50質量%以下の範囲の内のいずれかの含有量となるようにポリオレフィン系樹脂に分散させてマスターバッチ化することで、より効果的に使用することができる。
【0064】
本実施形態の発泡シート1は、このような形成材料を用いて、次に説明するような方法で作製され得る。
この発泡シートの製造方法について、図2、図3を参照しつつ説明する。
なお、図2は、発泡シート1の製造装置にかかる概略構成図であり、図3は、図2に示されている合流金型(符号XH)の内部の様子を示す断面図である。
【0065】
この図2に示されているように、本実施形態における発泡シートの製造装置には、タンデム押し出し機である第1押し出し機70と、シングル押し出し機である第2押し出し機80の2系列の押し出し機が備えられている。
また、これらの押し出し機において溶融混練された樹脂組成物が合流される合流金型XHと、該合流金型XHで合流された樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。
【0066】
さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、該マンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置(図示せず:図2においては上下に分割する様子のみを示す)と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ91を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ92が備えられている。
【0067】
前記第1押し出し機70は、発泡層20を形成させるためのものであり、その上流側の押し出し機(以下「上流側押し出し機70a」ともいう)には、発泡層20を形成させるための樹脂組成物(以下「発泡性樹脂組成物」ともいう)を投入するためのホッパー71と、炭化水素などのガス成分をシリンダー内に供給するためのガス導入部72が設けられている。
そして、この上流側押し出し機70aの下流側には、ベース樹脂とガス性成分とを含有する発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出するための押し出し機(以下「下流側押し出し機70b」ともいう)が備えられている。
【0068】
また、前記第2押し出し機80は、第一非発泡層11と第二非発泡層12とを形成させるためのものであり、非発泡な状態で表面層を形成するための樹脂組成物(以下「非発泡性樹脂組成物」ともいう)をホッパー81から投入して、シリンダー内部で非発泡性樹脂組成物を溶融混練して合流金型XHに吐出すべく構成されている。
【0069】
前記合流金型XHは、図3にその概略断面図を示すように、図3正面視右側から左側に向けて中心部を貫通する第一の樹脂流路W1と、この第一の樹脂流路W1の途中において該第一の樹脂流路W1内に樹脂を流入させるための第二の樹脂流路W2と、この第二の樹脂流路W2よりも上流側(図3正面視右側)において該第一の樹脂流路W1内に樹脂を流入させるための第三の樹脂流路W3とが形成されている。
前記第二の樹脂流路W2は、樹脂流路W1を形成する壁面に開口された円環状のスリットS1から樹脂流路W1に樹脂組成物を流入させ得るように形成されており、前記第三の樹脂流路W3は、前記第一の樹脂流路W1の中心部に開口端を配した管体Pに接続され、第一の樹脂流路W1の中心部に樹脂組成物を流入させ得るように形成されている。
【0070】
前記第一の樹脂流路W1は、その上流側が第1押し出し機70に接続され、下流側がサーキュラーダイCDに接続されており、前記第2の樹脂流路W2及び前記第三の樹脂流路W3は、第2押し出し機80から非発泡性樹脂組成物を流入させ得るように分配管Dを介して第2押し出し機80に接続されている。
すなわち、本実施形態の合流金型XHは、第一の樹脂流路W1の下流側において、非発泡性樹脂組成物/発泡性樹脂組成物/非発泡性樹脂組成物の3重構造となる円柱状の流れをサーキュラーダイCDに向けて供給しうるように備えられている。
【0071】
そして、サーキュラーダイCDは、合流金型XHから流入される3重(中心部の非発泡製樹脂組成物/その外側の発泡性樹脂組成物/及びその外側の非発泡製樹脂組成物)の樹脂組成物の流れが筒状に広げられ、しかも、拡径された状態とされて吐出孔から共押し出しされるべく形成されている。
【0072】
このような装置によって発泡シートを作製するには、まず、第1押し出し機70のホッパー71から発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂組成物を投入し、且つ第2押し出し機80に導電性成分の含有された樹脂組成物を投入し、樹脂の溶融温度以上での溶融混練を各押し出し機内で実施させた後にサーキュラーダイCDから共押し出しする方法が挙げられる。
なお、それぞれの樹脂組成物は、予め均質な混合状態とさせておいても、別々にホッパーから投入して押出し機内で混合させるようにしてもよい。
【0073】
これらの押し出し機の内、第1押し出し機70においては、発泡のための成分を溶融混練させる必要があることから、上流側押し出し機70aに設けられたガス導入部72からガス成分を圧入して溶融樹脂との混合が実施される。
前記サーキュラーダイCDから共押し出しするためには、第1押し出し機70における上流側押し出し機70aで溶融混練された発泡性樹脂組成物を、下流側押し出し機70bで押し出し発泡に適した温度に調整して合流金型XHへと送り、一方で第2押し出し機80では、非発泡性樹脂組成物を第一、第二非発泡層11、12の形成に適した温度に調整して合流金型XHへと送って溶融樹脂による積層構造を合流金型XH内に形成させることが重要である。
【0074】
そして、合流金型XH内で合流されたそれぞれの樹脂組成物を、サーキュラーダイCDの円環状の吐出孔から円筒状に共押し出しさせ、前記ポリプロピレン系樹脂組成物によって発泡層20を形成させ、導電性成分の含有された樹脂組成物で非発泡層(表面層11、12)を形成させる。
その後、吐出孔から押出された円筒状の発泡体を、この吐出孔よりも径大なるマンドレルMDによって円筒状に押出された発泡シートを周方向に延伸させるとともに冷却し、冷却された筒状の発泡シートを切断具(図示せず)で上下2分割して、それぞれロール92に巻き取らせる。
このとき、押出し条件(樹脂温度、引取り速度、発泡層の発泡速度、マンドレルによる延伸度合い等)と、発泡剤の種類や使用量を調整して、押出し方向に沿って測定した気泡の平均径(直径)が300μm以下で、押出し方向とは直交する方向に沿って測定した気泡の平均径(直径)が200μm以下となるように発泡層の発泡状態を調整することが好ましい。
【0075】
なお、発泡樹脂層20を形成させるためのポリプロピレン系樹脂組成物にHMS−PPが含有されていることにより良好なる発泡性が発揮され前記円筒状の発泡体は、吐出された直後に発泡度の増大に伴う厚みの増大を生じ、見かけ上の体積を膨張させることになる。
【0076】
このとき円筒状の発泡体は、厚み方向にのみ体積膨張するわけではなく、周方向にも体積膨張を生じる。
また、前記円筒状の発泡体は、ロール92による引取り力によってマンドレルMDの方向に移動され、該移動に伴って徐々にマンドレルMDの外径に近づくように拡径されることとなる。
【0077】
したがって、図4に示すように、押出された後の周方向の膨張速度が、この発泡体FBが拡径されるスピード以下であれば特に問題を生じるおそれは低いが、通常は、サーキュラーダイCDの近傍においては、膨張速度が高いために発泡体FBに弛み部FEが形成される。
すなわち、サーキュラーダイCDとマンドレルMDとの間の発泡体FBは、サーキュラーダイCDの開口を上底とし、該サーキュラーダイCDに向けたマンドレルMDの端面を下底とした円錐台形状を想定するとロール92による引取り力が作用している箇所FT(以下「張力部FT」ともいう)は、前記円錐台形状の側面の傾斜に沿う形でサーキュラーダイCDからマンドレルMDの間を移動することになるが、前記弛み部FEは、その傾斜よりも内側を通ってサーキュラーダイCDからマンドレルMDの間を移動する。
しかもこのような場合には、通常、この発泡体FBには複数の弛み部FEが形成され、サーキュラーダイCD付近は、周方向に弛み部FEと張力部FTとが交互に形成された状態となる。
【0078】
なお、体積の膨張は、通常、サーキュラーダイCDから僅かに離れた箇所で収束してしまうため、マンドレルMDに近い箇所においては、拡径の進行によって弛み部FEに周方向の張力が加えられるため、通常、“弛み”は観察されない。
しかし、この間、弛み部FEが解消されるまでの間に、弛み部FEと張力部FTとに加えられる延伸や、冷却風の当たり方(冷却条件)の違いによってシート厚みや、密度などにおいて違いが生じ、マンドレルMDを通過した後の樹脂発泡シートに、前記弛み部FEと前記張力部FTとの存在を原因とする縞模様(縞立ち)が形成される。
【0079】
本実施形態において発泡層の形成材料に占めるHMS−PPの含有量を先述のごとく所定の範囲に制限することで発泡挙動をマイルドにさせることができ、サーキュラーダイCDから押し出された後の体積膨張を緩やかなものとさせ得る。
したがって、大きな弛みが発泡体FBに発生し難く、発泡体FBに加わる延伸が全体に略均一に作用され、冷却条件も略均一化されるため“縞立ち”が抑制されることとなる。
なお、HMS−PPの含有量が下限値未満となると、良好なる発泡状態とすることが難しくなることについては、先に示した通りである。
【0080】
なお、引き取り速度(樹脂発泡シートが単位時間当たりにロール92に巻き取られる長さ)を早めることによって発泡体FBが拡径されるスピードを向上させることができるため、このことでも“縞立ち”の抑制を図ることが有る程度は可能であるが、前記体積膨張は、瞬時に生じることからポリプロピレン系樹脂組成物におけるHMS−PPの含有量を調整することに比べて、“縞立ち”の抑制効果は小さなものである。
また、引き取り速度を上げ過ぎると、発泡体FBに大きな張力を発生させることにもなるため、ポリプロピレン系樹脂組成物におけるHMS−PPの含有量によって“縞立ち”の抑制を図る方が簡便な方法であるとも言える。
なお、この引き取り速度は、作製する発泡シートの種類や厚みなどにもよるが、通常、2m/分以上10m/分以下とされる。
【0081】
また、同様に、サーキュラーダイCDの口径(d1:吐出口の内側円と外側円との間の中間円の直径)とマンドレルMDの外形(d2)との比率(d2/d1)を大きなものとすることで、周方向への延伸を増大させることでも“縞立ち”の抑制を図ることが有る程度は可能であるが、このような場合における効果もHMS−PPの含有量を調整する場合において得られる効果に比べて小さなものである。
通常、この比率(d2/d1)は、1.9以上3.2以下とされる。
なお、サーキュラーダイCDのスリットクリアランス(円環状の吐出口の幅)については、通常、0.3mm以上1.5mm以下の範囲内から選択される。
【0082】
さらには、発泡剤を調整することで、体積膨張の挙動をある程度は制御することができるものの発泡剤の含有量を過度に減量すると当然ながら発泡シートが良好なる発泡状態を示さなくなるおそれを有する。
このような観点からも、HMS−PPの含有量によって“縞立ち”の抑制を図る方法は簡便な方法であるとも言える。
なお、発泡剤は、例えば、ブタン(n−ブタン、i−ブタン、あるいは、これらの混合液)を用いるような場合であれば、通常、ポリマー成分100質量部に対する割合が、1質量部以上、6質量部以下とされる。
【0083】
このようにして作製される発泡シートは、厚みや発泡状態も均質なものとなり、その物性が均質化されているためシート成形法などによって成形加工する際に、局所的な伸びが発生して、成形品に“外観不良”や“裂け”が生じるおそれが低い。
すなわち、成形品の歩留まり向上に有用なものである。
【0084】
なお、“縞立ち”によって厚みに変化があると、成形型に最初に接触する厚みの厚い部分においてブリードアウトされている帯電防止剤が、成形型との接触によって周囲に移動され易くなる。
しかも、シート成形法においては、樹脂発泡シートが加熱状態にされているため、帯電防止剤の移動性も高められているため、“縞立ち”によって厚みに変化があると、成形品の表面に帯電防止剤が濃化された箇所と、帯電防止性が失われてしまっている箇所とを形成させるおそれを有する。
すなわち、表面を成形型に接触させてシート成形法によって成形品を作製する場合に、上記のように発泡層のHMS−PPの量が制限された発泡シートは、特に好適に用いられ得るものであるといえる。
【0085】
また、本実施形態に係る発泡シートは、発泡層の形成材料にエチレン−α−オレフィン共重合体と非イオン性帯電防止剤とが含有されているために発泡シートの引取りによる張力や、発泡層の発泡やマンドレルMDによる延伸によって、表面層が、一部途切れて下地となる発泡層が露出されたとしても、前記エチレン−α−オレフィン共重合体を含有させた作用によって非イオン性帯電防止剤がいち早くブリードアウトすることとなる。
そのため、第一の表面層11や第二の表面層12のいずれかに途切れが生じたりして、発泡シート1の表面に発泡層20が露出するような箇所が形成されたとしても、その箇所に、いち早く非イオン性帯電防止剤がブリードアウトして表面抵抗率を低下させる作用を発揮する。
【0086】
また、本実施形態にかかる発泡シートは、その体積抵抗率に対して与える影響が大きい発泡層20の部分の体積抵抗率も、前記非イオン性帯電防止剤の気泡膜上へのブリードアウトによって低減されることになり、発泡シート全体での体積抵抗率を、例えば、1×1010Ω・cm以上、1×1013Ω・cm以下の範囲の内のいずれかの値とすることができる。
したがって、発泡層の形成材料に非イオン性帯電防止剤が用いられていない従来の積層タイプの発泡シートに比べて、前記表面層の導電性を低下させても従来のものと同様の帯電防止性能を付与させることができ、含有させるカーボンブラックなどの導電性成分の量の低減を図ることもできる。
このことによって、表面層11、12の押出しにおける溶融樹脂の伸びが良好となり、発泡シートの延伸等に対する追従性も向上される。
すなわち、本実施形態においては、発泡層20の形成に用いるポリプロピレン系樹脂組成物に非イオン性帯電防止剤が含有されることによって表面層の伸展性を向上させることができ発泡層20が発泡シート1の表面に露出すること自体を抑制させ得る。
しかも、仮に、発泡層20が表面露出されるような事態が生じても、非イオン性帯電防止剤の移行による補修効果が発揮され表面抵抗率が不意に増大されてしまうおそれを抑制させ得る。
【0087】
加えて、カーボンブラックなどの使用を抑制させ得ることから発泡シートの表面をより滑らかな状態にさせ得る。
このことから発泡シートによって形成される成形品の美観の向上を図ることができるのみならず、表面層11、12の表面滑性を向上させることによって形成された後の発泡シート1の表面や成形品の表面に傷が形成されることも抑制されうる。
したがって、このような傷による表面層の剥がれが抑制され、表面抵抗率の増大箇所が形成されることが防止されることとなる。
【0088】
なお、発泡層20が露出されるような場合においては、通常、発泡シートの表面に露出される割合が極端に大きなものにはならないことから、この露出部分のみを測定した表面抵抗値率の値が、表面層11、12と同じ程度の値となるように非イオン性帯電防止剤をブリードアウトさせる必要性はない。
すなわち、発泡層20をそれ単独で表面抵抗値率を測定した場合に、その値が、1×104Ω/□以上、1×108Ω/□以下の範囲内となっている必要性は低く、通常、1×1013Ω/□以下の表面抵抗率を有していれば、発泡シート全体として帯電防止性能の上で問題となるおそれは低い。
【0089】
なお、得られる発泡シートの表面抵抗率の値は、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法に準拠して求めることができる。
具体的には、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料に約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、下記式(1)により算出することができる。
このとき用いる試料のサイズとしては、通常、一辺が10cmの平面正方形状(厚みは、10mm以下)のものを用いることができる。

ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs ・・・(1)

ただし、
ρs:表面抵抗率(MΩ)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(MΩ)
【0090】
また、得られたシートの体積抵抗率の値は、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法に準拠して求めることができる。
具体的には、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料に約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、下記式(2)により算出することができる。
このとき用いる試料のサイズとしては、通常、一辺が10cmの平面正方形状(厚みは、10mm以下)のものを用いることができる。

ρv=πd2/(4t)×Rv ・・・(2)

ただし、
ρv:体積抵抗率(MΩ・cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
t:試料の厚み(cm)
Rv:表面抵抗(MΩ・cm)
【0091】
なお、このような発泡シートは、真空成形や真空圧空成形などといった一般的なシート成形法を採用することによって、簡便に、所望の容器形状に成形加工することができる。
例えば、発泡トレーなどを成形加工させるべく金型での絞り加工を加えた場合においては、底板部と側壁部との境界部などにおいて特に表面層が伸ばされやすい状態となって内部の発泡層が露出されるおそれがある。
しかし、そのような場合でも、当該露出箇所に迅速に非イオン性帯電防止剤がブリードアウトして表面抵抗率の増大を抑制させることとなる。
したがって、発泡樹脂容器として、この発泡シートを素材に用いたシート成形で発泡トレーなどを作製させた場合には、発泡シートの電気特性がそのまま発泡トレーに反映されることとなり、この発泡トレーの底板部や側壁部の表面抵抗率を1×104Ω/□以上、1×108Ω/□以下とすることができる。
また、発泡層の気泡膜表面への非イオン性帯電防止剤のブリードアウトによって、体積抵抗率も従来の発泡シートに比べて低減されることとなる。
例えば、発泡トレーなどの発泡樹脂容器の体積抵抗率を1×1010Ω・cm以上、1×1013Ω・cm以下の範囲の内のいずれかの値とさせ得る。
【0092】
この発泡トレーを半導体素子の収容・搬送容器として用いた場合には、発泡トレーが適度な電気抵抗を有する状態に形成されていることで発泡トレーに静電気が蓄積されることが防止されるとともに、静電気が蓄積された他の容器などからこの発泡トレーに放電がなされたとしても、内部に収容されている半導体素子に大きなダメージが加えられることを抑制させ得る。
しかも、カーボンブラックなどを高充填することによって粉塵を発生させてしまうおそれも低く、半導体素子を清浄な状態で収容させうる。
【0093】
また、容器全体が当該発泡シートによって形成されておらず、半導体素子を収容するための容器の一部のみを構成する場合、例えば、半導体素子どうしを仕切る間仕切り板などの一部の部材として発泡シートを容器に用いる場合などでも、半導体素子に接する用途において付着物などによる汚損や電気的ダメージを防ぐ効果が発揮されるという点においては同様である。
【0094】
上記実施形態においては、発泡層を介してその両側に非発泡層を前記発泡層に接するように配した3層構造の発泡シートを例示しているが、例えば、非イオン性帯電防止剤とエチレン−α−オレフィン共重合体とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物によって形成された発泡層の片面側には、例えば、別の発泡層を介して表面層を形成させる4層以上の構造を有する場合や、前記発泡層と表面層との2層構造の発泡シートも本発明の意図する範囲である。
また、本実施形態においては、表面層を非発泡層としているが、表面層を非発泡層に限定するものではなく、表面層が導電性成分を含んだ樹脂組成物によって発泡状態に形成されている場合も本発明の意図する範囲である。
すなわち、表面層の内側の発泡層が非イオン性帯電防止剤とエチレン−α−オレフィン共重合体とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されていれば、この発泡層が、発泡シートの表面に露出する状態になった場合において、発泡シートの表面抵抗率が増大することを抑制させるべく機能する点においては、表面層の発泡状態に関わらず同じである。
【0095】
また、本実施形態においては、発泡シートの製造を手軽に実施させ得る点、表面層と発泡層との間に良好なる接着状態を形成させやすい点、ならびに、工程上表面層に延伸やせん断が生じやすく、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る点などにおいて、発泡層と表面層とを共押出しする場合を例示しているが、表面層と発泡層とを別々にシート化した後にホットラミネートして形成された発泡シートも本発明が意図する範囲のものである。
【0096】
また、ここでは詳述しないが、発泡シートや発泡樹脂容器について従来公知の技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において本発明に採用することができる。
【実施例】
【0097】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
発泡シートの作製には、図2に示すような装置構成と同種の設備を用いた。
すなわち、第1押し出し機70より発泡性樹脂組成物が流入される樹脂流路W1の上流側及び下流側の二箇所において第2押し出し機80より分岐管Dを介して非発泡性樹脂組成物が流入されるように、第1、第2押し出し機を合流金型XHに接続させ、該合流金型XHの下流側にサーキュラーダイCDを接続して共押し出しを実施した。
【0099】
まず、第1押し出し機として、口径が90mmの単軸押し出し機(上流側押し出し機)と、該単軸押し出し機に接続された口径が115mmの単軸押し出し機(下流側押し出し機)とからなるタンデム型押し出し機を用意した。
発泡層用のポリプロピレン系樹脂として、Borealis社製の商品名「WB135」(メルトテンション19cN、メルトフローレート1.7g/10分、平衡コンプライアンス:3.12×10-3Pa-1)25質量%、ブロックPPとして日本ポリプロ社製の商品名「BC6C」を69質量%、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)として商品名「Q−100F」を6質量%の割合で含むポリマー成分と、該ポリマー成分100質量部対する割合が、0.2質量部となる重曹−クエン酸系発泡剤(大日精化社製マスターバッチ、商品名「ファインセルマスターPO410K」)と、4.0質量部となる非イオン性帯電防止剤(大日精化社製、商品名「エレコン SS PP220S」)と、10.0質量部となるエチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン社製、商品名「KS240T」)が添加された混合物を作製し、この混合物を上流側の口径が90mmの単軸押し出し機一段目のホッパーに供給し、200℃で加熱溶融した後、この溶融樹脂100質量部に対する割合が、3質量部となるようにガス成分であるブタン(イソブタン/ノルマルブタン=35/65wt%)を圧入し、混練した。
この発泡性樹脂組成物を、接続管を通して下流側の押し出し機に供給し、発泡性樹脂組成物の温度を170℃にまで下げ、100kg/時間の吐出量で押し出し機先端に接続された合流金型に供給した。
【0100】
一方で、第2押し出し機として口径60mmの単軸押し出し機を用意し、表面層となる非発泡層形成用の導電樹脂層として大日精化工業社製のカーボンブラックのマスターペレットのみ(100質量%)を、前記第2押し出し機に供給して、200℃で加熱溶融した後、押し出し機の先端部に設けられた単管にて190℃に維持した。
【0101】
ついで、この溶融状態の非発泡性樹脂組成物を、分岐流路を有する分配管で二分した後、合流金型の管体とスリットから、それぞれの合計が15kg/時間となる量で吐出させ、発泡性樹脂組成物の内層側と外層側に積層合流させた後、合流金型先端に接続されたサーキュラーダイ(口径110mm、スリット間隙0.95mm)から115kg/時間となる樹脂吐出量で円筒状に共押し出しさせることによって発泡層を介してその内外両側に非発泡層が積層された発泡シートを形成させた。
この発泡シートは、さらに冷却されている直径200mmのマンドレル上に添わせて拡径させるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却し、該マンドレル上の一点でカッターにより切開して平板状とした。
【0102】
得られた発泡シートに対して、表面層を削除する処理を施した後、JIS K 6911において、規定されている条件下(温度:20±2℃、相対湿度:65±5%)で24時間保持した後の表面抵抗率を測定した。
結果は、2.0×1012Ω/□の表面抵抗率の値が観測された。
【0103】
なお、発泡層の形成に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物におけるベースポリマーとなる上記「WB135」の「メルトフローレート」、「メルトテンション」、「平衡コンプライアンス」については、次のようにして得られた値である。
【0104】
(メルトフローレート)
「メルトフローレート」は、JIS K 7210(1999)A法に基づいて、同JISのM条件(温度:230℃、公称荷重:2.16kg)にて測定した。
【0105】
(メルトテンション)
“メルトテンション”については、垂直方向に配された内径15mmのシリンダー内に試料となるポリプロピレン系樹脂を収容させて、230℃の温度で5分間加熱して溶融させた後に、シリンダーの上部からピストンを挿入して、該ピストンで押出し速度が0.0773mm/s(一定)となるようにしてシリンダーの下端に設けたキャピラリー(ダイ径:2.095mm、ダイ長さ:8mm、流入角度:90度(コニカル))から溶融樹脂を紐状に押し出させ、この紐状物を、上記キャピラリーの下方に配置した張力検出プーリーに通過させた後、巻き取りロールを用いて巻き取らせた際の最大張力を測定することによって求めた。
具体的には、巻取り初めの初速を4mm/sとし、その後の加速を12mm/s2として徐々に巻取り速度を速め、張力検出プーリーによって観察される張力が急激に低下した時の巻取り速度を“破断点速度”として決定し、この“破断点速度”が観察されるまでの最大張力を“メルトテンション”として測定した。
【0106】
(平衡コンプライアンス)
ポリプロピレン系樹脂から熱プレスにより、厚み2mm、直径25mmの試験片を作成後、測定装置としてREOLOGICA社製STRESS RHEOMETER DAR−100を使用し、装置に付随の二枚の平行円板の間に試験片を挟み、温度210℃で樹脂を溶融した後、平行円板間のクリアランスを1.4mmに調整して、円板からはみでた樹脂を取り除き、応力を100Pa一定値に保たれるように片方の円板を回転させ、300秒間歪み量を計測する。
その結果から、時間に対してクリープコンプライアンスをプロットするとある時間経過した時点で、クリープコンプライアンスと時間の関係は直線関係を示すようになる。
その直線の切片を「平衡コンプライアンス」として規定した。
【0107】
(実施例2)
発泡層用のポリプロピレン系樹脂として、Borealis社製の商品名「WB135」(メルトテンション19cN、メルトフローレート1.7g/10分、平衡コンプライアンス:3.12×10-3Pa-1)を50質量%、ブロックPPとして日本ポリプロ社製の商品名「BC6C」を44質量%とした以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに対して、表面層を削除する処理を施した後、JIS K 6911において、規定されている条件下(温度:20±2℃、相対湿度:65±5%)で24時間保持した後の表面抵抗率を測定した。
結果は、1.5×1012Ω/□の表面抵抗率の値が観測された。
【0108】
(比較例1)
発泡層を形成させる材料に、エチレン−α−オレフィン共重合体(「KS240T」)を含有させなかったこと以外、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
得られた発泡シートに対して、実施例1と同様に表面層を削除する処理を施した後、JIS K 6911において、規定されている条件下で24時間保持した後の表面抵抗率を測定した結果は、4.0×1015Ω/□であった。
【0109】
この実施例と比較例1との結果の違いからも、本発明によれば、発泡シートにおける表面抵抗率の部分的な増大を抑制し、発泡樹脂容器の帯電防止性能が損なわれることを抑制させ得ることがわかる。
また、実施例1、2の発泡シートは、いずれも、縞立ちなどが見られず良好なる外観を呈するものであった。
【符号の説明】
【0110】
1:発泡シート、11、12:表面層、20:発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物によってシート状に形成されており、シート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有し、前記発泡層がポリプロピレン系樹脂成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されており、シート表面における帯電を防止し得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シートであって、
前記発泡層の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方と非イオン性帯電防止剤とが含有されていることを特徴とする発泡シート。
【請求項2】
前記低密度ポリエチレン、前記エチレン−α−オレフィン共重合体が含有されている量の合計が前記ポリプロピレン系樹脂成分100質量部に対して5質量部以上35質量部以下であり、且つ、前記ポリプロピレン系樹脂成分100質量部に対する前記非イオン性帯電防止剤の割合が0.2質量部以上5質量部以下であり、しかも、前記ポリプロピレン系樹脂成分にはメルトフローレート:2.2g/10分以上10g/10分以下、メルトテンション:10cN以上、平衡コンプライアンス:2.0×10-3Pa-1以上の特性を有するポリプロピレン系樹脂が含有されている請求項1記載の発泡シート。
【請求項3】
前記発泡層と前記表面層とが共押し出しされて形成されたものである請求項1又は2記載の発泡シート。
【請求項4】
樹脂組成物によってシート状に形成されシート表面を形成する表面層と該表面層に接する発泡層とを含む積層構造を有する発泡シートが用いられており、しかも、前記発泡層がポリプロピレン系樹脂成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物によって形成され、シート表面における帯電を防止し得るように前記表面層が導電性成分を含有する樹脂組成物によって形成されている発泡シートが用いられており、該発泡シートが前記表面層を露出させた状態で用いられてなる発泡樹脂容器であって、
前記発泡層の形成に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも一方と非イオン性帯電防止剤とが含有されていることを特徴とする発泡樹脂容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178957(P2011−178957A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46793(P2010−46793)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】