説明

発泡性が低減された床クリーニング用組成物

本発明は、a)一般式(I):R1−(OC24k−OH (I)(ここで、R1は1〜10個の原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、kは1〜10である)により表される第1の非イオン界面活性剤、b)一般式(II):R2−(OC24m−(OC48n−OH (II)(ここで、R2は5〜20個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、nは1〜15であり、mは1〜15である)により表される第2の非イオン界面活性剤、c)アニオン界面活性剤、d)3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンを含む消泡剤、を含む床クリーニング用濃縮組成物に関する。本発明は、さらに、使用溶液、および表面のクリーニング方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床クリーニング用濃縮組成物、当該床クリーニング用濃縮組成物を含む使用溶液、および床のクリーニング方法に関する。
【0002】
本発明に係る組成物は、硬い表面、好ましくは床を機械クリーニングするのに特に適する。
【背景技術】
【0003】
床クリーニング、特に業務用建物の床クリーニングのほとんどは自動クリーニング機を使用することにより行われる。これらの自動クリーニング機を使用すると、業務用建物の大面積の床を短時間のうちに非常に経済的にクリーニングすることが可能である。産業用クリーニング機はスクラブ吸引機である。産業用クリーニング機は、床をこすり洗いする1つまたは幾つかの回転ディスクを含む。また、ブラシ回転機も知られている。これらのクリーニング機の助けを借りて、クリーニング液を床に接触させる。床を擦ることにより機械的にクリーニングし、その後、クリーニング剤を床から吸引してクリーニング機に戻す。
【0004】
建物の種類および建物の用途に依存して異なる幾種類かの汚れおよび染みが床に存在しうるために、床のクリーニングは複雑な作業である。さらに、床および床の表面の種類は、例えば天然石、リノリウム、PVC、タイルなどとかなり異なることがある。また、床の表面がかなり異なることもある。例えば、床の表面は非常に粗い表面であるか、または滑らかな表面であることができる。良好なクリーニング剤は、これら全ての異なる表面に対して、異なる汚れで、良好なクリーニング結果をもたらさなくてはならない。従って、良好なクリーニング剤は、幾つかの複雑な要件を満たさなければならない。
【0005】
この要件を満たすために、クリーニング剤はさらなる特性を有するべきである。クリーニング剤は、表面に対する良好な濡れ特性(wetting properties)と短い反応時間を有する必要がある。濡れ性(wetting ability)は重要であり、濡れ性がなければ、クリーニング剤が床上に均一に分配されず、クリーニング剤は有効に作用することができない。
【0006】
床用クリーニング剤に対するさらなる重要な要件は、クリーニング剤が良好の発泡挙動を示す必要があるということである。自動クリーニング機の作動中にクリーニング剤が過度に発泡すると、クリーニング機が詰まってしまい、クリーニングが中断する。
【0007】
床用クリーニング剤についてのさらなる要件は、クリーニング結果が満足のいくものとなるようにクリーニング剤が良好なクリーニングおよび乳化能力を有する必要があるということである。
【0008】
床用クリーニング剤は、良好な残留挙動を示す必要がある。これは、クリーニングされた床を乾燥させた後に、クリーニングされた床の光沢のある外観を妨げる目に見えるスポットやリングがその床にないことを意味する。
【0009】
当該技術分野では、幾つかの床用クリーニング剤が既に記載されている。米国特許第5,858,956号明細書には、アニオン界面活性剤、エトキシル化非イオン界面活性剤およびエトキシル化/ブトキシル化非イオン界面活性剤を含む汎用液体クリーニング組成物が記載されている。消泡剤として、脂肪酸または脂肪酸石鹸が使用される。しかしながら、この組成物は高い発泡挙動を依然として示すために、この組成物には床用自動クリーニング機で使用できないという欠点がある。
【0010】
米国特許第6,323,170号明細書には、艶出し応答性の改善をもたらす床用クリーニング剤が記載されている。この床用クリーニング剤組成物は、非イオン界面活性剤としてアミンオキシドと、消泡剤として線状ポリジメチルシロキサンを含む。この文献に記載されているクリーニング剤は、排水の点で環境問題を引き起こし、さらに、高いpH値のためにリノリウム床を侵食する傾向があるために重大な問題があるアミンオキシドを含むという欠点がある。
【0011】
欧州特許出願公開第0 916 717号明細書には、エトキシル化およびプロポキシル化物であるC18−C22脂肪アルコールから成る群から選ばれる非イオン界面活性剤を含む水性の床クリーニング剤が記載されている。アニオン界面活性剤の高い発泡傾向のために、このクリーニング組成物はアニオン界面活性剤を含まない。かかる組成物の欠点は、非イオン界面活性剤を用いるだけなので、十分なクリーニング結果を得ること、特に、除去するのがより困難な汚れが床にある場合に十分なクリーニング結果を得ることは非常に困難である。さらに、非イオン界面活性剤は、特定の床、例えば研磨されていないまたは封止されていない天然石床またはセラミック床の粗い表面構造では十分に作用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,858,956号明細書
【特許文献2】米国特許第6,323,170号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 916 717号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の技術的目的は、良好な発泡挙動、良好な濡れ特性、良好なクリーニング結果および良好な環境挙動を示し、かつ、床用自動クリーニング機で使用できる床用の新規なクリーニング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この技術的目的は、
a)一般式(I):
1−(OC24k−OH (I)
(ここで、R1は1〜10個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、kは1〜10、好ましくは4〜9、最も好ましくは6〜8である)
により表される第1の非イオン界面活性剤、
b)一般式(II):
2−(OC24m−(OC48n−OH (II)
(ここで、R2は5〜20個、好ましくは8〜14個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、nは1〜15、好ましくは5〜10、最も好ましくは7〜10であり、mは1〜15、好ましくは5〜10、より好ましくは7〜10である)
により表される第2の非イオン界面活性剤、
c)アニオン界面活性剤、および
d)3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンを含む消泡剤、
を含む床クリーニング用濃縮組成物により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、標準偏差とともに、4つの生成物のクリーニング性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい一実施態様において、上記の床クリーニング用濃縮物は、当該濃縮物の総量を基準にして、1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%の第1の非イオン界面活性剤と、0.5〜15質量%、好ましくは3〜8質量%の第2の非イオン界面活性剤と、1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%のアニオン界面活性剤と、0.01〜1.5質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%の消泡剤を含む。
【0017】
2種の非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤を含む特定の界面活性剤系と特定のポリシロキサン消泡剤との組み合わせが、必要な要件を満たし、かつ、自動クリーニング機において使用できる床用クリーニング濃縮物をもたらすことが驚くべきことに見出された。
【0018】
本発明の組成物は、良好な濡れ特性、良好な乳化性およびクリーニング結果、良好な発泡挙動を示し、そして、クリーニング後に、クリーニングされた床の上には目に見える残留物を残さない。
【0019】
本発明の組成物は、さらに、あらゆる種類の床材料のクリーニングに適し、リノリウムやある種の天然石のような敏感な材料のクリーニングであっても、床材料を痛めずに行うことが可能である。
【0020】
本発明の組成物を使用した場合には、あらゆる種類の汚れ、粒子状汚れ、グリース汚れ、塵埃などが満足のいくやり方でクリーニングされることも見出された。
【0021】
床クリーニング用組成物における発泡調節剤としてのシリコーンオイルの使用は基本的に公知である。床用クリーニング組成物において使用される典型的な泡調節剤は、例えば、シリコーンオイルとシリカの混合物であることができ、シリカ粒子は好ましくはシラン化されている。通常使用されるシリコーンオイルは、線状ポリシロキサン化合物である。当該技術分野でも使用されている他の泡調節剤は、パラフィン類、炭化水素類、飽和脂肪酸または石鹸類、リン酸モノエステルまたはジアルキルエステルのアルカリ金属塩である。
【0022】
側鎖に有機官能基を有する有機変性ポリエーテルシロキサンである消泡剤も公知である。かかる化合物は、例えばGE Siliconesから、例えばY-14765で入手可能である。これらの種類の通常のポリシロキサン消泡剤は床用のクリーニング組成物において必要な消泡特性を与えないために、問題および妨害なしに自動クリーニング機により組成物を使用できることが驚くべきことに見出された。
【0023】
これとは対照的に、3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンはこれらの消泡要件を満たす。かかる3次元的ポリシロキサンは、通常、架橋シロキサン滴を含むエマルションの形態にあり、架橋シロキサン滴は好ましくは有機官能基により変性されている。さらに、ポリシロキサン化合物はポリオキシアルキレン化合物を含む。3次元構造を有するかかる部分架橋ポリシロキサンは、例えば、Munzing ChemieからFOAM BAN(登録商標)の商品名で入手可能である。本発明の組成物において、好ましくはFOAM BAN HV820Gおよび/またはFOAM BAN CL-100Eが使用される。
【0024】
本発明の組成物としては、3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンを除く、他のポリシロキサン化合物またはシロキサンオイルを含まないものがさらに好ましい。好ましい一実施態様において、ポリシロキサン化合物は分散体またはエマルションの形態で使用される。
【0025】
さらに好ましい実施態様において、ポリシロキサンは有機官能基を有する。これらの有機官能基は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。好ましくは、これらの有機官能基は、C1−C20アルキル基、C1−C20アルケニル基、C1−C20アルコキシ基、C4−C20アリールまたはC4−C20アラルキル基からなる群から選ばれる。さらに、炭化水素基は置換されていてもよい。
【0026】
炭化水素基の例は、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、ネオヘキシル、n−ヘプチル、ノルボニル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシル基である。これらの基の置換基は、例えば、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、グリシジルオキシプロピル基、ポリアルキレングリコールプロピル基、アミノプロピル基またはアミノエチルアミノプロピル基であることができる。例えば、ビニル、メタクリロイルオキシプロピル基もしくはアリル基のような不飽和基、または芳香族基、例えばフェニル基、2−フェニル−エチル基もしくは2−フェニル−プロピル基なども可能である。
【0027】
さらなる実施態様において、消泡組成物は、さらに充填剤粒子を含むことができる。充填剤粒子は、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、Al23またはこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0028】
本発明の組成物は、3次元構造を持たず、かつ、膜適合性でない他のポリシロキサンオイルおよびポリシロキサン樹脂を実質的に含まないことが好ましい。本発明の組成物は、線状ポリジメチルシロキサン(シリコンオイル)を実質的に含まないことが最も好ましい。
【0029】
「実質的に含まない」という表現は、上記組成物が、当該組成物の全量を基準にして0.001質量%未満、好ましくは0.0001質量%未満、最も好ましくは0質量%である量で上記化合物を含むことを意味する。最も好ましくは、「実質的に含まない」という表現は、関連化合物が上記組成物中に全く存在しないことを意味する。
【0030】
本発明の消泡組成物において、架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンとしては、3次元構造を有するものが使用される。
【0031】
これらのポリシロキサンは架橋または部分的に架橋されたものである。架橋または部分的に架橋されたとは、ポリシロキサンが3または4官能性シロキサン単位により3次元網目構造に連結された鎖または環を形成している分子の基を含むことを意味する。これとは対照的に、「3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサン」という表現は、ポリジメチルシロキサンのような線状ポリシロキサン、2次元構造のみを有する分岐ポリシロキサン、および2次元構造のみを有する環状ポリシロキサンを含まない。
【0032】
さらに、本発明に係る3次元構造を有する架橋されたポリシロキサンは、好ましくは流体であり、そのため、高度に架橋されたポリマー網目構造であり、かつ、室温で固体であるシリコーン樹脂とは区別される。
【0033】
従って、消泡剤に使用される3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンは室温(20℃)で流体であることが好ましい。
【0034】
好ましい一実施態様において、床クリーニング用濃縮組成物は、0.01〜2.5質量%、好ましくは0.1〜1質量%のC8−C22、好ましくはC8−C14脂肪酸または脂肪酸石鹸を含む。かかる脂肪酸の例は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸などである。
【0035】
本発明に係る組成物は、さらにアニオン界面活性剤を含む。アニオン界面活性剤としては、C8−C18アルキルサルフェート、C8−C18アルキルエーテルサルフェート、C8−C18アルキルスルホネート、C8−C18−α−オレフィンスルホネート、スルホン化C8−C18脂肪酸、C8−C18アルキルベンゼンスルホネート、スルホコハク酸モノ−およびジ−C1−C12アルキルエステル、C8−C18アルキルポリグリコールエーテルカルボキシレート、C8−C18−N−アシルタウリド、C8−C18−N−サルコシネート、C8−C18−アルキルイセチオネートおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるアニオン界面活性剤が好ましい。
【0036】
本発明に係る組成物はさらなる界面活性剤を含むことがさらに好ましい。これは、一般式(III):
3−(OC24o−(OC36p−OH (III)
(ここで、R3は5〜20個、好ましくは8〜14個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、oは1〜15、好ましくは5〜10、最も好ましくは7〜10であり、pは1〜15、好ましくは5〜10、最も好ましくは7〜10である)
により表される第3の非イオン界面活性剤であることができる。
【0037】
他の界面活性剤、例えば、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、タンパク質加水分解物、シリコーン化合物、リン酸エステルおよびそれらの塩が存在してもよい。一般式(III)により表される第3の非イオン界面活性剤は、濃縮組成物の総量を基準にして1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%の量で当該組成物中に存在する。
【0038】
脂肪アルコールとグルコースまたはポリグルコースとの縮合により工業的スケールで通常得ることが可能で、様々な変形物で市販されているアルキルポリグルコシドを、本発明に係る剤においてさらなる非イオン界面活性剤として使用できる。本発明に従って使用するのに特に好適なアルキルポリグルコシドの例は、Henkelの製品Glukopon(登録商標)600およびRohm & Haasの製品Triton(登録商標)BG10である。
【0039】
さらに、式IおよびIIで定義した化合物に当てはまらない他のアルコキシル化アルキルアルコールを本発明に係る剤に非イオン界面活性剤として含めることもできる。
【0040】
本発明に係る剤に含めることが好ましいさらなる界面活性剤化合物は、リン酸エステルの部類に属するものであり、好ましくはリン酸部分エステルの少なくとも1種の塩を含み、特に好ましい態様では、アルコキシル化アルキルフェノールのリン酸部分エステルの少なくとも1種のアルカリ塩が存在する。
【0041】
上記のリン酸エステルは、長鎖脂肪族またはアリール脂肪族アルコールから好ましくは誘導される界面活性物質である。リン酸部分エステルの塩、および、特に本件では、アルコキシル化アルキルフェノールのリン酸部分エステルの塩が特に適することが見出された。好ましくは、アルカリ塩としてナトリウムおよびカリウム塩が使用され、これらの中で、カリウム塩が特に好ましい。本発明に従う好ましい界面活性リン酸部分エステルは市販されている。本発明に従う特に有用なこのタイプの界面活性物質の一例は、製品Triton(登録商標)H 66(Rohm & Haas)である。
【0042】
本発明に係る剤は好ましくはポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを追加成分として含み、前記ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールは好ましくは100から2000までの分子量を有する。上記のポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールが剤の総量を基準にして0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%を構成する場合に特に有利であることが見出された。
【0043】
本発明のさらなる目的は、水中に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の本発明に係る組成物を含む使用溶液である。この使用溶液は、床の手動クリーニングまたは自動床クリーニング機による機械クリーニングのために直接使用される。この使用溶液は、表面および産業用部品の産業用クリーニングにも使用できる。
【0044】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る組成物を用意する工程、当該組成物を使用溶液として適用する工程を含み、使用溶液が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、最も好ましくは0.1〜5質量%の本発明に係る組成物を含む、床のクリーニング方法である。好ましい一実施態様において、この床クリーニング方法は、手動または機械クリーニングとして実施される。
【0045】
本発明の組成物は、例えば錯化剤、有機溶剤、さらなるアルカリ性付与のための添加剤、安定剤、香料、殺菌剤、腐食抑制剤、染料のような、床クリーニング組成物において通常使用されているさらなる添加剤を含んでもよい。
【0046】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定せずに例示することを意図するものである。
【実施例】
【0047】
1.自動スクラバークリーナー泡挙動
試験すべき生成物50mlを250ml計量シリンダーに入れ、栓で密閉する。この計量シリンダーを回転装置内に入れる。この回転装置を始動させ、シリンダーをその軸回りに200回転させる。この後、回転発生器は自動的に停止する。停止の直後並びに停止から1分後および5分後に、生成した泡の量をシリンダー上のml目盛りから読み取る。全泡溶液から最初に入れた生成物の50mlを差し引く。
【0048】
試験には、1つの生成物当たり少なくとも4つのシリンダーを使用する。各シリンダー内に生成した泡の量を記録し、各生成物の平均値と比較する。さらに、泡がいかに速く崩壊するかを比較しなければならない。
【0049】
泡の増加がより少ないほどおよび泡の崩壊がより速いほど、クリーナーの消泡性能が良好であり、この性能は、自動クリーニングのための自動スクラバークリーナーの1つの重要な特性である。
【0050】
下記表1に、以下の例で試験した様々な組成物の成分を示す。表中の全ての濃度は質量百分率で表されている。実施例1は本発明に係る組成物である。比較例2も本発明に係る組成物であるが、消泡剤を含まない。比較例3、4および5は、当該技術分野の技術水準に従うメンテナンスクリーナーである。比較例3および5を手動クリーニングに使用し、比較例4を自動クリーニングに使用した。表2に、泡試験の結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
実施例1における本発明に係る組成物の泡挙動は、当該技術分野の技術水準に従う組成物の泡挙動と比較して非常に良好である。さらに、泡が、当該技術分野の技術水準に従う組成物と比較して非常に短い時間で崩壊することは1つの利点である。1分後および5分後に、本発明に係る組成物では、泡が存在しないことが分かる。対照的に、比較例3および5における当該技術分野の技術水準に従うメンテナンスクリーナーは、1分後および5分後でも高い泡高さを示す。FOAM BAN HV820Gの代わりにFOAM BAN CL-100Eを消泡剤として使用した場合に同様な結果が得られた。
【0055】
従って、実施例1に示した本発明に係る濃縮物は、当該技術分野の技術水準の製品と比較して、良好な泡挙動を有する。その結果、実施例1に示した本発明に係る濃縮物は自動クリーニングにより好適である。
【0056】
2.乳化能:
震盪法に従って廃油を使用して、上記組成物の乳化能を求める。試験すべき希釈した生成物200mlを250mlシリンダーに入れ、2gの濾過した廃油を加える。シリンダーを栓で密閉する。このシリンダーを180度反転させることを20秒間以内で10回行う。この後、計量シリンダーを下に置き、油保持性能を経時的に求める。この評価は、シリンダーを下に置いた直後に行う。さらに、30秒後、60秒後および120秒後に評価を行う。結果は、以下のスキームで構成した:
1=非常に良好な乳化能、油滴は溶液中に均一に広がる。
2=良好な乳化能、油滴の一部が表面に分離。
3=平均的な乳化能、油滴の大部分が表面に分離し、溶液中に少量が残留。
4=不十分な乳化能、全ての粒子が表面に分離。
【0057】
さらに、等級1の試料を更に2分間観察し、乳化力が弱くなるまでの時間を計った。下記表3は、水中0.5質量%の濃度での結果を示す。
【0058】
【表4】

【0059】
表3は、実施例1並びに比較例3,4および5の乳化能を示す。この表から、実施例1の乳化能は120秒後でも非常に高いことが分かる。比較用組成物の乳化能は、比較例5を除いて悪かった。しかしながら、比較例5は、泡挙動において悪い結果を示した。FOAM BAN HV820Gの代わりにFOAM BAN CL-100Eを消泡剤として使用した場合に同様な結果が得られた。
【0060】
3.濡れ試験
試験すべき希釈した生成物800gをビーカーに入れる。ビーカーは1リットルの容積を有し、背の高い形を有する。綿パッドを金属製ラック内に入れてビーカー内にラックのアーム部がビーカーの縁上に残るように入れた。綿パッドが溶液に接触した時にストップウォッチを始動させて綿パッドがビーカーの底に落下し始めるまでの時間を計測した。時間を計測し、試験を少なくとも5回繰り返した。綿パッドがビーカーに落下するのが速いほど組成物の濡らす能力がより良好である。
濡れ試験の結果を表4に示す:
【0061】
【表5】

【0062】
表4は、水中の上記組成物の濃度が0.5質量%、1質量%および2質量%という異なる濃度で行った濡れ試験の結果を示す。本発明に係る実施例1は、0.5質量%という低い濃度でも非常に良好な濡れ性能(wetting performance)を有する。綿パッドは23秒後に底に落下し始めた。本発明の組成物と比較して、特に比較例3および4はかなり時間を要したため、より低い濡れ性能を有する。当該技術分野の技術水準のメンテナンスクレーナーを表す比較例5も良好な濡れ性能を有する。しかしながら、このクレーナーの泡挙動は非常に悪い。
【0063】
FOAM BAN HV820Gの代わりにFOAM BAN CL-100Eを消泡剤として使用した場合に同様な結果が得られた。
【0064】
4.湿潤摩耗スクラブ試験機(ガードナー)を使用するクリーニング能
試験すべきクリーニング液を、人工的に汚した白色PVC試験片上に注ぐ。スポンジを10回往復運動させる。その語、試験片の白色度を比色計により分析する。
【0065】
装置:
1.ガードナー湿潤摩耗スクラブ試験装置モデル494(DIN−ASTM−515);供給業者:Erichsen GmbH&Co. KG
2.ミノルタ比色計CR-200;供給業者:ミノルタ
3.スポンジプレス
4.白色PVCフィルムBenova 4812080,1.3m/50m/0.12mm;供給業者:Benecke-Kaliko AG
5.基材として硬質板紙ストリップ(寸法:40×554×1mm);供給業者:Kappa Verpackungswerk Neuss
6.Henkel製の感圧接着剤J 6251(酢酸エチルにより1:1で希釈)
7.硬質PVC製のテンプレート
8.ポリエステルスポンジ
9.フラットな剛毛を有し、幅が約55mmのフラットペイントブラシ、試験汚れを適用するのに用いた。
10.試験汚れを測定するための時計皿
11.標準試験汚れIPP 83/21、供給業者:wfk Krefeld
12.カーペットナイフ
13.実験用はかり、範囲:2000g、測定精度:0.01g
【0066】
試験ストリップの作製:
1.白色PVCフィルムを切るのに硬質PVC製のテンプレートを使用。
2.接着剤付きの7枚の板紙ストリップをPVCフィルムの粗い(!)面上に隣同士に密接させて並べて配置し、その結果、280×554cmの面積が得られた。板紙ストリップとPVC箔の間にふくれや折り目がないようにする。
3.板紙ストリップを一晩乾燥させる。
【0067】
メンテナンス方法のためのさらなる作製:
メンテナンス製品の目的は、表面に防汚フィルムを形成してその後のクリーニングをより容易にすることである。この目的のために、作製したストリップは、
a.使用濃度のメンテナンス溶液を用いて10回拭き、少なくとも30分間乾燥させるか、あるいは、
b.希釈されていないメンテナンス製品を用いて2回拭き、2〜3時間乾燥させる。
【0068】
試験用汚れの適用:
1.板紙ストリップ上に接着剤で貼り付けられたPVC箔の上にPVCテンプレートを配置する。
2.時計皿の上に2gの試験用汚れを載せる。
3.フラットブラシを用いてテンプレート内の試験用汚れを白色PVC箔上に適用する。次に、水平および垂直方向のストロークを行う。これを各方向で7回繰り返す。最後のコートは、こする動作に対して直角でなければならない。
4.汚れを1時間乾燥させる。
【0069】
クリーニング性能の決定(RV値):
必要量のポリエステルスポンジを水道水に一晩浸した。1つのストリップ当たり1つのスポンジを必要とした。
1.カーペットナイフを使用して縁(上部の汚れ)に沿って板紙ストリップとともにPVCフィルムを切断した。
2.湿潤摩耗スクラブ試験機(ガードナー)の上部のガイドレールの上に1つのスポンジを置く。
3.バケツからスポンジを取り出し、水を滴らせる。
4.スポンジプレスでスポンジを10秒間圧縮する。
ガードナー装置のホルダ内にスポンジを入れる。
重要:スポンジは400gの加重で表面にのしかかるべきである。
5.計量スプーンを用いて、クリーニング生成物を、汚れたストリップおよびスポンジの上に注ぐ。濃縮および希釈生成物の両方の場合に、25mlの総容積を使用する。
6.スポンジホルダの下にあるガイドレールを動かして、スポンジを汚れたストリップの上に配置する。
7.サイクルカウンターを10に設定し、ガードナー装置のスイッチをオンにする。
8.拭きサイクルを終えた後、スポンジを取り出し、廃棄する(再使用しない)。
9.試験ストリップを取り外し、流れている脱イオン水ですすぐ。同じ水圧が試験ストリップに当たるように、試験中、水を流したままにしておく。
10.試験ストリップを乾燥のために吊す。
11.1つの試験溶液当たり6つの汚れた試験ストリップをクリーニングする。
12.比較のために、水道水だけで6つのストリップをクリーニングする。
【0070】
白色度の測定(%RV):
1.提供された白色タイルを用いて装置を較正する。
2.6つのストリップについて、1つのストリップ当たり7つの異なる場所で反射率を測定する。結果の平均値はクリーニング性能の百分率を与える。
3.1つの大きく外れる結果は、計算から除外する。
【0071】
結果の評価:
試験生成物および可能な比較のための希釈物の場合に、全ての測定値について平均値を計算した:
【0072】
【数1】

【0073】
N=測定値の数(6×7=42)
x=1つの測定場所についての白色度
arithm=平均クリーニング性能
【0074】
標準偏差:
【0075】
【数2】

【0076】
対照:
測定値は、水質並びに温度および湿度などの実験室内の環境条件によって影響を受ける。従って、同じ日に得られた結果のみを比較する。
表5に結果を示す:
【0077】
【表6】

【0078】
試験において、0.5質量%、1質量%および2質量%の生成物濃度を水中で試験した。平均クリーニング性能を百分率で求め、また、標準偏差も計算した。表5から、本発明に係る実施例1における組成物は、当該技術分野の技術水準の比較例3,4および5のその他のメンテナンスクレーナーと比較して最も高いクリーニング性能を有する。この表は、比較にための水のクリーニング性能も明示している。
【0079】
図1は、標準偏差とともに、4つの生成物のクリーニング性能を示す。上記の表および図1から、本発明に係る組成物が最高のクリーニング性能を有することが分かる。FOAM BAN HV820Gの代わりにFOAM BAN CL-100Eを消泡剤として使用した場合に同様な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式(I):
1−(OC24k−OH (I)
(ここで、R1は1〜10個の原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、kは1〜10である)
により表される第1の非イオン界面活性剤、
b)一般式(II):
2−(OC24m−(OC48n−OH (II)
(ここで、R2は5〜20個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、nは1〜15であり、mは1〜15である)
により表される第2の非イオン界面活性剤、
c)アニオン界面活性剤、および
d)3次元構造を有する架橋または部分的に架橋されたポリシロキサンを含む消泡剤、
を含む床クリーニング用濃縮組成物。
【請求項2】
前記濃縮組成物の総量を基準にして、
1〜10質量%の第1の非イオン界面活性剤、
0.5〜15質量%の第2の非イオン界面活性剤、
1〜10質量%のアニオン界面活性剤、
0.01〜1.5質量%の消泡剤、および
を含む請求項1に記載の床クリーニング用濃縮組成物。
【請求項3】
前記濃縮組成物が0.01〜2.5質量%のC8−C22脂肪酸または脂肪酸石鹸をさらに含む請求項1または2に記載の床クリーニング用濃縮組成物。
【請求項4】
前記消泡剤がエマルションであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記消泡剤が有機官能基を有するポリシロキサンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機官能基が1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記炭化水素基が、C1−C20アルキル基、C1−C20アルケニル基、C1−C20アルコキシ基、C4−C20アリールまたはアラルキル基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が他のポリシロキサンオイルまたは3次元構造を持たないポリシロキサン樹脂を実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が線状ポリジメチルシロキサンを実質的に含まないことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アニオン界面活性剤が、C8−C18アルキルサルフェート、C8−C18アルキルエーテルサルフェート、C8−C18アルキルスルホネート、C8−C18−α−オレフィンスルホネート、スルホン化C8−C18脂肪酸、C8−C18アルキルベンゼンスルホネート、スルホコハク酸モノ−およびジ−C1−C12アルキルエステル、C8−C18アルキルポリグリコールエーテルカルボキシレート、C8−C18−N−アシルタウリド、C8−C18−N−サルコシネート、C8−C18−アルキルイセチオネートおよびこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
一般式(III):
3−(OC24o−(OC36p−OH (III)
(ここで、R3は5〜20個の炭素原子を有する非分岐のまたは分岐したアルキルまたはアルケニル基を表し、oは1〜15であり、pは1〜15である)
により表される第3の非イオン界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第3の非イオン界面活性剤が、前記濃縮組成物の総量を基準にして1〜10質量%の量で存在する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
さらなる成分としてポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールが100〜2000の分子量を有することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物がアミンオキシドを実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を0.001〜10質量%含む使用溶液。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物を用意する工程と、当該組成物を請求項16に従って使用する希釈使用溶液として床に適用する工程を含む、表面をクリーニングする方法。
【請求項18】
前記クリーニングが手動または機械クリーニングである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クリーニングが工業用クリーニングである請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
クリーニングされるべき表面が床または産業用部品である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−523773(P2010−523773A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502426(P2010−502426)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053642
【国際公開番号】WO2008/125143
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】