説明

発泡性の熱可塑性エラストマーの製造

【課題】空洞が形成されずかつ密度が1.2g/cm3未満の発泡した熱可塑性ポリウレタンを製造する
【解決手段】本発明は、10kg/m3未満のTMA密度を有する発泡性微小球体と熱可塑性ポリウレタンとの混合により製造することができる発泡性の熱可塑性ポリウレタンおよび発泡した熱可塑性ポリウレタンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性微小球体を含む発砲性ポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(以下、「TPU」と表す。)は、熱可塑性エラストマーに分類される半結晶性の物質である。これらは、特に、良好な強度および摩滅特性、引き裂き耐久性、化学品耐久性を有しているという特徴を有しており、原材料を適当に混合することによりほぼ望みどおりの硬度のものを製造することができる。
【0003】
これらは、公知の方法により、ベルト式の装置上でまたは反応性押出機中で、1ショット法またはプレポリマー法で製造される。この場合には、反応成分のジイソシアナート、長鎖ジオールおよび短鎖ジオール(鎖伸長剤)を同時にまたは一定の順番で組み合わせて反応させる。反応相手を混合する際のNCO基と該NCO基と反応する水素原子の総量との比は、1:0.9〜1.2、好ましくは1:0.95〜1.05、特に好ましくは1:1である。
【0004】
発泡剤を使用して熱可塑性物質を膨張させることができることは周知である。特にポリスチレンおよびポリオレフィンの発泡が広く実施されている。
【0005】
この場合に使用される発泡剤は、クエン酸、炭酸水素塩、またはアゾジカーボンアミド、例えばセレゴエン(Celegoene)、トラセル(Tracel)、ハイドロセロール(Hydrocerole)製品等のような化学的発泡剤(“Hydrocerole:chemische Treib− und Nukleierungsmittel fuer Kunststoffe;Verarbeitungshinweise;Spritzguss;Hart−PVC−Schaum;Schaumextrusion;Productprogramm;Clariant Maerz 2000”;“Neue Treibmittelentwicklungen im Bereich Spritzguss;Luebke,G.;Holzberg,T.;Seminare zur Kunststoffverarbeitung IKV;February 4, 2003”)、または発泡条件下で蒸発する不活性液体である物理的発泡剤、または発泡性微小球体(例えば、Akzo製Expancel(登録商標)、またはLehmann & Voss製Microspheres)である。化学的発泡剤と発泡性微小球体との組み合わせも使用可能である(Foaming Plastics with Expancel Microspheres:Elfving,K.;Blowing Agent Systems:Formulatioms and Processing;Paper 9,Page1−5;Mikrohohlkugeln aus Kunststoffen;N.N.;Kunststoffe 82(1992)4(36366))。
【0006】
TPUを発泡させるために発泡剤を使用する公知の方法も存在する。TPUの場合には、化学的発泡剤は比較的粗い気泡構造を与え、空洞率が増加する。
【0007】
EP−A−692516号公報は、TPUを基礎としたフォームの製造方法を開示している。この公報では、上記欠点に対抗するために、発泡剤として化学的発泡剤と微小球体Expancel(登録商標)との混合物を使用している。
【0008】
発泡性微小球体とは、ポリアクリロニトリルまたはそのコポリマーのようなプラスチックの薄い殻から構成される中空のミクロビーズである。これらの中空のミクロビーズは、通常炭化水素を使用して気体で充填される。熱可塑化処理の間にこの物質が経験する温度が、プラスチックの殻を軟化させ、同時に封入された気体を膨張させる。その結果、微小球体が膨張する。微小球体の膨張性は、TMA密度(単位:kg/m3)の測定値(Mettler Toledo製 STARe熱分析装置;加熱速度20℃/分)により表すことができる。本発明において、TMA密度とは、大気圧下で微小球体の崩壊前の所定温度Tmaxで達成されうる最小密度を意味する。
【0009】
WO00/44821号パンフレットは、Expancel(登録商標)型の微小球体から構成される発泡剤の組み合わせの使用を開示している。この組み合わせにおける微小球体は炭化水素で充填されている。
【0010】
EP−A−1174459号公報では、WO00/44821号パンフレットで記載された方法をTPUに流動助剤を添加することにより改良している。この方法の目的は、成形体の表面の改良および成形時間の短縮化である。
【0011】
EP−A−1174458号公報は、可塑剤を添加することにより、同じ目的を達成しようとしている。
【0012】
【非特許文献1】Hydrocerole:chemische Treib− und Nukleierungsmittel fuer Kunststoffe;Verarbeitungshinweise;Spritzguss;Hart−PVC−Schaum;Schaumextrusion;Productprogramm;Clariant Maerz 2000
【非特許文献2】Neue Treibmittelentwicklungen im Bereich Spritzguss;Luebke,G.;Holzberg,T.;Seminare zur Kunststoffverarbeitung IKV;February 4, 2003
【非特許文献3】Foaming Plastics with Expancel Microspheres:Elfving,K.;Blowing Agent Systems:Formulatioms and Processing;Paper 9,Page1−5;Mikrohohlkugeln aus Kunststoffen;N.N.;Kunststoffe 82(1992)4(36366)
【特許文献1】EP−A−692516号公報
【特許文献2】WO00/44821号パンフレット
【特許文献3】EP−A−1174459号公報
【特許文献4】EP−A−1174458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらの方法で製造された成形体であっても、比較的粗い気泡構造が形成され、空洞が形成されることがわかっている。
【0014】
また、処理の許容度も極めて狭いことがわかっている。処理が目的範囲外で行われると、まず目的の密度が達成されず、すなわち気泡が崩壊し、次いで空洞形成の増加が認められる。この点は、例えば靴底のような最終製品の断面において視認でき、または、表面に陥没部が視認できるようにさえなる。この場合には、これらの陥没部を補償する目的で射出成形の間に保圧を使用することができない。というのは、この操作は成形体における気泡の急速な崩壊または圧縮を引き起こし、従って適当な密度の減少を達成することができないからである。これらの欠点は、特に低密度において深刻な問題である。
【0015】
空洞とは、周囲の細かい気泡構造とは区別できる比較的大きな気泡である。空洞は例えば材料との接触において認められ、また最終生成物の表面に見られる陥没部として認められる。
【0016】
本発明の目的は、適当な発泡剤を使用することにより、射出成形および押出工程における処理の許容度を大きくして、空洞が形成されずかつ陥没部がなく、1.2g/cm3未満、好ましくは0.3〜1.0g/cm3、特に好ましくは0.4〜0.8g/cm3の密度を有する発泡したTPUを製造することである。使用される発泡剤がコストを上げる重量な因子であるから、本発明の目的はまた、同程度の密度の達成のために要する発泡剤の量を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明者らは、この目的は、10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3、より好ましくは2〜7kg/m3、特に好ましくは2〜6kg/m3のTMA密度を有する発泡性微小球体、好ましくは粉末の形態の発泡性微小球体、または特に好ましくはマスターバッチの形態にまとめられた発泡性微小球体を使用することにより達成されることを発見した。
【0018】
粉末形態またはマスターバッチ形態の10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3、より好ましくは2〜7kg/m3のTMA密度を有する発泡性微小球体の使用は、純粋な化学的発泡剤または化学的発泡剤と上述の範囲以外のTMA密度を有する発泡性微小球体との混合物の使用とは異なり、顕著に細かい気泡構造をもたらし、空洞が形成されず、陥没部が形成されず、その上、例えば温度に関して処理の許容度を顕著に広げる。
【0019】
本発明の特に有効な点は、発泡性微小球体と一緒に他の発泡剤を使用する必要がない点である。従って、他の発泡剤、特に他の化学的発泡剤を発泡性微小球体に加えて、特に本発明における発泡性微小球体に加えて使用しないのが好ましい。
【0020】
TPUをこれらの微小球体で処理し、熱可塑化処理を施すと、最終生成物の密度が減少する。
【0021】
従って、本発明は、
a)熱可塑性ポリウレタンと発泡剤とを混合し、場合により乾燥する段階、
b)得られた混合物を、発泡剤を発泡させながら熱可塑化処理する段階、
を含む発泡した熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
発泡剤として、10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3の範囲、特に好ましくは2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体を使用することを含む製造方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、この方法で製造される発泡したTPUを提供する。このTPUは、1.2g/cm3未満、好ましくは0.3〜1.0g/cm3、特に好ましくは0.4〜0.8g/cm3の密度を有するのが好ましい。
【0023】
本発明はまた、10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3の範囲、特に好ましくは2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体を含む発泡性TPUを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明における微小球体としては、20〜40μmの直径を有するものが好ましい。対応する微小球体は、Akzo Nobel、Casco Products GmbH(Essen)からExpancel(登録商標)093DU120(粉末)の名称で市販されている。
【0025】
本発明に関する限り、“熱可塑化処理”という語は、TPUの溶融に関連する工程のいずれかを意味する。この熱可塑化処理は、当業者に公知の粉末センタリングプラント、押出プラント、および射出成形において、80〜240℃、好ましくは120〜230℃、特に好ましくは170〜220℃で行われる。
【0026】
混合物における発泡性微小球体の含有量は、発泡したTPUに対する密度の希望値に依存する。膨張させられるべき、すなわち発泡させられるべきTPUまたはTPUブレンドの各100質量部に対して、本発明における発泡性微小球体を0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜6.5質量部使用するのが好ましい。
【0027】
以下の成分を含む発泡性TPUまたは発泡したTPUが特に好ましい。
【0028】
85〜99.5質量%、好ましくは90〜99.5質量%、特に好ましくは92〜98質量%のTPUまたはTPUを含むブレンド、
0.5〜15質量%、好ましくは2〜8質量%、の発泡性微小球体のマスターバッチ、
0〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%の染料、例えば周知のブラックペーストまたはカラーマスターバッチの形態で添加される染料。
【0029】
微小球体のマスターバッチは、
5〜90質量%、好ましくは25〜65質量%の微小球体と、
10〜95質量%、好ましくは35〜75質量%の担体、好ましくは熱可塑性担体、たとえば以下に示される担体材料、特にエチレン−酢酸ビニル重合体と、
を含むのが好ましい。
【0030】
陥没部を有しておらず、空洞のない細かな気泡構造を有する発泡したTPUは、本発明で使用される発泡性微小球体を使用することにより、広範な処理条件下で製造される。この理由のひとつとして、小さいTMA密度を有する発泡性微小球体が成形金型の充填の間により大きな内部圧を与えるため、空洞および陥没部の形成の危険が顕著に減少または回避されることが考えられる。この現象は、慣用の射出成形法ではまた、発泡剤を使用せずに例えば外部から保圧を加えることによって達成される。
【0031】
これらの小さいTMA密度によりまた、同程度の密度を得るために使用される微小球体の質量割合が最小化されうる。このことは、微小球体が一般に最終製品の原料に関して価格を決定する要因であるから、コストの低減につながる。
【0032】
意外にも、本発明において使用される発泡性微小球体を使用すると、協働する発泡剤の使用を回避することができる。しかしながら、用途によっては、協働する発泡剤を使用してもよい。
【0033】
本発明において使用される発泡性微小球体は、上述したように粉末の形態で使用することができ、この場合には、TPUペレットへは0.05〜2質量%の鉱油またはパラフィン油のようなバインダーを使用してまたは使用しないで適用することができ、またマスターバッチの形態で好ましく使用することもできる。本発明に関する限り、マスターバッチとは、発泡性微小球体がバインダー、ワックス、または熱可塑性物質、例えばTPU、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、または熱可塑性ゴム、またはこれらのブレンドのような担体内、好ましくはメルトインデックス(MFR;190℃/2.16kg;ASTM D 1238)が5〜700g/10分、好ましくは50〜600g/分、特に好ましくは150〜500g/分であり融点が60〜110℃である担体内、特に好ましくはエチレン−酢酸ビニル重合体内に結合しているペレット材料である。これらの微小球体のマスターバッチの製造では一般に、マスターバッチの製造の間に低い温度を採用でき従って早すぎる発泡を回避するために、上述のように、融点が極めて低くかつ粘性が極めて低いかまたはメルトインデックスが高い熱可塑性物質が使用される。
【0034】
これらのマスターバッチの使用により、粉末形態での発泡性微小球体の使用および取り扱いの間に生じる散粉が回避される。この方法が使用される場合には、本発明の発泡したTPUを製造するプラントおよび設備における高価な防爆措置が省略可能である。さらに、発泡性微小球体とTPUとの均一な混合は、マスターバッチを使用するとさらに容易である。例えば、微小球体のマスターバッチは混練器または単軸または2軸スクリューの押出機内で製造することができる。
【0035】
使用されるTPUは、慣用の公知の化合物、例えばKunststoffhandbuch,Volume 7“Polyurethane”,Carl Hanser Verlag,Munich,Vienna,3rd edition,1993,pp455−466に記載されているような化合物を含むことができる。
【0036】
メルトインデックスまたはMFR(メルトフローレート;190℃/3.8kg;DIN EN 1133)の値が1〜350g/10分、好ましくは30〜150g/10分であるTPUを使用するのが好ましい。しかしながら、発泡性または発泡したTPUのためには、特定のMFRを有するTPUを使用する必要がない。
【0037】
本発明に関する限り、TPUは可塑化されたTPUでも可塑化されていないTPUでもよいが、特に慣用の可塑剤の含有量が混合物の質量に対して0〜50質量%であるTPUが好ましい。一般に使用可能な可塑剤は、この目的のために使用できる周知の化合物、例えばフタラートおよび特にベンゾアートを含む。
【0038】
その上、本発明の方法のために、TPUと70質量%までの量の他の熱可塑性物質からなる群から選択されるプラスチック、特に熱可塑性エラストマーおよびゴムからなる群から選択されるプラスチックとのブレンドを使用することもできる。TPUと他の熱可塑性エラストマーとを含む混合物、好ましくは99〜50質量%のTPUと1〜50質量%の他の熱可塑性エラストマーを含む混合物、特に好ましくは90〜70質量%のTPUと10〜30質量%の他の熱可塑性エラストマーを含む混合物が好ましい。好ましく使用することができる他の熱可塑性エラストマーは、例えばゴム、例えばブタジエン−アクリロニトリル共重合体である。
【0039】
TPUは、慣用の方法により、ジイソシアナートとイソシアナト基と反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物、好ましくは2価アルコール、とを反応させることにより製造される。
【0040】
使用されるジイソシアナートには、慣用の芳香族、脂肪族、および/または脂環式ジイソシアナート、例えばジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、トルエンジイソシアナート(TDI)、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−および/またはオクタメチレンジイソシアナート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアナート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアナート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,4−および/または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキサン2,4−および/または2,6−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4´−、2,4´−および/または2,2´−ジイソシアナートを含むことができる。
【0041】
使用されるイソシアナートと反応する化合物には、分子量が500〜8000、好ましくは600〜6000、特に好ましくは800〜4000であり、平均官能価が1.8〜2.6、好ましくは1.9〜2.2、特に好ましくは2である周知のポリヒドロキシ化合物、例えばポリエステルオール、ポリエーテルオールおよび/またはポリカルボナートジオールを含むことができる。ジオールとしてのブタンジオールおよびヘキサンジオール(ブタンジオールのヘキサンジオールに対する質量比は好ましくは2:1)とジカルボン酸としてのアジピン酸との反応により得ることができるポリエステルジオールを使用するのが好ましい。また、分子量が750〜2500、好ましくは750〜1200であるポリテトラヒドロフランが好ましい。
【0042】
鎖伸長剤として、周知の化合物、例えばジアミンおよび/またはアルキレン基の炭素原子数が2〜10個のアルカンジオール、特にエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオール、および/またはヘキサンジオール、および/またはオキシアルキレン基の炭素原子数が3〜8個のジ−および/またはトリオキシアルキレングリコール、および好ましくは対応するオリゴ−ポリオキシプロピレングリコールを使用することができ、これらの鎖伸長剤の混合物も使用することができる。使用することができる鎖伸長剤としては他に、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン(1,4−BHMB)、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン(1,4−BHEB)、または1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(1,4−HQEE)が挙げられる。使用される好ましい鎖伸長剤は、エチレングリコールおよびヘキサンジオールであり、エチレングリコールが特に好ましい。
【0043】
ジイソシアナートのNCO基と構造成分の水酸基との反応を加速化する触媒が一般に使用され、例としては、第三アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N´−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン等、特に有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物、例えばアセチルアセトナト鉄(III)、スズ化合物、例えば二酢酸スズ、二ラウリル酸スズ、または脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えば二酢酸ジブチルスズ、二ラウリル酸ジブチルスズ等が挙げられる。触媒の使用量は、一般にはポリヒドロキシ化合物各100質量部に対して0.0001〜0.1質量部である。
【0044】
触媒の他に、慣用の助剤を構造成分に添加することもできる。例としては、界面活性剤、難燃剤、造核剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、阻害剤、加水分解安定剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、変色防止剤、耐微生物分解保存剤、無機および/または有機充填物、強化剤、および可塑剤が挙げられる。
【0045】
分子量を調整するために、イソシアナートと反応する1官能性化合物、好ましくはモノアルコールを使用することもできる。
【0046】
TPUは、一般に慣用の方法により、例えばベルト式装置または反応性押出機を使用して製造される。
【0047】
発泡したTPUを製造するために、TPUを発泡性微小球体と混合し、熱可塑化処理を施して所望の成形体を得る。例えば、この処理を射出成形、焼結または押出により行うことができる。熱可塑化処理の間の支配的な温度により、発泡性微小球体を膨張させ、発泡したTPUを形成する。溶融物を好ましくは金型に導入し、固化し、再結晶化する。
【0048】
TPUまたはTPUブレンドと発泡性微小球体粉末との混合は、簡単なプラスチックペレット混合機、例えば転動式混合機内で、予め0.05〜2質量%のバインダー、例えばパラフィン油または鉱油を加えてまたは加えずに行うことができる。TPUまたはTPUブレンドと発泡性微小球体のマスターバッチとの混合も、簡単なプラスチックペレット混合機、例えば転動式混合機内で同様に行うことができ、また簡単なプラスチック容器内で混合を手動で行い、いわゆるドライブレンドを得ることができる。
【0049】
例えば、本発明の発泡したTPUは、フィルム、ホース、造形物、ファイバー、ケーブル、靴底、他の靴部品、タグ、自動車部品、農業製品、電気製品、制動部品、肘掛、プラスチック家具部品、スキーブーツ、衝撃吸収材、ローラおよびプーリ、スキーゴーグル、およびパウダースラッシュ面の形態で使用することができる。本発明では、靴底、特に圧縮された外皮部と発泡した芯部とを有する靴底、特に着色された靴底、特に黒色の靴底での使用が好ましい。本発明では、光耐性の脂肪族TPUまたはそのブレンドを発泡させることもできる。例えば、自動車の内装または外装製品、例えば計器のパネル面、ギアシフトのノブ、制御装置および制御装置のノブ、アンテナ、およびアンテナの基台、ハンドル、ハウジング、スイッチ、カバーおよびカバーの部品等での使用が挙げられる。
【0050】
従って、本発明は、10kg/m3未満の初期TMA密度を有する発泡したTPU、好ましくは靴底、特に発泡した芯部と圧縮された外皮部とを有する靴底を提供する。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
以下の表は、本発明の結果をまとめたものである。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
表中の記号
R=参照実験
MP=微小球体
092MB120=EVA担体に65%の092DU120(Akzo製微小球体粉末)を組み入れたAkzo製微小球体マスターバッチ
MB=マスターバッチ
MB1=80〜100℃の調剤プラントで製造された、35%のEVA Escoren Ultra(Exxon Mobil製)(メルトインデックス150g/10分(ASTM D 1238))に65%の093DU120(Azo製微小球体粉末)を組み入れた微小球体マスターバッチ
STMP=微小球体が膨張し始める開始温度
TMA D=マスターバッチに組み入れられた微小球体粉末について測定されたTMA密度:微小球体の崩壊前に達成される最小密度(kg/m3):Mettler Toledo製STARs熱分析装置;加熱速度20℃/分;試料質量約0.5mg
PWMP-MB=TPUに対する使用された微小球体マスターバッチの質量割合
CBA=化学的発泡剤
STCBA=化学的発泡剤が膨張し始める開始温度
PWCBA=TPUに対する使用された化学的発泡剤マスターバッチの質量割合
工程=熱可塑化処理の種類
I=Kloeckner Ferromaticによる射出成形;金型温度=25℃;靴金型;Elastollan S70A10Wの場合に密度1.20g/cm3でショット質量178g
E=Thyssen Henschelによるφ60mmのプロファイルダイを使用した押出;スクリュー比1:2.5
空洞=最終部品の厚みが最大の場所での、断面における空洞の評価
0 =空洞無し
0+ =極めて小さい空洞
+ =明瞭に視認できる空洞
++ =極めて顕著な空洞
陥没部=最終製品の表面における陥没部
0 =陥没部無し
0+ =極めて小さい陥没部
+ =明瞭に視認できる陥没部
++ =極めて顕著な陥没部
n.d.=空洞化が顕著であり気泡構造の不均一性が高くて不規則であるため、測定不能
CT460=Hydrocerol CT460;Clariant;化学的発泡剤のマスターバッチ
S70A10W=Elastogran GmbH製の可塑化された市販のポリエステルTPU;使用例:靴底
ブレンド1=φ43mmの2軸スクリュー押出機により製造された、80質量%のElastogran GmbH製のElastollan(登録商標)S80A10と、20質量%のEliochem製Chemigum(登録商標)615Dとから成るブレンド
Elastollan(登録商標)1180A10=Elastogran GmbH製の市販ポリエーテルTPU80ShA
【0056】
上の表から明らかなように、化学的発泡剤と発泡性微小球体から成る混合物の場合には、温度を5℃上昇させただけで気泡構造が崩壊し、処理温度が5℃低いだけで金型の充満が不完全であった。理想的な処理の許容度を越える変動が生じる場合には、変動により常に問題が発生する。しかしながら、空洞および陥没部の形成を完全に防止することはできない。
【0057】
10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3、特に好ましくは2〜7kg/m3の小さなTMA密度を有する発泡性微小球体のみを使用すると、上述の狭い処理の許容度の問題は、上の実験結果からわかるように発生しない。
【0058】
6kg/m3未満の極めて小さなTMA密度を有するMB1マスターバッチの場合には、発泡剤の量は092MB120と比較して半分に低減することができる。
【0059】
上述の結果は、出発材料が微小球体粉末か微小球体のマスターバッチかに関わりなく得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10kg/m3未満のTMA密度を有する発泡性微小球体を含む、発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
2〜10kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体と熱可塑性ポリウレタンとの混合により製造することができる、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体と熱可塑性ポリウレタンとの混合により製造することができる、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
混合物に対して0〜50質量%の可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
使用される熱可塑性ポリウレタンが、熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性物質の群から選択された他のプラスチック、特に熱可塑性エラストマーまたはゴムからなる群から選択された他のプラスチック、とから構成されるブレンドを含み、前記他のプラスチックの量がブレンドの質量に対して0〜70質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
90〜99.5質量%の熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタンを含むブレンド、
0.5〜10質量%の発泡性微小球体を含むマスターバッチ、および
0〜10質量%の染料、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
a)熱可塑性ポリウレタンと発泡剤とを混合し、場合により乾燥する段階、
b)得られた混合物を、発泡剤を発泡させながら熱可塑化処理する段階、
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
発泡剤として、10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3の範囲、特に好ましくは2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体を使用することを含む、熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により製造することができる、発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
1.2g/cm3未満の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
0.2〜1.0g/cm3の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
10kg/m3未満の初期TMA密度を有する発泡した微小球体を含む、発泡した熱可塑性ポリウレタン、好ましくは靴底、特に発泡した芯部と圧縮された外皮部とを有する靴底。
【請求項12】
5〜80質量%、好ましくは25〜65質量%の微小球体と、
20〜95質量%、好ましくは35〜75質量%の熱可塑性担体、特にエチレン−酢酸ビニル重合体と、
を含むマスターバッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10kg/m3未満のTMA密度を有する発泡性微小球体を含む、発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
2〜10kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体と熱可塑性ポリウレタンとの混合により製造することができる、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体と熱可塑性ポリウレタンとの混合により製造することができる、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
混合物に対して0〜50質量%の可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
使用される熱可塑性ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性物質の群から選択された他のプラスチック、特に熱可塑性エラストマーまたはゴムからなる群から選択された他のプラスチック、とから構成されるブレンドを含み、前記他のプラスチックの量がブレンドの質量に対して0〜70質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
90〜99.5質量%の熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタンを含むブレンド、
0.5〜10質量%の発泡性微小球体を含むマスターバッチ、および
0〜10質量%の染料、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発泡性の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
a)熱可塑性ポリウレタンと発泡剤とを混合し、場合により乾燥する段階、
b)得られた混合物を、発泡剤を発泡させながら熱可塑化処理する段階、
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
発泡剤として、10kg/m3未満、好ましくは2〜10kg/m3の範囲、特に好ましくは2〜7kg/m3の範囲のTMA密度を有する発泡性微小球体を使用することを含む、熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により製造することができる、発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
1.2g/cm3未満の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
0.2〜1.0g/cm3の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の発泡した熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
10kg/m3未満の初期TMA密度を有する発泡した微小球体を含む、発泡した熱可塑性ポリウレタン、好ましくは靴底、特に発泡した芯部と圧縮された外皮部とを有する靴底。

【公表番号】特表2006−527270(P2006−527270A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508274(P2006−508274)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006034
【国際公開番号】WO2004/108811
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】