説明

発泡成型体の製造方法

【課題】 薄板状で高い発泡倍率を有し且つ均質な発泡成型体を得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】 一次発泡させた樹脂ビーズを、成型型における各型の合わせ面同士を該樹脂ビーズのサイズよりも小さい間隔でもって離間させた状態でキャビティに充填し、その後に各型の合わせ面同士を当接させることによって型締めを行い、前記一次発泡させた樹脂ビーズを二次発泡をさせて成型し薄板状の発泡成型体を得るようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状発泡成型体の製造方法に関するもので、さらに詳しくは、薄板状の発泡成型体の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機玩具として、飛行機本体と該飛行機本体を操縦するためのコントローラとを備えた飛行機玩具が知られている。この飛行機玩具は、コントローラからの制御信号によって、飛行機本体を直線飛行させたり、旋回飛行させるように構成されている(例えば特許文献1)。
この飛行機玩具にあっては、飛行機本体が発泡樹脂によって形成されている。
【特許文献1】特開平7−40897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
飛行機玩具を軽量化するためには、飛行機玩具本体の主体(胴体や翼等)を薄く、しかも機体を構成する発泡樹脂の発泡倍率を高めることが必要となる。そのためには、成型型のキャビティの隙間厚を小さくする一方で、キャビティ内部に導入する樹脂ビーズの数量をコントロールして所期の倍率に発泡させる必要がある。
しかしながら、成型型の内部に導入すべき樹脂ビーズの量をコントロールすることは面倒である。また、キャビティの隙間厚が小さいためキャビティ内部に樹脂ビーズが入りにくく、樹脂ビーズ間に大きな隙間ができてしまう。
その結果、樹脂ビーズを二次発泡させたとしても、その隙間が埋まらず、均質な発泡成型体を製造できないという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、薄板状で高い発泡倍率を有し且つ均質な発泡成型体を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の薄板状発泡成型体の製造方法は、一次発泡させた樹脂ビーズを、成型型における各型の合わせ面同士を該樹脂ビーズのサイズよりも小さい間隔でもって離間させた状態でキャビティに充填し、その後に各型の合わせ面同士を当接させることによって型締めを行い、前記一次発泡させた樹脂ビーズを二次発泡をさせて成型し薄板状の発泡成型体を得るようにしたことを特徴とする。この場合の樹脂ビーズの材質としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキサイド、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、またはアクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体等が使用されるが、薄板状で軽量の発泡成型体を得るにはポリスチレンが使用されることが特に好ましい。
【0006】
請求項2記載の薄板状発泡成型体の製造方法は、請求項1記載の薄板状発泡成型体の製造方法において、前記発泡成型体として飛行機玩具の主体を得るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一次発泡させた樹脂ビーズを、成型型における各型の合わせ面同士を離間させた状態でキャビティに充填するので、型締めを行った状態でキャビティに樹脂ビーズを充填する場合と比較して、一次発泡させた樹脂ビーズを確実に充填させることができる。この状態で、型締めを行うので、樹脂ビーズ間の隙間が小さくなる。さらに、この状態で、二次発泡させて成型するので、薄板状で高い発泡倍率を有し且つ均質な発泡成型体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る発泡成型体の製造方法を適用した飛行機玩具を、図面を参照しながら説明する。
図1はプロペラ飛行機玩具の斜視図、図2は飛行機本体の平面図、図3はラダーの取付構造を示す図、図4はコントローラの回路構成を示すブロック図、図5は飛行機本体の回路構成を示すブロック図である。
【0009】
(飛行機玩具の全体構成)
図1に示すように、飛行機玩具1は飛行機本体2とコントローラ3とを備えている。飛行機本体2はコントローラ3によって操縦され、例えば、室内等の狭い場所でも飛行できるようになっている。この場合、コントローラ3によって、飛行機本体2の飛行速度調節や左右の旋回を行わせることができるようになっている。
【0010】
(飛行機本体の構成)
1.全体
飛行機本体2の主体は、胴体21、主翼22、水平尾翼23、トリムタブ24及びラダー25から構成されている。そして、これらは発泡樹脂成型体によって構成されている。この発泡樹脂成型体の材質としては、実施形態の飛行機玩具1にあっては、例えばポリスチレンが使用されている。なお、この発泡成型体の製造方法は後述する。
【0011】
2.主翼
実施形態の飛行機本体2では、主翼22は左右一体型のものとなっている。そして、この主翼22は胴体21の前側部分上側に取り付けられている。しかし、この主翼22は、左右一体型のもので、胴体21に形成したスリットに差し込んで取り付けられるものであってもよいし、左右別体型のもので胴体21の左右各々に取り付けられるものであってもよい。また、この主翼22は胴体21の前側部分下側に取り付けられるものであってもよい。
【0012】
3.胴体
実施形態の飛行機本体2では、主翼22が取り付けられる胴体21は、特に限定はされないが、2枚の発泡プラスチック薄板を左右から貼り合わせることによって構成されている。この胴体21には、該胴体22を左右に貫く透孔21aが複数形成されている。これによって、飛行機本体2の軽量化が図られている。胴体21において主翼22の取付部分の後側は上側が切り欠かれた形状となっている。そして、この切欠き21aにプロペラ26が位置するようにプロペラ駆動用モータ27が胴体21に取り付けられている。このプロペラ駆動用モータ27は、コントローラ3からの制御データに従って駆動制御される。実施形態の飛行機本体2では、プロペラ26は飛行機本体2の後方から見て、右回りに回転するように構成されている。このプロペラ26は左回りに回転するものであってもよいことは勿論である。また、プロペラ26の取付位置は胴体21の前端であってもよいことは勿論である。
また、胴体21において切欠き21aの後側部分は垂直尾翼として機能するようになっている。
【0013】
4.水平尾翼
胴体21の後端部上側には水平尾翼23が取り付けられている。特に限定はされないが、実施形態の飛行機本体2では、水平尾翼23は左右一体の構造となっている。そして、水平尾翼23の後辺の左右方向の中央には切欠き23aが形成されている。この切欠き23aは平面視で左右非対称となっている。この切欠き23aは、ラダー25の左右の舵角を規制するためのものであり、切欠き23aの縁がラダー25の回動の際のストッパを構成している。
また、水平尾翼23の上面には垂直尾翼風の形態を持つトリムタブ24が上方に突出するように取り付けられている。
【0014】
5.トリムタブ
トリムタブ24は、飛行方向の前側部分に対して後側部分が飛行機本体2の左右で強くプロペラ後流が当たる側から離反するように胴体21の中心軸に対して傾斜した状態で付設されている。実施形態のプロペラ飛行機玩具1にあっては、飛行機本体2を後方から見た場合にプロペラ26が右回転となっており、プロペラ後流が飛行機本体2の右側に強く当たるため、トリムタブ24は、上方から見て飛行方向前端よりも飛行方向後端が胴体21が飛行機本体2の左側に位置するように、胴体21に対して傾けて取り付けてある。
【0015】
6.ラダー
胴体21の後端にはラダー25が取り付けられている。このラダー25は、図3に示すように、胴体21に付設した縦軸21bに連結されている。すなわち、ラダー25には連結部材25aの一端が固定されている。この連結部材25aは、胴体21に付設したコイルCに挿通され、他端が縦軸21bに係合している。連結部材25aは非磁性体から構成され、コイルCに挿通される部分には永久磁石25bが取り付けられている。この永久磁石25bはN極及びS極の一方が飛行機本体2の左右いずれか一方に、N極及びS極の他方が飛行機本体2の左右いずれか他方に向くようにして取り付けられている。そして、コイルCに電流が流れた際に、その流れる方向に応じてラダー25が左右いずれかの方向に回動するようになっている。
また、ラダー25の上端部は上記水平尾翼23の切欠き23aに臨んでいる。そして、ラダー25が左右に回動した際に、切欠き23aの縁によって回動を規制されるようになっている。この場合、飛行機本体の左右で強くプロペラ後流が当たる側での最大舵角が他側の最大舵角に比べて小さくなるように構成されている。実施形態のプロペラ飛行機玩具1にあっては、飛行機本体2を後方から見た場合にプロペラ26が右回転となっており、プロペラ後流が飛行機本体2の右側に強く当たるため、右側の最大舵角の方が左側の最大舵角より小さくなるように切欠き23aは形成されている。
【0016】
7.発泡成型体の製造方法(図6)
例えば、厚さ2mmの発泡成型体を製造する場合を説明する。まず、成型型とは別個の発泡機を使用して樹脂ビーズを一次発泡させる。この場合、例えば、直径0.3mmから0.8mmの樹脂ビーズを使用する。そして、この樹脂ビーズを約直径3mmの樹脂ビーズにする。次に、二次発泡に使用される成型型の各型の合わせ面同士の間に隙間を設けた状態で、一次発泡させた樹脂ビーズをキャビティに導入する。
次いで、一次発泡させた樹脂ビーズをキャビティに充填させた後に型締めを行う。つまり、各型の合わせ面を完全に当接させる。このようにすれば、樹脂ビーズ間の隙間が小さくなる。そして、この状態で、二次発泡させて成型する。このようにすれば、薄板状で高い発泡倍率を有し且つ均質な発泡成型体を得ることができる。
以上のように、一次発泡させた樹脂ビーズを、成型型における各型の合わせ面同士を離間させた状態でキャビティに充填すれば、キャビティの隙間厚(2mm;型締めを行った状態での隙間厚)よりも大きなサイズの樹脂ビーズをも充填させることができる。また、キャビティの隙間厚(2mm)よりも小さい樹脂ビーズの場合にも、型締めを行った状態でキャビティに樹脂ビーズを充填する場合と比較して、一次発泡させた樹脂ビーズを確実に充填させることができるので有利である。例えば、型締めを行った状態でキャビティに樹脂ビーズを充填する場合、キャビティの隙間厚が2mm程度であると、一次発泡の倍率を下げて直径1mm程度の樹脂ビーズにしなければ成型型に確実に充填できない。そして、確実に充填できないままに、二次発泡を行っても、穴だらけの成型体となってしまうことになる。これに対して、二次発泡に使用される成型型の各型の合わせ面同士の間に隙間を設けた状態で、一次発泡させた樹脂ビーズをキャビティに導入するとすれば、直径1mmを超える樹脂ビーズをも確実に充填させることができる。
上記方法によって、発泡成型体からなる主翼22を製造したところ、容積が22.8立方センチメートルで重量が0.36g(つまり、1立方センチメートル当たり0.0157g)の主翼を得ることができた。
【0017】
8.その他
胴体21の前端部には、例えば電解二重層コンデンサなどの電池28が取り付けられている。また、胴体21には、各種電子・電気部品や電子・電気回路が取り付けられる基板29が取り付けられている。この基板29には、電源28を充電するための端子27が付設されている。
【0018】
(コントローラ3の構成)
図1にはコントローラ3が示されている。このコントローラ3にはプロペラ制御用つまみ3a及びラダー制御用つまみ3bが設けられている。このうちプロペラ制御用つまみ3aはプロペラ26の回転速度を制御するためのものである。一方、ラダー制御用つまみ3bはラダー25を左右に回動させるためのものである。また、コントローラ3には電源スイッチ3c及び赤外線LED3dが付設されている。
【0019】
図4はコントローラ3の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、コントローラ3は制御用IC300、入力部301、赤外線リモコン送信用IC302、増幅器303、送信部304及び充電部305を備えている。このうち充電部305は飛行機本体2の電池(例えば電解二重層コンデンサ)28を充電するためのものである。なお、図示はしないが、コントローラ3には電源である電池が組み込まれている。
【0020】
ここで、入力部301は上記プロペラ制御用つまみ3a及び上記ラダー制御用つまみ3bによって構成されている。制御用IC300は図示しないROM及びRAMを含んで構成されている。この制御用IC300は、入力部301から入力された操作情報に基づいて制御データを生成する。赤外線リモコン送信用IC302は、制御用IC300で生成された制御データを一定の規則に従って符号化するとともに変調する。そして、増幅器303は赤外線リモコン送信用IC302で変調された制御データを増幅し、送信部304は増幅器で増幅された制御データを飛行機本体2に向けて送信する。この送信部304は上記赤外線LED3dにて構成されている。
【0021】
(飛行機本体2の回路構成)
図5には 飛行機本体2の回路構成が示されている。同図に示すように、飛行機本体2は赤外線センサモジュール200a、赤外線リモコン受信用IC200b、制御用IC201、モータ駆動部202及びコイル駆動部203を備えている。赤外線センサモジュール200aは、赤外線制御データを受信するフォトダイオード又はフォトトランジスタ等の受信部と、受信部で受信した赤外線制御データを増幅する増幅部と、増幅部で増幅された赤外線制御データを検波する検波部とを備える。この赤外線センサモジュール200aは1つのチップに構成されている。赤外線リモコン受信用IC200bは、検波部で検波された赤外線制御データを一時的に格納するレジスタと、制御クロックを発生するクロック発生部と、一定の方式に従って符号化されたデータ(エンコードされたデータ)を復元する復調するデコーダとを備えている。制御用IC201は、図示しないCPU、ROM及びRAMを含んで構成されている。そして、制御用IC201は、制御データをRAMに格納し、ROMのプログラムに応じて飛行機本体2の動作を制御する。また、モータ駆動部202は制御用IC201の指令に従ってプロペラ駆動モータMの駆動停止、モータの駆動開始、モータの回転速度の変更を行う。一方、コイル駆動部203は制御用IC201の指令に従ってラダー駆動用コイルCへの通電停止、コイルCへの通電開始、コイルCへ供給する電流の向きの変更を行う。
【0022】
ここで、図7に示すように、赤外線センサモジュール200a、赤外線リモコン受信用IC200b及び制御用IC201は基板29に接着されている。そして、基板29は、両主面が飛行機本体2の左右を向くように胴体21に取り付けられている。 実施形態では、基板29としては、例えばグラスエポキシという素材が使用され、厚さが0.4mm程度のものが使用されている。したがって、基板29は赤外線を透過するようになっている。
この場合、赤外線センサモジュール200a及び赤外線リモコン受信用IC200bのぞぞれを構成するチップは、透明樹脂接着材(例えば透明エポキシ樹脂)で接着されるとともに、透明樹脂によって被覆されている。また、基板29に形成された電極パターン29aは、格子状となっていて、その格子状部のすかし部分においては、基板29の裏面側からの光の透過を妨げないように構成されている。したがって、赤外線センサモジュール200aを構成するチップが取り付けられている面(表面)側からの赤外線制御データはもとより、反対側の面(裏面)側からの赤外線制御データを確実に受信できる。
また、制御用IC201は紫外線防止用の樹脂(例えば黒色のエポキシ樹脂)によって被覆されている。
なお、各チップと電極パターンとの間は直接又はワイヤを介して電気的に接続されている。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した飛行機玩具の外観を示す斜視図である。
【図2】飛行機玩具の平面図である。
【図3】飛行機玩具の尾部の構造を示す図である。
【図4】コントローラの回路構成を示すブロック図である。
【図5】飛行機玩具の飛行機本体の回路構成を示すブロック図である。
【図6】発泡成型体の製造方法の工程を示す図である。
【図7】赤外線センサモジュールを取り付けた状態の基板の図である。
【符号の説明】
【0025】
1 プロペラ飛行機玩具
2 飛行機本体
3 コントローラ
21 胴体
22 主翼
23 水平尾翼
24 トリムタブ
25 ラダー
26 プロペラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次発泡させた樹脂ビーズを、成型型における各型の合わせ面同士を該樹脂ビーズのサイズよりも小さい間隔でもって離間させた状態でキャビティに充填し、その後に各型の合わせ面同士を当接させることによって型締めを行い、前記一次発泡させた樹脂ビーズを二次発泡をさせて成型し薄板状の発泡成型体を得るようにしたことを特徴とする薄板状発泡成型体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡成型体として飛行機玩具の主体を得るようにしたことを特徴とする請求項1記載の薄板状発泡成型体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−18683(P2008−18683A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194403(P2006−194403)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】