説明

発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品

【課題】発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品を提供する。
【解決手段】本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が10万〜30万であるスチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、〔B〕発泡剤と、を含有し、上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂100質量部に対して2.5〜10質量部であり、且つ、上記スチレン系樹脂の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して5〜100質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及び発泡剤を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、該組成物を用いてなる発泡成形品及び積層品に関し、更に詳しくは、発泡倍率の高い発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材用材料として、軽量化、耐久性等に優れた樹脂を主成分とする樹脂組成物が用いられるようになっている。製品の軽量化をはかるために、特に、樹脂及び発泡剤を含有する樹脂組成物を用いた発泡成形が広く適用されている。
発泡成形に供される組成物用の樹脂として、特許文献1〜5には、ABS樹脂、ASA樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が開示されている。
【0003】
また、特許文献6〜8には、ABS樹脂等のゴム強化スチレン系樹脂と、化学発泡剤とを含有する組成物が開示されている。更に、特許文献9には、エチレン・(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体及び化学発泡剤からなるマスターバッチと、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂とを含有する組成物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−221340号
【特許文献2】特開平6−32932号
【特許文献3】特開平6−298983号
【特許文献4】特開平7−314438号
【特許文献5】特開平9−221562号
【特許文献6】特開2000−212355号
【特許文献7】特開2004−18686号
【特許文献8】特開2004−51875号
【特許文献9】特開2004−285345号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献6〜9に開示された組成物によると、発泡剤の分解残渣による、金型、押出機等に配設されるダイ等に汚染が発生する等により、発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品が得られないことがあった。
本発明の目的は、発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適な発泡成形用熱可塑性樹脂組成物、発泡成形品及び積層品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)を含む熱可塑性樹脂と、〔B〕発泡剤と、を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、且つ、上記スチレン系樹脂(A1)の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、5〜100質量%であることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
2.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)を除くスチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、上記スチレン系樹脂(A1)と、を含む上記1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
3.上記1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、〔D〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)、及び、発泡剤〔B〕を含有し、該発泡剤〔B〕の含有割合が上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して2.5〜10質量部である発泡剤含有マスターバッチと、〔E〕熱可塑性樹脂〔C〕(但し、上記スチレン系樹脂(A1)を除く。)を含み且つ発泡剤を含まない熱可塑性樹脂体と、が混合されてなることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
4.上記発泡剤〔B〕が、沸点の平均値が−10℃〜55℃である化合物を含む上記1乃至3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
5.上記熱可塑性樹脂〔C〕が、スチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種を含む上記3又は4に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
6.上記スチレン系樹脂(A3)が、スチレン系ゴム強化樹脂を含む上記2又は5に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
7.上記スチレン系ゴム強化樹脂が、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた樹脂であり、該スチレン系ゴム強化樹脂のアセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位の合計量の割合が、25〜35質量%である上記6に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
8.上記1乃至7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする発泡成形品。
9.上記1乃至7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(X)と、他の材料からなる部材(Y)とが積層してなることを特徴とする積層品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物によれば、発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。上記発泡剤〔B〕の沸点の平均値が、−10℃〜55℃である場合には、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、スチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、スチレン系樹脂(A1)とを含む場合には、発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
上記スチレン系樹脂(A3)が、スチレン系ゴム強化樹脂であり、該スチレン系ゴム強化樹脂が、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた樹脂であり、該スチレン系ゴム強化樹脂のアセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位の合計量の割合が、25〜35質量%である場合には、更に、発泡セルが均一であり、形状安定性に優れ、耐薬品性に優れた発泡成形品を得ることができる。
本発明の発泡成形品は、発泡セルが均一であり、形状安定性に優れ、発泡倍率が2倍以上と高くても形状安定性に優れる。
本発明の積層品は、形状安定性に優れ、発泡倍率が2倍以上と高い成形部(X)を有しても形状安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0009】
1.発泡成形用熱可塑性樹脂組成物
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)を含む熱可塑性樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)と、〔B〕発泡剤(以下、「成分〔B〕」ともいう。)と、を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、且つ、上記スチレン系樹脂(A1)の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、5〜100質量%であることを特徴とする。
【0010】
1−1.熱可塑性樹脂〔A〕
この成分〔A〕は、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)を含む。このスチレン系樹脂(A1)の含有割合は、上記成分〔A〕に対して、通常、5〜100質量%、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%である。従って、上記成分〔A〕は、好ましくは、スチレン系樹脂(A1)と、他の熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(A2)」ともいう。)とを含む。
【0011】
1−1−1.スチレン系樹脂(A1)
このスチレン系樹脂(A1)は、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a1)」という。)75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a2)」という。)5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位(以下、「単位(a3)」という。)0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000である樹脂である。
【0012】
上記単位(a1)を形成することとなる芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0013】
上記単位(a2)を形成することとなるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記単位(a3)を形成することとなる他のビニル系化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等が挙げられる。また、これら以外であって、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、上記のヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記スチレン系樹脂(A1)の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記スチレン系樹脂(A1)を構成する、上記の単位(a1)、(a2)及び(a3)の含有割合は、それぞれ、75〜95質量%、5〜25質量%及び0〜20質量%であり、好ましくは78〜90質量%、10〜22質量%及び0〜15質量%、より好ましくは80〜87質量%、13〜20質量%及び0〜12質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)が上記構成であれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物により、耐薬品性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形品を得ることができる。
【0020】
上記スチレン系樹脂(A1)は、重合開始剤の存在下又は非存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他のビニル系化合物を重合することにより製造することができる。重合方法は、重合開始剤を用いる場合には、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が好適であり、これらの重合方法を組み合わせて用いてもよい。また、重合開始剤を用いない場合は、熱重合とすることができる。
【0021】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
【0022】
尚、上記スチレン系樹脂(A1)の製造の際には、単量体の全量を反応系に収容した状態で重合を開始してよいし、任意に選択した単量体成分を分割添加又は連続添加して重合を行ってもよい。更に、上記重合開始剤を用いる場合には、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。
【0023】
上記スチレン系樹脂(A1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、100,000〜300,000であり、好ましくは100,000〜270,000、より好ましくは120,000〜250,000である。上記Mwがこの範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物中の発泡剤〔B〕の含有量が安定し、経時による該含有量の変化を小さくすることができる。また、成形加工性、機械的強度に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0024】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔A〕中のスチレン系樹脂(A1)の含有量は、上記のとおりであり、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、5〜100質量%であり、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0025】
1−1−2.他の熱可塑性樹脂(A2)
この熱可塑性樹脂(A2)は、熱可塑性を有し、上記スチレン系樹脂(A1)を除く熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、上記スチレン系樹脂(A1)を除くスチレン系樹脂(A3);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステル化合物の1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリアミド系樹脂(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;オレフィン系樹脂;アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のエチレン系共重合体;ポリアセタール樹脂(POM);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;液晶ポリマー;イミド系樹脂;ケトン系樹脂;スルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0026】
上記スチレン系樹脂(A3)としては、ポリスチレン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等や、上記スチレン系樹脂(A1)以外である、例えば、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等のスチレン系(共)重合体(以下、「スチレン系(共)重合体(A31)」という。);ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等の、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物等を重合して得られたスチレン系ゴム強化樹脂(以下、「スチレン系樹脂(A32)」という。)等が挙げられる。これらのうち、スチレン系ゴム強化樹脂(スチレン系樹脂(A32))を含むことが好ましい。上記のスチレン系(共)重合体(A31)とスチレン系樹脂(A32)とを組み合わせてもよい。
【0027】
上記スチレン系樹脂(A32)は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(p)」という。)の存在下に、芳香族ビニル化合物等(以下、「ビニル系単量体(q1)」という。)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂を含有する樹脂である。
上記スチレン系樹脂(A32)は、このゴム強化ビニル系樹脂であってよいし、このゴム強化ビニル系樹脂と、上記スチレン系樹脂(A1)を除く、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等のスチレン系(共)重合体(A21)との混合物であってもよい。
【0028】
上記ゴム質重合体(p)は、室温でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)及び非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)が好ましい。更に、上記ゴム質重合体(p)は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。上記ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、上記非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)としては、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%以上。)されたものであってもよい。上記非ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
上記ゴム質重合体(p)として、ジエン系重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂は、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂であり、一般に、「ABS樹脂」といわれている。また、上記ゴム質重合体(p)として、エチレン・α−オレフィン及び/又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂は、一般に、「AES樹脂」といわれている。更に、上記ゴム質重合体(p)として、アクリル系ゴムを用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂は、アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂であり、一般に、「ASA樹脂」といわれている。
【0032】
上記ゴム強化ビニル系樹脂の形成に用いる上記ゴム質重合体(p)の形状は、特に限定されないが、粒子状である場合、その重量平均粒子径は、好ましくは100〜2,000nm、より好ましくは200〜1,000nmである。重量平均粒子径が上記範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる発泡成形品の成形加工性及び耐衝撃性に優れる。尚、上記重量平均粒子径は、電子顕微鏡写真を用いた画像解析法、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
【0033】
上記ゴム質重合体(p)が粒子状である場合、重量平均粒子径が上記範囲内にある限り、例えば、特開昭61−233010号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
【0034】
上記ゴム質重合体(p)を製造する方法としては、平均粒子径の調整等を考慮し、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。また、上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有する上記ゴム質重合体(p)の2種以上をブレンドする方法でもよい。
【0035】
上記ビニル系ゴム質重合体の形成に用いる上記ビニル系単量体(q1)は、芳香族ビニル化合物を含む。このビニル系単量体(q1)は、芳香族ビニル化合物のみであってよいし、この芳香族ビニル化合物と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物との組合せであってもよい。上記の芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(q1)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上からなる単量体(q11)、又は、芳香族ビニル化合物の1種以上、及び、この芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上を組み合わせた単量体(q12)を用いることができる。
【0036】
上記芳香族ビニル化合物としては、上記スチレン系樹脂(A1)の形成に用いられる芳香族ビニル化合物として例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0037】
上記シアン化ビニル化合物としては、上記スチレン系樹脂(A1)の形成に用いられるシアン化ビニル化合物として例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0038】
また、上記の(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等についても、上記スチレン系樹脂(A1)の形成に用いられる化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記ビニル系単量体(q1)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上、及び、この芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上の組み合わせ、即ち、上記単量体(q12)を用いることが好ましく、この場合の芳香族ビニル化合物と、それ以外の化合物との質量割合は、これらの合計を100質量%とした場合、通常、(2〜95)質量%/(98〜5)質量%、好ましくは(10〜90)質量%/(90〜10)質量%である。上記芳香族ビニル化合物の割合が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、得られる成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
【0040】
上記単量体(q12)としては、好ましくは、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の組合せ(以下、「単量体(q121)」という。)、並びに、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物((メタ)アクリル酸エステル化合物等)の組合せ(以下、「単量体(q122)」という。)である。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐熱性等の物性バランスが向上する。
【0041】
上記ゴム強化ビニル系樹脂は、上記ゴム質重合体(p)の存在下に、上記ビニル系単量体(q1)を重合して得られたものであり、以下に例示される。
[1]上記ビニル系単量体(q1)として上記単量体(q11)のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂の1種以上。
[2]上記ビニル系単量体(q1)として上記単量体(q121)のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂の1種以上。
[3]上記ビニル系単量体(q1)として上記単量体(q122)のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂の1種以上。
上記ゴム強化ビニル系樹脂としては、上記態様[2]及び[3]が好ましい。また、これらの態様[1]、[2]及び[3]のうちの2種又は3種の組合せであってもよい。
【0042】
上記ゴム強化ビニル系樹脂は、上記ゴム質重合体(p)の存在下に、上記ビニル系単量体(q1)を重合することにより製造することができる。重合方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、及び、塊状−懸濁重合が好ましい。
【0043】
尚、上記ゴム強化ビニル系樹脂の製造の際には、ゴム質重合体(p)及び上記ビニル系単量体(q1)は、反応系において、上記ゴム質重合体(p)全量の存在下に、上記ビニル系単量体(q1)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加しながら重合を行ってもよい。また、上記ゴム質重合体(p)の一部存在下、又は、非存在下に、上記ビニル系単量体(q1)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加してもよい。このとき、上記ゴム質重合体(p)の残部は、反応の途中で、一括して、分割して又は連続的に添加してもよい。
【0044】
上記ゴム強化ビニル系樹脂を100質量部製造する場合、上記ゴム質重合体(p)の使用量は、通常、5〜80質量部である。また、上記ビニル系単量体(q1)の使用量は、上記ゴム質重合体(p)100質量部に対し、通常、25〜1,900質量部である。
【0045】
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
【0046】
上記重合開始剤としては、上記スチレン系樹脂(A1)の製造方法の説明にて例示した化合物を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(q1)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0047】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(q1)全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0048】
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(q1)全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
【0049】
乳化重合は、ビニル系単量体(q1)、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、上記ゴム強化ビニル系樹脂を2種以上含有するゴム強化樹脂とする場合には、各ラテックスから樹脂を単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂をそれぞれ含むラテックスの混合物を凝固する等の方法がある。
【0050】
溶液重合、塊状重合及び塊状−懸濁重合による上記ゴム強化ビニル系樹脂の製造方法は、公知の方法を適用することができる。
【0051】
上記ゴム強化ビニル系樹脂のグラフト率は、通常、10〜200質量%、好ましくは15〜150質量%である。グラフト率が10質量%未満では、上記範囲にあれば、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の加工性に優れ、得られる発泡成形品の表面外観及び耐衝撃性に優れる。
【0052】
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂1グラム中の上記ゴム質重合体(p)をxグラム、該ゴム強化ビニル系樹脂1グラムをアセトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、下記式により求められる値である。但し、該ゴム質重合体(p)がアクリル系ゴムである場合には、アセトンの代わりにアセトニトリルを用いる。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
【0053】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂のアセトン(但し、上記ゴム質重合体(p)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを用いる。)に可溶な成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常、0.1〜1.0dl/g、好ましくは0.2〜0.9dl/gである。この極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、得られる成形品の耐衝撃性にも優れる。
【0054】
上記のグラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を調整することにより、容易に制御することができる。
【0055】
尚、上記方法を適用し、ゴム質重合体(p)の存在下に、ビニル系単量体(q1)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂は、通常、ビニル系単量体(q1)がゴム質重合体(p)にグラフト重合しているグラフト化ゴム質重合体を含むが、製造条件によっては、ゴム質重合体(p)にグラフトしていない、遊離した、ビニル系単量体(q1)の(共)重合体を更に含むことがある。この(共)重合体の重量平均分子量は、通常、50,000〜400,000であるが、その一部又は全てが、「全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000である」性質を有するのであれば、その質量分は、上記スチレン系樹脂(A1)に含まれるものとする。
【0056】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(A2)が、スチレン系樹脂(A32)である場合、即ち、上記成分〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)及び(A32)からなる場合、上記成分〔A〕中のスチレン系樹脂(A32)の含有量は、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、10〜90質量%であり、好ましくは30〜87質量%、より好ましくは50〜85質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0057】
上記ポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
【0059】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
【0061】
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した場合、好ましくは12,000〜40,000、より好ましくは14,000〜30,000である。この粘度平均分子量が高すぎると、流動性が十分でなく、成形加工性が低下する場合がある。一方、低すぎると、耐衝撃性、靭性及び耐薬品性が十分でない場合がある。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(A2)が、ポリカーボネート樹脂である場合、即ち、上記成分〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)及びポリカーボネート樹脂からなる場合、上記成分〔A〕中のポリカーボネート樹脂の含有量は、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、50〜95質量%であり、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0064】
上記アクリル系樹脂としては、上記のスチレン系樹脂(A1)、(A31)及び(A32)を除く、(メタ)アクリル酸エステル化合物の1種以上を用いた(共)重合体が用いられる。このアクリル系樹脂を構成する、(メタ)アクリル酸エステル化合物よりなる単量体単位の含有量は、全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、通常、50質量%以上である。他の単量体単位としては、芳香族ビニル化合物、マレイミド系化合物、不飽和結合を有する酸無水物、不飽和酸等よりなるものが挙げられる。
【0065】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(A2)が、アクリル系樹脂である場合、即ち、上記成分〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)及びアクリル系樹脂からなる場合、上記成分〔A〕中のアクリル系樹脂の含有量は、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、30〜90質量%であり、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは55〜85質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0066】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。かかる他の単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、1−ペンテン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、シアン化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アリールエーテル、ジアルキルマレイン酸、フマル酸エステル、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルシラン等が挙げられる。
その平均重合度は、通常、500〜8,000である。
【0067】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(A2)が、塩化ビニル系樹脂である場合、即ち、上記成分〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)及び塩化ビニル系樹脂からなる場合、上記成分〔A〕中の塩化ビニル系樹脂の含有量は、上記成分〔A〕を100質量%とした場合、50〜95質量%であり、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0068】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂〔A〕のアセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(a2)の合計量は、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%である。この範囲にあると、耐薬品性に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0069】
1−2.発泡剤〔B〕
この成分〔B〕は、樹脂用の発泡剤として用いられているものであれば、特に限定されない。通常、炭化水素及びハロゲン化炭化水素を含む炭化水素系化合物、炭酸ガス、窒素ガス等が用いられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
上記炭化水素系化合物のうち、炭化水素としては、エタン、n−プロパン、イソプロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、イソブチレン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチル、塩化エチル、ジクロロエタン、クロロフォルム、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、フルオロクロロメタン、フルオロクロロエタン、ジクロロジフルオロメタン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、酸素原子を含む化合物である石油エーテル等を用いることもできる。
【0071】
上記成分〔B〕は、1種単独で用いた場合、及び、2種以上を組み合わせて用いた場合のいずれにおいても、沸点(大気圧)の平均値が、−10℃〜55℃である化合物を、好ましくは80〜100%(質量%又は体積%)、より好ましくは90〜100%(質量%又は体積%)含むことが好ましい。このような化合物としては、炭素原子数3〜6の脂肪族炭化水素が挙げられ、特に、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン及びイソペンタンから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。これらを用いると、発泡性及び微分散性に優れる。
【0072】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔B〕の含有割合は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、好ましくは2.5〜8質量部、より好ましくは3〜7質量部である。上記範囲にあることにより、本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物により、発泡倍率が高く、均一なセル径を有する発泡成形品を得ることができる。
【0073】
1−3.添加剤
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、発泡助剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光染料等が挙げられる。
【0074】
上記発泡助剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレンジクロライド、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の有機溶剤が挙げられる。この発泡助剤は、上記成分〔B〕として、n−プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロヘキサン等用いる場合に併用することにより、上記の成分〔A〕及び〔B〕の相溶性を向上させることができる。
上記発泡助剤の含有量は、上記成分〔B〕100質量部に対して、通常、0.1〜2質量部である。
【0075】
上記充填剤としては、タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、炭素バルン、木炭粉末、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、カーボンブラック、グラファイト、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、各種ウィスカー、木粉、パルプ、もみがら、ペーパースラッジ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0076】
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0077】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0078】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ヒンダードアミン類と併用すると好ましい場合がある。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.05〜2質量部である。
【0079】
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0080】
上記帯電防止剤としては、帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、これらは、イオン伝導型でもよいし、電子伝導型でもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0081】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0082】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0083】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上記難燃剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜30質量部である。
尚、本発明の発泡剤含有マスターバッチに難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0087】
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記着色剤の含有量は、上記成分〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.0005〜10質量部である。
【0088】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、〔D〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)、及び、発泡剤〔B〕を含有し、該発泡剤〔B〕の含有割合が上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して2.5〜10質量部である発泡剤含有マスターバッチ(以下、「成分〔D〕」ともいう。)と、〔E〕熱可塑性樹脂〔C〕(但し、上記スチレン系樹脂(A1)を除く。以下、「成分〔E〕」ともいう。)を含み且つ発泡剤を含まない熱可塑性樹脂体と、が混合されてなるものであることが好ましい。
【0089】
上記発泡剤含有マスターバッチ〔D〕は、スチレン系樹脂(A1)及び発泡剤〔B〕を含有する。上記発泡剤含有マスターバッチにおいて、上記成分〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、好ましくは2.5〜8質量部、より好ましくは3〜7質量部である。上記範囲にあることにより、発泡倍率の高い発泡成形品を効率よく製造することができる。
尚、上記発泡剤含有マスターバッチ〔D〕は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、20質量部以下の熱可塑性樹脂〔C〕を含有してもよい。
【0090】
また、上記成分〔D〕は、上記に例示した、発泡助剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光染料等の添加剤を含んでもよい。
【0091】
上記成分〔D〕の形状及び大きさは、特に限定されず、形状について、例えば、平板状(円形、角形等)、柱状(円柱、角柱等)、線状等とすることができる。
【0092】
上記成分〔D〕は、上記スチレン系樹脂(A1)を溶融状態としながら、上記発泡剤〔B〕を配合し、混練することにより製造することができ、例えば、上記スチレン系樹脂(A1)を溶融混練する工程(以下、「溶融工程」という。)、溶融工程により得られた溶融状態の上記スチレン系樹脂(A1)に、上記成分〔B〕、又は、上記成分〔B〕及び発泡助剤を供給し、この混合物を溶融混練する工程(以下、「混練工程」という。)、混練工程により得られた混練物を線状体等とし、直ぐに上記線状体を冷却する工程(以下、「冷却工程」という。)、並びに、冷却した線状体を切断する工程(以下、「切断工程」という。)を、順次、進める製造方法により製造することができる。
【0093】
上記溶融工程においては、単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等の押出機を用い、上記スチレン系樹脂(A1)を、その溶融温度以上で溶融混練する。
その後、上記混練工程においては、上記溶融工程において用いた押出機が、あるいは、別途準備した、上記例示した押出機が用いられ、溶融状態の上記スチレン系樹脂(A1)中に、液化させた上記成分〔B〕、又は、液化させた上記成分〔B〕及び発泡助剤を供給し、通常、上記スチレン系樹脂(A1)の溶融温度以上で溶融混練する。
【0094】
次いで、上記冷却工程においては、上記混練工程により得られた混練物を、押出機の出口に配設された、例えば、直径1〜5mmの押出孔から押し出して、連続した線状体等を形成する。そして、押し出された線状体を水等の冷媒の中に導入し、冷却する。
その後、冷却された線状体を適当な長さに切断することにより、所望の大きさの発泡剤含有マスターバッチを製造することができる。
【0095】
次に、上記熱可塑性樹脂体〔E〕は、上記スチレン系樹脂(A1)を除く熱可塑性樹脂〔C〕を含み且つ発泡剤を含まない物体である。
上記熱可塑性樹脂〔C〕は、上記熱可塑性樹脂(A2)をそのまま適用することができる。好ましい熱可塑性樹脂〔C〕は、スチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂である。
尚、上記熱可塑性樹脂体〔E〕は、上記熱可塑性樹脂〔C〕100質量部に対して、20質量部以下のスチレン系樹脂(A1)を含有してもよい。
【0096】
上記熱可塑性樹脂〔C〕が、スチレン系樹脂(A3)を含む場合には、このスチレン系樹脂(A3)は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られたゴム強化スチレン系樹脂を含むことが好ましい。このゴム強化スチレン系樹脂について、アセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(a2)の合計量の割合は、好ましくは25〜35質量%、より好ましくは26〜33質量%である。上記単位(a2)の合計量が上記範囲にあれば、発泡倍率が高く且つ成形外観性に優れる発泡成形品を容易に得ることができる。
【0097】
上記成分〔E〕は、発泡剤以外の添加剤を含んでもよい。例えば、上記に例示した、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光染料等を含んでもよい。
【0098】
上記成分〔E〕の形状及び大きさは、特に限定されず、形状について、例えば、粉末状、球状、略球状、平板状(円形、角形等)、柱状(円柱、角柱等)、線状等とすることができる。
【0099】
上記成分〔D〕及び〔E〕を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記スチレン系樹脂(A1)と、上記熱可塑性樹脂(A2)との和を100質量%とした場合、上記スチレン系樹脂(A1)の含有量は、5〜100質量%であり、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%である。上記スチレン系樹脂(A1)の含有量が上記範囲にあれば、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品の形成に好適である。
【0100】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物において、上記成分〔E〕が上記スチレン系ゴム強化樹脂を含む場合、上記成分〔D〕に含まれるスチレン系樹脂(A1)を構成するシアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(a2)の合計量と、上記成分〔E〕のアセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(a2)の合計量との和は、上記スチレン系樹脂(A1)を構成する単量体単位の合計量と、上記成分〔E〕を構成する成分〔C〕を構成する単量体単位の合計量との和を100質量%とした場合に、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%である。この範囲にあると、耐薬品性に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0101】
2.発泡成形品
本発明の発泡成形品は、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする。
本発明の発泡成形品は、発泡セルが均一である。また、密度は、通常、40〜500kg/m、好ましくは50〜400kg/mである。
【0102】
本発明の発泡成形品の形状は、目的、用途等により選択され、板状(シート状)、筒状、半筒状、線状、塊状等とすることができる。
【0103】
本発明の発泡成形品は、加熱溶融させた上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物をダイから押し出すと同時に発泡させる押出成形法、加熱溶融させた上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を金型内に注入すると同時に発泡させる射出成形法、真空成形法、圧空成形法等により製造することができる。いずれの場合も、発泡倍率を2〜25倍という高倍率とすることができ、得られる発泡成形品の外観性に優れる。
【0104】
上記の押出成形法及び射出成形法において、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融する場合には、スクリューを備える押出機等が用いられるが、その加熱条件は、通常、上記成分〔A〕の種類により選択される。
上記成分〔A〕が、スチレン系樹脂(A1)及び(A3)からなる場合、加熱温度は、好ましくは130〜200℃である。
上記成分〔A〕が、スチレン系樹脂(A1)及びポリカーボネート樹脂からなる場合、加熱温度は、好ましくは130〜240℃である。
上記成分〔A〕が、スチレン系樹脂(A1)及び(A3)並びにポリカーボネート樹脂からなる場合、加熱温度は、好ましくは130〜240℃である。
上記成分〔A〕が、スチレン系樹脂(A1)及びアクリル系樹脂からなる場合、加熱温度は、好ましくは130〜200℃である。
また、上記成分〔A〕が、スチレン系樹脂(A1)及び塩化ビニル系樹脂からなる場合、加熱温度は、好ましくは120〜200℃である。
【0105】
本発明の発泡成形品の製造方法は、好ましくは、上記の発泡剤含有マスターバッチ〔D〕及び熱可塑性樹脂体〔E〕を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いる方法である。この発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、そのまま用いてよいし、熱分解型化学発泡剤との混合物を用いてもよい。この熱分解型化学発泡剤としては、特に限定はなく、ADCA系発泡剤、DPT系発泡剤、OBSH系発泡剤等の有機系発泡剤、炭酸水素ナトリウム等の無機系発泡剤を用いることができる。
【0106】
上記の好ましい製造方法において、上記発泡剤含有マスターバッチ〔D〕を構成するスチレン系樹脂(A1)の溶融粘度Vdと、上記熱可塑性樹脂体〔E〕の溶融粘度Veとの比(Vd/Ve)は、好ましくは0.40〜0.70、より好ましくは0.43〜0.65、更に好ましくは0.47〜0.60である。上記範囲にあれば、上記の発泡剤含有マスターバッチ〔D〕及び熱可塑性樹脂体〔E〕の混練性が向上し、成形加工性が改良される。また、発泡性及び微分散性に優れ、特に、発泡倍率が高く、発泡セルが均一であり且つ成形外観性に優れる発泡成形品を得ることができる。尚、上記溶融粘度は、後述する実施例において、剪断粘度として測定されるものである。
【0107】
上記の好ましい製造方法において、上記の発泡剤含有マスターバッチ〔D〕及び熱可塑性樹脂体〔E〕を溶融混練する場合には、単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等の押出機が用いられる。
上記熱可塑性樹脂体〔E〕を構成する熱可塑性樹脂〔C〕が、スチレン系樹脂(A3)である場合、溶融温度は、好ましくは130〜200℃である。
上記熱可塑性樹脂〔C〕が、ポリカーボネート樹脂である場合、溶融温度は、好ましくは130〜240℃である。
上記熱可塑性樹脂〔C〕が、スチレン系樹脂(A3)及びポリカーボネート樹脂である場合、溶融温度は、好ましくは130〜240℃である。
上記熱可塑性樹脂〔C〕が、アクリル系樹脂である場合、溶融温度は、好ましくは130〜200℃である。
また、上記熱可塑性樹脂〔C〕が、塩化ビニル系樹脂である場合、溶融温度は、好ましくは120〜200℃である。
【0108】
上記の成分〔D〕及び〔E〕の混練物を得た後、上記の押出成形法、射出成形法等を適用することにより、発泡成形品を製造することができる。このような方法で製造する場合にも、発泡倍率を2〜25倍という高倍率とすることができ、表面に、ほとんど破裂していない緻密なスキン層を備える発泡成形品が得られ、外観性に優れる。
【0109】
本発明の発泡成形品は、表示板等の土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;容器、トレー等の日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;壁、床、枠、家具、化粧シート、間仕切り、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード、カーポート等の住宅・事務所用内外装材;玩具;遊戯機等の緩衝材、補強材、断熱材、芯材、代替合板等として用いることができる。
【0110】
更に、本発明の発泡成形品は、用途によっては、他の成形品、部材等と一体化させ、複合化させてなる物品として、これを用いることができ、上記用途に適用可能である。
【0111】
3.積層品
本発明の積層品は、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(X)と、他の材料からなる部材(Y)とが積層してなることを特徴とする。
本発明の積層品は、上記本発明の発泡成形品と同じ用途に好適である。その形状も上記本発明の成形品と同様とすることができる。
【0112】
上記成形部(X)において、発泡セルは均一である。また、密度は、通常、40〜500kg/m、好ましくは50〜400kg/mである。
【0113】
上記部材(Y)を構成する他の材料は、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を除くものであれば、特に限定されず、樹脂(組成物)からなるもの、他の有機材料からなるもの、無機材料からなるもの等が挙げられる。
樹脂(組成物)は、熱可塑性樹脂(組成物)であってよいし、硬化樹脂(組成物)であってもよい。熱可塑性樹脂(組成物)である場合には、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と異なる熱可塑性樹脂組成物(以下、「熱可塑性樹脂組成物(N)」という。)である。この熱可塑性樹脂組成物(N)に含まれる熱可塑性樹脂としては、本発明の積層品の用途等により選択されるが、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔A〕と同じであってよいし、異なってもよい。また、この熱可塑性樹脂組成物(N)は、発泡剤を含有してよいし、含有しなくてもよい。
無機材料は、金属、合金、酸化物、炭化物、窒化物、金属塩等が挙げられる。
尚、本発明の積層品において、上記部材(Y)の層数は、1層でも、2層でも、3層以上でもよいし、上記成形部(X)の両面に備えてもよい(図1〜図3参照)。
【0114】
図1の積層品1は、成形部(X)11の上方に、部材(Y)12が積層されてなることを示す断面図である。部材(Y)12は、成形部(X)の全面にあってよいし、一部にのみあってもよい。成形部(X)11及び部材(Y)12の各厚さは、目的、用途等により、選択される。成形部(X)11が部材(Y)12より厚くてよいし、その逆でもよい。また、図2のように同じであってもよい。更に、積層品として、均一の厚さであってよいし、部分的に異なる厚さであってもよい。例えば、上記の成形部(X)11及び部材(Y)12の好ましい厚さは、それぞれ、1〜50mm、及び、0.1〜5mmである。
上記態様の積層品の製造方法としては、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて成形部(X)11を形成した後、別途、作製した部材(Y)12を配設する方法;上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、上記部材(Y)12を形成することとなる熱可塑性樹脂組成物(N)とを用いて、共押出する方法;予め形成した部材(Y)12の表面に、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(X)11を配設する方法等が挙げられる。
【0115】
図2の積層品1’は、部材(Y)12の上方に、成形部(X)11が積層されてなり、両者の厚さが同一であることを示す断面図である。成形部(X)11及び部材(Y)12の各厚さは、目的、用途等により、選択される。成形部(X)11が部材(Y)12より厚くてよいし、その逆でもよい。各厚さは、図1の場合と同様とすることができる。また、成形部(X)11は、部材(Y)12の全面にあってよいし、一部にのみあってもよい。
【0116】
図2で示される積層品1’が、粘着用フィルム(粘着用シート)又は接着用フィルム(接着用シート)である場合には、部材(Y)12は、粘着層又は接着層である。
上記部材(Y)12が粘着層である場合、成形部(X)11及び部材(Y)12(粘着層)の好ましい厚さは、それぞれ、1〜50mm、及び、0.02〜0.1mmである。また、上記部材(Y)12(粘着層)を形成する粘着剤組成物としては、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等で塗工するエマルジョン型組成物;有機溶剤型組成物;押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法等で形成する熱溶融型組成物等があり、いずれも用いることができる。例えば、公知のアクリル系重合体、ジエン系重合体、水素添加ジエン系重合体等を含む組成物を用いることができる。尚、上記成形部(X)11と、上記粘着剤組成物との接着性を向上させるために、上記部材(Y)12の形成前に、上記成形部(X)11に直接、又は、上記成形部(X)11の表面に、コロナ処理等を行ってよいし、アンカーコート層を形成してもよい。アンカーコート層とする場合には、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエステル又はアクリル樹脂が用いられ、厚さが0.1〜5μm程度の層である。尚、上記アンカーコート層は、水性溶液又は溶剤溶液として塗布し、乾燥することにより形成することができる。上記部材(Y)12(粘着層)の形成後、この層を保護するために、保護層として、通常、剥離紙等を配設してもよい。
【0117】
更に、上記部材(Y)12が接着層である場合、成形部(X)11及び部材(Y)12(接着層)の好ましい厚さは、それぞれ、1〜50mm、及び、0.02〜0.1mmである。また、上記部材(Y)12(接着層)を形成する接着剤組成物としては、公知のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物を用いることができる。尚、上記部材(Y)12(接着層)の形成後、本発明の積層品をすぐに使用しない場合には、接着が発現しない状態としておく必要がある。
更に、上記部材(Y)12が粘着層又は接着層である場合、通常、その表面に、更に剥離紙等が配設される。
【0118】
図2で示される積層品1’において、部材(Y)12が補強性部材である場合、上記部材(Y)12を構成する材料としては、熱可塑性樹脂(組成物)及び硬化樹脂(組成物)のいずれでもよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ASA樹脂;ポリスチレン、ポリスルホン等から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物(N)であることが好ましい。各種添加剤が配合されたものであってもよい。尚、この場合の成形部(X)11及び部材(Y)12の好ましい厚さは、それぞれ、0.1〜15mm、及び、0.1〜15mmである。
【0119】
上記のような、補強性の部材(Y)12を含む態様の積層品1’の製造方法としては、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて成形部(X)11を形成した後、部材(Y)12を配設する方法;上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、上記部材(Y)12を形成することとなる熱可塑性樹脂組成物(N)とを用いて、共押出する方法;予め形成した部材(Y)12の表面に、上記本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(X)11を配設する方法等が挙げられる。
【0120】
また、本発明の積層品は、更に、図3のような断面構造を備える積層品とすることもできる。即ち、図3の積層品1"は、成形部(X)11の両面に部材(Y)12a及び12bを備える。
尚、上記部材(Y)12a及び/又は12bが、粘着層又は接着層である場合、通常、その表面に、更に剥離紙等が配設される。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0122】
1.原料成分
下記の実施例及び比較例において用いる成分を示す。
【0123】
1−1.発泡剤含有マスターバッチ形成用樹脂A
(1)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)
スチレン単位量79%、アクリロニトリル単位量21%の共重合体であり、Mwは16万である。下記方法による剪断粘度は8,000ポアズであった。
(2)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−2)
スチレン単位量84%、アクリロニトリル単位量16%の共重合体であり、Mwは15万である。下記方法による剪断粘度は7,000ポアズであった。
(3)アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−3)
スチレン単位量70%、アクリロニトリル単位量30%の共重合体であり、Mwは20万である。下記方法による剪断粘度は14,500ポアズであった。
(4)ポリスチレン樹脂(A−4)
PSジャパン社製「HF77」(商品名)を用いた。Mwは、22万である。下記方法による剪断粘度は12,000ポアズであった。
【0124】
[剪断粘度測定方法]
ツインキャピラリーレオメーター(型式「RH7−2」、ボーリン社製)を用いた。温度管理された円筒形バレル内に樹脂(測定試料)を入れて可塑化させ、バレル上部に設置されたプランジャーより一定の速度でバレル内の樹脂(測定試料)を押し、バレル下部に設置された、直径1mm、長さ16mm、入口角180度のキャピラリーより、樹脂(測定試料)を排出させた。測定される剪断粘度は、温度220℃、剪断速度100/秒におけるバレル内の圧力から得られるが、この剪断粘度は、樹脂(測定試料)の粘性抵抗に加え、キャピラリー出入口部の流動面積急変による抵抗が含まれる。従って、剪断粘度としては、異なるL/Dのキャピラリー又はL/Dが0に近いオリフィスを用い、上記の温度及び剪断速度において圧力測定を行い、バーグレー補正を行った。
【0125】
1−2.発泡剤B
ブタン(大気圧における沸点−0.5℃)を用いた。
【0126】
1−3.熱可塑性樹脂体E
(1)ABS樹脂(E−1)
以下の方法で得られた樹脂を用いた。
体積平均粒子径280nm及びトルエン不溶分80%のポリブタジエンゴム粒子を含む分散液中で、スチレン及びアクリロニトリルを乳化重合し、ゴム強化ビニル系樹脂を含有するラテックスを得た。次いで、このラテックスに、硫酸水溶液を投入し、ゴム強化ビニル系樹脂を凝固させた後、水洗及び乾燥し、粉体状とした。得られたゴム強化ビニル系樹脂は、グラフト率が55%であり、ポリブタジエン量が51%であり、スチレン単位量が35%であり、アクリロニトリル単位量が14%であった。
一方、スチレン単位量71%及びアクリロニトリル単位量29%からなり、Mwが15万であるアクリロニトリル・スチレン共重合体を、別途準備し、上記ゴム強化ビニル系樹脂と210℃で混練し、ポリブタジエン量が15%である「ABS樹脂(E−1)」を得た。以下において用いたABS樹脂(E−1)は円柱状であり、大きさは、およそ外径2mm及び長さ3mmである。
得られたABS樹脂(E−1)のMFR(ISO 1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は5.1g/10分、剪断粘度は14,500ポアズであった。また、アセトン可溶成分におけるアクリロニトリル単位量は29%であり、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.71dl/gであった。
【0127】
(2)ABS樹脂(E−2)
上記ABS樹脂(E−1)と同様にして、グラフト率が49%であるゴム強化ビニル系樹脂を含み、ポリブタジエン量が15%である「ABS樹脂(E−2)」を得た。以下において用いたABS樹脂(E−2)は円柱状であり、大きさは、およそ外径2mm及び長さ3mmである。
得られたABS樹脂(E−2)のMFR(ISO 1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は5.1g/10分、剪断粘度は11,000ポアズであった。また、アセトン可溶成分におけるアクリロニトリル単位量が21%であり、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.73dl/gであった。
【0128】
(3)ABS樹脂(E−3)
上記ABS樹脂(E−1)と同様にして、グラフト率が57%であるゴム強化ビニル系樹脂を含み、ポリブタジエン量が15%である「ABS樹脂(E−3)」を得た。以下において用いたABS樹脂(E−3)は円柱状であり、大きさは、およそ外径2mm及び長さ3mmである。
得られたABS樹脂(E−3)のMFR(ISO 1133に準拠、温度220℃、荷重98N)は5.5g/10分、剪断粘度は17,200ポアズであった。また、アセトン可溶成分におけるアクリロニトリル単位量が40%であり、アセトン可溶成分の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.69dl/gであった。
【0129】
(4)ポリカーボネート樹脂(E−4)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリ−4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート「NOVAREX 7020A」(商品名)を用いた。以下において用いたポリカーボネート樹脂(E−4)は粉末状であり、大きさは、およそ外径2.5mmである。
【0130】
(5)アクリル系樹脂(E−5)
三菱レイヨン社製メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル共重合体「アクリペット VH5」(商品名)を用いた。以下において用いたアクリル系樹脂(E−5)は円柱状であり、大きさは、およそ外径2mm及び長さ3mmである。
【0131】
(6)塩化ビニル樹脂(E−6)
ヴイテック社製「ビニカPVC SG1300」(商品名)を用いた。重合度は1,300である。以下において用いた塩化ビニル樹脂(E−6)の形状は粒子状であり、大きさは、およそ外径0.2mmである。
【0132】
2.発泡剤含有マスターバッチの製造
製造例1
シリンダー温度を170〜250℃に設定した120mm単軸押出機に、アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)100部を供給してこれを溶融した。その後、発泡剤Bの4.5部を上記押出機後部の注入口から供給し、溶融混練した。
次いで、上記押出機の出口に配設した、50穴(2.5mmφ/穴)のダイを通して、ストランド化させて、そのまま直接、水槽に導入した。水槽にて冷却後、長さ3mmに切断し、外径約2mmの発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)を得た。
【0133】
上記発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)における発泡剤含有量を以下の方法により測定したところ、発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)の構成は、表1に示されるような結果を得た。
[ブタン含有量測定方法]
発泡剤含有マスターバッチ約10gを、200℃のホットプレート上に載置し、5分間加熱し、加熱前後の質量を精秤し、その差をブタン含有量とした。
【0134】
また、上記発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)の成形外観性を目視観察し、下記基準で判定した。その結果を表1に併記した。
○;表面が滑らかであった。
×;表面がスポンジのようになっていた。
【0135】
製造例2〜4
発泡剤含有マスターバッチ形成用樹脂A及び発泡剤Bを、それぞれ、表1に示す割合で用いた以外は、実施例1と同様にして発泡剤含有マスターバッチ(MB−2)〜(MB−4)を製造し、各種評価を行った。その結果を表1に示した。
【0136】
【表1】

【0137】
3.発泡成形用熱可塑性樹脂組成物の調製及びそれを用いた発泡成形品の製造
実施例1
発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)25部と、熱可塑性樹脂体(E−1)75部とをヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、200℃で溶融混練した。次いで、8mmφの丸ダイスに、30mmφ又は23mmφのサイジングダイを配設した出口から排出させ、下記計算方法による発泡倍率が3.5倍である発泡成形品を得た。
[発泡倍率計算方法]
発泡成形品の外形寸法から求めた、嵩体積、及び、樹脂の比重から、質量計算値W1を算出し、このW1と、質量実測値W2との比を発泡倍率とした。
発泡倍率(倍) = W1/W2
尚、計算に用いた樹脂の比重は、ABS系樹脂;1.06g/cm、PC樹脂;1.17g/cm、アクリル系樹脂;1.16g/cm、塩化ビニル系樹脂;1.32g/cmである。
【0138】
また、得られた発泡成形品について、成形外観性を目視観察し、下記基準により判定した(表2参照)。
◎;歪みのない発泡成形品が得られ、その表面が滑らかであった。
○;歪みのない発泡成形品が得られたが、その表面の一部が毛羽立っていた。
△;わずかに歪みのある発泡成形品が得られ、その表面の一部が毛羽立っていた。
×;歪みのある発泡成形品が得られ、その表面のほぼ全面が毛羽立っていた。
【0139】
尚、表2に、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物に含有される樹脂の全量に対する、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂[アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)又は(A−2)]の含有割合;芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂[アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−1)及び/又は(A−2)]の含有量に対する、発泡剤B全量の含有割合;並びに、熱可塑性樹脂体を構成する樹脂をアセトン処理した際のアセトン可溶成分を構成する単量体単位の全量に対する、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位(a2)の合計量の割合を併記した。
【0140】
実施例2、3、8及び9
表2に従って、発泡剤含有マスターバッチ及び熱可塑性樹脂体を用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0141】
実施例4
発泡剤含有マスターバッチ(MB−2)25部と、熱可塑性樹脂体(E−4)75部とをヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、230℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0142】
実施例5
発泡剤含有マスターバッチ(MB−2)25部と、熱可塑性樹脂体(E−5)75部とをヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、200℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0143】
実施例6
発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)25部と、熱可塑性樹脂体(E−6)75部とをヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、190℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0144】
実施例7
発泡剤含有マスターバッチ(MB−1)25部と、熱可塑性樹脂体(E−1)75部とをヘンシェルミキサーで混合し、発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、この発泡成形用熱可塑性樹脂組成物と、主成分が炭酸水素ナトリウムである吸熱分解型発泡剤(「セルボンSC−P」、永和化成社製)2部とを、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、200℃で溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0145】
比較例1及び2
表2に従って、発泡剤含有マスターバッチ及び熱可塑性樹脂体を用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0146】
比較例3
表2に従って、発泡剤含有マスターバッチ及び熱可塑性樹脂体を用いた以外は、実施例4と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0147】
比較例4
熱可塑性樹脂体(E−1)100部と、主成分が炭酸水素ナトリウムである吸熱分解型発泡剤(「セルボンSC−P」、永和化成社製)2部とを、スクリューを備える押出機(「FS50−22型」、池貝社製)に投入し、200℃で溶融させた。その後、実施例1と同様にして、発泡成形品を製造し、評価した。その結果を表2に示した。
【0148】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物は、表示板等の土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;容器、トレー等の日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;壁、床、枠、家具、化粧シート、間仕切り、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード、カーポート等の住宅・事務所用内外装材;玩具;遊戯機等の緩衝材、補強材、断熱材、芯材、代替合板等の形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0151】
1,1’及び1";積層品
11;成形部(X)
12,12a及び12b;部材(Y)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)を含む熱可塑性樹脂と、〔B〕発泡剤と、を含有する発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、
上記発泡剤〔B〕の含有量は、上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して、2.5〜10質量部であり、且つ、上記スチレン系樹脂(A1)の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量%に対して、5〜100質量%であることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記スチレン系樹脂(A1)を除くスチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種と、上記スチレン系樹脂(A1)と、を含む請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、
〔D〕全単量体単位の合計を100質量%とした場合に、芳香族ビニル化合物よりなる単量体単位75〜95質量%、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位5〜25質量%及び他のビニル系化合物よりなる単量体単位0〜20質量%からなり、且つ、重量平均分子量が100,000〜300,000であるスチレン系樹脂(A1)、及び、発泡剤〔B〕を含有し、該発泡剤〔B〕の含有割合が上記スチレン系樹脂(A1)100質量部に対して2.5〜10質量部である発泡剤含有マスターバッチと、
〔E〕熱可塑性樹脂〔C〕(但し、上記スチレン系樹脂(A1)を除く。)を含み且つ発泡剤を含まない熱可塑性樹脂体と、が混合されてなることを特徴とする発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
上記発泡剤〔B〕が、沸点の平均値が−10℃〜55℃である化合物を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
上記熱可塑性樹脂〔C〕が、スチレン系樹脂(A3)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂から選ばれた少なくとも1種を含む請求項3又は4に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
上記スチレン系樹脂(A3)が、スチレン系ゴム強化樹脂を含む請求項2又は5に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
上記スチレン系ゴム強化樹脂が、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた樹脂であり、該スチレン系ゴム強化樹脂のアセトン可溶成分又はアセトニトリル可溶成分を構成する単量体単位の合計量の和を100質量%とした場合に、シアン化ビニル化合物よりなる単量体単位の合計量の割合が、25〜35質量%である請求項6に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする発泡成形品。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形部(X)と、他の材料からなる部材(Y)とが積層してなることを特徴とする積層品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−150476(P2008−150476A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339025(P2006−339025)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(390029171)大日プラボード株式会社 (2)
【出願人】(592176756)三協化成産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】