説明

発泡樹脂成形機

【課題】用役通路の気密性を高く確保することができる発泡樹脂成形機を提供する。
【解決手段】発泡樹脂成形機を、ダイプレート1に装着され内部に蒸気室21を有する金型2と、蒸気室21に連通する用役通路41が設けられた金型側の中継管部材4と、前記用役通路41に接続されるダイプレート側の管継手5とを備えるものとして、中継管部材4と管継手5との間にOリング54を配したうえに、金型2の外部には中継管部材4を管継手5の方向に押圧して中継管部材4と管継手5の間をシールするシールアジャスト装置7を配設した。シールアジャスト装置7は、金型2の外部に突設されたネジ装着基台71と、このネジ装着基台71に螺入された中継管部材押圧用のネジ72とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品を製造するための発泡樹脂成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡成形の分野で用いられている発泡樹脂成形機として、例えば特許文献1に開示されたものがある。このものは、蒸気室を有する発泡成形用の金型と、金型が装着されたアダプタと、アダプタが装着されたダイプレートと、アダプタに設けられたアダプタ側中継ブロックと、アダプタ側中継ブロックに接続される個別継手と、金型側通路が形成されている金型側中継ブロックと、金型をアダプタに着脱する金型着脱装置とからなる。
【0003】
上記した発泡樹脂成形機においては、金型はアダプタを介してダイプレートに装着されており、配管系は、個別継手が接続されたアダプタ側中継ブロックと、金型側中継ブロックによって接続されることになるので、金型をアダプタに着脱するだけで配管系の着脱も同時に行われ、金型着脱作業時間の短縮を図ることができる。
【0004】
しかしながら、上記の発泡樹脂成形機においては、蒸気、水、エアなどの用役配管が接続される個別継手がアダプタ側中継ブロックに当接され、このアダプタ側中継ブロックに金型側中継ブロックが当接されるので、接合界面が二つ存在することとなって用役通路の気密性を確保する点で好ましくない。また、アダプタ側中継ブロックに金型側中継ブロックが単に当接されているだけであるので、熱歪みなどの影響によって接合界面のシール性が阻害されやすい。したがって、成形後に蒸気室の蒸気を抜いて素早く冷却しようとした場合に、効果的に冷却することができない。また、成型品を高圧エアにより金型から離型させる際には、高圧エアが漏れて成型品を素早く離型することができないという問題がある。
【特許文献1】特開平08−155985号公報 (図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、用役通路の気密性を高く確保することができる発泡樹脂成形機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る発泡樹脂成形機は、ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にシール部材を配したうえに、金型の外部には中継管部材を管継手の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の発泡樹脂成形機は、ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にシール部材を配したうえに、ダイプレートの外部には管継手を中継管部材の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の発泡樹脂成形機は、ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にOリングを配したうえに、金型の外部には中継管部材を管継手の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とするものである。
【0009】
シールアジャスト装置を、中継管部材又は管継手を、相手の管継手又は中継管部材の方向に押圧するための押圧手段を備えるものとすることができ、また、シール部材としてOリング又はパッキン又はガスケットを用いることができる。
【0010】
上記した発明において、シールアジャスト装置を、金型の外部に突設されたネジ装着基台と、このネジ装着基台に螺入された中継管部材押圧用のネジとからなるものとすることができるし、シールアジャスト装置を、ダイプレートの外部に突設されたネジ装着基台と、このネジ装着基台に螺入された管継手押圧用のネジとからなるものとすることができる。
【0011】
また、ダイプレートの外部に管継手の支持台を突設して、この支持台に管継手を装着することができ、中継管部材と管継手との間に、隙間を残してシール部材でシールすることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、蒸気室に連通する用役通路を金型側の中継管部材のみに設けたので、従来のようにアダプタ側中継ブロックと金型側中継ブロックとが当接されることがなく、接合界面を少なくして気密性を向上させることができる。また、金型の外部に配置したシールアジャスト装置により中継管部材を押圧して用役通路の気密性を確実に高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、ダイプレートの外部に配置したシールアジャスト装置により管継手を押圧して用役通路の気密性を確実に高めることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、蒸気室に連通する用役通路を金型側の中継管部材のみに設けたので、従来のようにアダプタ側中継ブロックと金型側中継ブロックとが当接されることがなく、接合界面を少なくして気密性を向上させることができる。また、中継管部材と管継手との間に配されたOリングをシールアジャスト装置、即ち気密性向上装置にて締め付けるので、従来より用役通路の気密性を確実に高めることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、バネなどの弾性体やネジなどの押圧手段により中継管部材を相手の管継手の方向に、又は管継手を中継管部材の方向に押圧して、シール性を高めることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、Oリング又はパッキン又はガスケットにより中継管部材と管継手の間をシールすることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、ネジ装着基台に螺入されたネジにて中継管部材を押圧して気密性を高めることができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、ネジ装着基台に螺入されたネジにて管継手を押圧して気密性を高めることができる。
【0019】
請求項8に係る発明は、支持台により確実に管継手を支持することができる。
【0020】
請求項9に係る発明は、隙間でもってシール部材の潰し代に余裕を持たせて、確実にシールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
図1〜4は本発明に係る発泡樹脂成形機を示す図である。図において、1はダイプレート(固定ダイプレートまたは移動ダイプレート)であり、このダイプレート1に金型2(固定型または移動型)が装着されている。そして、ダイプレート1と金型2とを跨いで複数の用役ノズル3が配設されている。用役ノズル3は、発泡成形に当たって蒸気、エア、冷却水、真空、排気、ドレンなどの用役を給排するためのものである。また、金型2の内部には、蒸気室が形成されている。
【0022】
用役ノズル3の詳細を図5、6に示す。用役ノズル3は、金型2の蒸気室21に連通する用役通路41が設けられた中継管部材4と、先端側用役通路51が形成され前記用役通路41に連通して接続される管継手5とからなる。
【0023】
中継管部材4の用役通路41は、L字状に折れ曲がって形成されており、この用役通路41の一端に基部42が設けられ、他端に当接板部43が設けられている。基部42は金型2と当接する面にOリング44が嵌め込まれている。そして、基部42が螺着されて中継管部材4が金型2の外部に取り付けられている。また、用役通路41の外部で基部42と当接板部53との間には、補強用のリブ45が湾曲して設けられている。
【0024】
管継手5は、ダイプレート1の外部に螺着された支持台6に装着されている。この管継手5は、鍔部52と、この鍔部52に連設された筒先部53とを有し、この筒先部52に用役配管(図示していない)が接続される。筒先部53と反対側の鍔部52の面にはシール部材であるOリング54が装着されている。
【0025】
シール部材として、Oリングのほかゴム、樹脂製などのパッキン或いはガスケットを用いることができる。
【0026】
また、支持台6は、取付基板61と、この取付基板61に対して垂直の装着基板62と、装着基板62補強用のリブ63とを有する。装着基板62には、管継手5差し込み用の孔64が設けられており、この孔64に筒先部53が挿入され、鍔部52が装着基板62に当接されて、管継手5が支持台6に螺着されている。
【0027】
以上のような管継手5が装着されたダイプレート1に、中継管部材4が螺着された金型2をボルトにより締結すると、鍔部52に当接板部53が当接されて、Oリング54により、両者の界面がシールされる。
【0028】
中継管部材4の後方、即ち当接板部43と反対側には、シールアジャスト装置7が配設されている。このシールアジャスト装置7は、金型2の外部に突設されたネジ装着基台71と、このネジ装着基台71に螺入されたネジ72とからなる。ネジ72とは、ボルト、ビス等の螺子の総称をいう。ネジ72を適度な強さにまでねじ込むことによって、中継管部材4は管継手5の方向に押圧されるので、Oリング54によるシールを確実に行うことができる。
【0029】
なお、シールアジャスト装置7は、用役ノズル3の全てに配設してもよいが、気密性を確保することができれば、適宜選択した用役ノズル3にシールアジャスト装置7を配設することもできる。
【0030】
上記したシールアジャスト装置は、図7に示すように、ダイプレート1の側に配置することもできる。この実施形態においても、用役ノズル3は、金型2側に配置された中継管部材4と、ダイプレート1側に配置された管継手5とからなる。中継管部材4には、金型2の蒸気室21に連通する用役通路41が設けられている。管継手5には、先端側用役通路51が形成されていて、この管継手5は前記用役通路41に連通して接続されている。
【0031】
中継管部材4及び管継手5の詳細構造は、図5、6に示したものと同じである。管継手5は支持台6の装着基板62にネジにより固定され、この管継手5の鍔部52の面には、シール部材であるOリング54が装着されている。
【0032】
シールアジャスト装置7は、ダイプレート1の上部外側で、管継手5の筒先部53の下方の空間に一つが配設されている。すなわち、取付基板61にネジ装着用の基台71aが固定され、この基台71aに、装着基板62を介して鍔部52を押圧するためのネジ72が螺入されている。ネジ72を適度な強さにまでねじ込むことによって、管継手5を中継管部材4の方に押圧することができるので、Oリング54によるシールを確実に行うことができる。なお、ネジ72に替えて、装着基板62と基台71aとの間に圧縮バネなどの弾性体を押圧手段として横方向から差し込むことによっても、同様な効果を得ることができる。
【0033】
このとき、中継管部材4と管継手5との間に、0.1〜1mmの隙間Sを残してシール部材でシールすることができる。すなわち、0.5mm程度の隙間を残した場合には、この隙間Sでもってシール部材の潰し代に余裕を持たせることができ、Oリング54などを大きく変形させることができるので、中継管部材4と管継手5との間を確実にシールすることができる。この隙間Sは、図5,6に示した実施形態の場合においても形成できることはもちろんである。
【0034】
また、シールアジャスト装置7は、図8に示すように、管継手5の筒先部53を挟んで左右に一組配置することもできる。また、金型2とダイプレート1の両方に配置してもよい。
【0035】
以上に説明したように、本発明の発泡樹脂成形機は、中継管部材4に直接管継手5を接続させるので、接合界面を少なくして気密性を向上させることができる。また、中継管部材4と管継手5との間に配されたOリング54などのシール部材をシールアジャスト装置7にて締め付けるので、気密性をさらに高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の発泡樹脂成形機の側面図である。
【図2】本発明の発泡樹脂成形機の正面図である。
【図3】本発明の発泡樹脂成形機の平面図である。
【図4】本発明の発泡樹脂成形機の底面図である。
【図5】本発明の発泡樹脂成形機の要部側面図である。
【図6】本発明の発泡樹脂成形機の要部平面図である。
【図7】別の実施形態の発泡樹脂成形機を示す要部側面図である。
【図8】別の実施形態の発泡樹脂成形機を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ダイプレート、2 金型、3 用役ノズル、4 中継管部材、5 管継手、7 シールアジャスト装置、21 蒸気室、41 用役通路、54 Oリング、71 ネジ装着基台、72 ネジ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にシール部材を配したうえに、金型の外部には中継管部材を管継手の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とする発泡樹脂成形機。
【請求項2】
ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にシール部材を配したうえに、ダイプレートの外部には管継手を中継管部材の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とする発泡樹脂成形機。
【請求項3】
ダイプレートに装着され内部に蒸気室を有する金型と、蒸気室に連通する用役通路が設けられた金型側の中継管部材と、前記用役通路に連通して接続されるダイプレート側の管継手とを備える発泡樹脂成形機であって、
前記中継管部材と管継手との間にOリングを配したうえに、金型の外部には中継管部材を管継手の方向に押圧して中継管部材と管継手の間をシールするシールアジャスト装置を配設したことを特徴とする発泡樹脂成形機。
【請求項4】
シールアジャスト装置は、中継管部材又は管継手を、相手の管継手又は中継管部材の方向に押圧するための押圧手段を備えている請求項1〜3の何れかに記載の発泡樹脂成形機。
【請求項5】
シール部材としてOリング又はパッキン又はガスケットを用いる請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形機。
【請求項6】
シールアジャスト装置は、金型の外部に突設されたネジ装着基台と、このネジ装着基台に螺入された中継管部材押圧用のネジとからなる請求項1又は3に記載の発泡樹脂成形機。
【請求項7】
シールアジャスト装置は、ダイプレートの外部に突設されたネジ装着基台と、このネジ装着基台に螺入された管継手押圧用のネジとからなる請求項2に記載の発泡樹脂成形機。
【請求項8】
ダイプレートの外部に管継手の支持台を突設して、この支持台に管継手を装着した請求項1〜7の何れかに記載の発泡樹脂成形機。
【請求項9】
中継管部材と管継手との間に、隙間を残してシール部材でシールした請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−143161(P2008−143161A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58418(P2007−58418)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】