説明

発熱体ユニット及び加熱装置

【課題】本発明は、被加熱体を所望の配熱分布で、且つ高温度に加熱することができる効率の高い熱源としての発熱体ユニット及び加熱装置を、安全性及び信頼性が高く、容易に製造することができる構成とすることを目的とする。
【解決手段】発熱体ユニットは、炭素系物質を含む材料によりフィルムシート素材で形成され、2次元的等方向性の熱伝導を有する帯状の発熱体2を容器1内の所定位置に配置するために位置規制機能を有するサポートリングが設けられており、サポートリングには前記電力供給部における電流径路が形成されないよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関し、特に、炭素系物質を主成分としてフィルムシート状に形成された発熱体を有する発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関する。本発明に係る加熱装置としては、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置、及び電気暖房機器、調理機器、乾燥機等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器が含まれる。
【背景技術】
【0002】
長尺形状の熱源となる従来の発熱体ユニットには、円筒状のガラス管内部に細長いコイル状のタングステン線、又は棒状若しくは板状の炭素系焼結体が発熱体として封入されて構成されたものがあった。最近、これらの発熱体に代わって、被加熱体をより均一に、且つ更に高温度に加熱することができる汎用性の高い発熱体ユニットとして、炭素系物質を主成分とした細長いシート状(帯状)の発熱体を用いたものが提供されている。
【0003】
従来の発熱体ユニットにおいて、ガラス管内部に収納される発熱体の両端部分には、電源を供給するための部材(電力供給部材)が取り付けられている。この電力供給部材は、発熱体に対して電力を供給するとともに、発熱体をガラス管内部の所定位置に保持する機能を有する。
【0004】
図9は本願と同一の出願人が出願した発熱体ユニットを示す平面図である(特許文献1参照。)。図9に示す発熱体ユニットにおいて、電力供給部材は、発熱体102の両端が固着された円筒状の保持部103と、保持部103の外周面に巻き付けられた放熱部104と、弾性を有するコイルスプリング形状のスプリング部105と、放熱部104とスプリング部105とともに線材で形成された内部リード線106と、ガラス管101の溶着部分に埋設されたモリブデン箔107と、モリブデン箔107を介して内部リード線106に電力を供給する外部リード線108と、を有している。上記のように、従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体102に電力を供給するための電力供給部材にスプリング部105が設けられていた。スプリング部105は、保持部103の外周面に巻着された放熱部104の巻径より大きく形成された弾性力を有するコイルスプリング形状であり、発熱時における発熱体102の熱膨張を吸収して、発熱体102の両側から常に張力を加えて発熱体102をガラス管内部の所定位置に張設する機能を有する。
【特許文献1】特開2007−103292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、従来用いられていた炭素繊維を編み込んだシート状の発熱体、及び編み込んだ炭素繊維に樹脂を添着して焼成した発熱体とは、材料及び製造方法において全く異なる新たなフィルムシート状の材料を発熱材料として発熱体に適用し、新たな熱源としての発熱体ユニットの開発に取り組んできた。そのような発熱体ユニットに用いる発熱体に適用しようとする新たなフィルムシート状の材料は、従来の発熱体の表面より更に滑らかな表面を有し、且つ柔軟性を持っているため、従来の発熱体ユニットに用いられていた電力供給部材では新しい発熱体を確実に保持することができず、従来の発熱体ユニットの構成をそのまま新しい発熱体ユニットに適用すると安全性及び信頼性の点で問題があった。
【0006】
本発明は、被加熱体を所望の配熱分布で、且つ高温度で効率高く加熱することができる発熱体ユニット及び加熱装置を、簡単な構成で安全性及び信頼性が高く、容易に製造することができる構成とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の観点の発熱体ユニットは、
炭素系物質を含む材料によりフィルムシートで形成され、2次元的等方向性の熱伝導を有する帯状の発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体と前記電力供給部の一部を内包する容器と、を具備する発熱体ユニットにおいて、
前記容器の内部における前記電力供給部に固着されて前記発熱体を前記容器の内部の所定位置に保持する位置規制部であって、前記位置規制部には前記電力供給部における電流径路が形成されないよう構成されている。このように構成された本発明に係る第1の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を所望の配熱分布で、高温度に加熱することができ、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源となり、製造の容易な構成となる。
【0008】
本発明に係る第2の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1の観点の前記電力供給部が、前記発熱体の両端を保持する保持具と、前記保持具に電気的に接続された内部リード線部とを有し、
前記位置規制部が前記内部リード線部に固着されたコイル状のサポートリングであり、
前記位置規制部の外周部分の少なくとも一部が前記容器の内周面に近接して配置されている。このように構成された本発明に係る第2の観点の発熱体ユニットは、位置規制部が発熱体を容器内の所定位置に確実に配設することができ、安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0009】
本発明に係る第3の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第2の観点の前記内部リード線部における前記位置規制部が固着される部分の少なくとも一部が他の部位に比べて変形されている。このように構成された本発明に係る第3の観点の発熱体ユニットは、位置規制部を容易に且つ確実に所定位置に設けることができ、製造が容易な構成となる。
【0010】
本発明に係る第4の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第3の観点の前記位置規制部が金属線材により構成され、前記内部リード線部に対して前記位置規制部の一部を巻き付けて当該位置規制部を固着して構成されている。このように構成された本発明に係る第4の観点の発熱体ユニットは、位置規制部を容易に且つ確実に所定位置に設けることができ、製造が容易な構成となる。
【0011】
本発明に係る第5の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第3の観点の 前記内部リード線部が線材により構成されており、前記内部リード線部の変形された部分に前記位置規制部が固着されており、前記内部リード線部の変形された部分は、当該部分を流れる電流径路に直交する断面積が、他の部分における電流径路に直交する断面積に比して80%以上となるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第5の観点の発熱体ユニットは、内部リード線部における位置規制部が固着される部位の発熱が抑制され、安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0012】
本発明に係る第6の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第3の観点の前記内部リード線部が線材により構成されており、前記位置規制部が固着される前記内部リード線部の部分が屈曲されて構成されている。このように構成された本発明に係る第6の観点の発熱体ユニットは、位置規制部を容易に且つ確実に所定位置に設けることができ、製造が容易な構成となる。
【0013】
本発明に係る第7の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第3の観点の前記発熱体の両端に形成された掛止受部が、前記内部リード線部に形成された掛止部と係合して前記発熱体が前記容器の内部に張設されるよう構成されている。このように構成された本発明に係る第7の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を均一に、且つ高温度に加熱する発熱体を容器内の所定位置に容易に且つ確実に保持することができ、安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0014】
本発明に係る第8の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第7の観点の前記発熱体の掛止受部が貫通孔で構成され、前記発熱体の両端を挟む前記保持具における前記掛止受部と対応する位置に貫通孔が形成され、前記掛止部が前記掛止受部と前記保持具の貫通孔とを貫通して係合するよう構成されている。このように構成された本発明に係る第8の観点の発熱体ユニットは、発熱体を容器内の所定位置に容易に且つ確実に保持して、脱落することが無く、安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0015】
本発明に係る第9の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第8の観点の前記掛止部は、前記保持具の貫通孔を貫通した突出端部が当該貫通孔の直径より大きく塑性変形されている。このように構成された本発明に係る第9の観点の発熱体ユニットは、発熱体を容器内の所定位置に容易に且つ確実に保持して、脱落することが無く、安全性及び信頼性の高い熱源となる。
【0016】
本発明に係る第10の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第9の観点の前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有する。このように構成された本発明に係る第10の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を均一に、且つ高温度に加熱することができ、効率の高い熱源となる。
【0017】
本発明に係る第11の観点の発熱体ユニットにおいて、前記第1乃至第10の観点の前記容器が、耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管のいずれかにより構成され、前記電力供給部において封止して容器内部に不活性ガスを充填している。このように構成された本発明に係る第11の観点の発熱体ユニットは、被加熱体を高温度に加熱することができる効率の高い熱源となる。
【0018】
本発明に係る第12の観点の加熱装置は、前記第1乃至第11の観点の発熱体ユニットを熱源として装備しており、被加熱体を均一に、且つ高温度に加熱することができ、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い加熱装置となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被加熱体を所望の配熱分布で、且つ高温度で効率高く加熱することができる発熱体ユニット及び加熱装置を提供することができると共に、安全性及び信頼性が高い発熱体ユニット及び加熱装置を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットについて図1乃至図3を用いて説明する。図1は実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す平面図である。図1において、当該発熱体ユニットが長尺形状であるため、その中間部分を破断して省略し、両端部分近傍を示している。図2は図1に示した発熱体ユニットの正面図である。
【0022】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、耐熱性を有する細長い容器1の内部にフィルムシート状で帯状の発熱体2が配置されている。帯状の発熱体2は容器1の長手方向に沿って延設されている。実施の形態1の発熱ユニットにおいては、容器1が透明な石英ガラス管により形成されており、石英ガラス管の両端部分が平板状に溶着されて容器1が封止されている。発熱体2等を収容する容器内部には、不活性ガスとしてのアルゴンガスが封入されている。容器内部に封入可能な不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されるものではなくアルゴンガスの他に、窒素ガス、又はアルゴンガスと窒素ガス、アルゴンガスとキセノンガス、アルゴンガスとクリプトンガス等の混合ガスを用いても実施の形態1の発熱体ユニットと同様の効果を奏し、封入すべき不活性ガスとしては、目的に応じ適宜選択することが可能である。容器1の内部に不活性ガスを封入するのは、高温度で使用した際において、容器内部の炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。なお、容器1の材料としては、耐熱性、絶縁性及び熱透過性を有する材料であれば用いることができ、例えば石英ガラスの他に、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等のガラス材、及びセラミック材等から適宜選択される。
【0023】
図1及び図2に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットは、容器1と、熱輻射膜体としての細長い帯状の発熱体2と、この発熱体2を容器内の所定位置に保持するために発熱体2の長手方向の両端部分に設けられ、発熱体2に電力を供給するための電力供給部8と、を備えている。
【0024】
発熱体2の両端に設けられた電力供給部8は、発熱体2の両端に取り付けられた保持具3、サポートリング4、内部リード線部5、モリブデン箔6、及び外部リード線部7を含んでいる。保持具3には内部リード線部5が固定されており、内部リード線部5は容器1の両端部分の封着部分(溶着部分)に埋設されたモリブデン箔6を介して、容器1の両端から容器外部に導出する外部リード線部7と電気的に接続されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、内部リード線部5には、位置規制機能を有する位置規制部であるサポートリング4が取り付けられている。内部リード線部5は一本の線材、例えばモリブデン線で構成され、サポートリング4は、例えばモリブデン線をコイル状に形成したものである。
なお、実施の形態1における内部リード線部5及びサポートリング4は、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした金属線(丸棒形状、平板形状)を用いて形成してもよい。
【0026】
以上のように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、保持具3、サポートリング4、内部リード線部5、モリブデン箔6、及び外部リード線部7により構成された電力供給部8が、発熱体2の両側に設けられて、発熱体2に電力を供給するととものに、発熱体2を容器内の所定位置に張設している。
【0027】
図3は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2の一方の端部近傍を示す平面図である。図4は図3に示した発熱体の端部近傍の正面図である。なお、図3に示す発熱体2において、図1及び図3の平面図に示されている面が被加熱物の対向面となる。
【0028】
図3及び図4に示すように、発熱体2の端部は保持具3により平面側と裏面側が挟み付けらており、保持具3の略中央に形成された貫通孔と発熱体2の端部に形成された貫通孔が内部リード線部5の端部により貫通されている。内部リード線部5は、その発熱体側端部が屈曲されて、いわゆるL字状に形成されている。このL字に屈曲した内部リード線部5の先端が、発熱体2を挟んだ保持具3の貫通孔を貫通して、保持具3の貫通孔から突出している。
【0029】
保持具3の貫通孔から突出した内部リード線部5の突出端部5aには、抜け落ち防止手段(脱落防止手段)が施されている。図4に示すように、内部リード線部5の突出端部5aは、プレス加工等により塑性変形して潰された状態である。即ち、内部リード線部5における突出端部5aは、保持具3の貫通孔の直径より大きな形状に加工されており、抜け落ち防止手段が施されている。内部リード線部5の突出端部5aの塑性変形の方法としては、プレス加工の他に、回転カシメ加工等の機械的な加工方法、若しくは熱、電流、プラズマ等による溶着方法等を用いることができる。また、別の抜け落ち防止手段としては、内部リード線部5の突出端部5aを螺刻してナットによるネジ止め方法、又は突出端部5aに止め輪、例えばC型止め輪、E型止め輪等を装着する係止方法等がある。
【0030】
実施の形態1の発熱体ユニットにおけるサポートリング4は、内部リード線部5に巻き付けられて固定され、コイル状に形成されている。図3及び図4に示すように、サポートリング4が巻き付けられている内部リード線部5における取り付け部位5bは、プレス加工により対向する方向で押し潰されている。実施の形態1においては、内部リード線部5が丸形状断面の線材(モリブデン線)であるが、その内部リード線部5における取り付け部位5bの断面は略長方形状である。即ち、内部リード線部5において、電流が流れる方向に直交する断面形状が取り付け部位5bでは略長方形状であり、その他の部位の丸形状断面と異なっている。
【0031】
但し、実施の形態1における内部リード線部5の取り付け部位5bの断面積は、その他の部位の丸形状断面の断面積に比して80%以上となるよう形成されている。また、内部リード線部5において、丸形状断面の部分と押し潰された略長方形状断面の部分との境界部分はなだらかな変形となるように形成されており、急激な形状変化がないよう構成されている。したがって、外部リード線7から発熱体2への電流径路である内部リード線部5において、取り付け部位5bで急激に抵抗値が変わることが無く、取り付け部位5bにおける温度上昇が抑制されている。
【0032】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、図3及び図4に示すように、上記のように形成された内部リード線部5の取り付け部位5bと発熱体側の丸形状断面部分との境界部分にサポートリング4が巻着されている。サポートリング4は、内部リード線部5に巻着する巻着部4aと、コイル形状を有するリング部4bと、を有する。
【0033】
サポートリング4の巻着部4aは、内部リード線部5に対して複数の巻数(3回から5回の巻数)により巻き付けられている(巻着状態)。このため、サポートリング4は内部リード線部5に緩むことなく固着されている。したがって、サポートリング4は内部リード線部5から外れることが無く、内部リード線部5上を移動することもない。なお、サポートリング4と内部リード線部5との別の固着方法としては、スポット溶接による接続方法も考えられるが、溶接時に生じる熱によりサポートリング4と内部リード線部5の互いの線材が脆性破壊されるおそれがあり、また内部リード線部5の接続点が溶融して断面積が小さくなるおそれがある。このため、サポートリング4と内部リード線部5とをスポット溶接により接続する方法は、好ましい接続方法ではない。
【0034】
サポートリング4のリング部4bは、少なくとも1巻き以上のコイル形状であり、その直径は、発熱体2が収納される円筒形の容器1の内面に近接する大きさを有している。
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の幅が6.0mmであり、その発熱体2を収納する容器1の円筒部分の内径が8.0mmであり、サポートリング4のリング部4bの直径が7.0mmの構成である。したがって、実施の形態1の発熱体ユニットでは、サポートリング4のリング部4bと容器1の円筒状部分の内面との隙間は両端部合わせて1.0mmに設定されている。上記の容器1、発熱体2及びサポートリング4の寸法関係は公差を含め、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての製品仕様及び用途に応じて適宜変更が可能であるが、サポートリング4は発熱体2を容器1に対して触れることなく位置規制可能な寸法に設定される。
【0035】
上記のように、実施の形態1の発熱体ユニットにおけるサポートリング4は、発熱体2を容器内の所定の位置に配置するための位置規制部材としての機能を有しており、発熱体2の幅より大きな直径のリング部4bの外周部分が容器1の内周面に近接した位置にあるため、発熱体2は容器1に接触することなく所望の位置(実施の形態1においては、容器1の長手方向の中心軸と発熱体2の長手方向の中心軸が同軸となる位置)に配置される。
【0036】
上記のように構成されたサポートリング4は、発熱体2に電力を供給するための内部リード線部5に巻着する構成であり、サポートリング4には外部リード線部7から発熱体2への電流径路が通らない構成である、即ち、サポートリング4は内部リード線部5における電流径路を介在しない構成である。このように、サポートリング4は発熱体2への電流が流れない構成となるため、その電流により発熱することがない。実施の形態1におけるサポートリング4は、発熱体2の位置規制機能を有するとともに、発熱体2から伝導してきた熱を放熱する放熱機能としても機能する。
【0037】
実施の形態1におけるサポートリング4は、モリブデン線により形成された例で説明するが、発熱体2を位置規制できる剛性を有して、優れた熱伝導(放熱機能)と加工の容易な材料であれば、サポートリング4として用いることが可能であり、例えばニッケル、ステンレス、タングステン等の金属材料等を用いることができる。
また、実施の形態1におけるサポートリング4のリング部4bは、円形のコイル状であるが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、発熱体2の位置規制機能及び放熱機能を有する形状であれば用いることが可能である。例えば、図3及び図4で示すリング部4bは1.5ターンの巻き数であるが、この巻き数を増やすことにより位置規制及び放熱機能を高めることができる。更に、巻き方としては、必ずしも発熱体2の長手方向に沿って密に巻く必要はなく疎巻きの部分を設けることも可能である。また、リング部4bの形状はコイル状に限定されるものではなく、形成が容易で発熱体2を所望の位置に規制できる形状であればよい。なお、内部リード線部5に巻着する巻着部4aがコイル部4bに対して片側一端にのみ巻着した構成で図示しているが必ずしも一端のみに形成する必要はなく、特に巻き数を増やした場合においては両端に形成してもよく、さらにはコイル部4bの中間部分に設けることにより、リング部4bが更に安定した構成となる。
【0038】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の材料自体が伸縮性を有し、且つ発熱体2の形状パターンが伸縮性を有するため、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収するための機構が不要である。特に、実施の形態1において用いた発熱体2は熱膨張率が小さいため、製造時に張力を加えた状態で配設(張設)された発熱体2は、発熱時の膨張を発熱体自体及び発熱体2の形状パターンによる伸縮性により吸収できるものである。したがって、従来の発熱体ユニットにおいて発熱体を常に張設するために設けられていたスプリング部(図9参照)を、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては設ける必要がない。この結果、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、従来の構成では必要であったスプリング部が不要となり、その配設空間に発熱体2を延設することができ、容器1に比して発熱体2の形状を大きく設定することが可能となる。
【0039】
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において各層が互いに空隙をなすように一部が固着された積層構造で、優れた二次元的等方向性の熱伝導を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルムシート状の材料で形成されている。したがって、帯状の発熱体2は温度ムラがなく均一に発熱する熱源となる。
【0040】
発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上であり、600から950W/m・Kの特性を有する。このように、実施の形態1において用いた発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する。
【0041】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導率が略同じであることを示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向である1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向である2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではなく、フィルムシート状の発熱体2における面方向において同じ性質を持つことを言う。
【0042】
本発明において用いられる発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面或いは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルムシート素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。即ち、発熱体2は、炭素系物質を含む材料により形成された複数の膜体が積層されて、積層方向が一部固着された層間構造を有しており、厚み方向に柔軟性を有するフィルムシート素材である。したがって、本発明における発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、前述のように、面方向の熱伝導率が同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有する材料である。
【0043】
前述のように製造されたフィルムシート素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などと、グリコール、グリセリン類との反応により得られるポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0044】
前記フィルムシート素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルムシート状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルムシート状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルムシート状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルムシート状の発熱体を本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2として用いる。
【0045】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。即ち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助けるものである。フィラーはこのように均一発泡状態を作り出すのに役立つ。
【0046】
上記のように製造されたフィルムシート素材は、例えばトムソン型やピナクル型の抜き型、ロータリーダイカッタ等の鋭利な刃物、若しくはレーザー加工等により所望の形状に加工される。
【0047】
実施の形態1における発熱体2は、厚み(t)が100μm(図2参照)であり、発熱体2において発熱する発熱部2bの幅(W1)が6.0mm(図3参照)であり、発熱体2において保持具に保持される発熱体保持部2aの幅(W2)が約5.0mm(図3参照)であり、発熱部2bの長さ(L)が300mm(図1参照)である。なお、発熱体2の長さや幅及び厚みについては、入力電圧及び発熱温度等により決定されるものであり、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての製品仕様及び用途に応じて適宜変更が可能である。
【0048】
図1及び図3に示すように、実施の形態1における発熱体2の発熱部2bには、複数のスリットが発熱体2の長手方向に直交する方向に延設されている。発熱部2bに形成されている複数のスリットは、発熱部2bにおける電流の流れ方向を規制し、抵抗値を調整するものである。発熱部2bに形成されるスリット形状としては、その発熱体ユニットが用いられる製品仕様及び用途等に応じて貫通した溝や、有底の溝等がある。また、凹部溝においては、その厚み方向の深さを変更することにより発熱部2bの抵抗値を調整することが可能である。
【0049】
また、実施の形態1における発熱体2にスリットを形成することにより、発熱体自体の伸縮性と合わせて、このスリット形状による伸縮性により、発熱体2が大きな伸縮性を持つ特性を有するものとなる。
【0050】
実施の形態1の発熱体2の発熱部2bには、図3に示すスリットパターンが繰り返して形成されている。即ち、発熱体2の発熱部2bには、その長手方向と平行な両側縁部分の対向する位置から長手方向と直交して中心側へ延びる端スリット2dと、長手方向と直交して発熱部2bの中央部分に形成された中央スリット2eと、が形成されている。発熱部2bにおいて対向する端スリット2d,2dの中央側の対向端部は、第1の所定距離(図3においてL1で示す距離)を有しており、発熱部2bの中央部分に通電径路を形成している。また、中央スリット2eの両端部である縁側端部は、発熱部2bの幅方向の縁部分からそれぞれ同じ第2の所定距離(図3においてL2で示す距離)を有しており、発熱部2bの両側縁部分近傍に通電径路を形成している。さらに、発熱体2の発熱部2bにおいて、端溝2dと中央溝2eとの長手方向の間隔が第3の所定距離(図3においてL3で示す距離)を有しており、端溝2dと中央溝2eとの間に発熱体2の長手方向と直交する方向に流れる電流経路を形成している。
【0051】
実施の形態1の発熱体2においては、端溝2dと中央溝2eとの長手方向の間隔である第3の所定距離L3は第2の所定距離L2と同じ距離に設定されており、第1の所定距離L1は第2の所定距離L2及び第3の所定距離L3の2倍に設定されている。このように溝パターンが形成された発熱体2の発熱部2bにおいては、蛇行した電流径路が形成されており、電流の流れに対して直交する断面積が略同じとなり、抵抗値の計算が容易となり、均一した温度分布を形成することができる。なお、発熱体2の面方向の熱伝導率が、例えば600W/m・K以上の特性を有する材料であれば、第2の所定距離L2が第1の所定距離L1の1/2でなくても均一な温度分布(配熱分布)に大きな影響を与えることはない。好ましくは、第2の所定距離L2を第1の所定距離L1の1/2以上に設定することにより、発熱体ユニットに加わる機械的衝撃に対する発熱体2の強度を高めることができる。
【0052】
また、発熱部2bに形成されるスリットパターンは、当該発熱体ユニットが用いられる製品仕様や用途に応じて適宜選択することにより、発熱部2bによる発熱分布を所望の配熱パターンとすることが可能である。
【0053】
さらに、発熱部2bにおいて、端スリット2dと中央スリット2eとの長手方向における間隔L3は、発熱体2の長手方向の端部、即ち発熱体保持部2aに近づくほど徐々に広くすることにより、発熱部2bにおける電流径路の抵抗率を徐々に変化させて、発熱部2bの発熱分布(配熱パターン)を中央部分が高熱となるように変更することが可能となる。勿論、当該発熱体ユニットが用いられる製品仕様や用途に応じて上記間隔L1、L2及びL3を適宜変更することにより、所望の配熱パターンを有する熱源とすることが可能である。
【0054】
実施の形態1における発熱体2は、発熱体保持部2aの幅(W2)が発熱部2bの幅(W1)より狭く形成されている。そして、発熱体保持部2aから発熱部2bへ繋がる領域が徐々に広くなるよう形成され、この領域に放熱機能を有する放熱部2fが形成されている。この放熱部2fには前述のようなスリットは形成されておらず、広い電流径路が形成されている。この結果、放熱部2fにおいては、発熱部2bから伝導した熱が放熱されて、発熱体2における熱ストレスの低減及び長寿命化が図られている。なお、発熱体保持部2aから発熱部2bへ繋がる放熱部2fの縁形状は、集中荷重が加わり破損を防止するために曲面形状で構成することが好ましい。
また、製品仕様により発熱部2bの温度が高い場合、発熱部2bから発熱体保持部2aへの放熱部2fにおける幅を徐々に狭くすることにより、放熱部2fに温度勾配を設けて発熱体保持部2aへの熱ストレスを低減することが可能となる。
さらに、発熱体2において、第1の所定距離L1及び第2の所定距離L2の長さを両側の発熱体保持部2aに近づくに従い徐々に長くすることにより、発熱部2bに温度勾配を設けることができるとともに、耐衝撃性及び耐振動性を有する機械的強度の強い構造となる。
【0055】
上記のように構成された実施の形態1における発熱体2においては、発熱部2bにスリットパターンが形成されているため、所望の電流径路を設定できるとともに、伸縮性を有するものとなる。この結果、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、製品仕様及び用途に応じて所望の発熱分布を設定することが可能であるとともに、発熱体2に電力を供給する部材に弾性力を持たせる必要がなく、容器1の大きさに比して大きな熱源を提供することが可能となる。
【0056】
実施の形態1において用いた発熱体2は、軽薄で熱容量が小さく、通電による発熱時の立ち上がりが早いという優れた特性を有する。このため、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、優れた応答性を有して効率高く加熱することができる。また、実施の形態1における発熱体2は軽薄であるため、発熱体2を張設するための張力は小さいものでよい。実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、製造時に設定した小さい張力が付加された発熱体2は、容器内の所望の位置で熱膨張を吸収して確実に張設状態を維持できる。
【0057】
なお、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、プレス加工により帯状に形成して、スリット加工したが、レーザーを用いて所望の形状に加工することも可能である。例えば、レーザー加工の一例として、発熱体2の面方向の熱伝導率が200W/m・K以上となるとCOレーザー(波長10600nm)等の熱加工作用を主体としたレーザー加工を用いた場合には、発熱体2に熱を奪われてしまい、加工できないという問題がある。しかしながら、非熱加工作用を主体とした波長1064から380nmのレーザー加工、例えば、呼称1064nmの短波長レーザー加工を用いることにより所望の形状を精度高く加工することが可能となる。
【0058】
特に、実施の形態1における発熱体2を形成する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることにより、高精度に加工できることを発明者らは確認した。実施の形態1における発熱体2の材料は、フィルムシート素材であり、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートを材料としている。そして、発熱体2は、面方向の熱伝導率が600から950W/m・Kの特性を有する材料で形成されている。このような材料から、例えば、厚み(t)が100μm、幅(W1)が6.0mm、長さ(L)が300mmの発熱体2を加工する場合、又は前述のように発熱部2bに溝(スリット)等の複雑な形状に加工する場合には、呼称532nmの第二高調波レーザー加工を用いることが望ましい。
【0059】
なお、好ましいレーザー加工方法は、発熱体2の材料、即ち面方向の熱伝導率及び形状によって、前述の非熱加工作用を主体としたレーザー加工波長(1064から380nm)を持つ加工方法から適宜選択し得ることは言うまでもない。さらに、上記説明した発熱体2を加工するためのレーザー加工方法は後述の他の実施の形態における発熱体ユニットの発熱体の加工においても採用できることは言うまでもない。
【0060】
以上のように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、帯状の発熱体2の両端部分が簡単な構成の電力供給部8により確実に保持されて、発熱体2が容器内の所定位置に配設されている。このように、実施の形態1の発熱体ユニットは、発熱体2が簡単な構成の電力供給部8により容器内の所定位置に確実に保持されるため、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を容易に提供することができる。
【0061】
なお、図5は本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの別構成の電力供給部を示す平面図である。図3に示した発熱体ユニットにおいては、サポートリング4の巻着部4aが、内部リード線部5における取り付け部位5bの略長方形状断面から丸形状断面へ移行する部位に巻き付けられている。図5に示す発熱体ユニットにおいては、サポートリング4の巻着部4aが、内部リード線部5における取り付け部位5bの略長方形状断面の部位に巻き付けられている。このように、サポートリング4の巻着部4aを押し潰された取り付け部位5bに取り付けても、サポートリング4は内部リード線部5から外れることが無く、且つ内部リード線部5上を移動することもない。
【0062】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットについて図6を用いて説明する。実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、容器1に対する発熱体2の配設位置であり、そのため発熱体2の両端に取り付けられるサポートリング及び内部リード線部の形状が異なっている。実施の形態2において、発熱体ユニットにおけるサポートリング及び内部リード線部以外の構成は、実施の形態1の発熱体ユニットと同じである。このため、以下では、実施の形態2におけるサポートリング及び内部リード線部について説明する。なお、実施の形態2の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
【0063】
図6は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に取り付けられているサポートリング40及び内部リード線部50等を示す正面図である。
図6に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、発熱体2の端部は保持具3により平面側と裏面側が挟み付けられており、保持具3の略中央に形成された貫通孔と発熱体2の端部に形成された貫通孔が内部リード線部50により貫通されている。内部リード線部50の発熱体側端部が屈曲されており、いわゆるL字状に形成されており、このL字に屈曲した内部リード線部50の先端である突出端部50aが、発熱体2を挟んだ保持具3の貫通孔を貫通している。保持具3の貫通孔から突出した突出端部50aには、実施の形態1と同様に、抜け落ち防止手段(脱落防止手段)が施されている。
【0064】
実施の形態2の発熱体ユニットに用いられている保持具3は、実施の形態1の保持具3と同様に導電性を有する金属材料で形成された平板な板材を折り曲げて形成されており、発熱体2の発熱体保持部2aを挟むよう構成されている。内部リード線部50と保持具3との係合状態をより強固にし、保持具3が内部リード線部50に対して移動しないようにするため、保持具3と内部リード線部50とはスポット溶接されている。
【0065】
上記のように発熱体2に係合するよう取り付けられた内部リード線部50は、階段状に屈曲した段部50cを有している。このため、発熱体2が容器1の長手方向の中心軸から偏心した位置で長手方向に沿って配置される。実施の形態2における内部リード線部50にはサポートリング40を巻き付けるための取り付け部位50bが形成されている。この取り付け部位50bは、前述の実施の形態1における内部リード線部5の取り付け部位5bと同様に、プレス加工により押し潰されて形成されている。したがって、実施の形態2においては、内部リード線部50において、電流が流れる方向に直交する断面形状が取り付け部位50bでは略長方形状であり、その他の部分が丸形状断面となっている。
但し、実施の形態2における内部リード線部50の取り付け部位50bの断面積は、その他の部分の丸形状断面の断面積に比して80%以上となるよう形成されている。また、内部リード線部50において、丸形状断面の部分と押し潰された略長方形状断面の部分との境界部分はなだらかな形状となるように形成されており、急激な形状変化がないよう構成されている。したがって、外部リード線7から発熱体2への電流径路である内部リード線部50において、取り付け部位50bで急激に抵抗値が変わることが無く、取り付け部位50bにおける温度上昇が抑制されている。
【0066】
実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、図6に示すように、内部リード線部50の取り付け部位50bと発熱体側の丸形状断面部分との境界部分にサポートリング40が巻着されている。サポートリング40は、内部リード線部50に巻着する巻着部40aと、コイル形状を有するリング部40bと、を有する。
【0067】
サポートリング40の巻着部40aは、内部リード線部50に対して複数の巻数(3回から5回の巻数)により巻き付けられている(巻着状態)。このため、サポートリング40は内部リード線部50に緩むことなく固着されている。したがって、サポートリング40は内部リード線部50から外れることが無く、内部リード線部50上を移動することもない。サポートリング40のリング部40bは、少なくとも1巻き以上のコイル形状であり、その直径は、発熱体2が収納される容器1の内面に近接する大きさを有している。したがって、サポートリング40のリング部40bの中心は、容器1の長手方向に平行な中心軸上にある。
【0068】
以上のように、実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の両端部分が簡単な構成のサポートリング40及び内部リード線部50により確実に容器内の所定位置に保持されている。実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、発熱体2が容器1の長手方向の中心軸から外れた位置(偏心位置)で長手方向に沿って形成されている。このように構成された実施の形態2の発熱体ユニットは、実施の形態1の発熱体2と同じ仕様の発熱体2を用いて、実施の形態1の発熱体ユニットとは異なる輻射状態を構築することができる。例えば、容器1において発熱体2と近い部分が高温度となるよう構成して、容器1による2次輻射を増やすことが可能な構成となる。また、発熱体2から遠い部分の容器1(内面又は外面)に反射膜を形成して、発熱体2から輻射された熱を反射するよう構成することができる。このように、発熱体2から遠い位置に反射膜が形成できるため、反射膜が容器1の内面であっても発熱体2との接触を防止し、安全性を確保するとともに、低融点の金属膜を反射膜として用いることができる。また、実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、反射膜(金属膜)が遠い位置に配置されているため、反射膜自体の発熱を防止できる構成となる。
【0069】
なお、実施の形態2の発熱体ユニットにおいては、サポートリング40の巻着部40aが、内部リード線部50における取り付け部位50bの略長方形状断面から丸形状断面へ移行する部位に巻き付けられているが、前述の図5に示した発熱体ユニットと同様に、サポートリング40の巻着部40aが、内部リード線部50における取り付け部位50bである略長方形状断面の部位にのみ巻き付ける構成でもよい。このように、サポートリング40の巻着部40aを内部リード線部50における押し潰された取り付け部位50bに取り付けても、サポートリング40は内部リード線部50から外れることが無く、内部リード線部50上を移動することもない。
【0070】
以上のように構成された実施の形態2の発熱体ユニットは、発熱体2が簡単な構成のサポートリング40及び内部リード線部50により容器内の所定位置に確実に保持されるため、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を容易に提供することができる。
【0071】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットについて図7を用いて説明する。実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、前述の実施の形態1の発熱体ユニットと異なる点は、発熱体2を張設するための内部リード線部及びサポートリングの構成である。実施の形態3において、発熱体ユニットにおける内部リード線部及びサポートリング以外の構成は、実施の形態1の発熱体ユニットと同じであるため、以下、実施の形態3における内部リード線部及びサポートリングについて説明する。なお、実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1の発熱体ユニットと同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
【0072】
図7は、実施の形態3の発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に取り付けられている内部リード線部51及びサポートリング41等を示す正面図である。
図7に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、発熱体2の端部は保持具3により平面側と裏面側が挟み付けられており、保持具3の略中央に形成された貫通孔と発熱体2の端部に形成された貫通孔が内部リード線部51におけるL字形状の先端である突出端部51aにより貫通されている。保持具3の貫通孔から突出した内部リード線部51の突出端部51aの先端には、実施の形態1と同様に抜け落ち防止手段(脱落防止手段)が施されている。
【0073】
実施の形態3の発熱体ユニットに用いられている保持具3は、実施の形態1の保持具3と同様に導電性を有する金属材料形成された平板な板材を折り曲げて形成されており、発熱体2の発熱体保持部2aを挟むよう構成されている。内部リード線部51と保持具3との係合状態をより強固にし、保持具3が内部リード線部51に対して移動しないようにするため、保持具3と内部リード線部51とはスポット溶接されている。
【0074】
上記のように発熱体2に係合するよう取り付けられた内部リード線部51には、線材を凹状に屈曲した取り付け部位51bが形成されている。この取り付け部位51bは、前述の実施の形態1における内部リード線部5の取り付け部位5bとは異なって、押し潰されてはおらず、断面丸形状のままである。なお、実施の形態3においては、内部リード線部51として断面丸形状の線材を用いた例で説明するが、他の断面形状、例えば断面矩形状(断面多角形状)の線材を用いることが可能である。
【0075】
実施の形態3の発熱体ユニットにおいて、実施の形態1と同様に、サポートリング41は、内部リード線部51に巻着する巻着部41aと、容器1の内面から所定の隙間を有して配置されるコイル形状のリング部41bと、を有している。
内部リード線部51の取り付け部位51bには、サポートリング41の線材が3回から5回の巻数で巻き付けられて巻着部41aが形成され、サポートリング41が内部リード線部51に確実に固着されている。
【0076】
したがって、実施の形態3においては、内部リード線部51において、電流が流れる方向に直交する断面積が取り付け部位51bにおいても変わることがなく同じ丸形状断面である。したがって、電流径路である内部リード線部51において、取り付け部位51bで抵抗値が変わることが無く、温度上昇も発生しない。
前述のように、サポートリング41のリング部41bは、少なくとも1巻き以上のコイル形状であり、その直径は、発熱体2が収納される容器1の内面に近接する大きさを有している。したがって、サポートリング41のリング部41bの中心は、容器1の長手方向に平行な中心軸上にある。
【0077】
以上のように、実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、発熱体2が簡単な構成のサポートリング41及び内部リード線部51により確実に容器内の所定位置に保持されている。実施の形態3の発熱体ユニットにおいては、実施の形態1の発熱体ユニットの効果と同様に、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を容易に提供することができる。
【0078】
(実施の形態4)
本発明に係る実施の形態4における加熱装置ついて図8を用いて以下に説明する。
図8は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した発熱体ユニットを装備した加熱装置の一例を示す斜視図である。
【0079】
図8において、加熱装置の一例である暖房用の加熱機器61である機器内部には、実施の形態1から実施の形態3で説明した本発明の発熱体ユニットが装備されている。なお、実施の形態4の加熱機器61においては発熱体ユニットに符号62を付して説明する。実施の形態4の加熱機器61には、温度コントローラー63、反射板64、保護用のカバー65等の一般的な暖房用の加熱機器に用いられている構成部材が設けられている。
【0080】
このように構成された加熱機器61において、発熱体ユニット62に定格の電圧を印加することにより、所定の電流が発熱体ユニット62内の発熱体2に流れて発熱し、早い立ち上がりで温度が上昇する。実施の形態4の加熱機器61は、温度コントローラー63による温度制御により、ユーザの望む所定の温度に確実に保持される。また、発熱体ユニット62には、平面を有する帯状の発熱体2が熱源として用いられているため、その平面から輻射される熱は指向性を有している。実施の形態4の加熱機器61においては、発熱体ユニット62の発熱体2の平面部分が正面側と背面側に向くよう配設されている。このため、発熱体2の正面側から輻射された熱は、加熱機器61の正面側にある被加熱領域を加熱し、発熱体2の背面側から輻射された熱は反射板64により反射されて被加熱領域を加熱する。なお、発熱体2はフィルムシート素材で帯状に形成されているため、発熱体2の側面側から輻射される熱量は非常に少なく、正面側(背面側)から輻射される熱量に比べて無視できる程小さいものである。このため、実施の形態4の加熱機器61においては、高い指向性を有して、被加熱領域を効率高く加熱することができる。
【0081】
本発明の加熱装置に装備された発熱体ユニット62は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した発熱体2を有しており、この発熱体2は、面方向の熱伝導率が同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有するフィルムシート素材で形成されており、熱容量が小さいため立ち上がりが早く、且つ突入電流が少ない特性を有している。このため、本発明の発熱体ユニットを熱源として装備した加熱装置は、素早く加熱することが可能となる優れた応答性を有し、所定の領域を熱効率が高く加熱することができる優れた特徴を有する暖房機器となる。
【0082】
なお、本発明の発熱体ユニットは、暖房機器以外でも多種多様な電子/電気機器の熱源として用いることができ、例えば高温度の発熱体を装備している複写機、ファクシミリ、プリンタ等のOA機器、及び調理機器、乾燥機、加湿器等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、安全性及び信頼性が高く、且つ効率の高い熱源を構築することができるとともに、作業効率が高く優れた生産性を有する発熱体ユニット及び加熱装置を提供することができるため、熱源を必要とする電子/電気機器分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構成を示す平面図
【図2】図1に示した発熱体ユニットの正面図
【図3】実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に取り付けられた保持具3、内部リード線部及びサポートリング等を示す平面図
【図4】図3の発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に取り付けられた保持具3、内部リード線部及びサポートリング等を示す正面図
【図5】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの別構成を示す平面図
【図6】本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットの構成を示す正面図
【図7】本発明に係る実施の形態3の発熱体ユニットの構成を示す正面図
【図8】本発明に係る実施の形態1から実施の形態3の発熱体ユニットを装備した実施の形態4の加熱装置の一例を示す斜視図
【図9】従来の発熱体ユニットの構成を示す平面図
【符号の説明】
【0085】
1 容器
2 発熱体
2a 発熱体保持部
2b 発熱部
3 保持具
4 サポートリング
4a,40a,41a 巻着部
4b,40b,41b リング部
5 内部リード線部
5a,50a,51a 突出端部
5b,50b,51b 取り付け部位
6 モリブデン箔
7 外部リード線部
8 電力供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系物質を含む材料によりフィルムシートで形成され、2次元的等方向性の熱伝導を有する帯状の発熱体と、
前記発熱体における対向する両端に電力を供給する電力供給部と、
前記発熱体と前記電力供給部の一部を内包する容器と、を具備する発熱体ユニットにおいて、
前記容器の内部における前記電力供給部に固着されて前記発熱体を前記容器の内部の所定位置に保持する位置規制部であって、前記位置規制部には前記電力供給部における電流径路が形成されないよう構成された発熱体ユニット。
【請求項2】
前記電力供給部が、前記発熱体の両端を保持する保持具と、前記保持具に電気的に接続された内部リード線部とを有し、
前記位置規制部が前記内部リード線部に固着されたコイル状のサポートリングであり、
前記位置規制部の外周部分の少なくとも一部が前記容器の内周面に近接して配置された請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記内部リード線部における前記位置規制部が固着される部分の少なくとも一部が他の部位に比べて変形された請求項2に記載の発熱体ユニット。
【請求項4】
前記位置規制部が金属線材により構成され、前記内部リード線部に対して前記位置規制部の一部を巻き付けて当該位置規制部を固着した請求項3に記載の発熱体ユニット。
【請求項5】
前記内部リード線部が線材により構成されており、前記内部リード線部の変形された部分に前記位置規制部が固着されており、前記内部リード線部の変形された部分は、当該部分を流れる電流径路に直交する断面積が、他の部分における電流径路に直交する断面積に比して80%以上となるよう構成された請求項3に記載の発熱体ユニット。
【請求項6】
前記内部リード線部が線材により構成されており、前記位置規制部が固着される前記内部リード線部の部分が屈曲されて構成された請求項3に記載の発熱体ユニット。
【請求項7】
前記発熱体の両端に形成された掛止受部が、前記内部リード線部に形成された掛止部と係合して前記発熱体が前記容器の内部に張設されるよう構成された請求項3に記載の発熱体ユニット。
【請求項8】
前記発熱体の掛止受部が貫通孔で構成され、前記発熱体の両端を挟む前記保持具における前記掛止受部と対応する位置に貫通孔が形成され、前記掛止部が前記掛止受部と前記保持具の貫通孔とを貫通して係合するよう構成された請求項7に記載の発熱体ユニット。
【請求項9】
前記掛止部において、前記保持具の貫通孔を貫通した突出端部が当該貫通孔の直径より大きく塑性変形された請求項8に記載の発熱体ユニット。
【請求項10】
前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項11】
前記容器が、耐熱性を有するガラス管又はセラミックス管のいずれかにより構成され、前記電力供給部において封止して容器内部に不活性ガスを充填した請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発熱体ユニットを熱源として装備した加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−272225(P2009−272225A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123410(P2008−123410)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】