説明

発熱体

【課題】簡単な製法と品質管理で製造できる生産性と信頼性を高めた発熱体を提供する。
【解決手段】発熱体は、基材12に形成した電極13、14と、この間に配置され熱可塑性樹脂に導電性付与材が混合された発熱可能の抵抗体15と、電極13、14と抵抗体15の全体を覆う有機材料の接着性材料16と、その積層物のコート材17を備えている。接着性材料16は、主成分である低級のオレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物である。そして、低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房、乾燥、加熱などの熱源として用いることのできる屈曲性のある発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房や乾燥などに使用される発熱体は、図3(aの発熱部分の部分断面図に示ように、ポリエチレンテレフタレート板などの下板1に、一対の電極材料2a、2bと、正抵抗温度特性を有する抵抗体材料3を形成し、その上部全面を熱溶融性樹脂フィルム4とポリエチレンテレフタレート等の上板5を順に積層した外装材6で被覆した構成である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この熱溶融性材料フィルム4は、下板1と上板5とを接着することで、一対の電極材料2や抵抗体材料3への水の浸入を防止して耐水性を高めている。また、熱溶融性材料フィルム4は、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの混練物をペースト化した正抵抗温度特性を有する抵抗体材料3にも接するので、その品質と信頼性を安定させるために、複雑な材料組成とし高度な製法を用いて上板5に形成し、下板1に熱溶融接着していた。
【0004】
電極材料2は、共重合ポリエステル樹脂中に銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した組成であるが、そこへのリード線接続方法を、図3(b)のリード線接続部分断面図に示す。すなわち、電極材料2の上部には、銅板からなる端子部材7が、共重合ポリエステルに銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した導電性樹脂8を介して積層されており、両者は電気的及び物理的に接合されている。
【0005】
外装材6は、その端子部材7に対応する部分に、後から施す熱溶融によって貫通穴が形成されており、この貫通穴を経由してリード線9を、半田からなる熱溶融性の接合金属10と結合金属11を介して端子部材7に接合している。このため、端子部材7の形成位置に影響されることなく、外装材6を自由に全面被覆することができる。また、電極材料2の給電部分が、導電性樹脂8を介して端子部材7と接合され、その端子部材7が熱溶融性の接合金属10と結合金属11を介してリード線9と接合される構成であるため、両者が強固に接合される。
【0006】
このため、許容電流が大きい高信頼性で高生産性の給電部が、発熱体の任意の位置に形成できる。このリード線接合構成は、電源電圧が低いために多くの電流が必要とされる場合や、速熱性を得るために大きな突入電流を必要とする正抵抗温度特性を有する発熱体を形成する場合に、極めて効果的である。
【0007】
また、この発熱体とは構造が異なるが、導電性カーボンを混合した4フッ化エチレン樹種からなる抵抗体材料を、ポリエチレンなどの熱溶融性材料フィルムを介してポリエチレンテレフタレート板で両側から覆う発熱体がある。(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、最近は熱溶融性材料フィルム4としてバリアー性カバーフィルムを使用し、その組成をカルボキシル基含有ポリエチレンのごとき低融点樹脂50部とポリアミド系熱可塑性エラストマーのごとき柔軟・伸縮性樹脂30部とエポキシ基含有樹脂のごとき反応性樹脂20部とからなる樹脂組成物とする提案がある(例えば、特許文献3参照)。このバリアー性カバーフィルムは、下板1に新たに形成したバリアー性ベースフィルムによって接着されている。
【0009】
バリアー性ベースフィルムは、バリアー性樹脂と柔軟伸縮性樹脂と反応性樹脂とからなる。バリアー性樹脂は、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ポリアミド型樹脂である。
【0010】
柔軟伸縮性樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル共重合体である。反応性樹脂は、エポキシ基含有樹脂、カルボン酸基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、無水マレイン酸基含有樹脂である。
【0011】
これ以外にさらに、バリアー性カバーフィルムとして、超低密度ポリエチレンのごとき低融点樹脂40部とスチレン系熱可塑性エラストマーのごとき柔軟伸縮性樹脂20部とカルボキシル基含有ポリエチレン樹脂15部と難燃剤25部とからなる樹脂組成物の提案もある(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2005−149877号公報
【特許文献2】特開2000−299181号公報
【特許文献3】特開2006−344548号公報
【特許文献4】特開2007−59167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の発熱体に用いる外装材6の熱溶融性材料フィルム4は、抵抗体材料3と接触しているにも関わらず、その熱特性を考慮して両者の材質の最適化がなされていないので、抵抗体材料3の品質特性と信頼性を安定させるために、複雑な材料組成および製法と高度な品質管理を用いて、接着しなければならない課題があった。
【0013】
熱溶融性材料フィルム4として一般に用いられる材料は、ポリエチレンなどのポリオレフィンやポリスチレンなどの熱可塑性材料や、尿素材料(ユリア材料とも称す)やフェノール材料さらにエステル材料やエポキシ材料などの熱硬化性材料、ポリイソプレンなどの熱可塑性エラストマーである。例えば、これら熱溶融性材料フィルム4をポリエチレンテレフタレート等の上板5に塗布して外装材6とする場合、熱溶融性材料フィルム4は、有機溶剤で溶解させた溶剤系接着剤タイプや、熱で融かして液化させるホットメルト系接着剤タイプで使用される。
【0014】
このような材料構成にすると、熱溶融性材料フィルム4が抵抗体材料3を被覆するので、その融点やガラス転移点もしくは脆化温度が、抵抗体材料3の抵抗品質特性およびその耐久信頼性特性に影響する。そこでその影響を回避するために、熱溶融性材料フィルム4は、抵抗体材料3への影響を回避する特殊材料をさらに添加するという複雑な材料組成とし、複雑な製法を用いて熱溶融性材料フィルム4をポリエチレンテレフタレート等の上板5に形成している。
【0015】
これに加えて、熱溶融性材料フィルム4は、電極材料2に対しても同様な影響を及ぼすのでその影響を回避するとともに、下板1および上板5との接着性も確保しなければならない。そのため、これらのことを考慮して熱溶融性材料フィルム4は、材料や製法の工夫がさらになされている。なお、熱溶融性材料フィルム4だけで外装材6を構成する場合でも同様な工夫がなされている。
【0016】
柔軟性とクッション性を有する熱溶融性材料フィルム4として、エチレンやプロピレン等で代表されるオレフィン系熱可塑性エラストマーがある。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、EPDM等のオレフィン共重合体ゴムとオレフィン系樹脂を混合した組成物であり、ゴムとオレフィン系樹脂の中間的性質を備えている。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの主構成要素であるオレフィン系樹脂は、無極性であるので、抵抗体材料3に用いるエチレン酢酸ビニル共重合体に代表される極性樹脂との親和力が弱く、抵抗体材料3の抵抗品質特性およびその耐久信頼性特性への影響が小さい利点がある。
【0018】
しかしながら、無極性のオレフィン系樹脂が下板1および上板5として使用されると、簡単には接着ができない。そこで、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートなどの極性基を備えた熱可塑性樹脂を、下板1および上板5として使用して接着性を高めているが、充分とは言い難く、複雑な製法を用いて両者を接着している。
【0019】
上記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、熱溶融性材料フィルムの材質を、下板と上板と抵抗体の材質の関係より最適化して、簡単な製法と品質管理で製造できるようにすることで、生産性と信頼性を高めた発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の発熱体は、極性有機材料の基材と、基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置され、熱可塑性樹脂と導電性付与材が混合された組成物である発熱可能な抵抗体と、前記電極および抵抗体の全体を覆う有機材料の接着性材料と、前記接着性材料に積層した極性有機材料のコート材を少なくとも備えている。
【0021】
そして、前記接着性材料は、主成分である低級オレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物であり、前記低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用している。
【0022】
前記接着性材料は、結晶性が高い低級オレフィン系熱可塑性エラストマーが主成分であり、極性基を有する低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体がさらに混合された組成物であるので、極性に改質されている。そのため、熱可塑性樹脂が含有される抵抗体への影響が小さく、簡単な製法と品質管理で製造できる発熱体が得られる。また、前記接着性材料は、極性に改質されることで、極性有機材料である基材やコート材との接着性が向上するとともに、軟化温度が低下して低い温度で製膜ができる発熱体が得られる。
【0023】
さらに、前記接着性材料は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが主成分であるので、電極や抵抗体への水浸透を防止でき、耐水性が高い発熱体が得られる。これに加えて、前記接着性材料はゴム弾性に富む熱可塑性エラストマーを使用し、抵抗体は軟らかい極性基を持つ熱可塑性樹脂を使用しているので、軟らかい基材や有機性コート材を使用するだけで、屈曲性の発熱体を得ることができる。
【0024】
このように、本発明は、接着性材料の材質を、抵抗体や基材およびコート材に使用する材質の熱特性の関係より最適化しているので、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できるようにした。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、簡単な製法と品質管理で製造できる接着性材料により、生産性と信頼性を高めた発熱体を提供でき、生産に要する電力量や生産コストが低減する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
第1の発明の発熱体は、極性有機材料の基材と、前記基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置され、熱可塑性樹脂と導電性付与材が混合された組成物である発熱可能な抵抗体と、前記電極および抵抗体の全体を覆う有機材料の接着性材料と、前記接着性材料に積層した極性有機材料のコート材を少なくとも備え、前記接着性材料は、主成分である低級オレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物であり、前記低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用している。
【0027】
前記接着性材料は、結晶性が高い低級オレフィン系熱可塑性エラストマーが主成分であり、極性基を有する低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体がさらに混合された組成物であるので、極性に改質されている。そのため、熱可塑性樹脂が含有される抵抗体への影響が小さく、簡単な製法と品質管理で製造できる発熱体が得られる。また、前記接着性材料は、極性に改質されることで、極性有機材料である基材やコート材との接着性が向上するとともに、軟化温度が低下して低い温度で製膜ができる発熱体が得られる。
【0028】
さらに、前記接着性材料は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが主成分であるので、電極や抵抗体への水浸透を防止でき、耐水性が高い発熱体が得られる。これに加えて、接着性材料はゴム弾性に富む熱可塑性エラストマーを使用し、抵抗体は軟らかい極性基を持つ熱可塑性樹脂を使用しているので、軟らかい基材や有機性コート材を使用するだけで、屈曲性の発熱体を得ることができる。
【0029】
第2の発明の発熱体は、特に第1の発明の接着性材料で使用する低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体は、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物であるとしている。この3元共重合物は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに非常に均一に混合するので、基材やコート材に使用する極性値の高い熱可塑性樹脂に対する接着性材料の接着性を向上させ、熱接着を一層簡単にさせることができる。
【0030】
第3の発明の発熱体は、特に第1の発明の接着性材料で使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、エチレン系熱可塑性エラストマーを主成分としている。エチレン系熱可塑性エラストマーは、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体に非常に均一に混合するので、基材やコート材に使用する極性値の高い熱可塑性樹脂に対する接着性材料の接着性を向上させ、熱接着を一層簡単にさせることができる。
【0031】
第4の発明の発熱体は、特に第1の発明の接着性材料で使用する接着性材料は、スチレン系熱可塑性エラストマーがさらに含有されているものである。スチレン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに非常に均一に混合するので、基材やコート材に使用する極性値の高い熱可塑性樹脂に対する接着性を向上させて、熱接着を一層簡単にさせる。また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、溶融流動性に優れているのでオレフィン系熱可塑性エラストマーに混合すると、接着用の厚膜が簡単に形成できる利点がある。
【0032】
第5の発明の発熱体は、特に第1の発明の電極および抵抗体を、接着性材料と同種の接着性材料(II)で覆われた基材に形成するとしている。同種の材料で接着する構成とすると、電極および抵抗体の形成されていない部分において、接着性材料と接着性材料(II)
が良好に接着して、その耐水性が向上する。
【0033】
第6の発明の発熱体は、特に第1の発明の基材およびコート材は、芳香族ジカルボン酸が主成分である高結晶性のポリエステル系材料であるとした。基材およびコート材は、芳香族ジカルボン酸を含有しているので、同系の低級カルボン酸もしくはそのエステルが含有されている接着性材料との接着性が向上する。
【0034】
第7の発明の発熱体は、特に第1の発明の接着性材料のガラス転移点もしくは脆化温度のいずれかは、抵抗体に用いる熱可塑性樹脂の結晶化温度より低温側にあり、しかも前記接着性材料の融点もしくは軟化温度は、前記抵抗体に用いる熱可塑性樹脂の融点もしくは軟化温度より高温側にあるとしている。接着性材料と抵抗体の材質をお互いの熱特性の関係より最適化しているので、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性を高めることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できるようになる。
【0035】
第8の発明の発熱体は、特に第1の発明の抵抗体に用いる熱可塑性樹脂は、極性基を持ち、低結晶性樹脂と高結晶性樹脂の共重合物であるとした。抵抗体に用いる熱可塑性樹脂は、極性基を持っており、低結晶性樹脂と高結晶性樹脂の共重合物であるとすると、結晶化におけるお互いの利点(低結晶性樹脂は結晶化が穏やかに起こり収縮も微少、高結晶性樹脂は結晶化が急速に起こり収縮も大きい)が相乗効果となって結晶化が良好に起こり、抵抗値の安定が簡単にできる。その結果、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性を高めることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0036】
第9の発明の発熱体は、特に第1の発明の電極は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとした。
【0037】
電極は、その上部に抵抗体や接着性材料が順々に積層される構造となっているので、これら材料が順々に積層されて硬化のために加熱されるごとに、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。しかも、電極は、この材料を使用すると柔らかく優れたゴム弾性を持ち、給電用リード線を頻繁に引張っても剥離することなく強固に接合していた。また、この材料の電極は、接着性材料をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた導通特性を長期間維持する。そのため、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が得られる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である発熱体の部分断面図である。発熱体は、極性有機材料の基材12と、基材12に形成した1対以上の電極13、14と、電極13、14の間に配置されており、熱可塑性樹脂に導電性付与材が混合された組成物である発熱可能な有機材料の抵抗体15と、電極13、14と抵抗体15の全体を覆う有機材料の接着性材料16と、接着性材料16に積層した極性有機材料のコート材17を少なくとも備えている。
【0040】
接着性材料16は、主成分である低級オレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物である。そして、低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリ
ル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用している。
【0041】
発熱体を具体的に試作した。基材12は、極性基を備えた熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを使用した。この基材12の片面に、電極13、14を形成した。電極13、14は、共重合ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に、銀とカーボンからなる導電性付与材を分散した導電性銀ペーストであり、印刷乾燥によって10μm厚みとなっている。
【0042】
熱硬化後の重量組成比は、銀粉81wt%とカーボン3wt%の導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤の16wt%とからなり、導電性付与剤/結合剤の組成比が84/16である。電極13、14は、主電極とこの主電極から分岐される枝電極から構成されており、枝電極が交互に位置するように配置されている。
【0043】
次に、有機材料の抵抗体15を、既に形成された電極13、14の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層されるように形成した。抵抗体15は、正抵抗温度特性を有する有機材料系の抵抗体であり、熱可塑性樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合体を使用)と架橋材(ジクミルパーオキサイドを使用)と導電性付与材(カーボンブラックを使用)の混練物をペースト化したものを、印刷乾燥により10μm厚みとして形成している。
【0044】
その後、電極13等の給電部分に、導電性銀ペーストからなる導電性有機材料19を介して、70μm厚みの銅箔に錫メッキした導電性端子20を積層し、電極13等と導電性端子20を接合した。導電性有機材料19は、ポリエステル材料とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に導電性付与材として銀粉末を分散した材料である。
【0045】
さらにその上部に、コート材17と接着性材料16との積層物である有機性被覆材18を、基材12や電極13、14さらに抵抗体15を被覆するように配置した。コート材17は、極性基を備えた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートを使用しており、接着性材料16より高融点の材料である。
【0046】
接着性材料16は、オレフィン系熱可塑性エラストマーと、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物との組成が、70/30であり、エチレン系熱可塑性エラストマーが全オレフィン系熱可塑性エラストマーに対して70wt%含有されたものである。この接着性材料16は、電極13、14および抵抗体15の側に配置されており、その融点温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、基材12と熱融着して積層される。基材12を有機性被覆材18で覆い熱融着して気密構造にすることで、水分などが抵抗体15に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にした。
【0047】
最後に、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21を有機性被覆材18にレーザ等で設け、導電性端子20を加熱し硬化させて電極13等に電気的物理的に接合し、給電用リード線22をこの空隙21を経由して導電性端子20にハンダの接合材23を用いて接合して完成である。
【0048】
この発熱体は、結晶性が高く無極性の低級オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする接着性材料16であるので、極性基を有する熱可塑性樹脂が含有された抵抗体15への影響が小さく、簡単な製法と品質管理で製造できる発熱体が得られた。このことについて詳細に説明する。
【0049】
抵抗体15は、熱可塑性樹脂と導電性付与材が混合された発熱可能な組成物であるので
、熱可塑性樹脂と導電性付与材が凝集した網目状の導電鎖路を形成した導電性構造物になっている。この導電性構造物において、絶縁物である熱可塑性樹脂は、導電物に変質しているので、本来とは異なる接着物性となっている。そのため、熱可塑性樹脂の極性基は、柔軟性には貢献するが、オレフィン系熱可塑性エラストマーとの接着性にはあまり貢献せず、接着性材料16は抵抗体15に接着しにくくなって影響を及ぼさないのである。
【0050】
また、接着性材料16は、極性基を有する低級カルボン酸もしくはそのエステルとを含むエチレン系共重合体をさらに混合した組成物であるので、オレフィン系熱可塑性エラストマーの無極性を極性に改質している。そのため、極性有機材料である基材12や有機性のコート材17との接着性を向上させるとともに、その軟化温度を低下させ低い温度で製膜ができる発熱体が得られた。
【0051】
さらに、接着性材料16は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが主成分であるので、電極13、14や抵抗体15への水浸透を防止でき、耐水性が高い発熱体が得られた。これに加えて、接着性材料16はゴム弾性に富む熱可塑性エラストマーを使用し、抵抗体15は軟らかい極性基を有する熱可塑性樹脂を使用しているので、軟らかい基材や有機性コート材を使用するだけで、屈曲性の発熱体を得ることができた。
【0052】
接着性材料16に用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーとエチレン系共重合体の関係について詳細に説明する。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、製膜作業性や耐水性さらには抵抗体への影響の観点で、接着性材料16に対して90〜50wt%が好ましく、残部はエチレン系共重合体および他組成物を用いる。
【0053】
また、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体は、接着性材料16に対して10〜40wt%が好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、このエチレン系共重合体が混合されると、溶解度因子(SP値と称す)が向上する性質があり、基材12や有機性のコート材17に使用する極性値の高い有機材料に対する接着性が向上し、熱接着が容易となる。この効果は、このエチレン系共重合体が、オレフィン系熱可塑性エラストマーのSP値を、高いSP値をもつ基材12やコート材17のSP値に近づけるので、両者の接着性が向上する効果と、オレフィン系熱可塑性エラストマーに良く分散する効果の相乗効果によるものである。
【0054】
接着性材料16に主成分として使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系共重合体ゴムおよびオレフィン系樹脂を混練し、動的加硫を施して得られたものである。オレフィン系共重合体ゴムおよびオレフィン系樹脂の配合比(重量比)は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの常温でのJIS−A硬度が50〜95度になるように設定されている。この理由は、硬度が50度未満では、得られる熱可塑性エラストマーの機械的強度が不足し、反対に95度を超えると、熱可塑性エラストマーの柔軟性が損なわれるためであり、いずれの場合もこの発明が目的とする熱可塑性エラストマーが得られない。
【0055】
オレフィン系熱可塑性エラストマーで使用するオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等の単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体等が例示されるが、特にポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、オレフィン系共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR)およびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)等が例示されるが、特にエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)は、架橋度が高く、成形性が向上する点で好ましい。なお、オレフィン系共重合体ゴムの一部、1〜30重量%を、目的に応じて他のゴム、例えばIIR、エチレンアクリルゴム等で置換することができる。
【0056】
エチレン系共重合体は、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルエステルからなる群から選ばれたいずれか1種以上の特定モノマーとの共重合体である。エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・エチルメタクリレート共重合体(EEMA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メタクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体(EMAGMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・エチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体(EEAMAH)、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用できる。
【0057】
極性有機材料である基材12およびコート材17は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を共重合の形で導入した有機材料であり、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂等が使用できる。また、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂は、ポリエチレンやポリアミド、塩化ビニルなども使用できる。
【0058】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1の発明において、接着性材料16で使用する、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体の材料について検討した。検討は、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体の材料を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。
【0059】
その結果、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物を使用しその組成を、オレフィン系熱可塑性エラストマーと、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物との組成が、80〜60/20〜40(重量比)したものが最良であった。この理由は、この材料は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに非常に均一に混合するので、溶解度因子SP値を高い側に向上させ、基材12やコート材17に使用する極性値の高い有機材料に対する接着性を向上させて、熱接着を一層簡単にさせるためである。
【0060】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、実施の形態1の発明において、接着性材料16で使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーの材料について検討した。検討は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの材料を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。その結果、エチレン系熱可塑性エラストマーを主成分としているオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用し、その組成をエチレン系熱可塑性エラストマーを主成分としているオレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体とが、80〜60/20〜40(重量比)とした組成物が、最良であった。
【0061】
また、エチレン系熱可塑性エラストマーは、全オレフィン系熱可塑性エラストマーに対して60wt%以上含有されたものが最適であった。またさらに、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体は、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物を使用したものが最適であった。この理由は、この材料は、低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体に非常に均一に混合するので、溶解度因子SP値を高い側に向上させ、基材12やコート材17に使用する極性値の高い有機材料に対する接着性を向上させて熱接着を一層簡単にさせるためである。
【0062】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、実施の形態1の発明において、接着性材料16にさらに混合する熱可塑性エラストマーの材料について検討した。検討は、熱可塑性エラストマーの材料を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。その結果、さらに混合する熱可塑性エラストマーとしてスチレン系熱可塑性エラストマーを使用し、その組成をオレフィン系熱可塑性エラストマーと、スチレン系熱可塑性エラストマーと、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物で構成とし、その組成を、残部/20〜30/10〜20(重量比)であるとしたものが、最良であった。
【0063】
この理由は、スチレン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに非常に均一に混合するので、溶解度因子SP値を高い側に向上させ、基材12やコート材17に使用する極性値の高い有機材料に対する接着性を向上させて、熱接着を一層簡単にさせるためである。また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、溶融流動性に優れているのでオレフィン系熱可塑性エラストマーに混合すると、接着用の厚膜が簡単に形成できる利点があった。
【0064】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5は、実施の形態1の発明において、電極13、14および抵抗体15を形成する基材12の構成について検討した。検討は、基材12の構成を異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。その結果、接着性材料と同種の接着性材料(II)25を、基材12に形成し、この接着性材料(II)25に電極13、14および抵抗体15を形成する構成とした。
【0065】
その構成を図2に示す。接着性材料(II)25は、主成分である低級のオレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物であり、この低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用している。同種材料で接着する構成とすると、接着性材料16と接着性材料(II)25が良好に接着して耐水性が一層向上した。
【0066】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6は、実施の形態1の発明において、基材12およびコート材17の材料について検討した。検討は、基材12およびコート材17の材料を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。その結果、芳香族ジカルボン酸が主成分である高結晶性のポリエステル系材料を使用すると、良好に接着して耐水性が向上した。この理由は、基材12およびコート材17は、芳香族ジカルボン酸を含有しているので、同系の低級カルボン酸もしくはそのエステルが含有されている接着性材料16との接着性が向上するためである。
【0067】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7は、実施の形態1の発明において、接着性材料16と、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂の熱物性について検討した。検討は、接着性材料16と、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂に使用する材料の熱物性を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。
【0068】
その結果、接着性材料16のガラス転移点(もしくは脆化温度)tgのいずれかは、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcより低温側に有り、しかも、接着性材料16の融点(もしくは軟化温度)tmは、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂の融点(もしくは軟化温度)Tmより高温側に有るとした。
【0069】
実施例で抵抗体15に混合する熱可塑性樹脂は、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体で
あり、その脆化温度Tbは238K、ガラス転移点Tgは240K、結晶化温度Tcは280K、融点Tmは366K、の熱挙動特性を有する。
【0070】
一方、接着性材料16は、主成分である低級のオレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物である。そのガラス転移点(もしくは脆化温度)tgは200〜250K、融点(もしくは軟化温度)tmは380〜410Kである。なお、この値は、低級カルボン酸もしくはそのエステルとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用する場合の値である。
【0071】
接着性材料16は、そのガラス転移点(もしくは脆化温度)tgが200〜250Kであり、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂の結晶化温度Tc(280K)より低温側に有る。そのため、抵抗体15をその結晶化温度Tc近辺の低温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた低温信頼性を長期間維持する。
【0072】
また、接着性材料16は、融点(もしくは軟化温度)tmが380〜410Kであり、抵抗体に用いる熱可塑性樹脂の融点Tm(366K)より高温側に有る。そのため、抵抗体をその融点Tm近辺の高温で長期間使用しても、発熱体は、その抵抗特性に影響を受けることなく優れた高温信頼性を長期間維持する。このように、接着性材料16と抵抗体15の熱可塑性樹脂をお互いの熱特性の関係より最適化しているので、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性を高めることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できた。以下、詳細にこの現象のメカニズムを説明する。
【0073】
まず、有機高分子の構造とその熱挙動特性について説明する。有機高分子は、ある間隔で規則的に配列した結晶を形づくる領域(結晶領域)と、そうではない領域(非結晶領域)が混在した構造となっている。低温では、有機高分子を構成する連鎖の1部が変形する運動(これをミクロブラウン運動と呼ぶ)が緩慢となり、転移点を境にその温度以下では、凍結された脆くて硬いガラス状態になっている。この凍結が起こる温度が、ガラス転移点である。脆化温度は、このガラス転移点とほぼ同じである。
【0074】
一方、ガラス転移点以上に温度が上昇すると、非結晶の1部分が再結晶することが起こり始める。このガラス転移点より僅かに高温部において、結晶化が起こる現象を低温結晶化現象と言う。この低温結晶化現象は、温度の上昇とともに活発になるのだが、やがて徐々に不活発に転じ、最終的には或る温度を境にまったく起こらなくなる。
【0075】
本発明は、この低温結晶化現象が起こっている領域にある温度を結晶化温度と呼び、高温側に存在する低温結晶化現象が最後に起こる境界温度を、結晶化温度として用いて検討を進めた。温度がさらに上昇すると、ミクロブラウン運動が、活発になり始めて構成する分子全体が大きく振動して移動する運動(これをマクロブラウン運動と呼ぶ)が始まる。このマクロブラウン運動は、まず非結晶から始まってやがて結晶にも伝わり、最後には全体が非晶状態になる。融点は、結晶質が非結晶に変わる温度であり、流動した状態になる温度でもある。
【0076】
これらガラス転移点や結晶化温度さらに融点は、熱可塑性樹脂を、温度上昇させてその吸発熱ピークを測定する示差走査熱量分析結果から求めた値であり、ガラス転移点は吸熱ピークの低温側始端温度、結晶化温度は発熱ピークの高温側終端温度、融点は吸熱ピークの高温側終端温度で表現した。脆化温度は、JIS K7216 「プラスチックの脆化温度試験方法」に基づき、一定温度の試験槽に入れた片持ばりの試験片に所定の打撃を与えて、その破壊個数を各温度ごとに測定し、その値を所定計算式に代入して算出した温度である。
【0077】
なお、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂は、発熱ピークの高温側終端温度を結晶化温度Tcとして取り扱ったので、この終端温度Tc以下になると結晶化が起こっている。例えば、熱可塑性樹脂のエチレン酢酸ビニル共重合体と架橋材のジクミルパーオキサイドと導電性付与材のカーボンブラックの混練物ペーストを印刷乾燥して得ただけの抵抗体15は、結晶化温度Tc280℃以下の温度に長間放置されると、エチレン酢酸ビニル共重合体の結晶化が起こり、電子導電性が増加してその抵抗値が大きく低下する特性を有する。
【0078】
そこで、実施例では、効果の判定を明確にするために、エチレン酢酸ビニル共重合体を結晶化させて抵抗体15の抵抗を安定させるための低温エイジングを、発熱ピークの高温側終端温度Tc280℃でおこない、検討を進めた。また、エチレン酢酸ビニル共重合体の結晶化を加速させるために、この低温エイジング温度は、高温側終端温度280℃以下でガラス転移点Tg240゜K以上としてもよく、この場合、この低温エイジング温度を結晶化温度Tcとして扱ってもよく、このことは終端温度Tcを結晶化温度とした前述と技術上何ら矛盾がないものである。
【0079】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8は、実施の形態1の発明において、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂について検討した。検討は、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂に使用する材料を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。
【0080】
その結果、抵抗体15に用いる熱可塑性樹脂は、極性基を持つエチレン酢酸ビニル共重合体やポリ塩化ビニルさらにはポリアミドなどであり、その低結晶性樹脂と高結晶性樹脂の共重合物であるとすると、結晶化におけるお互いの利点(低結晶性樹脂は結晶化が穏やかに起こり収縮も微少、高結晶性樹脂は結晶化が急速に起こり収縮も大きい)が相乗効果となって結晶化が良好に起こり、抵抗値の安定が簡単にできる。その結果、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて製造でき、しかもその耐久信頼性を高めることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できた。
【0081】
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9は、実施の形態1の発明において、電極13、14に用いる材料について検討した。検討は、電極13、14に使用する材料とその組成を実施の形態1と異ならせた以外は、実施の形態1と同じ実施例でおこなった。その結果、電極13、14は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとした。
【0082】
電極13、14は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、イソシアネート系硬化剤を使用した重合ポリエステル樹脂を含有した材料であり、その上部に抵抗体15、接着性材料16などが順々に積層される構造となっている。そのため、これら材料が順々に積層されて硬化のために加熱されるごとに、電極13、14は、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。
【0083】
しかも、電極13、14は、導電性付与剤/結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)としているので、柔らかく優れたゴム弾性を持つ。この重合ポリエステル樹脂を用いた電極は、その引張り強度が格段に優れるため、給電用リード線22の頻繁なる引っ張りによっても、剥離することなく強固に接合していた。
【0084】
また、この材料の電極13、14は、接着性材料16をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた導通特性を長期間維持し、これらを用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造できる利点が有り
、そのため、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の発熱体は、屈曲性を有するうえに耐久信頼性が優れているので、暖房、乾燥、加熱などの熱源として幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1〜4および6〜9の発熱体の部分断面図
【図2】本発明の実施の形態5の発熱体の部分断面図
【図3】(a)従来の発熱体の発熱部分の部分断面図(b)同発熱体のリード線接続部分の部分断面図
【符号の説明】
【0087】
12 基材
13、14 電極
15 抵抗体
16 接着性材料
17 コート材
18 有機性被覆材
25 接着性材料(II)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性有機材料の基材と、前記基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置され、熱可塑性樹脂と導電性付与材が混合された組成物である発熱可能な抵抗体と、前記電極および抵抗体の全体を覆う有機材料の接着性材料と、前記接着性材料に積層した極性有機材料のコート材を少なくとも備え、前記接着性材料は、主成分である低級オレフィン系熱可塑性エラストマーと、低級カルボン酸もしくはそのエステルのエチレン系共重合体を含む混合組成物であり、前記低級カルボン酸もしくはそのエステルは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステルのいずれか1種を少なくとも使用する発熱体。
【請求項2】
接着性材料で使用する低級カルボン酸もしくはそのエステルを含むエチレン系共重合体は、エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合物である請求項1に記載の発熱体。
【請求項3】
接着性材料で使用するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、エチレン系熱可塑性エラストマーを主成分としている請求項1に記載の発熱体。
【請求項4】
接着性材料は、スチレン系熱可塑性エラストマーがさらに含有されている請求項1に記載の発熱体。
【請求項5】
電極および抵抗体を、接着性材料と同種の接着性材料(II)で覆われた基材に、形成した請求項1に記載の発熱体。
【請求項6】
基材およびコート材は、芳香族ジカルボン酸が主成分である高結晶性のポリエステル系材料である請求項1に記載の発熱体。
【請求項7】
接着性材料のガラス転移点もしくは脆化温度のいずれかは、抵抗体に用いる熱可塑性樹脂の結晶化温度より低温側に有り、しかも前記接着性材料の融点もしくは軟化温度は、前記抵抗体に用いる熱可塑性樹脂の融点もしくは軟化温度より高温側に有る請求項1に記載の発熱体。
【請求項8】
抵抗体に用いる熱可塑性樹脂は、極性基を持ち、低結晶性樹脂と高結晶性樹脂の共重合物である請求項1に記載の発熱体。
【請求項9】
電極は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとした請求項1記載の発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−4210(P2009−4210A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163490(P2007−163490)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】