説明

発熱性ゴム

【課題】耐久性を有し軽量な、マイクロ波によって発熱する発熱性ゴムを提供する。
【解決手段】本発明に係る発熱性ゴムの例はシリカ、シリコーンポリマー、酸化鉄及び炭素の混合物である。耐熱性の高いゴムであるシリコーンポリマー及び発熱性ゴムの硬度を増すために添加されているシリカはマイクロ波を吸収しないため、マイクロ波を照射しても発熱しない。一方、酸化鉄及び炭素はマイクロ波を照射されることにより発熱する。各物質のこのような性質からマイクロ波を照射することにより発熱する発熱性ゴムが実現される。なお、シリカが添加されたシリコーンポリマーの一部若しくは全部に代えて250℃程度までの耐熱性のあるフッ素樹脂を用いてもよく、酸化鉄及び炭素の一部若しくは全部に代えて、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等又は炭化ケイ素等の一つ又は複数を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波によって発熱するゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の電子レンジを用いてマイクロ波を吸収することにより発熱する諸々の素材が知られている。例えば特許文献1には、マイクロ波を吸収することにより発熱する金属層及び耐熱性プラスチックフィルム層を紙基材に設けたシートが記載されている。
【0003】
一方、特許文献2にはマイクロ波により発熱するフェライト層をフラックス層で挟んだ加熱媒体物を底面に備える陶器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−89719号公報
【特許文献2】特開2001−128847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたシートは耐久性に欠け、繰り返し使うことができないという問題があった。また、特許文献2に記載された容器は重く、また、誤って割れやすいという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、耐久性があり軽量な、マイクロ波によって発熱する発熱性ゴムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発熱性ゴムは、シリカが添加されたシリコーンポリマーかフッ素樹脂かのいずれか一方と、マイクロ波によって発熱する発熱体材料とが混合されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、耐久性があり、軽量である一方、魚や肉などの食材を調理することができ、食品を風味豊かに加熱することができる。
【0009】
本発明に係る発熱性ゴムは、前記発熱体材料は炭素を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、発熱性材料としてマイクロ波を吸収することにより非常に高温に上昇する炭素を用いる。
【0011】
本発明に係る発熱性ゴムは、前記発熱体材料はさらに酸化鉄を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、発熱性ゴムに含有される発熱体材料として酸化鉄及び炭素を示す。
【0013】
本発明に係る発熱性ゴムは、前記発熱体材料の合計の重量%が20%から45%までの間であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、発熱性ゴムの耐久性及び発熱量の観点から、発熱体材料の好適な割合を示す。
【0015】
本発明に係る発熱性ゴムは、酸化鉄と炭素との重量比は、酸化鉄を1とした場合に0.1から1までの間であることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、発熱量の観点から、酸化鉄と炭素との好適な割合を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐久性があり軽量な、マイクロ波によって発熱する発熱性ゴムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発熱体材料の含有量を示す表及び加熱した測定結果を表すグラフである。
【図2】発熱体材料の含有量を示す表及び加熱した測定結果を示すグラフである。
【図3】厚さの異なる発熱性ゴムを加熱した測定結果を表すグラフである。
【図4】本発明に係る発熱性ゴムを調理容器として用いた例を示す上面図、側面図及び側断面図である。
【図5】調理容器における皿部の上面図及び蓋部の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る発熱性ゴムについて説明する。本発明に係る発熱性ゴムはシリカ、シリコーンポリマー、酸化鉄及び炭素の混合物である。
【0020】
耐熱性の高いゴムであるシリコーンポリマー、及び発熱性ゴムの硬度を増すために添加されているシリカはマイクロ波を吸収しないため、マイクロ波を照射しても発熱しない。一方、酸化鉄及び炭素はマイクロ波により発熱する発熱体材料である。各物質のこのような性質からマイクロ波を照射することにより発熱する発熱性ゴムが実現される。
【0021】
本発明に係る発熱性ゴムの生成にあたっては、まず、シリコーンポリマーにシリカを添加して混合した後、炭素を加えて混合し、さらに酸化鉄を加えて混合する。シリコーンポリマーは炭素混合時と酸化鉄混合時にも適宜加えて混合してもよい。なお、例えば炭素はカーボンブラックを用い、酸化鉄は四酸化三鉄を用いる。各物質が均一になるよう、常温常圧で10分から30分程度混合することにより、本発明における発熱性ゴムが生成される。
【0022】
本発明に係る発熱性ゴムは調理容器として用いられる。この場合、発熱によって魚や肉などの食材に焦げ目をつけるべく短時間で高温に発熱することが望ましい。しかし、シリコーンポリマーの耐熱温度である200℃から250℃程度までを超える高温に達すると破損又は発火の恐れがある。
【0023】
従って、家庭用の電子レンジと同等の600ワットのマイクロ波で照射した場合に、60秒程度で100℃を超え、最高到達温度が200℃から250℃程度までとなることを目安として各物質が混合される割合を調整する。
【0024】
図1は発熱体材料の含有量を示す表及び加熱した測定結果を示すグラフである。本測定では発熱体材料の含有量が異なる複数の発熱性ゴムを600ワットのマイクロ波で照射した。図1Aは各試料における酸化鉄及び炭素の含有量を重量%で示した表であり、図1Bは各試料におけるマイクロ波の照射時間と温度との関係を示すグラフである。試料は酸化鉄及び炭素以外には、主にシリコーンポリマー及びシリカが混合されている。発熱体材料として酸化鉄を単独で用いるより酸化鉄に炭素を混合した方が、温度が短時間で高温に上昇することが測定によって示された。
【0025】
シリコーンポリマー及びシリカはマイクロ波によって発熱しないので混合される割合が大きいと発熱する際の温度が高温まで上昇しない。一方、混合される割合が小さいと、破損し易くなる。これらを踏まえるとシリコーンポリマー及びシリカは合計の重量%が55%から80%までの間とすることが望ましい。
【0026】
シリコーンポリマーとシリカとの混合の割合はシリコーンゴムの硬度に影響する。耐久性及び成型の容易性等を踏まえると、重量比でシリコーンポリマーを1とした場合に、シリカが0.15から0.5までの間であることが望ましい。
【0027】
炭素はマイクロ波を吸収することにより非常に高温に上昇するが、混合される割合が大きいとシリコーンポリマーの耐熱温度である200℃から250℃程度までを大きく超えて、発火する恐れがある。一方で混合される割合を小さくすると温度上昇に時間を要する。
【0028】
ここで、酸化鉄と炭素とが混合された発熱性ゴムは、酸化鉄又は炭素の一方のみが混合された場合よりも短時間で温度が上昇する。従って酸化鉄と炭素とを混合し、かつ混合する割合を調整することにより、短時間で温度を上昇させ、かつ最高到達温度を200℃から250℃程度までに抑えることができる。
【0029】
図2は発熱体材料の含有量を示す表及び加熱した測定結果を示すグラフである。図2Aは各試料における酸化鉄及び炭素の割合を示した表であり、図2Bは各試料におけるマイクロ波の照射時間と温度との関係を示したグラフである。
【0030】
発熱性ゴムの耐久性の観点からは発熱体材料が混合される量は抑えるべきであるが、発熱量の観点からは発熱体材料の量を増すべきである。測定結果も考慮すると、酸化鉄及び炭素の合計の重量%は20%から45%までの間が望ましい。また、酸化鉄と炭素との割合は重量比で酸化鉄を1とした場合に炭素が0.1から1までの間であることが望ましい。
【0031】
以上を踏まえた発熱性ゴムの生成に用いられる各物質についての好適な割合の例は、重量%でシリコーンポリマーが56.7%から66.7%まで、シリカが10.0%から16.7%まで、酸化鉄が13.3%から25%まで及び炭素が4.0%から13.3%までである。
【0032】
発熱性ゴムの厚さも温度特性に影響を与える。発熱性ゴムの厚さは一定程度までは厚い方が短時間で高温に達するが、厚くなると熱容量が大きくなる分、高温に達するまでに時間を要する。
【0033】
図3は、厚さの異なる発熱性ゴムを加熱した測定結果を表すグラフである。同一の面積を有し、発熱性ゴムの厚さが各々1mm、2mm及び3mmの場合における、マイクロ波の照射時間と温度との関係を示している。本件では厚さが厚くなる方が短時間で高温に達する。
【0034】
ただし、発熱性ゴムが高温に発熱すると、使用する者が火傷を負うという問題が生じる。また、前述した耐熱温度の問題も生じる。従って家庭において調理容器として使用する限り、200℃から250℃程度までの温度にとどまることが望ましく、2mm程度が好適である。加えて、発熱性ゴムの形状や加熱される食材の種類及び量等による影響を考慮すれば、厚さは1.5mmから3mmまでであることが望ましい。
【0035】
図4は本発明に係る発熱性ゴムを調理容器として用いた例を示す上面図、側面図及び側断面図である。図4Aは調理容器の上面図、図4Bは側面図、図4Cは側断面図である。また、図5は調理容器における皿部1の上面図及び蓋部2の下面図である。図5Aは皿部1と蓋部2を分離した場合における皿部1の上面図、図5Bは蓋部2の下面図である。調理容器の外側に設けられている外側皿部12及び外側蓋部22は、安全のためマイクロ波によって発熱しない素材によって設けられており、例えばシリコーンポリマー及びシリカを混合したゴム製である。一方、調理容器の内側に設けられている内側皿部11及び内側蓋部21は本発明に係る発熱性ゴム製である。
【0036】
本発明に係る発熱性ゴムを容器状に成型して調理容器として用いることができる。マイクロ波を放射することによって発熱性ゴムが発熱するので、内部載置された魚や肉などの食材が加熱調理される。この場合、食材は接触した発熱性ゴムの発熱によって直接加熱されるほか、接触した発熱性ゴム及び接触していない発熱性ゴムの輻射によっても加熱される。
【0037】
なお、本発明に係る発熱性ゴムを生成するにあたって、物質を混合する順番は任意である。また、発熱性ゴムは、シリコーンポリマー及びシリカの一部若しくは全部に代えて200℃から250℃程度まで温度に対して耐熱性のあるフッ素樹脂を用いてもよい。
【0038】
また、発熱体材料は、酸化鉄及び炭素に限らず、酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は炭化ケイ素等、マイクロ波を照射することによって発熱する物質の一つ又は複数を用いてもよく、例えば炭素にこれらの発熱体材料のいずれかを混合してもよい。マイクロ波を含む高周波を照射することによって物質が加熱される原理には、誘電加熱と誘導加熱とがあるが、本発明に係る発熱体材料の発熱の原理はいずれであってもよい。
【0039】
なお、本発明に係る発熱性ゴムは、板状に形成して、接触させた食材を一定時間保温する保温材として用いてもよい。
【0040】
本発明に係る発熱性ゴムは、200℃から250℃程度までの高温であれば性質が劣化しない耐熱性を有するので、マイクロ波の照射による加熱を繰り返し行うことができる。また、本発明に係る発熱性ゴムは金属や陶器などよりは比重が軽いため、調理容器を軽量にすることができる。さらに、弾力性があるため衝撃によっても破損しにくく、成型も容易である。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えるべきである。本発明の範囲は、前述した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 皿部
2 蓋部
11 内側皿部
12 外側皿部
21 内側蓋部
22 外側蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカが添加されたシリコーンポリマーかフッ素樹脂かのいずれか一方と、
マイクロ波によって発熱する発熱体材料とが混合されてなる
ことを特徴とする発熱性ゴム。
【請求項2】
前記発熱体材料は炭素を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の発熱性ゴム。
【請求項3】
前記発熱体材料はさらに酸化鉄を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の発熱性ゴム。
【請求項4】
前記発熱体材料の合計の重量%が20%から45%までの間である
ことを特徴とする請求項3に記載の発熱性ゴム。
【請求項5】
酸化鉄と炭素との重量比は、酸化鉄を1とした場合に0.1から1までの間である
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の発熱性ゴム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−26086(P2013−26086A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161345(P2011−161345)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【特許番号】特許第5081318号(P5081318)
【特許公報発行日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【出願人】(592083890)株式会社ヒラタ (2)
【Fターム(参考)】