発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を有する組成物およびその利用
【課題】 免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のための組成物の提供。
【解決手段】 発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用、より具体的にはマクロファージの活性化作用による免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。上記組成物は、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である。上記組成物は、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
【解決手段】 発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用、より具体的にはマクロファージの活性化作用による免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。上記組成物は、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である。上記組成物は、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである。免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物および免疫賦活法に関する。
【背景技術】
【0002】
食事による免疫賦活とは、腸管免疫系に適度な刺激を与えて、体の免疫機能を活性化することである。腸管免疫を活発な状態にしていくことは、体全体の免疫力を高め病気の予防や健康維持に有益である。経口摂取によって免疫賦活を示す食品成分は様々であるが、多くは食品に含まれる多糖類が有効に働いている。一方、われわれを取り巻く環境、食生活、遺伝的背景の変化に伴い、これまで存在し得なかった免疫系の賦活化、再構築などがおこり、古典的な免疫疾患以外にアレルギー性疾患を中心とした新たな免疫系の破綻に伴う疾患が増加してきている。
免疫賦活に関与するサイトカインを分類すると以下のとおりである。
1.炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するサイトカイン:IL-1, TNF-α
2.免疫調節性サイトカイン(Th1サイトカイン):細胞性免疫を活性化し、病原体や腫瘍細胞の排除:IL-2, IL-12, IFN-a, IFN-g
3.抗炎症性サイトカイン(Th2サイトカイン):炎症性サイトカインやTh1サイトカインの産生を抑制する体液性免疫やアレルギー反応の促進:IL-4, IL-5, IL-10,IL-13
4.多機能性サイトカイン:好中球の動員、急性期タンパクの誘導、抗体産生促進、炎症性サイトカインの産生抑制、炎症や免疫応答の時期によってその消長を制御:IL-6, TGF-b
5.造血コロニー刺激因子:白血球の活性化、急性炎症やアレルギー性炎症を促進する作用:G-CSF, GM-CSF, M-CSF
6.ケモカイン:炎症局所に白血球を遊送させる走化性因子の活性:IL-8, MCP-1,RANTES
【0003】
アレルギーは、生まれつき持っているわけではない。生後、様々な物質と接触するうちに、ある物質(アレルゲン)に対して過敏になる(これを感作されるという)。一度、感作されると、次にアレルゲンと出会ったとき、病的なアレルギー反応を起こす。アレルゲンにさらされたマクロファージは、それを処理したことを、Tリンパ球、Bリンパ球に刺激として伝える。Tリンパ球は、Bリンパ球を刺激し、Bリンパ球はIgE抗体を産生する。この抗体は、肥満細胞(または好塩基球)に付着すると、アレルギーを起こす準備ができたことになる。この状態をアレルゲンに感作されたと呼ぶ。なお、このマクロファージ、リンパ球、肥満細胞、好酸球は皆、白血球と呼ばれる血液中の細胞に属する。
感作されたところにアレルゲンが侵入すると、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどという化学伝達物質がばらまかれる。また、リンパ球は好酸球も刺激して、そこからもIL-5など、別の化学伝達物質が分泌される。化学伝達物質が分泌されると、その周囲に様々な炎症が起きる。炎症とは、発赤、痛み、はれ、発熱が起こった状態である。具体的には、スギ花粉が鼻の粘膜や目に入ると、そこが真っ赤に腫れて熱っぽくなり、痛む。これは炎症を起こした状態で、鼻水や目やにもその症状の一つである。ダニが気管支に入ると、気管支粘膜が腫れぼったくなり、イライラした痛みがして咳が出る。蕁麻疹なども同様である。卵に感作された人が、卵を食べると、全身が腫れて、痛みの軽い症状としてのかゆみが出る。
【0004】
一方で、臨床免疫学の進歩に伴い、動脈硬化性病変を含めた多くの生活習慣病や慢性疲労症候群などの現代病、ストレスに起因する各種疾患を含め、免疫系の関与が全く考えられていなかった疾患において、免疫系の破綻および変化が病因、病態に深く関与することが明らかになりつつある。免疫系は種々の免疫担当細胞などより構築されているが中でもTリンパ球の機能異常や活性化異常が多くの免疫関連疾患の原因となることが明らかにされつつある。Tリンパ球の中でもCD4陽性Tリンパ球(Th)はその産生サイトカインによりTh1およびTh2に分類され、その比率の変化によりアレルギー疾患や自己免疫疾患など種々の免疫関連疾患の病態形成に深く関与している。Th1型免疫応答は臓器特異免疫反応に、Th2型免疫応答はアトピー性疾患や鼻アレルギーなどのアレルギー疾患に深く関与している。特にアレルギーの抗原感作によるTh2型免疫応答の誘導においては抗原上の糖鎖の重要性が最近のトピックである。また実際に臨床分野において近年ではそれぞれの産生サイトカインを制御する薬剤が開発されつつある。
【0005】
動脈硬化症の危険因子(糖尿病、高脂血症、高血圧など)と動脈硬化症発症の機序について、分子レベルでの解析が進んでおり、動脈硬化症発症の契機は、単球の血管壁への遊走およびscavenger receptorによるコレステロール蓄積とマクロファージの泡沫細胞化である。その進展には種々のサイトカインやケモカインの関与が示唆されている。特にケモカイン(細胞遊走を起こすサイトカイン)の一つであるMCP-1は動脈硬化巣の血管内皮細胞から分泌され単球の遊走に関係する因子であり、動脈硬化進展に重要な役割を演じている因子として注目されている。MCP-1又はMCP-1の受容体であるCCR2をノックアウトしたマウスにおいては動脈硬化が起こりにくく、MCP-1が動脈硬化発症において中心的な役割を持っていることが明らかになった。MCP-1は、IL-1βやTNF-αという炎症性サイトカインにより刺激されて分泌される。こうしたサイトカインの産生を抑制する薬剤として、pyrazolotriazin誘導体薬剤やnitric oxide(NO)分泌誘発剤が知られており、臓器保存に使用されている。炎症性サイトカイン・ケモカイン産生抑制剤としてコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(薬効:副腎皮質ホルモン剤)も市販されている(例えば、ファルマシア社、富士製薬社、ユーシービージャパン社、沢井製薬社)。
一方、糖類又はその誘導体の動脈硬化治療剤としては、血中コレステロール濃度を低下させるヘキソースリン酸カルシウム(グルコースリン酸カルシウムなど)が特許文献1で公表されている。また、コラーゲンの合成を抑制するピラノピラノン化合物が特許文献2で公表されている。しかしながら、ごまが発芽することによって、糖の合成及び分解によって新規の糖類ができることが知られているものの、それらの免疫賦活効果はほとんど研究されていない。
【特許文献1】特開昭63-198630号公報
【特許文献2】特開平10-330268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マクロファージに関する研究は最近とみに活発となり、種々の分野にて新知見が急速に集積しつつある。また、生体防御の多くの局面に重要な役割を担うマクロファージの活性化を促す安全性に優れたマクロファージ活性化物は、医薬品並びに健康食品として利用できる。例えば、マクロファージのスクリーニングにより、いくつかの漢方薬にも活性が認められている。
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物および免疫賦活法の提供を目的とする。また、本発明は、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のための組成物の提供を目的とする。さらにまた、本発明は、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態で飲食、投与あるいは摂取させて、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のために免疫賦活法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(7)の免疫を賦活するための組成物を要旨としている。
(1)発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。
(2)マクロファージの活性化作用による免疫賦活作用である(1)の免疫を賦活するための組成物。
(3)上記免疫を賦活するための組成物が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である(1)または(2)の免疫を賦活するための組成物。
(4)上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである(1)、(2)または(3)の組成物。
(5)上記飲食品が、免疫を賦活するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である(4)の血管新生を阻害するための組成物。
(6)上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である(4)の血管新生を阻害するための組成物。
(7)上記医薬品が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防薬および/または治療薬である(4)の組成物。
【0008】
本発明は、以下の(8)〜(11)の免疫賦活法を要旨としている。
(8)免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
(9)マクロファージの活性化作用による免疫賦活効果である(8)の免疫賦活法。
(10)発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とする組成物の形態で発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用する(8)または(9)の免疫賦活法。
(11)上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである(11)の免疫賦活法。
【発明の効果】
【0009】
免疫関連疾患に対し免疫の異常を制御するため現在、新たな免疫抑制剤、免疫調節薬、抗アレルギー剤など免疫系に作用する薬剤が次々と開発されつつある。しかし既存の免疫抑制剤、免疫調節薬、抗アレルギー剤の市場は拡大の一途をとっているが、薬効、副作用などの点からいまだ十分な薬剤は存在しないのが現状である。
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物(免疫賦活剤)および免疫賦活法の提供をすることができる。また、本発明は、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のための組成物、より具体的には食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態の組成物、特に特定保健用食品の提供をすることができる。さらにまた、本発明は、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態で飲食、投与あるいは摂取させて、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のために免疫賦活法の提供をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発芽ゴマは免疫を賦活する作用効果を有している。本発明者らによって、サイトカインという物質の動向で判定するマクロファージ活性化能を測定し発芽ゴマが免疫賦活効果を有することが初めて発見された。すなわち、発芽ゴマの免疫賦活効果がマウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認された。
【0011】
発芽ゴマについて説明する。
ゴマ種子について、ゴマはゴマ科、ゴマ属の一年草本で、ゴマ属の大半は野生種で栽培種はSesamuun indicum L.のみである。本発明はこの栽培種のゴマ種子を用いる。
発芽ゴマの製造の好ましい製造例は以下の通りであるが、この製造例に限定されるものではない。
(1) ゴマ種子を70%アルコールにて2分間浸漬
(2) 70%アルコール除去後、蒸留水に2時間浸漬
(3) 蒸留水を除去後、種子をトレーに移し上部をアルミホイルにて遮光後25℃処理
(4) 25℃の処理時間を発芽処理時間とし発芽処理1、2、3日のサンプルとした。
未処理は25℃処理0時間とした。
【0012】
発芽ゴマ由来の成分について説明する。本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分としては、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を使用することができる。したがって、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分は発芽ゴマより高度に精製したものでも、軽度に精製したものでもかまわない。または、発芽ごま油そのままでも、発芽ごま油特有の匂いがすることに問題がなければ、使用することができる。具体的には、発芽ゴマ種子、発芽ゴマ油あるいは発芽ゴマ油を絞った後の発芽ゴマ脱脂粕から上記マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を抽出することができる。発芽ゴマ油の脱臭時に蒸留された成分であるスカムから得ることもできる。発芽ゴマ種子から抽出する場合は、主成分である中性脂質を圧搾、もしくはヘキサン等の非極性溶媒で除去するのが好ましい。発芽ゴマ油そのままでも使用できるが、中性脂質の絶対量が多く、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分の割合が少なくなるため、その用途により適宜使用される。以上の通りであり、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分は、発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物として用いる。
【0013】
一般にゴマ油は酸化に対して比較的安定であることから、ゴマには抗酸化成分が含有されていることは古くから知られており、セサモールをはじめセサミノール、エピセサミノール、ピルジノール、エピヒノレジノール、シリンガレジノール、サミン、セサモリノール、2,3-ジ(4'-ヒドロキシ3'-メトキシベンジル)-2-ブテン-4-オライド等を含有することが知られている。セサモールは食品添加物として認められている油脂類および油脂を含む食品用の酸化防止剤である。これらゴマの抗酸化成分は、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分との関係はいまだ究明していないが、免疫賦活効果に何らかの関係があるものと考えている。
【0014】
本発明のゴマの抽出物としては、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を抽出できる方法であれば、どのような溶媒、脂質、乳化剤によって抽出したものでも使用できる。具体的には、発芽ゴマ、発芽ゴマ油または発芽ゴマ粕を水、亜酸化窒素、アセトン、エタノール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクルルエテン、二酸化炭素、1-ブタノール、2-ブタノール、ブタン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロパン、プロピレングリコール、ヘキサン、メタノール等の有機溶媒やトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、食用油脂等の脂質、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤によって抽出して得ることができる。さらに、溶媒留去後、再度有機溶媒等に溶解し、濾過により不溶性成分を除くなどの操作をすることにより上記成分を濃縮することができる。
【0015】
発芽ゴマの免疫賦活効果は、免疫賦活性組成物として、あるいは医薬品として、特定保健用食品として利用することができる。たとえば、発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物は、食品類に対して、免疫賦活効果を有する食品素材として利用できる。発芽ゴマは通常のゴマと同様に食品として用いることができる。
【0016】
例えば脱脂乳、牛乳カゼイン、牛乳タンパク質、乳糖、オリゴ等、ショ糖、デキストリンを温湯に溶解混合後、ビタミン・ミネラル類を溶解し水相とし、ここに本発明の発芽ゴマ油を添加し、ホモミキサー等にて混合し、ホモジナイザーで均質化する。得られた乳化液を常法により殺菌、濃縮、噴霧乾燥して調製粉乳が得られる。同様に各種粉末化基剤を用いて本発明の組成物を粉末油脂とすることもできる。食品に添加する場合は、食品の性質によって発芽ゴマ油のまま添加するか、粉末油脂として添加するかを決める。通常の食品に添加しても、健康食品、いわゆるサプリメントとしてカプセル、錠剤にしてもよい。すなわち、本発明の機能性食品(特定保健用食品など)は、特定の疾病などを予防する健康食品、予防医薬品の分野の利用に適している。特定の疾病を予防する健康食品においては、必須成分である発芽ゴマの他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D-ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0017】
食品、飲料における配合量は特に制限されないが0.01〜10重量%程度が好ましい。発芽ゴマ油を使用する場合、発芽ゴマ油に独特の臭いがあるので、その使用量を2〜6重量部に限定して使用するとよい。また本発明の発芽ゴマは食品素材として普通に使用され、安全性が高く、大量生産技術が開発されればコスト面でも利用価値は高いものである。なお急性経口毒性試験では2,000mg/kg以上であった。
【0018】
本発明の薬剤においては、有効成分である発芽ゴマ由来の成分は発芽ゴマそれ自体のみならず(それの薬剤として許容される塩として)使用される。該薬剤は発芽ゴマを単独で製剤として用いることができるほか、製薬上使用できる担体もしくは希釈剤を加えた製剤組成物に加工したものを用いることもできる。このような製剤または薬剤組成物は、経口または非経口の経路で投与することができる。例えば、経口投与用の固体または流体(ゲルおよび液体)の製剤または薬剤組成物は、タブレット、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、顆粒もしくはゲル調製品の形態をとる。製剤または薬剤組成物の正確な投与量は、その目的とする使用形態および処置時間により変化するため、担当の医師または獣医が適当であると考える量になる。服用および投与用量は製剤形態によって適宜調整できる。錠剤などの経口固形製剤、経口液剤などとして1日服用量を1回ないし数回に分けて服用してもよい。また、例えばシロップやトローチ、チュアブル錠などの幼児頓服して、局所で作用させるとともに内服による全身性作用をも発揮させる製剤形態では1日服用量の1/2〜1/10を1回量として配合し服用すればよく、この場合全服用量が1日量に満たなくてもよい。医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤などとして経口投与することができ、水に溶ける成分の場合は、経口投与以外に静脈注射、筋肉注射などの投与方法を採用することが可能である。投与量は例えば症状の度合いや体重、年齢、性別などにより異なるものであり、使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬品における配合量は特に制限はされないが、体重1kgあたり、経口投与の場合0.01〜2,000mg、静脈注射投与の場合0.01〜1,000mg、筋肉注射投与の場合0.01〜1,000mg程度が好ましい。
逆に、製剤形態からみて無理な服用容量とならなければ1日服用量に相当する量を1回分として配合してもよい。製剤の調製にあたっては、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、コーティング剤、徐放化剤など、希釈剤や賦形剤を用いることができる。この他、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、吸着剤、香料、着色剤、矯味剤、抗酸化剤、保湿剤、遮光剤、光沢剤、帯電防止剤などを使用することができる。
【0019】
以上述べたような食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料に発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物の形態で含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程で発芽ゴマなどとして0.1重量%以上、望ましくは0.5重量%以上含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶析、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。
本発明の発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物において、発芽ゴマなどは、組成物中に0.1〜50重量%含まれるように配合されている。好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。組成物中において、発芽ゴマなどが0.1重量%未満だと、マクロファージの活性化作用が充分ではない。また、組成物中において、発芽ゴマなどが50重量%を越えると、経済的な意味で好ましくない。
【0020】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0021】
本実施例では発芽ゴマの免疫賦活効果をマウス由来のマクロファージ活性化能を測定して検討した。マクロファージ活性化能は、サイトカインという物質の動向で判定する。サイトカインは様々な効果がある。サイトカインの効果は大別すると(1)炎症性サイトカイン(2)免疫調節性サイトカイン(3)抗炎症性サイトカイン(4)多機能性サイトカイン(5)造血コロニー刺激因子(6)ケモカインの6種類である。本測定では一般的な(1)〜(4)の4種類から、TNF-α、IL-6、10、12の4つのサイトカインを使用し発芽ゴマが免疫賦活効果に優れていることを確認できた。よって、発芽ゴマはマクロファージの活性化を促す安全性に優れ、医薬品並びに健康食品として利用できる素材である。
【0022】
試 料 :サンプルA:未処理ゴマ種子
サンプルB:発芽処理1日ゴマ種子
サンプルC:発芽処理2日ゴマ種子
サンプルD:発芽処理3日ゴマ種子
試験方法:マウス由来マクロファージ様細胞株にサンプルを添加し、一定時間反応さ
せ各サイトカインの産生量を測定する。
陽性コントロール(LPS:10μg/ml)添加時のサイトカイン産生量を測定した。
×:LPS活性の10%未満、△:LPS活性の10〜30%の活性あり、○:LPS活性の30〜80%の高い活性あり、◎:LPS活性の80%以上の非常に高い活性あり
【0023】
[試料]
ゴマ種子:パラグアイ産白ゴマ
試料調製:
(1) ゴマ種子を70%アルコールにて2分間浸漬
(2) 70%アルコール除去後、蒸留水に2時間浸漬
(3) 蒸留水を除去後、種子をトレーに移し上部をアルミホイルにて遮光後25℃処理
(4) 25℃の処理時間を発芽処理時間とし発芽処理1、2、3日のサンプルとした。未処理は25℃処理0時間とした。
【0024】
[サイトカインの分類]
1.炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するサイトカイン:IL-1, TNF-α
2.免疫調節性サイトカイン(Th1サイトカイン):細胞性免疫を活性化し、病原体や腫瘍細胞の排除:IL-2, IL-12, IFN-a, IFN-g
3.抗炎症性サイトカイン(Th2サイトカイン):炎症性サイトカインやTh1サイトカインの産生を抑制する体液性免疫やアレルギー反応の促進:IL-4, IL-5, IL-10,IL-13
4.多機能性サイトカイン:好中球の動員、急性期タンパクの誘導、抗体産生促進、炎症性サイトカインの産生抑制、炎症や免疫応答の時期によってその消長を制御:IL-6, TGF-b
5.造血コロニー刺激因子:白血球の活性化、急性炎症やアレルギー性炎症を促進する作用:G-CSF, GM-CSF, M-CSF
6.ケモカイン:炎症局所に白血球を遊送させる走化性因子の活性:IL-8, MCP-1,RANTES
【実施例2】
【0025】
サンプル(ごま粉砕物)について、体外系でのマクロファージ活性化能の測定を行った。
1)検査内容
サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDのマクロファージ活性化能を検査するため、一酸化窒素(NO)及びサイトカイン(TNF-a・IL-6・IL-10及びIL-12)の測定を行った。
【0026】
2)検査方法
1.各種サンプルはあらかじめ下記の濃度となるよう培養液に溶解した。
サンプルA: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルB: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルC: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルD: 1mg/ml、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
2.マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1(1.5×105個/well)にサンプルを添加し、一定時間反応させた。
3.サイトカイン(TNF-a)産生量は、培養4時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource
International, Inc.)を用いて測定した。
4.サイトカイン(IL-6・IL-10及びIL-12)産生量は、培養24時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource International, Inc.)を用いて測定した。
5.NO産生量は24時間培養後、上清にGriess試薬を添加し、550nmの吸光度を測定した。同時に、陽性コントロールであるLPS(Lipopolysaccharide:10mg/ml)添加時のNO産生量を測定し、比活性(LPSのNO産生量に対するサンプルのNO産生量、単位:%)を算出した。
【0027】
3)結果
NO産生能は、サンプルA添加時まったく反応を示さなかった(図1参照)。サンプルBのNO産生能は、100mg/ml以下の濃度でまったく反応が見られず、1000mg/mlで42.8%と高いマクロファージ活性化能を示した(図2参照)。サンプルCは100mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さず、1000mg/mlで85.2%と非常に高いNO産生能を示した(図3参照)。サンプルDのNO産生能は、10mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さず、100mg/mlの濃度で17.0%とややNO産生能が見られた(図4参照)。1000mg/mlでは110.0%を示し陽性コントロール(LPS)を上回る非常に高いNO産生能を有していた。
【0028】
TNF-a産生量はサンプルA添加時、濃度依存的に増加したものの、100mg/ml以下の濃度ではわずかな産生に留まっていた(図1参照)。1000mg/mlで無添加時(コントロール)の3.8倍の活性を示した。
サンプルB添加時は10mg/mlと100mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの 1.8倍、5.4倍の活性を示した(図2参照)。1000mg/mlの濃度ではコントロールの17.0倍を示し、LPSの活性を上回るTNF-a産生が見られた。
サンプルCのTNF-a産生量は、10mg/ml及び100mg/ml、1000mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの2.6倍、10.1倍、21.3倍と濃度依存的な活性を示した(図3参照)。
サンプルDは1mg/mlの濃度からコントロールの1.5倍とわずかに活性を示し、10mg/ml及び100mg/ml、1000mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの4.3倍、14.5倍、27.2倍と濃度依存的に高い活性を示した(図4参照)。
サンプルBとサンプルCが1000mg/ml添加時にLPSの活性を上回ったのに対して、サンプルDは100mg/mlの濃度でLPSとほぼ同等の活性を有していた。さらに、1000mg/ml添加時にはLPSの2.0倍もの活性を示した。
【0029】
IL-12産生量はサンプルA添加時、10mg/ml以下の濃度ではまったく反応を示さなかった(図5参照)。100mg/ml以上の濃度でやや反応したものの10pg/ml以下の産生量であり、ほとんど活性がなかった。
サンプルBでは、10mg/mlでわずかにIL-12を産生し、100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ235.9pg/ml、1854.9pg/mlと増加していた(図6参照)。
サンプルCのIL-12産生能は10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlで、それぞれ39.8pg/ml、927.7pg/ml、1808.0pg/mlと濃度依存的に増加していた(図7参照)。
サンプルDは、1mg/mlではまったくIL-12産生能が見られず、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlで、それぞれ87.2pg/ml、1520.4pg/ml、1775.9pg/mlと濃度依存的に増加していた(図8参照)。100mg/mlから1000mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られなかった。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のTNF-a産生量は35759.5pg/ml(コントロールの13.9倍)、IL-12産生能は2563.2pg/mlだった。
IL-6産生量はサンプルA添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図12参照)。100mg/ml、1000mg/mlにおいては濃度依存的に増加していたが、わずかな活性に留まっていた。サンプルB添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図13参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ3608.9pg/ml 、46684.9pg/mlと濃度依存的に増加していた。100mg/mlから1000mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られた。サンプルC添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図14参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ24989.5pg/ml 、75619.0pg/mlと濃度依存的に増加していた。サンプルD添加時、1mg/mlではまったく活性は見られなかった(図15参照)。10mg/ml以上の濃度では、それぞれ986.2pg/ml 、39697.9pg/ml 、74926.6pg/mlと濃度依存的に増加していた。10mg/mlから100mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られた。
【0030】
IL-10産生量はサンプルA添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図16参照)。1000mg/mlでは、3.1pg/ml とわずかな産生が見られた。サンプルB添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図17参照)。1000mg/ml添加時では、LPSの約2.6倍の高い活性が見られた。サンプルC添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図18参照)。1000mg/ml添加時では、LPSの約3.0倍の高い活性が見られた。サンプルD添加時、1mg/ml、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図19参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、13.8pg/ml 、141.9pg/mlと濃度依存的に増加していた。1000mg/ml添加時では、LPSの約3.9倍の高い活性が見られた。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のIL-6産生能は83550.1pg/ml、IL-10産生能は36.0pg/mlだった。
【0031】
4)考察
測定項目ごとに各種サンプルが最大活性を示した濃度におけるマクロファージ活性化能を比較した(図9、10、11、20、21参照)。
マクロファージ活性化能はサンプルAではほとんど反応を示さず、サンプルB、サンプルC、サンプルDの3サンプルが高い活性を示した。
NO産生能が最も高い反応を示したのはサンプルDだった(図9参照)。続いて、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に活性が高い値を示した。サンプルBとサンプルCは100mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さなかった。24時間培養後の顕微鏡所見では、全サンプルの100mg/ml以上の濃度でマクロファージ細胞がサンプル粒子に対して凝集しており、サンプルがマクロファージ細胞の貪食能を刺激したと考えられる。しかし、サンプルAは顕微鏡所見においても、細胞の貪食が少なく感じられた。サンプルBとサンプルC、サンプルDは、1000mg/mlの濃度で一部の細胞が分化しており、マクロファージ細胞の活性を誘導した事が顕微鏡所見から伺えた。
TNF-aは主にマクロファージやリンパ球から産生され、生体防御因子として種々の免疫賦活効果を誘導するだけでなく、ある種の腫瘍細胞に直接細胞毒性作用をもつサイトカインとして知られている。本検査では、すべてのサンプルで濃度依存的なTNF-a産生を示した。NO産生能と同様に、サンプルD、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に高い活性を示した(図10参照)。特に、1000mg/ml添加時のサンプルDは培養4時間という短時間で、LPSの2倍もの活性を誘導しており、非常にマクロファージ細胞に対する賦活効果が高いと考えられる。
IL-12は主にマクロファージ細胞から産生され、NK細胞活性やIFN-g産生を誘導するサイトカインとして知られている。本検査では、それぞれ1000mg/ml添加時にIL-12産生が最大活性を示した。しかし、最大活性におけるサンプルB、サンプルC、サンプルDのIL-12産生量は100pg/ml以内の差であり、ほぼ同等の活性と考えられる(図11参照)。10mg/mlか、もしくは100mg/mlの濃度における3サンプルのIL-12産生能を評価すると、NO産生能やTNF-a産生能と同様に、サンプルD、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に高い活性を示した。サンプルDのIL-12産生能は、他のサンプルと比べて低い濃度(100mg/ml 付近)で活性のほぼピーク値を示しており、より優れた賦活効果を有していると思われる。
一般に、マクロファージ細胞は細胞表面の膜タンパク質の一種、Toll Like Receptor(TLR)でサンプルやその他の異物などを認識し、活性化すると考えられている。サンプルB、サンプルC、サンプルDはIL-12の最大産生量がほぼ同量であり、マクロファージ細胞の同じレセプターか、もしくは同じ活性化経路を刺激した可能性が高いと考えられる。ただし、IL-12産生能は最大活性濃度でもLPSの70%前後の活性であり、サンプルが直接的にIL-12産生能を刺激したのか、TNF-aのように初期に産生されたサイトカインによって間接的に誘導されたのかは判断できない。
IL-6は主にマクロファージや内皮細胞から産生され、B細胞に作用して抗体産生を誘導したり、胸腺ではT細胞の増殖・分化に働いたりするサイトカインである。今回の検査では、すべてのサンプルで濃度依存的な活性が見られ、1000mg/ml添加時に最も高いIL-6産生量を示した。ただし、サンプルAはわずかな活性にとどまっており、ほとんどマクロファージ活性を有していないと考えられる。TNF-a及びIL-12産生能の測定結果ではサンプルD、サンプルC、サンプルBの順に高いマクロファージ活性が見られたものの、値の顕著な差が見られなかった。IL-6産生能の測定結果では、サンプルCとサンプルDはサンプルBの2倍弱の活性を示しており、NO産生能の測定結果との相関がみられた。サンプルがすべて同じ原材料であったとしても、精製過程におけるサンプルの変性や表面構造の変化によって活性の差が現れたと考えられる。
IL-10はサイトカイン産生抑制因子として知られており、炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-aの産生を抑制することが判明している。但し、細胞株からのIL-10産生能はLPS添加時でも産生量が低く変動がでやすい傾向があり、若干の増減は誤差範囲内と考えられる。今回の測定結果ではサンプルDが最も高いIL-10産生能を示し、続いてサンプルC、サンプルBでも陽性コントロールであるLPSの値と比較しても高いIL-10産生が見られた。10mg/ml LPS添加時のマクロファージ活性はほぼ最大値を示すことから、これらの3サンプルはLPSと異なる機構でもマクロファージを活性化していると考えらる。サンプルAは、他のサイトカインと同様にほとんど活性がなかった。
サンプルDはNO産生能と4つのサイトカイン産生能すべてにおいて非常に高い活性を示し、マクロファージ細胞の免疫賦活効果という観点において非常に優れたサンプルと考えられる。続いて高い活性を示したサンプルCも、サンプルDに比べてIL-10産生能がやや低かったものの、その他のサイトカインはサンプルDとほぼ同等であり、優れた免疫賦活物質と考えられる。サンプルBは、NO産生能とIL-6産生能の活性がやや劣るものの、総合的に評価すると文献値と比べて、高い活性を有するサンプルと考えられる。
本検査は、サンプルを直接添加するというおおまかな条件設定においてスクリーニング検査を行った。この条件のもとでは、サンプルDのマクロファージ活性化能は非常に高く、免疫賦活効果が優れていると考えられる。また、サンプルCとサンプルBも、サンプルDには劣るもののマクロファージ細胞に対する免疫賦活効果が期待できると考えられます。サンプルAについてはマクロファージの活性化能があまり期待できなかった。サンプルDはその他のサンプルに比べて、やや油分が多く、粘性が低いように感じた。サンプルDの活性がその油脂成分に起因するものかどうかは、本検査では判断できない。また、検査結果から、ごま粉砕物に免疫賦活効果があることが示唆された。
【実施例3】
【0032】
マクロファージ活性化能の測定
分画方法:
凍結乾燥処理したゴマ種子20部に、抽出溶媒としてクロロホルム210部とメタノール90部を混合し、混合系を調整した。この混合系を1時間還流処理後、濾過処理により残物を画分1とした。濾液は溶媒除去処理後、1%含水メタノール100部とヘキサン200部を混合し、混合系を調整した。この混合系を分液及び溶媒除去処理を行った。抽出画分は分液上層部(ヘキサン可溶部)を画分2とし、下層部(1%含水メタノール可溶部)を画分3として得た。
画分1:タンパク質・繊維質など溶剤不溶部
画分2:脂質など油分
画分3:界面活性物質など溶剤可溶部
試料名:
サンプルA=未処理ゴマ種子、サンプルD=発芽3日処理ゴマ種子、画分1〜3=1〜3
例)A-1=未処理ゴマ種子の画分1
【0033】
1)検査内容
A-1、A-2、A-3、D-1、D-2、D-3のマクロファージ活性化能を検査するため、一酸化窒素(NO)及びサイトカイン(IL-6及びIL-12)の測定を行った。
【0034】
2)検査方法
1.各種サンプルはあらかじめ以下の濃度となるよう培養液に溶解した。
A-1:100mg/ml、1000mg/ml
A-2:100mg/ml、1000mg/ml
A-3:100mg/ml、1000mg/ml
D-2:100mg/ml、1000mg/ml
D-3:10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
2.マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1(1.5×105個/well)にサンプルを添加し、一定時間反応させた。
3.サイトカイン(IL-6及びIL-12)産生量は、培養24時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource International, Inc.)を用いて測定した。
4.NO産生量は24時間培養後、上清にGriess試薬を添加し、550nmの吸光度を測定した。同時に、陽性コントロールであるLPS(Lipopolysaccharide:10mg/ml)添加時のNO産生量を測定し、比活性(LPSのNO産生量に対するサンプルのNO産生量、単位:%)を算出した。
【0035】
3)結果
NO産生量はA-1添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図22参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。A-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図23参照)。A-3添加時、100mg/mlにおいて、活性はほとんど見られなかった(図24参照)。1000mg/mlにおいては、活性はまったく見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて70.1%の高い活性を示した(図25参照)。1000mg/ml においては、197.5%と陽性コントロールであるLPSを上回る非常に高い活性が見られた。D-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図26参照)。D-3添加時、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図27参照)。
【0036】
IL-6産生量はA-1添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図22参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。A-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はほとんど見られなかった(図23参照)。A-3添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図24参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて85119.0pg/mlと陽性コントロールであるLPSとほぼ同等の高い活性を示した(図25参照)。1000mg/ml においては、79571.4pg/mlの高い活性が見られた。D-2添加時、100mg/mlにおいて活性はまったく見られなかった(図26参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-3添加時、10mg/ml、100mg/mlにおいて活性はほとんど見らなかった(図27参照)。1000mg/mlでは、5119.0pg/mlの微弱な活性を示した。
【0037】
IL-12産生量はA-1添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図28参照)。A-2添加時、100mg/mlにおいて活性はほとんど見られなかった(図29参照)。1000mg/mlでは、活性はまったく見られなかった。A-3添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図30参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて、2035.6pg/mlと陽性コントロールであるLPSを上回る非常に高い活性を示した(図31参照)。1000mg/mlでは、481.5pg/mlの活性が見られた。D-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図32参照)。D-3添加時、10mg/ml、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図33参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のIL-6及びIL-12産生能は、それぞれ89547.6pg/ml、1630.2pg/mlであった。
【0038】
4)考察
測定項目ごとに各種サンプルが最大活性を示した濃度におけるマクロファージ活性化能を比較した(図34、35、36参照)。NOは異物への攻撃に作用する活性酸素種の一種であり、細胞傷害活性や免疫応答調節作用がある。今回測定したサンプルでNO産生能を示したサンプルはD-1であった。その他のサンプルでは、NO産生能がほとんど見られず、活性が無いものと考えられる。D-1添加時のNO産生能は100mg/mlの濃度から高い活性を示し、1000mg/mlの濃度ではLPSによる活性の2倍近いNO産生能が見られた。マクロファージ検査において、10mg/ml LPSの添加によって、マクロファージ活性がNO産生量をはじめ、各種のサイトカイン産生量もほぼ最大活性を示す。したがって、LPSの活性を大幅に上回ったD-1添加時の活性は、内毒素であるLPSとは異なる活性化経路からもマクロファージ活性を誘導したと考えられる。
サンプルAは実施例2で、まったくNO産生能が見られず、本実施例でも同様にA-1、A-2、A-3による活性はなかった。サンプルDは実施例2で、100mg/mlで17.0%、1000mg/mlで110.0%のNO産生能が見られ、本実施例の検査ではD-1にサンプルDのNO産生能が反映されていた。サンプルDからD-1を分画したことによって、NO産生能が増加したと考えられる。
【0039】
IL-6は主にマクロファージや内皮細胞から産生され、B細胞に作用して抗体産生を誘導したり、胸腺ではT細胞の増殖・分化に働いたりするサイトカインである。最も高いIL-6産生能を示したサンプルはD-1で、LPSと同程度の活性を示した。IL-6産生量の多い順に、D-3、A-1、A-2、A-3、D-2と続いたが、これらのサンプルはLPSによる活性に比べて6%以下の値であり、顕著な活性は示さなかった。実施例2と本実施例の検査結果を値のみ評価して優劣をつけることはできないが、LPSに対する活性の割合を比較すると、D-1 100mg/mlとサンプルD 1000mg/mlが同程度の活性を示しており、D-1がサンプルDに比べて低濃度で高い活性を誘導していた。マクロファージ細胞を活性化する構造が、D-1には多量に含まれることが推察され、サンプルDによるマクロファージ活性を誘導した成分が効率良く分画されているのではないかと考えられる。D-3、D-2もわずかに反応を示したが、D-1に比べると微量な活性であり、マクロファージ活性化構造をほとんど有さないと思われる。
一方、サンプルAは実施例2の検査時にほとんどIL-6産生能を示さず、本実施例の検査結果においても、A-1、A-2、A-3は微弱な活性に留まっていた。顕著なマクロファージの活性を誘導する構造はほとんど含まれていないと考えられる。
【0040】
IL-12は主にマクロファージから産生され、NK活性やインターフェロン産生を増強するサイトカインとして知られている。IL-12産生能を示したサンプルはD-1であった。D-1添加時、100mg/mlの濃度でLPSの活性を超える活性を有しており、LPSとは異なる活性化経路からもIL-12産生能を誘導したと考えられる。また、実施例2で、サンプルD単独では、LPSの活性を越える程の活性値示さなかったことから、IL-12産生能からもD-1が効率良くマクロファージ活性構造を含む構造を分画したことが伺える結果が得られた。サンプルDは10mg/mlの濃度からIL-12産生能を誘導し始め、100mg/mlから1000mg/mlの濃度で最大活性を示した。D-1は100mg/mlから1000mg/mlの濃度間で活性が4分の1以下に低下しており、1000mg/mlでは過剰添加のため、細胞の培養環境に影響を与えたものと考えられる。本実施例は100mg/ml以下の濃度における活性は測定していないが、おそらく、1mg/ml程度の少量からもIL-12産生能を誘導する可能性があるのではないかと推測される。
その他のA-1、A-2、A-3、D-2、D-3にはIL-12産生能がほとんど見られず、マクロファージ細胞を刺激してIL-12産生を示す能力は無いと考えられる。
【0041】
顕微鏡所見では、D-1添加時にマクロファージ細胞の貪食能が刺激された様子であり、細胞の分化が誘導されているようであった。A-1添加時もわずかに貪食能を刺激した様子あったが、細胞の分化はあまりみられなかった。A-3とD-3は1000mg/ml添加時に細胞の増殖をわずかに抑制していた。A-2は1000mg/ml添加時に細胞がやや分化しているようにも感じられたが、顕著な変化とは言えなかった。D-2は無添加コントロールと比べて顕著な変化は見られなかった。
本実施例で、すべての検査項目においてD-1が高いマクロファージ活性を示し、マクロファージに対する活性化構造を多く含有することが伺えた。また、貪食能の刺激により、非常に高い活性を誘導したと考えられる。一般的に、マクロファージ細胞は細胞表面の抗原受容体である膜タンパク質のひとつToll Like Receptor(TLR)で微生物などの異物を認識し、活性化していると考えられている。LPSはTLR4に結合してマクロファージ細胞活性を誘導することが知られているが、D-1はNO産生能とIL-12産生能においてLPSを超える活性を有しており、その他の経路からも高い活性を誘導した可能性が考えられる。IL-6産生能は本実施例で測定した100mg/mlから1000mg/mlの濃度においては、LPSと同程度かもしくはそれ以下の活性であったため、LPSと同じような系に作用している可能性が高いのではないかと思われる。
【0042】
5)参考文献:Dennis J. Stuehr and Michael A.
Marletta. Synthesis of Nitrite and Nitrate in Murine Macrophage Cell
Lines. Cancer Res., 47, 1987.
【産業上の利用可能性】
【0043】
〔有望性、実用性、発展性〕
我々の身体において正常の恒常性維持には、三大調節系である神経系・内分泌系・免疫系が重要であり、それぞれが複雑に関連し維持されている。それぞれのシステムが共通の情報伝達物質とレセプターを有し、免疫系はサイトカインを用いて神経・内分泌系に影響を及ぼし、逆に心理的、肉体的ストレスなどに際し、脳は内分泌系や自律神経系を操作し免疫系に影響を及ぼすことが知られ、その機序についても様々な報告があり、そのクロストークが重要視されている。その中で免疫系は抵抗力ともいわれ、体内に進入してくる病原体など異物の排除や悪性腫瘍の監視機構など重要な役割を担っており、その恒常性維持のシステムについて急速に明らかになってきている。
しかし現在、われわれを取り巻く環境、食生活、遺伝的背景の変化に伴い、これまで存在し得なかった免疫系の賦活化、再構築などがおこり、古典的な免疫疾患以外にアレルギー性疾患を中心とした新たな免疫系の破綻に伴う疾患が増加してきている。とくに小児におけるアトピー性皮膚炎、鼻アレルギーなどは増加の一途をたどっている。
現在、自己免疫疾患、アレルギー疾患に用いられている免疫抑制剤および免疫調節薬は非常に限られたものしか存在しない。故にその選択と適応の幅はかなり狭いのが現状であり、新しい免疫抑制薬でかつ作用機序の異なる薬剤が誕生することは、今後かなりのニーズが期待される移植医療を含め、免疫抑制療法の分野において新しい時代が来ると考えても過言ではないと思われ、それにより生じうる社会貢献は計り知れないものがあると考えられる。現在、自己免疫疾患、アレルギー疾患に用いられている免疫抑制剤および免疫調節薬は非常に限られたものしか存在しない。故にその選択と適応の幅はかなり狭いのが現状であり、新しい免疫抑制薬でかつ作用機序の異なる薬剤が誕生することは、今後かなりのニーズが期待される移植医療を含め、免疫抑制療法の分野において新しい時代が来ると考えても過言ではないと思われ、それにより生じうる社会貢献は計り知れないものがあると考えられる。
また、現在、我々の免疫機構に環境因子(環境ホルモン、汚染物質など)が深く影響してきており、遺伝学的にはまだ環境の変化に適応できず、免疫機能の破綻が起こりつつある。年々小児のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)の増加や鼻アレルギーなどの環境自然免疫獲得機構の異常などはその一表現形である。さらに慢性疲労症候群や生活習慣病の増加の大きな一因にも免疫機構の破綻や関与が確実視されている。
現在、免疫、アレルギーの分野を含めCELL TO CELL interactionを介する生体反応における細胞表面の糖鎖や外来抗原タンパクにおけるタンパク表面の糖鎖の重要性が指摘されている。免疫系を中心とした作用がさらに明らかになれば、細胞表面やタンパク表面の糖鎖を置換することなどにより、免疫制御やガン制御の分野でこれまでに考えられなかった様な効果をもたらす可能性が十分に考えられ夢のような治療が実現する可能性もある。またやはり糖であるという決定的な特徴を生かして色々な糖鎖に選択した場所にのみ組み込む事が出来る可能性があり、drug deliveryについても超選択的なdeliveryが考えられる。以上のことからあらゆる分野で長期にわたって将来性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルA添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図2】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルB添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図3】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルC添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図4】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルD添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図5】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルA添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図6】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルB添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図7】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルC添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図8】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルD添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図9】実施例2の各種サンプルのNO産生能の比較を示す図面である。各サンプルごとに最大活性濃度とNO産生能(%)を示す。NO産生能はLPS添加時のNO産生量に対する、各サンプル添加時のNO産生量の割合を示す。LPSはマクロファージ活性化物質である。 一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。評価の目安はランクA(活性:80%以上、非常に高い活性あり)、ランクB(活性:30〜80%、高い活性あり)、ランクC(活性:10〜30%、活性あり)、ランクD(活性:10%未満、活性なし)
【図10】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(TNF−α)産生能の比較を示す図面である。 各サンプルの最大活性濃度とサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図11】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−12)産生能の比較を示す図面である。 各サンプルの最大活性濃度とサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図12】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図13】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図14】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図15】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図16】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図17】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図18】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図19】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図20】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−6)産生能の比較を示す図面である。 サンプルごとに最大活性濃度とサイトカイン産生量を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図21】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−10)産生能の比較を示す図面である。 サンプルごとに最大活性濃度とサイトカイン産生量を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図22】実施例3のサンプルA-1添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図23】実施例3のサンプルA-2添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図24】実施例3のサンプルA-3添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図25】実施例3のサンプルD-1添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図26】実施例3のサンプルD-2添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図27】実施例3のサンプルD-3添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図28】実施例3のサンプルA-1添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図29】実施例3のサンプルA-2添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図30】実施例3のサンプルA-3添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図31】実施例3のサンプルD-1添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図32】実施例3のサンプルD-2添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図33】実施例3のサンプルD-3添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図34】実施例3の各種サンプルのNO産生能の比較を示す図面である。
【図35】実施例3の各種サンプルのサイトカイン(IL−6)産生能の比較を示す図面である。
【図36】実施例3の各種サンプルのサイトカイン(IL−12)産生能の比較を示す図面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物および免疫賦活法に関する。
【背景技術】
【0002】
食事による免疫賦活とは、腸管免疫系に適度な刺激を与えて、体の免疫機能を活性化することである。腸管免疫を活発な状態にしていくことは、体全体の免疫力を高め病気の予防や健康維持に有益である。経口摂取によって免疫賦活を示す食品成分は様々であるが、多くは食品に含まれる多糖類が有効に働いている。一方、われわれを取り巻く環境、食生活、遺伝的背景の変化に伴い、これまで存在し得なかった免疫系の賦活化、再構築などがおこり、古典的な免疫疾患以外にアレルギー性疾患を中心とした新たな免疫系の破綻に伴う疾患が増加してきている。
免疫賦活に関与するサイトカインを分類すると以下のとおりである。
1.炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するサイトカイン:IL-1, TNF-α
2.免疫調節性サイトカイン(Th1サイトカイン):細胞性免疫を活性化し、病原体や腫瘍細胞の排除:IL-2, IL-12, IFN-a, IFN-g
3.抗炎症性サイトカイン(Th2サイトカイン):炎症性サイトカインやTh1サイトカインの産生を抑制する体液性免疫やアレルギー反応の促進:IL-4, IL-5, IL-10,IL-13
4.多機能性サイトカイン:好中球の動員、急性期タンパクの誘導、抗体産生促進、炎症性サイトカインの産生抑制、炎症や免疫応答の時期によってその消長を制御:IL-6, TGF-b
5.造血コロニー刺激因子:白血球の活性化、急性炎症やアレルギー性炎症を促進する作用:G-CSF, GM-CSF, M-CSF
6.ケモカイン:炎症局所に白血球を遊送させる走化性因子の活性:IL-8, MCP-1,RANTES
【0003】
アレルギーは、生まれつき持っているわけではない。生後、様々な物質と接触するうちに、ある物質(アレルゲン)に対して過敏になる(これを感作されるという)。一度、感作されると、次にアレルゲンと出会ったとき、病的なアレルギー反応を起こす。アレルゲンにさらされたマクロファージは、それを処理したことを、Tリンパ球、Bリンパ球に刺激として伝える。Tリンパ球は、Bリンパ球を刺激し、Bリンパ球はIgE抗体を産生する。この抗体は、肥満細胞(または好塩基球)に付着すると、アレルギーを起こす準備ができたことになる。この状態をアレルゲンに感作されたと呼ぶ。なお、このマクロファージ、リンパ球、肥満細胞、好酸球は皆、白血球と呼ばれる血液中の細胞に属する。
感作されたところにアレルゲンが侵入すると、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどという化学伝達物質がばらまかれる。また、リンパ球は好酸球も刺激して、そこからもIL-5など、別の化学伝達物質が分泌される。化学伝達物質が分泌されると、その周囲に様々な炎症が起きる。炎症とは、発赤、痛み、はれ、発熱が起こった状態である。具体的には、スギ花粉が鼻の粘膜や目に入ると、そこが真っ赤に腫れて熱っぽくなり、痛む。これは炎症を起こした状態で、鼻水や目やにもその症状の一つである。ダニが気管支に入ると、気管支粘膜が腫れぼったくなり、イライラした痛みがして咳が出る。蕁麻疹なども同様である。卵に感作された人が、卵を食べると、全身が腫れて、痛みの軽い症状としてのかゆみが出る。
【0004】
一方で、臨床免疫学の進歩に伴い、動脈硬化性病変を含めた多くの生活習慣病や慢性疲労症候群などの現代病、ストレスに起因する各種疾患を含め、免疫系の関与が全く考えられていなかった疾患において、免疫系の破綻および変化が病因、病態に深く関与することが明らかになりつつある。免疫系は種々の免疫担当細胞などより構築されているが中でもTリンパ球の機能異常や活性化異常が多くの免疫関連疾患の原因となることが明らかにされつつある。Tリンパ球の中でもCD4陽性Tリンパ球(Th)はその産生サイトカインによりTh1およびTh2に分類され、その比率の変化によりアレルギー疾患や自己免疫疾患など種々の免疫関連疾患の病態形成に深く関与している。Th1型免疫応答は臓器特異免疫反応に、Th2型免疫応答はアトピー性疾患や鼻アレルギーなどのアレルギー疾患に深く関与している。特にアレルギーの抗原感作によるTh2型免疫応答の誘導においては抗原上の糖鎖の重要性が最近のトピックである。また実際に臨床分野において近年ではそれぞれの産生サイトカインを制御する薬剤が開発されつつある。
【0005】
動脈硬化症の危険因子(糖尿病、高脂血症、高血圧など)と動脈硬化症発症の機序について、分子レベルでの解析が進んでおり、動脈硬化症発症の契機は、単球の血管壁への遊走およびscavenger receptorによるコレステロール蓄積とマクロファージの泡沫細胞化である。その進展には種々のサイトカインやケモカインの関与が示唆されている。特にケモカイン(細胞遊走を起こすサイトカイン)の一つであるMCP-1は動脈硬化巣の血管内皮細胞から分泌され単球の遊走に関係する因子であり、動脈硬化進展に重要な役割を演じている因子として注目されている。MCP-1又はMCP-1の受容体であるCCR2をノックアウトしたマウスにおいては動脈硬化が起こりにくく、MCP-1が動脈硬化発症において中心的な役割を持っていることが明らかになった。MCP-1は、IL-1βやTNF-αという炎症性サイトカインにより刺激されて分泌される。こうしたサイトカインの産生を抑制する薬剤として、pyrazolotriazin誘導体薬剤やnitric oxide(NO)分泌誘発剤が知られており、臓器保存に使用されている。炎症性サイトカイン・ケモカイン産生抑制剤としてコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(薬効:副腎皮質ホルモン剤)も市販されている(例えば、ファルマシア社、富士製薬社、ユーシービージャパン社、沢井製薬社)。
一方、糖類又はその誘導体の動脈硬化治療剤としては、血中コレステロール濃度を低下させるヘキソースリン酸カルシウム(グルコースリン酸カルシウムなど)が特許文献1で公表されている。また、コラーゲンの合成を抑制するピラノピラノン化合物が特許文献2で公表されている。しかしながら、ごまが発芽することによって、糖の合成及び分解によって新規の糖類ができることが知られているものの、それらの免疫賦活効果はほとんど研究されていない。
【特許文献1】特開昭63-198630号公報
【特許文献2】特開平10-330268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マクロファージに関する研究は最近とみに活発となり、種々の分野にて新知見が急速に集積しつつある。また、生体防御の多くの局面に重要な役割を担うマクロファージの活性化を促す安全性に優れたマクロファージ活性化物は、医薬品並びに健康食品として利用できる。例えば、マクロファージのスクリーニングにより、いくつかの漢方薬にも活性が認められている。
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物および免疫賦活法の提供を目的とする。また、本発明は、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のための組成物の提供を目的とする。さらにまた、本発明は、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態で飲食、投与あるいは摂取させて、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のために免疫賦活法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(7)の免疫を賦活するための組成物を要旨としている。
(1)発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。
(2)マクロファージの活性化作用による免疫賦活作用である(1)の免疫を賦活するための組成物。
(3)上記免疫を賦活するための組成物が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である(1)または(2)の免疫を賦活するための組成物。
(4)上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである(1)、(2)または(3)の組成物。
(5)上記飲食品が、免疫を賦活するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である(4)の血管新生を阻害するための組成物。
(6)上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である(4)の血管新生を阻害するための組成物。
(7)上記医薬品が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防薬および/または治療薬である(4)の組成物。
【0008】
本発明は、以下の(8)〜(11)の免疫賦活法を要旨としている。
(8)免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
(9)マクロファージの活性化作用による免疫賦活効果である(8)の免疫賦活法。
(10)発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とする組成物の形態で発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用する(8)または(9)の免疫賦活法。
(11)上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである(11)の免疫賦活法。
【発明の効果】
【0009】
免疫関連疾患に対し免疫の異常を制御するため現在、新たな免疫抑制剤、免疫調節薬、抗アレルギー剤など免疫系に作用する薬剤が次々と開発されつつある。しかし既存の免疫抑制剤、免疫調節薬、抗アレルギー剤の市場は拡大の一途をとっているが、薬効、副作用などの点からいまだ十分な薬剤は存在しないのが現状である。
本発明は、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物(免疫賦活剤)および免疫賦活法の提供をすることができる。また、本発明は、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のための組成物、より具体的には食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態の組成物、特に特定保健用食品の提供をすることができる。さらにまた、本発明は、食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品、飼料の形態で飲食、投与あるいは摂取させて、免疫低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防および/または治療のために免疫賦活法の提供をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発芽ゴマは免疫を賦活する作用効果を有している。本発明者らによって、サイトカインという物質の動向で判定するマクロファージ活性化能を測定し発芽ゴマが免疫賦活効果を有することが初めて発見された。すなわち、発芽ゴマの免疫賦活効果がマウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認された。
【0011】
発芽ゴマについて説明する。
ゴマ種子について、ゴマはゴマ科、ゴマ属の一年草本で、ゴマ属の大半は野生種で栽培種はSesamuun indicum L.のみである。本発明はこの栽培種のゴマ種子を用いる。
発芽ゴマの製造の好ましい製造例は以下の通りであるが、この製造例に限定されるものではない。
(1) ゴマ種子を70%アルコールにて2分間浸漬
(2) 70%アルコール除去後、蒸留水に2時間浸漬
(3) 蒸留水を除去後、種子をトレーに移し上部をアルミホイルにて遮光後25℃処理
(4) 25℃の処理時間を発芽処理時間とし発芽処理1、2、3日のサンプルとした。
未処理は25℃処理0時間とした。
【0012】
発芽ゴマ由来の成分について説明する。本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分としては、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を使用することができる。したがって、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分は発芽ゴマより高度に精製したものでも、軽度に精製したものでもかまわない。または、発芽ごま油そのままでも、発芽ごま油特有の匂いがすることに問題がなければ、使用することができる。具体的には、発芽ゴマ種子、発芽ゴマ油あるいは発芽ゴマ油を絞った後の発芽ゴマ脱脂粕から上記マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を抽出することができる。発芽ゴマ油の脱臭時に蒸留された成分であるスカムから得ることもできる。発芽ゴマ種子から抽出する場合は、主成分である中性脂質を圧搾、もしくはヘキサン等の非極性溶媒で除去するのが好ましい。発芽ゴマ油そのままでも使用できるが、中性脂質の絶対量が多く、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分の割合が少なくなるため、その用途により適宜使用される。以上の通りであり、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分は、発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物として用いる。
【0013】
一般にゴマ油は酸化に対して比較的安定であることから、ゴマには抗酸化成分が含有されていることは古くから知られており、セサモールをはじめセサミノール、エピセサミノール、ピルジノール、エピヒノレジノール、シリンガレジノール、サミン、セサモリノール、2,3-ジ(4'-ヒドロキシ3'-メトキシベンジル)-2-ブテン-4-オライド等を含有することが知られている。セサモールは食品添加物として認められている油脂類および油脂を含む食品用の酸化防止剤である。これらゴマの抗酸化成分は、本発明で用いる発芽ゴマ由来の成分との関係はいまだ究明していないが、免疫賦活効果に何らかの関係があるものと考えている。
【0014】
本発明のゴマの抽出物としては、マウス由来のマクロファージ活性化能を測定することにより確認される発芽ゴマの免疫賦活効果を有する成分を抽出できる方法であれば、どのような溶媒、脂質、乳化剤によって抽出したものでも使用できる。具体的には、発芽ゴマ、発芽ゴマ油または発芽ゴマ粕を水、亜酸化窒素、アセトン、エタノール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクルルエテン、二酸化炭素、1-ブタノール、2-ブタノール、ブタン、1-プロパノール、2-プロパノール、プロパン、プロピレングリコール、ヘキサン、メタノール等の有機溶媒やトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、食用油脂等の脂質、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤によって抽出して得ることができる。さらに、溶媒留去後、再度有機溶媒等に溶解し、濾過により不溶性成分を除くなどの操作をすることにより上記成分を濃縮することができる。
【0015】
発芽ゴマの免疫賦活効果は、免疫賦活性組成物として、あるいは医薬品として、特定保健用食品として利用することができる。たとえば、発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物は、食品類に対して、免疫賦活効果を有する食品素材として利用できる。発芽ゴマは通常のゴマと同様に食品として用いることができる。
【0016】
例えば脱脂乳、牛乳カゼイン、牛乳タンパク質、乳糖、オリゴ等、ショ糖、デキストリンを温湯に溶解混合後、ビタミン・ミネラル類を溶解し水相とし、ここに本発明の発芽ゴマ油を添加し、ホモミキサー等にて混合し、ホモジナイザーで均質化する。得られた乳化液を常法により殺菌、濃縮、噴霧乾燥して調製粉乳が得られる。同様に各種粉末化基剤を用いて本発明の組成物を粉末油脂とすることもできる。食品に添加する場合は、食品の性質によって発芽ゴマ油のまま添加するか、粉末油脂として添加するかを決める。通常の食品に添加しても、健康食品、いわゆるサプリメントとしてカプセル、錠剤にしてもよい。すなわち、本発明の機能性食品(特定保健用食品など)は、特定の疾病などを予防する健康食品、予防医薬品の分野の利用に適している。特定の疾病を予防する健康食品においては、必須成分である発芽ゴマの他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D-ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0017】
食品、飲料における配合量は特に制限されないが0.01〜10重量%程度が好ましい。発芽ゴマ油を使用する場合、発芽ゴマ油に独特の臭いがあるので、その使用量を2〜6重量部に限定して使用するとよい。また本発明の発芽ゴマは食品素材として普通に使用され、安全性が高く、大量生産技術が開発されればコスト面でも利用価値は高いものである。なお急性経口毒性試験では2,000mg/kg以上であった。
【0018】
本発明の薬剤においては、有効成分である発芽ゴマ由来の成分は発芽ゴマそれ自体のみならず(それの薬剤として許容される塩として)使用される。該薬剤は発芽ゴマを単独で製剤として用いることができるほか、製薬上使用できる担体もしくは希釈剤を加えた製剤組成物に加工したものを用いることもできる。このような製剤または薬剤組成物は、経口または非経口の経路で投与することができる。例えば、経口投与用の固体または流体(ゲルおよび液体)の製剤または薬剤組成物は、タブレット、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、顆粒もしくはゲル調製品の形態をとる。製剤または薬剤組成物の正確な投与量は、その目的とする使用形態および処置時間により変化するため、担当の医師または獣医が適当であると考える量になる。服用および投与用量は製剤形態によって適宜調整できる。錠剤などの経口固形製剤、経口液剤などとして1日服用量を1回ないし数回に分けて服用してもよい。また、例えばシロップやトローチ、チュアブル錠などの幼児頓服して、局所で作用させるとともに内服による全身性作用をも発揮させる製剤形態では1日服用量の1/2〜1/10を1回量として配合し服用すればよく、この場合全服用量が1日量に満たなくてもよい。医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤などとして経口投与することができ、水に溶ける成分の場合は、経口投与以外に静脈注射、筋肉注射などの投与方法を採用することが可能である。投与量は例えば症状の度合いや体重、年齢、性別などにより異なるものであり、使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬品における配合量は特に制限はされないが、体重1kgあたり、経口投与の場合0.01〜2,000mg、静脈注射投与の場合0.01〜1,000mg、筋肉注射投与の場合0.01〜1,000mg程度が好ましい。
逆に、製剤形態からみて無理な服用容量とならなければ1日服用量に相当する量を1回分として配合してもよい。製剤の調製にあたっては、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、コーティング剤、徐放化剤など、希釈剤や賦形剤を用いることができる。この他、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、吸着剤、香料、着色剤、矯味剤、抗酸化剤、保湿剤、遮光剤、光沢剤、帯電防止剤などを使用することができる。
【0019】
以上述べたような食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料に発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物の形態で含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程で発芽ゴマなどとして0.1重量%以上、望ましくは0.5重量%以上含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶析、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。
本発明の発芽ゴマおよび/またはその抽出物および/またはその混合物を配合した組成物において、発芽ゴマなどは、組成物中に0.1〜50重量%含まれるように配合されている。好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。組成物中において、発芽ゴマなどが0.1重量%未満だと、マクロファージの活性化作用が充分ではない。また、組成物中において、発芽ゴマなどが50重量%を越えると、経済的な意味で好ましくない。
【0020】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0021】
本実施例では発芽ゴマの免疫賦活効果をマウス由来のマクロファージ活性化能を測定して検討した。マクロファージ活性化能は、サイトカインという物質の動向で判定する。サイトカインは様々な効果がある。サイトカインの効果は大別すると(1)炎症性サイトカイン(2)免疫調節性サイトカイン(3)抗炎症性サイトカイン(4)多機能性サイトカイン(5)造血コロニー刺激因子(6)ケモカインの6種類である。本測定では一般的な(1)〜(4)の4種類から、TNF-α、IL-6、10、12の4つのサイトカインを使用し発芽ゴマが免疫賦活効果に優れていることを確認できた。よって、発芽ゴマはマクロファージの活性化を促す安全性に優れ、医薬品並びに健康食品として利用できる素材である。
【0022】
試 料 :サンプルA:未処理ゴマ種子
サンプルB:発芽処理1日ゴマ種子
サンプルC:発芽処理2日ゴマ種子
サンプルD:発芽処理3日ゴマ種子
試験方法:マウス由来マクロファージ様細胞株にサンプルを添加し、一定時間反応さ
せ各サイトカインの産生量を測定する。
陽性コントロール(LPS:10μg/ml)添加時のサイトカイン産生量を測定した。
×:LPS活性の10%未満、△:LPS活性の10〜30%の活性あり、○:LPS活性の30〜80%の高い活性あり、◎:LPS活性の80%以上の非常に高い活性あり
【0023】
[試料]
ゴマ種子:パラグアイ産白ゴマ
試料調製:
(1) ゴマ種子を70%アルコールにて2分間浸漬
(2) 70%アルコール除去後、蒸留水に2時間浸漬
(3) 蒸留水を除去後、種子をトレーに移し上部をアルミホイルにて遮光後25℃処理
(4) 25℃の処理時間を発芽処理時間とし発芽処理1、2、3日のサンプルとした。未処理は25℃処理0時間とした。
【0024】
[サイトカインの分類]
1.炎症性サイトカイン:炎症反応を促進するサイトカイン:IL-1, TNF-α
2.免疫調節性サイトカイン(Th1サイトカイン):細胞性免疫を活性化し、病原体や腫瘍細胞の排除:IL-2, IL-12, IFN-a, IFN-g
3.抗炎症性サイトカイン(Th2サイトカイン):炎症性サイトカインやTh1サイトカインの産生を抑制する体液性免疫やアレルギー反応の促進:IL-4, IL-5, IL-10,IL-13
4.多機能性サイトカイン:好中球の動員、急性期タンパクの誘導、抗体産生促進、炎症性サイトカインの産生抑制、炎症や免疫応答の時期によってその消長を制御:IL-6, TGF-b
5.造血コロニー刺激因子:白血球の活性化、急性炎症やアレルギー性炎症を促進する作用:G-CSF, GM-CSF, M-CSF
6.ケモカイン:炎症局所に白血球を遊送させる走化性因子の活性:IL-8, MCP-1,RANTES
【実施例2】
【0025】
サンプル(ごま粉砕物)について、体外系でのマクロファージ活性化能の測定を行った。
1)検査内容
サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDのマクロファージ活性化能を検査するため、一酸化窒素(NO)及びサイトカイン(TNF-a・IL-6・IL-10及びIL-12)の測定を行った。
【0026】
2)検査方法
1.各種サンプルはあらかじめ下記の濃度となるよう培養液に溶解した。
サンプルA: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルB: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルC: 10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
サンプルD: 1mg/ml、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
2.マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1(1.5×105個/well)にサンプルを添加し、一定時間反応させた。
3.サイトカイン(TNF-a)産生量は、培養4時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource
International, Inc.)を用いて測定した。
4.サイトカイン(IL-6・IL-10及びIL-12)産生量は、培養24時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource International, Inc.)を用いて測定した。
5.NO産生量は24時間培養後、上清にGriess試薬を添加し、550nmの吸光度を測定した。同時に、陽性コントロールであるLPS(Lipopolysaccharide:10mg/ml)添加時のNO産生量を測定し、比活性(LPSのNO産生量に対するサンプルのNO産生量、単位:%)を算出した。
【0027】
3)結果
NO産生能は、サンプルA添加時まったく反応を示さなかった(図1参照)。サンプルBのNO産生能は、100mg/ml以下の濃度でまったく反応が見られず、1000mg/mlで42.8%と高いマクロファージ活性化能を示した(図2参照)。サンプルCは100mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さず、1000mg/mlで85.2%と非常に高いNO産生能を示した(図3参照)。サンプルDのNO産生能は、10mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さず、100mg/mlの濃度で17.0%とややNO産生能が見られた(図4参照)。1000mg/mlでは110.0%を示し陽性コントロール(LPS)を上回る非常に高いNO産生能を有していた。
【0028】
TNF-a産生量はサンプルA添加時、濃度依存的に増加したものの、100mg/ml以下の濃度ではわずかな産生に留まっていた(図1参照)。1000mg/mlで無添加時(コントロール)の3.8倍の活性を示した。
サンプルB添加時は10mg/mlと100mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの 1.8倍、5.4倍の活性を示した(図2参照)。1000mg/mlの濃度ではコントロールの17.0倍を示し、LPSの活性を上回るTNF-a産生が見られた。
サンプルCのTNF-a産生量は、10mg/ml及び100mg/ml、1000mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの2.6倍、10.1倍、21.3倍と濃度依存的な活性を示した(図3参照)。
サンプルDは1mg/mlの濃度からコントロールの1.5倍とわずかに活性を示し、10mg/ml及び100mg/ml、1000mg/mlの濃度でそれぞれ、コントロールの4.3倍、14.5倍、27.2倍と濃度依存的に高い活性を示した(図4参照)。
サンプルBとサンプルCが1000mg/ml添加時にLPSの活性を上回ったのに対して、サンプルDは100mg/mlの濃度でLPSとほぼ同等の活性を有していた。さらに、1000mg/ml添加時にはLPSの2.0倍もの活性を示した。
【0029】
IL-12産生量はサンプルA添加時、10mg/ml以下の濃度ではまったく反応を示さなかった(図5参照)。100mg/ml以上の濃度でやや反応したものの10pg/ml以下の産生量であり、ほとんど活性がなかった。
サンプルBでは、10mg/mlでわずかにIL-12を産生し、100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ235.9pg/ml、1854.9pg/mlと増加していた(図6参照)。
サンプルCのIL-12産生能は10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlで、それぞれ39.8pg/ml、927.7pg/ml、1808.0pg/mlと濃度依存的に増加していた(図7参照)。
サンプルDは、1mg/mlではまったくIL-12産生能が見られず、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlで、それぞれ87.2pg/ml、1520.4pg/ml、1775.9pg/mlと濃度依存的に増加していた(図8参照)。100mg/mlから1000mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られなかった。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のTNF-a産生量は35759.5pg/ml(コントロールの13.9倍)、IL-12産生能は2563.2pg/mlだった。
IL-6産生量はサンプルA添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図12参照)。100mg/ml、1000mg/mlにおいては濃度依存的に増加していたが、わずかな活性に留まっていた。サンプルB添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図13参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ3608.9pg/ml 、46684.9pg/mlと濃度依存的に増加していた。100mg/mlから1000mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られた。サンプルC添加時、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図14参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、それぞれ24989.5pg/ml 、75619.0pg/mlと濃度依存的に増加していた。サンプルD添加時、1mg/mlではまったく活性は見られなかった(図15参照)。10mg/ml以上の濃度では、それぞれ986.2pg/ml 、39697.9pg/ml 、74926.6pg/mlと濃度依存的に増加していた。10mg/mlから100mg/mlの濃度間では、顕著な活性の増加が見られた。
【0030】
IL-10産生量はサンプルA添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図16参照)。1000mg/mlでは、3.1pg/ml とわずかな産生が見られた。サンプルB添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図17参照)。1000mg/ml添加時では、LPSの約2.6倍の高い活性が見られた。サンプルC添加時、10mg/ml、100mg/mlではまったく活性は見られなかった(図18参照)。1000mg/ml添加時では、LPSの約3.0倍の高い活性が見られた。サンプルD添加時、1mg/ml、10mg/mlではまったく活性は見られなかった(図19参照)。100mg/ml、1000mg/mlでは、13.8pg/ml 、141.9pg/mlと濃度依存的に増加していた。1000mg/ml添加時では、LPSの約3.9倍の高い活性が見られた。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のIL-6産生能は83550.1pg/ml、IL-10産生能は36.0pg/mlだった。
【0031】
4)考察
測定項目ごとに各種サンプルが最大活性を示した濃度におけるマクロファージ活性化能を比較した(図9、10、11、20、21参照)。
マクロファージ活性化能はサンプルAではほとんど反応を示さず、サンプルB、サンプルC、サンプルDの3サンプルが高い活性を示した。
NO産生能が最も高い反応を示したのはサンプルDだった(図9参照)。続いて、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に活性が高い値を示した。サンプルBとサンプルCは100mg/ml以下の濃度ではほとんど反応を示さなかった。24時間培養後の顕微鏡所見では、全サンプルの100mg/ml以上の濃度でマクロファージ細胞がサンプル粒子に対して凝集しており、サンプルがマクロファージ細胞の貪食能を刺激したと考えられる。しかし、サンプルAは顕微鏡所見においても、細胞の貪食が少なく感じられた。サンプルBとサンプルC、サンプルDは、1000mg/mlの濃度で一部の細胞が分化しており、マクロファージ細胞の活性を誘導した事が顕微鏡所見から伺えた。
TNF-aは主にマクロファージやリンパ球から産生され、生体防御因子として種々の免疫賦活効果を誘導するだけでなく、ある種の腫瘍細胞に直接細胞毒性作用をもつサイトカインとして知られている。本検査では、すべてのサンプルで濃度依存的なTNF-a産生を示した。NO産生能と同様に、サンプルD、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に高い活性を示した(図10参照)。特に、1000mg/ml添加時のサンプルDは培養4時間という短時間で、LPSの2倍もの活性を誘導しており、非常にマクロファージ細胞に対する賦活効果が高いと考えられる。
IL-12は主にマクロファージ細胞から産生され、NK細胞活性やIFN-g産生を誘導するサイトカインとして知られている。本検査では、それぞれ1000mg/ml添加時にIL-12産生が最大活性を示した。しかし、最大活性におけるサンプルB、サンプルC、サンプルDのIL-12産生量は100pg/ml以内の差であり、ほぼ同等の活性と考えられる(図11参照)。10mg/mlか、もしくは100mg/mlの濃度における3サンプルのIL-12産生能を評価すると、NO産生能やTNF-a産生能と同様に、サンプルD、サンプルC、サンプルB、サンプルAの順に高い活性を示した。サンプルDのIL-12産生能は、他のサンプルと比べて低い濃度(100mg/ml 付近)で活性のほぼピーク値を示しており、より優れた賦活効果を有していると思われる。
一般に、マクロファージ細胞は細胞表面の膜タンパク質の一種、Toll Like Receptor(TLR)でサンプルやその他の異物などを認識し、活性化すると考えられている。サンプルB、サンプルC、サンプルDはIL-12の最大産生量がほぼ同量であり、マクロファージ細胞の同じレセプターか、もしくは同じ活性化経路を刺激した可能性が高いと考えられる。ただし、IL-12産生能は最大活性濃度でもLPSの70%前後の活性であり、サンプルが直接的にIL-12産生能を刺激したのか、TNF-aのように初期に産生されたサイトカインによって間接的に誘導されたのかは判断できない。
IL-6は主にマクロファージや内皮細胞から産生され、B細胞に作用して抗体産生を誘導したり、胸腺ではT細胞の増殖・分化に働いたりするサイトカインである。今回の検査では、すべてのサンプルで濃度依存的な活性が見られ、1000mg/ml添加時に最も高いIL-6産生量を示した。ただし、サンプルAはわずかな活性にとどまっており、ほとんどマクロファージ活性を有していないと考えられる。TNF-a及びIL-12産生能の測定結果ではサンプルD、サンプルC、サンプルBの順に高いマクロファージ活性が見られたものの、値の顕著な差が見られなかった。IL-6産生能の測定結果では、サンプルCとサンプルDはサンプルBの2倍弱の活性を示しており、NO産生能の測定結果との相関がみられた。サンプルがすべて同じ原材料であったとしても、精製過程におけるサンプルの変性や表面構造の変化によって活性の差が現れたと考えられる。
IL-10はサイトカイン産生抑制因子として知られており、炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-aの産生を抑制することが判明している。但し、細胞株からのIL-10産生能はLPS添加時でも産生量が低く変動がでやすい傾向があり、若干の増減は誤差範囲内と考えられる。今回の測定結果ではサンプルDが最も高いIL-10産生能を示し、続いてサンプルC、サンプルBでも陽性コントロールであるLPSの値と比較しても高いIL-10産生が見られた。10mg/ml LPS添加時のマクロファージ活性はほぼ最大値を示すことから、これらの3サンプルはLPSと異なる機構でもマクロファージを活性化していると考えらる。サンプルAは、他のサイトカインと同様にほとんど活性がなかった。
サンプルDはNO産生能と4つのサイトカイン産生能すべてにおいて非常に高い活性を示し、マクロファージ細胞の免疫賦活効果という観点において非常に優れたサンプルと考えられる。続いて高い活性を示したサンプルCも、サンプルDに比べてIL-10産生能がやや低かったものの、その他のサイトカインはサンプルDとほぼ同等であり、優れた免疫賦活物質と考えられる。サンプルBは、NO産生能とIL-6産生能の活性がやや劣るものの、総合的に評価すると文献値と比べて、高い活性を有するサンプルと考えられる。
本検査は、サンプルを直接添加するというおおまかな条件設定においてスクリーニング検査を行った。この条件のもとでは、サンプルDのマクロファージ活性化能は非常に高く、免疫賦活効果が優れていると考えられる。また、サンプルCとサンプルBも、サンプルDには劣るもののマクロファージ細胞に対する免疫賦活効果が期待できると考えられます。サンプルAについてはマクロファージの活性化能があまり期待できなかった。サンプルDはその他のサンプルに比べて、やや油分が多く、粘性が低いように感じた。サンプルDの活性がその油脂成分に起因するものかどうかは、本検査では判断できない。また、検査結果から、ごま粉砕物に免疫賦活効果があることが示唆された。
【実施例3】
【0032】
マクロファージ活性化能の測定
分画方法:
凍結乾燥処理したゴマ種子20部に、抽出溶媒としてクロロホルム210部とメタノール90部を混合し、混合系を調整した。この混合系を1時間還流処理後、濾過処理により残物を画分1とした。濾液は溶媒除去処理後、1%含水メタノール100部とヘキサン200部を混合し、混合系を調整した。この混合系を分液及び溶媒除去処理を行った。抽出画分は分液上層部(ヘキサン可溶部)を画分2とし、下層部(1%含水メタノール可溶部)を画分3として得た。
画分1:タンパク質・繊維質など溶剤不溶部
画分2:脂質など油分
画分3:界面活性物質など溶剤可溶部
試料名:
サンプルA=未処理ゴマ種子、サンプルD=発芽3日処理ゴマ種子、画分1〜3=1〜3
例)A-1=未処理ゴマ種子の画分1
【0033】
1)検査内容
A-1、A-2、A-3、D-1、D-2、D-3のマクロファージ活性化能を検査するため、一酸化窒素(NO)及びサイトカイン(IL-6及びIL-12)の測定を行った。
【0034】
2)検査方法
1.各種サンプルはあらかじめ以下の濃度となるよう培養液に溶解した。
A-1:100mg/ml、1000mg/ml
A-2:100mg/ml、1000mg/ml
A-3:100mg/ml、1000mg/ml
D-2:100mg/ml、1000mg/ml
D-3:10mg/ml、100mg/ml、1000mg/ml
2.マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1(1.5×105個/well)にサンプルを添加し、一定時間反応させた。
3.サイトカイン(IL-6及びIL-12)産生量は、培養24時間後の上清を回収し、サイトカイン測定キット(BioSource International, Inc.)を用いて測定した。
4.NO産生量は24時間培養後、上清にGriess試薬を添加し、550nmの吸光度を測定した。同時に、陽性コントロールであるLPS(Lipopolysaccharide:10mg/ml)添加時のNO産生量を測定し、比活性(LPSのNO産生量に対するサンプルのNO産生量、単位:%)を算出した。
【0035】
3)結果
NO産生量はA-1添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図22参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。A-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図23参照)。A-3添加時、100mg/mlにおいて、活性はほとんど見られなかった(図24参照)。1000mg/mlにおいては、活性はまったく見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて70.1%の高い活性を示した(図25参照)。1000mg/ml においては、197.5%と陽性コントロールであるLPSを上回る非常に高い活性が見られた。D-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図26参照)。D-3添加時、10mg/ml、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図27参照)。
【0036】
IL-6産生量はA-1添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図22参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。A-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はほとんど見られなかった(図23参照)。A-3添加時、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図24参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて85119.0pg/mlと陽性コントロールであるLPSとほぼ同等の高い活性を示した(図25参照)。1000mg/ml においては、79571.4pg/mlの高い活性が見られた。D-2添加時、100mg/mlにおいて活性はまったく見られなかった(図26参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-3添加時、10mg/ml、100mg/mlにおいて活性はほとんど見らなかった(図27参照)。1000mg/mlでは、5119.0pg/mlの微弱な活性を示した。
【0037】
IL-12産生量はA-1添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図28参照)。A-2添加時、100mg/mlにおいて活性はほとんど見られなかった(図29参照)。1000mg/mlでは、活性はまったく見られなかった。A-3添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図30参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。D-1添加時、100mg/mlにおいて、2035.6pg/mlと陽性コントロールであるLPSを上回る非常に高い活性を示した(図31参照)。1000mg/mlでは、481.5pg/mlの活性が見られた。D-2添加時、100mg/ml、1000mg/mlともに活性はまったく見られなかった(図32参照)。D-3添加時、10mg/ml、100mg/mlにおいて、活性はまったく見られなかった(図33参照)。1000mg/mlにおいても、活性はほとんど見られなかった。
参考値として、マクロファージ細胞を活性化することが知られるLPS添加時のIL-6及びIL-12産生能は、それぞれ89547.6pg/ml、1630.2pg/mlであった。
【0038】
4)考察
測定項目ごとに各種サンプルが最大活性を示した濃度におけるマクロファージ活性化能を比較した(図34、35、36参照)。NOは異物への攻撃に作用する活性酸素種の一種であり、細胞傷害活性や免疫応答調節作用がある。今回測定したサンプルでNO産生能を示したサンプルはD-1であった。その他のサンプルでは、NO産生能がほとんど見られず、活性が無いものと考えられる。D-1添加時のNO産生能は100mg/mlの濃度から高い活性を示し、1000mg/mlの濃度ではLPSによる活性の2倍近いNO産生能が見られた。マクロファージ検査において、10mg/ml LPSの添加によって、マクロファージ活性がNO産生量をはじめ、各種のサイトカイン産生量もほぼ最大活性を示す。したがって、LPSの活性を大幅に上回ったD-1添加時の活性は、内毒素であるLPSとは異なる活性化経路からもマクロファージ活性を誘導したと考えられる。
サンプルAは実施例2で、まったくNO産生能が見られず、本実施例でも同様にA-1、A-2、A-3による活性はなかった。サンプルDは実施例2で、100mg/mlで17.0%、1000mg/mlで110.0%のNO産生能が見られ、本実施例の検査ではD-1にサンプルDのNO産生能が反映されていた。サンプルDからD-1を分画したことによって、NO産生能が増加したと考えられる。
【0039】
IL-6は主にマクロファージや内皮細胞から産生され、B細胞に作用して抗体産生を誘導したり、胸腺ではT細胞の増殖・分化に働いたりするサイトカインである。最も高いIL-6産生能を示したサンプルはD-1で、LPSと同程度の活性を示した。IL-6産生量の多い順に、D-3、A-1、A-2、A-3、D-2と続いたが、これらのサンプルはLPSによる活性に比べて6%以下の値であり、顕著な活性は示さなかった。実施例2と本実施例の検査結果を値のみ評価して優劣をつけることはできないが、LPSに対する活性の割合を比較すると、D-1 100mg/mlとサンプルD 1000mg/mlが同程度の活性を示しており、D-1がサンプルDに比べて低濃度で高い活性を誘導していた。マクロファージ細胞を活性化する構造が、D-1には多量に含まれることが推察され、サンプルDによるマクロファージ活性を誘導した成分が効率良く分画されているのではないかと考えられる。D-3、D-2もわずかに反応を示したが、D-1に比べると微量な活性であり、マクロファージ活性化構造をほとんど有さないと思われる。
一方、サンプルAは実施例2の検査時にほとんどIL-6産生能を示さず、本実施例の検査結果においても、A-1、A-2、A-3は微弱な活性に留まっていた。顕著なマクロファージの活性を誘導する構造はほとんど含まれていないと考えられる。
【0040】
IL-12は主にマクロファージから産生され、NK活性やインターフェロン産生を増強するサイトカインとして知られている。IL-12産生能を示したサンプルはD-1であった。D-1添加時、100mg/mlの濃度でLPSの活性を超える活性を有しており、LPSとは異なる活性化経路からもIL-12産生能を誘導したと考えられる。また、実施例2で、サンプルD単独では、LPSの活性を越える程の活性値示さなかったことから、IL-12産生能からもD-1が効率良くマクロファージ活性構造を含む構造を分画したことが伺える結果が得られた。サンプルDは10mg/mlの濃度からIL-12産生能を誘導し始め、100mg/mlから1000mg/mlの濃度で最大活性を示した。D-1は100mg/mlから1000mg/mlの濃度間で活性が4分の1以下に低下しており、1000mg/mlでは過剰添加のため、細胞の培養環境に影響を与えたものと考えられる。本実施例は100mg/ml以下の濃度における活性は測定していないが、おそらく、1mg/ml程度の少量からもIL-12産生能を誘導する可能性があるのではないかと推測される。
その他のA-1、A-2、A-3、D-2、D-3にはIL-12産生能がほとんど見られず、マクロファージ細胞を刺激してIL-12産生を示す能力は無いと考えられる。
【0041】
顕微鏡所見では、D-1添加時にマクロファージ細胞の貪食能が刺激された様子であり、細胞の分化が誘導されているようであった。A-1添加時もわずかに貪食能を刺激した様子あったが、細胞の分化はあまりみられなかった。A-3とD-3は1000mg/ml添加時に細胞の増殖をわずかに抑制していた。A-2は1000mg/ml添加時に細胞がやや分化しているようにも感じられたが、顕著な変化とは言えなかった。D-2は無添加コントロールと比べて顕著な変化は見られなかった。
本実施例で、すべての検査項目においてD-1が高いマクロファージ活性を示し、マクロファージに対する活性化構造を多く含有することが伺えた。また、貪食能の刺激により、非常に高い活性を誘導したと考えられる。一般的に、マクロファージ細胞は細胞表面の抗原受容体である膜タンパク質のひとつToll Like Receptor(TLR)で微生物などの異物を認識し、活性化していると考えられている。LPSはTLR4に結合してマクロファージ細胞活性を誘導することが知られているが、D-1はNO産生能とIL-12産生能においてLPSを超える活性を有しており、その他の経路からも高い活性を誘導した可能性が考えられる。IL-6産生能は本実施例で測定した100mg/mlから1000mg/mlの濃度においては、LPSと同程度かもしくはそれ以下の活性であったため、LPSと同じような系に作用している可能性が高いのではないかと思われる。
【0042】
5)参考文献:Dennis J. Stuehr and Michael A.
Marletta. Synthesis of Nitrite and Nitrate in Murine Macrophage Cell
Lines. Cancer Res., 47, 1987.
【産業上の利用可能性】
【0043】
〔有望性、実用性、発展性〕
我々の身体において正常の恒常性維持には、三大調節系である神経系・内分泌系・免疫系が重要であり、それぞれが複雑に関連し維持されている。それぞれのシステムが共通の情報伝達物質とレセプターを有し、免疫系はサイトカインを用いて神経・内分泌系に影響を及ぼし、逆に心理的、肉体的ストレスなどに際し、脳は内分泌系や自律神経系を操作し免疫系に影響を及ぼすことが知られ、その機序についても様々な報告があり、そのクロストークが重要視されている。その中で免疫系は抵抗力ともいわれ、体内に進入してくる病原体など異物の排除や悪性腫瘍の監視機構など重要な役割を担っており、その恒常性維持のシステムについて急速に明らかになってきている。
しかし現在、われわれを取り巻く環境、食生活、遺伝的背景の変化に伴い、これまで存在し得なかった免疫系の賦活化、再構築などがおこり、古典的な免疫疾患以外にアレルギー性疾患を中心とした新たな免疫系の破綻に伴う疾患が増加してきている。とくに小児におけるアトピー性皮膚炎、鼻アレルギーなどは増加の一途をたどっている。
現在、自己免疫疾患、アレルギー疾患に用いられている免疫抑制剤および免疫調節薬は非常に限られたものしか存在しない。故にその選択と適応の幅はかなり狭いのが現状であり、新しい免疫抑制薬でかつ作用機序の異なる薬剤が誕生することは、今後かなりのニーズが期待される移植医療を含め、免疫抑制療法の分野において新しい時代が来ると考えても過言ではないと思われ、それにより生じうる社会貢献は計り知れないものがあると考えられる。現在、自己免疫疾患、アレルギー疾患に用いられている免疫抑制剤および免疫調節薬は非常に限られたものしか存在しない。故にその選択と適応の幅はかなり狭いのが現状であり、新しい免疫抑制薬でかつ作用機序の異なる薬剤が誕生することは、今後かなりのニーズが期待される移植医療を含め、免疫抑制療法の分野において新しい時代が来ると考えても過言ではないと思われ、それにより生じうる社会貢献は計り知れないものがあると考えられる。
また、現在、我々の免疫機構に環境因子(環境ホルモン、汚染物質など)が深く影響してきており、遺伝学的にはまだ環境の変化に適応できず、免疫機能の破綻が起こりつつある。年々小児のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)の増加や鼻アレルギーなどの環境自然免疫獲得機構の異常などはその一表現形である。さらに慢性疲労症候群や生活習慣病の増加の大きな一因にも免疫機構の破綻や関与が確実視されている。
現在、免疫、アレルギーの分野を含めCELL TO CELL interactionを介する生体反応における細胞表面の糖鎖や外来抗原タンパクにおけるタンパク表面の糖鎖の重要性が指摘されている。免疫系を中心とした作用がさらに明らかになれば、細胞表面やタンパク表面の糖鎖を置換することなどにより、免疫制御やガン制御の分野でこれまでに考えられなかった様な効果をもたらす可能性が十分に考えられ夢のような治療が実現する可能性もある。またやはり糖であるという決定的な特徴を生かして色々な糖鎖に選択した場所にのみ組み込む事が出来る可能性があり、drug deliveryについても超選択的なdeliveryが考えられる。以上のことからあらゆる分野で長期にわたって将来性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルA添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図2】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルB添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図3】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルC添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図4】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびTNF−α産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルD添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図5】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルA添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図6】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルB添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図7】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルC添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図8】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対する、サンプルD添加時のNO産生量の割合(%)で表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図9】実施例2の各種サンプルのNO産生能の比較を示す図面である。各サンプルごとに最大活性濃度とNO産生能(%)を示す。NO産生能はLPS添加時のNO産生量に対する、各サンプル添加時のNO産生量の割合を示す。LPSはマクロファージ活性化物質である。 一般に、NO産生能が高いほどマウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。評価の目安はランクA(活性:80%以上、非常に高い活性あり)、ランクB(活性:30〜80%、高い活性あり)、ランクC(活性:10〜30%、活性あり)、ランクD(活性:10%未満、活性なし)
【図10】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(TNF−α)産生能の比較を示す図面である。 各サンプルの最大活性濃度とサイトカイン(TNF−α)産生量(pg/ml)を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図11】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−12)産生能の比較を示す図面である。 各サンプルの最大活性濃度とサイトカイン(IL−12)産生量(pg/ml)を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図12】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図13】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図14】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図15】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図16】実施例2のサンプルA添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図17】実施例2のサンプルB添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図18】実施例2のサンプルC添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図19】実施例2のサンプルD添加時のNOおよびIL−10産生能を示す図面である。 グラフの左縦軸はNO(一酸化窒素)産生能を示し、右縦軸はサイトカイン産生量を示す。NO産生能は、LPS添加時のNO産生量に対するサンプル添加時のNO産生量の割合(%)を表わす。LPSはマクロファージ活性化物質である。
【図20】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−6)産生能の比較を示す図面である。 サンプルごとに最大活性濃度とサイトカイン産生量を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図21】実施例2の各種サンプルのサイトカイン(IL−10)産生能の比較を示す図面である。 サンプルごとに最大活性濃度とサイトカイン産生量を示す。一般に、サイトカイン産生量が大きいほど、マウス由来マクロファージ様細胞株に対する免疫賦活効果が高いと考えられる。
【図22】実施例3のサンプルA-1添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図23】実施例3のサンプルA-2添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図24】実施例3のサンプルA-3添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図25】実施例3のサンプルD-1添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図26】実施例3のサンプルD-2添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図27】実施例3のサンプルD-3添加時のNOおよびIL−6産生能を示す図面である。
【図28】実施例3のサンプルA-1添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図29】実施例3のサンプルA-2添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図30】実施例3のサンプルA-3添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図31】実施例3のサンプルD-1添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図32】実施例3のサンプルD-2添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図33】実施例3のサンプルD-3添加時のNOおよびIL−12産生能を示す図面である。
【図34】実施例3の各種サンプルのNO産生能の比較を示す図面である。
【図35】実施例3の各種サンプルのサイトカイン(IL−6)産生能の比較を示す図面である。
【図36】実施例3の各種サンプルのサイトカイン(IL−12)産生能の比較を示す図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。
【請求項2】
マクロファージの活性化作用による免疫賦活作用である請求項1の免疫を賦活するための組成物。
【請求項3】
上記免疫を賦活するための組成物が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である請求項1の免疫を賦活するための組成物。
【請求項4】
上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項1または2の組成物。
【請求項5】
上記飲食品が、免疫を賦活するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である請求項4の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項6】
上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である請求項4の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項7】
上記医薬品が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防薬および/または治療薬である請求項4の組成物。
【請求項8】
免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
【請求項9】
マクロファージの活性化作用による免疫賦活効果である請求項8の免疫賦活法。
【請求項10】
発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とする組成物の形態で発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用する請求項8または9の免疫賦活法。
【請求項11】
上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項10の免疫賦活法。
【請求項1】
発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とすることを特徴とする免疫を賦活するための組成物。
【請求項2】
マクロファージの活性化作用による免疫賦活作用である請求項1の免疫を賦活するための組成物。
【請求項3】
上記免疫を賦活するための組成物が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防または治療するための組成物である請求項1の免疫を賦活するための組成物。
【請求項4】
上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項1または2の組成物。
【請求項5】
上記飲食品が、免疫を賦活するための、機能性食品、栄養補助食品または健康飲食品である請求項4の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項6】
上記飼料が、血管新生を阻害するための、家畜、家禽、ペット類の飼料である請求項4の血管新生を阻害するための組成物。
【請求項7】
上記医薬品が、免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患に対する、免疫賦活することによる症状の進行の予防薬および/または治療薬である請求項4の組成物。
【請求項8】
免疫活性低下が原因となる免疫関連疾患の予防および/または治療のために発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用することを特徴とする免疫賦活法。
【請求項9】
マクロファージの活性化作用による免疫賦活効果である請求項8の免疫賦活法。
【請求項10】
発芽ゴマ由来の成分を免疫賦活作用の有効成分とする組成物の形態で発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を利用する請求項8または9の免疫賦活法。
【請求項11】
上記組成物が、免疫を賦活するための食品素材、飲食品、健康飲食品、医薬品および飼料からなる群から選ばれる形態のものである請求項10の免疫賦活法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
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【図8】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2006−298773(P2006−298773A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118228(P2005−118228)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(596170550)かどや製油株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(596170550)かどや製油株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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