説明

発酵組成物及びその組成物を使用した食品、飲料、医薬品

【課題】 野菜、果実又は薬草類、草根、木皮、その他請求項1の素材を発酵により、新たな発酵組成物等を提供する。
【解決手段】
野菜、果実、豆類、根茎類、キノコ類、海藻類、ハーブ、薬草類、草根、木皮、魚介類、畜産物およびその残渣、その他食品素材の1種あるいは2種以上に酒粕、その他の発酵飲食物製造工程のもろみ、ろ過物及び/または蒸留残渣それらの乾燥物及び/または抽出物を加え、麹菌で発酵させた発酵組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果実に酒粕その他の発酵飲食物製造工程のもろみ、ろ過物及び/または蒸留残渣それらの乾燥物及び抽出物を加え、麹菌で発酵させた発酵組成物及びその組成物を使用した食品、飲料、医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果実や野菜等は、そのまま食用として、ジュースまたは漬物等に加工されて提供される。最近、野菜や果実等に本来認められている効果の向上、または新たな効果開発のため、発酵技術が注目されており、さまざまな検討が行われている。
【0003】
野菜や果実等を発酵させる方法として、いくつかの方法が報告されている。例えば、柑橘類の搾汁残渣に醸造用酵母を接種し、軽度の発酵を行い、食品素材を作る方法(例えば、特許文献1参照)、摘果した桃を塩漬けし、産毛を除去後、水洗いし、これに酒粕、味噌、醤油、ミリンなどを加えて発酵させ漬物を作る方法(例えば、特許文献2参照)、黒麹菌を用いて、柑橘類の果実又はその一部からなる発酵原料を微生物発酵処理する方法(例えば、特許文献3参照)などが報告されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、野菜や果実が本来持っている効果を向上させること、または新たな効果の開発としては十分でなく、より有効な製造方法が望まれていた。
【特許文献1】特開平2−65758号公報
【特許文献2】特開昭56−39742号公報
【特許文献3】特開2003−102430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、麹菌を用いた植物原料の麹菌による発酵製品を得ることについて鋭意検討を重ねた結果、原料である植物素材、果汁又は野菜汁に酒粕若しくは焼酎蒸留残渣又はそれらの抽出物を添加することにより、これまで発酵不能とされていた素材においても、発酵可能となり、各種食品及び機能性物質を得ることができると共に、新たな発酵組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、野菜、果実又は薬草類、草根、木皮、その他請求項1の素材を発酵により、新たな発酵組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、野菜や果実その他を、麹菌で発酵させる際、酒粕その他の発酵飲食物製造工程のもろみ、ろ過物及び/または蒸留残渣それらの乾燥物及び/または抽出物を加えることにより、新たな発酵組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、野菜、果実等に酒粕その他の発酵飲食物製造工程のもろみ、ろ過物及び/または蒸留残渣それらの乾燥物及び/または抽出物を加え、麹菌で発酵させた発酵組成物等を提供するものである。
本発明における「酒粕」とは、「もろみ」から清酒を搾り取った後の残りかすをいう。すなわち、酵母を大量に培養した酒母に蒸米と麹を加えて、約3週間アルコール発酵を行って、発酵産物である「熟成もろみ」とし、これより清酒を絞った残りが酒粕である。清酒等の醸造において産出される固形分であり、例えば、清酒粕、焼酎粕、果実酒粕、泡盛粕、ビール粕、またはその他発酵物の搾り粕が挙げられる。
「液化酒粕」は、原料米を酵素処理することにより、予め液化させて仕込んだ清酒の粕であり、普通酒粕、吟醸酒粕に比べて滴定酸度が高く、全糖量が少なく、タンパク質量が多いという特徴を有する。但し、精米した米を原料とすることから、米糠、胚芽等は除去されており、それらに特有の成分は含まれていない。一方、焼酎蒸留残渣は、焼酎もろみを蒸留してアルコール分を除いたもので、液状でアルコール分はほとんど無く(1%以下)、栄養的には、酒粕とほとんど同様なものである。
本発明においては、斯かる酒粕や焼酎蒸留残渣をそのまま使用することもできるが、それらの抽出物を使用することもできる。
【0008】
また、本発明は当該発酵組成物を含有する食品、飲料または医薬品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明発酵組成物は、野菜や果実がそれぞれ持っている効果を向上させ、また新たな効果も期待できる発酵組成物であり、食品、飲料または医薬品として利用できる。
具体的には、抗酸化活性、抗アレルギー活性、抗糖尿病活性、抗高血圧活性機能を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における、野菜や果実等は、特に限定されないが、可食部として用いられる部分(例えば、根、葉、茎、根茎、花、実、種、芽、むかご、またはスプラウト等)、間引かれた野菜や摘果された果実、あるいはジュース製造の際生じる搾汁残渣に対しても用いることができる。
【0011】
本発明における、野菜、穀類、豆類、根茎類等(ハーブ、薬草類、草根、木皮、魚介類、畜産物およびその残渣)は、特に限定されるものではないが、例えば、キャベツ、ブロッコリー、白菜などのアブラナ科植物、レタスなどのキク科植物、セロリなどのセリ科植物、シソなどのシソ科植物、シイタケ、マツタケなどのキノコ類、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科植物、キュウリ、カボチャ、ニガウリ、ズッキーニ等のウリ科植物、ショウガ、ウコン等のショウガ科植物、タマネギ、ニンニクなどのユリ科植物等が挙げられ、可食部を中心に広く用いることができる。
【0012】
本発明における植物、果実、穀類、イモ類等は、特に限定されるものではないが、柑橘類、リンゴ、梨、ブドウ、バナナ等が挙げられるが、好ましくは柑橘類である。
【0013】
本発明における柑橘類は、特に限定されるものではないが、例えば、ミカン(Citrusunshiu)、レモン(C.limon)、オレンジ(C.sinensis)、ライム(C.aurantifolia)、ユズ(C.junos)、グレープフルーツ(C.paradisi)、ナツダイダイ(C.natsudaidai)、ダイダイ(C.aurantium)、ハッサク(C.hassaku)、伊予柑(C.iyo)、かぼす(C.sphaerocarpa)、ベルガモット(C.bergamia)、シークワーサー(C.depressa)、タンカン(C.tankan)、タンゴール(C.nobilis)等が挙げられ、全果、外皮、可食部等が用いられる。これらの果実は、未熟果物、熟果物または摘果物であってもよい。
【0014】
酒粕を添加する量は、発酵させる対象によって適宜調整することができるが、野菜及び/または果実に対して、0.1〜99重量%、好ましくは、10〜30重量%、さらに好ましくは、15〜25重量%である。
【0015】
本発明における麹菌とは、特に限定されるものではないが、例えば黄麹菌(Aspergillussryzae)、黒麹菌(Aspergillus awamori,A.nigerなど)、紅麹菌(Monascus purpurerssoryza),M.pilosusなど)等が挙げられるが、麹菌に限らず、その他の菌類でも適応可能である。
【0016】
本発明の発酵組成物の製造方法としては、発酵させる対象、麹菌の種類によって適宜調整することができるが、例えば、野菜または果実等を細かくし、野菜、果実等に対して適量の酒粕と混合し、麹菌が生育するのに適した温度(20℃〜40℃)や水分量に調整する。その後、野菜、果実等に対して、麹菌を接種し、20℃〜40℃、2〜3日間発酵させ、麹様の発酵組成物が得られる。そのまま使用することもできる。又、必要に応じては、その発酵組成物に対し、適当量の水を加え、必要とあれば糖類(例えば、ブドー糖、上白糖、グラニュー糖、三温糖、和三盆、黒砂糖、糖蜜など)を加えた後、そのまま又は殺菌後、酵母菌、乳酸菌等を加える等をして、それぞれの目標とする食品、酒類とする為に、さらに20℃〜40℃にして2〜6週間発酵させる。その後その製品形態に応じて、そのまま液状、ペースト状、ろ過、乾燥、粉末化、製剤化を行う。
【0017】
本発明による発酵組成物は、それ単独でまたは他の成分と組み合わせて、食品や飲料、医薬品とすることができる。
【0018】
食品として用いる場合の形態としては、液状食品、固形食品、ゲル状食品等あらゆる食品形態とすることが可能であり、例えば、粉末、カプセル、顆粒、タブレット、グミ、ゼリー、アイスクリーム、ドリンク等の形態が挙げられるが、好ましくは、加工が容易なカプセルである。このような食品は慣用方法に従って加工することができる。
【0019】
本発明の食品は、癌、動脈硬化、高血圧、糖尿病、アレルギーの予防や治療、疲労回復、健康維持に利用することができる。
【0020】
また本発明による発酵組成物は、製剤上許容される担体を加えて、医薬とすることができる。
本発明により得られる機能性素材を種々の用途に用いることができる。1の用途としては本発明の機能性素材を食品中に用いて種々の機能性食品あるいは健康食品を得ることができる。例えば、そのまま、あるいは液状、ペレット、粉末、顆粒などの形態として使用してもよく、食品添加物、調味料、ふりかけとして使用してもよい。また、本発明の機能性素材を食材中に含有せしめて使用してもよい。
さらなる用途としては、本発明の機能性素材を医薬組成物中に用いることができる。一般的には、かかる医薬組成物は本発明の機能性素材のほかに医薬用担体または賦形剤を含むであろう。その形態も特に限定されず、例えば、固体(錠剤、粉末、顆粒等)、半固体(パスタ等)、液体(溶液、懸濁液、エマルジョン等)、あるいはカプセルに封入されたものであってもよい。これらの剤形のための担体または賦形剤も当業者によく知られており、適宜選択されうる。
もう1つの用途としては本発明の機能性素材を入浴剤または化粧組成物中に用いることができる。本発明の機能性素材は糖質の含有量が少ないので、皮膚へのべたつきが少ないという特徴を有する。したがって、本発明は本発明の機能性素材のほかに化粧品常用される担体、例えば、水、グリセリン、アルコール類、油脂などを含有するものであり、さらに香料、着色料、防腐剤などを適宜添加してもよい。本発明の機能性素材を含む化粧組成物の形状は特に限定されず、例えばローション、乳液、クリーム、軟膏などの形状とすることができる。
【0021】
本発明による医薬品の剤形は特に限定されないが、例えばカプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、トローチ剤、散剤および顆粒剤等が挙げられるが、好ましくは製剤化が容易なカプセル剤である。
【0022】
本発明の医薬品は、癌、動脈硬化、高血圧、糖尿病、アレルギーの予防剤や治療剤、または滋養強壮剤等に利用することができる。
【0023】
本発明による好ましい態様としては、柑橘類及び酒粕に、麹菌を接種し発酵させた発酵組成物が挙げられる。
【0024】
以下、実施例により本発明を説明するがこれらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0025】
発酵組成物の調製
摘果したレモンの全果500gを、ブレンダーで破砕し、これに清酒粕を100g加え、さらに黄麹菌5gもしくは黒麹菌30g加えて、均一にした後、37℃、10日間発酵させ、麹様の発酵組成物を得た。これに、滅菌水を総重量が900gとなるよう加え、更に37℃、3週間発酵させた。その後、黒砂糖水(100g−黒糖/50ml)をBrixが約20gとなるように添加し、37℃、約3週間発酵させた。この液を綿布にてろ過し、ろ過液を凍結乾燥して、黄褐色の発酵組成物を得た。
【実施例2】
【0026】
カプセル剤の調製
実施例1にて調整した発酵組成物を、1カプセル中に、160mg、セルロースを36mg、ショ糖エステル4mg含むように調製し、ゼラチン硬カプセルに充填した。その後40℃、1ヶ月間保存試験を行ったが、カプセル形状に変化はなく、内容物も変色等変化は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の発酵組成物は、癌、動脈硬化、高血圧、糖尿病、アレルギーの予防や治療、疲労回復、健康維持に利用することができ、食品または医薬品、入浴剤等として提供することができる。
【0028】
表1から6は麹菌発酵したものを用いた機能性試験結果である。
表1から2、ソバにおいては、DPPH、SOD、ヒアルロニダーゼ、ACEについて市販商品の特定保健用食品より数倍から数10倍のIC50値を示した。
【表1】


表2以下はこの参考値を表1と同様に参考値とした。
【表2】

表3は梨について、SODにおいての活性が高かったことを示す。
【表3】


表4は、りんごについてはDPPH、SOD、梨についてはSOD、ヒアルロニダーゼが高かったことを示す。ヤーコンはSOD、抗アレルギー(ヒアルロニダーゼ)について高かった。
【表4】

表5は、はと麦がSOD、キャベツがSOD、大根葉がSODについて高かった。
【表5】

なお、上記に記載していない魚介類や畜産物(牛肉や豚肉等)のデータにおいても、抗酸化活性、抗アレルギー活性、抗糖尿病活性、抗高血圧活性等に向上が見られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜、果実、豆類、根茎類、キノコ類、海藻類、ハーブ、薬草類、草根、木皮、魚介類、畜産物およびその残渣、その他食品素材の1種あるいは2種以上に酒粕、その他の発酵飲食物製造工程のもろみ、ろ過物及び/または蒸留残渣それらの乾燥物及び/または抽出物を加え、麹菌で発酵させた発酵組成物。
【請求項2】
麹菌が、黄麹菌、黒麹菌、紅麹菌その他の麹菌の1種あるいは2種以上である請求項1記載の発酵組成物。
【請求項3】
野菜が、アブラナ科植物、キク科植物、セリ科植物、シソ科植物、キノコ類、ナス科植物、ウリ科植物、ショウガ科植物、ユリ科植物の1種または2種以上である請求項1記載の発酵組成物。
【請求項4】
果実が、柑橘類である請求項1記載の発酵組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物を含有する食品及び飲料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物を含有する医薬品。

【公開番号】特開2008−183004(P2008−183004A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44592(P2007−44592)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(507060103)
【出願人】(507060136)
【出願人】(000190596)
【出願人】(507060147)
【Fターム(参考)】