説明

発電システム

【課題】既存の発電システムを大幅に改造することなく、定期検査などで比較的短期間停止した後、再起動する際に行うウォーミング時の蒸気を用いて発電することができる発電システムを提供する。
【解決手段】
蒸気管60に接続される排出管70を設けると共に、排出管70に復水器40に接続されるバイパス管80を設け、蒸気管60の温度と蒸気管60内の圧力に応じて、それらの管に設けられた弁61、71、81を制御して、蒸気管の圧力が所定の圧力以上になった場合に、蒸気管60内の蒸気を排出管70及びバイパス管80を通して復水器に流す。その際に、バイパス管80に設けられた発電手段90により発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンを備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンを備えた発電システムを定期点検などで停止させた後、再起動する際には、発電システムをウォーミングする必要がある。例えば、図3に示す発電システム500をウォーミングする場合には、ボイラ510によって生成された蒸気を、ボイラの上部に接続された蒸気管560内に流し、蒸気管560を暖めるようにしている。このとき、蒸気管560の下流側に設けられたMSV(主塞弁)561は閉状態となっており、蒸気管560内の蒸気は蒸気タービン520に流れ込まないようになっている。一方、蒸気管560の下流側には、MSV上部ドレン弁571が設けられた排出管570が接続されており、蒸気管560内の蒸気を外部(例えばブロータンク)に放出することができるようになっている。ここで、蒸気管560内の蒸気を外部に放出する場合には、排出管570に設けられたMSV上部ドレン弁571は開状態となっているが、蒸気管560が所定の温度になって蒸気管560内の蒸気を蒸気タービン520に流入させる場合には、MSV561が開状態になると同時にMSV上部ドレン弁571が閉状態となる。このようなウォーミングを、発電システム500を再起動する際に毎回行っていたが、ウォーミングには通常3〜4時間を要していた。
【0003】
したがって、ウォーミングを行っている間、すなわち蒸気管560が所定の温度になるまでの間は、ボイラ510によって生成された蒸気は発電などに利用されることなく、外部に排出されることになり、この蒸気の熱を無駄にしていたという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、発電システムを構成する蒸気タービンのウォーミングをするための加熱媒体を、蒸気管を含む主蒸気供給系統に対し分岐または独立して生成するようにして蒸気タービンの起動時間の短縮化を図ったコンバインドサイクル発電システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−331610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したコンバインドサイクル発電システムを構築するためには、発電システムを大幅に改造する必要があり、多額の費用と時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑み、既存の発電システムを大幅に改造することなく、定期検査などで比較的短期間停止した後、再起動する際に行うウォーミング時の蒸気を用いて発電することができる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、熱源からの熱によって蒸気を生成する蒸気発生部と、前記蒸気によって作動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気を復水する復水器と、前記蒸気発生部と前記蒸気タービンとを接続して前記蒸気発生部で生成された蒸気を前記蒸気タービンに送るための蒸気管と、前記蒸気管の途中に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の前記蒸気タービンへの流入を制御する第1の流路制御手段と、前記蒸気管の前記第1の流路制御手段より上流側に設けられて、前記蒸気管の温度及び前記蒸気管内の圧力を測定する温度・圧力測定手段と、前記蒸気管の前記第1の流路制御手段より上流側部分に接続され、前記蒸気管内の蒸気を外部に排出するための排出管と、前記排出管に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の外部への排出を制御する第2の流路制御手段と、前記排出管の前記第2の流路制御手段より上流側部分と前記復水器とを接続して、前記蒸気管内の蒸気を復水器に送るためのバイパス管と、前記バイパス管に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の復水器への流入を制御する第3の流路制御手段と、前記バイパス管の前記第3の流路制御手段より下流側に設けられて、前記バイパス管内を流れる蒸気により発電する発電手段とを具備し、前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管内の圧力が所定の圧力より低い場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記排出管を通って外部に排出されるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御され、前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度が所定の温度より低く、かつ前記蒸気管内の圧力が所定の圧力以上の場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記排出管及び前記バイパス管を通って前記復水器に送られるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御され、前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度が所定の温度以上の場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記蒸気タービンに送られるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御されることを特徴とする発電システムにある。
【0009】
ここで、蒸気管の第1の流路制御手段より上流側部分に接続されるとは、第1の流路制御手段を介して蒸気管に接続されることを含み、排出管の第2の流路制御手段より上流側部分と復水器とを接続するとは、第2の流路制御手段を介して排出管と復水器とを接続することを含むものとする。
【0010】
かかる第1の態様では、定期検査などで比較的短期間停止した後、再起動する際に行うウォーミング時の蒸気を用いて発電することができるので、結果として発電システムのプラント効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記温度・圧力測定手段及び前記第1〜第3の流路制御手段のそれぞれに接続されて、前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度と前記蒸気管内の圧力とに基づいて前記第1〜第3の流路制御手段を制御する流路制御部をさらに具備することを特徴とする第1の態様に記載の発電システムにある。
【0012】
かかる第2の態様では、より容易に発電システムを制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発電システムによれば、定期検査などで比較的短期間停止した後、再起動する際に行うウォーミング時の蒸気を用いて発電することができるので、結果としてプラント効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る発電システムを示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る発電システム1は、蒸気を生成する蒸気発生部であるボイラ10と、ボイラ10で生成された蒸気により回転駆動させられる蒸気タービン20と、蒸気タービン20の回転駆動力により発電を行う発電機30と、蒸気タービン20の排気を冷却して復水する復水器40と、復水器40内の水を再度ボイラ10に供給する給水ポンプ50とを具備している。
【0016】
そして、ボイラ10と蒸気タービン20との間にはボイラ10で生成された蒸気を蒸気タービン20へと導く蒸気管60が設けられている。この蒸気管60の下流側には、第1の流路制御手段であるMSV(主塞弁)61が設けられており、蒸気管60内の蒸気が蒸気タービン20に流れ込むのを制御することができるようになっている。また、この蒸気管60のMSV61よりも上流側には温度・圧力測定手段62が設けられている。なお、温度・圧力測定手段62としては、例えば市販されている温度計及び圧力計を組み合わせたものなどが挙げられる。
【0017】
蒸気管60のMSV61及び温度・圧力測定手段62より上流側の部分には、排出管70が接続されている。そして、排出管70の下流側には、第2の流路制御手段であるMSV上部ドレン弁71が設けられており、蒸気管60内の蒸気が排出管70を通ってブロータンクに排出されるのを制御することができるようになっている。
【0018】
排出管70のMSV上部ドレン弁71より上流側の部分には、復水器40に接続されたバイパス管80が接続されている。そして、バイパス管80には、上流側から順に、第3の流路制御手段である流路切替弁81と、発電手段90とが設けられている。流路切替弁81は、蒸気管60内の蒸気が排出管70とバイパス管80とを通って復水器40に流れ込むのを制御することができる。そして、発電手段90は例えばエネルギーダンパなどのように蒸気を用いて発電することができる装置であり、バイパス管80を通る蒸気から発電することができる。
【0019】
ここで、流路切替弁81はさらに流路制御部85に接続されている。流路制御部85は、上述したMSV61、温度・圧力測定手段62、MSV上部ドレン弁71及び流路切替弁81に接続されており、温度・圧力測定手段62により測定される蒸気管60の温度と蒸気管60内の圧力とに基づいて各弁の開閉状態を制御する制御信号をそれぞれ送信し、各弁の開閉状態を制御することができるようになっている。具体的には、蒸気管60に蒸気を流し始めたような状態の場合、すなわち蒸気管60内の圧力が所定の圧力よりも低い場合には、流路制御部85はMSV61及び流路切替弁81を閉状態にすると共にMSV上部ドレン弁71を開状態にする制御信号を各弁に送信する。この場合には、蒸気管60内の蒸気は排出管70を通ってブロータンクに流れることになる。
【0020】
そして、蒸気管60にある程度蒸気を流し続けたような状態の場合、すなわち蒸気管60の温度が所定の温度以下であり、かつ蒸気管60内の圧力が所定の圧力よりも高くなった場合には、流路制御部85はMSV61及びMSV上部ドレン弁71を閉状態にすると共に流路切替弁81を開状態にする制御信号を各弁に送信する。この場合には、蒸気管60内の蒸気は排出管70及びバイパス管80を通って復水器40に流れることになる。
【0021】
さらに、蒸気管60が暖まった場合、すなわち蒸気管60の温度が所定の温度以上になった場合には、流路制御部85はMSV61を開状態にすると共にMSV上部ドレン弁71及び流路切替弁81を閉状態にする制御信号を各弁に送信する。この場合には、蒸気管60内の蒸気は蒸気タービン20に流れ込むことになる。
【0022】
なお、流路制御部85としては、例えば上記機能を有する一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機が挙げられる。また、各弁の状態を変更する際の条件となる蒸気管60の温度及び蒸気管60内の圧力は、発電システム1を構成する各構成要素に応じて適宜変更することができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る発電システム1の動作について説明する。発電システム1は、定期検査などで比較的短期間停止した後、再起動する際に行うウォーミングで利用されるものである。したがって、以下では、蒸気管60が暖められていない状態を前提として説明する。
【0024】
まず、ボイラ10を稼動させて蒸気を生成し、その蒸気を蒸気管60に流す。このとき、蒸気管60の温度は低く、かつ蒸気管60内の圧力も低いので、流路制御部85は制御信号を各弁に送信して、MSV61及び流路切替弁81を閉状態にすると共にMSV上部ドレン弁71を開状態にする。その結果、蒸気管60内の蒸気は排出管70を通ってブロータンクに流れる。
【0025】
そして、そのままボイラ10により生成された蒸気を蒸気管60に流し続けると、蒸気管60の温度が上昇すると共に、蒸気管60内の圧力が上昇する。そして、蒸気管60の圧力が所定の圧力を超えると、流路制御部85は各弁に制御信号を送信して、MSV61及びMSV上部ドレン弁71を閉状態にすると共に流路切替弁81を開状態にする。その結果、蒸気管60内の蒸気は排出管70及びバイパス管80を通って復水器40に流れる。この際に、発電手段90により、バイパス管80を通る蒸気から発電することができる。
【0026】
さらに、ボイラ10により生成された蒸気を蒸気管60に流し続けると、蒸気管60の温度がさらに上昇する。そして、蒸気管60の温度が所定の温度を超えると、流路制御部85は各弁に制御信号を送信して、流路制御部85はMSV61を開状態にすると共にMSV上部ドレン弁71及び流路切替弁81を閉状態にする。その結果、蒸気管60内の蒸気は蒸気タービン20に流れ込み、通常どおり発電機30によって発電されることになる。
【0027】
以上、説明したように、従来ウォーミングで利用された高品質の蒸気は単に外部(ブロータンク)に排出されていたが、本実施形態に係る発電システム1によれば、その高品質の蒸気を利用して発電することができると共に、その蒸気を回収することができるので、結果として発電システムのプラント効率を向上させることができるという効果を奏する。
【0028】
(実施形態2)
実施形態1では、排出管70を蒸気管60のMSV61より上流側の部分に接続させたが、図2に示すように、MSV61Aを介して排出管70を蒸気管60に接続するようにしてもよい。このようにしても、実施形態1と同様の効果が得られる。なお、このように発電システム1Aを構成する場合には、MSV61Aは蒸気管60内の蒸気の流入先を蒸気タービン20又は排出管70の何れか切り替えることができる切替弁でなければならないのはいうまでもない。
【0029】
また、MSV上部ドレン弁を介してバイパス管を排出管に接続するようにしてもよい。この場合も同様に考えることができる。
【0030】
(他の実施形態)
実施形態1及び2では、温度・圧力測定手段62は、排出管70が接続されている部分とMSV61との間に設けられていたが、蒸気管60のMSV61よりも上流側に設けられていればよい。
【0031】
また、実施形態1及び2では、熱源としてボイラ10を用いたが、蒸気を生成することができるものであれば特に限定されない。
【0032】
さらに、実施形態1及び2では、流路制御部85を用いて各弁を制御するようにしたが、流路制御部85を設けず、作業員が各弁を制御してもよいのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係る発電システムの概略図である。
【図2】実施形態2に係る発電システムの概略図である。
【図3】従来の発電システムの概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1、1A、500 発電システム
10、510 ボイラ
20、520 蒸気タービン
30、530 発電機
40、540 復水器
50、550 給水ポンプ
60、560 蒸気管
61、61A、561 MSV
62 温度・圧力測定手段
70、570 排出管
71、571 MSV上部ドレン弁
80 バイパス管
81 流路切替弁
85 流路制御部
90 発電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの熱によって蒸気を生成する蒸気発生部と、
前記蒸気によって作動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの排気を復水する復水器と、
前記蒸気発生部と前記蒸気タービンとを接続して前記蒸気発生部で生成された蒸気を前記蒸気タービンに送るための蒸気管と、
前記蒸気管の途中に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の前記蒸気タービンへの流入を制御する第1の流路制御手段と、
前記蒸気管の前記第1の流路制御手段より上流側に設けられて、前記蒸気管の温度及び前記蒸気管内の圧力を測定する温度・圧力測定手段と、
前記蒸気管の前記第1の流路制御手段より上流側部分に接続され、前記蒸気管内の蒸気を外部に排出するための排出管と、
前記排出管に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の外部への排出を制御する第2の流路制御手段と、
前記排出管の前記第2の流路制御手段より上流側部分と前記復水器とを接続して、前記蒸気管内の蒸気を復水器に送るためのバイパス管と、
前記バイパス管に設けられて、前記蒸気管内の蒸気の復水器への流入を制御する第3の流路制御手段と、
前記バイパス管の前記第3の流路制御手段より下流側に設けられて、前記バイパス管内を流れる蒸気により発電する発電手段とを具備し、
前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管内の圧力が所定の圧力より低い場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記排出管を通って外部に排出されるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御され、
前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度が所定の温度より低く、かつ前記蒸気管内の圧力が所定の圧力以上の場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記排出管及び前記バイパス管を通って前記復水器に送られるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御され、
前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度が所定の温度以上の場合は、前記蒸気管内の蒸気が前記蒸気タービンに送られるように前記第1〜第3の流路制御手段が制御されることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記温度・圧力測定手段及び前記第1〜第3の流路制御手段のそれぞれに接続されて、前記温度・圧力測定手段により測定された前記蒸気管の温度と前記蒸気管内の圧力とに基づいて前記第1〜第3の流路制御手段を制御する流路制御部をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−7954(P2009−7954A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168171(P2007−168171)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】