発電システム
【課題】地熱を用いる発電システムは、地熱が得られる地域でないと使用できない。
【解決手段】圧縮機を備えるヒートポンプと、前記ヒートポンプにより加熱され気化された前記作動媒体の持つエネルギによって動力が与えられるタービンの動力により発電電力を供給する発電機と、タービンからの作動媒体を送出する循環手段と、制御部とを備え、圧縮機駆動用電力と循環手段駆動用電力と制御部用の制御部用電力との総和である総和電力としての電力が供給され、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される真発生電力獲得条件で運転される。
【解決手段】圧縮機を備えるヒートポンプと、前記ヒートポンプにより加熱され気化された前記作動媒体の持つエネルギによって動力が与えられるタービンの動力により発電電力を供給する発電機と、タービンからの作動媒体を送出する循環手段と、制御部とを備え、圧縮機駆動用電力と循環手段駆動用電力と制御部用の制御部用電力との総和である総和電力としての電力が供給され、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される真発生電力獲得条件で運転される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を加熱気化する外気熱交換器と前記冷媒を圧縮する圧縮機と圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と前記作動媒体熱交換器からの前記冷媒を減圧回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプと、前記ヒートポンプにより加熱された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって動力が与えられるタービンと前記タービンの排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体熱交換器に送出する循環手段と前記タービンの動力により発電電力を供給する発電機を備える作動媒体発電サイクル部と、前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部とを備え、前記圧縮機の駆動用電力と前記循環手段の駆動用電力と前記制御部へ供給される制御部用電力との総和である総和電力としての電力が供給され、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される真発生電力獲得条件で運転される発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から効率よく発電を行う発電システムが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
特許文献1、特許文献2においては、発電システムの設備コストを低く抑えて熱源エネルギの利用効率,発電出力の向上が図れるように改良した発電システム、および、膨張効率(動力変換効率)が向上したスクリュータービン発電装置の構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−221961号公報
【特許文献2】特開平09−088502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2の構成により熱源エネルギの利用効率,発電出力の向上が図れるものであるが、以下の課題がある。
【0006】
たとえば、熱源エネルギとして地熱を用いる場合は、地熱が得られる地域でないと使用できない。
因みに、発電機を駆動するタービンの膨張効率(動力変換効率)を向上しても、0.6〜0.7程度の効率しか得られないから、熱源エネルギを得るために当該システム外からの電力や燃料供給によるエネルギによって賄われる場合には、1を超えるシステム効率が得られない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、地域によらず1を超えるシステム効率が得られる発電システムの提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、冷媒加熱流路を備えシステムの外部からの熱を吸収し冷媒加熱流路を流れる冷媒に伝え冷媒を気化する外気熱交換器と、前記冷媒加熱流路の出口からの前記冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と、作動媒体を加熱した後に前記作動媒体熱交換器から排出される前記冷媒を回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と、を備え、前記外気熱交換器と前記圧縮機と前記作動媒体熱交換器の冷媒流路と前記回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプを構成し、
さらに、導入口と排出口を具備するタービンを備え、前記作動媒体熱交換器の作動媒体流路を流れる前記作動媒体が前記ヒートポンプによる加熱により気化され、気化された後に前記作動媒体流路の出口から排出される前記作動媒体が前記導入口に導入され前記排出口から排出されることで、気化された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって前記タービンに動力が与えられ、前記動力により発電を行う発電機を備え、前記排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する循環手段を備え、前記作動媒体流路と前記タービンと前記循環手段と前記発電機とからなる作動媒体発電サイクル部を構成し、
前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部を備え、
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力としての電力が供給され、
前記圧縮機駆動電力と前記循環手段駆動電力と前記制御部用電力との総和である総和電力より、前記発電機により発電される発電電力が大きくなるように設定される運転条件である真発生電力獲得条件で運転されるように構成されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、この発電システムを稼動するためにこの発電システムにおいて消費される電力より大きな発電電力が得られるように前記運転条件が設定されることになるものである。
【0010】
本発明の第1特徴構成によれば、実質的に外部からの電力や燃料の供給なしで、特に高温でない外気などであっても、システムの外部からの熱を電力に変換できるから、特別な地域的な制約なしに、また、地球温暖化ガスを排出することなく電気エネルギを得ることができるようになる。また、冷媒としてはヒートポンプに適した冷媒を用い、そして、作動媒体としては作動媒体発電サイクル部に適した作動媒体を用い、冷媒と作動媒体としてそれぞれ異なる物質を用いることができるから最適な発電システムが構成しやすい。
【0011】
因みに、この発明による発電システムは、決して自然法則に反するような永久機関ではなく、ソーラーパネルが太陽光のエネルギを電気のエネルギに変換するものであるのに対し、この発明による発電システムは、大気熱のエネルギを電気のエネルギに変換する技術を提供するものである。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給される点を特徴とする。
【0013】
本発明の第2特徴構成によれば、上記の第1特徴構成による効果に加えて、前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給されるから、当該システム外部からの電力供給を必要としない独立した発電システムとすることができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1特徴構成、または、第2特徴構成に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が液体で、前記循環手段がポンプである点を特徴とする。
【0015】
本発明の第3特徴構成によれば、上記の第1特徴構成、または、第2特徴構成による効果に加えて、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行わないから、作動媒体発電サイクル部の効率を高いものとすることができるので発電電力と総和電力の差を大きくすることができ、システム外において利用できる前記電気エネルギを大きくすることができる。
【0016】
つまり、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体である場合には、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に気体である前記作動媒体を圧縮することになり前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行うことになり、ここで作動媒体が得た熱力学的エネルギは前記タービンにおいて1未満の変換効率で動力に変換されて、この動力が前記発電機によって1未満の変換効率で電力に変換され、この電力により循環手段が駆動されるものであるから、作動媒体発電サイクル部の効率を低下させる原因となり、発電電力と総和電力の差が小さくすることになり、システム外において利用できる前記電気エネルギが小さくなることになる。
【0017】
一方、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が非圧縮性流体である液体の場合には、前記循環手段は前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出するために加圧しても、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行わないから、作動媒体発電サイクル部の効率を高いものとすることができるので発電電力と総和電力の差を大きくすることができ、システム外において利用できる前記電気エネルギを大きくすることができるものとなる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、上記した第3特徴構成に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備える点を特徴とする。
【0019】
本発明の第4特徴構成によれば、上記の第3特徴構成による効果に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えるから、前記循環手段としてのポンプの入口側に流入する前記作動媒体を十分に液化することができ、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0020】
つまり、前記循環手段としてのポンプの入口側に流入する前記作動媒体が十分に液化されず作動媒体の気相を含む場合には、前記循環手段としてのポンプにおいてキャビテーションに起因して揚程が低下することが考えられ、揚程が低下した場合には、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出が確実に行えない不安定な状態に至り、正常に発電できない事態となってしまうこととなるが、このようなことが防止できるものになる。
【0021】
要するに、第4特徴構成によれば、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えることで、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出を確実に行えるから、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出が確実に行えない不安定な状態に至り、正常に発電できない事態となってしまうことが防止できるものとなる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、上記した第4特徴構成に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を、前記冷却部において、前記回収経路を流れる冷媒により冷却する点を特徴とする。
【0023】
本発明の第5特徴構成によれば、上記の第4特徴構成による効果に加えて、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において、十分低い温度である前記回収経路を流れる冷媒により冷却することができる。
【0024】
つまり、前記ヒートポンプにおいて、前記回収経路を流れる冷媒は減圧することになるが、このとき冷媒の温度は十分低い温度に低下することになり、この前記回収経路を流れる十分低い温度に低下した冷媒により、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において冷却できるものとなる。
【0025】
また、前記排出口から排出される作動媒体を前記回収経路を流れる冷媒により冷却する際に前記排出口から排出される作動媒体の熱エネルギは冷媒に移動することになり、効率の良い発電システムの稼働が可能になる。
【0026】
すなわち、前記タービンにおいて発電用の動力として有効に利用できなかった、低温である作動媒体の熱エネルギを前記ヒートポンプで高温の熱エネルギへと変換するために有効に利用できることができる。
【0027】
要するに、第5特徴構成によれば、この十分低い温度に低下した前記回収経路を流れる冷媒により、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において好適に冷却でき、また、効率の良い発電システムの稼働が可能になるものとなる。
【0028】
本発明の第6特徴構成は、上記した第5特徴構成に加えて、前記回収経路を流れる冷媒が前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収した後に、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却する点を特徴とする。
【0029】
本発明の第6特徴構成によれば、上記の第5特徴構成による効果に加えて、冷媒が、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において冷却する前に前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収ことができるから、前記外気熱交換器における上記システムの外部からの熱と冷媒との温度差が大きいものとなり、上記ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなることで、さらに効率の良い発電システムとすることができる。
【0030】
つまり、冬場のように上記システムの外部からの熱の温度が低く、上記システムの外部からの熱の温度が、前記排出口から排出される前記作動媒体の温度より低い場合などは、上記システムの外部からの熱と冷媒との温度差が大きい状態で、冷媒が前記外気熱交換器においてシステムの外部からの熱を吸収して、冷媒の温度が多少上昇した後であっても、冷媒はさらに、前記冷却部において作動媒体からの熱を吸収することができるから、上記ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなり、効率の良い発電システムとなるのである。
【0031】
要するに、第6特徴構成によれば、上記システムの外部からの熱の温度が低い場合にも効率の良い発電システムとすることが可能となる。
【0032】
本発明の第7特徴構成は、上記した第1特徴構成、または第2特徴構成に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含む気体で、前記循環手段が作動媒体用圧縮機である点を特徴とする。
【0033】
本発明の第7特徴構成によれば、上記の第1特徴構成、または第2特徴構成による効果に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体を液体とすることができない場合にも、前記循環手段としての作動媒体用圧縮機により前記作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0034】
つまり、本願による発電システムにおいて、前記真発生電力獲得条件で運転されるように構成するためには、前記排出口における前記作動媒体の圧力や温度が、前記冷却部によっても十分液化できない場合が考えられる。
【0035】
このような場合には、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体であることに起因して、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に気体である前記作動媒体を圧縮することで前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行うことになり、発電電力と総和電力の差を小さくすることになるから、システム外において利用できる前記電気エネルギが小さくなるものの、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含むことで、前記真発生電力獲得条件で運転されるように構成できるものとなる。
【0036】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体であっても、前記作動媒体の液相を含むことで、前記真発生電力獲得条件で安定して運転されるように構成できるものとなる。
【0037】
本発明の第8特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記冷媒をCO2、前記作動媒体をブタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にした運転条件に設定されることを特徴とする。
【0038】
本発明の第8特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、COP(成績係数)が3以上のヒートポンプと発電効率が0.65程度(または0.65以上)の作動媒体発電サイクル部とにより、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体流量を小さい値とすることができるので、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0039】
つまり、前記冷媒をCO2(二酸化炭素)とすることでCOP(成績係数)が3以上のヒートポンプは得られるものであり、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとした場合には、作動媒体の持つ熱エネルギから電力への変換効率である発電効率が0.65となるように構成できるものであり、
前記作動媒体をブタンとして、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃とした場合には、ヒートポンプのCOP(成績係数)を3程度に維持しながら、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にし、前記作動媒体であるブタンが前記作動媒体熱交換器において気化しヒートポンプから熱エネルギが十分与えられた気体となるように構成することが可能であるから、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される運転条件で運転されるように構成できる。
【0040】
因みに、前記導入口温度を高くしすぎるとヒートポンプのCOP(成績係数)が低下し、前記導入口温度を低くしすぎると作動媒体が完全に気化されにくいからヒートポンプから熱エネルギが十分与えられ難いものとなり、作動媒体として沸点の低い物質を用いた場合には前記作動媒体熱交換器の入り口において作動媒体中に含まれる液相の割合が低下することで当該発電システムにおける効率の低下を招くことになる。
【0041】
また、前記導入口温度を低くしすぎると、作動媒体が完全に気化されたとしても作動媒体の単位質量当りの熱エネルギ搬送量が低下するから、作動媒体流量が大きい値となることに起因して、作動媒体熱交換器や循環手段の大型化を招く。
【0042】
要するに、第8特徴構成によれば、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0043】
本発明の第9特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記冷媒をCO2、前記作動媒体をペンタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略100℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にして、かつ、前記導入口圧力を前記排出口の圧力より略0.6MPa高くした運転条件に設定されることを特徴とする。
【0044】
本発明の第9特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、COP(成績係数)が3程度のヒートポンプと発電効率が0.65程度の作動媒体発電サイクル部とにより、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体流量を小さい値とすることができるので、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0045】
要するに、第9特徴構成によれば、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができる。
【0046】
本発明の第10特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第9特徴構成のいずれかに加えて、前記作動媒体流路から前記循環手段への前記作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備する点を特徴とする。
【0047】
本発明の第10特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第9特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記作動媒体熱交換器において前記ヒートポンプによる加熱により上昇した前記作動媒体の圧力が前記循環手段の吐出圧力よりも高くなった場合に、前記作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるものとなる。
【0048】
本発明の第11特徴構成は、上記した第2特徴構成〜第10特徴構成のいずれかに加えて、前記発電電力を蓄電するバッテリーを備え、前記バッテリーから前記総和電力が供給される点を特徴とする。
【0049】
本発明の第11特徴構成によれば、上記した第2特徴構成〜第10特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記発電電力と前記総和電力の差の電力を蓄電しておくことで、本発電システムに対する負荷が過渡的に上昇した場合にも安定して本発電システム外部に電力供給ができるものとなる。また、当該発電システムの起動時に外部商用電源との接続などを必要としない、自力始動可能な発電システムが構成できるものとなる。
【0050】
また、電気自動車に本発電システムを搭載する場合に、本発電システムのバッテリーと電気自動車のバッテリーとを共用できるから、省資源であり低コストに構成可能となる。
【0051】
本発明の第12特徴構成は、上記した第2特徴構成〜第11特徴構成のいずれかに加えて、前記総和電力の電力系統および前記発電電力の電力系統と外部商用電源とを結合するパワーコンディショナーを設け、外部商用電源と逆潮流自在に接続される点を特徴とする。
【0052】
本発明の第12特徴構成によれば、上記した第2特徴構成〜第11特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記発電電力が前記総和電力より大きいときには余剰電力を逆潮流により外部商用電源に回生することで外部商用電源側における発電負荷が減少され、本発電システムに対する負荷が過渡的に上昇した場合には商用電源から安定した電力供給が可能となる構成とすることができる。また、バッテリーの搭載の有無に関わらず安定な発電システムが構成できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態における構成を示す図
【図2】別実施例における構成を示す図
【図3】別実施例における構成を示す図
【図4】第1実施形態における冷媒の状態説明図
【図5】第1実施形態における作動媒体の状態説明図
【図6】実施例における発電機の効率を示す図
【図7】ヒートポンプのCOPを示す図
【図8】第1実施形態における作動媒体のポンプ流量を示す図
【図9】第1実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図10】第1実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図11】第1実施形態での外気温17℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図12】第2実施形態における冷媒の状態説明図
【図13】第2実施形態における作動媒体の状態説明図
【図14】第2実施形態における作動媒体のポンプ流量を示す図
【図15】第2実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図16】第2実施形態における構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0054】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明において、i−ペンタン(イソペンタン)を作動媒体とし、スクリュータービンを用いた場合である第1実施形態を説明する。
なお、以下の説明において圧力を表す場合、絶対圧とは真空を基準にした絶対圧力を表し、ゲージ圧とは大気圧を基準にした相対圧力を表し、このとき基準とする大気圧としては標準気圧(1atm)を用いず、以下の説明において極力端数のない数値により説明できるように便宜的に、基準とする大気圧を絶対圧0.1MPaとしたときの相対圧力で表している。
【0055】
図1、図4に示すように、
H1)低温・低圧(例えば0℃、絶対圧3MPa)の冷媒(本実施例ではCO2)が、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になる。(本実施例ではヒートポンプのCOPが低下する冬場を想定しており、0℃の冷媒が7℃の気体になる。)
【0056】
なお、本実施例における上記CO2は、後述する作動媒体を加熱する用途に使用することから熱媒と称することも考えられるところ、ヒートポンプにおいて一般的に用いられている用語を用いることとし、本願では、上記CO2を冷媒と称しており、本願明細書における冷媒という語句を熱媒という語句に置き換えた発明も同じ発明である。
【0057】
H2)低温・低圧の気体の冷媒が圧縮機2で断熱圧縮され高温・高圧(例えば107℃、絶対圧10MPa)の超臨界状態(超臨界状態とは、気体と液体の中間のような状態)になる。なお、この実施例では、バッテリーから、制御部CONTにより出力制御される圧縮機用インバータINV1を経由して圧縮機2用の電力が供給される。
【0058】
H3)超臨界状態の冷媒の熱エネルギが作動媒体熱交換器3で作動媒体(本実施例ではi−ペンタン(イソペンタン))に熱エネルギとして伝えられ、冷媒の温度が低下し常温・高圧(例えば15℃、絶対圧10MPa)になる。
【0059】
H4)膨張弁4で冷媒が減圧し、低温・低圧(例えば0℃、絶対圧3MPa)になる。
【0060】
上記H1)〜H4)によりヒートポンプサイクルを構成する。なお、以下の説明において上記H1)〜H4)のヒートポンプサイクルを以降においてCO2ヒートポンプサイクルと呼ぶことがある。
【0061】
図1、図5に示すように、
S1)ポンプ5により圧送された液体(本実施例では25℃)の作動媒体(本実施例ではi−ペンタン)を作動媒体熱交換器3で高温(本実施例では100℃)に加熱する。
【0062】
このとき、作動媒体熱交換器3で加熱された後の作動媒体温度検出用の温度センサTHの温度が111℃を超えない場合には制御部CONTに備える電力検出部(図示せず)によるINV1の出力が2kWとなるように制御部CONTは圧縮機用インバータINV1を制御し、温度センサTHの温度が111℃を超えた場合にはINV1の出力を低下させるように制御部CONTはインバータINV1を制御する。
なお、温度センサTHの温度が111℃以下となるように制御する理由は、作動媒体の飽和蒸気圧がゲージ圧0.8MPaとなる温度が111℃であることから、温度センサTHの温度が111℃以下となるように制御することで、作動媒体の飽和蒸気圧の大気圧に対する相対圧力がゲージ圧0.8MPaを大きく上回らないようにし、作動媒体の過度の圧力上昇を制限するためである。
【0063】
すなわち、温度センサTHの温度が111℃より低いときは圧縮機用インバータINV1の出力を2kWの一定出力となるようにし、温度センサTHの温度が111℃より高いときは圧縮機用インバータINV1の出力を減少させることで圧縮機2の出力が調整されるから、CO2ヒートポンプサイクルにおいて冷媒が断熱圧縮され高温・高圧になったときの冷媒の温度が、後述する作動媒体との熱交換により調整されることになり、作動媒体が気化されたときの作動媒体の温度が本実施例では111℃以下になるよう制御されている。
【0064】
さらに、制御部CONTは温度検出器THの検出温度T1が一定(本実施例ではi−ペンタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.625MPaとなる温度である100℃)に保つようにモータバルブ8の開度を調節することで、作動媒体は温度が略一定で高圧(本実施例ではゲージ圧力0.625MPa)に保たれる。(i−ペンタンはゲージ圧0.625MPa(=絶対圧0.725MPa)が100℃における飽和蒸気圧である。)
詳述すると、作動媒体熱交換器3におけるCO2ヒートポンプサイクルによる加熱量は圧縮機用インバータINV1の出力2kWに対応する定格加熱量であるから、モータバルブ8の開度を小さくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が低減し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を高くなるように調節でき、モータバルブ8の開度を大きくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を低くなるように調節でき、温度検出器THの検出温度T1は100℃に維持されることになるものである。
【0065】
また、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1および作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1をモータバルブ8の開度によって制御する一方、タービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2を以下のように制御する。なお、この場合、モータバルブ8はポンプ5の下流に配置することが好ましく、モータバルブ8をポンプ5の上流側に配置した場合と比較して、ポンプ5の吸い込み部における圧力低下によるキャビテーションが発生しにくいものとなり、前記キャビテーションに起因するポンプ性能の低下が防止できる。
【0066】
制御部CONTは、作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1(=タービン6の入口(導入口)における圧力)とタービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2との差圧Δp=p1−p2が0.6MPaより小さいときはモータバルブ8の開度を大きくなるように、また、前記差圧Δp=p1−p2が0.6MPaより大きいときはモータバルブ8の開度を小さくなるように制御することで、タービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.6MPa高くなる状態に維持する。
【0067】
このとき、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなったときには圧縮機用インバータINV1の出力を増加するように、また、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が減少して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなったときには圧縮機用インバータINV1の出力を減少するように、制御部CONTにより制御されるから、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1(=タービン6の入口(導入口)における温度)は略100℃の一定に保たれることになる。
【0068】
S2)圧力が略一定で高圧(ゲージ圧0.625MPa)になった作動媒体は、スクリュータービン6の吸込口(導入口)側に導かれ、互いに噛み合った一対のスクリューロータ(図示せず)によって形成される歯形空間内で膨張することで一対のスクリューロータ(図示せず)を回転させる。
【0069】
ここで、さらに詳しく説明すると、一対のスクリューロータは雄スクリューロータと雌スクリューロータからなり、雄スクリューロータと雌スクリューロータの噛合いによって両者とスクリュータービンケーシング内壁との間に生じる歯形空間は、両スクリューロータが回転して噛合いが吸入側から吐出側へ移動するに従って容量が増大するように、両スクリューロータの歯形形状を設定してある。また、スクリュータービンケーシングの一端に取り付けた高圧側妻板に設けた吸込口(導入口)および他端の低圧側妻板に設けた吐出口(排出口)は、雄スクリューロータおよび雌スクリューロータの端面に開口するようにしてあり、かつ、雄スクリューロータおよび雌スクリューロータの外周は、スクリュータービンケーシング内壁によって囲繞されている。
【0070】
また、スクリュータービンの吸込口(導入口)に流入した作動媒体は、雄スクリューロータと雌スクリューロータとスクリュータービンケーシング内壁(妻板を含む)との間に形成された歯形空間内に流入して、同空間の容積を押し拡げるように作用し、そのため雄スクリューロータおよび雌スクリューロータを回転させて、歯形空間内で気化膨張した後、吐出口(排出口)から排出されることになり、この間で回転力としての動力回収が行われるものである。
【0071】
S3)上記のように熱エネルギによってスクリュータービンを回転させ仕事を終えて低温低圧の気体の状態となってスクリュータービンの吐出口(排出口)から排出された作動媒体(本実施例では、36℃の気体となる。因みに本実施例では、上述のようにタービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.6MPa高くなる状態に維持されることによりタービン6の出口(排出口)の圧力はゲージ圧0.025MPaに維持され、(作動媒体i−ペンタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.025MPaとなる温度は33℃であるから、0.025MPa、36℃では気体の状態を維持する。)作動媒体i−ペンタンは凝縮器7で冷却され液体(本実施例では25℃)になる。本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられている。
因みに、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒は、凝縮器7を冷却した後は気相を含む液体の状態であるが7℃より十分低い0℃近い温度を維持している。
なお、本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられているが、凝縮器7を冷却するために、外気Aを用いるなど、別の方法を用いても良い。
【0072】
S4)液体になった作動媒体は繰り返しポンプ5により高圧(本実施例ではゲージ圧0.625MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失)に加圧されて作動媒体熱交換器3に圧送される。
因みに、上述のように作動媒体熱交換器3の出口側で圧力センサPSの検出圧力p1が一定(本実施例ではゲージ圧0.625MPa)に保たれるようにモータバルブ8の開度が調節されるから、本実施例ではポンプ5の吐出側圧力は、ゲージ圧0.6MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失に制御されることとなる。
なお、作動媒体流路からポンプへの作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備しており、何らかの要因により作動媒体熱交換器においてヒートポンプによる加熱により上昇した作動媒体の圧力がポンプの吐出圧力よりも高くなった場合にも、作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるようにしてある。
【0073】
上記S1)〜S4)により作動媒体の循環サイクルを構成する。なお、以下の説明において、上記S1)〜S4)の作動媒体のサイクルを以降において作動媒体サイクルと呼ぶことがある。
【0074】
G1)スクリュータービンの回転力により発電機Gが回転し、作動流体から回収されたエネルギにより発電が行われる。
【0075】
G2)発電機Gにより発生した電気エネルギはレギュレータRを経由して、バッテリーBに蓄電される。
【0076】
G3)この実施例では、ポンプ5として、制御部CONTにより出力制御される直流駆動式のブラシレスモータが用いられており、上述のように圧縮機2用の電力がバッテリーBから供給されていることに加えて、ポンプ5用の電力もバッテリーBから供給される。さらに、制御部CONT用の電力もバッテリーBから供給され、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力もバッテリーBから供給される。
すなわち、 本発明の第1特徴構成における前記制御部用電力には、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力も含まれる。
【0077】
G4)また、外部電源供給用インバータINV2によりバッテリーBからの直流電力を商用周波数(たとえば60Hz)の交流に変換し、システム外部に商用周波数の交流電力が供給される。
【0078】
なお、図1において矢印を含んだ細い実線は冷媒または作動媒体の流れを、破線の矢印は主に信号の流れを、太い実線の矢印は電力の流を示しており、後述する図2、図3においても同様である。なお、上記実施形態における温度、圧力等は一例を示すものであって、本発明は上記数値に限定されるものではない。
【0079】
エネルギ収支を検証するために、作動媒体としてi−ペンタンを用いた場合の各部における仕事率の収支を以下に示す。なお、下記のCOPが小さくなる外気温が7℃において検証する。
【0080】
ここで、
Wz:真発生電力(=W2−W1)[kW]
W1:圧縮機2で消費される電力[kW](実施例では、2kWとしている。)
W2:発電機Gで発生する電力[kW]
COP:CO2ヒートポンプサイクルの成績係数
Wp:発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費率[W]
Qp:作動媒体サイクルにおけるi−ペンタン(作動媒体)の循環流量[kg/h]
Lp:i−ペンタンの潜熱(Latent heat)=0.100[kWh/kg](=357.9[J/g])
Cp:i−ペンタンの比熱=0.000622[kWh/kg・℃](=2.240[J/g・℃])
η:発電効率=W2/Wp(スクリュータービンの場合、スクリューの隙間漏れに伴う熱エネルギの損失、メカ損失、電気的ロスなどにより1より小さい値となる。)
ρ:損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ消費電力に伴うロスなどによる。)
t1:外気温=7[℃](外気温が低く悪条件となる冬場を想定している。)
t2:作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度[℃]
t3:作動媒体熱交換器3の入口におけるi−ペンタンの温度=25[℃]
Δt:t2とt1の差(=t2−t1)[℃]
とすると、以下のようになる。
【0081】
i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ、すなわちi−ペンタンがCO2ヒートポンプサイクルから得る単位時間当たりの熱エネルギは、
W1*COP・・・・・(1)
である。また、図7から、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−7)+7.23
COP=7.59−0.051*t2・・・・・・・・・(2)
であり、損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ駆動エネルギ消費率)や冷却部7における熱の授受が無いとするとこの、i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ(熱エネルギ)は、発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費と等しい。
なお、冷却部7における熱の授受に関しては、損失や上述の発電効率に関連する熱エネルギの損失に含められていると考えることができる。
【0082】
ここで、液体のi−ペンタンがt2になった状態で上述のように気体であるとして、その乾き度を1(湿り度=0)とすると、i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは、
Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)・・・・・(3)
であり、システムが継続して稼働する定常状態においてはi−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費率と等しいから(1)(3)式より
W1*COP=Wp=Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)・・・・・・・・(4)
ここで、Qpとt2の関係を(2)(4)から求めると、
Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)=(7.59−0.051*t2)*W1
だから、
Qp=〔(7.59−0.051*t2)*W1〕/〔(t2−t3)Cp+1*Lp〕
これに、W1=2kW、t3=25℃、Cp=0.000622、Lp=0.100を代入すると、
Qp=〔(7.59−0.051*t2)*2〕/〔(t2−25)0.000622+1*0.100〕
=(15.18−0.102*t2)/(0.000622*t2−0.01555+0.100)
=(15.18−0.102*t2)/(0.000622*t2+0.08445)・・・・・(5)
(5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体i−ペンタンの流量Qp(kg/h)との関係が求まる。(図8参照。)
【0083】
なお、上記においては、液体のi−ペンタンがt2になった状態で気体でありその乾き度を1としたが、この乾き度が1より小さくなれば作動媒体が蓄える熱エネルギに占める潜熱の割合が小さくなるからQp(kg/h)は大きくなることになる。
また、上記において、ないものとした損失を考慮すると、発電機Gで発生する電力は、
W2=η*(1−ρ)*Wp
=η*(1−ρ)*W1*COP・・・・・・(6)
(6)に(2)を代入して、
W2=η*(1−ρ)*W1*(7.59−0.051*t2)・・・・・(7)
だから、真発生電力は、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(7.59−0.051*t2)−1〕W1・・・・・(8)
【0084】
上述のように式(5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体i−ペンタンの流量Qp(kg/h)と7とを表している。因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図8においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄い。
また、作動媒体熱交換器3の出口温度t2が小さいときは作動媒体i−ペンタンの流量Qpが大きくなるためi−ペンタン用配管における圧力損失が大型化すると共にポンプ5が大型化することとなってしまうため、装置小型化の観点からは、作動媒体熱交換器3の出口温度t2は高くすることが望ましい。
【0085】
式(2)により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOPの値が求まり、式(8)にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWzの値が求まる。(図9参照。)
発電効率ηは図6のようにスクリュータービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じて変化し、図9においては、η*(1−ρ)として0.4、0.5、0.6、0.7のそれぞれについてWzを求めてある。(後述の図10も同様。)
図9において太い罫線で囲んだWzの値が正の値となっている升目が真発生電力獲得条件を満足する運転条件によるWzの値である。
因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図9においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
図6から、スクリュータービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)が0.6MPa付近で発電効率ηが略0.65の値となるピークとなることに基づき本実施例における発電システムの運転状態が定められている。
【0086】
なお、図9においてポンプ出力は、
ポンプ出力〔kW〕=(ポンプ揚程〔MPa〕/i−ペンタン比重(=0.62)*i−ペンタン質量流量〔kg/h〕)/3600により求まり、ポンプ入力〔kW〕を求めるにあたりポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)を0.3としている。
また、図9においては、損失ρにポンプ入力が含まれるとしてWzの値を示しているが、ポンプ入力の影響の程度が確認できるように上記のようにして求めたWzの値からさらにポンプ入力を差し引いた値(Wz〔kW〕−ポンプ入力〔kW〕)も参考として併記してある。(後述の図10も同様。)
【0087】
Wz〔kW〕の値が正の値となっている条件が、「真発生電力獲得条件」であり、「真発生電力獲得条件」を満足するとき、システムは外部からの電力や燃料などのエネルギの供給がない状態で外気が持つ熱エネルギを電力に変換して電力を継続的に発生できる。
したがって、「真発生電力獲得条件」においてはCO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できる。
【0088】
さらに、図10には作動媒体熱交換器3の設計の都合により作動媒体経路の圧力損失が大きくなった場合を想定し、作動媒体熱交換器3の出口圧力として大気との相対圧0.7MPaを得るために作動媒体熱交換器3の入口圧力として1MPa必要になったとき、すなわちポンプ揚程が0.9MPa(=1−0.1〔MPa〕)としたときで、ポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)をO.3としたときの値を表している。因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図10においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
【0089】
図9と図10とで「真発生電力獲得条件」は大きく変わらないものであり、ポンプ揚程が0.9MPaとなっても「真発生電力獲得条件」においては、外部からの燃料や電源供給を受けない状態であるから、CO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できることを表している。
【0090】
上記では、COPが小さくなる、外気温を7℃とした時の検証であるが、外気温を17℃とした時について更に検証する。
【0091】
上記と同様に、 W1*COP・・・・・(1)
である。また、図7におけるt1に17(℃)を代入すると、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−17)+7.23
COP=8.10−0.051*t2・・・・・・・・・(2)’
同様に、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(8.10−0.051*t2)−1〕W1・・・・・(8)’
式(2)’により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOP(外気温17℃のとき)の値が求まり、式(8)’にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWz(外気温17℃のとき)の値が求まる。(図11参照。)因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図11においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
【0092】
前述の図9では、外気温7℃の時には、作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度t2を100℃としたとき、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPは2.5程度であり、η*(1−ρ)が0.6のとき、真発生電力Wzとして得られる電力は1kW程度であったが、図11は、外気温17℃の時には、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPが3に上昇することにより、作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度t2を100℃としたとき、η*(1−ρ)が0.6のとき、真発生電力Wzとして1.6kW程度得られることを表している。
【0093】
すなわち、本発明による発電システムの特徴は、気温が低いときに比べて気温が高いほど真発生電力Wzが大きくなることであり、気温が高くなり電力需要が増大する夏季にこそ該発電システムが効率よく稼動するものであることを示唆している。
【0094】
〔第2実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明において、n−ブタン(ノルマルブタン)を媒体とし、スクロール式のタービンを用いた場合である第2実施形態を説明する。なお、i−ブタン(イソブタン)を作動媒体とした場合、i−ブタンはn−ブタンと多少物性値が異なるものの、ほぼ同様の結果となるから、作動媒体としては、n−ブタンとi−ブタンの何れを用いてもよく、n−ブタンとi−ブタンとを混合して用いても良い。
【0095】
上記第1実施形態においては、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が、先ず、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になるように構成してあるが、この第2実施形態では、冷媒が前記外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収した後に、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体を冷却するように構成してある。(図16参照。)
【0096】
このように構成することで、冬場のように外気Aの温度が低く(例えば気温7℃)、外気Aの温度が、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体の温度(第2実施例の場合で、例えば40℃)より低い場合などは、外気Aと冷媒(例えば−10℃)との温度差が大きい状態で、冷媒が外気熱交換器1において外気Aの熱を吸収して、冷媒の温度が多少上昇(例えば7℃程度に上昇)した後であっても、冷媒はさらに、冷却部7において作動媒体(例えば40℃)からの熱を吸収することができるから、ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなり、さらに効率の良い(高い)発電システムが構成できる。
【0097】
また、第1実施形態と同様に、以下の説明において圧力を表す場合、絶対圧とは真空を基準にした絶対圧力を表しゲージ圧とは大気圧を基準にした相対圧力を表し、このとき基準とする大気圧としては標準気圧(1atm)を用いず、以下の説明において極力端数のない数値により説明できるように便宜的に、基準とする大気圧を絶対圧0.1MPaとしたときの相対圧力で表している。
【0098】
図16、図12に示すように、
H1)低温・低圧(例えば−10℃、絶対圧3MPa)の冷媒(本実施例ではCO2)が、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になる。(本実施例ではヒートポンプのCOPが低下する冬場を想定しており、−10℃の冷媒が7℃の気体になる。)
【0099】
その後、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得て温度が上昇する。(例えば30℃、絶対圧3MPaの気体になる。)
【0100】
なお、本実施形態における上記CO2は、後述する作動媒体を加熱する用途に使用することから熱媒と称することも考えられるところ、ヒートポンプにおいて一般的に用いられている用語を用いることとし、本願では、上記CO2を冷媒と称している。
【0101】
H2)低温・低圧の気体の冷媒が圧縮機2で断熱圧縮され高温・高圧(例えば97℃、絶対圧10MPa)の超臨界状態(超臨界状態とは、気体と液体の中間のような状態)になる。なお、この実施例では、バッテリーから、制御部CONTにより出力制御される圧縮機用インバータINV1を経由して圧縮機2用の電力が供給される。
【0102】
H3)超臨界状態の冷媒の熱エネルギが作動媒体熱交換器3で作動媒体(本実施例ではn−ブタン(ノルマルブタン))に熱エネルギとして伝えられ、冷媒の温度が低下し常温・高圧(例えば35℃、絶対圧10MPa)になる。
【0103】
H4)膨張弁4で冷媒が減圧し、低温・低圧(例えば−10℃、絶対圧3MPa)になる。
【0104】
上記H1)〜H4)によりヒートポンプサイクルを構成する。なお、以下の説明において上記H1)〜H4)のヒートポンプサイクルを以降においてCO2ヒートポンプサイクルと呼ぶことがある。
【0105】
図16、図13に示すように、
S1)ポンプ5により圧送された液体(本実施例では30℃)の作動媒体(本実施例ではn−ブタン)を作動媒体熱交換器3で高温(本実施例では90℃)に加熱する。
【0106】
このとき、作動媒体熱交換器3で加熱された後の作動媒体温度検出用の温度センサTHの温度が100℃を超えない場合には制御部CONTに備える電力検出部(図示せず)によるINV1の出力が定格電力である2kWとなるように制御部CONTは圧縮機用インバータINV1を制御し、温度センサTHの温度が100℃を超えた場合にはINV1の出力を低下させるように制御部CONTはインバータINV1を制御する。
なお、温度センサTHの温度が100℃以下となるように制御する理由は、作動媒体の飽和蒸気圧がゲージ圧1.39MPa(=絶対圧1.49MPa)となる温度が100℃であることから、温度センサTHの温度が100℃以下となるように制御することで、作動媒体の飽和蒸気圧の大気圧に対する相対圧力がゲージ圧1.39MPaを大きく上回らないようにし、作動媒体の過度の圧力上昇を制限するためである。
【0107】
すなわち、温度センサTHの温度が100℃より低いときは圧縮機用インバータINV1の出力を2kWの定格出力となるようにし、温度センサTHの温度が100℃より高いときは圧縮機用インバータINV1の出力を減少させることで圧縮機2の出力が調整されるから、CO2ヒートポンプサイクルにおいて冷媒が断熱圧縮され高温・高圧になったときの冷媒の温度が、後述する作動媒体との熱交換により調整されることになり、作動媒体が気化されたときの作動媒体の温度が本実施例では100℃以下になるよう制御されている。
【0108】
さらに、制御部CONTは温度検出器THの検出温度T1が一定(本実施例ではn−ブタンの飽和蒸気圧がゲージ圧1.127MPaとなる温度である90℃)に保つようにモータバルブ8の開度を調節することで、作動媒体は温度が略一定で高圧(本実施例ではゲージ圧力0.9MPa)に保たれる。(n−ブタンはゲージ圧1.127MPa(=絶対圧1.227MPa)が90℃における飽和蒸気圧であるから十分気化している。)
詳述すると、作動媒体熱交換器3におけるCO2ヒートポンプサイクルによる加熱量は圧縮機用インバータINV1の出力2kWに対応する定格加熱量であるから、モータバルブ8の開度を小さくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が低減し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を高くなるように調節でき、モータバルブ8の開度を大きくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を低くなるように調節でき、温度検出器THの検出温度T1は90℃に維持されることになるものである。
【0109】
また、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1および作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1をモータバルブ8の開度によって制御する一方、タービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2を以下のように制御する。なお、この場合、モータバルブ8はポンプ5の下流に配置することが好ましく、モータバルブ8をポンプ5の上流側に配置した場合と比較して、ポンプ5の吸い込み部における圧力低下によるキャビテーションが発生しにくいものとなり、前記キャビテーションに起因するポンプ性能の低下が防止できる。
【0110】
制御部CONTは、作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1(=タービン6の入口(導入口)における圧力)とタービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2との差圧Δp=p1−p2が0.67MPaより小さいときはモータバルブ8の開度を大きくなるように、また、前記差圧Δp=p1−p2が0.67MPaより大きいときはモータバルブ8の開度を小さくなるように制御することで、タービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.67MPa高くなる状態に維持して前記差圧Δpを0.6MPa以上に保ち、タービン6の効率を維持する。
【0111】
このとき、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなったときには圧縮機用インバータINV1の定格出力を徐々に増加させるように変更設定するように、また、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が減少して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなったときには圧縮機用インバータINV1の定格出力を徐々に減少させるように変更設定するように、制御部CONTにより制御されるから、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1(=タービン6の入口(導入口)における温度)は略90℃の一定に保たれることになる。
【0112】
S2)圧力が略一定で高圧(ゲージ圧0.9MPa)になった作動媒体は、スクロールタービン6の吸込口(導入口)側に導かれ、互いに噛み合った固定スクロール及び旋回スクロール(図示せず)によって形成される渦巻状空間内で膨張することで旋回スクロール(図示せず)を旋回させる。
【0113】
ここで、さらに詳しく説明すると、スクロールタービンは、密閉容器の内部に、鏡板から渦巻き状に立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを噛み合わせて双方間に膨張室を形成し、上記旋回スクロールを自転規制機構による自転の規制のもとに円軌道に沿って旋回させたとき上記膨張室が容積を変えながら移動することで、吸入、膨張、吐出を行う膨張機構部を備えたスクロール膨張機によって、作動媒体が持つ熱エネルギを機械エネルギに変換するものである。
【0114】
旋回スクロールと主軸受部材(図示せず)との間に旋回スクロールの自転を防止して円軌道運動するように案内する自転規制機構(図示せず)を設けて、クランク軸(図示せず)の上端にある偏心軸部(図示せず)にて旋回スクロールを偏心駆動することにより旋回スクロールを円軌道運動させている。これにより固定スクロールと旋回スクロールとの間に形成している膨張室が中央部から外周側に移動しながら容積が大きくなるのを利用して作動媒体の膨張を行い、上記クランク軸を回転させる。なお、この種のスクロールタービンは、エアコンディショナにおいて冷凍サイクル装置を構成する膨張機、圧縮機に用いられているものと同等の原理により作動するように構成されているものである。
【0115】
上述のように、スクロールタービンの吸込口(導入口)に流入した作動媒体は、上記クランク軸を回転させて膨張した後に吐出口(排出口)から排出されることになり、この間で回転力としての動力回収が行われるものである。
【0116】
S3)上記のように熱エネルギによってスクロールタービンを旋回させ仕事を終えて低温低圧の気体の状態となってスクロールタービンの吐出口(排出口)から排出された作動媒体(本実施例では、40℃の気体となる。因みに本実施例では、上述のようにタービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.67MPa高くなる状態に維持されることによりタービン6の出口(排出口)の圧力はゲージ圧0.23MPaに維持され、(作動媒体n−ブタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.23MPa(=絶対圧0.33MPa)となる温度は35℃であるから、ゲージ圧0.23MPa、40℃では気体の状態を維持する。)作動媒体n−ブタンは凝縮器7で冷却され液体(本実施例では30℃)になる。本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられている。
【0117】
因みに、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒は、凝縮器7を冷却した後は気相を含む液体の状態であるが7℃より十分低い0℃近い温度を維持している。
なお、本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられているが、凝縮器7を冷却するために別の方法を用いても良い。
【0118】
S4)液体になった作動媒体は繰り返しポンプ5により高圧(本実施例ではゲージ圧0.9MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失)に加圧されて作動媒体熱交換器3に圧送される。
因みに、上述のように作動媒体熱交換器3の出口側で圧力センサPSの検出圧力p1が一定(本実施例ではゲージ圧0.9MPa)に保たれるようにモータバルブ8の開度が調節されるから、本実施例ではポンプ5の吐出側圧力は、ゲージ圧0.9MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失に制御されることとなる。
なお、作動媒体流路からポンプへの作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備しており、何らかの要因により作動媒体熱交換器においてヒートポンプによる加熱により上昇した作動媒体の圧力がポンプの吐出圧力よりも高くなった場合にも、作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるようにしてある。
【0119】
上記S1)〜S4)により作動媒体の循環サイクルを構成する。なお、以下の説明において、上記S1)〜S4)の作動媒体のサイクルを以降において作動媒体サイクルと呼ぶことがある。
【0120】
G1)スクロールタービンの回転力により発電機Gが回転し、作動流体から回収されたエネルギにより発電が行われる。
【0121】
G2)発電機Gにより発生した電気エネルギはレギュレータRを経由して、バッテリーBに蓄電される。
【0122】
G3)この実施例では、ポンプ5駆動用モータとして、制御部CONTにより出力制御される直流駆動式のブラシレスモータが用いられており、上述のように圧縮機2用の電力がバッテリーBから供給されていることに加えて、ポンプ5用の電力もバッテリーBから供給される。さらに、制御部CONT用の電力もバッテリーBから供給され、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力もバッテリーBから供給される。
【0123】
G4)また、外部電源供給用インバータINV2によりバッテリーBからの直流電力を商用周波数(たとえば60Hz)の交流に変換し、システム外部に商用周波数の交流電力が供給される。
【0124】
なお、図16において矢印を含んだ細い実線は冷媒または作動媒体の流れを、破線の矢印は主に信号の流れを、太い実線の矢印は電力の流を示している点は、前述した図1〜図3と同様である。なお、本実施形態においても、温度、圧力等は一例を示すものであって、本発明は上記数値に限定されるものではない。
【0125】
エネルギ収支を検証するために、作動媒体としてn−ブタンを用いた場合の各部における仕事率の収支を以下に示す。なお、下記のCOPが小さくなる外気温が7℃において検証する。
【0126】
ここで、
Wz:真発生電力(=W2−W1)[kW]
W1:圧縮機2で消費される電力[kW](実施例では、2kWとしている。)
W2:発電機Gで発生する電力[kW]
COP:CO2ヒートポンプサイクルの成績係数
Wb:発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費率[W]
Qb:作動媒体サイクルにおけるn−ブタン(作動媒体)の循環流量[kg/h]
Lb:n−ブタンの潜熱(Latent heat)=0.107[kWh/kg](=385.3[J/g])
Cb:n−ブタンの比熱=0.000460[kWh/kg・℃](=1.6581[J/g・℃])
ここで、n−ブタンのガス比熱=0.000668[kWh/kg・℃](=2.405[J/g・℃])、n−ブタンの液比熱=0.000460[kWh/kg・℃](=1.6581[J/g・℃])であるが、以下の計算ではn−ブタンが温度上昇して気化した後はその圧力(絶対圧1.227MPa)における沸点(90℃)付近の温度を概ね維持するから、比熱としては液比熱を用いている。
η:発電効率=W2/Wp(スクロールタービンの場合、スクロールの隙間漏れに伴う熱エネルギの損失、メカ損失、電気的ロスなどにより1より小さい値となる。)
ρ:損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ消費電力に伴うロスなどによる。)
t1:外気温7℃のときに冷媒のCO2が冷却部7において作動媒体(例えば40℃)からの熱を吸収して30℃に上昇する場合の、CO2ヒートポンプサイクルにおける外気温相当温度(=30[℃])
t2:作動媒体熱交換器3の出口におけるn−ブタンの温度[℃]
t3:作動媒体熱交換器3の入口におけるn−ブタンの温度=30[℃]
Δt:t2とt1の差(=t2−t1)[℃]
とすると、以下のようになる。
【0127】
n−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ、すなわちn−ブタンがCO2ヒートポンプサイクルから得る単位時間当たりの熱エネルギは、
W1*COP・・・・・(b1)
である。また、図7から、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−30)+7.23
COP=8.76−0.051*t2・・・・・・・・・(b2)
であり、損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ駆動エネルギ消費率)が無いとするとこの、n−ブタンが作動媒体熱交換器3と冷却部7で得る単位時間当たりのエネルギ(熱エネルギ)は、発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費と等しい。
【0128】
ここで、液体のn−ブタンがt2になった状態で上述のように気体であるとして、その乾き度を1(湿り度=0)とすると、n−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは、
Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)・・・・・(b3)
であり、システムが継続して稼働する定常状態においてはn−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費率と等しいから(b1)(b3)式より
W1*COP=Wb=Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)・・・・・・・・(b4)
ここで、Qbとt2の関係を(b2)(b4)から求めると、
Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)=(8.76−0.051*t2)*W1
だから、
Qb=〔(8.76−0.051*t2)*W1〕/〔(t2−t3)Cb+1*Lb〕
これに、W1=2kW、t3=30℃、Cb=0.000460、Lb=0.107を代入すると、
Qp=〔(8.76−0.051*t2)*2〕/〔(t2−30)0.000460+1*0.107〕
=(17.52−0.102*t2)/(0.000460*t2−0.0138+0.107)
=(17.52−0.102*t2)/(0.000460*t2+0.0882)・・・・(b5)
(b5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体n−ブタンの流量Qb(kg/h)との関係が求まる。(図14参照。)
【0129】
なお、上記においては、液体のn−ブタンがt2になった状態で気体でありその乾き度を1としたが、この乾き度が1より小さくなれば作動媒体が蓄える熱エネルギに占める潜熱の割合が小さくなるからQb(kg/h)は大きくなることになる。
また、上記において、ないものとした損失を考慮すると、発電機Gで発生する電力は、
W2=η*(1−ρ)*Wb
=η*(1−ρ)*W1*COP・・・・・・(b6)
(b6)に(b2)を代入して、
W2=η*(1−ρ)*W1*(8.76−0.051*t2)・・・・・(b7)
だから、真発生電力は、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(8.76−0.051*t2)−1〕W1・・・・(b8)
【0130】
上述のように式(b5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体n−ブタンの流量Qb(kg/h)との関係が求まり(図14参照。)、図14は、t2が低いほど大きいポンプ流量が要求されることを表している。因みに、n−ブタンがゲージ圧0.9MPaにおいて安定して気体であるためには、t2は90℃以上であれば十分であるが、図14においてt2が90℃未満の部分では、部分的圧力上昇がある場合には作動媒体熱交換器3の出口で作動媒体が気化され難い場合がある点に留意する必要がある。
また、作動媒体熱交換器3の出口温度t2が小さいときは作動媒体n−ブタンの流量Qbが大きくなるためn−ブタン用配管における圧力損失が大型化すると共にポンプ5が大型化することとなってしまうため、装置小型化の観点からは、作動媒体熱交換器3の出口温度t2は高くすることが望ましい。
【0131】
式(b2)により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOPの値が求まり、式(b8)にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWzの値が求まる。(図15参照。)
スクロールタービンの発電効率も前述のスクリュータービンと同様に図6のようにスクロールタービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じて変化し、図15においては、η*(1−ρ)として0.4、0.5、0.6、0.7のそれぞれについてWzを求めてある。
【0132】
図15において太い罫線で囲んだWzの値が正の値となっている升目が真発生電力獲得条件を満足する運転条件によるWzの値である。
因みに、n−ブタンがゲージ圧0.9MPaにおいて気体であるためには、t2は、ゲージ圧1.127MPaにおいて気体である温度90℃以上であれば十分であるが、図15においては、t2が90℃未満の部分では気化され難い場合もあるとの配慮から、実用化には緻密な制御を要するものとして斜線を付してある。
【0133】
本実施形態においても、スクロールタービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じた発電効率ηがピークの値となる状態で本発電システムが稼動するように、本発電システムの運転状態が定められるのであるが、作動媒体としてペンタンを用いる場合と比較して、作動媒体として高圧においても気体の状態となり、しかも、常温付近で液化し得るn−ブタンを用いた場合の方が、タービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)を大きく設定できるから、高効率な発電システムを構成しやすい。
【0134】
なお、図15においてポンプ出力は、
ポンプ出力〔kW〕=(ポンプ揚程〔MPa〕/n−ブタン液比重(=0.5847)*n−ブタン質量流量〔kg/h〕)/3600により求まり、ポンプ入力〔kW〕を求めるにあたりポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)を0.3としている。
また、図15においては、損失ρにポンプ入力が含まれるとしてWzの値を示しているが、ポンプ入力の影響の程度が確認できるように上記のようにして求めたWzの値からさらにポンプ入力を差し引いた値(Wz〔kW〕−ポンプ入力〔kW〕)も参考として併記してある。
【0135】
Wz〔kW〕の値が正の値となっている条件が、「真発生電力獲得条件」であり、「真発生電力獲得条件」を満足するとき、システムは外部からの電力や燃料などのエネルギの供給がない状態で外気が持つ熱エネルギを電力に変換して電力を継続的に発生できる。
したがって、「真発生電力獲得条件」においてはCO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できる。
【0136】
第2実施形態においても、外気温t1が高い場合ほどCOPが大きくなるから、多くの真発生電力が得られることに関しては第1実施形態と同様であるが、詳しい説明は省略する。
【0137】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
[別実施例1]
第1実施形態や第2実施形態のように、モータバルブ8の開度の調節により圧力センサPSの検出圧力が一定(本実施例では0.6MPa)に保つようにするのではなく、モータバルブ8は備えず、制御部CONTからの指令によりポンプ5の速度制御を行うことで圧力センサPSの検出圧力p1と第2圧力センサPS2の検出圧力p2との差圧(=p1−p2)が一定(本実施例では0.6MPa)に保たれるようにすることも可能である。(図2参照)このようにした場合、作動媒体用の配管回路圧力損失が低減できる。この場合のポンプ5の駆動用モータMTとしては、DCブラシレスモータを用いることで速度制御を容易に行うことが可能である。
【0138】
また、ポンプ5の駆動用モータとして一般に普及しているACモータを用いる場合であっても制御部CONTにおけるモータM用の駆動回路をVVVF(可変電圧、可変周波数)インバータで構成しておくことにより優れた速度制御性が得られ、圧力センサPSの検出圧力p1と第2圧力センサPS2の検出圧力p2との差圧を一定(本実施例では0.6MPa)に保つ制御を制度よく行うことができる。
【0139】
[別実施例2]
実施形態として、バッテリーBを搭載しないシステムも可能である。(図3参照。)
この場合、第1実施形態や第2実施形態におけるバッテリーBの箇所は単なるDCリンクLNとしておき外部電源供給用インバータINV2に代え、外部商用電力系統からリンクに電力供給可能で、かつ、DCリンクLNから外部商用電力系統に対し逆潮流可能なパワーコンディショナーPWCNを備えることで、本システムで得られる電力と本システム外部での消費電力に差が生じた場合にも問題なく用いることができるシステムとなる。
【0140】
また、DCリンクLNと並列にバッテリーBを搭載しておき、バッテリーBから外部電源供給用インバータINV2に給電するように構成することも可能で、この場合、外部商用電力系統で停電があった場合でも、外部電源供給用インバータINV2から安定して電力供給が継続できるものとなる。
【0141】
[別実施例3]
CO2以外の冷媒やi−ペンタン以外の作動媒体を用いても良い。たとえば作動媒体をn−ペンタン(ノーマルペンタン)とした場合は、飽和蒸気圧がゲージ圧0.625MPaとなる温度が、i−ペンタンにおいて100℃であるのに対しn−ペンタンにおいては109.6℃と高いので、作動媒体としてi−ペンタンを用いる第1実施形態に比べ、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPが低下することになるものであるが、液化する温度はn−ペンタンの方がi−ペンタンと比べて高いため、凝縮器7における液化が容易になるとともに、ポンプ5におけるキャビテーションに起因するポンプ性能の低下が発生しなくなるため有利な点を備える。
【0142】
[別実施例4]
また、作動媒体を複数の異なる種類の炭化水素の混合物などで構成することにより、作動媒体熱交換器3からスクリュータービン6に導かれる作動媒体に含まれる蒸気と気体の比率を変更することができるものであり、作動媒体は適宜変更可能である。
【0143】
[別実施例5]
図1〜図3、図16において、ポンプ5を出力が可変制御可能な作動媒体用圧縮機に置き換え、スクリュータービンの吐出口(排出口)からは作動媒体が液相を含む気体が排出されるようにスクリュータービンの吐出口(排出口)の圧力(前述の第2圧力センサPS2における検出圧力p2)が低くなるように運転条件を設定しておくことも可能である。
【0144】
この場合、作動媒体サイクルにおける効率は低下するものの、凝縮器7が不要となり、また、凝縮器7が不要となることに伴い配管も簡素化され、作動媒体として複数の炭化水素などによる混合物が使用されて作動媒体を液体とすることが困難な場合にも、作動媒体用圧縮機により作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0145】
[別実施例6]
第1実施形態では、作動媒体をペンタンとしてタービン6をスクリュータービンとし、第2実施形態では、作動媒体をブタンとしてタービン6をスクロールタービンとする実施例を示したが、作動媒体をペンタンとしてタービン6をスクロールタービンとする、または、作動媒体をブタンとしてタービン6をスクリュータービンとするなど適宜変更可能である。
【0146】
さらに、作動媒体として他の物質を用い、タービン6として他の形式のものを用いる等、作動媒体とタービン6は適宜選択可能である。
【0147】
[別実施例7]
上記第1実施形態においては、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が、先ず、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になるように構成してあるが、上記第1実施形態においても、第2実施形態と同様に、冷媒が前記外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収した後に、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体を冷却するように構成してもよい。
【0148】
[別実施例8]
上記第1実施形態や第2実施形態では、圧縮機2、ポンプ5、制御部CONTなど用の、本発電システムで消費される電力(総和電力)として、発電機Gによって発電した電力が供給されているが、圧縮機2、ポンプ5、制御部CONTなど用の、本発電システムで消費される電力を本発電システム外部から供給してもよい。
【0149】
なお、上記の各実施例において、外気熱交換器1における外気Aと作動媒体との熱交換を促進する送風機を設ける場合、該送風機の運転に伴う消費電力(総和電力)の増加分よりも、熱交換の促進によるヒートポンプのCOP上昇に伴う発電電力の増加分が大きくなる場合は、真発生電力Wzが大きくなることになるから、効率の良い発電システムを構成するために、上記送風機を備えて該送風機を適宜運転することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0150】
1 外気熱交換器
2 圧縮機
3 作動媒体熱交換器
4 膨張弁
5 ポンプ(循環手段)
6 タービン(スクリュータービン、または、スクロールタービン)
7 凝縮器(冷却部)
8 モータバルブ
A 外気
B バッテリー
CH 逆止弁
CONT 制御部
D DCリンク
EXPW 外部商用電源
G 発電機
INV1 圧縮機用インバータ
INV2 外部電源供給用インバータ
PS 圧力センサ
PS2 第2圧力センサ
R レギュレータ
TH 温度検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を加熱気化する外気熱交換器と前記冷媒を圧縮する圧縮機と圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と前記作動媒体熱交換器からの前記冷媒を減圧回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプと、前記ヒートポンプにより加熱された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって動力が与えられるタービンと前記タービンの排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体熱交換器に送出する循環手段と前記タービンの動力により発電電力を供給する発電機を備える作動媒体発電サイクル部と、前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部とを備え、前記圧縮機の駆動用電力と前記循環手段の駆動用電力と前記制御部へ供給される制御部用電力との総和である総和電力としての電力が供給され、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される真発生電力獲得条件で運転される発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から効率よく発電を行う発電システムが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
特許文献1、特許文献2においては、発電システムの設備コストを低く抑えて熱源エネルギの利用効率,発電出力の向上が図れるように改良した発電システム、および、膨張効率(動力変換効率)が向上したスクリュータービン発電装置の構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−221961号公報
【特許文献2】特開平09−088502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2の構成により熱源エネルギの利用効率,発電出力の向上が図れるものであるが、以下の課題がある。
【0006】
たとえば、熱源エネルギとして地熱を用いる場合は、地熱が得られる地域でないと使用できない。
因みに、発電機を駆動するタービンの膨張効率(動力変換効率)を向上しても、0.6〜0.7程度の効率しか得られないから、熱源エネルギを得るために当該システム外からの電力や燃料供給によるエネルギによって賄われる場合には、1を超えるシステム効率が得られない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、地域によらず1を超えるシステム効率が得られる発電システムの提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、冷媒加熱流路を備えシステムの外部からの熱を吸収し冷媒加熱流路を流れる冷媒に伝え冷媒を気化する外気熱交換器と、前記冷媒加熱流路の出口からの前記冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と、作動媒体を加熱した後に前記作動媒体熱交換器から排出される前記冷媒を回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と、を備え、前記外気熱交換器と前記圧縮機と前記作動媒体熱交換器の冷媒流路と前記回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプを構成し、
さらに、導入口と排出口を具備するタービンを備え、前記作動媒体熱交換器の作動媒体流路を流れる前記作動媒体が前記ヒートポンプによる加熱により気化され、気化された後に前記作動媒体流路の出口から排出される前記作動媒体が前記導入口に導入され前記排出口から排出されることで、気化された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって前記タービンに動力が与えられ、前記動力により発電を行う発電機を備え、前記排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する循環手段を備え、前記作動媒体流路と前記タービンと前記循環手段と前記発電機とからなる作動媒体発電サイクル部を構成し、
前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部を備え、
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力としての電力が供給され、
前記圧縮機駆動電力と前記循環手段駆動電力と前記制御部用電力との総和である総和電力より、前記発電機により発電される発電電力が大きくなるように設定される運転条件である真発生電力獲得条件で運転されるように構成されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、この発電システムを稼動するためにこの発電システムにおいて消費される電力より大きな発電電力が得られるように前記運転条件が設定されることになるものである。
【0010】
本発明の第1特徴構成によれば、実質的に外部からの電力や燃料の供給なしで、特に高温でない外気などであっても、システムの外部からの熱を電力に変換できるから、特別な地域的な制約なしに、また、地球温暖化ガスを排出することなく電気エネルギを得ることができるようになる。また、冷媒としてはヒートポンプに適した冷媒を用い、そして、作動媒体としては作動媒体発電サイクル部に適した作動媒体を用い、冷媒と作動媒体としてそれぞれ異なる物質を用いることができるから最適な発電システムが構成しやすい。
【0011】
因みに、この発明による発電システムは、決して自然法則に反するような永久機関ではなく、ソーラーパネルが太陽光のエネルギを電気のエネルギに変換するものであるのに対し、この発明による発電システムは、大気熱のエネルギを電気のエネルギに変換する技術を提供するものである。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給される点を特徴とする。
【0013】
本発明の第2特徴構成によれば、上記の第1特徴構成による効果に加えて、前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給されるから、当該システム外部からの電力供給を必要としない独立した発電システムとすることができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1特徴構成、または、第2特徴構成に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が液体で、前記循環手段がポンプである点を特徴とする。
【0015】
本発明の第3特徴構成によれば、上記の第1特徴構成、または、第2特徴構成による効果に加えて、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行わないから、作動媒体発電サイクル部の効率を高いものとすることができるので発電電力と総和電力の差を大きくすることができ、システム外において利用できる前記電気エネルギを大きくすることができる。
【0016】
つまり、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体である場合には、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に気体である前記作動媒体を圧縮することになり前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行うことになり、ここで作動媒体が得た熱力学的エネルギは前記タービンにおいて1未満の変換効率で動力に変換されて、この動力が前記発電機によって1未満の変換効率で電力に変換され、この電力により循環手段が駆動されるものであるから、作動媒体発電サイクル部の効率を低下させる原因となり、発電電力と総和電力の差が小さくすることになり、システム外において利用できる前記電気エネルギが小さくなることになる。
【0017】
一方、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が非圧縮性流体である液体の場合には、前記循環手段は前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出するために加圧しても、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行わないから、作動媒体発電サイクル部の効率を高いものとすることができるので発電電力と総和電力の差を大きくすることができ、システム外において利用できる前記電気エネルギを大きくすることができるものとなる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、上記した第3特徴構成に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備える点を特徴とする。
【0019】
本発明の第4特徴構成によれば、上記の第3特徴構成による効果に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えるから、前記循環手段としてのポンプの入口側に流入する前記作動媒体を十分に液化することができ、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0020】
つまり、前記循環手段としてのポンプの入口側に流入する前記作動媒体が十分に液化されず作動媒体の気相を含む場合には、前記循環手段としてのポンプにおいてキャビテーションに起因して揚程が低下することが考えられ、揚程が低下した場合には、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出が確実に行えない不安定な状態に至り、正常に発電できない事態となってしまうこととなるが、このようなことが防止できるものになる。
【0021】
要するに、第4特徴構成によれば、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えることで、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出を確実に行えるから、前記循環手段としてのポンプによる前記作動媒体の送出が確実に行えない不安定な状態に至り、正常に発電できない事態となってしまうことが防止できるものとなる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、上記した第4特徴構成に加えて、前記排出口から排出される前記作動媒体を、前記冷却部において、前記回収経路を流れる冷媒により冷却する点を特徴とする。
【0023】
本発明の第5特徴構成によれば、上記の第4特徴構成による効果に加えて、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において、十分低い温度である前記回収経路を流れる冷媒により冷却することができる。
【0024】
つまり、前記ヒートポンプにおいて、前記回収経路を流れる冷媒は減圧することになるが、このとき冷媒の温度は十分低い温度に低下することになり、この前記回収経路を流れる十分低い温度に低下した冷媒により、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において冷却できるものとなる。
【0025】
また、前記排出口から排出される作動媒体を前記回収経路を流れる冷媒により冷却する際に前記排出口から排出される作動媒体の熱エネルギは冷媒に移動することになり、効率の良い発電システムの稼働が可能になる。
【0026】
すなわち、前記タービンにおいて発電用の動力として有効に利用できなかった、低温である作動媒体の熱エネルギを前記ヒートポンプで高温の熱エネルギへと変換するために有効に利用できることができる。
【0027】
要するに、第5特徴構成によれば、この十分低い温度に低下した前記回収経路を流れる冷媒により、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において好適に冷却でき、また、効率の良い発電システムの稼働が可能になるものとなる。
【0028】
本発明の第6特徴構成は、上記した第5特徴構成に加えて、前記回収経路を流れる冷媒が前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収した後に、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却する点を特徴とする。
【0029】
本発明の第6特徴構成によれば、上記の第5特徴構成による効果に加えて、冷媒が、前記排出口から排出される作動媒体を前記冷却部において冷却する前に前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収ことができるから、前記外気熱交換器における上記システムの外部からの熱と冷媒との温度差が大きいものとなり、上記ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなることで、さらに効率の良い発電システムとすることができる。
【0030】
つまり、冬場のように上記システムの外部からの熱の温度が低く、上記システムの外部からの熱の温度が、前記排出口から排出される前記作動媒体の温度より低い場合などは、上記システムの外部からの熱と冷媒との温度差が大きい状態で、冷媒が前記外気熱交換器においてシステムの外部からの熱を吸収して、冷媒の温度が多少上昇した後であっても、冷媒はさらに、前記冷却部において作動媒体からの熱を吸収することができるから、上記ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなり、効率の良い発電システムとなるのである。
【0031】
要するに、第6特徴構成によれば、上記システムの外部からの熱の温度が低い場合にも効率の良い発電システムとすることが可能となる。
【0032】
本発明の第7特徴構成は、上記した第1特徴構成、または第2特徴構成に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含む気体で、前記循環手段が作動媒体用圧縮機である点を特徴とする。
【0033】
本発明の第7特徴構成によれば、上記の第1特徴構成、または第2特徴構成による効果に加えて、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体を液体とすることができない場合にも、前記循環手段としての作動媒体用圧縮機により前記作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0034】
つまり、本願による発電システムにおいて、前記真発生電力獲得条件で運転されるように構成するためには、前記排出口における前記作動媒体の圧力や温度が、前記冷却部によっても十分液化できない場合が考えられる。
【0035】
このような場合には、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体であることに起因して、前記循環手段が前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する際に気体である前記作動媒体を圧縮することで前記作動媒体に対して熱力学的仕事を行うことになり、発電電力と総和電力の差を小さくすることになるから、システム外において利用できる前記電気エネルギが小さくなるものの、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含むことで、前記真発生電力獲得条件で運転されるように構成できるものとなる。
【0036】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が気体であっても、前記作動媒体の液相を含むことで、前記真発生電力獲得条件で安定して運転されるように構成できるものとなる。
【0037】
本発明の第8特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記冷媒をCO2、前記作動媒体をブタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にした運転条件に設定されることを特徴とする。
【0038】
本発明の第8特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、COP(成績係数)が3以上のヒートポンプと発電効率が0.65程度(または0.65以上)の作動媒体発電サイクル部とにより、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体流量を小さい値とすることができるので、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0039】
つまり、前記冷媒をCO2(二酸化炭素)とすることでCOP(成績係数)が3以上のヒートポンプは得られるものであり、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとした場合には、作動媒体の持つ熱エネルギから電力への変換効率である発電効率が0.65となるように構成できるものであり、
前記作動媒体をブタンとして、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃とした場合には、ヒートポンプのCOP(成績係数)を3程度に維持しながら、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にし、前記作動媒体であるブタンが前記作動媒体熱交換器において気化しヒートポンプから熱エネルギが十分与えられた気体となるように構成することが可能であるから、前記総和電力より前記発電電力が大きくなるように設定される運転条件で運転されるように構成できる。
【0040】
因みに、前記導入口温度を高くしすぎるとヒートポンプのCOP(成績係数)が低下し、前記導入口温度を低くしすぎると作動媒体が完全に気化されにくいからヒートポンプから熱エネルギが十分与えられ難いものとなり、作動媒体として沸点の低い物質を用いた場合には前記作動媒体熱交換器の入り口において作動媒体中に含まれる液相の割合が低下することで当該発電システムにおける効率の低下を招くことになる。
【0041】
また、前記導入口温度を低くしすぎると、作動媒体が完全に気化されたとしても作動媒体の単位質量当りの熱エネルギ搬送量が低下するから、作動媒体流量が大きい値となることに起因して、作動媒体熱交換器や循環手段の大型化を招く。
【0042】
要するに、第8特徴構成によれば、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0043】
本発明の第9特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記冷媒をCO2、前記作動媒体をペンタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略100℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にして、かつ、前記導入口圧力を前記排出口の圧力より略0.6MPa高くした運転条件に設定されることを特徴とする。
【0044】
本発明の第9特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第7特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、COP(成績係数)が3程度のヒートポンプと発電効率が0.65程度の作動媒体発電サイクル部とにより、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができ、かつ、作動媒体流量を小さい値とすることができるので、作動媒体熱交換器や循環手段が小型化でき循環手段の設計を容易に行うことができるものとなる。
【0045】
要するに、第9特徴構成によれば、真発生電力獲得条件を満足する発電システムが構成することができる。
【0046】
本発明の第10特徴構成は、上記した第1特徴構成〜第9特徴構成のいずれかに加えて、前記作動媒体流路から前記循環手段への前記作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備する点を特徴とする。
【0047】
本発明の第10特徴構成によれば、上記した第1特徴構成〜第9特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記作動媒体熱交換器において前記ヒートポンプによる加熱により上昇した前記作動媒体の圧力が前記循環手段の吐出圧力よりも高くなった場合に、前記作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるものとなる。
【0048】
本発明の第11特徴構成は、上記した第2特徴構成〜第10特徴構成のいずれかに加えて、前記発電電力を蓄電するバッテリーを備え、前記バッテリーから前記総和電力が供給される点を特徴とする。
【0049】
本発明の第11特徴構成によれば、上記した第2特徴構成〜第10特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記発電電力と前記総和電力の差の電力を蓄電しておくことで、本発電システムに対する負荷が過渡的に上昇した場合にも安定して本発電システム外部に電力供給ができるものとなる。また、当該発電システムの起動時に外部商用電源との接続などを必要としない、自力始動可能な発電システムが構成できるものとなる。
【0050】
また、電気自動車に本発電システムを搭載する場合に、本発電システムのバッテリーと電気自動車のバッテリーとを共用できるから、省資源であり低コストに構成可能となる。
【0051】
本発明の第12特徴構成は、上記した第2特徴構成〜第11特徴構成のいずれかに加えて、前記総和電力の電力系統および前記発電電力の電力系統と外部商用電源とを結合するパワーコンディショナーを設け、外部商用電源と逆潮流自在に接続される点を特徴とする。
【0052】
本発明の第12特徴構成によれば、上記した第2特徴構成〜第11特徴構成による作用効果のいずれかに加えて、前記発電電力が前記総和電力より大きいときには余剰電力を逆潮流により外部商用電源に回生することで外部商用電源側における発電負荷が減少され、本発電システムに対する負荷が過渡的に上昇した場合には商用電源から安定した電力供給が可能となる構成とすることができる。また、バッテリーの搭載の有無に関わらず安定な発電システムが構成できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態における構成を示す図
【図2】別実施例における構成を示す図
【図3】別実施例における構成を示す図
【図4】第1実施形態における冷媒の状態説明図
【図5】第1実施形態における作動媒体の状態説明図
【図6】実施例における発電機の効率を示す図
【図7】ヒートポンプのCOPを示す図
【図8】第1実施形態における作動媒体のポンプ流量を示す図
【図9】第1実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図10】第1実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図11】第1実施形態での外気温17℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図12】第2実施形態における冷媒の状態説明図
【図13】第2実施形態における作動媒体の状態説明図
【図14】第2実施形態における作動媒体のポンプ流量を示す図
【図15】第2実施形態での外気温7℃の種々条件におけるポンプの入出力、真発生電力を示す図表
【図16】第2実施形態における構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0054】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明において、i−ペンタン(イソペンタン)を作動媒体とし、スクリュータービンを用いた場合である第1実施形態を説明する。
なお、以下の説明において圧力を表す場合、絶対圧とは真空を基準にした絶対圧力を表し、ゲージ圧とは大気圧を基準にした相対圧力を表し、このとき基準とする大気圧としては標準気圧(1atm)を用いず、以下の説明において極力端数のない数値により説明できるように便宜的に、基準とする大気圧を絶対圧0.1MPaとしたときの相対圧力で表している。
【0055】
図1、図4に示すように、
H1)低温・低圧(例えば0℃、絶対圧3MPa)の冷媒(本実施例ではCO2)が、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になる。(本実施例ではヒートポンプのCOPが低下する冬場を想定しており、0℃の冷媒が7℃の気体になる。)
【0056】
なお、本実施例における上記CO2は、後述する作動媒体を加熱する用途に使用することから熱媒と称することも考えられるところ、ヒートポンプにおいて一般的に用いられている用語を用いることとし、本願では、上記CO2を冷媒と称しており、本願明細書における冷媒という語句を熱媒という語句に置き換えた発明も同じ発明である。
【0057】
H2)低温・低圧の気体の冷媒が圧縮機2で断熱圧縮され高温・高圧(例えば107℃、絶対圧10MPa)の超臨界状態(超臨界状態とは、気体と液体の中間のような状態)になる。なお、この実施例では、バッテリーから、制御部CONTにより出力制御される圧縮機用インバータINV1を経由して圧縮機2用の電力が供給される。
【0058】
H3)超臨界状態の冷媒の熱エネルギが作動媒体熱交換器3で作動媒体(本実施例ではi−ペンタン(イソペンタン))に熱エネルギとして伝えられ、冷媒の温度が低下し常温・高圧(例えば15℃、絶対圧10MPa)になる。
【0059】
H4)膨張弁4で冷媒が減圧し、低温・低圧(例えば0℃、絶対圧3MPa)になる。
【0060】
上記H1)〜H4)によりヒートポンプサイクルを構成する。なお、以下の説明において上記H1)〜H4)のヒートポンプサイクルを以降においてCO2ヒートポンプサイクルと呼ぶことがある。
【0061】
図1、図5に示すように、
S1)ポンプ5により圧送された液体(本実施例では25℃)の作動媒体(本実施例ではi−ペンタン)を作動媒体熱交換器3で高温(本実施例では100℃)に加熱する。
【0062】
このとき、作動媒体熱交換器3で加熱された後の作動媒体温度検出用の温度センサTHの温度が111℃を超えない場合には制御部CONTに備える電力検出部(図示せず)によるINV1の出力が2kWとなるように制御部CONTは圧縮機用インバータINV1を制御し、温度センサTHの温度が111℃を超えた場合にはINV1の出力を低下させるように制御部CONTはインバータINV1を制御する。
なお、温度センサTHの温度が111℃以下となるように制御する理由は、作動媒体の飽和蒸気圧がゲージ圧0.8MPaとなる温度が111℃であることから、温度センサTHの温度が111℃以下となるように制御することで、作動媒体の飽和蒸気圧の大気圧に対する相対圧力がゲージ圧0.8MPaを大きく上回らないようにし、作動媒体の過度の圧力上昇を制限するためである。
【0063】
すなわち、温度センサTHの温度が111℃より低いときは圧縮機用インバータINV1の出力を2kWの一定出力となるようにし、温度センサTHの温度が111℃より高いときは圧縮機用インバータINV1の出力を減少させることで圧縮機2の出力が調整されるから、CO2ヒートポンプサイクルにおいて冷媒が断熱圧縮され高温・高圧になったときの冷媒の温度が、後述する作動媒体との熱交換により調整されることになり、作動媒体が気化されたときの作動媒体の温度が本実施例では111℃以下になるよう制御されている。
【0064】
さらに、制御部CONTは温度検出器THの検出温度T1が一定(本実施例ではi−ペンタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.625MPaとなる温度である100℃)に保つようにモータバルブ8の開度を調節することで、作動媒体は温度が略一定で高圧(本実施例ではゲージ圧力0.625MPa)に保たれる。(i−ペンタンはゲージ圧0.625MPa(=絶対圧0.725MPa)が100℃における飽和蒸気圧である。)
詳述すると、作動媒体熱交換器3におけるCO2ヒートポンプサイクルによる加熱量は圧縮機用インバータINV1の出力2kWに対応する定格加熱量であるから、モータバルブ8の開度を小さくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が低減し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を高くなるように調節でき、モータバルブ8の開度を大きくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を低くなるように調節でき、温度検出器THの検出温度T1は100℃に維持されることになるものである。
【0065】
また、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1および作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1をモータバルブ8の開度によって制御する一方、タービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2を以下のように制御する。なお、この場合、モータバルブ8はポンプ5の下流に配置することが好ましく、モータバルブ8をポンプ5の上流側に配置した場合と比較して、ポンプ5の吸い込み部における圧力低下によるキャビテーションが発生しにくいものとなり、前記キャビテーションに起因するポンプ性能の低下が防止できる。
【0066】
制御部CONTは、作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1(=タービン6の入口(導入口)における圧力)とタービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2との差圧Δp=p1−p2が0.6MPaより小さいときはモータバルブ8の開度を大きくなるように、また、前記差圧Δp=p1−p2が0.6MPaより大きいときはモータバルブ8の開度を小さくなるように制御することで、タービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.6MPa高くなる状態に維持する。
【0067】
このとき、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなったときには圧縮機用インバータINV1の出力を増加するように、また、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が減少して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなったときには圧縮機用インバータINV1の出力を減少するように、制御部CONTにより制御されるから、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1(=タービン6の入口(導入口)における温度)は略100℃の一定に保たれることになる。
【0068】
S2)圧力が略一定で高圧(ゲージ圧0.625MPa)になった作動媒体は、スクリュータービン6の吸込口(導入口)側に導かれ、互いに噛み合った一対のスクリューロータ(図示せず)によって形成される歯形空間内で膨張することで一対のスクリューロータ(図示せず)を回転させる。
【0069】
ここで、さらに詳しく説明すると、一対のスクリューロータは雄スクリューロータと雌スクリューロータからなり、雄スクリューロータと雌スクリューロータの噛合いによって両者とスクリュータービンケーシング内壁との間に生じる歯形空間は、両スクリューロータが回転して噛合いが吸入側から吐出側へ移動するに従って容量が増大するように、両スクリューロータの歯形形状を設定してある。また、スクリュータービンケーシングの一端に取り付けた高圧側妻板に設けた吸込口(導入口)および他端の低圧側妻板に設けた吐出口(排出口)は、雄スクリューロータおよび雌スクリューロータの端面に開口するようにしてあり、かつ、雄スクリューロータおよび雌スクリューロータの外周は、スクリュータービンケーシング内壁によって囲繞されている。
【0070】
また、スクリュータービンの吸込口(導入口)に流入した作動媒体は、雄スクリューロータと雌スクリューロータとスクリュータービンケーシング内壁(妻板を含む)との間に形成された歯形空間内に流入して、同空間の容積を押し拡げるように作用し、そのため雄スクリューロータおよび雌スクリューロータを回転させて、歯形空間内で気化膨張した後、吐出口(排出口)から排出されることになり、この間で回転力としての動力回収が行われるものである。
【0071】
S3)上記のように熱エネルギによってスクリュータービンを回転させ仕事を終えて低温低圧の気体の状態となってスクリュータービンの吐出口(排出口)から排出された作動媒体(本実施例では、36℃の気体となる。因みに本実施例では、上述のようにタービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.6MPa高くなる状態に維持されることによりタービン6の出口(排出口)の圧力はゲージ圧0.025MPaに維持され、(作動媒体i−ペンタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.025MPaとなる温度は33℃であるから、0.025MPa、36℃では気体の状態を維持する。)作動媒体i−ペンタンは凝縮器7で冷却され液体(本実施例では25℃)になる。本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられている。
因みに、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒は、凝縮器7を冷却した後は気相を含む液体の状態であるが7℃より十分低い0℃近い温度を維持している。
なお、本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられているが、凝縮器7を冷却するために、外気Aを用いるなど、別の方法を用いても良い。
【0072】
S4)液体になった作動媒体は繰り返しポンプ5により高圧(本実施例ではゲージ圧0.625MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失)に加圧されて作動媒体熱交換器3に圧送される。
因みに、上述のように作動媒体熱交換器3の出口側で圧力センサPSの検出圧力p1が一定(本実施例ではゲージ圧0.625MPa)に保たれるようにモータバルブ8の開度が調節されるから、本実施例ではポンプ5の吐出側圧力は、ゲージ圧0.6MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失に制御されることとなる。
なお、作動媒体流路からポンプへの作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備しており、何らかの要因により作動媒体熱交換器においてヒートポンプによる加熱により上昇した作動媒体の圧力がポンプの吐出圧力よりも高くなった場合にも、作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるようにしてある。
【0073】
上記S1)〜S4)により作動媒体の循環サイクルを構成する。なお、以下の説明において、上記S1)〜S4)の作動媒体のサイクルを以降において作動媒体サイクルと呼ぶことがある。
【0074】
G1)スクリュータービンの回転力により発電機Gが回転し、作動流体から回収されたエネルギにより発電が行われる。
【0075】
G2)発電機Gにより発生した電気エネルギはレギュレータRを経由して、バッテリーBに蓄電される。
【0076】
G3)この実施例では、ポンプ5として、制御部CONTにより出力制御される直流駆動式のブラシレスモータが用いられており、上述のように圧縮機2用の電力がバッテリーBから供給されていることに加えて、ポンプ5用の電力もバッテリーBから供給される。さらに、制御部CONT用の電力もバッテリーBから供給され、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力もバッテリーBから供給される。
すなわち、 本発明の第1特徴構成における前記制御部用電力には、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力も含まれる。
【0077】
G4)また、外部電源供給用インバータINV2によりバッテリーBからの直流電力を商用周波数(たとえば60Hz)の交流に変換し、システム外部に商用周波数の交流電力が供給される。
【0078】
なお、図1において矢印を含んだ細い実線は冷媒または作動媒体の流れを、破線の矢印は主に信号の流れを、太い実線の矢印は電力の流を示しており、後述する図2、図3においても同様である。なお、上記実施形態における温度、圧力等は一例を示すものであって、本発明は上記数値に限定されるものではない。
【0079】
エネルギ収支を検証するために、作動媒体としてi−ペンタンを用いた場合の各部における仕事率の収支を以下に示す。なお、下記のCOPが小さくなる外気温が7℃において検証する。
【0080】
ここで、
Wz:真発生電力(=W2−W1)[kW]
W1:圧縮機2で消費される電力[kW](実施例では、2kWとしている。)
W2:発電機Gで発生する電力[kW]
COP:CO2ヒートポンプサイクルの成績係数
Wp:発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費率[W]
Qp:作動媒体サイクルにおけるi−ペンタン(作動媒体)の循環流量[kg/h]
Lp:i−ペンタンの潜熱(Latent heat)=0.100[kWh/kg](=357.9[J/g])
Cp:i−ペンタンの比熱=0.000622[kWh/kg・℃](=2.240[J/g・℃])
η:発電効率=W2/Wp(スクリュータービンの場合、スクリューの隙間漏れに伴う熱エネルギの損失、メカ損失、電気的ロスなどにより1より小さい値となる。)
ρ:損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ消費電力に伴うロスなどによる。)
t1:外気温=7[℃](外気温が低く悪条件となる冬場を想定している。)
t2:作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度[℃]
t3:作動媒体熱交換器3の入口におけるi−ペンタンの温度=25[℃]
Δt:t2とt1の差(=t2−t1)[℃]
とすると、以下のようになる。
【0081】
i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ、すなわちi−ペンタンがCO2ヒートポンプサイクルから得る単位時間当たりの熱エネルギは、
W1*COP・・・・・(1)
である。また、図7から、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−7)+7.23
COP=7.59−0.051*t2・・・・・・・・・(2)
であり、損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ駆動エネルギ消費率)や冷却部7における熱の授受が無いとするとこの、i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ(熱エネルギ)は、発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費と等しい。
なお、冷却部7における熱の授受に関しては、損失や上述の発電効率に関連する熱エネルギの損失に含められていると考えることができる。
【0082】
ここで、液体のi−ペンタンがt2になった状態で上述のように気体であるとして、その乾き度を1(湿り度=0)とすると、i−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは、
Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)・・・・・(3)
であり、システムが継続して稼働する定常状態においてはi−ペンタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは発電のためにスクリュータービン6で消費されるi−ペンタンの熱エネルギ消費率と等しいから(1)(3)式より
W1*COP=Wp=Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)・・・・・・・・(4)
ここで、Qpとt2の関係を(2)(4)から求めると、
Cp*Qp*(t2−t3+1*Lp/Cp)=(7.59−0.051*t2)*W1
だから、
Qp=〔(7.59−0.051*t2)*W1〕/〔(t2−t3)Cp+1*Lp〕
これに、W1=2kW、t3=25℃、Cp=0.000622、Lp=0.100を代入すると、
Qp=〔(7.59−0.051*t2)*2〕/〔(t2−25)0.000622+1*0.100〕
=(15.18−0.102*t2)/(0.000622*t2−0.01555+0.100)
=(15.18−0.102*t2)/(0.000622*t2+0.08445)・・・・・(5)
(5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体i−ペンタンの流量Qp(kg/h)との関係が求まる。(図8参照。)
【0083】
なお、上記においては、液体のi−ペンタンがt2になった状態で気体でありその乾き度を1としたが、この乾き度が1より小さくなれば作動媒体が蓄える熱エネルギに占める潜熱の割合が小さくなるからQp(kg/h)は大きくなることになる。
また、上記において、ないものとした損失を考慮すると、発電機Gで発生する電力は、
W2=η*(1−ρ)*Wp
=η*(1−ρ)*W1*COP・・・・・・(6)
(6)に(2)を代入して、
W2=η*(1−ρ)*W1*(7.59−0.051*t2)・・・・・(7)
だから、真発生電力は、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(7.59−0.051*t2)−1〕W1・・・・・(8)
【0084】
上述のように式(5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体i−ペンタンの流量Qp(kg/h)と7とを表している。因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図8においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄い。
また、作動媒体熱交換器3の出口温度t2が小さいときは作動媒体i−ペンタンの流量Qpが大きくなるためi−ペンタン用配管における圧力損失が大型化すると共にポンプ5が大型化することとなってしまうため、装置小型化の観点からは、作動媒体熱交換器3の出口温度t2は高くすることが望ましい。
【0085】
式(2)により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOPの値が求まり、式(8)にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWzの値が求まる。(図9参照。)
発電効率ηは図6のようにスクリュータービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じて変化し、図9においては、η*(1−ρ)として0.4、0.5、0.6、0.7のそれぞれについてWzを求めてある。(後述の図10も同様。)
図9において太い罫線で囲んだWzの値が正の値となっている升目が真発生電力獲得条件を満足する運転条件によるWzの値である。
因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図9においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
図6から、スクリュータービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)が0.6MPa付近で発電効率ηが略0.65の値となるピークとなることに基づき本実施例における発電システムの運転状態が定められている。
【0086】
なお、図9においてポンプ出力は、
ポンプ出力〔kW〕=(ポンプ揚程〔MPa〕/i−ペンタン比重(=0.62)*i−ペンタン質量流量〔kg/h〕)/3600により求まり、ポンプ入力〔kW〕を求めるにあたりポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)を0.3としている。
また、図9においては、損失ρにポンプ入力が含まれるとしてWzの値を示しているが、ポンプ入力の影響の程度が確認できるように上記のようにして求めたWzの値からさらにポンプ入力を差し引いた値(Wz〔kW〕−ポンプ入力〔kW〕)も参考として併記してある。(後述の図10も同様。)
【0087】
Wz〔kW〕の値が正の値となっている条件が、「真発生電力獲得条件」であり、「真発生電力獲得条件」を満足するとき、システムは外部からの電力や燃料などのエネルギの供給がない状態で外気が持つ熱エネルギを電力に変換して電力を継続的に発生できる。
したがって、「真発生電力獲得条件」においてはCO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できる。
【0088】
さらに、図10には作動媒体熱交換器3の設計の都合により作動媒体経路の圧力損失が大きくなった場合を想定し、作動媒体熱交換器3の出口圧力として大気との相対圧0.7MPaを得るために作動媒体熱交換器3の入口圧力として1MPa必要になったとき、すなわちポンプ揚程が0.9MPa(=1−0.1〔MPa〕)としたときで、ポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)をO.3としたときの値を表している。因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図10においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
【0089】
図9と図10とで「真発生電力獲得条件」は大きく変わらないものであり、ポンプ揚程が0.9MPaとなっても「真発生電力獲得条件」においては、外部からの燃料や電源供給を受けない状態であるから、CO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できることを表している。
【0090】
上記では、COPが小さくなる、外気温を7℃とした時の検証であるが、外気温を17℃とした時について更に検証する。
【0091】
上記と同様に、 W1*COP・・・・・(1)
である。また、図7におけるt1に17(℃)を代入すると、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−17)+7.23
COP=8.10−0.051*t2・・・・・・・・・(2)’
同様に、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(8.10−0.051*t2)−1〕W1・・・・・(8)’
式(2)’により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOP(外気温17℃のとき)の値が求まり、式(8)’にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWz(外気温17℃のとき)の値が求まる。(図11参照。)因みに、i−ペンタンがゲージ圧0.625MPaにおいて気体であるためには、t2は99℃以上である必要があろうから、図11においてt2が100℃未満の部分では気化され難いものであるから実用化との関連が薄いため斜線を付してある。
【0092】
前述の図9では、外気温7℃の時には、作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度t2を100℃としたとき、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPは2.5程度であり、η*(1−ρ)が0.6のとき、真発生電力Wzとして得られる電力は1kW程度であったが、図11は、外気温17℃の時には、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPが3に上昇することにより、作動媒体熱交換器3の出口におけるi−ペンタンの温度t2を100℃としたとき、η*(1−ρ)が0.6のとき、真発生電力Wzとして1.6kW程度得られることを表している。
【0093】
すなわち、本発明による発電システムの特徴は、気温が低いときに比べて気温が高いほど真発生電力Wzが大きくなることであり、気温が高くなり電力需要が増大する夏季にこそ該発電システムが効率よく稼動するものであることを示唆している。
【0094】
〔第2実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明において、n−ブタン(ノルマルブタン)を媒体とし、スクロール式のタービンを用いた場合である第2実施形態を説明する。なお、i−ブタン(イソブタン)を作動媒体とした場合、i−ブタンはn−ブタンと多少物性値が異なるものの、ほぼ同様の結果となるから、作動媒体としては、n−ブタンとi−ブタンの何れを用いてもよく、n−ブタンとi−ブタンとを混合して用いても良い。
【0095】
上記第1実施形態においては、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が、先ず、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になるように構成してあるが、この第2実施形態では、冷媒が前記外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収した後に、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体を冷却するように構成してある。(図16参照。)
【0096】
このように構成することで、冬場のように外気Aの温度が低く(例えば気温7℃)、外気Aの温度が、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体の温度(第2実施例の場合で、例えば40℃)より低い場合などは、外気Aと冷媒(例えば−10℃)との温度差が大きい状態で、冷媒が外気熱交換器1において外気Aの熱を吸収して、冷媒の温度が多少上昇(例えば7℃程度に上昇)した後であっても、冷媒はさらに、冷却部7において作動媒体(例えば40℃)からの熱を吸収することができるから、ヒートポンプにおける成績係数(COP)が高くなり、さらに効率の良い(高い)発電システムが構成できる。
【0097】
また、第1実施形態と同様に、以下の説明において圧力を表す場合、絶対圧とは真空を基準にした絶対圧力を表しゲージ圧とは大気圧を基準にした相対圧力を表し、このとき基準とする大気圧としては標準気圧(1atm)を用いず、以下の説明において極力端数のない数値により説明できるように便宜的に、基準とする大気圧を絶対圧0.1MPaとしたときの相対圧力で表している。
【0098】
図16、図12に示すように、
H1)低温・低圧(例えば−10℃、絶対圧3MPa)の冷媒(本実施例ではCO2)が、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になる。(本実施例ではヒートポンプのCOPが低下する冬場を想定しており、−10℃の冷媒が7℃の気体になる。)
【0099】
その後、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得て温度が上昇する。(例えば30℃、絶対圧3MPaの気体になる。)
【0100】
なお、本実施形態における上記CO2は、後述する作動媒体を加熱する用途に使用することから熱媒と称することも考えられるところ、ヒートポンプにおいて一般的に用いられている用語を用いることとし、本願では、上記CO2を冷媒と称している。
【0101】
H2)低温・低圧の気体の冷媒が圧縮機2で断熱圧縮され高温・高圧(例えば97℃、絶対圧10MPa)の超臨界状態(超臨界状態とは、気体と液体の中間のような状態)になる。なお、この実施例では、バッテリーから、制御部CONTにより出力制御される圧縮機用インバータINV1を経由して圧縮機2用の電力が供給される。
【0102】
H3)超臨界状態の冷媒の熱エネルギが作動媒体熱交換器3で作動媒体(本実施例ではn−ブタン(ノルマルブタン))に熱エネルギとして伝えられ、冷媒の温度が低下し常温・高圧(例えば35℃、絶対圧10MPa)になる。
【0103】
H4)膨張弁4で冷媒が減圧し、低温・低圧(例えば−10℃、絶対圧3MPa)になる。
【0104】
上記H1)〜H4)によりヒートポンプサイクルを構成する。なお、以下の説明において上記H1)〜H4)のヒートポンプサイクルを以降においてCO2ヒートポンプサイクルと呼ぶことがある。
【0105】
図16、図13に示すように、
S1)ポンプ5により圧送された液体(本実施例では30℃)の作動媒体(本実施例ではn−ブタン)を作動媒体熱交換器3で高温(本実施例では90℃)に加熱する。
【0106】
このとき、作動媒体熱交換器3で加熱された後の作動媒体温度検出用の温度センサTHの温度が100℃を超えない場合には制御部CONTに備える電力検出部(図示せず)によるINV1の出力が定格電力である2kWとなるように制御部CONTは圧縮機用インバータINV1を制御し、温度センサTHの温度が100℃を超えた場合にはINV1の出力を低下させるように制御部CONTはインバータINV1を制御する。
なお、温度センサTHの温度が100℃以下となるように制御する理由は、作動媒体の飽和蒸気圧がゲージ圧1.39MPa(=絶対圧1.49MPa)となる温度が100℃であることから、温度センサTHの温度が100℃以下となるように制御することで、作動媒体の飽和蒸気圧の大気圧に対する相対圧力がゲージ圧1.39MPaを大きく上回らないようにし、作動媒体の過度の圧力上昇を制限するためである。
【0107】
すなわち、温度センサTHの温度が100℃より低いときは圧縮機用インバータINV1の出力を2kWの定格出力となるようにし、温度センサTHの温度が100℃より高いときは圧縮機用インバータINV1の出力を減少させることで圧縮機2の出力が調整されるから、CO2ヒートポンプサイクルにおいて冷媒が断熱圧縮され高温・高圧になったときの冷媒の温度が、後述する作動媒体との熱交換により調整されることになり、作動媒体が気化されたときの作動媒体の温度が本実施例では100℃以下になるよう制御されている。
【0108】
さらに、制御部CONTは温度検出器THの検出温度T1が一定(本実施例ではn−ブタンの飽和蒸気圧がゲージ圧1.127MPaとなる温度である90℃)に保つようにモータバルブ8の開度を調節することで、作動媒体は温度が略一定で高圧(本実施例ではゲージ圧力0.9MPa)に保たれる。(n−ブタンはゲージ圧1.127MPa(=絶対圧1.227MPa)が90℃における飽和蒸気圧であるから十分気化している。)
詳述すると、作動媒体熱交換器3におけるCO2ヒートポンプサイクルによる加熱量は圧縮機用インバータINV1の出力2kWに対応する定格加熱量であるから、モータバルブ8の開度を小さくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が低減し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を高くなるように調節でき、モータバルブ8の開度を大きくすることで作動媒体熱交換器3における作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加し作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなると共に作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力を低くなるように調節でき、温度検出器THの検出温度T1は90℃に維持されることになるものである。
【0109】
また、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1および作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1をモータバルブ8の開度によって制御する一方、タービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2を以下のように制御する。なお、この場合、モータバルブ8はポンプ5の下流に配置することが好ましく、モータバルブ8をポンプ5の上流側に配置した場合と比較して、ポンプ5の吸い込み部における圧力低下によるキャビテーションが発生しにくいものとなり、前記キャビテーションに起因するポンプ性能の低下が防止できる。
【0110】
制御部CONTは、作動媒体流路の出口における圧力センサPSによる作動媒体の検出圧力p1(=タービン6の入口(導入口)における圧力)とタービン6の出口(排出口)における第2圧力センサPS2による検出圧力p2との差圧Δp=p1−p2が0.67MPaより小さいときはモータバルブ8の開度を大きくなるように、また、前記差圧Δp=p1−p2が0.67MPaより大きいときはモータバルブ8の開度を小さくなるように制御することで、タービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.67MPa高くなる状態に維持して前記差圧Δpを0.6MPa以上に保ち、タービン6の効率を維持する。
【0111】
このとき、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が増加して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が低くなったときには圧縮機用インバータINV1の定格出力を徐々に増加させるように変更設定するように、また、モータバルブ8の開度が変更されて作動媒体熱交換器3の作動媒体流路を流れる作動媒体の時間当たり流量が減少して作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1が高くなったときには圧縮機用インバータINV1の定格出力を徐々に減少させるように変更設定するように、制御部CONTにより制御されるから、作動媒体流路の出口における温度検出器THによる作動媒体の検出温度T1(=タービン6の入口(導入口)における温度)は略90℃の一定に保たれることになる。
【0112】
S2)圧力が略一定で高圧(ゲージ圧0.9MPa)になった作動媒体は、スクロールタービン6の吸込口(導入口)側に導かれ、互いに噛み合った固定スクロール及び旋回スクロール(図示せず)によって形成される渦巻状空間内で膨張することで旋回スクロール(図示せず)を旋回させる。
【0113】
ここで、さらに詳しく説明すると、スクロールタービンは、密閉容器の内部に、鏡板から渦巻き状に立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを噛み合わせて双方間に膨張室を形成し、上記旋回スクロールを自転規制機構による自転の規制のもとに円軌道に沿って旋回させたとき上記膨張室が容積を変えながら移動することで、吸入、膨張、吐出を行う膨張機構部を備えたスクロール膨張機によって、作動媒体が持つ熱エネルギを機械エネルギに変換するものである。
【0114】
旋回スクロールと主軸受部材(図示せず)との間に旋回スクロールの自転を防止して円軌道運動するように案内する自転規制機構(図示せず)を設けて、クランク軸(図示せず)の上端にある偏心軸部(図示せず)にて旋回スクロールを偏心駆動することにより旋回スクロールを円軌道運動させている。これにより固定スクロールと旋回スクロールとの間に形成している膨張室が中央部から外周側に移動しながら容積が大きくなるのを利用して作動媒体の膨張を行い、上記クランク軸を回転させる。なお、この種のスクロールタービンは、エアコンディショナにおいて冷凍サイクル装置を構成する膨張機、圧縮機に用いられているものと同等の原理により作動するように構成されているものである。
【0115】
上述のように、スクロールタービンの吸込口(導入口)に流入した作動媒体は、上記クランク軸を回転させて膨張した後に吐出口(排出口)から排出されることになり、この間で回転力としての動力回収が行われるものである。
【0116】
S3)上記のように熱エネルギによってスクロールタービンを旋回させ仕事を終えて低温低圧の気体の状態となってスクロールタービンの吐出口(排出口)から排出された作動媒体(本実施例では、40℃の気体となる。因みに本実施例では、上述のようにタービン6の入口(導入口)の圧力がタービン6の出口(排出口)の圧力より0.67MPa高くなる状態に維持されることによりタービン6の出口(排出口)の圧力はゲージ圧0.23MPaに維持され、(作動媒体n−ブタンの飽和蒸気圧がゲージ圧0.23MPa(=絶対圧0.33MPa)となる温度は35℃であるから、ゲージ圧0.23MPa、40℃では気体の状態を維持する。)作動媒体n−ブタンは凝縮器7で冷却され液体(本実施例では30℃)になる。本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられている。
【0117】
因みに、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒は、凝縮器7を冷却した後は気相を含む液体の状態であるが7℃より十分低い0℃近い温度を維持している。
なお、本実施例では、凝縮器7を冷却するために上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が用いられているが、凝縮器7を冷却するために別の方法を用いても良い。
【0118】
S4)液体になった作動媒体は繰り返しポンプ5により高圧(本実施例ではゲージ圧0.9MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失)に加圧されて作動媒体熱交換器3に圧送される。
因みに、上述のように作動媒体熱交換器3の出口側で圧力センサPSの検出圧力p1が一定(本実施例ではゲージ圧0.9MPa)に保たれるようにモータバルブ8の開度が調節されるから、本実施例ではポンプ5の吐出側圧力は、ゲージ圧0.9MPa+作動媒体熱交換器3における圧力損失に制御されることとなる。
なお、作動媒体流路からポンプへの作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備しており、何らかの要因により作動媒体熱交換器においてヒートポンプによる加熱により上昇した作動媒体の圧力がポンプの吐出圧力よりも高くなった場合にも、作動媒体が逆流することにより発生する不都合が回避できるようにしてある。
【0119】
上記S1)〜S4)により作動媒体の循環サイクルを構成する。なお、以下の説明において、上記S1)〜S4)の作動媒体のサイクルを以降において作動媒体サイクルと呼ぶことがある。
【0120】
G1)スクロールタービンの回転力により発電機Gが回転し、作動流体から回収されたエネルギにより発電が行われる。
【0121】
G2)発電機Gにより発生した電気エネルギはレギュレータRを経由して、バッテリーBに蓄電される。
【0122】
G3)この実施例では、ポンプ5駆動用モータとして、制御部CONTにより出力制御される直流駆動式のブラシレスモータが用いられており、上述のように圧縮機2用の電力がバッテリーBから供給されていることに加えて、ポンプ5用の電力もバッテリーBから供給される。さらに、制御部CONT用の電力もバッテリーBから供給され、制御部CONTに接続されるセンサ類や、ポンプ5および圧縮機2以外のアクチュエータ類で消費される電力もバッテリーBから供給される。
【0123】
G4)また、外部電源供給用インバータINV2によりバッテリーBからの直流電力を商用周波数(たとえば60Hz)の交流に変換し、システム外部に商用周波数の交流電力が供給される。
【0124】
なお、図16において矢印を含んだ細い実線は冷媒または作動媒体の流れを、破線の矢印は主に信号の流れを、太い実線の矢印は電力の流を示している点は、前述した図1〜図3と同様である。なお、本実施形態においても、温度、圧力等は一例を示すものであって、本発明は上記数値に限定されるものではない。
【0125】
エネルギ収支を検証するために、作動媒体としてn−ブタンを用いた場合の各部における仕事率の収支を以下に示す。なお、下記のCOPが小さくなる外気温が7℃において検証する。
【0126】
ここで、
Wz:真発生電力(=W2−W1)[kW]
W1:圧縮機2で消費される電力[kW](実施例では、2kWとしている。)
W2:発電機Gで発生する電力[kW]
COP:CO2ヒートポンプサイクルの成績係数
Wb:発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費率[W]
Qb:作動媒体サイクルにおけるn−ブタン(作動媒体)の循環流量[kg/h]
Lb:n−ブタンの潜熱(Latent heat)=0.107[kWh/kg](=385.3[J/g])
Cb:n−ブタンの比熱=0.000460[kWh/kg・℃](=1.6581[J/g・℃])
ここで、n−ブタンのガス比熱=0.000668[kWh/kg・℃](=2.405[J/g・℃])、n−ブタンの液比熱=0.000460[kWh/kg・℃](=1.6581[J/g・℃])であるが、以下の計算ではn−ブタンが温度上昇して気化した後はその圧力(絶対圧1.227MPa)における沸点(90℃)付近の温度を概ね維持するから、比熱としては液比熱を用いている。
η:発電効率=W2/Wp(スクロールタービンの場合、スクロールの隙間漏れに伴う熱エネルギの損失、メカ損失、電気的ロスなどにより1より小さい値となる。)
ρ:損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ消費電力に伴うロスなどによる。)
t1:外気温7℃のときに冷媒のCO2が冷却部7において作動媒体(例えば40℃)からの熱を吸収して30℃に上昇する場合の、CO2ヒートポンプサイクルにおける外気温相当温度(=30[℃])
t2:作動媒体熱交換器3の出口におけるn−ブタンの温度[℃]
t3:作動媒体熱交換器3の入口におけるn−ブタンの温度=30[℃]
Δt:t2とt1の差(=t2−t1)[℃]
とすると、以下のようになる。
【0127】
n−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりのエネルギ、すなわちn−ブタンがCO2ヒートポンプサイクルから得る単位時間当たりの熱エネルギは、
W1*COP・・・・・(b1)
である。また、図7から、
COP=−0.051*Δt+7.23
=−0.051*(t2−t1)+7.23
=−0.051*(t2−30)+7.23
COP=8.76−0.051*t2・・・・・・・・・(b2)
であり、損失(放熱ロス+管抵抗ロス+ポンプ駆動エネルギ消費率)が無いとするとこの、n−ブタンが作動媒体熱交換器3と冷却部7で得る単位時間当たりのエネルギ(熱エネルギ)は、発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費と等しい。
【0128】
ここで、液体のn−ブタンがt2になった状態で上述のように気体であるとして、その乾き度を1(湿り度=0)とすると、n−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは、
Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)・・・・・(b3)
であり、システムが継続して稼働する定常状態においてはn−ブタンが作動媒体熱交換器3で得る単位時間当たりの熱エネルギは発電のためにスクロールタービン6で消費されるn−ブタンの熱エネルギ消費率と等しいから(b1)(b3)式より
W1*COP=Wb=Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)・・・・・・・・(b4)
ここで、Qbとt2の関係を(b2)(b4)から求めると、
Cb*Qb*(t2−t3+1*Lb/Cb)=(8.76−0.051*t2)*W1
だから、
Qb=〔(8.76−0.051*t2)*W1〕/〔(t2−t3)Cb+1*Lb〕
これに、W1=2kW、t3=30℃、Cb=0.000460、Lb=0.107を代入すると、
Qp=〔(8.76−0.051*t2)*2〕/〔(t2−30)0.000460+1*0.107〕
=(17.52−0.102*t2)/(0.000460*t2−0.0138+0.107)
=(17.52−0.102*t2)/(0.000460*t2+0.0882)・・・・(b5)
(b5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体n−ブタンの流量Qb(kg/h)との関係が求まる。(図14参照。)
【0129】
なお、上記においては、液体のn−ブタンがt2になった状態で気体でありその乾き度を1としたが、この乾き度が1より小さくなれば作動媒体が蓄える熱エネルギに占める潜熱の割合が小さくなるからQb(kg/h)は大きくなることになる。
また、上記において、ないものとした損失を考慮すると、発電機Gで発生する電力は、
W2=η*(1−ρ)*Wb
=η*(1−ρ)*W1*COP・・・・・・(b6)
(b6)に(b2)を代入して、
W2=η*(1−ρ)*W1*(8.76−0.051*t2)・・・・・(b7)
だから、真発生電力は、
Wz=W2−W1=〔η*(1−ρ)*(8.76−0.051*t2)−1〕W1・・・・(b8)
【0130】
上述のように式(b5)により、作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)と作動媒体n−ブタンの流量Qb(kg/h)との関係が求まり(図14参照。)、図14は、t2が低いほど大きいポンプ流量が要求されることを表している。因みに、n−ブタンがゲージ圧0.9MPaにおいて安定して気体であるためには、t2は90℃以上であれば十分であるが、図14においてt2が90℃未満の部分では、部分的圧力上昇がある場合には作動媒体熱交換器3の出口で作動媒体が気化され難い場合がある点に留意する必要がある。
また、作動媒体熱交換器3の出口温度t2が小さいときは作動媒体n−ブタンの流量Qbが大きくなるためn−ブタン用配管における圧力損失が大型化すると共にポンプ5が大型化することとなってしまうため、装置小型化の観点からは、作動媒体熱交換器3の出口温度t2は高くすることが望ましい。
【0131】
式(b2)により作動媒体熱交換器3の出口温度t2(℃)の値に対するCOPの値が求まり、式(b8)にW1(=2kW)を代入し、t2として種々の値を代入することでt2(℃)の値が種々異なる場合において、η*(1−ρ)に対するWzの値が求まる。(図15参照。)
スクロールタービンの発電効率も前述のスクリュータービンと同様に図6のようにスクロールタービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じて変化し、図15においては、η*(1−ρ)として0.4、0.5、0.6、0.7のそれぞれについてWzを求めてある。
【0132】
図15において太い罫線で囲んだWzの値が正の値となっている升目が真発生電力獲得条件を満足する運転条件によるWzの値である。
因みに、n−ブタンがゲージ圧0.9MPaにおいて気体であるためには、t2は、ゲージ圧1.127MPaにおいて気体である温度90℃以上であれば十分であるが、図15においては、t2が90℃未満の部分では気化され難い場合もあるとの配慮から、実用化には緻密な制御を要するものとして斜線を付してある。
【0133】
本実施形態においても、スクロールタービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)に応じた発電効率ηがピークの値となる状態で本発電システムが稼動するように、本発電システムの運転状態が定められるのであるが、作動媒体としてペンタンを用いる場合と比較して、作動媒体として高圧においても気体の状態となり、しかも、常温付近で液化し得るn−ブタンを用いた場合の方が、タービンの入口(導入口)と出口(排出口)の圧力差(入口圧−出口圧)を大きく設定できるから、高効率な発電システムを構成しやすい。
【0134】
なお、図15においてポンプ出力は、
ポンプ出力〔kW〕=(ポンプ揚程〔MPa〕/n−ブタン液比重(=0.5847)*n−ブタン質量流量〔kg/h〕)/3600により求まり、ポンプ入力〔kW〕を求めるにあたりポンプ効率(ポンプ出力/ポンプ入力)を0.3としている。
また、図15においては、損失ρにポンプ入力が含まれるとしてWzの値を示しているが、ポンプ入力の影響の程度が確認できるように上記のようにして求めたWzの値からさらにポンプ入力を差し引いた値(Wz〔kW〕−ポンプ入力〔kW〕)も参考として併記してある。
【0135】
Wz〔kW〕の値が正の値となっている条件が、「真発生電力獲得条件」であり、「真発生電力獲得条件」を満足するとき、システムは外部からの電力や燃料などのエネルギの供給がない状態で外気が持つ熱エネルギを電力に変換して電力を継続的に発生できる。
したがって、「真発生電力獲得条件」においてはCO2の発生を伴わず。電力を継続的に発生できる。
【0136】
第2実施形態においても、外気温t1が高い場合ほどCOPが大きくなるから、多くの真発生電力が得られることに関しては第1実施形態と同様であるが、詳しい説明は省略する。
【0137】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
[別実施例1]
第1実施形態や第2実施形態のように、モータバルブ8の開度の調節により圧力センサPSの検出圧力が一定(本実施例では0.6MPa)に保つようにするのではなく、モータバルブ8は備えず、制御部CONTからの指令によりポンプ5の速度制御を行うことで圧力センサPSの検出圧力p1と第2圧力センサPS2の検出圧力p2との差圧(=p1−p2)が一定(本実施例では0.6MPa)に保たれるようにすることも可能である。(図2参照)このようにした場合、作動媒体用の配管回路圧力損失が低減できる。この場合のポンプ5の駆動用モータMTとしては、DCブラシレスモータを用いることで速度制御を容易に行うことが可能である。
【0138】
また、ポンプ5の駆動用モータとして一般に普及しているACモータを用いる場合であっても制御部CONTにおけるモータM用の駆動回路をVVVF(可変電圧、可変周波数)インバータで構成しておくことにより優れた速度制御性が得られ、圧力センサPSの検出圧力p1と第2圧力センサPS2の検出圧力p2との差圧を一定(本実施例では0.6MPa)に保つ制御を制度よく行うことができる。
【0139】
[別実施例2]
実施形態として、バッテリーBを搭載しないシステムも可能である。(図3参照。)
この場合、第1実施形態や第2実施形態におけるバッテリーBの箇所は単なるDCリンクLNとしておき外部電源供給用インバータINV2に代え、外部商用電力系統からリンクに電力供給可能で、かつ、DCリンクLNから外部商用電力系統に対し逆潮流可能なパワーコンディショナーPWCNを備えることで、本システムで得られる電力と本システム外部での消費電力に差が生じた場合にも問題なく用いることができるシステムとなる。
【0140】
また、DCリンクLNと並列にバッテリーBを搭載しておき、バッテリーBから外部電源供給用インバータINV2に給電するように構成することも可能で、この場合、外部商用電力系統で停電があった場合でも、外部電源供給用インバータINV2から安定して電力供給が継続できるものとなる。
【0141】
[別実施例3]
CO2以外の冷媒やi−ペンタン以外の作動媒体を用いても良い。たとえば作動媒体をn−ペンタン(ノーマルペンタン)とした場合は、飽和蒸気圧がゲージ圧0.625MPaとなる温度が、i−ペンタンにおいて100℃であるのに対しn−ペンタンにおいては109.6℃と高いので、作動媒体としてi−ペンタンを用いる第1実施形態に比べ、CO2ヒートポンプサイクルの成績係数COPが低下することになるものであるが、液化する温度はn−ペンタンの方がi−ペンタンと比べて高いため、凝縮器7における液化が容易になるとともに、ポンプ5におけるキャビテーションに起因するポンプ性能の低下が発生しなくなるため有利な点を備える。
【0142】
[別実施例4]
また、作動媒体を複数の異なる種類の炭化水素の混合物などで構成することにより、作動媒体熱交換器3からスクリュータービン6に導かれる作動媒体に含まれる蒸気と気体の比率を変更することができるものであり、作動媒体は適宜変更可能である。
【0143】
[別実施例5]
図1〜図3、図16において、ポンプ5を出力が可変制御可能な作動媒体用圧縮機に置き換え、スクリュータービンの吐出口(排出口)からは作動媒体が液相を含む気体が排出されるようにスクリュータービンの吐出口(排出口)の圧力(前述の第2圧力センサPS2における検出圧力p2)が低くなるように運転条件を設定しておくことも可能である。
【0144】
この場合、作動媒体サイクルにおける効率は低下するものの、凝縮器7が不要となり、また、凝縮器7が不要となることに伴い配管も簡素化され、作動媒体として複数の炭化水素などによる混合物が使用されて作動媒体を液体とすることが困難な場合にも、作動媒体用圧縮機により作動媒体の送出を確実に行えるものとなる。
【0145】
[別実施例6]
第1実施形態では、作動媒体をペンタンとしてタービン6をスクリュータービンとし、第2実施形態では、作動媒体をブタンとしてタービン6をスクロールタービンとする実施例を示したが、作動媒体をペンタンとしてタービン6をスクロールタービンとする、または、作動媒体をブタンとしてタービン6をスクリュータービンとするなど適宜変更可能である。
【0146】
さらに、作動媒体として他の物質を用い、タービン6として他の形式のものを用いる等、作動媒体とタービン6は適宜選択可能である。
【0147】
[別実施例7]
上記第1実施形態においては、上述のCO2ヒートポンプサイクルにおける膨張弁4で減圧し低温・低圧の液体となった冷媒が、先ず、凝縮器7で作動媒体を冷却する際に熱エネルギを得た後、外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収して低温・低圧(例えば7℃、絶対圧3MPa)の気体になるように構成してあるが、上記第1実施形態においても、第2実施形態と同様に、冷媒が前記外気熱交換器1で外気Aから熱を吸収した後に、排出口(タービン6の出口)から排出される作動媒体を冷却するように構成してもよい。
【0148】
[別実施例8]
上記第1実施形態や第2実施形態では、圧縮機2、ポンプ5、制御部CONTなど用の、本発電システムで消費される電力(総和電力)として、発電機Gによって発電した電力が供給されているが、圧縮機2、ポンプ5、制御部CONTなど用の、本発電システムで消費される電力を本発電システム外部から供給してもよい。
【0149】
なお、上記の各実施例において、外気熱交換器1における外気Aと作動媒体との熱交換を促進する送風機を設ける場合、該送風機の運転に伴う消費電力(総和電力)の増加分よりも、熱交換の促進によるヒートポンプのCOP上昇に伴う発電電力の増加分が大きくなる場合は、真発生電力Wzが大きくなることになるから、効率の良い発電システムを構成するために、上記送風機を備えて該送風機を適宜運転することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0150】
1 外気熱交換器
2 圧縮機
3 作動媒体熱交換器
4 膨張弁
5 ポンプ(循環手段)
6 タービン(スクリュータービン、または、スクロールタービン)
7 凝縮器(冷却部)
8 モータバルブ
A 外気
B バッテリー
CH 逆止弁
CONT 制御部
D DCリンク
EXPW 外部商用電源
G 発電機
INV1 圧縮機用インバータ
INV2 外部電源供給用インバータ
PS 圧力センサ
PS2 第2圧力センサ
R レギュレータ
TH 温度検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒加熱流路を備えシステムの外部からの熱を吸収し冷媒加熱流路を流れる冷媒に伝え冷媒を気化する外気熱交換器と、前記冷媒加熱流路の出口からの前記冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と、作動媒体を加熱した後に前記作動媒体熱交換器から排出される前記冷媒を回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と、を備え、前記外気熱交換器と前記圧縮機と前記作動媒体熱交換器の冷媒流路と前記回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプを構成し、
さらに、導入口と排出口を具備するタービンを備え、前記作動媒体熱交換器の作動媒体流路を流れる前記作動媒体が前記ヒートポンプによる加熱により気化され、気化された後に前記作動媒体流路の出口から排出される前記作動媒体が前記導入口に導入され前記排出口から排出されることで、気化された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって前記タービンに動力が与えられ、前記動力により発電を行う発電機を備え、前記排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する循環手段を備え、前記作動媒体流路と前記タービンと前記循環手段と前記発電機とからなる作動媒体発電サイクル部を構成し、
前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部を備え、
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力としての電力が供給され、
前記圧縮機駆動電力と前記循環手段駆動電力と前記制御部用電力との総和である総和電力より、前記発電機により発電される発電電力が大きくなるように設定される運転条件である真発生電力獲得条件で運転されるように構成されている発電システム。
【請求項2】
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給されることを特徴とする請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が液体で、前記循環手段がポンプであることを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の発電システム。
【請求項4】
前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えることを特徴とする請求項3記載の発電システム。
【請求項5】
前記排出口から排出される前記作動媒体を、前記冷却部において、前記回収経路を流れる冷媒により冷却することを特徴とする請求項4記載の発電システム。
【請求項6】
前記回収経路を流れる冷媒が前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収した後に、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却することを特徴とする請求項5記載の発電システム。
【請求項7】
前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含む気体で、前記循環手段が作動媒体用圧縮機であることを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の発電システム。
【請求項8】
前記冷媒をCO2、前記作動媒体をブタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にした運転条件に設定されることを特徴とする請求項1〜7記載の発電システム。
【請求項9】
前記冷媒をCO2、前記作動媒体をペンタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略100℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にして、かつ、前記導入口圧力を前記排出口の圧力より略0.6MPa高くした運転条件に設定されることを特徴とする請求項1〜7記載の発電システム。
【請求項10】
前記作動媒体流路から前記循環手段への前記作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備することを特徴とする請求項1〜9記載の発電システム。
【請求項11】
前記発電電力を蓄電するバッテリーを備え、前記バッテリーから前記総和電力が供給されることを特徴とする請求項2〜10記載の発電システム。
【請求項12】
前記総和電力の電力系統および前記発電電力の電力系統と外部商用電源とを結合するパワーコンディショナーを設け、外部商用電源と逆潮流自在に接続されることを特徴とする請求項2〜11記載の発電システム。
【請求項1】
冷媒加熱流路を備えシステムの外部からの熱を吸収し冷媒加熱流路を流れる冷媒に伝え冷媒を気化する外気熱交換器と、前記冷媒加熱流路の出口からの前記冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された前記冷媒により作動媒体を加熱する作動媒体熱交換器と、作動媒体を加熱した後に前記作動媒体熱交換器から排出される前記冷媒を回収し前記外気熱交換器の冷媒加熱流路の入口に導く回収経路と、を備え、前記外気熱交換器と前記圧縮機と前記作動媒体熱交換器の冷媒流路と前記回収経路と前記冷媒とからなるヒートポンプを構成し、
さらに、導入口と排出口を具備するタービンを備え、前記作動媒体熱交換器の作動媒体流路を流れる前記作動媒体が前記ヒートポンプによる加熱により気化され、気化された後に前記作動媒体流路の出口から排出される前記作動媒体が前記導入口に導入され前記排出口から排出されることで、気化された前記作動媒体の持つ熱エネルギによって前記タービンに動力が与えられ、前記動力により発電を行う発電機を備え、前記排出口から排出される前記作動媒体を前記作動媒体流路の入口に送出する循環手段を備え、前記作動媒体流路と前記タービンと前記循環手段と前記発電機とからなる作動媒体発電サイクル部を構成し、
前記ヒートポンプと前記作動媒体発電サイクル部とを制御する制御部を備え、
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力としての電力が供給され、
前記圧縮機駆動電力と前記循環手段駆動電力と前記制御部用電力との総和である総和電力より、前記発電機により発電される発電電力が大きくなるように設定される運転条件である真発生電力獲得条件で運転されるように構成されている発電システム。
【請求項2】
前記圧縮機を駆動するための圧縮機駆動電力、および、前記循環手段を駆動するための循環手段駆動電力、および、前記制御部に供給される制御部用電力として前記発電電力が供給されることを特徴とする請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が液体で、前記循環手段がポンプであることを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の発電システム。
【請求項4】
前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却液化する冷却部を備えることを特徴とする請求項3記載の発電システム。
【請求項5】
前記排出口から排出される前記作動媒体を、前記冷却部において、前記回収経路を流れる冷媒により冷却することを特徴とする請求項4記載の発電システム。
【請求項6】
前記回収経路を流れる冷媒が前記外気熱交換器によってシステムの外部からの熱を吸収した後に、前記排出口から排出される前記作動媒体を冷却することを特徴とする請求項5記載の発電システム。
【請求項7】
前記循環手段の入り口に流入する前記作動媒体が前記作動媒体の液相を含む気体で、前記循環手段が作動媒体用圧縮機であることを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の発電システム。
【請求項8】
前記冷媒をCO2、前記作動媒体をブタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略90℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にした運転条件に設定されることを特徴とする請求項1〜7記載の発電システム。
【請求項9】
前記冷媒をCO2、前記作動媒体をペンタン、前記タービンをスクロールタービンまたはスクリュータービンとし、前記真発生電力獲得条件が、前記導入口における前記作動媒体の温度である導入口温度を略100℃として、かつ、前記導入口における前記作動媒体の圧力である導入口圧力を前記導入口温度における前記作動媒体の飽和蒸気圧以下にして、かつ、前記導入口圧力を前記排出口の圧力より略0.6MPa高くした運転条件に設定されることを特徴とする請求項1〜7記載の発電システム。
【請求項10】
前記作動媒体流路から前記循環手段への前記作動媒体の逆流を阻止する逆止弁を具備することを特徴とする請求項1〜9記載の発電システム。
【請求項11】
前記発電電力を蓄電するバッテリーを備え、前記バッテリーから前記総和電力が供給されることを特徴とする請求項2〜10記載の発電システム。
【請求項12】
前記総和電力の電力系統および前記発電電力の電力系統と外部商用電源とを結合するパワーコンディショナーを設け、外部商用電源と逆潮流自在に接続されることを特徴とする請求項2〜11記載の発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−7604(P2012−7604A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69095(P2011−69095)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(710005061)
【出願人】(710005072)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(710005061)
【出願人】(710005072)
【Fターム(参考)】
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