説明

発電所の補給水供給設備

【課題】発電所に供給する純水を貯蔵する貯蔵タンクにおいて純水に混入した不純物を除去し、高度に浄化された純水を供給できる、発電所の補給水供給設備を目的とする。
【解決手段】原水を浄化する純水装置51と、純水装置51により浄化された純水を貯蔵する貯蔵タンク52(2次系純水タンク52)と、貯蔵タンク52の純水を浄化する電気再生式脱塩装置53と、貯蔵タンク52の純水を電気再生式脱塩装置53の後段に迂回させるバイパス管67とを備え、浄化した純水を発電所に供給する、発電所の補給水供給設備50。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所の補給水供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電所(以下、PWR型原子力発電所)は、原子炉を有する1次系ラインと、1次系ラインにおいて原子炉から取り出した熱を利用して水蒸気を発生させる蒸気発生器と、蒸気発生器において発生した水蒸気を用いてタービンを駆動することにより発電する2次系ラインとを備えており、前記1次系ラインと2次系ラインとが蒸気発生器を介して分離されている。2次系ラインでは、蒸気発生器において発生した水蒸気によりタービンを駆動することにより発電を行い、タービンを駆動した後の水蒸気は、復水器にて冷却されて復水とされ、給復水系により蒸気発生器に戻される。
【0003】
また、PWR型原子力発電所には、復水器から蒸気発生器に復水を供給する給復水系から漏洩が生じた場合等に、給復水系に大量の純水を補給できるように、純水を貯蔵する大型の2次系純水タンク(貯蔵タンク)を有する補給水供給設備が設けられている。この2次系純水タンクに貯蔵された純水は、通常時には、ポンプ軸封水ブローやサンプリンググラインのフラッシング水等の給復水系から連続的に排出されるブロー水や、復水脱塩装置の再生用水等の一時的に排出されるブロー水のための補給水として使用される。
こういった用途では、2次系純水タンクの貯蔵量に対して使用する純水の量が微量である。そのため、純水は通常2次系純水タンク内に長く滞留しており、その間に、2次系純水タンクからの溶出、タンクベント系からの混入等により純水中の不純物イオン濃度が増加する。
【0004】
そのため、これらの不純物が2次系ライン内に導入されることを防ぐ方法として、例えば、2次系純水タンクの液面にSUS(ステンレス)製の蓋をするダイヤフラムシールの設置が行われている。しかし、ダイヤフラムシールは、タンクベント系からの持ち込み防止に一定の効果があるものの、完全に液面を密閉することができないために若干の不純物の増加が避けられない。また、設置コストが高いために普及が進んでいない。
【0005】
また、2次系純水タンクのアフターポリッシャーとして非再生運用の混床式樹脂塔を設置することも行われている(特許文献1)。このような対策が行われているPWR型原子力発電所の2次系ライン及び補給水供給設備の具体例としては、図1に示すようなものが挙げられる。
【0006】
2次系ラインは、伝熱管12を有する蒸気発生器11、タービン13、復水器14、脱気器17、及び給水加熱器18を備えた循環ラインである。また、復水器14からの復水を浄化する復水脱塩装置15が設けられている。復水脱塩装置15は複数の脱塩塔16を有している。
【0007】
補給水供給設備150は、原水を浄化する純水装置151と、純水装置151にて浄化された純水を貯蔵する2次系純水タンク152を有する。また、2次系純水タンク152に貯蔵された純水を浄化する非再生運用の混床式樹脂塔154(アフターポリッシャー)が設けられている。純水装置151は原水管161でろ過タンク140と連結されており、純水装置151と2次系純水タンク152とが純水管162で連結されており、2次系純水タンク152と混床式樹脂塔154とが純水管163で連結されており、混床式樹脂塔154と復水器14とが純水管164で連結されている。

【特許文献1】特公平3−79077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2次系純水タンクに貯蔵している間、純水中で最も増加する不純物イオンはタンクベント系から混入する炭酸であり、その量は数百ppbに達する。炭酸は発電所の構成材料の腐食に及ぼす影響は少ないとされており、また復水器において真空ポンプで吸引除去されることから炭酸自体は特に問題とならない。しかし、アフターポリッシャーのイオン交換容量が炭酸により消費されると、その他の不純物であるNa、CL、SiO等がアフターポリッシャーから排出されて純水の水質が低下する。
そのため、上記のようなアフターポリッシャーでは、これらの不純物イオンが2次系ラインに持ち込まれるのを防ぐため、イオン交換樹脂を頻繁に交換しなければならず、ランニングコストの負担になっていた。
【0009】
このような問題を解決するための方法として、特許文献1では、アフターポリッシャーのアニオン樹脂の一部又は全部を炭酸型とした炭酸型ポリッシャーを用い、一時的なイオン不純物の増加を防止する方法が示されている。炭酸型ポリッシャーを用いれば、樹脂層内で炭酸に押し出されるCLやSO2−のピークが形成され難く、それらの最大濃度が抑制される。しかしその反面、定常的なCLやSO2−のリークは多くなるため、2次系ラインに定常的に高い濃度の不純物が持ち込まれることになってしまう。復水脱塩装置の運用は復水処理量を低減したバイパス運用が主流であることもあり、これらの不純物が蒸気発生器へと持ち込まれると配管や蒸気発生器の腐食の要因となってしまう。
以上のような理由から、貯蔵タンクに貯蔵されている純水に混入した不純物を除去して高度に浄化された純水を供給する補給水供給設備が望まれている。
【0010】
また、沸騰水型原子力発電所(以下、BWR型原子力発電所)においても、容量は少ないものの同様の貯蔵タンクを設置して純水を貯蔵し、必要量の純水を供給している。そのため、BWR型原子力発電所でもPWR型原子力発電所と同様に、不純物を除去して高度に浄化された純水を供給する補給水供給設備が望まれている。
そこで本発明は、発電所に供給する純水を貯蔵する貯蔵タンクにおいて純水に混入した不純物を除去して、高度に浄化された純水を供給できる、発電所の補給水供給設備を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の補給水供給設備は、原水を浄化する純水装置と、前記純水装置により浄化された純水を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクの純水を浄化する電気再生式脱塩装置と、前記貯蔵タンクの純水を前記電気再生式脱塩装置の後段に迂回させるバイパス管とを備え、浄化した純水を発電所に供給する設備である。
【0012】
また、本発明の補給水供給設備は、前記電気再生式脱塩装置で純水を浄化する際に生成する濃縮水を前記純水装置の原水側に戻すことが好ましい。
また、前記電気再生式脱塩装置の後段に、さらに非再生運用の混床式樹脂塔を備えていることが好ましい。
また、前記電気再生式脱塩装置の内部に、カチオン交換樹脂が有するNa形交換基が、カチオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.2%未満であり、アニオン交換樹脂が有するCL形交換基が、アニオン交換樹脂の総イオン交換容量の2%未満であるイオン交換樹脂が充填されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の補給水供給設備によれば、貯蔵タンクにおいて純水に混入した不純物を除去して、高度に浄化された純水を発電所に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の補給水供給設備は、原水を浄化する純水装置と、純水を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクからの純水を浄化する電気再生式脱塩装置とを備えており、また前記貯蔵タンクの純水を前記電気再生式脱塩装置の後段に迂回させるバイパス管を備えている。
以下、本発明の補給水供給設備の一実施形態例として、PWR型原子力発電所の2次系ラインに純水を供給する補給水供給設備について、図2に基づいて詳細に説明する。PWR型原子力発電所は、原子炉から熱を取り出す1次系ラインと、その熱を利用して発生させた水蒸気を用いて発電する2次系ラインとを有する。
【0015】
2次系ラインは、図2に示すように、伝熱管12を有する蒸気発生器11、タービン13、復水器14、脱気器17、及び給水加熱器18を備えた循環ラインである。また、2次系ラインには、復水器14の後段に復水脱塩装置15が備えられている。
【0016】
蒸気発生器11とタービン13とが蒸気管21で連結されており、復水器14と復水脱塩装置15とが復水管22で連結されており、復水脱塩装置15と脱気器17とが復水管24で連結されており、脱気器17と給水加熱器18とが給水管25で連結されており、給水加熱器18と蒸気発生器11とが給水管26で連結されている。また、復水管22と復水管24の間には復水バイパス管23が設けられている。また、復水管22には復水ポンプ31が設置されており、給水管25には給水ポンプ33が設置されている。また、復水バイパス管23には弁32が設置されている。また、蒸気発生器11と復水器14とがブローダウン管27で連結されており、ブローダウン管27には流出管28が連結されている。
【0017】
蒸気発生器11は、内部に伝熱管12を有しており、1次系ラインの高温、高圧の1次系系統水(1次系ラインを循環する軽水)が伝熱管12内部に導入され、伝熱管12外部に2次系系統水(2次系ラインを循環する軽水)が導入されることにより、2次系系統水が蒸発して水蒸気が発生する。発生した水蒸気は蒸気管21を通ってタービン13に供給される。ついで、供給された水蒸気によりタービン13が駆動され、タービン13に連結された発電機(図示せず)で発電が行われる。
【0018】
その後、水蒸気は復水器14にて冷却されて復水となる。復水器14における復水は、給復水系にて復水器14から蒸気発生器11へと戻される。本実施形態の給復水系は、復水を復水器14から蒸気発生器11に供給するものであり、脱気器17と給水加熱器18を備えている。具体的には、復水器14からの復水は、給復水系において脱気器17で脱気され、給水加熱器18で加熱された後に蒸気発生器11へと戻される。このとき、復水の一部又は全部は、1塔又は複数塔の脱塩塔16を有する復水脱塩装置15にて脱塩処理される。脱塩処理を行わない復水は復水バイパス管23から復水管24へと送られる。復水脱塩装置15にて脱塩処理を行う復水の量は、弁32、34、35の開度を調節することにより制御できる。
【0019】
蒸気発生器11、タービン13、復水器14、復水脱塩装置15、脱気器17、給水加熱器18は、それぞれPWR型原子力発電所において通常用いられるものが使用できる。
【0020】
本実施形態では、前記2次系ラインの復水器14に純水を供給する補給水供給設備50が備えられている。
補給水供給設備50は、純水装置51と2次系純水タンク52と電気再生式脱塩装置53(以下、脱塩装置53という)と、混床式樹脂塔54とを備えている。純水装置51は原水管61でろ過タンク40と連結されており、純水装置51と2次系純水タンク52とが純水管62で連結されており、2次系純水タンク52と脱塩装置53とが純水管63で連結されており、脱塩装置53と混床式樹脂塔54とが純水管64で連結されており、混床式樹脂塔54と復水器14とが純水管65で連結されている。
【0021】
また、純水管63と純水管64との間には、純水を脱塩装置53に通さずに迂回させるバイパス管67が設けられており、バイパス管67には弁71が設置されている。バイパス管67は、蒸気発生器11の冷却等の用途で純水を供給する場合の最大流量に対応できる口径の配管とする。
【0022】
ろ過タンク40には、純水装置51の原水として、河川水等がろ過されたろ過水が貯蔵されている。
【0023】
純水装置51は、原水管61から送られてくる原水を浄化して純水とする装置である。純水装置51としては、原水を浄化できるものであれば特に限定はなく、例えば、逆浸透膜式純水装置や、電気再生式脱塩装置等が挙げられる。
逆浸透膜式純水装置は、逆浸透膜を利用した純水装置であり、従来公知の装置を用いることができる。
また、電気再生式脱塩装置も従来公知の装置を用いることができ、例えば、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、これらのイオン交換膜間に脱塩室、その外側に濃縮室を形成し、これら脱塩室と濃縮室を交互に設けたものが挙げられる。また、前記脱塩室には、通常イオン交換樹脂やイオン交換繊維等のイオン交換体を充填する。これら脱塩室及び濃縮室を交互に配置したものに所定の直流高電圧を印加することにより、脱塩室に通水する原水からアニオン及びカチオンを濃縮室に移行させて浄化を行う。
【0024】
2次系純水タンク52は、純水装置51により浄化した純水を貯蔵することができ、その純水の貯蔵量が蒸気発生器11の冷却等の用途にも充分な量である貯蔵タンクを用いることができる。2次系純水タンク52としては、PWR型原子力発電所の2次系純水タンクとして通常用いられているタンクが使用できる。
【0025】
脱塩装置53としては特に限定はないが、炭酸の除去効率が高いものが好ましい。例えば、図3に示すような、電気再生式脱塩装置が挙げられる。
【0026】
脱塩装置53は、複数の脱イオンモジュール1が、濃縮室5を介して隣接するように配置され、一方の側に陰極6aを有する陰極室6、もう一方の側に陽極7aを有する陽極室7が設けられている。脱イオンモジュール1は、カチオン交換膜2とアニオン交換膜3とが対向して配置されて形成された空間に、イオン交換体が充填されて脱塩室Dが形成されている。脱塩室Dは、前記カチオン交換膜2と前記アニオン交換膜3との間に配置された中間イオン交換膜4によって、脱塩室Dの厚さ方向に二分されており、カチオン交換膜2側に第一小脱塩室D1が形成され、アニオン交換膜3側に第二小脱塩室D2が形成されている。
【0027】
また、第二小脱塩室D2には被処理水流入ラインA1と処理水流出ラインA2が接続されており、第一小脱塩室D1には被処理水流入ラインA3と処理水流出ラインA4が接続されている。また、第二小脱塩室D2の処理水流出ラインA2は、第一小脱塩室D1の被処理水流入ラインA3に連接されている。また、濃縮室5には濃縮水流入ラインB1と濃縮水流出ラインB2が接続されている。また、陰極室6及び陽極室7には、電極水流入ラインC1、C1と、電極水流出ラインC2、C2がそれぞれ接続されている。
また、処理水流出ラインA4は純水管64に連接されている。また、濃縮水流出ラインB2は濃縮水循環ライン66に連接されており、濃縮水循環ライン66の他端が原水管61に接続されている。
脱塩装置53の具体例としては、D2EDI(商品名、オルガノ株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
脱塩室Dに充填されるイオン交換体としては、イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
また、第一脱塩室D1にはカチオン交換樹脂が充填され、第二脱塩室D2にはアニオン交換樹脂が充填されることが好ましい。
脱塩室Dに充填されるカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂は、炭酸を効率的に除去できるものであれば特に限定されないが、カチオン交換樹脂が有するNa形交換基が、カチオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.2%未満であり、アニオン交換樹脂が有するCL形交換基が、アニオン交換樹脂の総イオン交換容量の2%未満であることが好ましい。ただし、総イオン交換容量とは、湿潤状態の単位樹脂量あたりのイオン交換に関わる全てのイオン交換基数を意味する。
カチオン交換樹脂としては、例えば、AMBERJET1024(商品名、ローム&ハースジャパン社製)が挙げられる。
アニオン交換樹脂としては、例えば、AMBERLET4002(商品名、ローム&ハースジャパン社製)が挙げられる。
【0029】
脱塩室Dに充填するカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の組成を前記条件にすることにより、脱塩装置53の後段に混床式樹脂塔54を備えない場合であっても高純度の純水を発電所に供給できる。
また、カチオン交換樹脂が有するNa形交換基は、カチオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.02%未満であることがより好ましい。また、アニオン交換樹脂が有するCL形交換基は、アニオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.2%未満であることがより好ましい。
このようなイオン交換樹脂を用いることにより、より高純度な純水を発電所に供給できる。
【0030】
カチオン交換膜2及びアニオン交換膜3は、電気再生式脱塩装置に通常用いられているものであれば特に限定されず、脱塩装置53の製造の簡便さ、被処理水の水質、処理水量等を考慮して選択すればよい。
中間イオン交換膜4としてはアニオン交換膜を用いることができ、アニオン交換膜3と同じものを用いればよい。
【0031】
この脱塩装置53では、陰極6aと陽極7aとの間に直流電流を通じた状態で、被処理水である2次系純水タンク52からの純水を被処理水流入ラインA1から第二小脱塩室D2に流入させると共に、濃縮水を濃縮水流入ラインB1から濃縮室5に流入させ、電極水を電極水流入ラインC1から陰極室6及び陽極室7に流入させる。濃縮水流入ラインB1から流入させる濃縮水は2次系純水タンク52内の純水を用いる。
被処理水は、第二脱塩室D2で不純物イオンが除去された後、処理水流出ラインA2、非処理水流入ラインA3を経て第一脱塩室D1に流入してさらに不純物イオンが除去されて、処理水流出ラインA4から純水管64へと送られる。
【0032】
濃縮水は、カチオン交換膜2及びアニオン交換膜3を通過してきた不純物イオンを含んだ状態で濃縮水流出ラインB2から排出され、濃縮水循環ライン66を通って原水管61へと戻されて純水装置51の原水として再利用される。脱塩装置53で純水を浄化する際に生成する濃縮水は、不純物イオンの大半が炭酸であり、その濃度も純水装置51の原水に比べて大幅に低いため、このように再利用することにより水利用率を維持したまま補給する純水の水質を向上させることができる。
【0033】
本実施形態例の補給水供給設備50には、非再生運用の混床式樹脂塔54が備えられている。脱塩装置53は処理水の純度が高くなるほど電流の利用効率が低下する傾向がある。そのため、脱塩装置53は炭酸の除去を主目的とし、それ以外の不純物イオンを混床式樹脂塔54で除去するようにすることが好ましい。これにより、炭酸及びその他の不純物イオンの除去効率が向上する。
【0034】
また、本発明の補給水供給設備50では脱塩装置53により炭酸が除去されるため、炭酸が混床式樹脂塔54の負荷とならない。そのため、混床式樹脂塔54を小型の樹脂塔としても樹脂交換の頻度を低減することができる。混床式樹脂塔54に充填するイオン交換樹脂の組成は特に限定されず、例えば、EG−4−HG(商品名、オルガノ株式会社製)が挙げられる。
【0035】
また、本発明の補給水供給設備50は、蒸気発生器11を冷却しなければならない場合等、大量の純水を2次系ラインに供給しなければならない場合は、2次系純水タンク52に貯蔵してある純水を、バイパス管67を通して復水器14や脱気器17等の必要箇所へと供給することができる。
【0036】
以上説明したように本発明の補給水供給設備は、貯蔵タンクの純水を浄化する電気再生式脱塩装置を備えているため、貯蔵タンクにおいて純水に混入した不純物を除去することで高度に浄化された純水を発電所に供給することができる。これにより、蒸気発生器や原子炉等における水質を向上させることができる。
【0037】
また、本発明の補給水供給設備は貯蔵タンクの純水を電気再生式脱塩装置(脱塩装置53)の後段に迂回させるバイパス管が設けられているため、蒸気発生器や原子炉の冷却等が必要な場合にはこのバイパス管を通して大流量の純水を供給できる。通常運転時に供給する純水は前記のような冷却時に比べて極微量であるため、バイパス管を設けることで過大な電気再生式脱塩装置を設ける必要がなくなり、低コストで高純度な純水の供給が可能になる。
【0038】
また、貯蔵タンクに貯蔵された純水に混入した炭酸を電気再生式脱塩装置により除去できるため、その後段に設けた混床式樹脂塔が炭酸による負荷を受けずに炭酸以外の不純物イオンを除去できる。
【0039】
尚、本発明の補給水供給設備は、図2に例示したものには限定されない。例えば、混床式樹脂塔54が備えられていない補給水供給設備であってもよい。また、本実施形態例ではバイパス管67は純水管63と純水管64の間に設けられているが、バイパス管67は2次系純水タンク52(貯蔵タンク)と純水管64とを直接連結しているものであってもよい。
また、電気再生式脱塩装置53も図3に例示したものには限定されない。
また、本発明の補給水供給設備は、図2に例示したようにPWR型原子力発電所の2次系ラインに純水を供給する設備には限定されず、PWR型原子力発電所の1次系ラインやBWR型原子力発電所に純水を供給する設備として用いてもよく、火力発電所に純水を供給する設備として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の補給水供給設備は、蒸気発生器や原子炉の冷却等における大流量での純水の供給が可能で、かつ低コストで高純度な純水を発電所に供給することができるため、PWR型原子力発電所、BWR型原子力発電所、火力発電所等の発電所に純水を供給する設備として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来のPWR型原子力発電所に備えられた補給水供給設備の一例を示した概略図である。
【図2】本発明の補給水供給設備をPWR型原子力発電所に用いた一実施形態例を示した概略図である。
【図3】本発明の電気再生式脱塩装置53の一実施形態例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0042】
50 補給水供給設備 51 純水装置 52 2次系純水タンク 53 電気再生式脱塩装置 54 混床式樹脂塔 67 バイパス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を浄化する純水装置と、前記純水装置により浄化された純水を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクの純水を浄化する電気再生式脱塩装置と、前記貯蔵タンクの純水を前記電気再生式脱塩装置の後段に迂回させるバイパス管とを備え、浄化した純水を発電所に供給する、発電所の補給水供給設備。
【請求項2】
前記電気再生式脱塩装置で純水を浄化する際に生成する濃縮水を前記純水装置の原水側に戻す、請求項1に記載の発電所の補給水供給設備。
【請求項3】
前記電気再生式脱塩装置の後段にさらに非再生運用の混床式樹脂塔を備えた、請求項1又は2に記載の発電所の補給水供給設備。
【請求項4】
前記電気再生式脱塩装置の内部に、カチオン交換樹脂が有するNa形交換基が、カチオン交換樹脂の総イオン交換容量の0.2%未満であり、
アニオン交換樹脂が有するCL形交換基が、アニオン交換樹脂の総イオン交換容量の2%未満であるイオン交換樹脂が充填されている、請求項1〜3のいずれかに記載の発電所の補給水供給設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160554(P2009−160554A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2417(P2008−2417)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【Fターム(参考)】