説明

発電設備用CO2回収装置の運転制御システム

【課題】CO回収装置の制御により各種市場価格に応じて発電設備の運転費用の低減化を図ること。
【解決手段】発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数Eが最大となる態様で、前記吸収塔に送る排ガスの流量、前記吸収塔に送るリーン溶液の送液量、および前記再生塔に送るリッチ溶液の送液量を設定する管理装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備で発生する排ガスからCOを回収するCO回収装置にかかる運転制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発電システムとその運転方法では、CO(二酸化炭素)を回収する装置を備える発電システムにおいて、COの排出権の取引市場から得られる取引価格情報を利用して、COの回収に係わる発電事業者のコストの低減を図ろうとしている。この発電システムは、燃料の燃焼排ガス中のCOを回収するCO回収装置と、排ガスがCO回収装置を迂回するためのバイパス管と、バイパス管の排ガスの流量を制御する第1流量調節弁と、CO回収装置の排ガスの流量を制御する第2流量調節弁と、COの排出権市場での排出権取引金額に関する情報を取得する情報入手システムと、排ガス中のCOの回収処理費用と回収量を算出する計算システムと、算出したCOの回収量に基づき第1流量調節弁および第2流量調節弁を制御する制御システムとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載の発電システムでは、COの排出権取引金額に応じたCOの回収量に基づいてCO回収装置への排ガスの流量を制御している。すなわち、排ガスの流量を制御すれば、当該排ガスの流量に応じて出資されるCOの回収処理費用が変化することになる。しかし、COの排出権取引金額に応じて発電設備の運転費用を削減するにあたって、CO回収装置の運転費用を考慮することが必要であり、そのため、各種市場価格に応じてCO回収装置の運転を制御することが望まれている。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、発電設備で発生する排ガスからCOを回収するCO回収装置に係り、当該CO回収装置の制御により各種市場価格に応じて発電設備の運転費用の低減化を図ることのできる発電設備用CO回収装置の運転制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送る排ガスの流量、および前記再生塔側に送る蒸気量を設定する管理装置を備えることを特徴とする。
【0007】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格が増す傾向にある場合は、排ガスの流量および蒸気量を減らす一方、収入価格が増す傾向にある場合は、排ガスの流量および蒸気量を増すことで、COの回収量が定められた条件において、CO回収装置の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことができる。
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送る排ガスの流量、前記吸収塔に送るリーン溶液の送液量、および前記再生塔に送るリッチ溶液の送液量を設定する管理装置を備えることを特徴とする。
【0009】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格が増す傾向にある場合は、排ガスの流量および吸収液の送液量を減らす一方、収入価格が増す傾向にある場合は、排ガスの流量および吸収液の送液量を増すことで、COの回収量が定められた条件において、CO回収装置の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことができる。
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送るリーン溶液の送液量、前記再生塔に送るリッチ溶液の送液量、および前記再生塔側に送る蒸気量を設定する管理装置を備えることを特徴とする。
【0011】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格が増す傾向にある場合は、吸収液の送液量および蒸気量を減らす一方、収入価格が増す傾向にある場合は、吸収液の送液量および蒸気量を増すことで、排ガスの処理量が定められた条件において、CO回収装置の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことができる。
【0012】
また、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムでは、前記管理装置は、前記発電設備の運転負荷に応じ、前記再生塔の運転圧力を設定することを特徴とする。
【0013】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、特に、発電が低負荷運転で、得られる蒸気が低品位であっても、再生塔の運転能力の低下を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、前記発電設備における前記CO回収装置の運転を制御する制御装置を備えており、前記管理装置は、ネットワーク上を介して前記制御装置と通信可能に接続されていることを特徴とする。
【0015】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、発電設備のCO回収装置の運転制御を遠隔地にて行うことができる。
【0016】
また、本発明の発電設備用CO回収装置の運転制御システムでは、前記管理装置は、ネットワーク上を介して複数の前記発電設備における前記CO回収装置の前記制御装置と通信可能に接続されていることを特徴とする。
【0017】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、複数の発電設備のCO回収装置の運転制御を遠隔地にて統括して行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、CO回収装置の制御により各種市場価格に応じた発電設備の運転費用の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、評価指数の算出例を示す図である。
【図5】図5は、評価指数の算出例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態4に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの概略図である。
【0022】
図1に示すように、発電設備1は、燃料を燃焼させた熱エネルギーにより水を密閉器内で加熱して高温・高圧の過熱蒸気100を得るボイラ11と、ボイラ11からの過熱蒸気100により回転動力を得る蒸気タービン12と、蒸気タービン12の回転動力により発電する発電機13とを主に含んで構成されている。また、符号11aは、ボイラ11から排出される燃焼排ガス(以下、排ガスという)101を通過させる煙道であり、符号11bは煙突である。図には明示しないが、煙突11bは、開閉可能な扉が設けられ、後述のCO回収装置の運転時は閉止される。
【0023】
このような発電設備1は、排ガス101からCO(二酸化炭素)を回収するため、CO回収装置2を含んでいる。図1に示すように、CO回収装置2は、排ガス101を、冷却水102により冷却する冷却塔21と、排ガス101に、COを吸収するアルカノールアミン水溶液などの塩基性アミン化合物吸収液である吸収液103(リーン溶液103a)を向流接触させて排ガス101中のCOを吸収液103に吸収させ、COを除去した排ガス101を排出する吸収塔22と、COを吸収した吸収液103(リッチ溶液103b)を再生する再生塔23とを含み構成されている。
【0024】
冷却塔21において、COを含有する排ガス101は、排ガスブロア21aにより昇圧された後、冷却塔21内に送られ、ここで冷却水102と向流接触して冷却される。冷却水102は、冷却塔21内の下部に溜まっており、冷却水循環ポンプ21bにより冷却塔21の外部の冷却水管21cを経て冷却塔21内の上部に供給される。そして、冷却水102は、冷却塔21内の下部に至る過程で冷却塔21内を上昇する排ガス101と向流接触する。また、冷却水管21cには、冷却水102を冷却する冷却器21dが設けられている。そして、冷却塔21にて冷却された排ガス101は、排ガスブロア21eにより昇圧されつつ排ガス管21fを経て冷却塔21から排出され、吸収塔22に供給される。なお、排ガスブロアとしては、排ガスブロア21eのみ設けられていることが標準であるが、排ガスブロア21aのみ、または排ガスブロア21eおよび排ガスブロア21a双方が設けられている構成であってもよい。ここでは、排ガスブロア21eおよび排ガスブロア21a双方が設けられている構成を例示する。
【0025】
吸収塔22においては、排ガス101を吸収液103(リーン溶液103a)に向流接触させ、排ガス101中のCOを吸収液103に吸収させる。これにより、排ガス101からCOが除去される。吸収液103(リーン溶液103a)は、再生塔23からリーン溶液ポンプ22aにより圧送され、リーン溶液管22bを経て吸収塔22の外部から吸収塔22内の下半部の上側に供給される。また、リーン溶液管22bは、吸収塔22に供給される吸収液103を冷却する冷却器22cが設けられている。そして、吸収塔22内の下半部の上側に供給された吸収液103は、吸収塔22内の下半部の下側に至り充填層22dの位置で吸収塔22内を上昇する排ガス101と向流接触する。一方、COを吸収した吸収液103(リッチ溶液103b)は、吸収塔22内の下部に溜まり、リッチ溶液管22eを経て吸収塔22の外部に排出され、リッチ溶液ポンプ22fにより圧送されつつ再生塔23内の上部に供給される。
【0026】
また、吸収塔22は、その上半部に水洗部が設けられている。水洗部は、吸収塔22の下半部にてCOを除去された排ガス101と、洗浄水(例えば、純水)104とを向流接触させ、排ガス101に同伴された塩基性アミン化合物類を洗浄水104で除去する。洗浄水104は、吸収塔22の上半部の上側の液分散器22gから流下されつつ、下方に至る過程に設けられた充填層22hの位置で、上昇する排ガス101と向流接触した後、水受22iに貯留される。そして、水受22iに貯留された洗浄水104は、吸収塔22の外部の洗浄水管22jに設けられた洗浄水循環ポンプ22mにより圧送循環されつつ冷却器22kで冷却されて液分散器22gから再び流下される。なお、水受22iで溢れた洗浄水104は、吸収塔22の外部のオーバーフロー管22nにより排出され、吸収塔22内の底に供給される。そして、吸収塔22においてCOが除去され、かつ塩基性アミン化合物類が除去された排ガス101は、吸収塔22から系外に排出される。
【0027】
再生塔23においては、吸収液103のリッチ溶液103bを、吸熱反応により大部分のCOを放出させたセミリーン溶液とし、このセミリーン溶液を、再生塔23内の下部に至る頃に、ほぼ全てのCOが除去されたリーン溶液103aとする。
【0028】
再生塔23の下部では、リーン溶液103aは、再生塔23の外部に設けられた再生加熱器24にて飽和蒸気100aによって加熱再生される。再生加熱器24に供給される飽和蒸気100aは、上述したボイラ11からの過熱蒸気100が蒸気タービン12を経たもので、蒸気配管24aを経て再生加熱器24に供給される。蒸気配管24aには、飽和蒸気100aの流量(蒸気量)を可変する蒸気バルブ24bが設けられている。そして、再生されたリーン溶液103aは、再生塔23の下部からリーン溶液管22bを経て再生塔23の外部に排出されて吸収塔22に供給される過程で、リッチ溶液管22eを経て再生塔23に供給される過程のリッチ溶液103bとリッチ・リーン熱交換器25によって熱交換して冷却される。
【0029】
一方、再生塔23の上部では、リッチ溶液103bおよびセミリーン溶液から分離されたCOガス105が、再生塔23の外部から環流水ポンプ26aにより圧送された環流水106に接触しつつ、再生塔23の頂部から環流管26bを経て再生塔23の外部に排出される。環流管26bを通過する過程で、COガス105は、再生塔環流冷却器26cによって冷却された後、CO分離器26dによって水蒸気が凝縮されて環流水106と分離され、図示しないCO回収工程へ導かれる。CO分離器26dにてCOから分離された環流水106は、環流水ポンプ26aによって圧送されて環流管26bを経て再生塔23へ供給される。
【0030】
また、再生塔23は、その内部の圧力を可変するため、CO分離器26dの後流側に圧力調整機23aが設けられている。
【0031】
なお、吸収液103は、吸収塔22と再生塔23との間を循環されるが、吸収塔22においてCOを吸収する過程で、排ガス101中の酸素で酸化劣化したり残存NOxや残存SOxと反応したりすることで生じた熱安定性塩や、排ガス101に含まれる煤塵などの劣化物が混入する場合がある。このような場合、劣化物が吸収液103の通過する系内に蓄積される事態を防ぐため、再生塔23側に設けたリクレーマ(図示せず)によって吸収液103を加熱し劣化物をスラッジとして濃縮させ、吸収液から除去するリクレーミングを行う。ただし、リクレーミングにおいては、吸収液成分の一部が蒸発せずにスラッジ中に残存してしまうと、吸収液が損失されることから、この損失分の吸収液を補給するように、リーン溶液管22bに吸収液補給部27が設けられている。
【0032】
また、洗浄水104は、水受22iで溢れた場合、オーバーフロー管22nにより排出され、吸収塔22内の底に供給される。このため、洗浄水104も損失されることから、この損失分の洗浄水104を補給するように、洗浄水管22jに洗浄水補給部28が設けられている。
【0033】
上述した発電設備1において、図1に示すように、発電機13は、その発電量を検出する発電量検出部3aが設けられている。また、排ガスブロア21a、冷却水循環ポンプ21b、排ガスブロア21e、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22f、洗浄水循環ポンプ22k、蒸気バルブ24b、および環流水ポンプ26aは、それぞれ消費電力検出部3b,3c,3e〜3iが設けられている。また、蒸気バルブ24bは、蒸気流量検出部3jが設けられている。さらに、蒸気バルブ24bは、蒸気圧力検出部3kが設けられている。また、吸収液補給部27および洗浄水補給部28は、それぞれ吸収液103や洗浄水104の消費量を検出するケミカル消費量検出部3m,3nが設けられている。そして、これら発電量検出部3a、各消費電力検出部3b,3c,3e〜3i、蒸気流量検出部3j、蒸気圧力検出部3k、およびケミカル消費量検出部3m,3nの各データは、制御装置4に入力される。また、排ガスブロア21a、冷却水循環ポンプ21b、排ガスブロア21e、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22f、洗浄水循環ポンプ22k、圧力調整機23a、蒸気バルブ24b、環流水ポンプ26a、吸収液補給部27、および洗浄水補給部28は、それぞれ制御装置4に接続されて制御される。
【0034】
制御装置4について、図2の本実施の形態に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムのブロック図を参照して説明する。制御装置4は、マイコンなどで構成されている。制御装置4は、記憶部4aが設けられている。記憶部4aは、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。また、制御装置4は、排ガスブロア21aを稼動する電圧をかけるための排ガスブロア駆動部4bや、リーン溶液ポンプ22aを稼動する電圧をかけるためのリーン溶液ポンプ駆動部4cや、リッチ溶液ポンプ22fを稼動する電圧をかけるためのリッチ溶液ポンプ駆動部4dや、蒸気バルブ24bを稼動する電圧をかけるための蒸気バルブ駆動部4eや、再生塔23内の圧力を可変するための圧力調整機23aを稼動する電圧をかけるための圧力調整機構駆動部4fが設けられている。また、制御装置4は、入出力部4gが設けられている。入出力部4gは、キーボードやマウスやモニターで構成されている。また、制御装置4は、情報通信部4hが設けられている。情報通信部4hは、管理装置5の情報通信部5fとの間で情報通信を行うためのものである。この制御装置4は、管理装置5から入力された情報に基づき、記憶部4aに予め格納されたプログラムやデータに従って、排ガスブロア21aや、リーン溶液ポンプ22aや、リッチ溶液ポンプ22fや、蒸気バルブ24bや、圧力調整機23aを統括的に制御する。
【0035】
管理装置5について、図2の本実施の形態に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムのブロック図を参照して説明する。管理装置5は、マイコンなどで構成されている。管理装置5は、図1に示すように、制御装置4とネットワークN上を介して接続され、発電量検出部3aからの発電量、各消費電力検出部3b,3c,3e〜3iからの各消費電力、蒸気流量検出部3jからの蒸気流量(蒸気消費量)、蒸気圧力検出部3kからの蒸気圧力、およびケミカル消費量検出部3m,3nからの各ケミカル消費量の各データを制御装置4から取得する。
【0036】
管理装置5は、記憶部5aが設けられている。記憶部5aは、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。記憶部5aは、評価指数式データベース5aa、排ガスブロア供給電力データベース5ab、リーン溶液ポンプ供給電力データベース5ac、リッチ溶液ポンプ供給電力データベース5ad、蒸気流量データベース5ae、および圧力調整機データベース5afを有している。
【0037】
評価指数式データベース5aaは、制御装置4から取得した、発電量、各消費電力、蒸気流量、および各ケミカル消費量の各データに基づいて評価指数Eを算出するための下記式1〜式3が格納されている。
【0038】
評価指数E=収入価格M−支出価格T・・・式1
収入価格M=CO販売価格+売電価格・・・式2
支出価格T=買電価格+ケミカル価格+CO買取価格・・・式3
【0039】
上記式2において、CO販売価格は、CO回収装置2の運転に応じて生じる収入諸事であって、CO回収装置2に供給される排ガス101と、CO回収装置2からCOを回収されて排出される排ガス101との流量や温度や組成からCO回収量を取得し、当該CO回収量にCO販売高(CO排出権)を乗じて求められる。また、上記式2において、売電価格は、発電設備の運転に応じて生じる収入諸事であって、発電量に売電市場価格を乗じて求められる。
【0040】
上記式3において、買電価格は、CO回収装置2の運転に応じて生じる支出諸事であって、消費電力に買電市場価格を乗じて求められる。また、上記式3において、ケミカル価格は、CO回収装置2の運転に応じて生じる支出諸事であって、ケミカル消費量にケミカル価格を乗じて求められる。また、上記式3において、CO買取価格は、CO回収装置2の非運転に応じて生じる支出諸事であって、煙突11bから排出される排ガス101の流量や温度や組成からCO排出量を取得し、当該CO排出量にCO買取高(CO排出権)を乗じて求められる。
【0041】
排ガスブロア供給電力データベース5abは、上述した評価指数Eが最大となる、すなわち、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格Tが最も少なくなるように、CO回収装置2に送る排ガス101の流量を設定するため、排ガスブロア21aに電圧を加える排ガスブロア情報が格納されている。この排ガスブロア情報は、CO回収量を所定量に定めた場合に、CO販売価格、売電価格、買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格と、排ガスブロア21aによる排ガス送出量との関係が予め理論式や実験式により求められたものである。
【0042】
リーン溶液ポンプ供給電力データベース5acは、上述した評価指数Eが最大となる、すなわち、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格Tが最も少なくなるように、吸収塔22に送るリーン溶液103aの送液量を設定するため、リーン溶液ポンプ22aに電圧を加えるリーン溶液ポンプ情報が格納されている。このリーン溶液ポンプ情報は、CO回収量を所定量に定めた場合、または排ガス処理量を所定量に定めた場合に、CO販売価格、売電価格、買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格と、リーン溶液ポンプ22aによるリーン溶液送液量との関係が予め理論式や実験式により求められたものである。
【0043】
リッチ溶液ポンプ供給電力データベース5adは、上述した評価指数Eが最大となる、すなわち、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格Tが最も少なくなるように、再生塔23に送るリッチ溶液103bの送液量を設定するため、リッチ溶液ポンプ22fに電圧を加えるリッチ溶液ポンプ情報が格納されている。このリッチ溶液ポンプ情報は、CO回収量を所定量に定めた場合、または排ガス処理量を所定量に定めた場合に、CO販売価格、売電価格、買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格と、リッチ溶液ポンプ22fによるリッチ溶液送液量との関係が予め理論式や実験式により求められたものである。
【0044】
蒸気流量データベース5aeは、上述した評価指数Eが最大となる、すなわち、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格Tが最も少なくなるように、再生加熱器24に送る飽和蒸気100aの蒸気量を設定するため、蒸気バルブ24bに開または閉の電圧を加える蒸気バルブ情報が格納されている。この蒸気バルブ情報は、CO回収量を所定量に定めた場合、または排ガス処理量を所定量に定めた場合に、CO販売価格、売電価格、買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格と、蒸気バルブ24bによる蒸気流量との関係が予め理論式や実験式により求められたものである。
【0045】
圧力調整機データベース5afは、発電設備1においてボイラ11で発生する過熱蒸気100の圧力が低下した場合、すなわち、発電設備1の蒸気タービン12が低負荷運転の場合、再生加熱器24の能力が最大となるように、再生塔23内の圧力を設定するため、圧力調整機23aに電圧を加える圧力調整機情報が格納されている。この圧力調整機情報は、蒸気圧力検出部3kで検出された蒸気圧力と、再生塔23内の圧力との関係が予め理論式や実験式により求められたものである。
【0046】
また、管理装置5は、支出市場価格情報入力部5bが設けられている。この支出市場価格情報入力部5bには、支出価格Tを求めるための支出市場価格として買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格が入力される。これら買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格は、インターネットなどから自動で入力されたり、オペレータにより手動で入力されたりすることで得られる。
【0047】
また、管理装置5は、収入市場価格情報入力部5cが設けられている。この収入市場価格情報入力部5cには、収入価格Mを求めるための収入市場価格として売電価格およびCO販売価格が入力される。これら売電価格およびCO販売価格は、インターネットなどから自動で入力されたり、オペレータにより手動で入力されたりすることで得られる。
【0048】
また、管理装置5は、処理部5dが設けられている。処理部5dは、評価指数演算部5da、排ガス流量設定部5db、リーン溶液送液量設定部5dc、リッチ溶液送液量設定部5dd、蒸気量設定部5de、および再生塔圧力設定部5dfを有している。
【0049】
評価指数演算部5daは、制御装置4から取得した、発電量、各消費電力、蒸気流量、および各ケミカル消費量の各データに基づいて、上述した記憶部5aの評価指数式データベース5aaに格納された上記式1〜式3から評価指数Eを算出する。すなわち、上記式1から算出される評価指数Eが最大となるように、発電量、各消費電力、蒸気流量(蒸気消費量)、および各ケミカル消費量の各データと、上記各データベース5ab〜5afに格納された情報とに基づいて、収入価格Mおよび支出価格Tを算出する。
【0050】
排ガス流量設定部5dbは、評価指数演算部5daの算出結果が基づいた排ガスブロア供給電力データベース5abの情報から、排ガスブロア21aに加える電圧を設定する。
【0051】
リーン溶液送液量設定部5dcは、評価指数演算部5daの算出結果が基づいたリーン溶液ポンプ供給電力データベース5acの情報から、リーン溶液ポンプ22aに加える電圧を設定する。
【0052】
リッチ溶液送液量設定部5ddは、評価指数演算部5daの算出結果に基づいたリッチ溶液ポンプ供給電力データベース5adの情報から、リッチ溶液ポンプ22fに加える電圧を設定する。
【0053】
蒸気量設定部5deは、評価指数演算部5daの算出結果が基づいた蒸気流量データベース5aeの情報から、蒸気バルブ24bに加える開または閉の電圧を設定する。
【0054】
再生塔圧力設定部5dfは、圧力調整機データベース5afの情報から、圧力調整機23aに加える電圧を設定する。
【0055】
また、管理装置5は、入出力部5eが設けられている。入出力部5eは、キーボードやマウスやモニターで構成されている。また、管理装置5は、情報通信部5fが設けられている。情報通信部5fは、制御装置4の情報通信部4hとの間で情報通信を行うためのものである。この管理装置5は、制御装置4から入力された情報に基づき、記憶部5aに予め格納されたプログラムやデータに従って、制御装置4に対し、排ガスブロア21aや、リーン溶液ポンプ22aや、リッチ溶液ポンプ22fや、蒸気バルブ24bや、圧力調整機23aを統括的に制御するための情報を出力する。
【0056】
[実施の形態1]
図3は、実施の形態1に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。上述した制御装置4および管理装置5によるCO回収装置の運転制御について説明する。
【0057】
ここでは、COの回収量が定められているとする。図3に示すように、まず、制御装置4は、各消費電力検出部3b,3c,3e〜3iから取得した消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを、管理装置5に出力する(ステップS1)。
【0058】
次に、管理装置5は、制御装置4から消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを入力し(ステップS2)、支出市場価格および収入市場価格から当該消費電力に基づく評価指数Eを算出する(ステップS3)。なお、蒸気流量(蒸気消費量)は、蒸気タービン12に供給される過熱蒸気100の一部を使用することから発電量に起因するため、評価指数Eを算出するデータとして用いているが、単純に発電機13での発電量に置き換えることができるため、当該蒸気流量(蒸気消費量)のデータを取得しなくてもよい。
【0059】
次に、管理装置5は、評価指数Eが最大となるように、排ガス101の流量(すなわち排ガスブロア21aに加える電圧)を設定するとともに、飽和蒸気100aの蒸気量(すなわち蒸気バルブ24bに加える開または閉の電圧)を設定する(ステップS4)。具体的には、支出価格Tが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および飽和蒸気100aの蒸気量を減らす。一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および飽和蒸気100aの蒸気量を増す。
【0060】
ここで、図4および図5は、評価指数の算出例を示す図である。図4および図5において、例えば、買電価格を5円/kWh、ケミカル価格を100円/kg、CO買取価格を4000円/ton−CO、CO販売価格を500円ton−COとする。この場合、図4は、売電価格が10円/kWhである場合、COを回収する排ガス処理量[%]に対する評価指数Eを示し、図5は、売電価格が7円/kWhである場合、COを回収する排ガス処理量[%]に対する評価指数Eを示している。これら図4および図5に示すように、評価指数Eは、条件によって最大となる排ガス処理量が異なる。したがって、上記のごとく、評価指数Eが最大となるように、排ガス101の流量、および当該流量の排ガス101からCOを回収するために必要な飽和蒸気100aの蒸気量を設定する。
【0061】
最後に、制御装置4では、排ガスブロア21aおよび蒸気バルブ24bの設定に従って、排ガスブロア21aおよび蒸気バルブ24bを駆動する(ステップS5)。
【0062】
なお、排ガスブロア21aおよび蒸気バルブ24bを駆動した後、ステップS1に戻って再度評価指数Eを算出することで、排ガスブロア21aおよび蒸気バルブ24bの駆動が適切であるかを判断することが可能であり、より適切となるように、排ガスブロア21aおよび蒸気バルブ24bの駆動を変えることが可能である。
【0063】
また、上記の運転制御は、常に評価指数Eを算出して実行してもよく、または所定期間ごとに評価指数Eを算出して実行してもよい。
【0064】
このように、実施の形態1に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備1にて排出される排ガス101と吸収液103とを接触させて排ガス101中のCOを除去する吸収塔22と、COを吸収したリッチ溶液103bである吸収液103を発電設備1で発生する飽和蒸気100aによって加熱しつつ吸収液103からCOを放出させる再生塔23とを備え、再生塔23でCOを除去したリーン溶液103aである吸収液103を吸収塔22で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムである。そして、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる収入価格から、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、吸収塔22に送る排ガスの流量、および再生塔23側(再生加熱器24)に送る蒸気量を設定する管理装置5を備える。
【0065】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格Tが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および飽和蒸気100aの蒸気量を減らす一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および飽和蒸気100aの蒸気量を増すことで、COの回収量が定められた条件において、CO回収装置2の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことが可能になる。
【0066】
しかも、条件によっては、収入価格Mが支出価格Tよりも多くなれば、評価指数Eがプラスとなり、CO回収装置2の運転により利益計上を図ることも可能である。
【0067】
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。上述した制御装置4および管理装置5によるCO回収装置の運転制御について説明する。
【0068】
ここでは、COの回収量が定められているとする。図6に示すように、まず、制御装置4は、各消費電力検出部3b,3c,3e〜3iから取得した消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを、管理装置5に出力する(ステップS11)。
【0069】
次に、管理装置5は、制御装置4から消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを入力し(ステップS12)、支出市場価格および収入市場価格から当該消費電力に基づく評価指数Eを算出する(ステップS13)。なお、蒸気流量(蒸気消費量)は、蒸気タービン12に供給される過熱蒸気100の一部を使用することから発電量に起因するため、評価指数Eを算出するデータとして用いているが、単純に発電機13での発電量に置き換えることができるため、当該蒸気流量(蒸気消費量)のデータを取得しなくてもよい。
【0070】
次に、管理装置5は、評価指数Eが最大となるように、排ガス101の流量(すなわち排ガスブロア21aに加える電圧)を設定するとともに、吸収液103の送液量(すなわちリーン溶液ポンプ22aに加える電圧およびリッチ溶液ポンプ22fに加える電圧)を設定する(ステップS14)。具体的には、支出価格Tが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および吸収液103の送液量を減らす。一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および吸収液103の送液量を増す。
【0071】
最後に、制御装置4では、排ガスブロア21a、リーン溶液ポンプ22aおよびリッチ溶液ポンプ22fの設定に従って、排ガスブロア21a、リーン溶液ポンプ22aおよびリッチ溶液ポンプ22fを駆動する(ステップS15)。
【0072】
なお、排ガスブロア21a、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fを駆動した後、ステップS11に戻って再度評価指数Eを算出することで、排ガスブロア21a、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fの駆動が適切であるかを判断することが可能であり、より適切となるように、排ガスブロア21a、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fの駆動を変えることが可能である。
【0073】
また、上記の運転制御は、常に評価指数Eを算出して実行してもよく、または所定期間ごとに評価指数Eを算出して実行してもよい。
【0074】
このように、実施の形態2に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備1にて排出される排ガス101と吸収液103とを接触させて排ガス101中のCOを除去する吸収塔22と、COを吸収したリッチ溶液103bである吸収液103を発電設備1で発生する飽和蒸気100aによって加熱しつつ吸収液103からCOを放出させる再生塔23とを備え、再生塔23でCOを除去したリーン溶液103aである吸収液103を吸収塔22で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムである。そして、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる収入価格から、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、吸収塔22に送る排ガスの流量、吸収塔22に送るリーン溶液103aの送液量、および再生塔23に送るリッチ溶液103bの送液量を設定する管理装置5を備える。
【0075】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格Tが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および吸収液103の送液量を減らす一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、排ガス101の流量および吸収液103の送液量を増すことで、COの回収量が定められた条件において、CO回収装置2の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことが可能になる。
【0076】
しかも、条件によっては、収入価格Mが支出価格Tよりも多くなれば、評価指数Eがプラスとなり、CO回収装置2の運転により利益計上を図ることも可能である。
【0077】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。上述した制御装置4および管理装置5によるCO回収装置の運転制御について説明する。
【0078】
ここでは、排ガス101の処理量が定められているとする。図7に示すように、まず、制御装置4は、各消費電力検出部3b,3c,3e〜3iから取得した消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを、管理装置5に出力する(ステップS21)。
【0079】
次に、管理装置5は、制御装置4から消費電力のデータ、再生塔23側である再生加熱器24への蒸気流量(蒸気消費量)のデータ、ケミカル消費量のデータを入力し(ステップS22)、支出市場価格および収入市場価格から当該消費電力に基づく評価指数Eを算出する(ステップS23)。なお、蒸気流量(蒸気消費量)は、蒸気タービン12に供給される過熱蒸気100の一部を使用することから発電量に起因するため、評価指数Eを算出するデータとして用いているが、単純に発電機13での発電量に置き換えることができるため、当該蒸気流量(蒸気消費量)のデータを取得しなくてもよい。
【0080】
次に、管理装置5は、評価指数Eが最大となるように、吸収液103の送液量(すなわちリーン溶液ポンプ22aに加える電圧およびリッチ溶液ポンプ22fに加える電圧)を設定するとともに、飽和蒸気100aの蒸気量(すなわち蒸気バルブ24bに加える開または閉の電圧)を設定する(ステップS24)。具体的には、支出価格Tが増す傾向にある場合は、吸収液103の送液量および飽和蒸気100aの蒸気量を減らす。一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、吸収液103の送液量および飽和蒸気100aの蒸気量を増す。
【0081】
最後に、制御装置4では、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fおよび蒸気バルブ24bの設定に従って、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fおよび蒸気バルブ24bを駆動する(ステップS25)。
【0082】
なお、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fおよび蒸気バルブ24bを駆動した後、ステップS21に戻って再度評価指数Eを算出することで、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fおよび蒸気バルブ24bの駆動が適切であるかを判断することが可能であり、より適切となるように、リーン溶液ポンプ22a、リッチ溶液ポンプ22fおよび蒸気バルブ24bの駆動を変えることが可能である。
【0083】
また、上記の運転制御は、常に評価指数Eを算出して実行してもよく、または所定期間ごとに評価指数Eを算出して実行してもよい。
【0084】
このように、実施の形態3に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、発電設備1にて排出される排ガス101と吸収液103とを接触させて排ガス101中のCOを除去する吸収塔22と、COを吸収したリッチ溶液103bである吸収液103を発電設備1で発生する飽和蒸気100aによって加熱しつつ吸収液103からCOを放出させる再生塔23とを備え、再生塔23でCOを除去したリーン溶液103aである吸収液103を吸収塔22で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムである。そして、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる収入価格から、CO回収装置2を含む発電設備1の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、吸収塔22に送るリーン溶液103aの送液量、再生塔23に送るリッチ溶液103bの送液量、および再生塔23側(再生加熱器24)に送る蒸気量を設定する管理装置5を備える。
【0085】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、支出価格Tが増す傾向にある場合は、吸収液103の送液量および飽和蒸気100aの蒸気量を減らす一方、収入価格Mが増す傾向にある場合は、吸収液103の送液量および飽和蒸気100aの蒸気量を増すことで、排ガス101の処理量が定められた条件において、CO回収装置2の運転に応じて生じるコストが最小となる経済的運転を行うことが可能になる。
【0086】
しかも、条件によっては、収入価格Mが支出価格Tよりも多くなれば、評価指数Eがプラスとなり、CO回収装置2の運転により利益計上を図ることも可能である。
【0087】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムの動作を示すフローチャートである。この実施の形態4の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、上述した実施の形態1〜実施の形態3の発電設備用CO回収装置の運転制御システムに付随する。
【0088】
図8に示すように、まず、制御装置4は、蒸気圧力検出部3kから取得した蒸気圧力(蒸気タービン12の負荷)のデータを、管理装置5に出力する(ステップS31)。
【0089】
次に、管理装置5は、制御装置4から蒸気圧力のデータ入力し(ステップS32)、再生加熱器24が最大能力となるように、再生塔23内の圧力(すなわち圧力調整機23aに加える加圧または減圧の電圧)を設定する(ステップS33)。具体的には、蒸気圧力が低下する傾向にある場合、蒸気タービン12が低負荷運転であるため、再生塔23内の圧力を低下させる。一方、蒸気圧力が上昇する傾向にある場合、蒸気タービン12が高負荷運転であるため、再生塔23内の圧力を上昇させる。
【0090】
最後に、制御装置4では、圧力調整機23aの設定に従って、圧力調整機23aを駆動する(ステップS34)。
【0091】
なお、圧力調整機23aを駆動した後、ステップS31に戻って、再生塔23内の圧力(すなわち圧力調整機23aに加える加圧または減圧の電圧)を再度設定することで、圧力調整機23aの駆動が適切であるかを判断することが可能であり、より適切となるように、圧力調整機23aの駆動を変えることが可能である。
【0092】
このように、実施の形態4に係る発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、実施の形態1〜実施の形態3において、管理装置5は、発電設備1の運転負荷に応じ、再生塔23の運転圧力を設定する。
【0093】
この発電設備用CO回収装置の運転制御システムによれば、特に、蒸気タービン12が低負荷運転で、得られる飽和蒸気100aが低品位であっても、再生塔23の運転能力の低下を防ぐことが可能になる。
【0094】
なお、上述した各実施の形態の発電設備用CO回収装置の運転制御システムにおいて、図には明示しないが、管理装置5は、記憶部5aに支出市場価格情報データベースおよび収入市場価格情報データベースをさらに有していてもよい。この場合、支出市場価格情報データベースは、支出市場価格情報入力部5bに入力された買電価格、ケミカル価格、およびCO買取価格を記憶する。収入市場価格情報データベースは、収入市場価格情報入力部5cに入力された売電価格およびCO販売価格を記憶する。そして、管理装置5は、過去の所定期間について、支出市場価格情報データベースに記憶された支出市場価格、および収入市場価格情報データベースに記憶された収入市場価格を取得し、当該所定期間での支出価格Tおよび収入価格Mを算出し、予測の評価指数Eを求める。このため、過去の所定期間に応じて最適な発電設備1の運転条件を予測することが可能になる。この結果、設備の管理者は、市場価格が安い時期に予め計画してケミカル(吸収液103や洗浄水(純水)104)の先行手配を行うことが可能になる。なお、予測の評価指数は、上述した評価指数Eにより補正することが可能である。
【0095】
また、上述した各実施の形態の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、管理装置5は、ネットワークN上を介して発電設備1におけるCO回収装置2の制御装置4と通信可能に接続されている。この結果、発電設備1のCO回収装置2の運転制御を遠隔地にて行うことが可能になる。
【0096】
また、上述した各実施の形態の発電設備用CO回収装置の運転制御システムは、図1に示すように、管理装置5がネットワークN上を介して複数の発電設備1におけるCO回収装置2の制御装置4と通信可能に接続されている。そして、図2では、1つの発電設備1におけるCO回収装置2の制御装置4と管理装置5とが一対一の関係で接続されている形態を示しているが、複数の発電設備1における制御装置4と管理装置5とが多対一の関係で接続されている場合は、管理装置5において、各制御装置4に対応して記憶部5a、支出市場価格情報入力部5b、収入市場価格情報入力部5c、処理部5d、入出力部5e、および情報通信部5fが機能する。この結果、複数の発電設備1のCO回収装置2の運転制御を遠隔地にて統括して行うことが可能になる。なお、発電設備1におけるCO回収装置2の制御装置4と管理装置5とが一対一の関係で接続される場合は、制御装置4と管理装置5とがネットワークN上を介さず、管理装置5が制御装置4に含まれて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 発電設備
11 ボイラ
12 蒸気タービン
13 発電機
2 CO回収装置
21 冷却塔
21e 排ガスブロア
22 吸収塔
22a リーン溶液ポンプ
22f リッチ溶液ポンプ
23 再生塔
23a 圧力調整機
24 再生加熱器
24a 蒸気配管
24b 蒸気バルブ
3a 発電量検出部
3b,3c,3e〜3i 消費電力検出部
3j 蒸気流量検出部
3k 蒸気圧力検出部
3m,3n ケミカル消費量検出部
4 制御装置
4a 記憶部
4b 排ガスブロア駆動部
4c リーン溶液ポンプ駆動部
4d リッチ溶液ポンプ駆動部
4e 蒸気バルブ駆動部
4f 圧力調整機構駆動部
4g 入出力部
4h 情報通信部
5 管理装置
5a 記憶部
5aa 評価指数式データベース
5ab 排ガスブロア供給電力データベース
5ac リーン溶液ポンプ供給電力データベース
5ad リッチ溶液ポンプ供給電力データベース
5ae 蒸気流量データベース
5af 圧力調整機データベース
5b 支出市場価格情報入力部
5c 収入市場価格情報入力部
5d 処理部
5da 評価指数演算部
5db 排ガス流量設定部
5dc リーン溶液送液量設定部
5dd リッチ溶液送液量設定部
5de 蒸気量設定部
5df 再生塔圧力設定部
5e 入出力部
5f 情報通信部
100 過熱蒸気
100a 飽和蒸気
101 排ガス
103 吸収液
103a リーン溶液
103b リッチ溶液
N ネットワーク
E 評価指数
M 収入価格
T 支出価格

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、
前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送る排ガスの流量、および前記再生塔側に送る蒸気量を設定する管理装置を備えることを特徴とする発電設備用CO回収装置の運転制御システム。
【請求項2】
発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、
前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送る排ガスの流量、前記吸収塔に送るリーン溶液の送液量、および前記再生塔に送るリッチ溶液の送液量を設定する管理装置を備えることを特徴とする発電設備用CO回収装置の運転制御システム。
【請求項3】
発電設備にて排出される排ガスと吸収液とを接触させて排ガス中のCOを除去する吸収塔と、COを吸収したリッチ溶液である前記吸収液を前記発電設備で発生する蒸気によって加熱しつつ前記吸収液からCOを放出させる再生塔とを備え、前記再生塔でCOを除去したリーン溶液である前記吸収液を前記吸収塔で再利用する発電設備用CO回収装置の運転制御システムであって、
前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、前記CO回収装置を含む前記発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となる態様で、前記吸収塔に送るリーン溶液の送液量、前記再生塔に送るリッチ溶液の送液量、および前記再生塔側に送る蒸気量を設定する管理装置を備えることを特徴とする発電設備用CO回収装置の運転制御システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記発電設備の運転負荷に応じ、前記再生塔の運転圧力を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備用CO回収装置の運転制御システム。
【請求項5】
前記発電設備における前記CO回収装置の運転を制御する制御装置を備えており、前記管理装置は、ネットワーク上を介して前記制御装置と通信可能に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電設備用CO回収装置の運転制御システム。
【請求項6】
前記管理装置は、ネットワーク上を介して複数の前記発電設備における前記CO回収装置の前記制御装置と通信可能に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の発電設備用CO回収装置の運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−245430(P2012−245430A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116811(P2011−116811)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】