白色半導体発光装置
【課題】鮮やかな赤色に関する再現性が改善された白色半導体発光装置を提供すること。
【解決手段】白色半導体発光装置は、出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む。該青色光成分の発生源は半導体発光素子および/または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体であり、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体であり、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体である。該出力光のスペクトルは615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である。
【解決手段】白色半導体発光装置は、出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む。該青色光成分の発生源は半導体発光素子および/または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体であり、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体であり、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体である。該出力光のスペクトルは615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明に適した白色光を出力する白色発光装置に関し、とりわけ、発光要素として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備える、白色半導体発光装置に関する。
【0002】
本発明および本明細書においては、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲に含まれる光を、白色光と呼ぶものとする。Duv(=1000duv)の定義はJIS Z 8725:1999「光源の分布温度及び色温度・相関色温度測定方法」による。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム系の発光ダイオード(LED)素子と蛍光体とを組み合わせて白色光を出力するように構成された、白色半導体発光装置の一種である白色LEDが、最近では照明用途においても使用され始めている。
【0004】
照明用途において、色温度が3500K以下の白色LEDに対する需要が存在する(特許文献1)。このような低色温度の白色LED、しかも、照明に使用できる高輝度のものが製造可能となった背景には、高輝度赤色蛍光体の開発成功がある。高輝度赤色蛍光体の具体例を挙げれば、特許文献2に開示されたCaAlSiN3:Eu、特許文献3に開示された(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、特許文献4に開示されたCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Eu、特許文献5に開示された(Sr,Ba)3SiO5:Euなどといった、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする赤色蛍光体である。これらの赤色蛍光体は、半値全幅が80nmを超えるブロードな発光バンドを有するため、それを用いた白色LEDは通常、演色評価数(CRI)の高いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−103443号公報
【特許文献2】特開2006−8721号公報
【特許文献3】特開2008−7751号公報
【特許文献4】特開2007−231245号公報
【特許文献5】特開2008−50379号公報
【特許文献6】国際公開2007−105631号パンフレット
【特許文献7】国際公開2009−072043号パンフレット
【特許文献8】特開2008−150549号公報
【特許文献9】特開2010−39206号公報
【特許文献10】特開2009−251511号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. Chen, et al., phys. stat. sol. (a) 205, No.5, 1086-1092(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、白色半導体発光装置は、特殊演色評価数(special color rendering index)のひとつであるR9を指標とする、鮮やかな赤色に関する再現性が低くなる傾向があり、
特に、温白色LED(warm white LED)と呼ばれる色温度2000〜4000Kの白色光を放出するLEDランプのような、低色温度の白色半導体発光装置において、この傾向は顕著となる。
そこで、本発明は、鮮やかな赤色に関する再現性が改善された白色半導体発光装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、下記1.〜6.に存する。
1.出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色半導体発光装置であって、該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第1の蛍光体は好ましくは青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、該第2の蛍光体および該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでいてもよい。
【0009】
2.前記1.に記載の白色半導体発光装置であって、該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%、好ましくは85〜95%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0010】
3.前記1.に記載の白色半導体発光装置であって、該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0011】
4.前記1.〜3.のいずれかに記載の白色半導体発光装置であって、前記第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0012】
5.前記4.に記載の白色半導体発光装置であって、該第2の赤色蛍光体が、該第1の赤色蛍光体よりも発光スペクトルのピーク波長を長波長側に有することを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0013】
6.前記4.または5.に記載の白色半導体発光装置であって、該第1の赤色蛍光体がS
rxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含むことを特徴とする白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下であることが好ましい。また、この白色半導体発光装置において、該第2の赤色蛍光体は好ましくはCaAlSiN3:Euを含む。
【0014】
本発明の他の要旨は、下記7.〜13.に存する。
7.青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、第1の蛍光体は好ましくは青色蛍光体を含み、第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、第2の蛍光体および第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでもよい。
【0015】
8.青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、第2の蛍光体および第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでもよい。
【0016】
9.前記7.または8.に記載の白色発光ユニットであって、該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%、好ましくは85〜95%であることを特徴とする、白色発光ユニット。
【0017】
10.前記7.または8.に記載の白色発光ユニットであって、該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。
【0018】
11.前記7.〜10.のいずれかに記載の白色発光ユニットであって、該第3の蛍光体が第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0019】
12.前記11.に記載の白色発光ユニットであって、該第2の赤色蛍光体が、該第1の赤色蛍光体よりも発光スペクトルのピーク波長を長波長側に有することを特徴とする、白色発光ユニット。
【0020】
13.前記11.または12.に記載の白色発光ユニットであって、該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含むことを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下であることが好ましい。また、この白色発光ユニットにおいて、該第2の赤色蛍光体は好ましくはCaAlSiN3:Euを含む。
【0021】
本発明の更に他の要旨は、下記14.〜16.に存する。
14.それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、ことを特徴とする白色半導体発光装置。
【0022】
15.前記14.に記載の白色半導体発光装置において、前記第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、前記第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0023】
16.前記14.または15.に記載の白色半導体発光装置において、前記第1の一次白色光と前記第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下、好ましくは25MK-1以下であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鮮やかな赤色に関する再現性が改善された白色半導体発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図2】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図3】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図4】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図5】合成スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図6】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図7】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図8】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図9】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図10】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図11】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図12】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図13】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図14】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図15】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図16】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図17】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図18】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図19】色度図(CIE 1931)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の白色半導体発光装置は、好ましくは、少なくともひとつの白色発光ユニットを含む。白色発光ユニットは、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光の波長を変換する蛍光体を含み、白色光を放出する。白色発光ユニットにおける半導体発光素子と蛍光体との光学的な結合の形態に限定はなく、両者の間は単に透明な媒体(空気を含む)で充たされているだけであってもよいし、あるいは、レンズ、光ファイバ、導光板、反射鏡などの光学素子が両者の間に介在していてもよい。
【0027】
白色発光ユニットには、波長360〜490nmの光を放出する半導体発光素子を好ましく用いることができる。半導体発光素子の発光部を構成する半導体の種類および該発光部の構造に特に限定はない。好ましい半導体発光素子は、窒化ガリウム系、酸化亜鉛系または炭化ケイ素系の半導体で形成された、pn接合型の発光部を有する発光ダイオード素子である。
【0028】
白色発光ユニットに用いる蛍光体の形態に特に限定はなく、パウダー状であってもよいし、セラミック組織中に蛍光体相を含有する発光セラミックであってもよい。パウダー状の蛍光体は適宜な方法により固定化して使用する。固定化の方法に限定はないが、好ましくは、高分子材料またはガラスからなる透明な固体マトリックス中に蛍光体粒子を分散させるか、あるいは、適宜な部材の表面に電着その他の方法で蛍光体粒子を層状に堆積させる。
【0029】
好ましい白色発光ユニットは、青色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを備え、青色発光ダイオード素子が放出する青色光の一部と、該青色光の他の一部が緑色蛍光体により波長変換されて生じる緑色光と、該青色光の更に他の一部が赤色蛍光体に
より波長変換されて生じる赤色光と、を成分として含む白色光を放出する。青色発光ダイオード素子の発光ピーク波長は、通常、440〜470nmである。この白色発光ユニットは、更に、青色発光ダイオード素子が放出する青色光の一部を吸収して黄色発光する蛍光体を備えていてもよい。
【0030】
別の好ましい白色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、青色蛍光体と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを備え、発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光の一部が青色蛍光体により波長変換されて生じる青色光と、該紫外光または紫色光の他の一部が緑色蛍光体で波長変換されて生じる緑色光と、該紫外光または紫色光の更に他の一部が赤色蛍光体で変換されて生じる赤色光と、を成分として含む白色光を放出する。紫色発光ダイオード素子を用いる場合には、該素子が放出する紫色光の一部が白色光の成分に含まれてもよい。ストークスシフト損失が小さくなるという理由から、この白色発光ユニットには、紫外発光ダイオード素子よりも紫色発光ダイオード素子を使用することがより好ましい。
【0031】
現在入手できる最も効率の高い紫色発光ダイオード素子は、InGaN系の紫色発光ダイオード素子である。InGaN系発光ダイオード素子は、InGaN井戸層を含むMQW活性層をp型およびn型のGaN系クラッド層で挟んだダブルヘテロ構造を備えるpn接合型発光ダイオード素子であり、発光ピーク波長を410〜430nmの範囲としたときに発光効率が最大となることが知られている(非特許文献1)。一方で、高効率の青色蛍光体の励起効率は一般に紫外〜近紫外領域において高く、波長405nmよりも長波長側では波長の増加とともに急激に低下する。このような青色蛍光体の励起特性も考慮すると、白色発光ユニットに最も適した紫色発光ダイオード素子は、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲、特に405〜415nmの範囲に有する、InGaN系発光ダイオード素子であるといえる。
【0032】
白色発光ユニットの構成に特段の限定はなく、半導体発光素子と蛍光体とを組合せてなる公知の白色発光装置の構成を任意に参照することができる。好適例は、汎用の白色LEDの構造を包含する。すなわち、白色発光ユニットは、1個または複数個の発光ダイオード素子を、砲弾型パッケージ、SMD型パッケージなどのパッケージにマウントし、蛍光体を添加した透光性封止材で封止した構造とすることができる。
【0033】
別の好適例に係る白色発光ユニットでは、パッケージを用いないで、回路基板上に発光ダイオード素子が直接マウントされる。この白色発光ユニットは、いわゆるチップ・オン・ボード型ユニットを包含する。蛍光体は、発光ダイオード素子が発する光が照射される位置に、適宜な方法で配置される。例えば、分散された蛍光体パウダーを含む透光性のシリコーン樹脂組成物が、発光ダイオード素子の表面に塗布される。あるいは、蛍光体パウダーが、電着などの方法によって、発光ダイオード素子の表面に堆積される。あるいは、別途工程で準備された、蛍光体を含有する透光性のシートが、発光ダイオード素子の上部に設置される。このシートは、蛍光体相を含む発光セラミックからなるシートであってもよいし、蛍光体パウダーを分散させた透光性の樹脂組成物からなるフィルムであってもよい。このフィルムは、樹脂、ガラス等からなる透明板の表面に積層されたものであってもよい。
【0034】
本発明の白色半導体発光装置は、複数の白色発光ユニットを備え、各白色発光ユニットから放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とするものであってもよい。かかる実施形態において、該複数の白色発光ユニットは、互いに異なる発光スペクトルを有する2個の白色発光ユニットを含むことができる。
【0035】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットを備えることを必須としない。一例
では、青色発光ユニットと、緑色発光ユニットと、赤色発光ユニットとを備え、該青色発光ユニットが放出する青色光と、該緑色発光ユニットが放出する緑色光と、該赤色発光ユニットが放出する赤色光と、を成分とする白色光を出力するものであってもよい。ここで、青色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、青色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該青色蛍光体により波長変換されて生じる青色光を放出するように構成された発光ユニットである。また、緑色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該緑色蛍光体により波長変換されて生じる緑色光を放出するように構成された発光ユニットである。また、赤色発光ユニットとは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、赤色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該赤色蛍光体により波長変換されて生じる赤色光を放出するように構成された発光ユニットである。
【0036】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットに加えて、上記の青色発光ユニット、緑色発光ユニット、赤色発光ユニットなどの各種発光ユニットを備え、各発光ユニットから放出される光が混合されてなる合成光を出力光とするものであってもよい。
【0037】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットを備えるか否かにかかわらず、その出力光に青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む。ここで、青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含み、緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含み、赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含む。青色光成分の発生源は、半導体発光素子または、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該青色光成分を含む光を放出する蛍光体の、少なくともいずれかを含む。一方、緑色光成分の発生源としては、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する蛍光体が必須である。また、赤色光成分の発生源として、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する蛍光体が必須である。半導体発光素子と比べてブロードな発光バンドを有する蛍光体を緑色光成分および赤色光成分の発生源に用いることは、演色性の良好な白色発光装置を得るうえでの極めて重要な要素である。
【0038】
本発明の白色半導体発光装置において、青色光成分の発生源に用いることのできる好適な半導体発光素子は、InGaN系の青色発光ダイオード素子である。好適例では、演色性を高めるために、発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する第1の発光ダイオード素子と、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する第2の発光ダイオード素子を備えていてもよい。ここで、第1の発光ダイオード素子の発光ピーク波長と、第2の発光ダイオード素子の発光ピーク波長は、10nm以上離すものとし、好ましくは20nm以上離す。発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子として、非極性または半極性のGaN基板上に、InGaN発光層を含むGaN系半導体をエピタキシャル成長させることにより製造されるものを好ましく用いることができる。
【0039】
本発明の白色半導体発光装置において、波長変換による青色光成分の生成源には、紫外〜紫色光により励起可能な青色蛍光体を好ましく用いることができる。青色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「PURPULISH BLUE」、「BLUE」または「GREENISH BLUE」に区分される蛍光体である。かかる青色蛍光体の種類に特に限定はないが、好適例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする青色蛍光体、例えば、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euなどが挙げられる。中でも好ましいものとして、発光
効率が高く、かつ、ブロードな発光バンドを有する、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)が挙げられる。白色半導体発光装置の演色性を高めるためには、ブロードな発光バンドを有する青色蛍光体を用いることが有効である。
【0040】
本発明の白色半導体発光装置において、緑色光成分の生成源には、緑色蛍光体を好ましく用いることができる。緑色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「GREEN」または「YELLOWISH GREEN」に区分される蛍光体である。かかる緑色蛍光体の種類に特に限定はなく、例えば、Eu2+、Ce3+などを付活剤として含む公知の緑色蛍光体を好ましく用いることができる。Eu2+を付活剤とする好適な緑色蛍光体は、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体である。この種の緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euなどがある。サイアロン結晶を母体とするものの具体例には、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:Eu、Sr5Al5Si21O2N35:Euなどがある。ここで、Sr3Si13Al3O2N21:Euは国際公開2007−105631号パンフレット(特許文献6)に、また、Sr5Al5Si21O2N35:Euは国際公開2009−072043号パンフレット(特許文献7)に、それぞれ開示されている。Ce3+を付活剤とする好適な緑色蛍光体としては、ガーネット型酸化物結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCa3(Sc,Mg)2Si3O12:Ceや、アルカリ土類金属スカンジウム酸塩結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCaSc2O4:Ceがある。この種の緑色蛍光体は、青色半導体発光素子を励起源として用いる場合に適している。
【0041】
上記に好適例として示した緑色蛍光体は、ZnS:Cu,Alなどの硫化物系緑色蛍光体と比べ、耐久性が良好である。特に、母体結晶がアルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンであるものは、窒素を含むために母体結晶中における原子間結合の共有結合性が高く、それゆえに極めて優れた耐久性および耐熱性を示す。一方、緑色蛍光体に限ったことではないが、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体の使用は推奨されない。なぜなら、母体結晶から遊離する僅かな硫黄が、半導体発光素子、パッケージ、封止材料などに含まれている金属と反応して黒色物質を発生させる場合があるからである。
【0042】
本発明の半導体発光装置において、赤色光成分の生成源には赤色蛍光体、特に、発光バンドの半値全幅が80nm以上である赤色蛍光体を好ましく用いることができる。このような発光特性を有するあらゆる種類の赤色蛍光体を使用することができるが、好適例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする赤色蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Euなどがある。SrAlSi4N7:Euは、特開2008−150549号公報(特許文献8)などに開示された赤色蛍光体である。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Sr,Ba)3SiO5:Euなどがある。赤色蛍光体の場合も、緑色蛍光体の場合と同様に、母体結晶が窒素を含むものは極めて優れた耐久性および耐熱性を有する。その中でも、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Euおよび(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euは発光効率が高いこ
とから、特に好ましく用いることができる。
【0043】
なお、本発明にいう赤色蛍光体は、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「RED」、「REDDISH ORANGE」または「ORANGE」に区分される蛍光体である。このような蛍光体は、大抵、発光ピーク波長を590〜700nmの範囲に有する。
【0044】
本発明の白色半導体発光装置には、緑色光成分または赤色光成分の発生源の一部として、黄色蛍光体を用いることができる。黄色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「YELLOW GREEN」、「GREENISH YELLOW」、「YELLOW」または「YELLOWISH ORANGE」に区分される蛍光体である。好ましい黄色蛍光体としては、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ceなどがある。他の好ましい黄色蛍光体には、Ce3+を付活剤とし、ランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、La3Si6N11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi6N11:Ceなどがある。この種の黄色蛍光体は、青色半導体発光素子を励起源として用いる場合に適しているが、青色蛍光体が発する光を用いても励起可能である。
【0045】
本発明の白色半導体発光装置は、白色照明に適した光、すなわち、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲、好ましくは−6.0〜+6.0の範囲に入る光を発生させることを目的としている。いうまでもないことだが、出力光の色は、出力光を構成する成分光間の強度バランスを調整することにより、設定することができる。白色発光ユニットを備える実施形態においては、半導体発光素子と蛍光体とを組合せてなる公知の白色発光装置(例えば、白色LED)で採用されている手法を適宜用いて、白色発光ユニットが放出する白色光の相関色温度を設定することができる。
【0046】
本発明者等が見出したところによれば、鮮やかな赤色の再現性が良好な白色半導体発光装置は、次の2つの条件が充たされる場合に得られる。第1の条件は、当該発光装置の出力光のスペクトルが、極大波長を615〜645nmの範囲内に有していることである。第2の条件は、光束で規格化した当該発光装置の出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の、80〜100%であることである。
【0047】
驚くべきは、出力光のスペクトルが、赤色スペクトル領域(590〜780nm)に有する極大波長が630nm未満の場合ですら、この第2の条件を充足させることによって、白色半導体発光装置の特殊演色評価数R9はかなりの程度改善されることである。この事実は、鮮やかな赤色の再現性を犠牲にすることなく、発光装置のストークスシフト損失を低減させることが可能であることを示している。
【0048】
その一方で、出力光のスペクトルが深い赤色成分を豊富に含んでいても、第2の条件を充たさない白色半導体発光装置の特殊演色評価数R9は極めて低い値となる場合がある。本発明者等はこのことを、発光ピーク波長を約660nmに有する赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを用いた白色LEDの試作を通して確認している。この事実は、当業者間においても従来知られていなかった新知見であると思われる。
【0049】
以下の説明では、光束で規格化した発光装置の出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I2)との比率(I1/I2)を、「580nm強度比」と呼ぶ場合がある。
【0050】
上記第2の条件における好ましい580nm強度比は、上記第1の条件に係る極大波長が存する波長域によって異なる。出力光のスペクトルが極大波長を615nm以上630nm未満の範囲内に有するときには、580nm強度比は85〜100%であることが好ましく、85〜95%であることがより好ましい。一方、出力光のスペクトルが極大波長を630〜645nmの範囲内に有するときには、580nm強度比は90〜100%であることが好ましい。
【0051】
上記第2の条件にいう演色性評価用基準光とは、光源の演色性評価方法を定める日本工業規格JIS Z8726:1990に規定される基準光であり、試料光源たる白色半導体発光装置の相関色温度が5000K未満のときは完全放射体の光、また、該相関色温度が5000K以上のときはCIE昼光である。完全放射体およびCIE昼光の定義はJIS Z8720:2000(対応国際規格 ISO/CIE 10526:1991)に従う。
【0052】
また、上記第2の条件にいう、光束で規格化した光のスペクトルとは、下記数式(1)により決定される光束Φが1(unity)となるように規格化したスペクトル(下記数式(1)中の分光放射束Φe)をいう。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
Φ:光束[lm]
Km:最大視感度[lm/W]
Vλ:明所視標準比視感度
Φe:分光放射束[W/nm]
λ:波長[nm]、である。
【0055】
上記第1の条件を充たす白色半導体発光装置を得るには、赤色光成分の生成源に、発光バンドの半値全幅が80nm以上、かつ、発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を用いればよい。使用する赤色蛍光体がひとつだけの場合には、発光ピーク波長を625〜655nmの範囲に有するものを用いることが好ましい。複数の赤色蛍光体を使用する場合には、少なくともひとつを発光ピーク波長がλ1未満の範囲に存する赤色蛍光体から選択し、他の少なくともひとつを発光ピーク波長がλ1以上の範囲に存する赤色蛍光体から選択することができる。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。該複数の赤色蛍光体は、その全てを発光ピーク波長が625〜655nmの範囲に存する赤色蛍光体から選択することができる。一例では、複数の赤色蛍光体の全てを、発光ピーク波長を630nm以上に有するものから選択してもよい。
【0056】
上記第2の条件を充たすために、緑色光成分の生成源に用いる蛍光体と、赤色光成分の生成源に用いる蛍光体の、適切な選択が望まれる。例えば、前者として緑色蛍光体を、後者として赤色蛍光体を用いる場合、その両方に、発光スペクトルの波長580nmにおけ
る相対強度(各蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度。以下では、これを略して、「580nm相対強度」ともいう。)が0.3未満であるもののみを用いた場合には、発光装置の580nm強度比が80%を下回る可能性が高い。逆に、緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に、580nm相対強度が0.5より大きいもののみを用いた場合には、発光装置の580nm強度比が100%を超える可能性が高い。
【0057】
好適かつ簡便な方法として、580nm相対強度が異なる複数の赤色蛍光体を組合せて用いることにより、上記第2の条件を充足させることができる。例えば、ある赤色蛍光体(赤色蛍光体−1)を単独で用いたところ、得られた白色半導体発光装置の演色評価数Raは良好(例えば85)であるが、特殊演色評価数R9が低かった(例えば、60未満)とする。この白色発光装置について580nm強度比を調べ、それが100%より大きければ、赤色蛍光体−1に加え、580nm相対強度が赤色蛍光体−1よりも低い、他の赤色蛍光体(赤色蛍光体−2)を用いることにより、580nm相対強度を100%以下とすることができる。反対に、赤色蛍光体−1を単独で用いて得られた白色半導体発光装置の580nm強度比が80%より小さければ、赤色蛍光体−1に加えて、580nm相対強度が赤色蛍光体−1よりも高い、他の赤色蛍光体(赤色蛍光体−3)を追加的に用いればよい。赤色蛍光体−2および赤色蛍光体−3は、赤色蛍光体−1との間の580nm相対強度の差が大きい程、少量の追加使用で白色発光装置の580nm強度比に大きな変化をもたらす。従って、この580nm相対強度の差は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0058】
上記の例において、赤色蛍光体−2を追加使用する場合には、その赤色蛍光体−2が赤色蛍光体−1よりも発光ピーク波長を長波長側に有していることが好ましい。そのような赤色蛍光体−2の追加的使用は、白色発光装置の580nm強度比を低下させるとともに、発光装置の出力光スペクトルが赤色スペクトル領域(590〜780nm)に有する極大波長を長波長化させる。この極大波長が長い程、R9が最大となる580nm強度比は大きくなる傾向があるので、この赤色蛍光体−2は少量の追加で大きなR9改善効果を与えることになる。つまり、赤色蛍光体−2の追加に起因して生じる様々な影響を最小限に抑えながら、鮮やかな赤色に関する再現性を改善することができる。
【0059】
赤色蛍光体の中でもSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)およびCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは、単独で使用した場合でも演色評価数Raおよび特殊演色評価数R9の良好な白色半導体発光装置を与えるが、それに加えて、発光ピーク波長をより長波長側に有し、かつより低い580nm相対強度を有する赤色蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)を併用することにより、更に特殊演色評価数R9が改善された白色発光装置を得ることができる。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euと類似した発光スペクトルを有する赤色蛍光体SrAlSi4N7:Euについても、同様の効果が期待できる。なお、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euにおいてn=2としたものと同義である。
【0060】
上記第2の条件を充たすために、580nm相対強度が異なる複数の赤色蛍光体を組合せて用いる代わりに、580nm相対強度が異なる複数の緑色蛍光体を組み合せて用いることや、あるいは、580nm相対強度が異なる複数の黄色蛍光体を組み合せて用いることも、また可能である。
【0061】
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする発光装置であってもよい。かかる発光装置は、第1の一次白色光を放出す
る白色発光ユニット(白色発光ユニット−1)と第2の一次白色光を放出する白色発光ユニット(白色発光ユニット−2)とを含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低いものであってもよい。この場合、白色発光ユニット−1への投入電力と白色発光ユニット−2への投入電力とを制御して、発光装置の出力光に占める第1の一次白色光の比率と第2の一次白色光の比率を調整することによって、発光装置が前記第2の条件を充足する状態を達成することができる。
【0062】
このような、2種類の白色発光ユニットへの投入電力の比率制御による白色発光装置のR9制御を可能とするために、上記の白色発光ユニット−1に用いる赤色蛍光体と白色発光ユニット−2に用いる赤色蛍光体の580nm相対強度を相異ならしめることができる。この実施形態において、第1の一次白色光と第2の一次白色光の逆数相関色温度差を小さくすれば、白色発光ユニット−1と白色発光ユニット−2との発光強度比を変化させたときの、白色半導体発光装置の出力光の色変化を抑制できる。この目的のためには、第1の一次白色光と第2の一次白色光の逆数相関色温度差は50MK-1以下とすることが好ましく、25MK-1以下とすることがより好ましい。
【0063】
後記表6に示す模擬白色発光装置S−1は、かかる実施形態に係る白色半導体発光装置のシミュレーション例と見なすことができる。模擬白色発光装置S−1において、上記白色発光ユニット−1および白色発光ユニット−2に相当するのは白色LEDサンプルV−2およびV−7である。V−2が放出する一次白色光とV−7が放出する一次白色光の強度比が10:0〜0:10まで変化したとき、該模擬白色発光装置S−1の演色性は大きく変化するにもかかわらず、該2種類の一次白色光の色度差が極めて小さいので、模擬白色発光装置S−1の出力光の色度変化は殆ど生じていない。
【0064】
上記第2の条件を充たすための別の方法として、出力光のフィルタリングが挙げられる。この方法は、該第2の条件を充たすうえで出力光の580nm強度比を低下させる必要がある場合に採用し得るものであり、580nmを含む波長帯の光をフィルタ手段を用いたフィルタリングによって白色半導体発光装置の出力光から部分的に除去するというものである。フィルタ手段は具体的構成により限定されるものではなく、光学的原理または光吸収物質による吸収に基づいて透過光または反射光から580nmを含む波長帯の光を部分的に除去する機能を有する、任意の光透過部材または光反射部材であり得る。光透過部材であるフィルタ手段として、特開2010−39206号公報(特許文献9)に開示されたマイナスフィルタ(光学フィルタ)や、特開2009−251511号公報(特許文献10)に開示された、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物などからなる波長選択吸収色素を光吸収物質として含有する吸収フィルタなどが好ましく例示される。また、光反射部材であるフィルタ手段の一例として、このような波長選択吸収色素が反射面に固定化された光反射器、あるいは、このような波長選択吸収色素を添加した樹脂で形成した反射面を有する光反射器が挙げられる。
【0065】
上記フィルタ手段の設置位置は限定されず、例えば白色発光ユニットを含む白色半導体発光装置の場合には、白色発光ユニット内にフィルタ手段を設置し、予め580nmを含む波長帯の光が該フィルタ手段によって部分的に除去された白色光が、該ユニットから放出されるよう構成することができる。そのためには、白色発光ユニット内で生じる580nmを含む波長帯の光が、該ユニット内から外部に放出されるまでに通過する経路上に、上記フィルタ手段(光透過部材または光反射部材)を設置すればよい。一実施形態では、白色発光ユニット内に設けられた、蛍光体粒子が分散された透明な固体マトリックス(波長変換部)に対して、上記の波長選択吸収色素を添加することができる。すなわち、波長
変換部にフィルタ手段が一体化された構成である。
【0066】
白色発光ユニットが放出する白色光を外部に導く光学系を備える白色半導体発光装置においては、該光学系の一部に、580nmを含む波長帯の光の一部を該白色光から除去するための上記フィルタ手段を含めることができる。この場合には、フィルタリング除去する光の量が調整可能となるよう、フィルタ手段を着脱可能あるいは交換可能な形式で光学系に組み込んでもよい。かかる構成によれば、白色発光ユニットから放出される白色光のスペクトルに応じてフィルタ手段を機能させることにより、発光装置の580nm強度比を最適化すること、すなわち、特殊演色評価数R9を最大化することが、可能となる。
【0067】
複数の発光ユニットを備え、該複数の発光ユニットからそれぞれ放出される光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置の場合には、少なくともひとつの発光ユニットが放出する光から、一般的なショートパスフィルタまたはロングパスフィルタを用いて580nmを含む波長帯を除去することにより、580nm強度比を下げることが可能である。例を用いて説明すると、青色発光ユニット、緑色発光ユニットおよび赤色発光ユニットを備える白色半導体発光装置では、ショートパスフィルタを用いて緑色発光ユニットが放出する光から波長580nmを含む長波長側の波長成分を除去する、あるいは、ロングパスフィルタを用いて赤色発光ユニットが放出する光から波長580nmを含む短波長側の波長成分を除去することによって、580nm強度比を低下させることができる。
【0068】
本発明の白色半導体発光装置は、白色光のみを出力可能な発光装置に限定されるものではなく、白色光以外の光を発生させる機能を兼ね備えていてもよい。また、本発明の白色半導体発光装置は、色温度可変の白色発光装置、すなわち、種々の色温度を有する白色光を出力可能な白色発光装置であってもよい。また、本発明の白色半導体発光装置は、点灯モードの切替により演色性を変更ないし調節できるものであってもよい。
【0069】
<実験結果>
以下には、本発明者等が行った、実験(シミュレーションを含む)の結果を記載する。前述の第1の条件および第2の条件が充足されるとき白色半導体発光装置の鮮やかな赤色に関する再現性が改善される、との知見は、この実験を通して得られたものである。表1は、実験に用いた蛍光体のリストである。
【0070】
【表1】
【0071】
表1には、各蛍光体について、本明細書で用いる名称、発光色に基づく種別、一般式、発光スペクトルの特性を示している。発光スペクトルの特性としては、主発光バンドのピーク波長(発光ピーク波長)および半値全幅と、「相対強度@580nm」を示している。これらはいずれも、発光ピーク波長の欄に括弧書きで記された波長で励起したときの値である。「相対強度@580nm」とは前述の580nm相対強度と同義であり、発光ピーク波長における発光スペククトルの強度(発光ピーク強度)を1として、波長580nmにおける発光スペクトルの強度を相対的に表した値である。
【0072】
蛍光体の発光スペクトルの測定は、当該分野における常法に従って行った。ただし、SBSの励起波長402nmにおける発光スペクトル特性は例外で、赤色発光ユニットの発光スペクトル測定結果に基づいている。この赤色発光ユニットは、発光ピーク波長402nmのInGaN系発光ダイオードチップ1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状のSBSを添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。発光ダイオードチップのサイズは350μm角、発光スペクトル測定時の該赤色発光ユニットへの印加電流は20mAである。
【0073】
CASON−1およびCASON−2は、いずれも一般式Ca1-xAl1-xSi1+xN3-x
Ox:Euで表される赤色蛍光体であるが、恐らくはx値の違い等の原因により、発光特性が異なっている。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euの母体はCaAlSiN3とSi2N2Oとの固溶体であり、(CaAlSiN3)1-x(Si2N2O)xと表されることもある。この蛍光体の一般式は、ときどき、CaAlSi(N,O)3:Euと表記される場合がある。
【0074】
CASN−1およびCASN−2は、いずれも一般式CaAlSiN3:Euで表される赤色蛍光体であるが、異なる発光特性を有している。同一の一般式で表される蛍光体(母体が同一の基本構造を有する蛍光体)が、付活剤濃度、不純物濃度、母体組成の一般式からのズレなどの原因によって異なる発光特性を示すという事実、また、この事実を利用して、市場の要求に応じた種々の発光特性を有する蛍光体が生産されていることは、当該技術分野ではよく知られている。
【0075】
表1に掲げた蛍光体を用いて作製した白色LEDサンプルのリストを、表2および表3に示す。表2に示すV−1からV−11までの11種類のサンプルは、発光ピーク波長を約405nmに有する紫色発光ダイオード素子を蛍光体の励起源に用いている。一方、表3に示すB−1からB−10までの10種類のサンプルは、発光ピーク波長を約450nmに有する青色発光ダイオード素子を、青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いている。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
白色LEDサンプルV−1〜V−11、B−1〜B−10は、いずれも、350μm角のInGaN系発光ダイオード素子(チップ)1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状の蛍光体を添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。表2および表3には、各サンプルに用いた蛍光体の名称と、発光ダイオード素子を封止するシリコーン樹脂組成物における各蛍光体の配合比(濃度)を示している。例えば、サンプルV−1は、青色蛍光体BAM、緑色蛍光体BSSおよび赤色蛍光体CASON−1を、それぞれ9.0wt%、1.2wt%および4.3wt%の濃度で含むシリコーン樹脂組成物により、紫色発光ダイオード素子が封止された構造を有している。
【0079】
表4および表5に、白色LEDサンプルV−1〜V−11、B−1〜B−10のそれぞれの発光特性を示す。相関色温度、Duv、Ra、R9、赤色スペクトル領域における極大波長、および580nm強度比の各値は、いずれも、1個の白色LEDサンプルに電流20mAを印加して発光させたときの発光スペクトルに基づいている。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
赤色蛍光体としてCASON−1を用いた白色LEDサンプルV−1と、CASON−2を用いた白色LEDサンプルV−2に着目すると、表4に示すように、演色評価数Raが前者では97、後者では96と、いずれも極めて高い。また、特殊演色評価数R9についても、V−1が88、V−2が76と、いずれも良好な値である。しかし、Raとは異なり、R9に関してはV−1とV−2の差が比較的大きい。
【0083】
図1は、白色LEDサンプルV−1とV−2の発光スペクトルを、赤色スペクトル領域
(波長590〜780nm)に存する極大波長(V−1は631nm、V−2は624nm)におけるスペクトル強度(赤色スペクトル領域におけるピーク強度)で規格化し、重ねて示したものである。図1からは、580nmを中心とする幅約100nmの波長範囲内で、V−1のスペクトル強度をV−2のスペクトル強度が上回っていることがわかる。
【0084】
図2は、白色LEDサンプルV−1の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−1と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、重ねて示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が同一となるように規格化されている。
【0085】
図3は、白色LEDサンプルV−2の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−2と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、重ねて示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0086】
図2と図3を比較すると、一見したところでは、白色LEDサンプルの発光スペクトルの演色性評価用基準光のスペクトルからの乖離の程度に関して、V−1とV−2との間に大きな違いはないように見える。しかし、波長580nmにおけるスペクトル強度に着目すると、V−1の発光スペクトル強度は基準光のスペクトル強度を下回っているのに対し(580nm強度比97%)、V−2の発光スペクトル強度は演色性評価用基準光のスペクトル強度を僅かであるが上回っている(580nm強度比101%)。
【0087】
表6に示すのは、白色LEDサンプルV−2とV−7とを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、V−2とV−7のそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−1の発光特性である。ここで、V−7は、今回使用した赤色蛍光体の中では発光ピーク波長が最も長波長である、CASN−1を赤色光成分の発生源とする白色LEDサンプルである。図4に、V−7の発光スペクトルを示す。
【0088】
表6のシミュレーションでは、それぞれ光束で規格化した白色LEDサンプルV−2およびV−7の発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。表6において、例えば、「合成スペクトル中の白色LED(a)の発光スペクトルの比率」が0.4、「合成スペクトル中の白色LED(b)の発光スペクトルの比率」が0.6である列には、光束で規格化したV−2の発光スペクトルと光束で規格化したV−7の発光スペクトルとを4:6の比率で合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−1の発光特性が示されている。
【0089】
【表6】
【0090】
表6に示すように、模擬白色発光装置S−1のRaおよびR9が最大となるのは、出力光のスペクトルが、V−2の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトルのときである(Ra=98、R9=95)。このときの580nm強度比は96%である。図5に、この合成スペクトルを、演色性評価用基準光のスペクトルとともに示す。図5において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0091】
一方、実際にCASON−2およびCASN−1を赤色蛍光体に用いて作製した白色LEDサンプルであるV−3およびV−4の発光スペクトルを、図6および図7にそれぞれ示す。いずれの図にも、演色性評価用基準光のスペクトルを併せて表示している。それぞれの図において、白色LEDサンプルの発光スペクトルと基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0092】
図6に発光スペクトルを示す白色LEDサンプルV−3は、極めて優れた演色性を有している(Ra=97、R9=98)。このV−3の580nm強度比は95%である。また、図7に発光スペクトルを示す白色LEDサンプルV−4も、高い演色性を備えている(Ra=96、R9=93)。V−4の580nm強度比は92%である。
【0093】
表7〜11に示すのは、それぞれ、2種類の白色LEDサンプルを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、2種類の白色LEDサンプルのそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置の発光特性を計算した結果である。各シミュレーションにおいて、表6のシミュレーションと同様に、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDサンプルの発光スペクトルを、種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。
【0094】
表7には、白色LEDサンプルV−6およびV−7の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−2の発光特性を示す。図8にはV−6の発光スペクトルを示す。
【0095】
表7のシミュレーションによれば、V−6の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトル(580nm強度比89%)を出力光のスペクトルとする模擬白色発光装置は、出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が627nmと比較的短い波長であるにもかかわらず、鮮やかな赤色に関する再現性が極めて高いもの(R9=96)となる。
【0096】
【表7】
【0097】
表8には、白色LEDサンプルV−5およびV−7の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−3の発光特性を示す。図9にはV−5の発光スペクトルを示す。
【0098】
白色LEDサンプルV−5はそれ自体の演色性が必ずしも良好ではない(Ra=65、R9=−60)。白色LEDサンプルV−7も同様である(Ra=69、R9=−21)。しかし、表8のシミュレーションによれば、V−5の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを3:7の比率で合算した合成スペクトル(580nm強度比102%)を出力光のスペクトルとする模擬白色発光装置は、良好な演色性を備えるものとなる(Ra=96、R9=87)。このシミュレーション結果は、本発明者等がこれまで確認した中で唯一、580nm強度比が100%を超える場合においてR9が80を超えた例であり、出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が長くなると、R9が最大となる580nm強度比が大きくなる傾向の存在を示すものと考えている。
【0099】
【表8】
【0100】
表9には、白色LEDサンプルV−6およびV−1の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−4の発光特性を示す。V−6とV−1はそれぞれが比較的高い演色性を有しているが、この表が示すように、これらの発光スペクトルの合算比率が9:1〜1:9の範囲において、模擬白色発光装置S−4の演色性にはさほど大きな変化が見られなかった。その理由のひとつには、白色LEDサンプルV−6に用いられている赤色蛍光体SCASNと、白色LEDサンプルV−1に用いられている赤色蛍光体CASON−1の580nm相対強度の差が小さいことが考えられる。また、SCASNよりCASON−1の発光ピーク波長が長波長であるのに対し、580nm相対強度はSCASNよりCASON−1の方が大きく、このような赤色蛍光体の組み合わせの場合には際立った演色性向上効果が生じない可能性が考えられる。
【0101】
【表9】
【0102】
表10には、白色LEDサンプルV−5およびV−1の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−5の発光特性を示す。模擬白色発光装置S−5では、V−5の発光スペクトルとV−1の発光スペクトルの合算比率が9:1〜1:9の範囲で出力光の580nm強度比が100%を超えており、該合算比率が2:8および1:9のとき演色評価数Raは90に達したが、特殊演色評価数R9は70に達しなかった。
【0103】
【表10】
【0104】
表11には、白色LEDサンプルB−5およびB−6の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−6の発光特性を示す。また、図10に白色LEDサンプルB−5の発光スペクトルを、図11に白色LEDサンプルB−6の発光スペクトルを、それぞれ示す。B−5は、青色発光ダイオード素子に、黄色蛍光体YAGと、赤色蛍光体CASN−2とを組み合わせたものであり、緑色蛍光体を備えていない。B−5は良好な演色評価数を有するが(Ra=83)、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(R9=40)。一方、青色発光ダイオード素子に緑色蛍光体CSMSと赤色蛍光体CASN−2を組み合わせたB−6は高い演色評価数を有し(Ra=95)、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(R9=93)。
【0105】
意外なことに、模擬白色発光装置S−6のRaおよびR9が最大となったのは、出力光のスペクトルが、B−5の発光スペクトルとB−6の発光スペクトルを1:9の比率で合算した合成スペクトルのときだということである(Ra=98、R9=98)。このときの580nm強度比は94%である。また、これらのスペクトルの合算比率が2:8(580nm強度比96%)のときも、模擬白色発光装置S−6のRaおよびR9は十分に良好な値であった(Ra=98、R9=90)。これらの結果を意外とする理由は、黄色蛍光体を用いた白色半導体発光装置は、一般に、これを用いないものよりも演色性に劣ると考えられているためである。
【0106】
【表11】
【0107】
実際に、青色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体CSMS、黄色蛍光体YAGおよび赤色蛍光体CASN−2を用いて作製した白色LEDサンプルは、B−7およびB−8である。このうち、580nm強度比が93%であるB−8は、極めて優れた演色性を有していた(Ra=98、R9=97)。一方、580nm強度比が101%であるB−7は、高い演色評価数を有するが(Ra=91)、鮮やかな赤色に関する再現性は良好ではなかった(R9=67)。図12にB−8の発光スペクトルを示す。
【0108】
図13は、表6〜表11に示す6種類のシミュレーションから得られた模擬白色発光装置S−1〜S−6の580nm強度比とR9の全てを、ひとつのグラフにプロットしたものである。グラフの横軸が580nm強度比、縦軸がR9である。プロットの結果は、発光装置が備える成分光の発生源(発光ダイオード素子、蛍光体)の種類によらない、ある特定の傾向が存在することを示している。すなわち、580nm強度比が約90%のところにR9のピークが存在し、580nm強度比がこれより低くなっても、また、高くなっても、R9は低下するという傾向である。したがって、半導体白色発光装置のR9を改善するには、その580nm強度比が80〜100%の範囲内となるようにすればよいといえる。
【0109】
図14は、図13と同様のプロットを、模擬白色発光装置の出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が630nm以下である場合について行った結果である。この図から、R9が最も高くなるのは、580nm強度比が90〜100%のときであるといえる。
【0110】
図15は、図13と同様のプロットを、模擬白色発光装置の出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が630nm以上である場合について行った結果である。この図から、R9が最も高くなるのは、580nm強度比が85〜100%のときであり、特に、85〜95%のときであるといえる。
【0111】
表6〜表11に示す6種類のシミュレーションは、白色発光装置の発光スペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が615〜645nmの範囲内に存すれば、前述の条件2を充足させることにより、鮮やかな赤色に関する演色性の改善が可能であることを示
している。
【0112】
表12〜14に示すのは、色温度が大きく異なる2種類の白色LEDサンプルを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、色温度が大きく異なる2種類の白色LEDサンプルのそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置の発光特性を計算した結果である。表12〜14の各シミュレーションでは、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDサンプルの発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。
【0113】
【表12】
【0114】
【表13】
【0115】
【表14】
【0116】
表12は、白色LEDサンプルB−9(相関色温度約6500K)およびB−2(相関色温度約3000K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−7の発光特性を計算した結果である。図16には白色LEDサンプルB−9の発光スペクトルを、また、図17には白色LEDサンプルB−2の発光スペクトルを、それぞれ示す。模擬白色発光装置S−7の相関色温度は、合成スペクトルに含まれるB−9およびB−2の発光スペクトルの比率に応じて、B−9の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。相関色温度3000〜6500Kの全範囲で模擬白色発光装置S−7の580nm強度比は92〜94%となり、特殊演色評価数R9は89〜98という高い値となった。
【0117】
表13は、白色LEDサンプルB−10(相関色温度約6400K)および白色LEDサンプルB−2(相関色温度約3000K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−8の発光特性を計算した結果である。図18には白色LEDサンプルB−10の発光スペクトルを示す。B−10は、演色評価数は高いが、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(Ra=90、R9=45)。一方、B−2は、演色評価数が高く、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(Ra=96、R9=90)。模擬白色発光装置S−8の演色評価数Raは、出力光のスペクトルが、B−10の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとをいずれの比率で合算した合成スペクトルである場合も、90以上という高い値となった。一方、R9は、B−2の発光スペクトルが合成スペクトルに占める比率が高くなるにつれて上昇する傾向を示した。580nm強度比とR9との間には負の相関があり、580nm強度比が100%を下回るときに、R9は86〜91という高い値となった。
【0118】
表14は、白色LEDサンプルB−9(相関色温度約6500K)および白色LEDサンプルB−4(相関色温度約2900K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−9の発光特性である。B−9は、演色評価数が高く、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(Ra=95、R9=94)。一方、B−4は演色評価数は高いが、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(Ra=88、R9=37)。模擬白色発光装置S−9の演色評価数Raは、出力光の
スペクトルが、B−9の発光スペクトルとB−4の発光スペクトルとをいずれの比率で合算した合成スペクトルである場合も、90以上という高い値となった。一方、R9は、B−9の発光スペクトルが合成スペクトルに占める比率が高くなるにつれて上昇する傾向を示した。580nm強度比とR9との間には負の相関があり、580nm強度比が100%を下回るとき、R9は89〜97という高い値となった。
【0119】
シミュレーションに用いていない白色LEDサンプルについて述べると、紫色発光ダイオード素子を蛍光体の励起源に用いたV−8、V−9、V−10およびV−11は、いずれも上記第1の条件および第2の条件を充足しており、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性が良好である。この4つの白色LEDサンプルは、いずれも青色蛍光体がシミュレーションに用いた白色LEDサンプルと異なっている。また、V−8およびV−9に用いられている青色蛍光体と、V−10およびV−11に用いられている青色蛍光体とは異なっている。さらに、V−10およびV−11は、それぞれ、緑色蛍光体もシミュレーションに用いた白色LEDサンプルとは異なっている。
【0120】
青色発光ダイオード素子を青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いたB−1およびB−3は、いずれも上記第1の条件を充足している。更に、前者は上記第2の条件も充足している。一方、後者は該第2の条件を充足していない。白色LEDサンプルB−1の演色評価数Raと特殊演色評価数R9はいずれも極めて高い(Ra=97、R9=96)。それに対し、白色LEDサンプルB−3の演色評価数Raは良好であるが、特殊演色評価数R9は低い(Ra=89、R9=43)。
【0121】
本発明の実施形態には以下に記す白色半導体発光装置および照明装置が包含される。
(1)出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色半導体発光装置であって、該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色半導体発光装置。
(2)該青色光成分の発生源が青色半導体発光素子を含む、上記(1)の白色半導体発光装置。
(3)該青色半導体発光素子が発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、上記(2)の白色半導体発光装置。
(4)該出力光が、更に、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が放出する光を含む、上記(3)の白色半導体発光装置。
(5)上記発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が、非極性または半極性のGaN基板と、該基板上にエピタキシャル成長した複数のGaN系半導体層とを含み、該複数のGaN系半導体層は発光デバイス構造を構成する層としてInGaN発光層と該InGaN発光層を挟むp型クラッド層およびn型クラッド層とを含む、上記(4)の白色半導体発光装置。
(6)該青色光成分の発生源が該第1の蛍光体を含み、該第1の蛍光体が青色蛍光体を含む、上記(1)の白色半導体発光装置。
(7)該青色蛍光体の励起源が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、上記(6)の白色半導体発光装置。
(8)該青色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(6)または(7)の白色半導体発光装置。
(9)該青色蛍光体が(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(8)の白色半導体発光装置。
(10)該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含む、上記(1)〜(9)のいずれかの白色半導体発光装置。
(11)該緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(10)の白色半導体発光装置。
(12)該緑色蛍光体が、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:EuおよびSr5Al5Si21O2N35:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(11)の白色半導体発光装置。
(13)該緑色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(10)〜(12)のいずれかの白色半導体発光装置。
(14)該緑色蛍光体が、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:CeおよびCaSc2O4:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(13)の白色半導体発光装置。
(15)該第2の蛍光体が、第1の緑色蛍光体と第2の緑色蛍光体とを含み、該第2の緑色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の緑色蛍光体よりも低い、上記(10)の白色半導体発光装置。
(16)該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、上記(1)〜(15)のいずれかの白色半導体発光装置。
(17)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅80nm以上の赤色蛍光体を含む、上記(16)の白色半導体発光装置。
(18)該赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(17)の白色半導体発光装置。
(19)該赤色蛍光体が、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euおよび(Sr,Ba)3SiO5:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(18)の白色半導体発光装置。
(20)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅が80nm以上かつ発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を含む、上記(16)の白色半導体発光装置。
(21)該第3の蛍光体が、発光ピーク波長をλ1未満の範囲に有する赤色蛍光体と発光ピーク波長をλ1以上の範囲に有する赤色蛍光体とを含む、上記(16)または(20)の白色半導体発光装置。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。
(22)該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(16)の白色半導体発光装置。
(23)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.2
以上である上記(22)の白色半導体発光装置。
(24)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.3以上である上記(23)の白色半導体発光装置。
(25)該第2の赤色蛍光体が該第1の赤色蛍光体よりも発光ピーク波長を長波長側に有している、上記(22)〜(24)のいずれかの白色半導体発光装置。
(26)該第1の赤色蛍光体および該第2の赤色蛍光体は発光ピーク波長を630〜655nmの範囲に有している、上記(22)〜(25)のいずれかの白色半導体発光装置。(27)該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含む、上記(22)の白色半導体発光装置。
(28)該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下である、上記(27)の白色半導体発光装置。
(29)該第2の赤色蛍光体がCaAlSiN3:Euを含む、上記(27)または(28)の白色半導体発光装置。
(30)該第2の蛍光体または該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が黄色蛍光体を含む、上記(1)〜(29)のいずれかの白色半導体発光装置。
(31)該黄色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはランタンケイ素窒化物からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(30)の白色半導体発光装置。(32)該黄色蛍光体が、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、La3Si6N11:CeおよびCa1.5xLa3-xSi6N11:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(31)の白色半導体発光装置。
(33)該青色光成分、該緑色光成分および該緑色光成分のいずれの発生源にも、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体を含まない、上記(1)〜(32)のいずれかの白色半導体発光装置。
(34)該出力光の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−6.0〜+6.0の範囲内である、上記(1)〜(33)のいずれかの白色半導体発光装置。
(35)該出力光の相関色温度が2000K〜6500Kである、上記(1)〜(34)のいずれかの白色半導体発光装置。
(36)該出力光の相関色温度が2000K〜4000Kである、上記(35)の白色半導体発光装置。
(37)該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、上記(1)〜(36)のいずれかの白色半導体発光装置。
(38)該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、上記(1)〜(36)のいずれかの白色半導体発光装置。
(39)上記(1)〜(38)のいずれかの白色半導体発光装置を含む照明装置。
【0122】
本発明の実施形態には以下に記す白色発光ユニットおよび照明装置が包含される。
(40)青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発す
る光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色発光ユニット。
(41)該半導体発光素子が青色半導体発光素子を含む、上記(40)の白色発光ユニット。
(42)該青色半導体発光素子が発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、上記(41)の白色発光ユニット。
(43)該青色光成分および/または該緑色光成分の発生源として、更に、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子を備える、上記(42)の白色発光ユニット。
(44)上記発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が、非極性または半極性のGaN基板と、該基板上にエピタキシャル成長した複数のGaN系半導体層とを含み、該複数のGaN系半導体層は発光デバイス構造を構成する層としてInGaN発光層と該InGaN発光層を挟むp型クラッド層およびn型クラッド層とを含む、上記(43)の白色発光ユニット。
(45)青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色発光ユニット。
(46)該第1の蛍光体が青色蛍光体を含む、上記(45)の白色発光ユニット。
(47)該半導体発光素子が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系紫色発光ダイオード素子を含む、上記(46)の白色発光ユニット。
(48)該青色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(46)または(47)の白色発光ユニット。
(49)該青色蛍光体が(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(48)の白色発光ユニット。
(50)該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含む、上記(40)〜(49)のいずれかの白色発光ユニット。
(51)該緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(50)の白色発光ユニット。
(52)該緑色蛍光体が、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:EuおよびSr5Al5Si21O2N35:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(51)の白色発光ユニット。
(53)該緑色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(50)〜(52)
のいずれかの白色発光ユニット。
(54)該緑色蛍光体が、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:CeおよびCaSc2O4:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(53)の白色発光ユニット。
(55)該第2の蛍光体が、第1の緑色蛍光体と第2の緑色蛍光体とを含み、該第2の緑色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の緑色蛍光体よりも低い、上記(50)の白色発光ユニット。
(56)該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、上記(40)〜(55)のいずれかの白色発光ユニット。
(57)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅80nm以上の赤色蛍光体を含む、上記(56)の白色発光ユニット。
(58)該赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(57)の白色発光ユニット。
(59)該赤色蛍光体が、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euおよび(Sr,Ba)3SiO5:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(58)の白色発光ユニット。
(60)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅が80nm以上かつ発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を含む、上記(56)の白色発光ユニット。
(61)該第3の蛍光体が、発光ピーク波長をλ1未満の範囲に有する赤色蛍光体と発光ピーク波長をλ1以上の範囲に有する赤色蛍光体とを含む、上記(56)または(60)の白色発光ユニット。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。
(62)該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(56)の白色発光ユニット。
(63)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.2以上である上記(62)の白色発光ユニット。
(64)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.3以上である上記(63)の白色発光ユニット。
(65)該第2の赤色蛍光体が該第1の赤色蛍光体よりも発光ピーク波長を長波長側に有している、上記(62)〜(64)のいずれかの白色発光ユニット。
(66)該第1の赤色蛍光体および該第2の赤色蛍光体は発光ピーク波長を630〜655nmの範囲に有している、上記(62)〜(65)のいずれかの白色発光ユニット。
(67)該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含む、上記(62)の白色発光ユニット。
(68)該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下である、上記(67)の白色発光ユニット。
(69)該第2の赤色蛍光体がCaAlSiN3:Euを含む、上記(67)または(68)の白色発光ユニット。
(70)該第2の蛍光体または該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が黄色蛍光体を含む、上記(40)〜(69)のいずれかの白色発光ユニット。
(71)該黄色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはランタンケイ
素窒化物からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(70)の白色発光ユニット。
(72)該黄色蛍光体が、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、La3Si6N11:CeおよびCa1.5xLa3-xSi6N11:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(71)の白色発光ユニット。
(73)硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体を含まない、上記(40)〜(72)のいずれかの白色発光ユニット。
(74)該白色光の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−6.0〜+6.0の範囲内である、上記(40)〜(73)のいずれかの白色発光ユニット。
(75)該白色光の相関色温度が2000K〜6500Kである、上記(40)〜(74)のいずれかの白色発光ユニット。
(76)該白色光の相関色温度が2000K〜4000Kである、上記(75)の白色発光ユニット。
(77)該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、上記(40)〜(76)のいずれかの白色発光ユニット。
(78)該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、上記(40)〜(76)のいずれかの白色発光ユニット。
(79)上記(40)〜(78)のいずれかの白色発光ユニットを含む照明装置。
【0123】
本発明の実施形態には以下に記す白色半導体発光装置および照明装置が包含される。
(80)それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色半導体発光装置。
(81)該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(80)の白色半導体発光装置。
(82)該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下である、上記(81)の白色半導体発光装置。
(83)該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が25MK-1以下である、上記(82)の白色半導体発光装置。
(84)該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットへの投入電力と該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットへの投入電力とを制御して、該出力光に占める該第1の一次白色光の比率と該第2の一次白色光の比率を調整するための制御回路を備える、上記(80)〜(83)のいずれかの白色半導体発光装置。
(85)上記(80)〜(84)のいずれかの白色半導体発光装置を含む照明装置。
【0124】
本発明は、以上に明示的に記述された実施形態に限定されるものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明に適した白色光を出力する白色発光装置に関し、とりわけ、発光要素として蛍光体を備えるとともに、その蛍光体の励起源として半導体発光素子を備える、白色半導体発光装置に関する。
【0002】
本発明および本明細書においては、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲に含まれる光を、白色光と呼ぶものとする。Duv(=1000duv)の定義はJIS Z 8725:1999「光源の分布温度及び色温度・相関色温度測定方法」による。
【背景技術】
【0003】
窒化ガリウム系の発光ダイオード(LED)素子と蛍光体とを組み合わせて白色光を出力するように構成された、白色半導体発光装置の一種である白色LEDが、最近では照明用途においても使用され始めている。
【0004】
照明用途において、色温度が3500K以下の白色LEDに対する需要が存在する(特許文献1)。このような低色温度の白色LED、しかも、照明に使用できる高輝度のものが製造可能となった背景には、高輝度赤色蛍光体の開発成功がある。高輝度赤色蛍光体の具体例を挙げれば、特許文献2に開示されたCaAlSiN3:Eu、特許文献3に開示された(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、特許文献4に開示されたCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Eu、特許文献5に開示された(Sr,Ba)3SiO5:Euなどといった、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする赤色蛍光体である。これらの赤色蛍光体は、半値全幅が80nmを超えるブロードな発光バンドを有するため、それを用いた白色LEDは通常、演色評価数(CRI)の高いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−103443号公報
【特許文献2】特開2006−8721号公報
【特許文献3】特開2008−7751号公報
【特許文献4】特開2007−231245号公報
【特許文献5】特開2008−50379号公報
【特許文献6】国際公開2007−105631号パンフレット
【特許文献7】国際公開2009−072043号パンフレット
【特許文献8】特開2008−150549号公報
【特許文献9】特開2010−39206号公報
【特許文献10】特開2009−251511号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. Chen, et al., phys. stat. sol. (a) 205, No.5, 1086-1092(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、白色半導体発光装置は、特殊演色評価数(special color rendering index)のひとつであるR9を指標とする、鮮やかな赤色に関する再現性が低くなる傾向があり、
特に、温白色LED(warm white LED)と呼ばれる色温度2000〜4000Kの白色光を放出するLEDランプのような、低色温度の白色半導体発光装置において、この傾向は顕著となる。
そこで、本発明は、鮮やかな赤色に関する再現性が改善された白色半導体発光装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、下記1.〜6.に存する。
1.出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色半導体発光装置であって、該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第1の蛍光体は好ましくは青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、該第2の蛍光体および該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでいてもよい。
【0009】
2.前記1.に記載の白色半導体発光装置であって、該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%、好ましくは85〜95%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0010】
3.前記1.に記載の白色半導体発光装置であって、該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0011】
4.前記1.〜3.のいずれかに記載の白色半導体発光装置であって、前記第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0012】
5.前記4.に記載の白色半導体発光装置であって、該第2の赤色蛍光体が、該第1の赤色蛍光体よりも発光スペクトルのピーク波長を長波長側に有することを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0013】
6.前記4.または5.に記載の白色半導体発光装置であって、該第1の赤色蛍光体がS
rxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含むことを特徴とする白色半導体発光装置。この白色半導体発光装置において、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下であることが好ましい。また、この白色半導体発光装置において、該第2の赤色蛍光体は好ましくはCaAlSiN3:Euを含む。
【0014】
本発明の他の要旨は、下記7.〜13.に存する。
7.青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、第1の蛍光体は好ましくは青色蛍光体を含み、第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、第2の蛍光体および第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでもよい。
【0015】
8.青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、第2の蛍光体は好ましくは緑色蛍光体を含み、第3の蛍光体は好ましくは赤色蛍光体を含む。更に、第2の蛍光体および第3の蛍光体のいずれかまたは両方が、黄色蛍光体を含んでもよい。
【0016】
9.前記7.または8.に記載の白色発光ユニットであって、該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%、好ましくは85〜95%であることを特徴とする、白色発光ユニット。
【0017】
10.前記7.または8.に記載の白色発光ユニットであって、該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%であることを特徴とする、白色発光ユニット。
【0018】
11.前記7.〜10.のいずれかに記載の白色発光ユニットであって、該第3の蛍光体が第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0019】
12.前記11.に記載の白色発光ユニットであって、該第2の赤色蛍光体が、該第1の赤色蛍光体よりも発光スペクトルのピーク波長を長波長側に有することを特徴とする、白色発光ユニット。
【0020】
13.前記11.または12.に記載の白色発光ユニットであって、該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含むことを特徴とする、白色発光ユニット。この白色発光ユニットにおいて、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下であることが好ましい。また、この白色発光ユニットにおいて、該第2の赤色蛍光体は好ましくはCaAlSiN3:Euを含む。
【0021】
本発明の更に他の要旨は、下記14.〜16.に存する。
14.それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、ことを特徴とする白色半導体発光装置。
【0022】
15.前記14.に記載の白色半導体発光装置において、前記第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、前記第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低いことを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0023】
16.前記14.または15.に記載の白色半導体発光装置において、前記第1の一次白色光と前記第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下、好ましくは25MK-1以下であることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鮮やかな赤色に関する再現性が改善された白色半導体発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図2】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図3】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図4】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図5】合成スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図6】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図7】白色LEDの発光スペクトルおよび演色性評価用基準光のスペクトルを示す。
【図8】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図9】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図10】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図11】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図12】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図13】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図14】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図15】580nm強度比とR9の関係を示す。
【図16】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図17】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図18】白色LEDの発光スペクトルを示す。
【図19】色度図(CIE 1931)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の白色半導体発光装置は、好ましくは、少なくともひとつの白色発光ユニットを含む。白色発光ユニットは、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光の波長を変換する蛍光体を含み、白色光を放出する。白色発光ユニットにおける半導体発光素子と蛍光体との光学的な結合の形態に限定はなく、両者の間は単に透明な媒体(空気を含む)で充たされているだけであってもよいし、あるいは、レンズ、光ファイバ、導光板、反射鏡などの光学素子が両者の間に介在していてもよい。
【0027】
白色発光ユニットには、波長360〜490nmの光を放出する半導体発光素子を好ましく用いることができる。半導体発光素子の発光部を構成する半導体の種類および該発光部の構造に特に限定はない。好ましい半導体発光素子は、窒化ガリウム系、酸化亜鉛系または炭化ケイ素系の半導体で形成された、pn接合型の発光部を有する発光ダイオード素子である。
【0028】
白色発光ユニットに用いる蛍光体の形態に特に限定はなく、パウダー状であってもよいし、セラミック組織中に蛍光体相を含有する発光セラミックであってもよい。パウダー状の蛍光体は適宜な方法により固定化して使用する。固定化の方法に限定はないが、好ましくは、高分子材料またはガラスからなる透明な固体マトリックス中に蛍光体粒子を分散させるか、あるいは、適宜な部材の表面に電着その他の方法で蛍光体粒子を層状に堆積させる。
【0029】
好ましい白色発光ユニットは、青色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを備え、青色発光ダイオード素子が放出する青色光の一部と、該青色光の他の一部が緑色蛍光体により波長変換されて生じる緑色光と、該青色光の更に他の一部が赤色蛍光体に
より波長変換されて生じる赤色光と、を成分として含む白色光を放出する。青色発光ダイオード素子の発光ピーク波長は、通常、440〜470nmである。この白色発光ユニットは、更に、青色発光ダイオード素子が放出する青色光の一部を吸収して黄色発光する蛍光体を備えていてもよい。
【0030】
別の好ましい白色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、青色蛍光体と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを備え、発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光の一部が青色蛍光体により波長変換されて生じる青色光と、該紫外光または紫色光の他の一部が緑色蛍光体で波長変換されて生じる緑色光と、該紫外光または紫色光の更に他の一部が赤色蛍光体で変換されて生じる赤色光と、を成分として含む白色光を放出する。紫色発光ダイオード素子を用いる場合には、該素子が放出する紫色光の一部が白色光の成分に含まれてもよい。ストークスシフト損失が小さくなるという理由から、この白色発光ユニットには、紫外発光ダイオード素子よりも紫色発光ダイオード素子を使用することがより好ましい。
【0031】
現在入手できる最も効率の高い紫色発光ダイオード素子は、InGaN系の紫色発光ダイオード素子である。InGaN系発光ダイオード素子は、InGaN井戸層を含むMQW活性層をp型およびn型のGaN系クラッド層で挟んだダブルヘテロ構造を備えるpn接合型発光ダイオード素子であり、発光ピーク波長を410〜430nmの範囲としたときに発光効率が最大となることが知られている(非特許文献1)。一方で、高効率の青色蛍光体の励起効率は一般に紫外〜近紫外領域において高く、波長405nmよりも長波長側では波長の増加とともに急激に低下する。このような青色蛍光体の励起特性も考慮すると、白色発光ユニットに最も適した紫色発光ダイオード素子は、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲、特に405〜415nmの範囲に有する、InGaN系発光ダイオード素子であるといえる。
【0032】
白色発光ユニットの構成に特段の限定はなく、半導体発光素子と蛍光体とを組合せてなる公知の白色発光装置の構成を任意に参照することができる。好適例は、汎用の白色LEDの構造を包含する。すなわち、白色発光ユニットは、1個または複数個の発光ダイオード素子を、砲弾型パッケージ、SMD型パッケージなどのパッケージにマウントし、蛍光体を添加した透光性封止材で封止した構造とすることができる。
【0033】
別の好適例に係る白色発光ユニットでは、パッケージを用いないで、回路基板上に発光ダイオード素子が直接マウントされる。この白色発光ユニットは、いわゆるチップ・オン・ボード型ユニットを包含する。蛍光体は、発光ダイオード素子が発する光が照射される位置に、適宜な方法で配置される。例えば、分散された蛍光体パウダーを含む透光性のシリコーン樹脂組成物が、発光ダイオード素子の表面に塗布される。あるいは、蛍光体パウダーが、電着などの方法によって、発光ダイオード素子の表面に堆積される。あるいは、別途工程で準備された、蛍光体を含有する透光性のシートが、発光ダイオード素子の上部に設置される。このシートは、蛍光体相を含む発光セラミックからなるシートであってもよいし、蛍光体パウダーを分散させた透光性の樹脂組成物からなるフィルムであってもよい。このフィルムは、樹脂、ガラス等からなる透明板の表面に積層されたものであってもよい。
【0034】
本発明の白色半導体発光装置は、複数の白色発光ユニットを備え、各白色発光ユニットから放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とするものであってもよい。かかる実施形態において、該複数の白色発光ユニットは、互いに異なる発光スペクトルを有する2個の白色発光ユニットを含むことができる。
【0035】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットを備えることを必須としない。一例
では、青色発光ユニットと、緑色発光ユニットと、赤色発光ユニットとを備え、該青色発光ユニットが放出する青色光と、該緑色発光ユニットが放出する緑色光と、該赤色発光ユニットが放出する赤色光と、を成分とする白色光を出力するものであってもよい。ここで、青色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、青色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該青色蛍光体により波長変換されて生じる青色光を放出するように構成された発光ユニットである。また、緑色発光ユニットは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該緑色蛍光体により波長変換されて生じる緑色光を放出するように構成された発光ユニットである。また、赤色発光ユニットとは、紫外発光ダイオード素子または紫色発光ダイオード素子と、赤色蛍光体とを備え、該発光ダイオード素子が放出する紫外光または紫色光が該赤色蛍光体により波長変換されて生じる赤色光を放出するように構成された発光ユニットである。
【0036】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットに加えて、上記の青色発光ユニット、緑色発光ユニット、赤色発光ユニットなどの各種発光ユニットを備え、各発光ユニットから放出される光が混合されてなる合成光を出力光とするものであってもよい。
【0037】
本発明の白色半導体発光装置は、白色発光ユニットを備えるか否かにかかわらず、その出力光に青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む。ここで、青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含み、緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含み、赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を少なくとも含む。青色光成分の発生源は、半導体発光素子または、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該青色光成分を含む光を放出する蛍光体の、少なくともいずれかを含む。一方、緑色光成分の発生源としては、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する蛍光体が必須である。また、赤色光成分の発生源として、半導体発光素子が発する光を吸収し、波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する蛍光体が必須である。半導体発光素子と比べてブロードな発光バンドを有する蛍光体を緑色光成分および赤色光成分の発生源に用いることは、演色性の良好な白色発光装置を得るうえでの極めて重要な要素である。
【0038】
本発明の白色半導体発光装置において、青色光成分の発生源に用いることのできる好適な半導体発光素子は、InGaN系の青色発光ダイオード素子である。好適例では、演色性を高めるために、発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する第1の発光ダイオード素子と、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する第2の発光ダイオード素子を備えていてもよい。ここで、第1の発光ダイオード素子の発光ピーク波長と、第2の発光ダイオード素子の発光ピーク波長は、10nm以上離すものとし、好ましくは20nm以上離す。発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子として、非極性または半極性のGaN基板上に、InGaN発光層を含むGaN系半導体をエピタキシャル成長させることにより製造されるものを好ましく用いることができる。
【0039】
本発明の白色半導体発光装置において、波長変換による青色光成分の生成源には、紫外〜紫色光により励起可能な青色蛍光体を好ましく用いることができる。青色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「PURPULISH BLUE」、「BLUE」または「GREENISH BLUE」に区分される蛍光体である。かかる青色蛍光体の種類に特に限定はないが、好適例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする青色蛍光体、例えば、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Euなどが挙げられる。中でも好ましいものとして、発光
効率が高く、かつ、ブロードな発光バンドを有する、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)が挙げられる。白色半導体発光装置の演色性を高めるためには、ブロードな発光バンドを有する青色蛍光体を用いることが有効である。
【0040】
本発明の白色半導体発光装置において、緑色光成分の生成源には、緑色蛍光体を好ましく用いることができる。緑色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「GREEN」または「YELLOWISH GREEN」に区分される蛍光体である。かかる緑色蛍光体の種類に特に限定はなく、例えば、Eu2+、Ce3+などを付活剤として含む公知の緑色蛍光体を好ましく用いることができる。Eu2+を付活剤とする好適な緑色蛍光体は、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体である。この種の緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euなどがある。サイアロン結晶を母体とするものの具体例には、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:Eu、Sr5Al5Si21O2N35:Euなどがある。ここで、Sr3Si13Al3O2N21:Euは国際公開2007−105631号パンフレット(特許文献6)に、また、Sr5Al5Si21O2N35:Euは国際公開2009−072043号パンフレット(特許文献7)に、それぞれ開示されている。Ce3+を付活剤とする好適な緑色蛍光体としては、ガーネット型酸化物結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCa3(Sc,Mg)2Si3O12:Ceや、アルカリ土類金属スカンジウム酸塩結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCaSc2O4:Ceがある。この種の緑色蛍光体は、青色半導体発光素子を励起源として用いる場合に適している。
【0041】
上記に好適例として示した緑色蛍光体は、ZnS:Cu,Alなどの硫化物系緑色蛍光体と比べ、耐久性が良好である。特に、母体結晶がアルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンであるものは、窒素を含むために母体結晶中における原子間結合の共有結合性が高く、それゆえに極めて優れた耐久性および耐熱性を示す。一方、緑色蛍光体に限ったことではないが、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体の使用は推奨されない。なぜなら、母体結晶から遊離する僅かな硫黄が、半導体発光素子、パッケージ、封止材料などに含まれている金属と反応して黒色物質を発生させる場合があるからである。
【0042】
本発明の半導体発光装置において、赤色光成分の生成源には赤色蛍光体、特に、発光バンドの半値全幅が80nm以上である赤色蛍光体を好ましく用いることができる。このような発光特性を有するあらゆる種類の赤色蛍光体を使用することができるが、好適例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする赤色蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Euなどがある。SrAlSi4N7:Euは、特開2008−150549号公報(特許文献8)などに開示された赤色蛍光体である。アルカリ土類ケイ酸窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euなどがある。アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、(Sr,Ba)3SiO5:Euなどがある。赤色蛍光体の場合も、緑色蛍光体の場合と同様に、母体結晶が窒素を含むものは極めて優れた耐久性および耐熱性を有する。その中でも、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Euおよび(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euは発光効率が高いこ
とから、特に好ましく用いることができる。
【0043】
なお、本発明にいう赤色蛍光体は、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「RED」、「REDDISH ORANGE」または「ORANGE」に区分される蛍光体である。このような蛍光体は、大抵、発光ピーク波長を590〜700nmの範囲に有する。
【0044】
本発明の白色半導体発光装置には、緑色光成分または赤色光成分の発生源の一部として、黄色蛍光体を用いることができる。黄色蛍光体とは、その発光色が、図19に示すxy色度図(CIE 1931)における「YELLOW GREEN」、「GREENISH YELLOW」、「YELLOW」または「YELLOWISH ORANGE」に区分される蛍光体である。好ましい黄色蛍光体としては、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ceなどがある。他の好ましい黄色蛍光体には、Ce3+を付活剤とし、ランタンケイ素窒化物結晶を母体とする蛍光体、例えば、La3Si6N11:Ce、Ca1.5xLa3-xSi6N11:Ceなどがある。この種の黄色蛍光体は、青色半導体発光素子を励起源として用いる場合に適しているが、青色蛍光体が発する光を用いても励起可能である。
【0045】
本発明の白色半導体発光装置は、白色照明に適した光、すなわち、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−20〜+20の範囲、好ましくは−6.0〜+6.0の範囲に入る光を発生させることを目的としている。いうまでもないことだが、出力光の色は、出力光を構成する成分光間の強度バランスを調整することにより、設定することができる。白色発光ユニットを備える実施形態においては、半導体発光素子と蛍光体とを組合せてなる公知の白色発光装置(例えば、白色LED)で採用されている手法を適宜用いて、白色発光ユニットが放出する白色光の相関色温度を設定することができる。
【0046】
本発明者等が見出したところによれば、鮮やかな赤色の再現性が良好な白色半導体発光装置は、次の2つの条件が充たされる場合に得られる。第1の条件は、当該発光装置の出力光のスペクトルが、極大波長を615〜645nmの範囲内に有していることである。第2の条件は、光束で規格化した当該発光装置の出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の、80〜100%であることである。
【0047】
驚くべきは、出力光のスペクトルが、赤色スペクトル領域(590〜780nm)に有する極大波長が630nm未満の場合ですら、この第2の条件を充足させることによって、白色半導体発光装置の特殊演色評価数R9はかなりの程度改善されることである。この事実は、鮮やかな赤色の再現性を犠牲にすることなく、発光装置のストークスシフト損失を低減させることが可能であることを示している。
【0048】
その一方で、出力光のスペクトルが深い赤色成分を豊富に含んでいても、第2の条件を充たさない白色半導体発光装置の特殊演色評価数R9は極めて低い値となる場合がある。本発明者等はこのことを、発光ピーク波長を約660nmに有する赤色蛍光体CaAlSiN3:Euを用いた白色LEDの試作を通して確認している。この事実は、当業者間においても従来知られていなかった新知見であると思われる。
【0049】
以下の説明では、光束で規格化した発光装置の出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I1)と、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度(I2)との比率(I1/I2)を、「580nm強度比」と呼ぶ場合がある。
【0050】
上記第2の条件における好ましい580nm強度比は、上記第1の条件に係る極大波長が存する波長域によって異なる。出力光のスペクトルが極大波長を615nm以上630nm未満の範囲内に有するときには、580nm強度比は85〜100%であることが好ましく、85〜95%であることがより好ましい。一方、出力光のスペクトルが極大波長を630〜645nmの範囲内に有するときには、580nm強度比は90〜100%であることが好ましい。
【0051】
上記第2の条件にいう演色性評価用基準光とは、光源の演色性評価方法を定める日本工業規格JIS Z8726:1990に規定される基準光であり、試料光源たる白色半導体発光装置の相関色温度が5000K未満のときは完全放射体の光、また、該相関色温度が5000K以上のときはCIE昼光である。完全放射体およびCIE昼光の定義はJIS Z8720:2000(対応国際規格 ISO/CIE 10526:1991)に従う。
【0052】
また、上記第2の条件にいう、光束で規格化した光のスペクトルとは、下記数式(1)により決定される光束Φが1(unity)となるように規格化したスペクトル(下記数式(1)中の分光放射束Φe)をいう。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
Φ:光束[lm]
Km:最大視感度[lm/W]
Vλ:明所視標準比視感度
Φe:分光放射束[W/nm]
λ:波長[nm]、である。
【0055】
上記第1の条件を充たす白色半導体発光装置を得るには、赤色光成分の生成源に、発光バンドの半値全幅が80nm以上、かつ、発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を用いればよい。使用する赤色蛍光体がひとつだけの場合には、発光ピーク波長を625〜655nmの範囲に有するものを用いることが好ましい。複数の赤色蛍光体を使用する場合には、少なくともひとつを発光ピーク波長がλ1未満の範囲に存する赤色蛍光体から選択し、他の少なくともひとつを発光ピーク波長がλ1以上の範囲に存する赤色蛍光体から選択することができる。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。該複数の赤色蛍光体は、その全てを発光ピーク波長が625〜655nmの範囲に存する赤色蛍光体から選択することができる。一例では、複数の赤色蛍光体の全てを、発光ピーク波長を630nm以上に有するものから選択してもよい。
【0056】
上記第2の条件を充たすために、緑色光成分の生成源に用いる蛍光体と、赤色光成分の生成源に用いる蛍光体の、適切な選択が望まれる。例えば、前者として緑色蛍光体を、後者として赤色蛍光体を用いる場合、その両方に、発光スペクトルの波長580nmにおけ
る相対強度(各蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度。以下では、これを略して、「580nm相対強度」ともいう。)が0.3未満であるもののみを用いた場合には、発光装置の580nm強度比が80%を下回る可能性が高い。逆に、緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に、580nm相対強度が0.5より大きいもののみを用いた場合には、発光装置の580nm強度比が100%を超える可能性が高い。
【0057】
好適かつ簡便な方法として、580nm相対強度が異なる複数の赤色蛍光体を組合せて用いることにより、上記第2の条件を充足させることができる。例えば、ある赤色蛍光体(赤色蛍光体−1)を単独で用いたところ、得られた白色半導体発光装置の演色評価数Raは良好(例えば85)であるが、特殊演色評価数R9が低かった(例えば、60未満)とする。この白色発光装置について580nm強度比を調べ、それが100%より大きければ、赤色蛍光体−1に加え、580nm相対強度が赤色蛍光体−1よりも低い、他の赤色蛍光体(赤色蛍光体−2)を用いることにより、580nm相対強度を100%以下とすることができる。反対に、赤色蛍光体−1を単独で用いて得られた白色半導体発光装置の580nm強度比が80%より小さければ、赤色蛍光体−1に加えて、580nm相対強度が赤色蛍光体−1よりも高い、他の赤色蛍光体(赤色蛍光体−3)を追加的に用いればよい。赤色蛍光体−2および赤色蛍光体−3は、赤色蛍光体−1との間の580nm相対強度の差が大きい程、少量の追加使用で白色発光装置の580nm強度比に大きな変化をもたらす。従って、この580nm相対強度の差は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
【0058】
上記の例において、赤色蛍光体−2を追加使用する場合には、その赤色蛍光体−2が赤色蛍光体−1よりも発光ピーク波長を長波長側に有していることが好ましい。そのような赤色蛍光体−2の追加的使用は、白色発光装置の580nm強度比を低下させるとともに、発光装置の出力光スペクトルが赤色スペクトル領域(590〜780nm)に有する極大波長を長波長化させる。この極大波長が長い程、R9が最大となる580nm強度比は大きくなる傾向があるので、この赤色蛍光体−2は少量の追加で大きなR9改善効果を与えることになる。つまり、赤色蛍光体−2の追加に起因して生じる様々な影響を最小限に抑えながら、鮮やかな赤色に関する再現性を改善することができる。
【0059】
赤色蛍光体の中でもSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)およびCa1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは、単独で使用した場合でも演色評価数Raおよび特殊演色評価数R9の良好な白色半導体発光装置を与えるが、それに加えて、発光ピーク波長をより長波長側に有し、かつより低い580nm相対強度を有する赤色蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)を併用することにより、更に特殊演色評価数R9が改善された白色発光装置を得ることができる。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euと類似した発光スペクトルを有する赤色蛍光体SrAlSi4N7:Euについても、同様の効果が期待できる。なお、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euは、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euにおいてn=2としたものと同義である。
【0060】
上記第2の条件を充たすために、580nm相対強度が異なる複数の赤色蛍光体を組合せて用いる代わりに、580nm相対強度が異なる複数の緑色蛍光体を組み合せて用いることや、あるいは、580nm相対強度が異なる複数の黄色蛍光体を組み合せて用いることも、また可能である。
【0061】
本発明の実施形態に係る白色半導体発光装置は、それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする発光装置であってもよい。かかる発光装置は、第1の一次白色光を放出す
る白色発光ユニット(白色発光ユニット−1)と第2の一次白色光を放出する白色発光ユニット(白色発光ユニット−2)とを含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低いものであってもよい。この場合、白色発光ユニット−1への投入電力と白色発光ユニット−2への投入電力とを制御して、発光装置の出力光に占める第1の一次白色光の比率と第2の一次白色光の比率を調整することによって、発光装置が前記第2の条件を充足する状態を達成することができる。
【0062】
このような、2種類の白色発光ユニットへの投入電力の比率制御による白色発光装置のR9制御を可能とするために、上記の白色発光ユニット−1に用いる赤色蛍光体と白色発光ユニット−2に用いる赤色蛍光体の580nm相対強度を相異ならしめることができる。この実施形態において、第1の一次白色光と第2の一次白色光の逆数相関色温度差を小さくすれば、白色発光ユニット−1と白色発光ユニット−2との発光強度比を変化させたときの、白色半導体発光装置の出力光の色変化を抑制できる。この目的のためには、第1の一次白色光と第2の一次白色光の逆数相関色温度差は50MK-1以下とすることが好ましく、25MK-1以下とすることがより好ましい。
【0063】
後記表6に示す模擬白色発光装置S−1は、かかる実施形態に係る白色半導体発光装置のシミュレーション例と見なすことができる。模擬白色発光装置S−1において、上記白色発光ユニット−1および白色発光ユニット−2に相当するのは白色LEDサンプルV−2およびV−7である。V−2が放出する一次白色光とV−7が放出する一次白色光の強度比が10:0〜0:10まで変化したとき、該模擬白色発光装置S−1の演色性は大きく変化するにもかかわらず、該2種類の一次白色光の色度差が極めて小さいので、模擬白色発光装置S−1の出力光の色度変化は殆ど生じていない。
【0064】
上記第2の条件を充たすための別の方法として、出力光のフィルタリングが挙げられる。この方法は、該第2の条件を充たすうえで出力光の580nm強度比を低下させる必要がある場合に採用し得るものであり、580nmを含む波長帯の光をフィルタ手段を用いたフィルタリングによって白色半導体発光装置の出力光から部分的に除去するというものである。フィルタ手段は具体的構成により限定されるものではなく、光学的原理または光吸収物質による吸収に基づいて透過光または反射光から580nmを含む波長帯の光を部分的に除去する機能を有する、任意の光透過部材または光反射部材であり得る。光透過部材であるフィルタ手段として、特開2010−39206号公報(特許文献9)に開示されたマイナスフィルタ(光学フィルタ)や、特開2009−251511号公報(特許文献10)に開示された、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物などからなる波長選択吸収色素を光吸収物質として含有する吸収フィルタなどが好ましく例示される。また、光反射部材であるフィルタ手段の一例として、このような波長選択吸収色素が反射面に固定化された光反射器、あるいは、このような波長選択吸収色素を添加した樹脂で形成した反射面を有する光反射器が挙げられる。
【0065】
上記フィルタ手段の設置位置は限定されず、例えば白色発光ユニットを含む白色半導体発光装置の場合には、白色発光ユニット内にフィルタ手段を設置し、予め580nmを含む波長帯の光が該フィルタ手段によって部分的に除去された白色光が、該ユニットから放出されるよう構成することができる。そのためには、白色発光ユニット内で生じる580nmを含む波長帯の光が、該ユニット内から外部に放出されるまでに通過する経路上に、上記フィルタ手段(光透過部材または光反射部材)を設置すればよい。一実施形態では、白色発光ユニット内に設けられた、蛍光体粒子が分散された透明な固体マトリックス(波長変換部)に対して、上記の波長選択吸収色素を添加することができる。すなわち、波長
変換部にフィルタ手段が一体化された構成である。
【0066】
白色発光ユニットが放出する白色光を外部に導く光学系を備える白色半導体発光装置においては、該光学系の一部に、580nmを含む波長帯の光の一部を該白色光から除去するための上記フィルタ手段を含めることができる。この場合には、フィルタリング除去する光の量が調整可能となるよう、フィルタ手段を着脱可能あるいは交換可能な形式で光学系に組み込んでもよい。かかる構成によれば、白色発光ユニットから放出される白色光のスペクトルに応じてフィルタ手段を機能させることにより、発光装置の580nm強度比を最適化すること、すなわち、特殊演色評価数R9を最大化することが、可能となる。
【0067】
複数の発光ユニットを備え、該複数の発光ユニットからそれぞれ放出される光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置の場合には、少なくともひとつの発光ユニットが放出する光から、一般的なショートパスフィルタまたはロングパスフィルタを用いて580nmを含む波長帯を除去することにより、580nm強度比を下げることが可能である。例を用いて説明すると、青色発光ユニット、緑色発光ユニットおよび赤色発光ユニットを備える白色半導体発光装置では、ショートパスフィルタを用いて緑色発光ユニットが放出する光から波長580nmを含む長波長側の波長成分を除去する、あるいは、ロングパスフィルタを用いて赤色発光ユニットが放出する光から波長580nmを含む短波長側の波長成分を除去することによって、580nm強度比を低下させることができる。
【0068】
本発明の白色半導体発光装置は、白色光のみを出力可能な発光装置に限定されるものではなく、白色光以外の光を発生させる機能を兼ね備えていてもよい。また、本発明の白色半導体発光装置は、色温度可変の白色発光装置、すなわち、種々の色温度を有する白色光を出力可能な白色発光装置であってもよい。また、本発明の白色半導体発光装置は、点灯モードの切替により演色性を変更ないし調節できるものであってもよい。
【0069】
<実験結果>
以下には、本発明者等が行った、実験(シミュレーションを含む)の結果を記載する。前述の第1の条件および第2の条件が充足されるとき白色半導体発光装置の鮮やかな赤色に関する再現性が改善される、との知見は、この実験を通して得られたものである。表1は、実験に用いた蛍光体のリストである。
【0070】
【表1】
【0071】
表1には、各蛍光体について、本明細書で用いる名称、発光色に基づく種別、一般式、発光スペクトルの特性を示している。発光スペクトルの特性としては、主発光バンドのピーク波長(発光ピーク波長)および半値全幅と、「相対強度@580nm」を示している。これらはいずれも、発光ピーク波長の欄に括弧書きで記された波長で励起したときの値である。「相対強度@580nm」とは前述の580nm相対強度と同義であり、発光ピーク波長における発光スペククトルの強度(発光ピーク強度)を1として、波長580nmにおける発光スペクトルの強度を相対的に表した値である。
【0072】
蛍光体の発光スペクトルの測定は、当該分野における常法に従って行った。ただし、SBSの励起波長402nmにおける発光スペクトル特性は例外で、赤色発光ユニットの発光スペクトル測定結果に基づいている。この赤色発光ユニットは、発光ピーク波長402nmのInGaN系発光ダイオードチップ1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状のSBSを添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。発光ダイオードチップのサイズは350μm角、発光スペクトル測定時の該赤色発光ユニットへの印加電流は20mAである。
【0073】
CASON−1およびCASON−2は、いずれも一般式Ca1-xAl1-xSi1+xN3-x
Ox:Euで表される赤色蛍光体であるが、恐らくはx値の違い等の原因により、発光特性が異なっている。Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:Euの母体はCaAlSiN3とSi2N2Oとの固溶体であり、(CaAlSiN3)1-x(Si2N2O)xと表されることもある。この蛍光体の一般式は、ときどき、CaAlSi(N,O)3:Euと表記される場合がある。
【0074】
CASN−1およびCASN−2は、いずれも一般式CaAlSiN3:Euで表される赤色蛍光体であるが、異なる発光特性を有している。同一の一般式で表される蛍光体(母体が同一の基本構造を有する蛍光体)が、付活剤濃度、不純物濃度、母体組成の一般式からのズレなどの原因によって異なる発光特性を示すという事実、また、この事実を利用して、市場の要求に応じた種々の発光特性を有する蛍光体が生産されていることは、当該技術分野ではよく知られている。
【0075】
表1に掲げた蛍光体を用いて作製した白色LEDサンプルのリストを、表2および表3に示す。表2に示すV−1からV−11までの11種類のサンプルは、発光ピーク波長を約405nmに有する紫色発光ダイオード素子を蛍光体の励起源に用いている。一方、表3に示すB−1からB−10までの10種類のサンプルは、発光ピーク波長を約450nmに有する青色発光ダイオード素子を、青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いている。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
白色LEDサンプルV−1〜V−11、B−1〜B−10は、いずれも、350μm角のInGaN系発光ダイオード素子(チップ)1個を3528SMD型PPA樹脂パッケージに実装し、パウダー状の蛍光体を添加したシリコーン樹脂組成物で封止することにより作製した。表2および表3には、各サンプルに用いた蛍光体の名称と、発光ダイオード素子を封止するシリコーン樹脂組成物における各蛍光体の配合比(濃度)を示している。例えば、サンプルV−1は、青色蛍光体BAM、緑色蛍光体BSSおよび赤色蛍光体CASON−1を、それぞれ9.0wt%、1.2wt%および4.3wt%の濃度で含むシリコーン樹脂組成物により、紫色発光ダイオード素子が封止された構造を有している。
【0079】
表4および表5に、白色LEDサンプルV−1〜V−11、B−1〜B−10のそれぞれの発光特性を示す。相関色温度、Duv、Ra、R9、赤色スペクトル領域における極大波長、および580nm強度比の各値は、いずれも、1個の白色LEDサンプルに電流20mAを印加して発光させたときの発光スペクトルに基づいている。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
赤色蛍光体としてCASON−1を用いた白色LEDサンプルV−1と、CASON−2を用いた白色LEDサンプルV−2に着目すると、表4に示すように、演色評価数Raが前者では97、後者では96と、いずれも極めて高い。また、特殊演色評価数R9についても、V−1が88、V−2が76と、いずれも良好な値である。しかし、Raとは異なり、R9に関してはV−1とV−2の差が比較的大きい。
【0083】
図1は、白色LEDサンプルV−1とV−2の発光スペクトルを、赤色スペクトル領域
(波長590〜780nm)に存する極大波長(V−1は631nm、V−2は624nm)におけるスペクトル強度(赤色スペクトル領域におけるピーク強度)で規格化し、重ねて示したものである。図1からは、580nmを中心とする幅約100nmの波長範囲内で、V−1のスペクトル強度をV−2のスペクトル強度が上回っていることがわかる。
【0084】
図2は、白色LEDサンプルV−1の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−1と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、重ねて示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が同一となるように規格化されている。
【0085】
図3は、白色LEDサンプルV−2の発光スペクトルと、演色性評価用基準光(V−2と同一の相関色温度を有する完全放射体の光)のスペクトルとを、重ねて示したものである。2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0086】
図2と図3を比較すると、一見したところでは、白色LEDサンプルの発光スペクトルの演色性評価用基準光のスペクトルからの乖離の程度に関して、V−1とV−2との間に大きな違いはないように見える。しかし、波長580nmにおけるスペクトル強度に着目すると、V−1の発光スペクトル強度は基準光のスペクトル強度を下回っているのに対し(580nm強度比97%)、V−2の発光スペクトル強度は演色性評価用基準光のスペクトル強度を僅かであるが上回っている(580nm強度比101%)。
【0087】
表6に示すのは、白色LEDサンプルV−2とV−7とを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、V−2とV−7のそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−1の発光特性である。ここで、V−7は、今回使用した赤色蛍光体の中では発光ピーク波長が最も長波長である、CASN−1を赤色光成分の発生源とする白色LEDサンプルである。図4に、V−7の発光スペクトルを示す。
【0088】
表6のシミュレーションでは、それぞれ光束で規格化した白色LEDサンプルV−2およびV−7の発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。表6において、例えば、「合成スペクトル中の白色LED(a)の発光スペクトルの比率」が0.4、「合成スペクトル中の白色LED(b)の発光スペクトルの比率」が0.6である列には、光束で規格化したV−2の発光スペクトルと光束で規格化したV−7の発光スペクトルとを4:6の比率で合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−1の発光特性が示されている。
【0089】
【表6】
【0090】
表6に示すように、模擬白色発光装置S−1のRaおよびR9が最大となるのは、出力光のスペクトルが、V−2の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトルのときである(Ra=98、R9=95)。このときの580nm強度比は96%である。図5に、この合成スペクトルを、演色性評価用基準光のスペクトルとともに示す。図5において、2つのスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0091】
一方、実際にCASON−2およびCASN−1を赤色蛍光体に用いて作製した白色LEDサンプルであるV−3およびV−4の発光スペクトルを、図6および図7にそれぞれ示す。いずれの図にも、演色性評価用基準光のスペクトルを併せて表示している。それぞれの図において、白色LEDサンプルの発光スペクトルと基準光のスペクトルの強度は、上記数式(1)により決定される光束が等しくなるように規格化されている。
【0092】
図6に発光スペクトルを示す白色LEDサンプルV−3は、極めて優れた演色性を有している(Ra=97、R9=98)。このV−3の580nm強度比は95%である。また、図7に発光スペクトルを示す白色LEDサンプルV−4も、高い演色性を備えている(Ra=96、R9=93)。V−4の580nm強度比は92%である。
【0093】
表7〜11に示すのは、それぞれ、2種類の白色LEDサンプルを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、2種類の白色LEDサンプルのそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置の発光特性を計算した結果である。各シミュレーションにおいて、表6のシミュレーションと同様に、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDサンプルの発光スペクトルを、種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。
【0094】
表7には、白色LEDサンプルV−6およびV−7の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−2の発光特性を示す。図8にはV−6の発光スペクトルを示す。
【0095】
表7のシミュレーションによれば、V−6の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを8:2の比率で合算した合成スペクトル(580nm強度比89%)を出力光のスペクトルとする模擬白色発光装置は、出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が627nmと比較的短い波長であるにもかかわらず、鮮やかな赤色に関する再現性が極めて高いもの(R9=96)となる。
【0096】
【表7】
【0097】
表8には、白色LEDサンプルV−5およびV−7の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−3の発光特性を示す。図9にはV−5の発光スペクトルを示す。
【0098】
白色LEDサンプルV−5はそれ自体の演色性が必ずしも良好ではない(Ra=65、R9=−60)。白色LEDサンプルV−7も同様である(Ra=69、R9=−21)。しかし、表8のシミュレーションによれば、V−5の発光スペクトルとV−7の発光スペクトルを3:7の比率で合算した合成スペクトル(580nm強度比102%)を出力光のスペクトルとする模擬白色発光装置は、良好な演色性を備えるものとなる(Ra=96、R9=87)。このシミュレーション結果は、本発明者等がこれまで確認した中で唯一、580nm強度比が100%を超える場合においてR9が80を超えた例であり、出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が長くなると、R9が最大となる580nm強度比が大きくなる傾向の存在を示すものと考えている。
【0099】
【表8】
【0100】
表9には、白色LEDサンプルV−6およびV−1の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−4の発光特性を示す。V−6とV−1はそれぞれが比較的高い演色性を有しているが、この表が示すように、これらの発光スペクトルの合算比率が9:1〜1:9の範囲において、模擬白色発光装置S−4の演色性にはさほど大きな変化が見られなかった。その理由のひとつには、白色LEDサンプルV−6に用いられている赤色蛍光体SCASNと、白色LEDサンプルV−1に用いられている赤色蛍光体CASON−1の580nm相対強度の差が小さいことが考えられる。また、SCASNよりCASON−1の発光ピーク波長が長波長であるのに対し、580nm相対強度はSCASNよりCASON−1の方が大きく、このような赤色蛍光体の組み合わせの場合には際立った演色性向上効果が生じない可能性が考えられる。
【0101】
【表9】
【0102】
表10には、白色LEDサンプルV−5およびV−1の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−5の発光特性を示す。模擬白色発光装置S−5では、V−5の発光スペクトルとV−1の発光スペクトルの合算比率が9:1〜1:9の範囲で出力光の580nm強度比が100%を超えており、該合算比率が2:8および1:9のとき演色評価数Raは90に達したが、特殊演色評価数R9は70に達しなかった。
【0103】
【表10】
【0104】
表11には、白色LEDサンプルB−5およびB−6の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−6の発光特性を示す。また、図10に白色LEDサンプルB−5の発光スペクトルを、図11に白色LEDサンプルB−6の発光スペクトルを、それぞれ示す。B−5は、青色発光ダイオード素子に、黄色蛍光体YAGと、赤色蛍光体CASN−2とを組み合わせたものであり、緑色蛍光体を備えていない。B−5は良好な演色評価数を有するが(Ra=83)、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(R9=40)。一方、青色発光ダイオード素子に緑色蛍光体CSMSと赤色蛍光体CASN−2を組み合わせたB−6は高い演色評価数を有し(Ra=95)、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(R9=93)。
【0105】
意外なことに、模擬白色発光装置S−6のRaおよびR9が最大となったのは、出力光のスペクトルが、B−5の発光スペクトルとB−6の発光スペクトルを1:9の比率で合算した合成スペクトルのときだということである(Ra=98、R9=98)。このときの580nm強度比は94%である。また、これらのスペクトルの合算比率が2:8(580nm強度比96%)のときも、模擬白色発光装置S−6のRaおよびR9は十分に良好な値であった(Ra=98、R9=90)。これらの結果を意外とする理由は、黄色蛍光体を用いた白色半導体発光装置は、一般に、これを用いないものよりも演色性に劣ると考えられているためである。
【0106】
【表11】
【0107】
実際に、青色発光ダイオード素子と、緑色蛍光体CSMS、黄色蛍光体YAGおよび赤色蛍光体CASN−2を用いて作製した白色LEDサンプルは、B−7およびB−8である。このうち、580nm強度比が93%であるB−8は、極めて優れた演色性を有していた(Ra=98、R9=97)。一方、580nm強度比が101%であるB−7は、高い演色評価数を有するが(Ra=91)、鮮やかな赤色に関する再現性は良好ではなかった(R9=67)。図12にB−8の発光スペクトルを示す。
【0108】
図13は、表6〜表11に示す6種類のシミュレーションから得られた模擬白色発光装置S−1〜S−6の580nm強度比とR9の全てを、ひとつのグラフにプロットしたものである。グラフの横軸が580nm強度比、縦軸がR9である。プロットの結果は、発光装置が備える成分光の発生源(発光ダイオード素子、蛍光体)の種類によらない、ある特定の傾向が存在することを示している。すなわち、580nm強度比が約90%のところにR9のピークが存在し、580nm強度比がこれより低くなっても、また、高くなっても、R9は低下するという傾向である。したがって、半導体白色発光装置のR9を改善するには、その580nm強度比が80〜100%の範囲内となるようにすればよいといえる。
【0109】
図14は、図13と同様のプロットを、模擬白色発光装置の出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が630nm以下である場合について行った結果である。この図から、R9が最も高くなるのは、580nm強度比が90〜100%のときであるといえる。
【0110】
図15は、図13と同様のプロットを、模擬白色発光装置の出力光のスペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が630nm以上である場合について行った結果である。この図から、R9が最も高くなるのは、580nm強度比が85〜100%のときであり、特に、85〜95%のときであるといえる。
【0111】
表6〜表11に示す6種類のシミュレーションは、白色発光装置の発光スペクトルが赤色スペクトル領域に有する極大波長が615〜645nmの範囲内に存すれば、前述の条件2を充足させることにより、鮮やかな赤色に関する演色性の改善が可能であることを示
している。
【0112】
表12〜14に示すのは、色温度が大きく異なる2種類の白色LEDサンプルを組み合わせることにより得られる理想的な白色発光装置の発光特性をシミュレートした結果である。換言すれば、色温度が大きく異なる2種類の白色LEDサンプルのそれぞれの発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置の発光特性を計算した結果である。表12〜14の各シミュレーションでは、それぞれ光束で規格化した2種類の白色LEDサンプルの発光スペクトルを種々の比率で合算して合成スペクトルを作成し、その合成スペクトルに基づいて色度座標値、相関色温度、Duv、Ra、R9および580nm強度比を算出した。
【0113】
【表12】
【0114】
【表13】
【0115】
【表14】
【0116】
表12は、白色LEDサンプルB−9(相関色温度約6500K)およびB−2(相関色温度約3000K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−7の発光特性を計算した結果である。図16には白色LEDサンプルB−9の発光スペクトルを、また、図17には白色LEDサンプルB−2の発光スペクトルを、それぞれ示す。模擬白色発光装置S−7の相関色温度は、合成スペクトルに含まれるB−9およびB−2の発光スペクトルの比率に応じて、B−9の相関色温度とB−2の相関色温度との間で変化している。相関色温度3000〜6500Kの全範囲で模擬白色発光装置S−7の580nm強度比は92〜94%となり、特殊演色評価数R9は89〜98という高い値となった。
【0117】
表13は、白色LEDサンプルB−10(相関色温度約6400K)および白色LEDサンプルB−2(相関色温度約3000K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−8の発光特性を計算した結果である。図18には白色LEDサンプルB−10の発光スペクトルを示す。B−10は、演色評価数は高いが、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(Ra=90、R9=45)。一方、B−2は、演色評価数が高く、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(Ra=96、R9=90)。模擬白色発光装置S−8の演色評価数Raは、出力光のスペクトルが、B−10の発光スペクトルとB−2の発光スペクトルとをいずれの比率で合算した合成スペクトルである場合も、90以上という高い値となった。一方、R9は、B−2の発光スペクトルが合成スペクトルに占める比率が高くなるにつれて上昇する傾向を示した。580nm強度比とR9との間には負の相関があり、580nm強度比が100%を下回るときに、R9は86〜91という高い値となった。
【0118】
表14は、白色LEDサンプルB−9(相関色温度約6500K)および白色LEDサンプルB−4(相関色温度約2900K)の発光スペクトルを合算した合成スペクトルを出力光のスペクトルとする、模擬白色発光装置S−9の発光特性である。B−9は、演色評価数が高く、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性にも優れている(Ra=95、R9=94)。一方、B−4は演色評価数は高いが、鮮やかな赤色に関する再現性には劣っている(Ra=88、R9=37)。模擬白色発光装置S−9の演色評価数Raは、出力光の
スペクトルが、B−9の発光スペクトルとB−4の発光スペクトルとをいずれの比率で合算した合成スペクトルである場合も、90以上という高い値となった。一方、R9は、B−9の発光スペクトルが合成スペクトルに占める比率が高くなるにつれて上昇する傾向を示した。580nm強度比とR9との間には負の相関があり、580nm強度比が100%を下回るとき、R9は89〜97という高い値となった。
【0119】
シミュレーションに用いていない白色LEDサンプルについて述べると、紫色発光ダイオード素子を蛍光体の励起源に用いたV−8、V−9、V−10およびV−11は、いずれも上記第1の条件および第2の条件を充足しており、かつ、鮮やかな赤色に関する再現性が良好である。この4つの白色LEDサンプルは、いずれも青色蛍光体がシミュレーションに用いた白色LEDサンプルと異なっている。また、V−8およびV−9に用いられている青色蛍光体と、V−10およびV−11に用いられている青色蛍光体とは異なっている。さらに、V−10およびV−11は、それぞれ、緑色蛍光体もシミュレーションに用いた白色LEDサンプルとは異なっている。
【0120】
青色発光ダイオード素子を青色光の発生源および蛍光体の励起源に用いたB−1およびB−3は、いずれも上記第1の条件を充足している。更に、前者は上記第2の条件も充足している。一方、後者は該第2の条件を充足していない。白色LEDサンプルB−1の演色評価数Raと特殊演色評価数R9はいずれも極めて高い(Ra=97、R9=96)。それに対し、白色LEDサンプルB−3の演色評価数Raは良好であるが、特殊演色評価数R9は低い(Ra=89、R9=43)。
【0121】
本発明の実施形態には以下に記す白色半導体発光装置および照明装置が包含される。
(1)出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色半導体発光装置であって、該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色半導体発光装置。
(2)該青色光成分の発生源が青色半導体発光素子を含む、上記(1)の白色半導体発光装置。
(3)該青色半導体発光素子が発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、上記(2)の白色半導体発光装置。
(4)該出力光が、更に、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が放出する光を含む、上記(3)の白色半導体発光装置。
(5)上記発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が、非極性または半極性のGaN基板と、該基板上にエピタキシャル成長した複数のGaN系半導体層とを含み、該複数のGaN系半導体層は発光デバイス構造を構成する層としてInGaN発光層と該InGaN発光層を挟むp型クラッド層およびn型クラッド層とを含む、上記(4)の白色半導体発光装置。
(6)該青色光成分の発生源が該第1の蛍光体を含み、該第1の蛍光体が青色蛍光体を含む、上記(1)の白色半導体発光装置。
(7)該青色蛍光体の励起源が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、上記(6)の白色半導体発光装置。
(8)該青色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(6)または(7)の白色半導体発光装置。
(9)該青色蛍光体が(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(8)の白色半導体発光装置。
(10)該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含む、上記(1)〜(9)のいずれかの白色半導体発光装置。
(11)該緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(10)の白色半導体発光装置。
(12)該緑色蛍光体が、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:EuおよびSr5Al5Si21O2N35:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(11)の白色半導体発光装置。
(13)該緑色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(10)〜(12)のいずれかの白色半導体発光装置。
(14)該緑色蛍光体が、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:CeおよびCaSc2O4:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(13)の白色半導体発光装置。
(15)該第2の蛍光体が、第1の緑色蛍光体と第2の緑色蛍光体とを含み、該第2の緑色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の緑色蛍光体よりも低い、上記(10)の白色半導体発光装置。
(16)該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、上記(1)〜(15)のいずれかの白色半導体発光装置。
(17)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅80nm以上の赤色蛍光体を含む、上記(16)の白色半導体発光装置。
(18)該赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(17)の白色半導体発光装置。
(19)該赤色蛍光体が、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euおよび(Sr,Ba)3SiO5:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(18)の白色半導体発光装置。
(20)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅が80nm以上かつ発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を含む、上記(16)の白色半導体発光装置。
(21)該第3の蛍光体が、発光ピーク波長をλ1未満の範囲に有する赤色蛍光体と発光ピーク波長をλ1以上の範囲に有する赤色蛍光体とを含む、上記(16)または(20)の白色半導体発光装置。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。
(22)該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(16)の白色半導体発光装置。
(23)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.2
以上である上記(22)の白色半導体発光装置。
(24)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.3以上である上記(23)の白色半導体発光装置。
(25)該第2の赤色蛍光体が該第1の赤色蛍光体よりも発光ピーク波長を長波長側に有している、上記(22)〜(24)のいずれかの白色半導体発光装置。
(26)該第1の赤色蛍光体および該第2の赤色蛍光体は発光ピーク波長を630〜655nmの範囲に有している、上記(22)〜(25)のいずれかの白色半導体発光装置。(27)該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含む、上記(22)の白色半導体発光装置。
(28)該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下である、上記(27)の白色半導体発光装置。
(29)該第2の赤色蛍光体がCaAlSiN3:Euを含む、上記(27)または(28)の白色半導体発光装置。
(30)該第2の蛍光体または該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が黄色蛍光体を含む、上記(1)〜(29)のいずれかの白色半導体発光装置。
(31)該黄色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはランタンケイ素窒化物からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(30)の白色半導体発光装置。(32)該黄色蛍光体が、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、La3Si6N11:CeおよびCa1.5xLa3-xSi6N11:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(31)の白色半導体発光装置。
(33)該青色光成分、該緑色光成分および該緑色光成分のいずれの発生源にも、硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体を含まない、上記(1)〜(32)のいずれかの白色半導体発光装置。
(34)該出力光の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−6.0〜+6.0の範囲内である、上記(1)〜(33)のいずれかの白色半導体発光装置。
(35)該出力光の相関色温度が2000K〜6500Kである、上記(1)〜(34)のいずれかの白色半導体発光装置。
(36)該出力光の相関色温度が2000K〜4000Kである、上記(35)の白色半導体発光装置。
(37)該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、上記(1)〜(36)のいずれかの白色半導体発光装置。
(38)該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、上記(1)〜(36)のいずれかの白色半導体発光装置。
(39)上記(1)〜(38)のいずれかの白色半導体発光装置を含む照明装置。
【0122】
本発明の実施形態には以下に記す白色発光ユニットおよび照明装置が包含される。
(40)青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発す
る光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色発光ユニット。
(41)該半導体発光素子が青色半導体発光素子を含む、上記(40)の白色発光ユニット。
(42)該青色半導体発光素子が発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、上記(41)の白色発光ユニット。
(43)該青色光成分および/または該緑色光成分の発生源として、更に、発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子を備える、上記(42)の白色発光ユニット。
(44)上記発光ピーク波長を470〜500nmの範囲に有する発光ダイオード素子が、非極性または半極性のGaN基板と、該基板上にエピタキシャル成長した複数のGaN系半導体層とを含み、該複数のGaN系半導体層は発光デバイス構造を構成する層としてInGaN発光層と該InGaN発光層を挟むp型クラッド層およびn型クラッド層とを含む、上記(43)の白色発光ユニット。
(45)青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、白色発光ユニットであって、半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色発光ユニット。
(46)該第1の蛍光体が青色蛍光体を含む、上記(45)の白色発光ユニット。
(47)該半導体発光素子が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系紫色発光ダイオード素子を含む、上記(46)の白色発光ユニット。
(48)該青色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(46)または(47)の白色発光ユニット。
(49)該青色蛍光体が(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:EuおよびSr5-yBay(PO4)3Cl:Eu(0<y<5)から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(48)の白色発光ユニット。
(50)該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含む、上記(40)〜(49)のいずれかの白色発光ユニット。
(51)該緑色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(50)の白色発光ユニット。
(52)該緑色蛍光体が、(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Ca,Sr)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、βサイアロン:Eu、Sr3Si13Al3O2N21:EuおよびSr5Al5Si21O2N35:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(51)の白色発光ユニット。
(53)該緑色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(50)〜(52)
のいずれかの白色発光ユニット。
(54)該緑色蛍光体が、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:CeおよびCaSc2O4:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(53)の白色発光ユニット。
(55)該第2の蛍光体が、第1の緑色蛍光体と第2の緑色蛍光体とを含み、該第2の緑色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の緑色蛍光体よりも低い、上記(50)の白色発光ユニット。
(56)該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、上記(40)〜(55)のいずれかの白色発光ユニット。
(57)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅80nm以上の赤色蛍光体を含む、上記(56)の白色発光ユニット。
(58)該赤色蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、アルカリ土類ケイ酸窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(57)の白色発光ユニット。
(59)該赤色蛍光体が、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、SrAlSi4N7:Eu、(CaAlSiN3)1-x(Si(3n+2)/4NnO)x:Euおよび(Sr,Ba)3SiO5:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(58)の白色発光ユニット。
(60)該第3の蛍光体が、発光バンドの半値全幅が80nm以上かつ発光ピーク波長が625nm以上である赤色蛍光体を含む、上記(56)の白色発光ユニット。
(61)該第3の蛍光体が、発光ピーク波長をλ1未満の範囲に有する赤色蛍光体と発光ピーク波長をλ1以上の範囲に有する赤色蛍光体とを含む、上記(56)または(60)の白色発光ユニット。ここで、λ1は625〜655nmの範囲内の任意の波長である。
(62)該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(56)の白色発光ユニット。
(63)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.2以上である上記(62)の白色発光ユニット。
(64)該第1の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度と、該第2の赤色蛍光体の発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度との差が、0.3以上である上記(63)の白色発光ユニット。
(65)該第2の赤色蛍光体が該第1の赤色蛍光体よりも発光ピーク波長を長波長側に有している、上記(62)〜(64)のいずれかの白色発光ユニット。
(66)該第1の赤色蛍光体および該第2の赤色蛍光体は発光ピーク波長を630〜655nmの範囲に有している、上記(62)〜(65)のいずれかの白色発光ユニット。
(67)該第1の赤色蛍光体がSrxCa1-xAlSiN3:Eu(0<x<1)、Ca1-xAl1-xSi1+xN3-xOx:EuまたはSrAlSi4N7:Euを含む、上記(62)の白色発光ユニット。
(68)該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が0.05以下である、上記(67)の白色発光ユニット。
(69)該第2の赤色蛍光体がCaAlSiN3:Euを含む、上記(67)または(68)の白色発光ユニット。
(70)該第2の蛍光体または該第3の蛍光体のいずれかまたは両方が黄色蛍光体を含む、上記(40)〜(69)のいずれかの白色発光ユニット。
(71)該黄色蛍光体が、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物またはランタンケイ
素窒化物からなる結晶を母体とする蛍光体を含む、上記(70)の白色発光ユニット。
(72)該黄色蛍光体が、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、La3Si6N11:CeおよびCa1.5xLa3-xSi6N11:Ceから選ばれる1種以上の蛍光体を含む、上記(71)の白色発光ユニット。
(73)硫黄を含む化合物の結晶を母体とする蛍光体を含まない、上記(40)〜(72)のいずれかの白色発光ユニット。
(74)該白色光の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが−6.0〜+6.0の範囲内である、上記(40)〜(73)のいずれかの白色発光ユニット。
(75)該白色光の相関色温度が2000K〜6500Kである、上記(40)〜(74)のいずれかの白色発光ユニット。
(76)該白色光の相関色温度が2000K〜4000Kである、上記(75)の白色発光ユニット。
(77)該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、上記(40)〜(76)のいずれかの白色発光ユニット。
(78)該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、上記(40)〜(76)のいずれかの白色発光ユニット。
(79)上記(40)〜(78)のいずれかの白色発光ユニットを含む照明装置。
【0123】
本発明の実施形態には以下に記す白色半導体発光装置および照明装置が包含される。
(80)それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である白色半導体発光装置。
(81)該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、上記(80)の白色半導体発光装置。
(82)該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下である、上記(81)の白色半導体発光装置。
(83)該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が25MK-1以下である、上記(82)の白色半導体発光装置。
(84)該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットへの投入電力と該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットへの投入電力とを制御して、該出力光に占める該第1の一次白色光の比率と該第2の一次白色光の比率を調整するための制御回路を備える、上記(80)〜(83)のいずれかの白色半導体発光装置。
(85)上記(80)〜(84)のいずれかの白色半導体発光装置を含む照明装置。
【0124】
本発明は、以上に明示的に記述された実施形態に限定されるものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色半導体発光装置であって、
該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、
該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、
該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色半導体発光装置。
【請求項2】
該青色光成分の発生源が青色半導体発光素子を含むかまたは該第1の蛍光体として青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項1に記載の白色半導体発光装置。
【請求項3】
該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項1または2に記載の白色半導体発光装置。
【請求項4】
該青色光成分の発生源が、該青色半導体発光素子として、発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項5】
該青色光成分の発生源が、該第1の蛍光体として青色蛍光体を含み、該青色蛍光体の励起源が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項6】
該第2の蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体、及び、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体、から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項7】
該第2の蛍光体は緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項8】
該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項9】
該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化し
た該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項10】
青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色発光ユニットであって、
半導体発光素子と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、
該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色発光ユニット。
【請求項11】
該第1の蛍光体が青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項10に記載の白色発光ユニット。
【請求項12】
該半導体発光素子が発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、請求項11に記載の白色発光ユニット。
【請求項13】
青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色発光ユニットであって、
該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、
該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色発光ユニット。
【請求項14】
該半導体発光素子が青色半導体発光素子を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項13に記載の白色発光ユニット。
【請求項15】
該第2の蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体、及び、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体、から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、請求項10〜14のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項16】
該第2の蛍光体が緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む、請求項10〜15のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項17】
該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項18】
該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項19】
該第3の蛍光体が第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項10〜18のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項20】
それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、
該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、
光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、
光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、
更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、
白色半導体発光装置。
【請求項21】
該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項20に記載の白色半導体発光装置。
【請求項22】
該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下である、請求項20または21に記載の白色半導体発光装置。
【請求項23】
請求項1〜9および請求項20〜22のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置を含む、または請求項10〜19のいずれか1項に記載の白色発光ユニットを含む、照明装置。
【請求項1】
出力光が青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含み、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色半導体発光装置であって、
該青色光成分の発生源は半導体発光素子または半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体のいずれかまたは両方を含み、該緑色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体を含み、
該赤色光成分の発生源は半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体を含み、
該出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色半導体発光装置。
【請求項2】
該青色光成分の発生源が青色半導体発光素子を含むかまたは該第1の蛍光体として青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項1に記載の白色半導体発光装置。
【請求項3】
該第3の蛍光体が、第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項1または2に記載の白色半導体発光装置。
【請求項4】
該青色光成分の発生源が、該青色半導体発光素子として、発光ピーク波長を440〜470nmの範囲に有する青色発光ダイオード素子を含む、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項5】
該青色光成分の発生源が、該第1の蛍光体として青色蛍光体を含み、該青色蛍光体の励起源が、発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、請求項3に記載の白色半導体発光装置。
【請求項6】
該第2の蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体、及び、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体、から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項7】
該第2の蛍光体は緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項8】
該出力光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項9】
該出力光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化し
た該出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項10】
青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色発光ユニットであって、
半導体発光素子と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該青色光成分を含む光を放出する第1の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、
該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色発光ユニット。
【請求項11】
該第1の蛍光体が青色蛍光体を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項10に記載の白色発光ユニット。
【請求項12】
該半導体発光素子が発光ピーク波長を400〜420nmの範囲に有するInGaN系発光ダイオード素子を含む、請求項11に記載の白色発光ユニット。
【請求項13】
青色光成分と緑色光成分と赤色光成分とを含む白色光を放出し、
該青色光成分は440〜480nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該緑色光成分は515〜560nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含み、
該赤色光成分は615〜645nmの範囲内のいずれかの波長を有する光を含む、
白色発光ユニットであって、
該青色光成分を含む光を放出する半導体発光素子と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該緑色光成分を含む光を放出する第2の蛍光体と、
該半導体発光素子が発する光を吸収して波長変換により該赤色光成分を含む光を放出する第3の蛍光体とを備え、
該白色光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、
光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、白色発光ユニット。
【請求項14】
該半導体発光素子が青色半導体発光素子を含み、該第2の蛍光体が緑色蛍光体を含み、該第3の蛍光体が赤色蛍光体を含む、請求項13に記載の白色発光ユニット。
【請求項15】
該第2の蛍光体が、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物もしくはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体、及び、Ce3+を付活剤とし、ガーネット型酸化物もしくはアルカリ土類金属スカンジウム酸塩からなる結晶を母体とする緑色蛍光体、から選ばれる1種以上の蛍光体を含む、請求項10〜14のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項16】
該第2の蛍光体が緑色蛍光体および黄色蛍光体を含む、請求項10〜15のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項17】
該白色光のスペクトルが615nm以上630nm未満の範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の85〜100%である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項18】
該白色光のスペクトルが630〜645nmの範囲に極大波長を有し、光束で規格化した該白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度が、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の90〜100%である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項19】
該第3の蛍光体が第1の赤色蛍光体と第2の赤色蛍光体とを含み、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項10〜18のいずれか1項に記載の白色発光ユニット。
【請求項20】
それぞれが半導体発光素子と波長変換部とを備える第1〜第N(ここで、Nは2以上の整数)の白色発光ユニットを有し、該第1〜第Nの白色発光ユニットからそれぞれ放出される一次白色光が混合されてなる合成光を出力光とする白色半導体発光装置であって、
該第1〜第Nの白色発光ユニットは、第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットと第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットとを少なくとも含み、
光束で規格化した該第1の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも高く、
光束で規格化した該第2の一次白色光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度よりも低く、
更に、前記出力光のスペクトルが615〜645nmの範囲に極大波長を有し、かつ、光束で規格化した前記出力光のスペクトルの波長580nmにおける強度は、光束で規格化した演色性評価用基準光のスペクトルの波長580nmにおける強度の80〜100%である、
白色半導体発光装置。
【請求項21】
該第1の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第1の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の一次白色光を放出する白色発光ユニットが第2の赤色蛍光体を含む波長変換部を備え、該第2の赤色蛍光体は、発光スペクトルの、ピーク波長における強度を1としたときの波長580nmにおける相対強度が、該第1の赤色蛍光体よりも低い、請求項20に記載の白色半導体発光装置。
【請求項22】
該第1の一次白色光と該第2の一次白色光との逆数相関色温度差が50MK-1以下である、請求項20または21に記載の白色半導体発光装置。
【請求項23】
請求項1〜9および請求項20〜22のいずれか1項に記載の白色半導体発光装置を含む、または請求項10〜19のいずれか1項に記載の白色発光ユニットを含む、照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−56970(P2012−56970A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188888(P2010−188888)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]