説明

白色積層ポリエステルフィルム

【課題】実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、かつ、表面の白色度の均一性に優れる、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板、あるいは白色のカードや印刷基材として好適に用いることのできる、白色積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】少なくともポリエステル層Aとポリエステル層Bを有する白色積層ポリエステルフィルムであって、少なくとも最表層の一方が層Aであり、層Aが平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子を層Aに対して31〜60重量%含有し、層A側の表面反射率が90%以上であり、かつ、層A側の表面での白色度の標準偏差が0.1%以下である白色積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、高い反射率と耐光性を備え、かつ、美麗性に優れる白色積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
白色のポリエステルフィルムは、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板、あるいは白色のカードや印刷基材などに広く用いられるようになっており、光の高い反射性および高い拡散性、そして外観の美麗性が要求される。
【0003】
また、長期に渡って紫外線の照射を受けると、白色フィルムが劣化し、性能が低下する(反射性の低下や黄変など)という課題がある。この課題に対して、白色ポリエステルフィルムの従来技術において、多量の不活性粒子を含んだポリエステル層Aは中間層に使用される構成体であり、表面には設定しないのが通常であったが、近年、層Aを表面に設定することにより、反射性能はもちろんのこと、紫外線による劣化(黄変)を防ぐ効果もあることが見出された(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125700号公報
【特許文献2】特開2007−320238号公報
【特許文献3】特開2007−320239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多量の不活性粒子を含んだ層Aを表面に設定すると、層A側の表面状態の均一性を保つことが難しくなり、反射性能の均一性や外観の美麗性に劣るという課題が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点を解決することを課題とし、層A側の表面状態を制御することにより、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、かつ、表面の白色度の均一性に優れる、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板、あるいは白色のカードや印刷基材として好適に用いることのできる、白色積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは下記の構成からなるものである。すなわち本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル層Aとポリエステル層Bを有する白色積層ポリエステルフィルムであって、少なくとも最表層の一方が層Aであり、層Aが平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子を層Aに対して31〜60重量%含有し、層A側の表面反射率が90%以上であり、かつ、層A側の表面での白色度の標準偏差が0.1%以下である白色積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、安定して製膜することができ、紫外線による劣化(黄変)が抑制され、かつ、表面の白色度の均一性に優れる、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板、あるいは白色のカードや印刷基材として好適に用いることのできる、白色積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
【0009】
また、表面の特性が均一であることは、近年のLEDを用いた光源とともに使用する際に、性能の均一性に関する点で非常に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[層構成]
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル層Aとポリエステル層Bを含む複数の層から構成され、少なくとも最表層の一方が層Aとなっている。多量の不活性粒子を含んだ層Aを最表層に設定することにより、高い反射性および拡散性と優れた耐光性を得ることができる。また、少なくとも最表層の一方が層Aが最表層に設定されていれば、いくつの層から構成されてもよい。例えば、層A/層Bの2層構成であってもよく、層A/層B/層Aの3層構成、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さと効果を考慮すると2層構成が好ましい。
【0012】
層Aの厚みは、積層ポリエステルフィルムの合計厚みに対して、好ましくは40〜90%、より好ましくは50〜85%である。40%未満であると反射率が劣る可能性があり好ましくなく、90%を超えると製膜安定性の観点から好ましくない。層Bの厚みは、積層ポリエステルフィルムの合計厚みに対して、好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜50%である。10%未満であると製膜安定性の観点から好ましくなく、60%を超えると層Aの厚みを十分に確保できないため好ましくない。
【0013】
[ポリエステル]
層Aおよび層Bのポリエステル組成物を構成するポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといった公知のポリエステルを用いることができる。
【0014】
層Aのポリエステルとしては、好ましくはジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分やナフタレンジカルボン酸成分やイソフタル酸成分を含むものを用いる。このポリエステルは、層A中のジカルボン酸成分に対して、ナフタレンジカルボン酸成分および/またはイソフタル酸成分を合わせて、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは3〜18モル%、さらに好ましくは5〜15モル%含み、テレフタル酸成分を好ましくは80〜99モル%、より好ましくは82〜97モル%、さらに好ましくは85〜95モル%含む。また、層A中のジオール成分に対して、エチレングリコール成分を好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含む。ナフタレンジカルボン酸成分および/またはイソフタル酸成分が合わせて1モル%未満であると耐熱性や製膜安定性が劣る可能性があり、好ましくない。20モル%を超えると、製膜安定性や耐光性が劣る可能性があり、好ましくない。
【0015】
層Bのポリエステルとしては、好ましくはジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸を含むものを用いる。このポリエステルは、層B中のジカルボン酸成分に対して、イソフタル酸成分を好ましくは3〜20モル%、より好ましくは4〜18モル%、さらに好ましくは8〜15モル%含み、テレフタル酸成分を好ましくは80〜97モル%、より好ましくは82〜96モル%、さらに好ましくは85〜92モル%含む。イソフタル酸成分が3モル%未満であると製膜安定性が確保できず好ましくなく、20モル%を超えると耐熱性や製膜安定性が劣る可能性あり好ましくない。
【0016】
層Aおよび層Bのポリエステルには、必要に応じてその他の成分を共重合させてもよい。ジカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸やイソフタル酸の他に、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオール成分としては、エチレングリコールの他に、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオールを挙げることができる。
【0017】
なお、層Aのポリエステルは、好ましくはアンチモン元素を実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、含有量が20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下をいう。アンチモン元素を実質的に含有すると白色フィルムの場合、黒く筋状に見え、フィルム外観を著しく損なってしまい好ましくない。
【0018】
アンチモン元素を実質的に含有しないポリエステルを得るためには、ポリエステルをアンチモン化合物以外の触媒を用いて重合する。ポリエステルの重合に使用する触媒としては、マンガン(Mn)化合物、チタン(Ti)化合物、ゲルマニウム(Ge)化合物のいずれかを用いることが好ましい。チタン化合物としては、例えば、チタンテトラブトキシド、酢酸チタンを用いることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば、無定形酸化ゲルマニウム、微細な結晶性酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウムをアルカリ金属またはアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下でグリコールに溶解した溶液、酸化ゲルマニウムを水に溶解した溶液を用いることができる。
【0019】
[不活性粒子]
層Aのポリエステル組成物は不活性粒子を31〜60重量%、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは30〜50重量%含有する。31重量%未満であると反射率が低下したり、紫外線に因る劣化が激しくなったりし、60重量%を超えるとフィルムが破れやすくなるなど製膜安定性が劣る。また、層Bのポリエステル組成物は不活性粒子を好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%含有する。1重量%未満であっても、30重量%を超えても、製膜安定性に劣るため、好ましくない。
【0020】
層Aおよび層Bの不活性粒子は、その平均粒径がいずれも0.3〜3.0μm、好ましくは0.4〜2.5μm、より好ましくは0.5〜2.0μmである。平均粒径が0.3μm未満であると分散性が極端に悪くなり、粒子の凝集が起こるため生産工程上のトラブルが発生し易く、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになったり、溶融押出し時に用いられるフィルターが粗大粒子により目詰まりを生じさせる可能性がある。平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面が粗くなり光沢が低下するばかりか、適切な範囲に光沢度をコントロールすることが困難となる。なお、不活性粒子の粒度分布の半値幅は、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜2.5μmである。ここで、平均粒径とは、数平均粒径のことをいい、走査電子顕微鏡で倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子について、100個ずつ任意に粒子径の測定をし、平均粒径を求めた(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求めた)。
【0021】
不活性粒子としては、高い反射性能を得る観点から、好ましくは白色顔料を用いる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、特に好ましくは、硫酸バリウムを用いる。この硫酸バリウムは板状、球状いずれの粒子形状でもよい。硫酸バリウムを用いることで一層良好な反射率を得ることができる。
【0022】
不活性粒子として、酸化チタンを用いる場合、好ましくはルチル型酸化チタンを用いる。ルチル型酸化チタンを用いると、アナターゼ型酸化チタンを用いた場合よりも、光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制することができるので好ましい。このルチル型酸化チタンは、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体等を用いて処理して用いると、分散性を向上させることができ、フィルムの光沢度を一層向上させることができるので好ましい。
【0023】
なお、ルチル型酸化チタンを用いる場合には、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段としては、例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離を適用することができる。これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製しても良い。
【0024】
不活性粒子をポリエステルに含有させる方法としては、下記のいずれかの方法をとることが好ましい。
(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)または(イ)の方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0025】
なお、前記(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、酸化チタンにおいてはグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。特に上記(ウ)または(エ)の方法をとることが好ましい。
【0026】
本発明では、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。この濾過を行なうことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0027】
層Aおよび層Bのトータルの重量100重量%あたりの不活性粒子の割合は、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは25〜55重量%である。フィルムあたり不活性粒子の含有量が10重量%未満であると必要な反射率や白色度が得られず、不活性粒子の含有量が80重量%を超えると製膜時に切断が発生しやすく好ましくない。
【0028】
[添加剤]
本発明の白色積層ポリエステルフィルムには、蛍光増白剤を配合してもよい。蛍光増白剤を配合する場合、層Aまたは層Bのポリエステル組成物に対する濃度として、例えば0.005〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲で配合するとよい。蛍光増白剤の添加量が0.005重量%未満では350nm付近の波長域の反射率が十分でないので添加する意味が乏しく、0.2重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
【0029】
蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
【0030】
また、フィルムの少なくとも片面に、他の機能を付与するため、他の薄膜層をさらに積層した積層体としてもよい。ここでいう他の薄膜層としては、例えば酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤を有する塗膜を例示することができる。
【0031】
[白色度の均一性]
また、本発明のフィルムは、A3サイズ面内での白色度の標準偏差が0.1%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下である。0.1%を超えると、外観の美麗性に劣り、また、反射板として用いた時に画面や照明の輝度ムラを生じる可能性がある。下限は特に限定されるものではないが、理論上の下限は0%である。
【0032】
[製造方法]
以下、本発明の白色積層ポリエステルフィルムを製造する方法の例として、層A/層Bの積層ポリエステルフィルムの製造方法の一例を説明する。ダイから溶融したポリマーをフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち層Aを形成するポリマーの溶融物と層Bを形成するポリマーの溶融物を、フィードブロックを用いて例えば層A/層Bとなるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。
【0033】
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムをロール加熱、赤外線加熱等でポリエステルのガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、長手方向(以降、縦方向と呼ぶ)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。また、層A側の表面を、下記(1)式を満たす温度T1(℃)で加熱しつつ、延伸することが好ましい。
ATg+65≦T1≦ATg+85 (1)
ATg:層Aを構成するポリエステルのガラス転移温度(℃)。
より好ましくは、ATg+70≦T1≦ATg+80 である。すなわち、T1−ATgは65℃以上85℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上80℃以下である。この温度範囲に加熱することにより、層A側の表面状態を制御し、白色度の均一性を向上させることができる。温度が下限より低いと、白色度の均一性が不十分となり、上限より高いと、ポリエステルの結晶化が進んで製膜安定性が劣り、好ましくない。
【0034】
縦延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、より好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。縦延伸後のフィルムは、続いて、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)の延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移温度(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、より好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0035】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま、下記(2)式を満たす温度T2(℃)で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。
ATm−9≦T2≦ATm+9 (2)
ATm:層Aを構成するポリエステルの融点(℃)。
より好ましくは、ATm−6≦T2≦ATm+6 である。すなわち、T2−ATmは−9℃以上9℃以下であることが好ましく、より好ましくは−6℃以上6℃以下である。この温度範囲に加熱することにより、層A側の表面状態を制御し、白色度の均一性を向上させることもできる。温度が下限より低いと、白色度の均一性が不十分となり、上限より高いと、ポリエステルの溶融が進んで製膜安定性が劣り、好ましくない。
【0036】
ここでは、逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
【0037】
[物性]
二軸延伸後の積層ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは100〜300μm、より好ましくは150〜250μmである。100μm以下であると反射率が不足し、300μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めない。
【0038】
このようにして得られる本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の表面の反射率が波長400〜700nmの平均反射率でみて90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上である。90%未満であると、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板として用いた時に十分な輝度を得ることができない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0040】
(1)層AおよびBを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
サンプルとして、5mgを秤量した。次いで、該サンプルを示差走査型熱量計(DSC−2型、パーキンエルマー社製)を用い、一旦、加熱し、溶解せしめ、その後急冷した後、再度室温から20℃/分の昇温速度で昇温し、JIS K7121−1987の中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移温度(Tg)として、融解ピーク温度(Tpm)を融点(Tm)として採用した。2つ以上のTgやTmが測定された場合は、最も温度が高いものを採用した。
【0041】
(2)平均粒径
日立製作所製S−2100A形走査型電子顕微鏡を用いて倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子を観察し、100個ずつ任意に粒径の測定をし、平均粒径を求めた(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求めた)。
【0042】
(3)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、日立製作所製S−2100A形走査電子顕微鏡を用いて、倍率300倍、加速電圧3.0kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0043】
(4)製膜安定性
安定に製膜できるか、下記基準で評価した。
○:1日以上安定に製膜できる。
△:1時間以上1日以内に破断が発生する。
×:1時間以内に破断が発生し、安定な製膜ができない。
【0044】
(5)フィルム厚み
フィルムサンプルを校正されたデジタルマイクロメータ(M−30、ソニー・プレシジョン・テクノロジー製)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0045】
(6)反射率
分光光度計(島津製作所製UV−2450)に積分球を取り付け、BaS0白板を100%とした時の層A側表面の反射率を400〜700nmの波長域にわたって測定した。両面の表層が層Aの場合には、反射率の高い方を採用した。BaSO白板は、BaSO粉末(メルク製、DIN5033白色標準品)を粉末試料ホルダに充填して作製した。
【0046】
(7)白色度の標準偏差
フィルムサンプルをA3サイズにカットし、測色色差計(日本電色工業製ZE2000)を用いて、層A側の表面の白色度をランダムに30点反射測定し、その標準偏差を算出した。
【0047】
(8)紫外線による劣化(耐光性)
岩崎電気製アイスーパーUVテスター(型番:SUV−W131)を用いてサンプルに紫外線を照射し、照射前後の色調b値を測定することで、耐光性の評価を行った。紫外線照射前後のb値の変化をΔbとし、下記基準で評価した。なお、本発明において、その照射紫外線量は、波長365nmで100mW/cm2であり、UV照射時間は4時間とした。
○:Δb≦10
△:10<Δb≦20
×:20<Δb。
【0048】
[実施例1〜24]
表に示す各共重合化されたポリエステルに表に示す不活性粒子を添加し、それぞれ285℃に加熱された2台の押出機に供給し、層Aのポリエステル組成物と層Bのポリエステル組成物をA/Bとなるような2層フィードブロック装置(実施例24はA/B/Aとなるような3層フィードブロック装置)を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。このシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを表に示す温度に加熱して長手方向(縦方向)に2.9倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、この一軸延伸フィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き表に示す温度に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.7倍延伸した。その後テンター内にて表に示す温度で熱固定を行い、室温まで冷やして二軸延伸された積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの反射板基材としての物性は表の通りであった。いずれも、反射率は良好であり、白色度の均一性も良好であった。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
ただし、PET: ポリエチレンテレフタレート, PEN: ポリエチレンナフタレート, NDC: ナフタレンジカルボン酸, IPA: イソフタル酸である。
【0054】
[比較例1]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。縦延伸時の層A側表面の温度、二軸延伸後の熱処理の温度がともに低いため、白色度の均一性が劣っていた。
【0055】
[比較例2]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。縦延伸時の層A側表面の温度が高いため、製膜安定性が極めて悪く、製膜時の破断の多発により、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0056】
[比較例3]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。二軸延伸後の熱処理の温度が高いため、製膜安定性が極めて悪く、製膜時の破断の多発により、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0057】
[比較例4]
表に示す条件にて作製した。最表層が層Aでないため、反射率が劣っていた。
【0058】
[比較例5]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。層Aの不活性粒子の添加量が過剰であるため、製膜安定性が極めて悪く、製膜時の破断の多発により、フィルムサンプルが作製できなかった。
【0059】
[比較例6]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。層Aの不活性粒子の添加量が少ないため、反射率が劣っていた。また、耐光性も不足していた。
【0060】
[比較例7]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。層AおよびBに添加した不活性粒子の粒径が大きいため、反射率が劣っていた。
【0061】
[比較例8]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。層AおよびBに添加した不活性粒子の粒径が小さいため、反射率が劣っていた。
【0062】
[比較例9]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。層Aの厚み割合が小さい(層Bの厚み割合が大きい)ため、反射率が劣っていた。
【0063】
[比較例10]
表に示す条件にて、実施例1と同様に作製した。フィルムの全体厚みが薄いため、反射率が劣っていた。
【0064】
[比較例11]
表に示す条件にて、層Aのみからなる単層フィルムを実施例1と同様に作製した(押出機は1台のみ使用した)。製膜安定性が極めて悪く、製膜時の破断の多発により、フィルムサンプルが作製できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、光線の反射率が高く、紫外線に対する劣化が抑えられ、かつ、白色度の均一性に優れているため、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板、あるいは白色のカードや印刷基材などに最適に用いることができる。反射板として用いる場合には、層Aを反射面として用いることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル層Aとポリエステル層Bを有する白色積層ポリエステルフィルムであって、少なくとも最表層の一方が層Aであり、層Aが平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子を層Aに対して31〜60重量%含有し、層A側の表面反射率が90%以上であり、かつ、層A側の表面での白色度の標準偏差が0.1%以下である白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルム全体の厚みが100〜300μmであり、かつ、層Aの厚み割合がフィルム全体厚みに対して40〜90%である請求項1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステル層Aが、ナフタレンジカルボン酸成分および/またはイソフタル酸成分を、層A中のジカルボン酸成分に対して、合計1〜20モル%有し、かつ、エチレングリコール成分を、層A中のジオール成分に対して、80〜100モル%有する請求項1または2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
層Bが平均粒径0.3〜3.0μmの不活性粒子を層Bに対して1〜30重量%含有し、かつ、層Bの厚み割合がフィルム全体厚みに対して5〜60%である請求項1〜3いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステル層Bが、イソフタル酸成分を、層B中のジカルボン酸成分に対して3〜20モル%含有し、テレフタル酸成分を、層B中のジカルボン酸成分に対して80〜97モル%含有し、かつエチレングリコール成分を、層B中のジオール成分に対して、80〜100モル%含有する、請求項1〜4いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
層A側の表面にて光を反射する用途に用いられる請求項1〜5いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
層A側のフィルム表面を、下記(1)式を満たす温度T1(℃)で加熱しつつ、フィルム長手方向に延伸することにより得られる請求項1〜6いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法。
ATg+65≦T1≦ATg+85 (1)
ATg:層Aを構成するポリエステルのガラス転移温度(℃)。
【請求項8】
未延伸フィルムを二軸延伸した後、下記(2)式を満たす温度T2(℃)でフィルムを加熱することにより得られる請求項1〜6いずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法。
ATm−9≦T2≦ATm+9 (2)
ATm:層Aを構成するポリエステルの融点(℃)。

【公開番号】特開2010−221455(P2010−221455A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69579(P2009−69579)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】