説明

白金−銅燃料電池触媒

本発明は、例えば、白金及び銅を含有し、白金濃度が50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満であり、35オングストローム未満の粒径を有する、燃料電池の触媒として使用する組成物に関する。さらに本発明はそのような組成物を調製する様々な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、燃料電池電極(例えば電極触媒)及び他の触媒構造中の触媒として有用であり、白金及び銅を含む組成物に関する。
【関連技術の説明】
【0002】
燃料電池は、水素又は炭化水素系燃料などの燃料と、そこに供給される酸素ガス(空気中の)などの酸化剤との酸化還元反応から発生された化学的エネルギーを、低電圧の直流に直接変換する電気化学装置である。したがって、燃料電池は燃焼することなく燃料の分子と酸化剤を化学的に結合し、従来の燃焼の非効率性と汚染を回避する。
【0003】
燃料電池は、一般に、燃料電極(アノード)と、酸化剤電極(カソード)と、電極の間に挟まれた電解質(アルカリ性又は酸性)と、燃料流及び酸化剤流をアノード及びカソードにそれぞれ分離して供給する手段とから構成される。動作中に、アノードに供給された燃料は酸化されて電子を放出し、電子は外部回路を経由してカソードへ導かれる。カソードにおいて、供給された電子は酸化剤が還元されるとき消費される。外部回路を流れる電流は有用な仕事を行うことができる。
【0004】
燃料電池には、リン酸、溶融炭酸塩、固体酸化物、水酸化カリウムの電解質、又はプロトン交換膜を有するものを含んで、いくつかの種類がある。リン酸燃料電池は、約160〜220℃、好ましくは約190〜200℃で動作する。この種類の燃料電池は、現在、数メガワットの施設用電力発電、及び50から数百キロワット範囲のコジェネ装置(すなわち、熱と電力発生の組合せ)に使用されている。
【0005】
対照的に、プロトン交換膜燃料電池は電解質として固体のプロトン伝導性ポリマー膜を使用する。典型的には、ポリマー膜はイオン伝導度の損失を防止するため、動作中水和された形に維持され、動作圧力に応じて、典型的に、動作温度を約70〜約120℃、好ましくは約100℃以下に制限する。プロトン交換膜燃料電池は液体電解質燃料電池(例えばリン酸)よりもはるかに高い電力密度を有し、電力要求の変化に対して迅速に出力を変化させることができる。したがって、それらは、迅速な起動が必要である自動車及び小規模住宅用発電などの用途に適する。
【0006】
いくつかの用途(例えば自動車)において、純粋な水素ガスは最適な燃料である。しかし、より低い運転コストが望まれる他の用途において、改質水素含有ガスは適切な燃料である。改質水素含有ガス燃料は、例えば、メタノールと水を200〜300℃の流れで二酸化炭素を含む水素に富む燃料ガスに改質することによって製造される。理論的に、改質ガスは75体積%の水素と25体積%の二酸化炭素からなる。しかし、実際には、このガスは窒素、酸素、及び純度の程度に応じて、変動する量の一酸化炭素(1体積%まで)も含む。いくつかの電子装置は液体燃料を水素へ改質するが、いくつかの用途において、液体燃料の電気への直接変換、したがって高い貯蔵密度と系の単純さの組合せが望ましい。特に、メタノールは高いエネルギー密度を有し、低コストであり、再生可能な原料から製造されるので、特に望ましい燃料である。
【0007】
燃料電池において、特に約300℃以下の動作温度で、有用な速度で酸化還元反応を進めるためには、電極触媒材料は典型的には電極に提供される。当初、燃料電池には、通常、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、銀(Ag)又は金(Au)など、単一金属から作られた電極触媒が、腐食性環境に対する抵抗性のため用いられた。一般に、白金は約300℃以下で動作する燃料電池のための最も効率的で安定な単一金属電極触媒であると考えられる。
【0008】
上記の元素は当初金属粉体の形で燃料電池に使用されたが、後に、これらの金属を導電性担体(例えばカーボンブラック)の表面に分散して電極触媒の表面積を増加させる技術が開発された。電極触媒の表面積が増加することにより、活性点の数が増加し、電池の効率が改善される。いずれにしても、電解質、高い温度及び分子状酸素が存在するために電極触媒を溶解し、且つ/又は表面移動もしくは溶解/再凝結によって分散された電極触媒を焼結するので、燃料電池の性能は一般に時間の経過とともに低下する。
【0009】
白金は燃料電池のための最も効率的で安定な単一金属電極触媒であると考えられるが、コストが高い。さらに、燃料電池技術を広範囲に商業化するために、必然ではないが、白金よりも電極触媒活性が増加することが望ましい。しかし、カソード燃料電池電極触媒材料の開発は長年にわたる課題に直面している。最大の課題は電極の酸素還元反応動力学の改善である。実際に、緩慢な電気化学反応動力学によって、電極触媒が酸素還元のための熱力学的な可逆的電極電位を獲得することが妨げられている。これは、例えば低温及び中間温度でのPt上の酸素還元において、約10−10〜10−12A/cmの交換電流密度に反映されている。この現象に寄与する要因は、酸素の水への望ましい還元が4電子移動反応であり、典型的に反応の早い時期に強いO−O結合の分裂が係わる事実を含む。さらに、反応を抑制する過酸化物及び恐らくは白金酸化物の形成により、開回路電圧は酸素還元の熱力学的電位から低下する。第2の課題は、長期運転時の酸素電極(カソード)の安定性である。特に、燃料電池カソードは、最も活性のない金属でさえ完全に安定ではない領域で動作する。したがって、非貴金属元素を含む合金組成物は、予定された燃料電池の寿命に悪影響を与えるであろう腐食速度を有する。腐食は電池が熱力学的効率にとって最も望ましい電位の開回路条件近くで動作する時さらに激しくなり得る。
【0010】
また、燃料電池の運転中、アノードでの電極触媒材料も課題に直面する。特に、燃料中の一酸化炭素(CO)の濃度が上昇して約10ppmを超えると、電極触媒の表面は急速に触媒作用が被毒を受ける。結果として、燃料流が一酸化炭素を含む(例えば改質水素ガスは典型的に100ppmを超える)ならば、白金(それ自体)は不十分な電極触媒である。液体炭化水素系燃料(例えばメタノール)はさらに大きな触媒被毒問題を示す。特に、白金の表面は吸着した中間体、一酸化炭素(CO)で遮蔽される。以下の反応によるそれらの被毒化学種の除去に、HOが重要な役割を果たすことが報告された。
Pt+CHOH→Pt−CO+4H+4e (1)
Pt+HO→Pt−OH+H+e (2)
Pt−CO+Pt−OH→2Pt+CO+H+e (3)
前述の反応で示すように、メタノールは電極の表面上に吸着され、白金によって部分的に酸化される(1)。吸着された水の加水分解からのOHは、吸着されたCOと反応して二酸化炭素とプロトンを生成する(2、3)。しかし、白金は燃料電池の動作電位(例えば200mV〜1.5V)でOH化学種を十分生成しない。その結果、ステップ(3)は工程中で最も遅いステップであり、CO除去の速度を制限し、それによって電極触媒の被毒が起きる。これはその低い動作温度のため、特にCO被毒に感受性の高いプロトン交換膜燃料電池に当てはまる。
【0011】
酸素還元中に電極触媒のカソード性能及び/又は水素もしくはメタノール酸化中の電極触媒のアノード性能を改善する1つの手法は、さらに活性度が高く、腐食に抵抗性があり、且つ/又はさらに触媒被毒に許容性のある電極触媒を使用することである。例えば、白金とルテニウムを50:50原子比率で合金化することによるCOへの許容性の増加が報告された(D.Chu及びS.Gillman、J.Electrochem.Soc.、1996、143、1685参照)。しかし、現在提案されている電極触媒にはさらに改善の余地がある。
【発明の概要】
【0012】
したがって簡単にいえば、本発明は、例えば燃料電池中の酸化又は還元反応の触媒として使用するための組成物に関し、組成物は白金及び銅を含有し、(i)白金濃度が50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満であり、(ii)当該組成物は35オングストローム(Å)未満の粒径を有する。
【0013】
さらに本発明は、白金及び銅の濃度の合計が約95原子パーセントを超える前述の組成物に関する。
【0014】
さらに本発明は、上記金属の合金、又は実質的に上記金属の合金からなる前述の組成物の1種に関する。
【0015】
さらに本発明は、電気化学反応器装置に使用するための担持電極触媒粉体に関し、担持電極触媒粉体は、導電性担体粒子上に任意の前述の触媒組成物を含む。
【0016】
また、本発明は燃料電池電極に関し、燃料電池電極は、電極触媒粒子と、電極触媒粒子が表面に付着している電極基材とを備え、電極触媒粒子は任意の前述の触媒組成物を含む。
【0017】
また、本発明は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間のプロトン交換膜と、水素含有燃料の触媒酸化又は酸素の触媒還元に使用するための任意の前述の触媒組成物とを備える燃料電池に関する。
【0018】
さらに本発明は、前記燃料電池における水素含有燃料及び酸素の反応生成物及び電気への電気化学的変換方法に関し、前記燃料電池は、アノードとカソードを接続する導電性外部回路とをさらに備える。当該方法は、水素含有燃料又は酸素を触媒に接触させて水素含有燃料を触媒的に酸化し、あるいは酸素を触媒的に還元するステップを含む。
【0019】
さらに本発明は、担持されていない触媒組成物の層が表面に付着している燃料電池電解質膜及び/又は燃料電池電極に関し、前記担持されていない触媒組成物の層は任意の前述の触媒組成物を含む。
【0020】
さらに本発明は、触媒前駆体組成物から前述の触媒組成物の1種を調製する方法に関し、前記前駆体組成物は白金及び銅を含有し、その白金濃度は約20原子パーセントを超え、約40原子パーセント未満である。当該方法は、得られる触媒組成物が白金と銅を含み、白金濃度が50原子パーセントを超え、約80原子パーセント未満であるように、当該前駆体組成物中に存在する銅の部分を除去するのに十分な条件下に前記前駆体組成物を置くステップを含む。触媒組成物は35オングスロトーム(Å)未満の粒径を有していてもよい。
【0021】
さらに本発明は、触媒前駆体組成物を酸性溶液に接触させて当該触媒前駆体組成物中に存在する銅の部分を可溶性にする方法に関する。あるいは、本発明はさらに、例えば、アノードと、カソードと、その間のプロトン交換膜と、触媒前駆体組成物と、アノードとカソードを接続する導電性外部回路とを備える燃料電池において、水素含有燃料及び酸素を反応生成物及び電気に変換する電気化学的反応に触媒前駆体組成物をさらす方法に関する。水素含有燃料又は酸素と触媒前駆体組成物を接触させることによって、水素含有燃料は酸化され、且つ/又は酸素は触媒還元される。この反応の部分として、銅はその場で触媒前駆体組成物から取り除かれる(dissolved in situ from the catalyst precursor composition)。
【0022】
さらに本発明は、触媒前駆体組成物から触媒組成物を調製する方法に関し、前記前駆体組成物は白金及び銅を含有し、その中の白金濃度は50原子パーセント未満である。当該方法は、前記前駆体組成物を、pHが0を超え7未満である酸性溶液に接触させて、その中に存在する銅の一部を可溶化して、得られる触媒組成物が白金及び銅を含有し、その白金濃度が50原子パーセントを超えるようにするステップを含む。任意選択的に、触媒前駆体の白金濃度は、約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満であることができ、且つ/又は触媒組成物中の白金濃度は約50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満であることができる。さらに、触媒組成物は、任意選択的に35オングスロトーム(Å)未満の粒径を有していてもよい。
【0023】
さらに本発明は触媒前駆体組成物から触媒組成物を調製する方法に関し、前記触媒組成物は白金及び銅を含有し、その白金濃度は50原子パーセント未満である。当該方法は、前記前駆体組成物を空気中で、又は代りに空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で溶液に接触させ、得られる触媒組成物が白金及び銅を含有し、その白金濃度が50原子パーセントを超えるように、その中に存在する銅の一部を可溶化するステップを含む。任意選択的に、触媒前駆体中の白金濃度は、約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満であり、及び/又は触媒組成物中の白金濃度は50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満とすることができる。さらに、触媒組成物は35オングスロトーム(Å)未満の粒径を有していてもよい。
【0024】
さらに本発明は、白金と銅との合金を、又は実質的に白金と銅との合金からなる触媒組成物の調製方法に関する。当該方法は、銅含有化合物、場合によって白金含有化合物を導電性担体粒子上に付着させ、前記担体粒子上の銅及び白金を、約450℃を超え800℃未満の温度の還元雰囲気中で銅と白金との合金を形成するのに十分な時間加熱するステップを含み、触媒組成物中の白金濃度は約50原子パーセントを超え、約80原子パーセント未満である。任意選択的に、触媒組成物の銅と白金合金は35オングスロトーム(Å)未満の粒径を有する。
【0025】
さらに本発明は、導電性担体粒子上に白金と銅との合金を含む触媒組成物を調製する方法に関する。当該方法は、(a)(i)導電性担体粒子上に銅含有化合物を付着させ、(ii)導電性担体粒子上に白金含有化合物を付着させ、(iii)前記担体粒子上に付着している前記化合物を約450℃を超える温度の還元雰囲気中で少なくとも2時間加熱して銅と白金との合金を形成することによって、約20原子パーセントを超え、約40原子パーセント未満の白金濃度を有する触媒組成物前駆体を形成するステップと、(b)前記前駆体組成物を空気中で、又は代りに空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で酸性溶液に接触させて、その中に存在する銅の一部を可溶化するステップを含む。
【0026】
さらに本発明は、前述の触媒組成物の調製方法の1つに関し、触媒組成物前駆体及び/又は触媒組成物中の白金と銅の濃度の合計が約95原子パーセントを超える。
【0027】
本発明は、その意図される範囲から逸脱することなく、触媒組成物、触媒組成物前駆体及び/又は触媒組成物の調製方法に関して上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された様々な可能な制限の組合せの全てを包含することを理解すべきである。
【0028】
本発明の前述の、ならびに他の特徴と利点は、以下の説明及び付随する図面からさらに明らかになるであろう。
【0029】
対応する参照文字は図面を通して対応する部品を示すことに留意すべきである。
【発明の詳細な説明】
【0030】
本発明は、例えば、ポリ電解質膜燃料電池(例えば電極触媒)中で、対象となる酸化及び/又は還元反応に使用するための触媒活性を有する組成物に関し、組成物は、本明細書でさらに詳細に示すように、白金及び銅を含有する。
【0031】
これに関して、一般に、それらの反応に使用される触媒組成物のコストを低減することは、特に燃料電池に使用されるとき、望ましいが重要ではないことに留意すべきである。触媒組成物のコスト低減の1つの手法は、触媒を製造するために使用する貴金属(白金など)の量を低減することである。しかし典型的に、貴金属の濃度が減少すると、触媒組成物は腐食に対してより敏感になり、且つ/又は絶対活性度が低下し得る傾向がある。したがって、貴金属の質量%当たり最も高い活性度を達成することが典型的に望ましい(例えば、下の表A〜Oに記載した、Ptの質量分率あたり端電流密度(End Current Density/Weight Fraction of Pt)を参照されたい)。これは、例えば触媒組成物を配置する燃料電池の寿命を犠牲にすることなく達成されることが好ましい。貴金属の濃度を制限することによるコスト低減に加えて、あるいは代りに、白金に比べて腐食抵抗性及び/又は活性度の改善を示す理由から、本発明の触媒組成物を選択することができる(例えば白金に比べて少なくとも3倍の触媒活性度の増加)。
【0032】
したがって、本発明は、酸化及び/又は還元反応に触媒活性を有し、白金及び銅を含有する組成物に関する。任意選択的に、本発明の触媒組成物はこれらの金属の合金の形とすることができ、例えば、組成物は実質的にこれらの金属を含む合金からなる。代りに、本発明の触媒組成物は、これらの金属を含むことができ、その一部は合金の形であり、例えば組成物は被覆として、擬似担体として、及び/又は単純な混合物として酸化物粒子と混合した合金粒子を有する。
【0033】
本発明の触媒組成物は、触媒活性及び/又は触媒組成物の結晶学的な構造に十分役割を果たす量の白金及び銅を含む。言い換えれば、本触媒組成物中の白金及び銅の濃度は、金属の存在が不純物とは考えられない程度である。例えば、白金及び銅の各濃度は、少なくとも約0.1、0.5、1、又は2原子パーセント(atomic percent)であり、白金及び銅の濃度の合計は、例えば、約95原子パーセントを超え、約96原子パーセントを超え、約97原子パーセントを超え、約98原子パーセントを超え、約99原子パーセントさえも超えることができる。都合の良いことに且つ驚くべきことに、白金と銅(例えば合金)を含む触媒組成物は、例えば標準的な白金に比べて白金量を低減しながら、好ましい電極触媒活性度を示すことが発見された。
【0034】
これに関して、本発明の触媒組成物は、実質的に白金及び銅からなるものでもよく(例えば、存在するならば、触媒活性及び/又は結晶学的構造に果たす役割の少ない不純物がある程度存在することができる)、金属の濃度は本明細書に記載した1種又は複数種の個々の金属、又は金属の組合せの範囲内である。言い換えれば、白金及び銅以外の金属又は非金属元素の濃度は、任意選択的に不純物と考えられる濃度を超えなくてもよい(例えば、1、0.5、0.1、0.01原子パーセント未満)。しかし、本発明の触媒は、代りに白金及び銅、ならびに、例えば白金及び/又は銅の酸化物及び/又は炭化物を含んで、他の構成要素を含むことも可能である。したがって、いくつかの実施形態において、白金と銅の総濃度はその中に存在する金属原子の約100パーセント未満とすることができることに注目すべきである。
【0035】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、白金及び/又は銅は実質上それらの金属酸化状態にあることに注目すべきである。言い換えれば、白金及び/又は銅の平均酸化状態はゼロ又はそれに近い。それらの実施形態において、白金及び/又は銅の1つ又は両方の酸化状態がゼロを超える触媒組成物の部分があってもよいが、これらの元素の組成物全体の平均酸化状態は、特定の元素について通常起きる最低の酸化状態よりも低い(例えば、通常起きる白金及び銅の最低酸化状態はそれぞれ2及び1である)。したがって、白金の平均酸化状態の好ましい順序は、2未満、1.5未満、1未満、0.5未満、0.1未満、又は0.01未満、又はゼロであり、銅の平均酸化状態の好ましい順序は、1未満、0.5未満、0.1未満、又は0.01未満、又はゼロである。
【0036】
しかし、本発明の別の実施形態において、白金及び/又は銅は実質上それらの金属酸化状態で存在しなくてもよいことにさらに注目すべきである。言い換えれば、本発明の1つ又は複数の実施形態において、触媒組成物中に存在する白金及び/又は銅はゼロよりも大きな平均酸化状態を有することができる(白金及び/又は銅は、例えば酸化物又は炭化物として触媒中に存在する)。
【0037】
1.触媒組成物
A.構成要素濃度
本発明の触媒組成物中の白金濃度は、約50原子パーセントを超え、典型的に約80原子パーセント未満(例えば、約55、約60、又は約65原子パーセントを超え、約80、約75、又は約70原子パーセント未満)である。したがって、白金濃度は、例えば、約60〜約80原子パーセントの範囲、又は好ましくは約65〜約75原子パーセントの範囲とすることができる。
【0038】
しかし、これに関して、本発明の範囲は、上記最大値及び最小値における、本明細書で変更可能な全ての様々な白金濃度範囲を包含することが意図されることに注目すべきである。
【0039】
本発明の触媒組成物中の銅濃度は、約50原子パーセント未満、及び典型的に約20原子パーセントを超える(例えば、約45未満、約40未満、約35未満、及び約20を超え、約25を超え、約30原子パーセントを超える)。したがって、銅濃度は、例えば、約20〜約40原子パーセントの範囲、又は好ましくは約25〜約35原子パーセントの範囲とすることができる。
【0040】
しかし、これに関して、本発明の範囲は、上記最大値及び最小値における、本明細書で変更可能な全ての様々な銅濃度範囲を包含することが意図されることに注目すべきである。
【0041】
さらに本発明の触媒組成物は、その意図された範囲から逸脱することなく、白金と銅濃度の任意の様々な組合せ及び/又は上記濃度の範囲を含むことができることに注目すべきである。例えば、本発明の触媒組成物は、白金及び銅を含み、(i)白金及び銅の濃度の合計は約95原子パーセント、約96原子パーセント、約97原子パーセント、約98原子パーセント、約99原子パーセントを超え、(ii)白金濃度は50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満、又は約60原子パーセントを超え約80原子パーセント未満、約55原子パーセントを超え約75原子パーセント未満とすることができる。
【0042】
B.粒径
本明細書中でさらに詳細に示すが、本発明の触媒組成物を調製するために用いられる1つ又は複数の方法(例えば凍結乾燥、合金化、洗浄)及び/又はその条件(例えば、合金化温度及び/又は期間、例えば触媒組成物からの銅の溶解時に用いられる酸性溶液のpH及び/又は雰囲気)について、得られる触媒組成物の粒径の制御又は制限のために制御することができることに注目すべきである。1つ又は複数のこれらの方法及び/又は方法の条件は、例えば導電性担体上の平均粒径が、約5nm(50Å)を超えず、さらに好ましくは約4nm(40Å)を超えず、さらに好ましくは約3.5nm(35Å)を超えず、さらに好ましくは約3nm(30Å)を超えず、さらに好ましくは約2.5nm(25Å)を超えず、さらに好ましくは約2nm(20Å)を超えず、さらに好ましくは約1.5nm(15Å)を超えず、さらに好ましくは約1nm(10Å)を超えず、触媒組成物の平均サイズが、例えば約10Åを超え50Å未満、約15Åを超え40Å未満、約20Åを超え35Å未満、約20Åを超え30Å未満、又は約25Åを超え30Å未満になるように触媒組成物が制御されることが好ましい。
【0043】
任意選択的に、触媒組成物粒子のサイズ分布は、少なくとも約75パーセント、好ましくは80パーセント、さらに好ましくは85パーセント、さらに好ましくは90パーセント、又は大部分の粒子が、平均粒径の約75〜約125パーセント内、好ましくは約90〜110パーセントであることに注目すべきである。これに加え又は代りに、触媒組成物は3.729Å未満の格子パラメータ(例えば3.725未満、3.720未満、3.715未満、3.710未満、3.705未満、3.700未満、3.695未満、3.690未満、3.685未満等)を有することができ、例えば3.725〜約3.685、又は約3.720〜約3.690、又は約3.715〜約3.695の範囲であることにさらに注目すべきである。
【0044】
C.組成の変動
他に報告されたように、触媒組成物が電極触媒反応(例えば燃料電池の運転)にさらされると、1種又は複数種の構成要素(例えば、銅)が触媒から滲出し、組成が変化する(例えば、Catalysis for Low Temperature Fuel Cells Part 1:The Cathode Challenges、T.R.Ralph and M.P.Hogarth、Platinum Metals Rev.、2002、46、(1)、p.3〜14を参照)。特定の理論を支持することではないが、この滲出効果は、表面積の増加及び/又は触媒表面の組成物の変化によって触媒の活性を増加させるように作用する可能性があると考えられる。実際に、合成後に意図的に触媒組成物を滲出させて表面積を増加することが、Itohらによって開示された(例えば、米国特許第5,876,867号明細書参照)。したがって、本発明の触媒組成物について詳細に示された濃度、濃度範囲、及び原子比は、出発バルク化学量論、それから得られる任意の出発表面化学量論、及び本発明の触媒組成物に対象の反応(例えば、電極触媒反応)を行わせることによって得られるバルク及び/又は表面化学量論の修正を含むことが意図されていることに注目すべきである。
【0045】
2.触媒組成物前駆体
A.洗浄/滲出
使用中に観察された上記の組成変動に関して、例えば本明細書の表R1及びR2に表した結果(実施例5参照)に示すように、使用中に50原子パーセントを超える白金濃度(すなわち変動が起きた後)を有する本発明の触媒組成物の性能(例えば、活性度)は、使用前に50原子パーセント又はそれ以上の白金濃度を有するように調製された組成物に比べて改善されたことに注目すべきである。言い換えれば、本明細書で詳細に示した、例えばそこから銅が減少した後に50原子パーセントより高い白金濃度を有する白金及び銅を含む触媒組成物は、最初に同じ又は類似の組成物を有するように調製された触媒組成物よりも良好な性能を有することが観察された(例えば、(i)最初の目標組成物がPt25Cu75であり、最終組成物目標組成物がPt52Cu47であるサンプルHFC655に対して、Pt50Cu50に比肩し得る組成物を有するHFC657について報告された相対活性度を比較されたい)。
【0046】
したがって、さらに本発明は本発明の触媒組成物の前駆体に関し、前駆体は白金及び銅を含有し、その白金濃度は、50原子パーセント未満、好ましくは約45原子パーセント、さらに好ましくは約40原子パーセント、さらに好ましくは約35原子パーセント、さらに好ましくは約30原子パーセント、さらに好ましくは約25原子パーセント、さらに好ましくは約20原子パーセント(好ましくは、例えば約20原子パーセントを超え約40原子パーセントまで、又はさらに好ましくは約25〜約35原子パーセント)である。さらに、触媒組成物前駆体の白金及び銅の濃度の合計は、任意選択的に少なくとも約95原子パーセント、好ましくは約96原子パーセント、さらに好ましくは約97原子パーセント、さらに好ましくは約98原子パーセント、さらに好ましくは約99原子パーセント、又はそれ以上とすることができる。したがって、前駆体中の銅濃度は、50原子パーセントを超え(例えば、約55原子パーセント、60原子パーセント、65原子パーセント、70原子パーセント、75原子パーセント、80原子パーセント)、濃度範囲は、例えば約60〜約80原子パーセント、又は約65〜約75原子パーセントとすることができる。
【0047】
したがって、さらに本発明は、本明細書に述べた触媒組成物を触媒前駆体組成物から調製する方法に関し、前記前駆体組成物は、本明細書に上で述べたように白金及び銅を含む(例えば、その中の白金及び銅の濃度の合計は約95原子パーセントを超え、白金濃度は50原子パーセント未満、45原子パーセント未満、40原子パーセント未満等)。一般に、当該方法は前記前駆体組成物をその中に存在する銅の一部を除去するのに十分な条件にすることを含む(本明細書に記載した触媒組成物が得られ、触媒組成物は、例えば、白金及び銅を含み、その濃度の合計は約95原子パーセントを超え、白金濃度は50原子パーセント、55原子パーセント、60原子パーセント等を超える)。任意選択的に、方法及び/又は方法の条件は、35Å未満の粒径を有する触媒組成物(例えば、20Åを超え35Å未満、又は約25Åを超え30Å未満)が得られるように選択される。
【0048】
上記方法の1つの好ましい実施形態において、触媒前駆体組成物は、酸性溶液に接触させて洗浄し、又はその中に存在する銅の一部を前駆体から除去する。例えば、所与の重量の触媒前駆体組成物を所定量の過塩素酸(HClO)溶液(例えば1M、pH約0)に接触させ、所定の時間(例えば約60分間)加熱(例えば約90〜95℃)し、濾過し、次いで繰り返し水で洗浄する。得られる濾過物は典型的に薄い青色を有し、銅イオンの存在を示唆する。前駆体組成物は好ましくは2回洗浄し、第1濾過ステップから分離された固体ケーキを収集し、次いで実質上前に行ったステップと同じ手順を行い、ケーキ/酸溶液混合物の補充物を望ましい温度に加熱する前及び/又は加熱している間、ケーキを十分攪拌してそれを破砕する。最終濾過を行った後、単離したケーキを乾燥する(例えば、約90℃で約48時間加熱する)。
【0049】
上記方法への1つの手法は、酸性溶液が0を超え7未満のpHを有し、好ましくは約0.25を超え約5未満のpHであり、さらに好ましくは約0.5を超え約3未満のpHであり、さらに好ましくは約0.75を超え約1.5未満のpHであることに注目すべきである。これに加え又は代りに、上記方法は空気の存在中で行われ、あるいは代りに空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で行われる。
【0050】
しかし、別の実施形態において、触媒前駆体組成物は燃料電池に共通の条件(例えば、本明細書で以下の実施例4に説明される、室温に維持された0.5MのHSO水性電解質溶液を含む電気化学電池への浸漬)に露出し、前駆体から銅を滲出させることができることにさらに注目すべきである。代りに、前駆体は、直接電気化学反応を行わせることができ、例えば、アノードと、カソードと、その間のプロトン交換膜と、触媒前駆体組成物と、アノードとカソードを接続する導電性外部回路とを備える燃料電池中で、水素含有燃料及び酸素は反応生成物及び電気へと変換される。水素含有燃料又は酸素を触媒前駆体組成物に接触させることによって、水素含有燃料は酸化され、且つ/又は酸素は触媒還元される。この反応の一部として、銅はこのようにして触媒前駆体組成物からその場で溶解する。実質上安定な組成物(すなわち、白金及び/又は銅が実質上一定に保たれる組成物)を得るのに十分な時間この反応を継続させた後、組成物をセルから取り出し、対象となる将来の燃料電池反応の触媒組成物として使用することができる。
【0051】
例えば触媒組成物前駆体から銅の一部を除去する方法は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に述べるもの以外とすることができることにさらに注目すべきである。例えば、代替の溶液(例えば、HCFSOH、NAFION(登録商標)、HNO、HCl、HSO、CHCOH)、及び/又は代替の濃度(例えば約0.05M、0.1M、0.5M、1M、2M、3M、4M、5M等)、及び/又は代替の温度(例えば、約25℃、35℃、45℃、55℃、65℃、75℃、85℃等)、及び/又は代替の洗浄時間又は期間(例えば、約5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、又はそれ以上)、及び/又は代替の洗浄サイクル回数(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上)、及び/又は代替の水洗技術(例えば、遠心分離、超音波、浸漬、電気化学的技術、又はその組合せ)、及び/又は代替の水洗雰囲気(例えば、周囲空気、酸素富裕、アルゴン)、ならびにその様々な組合せ(当技術分野に通常の手段を用いて選択された)を用いることができる。
【0052】
上に述べた、及び/又は本明細書のいずれかに述べた前駆体の組成物は、いくつかの種類の洗浄又はその場(in situ)での除去条件(例えば、電極触媒電池中の条件を使用する)を行う前の、調製された前駆体組成物の全体の化学量論、又はバルクの化学量論を指す。したがって、報告された前駆体組成物(例えば、上記金属の合金を含む、又は実質的に上記金属からなる前駆体組成物)は、調製された前駆体組成物の容積全体の平均化学量論であり、したがって、局所的な化学量論の変動が存在し得る。例えば、表面及びそこから内方向に最初の数原子層を含む粒子状前駆体組成物の容積(volume)は、バルクの化学量論とは異なっていてもよい。同様に、粒子のバルク内部においても化学量論の変動があり得る。特定のバルク化学量論に対応する表面化学量論は前駆体組成物を調製する方法及び条件に大きく依存する。したがって、同じバルク化学量論を有する前駆体組成物は、大きく異なる表面化学量論を有することがある。特定の理論に拘束されず、異なる表面化学量論は少なくとも部分的に組成物の原子配置の相違、化学的状態、及び均一性に由来すると考えられる。
【0053】
B.前駆体格子パラメータ
また、上記触媒組成物前駆体は、その格子パラメータを特徴とすることができる。特に、格子パラメータの変化は、それぞれの金属構成要素のサイズの変化の指標となり得る。例えば、白金及び銅の12−配位金属半径はそれぞれ、1.387Å及び1.278Åである。1種の金属が他と置換されると、平均金属半径及び結果として観察される格子パラメータはそれに応じて収縮又は膨張することが予測できる。したがって、平均半径は、化学量論の関数として格子変化の指標に用いることができ、又は代りに、観察された格子パラメータに基づく化学量論の指標として用いることができる。しかし、平均半径は一般則として有用であるが、局部的な規則性、原子間の顕著なサイズの格差、顕著な対称性の変化、及び/又は他の因子が予測とは一致しない値を生じることがあるので、実際の測定は一般論的な確認しか期待できないことに注目すべきである。時折、別の金属半径を用いることが有用となり得る。それら代用半径の一概念では、純粋な金属の代りに、結晶学的に規則性のあるPtCuなどの既知のPt系合金(立方対称性が維持される)を用いて、金属半径を近似する。この場合、受け入れられた白金の12−配位金属半径と共に、規則合金の格子パラメータが用いられること以外は、同じ最密充填幾何形状の議論に関連する。代用半径の概念によれば、銅の有効半径は約1.284Åであると考えられる。
【0054】
本発明の一実施形態において、触媒組成物前駆体は、格子パラメータが3.777Åを超えない白金−銅合金を含み、又は実質的にその合金からなり、一般に少なくとも50原子パーセントの銅を含む合金に一致すると考えられる。他の実施形態において、触媒組成物前駆体合金は、約3.674〜約3.765Åの格子パラメータを有し、一般に約15〜約45原子パーセントの白金及び約55〜約85原子パーセントの銅を含む合金に一致すると考えられる。さらに他の実施形態において、触媒組成物前駆体合金は、約3.689〜約3.750Åの格子パラメータを有し、一般に約20〜約40原子パーセントの白金及び約60〜約80原子パーセントの銅を含む合金に一致すると考えられる。さらに他の実施形態において、触媒組成物前駆体合金は、約3.704〜約3.745Åの格子パラメータを有し、一般に約25〜約35原子パーセントの白金及び約65〜約75原子パーセントの銅を含む合金に一致すると考えられる。
【0055】
これに関して、上記の格子パラメータは、前駆体触媒組成物(すなわち、例えばその中の銅の一部を除去するために洗浄又は滲出する前の組成物)のものであることに注目すべきである。さらに、洗浄又は滲出の後、いくつかの種類の骨格構造又は形状は、組成物に対する上述の範囲から外れた格子パラメータをもたらすことに注目すべきである。
【0056】
3.合金を含有する/実質的に合金からなる触媒組成物前駆体の形成
本発明の触媒組成物及び/又は触媒組成物前駆体は、実質的に白金と銅との合金からなることができる。代りに、本発明の触媒組成物及び/又は触媒組成物前駆体は、白金と銅との合金を含むことができる。すなわち、これらの1種又は両方はこれらの金属の合金を代りに含むことができ、任意選択的に、非合金の形(例えば、白金及び又は銅塩、及び/又は酸化物、及び/又は炭化物)でこれらの金属の1種又は複数種を代りに含むことができる。
【0057】
それらの合金は様々な方法によって形成することができる。例えば、適量の構成成分(例えば金属)を互いに混合し、それぞれの融点以上の温度に加熱して金属の溶融溶液を形成し、冷却して固化すればよい。
【0058】
典型的に、本発明の触媒組成物及び/又はその前駆体は、表面積を増すために粉体の形で用いられ、すなわち活性点の数が増加するにつれて触媒組成物が用いられるセルの効率が向上する。したがって、形成された触媒組成物合金及び/又はその前駆体は、固化の後(例えば粉砕によって)又は固化の間に(例えば溶融合金を噴霧して液滴を固化させる)粉体に変換することができる。しかし、これに関して、本明細書でさらに説明し図示するように、場合によって、粉体の形ではない合金の電極触媒活性度を評価することが有利であることに注目すべきである(例えば、以下の実施例1及び2参照)。
【0059】
表面積と効率をさらに増加させるために、触媒組成物合金(すなわち合金を含有する又は実質的に合金からなる触媒組成物)、及び/又はその前駆体は、燃料電池に使用する導電性担体(例えばカーボンブラック)の表面に付着させることができる。触媒組成物又は前駆体合金を担体上に担持する1つの方法は、金属含有(例えば白金及び/又は銅)化合物を担体上に付着させ、これらの化合物を金属の形に変換し、次いで、還元雰囲気中(例えば、アルゴンなどの不活性ガス及び/又は水素などの還元性ガスを含む雰囲気)の熱処理を用いて金属を合金化するステップを典型的に含む。これらの化合物を付着させる1つの方法は担体上へのその化学的凝結を含む。化学的凝結法は、典型的に、担体と金属化合物原料(例えば1種又は複数種の無機金属塩を含む水性溶液)を担体上に望ましい触媒組成物担持量又はその前駆体を得るのに十分な濃度で混合し、その後、化合物の凝結(例えば、水酸化アンモニウム溶液の添加によって)を開始することによって達成される。次いで、典型的にスラリーを真空中で液体から濾過し、脱イオン水で洗い、乾燥して担体上の金属化合物を含む粉体を生成させる。
【0060】
金属化合物を付着させる他の方法は、溶液とその中に懸濁された担体を含む懸濁液を形成することを含み、溶液は、溶媒部分と、付着させる金属化合物の構成成分とを含む溶質部分を含む。懸濁液は凍結されて担体粒子上に化合物を析出(例えば凝結)する。次いで、凍結された懸濁液は溶媒部分を除去するために凍結乾燥され、担体と担体上の金属化合物の付着物(deposits)を含む凍結乾燥された粉体が残る。
【0061】
当該方法は凍結された懸濁液からの溶媒部分の昇華を含むことができるので、担体が懸濁される溶液の溶媒部分は、その凝固点以下で適切な蒸気圧を有することが好ましい。多くの金属含有化合物及び金属も溶解するそれらの昇華可能な溶媒の例は、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール等)、酢酸、四塩化炭素、アンモニア、1,2−ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド等である。
【0062】
担体が分散/懸濁している溶液は、担体の表面に付着させる金属を送達する手段を提供する。金属化学種は最終的に望ましい形とすることができるが、多くの場合そうではない。金属化学種が最終的に望ましい形でなければ、付着した金属化学種は続いて最終的な望ましい形に変換される。引き続き変換することのできる金属化学種の例は、金属のハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩等の無機及び有機金属化合物を含む。最終的に望ましい形への変換は、熱分解、化学的還元、又は他の反応によって行うことができる。例えば、熱分解は、付着した金属化学種を加熱することによって行われ、異なる固体材料とガス状材料を得る。一般に、知られているように、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩の熱分解は約200〜約1,200℃の温度で行うことができる。
【0063】
付着した金属化学種を最終的な望ましい形へ変換する場合には、通常、付着した金属化学種は変換によるあらゆる望ましくない副生成物が最終生成物から除去されるように選択される。例えば、典型的に熱分解中に望ましくない分解生成物を蒸発させる。金属合金である最終生成物を生成するためには、付着した金属化学種は、典型的に、担体表面上の金属付着物の均一性を大きく変化させずに、且つ/又は最終粉体の粒径を(例えば凝集によって)大きく変化させずに、付着した金属を含む粉体を還元することができるように選択される。
【0064】
ほとんどあらゆる金属は、金属又は金属を含む化合物が適切な媒体(すなわち溶媒)に溶解可能であれば、本明細書に述べた1種又は複数種の方法によって担体上に付着させることができる。同様に、金属又は金属含有化合物が適切な媒体に溶解可能であれば、ほとんどあらゆる金属は任意の他の金属と結合させ、又は合金化することができる。
【0065】
溶質部分は、付着させる金属化学種の原料として、有機金属化合物及び/又は無機金属含有化合物を含むことができる。一般に、有機金属化合物はよりコスト高であり、無機金属含有化合物よりも不純物を多く含むことがあり、有機溶媒を必要とすることがある。有機溶媒は水よりもコスト高であり、典型的に純度の制御又は毒性の除去のための手順及び/又は処理を必要とする。したがって、有機金属化合物及び有機溶媒は一般に好ましくない。適切な無機塩の例は、水への溶解性の高いCu(NO・2HOである。結果として、水はしばしば好ましい溶媒であると考えられる。場合によって、無機金属含有化合物は、他の無機金属含有化合物と混合する前に酸性溶液に溶解することが望ましい。
【0066】
特定の組成物又は化学量論を有する触媒合金又は触媒前駆体合金を形成するために、それを考慮してその組成物を得るのに必要な様々な金属含有原料化合物の量が決定される。担体が予備付着された金属(pre−deposited metal)を有するならば、金属含有原料化合物の必要量を計算するとき、予備付着された金属の担体上への担持量を考慮に入れる。金属含有化合物の適切な量が決定された後、任意の適切な方法によって溶液を調製することができる。例えば、全ての選択された金属含有原料化合物が室温で同じ溶媒中に望ましい濃度で溶解可能であれば、それらは単に溶媒と混合することができる。代りに、特定濃度の特定の金属含有原料化合物を含む原料溶液を混合することによって懸濁溶液を形成することができる。しかし、選択された全ての化合物を互いに混合するとき(溶媒中に粉体として又は原料溶液として)同じ温度で溶解可能でなければ、混合物の温度を上昇させて1種又は複数種の原料化合物の溶解性限界を高め、懸濁溶液を形成することができる。温度による溶解性の調節に加えて、懸濁溶液の安定性は、例えば、緩衝剤の添加、錯化剤の添加及び/又はpHの調節によって調節することができる。
【0067】
様々な金属の量を変化させて異なる組成物を有する合金を形成することに加えて、この方法は担体上へ様々な広範囲の金属担持量を可能にする。これは担持された触媒組成物(例えば電極触媒粉体)の電極触媒活性を最大にするので有益である。担持量は、様々な金属の相対量を維持しながら溶液中の様々な金属の総濃度を調節することによって部分的に制御する。実際に、無機金属含有化合物の濃度は溶液の溶解限界に近づくことができる。しかし、典型的に、溶液中の無機金属含有化合物の総濃度は約0.01M〜約5Mであり、これははるかに溶解限界以下である。一実施形態において、溶液中の無機金属含有化合物の総濃度は約0.1M〜約1Mである。金属の付着物の表面積を減少させることなく担持された触媒の担持量を最大化することが望ましいので、溶解限界以下の濃度が用いられる。例えば、特定の組成物、付着物のサイズ、担体上の付着物分布の均一性に応じて、担持量は典型的に約5〜約60質量%とすることができる。一実施形態において、担持量は約15〜約45質量%もしくは約55質量%であり、又は約20〜約40質量%もしくは約50質量%である。他の実施形態において、担持量は約20質量%、約40質量%、又は約50質量%である。
【0068】
その上に金属化学種(例えば金属含有化合物)を付着させる担体は、熱を取り除いて金属化学種をその上に凝結させる間に溶液中に分散/懸濁していることが可能な、任意のサイズ及び組成物とすることができる。最大サイズは、懸濁液の攪拌、担体の密度、溶液の比重、系から取り除かれる熱の速度を含むいくつかの因子に依存する。一般に、担体は導電性であり、燃料電池に触媒化合物を支持するのに有用である。それらの導電性担体は典型的に無機、例えばカーボン担体である。しかし、導電性担体は、導電性ポリマー(例えば米国特許第6,730,350号明細書参照)などの有機材料を含むことができる。カーボン担体は主として非晶質又はグラファイト質であり、それらは商業的に調製され、又は特別に処理してそのグラファイト性質を増加させ(例えば、真空中又は不活性ガス雰囲気中高温で熱処理する)、それによって腐食抵抗性を高めることができる。カーボンブラック担体粒子は約2000m/gまでのBrunauer、Emmett and Teller(BET)表面積を有することができる。例えば約75m/gよりも高いメソ多孔質面積を有するカーボンブラック担体粒子を用いて、満足できる結果が得られることが報告されている(例えばCatalysis for Low Temperature Fuel Cells Part 1:The Cathode Challenges、T.R.Ralph and M.P.Hogarth、Platinum Metals Rev.、2002、46、(1)、p.3〜14参照)。現在までの実験結果は、約500m/gの表面積が好ましいことを示している。
【0069】
他の実施形態において、担体はその上に予備付着された材料を有することができる。例えば、カーボン担体上の付着物の最終組成物が白金合金であるとき、カーボンに担持された白金粉体を使用することが有利である場合がある。それらの粉体は、ニュージャージー州のJohnson Matthey,Inc.、及びSomerset、ニュージャージー州のDe−Nora,N.A.、Inc.のE−Tek Div.などの会社から市場で入手可能であり、特定の白金担持量を有するように選択することができる。白金担持量の量は担持された金属合金の望ましい化学量論を得るように選択される。典型的に、白金担持量は約5〜約60質量%である。白金担持量は約15〜約45質量%であることが好ましい。白金付着物のサイズ(すなわち最大断面長さ)は典型的に約20nm未満である。例えば、白金付着物のサイズは約10nm、5nm、2nm未満、又はそれ以下とすることができ、代りに、白金付着物のサイズは約2〜約3nmとすることができる。現在までの実験結果は、望ましい担持された白金粉体が、約150〜約170m/g(CO吸着によって求めた)の白金表面積と、約350〜約400m/g(N吸着によって求めた)のカーボン及び白金の組合せ表面積と、約100〜約300nmの平均担体サイズとを有することをさらに特徴とすることを示している。
【0070】
溶液及び担体は、当技術分野に知られた分散物/懸濁液を形成する任意の適切な方法に従って混合することができる。混合の例示的な方法は、磁気攪拌、攪拌構造又は装置(例えば回転子)の挿入、振動、超音波、又は前記方法の組合せを含む。担体を溶液に十分混合できるならば、担体と溶液の相対量は広範囲に変化させることができる。例えば、溶解した無機金属含有化合物を含む水性懸濁液を用いてカーボンに担持された触媒を調製するとき、カーボン担体は典型的に懸濁液の約1〜約30質量%を含む。しかし、カーボン担体は懸濁液の約1〜約15質量%、懸濁液の約1〜約10質量%、懸濁液の約3〜約8質量%、懸濁液の約5〜約7質量%、又は懸濁液の約6質量%を含むことが好ましい。
【0071】
これに関して、上で参照した懸濁液中のカーボン担体の量は、本明細書に述べた、又は当技術分野に知られた他の非カーボン担体に等しく適用できることに注目すべきである。
【0072】
また、担体と溶液の相対量は、容積比で記述することができる。例えば、分散物/懸濁液において、担体粒子の溶液もしくは溶媒に対する容積比は少なくとも1:10とすることができる。最小容積比を規定することは、溶液もしくは溶媒の容積に対して担体粒子の容積を増加できることを意味する。したがって、溶液もしくは溶媒に対する担体粒子の容積比は、少なくとも約1:8、1:5、及び1:2とすることができる。
【0073】
調製の一方法において、本明細書に説明又は例示される溶液及び担体は、分散物/懸濁液を形成するのに十分な出力と時間で超音波を用いて混合され、担体の孔は溶液で含浸され、且つ/又は担体が均一に溶液に分散される。分散物/懸濁液が均一に混合されない(すなわち担体が溶液で均一に含浸されず、且つ/又は担体が溶液全体に均一に分散されない)ならば、担体上に形成された付着物は典型的に不均一であろう(例えば、金属化学種の担持量は担体間で変化し、付着物のサイズは担体上及び/又は担体間で大きく変動し、且つ/又は付着物の組成物は担体間で変化し得る)。担体は溶液中に均一に混合又は分散されることが一般に好ましいが、担体が溶液中に不均一に混合又は分散されることが望ましい状況もあり得る。
【0074】
調製に凍結乾燥法が用いられるとき、典型的に、分散物/懸濁液中の粒子分布の均一性はそこから熱を除去する間維持される。この均一性は、冷却されるときに分散物/懸濁液の混合を継続することによって維持することができる。しかし、均一性は、混合しないで分散物/懸濁液の粘度によって維持することができる。担体粒子を均一に懸濁させるために必要な実際の粘度は、分散物/懸濁液中の担体粒子の量と担体粒子のサイズに大部分依存する。必要な粘度は担体粒子の密度と溶液の比重に少なからず依存する。一般に、懸濁液から熱を除去して付着物を凝結させるとき、及び/又は望むならば、溶液又は溶媒の凍結によって分散物/懸濁液が固化するまで、典型的に粘度は担体粒子の実質的な沈澱を防止するのに十分である。沈澱する場合、沈澱の程度は、例えば、懸濁液の固化又は凍結した部分を試験することによって求めることができる。典型的に、任意の2つの部分の担体濃度が約±10%以上変化するならば、実質的な沈澱が起きたと考えられる。凍結乾燥法によってカーボン担持触媒粉体又はその前駆体を調製するとき、典型的に懸濁液/分散物の粘度は少なくとも約4分間顕著な沈澱を防止するのに十分である。実際に、懸濁液/分散物の粘度は、少なくとも約10分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、又は約2日間まで十分沈澱を防止することができる。典型的に、分散物/懸濁液の粘度は少なくとも約5,000mPa・sである。
【0075】
熱が分散物/懸濁液から除かれるので、少なくとも一部の溶質部分が溶媒部分から分離し、担体上及び/又は任意の予め存在する付着物(例えば、予備付着された金属及び/又は相溶性のない溶質の凝結によって形成して予備付着された金属化学種)の上に金属化学種/凝結金属が付着(例えば凝結)する。懸濁液中の担体の濃度が十分であり(例えば上記の範囲内)、熱が十分除去されれば、付着させる金属化学種のほとんど全てが溶媒部分から分離して、担体上に金属化学種を含む付着物(例えば凝結物)が形成される。一実施形態において、熱を除去して分散物/懸濁液が固化又は凍結され、固体状態の溶媒部分のマトリックス内に、担体/粒子状担体上の金属化学種又は凝結金属を含む付着物とともに、担体/粒子状担体を含む複合体が形成される。溶液中の溶質部分の濃度が、担体の金属化学種の付着物を引き受ける能力を超えるならば、溶質のいくらかの部分はマトリックス内で結晶化する。これが起きた場合、それらの結晶は担持された粉体とは考えない。
【0076】
本発明の一実施形態において、金属化学種の付着物のサイズは、最終的に形成される触媒組成物合金の付着物又はその前駆体の付着物が前述のものになるように制御される。すなわち、粒径が、好ましくは約5nm(50Å)を超えず、さらに好ましくは約4nm(40Å)を超えず、さらに好ましくは約3.5nm(35Å)を超えず、さらに好ましくは約3nm(30Å)を超えず、さらに好ましくは約2.5nm(25Å)を超えず、さらに好ましくは約2nm(20Å)を超えず、さらに好ましくは約1.5nm(15Å)を超えず、さらに好ましくは約1nm(10Å)を超えず、したがって、触媒組成物の平均サイズが例えば、約10Åを超え50Å未満、約15Åを超え40Å未満、約20Åを超え35Å未満、又は約25Åを超え30Å未満の範囲とすることができるように制御される。
【0077】
前述のように、付着物サイズ又はより一般的に触媒組成物合金もしくはその前駆体のサイズの制御は、系から熱を除去する間、良好に含浸され均一に分散された懸濁液を維持することによって少なくとも部分的に達成することができる。さらに、付着物サイズの制御は、化合物又は組成物が担体上に付着する際に分散物/懸濁液から熱を急速に除去することによって達成することができる。
【0078】
急速な熱の除去は、分散物/懸濁液を少なくとも約20℃の温度から溶媒の凝固点以下の温度に、例えば、少なくとも約20℃/分の速度で冷却することによって達成することができる。熱の除去の好ましい順序は、分散物/懸濁液を少なくとも約50、60、70、80、90、又は100℃/分の速度で冷却することを含む。すなわち、分散物/懸濁液は約50〜約100℃/分の速度、又は約60〜約80℃/分の速度で冷却することができる。典型的に、熱の除去は、懸濁液の温度を室温などの温度(約20℃)又はそれ以上の温度(例えば100℃)から溶液又は溶媒の凝固点まで、比較的短い時間(例えば約10、5、又は3分を超えない)に低下させる速度で行われる。
【0079】
熱は任意の適切な方法によって分散物/懸濁液から除去することができる。例えば、所定量の分散物/懸濁液を含む容器を凍結乾燥機などの冷凍ユニット内に配置すればよく、冷却した表面(例えばプレート又は容器)に所定量の分散物/懸濁液を接触させ、容器内の分散物/懸濁液を低温液体中に浸漬又は接触させればよい。分散物の形成の間且つ/又は付着した担体から溶媒を分離する間、同じ容器を使用できるという有利がある。一実施形態において、容器の開口部に蓋が置かれる。蓋は容器からいかなる固体物質も抜け出ることを完全に防止することができるが、蓋はガスが容器から抜け出ることを許し、担体が容器から出ることを実質上阻止することが好ましい。それらの蓋の例は、例えば、約500、400、又は300μm(孔径の最大長さ)未満のサイズの孔を有する引き伸ばし可能なフィルム(例えば、PARAFILM)を含む。
【0080】
一実施形態において、分散物/懸濁液は、分散物/懸濁液を含む容器を、その表面の少なくとも大部分が低温液体と接触するようなサイズと形状の容器(例えば、分散物/懸濁液容器表面の少なくとも50、60、70、80、又は90%)内の一定量の低温液体に浸漬又は接触させることによって、少なくとも約20℃/分の速度で冷却される。低温液体は典型的に溶媒の凝固点の少なくとも約20℃以下の温度である。適切な低温液体の例は液体窒素、液体ヘリウム、液体アルゴンを典型的に含むが、より安価な媒体を用いることができる(例えば、氷水/水和塩化カルシウム混合物は約−55℃の低い温度に達することができ、アセトン/ドライアイス混合物は約−78℃の低温に達することができ、ジエチルエーテル/ドライアイス混合物は約−100℃の低温まで達することができる)。
【0081】
容器は、ほとんどあらゆる種類の材料から作ることができる。一般に、選択される材料は特別な取り扱い手順を必要とせず、構造の破壊なしに繰り返し使用に耐える(例えば熱衝撃抵抗性)ことができ、懸濁液への不純物の原因にならず(例えば化学的攻撃に対する抵抗性)、及び熱伝導性がある。例えば、高密度ポリエチレンから作られたプラスチック瓶を使用することができる。
【0082】
その上に付着物を有する担体は、濾過、蒸発(例えば噴霧乾燥によって)、昇華(例えば凍結乾燥)、又はその組合せなどの任意の適切な方法によって溶媒部分から分離することができる。蒸発又は昇華速度は、熱を加える(例えば溶媒の温度を上げる)こと、及び/又は溶媒を露出する雰囲気圧力を下げることによって高めることができる。
【0083】
一実施形態において、凍結又は固化された懸濁液は凍結懸濁液から溶媒部分を除去するために凍結乾燥される。凍結乾燥はLABCONCO FREEZE DRY SYSTEM(Model79480)などの任意の適切な装置中で行うことができる。当業者であれば直感的に、担体の凝集を防止するため、凍結懸濁液の温度を溶媒の凝固点以下に維持する(すなわち溶媒は昇華によって除去される)であろう。本明細書に説明し例示する凍結乾燥工程はそれらの条件下で実施することができる。しかし、驚くべきことに、溶媒部分が完全に凍結されて残ることは重要ではない。特に、液体溶媒の蒸発速度が溶融速度よりも速いレベル(例えば、約0.2ミリバール、0.000197気圧、又は20Pa以下)に凍結乾燥機内の圧力を維持すれば、溶媒が溶融しても、自由に流動し凝集していない粉体を調製することができることが発見された。したがって、典型的に、担体の凝集を招くほどの液体状態の溶媒が存在しない。これは、溶媒部分を除去するために必要な時間を短縮するために有利に用いることができる。溶媒部分の除去は、担体/粒子状担体及び1種もしくは複数種の金属化学種又は凝結した金属を含む担体/粒子状担体上の付着物を含む自由に流動し凝集していない担持された粉体をもたらす。
【0084】
付着している化合物をその場所において望ましい金属の形態へと変換するために、担体及び付着している化合物は典型的に還元雰囲気中(例えば、水素及び/又はアルゴンなどの不活性ガスを含む雰囲気)で付着している化合物を分解するのに十分な温度で加熱される。熱処理の間に到達する温度は、典型的に少なくとも付着している化合物の分解温度程度の高さであり、担体の劣化、並びに担体及び/又は付着物の凝集を招くほど高くない。典型的に、温度は約60℃〜約1100℃、約100℃〜約1000℃、約200℃〜約800℃、又は約400℃〜約600℃である。無機金属含有化合物は、典型的に約600〜1000℃の温度で分解する。
【0085】
熱処理の時間は、典型的に、少なくとも実質上付着している化合物を望ましい状態に変換するのに十分な時間である。一般に、温度及び時間は逆比例する(すなわち変換はより高い温度でより短時間に達成され、逆もそうである)。無機金属含有化合物を上記合金に変換する典型的な温度で、熱処理の時間は典型的に少なくとも約30分間である(例えば、約1、2、4、6、8、10、12時間、14時間、又はそれ以上)。例えば、時間は約1〜約14時間、約2〜約12時間、又は約4〜6時間とすることができる。
【0086】
しかし、これに関して、これに加え又は代りに、得られる触媒組成物合金又はその前駆体の粒径は、付着している金属含有化合物が加熱される温度及び/又は化合物がその温度に維持される時間の長さの制御によって制御することができる。例えば、本明細書の他の箇所に述べるサイズ(例えば、約10Åを超え50Å未満、約15Åを超え40Å未満、約20Åを超え35Å未満、約25Åを超え30Å未満)を有する触媒組成物又は触媒組成物前躯体を得るために、一実施形態において、付着している化合物は還元雰囲気中で、約450℃を超え800℃未満、さらに好ましくは約450℃を超え750℃未満、さらに好ましくは約525℃を超え750℃未満、さらに好ましくは約600℃を超え700℃未満の温度で、前記化合物を銅と白金との合金に変換するのに十分な期間(例えば好ましくは約2〜約14時間、さらに好ましくは約6〜約14時間、さらに好ましくは約6.5〜約13時間、さらに好ましくは約7〜約12時間)加熱される。別の実施形態において、付着している化合物は還元雰囲気中で、約750℃を超え950℃未満、さらに好ましくは約800℃を超え900℃未満の温度で、約1.5〜約5時間、さらに好ましくは約1.75〜約4.5時間、さらに好ましくは約2〜約4時間の期間加熱される。
【0087】
ここで図1を参照すれば、本明細書に説明し例示した凍結乾燥法に従って製造された、本発明のカーボン担持触媒合金粉体粒子1は、カーボン担体2と担体上の触媒合金の付着物3とを含む。粒子及び前記粒子を含む粉体は約90質量%まで担持することができる。しかし、担持された金属粉体が燃料電池触媒として用いられるとき、担持量は典型的に約5〜約60質量%であり、好ましくは約15〜約45もしくは約55質量%であり、又はさらに好ましくは約20〜約40もしくは約50質量%(例えば約20質量%、約45質量%、又は約50質量%)である。典型的に、担持量を約60質量%以上増加させても、活性度は増加しない。特定の理論には拘束されないが、過剰の担持量は付着した金属の一部を被覆し、被覆された部分は望ましい電気化学的反応に触媒作用を行うことができないと考えられる。他方、担持された触媒の活性度は、担持量が約5質量%以下であると典型的に顕著に低下する。
【0088】
凍結乾燥法は、1種又は複数種の非貴金属を含む触媒合金のナノ粒子付着物が多く担持された担持触媒合金粉体を製造するのに用いることができ、この付着物のサイズ分布は比較的狭い。例えば、一実施形態において、担持された非貴金属含有触媒合金粉体は、粉体の少なくとも約20質量%の金属担持量、約10nmを超えない平均付着物サイズ、付着物の少なくとも約70パーセントが平均付着物サイズの約50〜150パーセントである付着物サイズ分布を有することができる。他の実施形態において、金属担持量は約20〜約60質量%、及びさらに好ましくは約20〜約40質量%とすることができる。
【0089】
担持触媒粉体を調製する凍結乾燥法は、懸濁液が単一容器中に好ましく保持され、溶液が担体から(例えば濾過によって)物理的に分離せず、凍結が実質上溶質の全てを担体上に凝結させるので、付着物の優れた化学量論的制御が可能になる。さらに、付着物は遊離し、担体の表面に小さく均一に分散する傾向があり、それによって、全体の触媒活性度が高まる。さらに、濾過が必要ではないので、極めて微細な粒子の損失がなく、この方法によって製造された、担持触媒粉体はより大きな表面積と活性度を有する傾向がある。また、担体上への金属化学種の付着作用は迅速である。例えば、分散物/懸濁液の容器を低温液体中に浸漬することによって、3〜4分間で分散物/懸濁液を固化することができる。
【0090】
4.電極/燃料電池用途における担持されていない触媒組成物
本発明の他の実施形態において、触媒組成物(例えば金属成分の合金を含む、又は実質的に金属成分の合金からなる触媒組成物)及び/又はその前躯体は、担持されなくてもよい。すなわち本明細書に述べる触媒組成物は担体粒子なしで使用できることに注目すべきである。さらに詳細には、本発明の他の実施形態において、本明細書に定義する白金及び銅を含む触媒組成物を、例えば、(i)電極の一方又は両方の面(例えばアノード、カソード、又は両方)、及び/又は(ii)ポリ電解質膜の一方又は両方の面、及び/又は(iii)膜の裏打ち(例えばカーボン紙)などの他の表面に直接付着(例えばスパッタ)させることができることに注目すべきである。
【0091】
これに関して、組成物の各構成要素(例えば金属含有化合物)は、例えば電極、膜等の表面上に分離した層として個別に付着させることができることにさらに注目すべきである。代りに、2種又はそれ以上の構成要素を同時に付着させることができる。さらに、組成物がこれらの金属の合金を含み、又は実質的にこれらの金属の合金からなるとき、合金を形成し、次いで付着させてもよく、又はその構成要素を付着させ次いでその上に合金を形成してもよい。
【0092】
構成要素の付着は、例えば既知のスパッタ技術を含んで(例えば、国際公開第99/16137号パンフレット又は米国特許第6,171,721号明細書参照)、当分野に既知の手段を用いて達成することができる。しかし、概して言えば、一手法において、スパッタ蒸着は、不活性雰囲気中の真空室内でターゲット成分材料と目的の構成要素を付着させる表面の間に電位差を形成してターゲット構成要素材料から粒子を放出させ、次いで、例えば電極又は電解質膜の表面に付着させ、したがってその上に目的の構成要素の被覆を形成することによって達成される。一実施形態において、ポリマー電解質膜、例えば、(i)テトラフルオロエチレンとペルフルオロポリエーテルスルホン酸のコポリマー膜(NAFION(登録商標)の商品名で販売されている膜材料など)、(ii)過フッ化スルホン酸ポリマー(ACIPLEXの商品名で販売されている膜材料など)、(iii)ポリエチレンスルホン酸ポリマー、(iv)ポリケトンスルホン酸、(v)リン酸をドープしたポリベンズイミダゾール、(vi)スルホン化ポリエーテルスルホン、(vii)他のポリ炭化水素系スルホン酸ポリマーなどの上に構成要素を蒸着させる。
【0093】
所与の用途に適するように組成物を調製する目的で、組成物の各金属又は構成要素の特定量を独立に制御できることに注目すべきである。ある実施形態において、付着させた各構成要素の量、又は付着させた触媒(例えば触媒合金)の量は、表面積(例えば電極表面積、膜表面積等)当たり約5mg/cm未満、約1mg/cm未満、約0.5mg/cm未満、約0.1mg/cm未満、又は約0.05mg/cm未満とすることができる。他の実施形態において、付着させた構成要素の量、又は付着させた触媒(例えば触媒合金)の量は、約0.5mg/cmから約5mg/cm未満、又は約0.1mg/cmから約1mg/cm未満の範囲とすることができる。
【0094】
さらに、得られる構成要素もしくは組成物、電極の表面上の層、電解質膜等の厚さを制御するために、各構成要素もしくは組成物及び/又は構成要素もしくは組成物を付着させる条件を制御してもよいことに注目すべきである。例えば、当分野で既知の手段(例えば、走査電子顕微鏡又はラザフォード後方散乱分光測光法)によって測定できるが、付着された構成要素又は組成物の層は、数Å(例えば、約2、4、6、8、10Å、又はそれ以上)〜数十オングストローム(例えば、約20、40、60、80、100Å、又はそれ以上)の範囲、数百オングストローム(例えば、約200、300、400、500Å、又はそれ以上)までの厚さを有することができる。さらに、全ての構成要素を付着させ、任意選択的に合金化された後(又は、代りに、組成物を付着させ、任意選択的に合金化された後)、本発明の組成物の層は、数十オングストローム(例えば、約20、40、60、80、100Å、又はそれ以上)〜数百オングストローム(例えば、約200、400、600、800、1000、1500Å、又はそれ以上)までの範囲の厚さを有することができる。したがって、異なる実施形態において、厚さは、例えば、約10〜約500オングストローム(Å)、約20〜約200オングストローム(Å)、約40〜約100オングストローム(Å)とすることができる。
【0095】
さらに、組成物(又はその構成要素)が例えば電極又は電解質膜の表面上の薄膜として付着させる実施形態において、その中の白金及び銅の種々の濃度は本明細書で前に述べたものとすることができることに注目すべきである。さらに、他の実施形態において、組成物中の白金及び/又は銅の濃度は前に述べたもの以外としてもよい。
【0096】
5.燃料電池への組成物の組み込み
本発明の組成物はプロトン交換膜燃料電池に触媒として使用するのに特に適している。図2及び図3に示したように、全体に20で示した燃料電池は燃料電極(アノード)22及び空気電極/酸化剤電極(カソード)23を備える。電極22と23の間のプロトン交換膜21が電解質として働き、通常、ペルフルオロスルホン酸系膜などの強い酸性イオン交換膜である。プロトン交換膜21、アノード22、カソード23を1つの本体に一体化し、電極とプロトン交換膜の間の接触抵抗を最小にすることが好ましい。集電体24及び25は、それぞれアノード及びカソードに係合する。燃料室28及び空気室29はそれぞれの反応物を含み、それぞれ封止材26及び27によって封止される。
【0097】
一般に、電気は水素含有燃料の燃焼によって発生する(すなわち水素含有燃料と酸素が反応して、水、二酸化炭素、及び電気を形成する)。これは上記燃料電池において、水素含有燃料Fを燃料室28に導入し、酸素O(好ましくは空気)を空気室29に導入することによって達成され、それによって電流が外部回路(図示せず)を通って直ちに集電体24と25の間を移動することができる。水素含有燃料はアノード22で酸化されて水素イオン、電子、可能ならば二酸化炭素ガスを生成するのが理想的である。水素イオンは強い酸性プロトン交換膜21を通って移動し、酸素と、外部回路を通ってカソード23へ移動する電子と反応して水を形成する。水素含有燃料Fがメタノールであるならば、化学反応を促進するために希釈酸性溶液として導入するのが好ましく、それによって、出力が増加する(例えば、0.5Mメタノール/0.5M硫酸溶液)。
【0098】
プロトン交換膜におけるイオン伝導の損失を防止するために、これらは典型的に燃料電池の運転中水和された状態が維持される。その結果、プロトン交換膜の材料は、典型的に、約100〜約120℃の温度での脱水に抵抗性を有するように選択される。プロトン交換膜は、通常、還元及び酸化安定性、酸及び加水分解に対する抵抗性、十分に低い電気抵抗度(例えば<10Ω・cm)、及び低い水素又は酸素透過度を有する。さらに通常、プロトン交換膜は親水性である。これは、プロトン伝導を確保し(アノードへの水の逆拡散によって)、導電性を低下させる膜の乾燥を防止する。便宜上、膜の層厚さは典型的に50〜200μmである。一般に、前述の特性は、脂肪族の水素−炭素結合のない材料、例えば、水素をフッ素で置換することによって、又は芳香族構造の存在によって得られる材料で達成され、プロトン導電性はスルホン酸基(酸性度が高い)の組み込みから得られる。また、適切なプロトン導電性膜は、E.I.du Pont de Nemours & Co.、Wilmington、Delawareによって製造されるNAFION(登録商標)などのペルフルオロスルホン化ポリマー及びその誘導体を含む。NAFION(登録商標)はテトラフルオロエチレンとペルフルオロビニルエーテルとから作られたコポリマーに基づき、イオン交換基として働くスルホン基を有する。他の適切なプロトン交換膜は、過フッ化化合物(例えば、オクタフルオロシクロブタン及びペルフルオロベンゼン)などのモノマー、又はプラズマポリマー中にいかなる脂肪族H原子も形成しないC−H結合を備えるモノマーで作製され、酸化性分解の攻撃部位を構成することができる。
【0099】
本発明の電極は、本発明の触媒組成物及びその上に触媒が付着している電極基材(electrode substrate)を備える。一実施形態において、組成物は電極基材上に直接付着している。他の実施形態において、組成物は導電性担体上に担持され、担持された組成物が電極基材上に付着している。また、電極は組成物に接触したプロトン伝導性材料を含むこともできる。プロトン伝導性材料は電解質と組成物間の接触を容易にすることができ、したがって燃料電池の性能を高めることができる。電極は、反応物(すなわち燃料又は酸素)と、電解質と、組成物の間の接触を増加させることによって電池効率を高めるように設計されることが好ましい。特に、燃料/酸化剤が反応物ガス流に露出した電極の面(裏面)から電極に入り、電解質が電解質に露出した電極の面(前面)を通って浸透し、反応生成物、特に水が電極を拡散して出ることを可能にするので、多孔質又はガス拡散電極が典型的に使用される。
【0100】
プロトン交換膜、電極、及び触媒組成物は互いに接触していることが好ましい。これは、典型的に、組成物を電極上又はプロトン交換膜上のいずれかに付着させ、次いで電極と膜を接触させることによって達成される。本発明の組成物は、プラズマ蒸着、粉体塗布(粉体はスラリー、ペースト、又はインクの形とすることができる)、化学的めっき、スパッタを含む様々な方法によって電極又は膜上のいずれかに付着させることができる。プラズマ蒸着は、一般に低圧プラズマを用いて、触媒組成物の薄膜(例えば、3〜50μm、好ましくは5〜20μm)の付着を伴う。例えば、トリメチルシクロペンタジエニル白金などの有機白金化合物は10−4〜10ミリバールでガス状であり、無線周波数、マイクロウェーブ、又は電子サイクロトロン共鳴発信機を用いて励起し、膜上に白金を付着させることができる。他の手順によれば、触媒粉体を例えばプロトン交換膜表面に配置し、高温で圧力をかけて一体化する。しかし、触媒粉体の量が約2mg/cmを超えるならば、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーを含有させるのが通常である。さらに、触媒は分散した小さな担体粒子上(例えば、サイズは典型的に20〜200Åであり、さらに好ましくは約20〜100Åである)にめっきすることができる。これは触媒の表面積を増加させ、すなわち反応部位の数を増加させて電池の効率を改善する。例えば、それらの化学的めっき工程の1つでは、合金を含む金属成分の化合物の水性溶液もしくは水性懸濁液(スラリー)に伝導性カーボンブラックなどの粉状キャリア材料を接触させ、金属化合物又はそれらのイオンをキャリア上又はキャリアへ吸着もしくは含浸させる。次いで、スラリーを高速で攪拌しながら、アンモニア、ヒドラジン、ギ酸、又はホルマリンなどの適切な定着剤の希釈溶液をゆっくり滴下して加え、キャリア上に不溶性化合物又は部分的に還元された微細金属粒子として金属成分の分散と付着を行う。
【0101】
膜もしくは電極上への組成物の担持量、又は表面濃度は、部分的に、特定の燃料電池の望ましい出力とコストに基づく。一般に、出力は濃度の増加とともに増加するが、しかし、それを超えても性能が向上しないレベルがある。同様に、燃料電池のコストは濃度の増加とともに増加する。したがって、組成物の表面濃度は用途の要件を満たすように選択される。例えば、大気圏外宇宙船などの厳しい要求を満足するために設計された燃料電池は、通常燃料電池の出力を最大にするのに十分な組成物の表面濃度を有する。より低い要求の用途については、望ましい出力ができるだけ少ない組成物で得られるように経済性で決定される。典型的に、組成物の担持量は、約0.01〜約6mg/cmである。現在までの実験結果は、ある実施形態において、組成物担持量は約1mg/cm未満であることが好ましく、約0.1〜1mg/cmがさらに好ましいことを示す。
【0102】
コレクター、電極、組成物、及び膜の間の接触を促進するために、これらの層は通常高温で圧縮される。個々の燃料電池の筐体は、良好なガスの供給が確保され、同時に生成物の水を適切に排出することができるように構成される。典型的に、いくつかの燃料電池は結合されてスタックを形成するので、総出力は経済的に実現性のあるレベルまで増加する。
【0103】
一般に、本発明の触媒組成物及び燃料電池電極を用いて、水素を含む任意の燃料(例えば、水素及び改質水素燃料)に電極触媒作用を行うことができる。また、メタン(天然ガス)、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和炭化水素、廃棄オフガス、メタノールやエタノールなどの含酸素炭化水素、ガソリンやケロシンなどの化石燃料、及びその混合物を含んで、炭化水素系燃料を用いることができる。
【0104】
プロトン交換膜の完全なイオン伝導特性を達成するために、ある実施形態において、典型的に適切な酸(ガス又は液体)が燃料に加えられる。例えば、SO、SO、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、又はそのフッ化物、また、トリフルオロ酢酸などの強い酸性カルボン酸、及び揮発性リン酸化合物を使用することができる(「Ber.Bunsenges.Phys.Chem.」、Volume98(1994)、631〜635ページ)。
【0105】
6.燃料電池用途
上述のように、本発明の組成物は、電気エネルギーを発生して有用な仕事を行うための燃料電池の触媒として有用である。例えば、組成物は、電気施設電力発生設備、無停電電源装置、大気圏外宇宙船、重量トラック、自動車、自動二輪車などの輸送装置(Fujiらの米国特許第6,048,633号明細書、Shinkaiらの米国特許第6,187,468号明細書、Fujiらの米国特許第6,225,011号明細書、Tanakaらの米国特許第6,294,280号明細書参照)、住宅用電力発生装置、ワイヤレス電話、ページャー、及びサテライト電話などの携帯通信装置(Pratらの米国特許第6,127,058号明細書、Kelleyらの米国特許第6,268,077号明細書参照)、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末、オーディオ録音及び/又は再生装置、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ゲーム遊戯装置などの携帯電子装置、全地球位置把握装置などの軍事及び宇宙装置、ロボットの燃料電池に使用することができる。
【0106】
7.定義
活性度は、電極に製造されたとき、電極触媒から得られた所与の電位(ボルト)での最大値又は定常状態の電流(アンペア)として定義される。さらに、異なる電極触媒を比較するとき、電極の幾何形状的面積が異なるため、活性度はしばしば電流密度(A/cm)で表される。
【0107】
合金は、液体溶液を説明するときと同じように、溶質と溶媒原子(溶媒の用語は過剰に存在する金属に適用される)が不規則に配列する固溶体として説明することができる。いくつかの溶質原子が溶媒の構造中のいくつかを置換するならば、固溶体は置換固溶体として定義することができる。代りに、より小さな原子がより大きな原子の間の間隙を占拠するならば、侵入型固溶体が形成される。2種類の組合せも可能である。さらに、ある固溶体では、適切な条件下であるレベルの規則的な配列を形成することができ、スーパー構造として説明することのできる部分的な規則性をもたらす。原子に長距離の規則性が起きるならば、合金は結晶学的に規則性がある、又は単純に規則性があるものとして説明することができる。これらの合金は、XRDなどの特性試験技術によって識別することのできる特性を有することができる。XRDにおける顕著な変化は対称性の変化に起因することは明らかであろう。金属原子の全体的な配列は、固溶体及び規則的な合金の場合と同様であってもよいが、金属A原子と金属B原子間の特定の位置関係は、ここでは規則性があり、不規則ではなく、異なる回折パターンを与える。さらに、均質の合金は構成要素金属を含む単一化合物である。混成の合金は個々の金属及び/又は金属含有化合物の緊密な混合物を含む。本明細書で定義される合金は、一般に非貴金属と考えられている元素を含むことのできる材料を含むことを意味する。例えば、本発明のいくつかの合金は、一般に低レベル又は不純物レベルと考えられる量の酸素及び/又は炭素を含むことができる(例えば、Structural Inorganic Chemistry、A.F.Wells、Oxford University Press、5th Edition、1995、chapter29参照)。
【実施例】
【0108】
8.実施例
(実施例1)−個別にアドレス可能な電極上への触媒組成物の形成
以下の表A〜Oに記載した触媒組成物は、Warrenらの米国特許第6,187,164号明細書、Wuらの米国特許第6,045,671号明細書、Strasser,P.、Gorer,S.、及びDevenney,M.、Combinatorial Electrochemical Techniques For The Discovery of New Fuel−Cell Cathode Materials、Nayayanan,S.R.、Gottesfeld,S.、及びZawodzinski,T.出版のDirect Methanol Fuel Cells、Proceedings of the Electrochemical Society、New Jersey、2001、191ページ、及び、Strasser,P.、Gorer,S.、及びDevenney,M.、Combinatorial Electrochemical Strategies For The Discovery of New Fuel−Cell Electrode Materials、Proceedings of the International Symposium on Fuel Cells for Vehicles、41st Battery Symposium、The Electrochemical Society of Japan、Nagoya 2000、153ページに開示された組合せ技術を用いて調製した。例えば、独立電極のアレイ(約1〜3mmの面積を有する)を不活性基材(例えば、ガラス、石英、サファイア、アルミナ、プラスチック、及び熱処理したシリコン)上に作製した。個々の電極は実質上基材の中心に配置され、基材の周辺の接触パッドにワイヤで接続した。電極、結合したワイヤ、及び接触パッドは伝導性材料(例えば、チタン、金、銀、白金、銅、又は他の通常用いられる電極材料)から作製した。
【0109】
特に、表A〜Oに記載した触媒組成物は、フォトリソグラフ/RFマグネトロンスパッタ技術(GHz範囲)を用いて調製し、64個の個別にアドレス可能な電極アレイ上に触媒の薄膜を付着させた。石英絶縁性基板を用意しフォトリソグラフ技術を用いてその上に電極パターンを設計し、作製した。基板上に所定量のフォトレジストを塗布し、フォトレジストの予め選択した領域を感光し、これらの感光させた領域を除去し(例えば、適切な現像剤を用いて)、RFマグネトロンスパッタを用いて表面全体に約500nm厚さのチタン層を付着させ、付着させたチタンの所定領域を除去することによって(例えば、下地のフォトレジストの溶解によって)、個別にアドレス可能な電極の複雑なパターンを基板上に作製した。
【0110】
図4を参照すれば、作製されたアレイ40は、8×8平方内に配置された、互いに(十分な空間で)絶縁され基材44(絶縁基材上に作製された)から絶縁された64個の個別にアドレス可能な電極41(直径約1.7mm)からなり、その相互接続42及び接触パッド43は、(硬化したフォトレジスト又は他の適切な絶縁材料によって)電気化学的試験溶液から絶縁した。
【0111】
最初のアレイ作製後、及びスクリーニング用の触媒付着の前に、電極と露出された周辺の接触パッドの外側部分を残して、ワイヤと周辺の接触パッドの内側部分を被覆するパターン形成された絶縁層を付着させた(接触パッドの約半分がこの絶縁層で被覆されることが好ましい)。絶縁層によって、アレイを溶液に浸漬する間のワイヤ又は周辺の接触パッドに発生し得る反応を心配することなく、所与の接触パッドの外側部分にリード(例えば、ポゴピン(pogo pin)又はワニ挟み)を接続し、その結合電極にアドレスすることが可能である。絶縁層は硬化したフォトレジストであったが、絶縁性のあることが知られている任意の他の適切な材料を使用することもできよう(例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化シリコン、窒化ホウ素、酸化イットリウム、又は二酸化チタン)。
【0112】
チタン電極アレイの作製に続いて、64個の孔(直径1.7mm)を有するスチールマスクを基板に押圧して、スパッタされた材料が絶縁レジスト層に付着することを防止した。また、触媒の付着はRFマグネトロンスパッタ及びWuらが説明した、1個又は複数の電極に同時に材料の付着を可能にする2個のシャッター遮蔽装置を用いて達成した。個々の薄膜触媒は超格子蒸着法によって形成した。例えば、金属M1とM2から実質的になる触媒組成物を調製するとき、各々を電極上に蒸着し、次いで部分的又は完全にその上の他の金属と合金化する。さらに詳細には、最初に金属M1のスパッタターゲットを選択し、所定の厚さを有するM1の薄膜を電極に蒸着する。この初期の厚さは、典型的に約3〜約12Åである。この後、金属M2をスパッタターゲットとして選択し、M1の層の上にM2の層を蒸着する。また、M2層の厚さも約3〜約12Åである。蒸着された層の厚さは金属原子の拡散長の範囲(例えば、約10〜約30Å)であり、金属をその場で合金化してM1−M2合金膜を形成することが可能である。2段階の蒸着ステップの結果、望ましい化学量論的組成の合金薄膜(厚さ6〜25Å)が形成される。これで1蒸着サイクルが完了する。触媒組成物の望ましい総厚さを達成するために、蒸着サイクルを必要なだけ繰り返し、これは所定の総厚さ(典型的に約700Å)の超格子構造を形成する。数、厚さ(化学量論)、及び個々の金属層の塗工順序は手作業で決定することができるが、コンピュータプログラムを用いて、特定のライブラリーウェーハ(すなわちアレイ)を調製する間、スパッタ装置の運転を制御するのに必要な情報を含む出力ファイルを設計することが望ましい。それらのコンピュータプログラムの1つはSanta Clara、CaliforniaのSymyx Technologies,Inc.から入手可能なLIBRARY STUDIOソフトウェアであり、欧州特許第1080435号明細書に記載されている。いくつかのスパッタしたままの合金組成物を電子分散分光計(EDS)を用いて分析し、それらが望ましい組成物で構成されていることが確認された(EDSを用いて測定した化学的組成は実際の組成物の約5%以内である)。
【0113】
アレイを調製して、以下の表A1〜A10及び表B〜Oに記載した特定の合金組成物を評価した。表A1〜A10及び表B〜Gの各アレイは、実質的に白金からなる1個の電極を含み、そのアレイの合金のスクリーニング作業のための内部標準とした。表H〜Oのアレイについては、内部白金標準電極は存在していない。むしろ、これらのサンプルは64個の白金電極を備える外部白金標準に対して評価し(酸素還元試験の実験的誤差を求めるために)、64個の白金電極の酸素還元活性度の平均は、水銀/硫酸水銀電極に対して+0.1Vで−0.75mA/cmであった。







































































【0114】
(実施例2)−合金の電極触媒活性度のスクリーニング
実施例1に記載した方法によってアレイ上に合成された表A1〜A10及び表Bに記載の触媒組成物を、分子状酸素の水への電気化学的還元について実験計画1(詳細は以下)に従ってスクリーニングを行い、内部及び/又は外部白金標準に対する相対電極触媒活性度を求めた。さらに、実施例1に記載した方法によってアレイ上に合成された表C〜Oに記載の触媒組成物を、分子状酸素の水への電気化学的還元について実験計画2(詳細は以下)に従ってスクリーニングを行い、相対電極触媒活性度を求めた。
【0115】
全体的に、アレイウェーハを電気化学的スクリーニングセル、及び64個の電極触媒(動作電極)とスクリーニングに使用される64チャンネルの多チャンネル電位計の間に電気的接触を確立したスクリーニング装置に組み立てた。詳細には、スクリーニング装置中に各ウェーハアレイを64点全てが上方に面するように置き、全体的に環状であり内部直径が約2インチ(5cm)の管状電池本体を、上方に面したウェーハ表面に押圧した。この管状電池の直径は、矩形電極アレイを備えるウェーハの部分が円筒形容積の基礎を形成し、接触パッドが円筒形容積の外部にあるようなものであった。この円筒形容積の中へ液体イオン性溶液(すなわち、0.5MのHSO水性電解質)を注ぎ、共通対電極(すなわち、白金網)と共通参照電極(例えば水銀/硫酸水銀参照電極(MMS))を電解質溶液中に置いて電気回路を閉じた。
【0116】
スクリーニング中に強制的な対流拡散条件を与えるために、ブレードを備える回転軸を電解質中に置いた。回転速度は典型的に約300〜約400rpmであった。スクリーニング実験に応じて、測定中アルゴン又は純粋な酸素を電解質に通してバブリングした。アルゴンは電解質中のOガスを除去し、触媒の初期条件に用いるためのOを含まない条件を模擬する働きをした。純粋な酸素の導入は、酸素還元反応のために電解質を酸素で飽和する働きをした。スクリーニング中、電解質は60℃に保ち、回転速度は一定であった。
【0117】
実験計画1:3つの試験グループで触媒の活性度をスクリーニングした。電気化学的測定の前に電解質をアルゴンで約20分間パージした。試験の第1グループは、アルゴンによる電解質パージ中のサイクルボルタンメトリー測定を含んだ。詳細には、第1試験グループは、
(a)速度約20mV/sで、開回路電位(OCP)から約+0.3V、約−0.63Vへ、そして約+0.3Vへ戻る電位掃引
(b)速度約200mV/sで、OCPから約+0.3V、約−0.7Vへ、そして約+0.3Vへ戻る連続75サイクルの電位掃引
(c)速度約20mV/sで、OCPから約+0.3V、約−0.63Vへ、そして約+0.3Vへ戻る電位掃引
を含んだ。試験(c)で得た内部白金標準触媒のサイクルボルタンメトリー(CV)プロファイルの形状を、安定したCVが得られるまで予備処理を行ったPt薄膜電極から得た外部標準CVプロファイルと比較した。試験(c)が類似のサイクルボルタモグラムになれば、実験の第1グループは終了したものと考えた。試験(c)のサイクルボルタモグラムの形状が予期した標準PtCV挙動にならなければ、Pt標準触媒が望ましい標準ボルタンメトリープロファイルを示すまで試験(b)と(c)を繰り返した。このようにして、後続の実験において、Pt標準触媒が安定して良好に画定された酸素還元活性度を示すことが確認された。次いで、電解質を酸素で約30分間パージした。酸素によるパージを継続しながら、以下の第2試験グループを行った。
(a)開回路電位(OCP)を1分間測定し、次いで電位を−0.4Vにして1分間保ち、次いで速度約10mV/sで約+0.4Vまで掃引
(b)OCPを1分間測定し、次いで約5分間電流を測定しながら電位をOCPから約+0.1Vまで印加
(c)OCPを1分間測定し、次いで約5分間電流を監視しながら電位をOCPから約+0.2Vまで印加
試験の第3グループは、第2試験グループの完了から約1時間後の第2試験グループの繰り返しを含んだ。待機中、電解質を連続的に攪拌し、酸素でパージした。前述の試験電圧の全ては水銀/硫酸水銀(MMS)電極による。さらに、64個の白金電極を備える外部白金標準を使用して試験を監視し、酸素還元評価の正確さと安定性を確認した。
【0118】
実験計画2:4つの試験グループで触媒の活性度をスクリーニングした。第1グループは予備処理工程であり、他の3つのグループは酸素還元活性度、ならびに触媒の現在の電気化学的表面積をスクリーニングするための同一実験の組である。電解質は電気化学的測定の前に、アルゴンで約20分間パージした。第1試験グループは、アルゴンによる電解質のパージ間のサイクルボルタンメトリー測定を含んだ。詳細には、第1試験グループは、
(a)速度約20mV/sで、開回路電位(OCP)から約+0.3V、約−0.63Vへ、そして約+0.3Vへ戻る電位掃引
(b)速度約200mV/sで、OCPから約+0.3V、約−0.7Vへ、そして約+0.3Vへ戻る連続50サイクルの電位掃引
(c)速度約20mV/sで、OCPから約+0.3V、約−0.63Vへ、そして約+0.3Vへ戻る電位掃引
を含んだ。
第1試験グループのステップ(c)の後、電解質を酸素で約30分間パージした。次いで、酸素飽和溶液(すなわち、試験(a))、続いてArパージ中に行う試験(すなわち、酸素を含まない溶液、試験(b))を含む、以下の第2試験グループを行った。
(a)酸素飽和溶液中で、OCPを1分間測定し、次いで電位をOCPから約−0.4Vにし、この電位を約30秒間保ち、次いで約5分間電流を測定しながら電位を約+0.1Vまで加えた。
(b)電解質をArで約30分間パージした後、速度約20mV/sで、約+0.3Vの開回路電位(OCP)から約−0.63V、そして約+0.3Vへ戻る電位掃引を行った。
第3及び第4試験グループは、試験完了後の第2試験グループの繰り返しを含んだ。前述の試験電圧の全ては水銀/硫酸水銀(MMS)電極による。さらに、64個の白金電極を備える外部白金標準を使用して試験を監視し、酸素還元評価の正確さと安定性を確認した。
【0119】
上述の実験計画1(表A1〜A10及び表B)又は実験計画2(表C〜O)に従って、表A1〜A10及び表B〜Oに記載の特定の触媒組成物を調製しスクリーニングを行った。試験結果をその中に記載する。表A1〜A10及び表B中のスクリーニング結果は第3試験グループに対するものである(+0.1V MMSでの定常電流)。表C〜G中のスクリーニング結果は、第4試験グループの酸素還元測定(すなわち、酸素飽和溶液中の最終スクリーニング)から取り、Ar飽和段階は経時的な表面積など、触媒に関する追加的なパラメータの評価に役立つ。
【0120】
報告された電流値(端電流密度)は、幾何形状表面積で正規化した、クロノアンペロメトリー試験の最後の3つの電流値を平均した結果である。これらの表に示した結果から、多数の組成物が、例えば内部白金標準を超える酸素還元活性を示したことに注目すべきである(例えば、1.00を超える「内部Ptに比較した相対活性度」を有する、表A1〜A10及び表B〜F中の触媒組成物を参照されたい。また、例えば、表G中の電極番号48、56、40、64、8、16、32、24、47、31、39、6、14、54、22、46、62、30、15、38、18、35、23、27、7、45に対応する触媒組成物を参照されたい。内部白金標準は表H〜Oには存在しなかった。)
【0121】
(実施例3)−担持触媒の合成
カーボン担体粒子上のPt−Cu触媒組成物(以下の表P及びQ、目標触媒組成参照)を異なる工程条件に従って試み、典型的に燃料電池に使用される状態での触媒の性能を評価した。それを行うために、担持された白金粉体(すなわち、カーボンブラック粒子に担持された白金ナノ粒子)上に触媒成分を付着又は凝結させた。カーボンブラック上に担持された白金は、ニュージャージー州のJohnson Matthey,Inc.、及びSomerset、ニュージャージー州のDe−Nora,N.A.、Inc.のE−Tek Div.から市場で入手可能である。それらの担持された白金粉体は広範囲の白金担持量で入手可能である。この実施例に使用した担持白金粉体は、約20又は約40質量%の公称白金担持量、約150〜約170m/g(CO吸着による測定)の白金表面積、約350〜約400m/gのカーボン及び白金の組合せ表面積(N吸着による測定)、約0.5mm未満の平均粒径(分粒篩による測定)を有していた。
【0122】
凍結乾燥凝結法を用いて表P及び表Q(以下)の触媒組成物をカーボン担体粒子上に形成した。凍結乾燥法は、所望の金属原子を所望の濃度で含む初期溶液の形成を含んだ。担持された触媒の各々は本明細書で使用した金属含有化合物の量を変化させて、類似の方法で調製した。例えば、約16.2質量%の最終目標白金担持量を有する目標Pt25Cu75触媒組成物(HFC344)を調製するために、0.143gのCu(NO・3HOを約5mlのHOを含む試験瓶に溶解した。次いでこの溶液を0.200gの担持された白金粉体を含むHDPE試験瓶に導入し、これは約19.2質量%の公称白金担持量であり、黒色懸濁液が得られた。BRANSON SONIFIER 150のプローブを試験瓶に浸漬し、混合物に約90秒間出力レベル3で超音波をかけることによって懸濁液を均一化した。次いで、均一化した懸濁液を含む試験瓶を液体窒素浴に約3分間浸漬し、懸濁液を固化した。次いで、固体懸濁液を約24時間LABCONCO FREEZE DRY SYSTEM(Model79480)を用いて凍結乾燥し、溶媒を除去した。凍結乾燥機のトレイ及び収集コイルは、系を脱気する間、それぞれ約27℃及び約−49℃に保った(圧力は約0.05ミリバールに保った)。凍結乾燥手順の最後の2.5時間はシエルブヒーターを40℃に設定した。凍結乾燥手順の完了後、試験瓶は、担持白金粉体とその上に付着した銅を含む粉体を含んだ。
【0123】
次いで、回収した粉体を熱処理してその中の構成要素をその金属状態に還元し、カーボンブラック粒子上の銅と白金を互いに完全に又は部分的に合金化した。熱処理は、粉体を約6%のHと94%のArを含む雰囲気の石英フロー炉中で、約5℃/分の速度で室温から約90℃まで加熱するステップと、約90℃で2時間保つステップと、温度を約5℃/分の速度で約200℃まで上昇するステップと、約200℃で2時間保つステップと、温度を約5℃/分の速度で、例えば約500、600、700、800、900、又は950℃の最大温度まで上昇するステップと、最大温度で約1.2、2、3、5、7、10、又は12時間保つ(表P及びQに示すように)ステップと、室温まで冷却するステップとを含んだ。
【0124】
担持された触媒の実際の組成を求めるために、調製の異なる触媒(例えば、組成物の変化又は熱処理の変化)をEDS(電子分散分光計)元素分析にかけた。この技術では、サンプルの粉体は直径6mm、厚さ約1mmのペレットに圧縮した。本明細書に述べたようにして調製された担持触媒の目標組成物及び実際の組成物を表P及び表Qに記載する。

















【0125】
(実施例4)−担持された触媒の触媒活性度の評価
表P及び表Qに記載され、実施例3によって形成された担持合金触媒の活性度を評価するために電気化学的測定を行った。評価のために、担持触媒を当分野で通常使用される回転ディスク電極(RDE)上に塗工した(大表面積Pt/Vulcanカーボン燃料電池電極触媒のCO許容値についての回転ディスク電極測定(Rotating Disk Electrode Measurements on the CO Tolerance of a High−surface Area Pt/Vulcan Carbon Fuel Cell Electrocatalyst)、Schmidtら、Journal of the Electrochemical Society(1999)、146(4)、1296〜1304、回転ディスク電極構造を用いる大表面積電極触媒の特性評価(Characterization of High Surface−Area Electrocatalyst using a Rotating Disk Electrode Configuration)、Schmidtら、Journal of the Electrochemical Society(1998)、145(7)、2354〜2358参照)。回転ディスク電極は、酸素還元(例えば燃料電池のカソード反応)に対するその固有の電解質活性度に関して担持触媒を評価するための比較的速く簡単なスクリーニング装置である。
【0126】
回転ディスク電極は、担持触媒とNAFION(登録商標)溶液を含む水性系インクをガラス状カーボンディスク上に付着させることによって調製した。NAFION(登録商標)溶液中の触媒粉体の濃度は、約1mg/mlであった。NAFION(登録商標)溶液は過フッ化イオン交換樹脂、低級脂肪族アルコール、及び水を含み、樹脂の濃度は約5質量%であった。NAFION(登録商標)溶液はALDRICHから製品番号27,470−4として市場で入手可能である。ガラス状カーボン電極は、直径5mmであり、鏡面に研磨した。ガラス状カーボン電極は、例えば、Grove City,PennsylvaniaのPine Instrument Companyから市場で入手可能である。各電極について、わずかに10μLの触媒懸濁液をガラスカーボンディスクに付着させ、約60〜70℃の温度で乾燥させた。得られるNAFION(登録商標)と触媒の層は厚さ約0.2μm未満であった。この方法は特定の懸濁液で作られた各電極についてわずかに異なる白金担持量を作ったが、変化は約10質量%未満であることが測定された。
【0127】
乾燥後、各回転ディスク電極を、室温に保たれた0.5Mの水性HSO電解質溶液を含む電気化学的セル中に浸漬した。測定を行う前に、電解質にアルゴンを約20分間バブリングすることによって、電解質から酸素を除去した。全ての測定は電極を約2000rpmで回転しながら行い、測定された電流密度をガラス状カーボン基板面積又は電極上の白金担持量のいずれかに対して正規化した。2つの試験グループは担持電極触媒の活性度をスクリーニングするために実施した。第1試験グループは、電解質のアルゴンパージ中のサイクルボルタンメトリー測定を含んだ。詳細には、第1グループは、
(a)速度約50mV/sで、OCPから約+0.35Vへ、次いで約−0.65Vへ、そしてOCPへ戻る2回の連続電位掃引
(b)速度約200mV/sで、OCPから約+0.35Vへ、次いで約−0.65Vへ、そしてOCPへ戻る200回の連続電位掃引
(c)速度約50mV/sで、OCPから約+0.35Vへ、次いで約−0.65Vへ、そしてOCPへ戻る2回の連続電位掃引
を含んだ。
第2試験は、酸素で約15分間パージし、続いて電解質の酸素によるパージを継続しながら酸素還元についての電位掃引試験の実施を含んだ。詳細には、約−0.45Vから+0.35Vへの電位掃引を約5mV/sの速度で行い、電位の関数として触媒の初期活性度を評価し、幾何形状電流密度プロットを作成した。触媒を0.15Vでの拡散補正活性度を比較することによって評価した。前述の全ての試験電圧は水銀/硫酸水銀電極を参照している。また、触媒のないガラス状カーボンRDEの酸素還元測定は、電位の枠内に認識し得る活性度を示さなかったことに注目すべきである。
【0128】
上述の担持触媒組成物を上述の方法に従って評価し、その結果を表P及び表Qに示した。その中に示した結果から、多数のカーボン担持触媒組成物が、例えばカーボン担持白金標準を超える酸素還元活性を示したことに注目すべきである(例えば、表P中のサンプルHFC363、369〜374、382〜84、387、389、390、及び表中QのサンプルHFC434、516、687、711、847を参照されたい)。
【0129】
評価の結果は、特に本発明の担持触媒が異なる加工条件(例えば、温度及び/又は時間)を用いて製造できることを示している。しかし、特定の触媒組成物を製造する最適パラメータの組を開発するためには多数の繰り返し作業を要することに注目すべきである。また、データによって明らかなことは、活性度が加工条件の変化によって調節できることである。
【0130】
さらに、特定の理論には拘束されないが、類似の触媒組成物の活性度の相違は、均一性(例えば、本明細書で定義したように、合金は、構成要素原子が規則性の存在又は欠如を示す領域、すなわち、規則的格子内の固溶体領域、又はある種の超構造を示す領域を有することができる)、成分原子の平均サイズの変化に起因する格子パラメータの変化、粒径の変化、結晶学的構造/対称性の変化など、いくつかの要因に起因するものと現在考えられている。合成、構造及び対称性の変化の影響はしばしば予測することが困難である。例えば、Pt−Cu系において、2種の金属は完全に相溶性であろうが、原子レベルでは2種の金属の間に規則性が生じる可能性が存在する。さらに、白金に対する銅の相対比率が変化すると、固溶体は結晶化することができ(例えば、Pt1−xCu)、この固溶体から規則性相が徐々に結晶化して(例えば、Pt50Cu50)、単に固溶体(不規則性合金)に戻り、再び規則性相(例えば、Pt25Cu75)に戻ることのできる可能性が存在する。
【0131】
対称性の変化(例えば、立方面心構造から、他の種類の構造、例えば四面構造又は六面構造などへの変化に伴って)は、X線回折パターンを大きく変化させる。また、これらの変化は、それぞれの金属構成要素のサイズが変化し得ることを暗示する、もっと僅かな格子パラメータの変化も伴う。例えば、白金と銅の12配位金属半径は、それぞれ1.387Åと1.278Åであり、1個の金属が他の金属で置換されると、平均金属半径、したがって観察される格子パラメータはそれに応じて収縮又は拡大することが予測できる。したがって、平均半径は化学量論の関数として格子変化の指標として用いることができ、又は代りに、観察された格子パラメータに基づく化学量論の指標として用いることができる。しかし、平均半径は一般則として有用であるが、局部的規則性、原子間の大きなサイズの格差、対称性の顕著な変化、及び/又は他の要因によって予測と一致しない値が生じるので、実験結果は一般論における一致だけを期待すべきであることに注目すべきである。しかし、場合によって、別の金属半径を使用することは有益である。それらの代用半径の一概念では、純粋な金属の代わりに、結晶学的に規則性のあるPtCuなどの既知のPt系合金(立方対称性が維持される)を用いて、金属半径を近似する(例えば、Pearson‘s Handbook、P.Villars,ed.、ASM International、1997参照)。この場合、受け入れられた白金の12−配位金属半径と共に、規則合金の格子パラメータが用いられること以外は、同じ最密充填幾何形状の議論に関連する。代用半径の概念によれば、銅の有効半径は約1.284Åであると考えられる。
【0132】
いくつかの前述の担持触媒についてのXRD分析の解釈を以下に述べる。しかし、XRD分析の解釈は主観的なものであり、したがって、以下の結論は制限するものではないことに注目すべきである。
【0133】
表P及び表Qに記載した触媒粉体の少なくとも一部を分析して、立方面心格子であると仮定して、格子パラメータと観察される粒径(すなわち、担体上の金属含有付着物のサイズ)の両方を求めた。ピーク位置はシリコン粉(SRM640c)を用いて補正した。銅又は銅に富む不純物相のものではない触媒付着物の平均粒径をScherrerの式を用いて求めた。担体上の金属付着物のサイズに関して本明細書に用いられる用語「粒径」は、平均粒径と解釈すべきである。本明細書に述べる触媒粉体(すなわち、標準的な担持白金粉体)を調製するために用いた担持白金粉体は、いくつかの例外(例えばサンプルHFC374〜381)を除いて、粒径が約19Åであった。HFC374〜381触媒は、2種の代替の担持白金粉体で調製した。HFC374、375、378、379は、粒径が19Åよりも小さい白金金属付着物を有する上述のカーボン担体からなる第1の代替の担持白金粉体で調製した。詳細には、第1の代替の粉体は、担持量が約16〜約18質量%であり、粒径は約12〜約19Åである。第2の代替の粉体は、約30〜約35質量%の白金担持量である。
【0134】
表P及び表Qの触媒の全ては、面心立方体(「fcc」)材料又はfcc系材料のXRDパターンを示した。ある材料は規則性を僅かに示した(以下の異なる触媒の説明を参照されたい)。一般に、表P及び表Qの触媒組成物の観察された格子パラメータは特定の目標触媒組成物で予測されたものに一致した。しかし、いくつかの場合、格子パラメータは予想されたものよりも大きく、XRDプロファイルに基づいて(例えば、追加のピーク又はピーク形状の不規則性の存在)、この不一致は少なくとも部分的に、不完全な反応又は合金化した銅又は銅に富む不純物の存在に起因するものと考えられる。例えば、ここで図5を参照すれば、全体的な背景パターンは炭素の存在によるものであり、ピークA、B、Cは白金銅合金付着物のものであり、ピークX、Y、Zは銅及び/又は銅に富む不純物付着物のものである。銅/銅に富む不純物のより狭いアスペクトは不純物付着物のサイズが白金銅合金付着物のサイズよりも大きいことに起因する。銅又は銅に富む不純物が存在するため、合金付着物中の白金の量は実際に目標組成物よりも多く、これはより大きな格子パラメータの観察をもたらす。さらに、結果は、一般に目標化学量論において含銅量が増加すると、所与の温度/時間での合成で、未反応の、又は合金化しない銅又は銅に富む不純物が多くなる傾向を示す。
【0135】
Pt16Cu84触媒(HFC360及び367)の観察された格子パラメータは銅不純物の量に一致する(すなわち、担持触媒の全体的な化学量論はPt16Cu84とすることができるが、銅不純物の存在は経験的な化学量論Pt16+xCu84−xになり、付随して観察される格子パラメータが増加する)。詳細には、HFC360と367の格子パラメータはそれぞれ約3.705Åと約3.702Åであり、HFC367の相対性能はHFC360よりも約18.5%大きい。さらに、熱処理の差は粒径の差をもたらし、Pt20Cu80触媒(HFC361及び368)の観察される格子パラメータは、同様に銅不純物の量に一致する。
【0136】
表P中のPt25Cu75触媒(HFC344、362、369、374、376、378、380、382、387)の観察される格子パラメータは、使用された出発担持白金粉体によって変動した。概して、代替の担持白金粉体(HFC374、376、378、380)から調製された合金は、より大きな格子パラメータを有し、より結晶質の銅又は銅に富む不純物を有した。したがって、これらの材料の電気化学的性能は標準的な担持白金粉体を用いて調製された材料に比べて低下した。標準的な担持白金粉体を用いて調製された合金について観察される格子パラメータは、互いに、及びEDSで測定された合金の化学量論に一致する。現時点で、代替の粉体で製造された触媒が標準的な粉体で製造されたものよりも何故反応が少なかったかは完全に理解されない。しかし、より完全な合金化は、合金化温度及び/又は時間など1種又は複数の工程パラメータの最適値を決定する定例的な実験によって達成されると考えられる。最適値を決定すれば、代替の担持白金粉体、特に標準粉体よりも小さなサイズの白金粒子を有する粉体は、少なくとも部分的により小さな粒径によってより大きな電気化学的性能を形成する合金粒子をもたらすことが可能である。
【0137】
Pt27.5Cu72.5触媒(HFC383及び388)の観察される格子パラメータは、概してEDSで測定された化学量論に一致する。粒径の差は合成温度と一致し、電気化学的性能に寄与するようである(すなわち、より低い合成温度はより小さな粒径を形成する傾向があり、同じ組成物のより大きな粒子よりもより高い電気化学的活性をもたらす)。
【0138】
Pt30Cu70触媒(HFC345、363、370、375、377、379、381、384、389)の観察される格子パラメータは、使用された出発材料によって変動する。一般に、代替の担持白金粉体(HFC375、377、379、381)から調製された合金は、より大きな格子パラメータを有し、より銅又は銅に富む不純物を有した。したがって、これらの材料の電気化学的性能は標準的な担持白金粉体を用いて調製された材料に比べて低下する。標準的な担持白金粉体を用いて調製された合金について観察される格子パラメータは、互いに、及びEDSで測定された合金の化学量論に一致する。標準的な担持白金粉体を用いて調製された合金の中で、銅又は銅に富む不純物の多いものほど電気化学的性能が劣る傾向がある。
【0139】
Pt32.5Cu67.5触媒(HFC385及び390)の観察される格子パラメータは予測するよりも大きい。詳細には、HFC854及び390の観察されるパラメータはそれぞれ3.760及び3.764であるが、計算した格子パラメータは3.725である。観察された粒径は合成温度に一致する(すなわち、より高い温度はより大きな粒子を形成する傾向がある)。
【0140】
Pt35Cu65触媒(HFC287、290、364、371、386、391)の観察される格子パラメータは概して観察される銅又は銅に富む不純物に一致する。粒径は合成温度が上昇すると増加した。900℃の材料の観察される電気化学的活性度は、700℃の材料のものよりも低かった。700℃の材料の電気化学的活性度は化学量論に一致するものと考えられる。HFC386の比較的低い電気化学的性能は600℃の比較的低い温度で合金化が不完全なためと考えられる。
【0141】
Pt40Cu60触媒(HFC346、365、372)は、合成温度の上昇が粒径の増大及び電気化学的活性度の低下を招く傾向にあるという一般則に一致する。銅及び/又は銅に富む不純物の量が最大であったので、HFC346の格子パラメータが最も大きい。これは、やはり700℃で調製されたHFC365触媒よりも低い活性度を有した理由であると考えられる。
【0142】
Pt45Cu55触媒(HFC347)の観察される格子パラメータは、前に論じたように、銅及び/又は銅に富む不純物のため、化学量論的に予測したものよりも大きい。観察される粒径は合成温度と一致する。
【0143】
前述の観点から、特定の触媒組成物については、その特定の組成物の最高の活性度を形成するために、最適条件を決定することが好ましい。実際に、ある触媒組成物について、異なる構造特性は、何が良好な触媒として説明されるかを定義することができる。これらの特性は、組成(格子パラメータで観察される)、結晶度、結晶学的規則性及び/又は粒径の相違を含むだろう。これらの特性は必ずしも予測可能ではなく、出発材料、合成方法、合成温度及び組成物の間の複雑な相互作用に依存する。例えば、触媒合金を合成するために使用される出発材料は、合成された触媒合金の活性度にも影響を与え得る。詳細には、金属原子を与えるために金属硝酸塩溶液以外の何かを用いることで、異なる活性度となる。さらに、代替のPt原料を使用することができる。雰囲気、時間、温度等の凍結乾燥及び熱処理パラメータも最適化する必要がある。この最適化は、組成的に依存する。さらに、この最適化は相反する現象をバランスさせることを含むだろう。例えば、熱処理温度の上昇は、金属塩の金属への還元を改善し、典型的には活性が上昇することが一般に知られているが、これは、触媒合金粒子のサイズを増加させ、表面積を減少させる傾向があり、電気化学的活性度を低下させる。
【0144】
(実施例5)−触媒組成物前躯体の洗浄
追加のPt−Cu触媒組成物(以下の表R1及び表R2参照)を調製し、全体的にそれぞれ実施例3及び4に示した手法(さらに表R1及び表R2に詳細を示す)に従って触媒活性度を評価した。しかし、最初の調製の後及び試験前に、これらの組成物は、その中に存在する銅の部分を溶解又は除去するために、様々な洗浄手順(さらに表R1及び表R2に詳細を示す)の1つを行った。
【0145】
1つの好ましい手法を示せば、100mgの触媒組成物前躯体(例えば、HFC1077、Pt25Cu75)を20mlのガラス製試験瓶に入れ、続いて15mlの1MのHClO酸溶液をゆっくり(5〜10秒かけて酸が粉体を濡らすのに十分な時間を与えて)加えた。混合物の温度を90〜95℃に上昇させるように予め較正した熱板上に、この混合物を置いた(混合物を装填した試験瓶は蓋をしたが、沸騰が起きてもその中の圧力が高くならないように緊密にではない)。
【0146】
これらの条件下で1時間後、混合物を濾紙でフィルター処理した。濾過物は薄い青色を有し、その中にCuイオンが存在することを示した。フィルター処理したケーキを繰り返し多量の水で洗浄した。
【0147】
この最初の単一洗浄サイクルに続いて、分離された濾過ケーキを他の15mlの1MのHClO酸溶液と共に新しい試験瓶に装填した。濾過ケーキを破壊するために十分攪拌した後、混合物を90〜95℃の熱板に1時間戻した。次いで混合物をフィルター処理し、水で洗浄した。得られるケーキを90℃で48時間乾燥した。























【0148】
概して言えば、驚くべきことに、上で示したデータから、本明細書に述べた洗浄手順は必ずしも常に触媒組成物の表面積を増加させないことに注目すべきである。この関係は触媒のアニーリング温度とは独立している。いかなる特定の理論にも拘束されないが、これは、例えば米国特許第5,876,687号明細書に報告されたもののような、より伝統的な骨格触媒は、おそらく少なくとも部分的にその中に酸素が存在することによってここでは形成されず、あるいは同じようにして形成されないことに起因するものと考えられる。この理論は洗浄後の測定される組成と測定される格子パラメータとの間の関係によって立証される。粒径は、洗浄によって減少するように見えるが、酸素の存在によって骨格枠がいくらか崩壊することを示唆する。
【0149】
上述の説明は例示のためであり制限するものではないことを理解すべきである。当業者であれば、上述の説明を読み取ることによって多くの実施形態が明らかになろう。したがって、本発明の範囲は上述の説明によってではなく、請求項及びそれらの請求項が含まれる等価の範囲全てを参照して決定されるべきである。
【0150】
本発明又はその実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は1種又は複数種の要素があることを意味する。用語「comprising」、「including」、及び「having」は包含的であり記載した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0151】
終点による数字の範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数字を含む。例えば、1〜5で記述される範囲は1、1.6、2、2.8、3、3.3、3.2、4、4.75、及び5を含む。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明による触媒ナノ粒子が表面に付着しているカーボン担体のTEM写真である。
【図2】燃料電池の部材を示す構造の分解図である。
【図3】図2の組み立てられた燃料電池の断面図である。
【図4】本発明による、個別にアドレス可能な電極上に付着している薄膜触媒組成物を備える電極アレイの写真である。
【図5】図1に示すような、カーボン担体上に付着している白金−銅合金ナノ粒子を有するカーボン担体を含む白金−銅合金担持粉体のX線回折プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化又は還元反応における触媒として使用される、白金及び銅を含有する組成物であって、(i)白金濃度が50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満であり、(ii)粒径が35オングストローム(Å)未満である組成物。
【請求項2】
白金及び銅の濃度の合計が約95原子パーセントを超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
白金と銅との合金を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
実質的に白金と銅との合金からなる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
粒径が約20オングストロームを超え35オングストローム未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
粒径が約25オングストロームを超え30オングストローム未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記白金濃度が、約60原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記白金濃度が、約65原子パーセントを超え約75原子パーセント未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
電気化学反応装置に使用するための担持電極触媒粉体であって、導電性担体上に請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含む担持電極触媒粉体。
【請求項10】
電極触媒粒子と、前記電極触媒粒子が表面に付着している電極基材とを備え、前記電極触媒粒子が請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含む燃料電池電極。
【請求項11】
前記電極触媒粒子が請求項9に記載の担持電極触媒粉体を含む、請求項10に記載の燃料電池電極。
【請求項12】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードの間のプロトン交換膜と、水素含有燃料の触媒酸化又は酸素の触媒還元に使用するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物とを備える燃料電池。
【請求項13】
前記組成物が前記プロトン交換膜の表面上にあり、前記アノードに接触している、請求項12に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記組成物が前記アノードの表面上にあり、前記プロトン交換膜に接触している、請求項12に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記組成物が、前記プロトン交換膜の表面上にあり前記カソードに接触している、あるいは、前記カソードの表面上にあり前記プロトン交換膜に接触している、請求項12に記載の燃料電池。
【請求項16】
アノードと、カソードと、その間のプロトン交換膜と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物と、前記アノードと前記カソードを接続する導電性外部回路とを備える燃料電池における水素含有燃料及び酸素の反応生成物及び電気への電気化学的変換方法であって、前記水素含有燃料又は前記酸素を前記組成物に接触させて前記水素含有燃料を触媒酸化し、又は前記酸素を触媒還元することを含む方法。
【請求項17】
前記水素含有燃料が実質的に水素からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記水素含有燃料が、飽和炭化水素、廃棄オフガス、含酸素炭化水素、化石燃料、及びその混合物からなる群から選択される炭化水素系燃料である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記水素含有燃料がメタノールである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
担持されていない触媒組成物の層が表面に付着している燃料電池電解質膜であって、前記担持されていない触媒組成物の層が請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む燃料電池電解質膜。
【請求項21】
担持されていない触媒組成物の層が表面に付着している燃料電池電極であって、前記担持されていない触媒組成物の層が請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む燃料電池電極。
【請求項22】
白金及び銅を含有し、白金濃度が約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満である触媒前駆体組成物から触媒組成物を調製する方法であって、
得られる触媒組成物が白金と銅を含み、白金濃度が50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満であるように、その中に存在する銅の部分を除去するのに十分な条件下に前記前駆体組成物を置くステップを含む方法。
【請求項23】
前記組成物の粒径が35オングストローム(Å)未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物の粒径が約20オングストロームを超え30オングストローム未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記白金濃度が約60原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒前駆体組成物を酸性溶液に接触させ、当該触媒前駆体組成物中に存在する銅の部分を可溶性にする請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
アノードと、カソードと、その間のプロトン交換膜と、触媒前駆体組成物と、前記アノードと前記カソードを接続する導電性外部回路とを備える燃料電池において、水素含有燃料及び酸素を反応生成物及び電気に電気化学的に変換する電気化学的反応に前記触媒前駆体組成物をさらす方法であって、
前記水素含有燃料又は前記酸素を前記触媒前駆体組成物に接触させて前記水素含有燃料を酸化し、且つ/又は前記酸素を触媒還元し、前記触媒前駆体組成物中に存在する銅をその場で取り除くステップを含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記水素含有燃料が実質的に水素からなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水素含有燃料がメタノールである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記触媒前駆体組成物の前記白金濃度が、約25原子パーセントを超え約35原子パーセント未満である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
白金及び銅を含有し、白金濃度が50原子パーセント未満である触媒前駆体組成物から触媒組成物を調製する方法であって、
前記前駆体組成物を、pHが0を超え7未満である酸性溶液に接触させて当該触媒前駆体組成物中に存在する前記銅の一部を可溶性にし、得られる触媒組成物が白金及び銅を含有し、白金濃度が50原子パーセントを超えるようにするステップを含む方法。
【請求項32】
前記触媒前駆体の白金濃度が約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記得られる触媒組成物中の白金濃度が60原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記得られる触媒組成物の粒径が35オングストローム(Å)未満である、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒前駆体組成物中の白金濃度が約25原子パーセントを超え約35原子パーセント未満である、請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記酸性溶液のpHが0.5を超え3未満である、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
白金及び銅を含有し、白金濃度が50原子パーセント未満である触媒前駆体組成物から触媒組成物を調製する方法であって、
前記前駆体組成物を空気中で、又は空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で溶液に接触させて当該触媒前駆体組成物中に存在する前記銅の一部を可溶性にし、得られる触媒組成物が白金及び銅を含有し、白金濃度が50原子パーセントを超えるようにするステップを含む方法。
【請求項38】
前記触媒前駆体の白金濃度が約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記得られる触媒組成物中の白金濃度が60原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記得られる触媒組成物の粒径が35オングストローム(Å)未満である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記触媒前駆体組成物の白金濃度が約25原子パーセントを超え約35原子パーセント未満である、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記前駆体組成物を酸性溶液に接触させる、請求項37〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記前駆体組成物を空気中で酸性溶液に接触させる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記前駆体組成物を、空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で酸性溶液に接触させる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記前駆体が、3.777Åを超えない格子パラメータと約30Åを超えない粒径を有する、請求項22〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記前駆体の格子パラメータが約3.674〜約3.765Åである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記前駆体の格子パラメータが約3.689〜約3.750Åである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記前駆体の格子パラメータが約3.704〜約3.745Åである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
白金と銅との合金を導電性担体粒子上に含む触媒組成物を調製する方法であって、
前記導電性担体粒子上に銅含有化合物を付着させるステップと、
前記導電性担体粒子上に白金含有化合物を付着させるステップと、
前記導電性担体上の銅と白金を還元雰囲気中において、約450℃を超え800℃未満の温度で銅と白金の合金を形成するのに十分な時間加熱するステップとを含み、
前記触媒組成物の白金濃度が約50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である方法。
【請求項50】
得られる前記触媒組成物が実質的に白金と銅との合金からなる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記銅と白金との合金の粒径が35オングストローム(Å)未満である、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記銅と白金との合金の粒径が、約20を超え30オングストローム(Å)未満である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記温度が約525℃を超え約750℃未満である、請求項49〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記温度が約600℃を超え約700℃未満である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記時間が約2〜約14時間である、請求項49〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記時間が約6.5〜約13時間である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記時間が約7〜約12時間である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記銅含有化合物を、前記白金含有化合物の後に前記導電性担体粒子上に付着させる、請求項49〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記白金含有化合物を、前記銅含有化合物の後に前記導電性担体粒子上に付着させる、請求項49〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
白金と銅との合金を導電性担体粒子上に含む触媒組成物を調製する方法であって、
(i)導電性担体粒子上に銅含有化合物を付着させ、(ii)導電性担体粒子上に白金含有化合物を付着させ、(iii)前記担体粒子上に付着している前記化合物を約450℃を超える温度の還元雰囲気中で少なくとも2時間加熱して銅と白金との合金を形成させることによって、約20原子パーセントを超え約40原子パーセント未満の白金濃度を有する触媒組成物前駆体を形成するステップと、
前記前駆体組成物を空気中で、又は空気よりも高い酸素濃度の雰囲気中で酸性溶液に接触させて当該触媒組成物前駆体中に存在する銅の一部を可溶性にするステップとを含む方法。
【請求項61】
得られる前記触媒組成物の白金濃度が50原子パーセントを超え約80原子パーセント未満である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
得られる前記触媒組成物が実質的に白金と銅との合金からなる、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記銅と白金との合金の粒径が35オングストローム(Å)未満である、請求項60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記銅と白金との合金の粒径が約20を超え30オングストローム(Å)未満である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記温度が約800℃を超え900℃未満である、請求項60〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記時間が2〜約4時間である、請求項60〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記銅含有化合物を、前記白金含有化合物の後に前記導電性担体粒子上に付着させる、請求項60〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記白金含有化合物を、前記銅含有化合物の後に前記導電性担体粒子上に付着させる、請求項60〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記酸性溶液のpHが0.5を超え3未満である、請求項60〜68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記前駆体組成物を空気中で酸性溶液に接触させる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記前駆体組成物を、空気よりも高い酸素濃度を有する雰囲気中で前記酸性溶液に接触させる、請求項69に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−503099(P2007−503099A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524017(P2006−524017)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/026847
【国際公開番号】WO2005/024982
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501430560)サイミックス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】