説明

白髪予防・改善剤、並びにその白髪予防・改善剤を配合した皮膚外用剤及び化粧料

【課題】白髪予防及び改善効果に優れた皮膚外用剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】白髪予防・改善剤に、アルテミア抽出物を含有させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた白髪予防及び改善効果を有する白髪予防・改善剤、並びにその白髪予防・改善剤を配合した皮膚外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪は毛髪に現れる老化現象のひとつであり、美容上、脱毛と並ぶ大きな悩みとなっている。白髪は毛根にあるメラノサイトの減少あるいは機能低下により、毛根でメラニン色素が作られなくなることが主原因であると考えられている。このようなメラノサイトの減少あるいは機能低下の要因としては、遺伝的素因、加齢、ストレス等が挙げられるが、その詳細は未だに明らかになっていない。
【0003】
白髪の改善方法としては染毛剤による対処療法が主であるが、これは根本的な白髪の防止・改善法ではなく、白髪そのものの発生防止・改善が望まれている。このような要望に対して、白髪防止剤としてメラノサイトの増殖やメラニン合成能を高める化合物などの使用が提案され、そのような技術としてたとえば下記特許文献1のような出願がなされている。この特許文献1に開示された白髪防止剤は、グリセリルアルキルエーテル化合物を有効成分とするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−120011号公報
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示されたような白髪防止剤は、効果に実効性が必ずしもなく、根本的な治療剤として広く応用されているに至っていない。また、このような白髪防止剤は、毛根に存在するメラノサイトに直接作用させることを意図しており、直接作用させるメラノサイトが頭部の表皮の表面近傍に存在するので、仮にメラノサイトに作用すれば、その部分の皮膚表面が黒色化し、シミの原因となるおそれがあるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、白髪予防及び改善効果に優れた皮膚外用剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
毛根にあるメラノサイトの生存や機能維持には、SCF(幹細胞増殖因子)と称されるサイトカインが重要な働きをしているという知見が、最近になって得られている。毛根にあるSCFは主として毛乳頭と称される組織で産生されており、毛乳頭が産生するSCFが加齢など種々の要因により減少すると、白髪の発生に到るものと推察される。
【0008】
本発明者等はこのような点に着目し、種々の検討を重ねた結果、アルテミア抽出物が、毛乳頭細胞のSCF産生能を高め、さらに、SCFによるメラノサイト活性化作用を増強させることにより、白髪防止及び改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち請求項1記載の発明は、白髪予防・改善剤に、アルテミア抽出物を含有させたことを特徴とする。ここで「アルテミア抽出物を含有する」とは、白髪予防・改善剤がアルテミア抽出物のみからなっていてもよく、またアルテミア抽出物以外の成分を含んでいてもよいことを意味する。
【0010】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の白髪予防・改善剤を配合したことを特徴とする皮膚外用剤の発明である。さらに、請求項3記載の発明は、請求項1記載の白髪予防・改善剤を配合したことを特徴とする化粧料の発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、優れた白髪予防および改善効果を有し、人体に対して安全性の高い外用剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の外用剤における有効成分であるアルテミア抽出物は、海洋プランクトンの1種であるアルテミア(Artemia Salina、和名:ホウネンエビ)から抽出したものである。
【0013】
本発明で用いられる抽出物とは、アルテミアを常温または加温下に溶剤により抽出するか、または、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その濃縮液、あるいはその乾燥末を意味するものである。
【0014】
抽出に用いる溶媒としては、通常の抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の有機溶媒類等であり、それらは単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記のような白髪予防・改善剤を配合した本発明の皮膚外用剤、化粧料は液状、乳液、軟膏、クリーム、ゲル、エアゾール等の剤型にすることができるが、これらの剤型に限定されるものではなく、必要に応じて適宜基剤成分等を配合して所望の形態の外用剤を調製することができる。また、皮膚外用剤としては、化粧料以外にたとえば医薬部外品や医薬品等に適用することができる。
【0016】
本発明の皮膚外用剤、化粧料中のアルテミア抽出物の配合量は、皮膚外用剤中の通常乾燥固形分として、0.0001〜50重量%とすることが好ましい。0.0001重量%未満では本発明の効果が充分に得られない可能性があり、一方、50重量%を超えても、その増量に見合った効果の向上は認められないからである。この観点から、0.001〜10重量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤や化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、一般に化粧料で用いられ、或いは医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に用いられる各種任意成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような任意成分として、例えば、精製水、エタノール、油性成分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0019】
(実施例1)
本実施例の白髪予防・改善剤は、アルテミアの抽出物からなるものである。本実施例においては、海洋プランクトンであるアルテミアの孵化直前の耐久卵から水抽出したものをアルテミアの抽出物として用いた。この場合、上述のようにアルテミアを常温または加温下に水で抽出し、若しくはソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる抽出液、又はその抽出液を濃縮した濃縮液、或いはその濃縮液を乾燥して得られた乾燥末等を使用することができる。また水以外に、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の有機溶媒類を使用することも可能である。
【0020】
(試験例1)
〔ヒト毛乳頭細胞のSCF産生能に対する作用試験〕
ヒト毛乳頭細胞を12wellプレートに2×104/wellで播種し、10%牛胎児血清を添加したダルベッコ変法MEM培地(DMEM培地)で5日間培養した。培養5日目にDMEM培地で細胞を洗浄後、各濃度(0.25重量%、0.5重量%、1重量%)のアルテミア抽出物を含むDMEM培地を加え、さらに培養を続けた。3日間培養した後、培養上清を回収し、培養上清に含まれるSCFの量をヒトSCF Immunoassay キット(R&Dシステム社製)を用いて測定した。アルテミア抽出物のSCF産生促進効果はDMEM培地のみで培養した場合のSCF量を100とした場合の値(比率)で示した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1からも明らかなように、アルテミア抽出物を含むDMEM培地で培養したヒト毛乳頭細胞から産生されたSCF量は、抽出物を含まないDMEM培地(コントロール)で培養したヒト毛乳頭細胞から産生されたSCF量よりも増加していた。このことから、アルテミア抽出物は毛乳頭細胞によるSCF産生を促進するものと認められた。
【0023】
また、アルテミア抽出物の濃度が高くなる程、産生されるSCF量が増加し、アルテミア抽出物の濃度を高くすることで、SCFの産生促進効果が高まることがわかった。
【0024】
(試験例2)
〔ヒトメラノサイトの増殖に対する作用試験〕
ヒトメラノサイトを12wellプレートに4×104/wellで播種し、Medium254で培養した。培養1日目に、各濃度(0.25重量%、0.5重量%、1重量%)のアルテミア抽出物を含む Medium254に培地を交換し、さらに培養を続けた。また、Medium254の代わりに 50ng/ml SCFを添加した Medium254を用いた場合も検討した。7日間培養した後、セルカウンテイングキット(同仁化学社製)を用いて細胞数を測定した。アルテミア抽出物の細胞増殖促進効果(細胞数)は Medium254培地のみで培養した場合の細胞数を100とした場合の値(比率)で示した。
【0025】
Medium254培地のみで培養した場合の結果を表2に示し、50ng/mlSCFを添加したMedium254培地で培養した場合の結果を表3に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
表2からも明らかなように、アルテミア抽出物のみを含む培地で培養したヒトメラノサイトの数は、抽出物を含まない培地(コントロール)で培養したヒトメラノサイトの数とさほど変わらなかった。従って、アルテミア抽出物はヒトメラノサイトの増殖には直接作用しないと考えられる。
【0029】
一方、表3からも明らかなように、上記コントロールの培地にSCFを添加することによって、ヒトメラノサイトの数は1.7倍に増加した。また、SCFを添加するのみならずアルテミア抽出物をも添加した培地で培養したヒトメラノサイトの数は、SCFのみを添加した培地(表3におけるコントロール)で培養したヒトメラノサイトの数よりも増加していた。このことから、アルテミア抽出物はSCFの細胞増殖促進作用を増強するものと認められる。
【0030】
さらに上記表3の結果から、SCF共存下でアルテミア抽出物の濃度が高くなる程、ヒトメラノサイトの細胞数が増加した。このことから、アルテミア抽出物の濃度を高くすることで、SCFの細胞増殖促進作用の増強効果が高まることがわかった。
【0031】
(処方例1)
本処方例は、化粧料の一例としてのヘアークリームの処方例であり、その組成は次のとおりである。
【0032】
配合成分 重量%
精製ラノリン 4.0
流動パラフィン 40.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 4.0
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
モノステアリン酸グリセリン 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
セタノール 2.0
エデト酸四ナトリウム 0.1
アルテミア抽出物 1.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 1.0
香料 0.1
精製水 残量
【0033】
(処方例2)
本処方例は、化粧料の一例としてのヘアローションの処方例であり、その組成は次のとおりである。
【0034】
配合成分 重量%
酢酸−dl−α−トコフェロール 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
l−メントール 0.1
アルテミア抽出物 1.0
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
ジプロピレングリコール 3.0
エタノール 60.0
精製水 残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテミア抽出物を含有することを特徴とする白髪予防・改善剤。
【請求項2】
請求項1記載の白髪予防・改善剤を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項3】
請求項1記載の白髪予防・改善剤を配合したことを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2007−261975(P2007−261975A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87362(P2006−87362)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】